説明

画像処理装置

【課題】画像から過剰平滑化を抑制しつつ網点パターンの周期性を高精度に除去できかつその処理負担の少ない画像処理装置を提供する。
【解決手段】周期性パターン解析部23は画像に含まれる網点パターンの周期性(1周期分の網点パターンを成す平行四辺形領域)を検出し、平滑化領域決定部24はこの平行四辺形領域を変形して(一部分を隣接する平行四辺形領域の同一部位に置き換えて)2個の隣接した矩形領域からなる平滑化領域を決定し、重み係数割り当て部25はこの平滑化領域を内包可能なサイズの空間フィルタであって内包した平滑化領域との重複面積に応じて各画素に対する重み係数が設定された空間フィルタを作成し、平滑化演算部26はこの空間フィルタを用いて処理対象の画像に対して畳み込み演算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網点処理された画像から網点パターンの影響による周期性を除去する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
網点処理(スクリーントーン、ディザ処理などとも呼ばれる)された画像に対して拡大・縮小処理を施すと、網点パターンが拡大・縮小されてしまうので画質の劣化が生じる。そこで、拡大・縮小などの画像処理を施す前に、画像から網点パターンのもつ周期性を除去することが行われる。
【0003】
上記の除去に際して、ガウスフィルタなどの空間フィルタによって画像を平滑化処理する場合、処理対象の画像に施されている網点パターンのサイズ(網点線数)に見合ったサイズのガウスフィルタを使用しなければ、除去が不十分となる、あるいは文字などのエッジ部分の過剰な平滑化を招いてしまう。
【0004】
そこで、処理対象の画像に対して、異なるサイズのガウスフィルタで処理した複数種類の画像データを生成し、各処理後の画像データの分散値を算出し、その分散値に基づいて最適なサイズのガウスフィルタを特定する画像処理装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−295318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
網点パターンは1周期分の領域が菱形や平行四辺形となっていることが多い。このため、3画素×3画素や5画素×5画素などの通常のガウスフィルタを用いた場合、網点パターンの周期性を高精度に除去しつつ過剰な平滑化を防止するといった絶妙なフィルタ処理を行うことは難しい。
【0007】
一方、網点パターンの1周期分と同じ形状の平行四辺形の空間フィルタを施すには、畳み込み演算などに係わる処理が煩雑になり、処理速度の低下やハードウェア構成の複雑化を招いてしまう。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、過剰な平滑化を抑制しつつ画像から網点パターンの周期性を高精度に除去できると共に、ハードウェアやソフトウェアの処理負担の少ない画像処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0010】
[1]処理対象の画像を解析して、該画像に含まれる網点パターンの周期性を示す周期性情報を取得する解析部と、
前記解析部によって取得した前記周期性情報に基づいて、2個の接触した矩形領域もしくは1個の矩形領域からなる平滑化領域を決定する平滑化領域決定部と、
前記平滑化領域決定部によって決定された平滑化領域を内包可能なサイズの空間フィルタであって、前記内包した平滑化領域との重複面積に応じて各画素に対する重み係数が設定された空間フィルタを作成する空間フィルタ作成部と、
前記空間フィルタ作成部によって作成された前記空間フィルタを用いて前記処理対象の画像に対して畳み込み演算を行う平滑化演算部と、
を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【0011】
[2]処理対象の画像の画像データであって前記画像に含まれる網点パターンの周期性を示す周期性情報の付加された画像データを入力する入力部と、
前記入力部によって入力した前記画像データに付加されている前記周期性情報に基づいて、2個の接触した矩形領域もしくは1個の矩形領域からなる平滑化領域を決定する平滑化領域決定部と、
前記平滑化領域決定部によって決定された平滑化領域を内包可能なサイズの空間フィルタであって、前記内包した平滑化領域との重複面積に応じて各画素に対する重み係数が設定された空間フィルタを作成する空間フィルタ作成部と、
前記空間フィルタ作成部によって作成された前記空間フィルタを用いて前記処理対象の画像に対して畳み込み演算を行う平滑化演算部と、
を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【0012】
上記[1]、[2]の発明では、一周期分の網点パターンは、通常、平行四辺形の領域として現れるが、この平行四辺形領域の周期性・面積を維持しながら2個の接触した矩形領域もしくは1個の矩形領域からなる平滑化領域となるように平行四辺形領域を変形する。そして平滑化領域のサイズ・形状に応じた重み係数の空間フィルタを作成し、該空間フィルタで処理対象の画像を畳み込み演算する。平行四辺形領域を2個または1個の矩形領域に変形することで、畳み込み演算の処理負担が軽減される。また隣接した2個または1個の矩形領域に変形した場合でも元の平行四辺形領域が持つサイズ、周期性は維持されるので、網点パターンの周期性を高精度に除去することができ、かつ過剰な平滑化が防止される。
【0013】
[3]前記周期性情報は、1周期分の網点パターンを成す平行四辺形領域を特定する情報であり、
前記平滑化領域決定部が決定する前記平滑化領域は、前記平行四辺形領域の一部分をこれに隣接する平行四辺形領域の同一部位に置き換えて得られる形状である
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の画像処理装置。
【0014】
網点パターンの一周期分を成す平行四辺形領域は画像上では垂直方向および水平方向に繰り返し出現する。そこで、平行四辺形領域の一部分をこれに隣接する(たとえば1周期ずれた)平行四辺形領域の同一部位に置き換えることで、平行四辺形領域が、その周期性、面積(サイズ)を維持しつつ、接触した2個または1個の矩形領域から成る平滑化領域に変形される。
【0015】
[4]前記平滑化領域決定部は、指定された条件に応じて、前記2つの矩形領域の並べ方を決定する
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0016】
上記発明では、指定された条件に応じて、2個の矩形領域を水平と垂直のいずれの方向に隣接させるかが選択される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る画像処理装置によれば、過剰平滑化による画質劣化を抑制しつつ、画像から網点パターンの周期性を高精度に除去できる。また、画像から網点パターンの周期性を除去する処理を、ハードウェアやソフトウェアの処理負担を少なくして実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係る画像処理装置10の全体構成を示している。画像処理装置10は、画像読み取り部11と、データ受信部12と、画像処理部20と、画像記憶部13と、画像表示部14と、印刷部15と、データ送信部16とを備えて構成される。画像処理装置10は、たとえば、原稿のコピー機能やプリント機能、ファクシミリ機能などを備えた複合機として構成される。
【0020】
画像読み取り部11およびデータ受信部12は処理対象の画像の画像データを入力する機能を果たす。このうち画像読み取り部11は、原稿をカラー画像として読み取って対応する画像データを出力する機能を果たす。画像読み取り部11は、光源とミラーとから成る露光走査部と、原稿からの反射光を受光しその光強度に応じた電気信号を色別に出力するカラーのラインイメージセンサと、原稿からの反射光をラインイメージセンサへ導く各種のミラーや集光レンズなどを備え構成される。ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号は、たとえば、色成分毎に各画素を256階調で表したデジタルの画像データに変換されて画像読み取り部11から出力される。
【0021】
データ受信部12は、ネットワークなどの通信路を通じてパーソナルコンピュータなどの外部端末から処理対象の画像データを受信する機能を果たす。ファクシミリの通信手順で画像データを受信することも可能になっている。
【0022】
画像読み取り部11、データ受信部12の出力する画像データは画像処理部20へ入力される。なお、画像処理部20へ入力される処理対象の画像(画像データ)は、X方向(主走査方向)とこれに直交するY方向(副走査方向)とに画素が格子状に配列された、いわゆる、ドットマトリクス形式の画像である。画像読み取り部11は、X方向をラインイメージセンサで読み取る1ラインとし、ラインイメージセンサでの読み取り位置をY方向に移動させることで2次元平面の画像を読み取るようになっている。
【0023】
画像処理部20は、処理対象の画像に含まれている網点パターンの周期性を除去する処理や、画像の拡大・縮小など各種の画像処理を施す機能を果たす。画像処理部20の詳細は後述する。なお、網点処理は、面積変調により中間調を表現する手法である。
【0024】
画像記憶部13は、画像処理部20に接続されており、画像処理部20で処理する、あるいは処理した画像データを記憶する機能を果たす。画像記憶部13は、半導体メモリやハードディスク装置で構成される。
【0025】
画像表示部14は、画像処理部20から出力される画像データを表示する機能を果たす。このほか、画像表示部14は、画像処理部20で施す画像処理の種類や各種の指示、設定などユーザから各種の操作を受け付ける操作部の機能も備えている。たとえば、画像表示部14は、タッチパネルを表面に備えた液晶ディスプレイおよびその制御回路で構成される。
【0026】
印刷部15は、画像処理部20の出力する画像データを入力し、該画像データに対応する画像を用紙上に形成してプリント出力する機能を果たす。
【0027】
データ送信部16は、画像処理部20の出力する画像データをネットワークなどの通信路を通じて外部装置へ送信する機能を果たす。データ送信部16は、画像データを電子メールに添付して送信する機能やファクシミリの通信手順に従って送信する機能などを備えている。
【0028】
このほか画像処理装置10は、当該画像処理装置10の動作を統括制御する図示省略の制御部を備えている。制御部は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)を主要部とした回路で構成されている。CPUはROMに格納されているプログラムを実行することで画像処理装置10の動作を制御する。
【0029】
図2は、画像処理部20の内部構成を示している。画像処理部20は、デコード部21と、色分解部22と、周期性パターン解析部23と、平滑化領域決定部24と、重み係数割り当て部25と、平滑化演算部26と、色合成部27と、各種画像処理部28とを備えて構成される。画像処理部20は、マイクロプログラムを内蔵したシーケンサや論理回路などのハードウェア回路で構成されてもよいし、制御部のCPUが所定のプログラムを実行することでその機能が実現されてもよい。
【0030】
デコード部21は、データ受信部12から入力された画像ファイルのヘッダ部などを解析し、この画像内の網点処理された画像領域(網点画像領域)に関する情報がヘッダ部にコード化されて含まれているか否かを判断する。そして含まれている場合は、それをデコードして、網点パターンの周期性を示す周期性情報を取得し、これを周期性パターン解析部23へ出力する。また、入力された画像ファイルからヘッダ部などを除いた画像データを色分解部22へ出力する。
【0031】
色分解部22は、画像読み取り部11から入力された画像データもしくはデコード部21から入力された画像データを色分解する機能を果たす。たとえば、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロ)、K(ブラック)の色版別に網点処理されたカラー原稿が、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)を色成分とするカラー画像データとして入力された場合、R、G、Bを色成分とする画像データをC、M、Y、Kを色成分とする画像データに変換して、C、M、Y、Kの色成分別の画像データに分解する。
【0032】
たとえば、図3(a)に示すように、予めカラーチャートを読み込んで得られたデータと対応させることで色再現特性を表す変換テーブル31を作成しておき、その変換テーブルを使ってRGBの入力データよりCMYK画像を推定する。あるいは、図3(b)に示す変換式で簡易的に変換してもよい。
【0033】
図2に示す、周期性パターン解析部23、平滑化領域決定部24、重み係数割り当て部25、平滑化演算部26での処理は、網点処理された画像領域別かつ色成分別に行われる。各画像領域では色成分別に処理された画像データが色合成部27で合成されてカラー画像データに戻される。
【0034】
周期性パターン解析部23は、色分解部22から入力される画像データを解析することで、その画像データの表す画像に含まれる、網点パターンと推定される濃淡の周期性を検出する。なお、デコード部21から周期性情報が入力された場合は、それを使用する。
【0035】
周期性パターン解析部23は、網点パターンの周期性が検出された場合は、網点パターンの周期性を除去するために、その検出された周期性を示す周期性情報と処理対象の画像データとを平滑化領域決定部24へ出力する。一方、網点パターンの周期性が検出されなかった場合は、網点パターンの周期性を除去する必要がないので、その画像データを色合成部27へ出力する。
【0036】
平滑化領域決定部24は、周期性パターン解析部23から入力された周期性情報に基づいて、2個の接触した矩形領域もしくは1個の矩形領域からなる平滑化領域を決定する。
【0037】
重み係数割り当て部25は、平滑化領域決定部24によって決定された平滑化領域を内包可能なサイズの空間フィルタであって、内包した平滑化領域との重複面積に応じて各画素に対する重み係数が設定された空間フィルタを作成する空間フィルタ作成部としての機能を果たす。
【0038】
平滑化演算部26は、重み係数割り当て部25によって作成された空間フィルタを用いて処理対象の画像に対して畳み込み演算を行う。平滑化演算部26にて畳み込み演算されて空間フィルタ処理された画像データは、色合成部27へ出力されて色合成される。
【0039】
各種画像処理部28は、色合成部27から入力される画像データに対して拡大・縮小など各種の画像処理を施す機能を果たす。各種画像処理部28は画像処理部20の最終段にあり、各種画像処理部28の出力が画像処理部20の処理結果として出力される。
【0040】
図4は、平滑化演算部26の構成を示している。平滑化演算部26は、1ライン分の画像データを記憶する複数のラインバッファ41と、重み係数割り当て部25が設定した空間フィルタの各重み係数(平滑化係数)を記憶する平滑化係数保持部42と、ラインバッファ41から読み出される各画素に対して平滑化係数保持部42に記憶されている重み係数(平滑化係数)を使用して畳み込み演算を行う積和演算部43とを備えている。
【0041】
積和演算部43は、複数の加算器44と、各加算器44の加算結果に平滑化係数を乗じた後にその乗算結果を合計する積和演算器45とから構成される。積和演算部43の加算器44は、値が同一の平滑化係数が空間フィルタ内に複数存在する場合は、同一値の平滑化係数が乗算される画素の濃度値を乗算の前に加算する機能を果たす。積和演算器45は、各加算器44の加算結果に該当の平滑化係数を乗じた後、それらの乗算結果の合計を取ることで畳み込み演算を行うようになっている。
【0042】
たとえば、空間フィルタを構成している平滑化係数がk1、k2、k3の3種類であった場合、加算器44Aは平滑化係数k1が乗じられる位置にある画素の濃度値を合計し、加算器44Bは平滑化係数k2が乗じられる位置の画素の濃度値を合計し、加算器44Cは平滑化係数k3が乗じられる位置の画素の濃度値を合計する。積和演算器45は、加算器44Aの出力値に平滑化係数k1を乗じ、加算器44Bの出力値に平滑化係数k2を乗じ、加算器44Cの出力値に平滑化係数k3を乗じ、これら3つの乗算結果を合計する。このように結合法則を利用して畳み込み演算を簡単化してある。
【0043】
図5は、上記構成の画像処理装置10が行う処理全体の流れを示している。まず、処理対象の画像データを画像読み取り部11またはデータ受信部12で取得し入力する(ステップS101)。この画像データが画像ファイルであってそのヘッダ部などに各種情報をコード化して含むコード化データでない場合は(ステップS102;No)ステップS104へ移行する。コード化データであれば(ステップS102;Yes)、デコード部21でそのヘッダ部などをデコードし、周期性情報があれば抽出し、これを周期性パターン解析部23へ出力して(ステップS103)、ステップS104へ移行する。
【0044】
ステップS104では、色分解部22により色分解処理が行われる。続いて周期性パターン解析部23により周期性パターンの解析が行われる(ステップS105)。周期性パターンが検出された場合は(ステップS106;Yes)、平滑化領域決定部24での平滑化領域決定処理(ステップS107)、重み係数割り当て部25での重み係数割り当て(空間フィルタ作成)処理(ステップS108)、平滑化演算部26での平滑化演算処理(ステップS109)を行うことで処理対象の画像から網点パターンの周期性を除去した後、ステップS110へ移行する。
【0045】
周期性パターンが検出されない場合は(ステップS106;No)、ステップS107〜S109の処理はスキップされてステップS110へ移行する。
【0046】
なお、ステップS103の処理で周期性情報が抽出された場合はステップS106で周期性パターンありと判断する。またステップS105〜S109の処理(図中破線で囲った部分)は網点画像領域毎、色成分毎に実施される。すなわち、1枚の処理対象画像内に複数の網点処理された画像領域(網点画像領域)が存在する場合は、網点画像領域毎かつ色成分毎にステップS105〜S109の処理が実施される。たとえば、処理画像の右上部分に写真aの網点画像領域1があり、左下部分に写真bの網点画像領域2が存在する場合、網点画像領域1に対して色成分毎にステップS105〜S109の処理が実行され、さらに網点画像領域2に対して色成分毎にステップS105〜S109の処理が実行される。
【0047】
ステップS110では、色合成部27による色合成が行われる。その後、各種画像処理部28により拡大・縮小などの画像処理をユーザ設定あるいは出力側の画像サイズに合わせるなどの必要に応じて実行する(ステップS111)。さらに、必要に応じて網点処理(スクリーントーン処理やディザ処理など)を施して(ステップS112)、印刷部15またはデータ送信部16へ出力して(ステップS113)処理を終了する。
【0048】
次に、周期性パターン解析部23、平滑化領域決定部24、重み係数割り当て部25、平滑化演算部26で行われる処理についてさらに詳しく説明する。
【0049】
図6は、処理対象の画像が有する網点パターンの一例を示している。ここでは2つの異なる方向の濃淡周期が交差している網点パターンを想定する。第1方向の実線51および第2方向の実線52はそれぞれ、周期パターン高濃度(または低濃度)部同士を結んだ線分であり、第1方向の実線51と第2方向の実線52との交点が濃度極大点(または極小点)である。第1方向の実線51の間隔(周期)および第2方向の実線52の間隔(周期)はそれぞれ一定の間隔(周期)を有するものとする。なお、第1方向の実線51の間隔(周期)と第2方向の実線52の間隔(周期)とは等しくてもよいし、異なってもよい。図中斜線で塗り潰した平行四辺形領域53は1周期分の網点パターンとなる。
【0050】
ここで、第1方向の実線51とX方向(図中の水平方向で画像の主走査方向)のなす角をα、第2方向の実線52とX方向のなす角をβとし(0°≦α≦90°、−α≦β≦90°)、平行四辺形領域53のX方向の長さ(網点パターンのX方向の周期)をXT、平行四辺形領域53のY方向の長さ(網点パターンのY方向の周期)をYTとして以後の説明を行う。
【0051】
図7は、周期性パターン解析部23が網点パターンの周期性(XT、YT、α、β)を解析する際の解析方法の一例を説明する図である。この図は、処理対象の画像に対して二次元離散フーリエ変換(DFT…discrete Fourier transform)を行い、その結果のスペクトル(周波数成分)が極端に強い(もしくは弱い)ところを黒丸で示したものである。横軸はX方向(水平方向)の周波数、縦軸はY方向(垂直方向)の周波数である。この図より周期XT、YTの逆数および角度α、βを解析することができ、網点パターンの周期性情報としてXT、YT、α、βを求めることができる。求めた周期性情報(XT、YT、α、β)から平行四辺形領域53の形状を特定することができる。
【0052】
網点パターンの周期性の解析は上記の方法に限定されるものではなく、波形パターンマッチングや直交変換などを使用してもよい。また、前述したように、網点パターンの周期性解析は、解析対象の網点画像領域毎、色成分毎に行われる。
【0053】
図8は、周期性情報をコード化データとし含む画像ファイル90のデータ構造の一例を示している。画像ファイル90は、当該画像ファイル90に関する各種情報が格納されたヘッダ部91と画像データが格納された画像データ部92とを備える。ヘッダ部91は、網点処理された画像領域(網点画像領域)に関する情報(タグ情報93)を含んでいる。
【0054】
網点に関するタグ情報93は、当該画像ファイルの画像に含まれている網点画像領域の個数を示す領域数nと、各網点画像領域1〜n(領域1〜n)についてそれぞれ、その位置情報94と、当該網点画像領域のC色成分画像に関する周期性情報(周期情報(XT、YT)とパターン方向情報(α、β))95Cと、当該網点画像領域のM色成分画像に関する周期性情報95Mと、当該網点画像領域のY色成分画像に関する周期性情報95Yと、当該網点画像領域のK色成分画像に関する周期性情報95Kとを含んでいる。
【0055】
このような画像ファイルを処理する場合、デコード部21は網点画像領域に関するタグ情報93をデコードして解析し、網点画像領域が含まれているか否かを判断し、含まれている場合は該タグ情報93から画像内における各網点画像領域の位置情報94、色成分毎の周期性情報95C、95M、95Y、95Kを取得して周期性パターン解析部23に引き渡す。以後、この位置情報、周期性情報を使用して網点画像領域毎、色成分毎に、平滑化領域決定部24、重み係数割り当て部25、平滑化演算部26による処理が行われる。
【0056】
図9は、平滑化領域決定部24が2個の接触した矩形領域もしくは1個の矩形領域からなる平滑化領域を決定する処理の流れを示している。周期性パターン解析部23から周期性情報(XT、YT、α、β)を取得し(ステップS201)、この周期性情報(XT、YT、α、β)に基づいて網点パターンの1周期に対応する平行四辺形領域53を特定し、パラメータt1、t2、α、βを算出する(ステップS202)。t1、t2は、
t1・cosα+t2・cosβ=XT、
t1・sinα+t2・sinβ=YT
の関係から算出する。
【0057】
次に、平滑化領域を構成する2つの矩形領域の各辺の長さを算出する(ステップS203)。すなわち、矩形領域AのX方向(水平方向)の辺の長さはt1・cosα、Y方向(垂直方向)の辺の長さはt2・sinβ、矩形領域BのX方向の辺の長さはt2・cosβ、Y方向の辺の長さはt1・sinα、として求める。
【0058】
図11(a)は、平行四辺形領域53とこれに対応して決定された矩形領域A、Bの一例を示しており、図10は、図11(a)に示す平行四辺形領域53と矩形領域A、Bとのサイズおよび位置の対応関係を説明する図である。
【0059】
平滑化領域決定部24が決定する2つの矩形領域A、Bからなる平滑化領域61は、平行四辺形領域53の一部分をこれに隣接する平行四辺形領域53の同一部位に置き換えて得られる形状となっている。図10の例では、平行四辺形領域53aの右下部の直角三角形部分である部位62を平行四辺形領域53aの左上に隣接する平行四辺形領域53bの同一部位(三角形abc)で置き換え、平行四辺形領域53aの右上部の直角三角形部分である部位63を平行四辺形領域53aの左下に隣接する平行四辺形領域53cの同一部位(三角形cde)で置き換えることにより、矩形領域A、Bから構成される平滑化領域61が形成される。
【0060】
平滑化領域61は、元の平行四辺形領域53と同一面積になっている。また平行四辺形領域53は網点パターンとして周期的に繰り返すので、隣接する平行四辺形領域の同一部位に置き換えた部分は1周期ずれた同一部位であり、網点パターンの周期性は維持される。すなわち、網点パターン(平行四辺形領域53)は画像に対して水平方向にXT、垂直方向にYTの周期で繰り返されるので、平行四辺形領域の一部分をこれに隣接する平行四辺形領域の同一部位に置き換えても、空間フィルタ処理を施した場合には、元の平行四辺形領域を平滑化領域に設定した場合と同じ処理結果を得ることができる。
【0061】
なお、矩形領域A、Bについてはそのサイズと相互の位置関係が規定されればよく、平行四辺形領域53との位置関係は規定されない。矩形領域A、Bから構成される平滑化領域61の位置が変化しても、出力画像の位置がシフトするだけで画質に影響しない。図10では、平行四辺形領域53と矩形領域A,Bとのサイズの対応関係を説明する便宜上、平行四辺形領域53と矩形領域A、Bとを重ねているに過ぎない。図11、図12においても同様である。
【0062】
上記のようにして周期性情報(XT、YT、α、β)に基づいて矩形領域A、Bを決定した後、平滑化領域決定部24はこれら矩形領域A、Bの並べ方を選択する。図9に示す処理では、2つの矩形領域A、Bを並べた形状がなるべく正方形に近い形になるように配置している。すなわち、矩形領域A、Bの水平方向の辺の長さを加算した値(t1・cosα+t2・cosβ)と、矩形領域A、Bの垂直方向の辺の長さを加算した値(t2・sinβ+t1・sinα)の大小を比較し(ステップS204)、小さい方を選択する(ステップS205またはS206)。
【0063】
正方形に近くなるように2つの矩形領域A、Bの並べ方を選択することで、この平滑化領域61を使用して平滑化処理を行った場合に、注目画素に対して全方向に均質な平滑化を行うことができる。なお、矩形領域A、Bを垂直方向に並べる場合に矩形領域A、Bの水平方向の辺の長さが等しい場合、あるいは矩形領域A、Bを水平方向に並べる場合に矩形領域A、Bの垂直方向の辺の長さが等しい場合は、矩形領域AとBとを合わせて1個の矩形にすることができる。
【0064】
矩形領域A、Bの並べ方は、図11、図12に示すように各種ある。図11(a)は図10と同じ配置であり、矩形領域A、Bを垂直方向に配置した「例1」である。図11(b)は垂直方向に並べる場合の他の配置である「例2」を示している。図12(a)、(b)はそれぞれ矩形領域A、Bを水平方向に配置した「例3」、「例4」を示している。
【0065】
矩形領域A、Bの並べ方を選択する際のそのほかの条件としては図13に示すものがある。制約事項1は、ハードウェア(メモリ)資源の節約からラインバッファ数を抑制する場合に使用される条件で、矩形領域AとBとを垂直方向に並べた場合の長さ(矩形領域A、Bの垂直方向の辺の長さの合計)がラインバッファの最大値(ラインバッファのライン数で記憶可能な画像範囲の垂直方向の最大長:Nmax)より小さい場合(判定Yesの場合)は、垂直方向に並べても水平方向に並べてもよいので、並べ方は他の制約事項に依存する。判定Noの場合は、矩形領域A、Bを垂直方向に並べると平滑化領域の垂直方向の長さがNmaxを超えるので、矩形領域AとBとを水平方向に並べるように決定する。
【0066】
制約事項2は、ハードウェア(メモリ)資源の節約からラインバッファ長を抑制する場合に使用される条件で、矩形領域AとBとを水平方向に並べた場合の長さ(矩形領域A、Bの水平方向の辺の長さの合計)がラインバッファの最大長(1ラインの長さ:Mmax)より小さい場合(判定Yesの場合)は、水平方向に並べても垂直方向に並べてもよいので、並べ方は他の制約事項に依存する。判定Noの場合は、矩形領域A、Bを水平方向に並べると平滑化領域の水平方向の長さがMmaxを超えるので、矩形領域AとBとを垂直方向に並べるように決定する。
【0067】
制約事項3は、文字などで特定の方向に細線がある場合、たとえば、明朝体では文字の横向きの線が細いので、この細線の鮮鋭性を平滑化処理で失わないようにする際に使用する条件である。すなわち、文字の細線の方向が水平方向か否かを判断し、水平方向の場合(判定Yesの場合)は、矩形領域AとBとを水平方向に隣接配置する。これにより、垂直方向への平滑化効果が少なくなり、水平方向の細線の鮮鋭性が失われ難くなる。一方、判定Noの場合は、矩形領域AとBとを垂直方向に隣接配置する。これにより、水平方向への平滑化効果が少なくなり、垂直方向の細線の鮮鋭性が失われ難くなる。
【0068】
複数の制約事項を組み合わせてもよい。たとえば、各制約事項に対して優先順位を割り付けておき、優先順位の高い制約事項から順に判定し、最初に判定結果が「任意」でなくなった制約事項による並べ方を採用するように構成されてもよい。
【0069】
重み係数割り当て部25は、平滑化領域決定部24により決定された平滑化領域61に対応する空間フィルタを作成してその重み係数を決定する。ここでは、平滑化領域決定部24の決定した平滑化領域を内包可能な最小サイズ(N×M画素、N、Mは3以上の奇数の正整数が好ましい)を空間フィルタのサイズ(形状)に設定し、このM画素×N画素の空間フィルタ71に平滑化領域61を重ね合わせ、空間フィルタ71内の各画素位置に対してその画素と平滑化領域との重複面積に応じた重み係数を設定する。
【0070】
図14(a)は、5画素×5画素の空間フィルタ71の領域に平滑化領域61を重ね合わせた状態の一例を示し、同図(b)は各画素と平滑化領域61との重複面積(全部重複を1とする)を数値で示し、同図(c)は重複面積の合計が「1」となるように正規化した場合の各重み係数を示している。正規化後値がこの空間フィルタの重み係数に決定される。ここでは、任意のサイズを取り得る平滑化領域の大きさ・形状を、離散的な画素の集合で表現するために、重複面積に応じた重み付けを行って重み係数を決定している。
【0071】
重み係数割り当て部25によって作成された空間フィルタ(各重み付け係数)により平滑化演算部26は処理対象の画像の各画素を注目画素として畳み込み演算を行う。より詳細には、空間フィルタ71の各重み係数(平滑化係数)が図4の平滑化係数保持部42に保持されて畳み込み演算が行われる。
【0072】
図15は、網点パターンの周期性を有する画像を、空間フィルタ71で平滑化処理した場合の処理結果例を示している。図15(a)は、所定の均一な中間濃度の領域を網点パターンで表した画像Gの濃度分布を示しており、図15(b)は図15(a)の画像Gに対して図14(c)の空間フィルタ71を使用して畳み込み演算を施して平滑化した後の画像G´の濃度分布を示している。
【0073】
平滑化前の画像Gは、周期的な濃淡が大きく現れており、濃淡範囲はほぼ−0.9〜+0.9になっている。この画像Gを周期性パターン解析部23で解析すると、周期性を示す第1方向の実線51aと第2方向の実線52aが抽出され、1周期分の網点パターンである平行四辺形領域53dが得られる。この平行四辺形領域53dから平滑化領域が決定されて空間フィルタ71が作成される。空間フィルタ71で平滑化処理した後の画像G´(図15(b))では周期的な濃淡変化の大きさは、−0.01〜+0.01の範囲に収まっており、網点パターンの周期性がほぼ除去されている。また、網点パターン(周期パターン)以外の画像成分は、ほぼ網点パターン(周期パターン)の解像度で残すことができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0075】
たとえば、実施例ではカラー画像を対象としたが、処理対象の画像はモノクロ画像でもよい。この場合、色分解、色合成は不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像処理装置が有する画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】色分解する際の変換テーブルおよび変換式の一例を示す説明図である。
【図4】平滑化演算部の構成を示すブロック図である。
【図5】画像処理装置が行う処理全体の流れを示す流れ図である。
【図6】処理対象の画像が有する網点パターンの一例を示す説明図である。
【図7】周期性パターン解析部が網点パターンの周期性(XT、YT、α、β)を解析する際の解析方法の一例を示す説明図である。
【図8】コード化データとして周期性情報を含む画像ファイルのデータ構造の一例を示す説明図である。
【図9】平滑化領域決定部が2個の接触した矩形領域もしくは1個の矩形領域からなる平滑化領域を決定する処理の流れを示す流れ図である。
【図10】周期性情報(XT、YT、α、β)で特定される平行四辺形領域と2つの矩形領域との関係を示す説明図である。
【図11】矩形領域A、Bを垂直方向に並べた例を示す説明図である。
【図12】矩形領域A、Bを水平方向に並べた例を示す説明図である。
【図13】矩形領域A、Bの並べ方を選択する際の条件例を示す説明図である。
【図14】5画素×5画素の空間フィルタについて、平滑化領域とを重ね合わせた状態、重複面積に応じた重み係数、正規化後の重み係数の各一例を示す説明図である。
【図15】網点パターンの周期性を有する画像の、画像処理部での処理前と処理後を示す説明図である。
【符号の説明】
【0077】
10…画像処理装置
11…画像読み取り部
12…データ受信部
13…画像記憶部
14…画像表示部
15…印刷部
16…データ送信部
20…画像処理部
21…デコード部
22…色分解部
23…周期性パターン解析部
24…平滑化領域決定部
25…重み係数割り当て部
26…平滑化演算部
27…色合成部
28…各種画像処理部
31…変換テーブル
41…ラインバッファ
42…平滑化係数保持部
43…積和演算部
44…加算器
45…積和演算器
51…第1方向の実線
52…第2方向の実線
53、53a〜53d…平行四辺形領域
61…平滑化領域
71…空間フィルタ
90…画像ファイル
91…ヘッダ部
92…画像データ部
93…タグ情報
94…位置情報
95C、95M、95Y、95K…周期性情報
G…処理前画像
G´…処理後画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の画像を解析して、該画像に含まれる網点パターンの周期性を示す周期性情報を取得する解析部と、
前記解析部によって取得した前記周期性情報に基づいて、2個の接触した矩形領域もしくは1個の矩形領域からなる平滑化領域を決定する平滑化領域決定部と、
前記平滑化領域決定部によって決定された平滑化領域を内包可能なサイズの空間フィルタであって、前記内包した平滑化領域との重複面積に応じて各画素に対する重み係数が設定された空間フィルタを作成する空間フィルタ作成部と、
前記空間フィルタ作成部によって作成された前記空間フィルタを用いて前記処理対象の画像に対して畳み込み演算を行う平滑化演算部と、
を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
処理対象の画像の画像データであって前記画像に含まれる網点パターンの周期性を示す周期性情報の付加された画像データを入力する入力部と、
前記入力部によって入力した前記画像データに付加されている前記周期性情報に基づいて、2個の接触した矩形領域もしくは1個の矩形領域からなる平滑化領域を決定する平滑化領域決定部と、
前記平滑化領域決定部によって決定された平滑化領域を内包可能なサイズの空間フィルタであって、前記内包した平滑化領域との重複面積に応じて各画素に対する重み係数が設定された空間フィルタを作成する空間フィルタ作成部と、
前記空間フィルタ作成部によって作成された前記空間フィルタを用いて前記処理対象の画像に対して畳み込み演算を行う平滑化演算部と、
を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記周期性情報は、1周期分の網点パターンを成す平行四辺形領域を特定する情報であり、
前記平滑化領域決定部が決定する前記平滑化領域は、前記平行四辺形領域の一部分をこれに隣接する平行四辺形領域の同一部位に置き換えて得られる形状である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記平滑化領域決定部は、指定された条件に応じて、前記2つの矩形領域の並べ方を決定する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−253805(P2009−253805A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101362(P2008−101362)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】