画像処理装置およびその制御方法
【課題】入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内の画像データに変換する際に用いられる色域写像処理において、出力目的に応じた最大彩度点写像手法の設定を可能とする。
【解決手段】入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内の画像データに変換する画像処理装置であって、以下の機能を備える。すなわち、入力色域における任意色相断面上の最大彩度点を出力色域内の座標点に変換する最大彩度点写像手法を設定し(S301〜S303)、該設定された最大彩度点写像手法に基づいて色変換プロファイルを作成する(S304〜S306)。これにより、色変換後の画像において出力目的に応じた色再現が可能となる。
【解決手段】入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内の画像データに変換する画像処理装置であって、以下の機能を備える。すなわち、入力色域における任意色相断面上の最大彩度点を出力色域内の座標点に変換する最大彩度点写像手法を設定し(S301〜S303)、該設定された最大彩度点写像手法に基づいて色変換プロファイルを作成する(S304〜S306)。これにより、色変換後の画像において出力目的に応じた色再現が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置およびその制御方法に関し、特に、入力色域と出力色域間における色変換処理を行う画像処理装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、入力装置における入力色域上の画像データを、出力装置における出力色域内において再現する場合、入力色域と出力色域の大きさが一致していることは少ない。例えば、一般にモニタやデジタルカメラの再現色空間として用いられる標準色空間のsRGB色空間、もしくは拡張色空間のAdobeRGB等の入力色域に対して、主な出力装置であるプリンタの出力色域は小さい場合が多い。よって、入力色域内の色データが出力色域内の色データとして再現可能となるように、色域圧縮(または拡張)を伴う写像処理が行われている。
【0003】
この写像処理を実現する具体的な手法は種々あるが、ユーザが所望する画像品質を得るために、画像再現に応じた写像手法を選択可能とする画像処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、一般の写像処理においては、色相補正、明度圧縮処理、および彩度圧縮処理が行われている。特に、プライマリーカラーなどの重要色を含む入力色域の色相における最大彩度色は、より高精度な色再現性が求められている。したがって、入力最大彩度色についての写像色を決定する最大彩度点写像処理が、入力色域外郭を出力色域外郭上に写像する処理とは独立に実施される場合があった。
【0005】
入力色域に対して出力色域は小さいことが多い。このような出力色域に対して最大彩度点写像を行った場合、写像された色は、最大彩度入力色に比べて彩度が低下し、明度が変化してしまう。よって、写像後に再現される色が入力色と異なってしまう。
【0006】
最大彩度入力色と出力色域における再現色の色みを近づけるための手法として、以下のような写像方法が知られている。まず、出力色域の対応写像色相上の最大彩度点を写像点として決定する写像方法がある。また、出力色域における入力点との色差最小点もしくは写像色相断面における入力点との明度彩度距離最小点を写像点とする手法がある。ここで、前者の手法においては入力色の彩度を保存することを優先しており、また後者の手法においては均等色空間上における色差を最小にすることで入力色と出力色の色みを合わせようとしている。
【0007】
しかしながら、実際に上記両者の手法を用いて実際に入力色域から出力色域への写像を行うと、前者については彩度の再現性は確かに向上するが、特にプリンタの出力色域においては最大彩度の明度が入力色域の最大彩度点よりも大きく低下している場合が多い。したがって、明度再現の低下により色再現については知覚的に一致しない。さらに後者についても、彩度もしくは明度の違いにより色再現については知覚的に一致しない。
【0008】
そこで、入力色域における最大彩度点について、出力色域の最大彩度点付近の領域上に写像を行うことによって、色再現性を一致させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005-318491号公報
【特許文献2】特開2004-32140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載された、ユーザが写像手法を選択する方法によれば、詳細な設定が予めなされた全体的な写像処理を選択していた。すなわち、色相、明度、彩度再現の傾向や、色域外写像、色域外郭写像、色域内部写像処理について、再現画像によって特定の写像手法を用いるように予め決定された、全体的な写像処理についての選択を行っていた。したがって、入力色域や出力色域の形状や、重要色(プライマリカラー)や階調再現のような部分的に所望され優先される色再現性等に応じて、写像手法を細かく設定することはできなかった。
【0010】
また、上記特許文献2に記載された、最大彩度点写像処理によれば、入力色域における最大彩度点を出力色域の最大彩度点付近の領域上に写像を行っているが、写像点を写像する領域を示すのみであった。すなわち、写像点の明度および彩度座標に関する決定手法について、彩度再現を優先する写像、あるいは最大彩度点へ写像する手法を用いているが、特に前者の手法では、領域内への写像点決定手法については具体的に記述されていない。したがって、最大彩度点の写像手法については全くの任意となり、異なるデバイス間における色再現性が知覚的に一致するように、写像点を一意に決定することはできなかった。
【0011】
本発明は上述した問題を解決するためになされ、入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内に変換する際に用いられる色域写像処理において、以下の機能を有する画像処理装置およびその制御方法を提供することを目的とする。すなわち、出力目的に応じて最大彩度点写像手法の設定を可能とすることにより、色域写像処理において出力目的に応じた適切な色再現を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決し、目的を達成するための一手段として、本発明は以下の構成を備える。
【0013】
すなわち、入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内の画像データに変換する画像処理装置であって、入力色域における任意色相断面上の最大彩度点を出力色域内の座標点に変換する、最大彩度点写像手法を設定する写像手法設定手段と、前記写像手法設定手段で設定された最大彩度点写像手法に基づいて色変換プロファイルを作成する色変換処理手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
例えば、前記写像手法設定手段は、入力色域における任意色相断面上の最大彩度点について、該最大彩度点に対する等明度線上に、出力色域における写像色相の色域範囲に基づいて仮想入力最大彩度点を設定する仮想点設定手段と、写像色相上における前記仮想入力最大彩度点について、出力色域に対する明度彩度距離最小点を決定する最小距離点設定手段と、前記最小距離点決定手段によって決定された前記明度彩度距離最小点を、前記最大彩度点の写像点として設定する写像点設定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成からなる本発明によれば、入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内に変換する際に用いられる色域写像処理において、以下のような効果が得られる。すなわち、出力目的に応じて最大彩度点写像手法の設定を可能とすることにより、色域写像処理において出力目的に応じた適切な色再現が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0017】
<第1実施形態>
●装置構成
図1は、本実施形態に係る画像処理装置の概要構成を示すブロック図である。本実施形態の画像処理装置は、ホストコンピュータ上においてプログラムが実行されることによって実現される。同図において、CPU101は、ROM102に記憶されている情報データや各種プログラムに従って、RAM103、操作部104、画像処理部105、モニタ106、入力デバイス107、出力デバイス108の各種制御を行う。なお、ROM102に記憶されている各種プログラムとしては、制御プログラムやOS(オペレーティングシステム)、アプリケーションプログラム(以下、アプリケーション)、カラーマッチング処理モジュール、デバイスドライバ等がある。
【0018】
入力デバイス107は、CCDセンサを含むイメージスキャナ等の画像読取装置や測色装置によって実現され、プロファイルの作成対象となる任意の色空間情報データを、画像処理装置(ホストコンピュータ)に入力する。また出力デバイス108は、インクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、ドットプリンタ等によって実現され、画像を出力する。
【0019】
RAM103は、各種制御プログラムや操作部104から入力されるデータの作業領域及び一時待避領域として利用される。操作部104は、ユーザ操作に基づいて出力デバイス108の設定やデータの入力を行う。画像処理部105は、本実施形態における任意色相上の最大彩度入力色点に対する写像処理や、プロファイル作成処理を含む画像処理を行う。モニタ106は、画像処理部105の処理結果や操作部104で入力されたデータ等を表示する。
【0020】
本実施形態における最も特徴的な構成は画像処理部105である。画像処理部105においては、入力画像データを出力色空間内再現色に変換する写像処理が実行される。詳細には、任意の色相上において最大彩度を有する入力色点(カスプ)に対し、好ましい色再現性が得られるようなカスプ写像処理方法を用いて写像処理を行う。本実施形態では、一般にプライマリカラーと呼ばれる、入力色域上の赤(R)、青(B)、緑(G)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色相におけるカスプを使用する。
【0021】
図2に、画像処理部105の詳細構成を示す。同図において、201は写像パラメータ作成部(★作成装置→作成部としました。他構成についても同様)、202は色変換プロファイル作成部、204は入力色域記憶部、205はプリンタ色域記憶部である。
【0022】
入力色域記憶部204は、モニタ106や入力デバイス107等の再現色域に関する情報である入力色域情報を記憶している。またプリンタ色域記憶部205は、出力デバイス108としてのプリンタの色再現域情報を記憶している。
【0023】
写像パラメータ作成部201は、入力色域内の色を出力色域の好ましい再現色へ変換する際に参照される色変換パラメータ(写像パラメータ)を作成する。ここで決定された写像パラメータは、後述する色域写像部210での写像処理において用いられる。
【0024】
写像パラメータ作成部201は、カスプ写像手法格納部206、カスプ写像手法設定部207、カスプ写像点設定部208、カスプ写像点格納部209、により構成される。カスプ写像手法設定部207には、ユーザが選択した写像手法を示す信号が端子203を介して入力される。カスプ写像手法設定部207は、予めカスプ写像手法格納部206に格納されている複数のカスプ写像手法から、この信号に応じた写像手法を実際に利用するカスプ写像手法として設定する。カスプ写像点設定部208は、入力色域記憶部204およびプリンタ色域記憶部205を参照して、設定されたカスプ写像手法によるカスプ写像点を獲得し、該写像点をカスプ写像点格納部209に格納する。
【0025】
色変換プロファイル作成部202は写像処理を行う。まず色域写像部210において、入力色域記憶部204内の入力色空間情報と、プリンタ色域記憶部205内のプリンタ色再現域情報、およびカスプ写像点格納部209内のカスプ写像点データに基づき、入力色空間信号の写像処理を行う。プロファイル作成部211は、色域写像部210における写像処理結果をうけて、入力データからプリンタ出力要素データへの変換用プロファイルを作成し、該プロファイルをプロファイル格納部212へ格納する。該格納されたプロファイルは、端子213を介して出力デバイス108へ渡され、出力デバイス108において該プロファイルによる色補正処理が行われる。
【0026】
●プロファイル作成処理
以下、画像処理部105における、入力カラー画像信号を出力機器における画像信号に変換するプロファイルの作成処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0027】
ステップS301において、入力色域記憶部204内の入力色域情報と、プリンタ色域記憶部205内のプリンタ色域情報を獲得する。なお、本実施形態における入力色域情報とプリンタ色域情報としては、CIECAM02によるJCh色空間上の色点データに変換された情報を用いる。また、写像処理もJCh色空間上で行うものとする。もちろん、JCh色空間以外の他の色空間上で表記されたデータを用いることも可能である。
【0028】
次にステップS302において、ユーザは入力色域とプリンタ色域に対して所望の色再現効果を実現するカスプ写像手法を、予め提示された複数手法の中から選択する。ここで提示されるカスプ写像手法は、一般的な2つの手法と、本実施形態における最適な色再現性を提供するカスプ写像手法、の計3つであるとし、この3つのカスプ写像手法が、カスプ写像手法格納部206に予め格納されている。もちろん、この3つの手法以外の手法を使用することも可能である。なお、各手法の詳細については後述する。
【0029】
ここで図10に、カスプ写像手法格納部206におけるカスプ写像手法の格納例を示す。同図に示すように写像手法1002〜1004は、それぞれ、インデックス1005、写像手法ラベル1006、写像アルゴリズム1007の各項目によって構成されている。
【0030】
ユーザは、写像手法ラベル1006に格納された写像手法名称に基づき、写像手法の選択を行う。ユーザによって選択された写像手法に対応するインデックス1005が端子203を介してカスプ写像手法設定部207に通知される。
【0031】
次にステップS303において、カスプ写像手法設定部207は、ユーザによって選択された写像手法を、カスプ写像点設定部208に設定する。すなわち、ユーザによって選択されたインデックス1005に対応する写像アルゴリズム1007を、カスプ写像点設定部208で使用されるカスプ写像アルゴリズムとして設定する。
【0032】
ここで、カスプ写像手法格納部206内の写像アルゴリズム1007として、カスプ写像点設定部208で対応可能とする写像手法のいずれかを示す指定情報を予め格納しておくような構成としても良い。この場合、カスプ写像手法設定部207が該指定情報をカスプ写像点設定部208に渡すことで、対応する写像手法が有効となる。
【0033】
次にステップS304では色域写像部210において、入力色域からプリンタ色域への写像処理が実施される。このとき、入力色空間上のカスプ対応入力点(ある色相における入力最大彩度点)の写像点は、カスプ写像点設定部208で設定されたカスプ写像手法を用いて求められる。そして、カスプ対応入力点以外の入力点については、カスプの写像点に基づき、出力色域内にマップする。
【0034】
次にステップ305では、プロファイル作成部211において、色域写像部210で求められた写像結果を用いて出力プロファイルを作成する。そしてステップS306において、作成された出力プロファイルをプロファイル格納部212に格納する。
【0035】
●カスプ写像手法(概要)
ここで、上述したステップS302において選択可能となるカスプ写像手法について説明する。本実施形態で利用可能なカスプ写像手法としては、代表的な2つの手法と、本実施形態における知覚的印象が一致する色再現性を実現するようなカスプ写像手法、の計3つがある。以下、これらをそれぞれ、第1のカスプ写像手法、第2のカスプ写像手法、および第3のカスプ写像手法、として説明する。
【0036】
まず第1のカスプ写像手法について、その概要を図6に示す。第1のカスプ写像手法は、入力色域外郭601における任意の色相上の最大彩度色点(カスプ)603を、出力色域外郭602上の任意色相上の最大彩度色点(カスプ)604に写像する。第1のカスプ写像手法によれば彩度が維持されるため、再現画像において鮮やかな色再現が必要とされる場合に適している。例えば、CG画像、チャート、グラフのようなプレゼンテーション資料の画像再現に適している。
【0037】
次に、第2のカスプ写像手法について、その概要を図7に示す。第2のカスプ写像手法は、入力色域外郭601における任意の色相上の最大彩度色点(カスプ)603を、出力色域外郭602における任意の色相上の外郭において、同一色相平面において距離が最短である色点701に写像する。本実施形態においては、入力色相における出力再現色相は別途制御されているが、この第2のカスプ写像手法によれば、カスプが、同一色相面において色差最小の色点に写像される。一般に均等色空間上におる色差最小点は入力色点と最も色味が近い色である。第2のカスプ写像手法は、一般に印象の一致する色再現を実現することができる。
【0038】
よって第2のカスプ写像手法は、再現画像において忠実もしくは印象の一致する色再現が必要とされる場合に適している。例えば、イメージ画像の忠実な再現や、印刷におけるプルーフのような画像再現に用いられる。しかしながら、第2のカスプ写像手法では、入力色域と出力色域の大きさが大きく異なる場合や、色域形状によっては、明度が大きく変化した色点に写像される場合がある。このような場合、印象の一致の度合いが大きく劣化した色再現になることもある。
【0039】
最後に、本実施形態の特徴である第3のカスプ写像手法について説明する。第3のカスプ写像手法は、写像前後における色再現の印象が、第2のカスプ写像手法よりも知覚的に一致するように、精度を向上した色再現を実現することを特徴とする。図8に、第3のカスプ写像手法の概要を示す。同図には、入力色域外郭601における任意の色相上の最大彩度点(カスプ)603、出力色域上の任意の色相の外郭602がそれぞれ示されている。
【0040】
ここで、発明者が均等色空間上の入力色空間において、ある高彩度色点と見た目の印象が一致する低彩度側の色点との対応について実験を行った結果、入力色点に対し、その等明度線上に沿って彩度が低下した色点が得られることがほとんどであった。第3のカスプ写像手法は、入力色域外郭601におけるカスプ603と等明度な線801(印象一致線)を設定する。また、出力色域外郭602のカスプと等彩度な線802(最大彩度線)を設定する。そして、印象一致線801と最大彩度線802との交点である色点803(仮想入力カスプ色点)を決定する。
【0041】
ここで、仮想入力カスプ色点803は入力色相上の色点であるが、写像色相が入力色相と異なる場合には、仮想入力カスプ色点803の色相を写像色相に変換した色点が、最終的に仮想入力カスプ色点803として設定されることになる。
【0042】
そして、仮想入力カスプ色点803に対し、出力色域上の写像色相上の外郭602において、色空間上の距離が最短である色点804(印象一致写像色点)を決定する。
【0043】
このように、第3のカスプ写像手法においては、出力色域のカスプに基づき印象一致線801上に仮想入力カスプ色点803を設定する。したがって第3のカスプ写像手法によれば、入力色域と出力色域の大きさや形状が大きく異なる場合であっても、入力色域の最大彩度色点(カスプ)603を、明度再現の変化が小さい色点とし、知覚的な印象の一致が高い写像点が得られる。これは、発明者による実験によって確認されている。よって、入力色域外郭601における任意の色相上の最大彩度点(カスプ)603の写像点を、印象一致写像色点804とすることによって、より印象の一致度が高い色再現を実現することができる。
【0044】
●第3のカスプ写像手法
ここで図4に、本実施形態における第3のカスプ写像手法を実現する、カスプ写像点設定部208内における構成を示し、詳細に説明する。
【0045】
図4において、入力色域データ格納部401には、入力色域記憶部204に格納された入力色域情報から求められた、JCh色空間における入力色域データが格納される。また出力色域データ格納部402には、プリンタ色域記憶部205に格納されたプリンタ色域情報から求められた、JCh色空間における出力色域データが格納される。入力色点格納部403には、色域写像部210より渡された入力色域における任意色相上の最大彩度色点座標が格納される。写像色相設定部404は、入力最大彩度色点に対して行う色相変換条件を設定する。色相断面設定部405は、出力色域データ格納部402に格納された出力色域データから、色相変換された入力最大彩度色点の色相における出力外郭データを算出する。
【0046】
出力最大彩度色点設定部406は、色相断面設定部405で算出された出力色域外郭データにおける最大彩度色点を求める。印象一致線設定部408は、色相変換された入力最大彩度色点座標に基づいて、色相変換された入力最大彩度色点と等明度である印象一致線を設定する。
【0047】
仮想入力色点設定部407は、印象一致線設定部408で設定された印象一致線と、出力最大彩度色点設定部406で設定された出力色域外郭データにおける最大彩度色点に基づいて、仮想入力色点を設定する。すなわち、仮想入力色点として、出力色域外郭データにおける最大彩度色点と等彩度を有する、印象一致線上の座標点を求める。
【0048】
外郭最小距離色点獲得部409は、色相断面設定部405で得られた出力色域外郭上において、仮想入力色点と明度彩度距離が最短になる色点を算出する。外郭最小距離色点獲得部409で算出された色点は、入力最大彩度色点に対する写像点として、出力写像点格納部410に格納される。
【0049】
次に、本実施形態における第3のカスプ写像手法による写像処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0050】
まずステップS501において、入力色域データおよび出力色域データを獲得する。次にステップS502において、入力色域データにおける任意色相上の最大彩度色点(カスプ)の入力色座標値(J1,Ca1,Cb1)を取得する。そしてステップS503において、写像色相設定部404で設定される色相変換条件に基づき、入力色座標値(J1,Ca1,Cb1)の色相に対応する写像色相hを設定する。
【0051】
ここで写像色相hの獲得処理について、図11を用いて詳細に説明する。図11は、本実施形態において予め用意されている色相変換データメモリの一例である。色相変換データメモリ1101は、入力色域のカスプ入力色相に対する、出力色域データへの写像色相の値の対応関係を予め記述したテーブルであり、各テーブルデータはインデックス1104、入力色相1105、出力色相1106の各項目から成っている。よって、入力色相値より、入力色相1105として格納された色相値を参照し、これに対応する出力色相1106として格納されている出力色相値を獲得する。なお、入力色相が各テーブルデータとして入力色相1105に格納された値に一致しない(中間値である)場合には、入力色相1105の値が該入力色相を挟むような2つのテーブルデータを読み出し、該2つのテーブルデータに基づいて写像色相hを算出する。すなわち、線形補間等による出力色相値間の補間によって色相値を算出し、これを写像色相hとして獲得する。
【0052】
次に、ステップS504において、出力色域データから、写像色相hにおける出力色域外郭データを抽出する。そして、出力色域外郭上における最大彩度座標点を決定し、最大彩度値Cmaxを獲得する。
【0053】
ステップS505において、入力色座標値のJ1に基づき印象一致線を設定する。印象一致線とは上述したように、写像色相hにおけるJ1を有する等明度線である。
【0054】
ステップS506において、ステップS505で設定された印象一致線とステップS504で獲得された出力色域外郭における最大彩度座標Cmaxとに基づいて、仮想入力点の座標値を求める。すなわち、写像色相h、印象一致線の明度J1および最大彩度座標Cmaxを有する座標値を求める。
【0055】
そしてステップS507において、仮想入力点に対して、ステップS504で獲得された出力色域外郭上において明度彩度距離が最短である座標点(J2,Ca2,Cb2)を求める。そしてステップS509において、ステップS507で獲得された明度彩度距離最短座標点(J2,Ca2,Cb2)を、入力色座標値(J1,Ca1,Cb1)の写像点として格納する。
【0056】
以上説明した処理によって、本実施形態における第3のカスプ写像手法による高精度な印象一致写像点が獲得される。
【0057】
以上説明したように本実施形態によれば、入力色域における任意色相上の最大彩度点(カスプ)を出力色域内に写像する手法を、画像再現の目的に応じて選択することが可能となる。特に、知覚的印象が一致するようなカスプ写像手法を、煩雑なパラメータ設定やユーザによる補正等を行うことなく実現し、選択肢として提供することができる。このように選択された写像手法を用いて色補正プロファイルが作成されることによって、入力画像データの出力画像について、ユーザが所望する好ましい色再現が実現される。
【0058】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態における画像処理装置の構成は図1と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
第2実施形態では画像処理部105において、ユーザが写像手法再現精度を確認することが可能なU/Iを有することを特徴とする。また、色相毎に上述した第1実施形態の画像処理部105におけるカスプ写像手法の選択、または色相ごとの写像手法の設定を行って、ユーザが所望する色再現精度色補正プロファイルの作成が可能なU/Iを有することを特徴とする。
【0060】
●カスプ写像処理手法初期設定U/I
図9は、画像処理部105における色補正プロファイルの作成にあたり、第2実施形態においてカスプ写像手法の選択をユーザが指定するU/I例を示す図である。なお、図9に示すU/Iは、不図示のメインメニューにおいてカスプ初期設定を示すボタンがユーザによって選択されることにより表示される。
【0061】
U/I901は、複数用意されたカスプ写像手法から、写像処理に用いる一つのカスプ写像手法を決定するカスプ写像処理手法初期設定U/Iである。ユーザは該U/I901において、入力色域データ設定部902に入力色空間データを格納したファイルを指定し、出力色域データ設定部903に出力色空間データを格納したファイルを指定する。そして更に、色相補正データ設定部904に入力色域上の色相を出力色域上の再現色相に色変換する際の色相変換条件を格納したファイルを指定する。ここで、色相変換条件を格納したファイルの一例を図11に示す。これらのファイル名の指定は、各参照ボタン907,908,909を用いて、画像処理部105に入力可能な各ファイルの格納場所を参照しながら行うことができる。
【0062】
カスプ写像手法設定部905では、ユーザがダウンリストボタン910を操作することによって、設定可能なカスプ写像手法リストが表示され、ユーザはマウス等を用いて該手法リストから所望するカスプ写像処理を選択し、設定する。ここで設定されたカスプ写像処理名称が、カスプ写像手法設定部905に表示される。カスプ写像手法設定部905において設定可能なカスプ写像処理としては、図10に示すような形式で、カスプ写像手法格納部206に格納されている。色補正プロファイル出力設定部906では、ユーザが参照ボタン911を用いて色補正プロファイルの格納場所を参照し、出力する色補正プロファイルを設定する。
【0063】
上記各設定部に対する設定が終了すると、ユーザが色補正プロファイル作成ボタン912を押下することによって、カスプ写像処理を含む色域写像処理が開始され、色補正プロファイルが作成される。
【0064】
●カスプ写像手法詳細設定U/I
図12は、図9に示すカスプ写像処理手法初期設定U/Iによって各種条件が設定されたカスプ写像処理を用いた色域写像結果を確認するためのU/I例を示す図である。
【0065】
図12に1201で示すカスプ写像手法詳細設定U/Iは、座標データによる確認を行うための表示部と、さらに色相毎の詳細なカスプ写像処理設定を可能とする詳細設定部の2つの構成を有する。
【0066】
まず、カスプ写像手法詳細設定U/I1201における確認表示について説明する。図9に示すカスプ写像処理手法初期設定U/I901より入力された入力色域データと出力色域データについて、同じく該U/I901で選択されたカスプ写像手法を標準のカスプ写像手法として用いた写像処理を行い、該処理結果を初期値として表示する。写像結果の確認表示は、具体的には以下のように行われる。まず、色度平面表示部1205に色度平面への投影結果を表示し、明度彩度表示部1206には、色相設定部1202で設定された入力色相上の入力色域最大彩度点を入力点とする写像結果を、入力色域と写像色相における出力色域の明度彩度断面上に表示する。色相設定部1202の設定値は、色相設定バー1203で示される色相について色相ポインタ1204を移動させることによっても、変更することができる。
【0067】
色度平面表示部1205における結果表示の詳細について、図13を用いて説明する。図13によれば色度平面表示部1205には、所定の色度平面上において、入力色域データ1301、出力色域データ1302がそれぞれ示されている。
【0068】
入力最大彩度色点1304の複数のカスプ写像手法による写像結果が、写像点A1306および写像点B1307として表示される。これにより、カスプ写像処理手法初期設定U/I901で設定されたカスプ写像処理手法による写像点A1306を、ユーザが確認することができる。さらに、同時に、他のカスプ写像手法による写像結果(写像点B1307)についても確認することができるとともに、複数のカスプ写像手法の結果を比較することができる。
【0069】
次に、明度彩度表示部1206における結果表示の詳細について、図14を用いて説明する。図14によれば明度彩度表示部1206には、色相設定部1202によって設定された色相におkる明度彩度平面上に、入力色域外郭1402と出力色域外郭1404が示されている。入力色相表示部1401は、色相設定部1202によって設定された色相を示す。1403は、設定されたし競うの入力色域外郭1402における入力最大彩度色点である、入力最大彩度色点1403の複数のカスプ写像手法による写像結果が、写像点A1405および写像点B1407として表示される。
【0070】
以上説明した色度平面表示部1205、明度彩度表示部1206によって、ユーザは写像結果の入力色域または出力色域との関係について、座標上でその位置を確認することが可能である。また、任意の指定された入力色相についての上述した第1実施形態による写像処理結果(初期値)を、他の手法による写像結果と比較することも可能である。そして、ユーザが該比較の結果、異なるカスプ写像処理による写像処理へ変更すべきと判断した場合には、任意入力色相におけるカスプ写像手法を変更することも可能である。
【0071】
次に、色相毎の詳細設定に用いられる座標値表示部1207について説明する。座標値表示部1207への表示に先立って、まず、ユーザは色相設定部1202によって確認したい入力色域上の色相の設定を行う。該色相の設定がなされると、入力最大彩度色点座標表示部1208に、設定された色相の入力彩度彩度色点の明度(J)、色度(Ca、Cb)、彩度(Chroma)、色相(Hue)が表示される。そして、写像結果である写像点Aおよび写像点Bの各々について、写像手法、明度、色度、彩度、色相が1209および1210に表示される。
【0072】
また、ユーザがダウンリストボタン1213,1216を操作することによって、提示されるカスプ写像手法リストの中から、写像結果座標表示部1209,1210の写像点の写像手法を個別に選択し、設定することが可能である。
【0073】
よって、第2実施形態において写像結果の比較を行うためには、初期値として設定されたカスプ写像手法による写像結果を示す写像結果座標表示部1209に対し、他の写像結果座標表示部1210に比較したいカスプ写像手法を選択、設定すれば良い。すなわち、ダウンリストボタン1216を操作して、初期値として設定されたカスプ写像手法に対し、比較対象となるカスプ写像手法を選択、設定する。その結果、写像結果座標表示部1210に設定されたカスプ写像手法による写像結果の写像点座標情報が表示されると同時に、色度平面表示部1205、明度彩度表示部1206に第2の写像点B(1307,1406)が表示される。
【0074】
また、ユーザが色相設定部1202によって入力色域上の色相の設定を変更することによって、入力最大彩度色点座標表示部1208、写像結果座標表示部1209,1210に表示される座標点情報が連動して変更される。
【0075】
また、カスプ写像処理手法初期設定U/I901のカスプ写像手法設定部905において写像手法を切り替えた場合にも、カスプ写像手法詳細設定U/I1201が連動して変更される。
【0076】
以上の操作によって、ユーザは、異なるカスプ写像手法による写像結果の違いについて確認を行うことが可能となる。
【0077】
ここで、ユーザがカスプ写像手法を比較した結果、初期値に設定したカスプ写像手法と異なるカスプ写像手法への変更を所望する場合、カスプ写像手法詳細設定U/I1201において以下のような操作を行う。
【0078】
まず、初期値として設定されているカスプ写像手法が、標準設定手法表示部1222に表示されている。ユーザは、色相設定部1202または色相ポインタ1204によって、確認したい入力色域上の色相の設定を行う。そして、設定色相における写像結果の比較を行うため、写像結果座標表示部1209と写像結果座標表示部1210に、カスプ写像結果についての写像点座標情報を表示させておく。すなわち、写像結果座標表示部1209には初期値として設定されたカスプ写像手法による写像点座標情報が表示され、写像結果座標表示部1210には比較対象のカスプ写像手法が設定されたカスプ写像手法による写像点座標情報が表示される。
【0079】
記録選択表示部1211,1214は、写像結果座標表示部1209,1210にそれぞれ対応しており、ユーザは記録選択表示部1211,1214のいずれかにおいて、入力カスプ座標点として設定したい写像手法の写像結果にチェックを付す。このチェックが付されたことにより初期値からの変更対象となる写像手法が、変更写像手法表示部1223に表示される。
【0080】
さらに、色相設定値に対して初期値より変更する写像手法の効果を与える範囲について、色相設定値からの効果範囲の上限値および下限値をそれぞれ、効果範囲設定表示部1224および効果範囲設定表示部1225に入力する。
【0081】
また、混合手法設定部1226,1227において、上限または下限効果範囲内において、初期値の写像手法による写像結果から設定色相にかけて、変更写像手法による写像結果を滑らかに変化させるための2つの写像手法結果を混合する手法を設定する。第2実施形態においては例えば、線形補間、非線形補間等の手法を選択できるようにする。
【0082】
以上説明した各設定を終了すると、ユーザによる記録ボタン1228の押下により、設定色相におけるカスプ写像手法の変更について、格納ファイル設定表示部1230に表示されるカスプ写像手法変更ファイルに、カスプ写像手法の変更内容が登録される。また、削除ボタン1229を操作することによって、設定色相におけるカスプ写像手法の変更内容が削除される。また参照ボタン1231によって、格納ファイル設定表示部1230にファイルを読み込むことも可能である。
【0083】
ここで図15に、カスプ写像手法変更ファイルにおけるカスプ写像手法の変更内容の記録例を示す。同図において、例えばインデックス1504で指定される色相別のカスプ写像手法1502,1503がそれぞれ、変更されたカスプ写像手法である。これらカスプ写像手法1502,1503にはそれぞれ、変更設定色相値が設定入力色相1505として格納され、また変更写像手法がぞれぞれ以下のように設定される。すなわち、変更写像手法に対応する写像手法インデックスが変更写像手法インデックス1506として格納される。また、カスプ写像手法詳細設定U/I1201で設定された効果範囲の上限および下限値がそれぞれ、効果範囲上限値1507,効果範囲下限値1509に設定される。さらに、上限効果範囲における混合手法が補間パラメータ1508に、下限効果範囲における混合手法が補間パラメータ1510に、それぞれ設定される。
【0084】
ここで、カスプ写像手法変更ファイルにおいて、図15のように入力色相がランダムに選択されて写像手法の変更が登録された場合に、これを並び替えるようにしても良い。すなわち、インデックス1504と設定入力色相1505に基づき、最終的に入力色相が所定順に並ぶように、格納データを移動するような構成であっても良い。また、設定色相と効果範囲の設定によっては既に登録された変更写像手法の範囲に重なる場合があるが、そのような場合には適宜警告等を表示して、ユーザによる修正を促すような構成であってもよい。
【0085】
●画像再現比較U/I
第2実施形態においては、以上のU/Iを用いてユーザが設定したカスプ写像手法によって、実際の画像再現結果を推定して表示し、ユーザが該補正結果を参照して補正値を決定することができる。図16に、この画像再現比較U/I例を示す。
【0086】
図16に1601で示す画像再現比較U/Iにおいてはまず、入力画像設定部1602に対し、参照ボタン1603を用いて入力画像の格納場所を参照して入力画像データを設定する。入力画像表示部1604では、入力画像設定部1602で入力された画像のモニタ表示を行う。そして処理画像表示部1605,1606では、入力画像を出力装置で出力媒体上に出力した際の画像についてのシミュレーション画像を、それぞれ表示する。
【0087】
処理画像表示部1605,1606における選択ボタン1608〜1611,1612〜1615は、ユーザがそのいずれかを選択することによって、複数のカスプ写像手法のうち、それぞれが対応する写像処理による再現画像が表示される。これにより、ユーザは複数のカスプ写像手法による処理結果について、実際の画像を観察して、比較し確認することができる。例えば、選択ボタン1608〜1610,1612〜1614に対応するカスプ写像手法は、上述した第1実施形態において図10に示されるようにカスプ写像手法格納部206内に格納された、予め用意されたアルゴリズムを示す。さらに、選択ボタン1611,1615に対応するカスタムなカスプ写像手法は、カスプ写像手法詳細設定U/I1201でユーザが色相毎にカスプ写像手法を選択することによってカスタマイズされたものである。
【0088】
以上の選択ボタンについて選択し、補正画像表示ボタン1607を動作させることによって、処理画像表示部1605と1606に再現結果が表示される。また、テストプリントボタン1616,1617を動作させることによって、設定したカスプ写像手法による写像処理を用いて、画像処理部105内で色補正プロファイルのプロトタイプを作成し、指定されたテスト画像について出力装置による出力がなされる。これによりユーザは、実際の写像処理による画像再現出力を確認することができる。
【0089】
以上説明したように第2実施形態によれば、ユーザによるカスプ写像手法の選択と設定が可能となると共に、異なるカスプ写像手法による写像結果について比較検討を行うことが可能となる。さらに、所望の入力色相においては、異なるカスプ写像手法の切り替えを行うことが可能になる。また、実際の入力画像に対して、色域写像処理結果による画像再現をカスプ写像手法毎に確認することができる。このように第2実施形態においては、U/Iを用いたカスプ写像手法の切替・変更を行って画像処理装置における色補正プロファイルを作成することにより、ユーザの意図する画像色再現を実現することができる。
【0090】
<他の実施形態>
以上、実施形態例を詳述したが、本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体(記録媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0091】
尚本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。なお、この場合のプログラムとは、実施形態において図に示したフローチャートに対応したプログラムである。
【0092】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0093】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。
【0094】
プログラムを供給するための記録媒体としては、以下に示す媒体がある。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD-ROM,DVD-R)などである。
【0095】
プログラムの供給方法としては、以下に示す方法も可能である。すなわち、クライアントコンピュータのブラウザからインターネットのホームページに接続し、そこから本発明のコンピュータプログラムそのもの(又は圧縮され自動インストール機能を含むファイル)をハードディスク等の記録媒体にダウンロードする。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0096】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD-ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせることも可能である。すなわち該ユーザは、その鍵情報を使用することによって暗号化されたプログラムを実行し、コンピュータにインストールさせることができる。
【0097】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0098】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、実行されることによっても、前述した実施形態の機能が実現される。すなわち、該プログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】第1実施形態における画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態における画像処理部の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態における色変換プロファイルの作成処理を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態において第3のカスプ写像手法を実現するカスプ写像点設定部の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】第1実施形態における第3のカスプ写像手法による写像処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態における第1の代表的カスプ写像手法の概要を示す図である。
【図7】第1実施形態における第2の代表的カスプ写像手法の概要を示す図である。
【図8】第1実施形態における第3のカスプ写像手法の概要を示す図である。
【図9】第2実施形態におけるカスプ写像手法選択用のU/I例を示す図である。
【図10】第1実施形態におけるカスプ写像手法の格納例を示す図である。
【図11】第1実施形態における色相変換データメモリの一例を示す図である。
【図12】第2実施形態において選択されたカスプ写像処理を用いた色域写像結果確認用のU/I例を示す図である。
【図13】第2実施形態における写像結果の色度平面表示例を示す図である。
【図14】第2実施形態における写像結果の明度彩度表示例を示す図である。
【図15】第2実施形態におけるカスプ写像手法の変更内容の記録例を示す図である。
【図16】第2実施形態における画像再現比較U/I例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置およびその制御方法に関し、特に、入力色域と出力色域間における色変換処理を行う画像処理装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、入力装置における入力色域上の画像データを、出力装置における出力色域内において再現する場合、入力色域と出力色域の大きさが一致していることは少ない。例えば、一般にモニタやデジタルカメラの再現色空間として用いられる標準色空間のsRGB色空間、もしくは拡張色空間のAdobeRGB等の入力色域に対して、主な出力装置であるプリンタの出力色域は小さい場合が多い。よって、入力色域内の色データが出力色域内の色データとして再現可能となるように、色域圧縮(または拡張)を伴う写像処理が行われている。
【0003】
この写像処理を実現する具体的な手法は種々あるが、ユーザが所望する画像品質を得るために、画像再現に応じた写像手法を選択可能とする画像処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、一般の写像処理においては、色相補正、明度圧縮処理、および彩度圧縮処理が行われている。特に、プライマリーカラーなどの重要色を含む入力色域の色相における最大彩度色は、より高精度な色再現性が求められている。したがって、入力最大彩度色についての写像色を決定する最大彩度点写像処理が、入力色域外郭を出力色域外郭上に写像する処理とは独立に実施される場合があった。
【0005】
入力色域に対して出力色域は小さいことが多い。このような出力色域に対して最大彩度点写像を行った場合、写像された色は、最大彩度入力色に比べて彩度が低下し、明度が変化してしまう。よって、写像後に再現される色が入力色と異なってしまう。
【0006】
最大彩度入力色と出力色域における再現色の色みを近づけるための手法として、以下のような写像方法が知られている。まず、出力色域の対応写像色相上の最大彩度点を写像点として決定する写像方法がある。また、出力色域における入力点との色差最小点もしくは写像色相断面における入力点との明度彩度距離最小点を写像点とする手法がある。ここで、前者の手法においては入力色の彩度を保存することを優先しており、また後者の手法においては均等色空間上における色差を最小にすることで入力色と出力色の色みを合わせようとしている。
【0007】
しかしながら、実際に上記両者の手法を用いて実際に入力色域から出力色域への写像を行うと、前者については彩度の再現性は確かに向上するが、特にプリンタの出力色域においては最大彩度の明度が入力色域の最大彩度点よりも大きく低下している場合が多い。したがって、明度再現の低下により色再現については知覚的に一致しない。さらに後者についても、彩度もしくは明度の違いにより色再現については知覚的に一致しない。
【0008】
そこで、入力色域における最大彩度点について、出力色域の最大彩度点付近の領域上に写像を行うことによって、色再現性を一致させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005-318491号公報
【特許文献2】特開2004-32140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載された、ユーザが写像手法を選択する方法によれば、詳細な設定が予めなされた全体的な写像処理を選択していた。すなわち、色相、明度、彩度再現の傾向や、色域外写像、色域外郭写像、色域内部写像処理について、再現画像によって特定の写像手法を用いるように予め決定された、全体的な写像処理についての選択を行っていた。したがって、入力色域や出力色域の形状や、重要色(プライマリカラー)や階調再現のような部分的に所望され優先される色再現性等に応じて、写像手法を細かく設定することはできなかった。
【0010】
また、上記特許文献2に記載された、最大彩度点写像処理によれば、入力色域における最大彩度点を出力色域の最大彩度点付近の領域上に写像を行っているが、写像点を写像する領域を示すのみであった。すなわち、写像点の明度および彩度座標に関する決定手法について、彩度再現を優先する写像、あるいは最大彩度点へ写像する手法を用いているが、特に前者の手法では、領域内への写像点決定手法については具体的に記述されていない。したがって、最大彩度点の写像手法については全くの任意となり、異なるデバイス間における色再現性が知覚的に一致するように、写像点を一意に決定することはできなかった。
【0011】
本発明は上述した問題を解決するためになされ、入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内に変換する際に用いられる色域写像処理において、以下の機能を有する画像処理装置およびその制御方法を提供することを目的とする。すなわち、出力目的に応じて最大彩度点写像手法の設定を可能とすることにより、色域写像処理において出力目的に応じた適切な色再現を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決し、目的を達成するための一手段として、本発明は以下の構成を備える。
【0013】
すなわち、入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内の画像データに変換する画像処理装置であって、入力色域における任意色相断面上の最大彩度点を出力色域内の座標点に変換する、最大彩度点写像手法を設定する写像手法設定手段と、前記写像手法設定手段で設定された最大彩度点写像手法に基づいて色変換プロファイルを作成する色変換処理手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
例えば、前記写像手法設定手段は、入力色域における任意色相断面上の最大彩度点について、該最大彩度点に対する等明度線上に、出力色域における写像色相の色域範囲に基づいて仮想入力最大彩度点を設定する仮想点設定手段と、写像色相上における前記仮想入力最大彩度点について、出力色域に対する明度彩度距離最小点を決定する最小距離点設定手段と、前記最小距離点決定手段によって決定された前記明度彩度距離最小点を、前記最大彩度点の写像点として設定する写像点設定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の構成からなる本発明によれば、入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内に変換する際に用いられる色域写像処理において、以下のような効果が得られる。すなわち、出力目的に応じて最大彩度点写像手法の設定を可能とすることにより、色域写像処理において出力目的に応じた適切な色再現が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において示す構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0017】
<第1実施形態>
●装置構成
図1は、本実施形態に係る画像処理装置の概要構成を示すブロック図である。本実施形態の画像処理装置は、ホストコンピュータ上においてプログラムが実行されることによって実現される。同図において、CPU101は、ROM102に記憶されている情報データや各種プログラムに従って、RAM103、操作部104、画像処理部105、モニタ106、入力デバイス107、出力デバイス108の各種制御を行う。なお、ROM102に記憶されている各種プログラムとしては、制御プログラムやOS(オペレーティングシステム)、アプリケーションプログラム(以下、アプリケーション)、カラーマッチング処理モジュール、デバイスドライバ等がある。
【0018】
入力デバイス107は、CCDセンサを含むイメージスキャナ等の画像読取装置や測色装置によって実現され、プロファイルの作成対象となる任意の色空間情報データを、画像処理装置(ホストコンピュータ)に入力する。また出力デバイス108は、インクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、ドットプリンタ等によって実現され、画像を出力する。
【0019】
RAM103は、各種制御プログラムや操作部104から入力されるデータの作業領域及び一時待避領域として利用される。操作部104は、ユーザ操作に基づいて出力デバイス108の設定やデータの入力を行う。画像処理部105は、本実施形態における任意色相上の最大彩度入力色点に対する写像処理や、プロファイル作成処理を含む画像処理を行う。モニタ106は、画像処理部105の処理結果や操作部104で入力されたデータ等を表示する。
【0020】
本実施形態における最も特徴的な構成は画像処理部105である。画像処理部105においては、入力画像データを出力色空間内再現色に変換する写像処理が実行される。詳細には、任意の色相上において最大彩度を有する入力色点(カスプ)に対し、好ましい色再現性が得られるようなカスプ写像処理方法を用いて写像処理を行う。本実施形態では、一般にプライマリカラーと呼ばれる、入力色域上の赤(R)、青(B)、緑(G)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色相におけるカスプを使用する。
【0021】
図2に、画像処理部105の詳細構成を示す。同図において、201は写像パラメータ作成部(★作成装置→作成部としました。他構成についても同様)、202は色変換プロファイル作成部、204は入力色域記憶部、205はプリンタ色域記憶部である。
【0022】
入力色域記憶部204は、モニタ106や入力デバイス107等の再現色域に関する情報である入力色域情報を記憶している。またプリンタ色域記憶部205は、出力デバイス108としてのプリンタの色再現域情報を記憶している。
【0023】
写像パラメータ作成部201は、入力色域内の色を出力色域の好ましい再現色へ変換する際に参照される色変換パラメータ(写像パラメータ)を作成する。ここで決定された写像パラメータは、後述する色域写像部210での写像処理において用いられる。
【0024】
写像パラメータ作成部201は、カスプ写像手法格納部206、カスプ写像手法設定部207、カスプ写像点設定部208、カスプ写像点格納部209、により構成される。カスプ写像手法設定部207には、ユーザが選択した写像手法を示す信号が端子203を介して入力される。カスプ写像手法設定部207は、予めカスプ写像手法格納部206に格納されている複数のカスプ写像手法から、この信号に応じた写像手法を実際に利用するカスプ写像手法として設定する。カスプ写像点設定部208は、入力色域記憶部204およびプリンタ色域記憶部205を参照して、設定されたカスプ写像手法によるカスプ写像点を獲得し、該写像点をカスプ写像点格納部209に格納する。
【0025】
色変換プロファイル作成部202は写像処理を行う。まず色域写像部210において、入力色域記憶部204内の入力色空間情報と、プリンタ色域記憶部205内のプリンタ色再現域情報、およびカスプ写像点格納部209内のカスプ写像点データに基づき、入力色空間信号の写像処理を行う。プロファイル作成部211は、色域写像部210における写像処理結果をうけて、入力データからプリンタ出力要素データへの変換用プロファイルを作成し、該プロファイルをプロファイル格納部212へ格納する。該格納されたプロファイルは、端子213を介して出力デバイス108へ渡され、出力デバイス108において該プロファイルによる色補正処理が行われる。
【0026】
●プロファイル作成処理
以下、画像処理部105における、入力カラー画像信号を出力機器における画像信号に変換するプロファイルの作成処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0027】
ステップS301において、入力色域記憶部204内の入力色域情報と、プリンタ色域記憶部205内のプリンタ色域情報を獲得する。なお、本実施形態における入力色域情報とプリンタ色域情報としては、CIECAM02によるJCh色空間上の色点データに変換された情報を用いる。また、写像処理もJCh色空間上で行うものとする。もちろん、JCh色空間以外の他の色空間上で表記されたデータを用いることも可能である。
【0028】
次にステップS302において、ユーザは入力色域とプリンタ色域に対して所望の色再現効果を実現するカスプ写像手法を、予め提示された複数手法の中から選択する。ここで提示されるカスプ写像手法は、一般的な2つの手法と、本実施形態における最適な色再現性を提供するカスプ写像手法、の計3つであるとし、この3つのカスプ写像手法が、カスプ写像手法格納部206に予め格納されている。もちろん、この3つの手法以外の手法を使用することも可能である。なお、各手法の詳細については後述する。
【0029】
ここで図10に、カスプ写像手法格納部206におけるカスプ写像手法の格納例を示す。同図に示すように写像手法1002〜1004は、それぞれ、インデックス1005、写像手法ラベル1006、写像アルゴリズム1007の各項目によって構成されている。
【0030】
ユーザは、写像手法ラベル1006に格納された写像手法名称に基づき、写像手法の選択を行う。ユーザによって選択された写像手法に対応するインデックス1005が端子203を介してカスプ写像手法設定部207に通知される。
【0031】
次にステップS303において、カスプ写像手法設定部207は、ユーザによって選択された写像手法を、カスプ写像点設定部208に設定する。すなわち、ユーザによって選択されたインデックス1005に対応する写像アルゴリズム1007を、カスプ写像点設定部208で使用されるカスプ写像アルゴリズムとして設定する。
【0032】
ここで、カスプ写像手法格納部206内の写像アルゴリズム1007として、カスプ写像点設定部208で対応可能とする写像手法のいずれかを示す指定情報を予め格納しておくような構成としても良い。この場合、カスプ写像手法設定部207が該指定情報をカスプ写像点設定部208に渡すことで、対応する写像手法が有効となる。
【0033】
次にステップS304では色域写像部210において、入力色域からプリンタ色域への写像処理が実施される。このとき、入力色空間上のカスプ対応入力点(ある色相における入力最大彩度点)の写像点は、カスプ写像点設定部208で設定されたカスプ写像手法を用いて求められる。そして、カスプ対応入力点以外の入力点については、カスプの写像点に基づき、出力色域内にマップする。
【0034】
次にステップ305では、プロファイル作成部211において、色域写像部210で求められた写像結果を用いて出力プロファイルを作成する。そしてステップS306において、作成された出力プロファイルをプロファイル格納部212に格納する。
【0035】
●カスプ写像手法(概要)
ここで、上述したステップS302において選択可能となるカスプ写像手法について説明する。本実施形態で利用可能なカスプ写像手法としては、代表的な2つの手法と、本実施形態における知覚的印象が一致する色再現性を実現するようなカスプ写像手法、の計3つがある。以下、これらをそれぞれ、第1のカスプ写像手法、第2のカスプ写像手法、および第3のカスプ写像手法、として説明する。
【0036】
まず第1のカスプ写像手法について、その概要を図6に示す。第1のカスプ写像手法は、入力色域外郭601における任意の色相上の最大彩度色点(カスプ)603を、出力色域外郭602上の任意色相上の最大彩度色点(カスプ)604に写像する。第1のカスプ写像手法によれば彩度が維持されるため、再現画像において鮮やかな色再現が必要とされる場合に適している。例えば、CG画像、チャート、グラフのようなプレゼンテーション資料の画像再現に適している。
【0037】
次に、第2のカスプ写像手法について、その概要を図7に示す。第2のカスプ写像手法は、入力色域外郭601における任意の色相上の最大彩度色点(カスプ)603を、出力色域外郭602における任意の色相上の外郭において、同一色相平面において距離が最短である色点701に写像する。本実施形態においては、入力色相における出力再現色相は別途制御されているが、この第2のカスプ写像手法によれば、カスプが、同一色相面において色差最小の色点に写像される。一般に均等色空間上におる色差最小点は入力色点と最も色味が近い色である。第2のカスプ写像手法は、一般に印象の一致する色再現を実現することができる。
【0038】
よって第2のカスプ写像手法は、再現画像において忠実もしくは印象の一致する色再現が必要とされる場合に適している。例えば、イメージ画像の忠実な再現や、印刷におけるプルーフのような画像再現に用いられる。しかしながら、第2のカスプ写像手法では、入力色域と出力色域の大きさが大きく異なる場合や、色域形状によっては、明度が大きく変化した色点に写像される場合がある。このような場合、印象の一致の度合いが大きく劣化した色再現になることもある。
【0039】
最後に、本実施形態の特徴である第3のカスプ写像手法について説明する。第3のカスプ写像手法は、写像前後における色再現の印象が、第2のカスプ写像手法よりも知覚的に一致するように、精度を向上した色再現を実現することを特徴とする。図8に、第3のカスプ写像手法の概要を示す。同図には、入力色域外郭601における任意の色相上の最大彩度点(カスプ)603、出力色域上の任意の色相の外郭602がそれぞれ示されている。
【0040】
ここで、発明者が均等色空間上の入力色空間において、ある高彩度色点と見た目の印象が一致する低彩度側の色点との対応について実験を行った結果、入力色点に対し、その等明度線上に沿って彩度が低下した色点が得られることがほとんどであった。第3のカスプ写像手法は、入力色域外郭601におけるカスプ603と等明度な線801(印象一致線)を設定する。また、出力色域外郭602のカスプと等彩度な線802(最大彩度線)を設定する。そして、印象一致線801と最大彩度線802との交点である色点803(仮想入力カスプ色点)を決定する。
【0041】
ここで、仮想入力カスプ色点803は入力色相上の色点であるが、写像色相が入力色相と異なる場合には、仮想入力カスプ色点803の色相を写像色相に変換した色点が、最終的に仮想入力カスプ色点803として設定されることになる。
【0042】
そして、仮想入力カスプ色点803に対し、出力色域上の写像色相上の外郭602において、色空間上の距離が最短である色点804(印象一致写像色点)を決定する。
【0043】
このように、第3のカスプ写像手法においては、出力色域のカスプに基づき印象一致線801上に仮想入力カスプ色点803を設定する。したがって第3のカスプ写像手法によれば、入力色域と出力色域の大きさや形状が大きく異なる場合であっても、入力色域の最大彩度色点(カスプ)603を、明度再現の変化が小さい色点とし、知覚的な印象の一致が高い写像点が得られる。これは、発明者による実験によって確認されている。よって、入力色域外郭601における任意の色相上の最大彩度点(カスプ)603の写像点を、印象一致写像色点804とすることによって、より印象の一致度が高い色再現を実現することができる。
【0044】
●第3のカスプ写像手法
ここで図4に、本実施形態における第3のカスプ写像手法を実現する、カスプ写像点設定部208内における構成を示し、詳細に説明する。
【0045】
図4において、入力色域データ格納部401には、入力色域記憶部204に格納された入力色域情報から求められた、JCh色空間における入力色域データが格納される。また出力色域データ格納部402には、プリンタ色域記憶部205に格納されたプリンタ色域情報から求められた、JCh色空間における出力色域データが格納される。入力色点格納部403には、色域写像部210より渡された入力色域における任意色相上の最大彩度色点座標が格納される。写像色相設定部404は、入力最大彩度色点に対して行う色相変換条件を設定する。色相断面設定部405は、出力色域データ格納部402に格納された出力色域データから、色相変換された入力最大彩度色点の色相における出力外郭データを算出する。
【0046】
出力最大彩度色点設定部406は、色相断面設定部405で算出された出力色域外郭データにおける最大彩度色点を求める。印象一致線設定部408は、色相変換された入力最大彩度色点座標に基づいて、色相変換された入力最大彩度色点と等明度である印象一致線を設定する。
【0047】
仮想入力色点設定部407は、印象一致線設定部408で設定された印象一致線と、出力最大彩度色点設定部406で設定された出力色域外郭データにおける最大彩度色点に基づいて、仮想入力色点を設定する。すなわち、仮想入力色点として、出力色域外郭データにおける最大彩度色点と等彩度を有する、印象一致線上の座標点を求める。
【0048】
外郭最小距離色点獲得部409は、色相断面設定部405で得られた出力色域外郭上において、仮想入力色点と明度彩度距離が最短になる色点を算出する。外郭最小距離色点獲得部409で算出された色点は、入力最大彩度色点に対する写像点として、出力写像点格納部410に格納される。
【0049】
次に、本実施形態における第3のカスプ写像手法による写像処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0050】
まずステップS501において、入力色域データおよび出力色域データを獲得する。次にステップS502において、入力色域データにおける任意色相上の最大彩度色点(カスプ)の入力色座標値(J1,Ca1,Cb1)を取得する。そしてステップS503において、写像色相設定部404で設定される色相変換条件に基づき、入力色座標値(J1,Ca1,Cb1)の色相に対応する写像色相hを設定する。
【0051】
ここで写像色相hの獲得処理について、図11を用いて詳細に説明する。図11は、本実施形態において予め用意されている色相変換データメモリの一例である。色相変換データメモリ1101は、入力色域のカスプ入力色相に対する、出力色域データへの写像色相の値の対応関係を予め記述したテーブルであり、各テーブルデータはインデックス1104、入力色相1105、出力色相1106の各項目から成っている。よって、入力色相値より、入力色相1105として格納された色相値を参照し、これに対応する出力色相1106として格納されている出力色相値を獲得する。なお、入力色相が各テーブルデータとして入力色相1105に格納された値に一致しない(中間値である)場合には、入力色相1105の値が該入力色相を挟むような2つのテーブルデータを読み出し、該2つのテーブルデータに基づいて写像色相hを算出する。すなわち、線形補間等による出力色相値間の補間によって色相値を算出し、これを写像色相hとして獲得する。
【0052】
次に、ステップS504において、出力色域データから、写像色相hにおける出力色域外郭データを抽出する。そして、出力色域外郭上における最大彩度座標点を決定し、最大彩度値Cmaxを獲得する。
【0053】
ステップS505において、入力色座標値のJ1に基づき印象一致線を設定する。印象一致線とは上述したように、写像色相hにおけるJ1を有する等明度線である。
【0054】
ステップS506において、ステップS505で設定された印象一致線とステップS504で獲得された出力色域外郭における最大彩度座標Cmaxとに基づいて、仮想入力点の座標値を求める。すなわち、写像色相h、印象一致線の明度J1および最大彩度座標Cmaxを有する座標値を求める。
【0055】
そしてステップS507において、仮想入力点に対して、ステップS504で獲得された出力色域外郭上において明度彩度距離が最短である座標点(J2,Ca2,Cb2)を求める。そしてステップS509において、ステップS507で獲得された明度彩度距離最短座標点(J2,Ca2,Cb2)を、入力色座標値(J1,Ca1,Cb1)の写像点として格納する。
【0056】
以上説明した処理によって、本実施形態における第3のカスプ写像手法による高精度な印象一致写像点が獲得される。
【0057】
以上説明したように本実施形態によれば、入力色域における任意色相上の最大彩度点(カスプ)を出力色域内に写像する手法を、画像再現の目的に応じて選択することが可能となる。特に、知覚的印象が一致するようなカスプ写像手法を、煩雑なパラメータ設定やユーザによる補正等を行うことなく実現し、選択肢として提供することができる。このように選択された写像手法を用いて色補正プロファイルが作成されることによって、入力画像データの出力画像について、ユーザが所望する好ましい色再現が実現される。
【0058】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態における画像処理装置の構成は図1と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
第2実施形態では画像処理部105において、ユーザが写像手法再現精度を確認することが可能なU/Iを有することを特徴とする。また、色相毎に上述した第1実施形態の画像処理部105におけるカスプ写像手法の選択、または色相ごとの写像手法の設定を行って、ユーザが所望する色再現精度色補正プロファイルの作成が可能なU/Iを有することを特徴とする。
【0060】
●カスプ写像処理手法初期設定U/I
図9は、画像処理部105における色補正プロファイルの作成にあたり、第2実施形態においてカスプ写像手法の選択をユーザが指定するU/I例を示す図である。なお、図9に示すU/Iは、不図示のメインメニューにおいてカスプ初期設定を示すボタンがユーザによって選択されることにより表示される。
【0061】
U/I901は、複数用意されたカスプ写像手法から、写像処理に用いる一つのカスプ写像手法を決定するカスプ写像処理手法初期設定U/Iである。ユーザは該U/I901において、入力色域データ設定部902に入力色空間データを格納したファイルを指定し、出力色域データ設定部903に出力色空間データを格納したファイルを指定する。そして更に、色相補正データ設定部904に入力色域上の色相を出力色域上の再現色相に色変換する際の色相変換条件を格納したファイルを指定する。ここで、色相変換条件を格納したファイルの一例を図11に示す。これらのファイル名の指定は、各参照ボタン907,908,909を用いて、画像処理部105に入力可能な各ファイルの格納場所を参照しながら行うことができる。
【0062】
カスプ写像手法設定部905では、ユーザがダウンリストボタン910を操作することによって、設定可能なカスプ写像手法リストが表示され、ユーザはマウス等を用いて該手法リストから所望するカスプ写像処理を選択し、設定する。ここで設定されたカスプ写像処理名称が、カスプ写像手法設定部905に表示される。カスプ写像手法設定部905において設定可能なカスプ写像処理としては、図10に示すような形式で、カスプ写像手法格納部206に格納されている。色補正プロファイル出力設定部906では、ユーザが参照ボタン911を用いて色補正プロファイルの格納場所を参照し、出力する色補正プロファイルを設定する。
【0063】
上記各設定部に対する設定が終了すると、ユーザが色補正プロファイル作成ボタン912を押下することによって、カスプ写像処理を含む色域写像処理が開始され、色補正プロファイルが作成される。
【0064】
●カスプ写像手法詳細設定U/I
図12は、図9に示すカスプ写像処理手法初期設定U/Iによって各種条件が設定されたカスプ写像処理を用いた色域写像結果を確認するためのU/I例を示す図である。
【0065】
図12に1201で示すカスプ写像手法詳細設定U/Iは、座標データによる確認を行うための表示部と、さらに色相毎の詳細なカスプ写像処理設定を可能とする詳細設定部の2つの構成を有する。
【0066】
まず、カスプ写像手法詳細設定U/I1201における確認表示について説明する。図9に示すカスプ写像処理手法初期設定U/I901より入力された入力色域データと出力色域データについて、同じく該U/I901で選択されたカスプ写像手法を標準のカスプ写像手法として用いた写像処理を行い、該処理結果を初期値として表示する。写像結果の確認表示は、具体的には以下のように行われる。まず、色度平面表示部1205に色度平面への投影結果を表示し、明度彩度表示部1206には、色相設定部1202で設定された入力色相上の入力色域最大彩度点を入力点とする写像結果を、入力色域と写像色相における出力色域の明度彩度断面上に表示する。色相設定部1202の設定値は、色相設定バー1203で示される色相について色相ポインタ1204を移動させることによっても、変更することができる。
【0067】
色度平面表示部1205における結果表示の詳細について、図13を用いて説明する。図13によれば色度平面表示部1205には、所定の色度平面上において、入力色域データ1301、出力色域データ1302がそれぞれ示されている。
【0068】
入力最大彩度色点1304の複数のカスプ写像手法による写像結果が、写像点A1306および写像点B1307として表示される。これにより、カスプ写像処理手法初期設定U/I901で設定されたカスプ写像処理手法による写像点A1306を、ユーザが確認することができる。さらに、同時に、他のカスプ写像手法による写像結果(写像点B1307)についても確認することができるとともに、複数のカスプ写像手法の結果を比較することができる。
【0069】
次に、明度彩度表示部1206における結果表示の詳細について、図14を用いて説明する。図14によれば明度彩度表示部1206には、色相設定部1202によって設定された色相におkる明度彩度平面上に、入力色域外郭1402と出力色域外郭1404が示されている。入力色相表示部1401は、色相設定部1202によって設定された色相を示す。1403は、設定されたし競うの入力色域外郭1402における入力最大彩度色点である、入力最大彩度色点1403の複数のカスプ写像手法による写像結果が、写像点A1405および写像点B1407として表示される。
【0070】
以上説明した色度平面表示部1205、明度彩度表示部1206によって、ユーザは写像結果の入力色域または出力色域との関係について、座標上でその位置を確認することが可能である。また、任意の指定された入力色相についての上述した第1実施形態による写像処理結果(初期値)を、他の手法による写像結果と比較することも可能である。そして、ユーザが該比較の結果、異なるカスプ写像処理による写像処理へ変更すべきと判断した場合には、任意入力色相におけるカスプ写像手法を変更することも可能である。
【0071】
次に、色相毎の詳細設定に用いられる座標値表示部1207について説明する。座標値表示部1207への表示に先立って、まず、ユーザは色相設定部1202によって確認したい入力色域上の色相の設定を行う。該色相の設定がなされると、入力最大彩度色点座標表示部1208に、設定された色相の入力彩度彩度色点の明度(J)、色度(Ca、Cb)、彩度(Chroma)、色相(Hue)が表示される。そして、写像結果である写像点Aおよび写像点Bの各々について、写像手法、明度、色度、彩度、色相が1209および1210に表示される。
【0072】
また、ユーザがダウンリストボタン1213,1216を操作することによって、提示されるカスプ写像手法リストの中から、写像結果座標表示部1209,1210の写像点の写像手法を個別に選択し、設定することが可能である。
【0073】
よって、第2実施形態において写像結果の比較を行うためには、初期値として設定されたカスプ写像手法による写像結果を示す写像結果座標表示部1209に対し、他の写像結果座標表示部1210に比較したいカスプ写像手法を選択、設定すれば良い。すなわち、ダウンリストボタン1216を操作して、初期値として設定されたカスプ写像手法に対し、比較対象となるカスプ写像手法を選択、設定する。その結果、写像結果座標表示部1210に設定されたカスプ写像手法による写像結果の写像点座標情報が表示されると同時に、色度平面表示部1205、明度彩度表示部1206に第2の写像点B(1307,1406)が表示される。
【0074】
また、ユーザが色相設定部1202によって入力色域上の色相の設定を変更することによって、入力最大彩度色点座標表示部1208、写像結果座標表示部1209,1210に表示される座標点情報が連動して変更される。
【0075】
また、カスプ写像処理手法初期設定U/I901のカスプ写像手法設定部905において写像手法を切り替えた場合にも、カスプ写像手法詳細設定U/I1201が連動して変更される。
【0076】
以上の操作によって、ユーザは、異なるカスプ写像手法による写像結果の違いについて確認を行うことが可能となる。
【0077】
ここで、ユーザがカスプ写像手法を比較した結果、初期値に設定したカスプ写像手法と異なるカスプ写像手法への変更を所望する場合、カスプ写像手法詳細設定U/I1201において以下のような操作を行う。
【0078】
まず、初期値として設定されているカスプ写像手法が、標準設定手法表示部1222に表示されている。ユーザは、色相設定部1202または色相ポインタ1204によって、確認したい入力色域上の色相の設定を行う。そして、設定色相における写像結果の比較を行うため、写像結果座標表示部1209と写像結果座標表示部1210に、カスプ写像結果についての写像点座標情報を表示させておく。すなわち、写像結果座標表示部1209には初期値として設定されたカスプ写像手法による写像点座標情報が表示され、写像結果座標表示部1210には比較対象のカスプ写像手法が設定されたカスプ写像手法による写像点座標情報が表示される。
【0079】
記録選択表示部1211,1214は、写像結果座標表示部1209,1210にそれぞれ対応しており、ユーザは記録選択表示部1211,1214のいずれかにおいて、入力カスプ座標点として設定したい写像手法の写像結果にチェックを付す。このチェックが付されたことにより初期値からの変更対象となる写像手法が、変更写像手法表示部1223に表示される。
【0080】
さらに、色相設定値に対して初期値より変更する写像手法の効果を与える範囲について、色相設定値からの効果範囲の上限値および下限値をそれぞれ、効果範囲設定表示部1224および効果範囲設定表示部1225に入力する。
【0081】
また、混合手法設定部1226,1227において、上限または下限効果範囲内において、初期値の写像手法による写像結果から設定色相にかけて、変更写像手法による写像結果を滑らかに変化させるための2つの写像手法結果を混合する手法を設定する。第2実施形態においては例えば、線形補間、非線形補間等の手法を選択できるようにする。
【0082】
以上説明した各設定を終了すると、ユーザによる記録ボタン1228の押下により、設定色相におけるカスプ写像手法の変更について、格納ファイル設定表示部1230に表示されるカスプ写像手法変更ファイルに、カスプ写像手法の変更内容が登録される。また、削除ボタン1229を操作することによって、設定色相におけるカスプ写像手法の変更内容が削除される。また参照ボタン1231によって、格納ファイル設定表示部1230にファイルを読み込むことも可能である。
【0083】
ここで図15に、カスプ写像手法変更ファイルにおけるカスプ写像手法の変更内容の記録例を示す。同図において、例えばインデックス1504で指定される色相別のカスプ写像手法1502,1503がそれぞれ、変更されたカスプ写像手法である。これらカスプ写像手法1502,1503にはそれぞれ、変更設定色相値が設定入力色相1505として格納され、また変更写像手法がぞれぞれ以下のように設定される。すなわち、変更写像手法に対応する写像手法インデックスが変更写像手法インデックス1506として格納される。また、カスプ写像手法詳細設定U/I1201で設定された効果範囲の上限および下限値がそれぞれ、効果範囲上限値1507,効果範囲下限値1509に設定される。さらに、上限効果範囲における混合手法が補間パラメータ1508に、下限効果範囲における混合手法が補間パラメータ1510に、それぞれ設定される。
【0084】
ここで、カスプ写像手法変更ファイルにおいて、図15のように入力色相がランダムに選択されて写像手法の変更が登録された場合に、これを並び替えるようにしても良い。すなわち、インデックス1504と設定入力色相1505に基づき、最終的に入力色相が所定順に並ぶように、格納データを移動するような構成であっても良い。また、設定色相と効果範囲の設定によっては既に登録された変更写像手法の範囲に重なる場合があるが、そのような場合には適宜警告等を表示して、ユーザによる修正を促すような構成であってもよい。
【0085】
●画像再現比較U/I
第2実施形態においては、以上のU/Iを用いてユーザが設定したカスプ写像手法によって、実際の画像再現結果を推定して表示し、ユーザが該補正結果を参照して補正値を決定することができる。図16に、この画像再現比較U/I例を示す。
【0086】
図16に1601で示す画像再現比較U/Iにおいてはまず、入力画像設定部1602に対し、参照ボタン1603を用いて入力画像の格納場所を参照して入力画像データを設定する。入力画像表示部1604では、入力画像設定部1602で入力された画像のモニタ表示を行う。そして処理画像表示部1605,1606では、入力画像を出力装置で出力媒体上に出力した際の画像についてのシミュレーション画像を、それぞれ表示する。
【0087】
処理画像表示部1605,1606における選択ボタン1608〜1611,1612〜1615は、ユーザがそのいずれかを選択することによって、複数のカスプ写像手法のうち、それぞれが対応する写像処理による再現画像が表示される。これにより、ユーザは複数のカスプ写像手法による処理結果について、実際の画像を観察して、比較し確認することができる。例えば、選択ボタン1608〜1610,1612〜1614に対応するカスプ写像手法は、上述した第1実施形態において図10に示されるようにカスプ写像手法格納部206内に格納された、予め用意されたアルゴリズムを示す。さらに、選択ボタン1611,1615に対応するカスタムなカスプ写像手法は、カスプ写像手法詳細設定U/I1201でユーザが色相毎にカスプ写像手法を選択することによってカスタマイズされたものである。
【0088】
以上の選択ボタンについて選択し、補正画像表示ボタン1607を動作させることによって、処理画像表示部1605と1606に再現結果が表示される。また、テストプリントボタン1616,1617を動作させることによって、設定したカスプ写像手法による写像処理を用いて、画像処理部105内で色補正プロファイルのプロトタイプを作成し、指定されたテスト画像について出力装置による出力がなされる。これによりユーザは、実際の写像処理による画像再現出力を確認することができる。
【0089】
以上説明したように第2実施形態によれば、ユーザによるカスプ写像手法の選択と設定が可能となると共に、異なるカスプ写像手法による写像結果について比較検討を行うことが可能となる。さらに、所望の入力色相においては、異なるカスプ写像手法の切り替えを行うことが可能になる。また、実際の入力画像に対して、色域写像処理結果による画像再現をカスプ写像手法毎に確認することができる。このように第2実施形態においては、U/Iを用いたカスプ写像手法の切替・変更を行って画像処理装置における色補正プロファイルを作成することにより、ユーザの意図する画像色再現を実現することができる。
【0090】
<他の実施形態>
以上、実施形態例を詳述したが、本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記憶媒体(記録媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インタフェース機器、撮像装置、webアプリケーション等)から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0091】
尚本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータが該供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。なお、この場合のプログラムとは、実施形態において図に示したフローチャートに対応したプログラムである。
【0092】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0093】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であっても良い。
【0094】
プログラムを供給するための記録媒体としては、以下に示す媒体がある。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD-ROM,DVD-R)などである。
【0095】
プログラムの供給方法としては、以下に示す方法も可能である。すなわち、クライアントコンピュータのブラウザからインターネットのホームページに接続し、そこから本発明のコンピュータプログラムそのもの(又は圧縮され自動インストール機能を含むファイル)をハードディスク等の記録媒体にダウンロードする。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0096】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD-ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせることも可能である。すなわち該ユーザは、その鍵情報を使用することによって暗号化されたプログラムを実行し、コンピュータにインストールさせることができる。
【0097】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。さらに、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0098】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、実行されることによっても、前述した実施形態の機能が実現される。すなわち、該プログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】第1実施形態における画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態における画像処理部の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態における色変換プロファイルの作成処理を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態において第3のカスプ写像手法を実現するカスプ写像点設定部の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】第1実施形態における第3のカスプ写像手法による写像処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態における第1の代表的カスプ写像手法の概要を示す図である。
【図7】第1実施形態における第2の代表的カスプ写像手法の概要を示す図である。
【図8】第1実施形態における第3のカスプ写像手法の概要を示す図である。
【図9】第2実施形態におけるカスプ写像手法選択用のU/I例を示す図である。
【図10】第1実施形態におけるカスプ写像手法の格納例を示す図である。
【図11】第1実施形態における色相変換データメモリの一例を示す図である。
【図12】第2実施形態において選択されたカスプ写像処理を用いた色域写像結果確認用のU/I例を示す図である。
【図13】第2実施形態における写像結果の色度平面表示例を示す図である。
【図14】第2実施形態における写像結果の明度彩度表示例を示す図である。
【図15】第2実施形態におけるカスプ写像手法の変更内容の記録例を示す図である。
【図16】第2実施形態における画像再現比較U/I例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内の画像データに変換する画像処理装置であって、
入力色域における色相断面上の最大彩度点を出力色域内の座標点に変換する、最大彩度点写像手法を設定する写像手法設定手段と、
前記写像手法設定手段で設定された最大彩度点写像手法に基づいて色変換プロファイルを作成する色変換処理手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記写像手法設定手段は、
入力色域における色相断面上の最大彩度点について、該最大彩度点に対する等明度線上に、出力色域における写像色相の色域範囲に基づいて仮想入力最大彩度点を設定する仮想点設定手段と、
写像色相上における前記仮想入力最大彩度点について、出力色域に対する明度彩度距離最小点を決定する最小距離点設定手段と、
前記最小距離点設定手段によって決定された前記明度彩度距離最小点を、前記最大彩度点の写像点として設定する写像点設定手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記仮想点設定手段は、前記等明度線上において出力色域における写像色相上の最大彩度点と等彩度である座標点を、前記仮想入力最大彩度点として設定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
さらに、前記写像手法設定手段で設定された最大彩度点写像手法と、予め用意された複数の最大彩度点写像手法とから、いずれか1つを選択する写像手法選択手段を有し、
前記色変換処理手段は、前記写像手法選択手段で選択された最大彩度点写像手法に基づく色変換処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記写像手法選択手段で選択可能な、予め用意された複数の最大彩度点写像手法は、
前記入力色域における最大彩度点を出力色域において色相上の明度彩度距離最小点に再現する第1の写像手法と、
前記入力色域における最大彩度点を出力色域において色相上の最大彩度点に再現する第2の写像手法と、
を含むことを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
さらに、前記写像手法設定手段で設定された最大彩度点写像手法による写像結果を表示する写像結果表示手段を有することを特徴する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
さらに、前記写像手法選択手段で選択可能な最大彩度点写像手法による写像結果を表示する写像結果表示手段を有することを特徴する請求項4または5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
さらに、前記色変換処理手段による色変換結果を表示する色変換結果表示手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記色変換結果表示手段は、複数の最大彩度点写像手法による色変換結果を表示することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記写像手法設定手段によって色相ごとに異なる最大彩度点写像手法が設定された場合に、前記色変換処理手段は、該色相ごとの最大彩度点の写像点結果座標を合成した座標点を、入力色域における色相上の最大彩度点の写像点として、色変換プロファイルを作成することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内の画像データに変換する画像処理装置の制御方法であって、
入力色域における色相断面上の最大彩度点を出力色域内の座標点に変換する、最大彩度点写像手法を設定する写像手法設定ステップと、
前記写像手法設定ステップにおいて設定された最大彩度点写像手法に基づいて色変換プロファイルを作成する色変換処理ステップと、
を有することを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項12】
コンピュータ上で実行されることによって、該コンピュータを請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内の画像データに変換する画像処理装置であって、
入力色域における色相断面上の最大彩度点を出力色域内の座標点に変換する、最大彩度点写像手法を設定する写像手法設定手段と、
前記写像手法設定手段で設定された最大彩度点写像手法に基づいて色変換プロファイルを作成する色変換処理手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記写像手法設定手段は、
入力色域における色相断面上の最大彩度点について、該最大彩度点に対する等明度線上に、出力色域における写像色相の色域範囲に基づいて仮想入力最大彩度点を設定する仮想点設定手段と、
写像色相上における前記仮想入力最大彩度点について、出力色域に対する明度彩度距離最小点を決定する最小距離点設定手段と、
前記最小距離点設定手段によって決定された前記明度彩度距離最小点を、前記最大彩度点の写像点として設定する写像点設定手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記仮想点設定手段は、前記等明度線上において出力色域における写像色相上の最大彩度点と等彩度である座標点を、前記仮想入力最大彩度点として設定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
さらに、前記写像手法設定手段で設定された最大彩度点写像手法と、予め用意された複数の最大彩度点写像手法とから、いずれか1つを選択する写像手法選択手段を有し、
前記色変換処理手段は、前記写像手法選択手段で選択された最大彩度点写像手法に基づく色変換処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記写像手法選択手段で選択可能な、予め用意された複数の最大彩度点写像手法は、
前記入力色域における最大彩度点を出力色域において色相上の明度彩度距離最小点に再現する第1の写像手法と、
前記入力色域における最大彩度点を出力色域において色相上の最大彩度点に再現する第2の写像手法と、
を含むことを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
さらに、前記写像手法設定手段で設定された最大彩度点写像手法による写像結果を表示する写像結果表示手段を有することを特徴する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
さらに、前記写像手法選択手段で選択可能な最大彩度点写像手法による写像結果を表示する写像結果表示手段を有することを特徴する請求項4または5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
さらに、前記色変換処理手段による色変換結果を表示する色変換結果表示手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記色変換結果表示手段は、複数の最大彩度点写像手法による色変換結果を表示することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記写像手法設定手段によって色相ごとに異なる最大彩度点写像手法が設定された場合に、前記色変換処理手段は、該色相ごとの最大彩度点の写像点結果座標を合成した座標点を、入力色域における色相上の最大彩度点の写像点として、色変換プロファイルを作成することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
入力装置における入力色域内の画像データを出力装置における出力色域内の画像データに変換する画像処理装置の制御方法であって、
入力色域における色相断面上の最大彩度点を出力色域内の座標点に変換する、最大彩度点写像手法を設定する写像手法設定ステップと、
前記写像手法設定ステップにおいて設定された最大彩度点写像手法に基づいて色変換プロファイルを作成する色変換処理ステップと、
を有することを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項12】
コンピュータ上で実行されることによって、該コンピュータを請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画像処理装置として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−160307(P2008−160307A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344668(P2006−344668)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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