説明

画像形成装置、ジョブ管理装置及びジョブ管理方法

【課題】生産性の低下を抑制しつつ、異常が発生したCPUコアの復帰を図ることが可能なジョブ管理装置、画像形成装置、及びジョブ管理方法を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、複数のCPUコア11のいずれかに処理能力を低下させる異常が発生したかを判断する異常検知部12と、複数のジョブについて実行順を決定すると共に、異常検知部12により複数のCPUコア11のいずれかに異常が発生したと判断された場合、異常が発生していないCPUコア11によるCPU処理能力を判断するジョブ管理部13とを備えている。さらに、ジョブ管理部13は、異常検知部12により複数のCPUコア11のいずれかに異常が発生したと判断された場合、複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力が、CPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、ジョブ管理装置及びジョブ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のCPU(Central Processing Unit)コアを有するマルチコアCPUの制御装置であって、一部のCPUコアに温度上昇等の異常が発生した場合に、優先度が最も高い処理が割り当てられたCPUコア以外のCPUコアについてクロック周波数を低下させて処理能力を低下させるものが提案されている。この制御装置によれば、一部のCPUコアに異常が発生しても、処理能力を低下させることにより、マルチコアCPUの温度を低下させて異常からの復帰を図ることができると共に、優先度が高い安全性能に関する処理などについては処理能力を低下させることなく実行させることができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−97280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来装置では、優先度が最も高い処理が割り当てられたCPUコア以外のCPUコアについてクロック周波数を低下させているため、画像形成装置においては最適な制御方法とはいえない。すなわち、画像形成装置では、印刷等の画像形成速度をなるべく落とさず生産性を低下させないことが肝要となるが、処理能力を低下させると、生産性が落ちてしまい、画像形成装置においては最適な制御方法とはいえない。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、生産性の低下を抑制しつつ、異常が発生したCPUコアの復帰を図ることが可能なジョブ管理装置、画像形成装置、及びジョブ管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、複数のCPUコアを有するマルチコアCPUにより、画像形成処理を含む複数のジョブを順次実行する画像形成装置であって、前記複数のジョブについて実行順を決定する実行順決定手段と、前記複数のCPUコアのいずれかに処理能力を低下させる異常が発生したかを判断する異常判断手段と、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、異常が発生していないCPUコアによるCPU処理能力を判断する処理能力判断手段と、を備え、前記実行順決定手段は、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、前記複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力が、前記処理能力判断手段により判断されたCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定することを特徴とする。
【0007】
この画像形成装置によれば、複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力がCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定するため、CPU処理能力以下となるジョブから実行されることとなり、CPUコアに異常が発生していたとしても、異常が発生したCPUコアに頼ることなくジョブを実行でき、生産性の低下を抑制することができる。また、異常が発生したCPUコアに頼ることなくジョブを実行できることから、異常が発生したCPUコアについては温度低下やリセットによる再起動等の時間的余裕が与えられ、復帰の機会が与えられることとなる。従って、生産性の低下を抑制しつつ、異常が発生したCPUコアの復帰を図ることができる。
【0008】
また、画像形成装置において、前記実行順決定手段は、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、前記要求処理能力が前記処理能力判断手段により判断されたCPU処理能力以下となるジョブであって優先度が高いものから順に実行されるように実行順を決定することが好ましい。
【0009】
この画像形成装置によれば、複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、要求処理能力がCPU処理能力以下となるジョブであって優先度が高いものから順に実行されるように実行順を決定する。このため、CPUコアに異常が発生していないときには優先度に基づいて実行順が決定され、CPUコアに異常が発生すると、優先度による実行順を保持しつつも要求処理能力が高いジョブを後回しとするように実行順が決定されることとなる。これにより、CPUコア正常時における本来の順番を大きく変更することなく、生産性の低下を抑制することができる。
【0010】
また、画像形成装置において、前記実行順決定手段は、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、前記要求処理能力が前記処理能力判断手段により判断されたCPU処理能力以下となるジョブであって画像形成回数が多いものから順に実行されるように実行順を決定することが好ましい。
【0011】
この画像形成装置によれば、複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、要求処理能力がCPU処理能力以下となるジョブであって画像形成回数が多いものから順に実行されるように実行順を決定する。このため、CPUコアに異常が発生すると、例えば複写機やプリンタ等では印刷枚数が多いものから順に実行されることとなる。ここで、印刷枚数などの画像形成回数が多くなると、そのジョブの終了までの時間が長くなり、異常が発生したCPUコアの復帰までの時間を長くできる。すなわち、温度上昇による異常の場合には温度低下までの時間を確保し易く、リセット信号により異常が発生したCPUコアの再起動を図る場合には、再起動までの時間が確保し易くすることができる。これにより、異常が発生したCPUコアをより復帰させやすくすることができる。
【0012】
また、画像形成装置において、前記実行順決定手段は、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断されて、前記要求処理能力が前記CPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定した後に、異常が発生したCPUコアの異常が解消された場合、決定した実行順を優先度に基づく実行順に変更することが好ましい。
【0013】
この画像形成装置によれば、異常が発生したCPUコアの異常が解消された場合、決定した実行順を優先度に基づく実行順に変更するため、CPUコアの復帰時にはCPUコア異常時における実行順で固定されることなく、優先度に基づく実行順に戻ることとなり、利便性を向上させることができる。
【0014】
また、画像形成装置において、前記実行順決定手段は、前記処理能力判断手段により判断されたCPU処理能力を超える前記要求処理能力を必要するジョブが2以上ある場合、2以上のジョブのうち、CPU処理能力を超える超え幅が小さいジョブから実行されるように実行順を決定することが好ましい。
【0015】
この画像形成装置によれば、CPU処理能力を超える要求処理能力を必要するジョブが2以上ある場合、2以上のジョブのうち、CPU処理能力を超える超え幅が小さいジョブから実行されるように実行順を決定する。このため、CPUコアに異常が発生し、そのCPUコアが復帰することなく、CPU処理能力を超える要求処理能力を必要するジョブが実行される場合であっても、より要求処理能力が低いものから順に実行されることとなる。これにより、CPU処理能力を超えるジョブであってもより要求処理能力が低いジョブの実行中にCPUコアの復帰を図ることができ、さらに要求処理能力が高いジョブの実行時においてCPUコアを復帰させるなどでき、一層生産性の低下を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係るジョブ管理装置は、複数のCPUコアを有するマルチコアCPUに、画像形成処理を含む複数のジョブを順次実行させるジョブ管理装置であって、前記複数のジョブについて実行順を決定する実行順決定手段と、前記複数のCPUコアのいずれかに処理能力を低下させる異常が発生したかを判断する異常判断手段と、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、異常が発生していないCPUコアによるCPU処理能力を判断する処理能力判断手段と、を備え、前記実行順決定手段は、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、前記複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力が、前記処理能力判断手段により判断されたCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定することを特徴とする。
【0017】
このジョブ管理装置によれば、複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力がCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定するため、CPU処理能力以下となるジョブから実行されることとなり、CPUコアに異常が発生していたとしても、異常が発生したCPUコアに頼ることなくジョブを実行でき、生産性の低下を抑制することができる。また、異常が発生したCPUコアに頼ることなくジョブを実行できることから、異常が発生したCPUコアについては温度低下やリセットによる再起動等の時間的余裕が与えられ、復帰の機会が与えられることとなる。従って、生産性の低下を抑制しつつ、異常が発生したCPUコアの復帰を図ることができる。
【0018】
また、本発明に係るジョブ管理方法は、複数のCPUコアを有するマルチコアCPUに、画像形成処理を含む複数のジョブを順次実行させるジョブ管理方法であって、前記複数のジョブについて実行順を決定する実行順決定工程と、前記複数のCPUコアのいずれかに処理能力を低下させる異常が発生したかを判断する異常判断工程と、前記異常判断工程において前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、異常が発生していないCPUコアによるCPU処理能力を判断する処理能力判断工程と、を有し、前記異常判断工程では、前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、前記複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力が、前記処理能力判断工程において判断されたCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定することを特徴とする。
【0019】
このジョブ管理方法によれば、複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力がCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定するため、CPU処理能力以下となるジョブから実行されることとなり、CPUコアに異常が発生していたとしても、異常が発生したCPUコアに頼ることなくジョブを実行でき、生産性の低下を抑制することができる。また、異常が発生したCPUコアに頼ることなくジョブを実行できることから、異常が発生したCPUコアについては温度低下やリセットによる再起動等の時間的余裕が与えられ、復帰の機会が与えられることとなる。従って、生産性の低下を抑制しつつ、異常が発生したCPUコアの復帰を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、生産性の低下を抑制しつつ、異常が発生したCPUコアの復帰を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】要求処理能力とCPU処理能力との比較を示す図である。
【図3】本実施形態に係る画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態に基づいて、本発明を説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。本実施形態に係る画像形成装置1は、例えばデジタルカラー複写機などのように画像形成処理を含む複数のジョブを順次実行可能なものであって、概略的にマルチコアCPU10と、ROM(Read Only Memory)20と、RAM(Random Access Memory)30と、メカコン制御基板40とを備えている。
【0023】
マルチコアCPU10は、複数のCPUコア11を有し、画像形成処理を行う際に各CPUコア11に処理を割り当てて実行するものである。ROM20は、マルチコアCPU10が実行するプログラムや各種固定データを記憶している。RAM30は、プログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するものである。メカニカルコントローラ制御基板40は、マルチコアCPU10からの指令を受けて、各種ローラ等のメカニカルな部品の制御を行うものである。なお、以下の説明においては、メカニカルコントローラ制御基板40を、メカコン制御基板40と称する。
【0024】
次に、上記の各構成について詳細に説明する。マルチコアCPU10は、複数のCPUコア11に加えて、異常検知部12と、ジョブ管理部13と、コア制御部14と、I/O(Input/Output)ポート15と、メモリ制御部16と、キャッシュメモリ17とを備えている。なお、以下の説明においてはI/Oポート15をI/O15と称する。
【0025】
複数のCPUコア11は、画像形成処理を含むジョブを実行する中核部分である。本実施形態においてCPUコア11は3つからなり、各CPUコア11a〜11cに各処理を割り当ててジョブを実行するようになっている。異常検知部12は、第1〜第3CPUコア11a〜11cのいずれかに処理能力を低下させる異常が発生したかを判断する異常判断手段として機能するものである。この異常検知部12は、例えば第1〜第3CPUコア11から異常を示す異常信号を入力した場合に、そのCPUコア11a〜11cについて異常が発生したと判断する。なお、異常検知部12は、異常信号により異常を判断する場合に限らず、例えば温度などの他の方法によって異常を判断してもよい。温度によって判断する場合、異常検知部12は、各CPUコア11の近傍に設けられた温度センサからの温度信号に基づいて、CPUコア11a〜11cが異常温度に達していると判断できる場合に、そのCPUコア11a〜11cについて異常が発生したと判断することとなる。
【0026】
ジョブ管理部13は、実行順決定手段として機能する実行順決定機能と、処理能力判断手段として機能する処理能力判断機能とを有している。ジョブ管理部13は、実行順判断機能により複数のジョブについて実行順を決定する。具体的にジョブ管理部13は、画像形成指示があった順番に優先度を高く設定し、優先度の高いものから順にジョブを実行するように実行順を決定する。すなわち、ジョブ管理部13は、画像形成指示があった順番にジョブを実行するように実行順を決定する。
【0027】
また、ジョブ管理部13の処理能力判断機能は、異常検知部12により複数のCPUコア11のいずれかに異常が発生したと判断された場合、異常が発生していないCPUコア11によるCPU処理能力を判断する機能である。例えば、全体の処理能力を100%とし、第1CPUコア11a及び第3CPUコア11cの処理能力が30%であり、第2CPUコア11bの処理能力が40%であるとする。この場合、ジョブ管理部13は、異常検知部12により第1CPUコア11aについて異常が発生したと判断された場合、CPU処理能力を70%と判断する。また、ジョブ管理部13は、第1CPUコア11a及び第2CPUコア11bについて異常が発生した場合、CPU処理能力を30%と判断する。
【0028】
コア制御部14は、ジョブの実行時に、各CPUコア11に処理を割り振るものである。例えば、画像形成装置1がカラー複写機であり、フルカラーによる片面印刷が指示されたとする。この場合、コア制御部14は、第1及び第2CPUコア11a,11bに対してフルカラー印刷の処理を実行させると共に、第3CPUコア11cに対して片面印刷の処理を実行させる。同様に、フルカラーによる両面印刷であって、複数枚の画像を1枚に集約するページ集約について指示されたとする。この場合、コア制御部14は、第1及び第2CPUコア11a,11bに対してフルカラー印刷の処理を実行させると共に、第2CPUコア11bに対して両面印刷の処理を実行させ、且つ、第3CPUコア11cに対してページ集約の処理を実行させる。なお、処理の割り振りについては上記に限らず、他の割り振り方であってもよい。
【0029】
さらに、コア制御部14は、異常が発生したCPUコア11が存在する場合、リセット信号をそのCPUコア11に送信し、CPUコア11を再起動させることでCPUコア11の復帰を図る機能についても有している。また、コア制御部14は、リセット信号に限らず、他の方法でCPUコア11の復帰を行ってもよい。例えば、CPUコア11が温度上昇により異常となった場合、温度を低下させるためにCPUコア11を停止させたりクロック周波数を低下させたりしてもよい。
【0030】
I/O15は、メカコン制御基板40とシリアル通信するための入出力部である。また、I/O15は、画像形成処理を含むジョブの情報について入力する入力部としても機能する。メモリ制御部16は、I/O15より入力したジョブの情報に基づいて画像処理方法を決定するものである。キャッシュメモリ17は、メモリ制御部16によって決定された画像処理方法等を一時的に記憶するものである。
【0031】
また、本実施形態においてROM20は、ジョブの実行にあたり必要とする要求処理能力を算出するためのデータを記憶している。例えば、カラー複写機において両面印刷を行う場合、両面分の画像形成処理を実行すると共に、I/O15からメカニカルコントローラCPU41に対して信号を送信し、負荷制御回路42によりローラ等の負荷を制御する必要がある。このため、片面印刷と両面印刷とでは要求されるCPUコア11の処理能力が異なってくる。ROM20は、このように異なってくる要求処理能力を記憶している。具体的にROM20は、画像回転についてX1%、左パンチ及び右パンチについてX2%、スクリーン処理についてX3%、両面印刷についてX4%、片面印刷についてX5%、フルカラー印刷についてX6%、モノクロ印刷についてX7%、及び、ページ集約についてX8%などのデータを記憶している。なお、図1においてメカニカルコントローラCPU41はメカコンCPU41と標記するものとする。
【0032】
さらに、本実施形態に係るジョブ管理部13は、異常検知部12により複数のCPUコア11のいずれかに異常が発生したと判断された場合、実行順決定機能により、複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力を算出する。例えば、ジョブ管理部13は、ジョブ1がフルカラー両面印刷であってページ集約が指定されている場合、要求処理能力を(X4+X6+X8)%と算出する。また、ジョブ2がフルカラー片面印刷である場合、要求処理能力を(X5+X6)%と算出する。
【0033】
加えて、ジョブ管理部13は、異常検知部12により複数のCPUコア11のいずれかに異常が発生したと判断された場合、実行順決定機能により、要求処理能力がCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定する。図2は、要求処理能力とCPU処理能力との比較を示す図である。なお、図2の説明においては、マルチコアCPU10に対してジョブ1、ジョブ2及びジョブ3の順で画像形成指示があったとする。また、ジョブ1の要求処理能力は約90%であり、ジョブ2の要求処理能力は約55%であり、ジョブ3の要求処理能力は約25%であるとする。
【0034】
状態1に示すように各CPUコア11に異常が発生していない場合、ジョブ管理部13は、優先度に基づいて、実行順決定機能により、ジョブ1、ジョブ2及びジョブ3の順にジョブが実行されるように実行順を決定する。ここでの優先度とは、上記したように画像形成指示があった順であり、ジョブ1、ジョブ2及びジョブ3の順で画像形成指示があったため、実行順は、ジョブ1、ジョブ2及びジョブ3の順となる。
【0035】
また、状態2に示すように第3CPUコア11cに異常が発生したとする。この際、ジョブ管理部13は、処理能力判断機能により、CPU処理能力を判断する。そして、ジョブ管理部13は、図2からも明らかなように、CPU処理能力を70%と判断する。また、ジョブ管理部13は、実行順決定機能によりジョブの実行順を決定する。この場合、ジョブ1についてはCPU処理能力の70%を超えている。よって、ジョブ管理部13は、ジョブ2及びジョブ3から先に実行されるように実行順を決定する。
【0036】
ここで、ジョブ管理部13は、ジョブ2とジョブ3とのうち、どちらを先に実行させるかについても判断する。具体的にジョブ管理部13は、要求処理能力がCPU処理能力以下であるジョブのうち、優先度が高いものから順に実行されるように実行順を決定する。すなわち、図2に示す状態2の例の場合、ジョブ管理部13は、ジョブ2とジョブ3とのうち、ジョブ2が先に実行されるように実行順を決定する。この結果、状態2においてジョブ管理部13は、ジョブ2、ジョブ3、及びジョブ1の順に実行されるように実行順を決定する。
【0037】
そして、マルチコアCPU10は、ジョブ管理部13により決定された順にジョブを実行する。すなわち、マルチコアCPU10は、まずジョブ2を実行する。この際、コア制御部14は、異常が発生した第3CPUコア11cに処理を割り振ることなく、第1及び第2CPUコア11a,11bに処理を割り振る。さらに、コア制御部14は、第3CPUコア11cにリセット信号を送信するなどして、第3CPUコア11cの復帰を図る。
【0038】
また、ジョブ2の終了後、異常検知部12は再度各CPUコア11の異常を判断する。このとき、第3CPUコア11cが異常のままであるとすると、マルチコアCPU10は、ジョブ3を実行することとなる。一方、第3CPUコア11cの異常が解消された場合、マルチコアCPU10は、決定した実行順を優先度に基づく実行順に変更する。すなわち、ジョブ管理部13は、第3CPUコア11cの異常時において実行順をジョブ2、ジョブ3及びジョブ1の順としたが、第3CPUコア11cが復帰したため、ジョブ2、ジョブ3及びジョブ1という順番を単に優先度に基づく順番に戻すこととなる。なお、この時点においてジョブ2は終了しているため、ジョブ管理部13は、優先度に基づいて、ジョブ1、及びジョブ3の順に実行されるように実行順を変更する。
【0039】
また、状態3に示すように第2及び第3CPUコア11b,11cに異常が発生したとする。この際、ジョブ管理部13は、処理能力判断機能により、CPU処理能力を30%と判断する。また、ジョブ管理部13は、実行順決定機能によりジョブの実行順を決定する。この場合、ジョブ1及びジョブ2についてはCPU処理能力の30%を超えている。よって、ジョブ管理部13は、ジョブ3から先に実行されるように実行順を決定する。
【0040】
ここで、ジョブ管理部13は、ジョブ1とジョブ2とのうち、どちらを先に実行させるかについても判断する。具体的にジョブ管理部13は、CPU処理能力を超える要求処理能力を必要とするジョブが2以上ある場合、2以上のジョブのうち、CPU処理能力を超える超え幅が小さいジョブから実行されるように実行順を決定する。すなわち、図2に示す状態3の例の場合、ジョブ管理部13は、ジョブ1とジョブ2とのうち、ジョブ2が先に実行されるように実行順を決定する。この結果、状態3においてジョブ管理部13は、ジョブ3、ジョブ2、及びジョブ1の順に実行されるように実行順を決定する。
【0041】
そして、マルチコアCPU10は、ジョブ管理部13により決定された順にジョブを実行する。すなわち、マルチコアCPU10は、まずジョブ3を実行する。この際、コア制御部14は、異常が発生した第2及び第3CPUコア11b,11cに処理を割り振ることなく、第1CPUコア11aに処理を割り振る。さらに、コア制御部14は、第2及び第3CPUコア11b,11cにリセット信号を送信するなどして、第2及び第3CPUコア11b,11cの復帰を図る。
【0042】
また、ジョブ3の終了後、異常検知部12は再度各CPUコア11の異常を判断する。このとき、第2及び第3CPUコア11b,11cが異常のままであるとすると、マルチコアCPU10は、ジョブ2を実行することとなる。一方、第2及び第3CPUコア11b,11cの異常が解消された場合、マルチコアCPU10は、決定した実行順を優先度に基づく実行順に変更する。すなわち、ジョブ管理部13は、第3CPUコア11cの異常時において実行順をジョブ3、ジョブ2及びジョブ1の順としたが、第2及び第3CPUコア11b,11cが復帰したため、ジョブ3、ジョブ2及びジョブ1という順番を単に優先度に基づく順番に戻すこととなる。なお、この時点においてジョブ3は終了しているため、ジョブ管理部13は、優先度に基づいて、ジョブ1、及びジョブ2の順に実行されるように実行順を変更する。
【0043】
また、第2及び第3CPUコア11b,11cのうちいずれか一方のみの異常が解消された場合については、状態2と同様の処理を実行することとなる。
【0044】
次に、フローチャートを参照して、本実施形態に係る画像形成装置1の動作を説明する。図3は、本実施形態に係る画像形成装置1の動作を示すフローチャートである。図3に示すように、画像形成装置1が起動された後に複数のジョブの実行指示があった場合、異常検知部12は、第1〜第3CPUコア11a〜11cについて異常が発生したかを判断する(S1)。このとき、異常検知部12は、第1〜第3CPUコア11a〜11cからの異常信号や各CPUコア11a〜11cの近傍に設けられる温度センサからの温度信号に基づいて各CPUコア11a〜11cの異常を判断する。
【0045】
そして、第1〜第3CPUコア11a〜11cのいずれについても異常が発生していないと判断した場合(S1:NO)、処理はステップS4に移行する。一方、第1〜第3CPUコア11a〜11cのいずれかについて異常が発生したと判断した場合(S1:YES)、ジョブ管理部13は、処理能力判断機能により、異常が発生していないCPUコア11によるCPU処理能力を判断する(S2)。その後、ジョブ管理部13は、実行順決定機能により各ジョブの要求処理能力を算出する(S3)。そして、処理はステップS4に移行する。
【0046】
ステップS4において、ジョブ管理部13は、実行順決定機能により、ジョブの実行順を判断する(S4)。ここで、ステップS2及びステップS3を経由せず、ステップS4の処理が実行される場合、ジョブ管理部13は、優先度に基づいてジョブの実行順を判断する。すなわち、本実施形態においてジョブ管理部13は、画像形成指示があった順番にジョブが実行されるように実行順を決定する。
【0047】
一方、ステップS2及びステップS3を経由してステップS4の処理が実行される場合、ジョブ管理部13は、実行順決定機能により、CPU処理能力以下となる要求処理能力を必要とするジョブから実行されるように実行順を決定する。この際、ジョブ管理部13は、CPU処理能力以下となる要求処理能力を必要とするジョブであって、優先度が高いものから実行されるように実行順を決定することが望ましい。
【0048】
その後、コア制御部14は、ステップS4において判断された実行順で、1番目に実行するジョブについて各CPUコア11に処理を割り振る。そして、各CPUコア11はジョブを実行する(S5)。なお、ステップS1においていずれかのCPUコア11に異常が発生していた場合、コア制御部14は、ステップS5の処理において異常が発生していないCPUコア11に処理を割り振ることとなる。また、いずれかのCPUコア11に異常があった場合、コア制御部14はリセット信号を送信するなどして、異常があったCPUコア11について復帰を図る。
【0049】
次に、マルチコアCPU10は、ステップS5で実行したジョブが終了したか否かを判断する(S6)。ジョブが終了していないと判断した場合(S6:NO)、ジョブが終了するまで、この判断が繰り返される。
【0050】
ジョブが終了したと判断した場合(S6:YES)、マルチコアCPU10は次ジョブがあるか否かを判断する(S7)。次ジョブがあると判断した場合(S7:YES)、処理はステップS1に移行する。一方、次ジョブがないと判断した場合(S7:NO)、図3に示す処理は終了する。
【0051】
このようにして、本実施形態に係る画像形成装置1及びジョブ管理方法によれば、複数のCPUコア11のいずれかに異常が発生したと判断された場合、複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力がCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定するため、CPU処理能力以下となるジョブから実行されることとなり、CPUコア11に異常が発生していたとしても、生産性の低下を抑制することができる。また、要求処理能力がCPU処理能力以下となるジョブから実行されるため、異常が発生したCPUコア11に頼ることなくジョブを実行でき、異常が発生したCPUコア11については温度低下やリセットによる再起動等の時間的余裕が与えられ、復帰の機会が与えられることとなる。従って、生産性の低下を抑制しつつ、異常が発生したCPUコア11の復帰を図ることができる。
【0052】
また、複数のCPUコア11のいずれかに異常が発生したと判断された場合、要求処理能力がCPU処理能力以下となるジョブであって優先度が高いものから順に実行されるように実行順を決定する。このため、CPUコア11に異常が発生していないときには優先度に基づいて実行順が決定され、CPUコア11に異常が発生すると、優先度による実行順を保持しつつも要求処理能力が高いジョブを後回しとするように実行順が決定されることとなる。これにより、CPUコア11の正常時における本来の順番を大きく変更することなく、生産性の低下を抑制することができる。
【0053】
また、異常が発生したCPUコア11の異常が解消された場合、決定した実行順を優先度に基づく実行順に変更するため、CPUコア11の復帰時にはCPUコア11の異常時における実行順で固定されることなく、優先度に基づく実行順に戻ることとなり、利便性を向上させることができる。
【0054】
また、CPU処理能力を超える要求処理能力を必要するジョブが2以上ある場合、2以上のジョブのうち、CPU処理能力を超える超え幅が小さいジョブから実行されるように実行順を決定する。このため、CPUコア11に異常が発生し、そのCPUコア11が復帰することなく、CPU処理能力を超える要求処理能力を必要するジョブが実行される場合であっても、より要求処理能力が低いものから順に実行されることとなる。これにより、CPU処理能力を超えるジョブであってもより要求処理能力が低いジョブの実行中にCPUコア11の復帰を図ることができ、さらに要求処理能力が高いジョブの実行時においてCPUコア11を復帰させるなどでき、一層生産性の低下を抑制することができる。
【0055】
以上、本発明に係る画像形成装置を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0056】
例えば、上記実施形態では画像形成装置1を例に説明したが、これに限らず、単にジョブを管理するジョブ管理装置として構成されていてもよい。すなわち、上記した異常検知部12、及びジョブ管理部13を備えるジョブ管理装置として構成されていてもよい。
【0057】
また、本実施形態においていずれかのCPUコア11に異常があった場合、要求処理能力がCPU処理能力以下であって、優先度が高いものから実行されるように実行順が決定されるが、これに限るものではなく、例えば以下のように実行順が決定されてもよい。すなわち、いずれかのCPUコア11に異常があった場合、要求処理能力がCPU処理能力以下であって、画像形成回数が多いものから実行されるように実行順が決定されてもよい。ここで、印刷枚数などの画像形成回数が多くなると、そのジョブの終了までの時間が長くなり、異常が発生したCPUコア11の復帰までの時間を長くできる。すなわち、温度上昇による異常の場合には温度低下までの時間を確保し易く、リセット信号により異常が発生したCPUコア11の再起動を図る場合には、再起動までの時間が確保し易くすることができる。これにより、異常が発生したCPUコア11をより復帰させやすくすることができる。
【0058】
また、本実施形態において優先度は、画像形成指示があった順に高くされているが、優先度が画像形成指示の順に限らず、画像形成回数や要求処理能力によって高くされたり低くされたりしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 画像形成装置
10 マルチコアCPU
11 CPUコア
12 異常検知部
13 ジョブ管理装置
14 コア制御部
15 I/Oポート
16 メモリ制御部
17 キャッシュメモリ
20 ROM
30 RAM
40 メカニカルコントローラ制御基板
41 メカニカルコントローラCPU
42 負荷制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のCPUコアを有するマルチコアCPUにより、画像形成処理を含む複数のジョブを順次実行する画像形成装置であって、
優先度に基づいて前記複数のジョブ実行順を決定する実行順決定手段と、
前記複数のCPUコアのいずれかに処理能力を低下させる異常が発生したかを判断する異常判断手段と、
前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、異常が発生していないCPUコアによるCPU処理能力を判断する処理能力判断手段と、を備え、
前記実行順決定手段は、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、前記複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力が、前記処理能力判断手段により判断されたCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記実行順決定手段は、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、前記要求処理能力が前記処理能力判断手段により判断されたCPU処理能力以下となるジョブであって優先度が高いものから順に実行されるように実行順を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記実行順決定手段は、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、前記要求処理能力が前記処理能力判断手段により判断されたCPU処理能力以下となるジョブであって画像形成回数が多いものから順に実行されるように実行順を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記実行順決定手段は、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断されて、前記要求処理能力が前記CPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定した後に、異常が発生したCPUコアの異常が解消された場合、決定した実行順を優先度に基づく実行順に変更する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記実行順決定手段は、前記処理能力判断手段により判断されたCPU処理能力を超える前記要求処理能力を必要するジョブが2以上ある場合、2以上のジョブのうち、CPU処理能力を超える超え幅が小さいジョブから実行されるように実行順を決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
複数のCPUコアを有するマルチコアCPUに、画像形成処理を含む複数のジョブを順次実行させるジョブ管理装置であって、
優先度に基づいて前記複数のジョブの実行順を決定する実行順決定手段と、
前記複数のCPUコアのいずれかに処理能力を低下させる異常が発生したかを判断する異常判断手段と、
前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、異常が発生していないCPUコアによるCPU処理能力を判断する処理能力判断手段と、を備え、
前記実行順決定手段は、前記異常判断手段により前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、前記複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力が、前記処理能力判断手段により判断されたCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定する
ことを特徴とするジョブ管理装置。
【請求項7】
複数のCPUコアを有するマルチコアCPUに、画像形成処理を含む複数のジョブを順次実行させるジョブ管理方法であって、
優先度に基づいて前記複数のジョブの実行順を決定する実行順決定工程と、
前記複数のCPUコアのいずれかに処理能力を低下させる異常が発生したかを判断する異常判断工程と、
前記異常判断工程において前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、異常が発生していないCPUコアによるCPU処理能力を判断する処理能力判断工程と、を有し、
前記異常判断工程では、前記複数のCPUコアのいずれかに異常が発生したと判断された場合、前記複数のジョブそれぞれの処理に要する要求処理能力が、前記処理能力判断工程において判断されたCPU処理能力以下となるジョブから順に実行されるように実行順を決定する
を有することを特徴とするジョブ管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−218208(P2010−218208A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64161(P2009−64161)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】