説明

画像処理装置及び画像処理プログラム

【課題】画像補正の設定を直感的に行う。
【解決手段】画像処理装置は、第1画像を入力する第1画像入力手段と、第1画像入力手段により入力された第1画像の特徴を表す第1特徴量を特定する第1特徴量特定手段と、画像補正の対象とする画像である第2画像を入力する第2画像入力手段と、第2画像入力手段により入力された第2画像の特徴を表す第2特徴量を特定する第2特徴量特定手段と、第2特徴量特定手段により特定された第2特徴量を第1特徴量特定手段により特定された第1特徴量に近づけるように、第2画像に対する画像補正処理を行う画像補正手段と、画像補正手段による画像補正処理が行われた第2画像を印刷するための印刷処理を行う印刷制御手段と、を備え、印刷制御手段は、画像補正手段により画像補正処理が行われる前の第2画像と画像補正処理が行われた後の第2画像との変化量が所定の判定基準量よりも小さい場合には、印刷制御手段による印刷処理を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像補正処理を行うための画像処理装置及び画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの好みに応じた画像補正を行う画像処理装置が知られている。
例えば、あらかじめ用意されている複数種類の調整用データの中から1つの調整用データを選択したり、任意の調整用データを設定したりすることで特定された調整用データに基づき、画像調整を行う構成のものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−89179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述したような構成で所望の画像補正が行われるような調整用データを設定するためには、画像に関する専門知識が必要となり、直感的に設定を行うことは困難であった。
【0005】
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、画像補正の設定を直感的に行うことが可能な画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するためになされたものである。本発明に係る画像処理装置は、第1画像を入力する第1画像入力手段と、前記第1画像入力手段により入力された第1画像の特徴を表す第1特徴量を特定する第1特徴量特定手段と、画像補正の対象とする画像である第2画像を入力する第2画像入力手段と、前記第2画像入力手段により入力された第2画像の特徴を表す第2特徴量を特定する第2特徴量特定手段と、前記第2特徴量特定手段により特定された第2特徴量を前記第1特徴量特定手段により特定された第1特徴量に近づけるように、前記第2画像に対する画像補正処理を行う画像補正手段と、前記画像補正手段による画像補正処理が行われた第2画像を印刷するための印刷処理を行う印刷制御手段と、を備え、前記印刷制御手段は、前記画像補正手段により画像補正処理が行われる前の第2画像と前記画像補正処理が行われた後の第2画像との変化量が所定の判定基準量よりも小さい場合には、前記印刷制御手段による印刷処理を制限することを特徴とする。
【0007】
本明細書に開示する画像処理装置は、第1画像を入力する第1画像入力手段と、第1画像入力手段により入力された第1画像の特徴を表す第1特徴量を特定する第1特徴量特定手段と、画像補正の対象とする画像である第2画像を入力する第2画像入力手段と、第2画像入力手段により入力された第2画像の特徴を表す第2特徴量を特定する第2特徴量特定手段と、第2特徴量特定手段により特定された第2特徴量を第1特徴量特定手段により特定された第1特徴量に近づけるように、第2画像に対する画像補正処理を行う画像補正手段と、画像補正手段による画像補正処理が行われた第2画像を印刷するための印刷処理を行う印刷制御手段と、画像補正手段により行われる画像補正処理の前後における第2画像の変化量と、所定の判定基準量と、を比較する比較手段と、比較手段による比較結果において変化量が判定基準量よりも小さい場合には、印刷制御手段による印刷処理を禁止する印刷禁止手段とを備える。
【0008】
このような画像処理装置によれば、ユーザは、画像を用いることで、画像補正の設定を直感的に行うことができる。特に、この画像処理装置では、画像補正処理の前後における第2画像の変化量が小さいか否かを判定し、小さいと判定した場合には印刷処理を禁止するようにしている。このため、画像補正の効果が低いという面でユーザの必要としていない画像が無駄に印刷されてしまうことを防ぐことができる。
【0009】
さらに、印刷禁止手段が、印刷を行うか否かについてのユーザの意思を確認し、印刷を行う意思の場合には印刷処理の禁止を解除するようにしてもよい。このような構成により、ユーザが必要とする画像を確実に印刷することができる。
【0010】
印刷禁止手段が、ユーザの意思に従い印刷処理の禁止を解除した場合には、判定基準量を変化量に更新するようにしてもよい。このような構成により、判定基準量をユーザの好みに応じた値に調整することができる。
【0011】
また、第1画像入力手段は、所定の読取位置にセットされた印刷媒体から光学的に読み取られる画像を複数の読取解像度で入力可能に構成されており、比較手段による比較に利用するための画像の読取解像度を、印刷制御手段による印刷処理に利用するための画像の読取解像度よりも低くするようにしてもよい。このような画像処理装置によれば、処理の高速化や記憶容量の節約が可能となる。
【0012】
また、第1特徴量特定手段は、所定の条件により第1特徴量として複数の値を特定し、第2特徴量特定手段は、第1特徴量特定手段と同じ条件により第2特徴量として複数の値を特定し、画像補正手段は、第1特徴量として特定された複数の値と第2特徴量として特定された複数の値とから算出された各画素に対する補正値に従い、第2画像を構成する各画素に対して画像補正処理を行うようにしてもよい。このような画像処理装置によれば、第2画像を第1画像に基づき効率よく補正することができる。
【0013】
なお、上記の通信装置を実現するための制御方法、コンピュータプログラム、及び、当該コンピュータプログラムを格納するコンピュータ読取可能記録媒体も、新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の複合機の外観を示す斜視図である。
【図2】複合機の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図3】色変換処理におけるユーザの動作及び複合機の処理の概略を示した説明図である。
【図4】実施形態の色変換処理のフローチャートである。
【図5】第1特徴量特定処理のフローチャートである。
【図6】第2特徴量特定処理のフローチャートである。
【図7】色相補正テーブルの説明図である。
【図8】代表値再設定処理のフローチャートである。
【図9】B領域のみを変換対象とした場合に作成される色相補正テーブルの説明図である。
【図10】変形例における色相補正テーブルを示した図である。
【図11】彩度補正テーブルを示した図である。
【図12】彩度補正のカーブの変化を示した図である。
【図13】B領域及びC領域における彩度補正テーブルを示した図である。
【図14】B領域及びC領域における補正されたS値を示した図である。
【図15】B領域及びC領域の一部が変換対象となることを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.全体構成]
図1は、実施形態の画像処理装置としての複合機10の外観を示す斜視図である。
【0016】
この複合機10は、プリンタ機能の他、スキャナ機能やカラーコピー機能等を有したものであり、本体ケーシング11における上部位置に、原稿の読み取りに用いられる画像読取部20を備えている。
【0017】
画像読取部20は、原稿載置面(ガラス台)にセット(載置)された原稿から画像を光学的に読み取るいわゆるフラットベッドスキャナである。ここで、原稿載置面は、その上面が薄板状の原稿カバー21によって覆われており、原稿カバー21を上方へ開くことにより、原稿載置面への原稿のセット及びセットされた原稿の除去(つまり原稿の出し入れ)が可能となる。また、原稿カバー21における原稿載置面と対向する側の面は白色となっており、原稿カバー21が閉じられた状態(図1に示す状態)で画像の読み取りが行われた場合に、原稿載置面における原稿の載置されていない部分は白色に読み取られる。
【0018】
一方、複合機10は、画像読取部20の前方位置(手前側の位置)に、各種操作ボタンを配置した操作部31及びメッセージ等の画像を表示する表示部(例えば液晶ディスプレイ)32からなる操作パネル30を備えている。
【0019】
また、複合機10は、画像読取部20の下方位置に、用紙等の印刷媒体にカラー画像を印刷可能な画像印刷部40を備えている。この画像印刷部40で画像が印刷された用紙は、本体ケーシング11の前面に形成された開口12から排紙される。
【0020】
さらに、複合機10は、本体ケーシング11の前面における開口12の上方位置に、SDカードやCFカード等の各種メモリカード(可搬型記憶媒体)を挿入可能なカードスロット50を備えている。また、複合機10は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置を介さずに直接メモリカードから画像(デジタルスチルカメラで撮影した画像等)を読み取ってその画像を印刷する機能(いわゆるダイレクトプリント機能)を有している。
【0021】
次に、複合機10の制御系について説明する。
図2は、複合機10の制御系の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、複合機10は、前述した画像読取部20、操作パネル30、画像印刷部40及びカードスロット50と、通信部60と、制御部70とを備えており、これらは信号線80を介して接続されている。
【0022】
通信部60は、通信ケーブル(LANケーブル)が接続された状態でその通信ケーブル
を介したデータの送受信処理を行う。つまり、外部装置との間でデータ通信を行うためのものであり、例えば、LANに存在するパーソナルコンピュータや、インターネット上に存在するウェブサーバとの間でデータ通信が可能となっている。
【0023】
制御部70は、CPU71、ROM72、RAM73等からなるマイクロコンピュータを中心に構成されており、複合機10を構成する各部を統括制御する。また、ROM72には、後述する色変換処理をCPU71に実行させるためのプログラムが記憶されている。
【0024】
[2.色変換処理の概要]
次に、複合機10が行う色変換処理の概要について説明する。
本実施形態の複合機10は、色変換対象の画像に対し、色変換の見本となる画像(以下「お手本画像」ともいう。)に基づく色変換処理を行う。ここで、まず、このような色変換処理の基本的な流れについて、図3を用いて説明する。
【0025】
ユーザが、お手本画像の印刷された原稿(例えば写真)を画像読取部20の原稿載置面にセットし、操作部31で原稿読取操作を行うと(1)、複合機10は、原稿載置面における設定範囲(L版サイズ、A4サイズ等、ユーザによって設定された範囲)からお手本画像を読み取る(2)。これにより、原稿載置面にセットされた原稿からお手本画像が読み込まれる。
【0026】
次に、ユーザが、色変換の対象とする画像が記憶されたメモリカードをカードスロット50に挿入すると(3)、複合機10は、挿入されたメモリカードを認識し、ユーザに対し、メモリカードに記憶されている画像のうち色変換の対象とするものを選択させる(4)。なお、ユーザに画像を選択させるための処理としては、公知の処理(例えば、メモリカードに記憶されている各画像を表示部32に表示させて操作部31での操作により選択させる処理)を適宜採用可能である。
【0027】
そして、色変換対象の画像がユーザにより選択されると(5)、複合機10は、選択された画像を読み込む(6)。なお、以下の説明において、当該画像を「元画像」ということがある。
【0028】
その後、複合機10は、画像読取部20から読み込んだお手本画像を見本として、メモリカードから読み込んだ元画像を補正する処理を行う(7)。
なお、ここでは、画像読取部20からお手本画像を読み込んだ後にメモリカードから元画像を読み込む手順を例示したが、これに限定されるものではなく、先にメモリカードから元画像を読み込み、その後に画像読取部20からお手本画像を読み込むようにしてもよい。
【0029】
このような色変換処理によれば、ユーザは、お手本画像を用いることで、元画像の色変換を簡単な操作でかつ感覚的に行うことができる。
しかしながら、本実施形態の複合機10のように原稿載置面が原稿カバー21によって覆われているものでは、ユーザが、原稿載置面に原稿がセットされていないにもかかわらず原稿がセットされているものと思い込んで色変換を開始してしまうことが考えられる。また、お手本画像によっては、色変換処理による効果がほとんど得られないことも考えられる。
【0030】
そこで、本実施形態の複合機10では、ユーザの必要としていない画像が無駄に印刷されてしまうことがないようにしている。
[3.色変換処理の具体的内容]
以下、本実施形態の複合機10が行う色変換処理の具体的内容について説明する。
【0031】
[3−1.色変換処理]
図4は、CPU71が実行する色変換処理のフローチャートである。
CPU71は、色変換処理を開始すると、まず、S101で、原稿載置面における設定範囲を本来の解像度よりも低い解像度(例えば100dpi)で読み取るプレスキャンを行う。なお、読み取った画像の形式は特に限定されないが、本実施形態ではRGB形式を前提として説明する。
【0032】
続いて、S102では、S101のプレスキャンで読み取った低解像度の画像(以下「プレスキャン画像」ともいう。)を構成する各画素をHSVパラメータ(H値:0〜360、S値及びV値:0〜1)に変換する処理を行う。
【0033】
なお、RGBからHSVパラメータへの変換や、HSVからRGBへの変換は、以下に示す公知の変換式に従い行うことができる。
(1)RGB⇒HSVの変換式
max(a,b,c)はa,b,cの中で最も大きい値を表す。
min(a,b,c)はa,b,cの中で最も小さい値を表す。
V = max(R/255,G/255,B/255)
Vが0でない時、
S = [V - min(R,G,B)] ÷ V
Vが0の時、
S = 0
[V - min(R,G,B)]が0でない時、
r = (V - R/255)÷(V-min(R,G,B)
g = (V - G/255)÷(V-min(R,G,B)
b = (V - B/255)÷(V-min(R,G,B)
[V - min(R,G,B)]が0の時、
r = 0
g = 0
b = 0
V = R/255の時
H = 60 × (b-g)
V = G/255の時
H = 60 × (2+r-g)
V = B/255の時
H = 60 × (4+g-r)
ただしH<0の時
H = H+360
として、RGBからHSVへ変換される。また、HSVからRGBへは、
(2)HSV⇒RGBの変換式
(以下で示すin, fl, m, nは、HSVからRGBを算出する過程で利用する媒介変数であ
る)
in を (H/60)の整数部分
fl を (H/60)の小数部分とする。
in が偶数の場合
fl = 1-fl
m = V × (1-S)
n = V × (1-S×fl)
inが0の時
R = V × 255
G = n × 255
B = m × 255
inが1の時
R = n × 255
G = V × 255
B = m × 255
inが2の時
R = m × 255
G = V × 255
B = n × 255
inが3の時
R = m × 255
G = n × 255
B = V × 255
inが4の時
R = n × 255
G = m × 255
B = V × 255
inが5の時
R = V × 255
G = m × 255
B = n × 255
として変換される。
【0034】
続いて、S103では、S102での変換処理により得られたHSVパラメータに基づき、プレスキャン画像の画像全体のV値の平均値である平均輝度値meanVを算出し、算出
した平均輝度値meanVが、あらかじめ設定されているしきい値ThreV(例えば0.97)以上であるか否かを判定する。ここで、しきい値ThreVは、画像読取部20の原稿載置面に
原稿がセットされているか否かの判定基準値として設定されており、平均輝度値meanVが
しきい値ThreV以上の場合(白色のみの画像と判断される場合)には、原稿が存在しない
可能性が高いことになる。
【0035】
そして、S103で、平均輝度値meanVがしきい値ThreV以上であると判定した場合には、S104へ移行し、印刷を中止するか否かを判定する。具体的には、表示部32にメッセージを表示して操作部31での操作を促すことにより、印刷を中止するかどうかについてのユーザの意思を確認する。
【0036】
このS104で、印刷を中止すると判定した場合には、そのまま本色変換処理を終了する。
一方、S104で、印刷を中止しないと判定した場合には、S105へ移行する。
【0037】
また、S103で、平均輝度値meanVがしきい値ThreV以上でないと判定した場合にも、S105へ移行する。
S105では、S102での変換処理により得られたHSVパラメータに基づいて、プレスキャン画像(低解像度のお手本画像)の特徴を表す特徴量である第1特徴量を特定する第1特徴量特定処理を行う。なお、第1特徴量特定処理の具体的な処理内容については後述する(図5)。
【0038】
続いて、S106では、メモリカードに記憶されている色変換対象の画像(元画像)を
RAM73に読み込む。なお、読み込む画像の形式は特に限定されないが、本実施形態ではRGB形式を前提として説明する。
【0039】
続いて、S107では、S106で読み込んだ元画像を構成する各画素をHSVパラメータに変換する処理を行う。
続いて、S108では、S107での変換処理により得られたHSVパラメータに基づいて、元画像の特徴を表す特徴量である第2特徴量を特定する第2特徴量特定処理を行う。なお、第2特徴量特定処理の具体的な処理内容については後述する(図6)。
【0040】
続いて、S109では、第1特徴量(プレスキャン画像の第1特徴量)及び第2特徴量の値を条件に応じて再設定する代表値再設定処理を行う。なお、代表値再設定処理の具体的な処理内容については後述する(図8)。
【0041】
続いて、S110では、第1特徴量(プレスキャン画像の第1特徴量)及び第2特徴量に基づいて元画像を補正する。なお、具体的な補正方法については後述する。
続いて、S111では、S110での補正前後の元画像の変化量がしきい値ThreU以上
であるか否かを判定する。本実施形態では、補正前の元画像と補正後の元画像との間で、対応する各構成画素についての差分(RGB値の差分)を求め、求めた差分のうち最大のものを変化量とする。
【0042】
そして、S111で、補正前後の元画像の変化量がしきい値ThreU以上でないと判定し
た場合には、S112へ移行し、印刷を中止するか否かを判定する。具体的には、表示部32にメッセージを表示して操作部31での操作を促すことにより、印刷を中止するかどうかについてのユーザの意思を確認する。
【0043】
このS112で、印刷を中止すると判定した場合には、そのまま本色変換処理を終了する。
一方、S112で、印刷を中止しないと判定した場合には、S113へ移行し、しきい値ThreUを更新した後、S114へ移行する。具体的には、S110での補正前後の元画
像の変化量をしきい値ThreUとする。つまり、変化量がしきい値ThreUよりも小さいにもかかわらずユーザが印刷を許可した場合には、次回のしきい値ThreUをその変化量まで下げ
ることで、しきい値ThreUがユーザの好みに応じた値に調整されるようにしている。
【0044】
また、S111で、補正前後の元画像の変化量がしきい値ThreU以上であると判定した
場合にも、そのままS114へ移行する。
S114では、原稿載置面における設定範囲を本来の解像度(プレスキャンよりも高い解像度)で読み取ることにより、お手本画像を読み取る。
【0045】
続いて、S115では、S114で読み取ったお手本画像を構成する各画素をHSVパラメータに変換する処理を行う。
続いて、S116では、S115での変換処理により得られたHSVパラメータに基づいて、お手本画像(本来の解像度で読み取ったお手本画像)の特徴を表す特徴量である第1特徴量を特定する第1特徴量特定処理を行う。なお、第1特徴量特定処理の具体的な処理内容については後述する(図5)。
【0046】
続いて、S117では、第1特徴量(本来の解像度で読み取ったお手本画像の第1特徴量)及び第2特徴量の値を条件に応じて再設定する代表値再設定処理を行う。なお、代表値再設定処理の具体的な処理内容については後述する(図8)。
【0047】
続いて、S118では、第1特徴量(本来の解像度で読み取ったお手本画像の第1特徴
量)及び第2特徴量に基づいて元画像を補正する。なお、具体的な補正方法については後述する。
【0048】
続いて、S119では、S118で補正された補正後の元画像を画像印刷部40に印刷させた後、本色変換処理を終了する。
[3−2.第1特徴量特定処理]
次に、色変換処理(図4)におけるS105,S116で行われる第1特徴量特定処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、この第1特徴量特定処理においては、H値は、−30〜330の値をとるものとし、H値がこの範囲内にない場合は、H値を適宜変換することにより(例えば、“H値+360×n”又は“H値−360×n”、nは整数)、この範囲内に調整する。
【0049】
CPU71は、第1特徴量特定処理を開始すると、まず、S201で、処理対象のお手本画像を複数の領域に分割する。本実施形態では、一般的に用いられる6つの色相に基づいて分割する。具体的には、それぞれの画素のH値に基づき、
・R領域: −30以上〜30未満
・Y領域: 30以上〜90未満
・G領域: 90以上〜150未満
・C領域: 150以上〜210未満
・B領域: 210以上〜270未満
・M領域: 270以上〜330未満
に分割する。つまり、お手本画像の構成画素をその色相値に応じた上記分類基準に従い、6つの分類項目に分類する処理を行う。なお、これらの領域とH値の対応関係はあくまでも一例であり、適宜変更可能なものである。
【0050】
続いて、S202では、S201で分割した領域ごとに、各領域がお手本画像中に占める割合と、各領域に属する構成画素の特徴を表す代表値(HSV値)とを、第1特徴量(k)として算出する。
【0051】
ここで、各領域の代表値(HSV値)を、以下のように定義する。
・R領域の代表値:sHr,sSr,sVr
・G領域の代表値:sHg,sSg,sVg
・B領域の代表値:sHb,sSb,sVb
・C領域の代表値:sHc,sSc,sVc
・M領域の代表値:sHm,sSm,sVm
・Y領域の代表値:sHy,sSy,sSy
本実施形態では、各領域に属する構成画素のHSV値それぞれの平均値を代表値として特定する。なお、代表値は平均値に限定されるものではなく、例えば中間値を用いることもできる。
【0052】
また、各領域がお手本画像中に占める割合を、以下のように定義する。
・R領域がお手本画像中に占める割合:sRateR
・G領域がお手本画像中に占める割合:sRateG
・B領域がお手本画像中に占める割合:sRateB
・C領域がお手本画像中に占める割合:sRateC
・M領域がお手本画像中に占める割合:sRateM
・Y領域がお手本画像中に占める割合:sRateY
例えばR領域については、
sRateR=(お手本画像中のR領域の画素数)÷(お手本画像の全画素数)
とすることができる。なお、他の式によって定義してもよい。
【0053】
[3−3.第2特徴量特定処理]
次に、前述した色変換処理(図4)におけるS108で行われる第2特徴量特定処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、この第2特徴量特定処理では、前述した第1特徴量特定処理(図5)でお手本画像に対して行った処理と同様の処理を、元画像に対して行う。
【0054】
すなわち、CPU71は、第2特徴量特定処理を開始すると、まず、S301で、元画像を6つの領域に分割する。この処理内容は、第1特徴量特定処理におけるS201の処理と同様であるので、具体的な説明については省略する。
【0055】
続いて、S302では、元画像に対し、第1特徴量特定処理におけるS202の処理と同様の処理を行うことにより、第2特徴量を算出する。ここでは、各領域の代表値(HSV値)を、以下のように定義する。
・R領域の代表値:iHr,iSr,iVr
・G領域の代表値:iHg,iSg,iVg
・B領域の代表値:iHb,iSb,iVb
・C領域の代表値:iHc,iSc,iVc
・M領域の代表値:iHm,iSm,iVm
・Y領域の代表値:iHy,iSy,iSy
また、各領域が元画像中に占める割合を、以下のように定義する。
・R領域が元画像中に占める割合:iRateR
・G領域が元画像中に占める割合:iRateG
・B領域が元画像中に占める割合:iRateB
・C領域が元画像中に占める割合:iRateC
・M領域が元画像中に占める割合:iRateM
・Y領域が元画像中に占める割合:iRateY
[3−4.元画像の補正処理]
次に、前述した色変換処理(図4)におけるS110,S118で行われる元画像の補正処理の具体的方法について説明する。この処理は、元画像の各画素のH値、S値、V値をそれぞれ変換することによって行われる。
【0056】
まず、H値における変換処理について説明する。
第2特徴量のH値の代表値をX軸にとり、第1特徴量のH値の代表値をY軸にとって領域ごとのH値の代表値をプロットする。そしてプロットされた点の間を、例えば線形補間することにより、図7に示す色相補正テーブルを作成する。ここで、この色相補正テーブルによる補正後のH値(Y軸のH値)をH’とし、H’<0の場合は、H’=H’+360とし、H’>360の場合は、H’=H’−360とする。
【0057】
そして、元画像のそれぞれの画素に対し、上記色相補正テーブルを適用することによって、H値を補正する。具体的には、補正後のH’は、以下の式で定義することができる。
H’=(y2-y1)÷(x2-x1) × H
- (y2-y1)÷(x2-x1) × x2 + y2
・・・(式1)
ここで、x1,x2,y1,y2は、以下のように定義される。
【0058】
H<iHrのときは、
(x1,y1)= (iHm−360,sHm−360)
(x2,y2)= (iHr,sHr)
iHr≦H<iHyのときは、
(x1,y1)= (iHr,sHr)
(x2,y2)= (iHy,sHy)
iHy≦H<iHgのときは、
(x1,y1)= (iHy,sHy)
(x2,y2)= (iHg,sHg)
iHg≦H<iHcのときは、
(x1,y1)= (iHg,sHg)
(x2,y2)= (iHc,sHc)
iHc≦H<iHbのときは、
(x1,y1)= (iHc,sHc)
(x2,y2)= (iHb,sHb)
iHb≦H<iHmのときは、
(x1,y1)= (iHb,sHb)
(x2,y2)= (iHm,sHm)
iHm≦Hのときは、
(x1,y1)= (iHm,sHm)
(x2,y2)= (iHr+360,sHr+360)
次に、S値及びV値における変換について説明する。
【0059】
S値及びV値は、H値によって分割された領域ごとに値が変換される。例えば、R領域について、
S ≦ iSrのときは、
S’=S×(sSr÷iSr) ・・・(式2)
S > iSrのときは、
S’=1+(S−1)×{(1−sSr)÷(1−iSr)} ・・・(式3)
V ≦ iVrのときは、
V’=V×(sVr÷iVr) ・・・(式4)
V > iVrのときは、
V’=1+(V−1)×{(1−sVr)÷(1−iVr)} ・・・(式5)
の式で求めることができる。また、その他の領域の計算についても同様に算出することができる。なお、以下においては、上記S値の変換式で定義される変換テーブルを彩度補正テーブルということがあり、また、上記V値の変換式で定義される変換テーブルを明度補正テーブルということがある。
【0060】
その後、変換されたHSV値を、画像印刷部40に適するフォーマット(例えば、RGB値)に変換する。なお、HSV値からRGB値への変換は、前述した公知の変換式に従い行うことができる。
【0061】
このように、H値に基づいて分割された領域ごとに、第2特徴量を第1特徴量に近づけるように元画像に対する補正処理を行うことによって、元画像の色合いをお手本画像の色合いに変換することができる。
【0062】
[3−5.代表値再設定処理]
次に、前述した色変換処理(図4)におけるS109,S117で行われる代表値再設定処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0063】
CPU71は、代表値再設定処理を開始すると、まず、S401で、元画像において色相ごとに分割した6つの領域のうちの1つの領域について、色変換の対象とするか否かを判定する。ここで、その領域を色変換の対象とするか否かは、その領域が後述の変換対象条件を満たすか否かによって判定する。そして、色変換の対象とすると判定した場合には
(S401:YES)、S403へ移行する。一方、色変換の対象としないと判定した場合には(S401:NO)、S402へ移行し、その領域に係る第1特徴量及び第2特徴量の代表値を再設定した後、S403へ移行する。なお、代表値の再設定方法については後述する。
【0064】
S403では、6つの領域すべてについて、色変換の対象とするか否かの判定処理を行ったか否かを判定する。そして、色変換の対象とするか否かの判定処理を行っていない領域が残っていると判定した場合には(S403:NO)、S401に戻り処理を繰り返す。一方、すべての領域について判定処理を行ったと判定した場合には(S403:YES)、本代表値再設定処理を終了する。
【0065】
ここで、S401の変換対象条件について説明する。
(A)しきい値Threを用いる方法
S401では、第1特徴量及び第2特徴量における対象領域についての割合値(お手本画像中又は元画像中に占める割合)がしきい値Thre以上である場合に、変換対象条件を満たす(色変換の対象とする)と判定する。そして、第1特徴量及び第2特徴量の少なくとも一方における対象領域についての割合値がしきい値Thre未満の場合には、S402で、その領域に係る第1特徴量及び第2特徴量の代表値を同じ値に変更し、変更後の代表値を用いて補正処理が行われるようにする。具体的には、代表値を次のように再設定する。
【0066】
sRateR<Thre 又は iRateR<Thre のときは、
sHr=0,sSr=0.5,sVr=0.5,
iHr=0,iSr=0.5,iVr=0.5
sRateG<Thre 又は iRateG<Thre のときは、
sHg=120,sSg=0.5,sVg=0.5,
iHg=120,iSg=0.5,iVg=0.5
sRateB<Thre 又は iRateB<Thre のときは、
sHb=240,sSb=0.5,sVb=0.5,
iHb=240,iSb=0.5,iVb=0.5
sRateC<Thre 又は iRateC<Thre のときは、
sHc=180,sSc=0.5,sVc=0.5,
iHc=180,iSc=0.5,iVc=0.5
sRateM<Thre 又は iRateM<Thre のときは、
sHm=300,sSm=0.5,sVm=0.5,
iHm=300,iSm=0.5,iVm=0.5
sRateY<Thre 又は iRateY<Thre のときは、
sHy=60,sSy=0.5,sVy=0.5,
iHy=60,iSy=0.5,iVy=0.5
本実施形態では、S値及びV値については、そのとり得る値(0〜1)の中間値である0.5を採用し、H値においては、それぞれの領域の中間値を採用したが、これらはあくまでも一例に過ぎず、これらの数値に限定されるものではない。
【0067】
このように代表値を変更することで、補正処理において、S値及びV値については、前述した変換式(式2)〜(式5)から明らかなように値が変換されない。すなわち、例えばR領域に関して、S≦ iSrのときは、前述した(式2)のとおり、
S’=S×(sSr÷iSr)
の式で算出されるが、当該式において、sSr=0.5,iSr=0.5となるので、前述した式は、
S’=S×(0.5÷0.5)=S ・・・(式6)
となる。S>iSrのときも同様にS’=Sとなる。また、V値及び他の領域についても
同様に変換されない。
【0068】
一方、H値については、図7においてプロットされる点が代表値に変更されるので、その領域における変換量を小さくすることができる。すなわち、前述した変換式(式1)を利用した場合であっても、代表値を変更することによって変換量が小さくなる。
【0069】
次に、しきい値Threの決定方法について説明する。この値は、例えば官能評価に基づいて決定することができる。官能評価では、約6%以上の面積を占めていれば、その領域は知覚されやすいことを確認した。したがって、しきい値Threとして、6%を採用することができる。ただし、しきい値Threは6%に限定されるものではない。
【0070】
また、例えば、他の領域に対して相対的に面積が大きい領域を抽出するようにしきい値Threを決定してもよい。具体的には、分割される領域の数が6であれば、その逆数である1/6をしきい値Threとする。
【0071】
ここで、分割される領域の数が6とは、色彩を表現する色域の1つであるRGB空間(頂点数8)から、無彩色である白と黒とを除いた残りの6つの頂点である。人が色彩を識別するには、色域を頂点数6に分類すれば十分であり、6より少なくすると、元画像がお手本画像のように変換されていないとユーザが感じる可能性が高くなる。逆に、6より細かく分割すれば、変換精度は高くなるが、人には識別できなくなる可能性が高くなる。また、分割数の増加に伴い計算量も増えるため、印刷結果が得られるまでの時間が長くなり、ユーザの不満も増加する可能性も高くなるので、分割される領域の数は6が好ましい。
【0072】
なお、本実施形態では、すべての領域において同一のしきい値Threを用いているが、これに限定されるものではなく、領域ごとにしきい値Threを変更してもよい。
(B)最大領域の情報を用いる方法
上記(A)の方法では、しきい値Threを設定し、当該しきい値Threに基づいて代表値の変更、すなわち、色変換処理の停止、変換量の減少の制御を行った。ここでは、お手本画像の特定の色のみについて元画像に反映させるために、画像中の最大領域の情報を用いる方法について説明する。
【0073】
この場合、S401では、第1特徴量及び第2特徴量のいずれにおいても最も割合値が大きい領域である場合に、変換対象条件を満たす(色変換の対象とする)と判定する。そして、変換対象条件を満たさない領域については、S402で、その領域に係る第1特徴量及び第2特徴量の代表値を次のように再設定する。ここで、第1特徴量の割合値のうち最も大きい割合値を、sMaxRateとする。また、第2特徴量の割合値のうち最も大きい割合値を、iMaxRateとする。
【0074】
sRateR≠iMaxRate又はiRateR≠sMaxRateのとき、
sHr=0,sSr=0.5,sVr=0.5,
iHr=0,iSr=0.5,iVr=0.5
sRateG≠iMaxRate又はiRateG≠sMaxRateのとき、
sHg=120,sSg=0.5,sVg=0.5,
iHg=120,iSg=0.5,iVg=0.5
sRateB≠iMaxRate又はiRateB≠sMaxRateのとき、
sHb=240,sSb=0.5,sVb=0.5,
iHb=240,iSb=0.5,iVb=0.5
sRateC≠iMaxRate又はiRateC≠sMaxRateのとき、
sHc=120,sSc=0.5,sVc=0.5,
iHc=120,iSc=0.5,iVc=0.5
sRateM≠iMaxRate又はiRateM≠sMaxRateのとき、
sHm=300,sSm=0.5,sVm=0.5,
iHm=300,iSm=0.5,iVm=0.5
sRateY≠iMaxRate又はiRateY≠sMaxRateのとき、
sHy=60,sSy=0.5,sVy=0.5,
iHy=60,iSy=0.5,iVy=0.5
このように代表値を設定することで、第1特徴量及び第2特徴量のいずれにおいても最も割合値の大きい領域のみが変換対象となるから、変換対象とならなかった領域のS値及びV値については変換が行われず、また、H値については変換量を減少させることができる。
【0075】
具体的には、例えばB領域のみを変換対象とした場合、図9に示すような色相補正テーブルが作成されることになる。この色相補正テーブルにおいては、色空間上B領域に隣接するC領域におけるH値の代表値(iHc=180,sHc=180)とB領域におけるH値の代表値(iHb,sHb)とが直線で結ばれ、また、色空間上B領域に隣接するM領域におけるH値の代表値(iHm=300,sHm=300)とB領域におけるH値の代表値(iHb,sHb)とが直線で結ばれることになる。
【0076】
このため、H値が180<H≦210のC領域、及びH値が270<H≦300のM領域についても変換されることになる。この変換量は、B領域に近い値ほど大きくなる。
このように、変換対象の領域を選択可能であり、また、変換対象ではない領域であっても、色空間上隣接するH値については一部変換されることになるから、変換対象の領域の変換対象ではない領域との間に擬似輪郭(階調とび)が生成されることを防ぐことができる。
【0077】
このような代表値再設定処理を行うことにより、分割されたそれぞれの領域に対し、領域の大きさに基づいて補正処理の一部を停止したり、変換量を小さくしたりすることができるため、ユーザは、お手本画像の一部の色合いのみを元画像の色合いに反映させるといったことが可能となる。
【0078】
[4.効果]
以上説明したように、本実施形態の複合機10は、原稿載置面にセットされた原稿から光学的に読み取られるお手本画像を入力し(S114)、入力したお手本画像の特徴を表す第1特徴量を特定する(S115,S116)。また、色変換の対象とする元画像をメモリカードから入力し(S106)、入力した元画像の特徴を表す第2特徴量を特定する(S107,S108)。そして、第2特徴量を第1特徴量に近づけるように、元画像に対する色変換処理を行い(S117,S118)、色変換処理後の元画像を印刷する(S119)。
【0079】
このような複合機10によれば、ユーザは、お手本画像を用いることで、元画像の色変換を簡単な操作でかつ感覚的に行うことができる。
具体的には、例えば、建物と空が写っている元画像に対し、空の青を鮮やかな海の青に変換したい場合は、鮮やかな海の写っているお手本画像を用いることによって、元画像の青色を鮮やかな海の青に変換することができる。
【0080】
また、人の顔が映っている元画像に対し、肌色を明るく変換したい場合は、明るい肌色の写っているお手本画像を用いることによって、元画像の肌色を明るい肌色に変換することができる。
【0081】
このように、ユーザは、何ら専門的な知識を必要とせず、お手本画像を画像読取部20
に読み取らせるだけで、所望の色変換を行うことができる。さらに、色変換を行う領域が自動的に選択されるので、知覚されにくい領域の変換を中止又は低減し、知覚されやすい領域のみを変換することもできる。
【0082】
また、この複合機10は、画像読取部20がいわゆるフラットベッドスキャナであり、原稿載置面が原稿カバー21によって覆われているため、ユーザが、原稿載置面に原稿がセットされていないにもかかわらず原稿がセットされているものと思い込んで色変換を開始してしまうことが考えられる。しかしながら、この複合機10では、原稿載置面に原稿がセットされているか否かをプレスキャン画像の平均輝度値に基づき判定し(S102,S103)、原稿がセットされていないと判定した場合には(S103:YES)、印刷を中止するか否かをユーザに確認するようにしている(S104)。
【0083】
また、お手本画像によっては、色変換処理による効果がほとんど得られない(ほとんど変化しない)ことも考えられるが、この複合機10では、色変換処理の前後における元画像の変化量がしきい値ThreUよりも小さい場合にも(S111:NO)、印刷を中止する
か否かをユーザに確認するようにしている(S112)。
【0084】
したがって、原稿をセットし忘れた場合や、原稿はセットされているものの色変換効果が著しく低い場合などのように、ユーザの必要としていない画像が無駄に印刷されてしまうことを防ぐことができる。また、印刷を直ちに中止するのではなく、ユーザに確認するようにしているため、ユーザが必要とする画像については確実に印刷することができる。
【0085】
特に、色変換処理の前後における元画像の変化量がしきい値ThreUよりも小さいにもか
かわらず印刷を中止しない場合には、しきい値ThreUをその変化量に更新するようにして
いるため、複合機10の使用に伴い、しきい値ThreUがユーザの好みに応じた値に調整さ
れる。この結果、ユーザにとって好ましい変化量の場合には、わざわざ確認操作を行うことなく自動で印刷されるようになる。
【0086】
加えて、印刷を中止するか否かの判定(S103,S111)に利用するための画像の読取解像度を、印刷用の画像を生成する処理(S118)に利用するための画像の読取解像度よりも低くするようにしているため、処理を高速化し、記憶容量を小さくすることができる。
【0087】
[6.他の形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、種々の形態をとり得ることは言うまでもない。
【0088】
(1)上記実施形態では、プレスキャンで読み取った低解像度の画像に基づき、原稿が
セットされているか否かの判定や、色変換処理の前後における元画像の変化量の大きさの判定を行うようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、本来の解像度で読み取った画像に基づきこれらの判定を行うことも可能である。この場合、お手本画像の読み取りを再度行う必要がないという面では有効であるが、処理の高速化や記憶容量の節約という面では上記実施形態のように解像度を落とす方法が有効である。
【0089】
(2)上記実施形態では、原稿がセットされていないと判定したにもかかわらず印刷を中止しない場合にも画像補正を行うようにしているが、これに限定されるものではなく、このような場合には元画像をそのまま印刷するようにしてもよい。
【0090】
(3)上記実施形態では、原稿がセットされていないと判定した場合や、色変換処理の前後における元画像の変化量が小さいと判定した場合には、印刷を中止するか否かをユーザに確認するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、このような場合には、ユーザに確認することなく印刷を中止するようにしてもよい。
【0091】
(4)上記実施形態では、複合機10がお手本画像を画像読取部20で読み取る例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、メモリカードから読み込んだ画像や、通信部60を介して外部から受信した画像をお手本画像としてもよい。このような構成においては、原稿のセット忘れの問題は生じないものの、色変換効果が著しく低い場合に印刷を中止できるという効果は得られるからである。
【0092】
(5)上記実施形態では、色変換の対象とする画像をメモリカードから入力する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、画像読取部20で読み取られた画像や、通信部60を介して外部から受信した画像を色変換の対象としてもよい。
【0093】
(6)上記実施形態では、色変換処理において、第1特徴量及び第2特徴量を特定するための処理を行う前に、お手本画像及び元画像の各構成画素をHSVパラメータに変換する処理を行うようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、HSVパラメータに代えて、L*c*h*パラメータやRGBパラメータ等の他のパラメータに変換して
もよい。
【0094】
(7)上記実施形態において、第1特徴量と第2特徴量を特定する順序は特に限定されるものではなく、逆の順序で特定してもよい。
(8)上記実施形態では、第1特徴量を特定するアルゴリズムと第2特徴量を特定するアルゴリズムとを同一のものとして説明したが、これに限定されるものではなく、異なるアルゴリズムによって特定してもよい。
【0095】
(9)上記実施形態では、代表値再設定処理により、領域の大きさに応じて補正処理の一部を停止したり、変換量を小さくしたりする処理を例示したが、これに限定されるものではなく、代表値再設定処理を行わないようにしてもよい。
【0096】
(10)上記実施形態では、画像補正処理として色変換処理を例示したが、これに限定されるものではなく、上記実施形態で例示した以外の画像補正処理を行うものであってもよい。
【0097】
(11)上記実施形態においては、変換対象としない領域のH値は、変換量を減少させることはできるものの、変換量をゼロとすることはできない。図7に示すように、変換対象としない領域の代表値との間で線形補間されるため、他の領域の代表値の影響を受けるからである。
【0098】
そこで、図10に示すような色相補正テーブルを採用することができる。図10は、B領域のみを変換対象とした場合の色相補正テーブルである。なお、この図においては、変換対象の領域の数を1つとしているが、複数の領域を補正対象とした場合にも同様に適用できる。
【0099】
図10においては、B領域以外のH値は、H’=Hであるから、色変換は行われない。B領域のH’値については、B領域中の最小値をHmin,B領域中の最大値をHmaxとすれば、以下の式で求めることができる。
【0100】
H<iHのときは、
H’=Hmin+(sHb−Hmin)×(H−Hmin)÷(iHb−Hmin)
H>iHのときは、
H’=sHb+(Hmax−sHb)×(H−iHb)÷(Hmax−iHb)
この式を用いることにより、変換対象の領域のみを変換することができる。
【0101】
このようにすれば、変換対象のH値のみを変換することができるから、色変換の効果を大きくすることができる。
(12)上記実施形態においては、S値及びV値に対し、領域ごとに補正カーブ(変換式)を独立して用いるため、擬似輪郭(階調とび)が生成されるおそれがある。すなわち、図11に示すように、領域ごとに、SとS’との関係を示すテーブルを有しており、隣接する領域におけるテーブルの性質を何ら考慮していない。
【0102】
これに対し、図12に示すように、各色領域における補正カーブを滑らかにすることで階調とびを防止できる。
ここで、具体的な処理について以下に説明する。なお、図13及び図14を参照しつつC領域の一部及びB領域の一部の色変換処理について説明を行うが、他の領域についても処理の内容は基本的には同じである。
【0103】
補正されたS値(Sb’’)は、変換対象領域のH値(H)、変換対象とする領域のH値の中間値(Hbmid)、変換対象となる画素のH値の色相座標位置と、変換対象とする領域のH値の中間値の色相座標位置とを比較し、変換対象となる画素のH値の色相座標位置は近くに、かつ、変換対象とする領域のH値の中間値の色相座標位置からは遠くに隣接する領域のH値の代表値(Hcmid)、上記変換式(式2)に対応する変換式で変換された(すなわち、B領域の彩度補正テーブルを用いて算出された)変換対象領域のS値(Sb’)、上記変換式(式3)に対応する変換式で変換された(すなわち、C領域の彩度補正テーブルを用いて算出された)隣接する領域のS値(Sc’)を用いて、以下の式で求めることができる。
【0104】
Sb’’ = {(H−Hcmid)×Sb’+(Hbmid−H)×Sc’}
÷{(Hbmid−Hcmid)} ・・・(式7)
なお、上記Hbmid、Hcmidは、上記再設定された「代表値」である。
【0105】
また、この例における補正されたV値(Vb’’)は、変換対象領域のH値(H)、変換対象領域のH値の代表値(Hbmid)、隣接する領域のH値の代表値(Hcmid)、上記変換式(式4)に対応する変換式で変換された(すなわち、B領域の明度補正テーブルを用いて算出された)変換対象領域のV値(Vb’)、上記変換式(式5)に対応する変換式で変換された(すなわち、C領域の明度補正テーブルを用いて算出された)隣接する領域のS値(Vc’)を用いて、以下の式で求めることができる。
【0106】
Vb’’ = {(H−Hcmid)×Vb’+(Hbmid−H)×Vc’}
÷{(Hbmid−Hcmid)} ・・・(式8)
前述した処理を、図15に示されるB領域の一部(H値の範囲:210<H≦240)及びC領域の一部(H値の範囲180<H≦210)に対して行う。これにより、入力の色相値(H)に応じた重み付け計算により、出力の彩度値(S'')及び明度値(V'')を求めることにより、各色相間の補正効果を滑らかにすることができる。
【0107】
(13)上記実施形態では、画像処理装置として複合機10を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば、パーソナルコンピュータのような情報処理装置であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
10…複合機、11…本体ケーシング、12…開口、20…画像読取部、21…原稿カバー、30…操作パネル、31…操作部、32…表示部、40…画像印刷部、50…カードスロット、60…通信部、70…制御部、71…CPU、72…ROM、73…RAM、80…信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画像を入力する第1画像入力手段と、
前記第1画像入力手段により入力された第1画像の特徴を表す第1特徴量を特定する第1特徴量特定手段と、
画像補正の対象とする画像である第2画像を入力する第2画像入力手段と、
前記第2画像入力手段により入力された第2画像の特徴を表す第2特徴量を特定する第2特徴量特定手段と、
前記第2特徴量特定手段により特定された第2特徴量を前記第1特徴量特定手段により特定された第1特徴量に近づけるように、前記第2画像に対する画像補正処理を行う画像補正手段と、
前記画像補正手段による画像補正処理が行われた第2画像を印刷するための印刷処理を行う印刷制御手段と、を備え、
前記印刷制御手段は、前記画像補正手段により画像補正処理が行われる前の第2画像と前記画像補正処理が行われた後の第2画像との変化量が所定の判定基準量よりも小さい場合には、印刷処理を制限する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記変化量が前記所定の判定基準量よりも小さい場合に、印刷を行うか否かに関する問合せ情報を表示する表示手段と、
ユーザからの操作を受け付ける受付手段と、を備え、
前記印刷制御手段は、前記表示手段に問合せ情報を表示に応じて、前記受付手段により印刷を行う旨の情報を受け付けた場合に前記印刷処理を行い、前記受付手段により印刷を行う旨の情報を受け付けなかった場合に、前記印刷処理を禁止すること
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記受付手段により印刷を行う旨の情報が入力された場合に、前記所定の判定基準量を前記変化量に更新する更新手段、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1画像入力手段は、所定の読取位置にセットされた印刷媒体から光学的に読み取られる画像を複数の読取解像度で入力可能に構成されており、前記変化量と前記所定の判定基準量との比較に利用するための画像の読取解像度を、前記印刷制御手段による印刷処理に利用するための画像の読取解像度よりも低くすること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1特徴量特定手段は、所定の条件により第1特徴量として複数の値を特定し、
前記第2特徴量特定手段は、前記第1特徴量特定手段と同じ条件により第2特徴量として複数の値を特定し、
前記画像補正手段は、前記第1特徴量として特定された複数の値と前記第2特徴量として特定された複数の値とから算出された各画素に対する補正値に従い、前記第2画像を構成する各画素に対して画像補正処理を行うこと
を特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記変化量が前記所定の判定基準量よりも小さい場合には、前記画像補正手段による補正を行わないこと
を特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
第1画像入力手段により入力された第1画像の特徴を表す第1特徴量を特定する第1特徴量特定手段、
第2画像入力手段により入力された、画像補正の対象とする画像である第2画像の特徴を表す第2特徴量を特定する第2特徴量特定手段、
前記第2特徴量特定手段により特定された第2特徴量を前記第1特徴量特定手段により特定された第1特徴量に近づけるように、前記第2画像に対する画像補正処理を行う画像補正手段、
前記画像補正手段による画像補正処理が行われた第2画像を印刷するための印刷処理を行う印刷制御手段、としてコンピュータを機能させ、
前記印刷制御手段は、前記画像補正手段により画像補正処理が行われる前の第2画像と前記画像補正処理が行われた後の第2画像との変化量が所定の判定基準量よりも小さい場合には、前記印刷制御手段による印刷処理を制限することを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−217391(P2011−217391A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129828(P2011−129828)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【分割の表示】特願2007−226090(P2007−226090)の分割
【原出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】