画像処理装置及び画像処理プログラム
【課題】カラー画像の明度成分だけでなく色彩成分(色相及び彩度成分あるいは色差成分など)について、使用されている色に応じてその境界を表現した二値画像を出力する画像処理装置を提供する。
【解決手段】入力されたカラー画像の明度以外の色彩成分について第1エッジ抽出部2でエッジを抽出するとともに、カラー画像の明度成分について第2エッジ抽出部4でエッジを抽出する。合成部5は、第1エッジ抽出部2及び第2エッジ抽出部4で抽出したエッジを合成する。階調変換部7では、合成部5で合成されたエッジ成分に従って、カラー画像の明度成分について階調変換を行う。二値化部6は、階調変換部7で階調変換された明度成分について二値化する。
【解決手段】入力されたカラー画像の明度以外の色彩成分について第1エッジ抽出部2でエッジを抽出するとともに、カラー画像の明度成分について第2エッジ抽出部4でエッジを抽出する。合成部5は、第1エッジ抽出部2及び第2エッジ抽出部4で抽出したエッジを合成する。階調変換部7では、合成部5で合成されたエッジ成分に従って、カラー画像の明度成分について階調変換を行う。二値化部6は、階調変換部7で階調変換された明度成分について二値化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばカラー画像を白黒のプリンタで出力する場合などのように、カラー画像を白黒画像に変換することが行われている。カラー画像を白黒画像に変換する従来技術として、8色、16色程度のカラー画像であれば各色と白黒の階調とを対応づけて変換することにより、カラー画像を白黒により再現できる。しかし、フルカラー画像では1677万色以上の色が指定可能であるため、各色を白黒の階調と対応づけることは困難であるし、対応づけても利用者が階調の違いによって色の違いを認識できない場合も考えられる。
【0003】
このように、カラー画像における色の違いを利用者が分かるように白黒画像へ一律に変換することは困難である。そのため、例えばカラー画像の1要素、例えば明度のみに着目して白黒画像へ変換することになる。この場合、他の要素について、例えば色相や彩度が異なっていても明度が同じであれば同じ白黒階調に変換されることになる。
【0004】
例えば特許文献1においては、基本的には白黒階調変換して擬似中間調処理を行うが、色相が異なる文字線画を検出して白黒階調変換後に強調処理を施して擬似中間調処理を行う。これにより、色相が異なる文字線画については、その色相の違いを濃度の違いにより表現し、文字線画を再現するようにしている。
【0005】
また、例えば特許文献2においては、赤、緑、青の色成分ごとにエッジを検出し、それらのエッジのうち、白黒のエッジでないものを、白黒2値化した画像に重ね合わせて出力している。このような処理によって、色相の違いだけでなく、濃淡の違う色の境界が黒線として白黒画像中に表現される。この色の境界の黒線は、色の濃淡にかかわらず挿入され、薄い色の境界にも濃い線により表現されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−252773号公報
【特許文献2】特許第3230479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、カラー画像を白黒画像に変換する際に、カラー画像の明度成分だけでなく色彩成分(色相及び彩度成分あるいは色差成分など)について、使用されている色に応じてその境界を表現した画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に記載の発明は、カラー画像の明度以外の色彩成分についてのエッジを抽出する第1のエッジ抽出手段と、前記カラー画像の明度成分についてエッジを抽出する第2のエッジ抽出手段と、前記第1のエッジ抽出手段及び前記第2のエッジ抽出手段により抽出したエッジを合成する合成手段と、前記合成手段により合成されたエッジ成分に従って前記カラー画像の明度成分について階調変換を行う階調変換手段と、前記階調変換手段で階調変換された明度成分について二値化する二値化手段を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0009】
本願請求項2に記載の発明は、カラー画像の明度以外の色彩成分についてのエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段と、前記カラー画像の明度成分についてエッジを抽出する第2のエッジ抽出手段と、前記第2のエッジ抽出手段で抽出したエッジ成分と前記エッジ強度算出手段で算出したエッジ強度を加算する加算手段と、前記加算手段による加算結果に従って前記カラー画像の明度成分について階調変換を行う階調変換手段と、前記階調変換手段で階調変換された明度成分について二値化する二値化手段を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0010】
本願請求項3に記載の発明は、コンピュータに、請求項1または請求項2に記載の画像処理装置の機能を実行させることを特徴とする画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本願請求項1に記載の発明によれば、カラー画像を白黒画像に変換する際に、カラー画像中で使用されている色に応じてその境界を表現することができ、明度のエッジをはっきりと表現することができる。
【0012】
本願請求項2に記載の発明によれば、カラー画像を白黒画像に変換する際に、カラー画像中で使用されている色彩成分のエッジ強度に応じ、明度のエッジ強度についても加味して境界を表現することができる。
【0013】
本願請求項3に記載の発明によれば、本願請求項1または請求項2に記載の発明の効果と同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】平滑化部の一例を示すブロック図である。
【図3】合成部における合成処理の一例の説明図である。
【図4】第1エッジ抽出部でエッジを抽出し、第2エッジ抽出部でエッジを抽出しなかった場合の合成処理の具体例の説明図である。
【図5】二値化部の処理の一例の説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態の動作の一例における各処理過程での画像の具体例の説明図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における変形例を示すブロック図である。
【図9】合成部における合成処理の別の例の説明図である。
【図10】明度合成部で一方の値を取り、かつ第1エッジ抽出部でエッジを抽出した場合の合成処理の具体例の説明図である。
【図11】二値化部の処理の別の例の説明図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態における動作の別の例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第1の実施の形態の動作の別の例における各処理過程における画像の別の具体例の説明図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態における各処理過程での画像の具体例の説明図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態の変形例を示すブロック図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態を示すブロック図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態の変形例を示すブロック図である。
【図19】本発明の各実施の形態の機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示すブロック図である。図中、1はフィルタ部、2は第1エッジ抽出部、3は平滑化部、4は第2エッジ抽出部、5は合成部、6は二値化部、11は色彩エッジ検出部、12は色彩エッジ演算部、13は浮動二値化部である。この例では入力されるカラー画像はL* ,a* ,b* 成分からなる画像であるとする。もちろん、このほかの明度あるいは輝度とその他の成分からなる画像であってもよい。また、明度あるいは輝度の成分を有しない例えばRGB成分からなる画像であれば、明度あるいは輝度の成分を有する色空間への色空間変換を予め行っておけばよい。なお、カラー画像の明度あるいは輝度成分以外の成分をまとめて色彩成分と呼んでいる。この例ではa* ,b* 成分が色彩成分である。
【0016】
フィルタ部1は、カラー画像の明度以外の色彩成分に対して、第1エッジ抽出部2で行うエッジ抽出の支障となるノイズ成分などを除去するフィルタ処理を行う。例えば、指定範囲の画素値の中央値(メジアン)を処理後の画素値とするメジアンフィルタなどで構成すればよい。なお、このフィルタ部1を設けずに構成してもよい。
【0017】
第1エッジ抽出部2は、カラー画像の明度以外の色彩成分についてのエッジを抽出する。この例では、フィルタ部1でフィルタ処理されたa* 成分及びb* 成分について、エッジ抽出処理を行う。第1エッジ抽出部2としては、ここでは色彩エッジ検出部11、色彩エッジ演算部12、浮動二値化部13を有している。
【0018】
色彩エッジ検出部11は、カラー画像のa* 成分及びb* 成分のそれぞれについてエッジ強度を算出する。エッジ強度の算出方法は任意である。
【0019】
色彩エッジ演算部12は、a* 成分のエッジ強度及びb* 成分のエッジ強度を合成した色彩エッジ強度を算出する。例えば二乗和の平方根を算出すればよい。もちろん他の方法でもよい。
【0020】
浮動二値化部13は、色彩エッジ演算部12により算出された色彩エッジ強度に対して浮動二値化処理を行う。浮動二値化処理は、処理対象の画素値と、その周辺の画素値の平均値を閾値として比較し、処理対象の画素の値を1または0に二値化するものである。このとき、色彩エッジ強度がほぼ一定の領域では小さな色彩エッジ強度の違いにより二値化結果が変化してしまうため、処理対象の画素値と閾値との差(絶対値)が所定以下では0(あるいは1)とするとよい。なお、この浮動二値化部13ではエッジか否かを判断すればよく、エッジ強度を二値化の対象としていることから、固定閾値を用いた二値化処理で代用してもよい。
【0021】
浮動二値化部13からの出力(すなわち第1エッジ抽出部2からの出力)にはエッジ部分が抽出されているが、以下の説明では、a* 成分またはb* 成分でエッジが抽出された画素を1、それ以外の部分の画素を0とした二値の色彩エッジ画像が得られるものとする。
【0022】
平滑化部3は、カラー画像の明度成分について平滑化処理を行う。例えばカラー画像中に網点領域などがあった場合に個々の網点を平滑化したり、あるいはノイズなどを低減する。平滑化処理後の明度成分の画像から第2エッジ抽出部4でエッジを抽出するため、この平滑化部3ではなるべくエッジ成分が保存されるような平滑化処理を行うことが望ましい。そのような平滑化部3の一例を図2に示す。
【0023】
図2は、平滑化部の一例を示すブロック図である。図中、21は差分絶対値算出部、22は仮平滑化係数決定部、23は正規化部、24は畳み込み演算部である。差分絶対値算出部21は、平滑化処理の対象となる注目画素を中心とする所定の大きさの参照領域を設定し、注目画素の値(Viとする)と参照領域内の他の画素の値(Vjとする)との差分の絶対値(Aj=|Vi−Vj|)をそれぞれ算出する。
【0024】
仮平滑化係数決定部22は、参照領域の各画素に対応する平滑化係数(Cj)を仮決定する。平滑化係数Cjを仮決定する方法として、ここでは、ある単調減少関数f()を設定し、Cj=f(Aj)により平滑化係数Cjを仮決定することができる。f()が単調減少関数であることから、エッジのように差分の絶対値が大きい画素については平滑化係数Cjは小さい値となり注目画素への影響を減らすことができ、逆に非エッジ部のように差分の絶対値が小さい画素については平滑化係数Cjを大きい値として平滑化の効果を大きくすることができる。単調減少関数f()は任意であるが、例えば簡単にはCj=1−(1/max(Aj))・Ajのような線形関数や、2次以上の単調減少関数や指数単調減少関数など、様々な関数を適用可能である。なお、式中のmax(Aj)はAjの最大値である。
【0025】
正規化部23は、仮平滑化係数決定部22で仮に決定された平滑化係数Cjを正規化する。すなわち、参照領域内の平滑化係数Cjの和が1となるように演算を行う。具体的には正規化後の平滑化係数をCj’とするとき、Cj’=Cj/ΣCjにより求めることができる。この正規化は、一般に平滑化処理が平滑化係数の和を1としたフィルタ処理であることによる。
【0026】
畳み込み演算部24は、参照領域内の各画素値と正規化部23で得られた正規化された平滑化係数とを用いて、いわゆる畳み込み演算を行う。畳み込み演算は、参照領域内の各画素値と正規化部23で得られた正規化された平滑化係数とを乗算した上で総和を演算することにより行われる。すなわち、演算後の注目画素の値をVi’としたとき、Vi’=ΣCj’・Vjによって演算することができる。
【0027】
このように、この平滑化処理では画像に応じて平滑化係数を決定し、その際に画素値の差分の絶対値の大きさが大きいほど平滑化係数を小さく設定するので、エッジ領域ではエッジが保存され、非エッジ領域では平坦な領域ほど強く平滑化処理が施されることになる。なお、平滑化部3を設けずに構成してもよい。
【0028】
図1に戻り、第2エッジ抽出部4は、平滑化部3で平滑化処理を施した後の明度成分の画像についてエッジを抽出する。エッジを抽出する方法は任意であるが、例えば浮動二値化によりエッジを抽出すればよい。浮動二値化部13でも説明したように、浮動二値化処理は、処理対象の画素値と、その周辺の画素値の平均値を閾値として比較し、処理対象の画素の値を1または0に二値化するものである。このとき、処理対象の画素値と閾値との差(絶対値)が所定以下では例えば0としておけば、明度が平坦な部分では0となる。これにより、濃度差があるエッジ部分が1となって、エッジが抽出されることになる。
【0029】
合成部5は、第1エッジ抽出部2によりエッジが抽出された二値の画像と第2エッジ抽出部4によりエッジが抽出された二値の画像を合成する。図3は、合成部における合成処理の一例の説明図、図4は、第1エッジ抽出部でエッジを抽出し、第2エッジ抽出部でエッジを抽出しなかった場合の合成処理の具体例の説明図である。第1エッジ抽出部2によりエッジが抽出された(値‘1’)か否か(値‘0’)と、第2エッジ抽出部4によりエッジが抽出された(値‘1’)か否か(値‘0’)の組み合わせにより、合成後の値を図3に示すように決定する。
【0030】
すなわち、第1エッジ抽出部2の出力も第2エッジ抽出部4の出力も‘0’であり、いずれもエッジとして検出していなければ、合成後の値は‘0’としてエッジでないとする。また、第1エッジ抽出部2の出力は‘0’であってエッジを検出していない場合でも、第2エッジ抽出部4の出力が‘1’であり、エッジを検出していた場合には、合成後の値を‘1’としてエッジであるとする。
【0031】
第1エッジ抽出部2の出力が‘1’であり、エッジを検出している場合に、第2エッジ抽出部4の出力が‘0’であってエッジを検出していない場合には、基本的には合成後の値を‘1’としてエッジであるとする。ただし、その処理対象の画素の周囲の画素について第2エッジ抽出部4の出力を参照し、第2エッジ抽出部4によりエッジとして抽出した画素(値‘1’の画素)が所定数(a)以上存在する場合には、合成後の値を‘0’としてエッジとしない。
【0032】
これは、第1エッジ抽出部2と第2エッジ抽出部4の処理の違いによるものである。例えば図4(A)には、明度及び色彩とも周囲と異なる三角の図形が描かれたカラー画像を示している。図示の都合上、図形部分に斜線を施して示している。第1エッジ抽出部2では色彩のエッジをそのエッジの両側で抽出してしまうため、図4(B)に示すように図4(A)に示した図形のエッジよりも膨張したようなエッジ画像となる。一方、第2エッジ抽出部4では浮動二値化処理を行っているので、エッジ部の0または1の位置は保存され、図4(C)に示すようなエッジ画像が得られている。両者を比較すると、三角の図形のエッジの外側で、第1エッジ抽出部2でエッジとして抽出されたが第2エッジ抽出部4ではエッジとして抽出されていない画素が生じる。この画素についてエッジとはしないことによって、図4(D)に示すように、図形に即したエッジ成分が含まれたエッジ画像が合成されることになる。なお、図4(D)においてエッジ成分として残された部分は、第1エッジ抽出部2と第2エッジ抽出部4とでエッジ部として抽出した画素である。
【0033】
再び図1に戻り、二値化部6は、合成部5により合成されたエッジ画像を反映させて、カラー画像の明度成分について二値化する。図5は、二値化部6の処理の一例の説明図である。二値化部6は、図5(A)に示すように、入力されたカラー画像の明度成分(Lとする)と、第2エッジ抽出部4から出力される明度に関するエッジ画像(ELとする)と、合成部5で合成されたエッジ画像(ELCとする)を用いる。そして、図5(B)に従って二値化する。
【0034】
まず、合成されたエッジ画像(ELC)が‘1’の場合には、基本的には二値化出力は‘1’とする。しかし、エッジ画像(ELC)が‘1’であっても|ELC−EL|が‘1’の場合、すなわち明度成分のエッジ画像ELが‘0’である色彩成分のエッジの場合には、明度成分(L)を参照し、強調処理を施した後に擬似中間調の二値化処理を行う。これにより、明度が変化していなくても色彩が変化したエッジが存在していれば、そのエッジが利用者に視認されるような二値化結果が出力されることになる。
【0035】
このときの強調処理は、例えば図5(C)に示すような関数に従って行う。この例では、カラー画像の明度値を減少させるように設定した関数であり、擬似中間調の二値画像では、利用者にとって濃く見えるように変換している。もちろん、強調処理に用いる関数は任意であるし、強調処理の方法についても任意である。
【0036】
また、合成されたエッジ画像(ELC)が‘0’の場合には、エッジ以外の部分であるので基本的には明度成分に従って擬似中間調の二値化処理を行い、濃淡を再現する。なお、この例ではELCが‘0’の場合には|ELC−EL|が‘1’にはならない。
【0037】
このようにして二値化部6から出力される二値画像は、平坦部は擬似中間調により再現され、明度及び色彩成分のエッジについても再現される。利用者が出力された二値画像を参照した際には、濃淡により明るさの違いが視認される。また、同じ明るさでも色の違いは、エッジ部を強調処理して擬似中間調により二値化するので、それぞれの色の明るさに応じたエッジが表現され、色の違いが視認されることになる。例えば薄い色が隣接している部分では、単に黒い線を挿入するのではなく、その色の明るさより多少濃いエッジが挿入されることになる。
【0038】
図6は、本発明の第1の実施の形態における動作の一例を示すフローチャート、図7は、同じく各処理過程における画像の具体例の説明図である。なお、S31とS32〜S35の処理はいずれが先に行われてもよいし、並行して行ってもよい。
【0039】
以下の説明では図7(A)に示すカラー画像が処理対象として入力されたものとする。図示の都合上、濃淡や色の違いは斜線の間隔や方向などを異ならせたり交差させるなどにより示している。図7(A)に示したカラー画像の例では、4つの異なる画像により構成されている。左上は白色の背景に黒色で四角が描かれている。左下は白色の背景に灰色の四角が描かれている。右上は背景と四角との明度は同じであるがb* 成分が異なる色で背景及び四角が描かれている例を示している。右下は灰色の背景に、背景より濃い灰色の四角が描かれている。このようなカラー画像の明度成分は図7(B)に示すようになり、また、b* 成分は図7(C)に示すようになったとする。
【0040】
図6のS31において、処理対象のカラー画像の明度成分について、平滑化部3で平滑化処理を施し、第2エッジ抽出部4で例えば浮動二値化処理などによりエッジを抽出する。この処理によって、図7(B)に示した明度成分の画像から、図7(D)に示すような明度エッジ画像が得られる。
【0041】
また、処理対象のカラー画像の明度成分以外の色彩成分、ここではa* 成分及びb* 成分について、S32においてフィルタ部1でフィルタ処理を施した後、S33で第1エッジ抽出部2の色彩エッジ検出部11はa* 成分及びb* 成分のそれぞれについてエッジ強度を算出する。そしてS34において、色彩エッジ演算部12は色彩エッジ検出部11で得たa* 成分及びb* 成分のエッジ強度を合成し、S35において、浮動二値化部13は合成されたエッジ強度を浮動二値化処理する。これによって、図7(C)に示したb* 成分の画像(及びa* 成分の画像)から、図7(E)に示すような色彩エッジ画像が得られる。
【0042】
S36において、合成部5は第1エッジ抽出部2から出力された色彩成分からエッジを抽出した色彩エッジ画像と、第2エッジ抽出部4から出力された明度エッジ画像を合成する。図7に示す例では、図7(D)に示した明度エッジ画像と図7(E)に示した色彩エッジ画像とを合成する。これにより、図7(F)に示すような合成エッジ画像が得られる。この合成処理は例えば図3、図4で説明した方法で行われる。
【0043】
S37及びS38において、二値化部6は図5(B)に示したようにして二値化処理を行う。このとき、まず合成部5で合成された合成エッジ画像がエッジを示し、明度エッジ画像がエッジを示していない(|ELC−EL|=1)場合、すなわち色彩エッジ画像においてエッジを示している場合に、強調処理を行って濃度を調整する。そしてS38において、合成エッジ画像及び明度エッジ画像ともにエッジを示している場合を除き、擬似中間調による二値化処理を行う。なお、合成エッジ画像及び明度エッジ画像ともにエッジを示している場合には、そのまま‘1’とする。この二値化部6による二値化処理によって、図7(G)に示すような二値化された画像が出力されることになる。図7(G)に示すように、右上の1/4内の四角のエッジ部については、黒い線ではなく、擬似中間調によって表現されている。
【0044】
S39において、未処理の画素があるか否かを判定し、未処理の画素が残っていれば、S31に戻って未処理の画素に対する処理を繰り返す。全ての画素について処理を終えたら、図6に示した処理を終える。
【0045】
図8は、本発明の第1の実施の形態における変形例を示すブロック図である。図中、14は明度二値化部、15は明度合成部である。この変形例では、図1に示した構成に明度二値化部14と明度合成部15を加えている。
【0046】
明度二値化部14は、カラー画像の明度成分、ここでは平滑化部3で平滑化処理を施した後の明度成分について、例えば固定閾値を用いた二値化方式などによって二値化する。上述のように基本的には抽出したエッジを二値画像においてそのまま反映させることから、この明度二値化部14によって黒文字や黒線などを二値化してエッジとともに処理することにより、これらを確実に二値画像に反映させるようにしている。
【0047】
明度合成部15は、明度二値化部14で二値化された画像に、第2エッジ抽出部4で抽出されたエッジの画素を二値の一方の値として合成する。例えば二値を‘0’と‘1’とし、明度二値化部14で低明度部を‘1’とする場合には、第2エッジ抽出部4で抽出されたエッジ部分を‘1’として合成すればよい。以下の説明では、このように一方の値を‘1’として説明する。
【0048】
この明度二値化部14及び明度合成部15の追加により、合成部5は、明度合成部15で合成した画像に、第1エッジ抽出部2により抽出したエッジの画素を一方の値として合成することになる。図9は、合成部における合成処理の別の例の説明図、図10は、明度合成部15で一方の値を取り、かつ第1エッジ抽出部でエッジを抽出した場合の合成処理の具体例の説明図である。この変形例では、第2エッジ抽出部4の出力の代わりに明度合成部15で合成された画像における画素値を用いることになる。すなわち、第1エッジ抽出部2によりエッジが抽出された(値‘1’)か否か(値‘0’)と、明度合成部15により合成された画像における値が‘1’か‘0’かの組み合わせにより、合成後の値を図9に示すように決定すればよい。
【0049】
図9に示した例では、第1エッジ抽出部2がエッジとして検出せず、出力が‘0’であり、明度合成部15の出力も‘0’である場合には、合成後の値は‘0’とする。また、第1エッジ抽出部2がエッジを検出しておらず、出力が‘0’であっても、明度合成部15の出力が‘1’である場合には、合成後の値を‘1’とする。
【0050】
第1エッジ抽出部2の出力が‘1’であり、エッジを検出している場合に、明度合成部15の出力が‘0’である場合には、基本的には合成後の値を‘1’とする。ただし、この変形例では、その処理対象の画素の周囲の画素について明度合成部15の出力を参照し、明度合成部15の出力が‘1’の画素が所定数(a)以上存在する場合には、合成後の値を‘0’とする。この場合については図4を用いて既に説明したとおりである。
【0051】
また、第1エッジ抽出部2がエッジとして検出し、明度合成部15の出力も‘1’を出力している場合には、基本的には合成後の値を‘1’とする。ただし、その処理対象の画素の周囲の画素について明度合成部15の出力を参照し、明度合成部15の出力が‘1’の画素が所定数(b)以上存在する場合には、合成後の値を‘0’とする。
【0052】
これは、明度二値化部14により低明度の領域について‘1’が出力されたが、その領域内に色彩のエッジが存在していた場合に、その色彩のエッジを再現するためのものである。例えば図10(A)には、明度が周囲と同じ(非常に暗いとする)で色彩が周囲と異なる三角の図形が描かれたカラー画像を示している。図示の都合上、色彩の違いを斜線の方向を異ならせて示している。明度二値化部14では明度が同じであって非常に暗いため、例えば図10(C)に示すように図形及びその周囲とも‘1’となっている。明度合成部15からも、この領域については‘1’として出力される。
【0053】
しかし第1エッジ抽出部2では色彩のエッジを検出し、図10(B)に示すようにエッジ画像が出力される。このような場合には、例えば図3に示した合成処理を行うと、明度合成部15から‘1’が出力されている場合には、第1エッジ抽出部2の出力にかかわらず合成部5の出力は‘1’となる。そのため、色彩のエッジが反映されなくなってしまう。このような場合に色彩のエッジを二値画像に反映させるために、両方が‘1’の場合には周囲の明度合成部15の出力を参照し、図10(C)に示したような状態であれば合成後の値を‘0’として図10(D)のような合成後の画像とする。これにより、色彩のエッジが保存される。
【0054】
さらに、上述のような変更に対応するため、二値化部6についても変更するとよい。図11は、二値化部6の処理の別の例の説明図である。なお、ここでは明度合成部15からの出力をELとし、合成部5からの出力をELCとして示しており、二値化部6は図11(A)に従って二値化処理を行う。主に、図9、図10で説明したように明度合成部15から‘1’が出力され、かつ、第1エッジ抽出部2の出力が‘1’の場合でも合成部5の出力は‘0’となり得るため、この場合についての二値化処理を規定している。また、図11に示す例では合成部5からの出力と明度合成部15からの出力がともに‘1’の場合についても擬似中間調処理を行う例を示している。
【0055】
まず、合成部5の出力(ELC)が‘0’であり、|ELC−EL|が‘0’の場合には、エッジ以外の部分であるので基本的には明度成分に従って擬似中間調の二値化処理を行い、濃淡を再現する。合成されたエッジ画像(ELC)が‘0’となるのは、第1エッジ抽出部2及び第2エッジ抽出部4でエッジとして検出されず、また明度合成部15でも閾値よりも高明度であるため‘0’を出力した画素と、図4を用いて説明した処理により第1エッジ抽出部2でエッジとして抽出されたがエッジとしなかった画素である。
【0056】
合成部5の出力(ELC)が‘0’であり、|ELC−EL|が‘1’の場合には、明度成分(L)を参照し、強調処理を施した後に擬似中間調の二値化処理を行う。これは、図10で説明したように、色彩成分のエッジが再現されないために強制的に‘0’とした画素である。ここでは、この色彩成分のエッジについて強調処理によって周囲の画素との間に明度の差をつけて擬似中間調により再現し、周囲の画素と異なる明度の擬似中間調再現により色彩成分のエッジが利用者により視認されるようにしている。
【0057】
この場合に行う強調処理(強調処理b)は、例えば図11(B)に示すような関数に従って行う。この例では、カラー画像の明度値を増加させるように設定した関数であり、擬似中間調の二値画像では、利用者にとって明るく見えるように変換している。上述のように、この場合の画素は周囲が低明度の場合であるため、明るく見えるように再現するとよい。
【0058】
また、合成部5の出力(ELC)が‘1’であり、|ELC−EL|が‘0’の場合には、基本的には二値化出力は‘1’とすればよいが、この例では明度成分(L)を参照し、強調処理を施した後に擬似中間調の二値化処理を行う例を示している。この場合としては、2つの場合がある。一つは、第1エッジ抽出部2はエッジとしていないが、明度合成部15の出力が‘1’の場合である。もう一つは、第1エッジ抽出部2がエッジとして抽出するとともに明度合成部15が‘1’を出力し、図10で説明した例外的な処理でも‘0’とならずに‘1’のまま残された画素である。これらの場合にはエッジであることを再現するため、強調処理によって周囲の画素との間に明度の差をつけて擬似中間調処理を行い、エッジが利用者により視認されるようにしている。
【0059】
このときの強調処理(強調処理c)は、例えば図11(C)に示すような関数に従って行えばよい。この例では、カラー画像の明度値を減少させるように設定した関数であり、擬似中間調の二値画像では、利用者にとって濃く見えるように変換している。これにより、エッジが周囲よりも濃く視認されることになる。また、明度二値化部14によって‘1’とされた黒文字や黒線などは確実に黒として再現されるようにしている。
【0060】
合成部5の出力(ELC)が‘1’であり、|ELC−EL|が‘1’の場合、すなわち明度合成部15の出力ELが‘0’である色彩成分のエッジの場合についても、明度成分(L)を参照し、強調処理を施した後に擬似中間調の二値化処理を行う。これにより、明度が変化していなくても色彩が変化したエッジが存在していれば、そのエッジが利用者に視認されるような二値化結果が出力されることになる。
【0061】
このときの強調処理についても、例えば図11(C)に示すように、カラー画像の明度値を減少させるように設定した関数を用いて行えばよい。この強調処理は、擬似中間調の二値画像において利用者にとって濃く見えるように変換しており、色彩成分のエッジが利用者に視認されるような二値化結果が出力されることになる。
【0062】
このように、この例では合成部5の出力(ELC)が‘0’、|ELC−EL|が‘1’の場合と、エッジ画像(ELC)が‘1’の場合とで異なる強調処理を施している。もちろん、エッジ画像(ELC)が‘1’の場合に、さらに|ELC−EL|が‘0’の場合と|ELC−EL|が‘1’の場合とで異なる強調処理を施してもよい。なお、それぞれの強調処理に用いる関数は任意であるし、強調処理の方法についても任意である。
【0063】
図12は、本発明の第1の実施の形態における動作の別の例を示すフローチャート、図13は、同じく各処理過程における画像の別の具体例の説明図である。なお、S41の処理とS32〜S35の処理はいずれが先に行われてもよいし、並行して行ってもよい。また、図12におけるS32〜S35、S39の処理は図6を用いて説明したとおりである。
【0064】
以下の説明では図13(A)に示すカラー画像が処理対象として入力されたものとする。図示の都合上、濃淡や色の違いは斜線の間隔や方向などを異ならせたり交差させるなどにより示している。図13(A)に示したカラー画像の例では、4つの異なる画像により構成されている。左上は白色の背景に黒色で四角が描かれている。左下は白色の背景に明るい灰色の四角が描かれている。右上は背景と四角との明度は同じであり、いずれも低明度であって、b* 成分が異なる色で背景及び四角が描かれている例を示している。右下は灰色の背景に、背景より濃い低明度の灰色の四角が描かれている。このようなカラー画像の明度成分は図13(B)に示すようになり、また、b* 成分は図13(C)に示すようになったとする。
【0065】
S41において、処理対象のカラー画像の明度成分について、平滑化部3で平滑化処理を施した後、第2エッジ抽出部4で例えば浮動二値化処理などによりエッジを抽出するとともに明度二値化部14で例えば固定閾値による二値化処理を行い、両者の結果を明度合成部15によって合成する。この処理によって、図13(B)に示した明度成分の画像から、図13(D)に示すような画像が明度合成部15から出力される。なお、ここでは右上の部分は背景及び四角ともに明度二値化部14で‘1’とされたものとしている。また、右下の四角の部分についても、明度二値化部14で‘1’とされたものとしている。
【0066】
また、処理対象のカラー画像の明度成分以外の色彩成分、ここではa* 成分及びb* 成分については、S32からS35までの処理によって、図6で説明したようにして色彩のエッジが抽出される。この処理によって、図13(C)に示したb* 成分の画像(及びa* 成分の画像)から、図13(E)に示すような色彩エッジ画像が得られる。
【0067】
S42において、合成部5は第1エッジ抽出部2で抽出された色彩成分のエッジと、明度合成部15からの出力とを合成する。図13に示す例では、図13(D)に示した明度合成部15からの出力と、図13(E)に示した第1エッジ抽出部2からの出力とを合成する。これにより、図13(F)に示すような合成エッジ画像が得られる。この合成処理は例えば図9(及び図4、図10)で説明した方法で行われる。
【0068】
S43において、S42で合成した合成部5の出力ELCと、明度合成部15の出力ELの値を判断し、合成エッジ画像ELC=0及び|ELC−EL|=0の場合には、S44において明度成分を擬似中間調処理して二値化する。また合成部5からの出力ELC=0及び|ELC−EL|=1の場合には、S45において、例えば図11(B)に示した関数などにより明るくなるように明度成分に対して強調処理を施し、擬似中間調処理により二値化する。さらに、合成部5からの出力ELC=1の場合には、S46において、例えば図11(C)に示した関数などにより濃くなるように明度成分に対して強調処理を施し、擬似中間調処理により二値化する。
【0069】
このような二値化部6による二値化処理によって、図13(G)に示すような二値化された画像が出力されることになる。図13(G)に示すように、右上の1/4内の四角のエッジ部については、周囲が黒く再現されるのに対して、明るく擬似中間調によって表現されている。このように、明度エッジだけでなく色彩エッジについても、周囲に応じて、明るく、あるいは濃く見えるように擬似中間調再現されることになる。また、左下と右下の1/4の部分の境界や、左下の1/4内の四角のエッジ部については、強調処理によって周囲よりも濃く見えるように、擬似中間調により再現されている。
【0070】
いずれの場合も、S39において未処理の画素があるか否かを判定し、未処理の画素が残っていれば、S41に戻って未処理の画素に対する処理を繰り返す。全ての画素について処理を終えたら、図12に示した処理を終える。
【0071】
図14は、本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。図中、7は階調変換部である。この第2の実施の形態では、合成部5で合成したエッジ部分について擬似中間調により表現するものである。上述の第1の実施の形態と異なるのは階調変換部7を設けたことと、二値化部6の動作である。なお、図14に示した構成例ではフィルタ部1および平滑化部3についても省いた構成を示しているが、これらを具備した構成でもよい。また、上述の第1の実施の形態の変形例に示したように明度二値化部14及び明度合成部15を設けた構成でもよい。
【0072】
階調変換部7は、合成部5から渡される合成されたエッジ画像をもとに、入力されたカラー画像の明度成分について階調変換処理を行う。より具体的には、合成されたエッジ画像がエッジを示す画素については暗くなるように階調を変換する。そのほかの画素についてはそのまま出力する。
【0073】
二値化部6は、この第2の実施の形態では、階調変換部7から渡される階調変換後の画像に対して擬似中間調処理を行う。
【0074】
図15は、本発明の第2の実施の形態における各処理過程での画像の具体例の説明図である。図15(A)は図7(A)に対応するものであり、入力されたカラー画像を示している。入力されたカラー画像については図7で説明したとおりである。また図15(B)は図7(F)に対応するものであり、図15(A)に示したカラー画像について、第1エッジ抽出部2および第2エッジ抽出部4で抽出したエッジ画像を合成部5で合成した合成エッジ画像を示している。
【0075】
階調変換部7は、図15(B)に示した合成エッジ画像をもとに、入力されたカラー画像の明度成分についてエッジ部分の階調を変換する。これにより、図15(C)に示すような階調変換画像が得られる。
【0076】
このようにして得られた階調変換画像に対して二値化部6は擬似中間調処理を行う。これにより、図15(D)に示すような二値画像が得られる。得られた二値画像は、エッジ部分も擬似中間調処理が施されており、図示ではわかりにくいがそれぞれの使用されている色(明度)に応じた階調の擬似中間調により表現されている。この二値画像が出力されることになる。
【0077】
図16は、本発明の第2の実施の形態の変形例を示すブロック図である。この変形例は、図14に示した第2の実施の形態の構成のうち、第2エッジ抽出部4および合成部5を省略して簡略化したものである。
【0078】
この第2の実施の形態における変形例では、階調変換部7は第1エッジ抽出部2で抽出した色彩エッジ画像に従って、カラー画像の明度成分について色彩エッジ部分の階調を暗くするように階調変換を行う。そして階調変換を行った明度成分の画像について二値化部6で擬似中間調処理を行えばよい。
【0079】
この第2の実施の形態の変形例では、第2エッジ抽出部4を有していないので正確な明度エッジは抽出されない。しかし、第1エッジ抽出部2で黒とそのほかの色のエッジは抽出されているので、ほとんどのカラー画像では問題なく各部の色の境界部分が擬似中間調により表現されることになる。
【0080】
図17は、本発明の第3の実施の形態を示すブロック図である。図中、8はエッジ強度算出部、9は加算部である。この第3の実施の形態では、上述の第2の実施の形態のようにエッジ部分について擬似中間調により表現するものであるが、エッジ部分に対する階調変換の度合いをエッジ強度により制御する構成を示している。この第3の実施の形態では、上述の第1の実施の形態における第1エッジ抽出部2に代えてエッジ強度算出部8を、また合成部5に代えて加算部9を設け、さらに階調変換部7を加え、二値化部6の動作を変更している。なお、図17に示した構成例ではフィルタ部1および平滑化部3についても省いた構成を示しているが、これらを具備した構成でもよい。また、上述の第1の実施の形態の変形例に示したように明度二値化部14及び明度合成部15を設けた構成でもよい。
【0081】
エッジ強度算出部8は、第1の実施の形態における第1エッジ抽出部2の浮動二値化部13を設けずに、2値のエッジ画像を得る代わりに色彩のエッジの強度を得るものに変更したものである。すなわち、色彩エッジ検出部11は、カラー画像のa* 成分及びb* 成分のそれぞれについてエッジ強度を算出し、色彩エッジ演算部12は、a* 成分のエッジ強度及びb* 成分のエッジ強度を合成した色彩エッジ強度を算出する。得られた色彩エッジ強度をエッジ強度算出部8の出力とする。なお、色彩エッジ検出部11におけるエッジ強度の算出方法および色彩エッジ演算部12におけるエッジ強度の合成方法については任意である。
【0082】
加算部9は、第2エッジ抽出部4によりエッジが抽出された二値の画像と、エッジ強度算出部8で算出した色彩エッジ強度とを加算する。加算は、第2エッジ抽出部4から出力される二値のうち、エッジを表す値(例えば‘1’)をエッジ強度最大の値に、エッジでないことを表す値(例えば‘0’)をエッジ強度最小の値に変換した後、色彩エッジ強度の値を加算すればよい。
【0083】
階調変換部7は、加算部9から渡される加算されたエッジ強度に従って、入力されたカラー画像の明度成分について階調変換処理を行う。一例としては、エッジ強度が大きな値を示す場合には、より暗くなるように階調を変換し、エッジ強度が小さい値の部分ではそれほど階調を変更しないようにする。このように、エッジ強度の値により階調変換の度合いを制御するとよい。
【0084】
二値化部6は、この第3の実施の形態においても、階調変換部7から渡される階調変換後の画像に対して擬似中間調処理を行う。
【0085】
このような第3の実施の形態の構成では、特に色彩の違いがどの程度かによってエッジ部分の階調が異なり、それが擬似中間調処理後の二値画像に反映されるため、視覚的に色彩の違いを把握できるような表現となる。
【0086】
図18は、本発明の第3の実施の形態の変形例を示すブロック図である。この変形例は、図17に示した第3の実施の形態の構成のうち、第2エッジ抽出部4および加算部9を省略して簡略化したものである。
【0087】
この第3の実施の形態における変形例では、階調変換部7はエッジ強度算出部8で算出した色彩エッジ強度に従って、カラー画像の明度成分について色彩エッジ部分の階調変換の度合いを制御する。そして階調変換を行った明度成分の画像について二値化部6で擬似中間調処理を行えばよい。
【0088】
この第3の実施の形態の変形例では、第2エッジ抽出部4を有していないので正確な明度エッジは抽出されない。しかし、エッジ強度算出部8で黒とそのほかの色のエッジは抽出されているので、ほとんどのカラー画像では問題なく各部の色の境界部分が、そのエッジ強度に応じて擬似中間調により表現されることになる。
【0089】
なお、上述の第1の実施の形態及びその変形例における二値化部6の擬似中間調処理や、第2,第3の実施の形態及びその変形例における二値化部6の擬似中間調処理は、閾値二値化処理でもよい。
【0090】
図19は、本発明の各実施の形態の機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、51はプログラム、52はコンピュータ、61は光磁気ディスク、62は光ディスク、63は磁気ディスク、64はメモリ、71はCPU、72は内部メモリ、73は読取部、74はハードディスク、75はインタフェース、76は通信部である。
【0091】
上述の本発明の各実施の形態およびその変形例で説明した各部の機能の一部または全部を、コンピュータにより実行可能なプログラム51によって実現してもよい。その場合、そのプログラム51およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶させておいてもよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部73に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部73にプログラムの記述内容を伝達できるものである。例えば、光磁気ディスク61,光ディスク62(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク63,メモリ64(ICカード、メモリカードなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
【0092】
これらの記憶媒体にプログラム51を格納しておき、例えばコンピュータ52の読取部73あるいはインタフェース75にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム51を読み出し、内部メモリ72またはハードディスク74に記憶し、CPU71によってプログラム51を実行することによって、各実施の形態およびその変形例で説明した機能が実現される。あるいは、ネットワークなどを介してプログラム51をコンピュータ52に転送し、コンピュータ52では通信部76でプログラム51を受信して内部メモリ72またはハードディスク74に記憶し、CPU71によってプログラム51を実行することによって、各実施の形態およびその変形例で説明した機能を実現してもよい。なお、コンピュータ52には、このほかインタフェース75を介して様々な装置と接続してもよい。例えば出力された二値画像を形成する画像形成手段を接続し、二値化処理後に二値画像を形成するように構成してもよい。または、情報を表示する表示装置やユーザが情報を入力する入力装置等が接続されていてもよい。
【0093】
もちろん、一部の機能についてハードウェアによって構成してもよいし、すべてをハードウェアで構成してもよい。あるいは、他の構成とともに本発明も含めたプログラムとして構成してもよい。例えばプリンタや複写機などのように画像形成装置、あるいはさらに画像読取装置を含む装置において、制御プログラムとともに1つのプログラムとして構成してもよい。もちろん、他の用途に適用する場合には、その用途におけるプログラムとの一体化も可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…フィルタ部、2…第1エッジ抽出部、3…平滑化部、4…第2エッジ抽出部、5…合成部、6…二値化部、7…階調変換部、8…エッジ強度算出部、9…加算部、11…色彩エッジ検出部、12…色彩エッジ演算部、13…浮動二値化部、14…明度二値化部、15…明度合成部、21…差分絶対値算出部、22…仮平滑化係数決定部、23…正規化部、24…畳み込み演算部、51…プログラム、52…コンピュータ、61…光磁気ディスク、62…光ディスク、63…磁気ディスク、64…メモリ、71…CPU、72…内部メモリ、73…読取部、74…ハードディスク、75…インタフェース、76…通信部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばカラー画像を白黒のプリンタで出力する場合などのように、カラー画像を白黒画像に変換することが行われている。カラー画像を白黒画像に変換する従来技術として、8色、16色程度のカラー画像であれば各色と白黒の階調とを対応づけて変換することにより、カラー画像を白黒により再現できる。しかし、フルカラー画像では1677万色以上の色が指定可能であるため、各色を白黒の階調と対応づけることは困難であるし、対応づけても利用者が階調の違いによって色の違いを認識できない場合も考えられる。
【0003】
このように、カラー画像における色の違いを利用者が分かるように白黒画像へ一律に変換することは困難である。そのため、例えばカラー画像の1要素、例えば明度のみに着目して白黒画像へ変換することになる。この場合、他の要素について、例えば色相や彩度が異なっていても明度が同じであれば同じ白黒階調に変換されることになる。
【0004】
例えば特許文献1においては、基本的には白黒階調変換して擬似中間調処理を行うが、色相が異なる文字線画を検出して白黒階調変換後に強調処理を施して擬似中間調処理を行う。これにより、色相が異なる文字線画については、その色相の違いを濃度の違いにより表現し、文字線画を再現するようにしている。
【0005】
また、例えば特許文献2においては、赤、緑、青の色成分ごとにエッジを検出し、それらのエッジのうち、白黒のエッジでないものを、白黒2値化した画像に重ね合わせて出力している。このような処理によって、色相の違いだけでなく、濃淡の違う色の境界が黒線として白黒画像中に表現される。この色の境界の黒線は、色の濃淡にかかわらず挿入され、薄い色の境界にも濃い線により表現されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−252773号公報
【特許文献2】特許第3230479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、カラー画像を白黒画像に変換する際に、カラー画像の明度成分だけでなく色彩成分(色相及び彩度成分あるいは色差成分など)について、使用されている色に応じてその境界を表現した画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に記載の発明は、カラー画像の明度以外の色彩成分についてのエッジを抽出する第1のエッジ抽出手段と、前記カラー画像の明度成分についてエッジを抽出する第2のエッジ抽出手段と、前記第1のエッジ抽出手段及び前記第2のエッジ抽出手段により抽出したエッジを合成する合成手段と、前記合成手段により合成されたエッジ成分に従って前記カラー画像の明度成分について階調変換を行う階調変換手段と、前記階調変換手段で階調変換された明度成分について二値化する二値化手段を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0009】
本願請求項2に記載の発明は、カラー画像の明度以外の色彩成分についてのエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段と、前記カラー画像の明度成分についてエッジを抽出する第2のエッジ抽出手段と、前記第2のエッジ抽出手段で抽出したエッジ成分と前記エッジ強度算出手段で算出したエッジ強度を加算する加算手段と、前記加算手段による加算結果に従って前記カラー画像の明度成分について階調変換を行う階調変換手段と、前記階調変換手段で階調変換された明度成分について二値化する二値化手段を有することを特徴とする画像処理装置である。
【0010】
本願請求項3に記載の発明は、コンピュータに、請求項1または請求項2に記載の画像処理装置の機能を実行させることを特徴とする画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本願請求項1に記載の発明によれば、カラー画像を白黒画像に変換する際に、カラー画像中で使用されている色に応じてその境界を表現することができ、明度のエッジをはっきりと表現することができる。
【0012】
本願請求項2に記載の発明によれば、カラー画像を白黒画像に変換する際に、カラー画像中で使用されている色彩成分のエッジ強度に応じ、明度のエッジ強度についても加味して境界を表現することができる。
【0013】
本願請求項3に記載の発明によれば、本願請求項1または請求項2に記載の発明の効果と同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】平滑化部の一例を示すブロック図である。
【図3】合成部における合成処理の一例の説明図である。
【図4】第1エッジ抽出部でエッジを抽出し、第2エッジ抽出部でエッジを抽出しなかった場合の合成処理の具体例の説明図である。
【図5】二値化部の処理の一例の説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施の形態の動作の一例における各処理過程での画像の具体例の説明図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における変形例を示すブロック図である。
【図9】合成部における合成処理の別の例の説明図である。
【図10】明度合成部で一方の値を取り、かつ第1エッジ抽出部でエッジを抽出した場合の合成処理の具体例の説明図である。
【図11】二値化部の処理の別の例の説明図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態における動作の別の例を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第1の実施の形態の動作の別の例における各処理過程における画像の別の具体例の説明図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態における各処理過程での画像の具体例の説明図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態の変形例を示すブロック図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態を示すブロック図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態の変形例を示すブロック図である。
【図19】本発明の各実施の形態の機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示すブロック図である。図中、1はフィルタ部、2は第1エッジ抽出部、3は平滑化部、4は第2エッジ抽出部、5は合成部、6は二値化部、11は色彩エッジ検出部、12は色彩エッジ演算部、13は浮動二値化部である。この例では入力されるカラー画像はL* ,a* ,b* 成分からなる画像であるとする。もちろん、このほかの明度あるいは輝度とその他の成分からなる画像であってもよい。また、明度あるいは輝度の成分を有しない例えばRGB成分からなる画像であれば、明度あるいは輝度の成分を有する色空間への色空間変換を予め行っておけばよい。なお、カラー画像の明度あるいは輝度成分以外の成分をまとめて色彩成分と呼んでいる。この例ではa* ,b* 成分が色彩成分である。
【0016】
フィルタ部1は、カラー画像の明度以外の色彩成分に対して、第1エッジ抽出部2で行うエッジ抽出の支障となるノイズ成分などを除去するフィルタ処理を行う。例えば、指定範囲の画素値の中央値(メジアン)を処理後の画素値とするメジアンフィルタなどで構成すればよい。なお、このフィルタ部1を設けずに構成してもよい。
【0017】
第1エッジ抽出部2は、カラー画像の明度以外の色彩成分についてのエッジを抽出する。この例では、フィルタ部1でフィルタ処理されたa* 成分及びb* 成分について、エッジ抽出処理を行う。第1エッジ抽出部2としては、ここでは色彩エッジ検出部11、色彩エッジ演算部12、浮動二値化部13を有している。
【0018】
色彩エッジ検出部11は、カラー画像のa* 成分及びb* 成分のそれぞれについてエッジ強度を算出する。エッジ強度の算出方法は任意である。
【0019】
色彩エッジ演算部12は、a* 成分のエッジ強度及びb* 成分のエッジ強度を合成した色彩エッジ強度を算出する。例えば二乗和の平方根を算出すればよい。もちろん他の方法でもよい。
【0020】
浮動二値化部13は、色彩エッジ演算部12により算出された色彩エッジ強度に対して浮動二値化処理を行う。浮動二値化処理は、処理対象の画素値と、その周辺の画素値の平均値を閾値として比較し、処理対象の画素の値を1または0に二値化するものである。このとき、色彩エッジ強度がほぼ一定の領域では小さな色彩エッジ強度の違いにより二値化結果が変化してしまうため、処理対象の画素値と閾値との差(絶対値)が所定以下では0(あるいは1)とするとよい。なお、この浮動二値化部13ではエッジか否かを判断すればよく、エッジ強度を二値化の対象としていることから、固定閾値を用いた二値化処理で代用してもよい。
【0021】
浮動二値化部13からの出力(すなわち第1エッジ抽出部2からの出力)にはエッジ部分が抽出されているが、以下の説明では、a* 成分またはb* 成分でエッジが抽出された画素を1、それ以外の部分の画素を0とした二値の色彩エッジ画像が得られるものとする。
【0022】
平滑化部3は、カラー画像の明度成分について平滑化処理を行う。例えばカラー画像中に網点領域などがあった場合に個々の網点を平滑化したり、あるいはノイズなどを低減する。平滑化処理後の明度成分の画像から第2エッジ抽出部4でエッジを抽出するため、この平滑化部3ではなるべくエッジ成分が保存されるような平滑化処理を行うことが望ましい。そのような平滑化部3の一例を図2に示す。
【0023】
図2は、平滑化部の一例を示すブロック図である。図中、21は差分絶対値算出部、22は仮平滑化係数決定部、23は正規化部、24は畳み込み演算部である。差分絶対値算出部21は、平滑化処理の対象となる注目画素を中心とする所定の大きさの参照領域を設定し、注目画素の値(Viとする)と参照領域内の他の画素の値(Vjとする)との差分の絶対値(Aj=|Vi−Vj|)をそれぞれ算出する。
【0024】
仮平滑化係数決定部22は、参照領域の各画素に対応する平滑化係数(Cj)を仮決定する。平滑化係数Cjを仮決定する方法として、ここでは、ある単調減少関数f()を設定し、Cj=f(Aj)により平滑化係数Cjを仮決定することができる。f()が単調減少関数であることから、エッジのように差分の絶対値が大きい画素については平滑化係数Cjは小さい値となり注目画素への影響を減らすことができ、逆に非エッジ部のように差分の絶対値が小さい画素については平滑化係数Cjを大きい値として平滑化の効果を大きくすることができる。単調減少関数f()は任意であるが、例えば簡単にはCj=1−(1/max(Aj))・Ajのような線形関数や、2次以上の単調減少関数や指数単調減少関数など、様々な関数を適用可能である。なお、式中のmax(Aj)はAjの最大値である。
【0025】
正規化部23は、仮平滑化係数決定部22で仮に決定された平滑化係数Cjを正規化する。すなわち、参照領域内の平滑化係数Cjの和が1となるように演算を行う。具体的には正規化後の平滑化係数をCj’とするとき、Cj’=Cj/ΣCjにより求めることができる。この正規化は、一般に平滑化処理が平滑化係数の和を1としたフィルタ処理であることによる。
【0026】
畳み込み演算部24は、参照領域内の各画素値と正規化部23で得られた正規化された平滑化係数とを用いて、いわゆる畳み込み演算を行う。畳み込み演算は、参照領域内の各画素値と正規化部23で得られた正規化された平滑化係数とを乗算した上で総和を演算することにより行われる。すなわち、演算後の注目画素の値をVi’としたとき、Vi’=ΣCj’・Vjによって演算することができる。
【0027】
このように、この平滑化処理では画像に応じて平滑化係数を決定し、その際に画素値の差分の絶対値の大きさが大きいほど平滑化係数を小さく設定するので、エッジ領域ではエッジが保存され、非エッジ領域では平坦な領域ほど強く平滑化処理が施されることになる。なお、平滑化部3を設けずに構成してもよい。
【0028】
図1に戻り、第2エッジ抽出部4は、平滑化部3で平滑化処理を施した後の明度成分の画像についてエッジを抽出する。エッジを抽出する方法は任意であるが、例えば浮動二値化によりエッジを抽出すればよい。浮動二値化部13でも説明したように、浮動二値化処理は、処理対象の画素値と、その周辺の画素値の平均値を閾値として比較し、処理対象の画素の値を1または0に二値化するものである。このとき、処理対象の画素値と閾値との差(絶対値)が所定以下では例えば0としておけば、明度が平坦な部分では0となる。これにより、濃度差があるエッジ部分が1となって、エッジが抽出されることになる。
【0029】
合成部5は、第1エッジ抽出部2によりエッジが抽出された二値の画像と第2エッジ抽出部4によりエッジが抽出された二値の画像を合成する。図3は、合成部における合成処理の一例の説明図、図4は、第1エッジ抽出部でエッジを抽出し、第2エッジ抽出部でエッジを抽出しなかった場合の合成処理の具体例の説明図である。第1エッジ抽出部2によりエッジが抽出された(値‘1’)か否か(値‘0’)と、第2エッジ抽出部4によりエッジが抽出された(値‘1’)か否か(値‘0’)の組み合わせにより、合成後の値を図3に示すように決定する。
【0030】
すなわち、第1エッジ抽出部2の出力も第2エッジ抽出部4の出力も‘0’であり、いずれもエッジとして検出していなければ、合成後の値は‘0’としてエッジでないとする。また、第1エッジ抽出部2の出力は‘0’であってエッジを検出していない場合でも、第2エッジ抽出部4の出力が‘1’であり、エッジを検出していた場合には、合成後の値を‘1’としてエッジであるとする。
【0031】
第1エッジ抽出部2の出力が‘1’であり、エッジを検出している場合に、第2エッジ抽出部4の出力が‘0’であってエッジを検出していない場合には、基本的には合成後の値を‘1’としてエッジであるとする。ただし、その処理対象の画素の周囲の画素について第2エッジ抽出部4の出力を参照し、第2エッジ抽出部4によりエッジとして抽出した画素(値‘1’の画素)が所定数(a)以上存在する場合には、合成後の値を‘0’としてエッジとしない。
【0032】
これは、第1エッジ抽出部2と第2エッジ抽出部4の処理の違いによるものである。例えば図4(A)には、明度及び色彩とも周囲と異なる三角の図形が描かれたカラー画像を示している。図示の都合上、図形部分に斜線を施して示している。第1エッジ抽出部2では色彩のエッジをそのエッジの両側で抽出してしまうため、図4(B)に示すように図4(A)に示した図形のエッジよりも膨張したようなエッジ画像となる。一方、第2エッジ抽出部4では浮動二値化処理を行っているので、エッジ部の0または1の位置は保存され、図4(C)に示すようなエッジ画像が得られている。両者を比較すると、三角の図形のエッジの外側で、第1エッジ抽出部2でエッジとして抽出されたが第2エッジ抽出部4ではエッジとして抽出されていない画素が生じる。この画素についてエッジとはしないことによって、図4(D)に示すように、図形に即したエッジ成分が含まれたエッジ画像が合成されることになる。なお、図4(D)においてエッジ成分として残された部分は、第1エッジ抽出部2と第2エッジ抽出部4とでエッジ部として抽出した画素である。
【0033】
再び図1に戻り、二値化部6は、合成部5により合成されたエッジ画像を反映させて、カラー画像の明度成分について二値化する。図5は、二値化部6の処理の一例の説明図である。二値化部6は、図5(A)に示すように、入力されたカラー画像の明度成分(Lとする)と、第2エッジ抽出部4から出力される明度に関するエッジ画像(ELとする)と、合成部5で合成されたエッジ画像(ELCとする)を用いる。そして、図5(B)に従って二値化する。
【0034】
まず、合成されたエッジ画像(ELC)が‘1’の場合には、基本的には二値化出力は‘1’とする。しかし、エッジ画像(ELC)が‘1’であっても|ELC−EL|が‘1’の場合、すなわち明度成分のエッジ画像ELが‘0’である色彩成分のエッジの場合には、明度成分(L)を参照し、強調処理を施した後に擬似中間調の二値化処理を行う。これにより、明度が変化していなくても色彩が変化したエッジが存在していれば、そのエッジが利用者に視認されるような二値化結果が出力されることになる。
【0035】
このときの強調処理は、例えば図5(C)に示すような関数に従って行う。この例では、カラー画像の明度値を減少させるように設定した関数であり、擬似中間調の二値画像では、利用者にとって濃く見えるように変換している。もちろん、強調処理に用いる関数は任意であるし、強調処理の方法についても任意である。
【0036】
また、合成されたエッジ画像(ELC)が‘0’の場合には、エッジ以外の部分であるので基本的には明度成分に従って擬似中間調の二値化処理を行い、濃淡を再現する。なお、この例ではELCが‘0’の場合には|ELC−EL|が‘1’にはならない。
【0037】
このようにして二値化部6から出力される二値画像は、平坦部は擬似中間調により再現され、明度及び色彩成分のエッジについても再現される。利用者が出力された二値画像を参照した際には、濃淡により明るさの違いが視認される。また、同じ明るさでも色の違いは、エッジ部を強調処理して擬似中間調により二値化するので、それぞれの色の明るさに応じたエッジが表現され、色の違いが視認されることになる。例えば薄い色が隣接している部分では、単に黒い線を挿入するのではなく、その色の明るさより多少濃いエッジが挿入されることになる。
【0038】
図6は、本発明の第1の実施の形態における動作の一例を示すフローチャート、図7は、同じく各処理過程における画像の具体例の説明図である。なお、S31とS32〜S35の処理はいずれが先に行われてもよいし、並行して行ってもよい。
【0039】
以下の説明では図7(A)に示すカラー画像が処理対象として入力されたものとする。図示の都合上、濃淡や色の違いは斜線の間隔や方向などを異ならせたり交差させるなどにより示している。図7(A)に示したカラー画像の例では、4つの異なる画像により構成されている。左上は白色の背景に黒色で四角が描かれている。左下は白色の背景に灰色の四角が描かれている。右上は背景と四角との明度は同じであるがb* 成分が異なる色で背景及び四角が描かれている例を示している。右下は灰色の背景に、背景より濃い灰色の四角が描かれている。このようなカラー画像の明度成分は図7(B)に示すようになり、また、b* 成分は図7(C)に示すようになったとする。
【0040】
図6のS31において、処理対象のカラー画像の明度成分について、平滑化部3で平滑化処理を施し、第2エッジ抽出部4で例えば浮動二値化処理などによりエッジを抽出する。この処理によって、図7(B)に示した明度成分の画像から、図7(D)に示すような明度エッジ画像が得られる。
【0041】
また、処理対象のカラー画像の明度成分以外の色彩成分、ここではa* 成分及びb* 成分について、S32においてフィルタ部1でフィルタ処理を施した後、S33で第1エッジ抽出部2の色彩エッジ検出部11はa* 成分及びb* 成分のそれぞれについてエッジ強度を算出する。そしてS34において、色彩エッジ演算部12は色彩エッジ検出部11で得たa* 成分及びb* 成分のエッジ強度を合成し、S35において、浮動二値化部13は合成されたエッジ強度を浮動二値化処理する。これによって、図7(C)に示したb* 成分の画像(及びa* 成分の画像)から、図7(E)に示すような色彩エッジ画像が得られる。
【0042】
S36において、合成部5は第1エッジ抽出部2から出力された色彩成分からエッジを抽出した色彩エッジ画像と、第2エッジ抽出部4から出力された明度エッジ画像を合成する。図7に示す例では、図7(D)に示した明度エッジ画像と図7(E)に示した色彩エッジ画像とを合成する。これにより、図7(F)に示すような合成エッジ画像が得られる。この合成処理は例えば図3、図4で説明した方法で行われる。
【0043】
S37及びS38において、二値化部6は図5(B)に示したようにして二値化処理を行う。このとき、まず合成部5で合成された合成エッジ画像がエッジを示し、明度エッジ画像がエッジを示していない(|ELC−EL|=1)場合、すなわち色彩エッジ画像においてエッジを示している場合に、強調処理を行って濃度を調整する。そしてS38において、合成エッジ画像及び明度エッジ画像ともにエッジを示している場合を除き、擬似中間調による二値化処理を行う。なお、合成エッジ画像及び明度エッジ画像ともにエッジを示している場合には、そのまま‘1’とする。この二値化部6による二値化処理によって、図7(G)に示すような二値化された画像が出力されることになる。図7(G)に示すように、右上の1/4内の四角のエッジ部については、黒い線ではなく、擬似中間調によって表現されている。
【0044】
S39において、未処理の画素があるか否かを判定し、未処理の画素が残っていれば、S31に戻って未処理の画素に対する処理を繰り返す。全ての画素について処理を終えたら、図6に示した処理を終える。
【0045】
図8は、本発明の第1の実施の形態における変形例を示すブロック図である。図中、14は明度二値化部、15は明度合成部である。この変形例では、図1に示した構成に明度二値化部14と明度合成部15を加えている。
【0046】
明度二値化部14は、カラー画像の明度成分、ここでは平滑化部3で平滑化処理を施した後の明度成分について、例えば固定閾値を用いた二値化方式などによって二値化する。上述のように基本的には抽出したエッジを二値画像においてそのまま反映させることから、この明度二値化部14によって黒文字や黒線などを二値化してエッジとともに処理することにより、これらを確実に二値画像に反映させるようにしている。
【0047】
明度合成部15は、明度二値化部14で二値化された画像に、第2エッジ抽出部4で抽出されたエッジの画素を二値の一方の値として合成する。例えば二値を‘0’と‘1’とし、明度二値化部14で低明度部を‘1’とする場合には、第2エッジ抽出部4で抽出されたエッジ部分を‘1’として合成すればよい。以下の説明では、このように一方の値を‘1’として説明する。
【0048】
この明度二値化部14及び明度合成部15の追加により、合成部5は、明度合成部15で合成した画像に、第1エッジ抽出部2により抽出したエッジの画素を一方の値として合成することになる。図9は、合成部における合成処理の別の例の説明図、図10は、明度合成部15で一方の値を取り、かつ第1エッジ抽出部でエッジを抽出した場合の合成処理の具体例の説明図である。この変形例では、第2エッジ抽出部4の出力の代わりに明度合成部15で合成された画像における画素値を用いることになる。すなわち、第1エッジ抽出部2によりエッジが抽出された(値‘1’)か否か(値‘0’)と、明度合成部15により合成された画像における値が‘1’か‘0’かの組み合わせにより、合成後の値を図9に示すように決定すればよい。
【0049】
図9に示した例では、第1エッジ抽出部2がエッジとして検出せず、出力が‘0’であり、明度合成部15の出力も‘0’である場合には、合成後の値は‘0’とする。また、第1エッジ抽出部2がエッジを検出しておらず、出力が‘0’であっても、明度合成部15の出力が‘1’である場合には、合成後の値を‘1’とする。
【0050】
第1エッジ抽出部2の出力が‘1’であり、エッジを検出している場合に、明度合成部15の出力が‘0’である場合には、基本的には合成後の値を‘1’とする。ただし、この変形例では、その処理対象の画素の周囲の画素について明度合成部15の出力を参照し、明度合成部15の出力が‘1’の画素が所定数(a)以上存在する場合には、合成後の値を‘0’とする。この場合については図4を用いて既に説明したとおりである。
【0051】
また、第1エッジ抽出部2がエッジとして検出し、明度合成部15の出力も‘1’を出力している場合には、基本的には合成後の値を‘1’とする。ただし、その処理対象の画素の周囲の画素について明度合成部15の出力を参照し、明度合成部15の出力が‘1’の画素が所定数(b)以上存在する場合には、合成後の値を‘0’とする。
【0052】
これは、明度二値化部14により低明度の領域について‘1’が出力されたが、その領域内に色彩のエッジが存在していた場合に、その色彩のエッジを再現するためのものである。例えば図10(A)には、明度が周囲と同じ(非常に暗いとする)で色彩が周囲と異なる三角の図形が描かれたカラー画像を示している。図示の都合上、色彩の違いを斜線の方向を異ならせて示している。明度二値化部14では明度が同じであって非常に暗いため、例えば図10(C)に示すように図形及びその周囲とも‘1’となっている。明度合成部15からも、この領域については‘1’として出力される。
【0053】
しかし第1エッジ抽出部2では色彩のエッジを検出し、図10(B)に示すようにエッジ画像が出力される。このような場合には、例えば図3に示した合成処理を行うと、明度合成部15から‘1’が出力されている場合には、第1エッジ抽出部2の出力にかかわらず合成部5の出力は‘1’となる。そのため、色彩のエッジが反映されなくなってしまう。このような場合に色彩のエッジを二値画像に反映させるために、両方が‘1’の場合には周囲の明度合成部15の出力を参照し、図10(C)に示したような状態であれば合成後の値を‘0’として図10(D)のような合成後の画像とする。これにより、色彩のエッジが保存される。
【0054】
さらに、上述のような変更に対応するため、二値化部6についても変更するとよい。図11は、二値化部6の処理の別の例の説明図である。なお、ここでは明度合成部15からの出力をELとし、合成部5からの出力をELCとして示しており、二値化部6は図11(A)に従って二値化処理を行う。主に、図9、図10で説明したように明度合成部15から‘1’が出力され、かつ、第1エッジ抽出部2の出力が‘1’の場合でも合成部5の出力は‘0’となり得るため、この場合についての二値化処理を規定している。また、図11に示す例では合成部5からの出力と明度合成部15からの出力がともに‘1’の場合についても擬似中間調処理を行う例を示している。
【0055】
まず、合成部5の出力(ELC)が‘0’であり、|ELC−EL|が‘0’の場合には、エッジ以外の部分であるので基本的には明度成分に従って擬似中間調の二値化処理を行い、濃淡を再現する。合成されたエッジ画像(ELC)が‘0’となるのは、第1エッジ抽出部2及び第2エッジ抽出部4でエッジとして検出されず、また明度合成部15でも閾値よりも高明度であるため‘0’を出力した画素と、図4を用いて説明した処理により第1エッジ抽出部2でエッジとして抽出されたがエッジとしなかった画素である。
【0056】
合成部5の出力(ELC)が‘0’であり、|ELC−EL|が‘1’の場合には、明度成分(L)を参照し、強調処理を施した後に擬似中間調の二値化処理を行う。これは、図10で説明したように、色彩成分のエッジが再現されないために強制的に‘0’とした画素である。ここでは、この色彩成分のエッジについて強調処理によって周囲の画素との間に明度の差をつけて擬似中間調により再現し、周囲の画素と異なる明度の擬似中間調再現により色彩成分のエッジが利用者により視認されるようにしている。
【0057】
この場合に行う強調処理(強調処理b)は、例えば図11(B)に示すような関数に従って行う。この例では、カラー画像の明度値を増加させるように設定した関数であり、擬似中間調の二値画像では、利用者にとって明るく見えるように変換している。上述のように、この場合の画素は周囲が低明度の場合であるため、明るく見えるように再現するとよい。
【0058】
また、合成部5の出力(ELC)が‘1’であり、|ELC−EL|が‘0’の場合には、基本的には二値化出力は‘1’とすればよいが、この例では明度成分(L)を参照し、強調処理を施した後に擬似中間調の二値化処理を行う例を示している。この場合としては、2つの場合がある。一つは、第1エッジ抽出部2はエッジとしていないが、明度合成部15の出力が‘1’の場合である。もう一つは、第1エッジ抽出部2がエッジとして抽出するとともに明度合成部15が‘1’を出力し、図10で説明した例外的な処理でも‘0’とならずに‘1’のまま残された画素である。これらの場合にはエッジであることを再現するため、強調処理によって周囲の画素との間に明度の差をつけて擬似中間調処理を行い、エッジが利用者により視認されるようにしている。
【0059】
このときの強調処理(強調処理c)は、例えば図11(C)に示すような関数に従って行えばよい。この例では、カラー画像の明度値を減少させるように設定した関数であり、擬似中間調の二値画像では、利用者にとって濃く見えるように変換している。これにより、エッジが周囲よりも濃く視認されることになる。また、明度二値化部14によって‘1’とされた黒文字や黒線などは確実に黒として再現されるようにしている。
【0060】
合成部5の出力(ELC)が‘1’であり、|ELC−EL|が‘1’の場合、すなわち明度合成部15の出力ELが‘0’である色彩成分のエッジの場合についても、明度成分(L)を参照し、強調処理を施した後に擬似中間調の二値化処理を行う。これにより、明度が変化していなくても色彩が変化したエッジが存在していれば、そのエッジが利用者に視認されるような二値化結果が出力されることになる。
【0061】
このときの強調処理についても、例えば図11(C)に示すように、カラー画像の明度値を減少させるように設定した関数を用いて行えばよい。この強調処理は、擬似中間調の二値画像において利用者にとって濃く見えるように変換しており、色彩成分のエッジが利用者に視認されるような二値化結果が出力されることになる。
【0062】
このように、この例では合成部5の出力(ELC)が‘0’、|ELC−EL|が‘1’の場合と、エッジ画像(ELC)が‘1’の場合とで異なる強調処理を施している。もちろん、エッジ画像(ELC)が‘1’の場合に、さらに|ELC−EL|が‘0’の場合と|ELC−EL|が‘1’の場合とで異なる強調処理を施してもよい。なお、それぞれの強調処理に用いる関数は任意であるし、強調処理の方法についても任意である。
【0063】
図12は、本発明の第1の実施の形態における動作の別の例を示すフローチャート、図13は、同じく各処理過程における画像の別の具体例の説明図である。なお、S41の処理とS32〜S35の処理はいずれが先に行われてもよいし、並行して行ってもよい。また、図12におけるS32〜S35、S39の処理は図6を用いて説明したとおりである。
【0064】
以下の説明では図13(A)に示すカラー画像が処理対象として入力されたものとする。図示の都合上、濃淡や色の違いは斜線の間隔や方向などを異ならせたり交差させるなどにより示している。図13(A)に示したカラー画像の例では、4つの異なる画像により構成されている。左上は白色の背景に黒色で四角が描かれている。左下は白色の背景に明るい灰色の四角が描かれている。右上は背景と四角との明度は同じであり、いずれも低明度であって、b* 成分が異なる色で背景及び四角が描かれている例を示している。右下は灰色の背景に、背景より濃い低明度の灰色の四角が描かれている。このようなカラー画像の明度成分は図13(B)に示すようになり、また、b* 成分は図13(C)に示すようになったとする。
【0065】
S41において、処理対象のカラー画像の明度成分について、平滑化部3で平滑化処理を施した後、第2エッジ抽出部4で例えば浮動二値化処理などによりエッジを抽出するとともに明度二値化部14で例えば固定閾値による二値化処理を行い、両者の結果を明度合成部15によって合成する。この処理によって、図13(B)に示した明度成分の画像から、図13(D)に示すような画像が明度合成部15から出力される。なお、ここでは右上の部分は背景及び四角ともに明度二値化部14で‘1’とされたものとしている。また、右下の四角の部分についても、明度二値化部14で‘1’とされたものとしている。
【0066】
また、処理対象のカラー画像の明度成分以外の色彩成分、ここではa* 成分及びb* 成分については、S32からS35までの処理によって、図6で説明したようにして色彩のエッジが抽出される。この処理によって、図13(C)に示したb* 成分の画像(及びa* 成分の画像)から、図13(E)に示すような色彩エッジ画像が得られる。
【0067】
S42において、合成部5は第1エッジ抽出部2で抽出された色彩成分のエッジと、明度合成部15からの出力とを合成する。図13に示す例では、図13(D)に示した明度合成部15からの出力と、図13(E)に示した第1エッジ抽出部2からの出力とを合成する。これにより、図13(F)に示すような合成エッジ画像が得られる。この合成処理は例えば図9(及び図4、図10)で説明した方法で行われる。
【0068】
S43において、S42で合成した合成部5の出力ELCと、明度合成部15の出力ELの値を判断し、合成エッジ画像ELC=0及び|ELC−EL|=0の場合には、S44において明度成分を擬似中間調処理して二値化する。また合成部5からの出力ELC=0及び|ELC−EL|=1の場合には、S45において、例えば図11(B)に示した関数などにより明るくなるように明度成分に対して強調処理を施し、擬似中間調処理により二値化する。さらに、合成部5からの出力ELC=1の場合には、S46において、例えば図11(C)に示した関数などにより濃くなるように明度成分に対して強調処理を施し、擬似中間調処理により二値化する。
【0069】
このような二値化部6による二値化処理によって、図13(G)に示すような二値化された画像が出力されることになる。図13(G)に示すように、右上の1/4内の四角のエッジ部については、周囲が黒く再現されるのに対して、明るく擬似中間調によって表現されている。このように、明度エッジだけでなく色彩エッジについても、周囲に応じて、明るく、あるいは濃く見えるように擬似中間調再現されることになる。また、左下と右下の1/4の部分の境界や、左下の1/4内の四角のエッジ部については、強調処理によって周囲よりも濃く見えるように、擬似中間調により再現されている。
【0070】
いずれの場合も、S39において未処理の画素があるか否かを判定し、未処理の画素が残っていれば、S41に戻って未処理の画素に対する処理を繰り返す。全ての画素について処理を終えたら、図12に示した処理を終える。
【0071】
図14は、本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。図中、7は階調変換部である。この第2の実施の形態では、合成部5で合成したエッジ部分について擬似中間調により表現するものである。上述の第1の実施の形態と異なるのは階調変換部7を設けたことと、二値化部6の動作である。なお、図14に示した構成例ではフィルタ部1および平滑化部3についても省いた構成を示しているが、これらを具備した構成でもよい。また、上述の第1の実施の形態の変形例に示したように明度二値化部14及び明度合成部15を設けた構成でもよい。
【0072】
階調変換部7は、合成部5から渡される合成されたエッジ画像をもとに、入力されたカラー画像の明度成分について階調変換処理を行う。より具体的には、合成されたエッジ画像がエッジを示す画素については暗くなるように階調を変換する。そのほかの画素についてはそのまま出力する。
【0073】
二値化部6は、この第2の実施の形態では、階調変換部7から渡される階調変換後の画像に対して擬似中間調処理を行う。
【0074】
図15は、本発明の第2の実施の形態における各処理過程での画像の具体例の説明図である。図15(A)は図7(A)に対応するものであり、入力されたカラー画像を示している。入力されたカラー画像については図7で説明したとおりである。また図15(B)は図7(F)に対応するものであり、図15(A)に示したカラー画像について、第1エッジ抽出部2および第2エッジ抽出部4で抽出したエッジ画像を合成部5で合成した合成エッジ画像を示している。
【0075】
階調変換部7は、図15(B)に示した合成エッジ画像をもとに、入力されたカラー画像の明度成分についてエッジ部分の階調を変換する。これにより、図15(C)に示すような階調変換画像が得られる。
【0076】
このようにして得られた階調変換画像に対して二値化部6は擬似中間調処理を行う。これにより、図15(D)に示すような二値画像が得られる。得られた二値画像は、エッジ部分も擬似中間調処理が施されており、図示ではわかりにくいがそれぞれの使用されている色(明度)に応じた階調の擬似中間調により表現されている。この二値画像が出力されることになる。
【0077】
図16は、本発明の第2の実施の形態の変形例を示すブロック図である。この変形例は、図14に示した第2の実施の形態の構成のうち、第2エッジ抽出部4および合成部5を省略して簡略化したものである。
【0078】
この第2の実施の形態における変形例では、階調変換部7は第1エッジ抽出部2で抽出した色彩エッジ画像に従って、カラー画像の明度成分について色彩エッジ部分の階調を暗くするように階調変換を行う。そして階調変換を行った明度成分の画像について二値化部6で擬似中間調処理を行えばよい。
【0079】
この第2の実施の形態の変形例では、第2エッジ抽出部4を有していないので正確な明度エッジは抽出されない。しかし、第1エッジ抽出部2で黒とそのほかの色のエッジは抽出されているので、ほとんどのカラー画像では問題なく各部の色の境界部分が擬似中間調により表現されることになる。
【0080】
図17は、本発明の第3の実施の形態を示すブロック図である。図中、8はエッジ強度算出部、9は加算部である。この第3の実施の形態では、上述の第2の実施の形態のようにエッジ部分について擬似中間調により表現するものであるが、エッジ部分に対する階調変換の度合いをエッジ強度により制御する構成を示している。この第3の実施の形態では、上述の第1の実施の形態における第1エッジ抽出部2に代えてエッジ強度算出部8を、また合成部5に代えて加算部9を設け、さらに階調変換部7を加え、二値化部6の動作を変更している。なお、図17に示した構成例ではフィルタ部1および平滑化部3についても省いた構成を示しているが、これらを具備した構成でもよい。また、上述の第1の実施の形態の変形例に示したように明度二値化部14及び明度合成部15を設けた構成でもよい。
【0081】
エッジ強度算出部8は、第1の実施の形態における第1エッジ抽出部2の浮動二値化部13を設けずに、2値のエッジ画像を得る代わりに色彩のエッジの強度を得るものに変更したものである。すなわち、色彩エッジ検出部11は、カラー画像のa* 成分及びb* 成分のそれぞれについてエッジ強度を算出し、色彩エッジ演算部12は、a* 成分のエッジ強度及びb* 成分のエッジ強度を合成した色彩エッジ強度を算出する。得られた色彩エッジ強度をエッジ強度算出部8の出力とする。なお、色彩エッジ検出部11におけるエッジ強度の算出方法および色彩エッジ演算部12におけるエッジ強度の合成方法については任意である。
【0082】
加算部9は、第2エッジ抽出部4によりエッジが抽出された二値の画像と、エッジ強度算出部8で算出した色彩エッジ強度とを加算する。加算は、第2エッジ抽出部4から出力される二値のうち、エッジを表す値(例えば‘1’)をエッジ強度最大の値に、エッジでないことを表す値(例えば‘0’)をエッジ強度最小の値に変換した後、色彩エッジ強度の値を加算すればよい。
【0083】
階調変換部7は、加算部9から渡される加算されたエッジ強度に従って、入力されたカラー画像の明度成分について階調変換処理を行う。一例としては、エッジ強度が大きな値を示す場合には、より暗くなるように階調を変換し、エッジ強度が小さい値の部分ではそれほど階調を変更しないようにする。このように、エッジ強度の値により階調変換の度合いを制御するとよい。
【0084】
二値化部6は、この第3の実施の形態においても、階調変換部7から渡される階調変換後の画像に対して擬似中間調処理を行う。
【0085】
このような第3の実施の形態の構成では、特に色彩の違いがどの程度かによってエッジ部分の階調が異なり、それが擬似中間調処理後の二値画像に反映されるため、視覚的に色彩の違いを把握できるような表現となる。
【0086】
図18は、本発明の第3の実施の形態の変形例を示すブロック図である。この変形例は、図17に示した第3の実施の形態の構成のうち、第2エッジ抽出部4および加算部9を省略して簡略化したものである。
【0087】
この第3の実施の形態における変形例では、階調変換部7はエッジ強度算出部8で算出した色彩エッジ強度に従って、カラー画像の明度成分について色彩エッジ部分の階調変換の度合いを制御する。そして階調変換を行った明度成分の画像について二値化部6で擬似中間調処理を行えばよい。
【0088】
この第3の実施の形態の変形例では、第2エッジ抽出部4を有していないので正確な明度エッジは抽出されない。しかし、エッジ強度算出部8で黒とそのほかの色のエッジは抽出されているので、ほとんどのカラー画像では問題なく各部の色の境界部分が、そのエッジ強度に応じて擬似中間調により表現されることになる。
【0089】
なお、上述の第1の実施の形態及びその変形例における二値化部6の擬似中間調処理や、第2,第3の実施の形態及びその変形例における二値化部6の擬似中間調処理は、閾値二値化処理でもよい。
【0090】
図19は、本発明の各実施の形態の機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、51はプログラム、52はコンピュータ、61は光磁気ディスク、62は光ディスク、63は磁気ディスク、64はメモリ、71はCPU、72は内部メモリ、73は読取部、74はハードディスク、75はインタフェース、76は通信部である。
【0091】
上述の本発明の各実施の形態およびその変形例で説明した各部の機能の一部または全部を、コンピュータにより実行可能なプログラム51によって実現してもよい。その場合、そのプログラム51およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶させておいてもよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部73に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部73にプログラムの記述内容を伝達できるものである。例えば、光磁気ディスク61,光ディスク62(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク63,メモリ64(ICカード、メモリカードなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
【0092】
これらの記憶媒体にプログラム51を格納しておき、例えばコンピュータ52の読取部73あるいはインタフェース75にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム51を読み出し、内部メモリ72またはハードディスク74に記憶し、CPU71によってプログラム51を実行することによって、各実施の形態およびその変形例で説明した機能が実現される。あるいは、ネットワークなどを介してプログラム51をコンピュータ52に転送し、コンピュータ52では通信部76でプログラム51を受信して内部メモリ72またはハードディスク74に記憶し、CPU71によってプログラム51を実行することによって、各実施の形態およびその変形例で説明した機能を実現してもよい。なお、コンピュータ52には、このほかインタフェース75を介して様々な装置と接続してもよい。例えば出力された二値画像を形成する画像形成手段を接続し、二値化処理後に二値画像を形成するように構成してもよい。または、情報を表示する表示装置やユーザが情報を入力する入力装置等が接続されていてもよい。
【0093】
もちろん、一部の機能についてハードウェアによって構成してもよいし、すべてをハードウェアで構成してもよい。あるいは、他の構成とともに本発明も含めたプログラムとして構成してもよい。例えばプリンタや複写機などのように画像形成装置、あるいはさらに画像読取装置を含む装置において、制御プログラムとともに1つのプログラムとして構成してもよい。もちろん、他の用途に適用する場合には、その用途におけるプログラムとの一体化も可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…フィルタ部、2…第1エッジ抽出部、3…平滑化部、4…第2エッジ抽出部、5…合成部、6…二値化部、7…階調変換部、8…エッジ強度算出部、9…加算部、11…色彩エッジ検出部、12…色彩エッジ演算部、13…浮動二値化部、14…明度二値化部、15…明度合成部、21…差分絶対値算出部、22…仮平滑化係数決定部、23…正規化部、24…畳み込み演算部、51…プログラム、52…コンピュータ、61…光磁気ディスク、62…光ディスク、63…磁気ディスク、64…メモリ、71…CPU、72…内部メモリ、73…読取部、74…ハードディスク、75…インタフェース、76…通信部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラー画像の明度以外の色彩成分についてのエッジを抽出する第1のエッジ抽出手段と、前記カラー画像の明度成分についてエッジを抽出する第2のエッジ抽出手段と、前記第1のエッジ抽出手段及び前記第2のエッジ抽出手段により抽出したエッジを合成する合成手段と、前記合成手段により合成されたエッジ成分に従って前記カラー画像の明度成分について階調変換を行う階調変換手段と、前記階調変換手段で階調変換された明度成分について二値化する二値化手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
カラー画像の明度以外の色彩成分についてのエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段と、前記カラー画像の明度成分についてエッジを抽出する第2のエッジ抽出手段と、前記第2のエッジ抽出手段で抽出したエッジ成分と前記エッジ強度算出手段で算出したエッジ強度を加算する加算手段と、前記加算手段による加算結果に従って前記カラー画像の明度成分について階調変換を行う階調変換手段と、前記階調変換手段で階調変換された明度成分について二値化する二値化手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
コンピュータに、請求項1または請求項2に記載の画像処理装置の機能を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項1】
カラー画像の明度以外の色彩成分についてのエッジを抽出する第1のエッジ抽出手段と、前記カラー画像の明度成分についてエッジを抽出する第2のエッジ抽出手段と、前記第1のエッジ抽出手段及び前記第2のエッジ抽出手段により抽出したエッジを合成する合成手段と、前記合成手段により合成されたエッジ成分に従って前記カラー画像の明度成分について階調変換を行う階調変換手段と、前記階調変換手段で階調変換された明度成分について二値化する二値化手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
カラー画像の明度以外の色彩成分についてのエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段と、前記カラー画像の明度成分についてエッジを抽出する第2のエッジ抽出手段と、前記第2のエッジ抽出手段で抽出したエッジ成分と前記エッジ強度算出手段で算出したエッジ強度を加算する加算手段と、前記加算手段による加算結果に従って前記カラー画像の明度成分について階調変換を行う階調変換手段と、前記階調変換手段で階調変換された明度成分について二値化する二値化手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
コンピュータに、請求項1または請求項2に記載の画像処理装置の機能を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−172261(P2011−172261A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85612(P2011−85612)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【分割の表示】特願2008−42659(P2008−42659)の分割
【原出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【分割の表示】特願2008−42659(P2008−42659)の分割
【原出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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