説明

画像処理装置およびその方法

【課題】 画像データの周期性と画像形成プロセスの変動の周期性による画質劣化の発生を判定する。
【解決手段】 プリンタコントローラ10は、画像データ周期性算出部13により画像データの周期性を算出し、プロセス周期記憶部14からプリンタエンジン20における画像形成プロセスの変動の周期性を取得する。そして、プリンタコントローラ10は、干渉周波数算出部15により画像データの周期性と変動の周期性から干渉周波数を算出し、干渉周波数に基づき、プリンタエンジン20によって画像データから画像を形成した場合の画質劣化の発生を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データの周期性と画像形成プロセスの変動の周期性によって発生する画質劣化に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式や電子写真方式などの画像形成装置の画像形成プロセスには、数多くの周期的な変動が存在する。例えばインクジェット方式の場合、分割駆動プロック数、紙送り幅、キャリッジ振動などの周期的な変動がある。また、電子写真方式の場合、レーザ出力強度のむら、主走査位置のずれ、レーザ光の本数、レーザ光の間隔のむら、ポリゴンミラーの面むら、感光体の回転むらなどの周期的な変動がある。画像形成プロセスの周期的な変動同士が干渉したり、画像形成プロセスの周期的な変動と画像データの周期性が干渉すると、印刷画像に低周波の濃度むらが発生する。
【0003】
干渉する画像形成プロセスの変動同士を特定するために、既知の固有振動数をもつ物理現象の干渉周波数の中から低周波の干渉が現れる組み合わせを特定する発明が提案されている(例えば、特許文献1)。また、画像形成装置のハーフトーンスクリーンを、画像形成プロセスの変動と干渉をしないように、設計する発明が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0004】
近年、インクジェット方式や電子写真方式の画像形成装置の画質向上に伴い、これら画像形成装置が校正用のプルーファとして使われることが多くなった。印刷機が出力する印刷物は、多くの場合、網点画像であるから、プルーファも網点画像を出力することが多い。網点画像は、画像形成プロセスの変動と干渉すると、許容できない画像劣化が発生する問題がある。
【0005】
図1により網点画像の一例を示し、図2により許容できない画像劣化を説明する。例えば、複数本のレーザ光を使用する電子写真方式の画像形成装置において、レーザ光の本数が網点の周期に干渉する場合、図1に示す画像を印刷すれば図2に示すような低周波の濃度むら(以下、横筋)が発生する。
【0006】
特許文献1の発明は、上記の許容できない画像劣化について干渉の原因を予測することができるが、干渉を低減するための処理までは提案しない。また、プルーファのように網点画像を直接印刷する場合、事前に設計したハーフトーンスクリーンを使用することができず、特許文献2の発明では、プルーファで発生する問題に対応することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-341397公報
【特許文献2】特開2007-156394公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、画像データの周期性と画像形成プロセスの変動の周期性による画質劣化の発生を判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
【0010】
本発明にかかる画像処理は、画像データの周期性を算出し、形成手段における画像形成プロセスの変動の周期性を取得し、前記画像データの周期性と前記変動の周期性から干渉周波数を算出し、前記干渉周波数に基づき、前記形成手段によって前記画像データから画像を形成した場合の画質劣化の発生を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像データの周期性と画像形成プロセスの変動の周期性による画質劣化の発生を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】網点画像の一例を示す図。
【図2】許容できない画像劣化を説明する図。
【図3】実施例の画像処理装置の構成例を説明するブロック図。
【図4】プリンタエンジンの構成例を説明する図。
【図5】出力画像予測部が提供するユーザインタフェイスの一例を説明する図。
【図6】干渉抑制処理設定部が提供するユーザインタフェイスの一例を説明する図。
【図7A】干渉抑制処理を説明するフローチャート。
【図7B】干渉抑制処理を説明するフローチャート。
【図8】干渉抑制処理の効果を説明する図。
【図9】干渉抑制処理の効果を説明する図。
【図10】実施例2のプリンタエンジンの構成例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかる実施例の画像処理を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1では、電子写真方式の画像形成装置を例に説明する。しかし、実施例1の画像処理は、電子写真方式の画像処理装置に限らず、インクジェット方式を含む他の方式の画像処理装置に適用することができる。
【0015】
[装置の構成]
図3のブロック図により実施例の画像処理装置の構成例を説明する。プリンタコントローラ10は、図示しないマイクロプロセッサ(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)などから構成される。そして、外部から画像データを入力し、入力した画像データをプリンタエンジン20に供給して、画像データが表す画像を印刷する。さらに、後述する干渉抑制処理の設定、画像データの周期の算出、プロセス周期の記憶、干渉周波数の算出、画像結果の予測と提示、干渉の抑制処理などを行う。
【0016】
画像データ格納部12は、入力部18を介して入力された画像データを格納するメモリである。画像データ周期算出部13は、画像データ格納部12が格納する画像データの周期を算出する。プロセス周期記憶部14は、プリンタエンジン20の画像形成プロセスに固有の変動(以下、プロセス変動)の周期を格納するメモリである。干渉周波数算出部15は、画像データ周期算出部13が算出した周期と、プロセス周期記憶部14が記憶する周期から印刷される画像に現れる干渉周波数を算出する。
【0017】
出力画像予測部16は、算出された干渉周波数から印刷される画像を予測し、予測した画像を操作部30のモニタを介してユーザに提示する。干渉抑制処理設定部11は、干渉抑制処理部17が実行する干渉抑制処理や干渉許容値の設定などを行う。干渉抑制処理部17は、干渉抑制処理設定部11による設定に従い、干渉を低減する二値化方法の算出し画像データを二値化する、または、プロセス変動の周期を調整するなどの干渉抑制処理を行う。
【0018】
プリンタエンジン20は、プリンタエンジン制御部21と、図示しない複数のデバイス、複数のセンサから構成される。なお、デバイスとは、像担持体や紙搬送系の駆動に用いるモータなどである。また、センサとは、温度センサ、湿度センサ、濃度センサ、速度センサ、位置センサなどである。プリンタエンジン制御部21は、プリンタコントローラ10から入力される制御情報、および、各センサから取得した情報に基づき、各デバイスを制御する。
【0019】
●プリンタエンジン
図4によりプリンタエンジン20の構成例を説明する。感光ドラム201は、金属製のドラム基体の外周面にOPC(有機半導体)などによる感光層を有し、図示しない駆動手段によって回転駆動される。感光ドラム201の周囲には、感光ドラム201に静電潜像を形成する露光部220、トナーによって静電潜像を現像する現像部240、トナー像を記録媒体に転写する転写部250が配置されている。さらに、感光ドラム201を帯電させる帯電部202、転写されなかったトナーを回収するクリーナ206などが配置されている。
【0020】
帯電部202は、感光ドラム201の表面に接触するように配置された図示しない帯電ローラと、帯電ローラに帯電バイアスを印加する帯電バイアス電線を有し、感光ドラム201の表面を一様に帯電する。露光部220は、レーザデバイス221、ポリゴンミラー222、f-θレンズ223などを有する。レーザドライバ211は、プリンタエンジン制御部21から入力されるビデオ信号に基づき、レーザデバイス221を駆動する。露光部220は、感光ドラム201に複数のレーザ光を照射して静電潜像を形成する。
【0021】
現像部240は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの四色の現像剤(トナー)をそれぞれ収容する現像器241〜244を有し、静電潜像をトナーを付着させてトナー像を形成する。転写部250は、円筒状に形成された像担持体である中間転写ドラム251を有し、トナー像は中間転写ドラム251に一次転写される。さらに、中間転写ドラム251の下方に転写ベルト252が配置され、中間転写ドラム251に転写された四色のトナー像は、転写ベルト252によって搬送される記録紙208に一括して二次転写される。記録紙に転写されたトナー像は、定着器207によって加熱、加圧されて記録紙208に定着される。
【0022】
センサ231は、感光ドラム201の回転速度を検出する。感光体が円筒形の場合、センサ231は、ロータリエンコーダのような角速度を検出するセンサでよい。あるいは、感光体の表面または裏面に静電潜像の移動方向(副走査方向)に一定間隔のマークを形成し、当該マークをセンサで検知して速度を検出してもよい。
【0023】
[ユーザインタフェイス]
図5により出力画像予測部16が提供するユーザインタフェイス(UI)の一例を説明する。出力画像予測部16は、算出された干渉周波数から印刷画像を予測し、予測画像と印刷時間をUIの「補正なし」欄163に表示する。また、干渉抑制処理部17が画像を補正した場合の印刷画像と印刷時間を予測し、それらをUIの「画像補正」欄164に表示する。さらに、干渉抑制処理部17がプロセス変動を調整した場合の印刷画像と印刷時間を予測し、それらをUIの「プロセス調整」欄165に表示する。
【0024】
ユーザは、操作部30のモニタに表示されるUIによって、予測される出力画像や印刷時間を把握する。そして、予測される出力画像や印刷時間に基づき、干渉抑制処理の設定を指示するために、干渉抑制処理設定ボタン161を押す。
【0025】
図6により干渉抑制処理設定部11が提供するUIの一例を説明する。干渉抑制処理設定ボタン161が押されると、干渉抑制処理設定部11は、操作部30のモニタに図6に示すUIを表示する。干渉抑制処理設定部11が提供するUIは、画像と画像形成プロセスの干渉発生時に警告を出すか否かを設定するチェックボックス301、干渉周波数の許容値を設定するコンボボックス302を有する。コンボボックス302を操作すると、例えば、直感的な許容値として「高画質」「普通」「低画質」「カスタム」を選択することができる。
【0026】
許容値は、空間周波数であり(以下、許容空間周波数fthと呼ぶ)、視覚伝達関数(visual transfer function、VTF)などに基づき設定する。VTFは、人間の視覚の空間周波数に対する感度を表す曲線である。VTFの文献としては、R. Pdooley「Prediction Brightness Appearance at Edges Using Linear and Non-Linear Visual Describing Functions」APSE Annual Meeting 1975などがある。「高画質」を設定した場合、「普通」「低画質」に比べて、より空間周波数が高い細かい濃度変化に対応する空間周波数が許容空間周波数fthに設定される。つまり、許容空間周波数fthは「高画質」>「普通」>「低画質」の順になる。また、例えば、プリンタエンジン20が再現可能な空間周波数の上限がわかる場合、その空間周波数を「カスタム」として設定すればよい。
【0027】
また、ラジオボタン303、306は、干渉抑制処理の実行/非実行を設定するボタンである。ユーザは、「抑制処理ON」ボタン303を押すと、ラジオボタン304、305によって補正または調整対象として画像または画像形成プロセスを選択することができる。なお、補正または調整対象をマニュアル選択する例を説明するが、補正または調整対象を自動的に決めてもよいし、両方を行ってもよい。また、ユーザは、「抑制処理OFF」ボタン306を押すと、チェックボックス307により、干渉抑制のための二値画像の作成に適切なAMスクリーンの角度と線数を表示するか否かを選択することができる。なお、二値画像の作成方法は、AMスクリーンに限らず、FMスクリーン、グリーンノイズ法、その他の二値化方法を用いてもよい。
【0028】
なお、詳細な説明は省略するが、ユーザは、図6に示すUIを操作部30の操作によって随時呼び出すことができる。
【0029】
[干渉抑制処理]
図7A、図7Bのフローチャートにより干渉抑制処理を説明する。なお、干渉抑制処理は、プリンタコントローラ10のCPUによって実行される。
【0030】
プリンタコントローラ10は、入力部18を介して入力した網点画像(二値画像)の画像データを画像データ格納部12に格納すると、画像データ周期算出部13により二値画像の周期を算出する(S400)。画像データの周期は、例えば、画像データを二次元フーリエ変換し、フーリエ変換後のデータのピークから算出すればよい。
【0031】
次に、プリンタコントローラ10は、プロセス周期記憶部14からプロセス変動の周期を取得する(S401)。プロセス周期記憶部14は、プロセス変動の周期に関する情報をプリンタエンジン20のセンサから動的に取得し記憶てもよいし、予め記憶していてもよい。
【0032】
次に、プリンタコントローラ10は、干渉周波数算出部15により、画像データの周期とプロセス変動の周期から干渉周波数を算出する(S402)。干渉周波数は、例えば、プロセス変動の周期と画像データの周期の差から算出する。そして、干渉周波数fbが干渉抑制処理設定部11に設定された許容周波数fth(コンボボックス302の設定に相当する)を超えるか否かを判定する(S403)。そして、fb>fthであれば、干渉による画質劣化は許容できるとして二値画像をプリンタエンジン20に出力し(S417)、干渉抑制処理を終了する。
【0033】
一方、fb≦fthであれば、許容できない画質劣化が発生する可能性がある。プリンタコントローラ10は、干渉抑制処理設定部11の設定(チェックボックス301に相当)が警告を出すか否かを判定し(S404)、警告を出す場合は操作部30を介してユーザに画像劣化の発生を警告する(S405)。その際、出力画像予測部16に図5に示すUIを操作部30のモニタに表示させる。さらに、干渉周波数fbをモニタに表示してもよい。そして、図5に示すUIの「OK」ボタン162、図6に示すUIの「OK」ボタン308または「キャンセル」ボタン309が押されるのを待ち(S406)、何れかのボタンが押されると干渉抑制処理設定が終了したと判断する。
【0034】
警告を出さない場合、あるいは、干渉抑制処理設定が終了したと判断した場合、プリンタコントローラ10は、干渉抑制処理設定部11の設定に従い、干渉抑制処理を行うか否か(ラジオボタン303、306に相当)を判定する(S407)。干渉抑制処理を行わない場合、二値化方法を提示するか否か(チェックボックス307に相当)を判定する(S408)。そして、二値化方法を提示する場合は、干渉抑制処理部17により干渉を低減させる二値化方法を決定し、操作部30のモニタに提示し(S409)、二値画像をプリンタエンジン20に出力し(S417)、干渉抑制処理を終了する。
【0035】
例えば、プリンタコントローラ10は、利用可能なAMスクリーンの線数と角度それぞれにより多値画像を二値化し、得られた二値画像の周期性とプロセス変動の周期性から干渉周波数fbを算出する。そして、fb>fthが得られるAMスクリーンの線数と角度を干渉を低減させる二値化方法にする。
【0036】
干渉抑制処理を行う場合、プリンタコントローラ10は、干渉抑制処理設定部11の設定に従い、二値画像を変更するか否か(ラジオボタン304、305に相当)を判定する(S410)。二値画像を変更する(「画像調整」ボタン304がオンに相当)場合は、干渉抑制処理部17により二値画像を多値画像に変換する(S411)。なお、多値画像への変換は、例えば、二値画像の二値データ(0または1)を多値データに変換し(例えば0または255)、さらにガウシアンフィルタなどによってぼかし処理を施し、0〜255の範囲の値をもつ多値画像にすればよい。また、二値画像の多値化に関しては、三田良信ほか「ニューラルネットワークによる二値画像の高精細多値復元」ジャパン・ハードコピー、'90、NIP-24、pp.233-236に提案された方法を用いてもよい。
【0037】
次に、プリンタコントローラ10は、干渉抑制処理部17により、干渉を低減させる二値化方法を決定する(S412)。そして、決定した二値化方法によって多値画像を二値化処理して(S413)、二値画像をプリンタエンジン20に出力し(S417)、干渉抑制処理を終了する。
【0038】
他方、二値画像を変更しない(「プロセス調整」ボタン305がオンに相当)場合、プリンタコントローラ10は、干渉周波数算出部15の算出結果から画像データと干渉する画像形成プロセスを特定する(S414)。そして、干渉抑制処理部17により、特定した画像形成プロセスの変動周期の調整方法を決定する(S415)。そして、特定した画像形成プロセスの変動周期を調整するための制御命令をプリンタエンジン制御部21に出力し(S416)、二値画像をプリンタエンジン20に出力し(S417)、干渉抑制処理を終了する。
【0039】
例えば、プリンタコントローラ10は、画像形成プロセスを調整した場合の変動周期と画像データの周期性から干渉周波数をfbを算出する。そして、fb>fthになる変動周期が得られる調整方法に決定する。
【0040】
●プロセス変動の周期の調整
以下では、画像形成プロセスの変動周期の調整例として、ポリゴンミラーの面数とレーザ本数の調整を説明する。
【0041】
ポリゴンミラー222は、一般に、対向面を同時に磨いて作成される。そのため、対向面同士の特性はほぼ同じという特徴がある。そこで、ポリゴンミラー222の使用する面数と画像が干渉する場合は、一部の面の使用をやめて、ある対向面だけを使用すれば、干渉を低減することができる。ポリゴンミラー222の使用する面を低減するには、ドラムの回転速度、記録紙の搬送速度を(使用面数/6)倍にし、レーザ走査周期を(6/使用面数)倍にする。
【0042】
また、マルチレーザを使用してレーザ本数と画像データの周期が干渉する場合は、レーザ本数を少なくすることで干渉を抑制することができる。レーザ本数を減らすには、低減後のレーザ本数に合わせてドラムの回転速度、記録紙の搬送速度を減速する。
【0043】
図8、図9により干渉抑制処理の効果を説明する。図8は、図1に示す網点画像に画像調整(AMスクリーンの線数と角度を変更)による干渉抑制処理を施した例である。また、図9は、図1に示す網点画像に、プロセス調整(レーザ本数の変更)による干渉抑制処理を施した例である。図8、9に示す画像においては、図2に示す画質劣化である横筋が低減されている。
【0044】
このように、画像データとプロセスの周期的な変動の干渉により許容できない画質劣化が生じる場合は、ユーザの設定に従い、干渉抑制処理を行うことができる。
【実施例2】
【0045】
以下、本発明にかかる実施例2の画像処理を説明する。なお、実施例2において、実施例1と略同様の構成については、同一符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0046】
実施例2では、インクジェット方式の画像処理装置を例に説明する。しかし、実施例2の画像処理は、インクジェット方式の画像処理装置に限らず、電子写真方式を含む他の方式の画像処理装置に適用することができる。
【0047】
実施例2の画像処理装置は、図3に示す構成と略同様の構成を有する。図10により実施例2のプリンタエンジン20の構成例を説明する。図10は、プリンタエンジン20がシリアル型のインクジェット方式の場合の構成例を示している。装置内のガイドレール602は主走査方向に沿って設置されている。ガイドレール602にはキャリッジ603が摺動可能に装着され、キャリッジ603には記録ヘッド601が搭載されている。
【0048】
記録ヘッド601には、ヘッド本体(インク吐出部)に対して、異なる色のインクを収容した複数のインクタンク、例えばブラックBk、シアンC、マゼンタM、イエローYのインクタンクがそれぞれ着脱可能に装着される。ヘッド本体の正面(図10においては下面)には、各色インクに対応する複数のノズル列が配設されている。なお、インク吐出部とインクタンクが分離不能な構成でもよいし、キャリッジ603にインク吐出部だけを搭載し、装置本体の他の部位に設けたインクタンクからチューブなどを介してインクを供給する構成でもよい。
【0049】
キャリッジ603は、主走査モータに駆動され、ガイドレール602上を往復移動する。これにより、記録ヘッド601は主走査方向に往復移動される。また、記録紙604は、装置本体の背面側に設けられたシートフィーダ608から、記録紙604の被記録面を平坦に規制するプラテン606上に供給され、フィードローラ607により副走査方向に搬送される。
【0050】
記録ヘッド601が主走査方向に往復移動されながら、その複数のノズル列の各ノズルが駆動されて、インク液滴が吐出されることにより、記録紙604に画像が記録される。つまり、記録ヘッド601の一回の主走査で一走査分の記録を行い、その後、記録紙604を一走査分に対応する所定量だけ副走査方向に搬送する動作を繰り返して、順次、画像が記録される。
【0051】
記録される画像の品位は、記録ヘッド601単体の性能に依存する部分が大きい。例えば、記録ヘッド601の吐出口の形状や、吐出ヒータやピエゾ素子などのばらつきなど、記録ヘッド601の製作工程において生じる僅かな誤差が、吐出されるインクの吐出量や方向に大きく影響する。その結果、僅かな誤差が、形成する画像の濃度むらを発生させ、画質劣化の原因になる。
【0052】
このような濃度むらの発生を抑制するための技術として、マルチパス記録方式が知られている(例えば、特開2002-096455公報参照)。この技術によれば、画像処理と印刷制御を組み合わせることで、白筋や濃度むらなどによる画質の低下を抑えつつ、画像の高速形成が可能になる。現在、多くのインクジェットプリンタにおいてマルチパス記録方式が使われている。本実施例も、マルチパス記録方式が採用されているとする。
【0053】
実施例2における干渉抑制処理は、実施例1と同様である。ただし、プロセスの変動周期の調整対象が異なる。プロセスの変動周期の調整対象としては、マルチパス記録方式のパス数の変更、および、印刷方向の切り替えを説明する。
【0054】
マルチパス記録方式のパス数と画像が干渉する場合、パス数を変えることで干渉を抑制することができる。パス数を変えるには、例えば、駆動パターンと紙送量を変更する。また、双方向印刷の往復周期と画像が干渉する場合、例えば印刷方向を片方向のみにして干渉を抑制する。
【0055】
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データの周期性を算出する周期性の算出手段と、
形成手段における画像形成プロセスの変動の周期性を取得する取得手段と、
前記画像データの周期性と前記変動の周期性から干渉周波数を算出する干渉周波数の算出手段と、
前記干渉周波数に基づき、前記形成手段によって前記画像データから画像を形成した場合の画質劣化の発生を判定する判定手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、前記画質劣化が発生すると判定した場合、警告を発する警告手段を有することを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項3】
さらに、前記画像データの周期性と前記変動の周期性の間の干渉を低減する二値化方法を決定する決定手段と、
前記二値化方法を表示する表示手段とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された画像処理装置。
【請求項4】
さらに、前記画像データの周期性と前記変動の周期性の間の干渉を低減する二値化方法を決定する決定手段と、
前記二値化方法により前記画像データを二値化処理する処理手段とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された画像処理装置。
【請求項5】
さらに、前記画像データの周期性と前記変動の周期性の間の干渉を低減するように前記画像形成プロセスを調整する調整手段を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された画像処理装置。
【請求項6】
さらに、前記画像データから、前記形成手段によって形成される画像、および、前記干渉を低減した場合に前記形成手段によって形成される画像を予測する予測手段と、
前記予測された画像を表示する表示手段とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された画像処理装置。
【請求項7】
画像データの周期性を算出し、
形成手段における画像形成プロセスの変動の周期性を取得し、
前記画像データの周期性と前記変動の周期性から干渉周波数を算出し、
前記干渉周波数に基づき、前記形成手段によって前記画像データから画像を形成した場合の画質劣化の発生を判定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
画像処理装置を制御して、請求項1から請求項6の何れか一項に記載された画像処理装置の各手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−25573(P2011−25573A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174738(P2009−174738)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】