説明

画像処理装置、蛍光顕微鏡装置および画像処理プログラム

【課題】コントラストが良好でありながら輝度むらのない3次元画像を生成する。
【解決手段】標本からの蛍光を標本の異なる深さ位置で撮像した蛍光画像であり、各深さ位置において異なる露光量で複数ずつ撮像された蛍光画像を深さ位置毎に合成することにより合成画像を生成する画像合成部73と、該画像合成部73によって生成された各合成画像から代表輝度を算出し、算出された代表輝度を深さ方向に平滑化することにより、各合成画像について平滑化輝度を算出する平滑化輝度計算部74と、該平滑化輝度計算部74によって算出された平滑化輝度と代表輝度との差分に基づいて各合成画像の輝度を補正することにより補正画像を生成する輝度補正部75と、該輝度補正部75によって生成された複数の補正画像から標本の3次元画像を生成する3次元画像生成部76とを備える画像処理装置700を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、蛍光顕微鏡装置および画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のスライス画像から3次元画像を生成する共焦点顕微鏡装置において、カメラからの出力信号のレベルを自動ゲイン制御(AGC)回路によって所定の範囲に調節してからAD変換することにより、スライス画像のダイナミックレンジを拡大する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような技術によれば、コントラストが良好なスライス画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−183803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、スライス画像毎にAGC回路による信号の増幅率が異なる。例えば、蛍光が強く発光する領域を含むスライス画像は低い増幅率で処理され、全体的に暗いスライス画像は高い増幅率で処理される。したがって、実際には同一の明るさを有する領域がスライス画像毎に異なる輝度値で表現される。このようなスライス画像から生成された3次元画像には、スライス画像間の輝度値のばらつきに応じて縞状の輝度むらが発生してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、コントラストが良好でありながら輝度むらのない3次元画像を生成することができる画像処理装置、蛍光顕微鏡装置および画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の部を提供する。
本発明は、標本からの蛍光を前記標本の異なる深さ位置で撮像した蛍光画像であり、各深さ位置において異なる露光量で複数ずつ撮像された蛍光画像を前記深さ位置毎に合成することにより合成画像を生成する画像合成部と、該画像合成部によって生成された各合成画像から代表輝度を算出し、算出された代表輝度を前記深さ方向に平滑化することにより、各合成画像について平滑化輝度を算出する平滑化輝度計算部と、該平滑化輝度計算部によって算出された平滑化輝度と前記代表輝度との差分に基づいて各前記合成画像の輝度を補正することにより補正画像を生成する輝度補正部と、該輝度補正部によって生成された複数の補正画像から前記標本の3次元画像を生成する3次元画像生成部とを備える画像処理装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、画像合成部が同一の深さ位置における露光量の異なる複数の蛍光画像を合成することによりダイナミックレジが元の蛍光画像に対して拡大された合成画像を生成し、合成画像に対して輝度補正部が輝度の補正を施すことにより補正画像し、3次元画像生成部が補正画像から標本の3次元画像を生成する。
【0008】
この場合に、各合成画像は、元となっている複数の蛍光画像内の蛍光の強度に応じて異なるダイナミックレンジを有している。平滑化輝度計算部は、このようにダイナミックレンジが異なる合成画像の代表輝度を標本の深さ方向に平滑化し、輝度補正部は、個々の合成画像の平滑化輝度と代表輝度との差分に基づいて合成画像の輝度を補正することにより輝度が標本の深さ方向に滑らかに変化する補正画像を生成する。これにより、補正画像からコントラストが良好でありながら縞状の輝度むらがない3次元画像を生成することができる。
【0009】
また、本発明は、標本に励起光を照射する光源と、前記励起光の照射によって前記標本から発生した蛍光を集光する対物光学系と、該対物光学系によって集光された蛍光を撮像する撮像部と、前記対物光学系の焦点位置を前記対物光学系の光軸方向に移動させることにより前記標本を複数の焦点位置で前記撮像部に撮像させる焦点位置制御部と、各焦点位置において前記蛍光の露光量が異なる複数の蛍光画像を前記撮像部に取得させる露光量制御部と、前記焦点位置制御部および前記露光量制御部による制御に従って前記撮像部が取得した各焦点位置における複数の蛍光画像を合成して合成画像を生成する画像合成部と、該画像合成部によって生成された各合成画像から代表輝度を算出し、算出された代表輝度を前記光軸方向に平滑化することにより、各合成画像について平滑化輝度を算出する平滑化輝度計算部と、該平滑化輝度計算部によって算出された平滑化輝度と前記代表輝度との差分に基づいて各前記合成画像の輝度を補正することにより補正画像を生成する輝度補正部と、該輝度補正部によって生成された複数の補正画像から前記標本の3次元画像を生成する3次元画像生成部とを備える蛍光顕微鏡装置を提供する。
【0010】
本発明によれば、光源からの励起光の照射により標本から発生した蛍光が撮像部によって撮像される。このときに、撮像部は、焦点位置制御部による制御に基づいて複数の焦点位置で蛍光画像を取得し、さらに露光量制御部による制御に基づいて各焦点位置において露光量の異なる複数の蛍光画像を取得する。画像合成部は、各焦点位置における複数の蛍光画像を合成することによりダイナミックレンジが拡大された合成画像を生成する。
【0011】
合成画像は、平滑化輝度計算部によって算出された平滑化輝度に基づいて、輝度が標本の深さ方向に滑らかに変化するように輝度補正部によって補正された後に、補正画像として3次元画像生成部による3次元画像の生成に用いられる。これにより、コントラストが良好でありながら縞状の輝度むらがない3次元画像を生成することができる。
【0012】
上記発明においては、前記露光量制御部が、前記光源による前記励起光の強度ならびに前記撮像部による蛍光の検出感度および露光時間のうち少なくとも1つを調節することにより前記蛍光の露光量を制御することとしてもよい。
このようにすることで、撮像部によって撮像される蛍光の露光量を簡便に制御することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記標本と前記対物光学系との前記光軸に交差する方向の相対位置を移動させることにより、各焦点位置において前記交差する方向に隣接する複数の位置でそれぞれ露光量の異なる複数の前記蛍光画像を前記撮像部に取得させる撮像位置制御部を備え、前記露光量制御部が、前記交差する方向の位置毎に前記撮像部による前記蛍光の露光条件を設定する請こととしてもよい。
【0014】
このようにすることで、光軸に交差する同一の平面において複数の位置で蛍光を撮像することにより、より大きな範囲の3次元画像を作成する場合に、同一平面を構成する複数の合成画像間においても輝度のばらつきを抑えることができる。
【0015】
また、本発明は、標本からの蛍光を前記標本の異なる深さ位置で撮像した蛍光画像であり、各深さ位置において異なる露光量で複数ずつ撮像された蛍光画像を取得する工程と、取得された各前記深さ位置における複数の蛍光画像を合成することにより合成画像を生成する工程と、生成された各合成画像から代表輝度を算出し、算出された代表輝度を前記深さ方向に平滑化することにより、各合成画像について平滑化輝度を算出する工程と、算出された平滑化輝度と前記代表輝度との差分に基づいて各前記合成画像の輝度を補正することにより補正画像を生成する工程と、生成された複数の補正画像から前記標本の3次元画像を生成する工程とをコンピュータに実行させるための画像処理プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コントラストが良好でありながら輝度むらのない3次元画像を生成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置および蛍光顕微鏡装置の全体構成図である。
【図2】(a)画像合成部によって生成される合成画像および(b)輝度補正部によって生成される補正画像を模式的に示す図である。
【図3】(a)合成画像の平均輝度、(b)平均輝度を平滑化した平滑化輝度、および(c)平均輝度と平滑化輝度との差分のZ方向の変動を示すグラフである。
【図4】図1の蛍光顕微鏡装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】図1の蛍光顕微鏡装置の変形例の動作を示すフローチャートである。
【図6】落射型蛍光顕微鏡をベースに構成された図1の蛍光顕微鏡装置の変形例を示す全体構成図である。
【図7】光源としてLEDを備えた図6の蛍光顕微鏡装置の変形例を示す全体構成図である。
【図8】単体で構成された画像処理装置の全体構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態に係る蛍光顕微鏡装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置1は、レーザ走査型顕微鏡をベースとしたものであり、図1に示されるように、レーザ光を照射するレーザ光源(光源)2と、標本Aを載置するステージ3と、レーザ光源2からのレーザ光を標本Aに照射する照射光学系4と、標本Aからの蛍光を検出する検出光学系5と、該検出光学系5によって検出される蛍光の位置および露光量を制御する制御ユニット(焦点位置制御部、露光量制御部)6と、検出光学系5によって検出された蛍光を画像化する画像処理ユニット7と、画像処理ユニット7により生成された画像を表示する画像表示部8とを主な構成要素として備えている。
【0019】
標本Aは、例えば細胞群であり、その内の観察対象とする細胞に特異的に付着または発現する蛍光物質が投与されている。
レーザ光源2は、標本A中の蛍光物質を励起する励起波長を有するレーザ光(励起光)を出射する。レーザ光の出力強度は後述するように制御ユニット6により制御される。
ステージ3は、制御ユニット6からの制御信号に従って後述する対物レンズ46の光軸方向(Z方向)および該光軸に交差する2軸方向(XY方向)に移動可能に設けられている。
【0020】
照射光学系4は、レーザ光源2からのレーザ光を標本Aに照射する光学系であり、ダイクロイックミラー41と、走査光学ユニット42と、リレーレンズ43と、ミラー44と、結像レンズ45と、対物レンズ(対物光学系)46とを備えている。
【0021】
対物レンズ46は、ステージ3に対向して配置され、レーザ光源2から発せられたレーザ光をステージ3上の標本Aに照射するとともに、レーザ光によって励起された蛍光を含む標本Aから光を集光する。
ダイクロイックミラー41は、レーザ光源2からのレーザ光を透過する一方、対物レンズ46により集光された標本Aからの蛍光を後述する光検出器54に向けて反射する。
【0022】
走査光学ユニット42は、一対のガルバノミラー42a,42bを有しており、これらガルバノミラー42a,42bの揺動角度を変化させ、ラスタスキャン方式で駆動されるようになっている。これにより、走査光学ユニット42は、レーザ光源2からのレーザ光を標本A上において対物レンズ46の光軸に直交する2軸方向(XY方向)に走査するようになっている。
【0023】
検出光学系5は、標本Aからの蛍光を検出する光学系であり、測光フィルタユニット51と、レンズ52と、ピンホール53と、光検出器(撮像部)54とを備えている。
測光フィルタユニット51は、ダイクロイックミラー41により反射された標本Aからの光のうち蛍光を透過させ、蛍光以外の光(例えばレーザ光源2からのレーザ光)を遮断する。
レンズ52は、測光フィルタユニット51を透過してきた標本Aからの蛍光をピンホール53に集光する。
【0024】
ピンホール53は、標本Aにおけるレーザ光の焦点位置から発生した蛍光のみを通過させるようになっている。すなわち、対物レンズ46により集光された蛍光は、ピンホール53を通過することによりレーザ光の焦点位置(測定点)からZ方向にずれた位置からの光がカットされる。これにより、Z方向に焦点位置と同一な面からの蛍光だけが光検出器54に入射させられることとなる。
【0025】
光検出器54は、例えば光電子増倍管(Photomultiplier Tube)である。光検出器54は、検出した標本Aからの蛍光を光電変換し、得られた電気信号を画像処理ユニット7の画像生成部71(後述)に出力する。
【0026】
制御ユニット6は、レーザ光源2、ステージ3、走査光学ユニット42、光検出器54を同期して作動させる。具体的には、制御ユニット6は、ステージ3を所定の距離間隔でZ方向に移動させることにより光検出器54によって検出される蛍光の焦点位置をZ方向に移動させる。さらに、制御ユニット6は、各焦点位置において、光検出器54による検出感度及び露光時間並びにレーザ光源2によるレーザ光の出力強度のうち少なくとも1つを段階的に増減させることにより、光検出器54によって検出される蛍光の露光量を段階的に変化させる。これにより、後述する画像生成部71において、蛍光の露光量が異なる複数の蛍光画像が複数の焦点位置において生成されることとなる。
【0027】
画像処理ユニット7は、画像生成部71と、メモリ72と、画像合成部73と、平滑化輝度計算部74と、輝度補正部75と、3次元画像生成部76と、ノイズ除去部77とを備えている。
【0028】
画像生成部71は、光検出器54により検出された標本Aからの蛍光の強度と、走査光学ユニット42による標本AにおけるXY方向の走査位置とを対応付けて標本Aの蛍光画像を生成する。このときに、画像生成部71は、制御ユニット6による露光量の制御に基づき、複数の焦点位置における、蛍光の露光量が異なる複数の蛍光画像を生成する。画像生成部71は、生成した蛍光画像に該蛍光画像が取得されたときのステージ3のZ方向の位置を対応付けてメモリ72に記憶する。
【0029】
画像合成部73は、Z方向の位置が同一であり露光量が異なる複数の蛍光画像を合成することにより合成画像を生成する。具体的には、受光量が多い蛍光画像において、観察対象である細胞の低輝度領域は鮮明に表示されるが、細胞の高輝度領域については輝度が飽和する。一方、受光量が少ない蛍光画像において、細胞の低輝度領域はノイズに埋もれてしまい不鮮明になるが、細胞の高輝度領域は鮮明に表示される。画像合成部73は、このように各蛍光画像において適切な露光量で撮像された領域を合成することにより、元の蛍光画像が有するダイナミックレンジよりも見かけ上広いダイナミックレンジを有する合成画像を生成する。画像合成部73は、生成した複数の合成画像をメモリ72に記憶する。
【0030】
ここで、蛍光画像に対して拡大された各合成画像のダイナミックレンジの幅は、元となっている複数の蛍光画像が有する輝度分布の範囲によって異なる。そのため、図2(a)に示されるように、実際には同一の明るさを有する領域が合成画像G1〜G4毎に異なる輝度で表現されることとなる。
【0031】
平滑化輝度計算部74は、メモリ72に記憶された複数の合成画像を取得し、各合成画像について代表輝度を算出する。代表輝度としては、各合成画像の平均輝度が好ましい。以下、代表輝度として各合成画像の平均輝度を用いる場合について説明するが、平均輝度に代えて、例えば各合成画像の最大輝度等を用いてもよい。
【0032】
平滑化輝度計算部74により算出された平均輝度は、図3(a)に示されるように、上述したように合成画像のダイナミックレンジの幅のばらつきが要因でZ方向に不連続に変化する。次に、平滑化輝度計算部74は、図3(b)に示されるように、平均輝度の比較的大きな変動を残しつつ比較的細かい変動を除去するように、平均輝度をZ方向に平滑化し、個々の合成画像について平滑化輝度を計算する。平滑化輝度計算部74は、算出した各合成画像の平滑化輝度を輝度補正部75に出力する。なお、図3(a),(b)において、横軸は合成画像のZ方向の位置、縦軸は平均輝度を表している。
【0033】
平滑化処理には、例えば、移動平均フィルタが用いられる。移動平均フィルタは、注目する合成画像を中心とするZ方向に連続する所定の数の合成画像の平均輝度の平均を算出し、算出された平均輝度の平均を注目する合成画像の輝度とするものである。
【0034】
輝度補正部75は、各合成画像について、平滑化輝度計算部74によって算出された平滑化輝度と平均輝度との差分を算出し、算出した差分に基づいて合成画像の輝度を補正することにより補正画像を生成する。具体的には、輝度補正部75は、算出した差分の平滑化輝度に対する比率を算出し、算出した比率の分だけ合成画像の輝度を増大させるまたは減少させることにより補正画像を生成する。例えば、平均輝度が平滑化輝度よりも大きく、その差分が平滑化輝度の20%であった場合には、合成画像の輝度を2割減少させることにより補正画像を生成する。輝度補正部75は、生成した補正画像をメモリ72に記憶する。
【0035】
平均輝度と平滑化輝度との差分は、図3(c)に示されるように、合成画像の平均輝度の比較的小さな変動と相関している。つまり、差分が大きい合成画像G1〜G4は、Z方向に隣接する合成画像に対して明るさが比較的大きく異なり、この明るさの差が3次元画像において縞状の輝度むらを形成する。そこで、平均輝度と平滑化輝度との差分を用いて、合成画像の平均輝度が平滑化輝度となるように補正することにより、図2(b)に示されるように、明るさがZ方向に滑らかに変動する補正画像G1’〜G4’が得られる。
【0036】
3次元画像生成部76は、メモリ72に記憶された補正画像を取得し、取得した補正画像から3次元画像を生成する。このときに、3次元画像の合成に先立ち、個々の補正画像にはノイズ除去部77によってノイズ除去フィルタが適用される。3次元画像生成部76は、ノイズ除去された補正画像から生成した3次元画像を画像表示部8に出力する。
【0037】
ここで、ノイズ除去フィルタとしては、バイラテラルフィルタ等が用いられる。バイラテラルフィルタは、近傍画素との輝度の差が小さい画素にはより大きな重みを付し、近傍画素との輝度の差が大きい画素にはより小さな重みを付して像をぼかす画像処理フィルタである。このようなバイラテラルフィルタによれば、微小な輝度の変動であるノイズを効果的に除去しつつ、観察対象である蛍光領域の輪郭を鮮明に残すことができる。
【0038】
次に、このように構成された蛍光顕微鏡装置1の作用について図4のフローチャートを参照して説明する。
蛍光顕微鏡装置1は、まず、合成画像の生成に必要な複数の蛍光画像を複数の焦点位置において取得する。具体的には、レーザ光源2から射出されたレーザ光を走査光学ユニット42により標本A上において2次元的に走査しながら照射する。標本Aではレーザ光の焦点位置において蛍光物質が励起されて蛍光が発生し、該蛍光は対物レンズ46により集光された後、走査光学ユニット42を通過し、ダイクロイックミラー41により反射され、測定フィルタユニット51、レンズ52およびピンホール53を介して光検出器54により検出される。
【0039】
光検出器54によって検出された蛍光は光電変換された後に画像処理ユニット7の画像生成部71に入力される。画像生成部71は、光検出器54から入力された蛍光の強度情報と、制御ユニット6から入力された走査光学ユニット42によるレーザ光の走査位置とから標本Aの2次元の蛍光画像を生成する(ステップS2)。
【0040】
このときに、蛍光顕微鏡装置1は、制御ユニット6によってレーザ光の出力強度、光検出器54の露光時間・検出感度のうち少なくとも1つの露光条件を変化させながら(ステップS1)蛍光画像の取得を規定回数行う(ステップS3のいいえ)。これにより、同一の焦点位置において露光量の異なる規定数の蛍光画像が取得され、続いてこれらの蛍光画像から画像合成部73により合成画像が生成されメモリ72に記憶される(ステップS4)。
【0041】
蛍光顕微鏡装置1は、規定数の蛍光画像の取得と合成画像の生成が完了した後(ステップS3のはい)、制御ユニット6によってステージ3をZ方向に所定の距離だけ移動させ(ステップS6)、異なる焦点位置においてステップS1〜S4を繰り返す。予め設定された全ての焦点位置における蛍光画像の取得が完了した後(ステップS5のはい)、平滑化輝度計算部74は合成画像をメモリ72から読み出し、各合成画像の平滑化輝度を算出する(ステップS7)。
【0042】
続いて、輝度補正部75は、各合成画像の平均輝度と平滑化輝度との差分を算出し(ステップS8)、該差分に基づいて合成画像の輝度を補正することにより補正画像を生成する(ステップS9)。輝度補正部75によって生成された補正画像がメモリ72に記憶された後、3次元画像生成部76はメモリ72から補正画像を取得し、該補正画像にノイズ除去部77によってノイズ除去処理が施された後に(ステップS10)これらの補正画像から3次元画像を生成して画像表示部8に出力する(ステップS11)。
【0043】
このように、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置1によれば、3次元画像を構成する補正画像は、該補正画像が積層される方向であるZ方向に輝度の変化が平滑化されている。したがって、縞状の輝度むらがない3次元画像を生成することができるという利点がある。
【0044】
さらに、画像合成部73によって合成画像を生成する際に全ての合成画像のダイナミックレンジの幅を揃えることによっても輝度むらのない3次元画像を得ることができる。しかし、その場合には個々の合成画像においてはコントラストが最適化されなくなり、ダイナミックレンジを拡大することの利点が十分に活かされないこととなる。これに対して本実施形態によれば、平均輝度の比較的な大きな変動を保存しつつ比較的小さな変動を除去するように平均輝度を平滑化することにより、個々の合成画像のコントラストを最適に近い状態に維持したまま3次元画像において目立つ輝度むらを効果的に除去することができるという利点がある。
【0045】
なお、本実施形態においては、ステージ3と対物レンズ46との相対位置をZ軸方向にのみ移動させることとしたが、これに代えて、XY方向にも移動させることとしてもよい。この場合、ステージ3は、XYZ方向の3軸方向に移動可能に構成され、制御ユニット(撮像位置制御部)6はステージ3のXY方向の移動も制御する。
このように構成された本実施形態の変形例に係る蛍光顕微鏡装置の作用について図5のフローチャートを参照して説明する。
【0046】
本変形例に係る蛍光顕微鏡装置は、ステップS1〜S6までは上述した蛍光顕微鏡装置1と同様に作動する。1つのXY位置において全ての焦点位置の蛍光画像の取得が完了した後、制御ユニット6は、ステージ3をXY方向に所定の距離だけ移動させてステップS1〜S6を繰り返す。以降、制御ユニット6は、ステージ3のXY方向の移動とステップS1〜S6の動作とを繰り返し、設定された全てのXY位置において蛍光画像の取得が完了した後、ステップS7に移行する。ステップS7以降の蛍光顕微鏡装置の動作は上述した蛍光顕微鏡装置1と同様である。本変形例においては、3次元画像を生成するステップS11において、XY位置の異なる全ての合成画像から3次元画像を生成する。
このように、本変形例によれば、Z方向のみならずXY方向にも撮像範囲を拡大し、より広範囲における標本Aの3次元画像を得ることができる。
【0047】
本変形例においては、制御ユニット6が、XY位置毎に蛍光画像の露光条件を設定することが好ましい。
XY位置によって標本Aの分布や蛍光強度が相違するため、全てのXY位置において同一の露光条件で蛍光画像を取得した場合には合成画像の輝度のばらつきがXY方向にも生じることとなる。そこで、各XY位置において蛍光が略同等の明るさで撮像されるようにレーザ光源2の出力等を調節することにより、XY方向においても輝度のばらつきが少ない3次元画像を得ることができる。
【0048】
また、本実施形態においては、レーザ走査型顕微鏡の構成を例示したが、他の種類の顕微鏡にも適用することができる。
本実施形態の変形例に係る蛍光顕微鏡装置101は、図6に示されるように、落射型または透過型の蛍光顕微鏡(図示する例では落射型)であり、レーザ光源2に代えて水銀ランプのような白色ランプ(光源)21を備えている。
【0049】
この構成において、照射光学系401は、回転NDフィルタ47を備え、走査光学ユニット9は省略される。検出光学系501は、光検出器54に代えてCCDのような撮像素子55を備え、ミラー44に代えて白色ランプ22からの光を対物レンズ46の光軸に沿って反射し標本Aからの蛍光を透過するダイクロイックミラー56を備え、該ダイクロイックミラー56と撮像素子55との間に蛍光を結像する結像レンズ57を備える。
【0050】
回転NDフィルタ47は、複数の減光フィルタ(図示略)と、該減光フィルタを回転させる回転機構(図示略)とを有している。制御ユニット601により指定された減光フィルタを白色ランプ21の射出光軸上に配置するように回転機構が制御されることにより、標本Aに照射されるレーザ光の強度が調節されて蛍光の露光量が調節される。
【0051】
このような本変形例に係る蛍光顕微鏡装置101によれば、上述した蛍光顕微鏡装置1と同様に、Z方向の輝度むらが除去され、さらに蛍光のコントラストが良好な3次元画像を生成することができる。
本変形例においては、図7に示されるように、白色ランプ21に代えてLED(光源)22が備えられていてもよい。このように構成された蛍光顕微鏡装置102においては、制御ユニット602がLED22の出力を制御することにより蛍光画像の露光量を制御可能であるので、回転NDフィルタ47は省略されていてもよい。
【0052】
また、本実施形態においては、蛍光顕微鏡装置1の一部として構成された画像処理ユニット7について説明したが、画像処理ユニット7は画像処理装置として単体で構成されることもできる。この場合、画像処理装置700は、図8に示されるように、他の蛍光顕微鏡装置よって複数の焦点位置において異なる露光量で複数ずつ取得された蛍光画像が、各蛍光画像の焦点位置を示す情報と共に画像入力部78に入力されると、これらの蛍光画像は焦点位置を示す情報と対応付けてメモリ721に記憶する。メモリ721に記憶された蛍光画像は上述した画像処理ユニット7と同様に画像合成部73によって読み出され、合成画像が生成される。
【0053】
また、本実施形態においては、画像処理方法をハードウェアによって実現する構成について説明したが、コンピュータにより実行可能な画像処理プログラムによって実現することとしてもよい。この場合、コンピュータは、CPU、RAM等の主記憶装置、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備え、該記録媒体に上述した処理のうち少なくともステップS4,S7〜S9,S11に相当する処理を実現させるための画像処理プログラムが記録される。そして、CPUが記憶媒体に記録されている画像処理プログラムを読み出して、画像の加工・演算処理を実行することにより、上述の画像処理装置と同様の処理を実現させる。
【符号の説明】
【0054】
1,101,102 蛍光顕微鏡装置
2 レーザ光源(光源)
6,601 制御ユニット(焦点位置制御部、露光量制御部、撮像位置制御部)
8 画像表示部
21 白色ランプ(光源)
22 LED(光源)
46 対物レンズ(対物光学系)
54 光検出器(撮像部)
73 画像合成部
74 平滑化輝度計算部
75 輝度補正部
76 3次元画像生成部
700 画像処理装置
A 標本
G1〜G4 合成画像
G1’〜G4’ 補正画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本からの蛍光を前記標本の異なる深さ位置で撮像した蛍光画像であり、各深さ位置において異なる露光量で複数ずつ撮像された蛍光画像を各前記深さ位置毎に合成することにより合成画像を生成する画像合成部と、
該画像合成部によって生成された各合成画像から代表輝度を算出し、算出された代表輝度を前記深さ方向に平滑化することにより、各合成画像について平滑化輝度を算出する平滑化輝度計算部と、
該平滑化輝度計算部によって算出された平滑化輝度と前記代表輝度との差分に基づいて各前記合成画像の輝度を補正することにより補正画像を生成する輝度補正部と、
該輝度補正部によって生成された複数の補正画像から前記標本の3次元画像を生成する3次元画像生成部とを備える画像処理装置。
【請求項2】
標本に励起光を照射する光源と、
前記励起光の照射によって前記標本から発生した蛍光を集光する対物光学系と、
該対物光学系によって集光された蛍光を撮像する撮像部と、
前記対物光学系の焦点位置を前記対物光学系の光軸方向に移動させることにより前記標本を複数の焦点位置で前記撮像部に撮像させる焦点位置制御部と、
各焦点位置において前記蛍光を異なる露光量で複数回前記撮像部に撮像させる露光量制御部と、
前記焦点位置制御部および前記露光量制御部による制御に従って前記撮像部が取得した各焦点位置における複数の蛍光画像を合成することにより合成画像を生成する画像合成部と、
該画像合成部によって生成された各合成画像から代表輝度を算出し、算出された代表輝度を前記光軸方向に平滑化することにより、各合成画像について平滑化輝度を算出する平滑化輝度計算部と、
該平滑化輝度計算部によって算出された平滑化輝度と前記代表輝度との差分に基づいて各前記合成画像の輝度を補正することにより補正画像を生成する輝度補正部と、
該輝度補正部によって生成された複数の補正画像から前記標本の3次元画像を生成する3次元画像生成部とを備える蛍光顕微鏡装置。
【請求項3】
前記露光量制御部が、前記光源による前記励起光の強度ならびに前記撮像部による蛍光の検出感度および露光時間のうち少なくとも1つを調節することにより前記蛍光の露光量を制御する請求項2に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項4】
前記標本と前記対物光学系との前記光軸に交差する方向の相対位置を移動させることにより、各焦点位置において前記交差する方向に隣接する複数の位置でそれぞれ露光量の異なる複数の前記蛍光画像を前記撮像部に取得させる撮像位置制御部を備え、
前記露光量制御部が、前記交差する方向の位置毎に前記撮像部による前記蛍光の露光条件を設定する請求項2または請求項3に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項5】
標本からの蛍光を前記標本の異なる深さ位置で撮像した蛍光画像であり、各深さ位置において異なる露光量で複数ずつ撮像された蛍光画像を各前記深さ位置毎に合成することにより合成画像を生成する工程と、
生成された各合成画像から平均輝度を算出し、算出された平均輝度を前記深さ方向に平滑化することにより、各合成画像について平滑化輝度を算出する工程と、
算出された平滑化輝度と前記平均輝度との差分に基づいて各前記合成画像の輝度を補正することにより補正画像を生成する工程と、
生成された複数の補正画像から前記標本の3次元画像を生成する工程とをコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−65266(P2013−65266A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204903(P2011−204903)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】