画像形成装置、画像形成方法
【課題】発光素子の分光分布のばらつきに対して、感光体の電位変化量を安定させて、良好な画像の形成を可能とする技術を提供する。
【解決手段】発光素子および発光素子を制御信号に応じて発光させる発光制御部を有する露光ヘッドと、露光ヘッドの発光素子が発光した光に感光して、潜像が形成される感光体と、感光体に形成された潜像を現像する現像部と、発光素子の光量を検出する検出部と、検出部の検出結果から求められる第1の補正値および発光素子の分光分布から求められる第2の補正値に基づいて、制御信号を補正する補正部と、を備える。
【解決手段】発光素子および発光素子を制御信号に応じて発光させる発光制御部を有する露光ヘッドと、露光ヘッドの発光素子が発光した光に感光して、潜像が形成される感光体と、感光体に形成された潜像を現像する現像部と、発光素子の光量を検出する検出部と、検出部の検出結果から求められる第1の補正値および発光素子の分光分布から求められる第2の補正値に基づいて、制御信号を補正する補正部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子からの光に感光体を感光させて潜像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体が光により感光して電位変化を起こす性質を利用して、感光体に潜像を形成する画像形成装置が提案されている。例えば特許文献1の画像形成装置では、所定方向に並ぶ複数の発光素子を備えた露光ヘッドが感光体に対向して配置されており、各発光素子からの光が感光体表面にスポット状に照射されて、この光の照射部分の電位が変化する。そして、形成すべき潜像に応じた箇所の電位を光の照射により変化させることで、感光体表面に潜像を形成することができる。さらに、この画像形成装置は、こうして形成した潜像にトナーを付着させることで、当該潜像を画像として現像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−238633号公報
【特許文献2】特開2008−201136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現像時に付着するトナーの量は、感光体表面の電位変化量に依存する。したがって、画像を良好に形成するにあたっては、発光素子の光の照射による感光体の電位変化量を精度良く制御することが重要となる。なぜなら、この電位変化量が所定の変化量から大きく異なると、適切量のトナーを付着させることができず、その結果、画像濃度が大きくずれてしまう等して、所望の画像を得られないからである。
【0005】
これに対して、発光素子の光量は、当該発光素子の温度変化や劣化に伴って変化するため、この発光素子の光量変化によって電位変化量が所定の電位変化量からずれてしまう場合があった。そこで、特許文献2の露光ヘッドは、光センサーにより発光素子の光量を検出して、この検出結果に基づいて発光素子の光量を補正している。
【0006】
しかしながら、このように発光素子の光量を補正したとしても、なお、感光体の電位変化量を精度良く制御することが困難となる場合があった。その原因は、発光素子の分光分布のばらつきである。つまり、発光素子の製造精度には限界があるため、製造する全ての発光素子の分光分布を同じに揃えることは難しい。したがって、発光素子によって、分光分布が波長軸方向にシフトしたり、分光分布の形状そのものが変化したりして、発光素子の分光分布はばらつく。その結果、感光体の電位変化量が安定せず、良好な画像形成ができなくなるおそれがあった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発光素子の分光分布のばらつきに対して、感光体の電位変化量を安定させて、良好な画像の形成を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、発光素子および発光素子を制御信号に応じて発光させる発光制御部を有する露光ヘッドと、露光ヘッドの発光素子が発光した光に感光して、潜像が形成される感光体と、感光体に形成された潜像を現像する現像部と、発光素子の光量を検出する検出部と、検出部の検出結果から求められる第1の補正値および発光素子の分光分布から求められる第2の補正値に基づいて、制御信号を補正する補正部と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するために、発光素子の光量を検出する検出部の検出結果から求められる第1の補正値および発光素子の分光分布から求められる第2の補正値に基づいて、発光素子の発光を制御する制御信号を補正する第1の工程と、第1の工程で補正された制御信号に応じて発光する発光素子からの光に感光体を感光させて、感光体に潜像を形成する第2の工程と、第2の工程で形成された潜像を現像する第3の工程と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明(画像形成装置、画像形成方法)は、制御信号に応じて発光素子を発光させることで感光体に照射される光により、当該感光体の電位を変化させて潜像を形成する。そして、この発明は、発光素子の光量を検出する検出部の検出結果から求められた第1の補正値のみならず、発光素子の分光分布から求められる第2の補正値にも基づいて、制御信号を補正している。その結果、発光素子の分光分布のばらつきに対して、感光体の電位変化量を安定させて、良好な画像を形成することが可能となっている。
【0011】
この際、補正部は、分光分布の重心波長での感光体の分光感度に基づいて制御信号を補正するように構成しても良い。つまり、分光分布の重心波長は分光分布のばらつきに応じて変化する傾向にあるため、この分光分布の重心波長での感光体の分光感度に基づいて発光素子の発光を制御する制御信号を補正することで、発光素子の分光分布のばらつきに対して、感光体の電位変化量を安定させることができる。
【0012】
また、補正部は、重心波長と、当該重心波長を有する分光分布を示す発光素子で形成した潜像を現像部で現像して得られる画像の濃度との相関関係から、第2の補正値を求めるように構成しても良い。このように、分光分布の重心波長と画像濃度との相関関係から第2の補正値を求めることで、分光分布のばらつきに対して画像濃度をより確実に安定させることができ、良好な画像形成が可能となる。
【0013】
また、第1の補正値に第2の補正値を乗じた値に基づいて、制御信号を補正するように構成しても良い。このように構成することで、発光素子の分光分布のばらつきに対して、感光体の電位変化量を安定させて、良好な画像の形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す斜視図。
【図4】ラインヘッドの構造を示す部分断面図。
【図5】Yラインヘッド制御回路の構成を示すブロック図。
【図6】感光体の分光感度の一例をグラフとして示した図。
【図7】分光感度比データ記憶部と補正回路とが行う発光制御の説明図。
【図8】分光分布測定の一例を表として示した図。
【図9】分光分布の重心波長の測定結果の一例をグラフで示した図。
【図10】重心波長と画像濃度との相関関係の一例をグラフとして示した図。
【図11】重心波長が660[nm]の発光素子Eで形成される画像の相対濃度を示した図。
【図12】Yラインヘッド制御回路の構成の変形例を示すブロック図。
【図13】Yラインヘッド制御回路に記憶されるデータ等を表1として示した図。
【図14】重心波長vs濃度相関データを表2として示した図。
【図15】ラインヘッドに設けられたヘッドパネルモジュールを示すブロック図。
【図16】発光素子の点灯時間制御の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1実施形態
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部EGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0016】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0017】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0018】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モーターに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0019】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0020】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0021】
図3はラインヘッドの構造を示す斜視図である。同図では、ヘッド基板294の裏面側の構成が記載されており、表面側の構成は省略されている。なお、ヘッド基板294が有する2面のうち、同図上側の面を表面とし、同図下側の面を裏面とする。また、図4は、ラインヘッドの構造を示す部分断面図である。これらの図では、主走査方向MDおよび副走査方向SDに直交する方向であって発光素子Eの光の射出方向(換言すれば、ラインヘッド29から感光体ドラム21に向かう方向)に、光軸方向Doaが付されている。
【0022】
ラインヘッド29は、その本体291の内部にガラス基板であるヘッド基板294を備えており、このガラス基板294の裏面294−tには、複数の発光素子Eが主走査方向MD(長手方向LGD)に2行千鳥で並んでいる。各発光素子Eはいわゆるボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である。そして、各発光素子Eは、駆動電流の印加を受けて、光を射出する。
【0023】
また、ヘッド基板294の裏面294−tには、光センサーSCが設けられている(図4)。この光センサーSCは、温度変化や劣化による発光素子Eの光量変化を検出するために設けられており、この光センサーSCの検出結果に基づいて発光素子Eに印加する駆動電流の電流値が補正される。
【0024】
さらに、ヘッド基板裏面294−tに設けられた発光素子Eに対して、屈折率分布型ロッドレンズアレイRLA(以下、レンズアレイRLAと略称する)がヘッド基板表面294−h側から対向する。したがって、発光素子Eの発光面から射出した光はヘッド基板294を透過して、レンズアレイRLAに入射する。こうして発光素子Eから射出した光が、レンズアレイRLAにより正立等倍で結像されて、感光体ドラム21表面にスポットSPが照射される。そして、感光体ドラム21表面のうちスポットSPの照射範囲が感光して、静電潜像が感光体ドラム21の表面に形成される。
【0025】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0026】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0027】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0028】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され駆動ローラー82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラーは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0029】
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラー85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0030】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。この下流ガイドローラー86は、一次転写ローラー85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラー85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0031】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラー82と二次転写ローラー121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0032】
二次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0033】
前記した駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラー121のバックアップローラーとしての機能も兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラー121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0034】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラー83と一体的に構成されている。
【0035】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリーがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、各メモリー内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0036】
以上が、画像形成装置の概略構成である。続いて、本実施形態の画像形成装置で実行される、発光素子Eの発光制御について説明する。この発光制御は、ヘッドコントローラーHC内部に各色Y,M,C,K毎に設けられたラインヘッド制御回路CCにより実行される(図2)。そこで、以下では、このラインヘッド制御回路CCの構成および動作について説明する。なお、同回路CCの構成および動作は各色Y,M,C,Kで共通しているので、ここではイエロー(Y)用のYラインヘッド制御回路CCを例にとって説明する。
【0037】
図5は、Yラインヘッド制御回路の構成を示すブロック図である。Yラインヘッド制御回路CCは、補正回路CC1、光量補正データ記憶部CC2および分光感度比データ記憶部CC3から構成されており、メインコントローラーMCから送られてきたイエロー(Y)用のビデオデータVD−Y等に基づいて、発光素子Eの発光期間を示すデータTD−Y(データ信号)と、発光素子Eに供給する駆動電流の電流値ID−Y(電流値信号)とを生成する。
【0038】
光量補正データ記憶部CC2は、光センサーSCの検出結果に基づいて、温度変化や劣化に伴なう発光素子Eの光量を補正するために設けられたものであり、この光量補正データ記憶部CC2と補正回路CC1とが協働して光量補正を実行する。つまり、上述のように、本実施形態では、各発光素子Eからの光を感光体ドラム21表面に照射し、この光の照射部分の電位を変化させることで、感光体ドラム21表面に静電潜像を形成する。この際、感光体ドラム21表面の電位変化量は発光素子Eの光量に依存する。したがって、発光素子Eの光量が温度や劣化に伴なって変化すると、この電位変化量が所望の変化量からずれてしまい、適切な画像が形成できない場合があった。そこで、かかる問題に対応すべく、以下の光量補正が実行される。
【0039】
まず、光量補正を行うために必要なパラメーターがラインヘッド29の工場出荷時に予め測定される。つまり、工場出荷の際に、ラインヘッド29は、光量検出器を用いて各発光素子Eの射出光量を検出する光量測定用ジグに取り付けられる。そして、この光量測定用ジグは、主走査方向MDに並ぶ発光素子Eを順番に発光させて、各発光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…の光量Pg(1)、Pg(2)、…、Pg(n)、…を光量検出器で検出して記憶する。さらに、光量検出器の検出結果の記憶動作と並行して、光量測定用ジグは、各発光素子Eを順次点灯させている間、ラインヘッド29の光センサーSCの検出光量Ph(1)、Ph(2)、…、Ph(n)、…を記憶する。こうして求められたパラメーターPg(n)、Ph(n)から光量補正係数Pg(n)/Ph(n)が各発光素子E毎に算出される。そして、この光量補正係数Pg(n)/Ph(n)が光量補正データ記憶部CC2に記憶された状態で、ラインヘッド29が出荷される。
【0040】
ここで、発光素子Eに付された括弧内の数値は発光素子Eの識別番号であり、主走査方向MDから順番に各発光素子Eに付されている。また、光量Pg(n)は光量測定用ジグの光量検出器が検出した発光素子E(n)の光量を示し、光量Ph(n)はラインヘッド29の光センサーSCが検出した発光素子E(n)の光量を示している。また、以後の説明で用いる、括弧内に識別番号が付されたパラメーター(パラメーターPj(n)等)についても同様である。
【0041】
そして、ラインヘッド29の出荷後において、画像形成装置の電源投入時や画像形成の合間等のタイミングで、光量補正が実行される。つまり、この光量補正では、補正回路CC1が各発光素子Eを順番に発光させるとともに、各発光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…の光量Pj(1)、Pj(2)、…、Pj(n)、…を光センサーSCで検出して記憶する。そして、補正回路CC1は、この光センサーSCの検出光量Pj(n)に光量補正係数Pg(n)/Ph(n)を乗じた値Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)を、発光素子E(n)の実際の光量として推定する。
【0042】
このようにして発光素子E(n)の実際の光量Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)が推定できるため、この推定光量と目標光量とを比較することで、発光素子E(n)の光量の補正量が求まる。そして、この補正量だけ発光素子E(n)の光量を補正するように、発光素子E(n)に供給する駆動電流値が求められる(光量補正)。
【0043】
ところで、発光素子Eからの光照射による感光体ドラム21表面の電位変化量は、発光素子Eの光量のみならず、発光素子Eの分光分布にも依存する。つまり、発光素子Eの製造精度には限界があるため、製造する全ての発光素子Eの分光分布を同じに揃えることは難しい。したがって、発光素子Eによって、分光分布が波長軸方向にシフトしたり、分光分布の形状そのものが変化したりして、発光素子Eの分光分布はばらつく。一方、特許第4115253号公報にも示されているように、一般に感光体の分光感度は光の波長に対して変化する(図6)。したがって、発光素子Eの分光分布がばらつくと、感光体ドラム21の電位変化量が安定しなくなる場合があった。この点について詳述すると次のとおりである。
【0044】
図6は、感光体の分光感度の一例をグラフとして示した図であり、横軸に光の波長[nm]を取り縦軸に感度[m×m/mJ]を取っている。同図では、a−Si(amorphous silicon)、OPC(Organic Photo Conductor)およびSe−Te(セレン−テルル)のそれぞれを材料として用いた、感光体の分光感度が示されている。いずれの感光体の分光感度も光の波長に対して変化しているのが判るが、ここでは、OPC感光体を例に取って説明すると、波長700[nm]付近では、波長が長いほどOPC感光体の分光感度が良く、より少ないエネルギーで電位が変化する(換言すれば、潜像が形成される)したがって、例えば、分光分布が異なる2つの発光素子Eを比較した場合、各発光素子Eの光量(分光分布を波長で積分した値に相当)は同じであっても、長い波長成分をより多く含む分光分布を有する発光素子Eの方が、感光体の電位をより大きく変化させる。このような事情から、上述した発光素子Eの光量補正を行ったとしても、ラインヘッド29の各発光素子Eの分光分布がばらつくと、感光体の電位変化量がまちまちとなってしまい、良好な画像形成ができなくなるおそれがあった。
【0045】
そこで、本実施形態のラインヘッド制御回路CCは、分光感度比データ記憶部CC3を備え、この分光感度比データ記憶部CC3と補正回路CC1とが協働して発光素子Eの発光制御を行なうことで、かかる問題に対応している。
【0046】
図7は、分光感度比データ記憶部と補正回路とが行う発光制御の説明図である。同図で示されるグラフは、横軸に光の波長[nm]を取り縦軸に強度を取って、発光素子E(n)および発光素子E(m)それぞれの分光分布と、感光体ドラム21の分光感度が示されている。なお、図7の感光体ドラム21の分光感度は、図6で例示した感光体の分光感度とは異なるものであり、本実施形態で用いた感光体ドラム21の分光感度である。また、同グラフでは、光センサーSCの分光感度も併記されている。この光センサーSCの分光感度は比較的一定していることが判る。
【0047】
同図に示すように、感光体ドラム21の分光感度は一定ではなく、600[nm]を超えた位から分光感度が低下しているのが判る。したがって、長い波長をより多く含む分光分布を有する発光素子Eほど、変化させる電位変化量が小さくなる。これに対して、同図の例では、発光素子E(n)と発光素子E(m)とはそれぞれ異なる分光分布を有している。つまり、発光素子E(n)、E(m)それぞれの分光分布はピークPKにおいては略一致しているが、発光素子E(n)の分光分布は、発光素子E(m)の分光分布に比べて、長い波長をより多く含んでいる。したがって、発光素子E(n)による電位変化量は、発光素子E(m)による電位変化量と比較して小さくなる傾向にある。そこで、この実施形態では、このような分光感度のばらつきによる電位変化量の変動を抑制するために、分光感度比データ記憶部CC3と補正回路CC1とが、発光素子Eの発光制御を当該発光素子Eの分光分布に基づいて行なう。
【0048】
まず、かかる発光制御を行うために必要なパラメーターがラインヘッド29の工場出荷時に予め測定される。つまり、工場出荷の際に、ラインヘッド29は、分光器を用いて各発光素子Eの分光分布を測定する分光分布測定用ジグに取り付けられる。そして、この分光分布測定用ジグは、主走査方向MDに並ぶ発光素子Eを順番に発光させて、各発光素子E(1)、E(2)、…、E(m)、…、E(n)、…の分光分布を測定する。
【0049】
図8は、分光分布測定の一例を表として示した図である。同表に示すように、分光分布を測定する波長範囲は550[nm]〜850[nm]に設定されている。これは、分光強度が十分に落ちきった波長領域(図7)で分光分布を測定するためである。この場合、分光器の測定波長分解能が10[nm]であれば、31個のデータを取得することとなる。そして、この測定結果から分光分布の重心波長が求められる。具体的には、次の計算式、
【数1】
で重心波長が求められる。こうして、各発光素子E(1)、E(2)、…、E(m)、…、E(n)、…の重心波長G(1)、G(2)、…、G(m)、…、G(n)、…が求められる。
【0050】
図9は、分光分布の重心波長の測定結果の一例をグラフで示した図であり、同グラフは、横軸に発光素子番号nを取り、縦軸に重心波長[nm]を取っている。同図に示すように、グラフ中の矢印で示した範囲では、重心波長が長い方にシフトしており、当該範囲の発光素子Eによる電位変化量は少なくなる。しかも、当該範囲の境界では、分光分布の重心波長が長い発光素子Eにより形成された潜像と、分光分布の重心波長が短い発光素子Eにより形成された潜像とが境界を挟んで隣接することとなる。したがって、かかる分光分布のばらつきを考慮せず形成した潜像を現像した場合、この境界で濃淡差が顕著に出てしまうこととなる。
【0051】
このような問題に対処するために、本実施形態では、各重心波長G(1)、G(2)、…、G(m)、…、G(n)、…での感光体ドラム21の分光感度I(1)、I(2)、…、I(m)、…、I(n)、…が求められる。そして、各発光素子Eのうちから参照用発光素子E(ref)を1個選び、この参照用発光素子E(ref)に対応する分光感度I(ref)と、各発光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…に対応する分光感度I(1)、I(2)、…、I(n)、…との比I(1)/I(ref)、I(2)/I(ref)、…、I(n)/I(ref)、…が分光感度比データとして求められる。そして、この分光感度比データI(1)/I(ref)、I(2)/I(ref)、…、I(n)/I(ref)、…が分光感度比データ記憶部CC3に記憶された状態で、ラインヘッド29が工場出荷される。
【0052】
そして、ラインヘッド29の出荷後の実際の潜像形成動作では、分光感度比データ記憶部CC3に記憶された分光感度比データに基づいて、補正回路CC1が発光素子Eの発光制御を実行する。つまり、光センサーSCの検出値から推定した光量Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)にさらに分光感度比データI(n)/I(ref)を乗じた光量で発光素子E(n)が発光するように、駆動電流値ID−Yが求められる。そして、ビデオデータVD−Yから求めたデータTD−Yが示す発光期間だけ、電流値ID−Yの駆動電流を発光素子E(n)に供給して、発光素子E(n)を発光させる。かかる発光制御を各発光素子Eに対して実行することで、各発光素子Eの光照射による電位変化量を安定させることが可能となる。
【0053】
以上のように、第1実施形態では、発光素子Eの光量を検出する光センサーSCの検出結果から求められた推定光量Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)(第1の補正値)のみならず、発光素子Eの分光分布から求められる分光感度比データI(n)/I(ref)(第2の補正値)にも基づいて、発光素子Eの駆動電流値ID−Y(制御信号)が補正される。その結果、発光素子Eの分光分布のばらつきに対して、感光体ドラム21の電位変化量を安定させて、良好な画像を形成することが可能となっている。
【0054】
また、第1実施形態は、分光分布の重心波長での感光体ドラム21の分光感度に基づいて駆動電流値ID−Y(制御信号)を補正するように構成しており好適である。つまり、分光分布の重心波長は分光分布のばらつきに応じて変化する傾向にあるため。したがって、この分光分布の重心波長での感光体ドラム21の分光感度に基づいて、発光素子Eの駆動電流値ID−Y(制御信号)を補正することで、発光素子Eの分光分布のばらつきに対して、感光体ドラム21の電位変化量を安定させることができる。
【0055】
また、第1実施形態のように、発光素子Eとして有機EL素子を用いた構成に対しては、本発明を適用することが特に好適である。つまり、有機EL素子は、LED(Light Emitting Diode)等のその他の素子と比較して分光分布のばらつきが大きいため、上述した問題が発生しやすい。そこで、発光素子Eに有機EL素子を用いた構成に対しては、本発明を適用して良好な画像形成の実現を図ることが好適となる。
【0056】
第2実施形態
第1実施形態のラインヘッド制御回路CCは、分光感度比データ記憶部CC3に記憶した分光感度比データに基づいて駆動電流の電流値ID−Y等を補正していた。これに対して、第2実施形態のラインヘッド制御回路CCは、分光分布の重心波長と画像濃度との相関関係を記憶しておき、この相関関係に基づいて駆動電流の電流値ID−Y等を補正する。以下、図10〜図14を用いて第2実施形態について詳述する。
【0057】
図10は、重心波長と画像濃度との相関関係の一例をグラフとして示した図であり、横軸に分光分布の重心波長[nm]を取り、縦軸に相対濃度を取っている。この縦軸の相対濃度は、重心波長が660[nm]の分光分布を有する光で形成されるハーフトーン画像の濃度に対して、重心波長が横軸の値である分光分布を有する光で形成されるハーフトーン画像の濃度が相対比で示されている。同図から、重心波長が大きくなるに従って、相対濃度が増加していることが判る。
【0058】
図11は、重心波長が660[nm]の分光分布の光を発光する発光素子Eに対して、横軸の相対電流に対応する駆動電流を流した場合に形成されるハーフトーン画像の相対濃度を示した図である。同図の横軸では、光センサーSCの検出値に基づく光量補正のみを行った際の電流値を「1」とした場合の駆動電流値ID−Y等が示されている。また、同図の縦軸では、相対電流「1」で発光素子Eを駆動した場合に形成されるハーフトーン画像濃度を「1」とした場合のハーフトーン画像濃度が示されている。ここで、相対電流をxとし、相対濃度をyとすると、関係式y=4x−3が成立している。
【0059】
第2実施形態では、発光素子Eの分光分布の重心波長によらず画像濃度を一定にするために、図10に示した相関関係をラインヘッド制御回路CCに記憶しておき、この相関関係に基づいて駆動電流値ID−Y等が補正される。より具体的に例を挙げると、基準重心波長650[nm]の分光分布を有する光で形成されるハーフトーン画像の濃度(基準濃度)に、各重心波長の分光分布を有する光で形成されるハーフトーン画像の濃度を一致させるために、駆動電流値ID−Yが補正される。図10によると、このように一致させるためには、例えば重心波長660[nm]の分光分布の光によるハーフトーン画像の濃度が相対濃度比で0.97に落ちるように、駆動電流値ID−Yを補正しなければならない。そこで、上述した関係式y=4x−3から相対電流を求めると、(3+0.97)/4=0.9925となる。そこで、光センサーSCの検出値に基づく光量補正のみから求められる電流値に、この係数(=0.9925)を掛けた電流値を駆動電流値ID−Y等とすることで、発光素子Eの分光分布の重心波長に依らず画像濃度を一定にすることが可能となる。
【0060】
かかる駆動電流値ID−Yの補正を、図12、図13および図14を用いて説明すると次のとおりである。ここで、図12はYラインヘッド制御回路の構成の変形例を示すブロック図である。図13は、Yラインヘッド制御回路に記憶されるデータおよび当該データから算出される値を表1として示した図である。図14は、重心波長vs濃度相関データを表2として示した図である。なお、ここではイエロー(Y)のみについて説明を行なうが、他の色についても同様である。
【0061】
光量補正後発光電流は、光センサーSCの検出値に基づく光量補正のみを行った際の各発光素子Eへの駆動電流値[uA]であり、第1実施形態と同様の要領で求められて光量補正データ記憶部CC2に記憶されている。重心波長は、第1実施形態と同様の要領でラインヘッド29の工場出荷時に各発光素子E毎に求められて、CC4,重心波長データ記憶部CC4に記憶されている。印字濃度は、表1の重心波長と表2の印字濃度とから、補正回路CC1が各発光素子E毎に求める値である。濃度比計算値は、表1の印字濃度で基準濃度0.592(基準重心波長650[nm]の光で形成されるハーフトーン画像の濃度)を割ることで、補正回路CC1が各発光素子E毎に求める値である。また、電流補正係数は、前述の図11で説明したように、(3+濃度比計算値)/4で求められる係数である。また、波長補正後発光電流は、表1の光量補正後発光電流に表1の電流補正係数を乗じることで、補正回路CC1が各発光素子E毎に求める値である。
【0062】
つまり、補正回路CC1は、重心波長データ記憶部CC4から、各発光素子Eの分光分布の重心波長を読み出す。そして、この読み出した重心波長と、重心波長vs濃度相関データ記憶部CC5に記憶されている相関データ(表2)から、重心波長に対応する印字濃度を発光素子E毎に求める。さらに、この印字濃度で基準濃度を割った濃度比計算値を、光量補正後発光電流に乗じて波長補正後発光電流を、駆動電流値ID−Yとして求める。そして、この駆動電流値ID−Yの電流が発光素子Eに印加される。
【0063】
以上のように、第2実施形態では、発光素子Eの光量を検出する光センサーSCの検出結果から求められた推定光量Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)(第1の補正値)のみならず、発光素子Eの分光分布から求められる濃度比計算値(第2の補正値)にも基づいて、発光素子Eの駆動電流値ID−Y(制御信号)が補正される。その結果、発光素子Eの分光分布のばらつきに対して、感光体ドラム21の電位変化量を安定させて、良好な画像を形成することが可能となっている。
【0064】
また、第2実施形態は、重心波長と、当該重心波長を有する分光分布を示す発光素子Eで形成した潜像を現像部25で現像して得られる画像の濃度との相関関係(表2)から、濃度比計算値(第2の補正値)を求めており好適である。つまり、このように、分光分布の重心波長と画像濃度との相関関係から濃度比計算値を求め、この濃度補正値に基づいて駆動電流値ID−Y(制御信号)を補正することで、分光分布のばらつきに対して画像濃度をより確実に安定させることができ、良好な画像形成が可能となる。
【0065】
第3実施形態
ところで、上記第1・第2実施形態では、上記実施形態では、分光感度比データI(n)/I(ref)あるいは濃度比計算値に基づいて、駆動電流値ID−Yを補正していた。しかしながら、発光素子Eの発光期間を示すデータTD−Yを、分光感度比データI(n)/I(ref)あるいは濃度比計算値に基づいて補正するようにしても良い。
【0066】
図15は、ラインヘッドに設けられたヘッドパネルモジュールの構成を示すブロック図であり、このヘッドパネルモジュールHPMがデータTD−Yに基づいて発光素子を発光させる。なお、ヘッドパネルモジュールHPMは、各色Y,M,C,Kのラインヘッド29それぞれに設けられているが、ヘッドパネルモジュールHPMの構成は各色で共通するので、ここではイエロー(Y)のYラインヘッド29に設けられたヘッドパネルモジュールHPMを例示して説明する。
【0067】
ヘッドパネルモジュールHPMには、適切な発光タイミングで発光素子Eに駆動電流を供給するためのドライバーDVが設けられている。このドライバーDVには、データTD−Yを格納するためのシフトレジスタと、データTD−Yをラッチするためのラッチ回路と、ラッチされたデータTD−Yに応じて発光素子Eの点灯時間を制御する点灯制御回路が内蔵されている。
【0068】
各ドライバーDVには、シフトレジスタの起動のきっかけを与えるStartパルスが入力される。なお、このStartパルスは、メインコントローラーMCからの同期信号Syncに基づいてYラインヘッド制御回路CCが生成してドライバーDVに供給する。そして、Startパルスを受けて起動したシフトレジスタが、Data Clockに同期してデータTD−Yをシフトさせることで、1ライン分のデータTD−Yが複数のドライバーDVのシフトレジスタに渡って格納される。その後、Latch信号によりラッチされたデータTD−Yが示す点灯時間の間、PWM Clockに同期して電流値ID−Yの駆動電流が発光素子Eに供給される。こうして、各発光素子Eの点灯時間が制御される(図16)。ここで、図16は、発光素子の点灯時間制御の一例を示すタイミングチャートであり、1つのドライバーDVの48出力分のデータのラッチタイミングと、48出力それぞれに接続されたある1つの発光素子Eの発光タイミングを示している。同図の例では、ある発光素子EがデータTD(1)の対応するデータに応じて時間Te(1)の間点灯し、その後、データTD(1)に続くデータTD(2)の対応するデータに応じて時間Te(2)の間点灯するといった点灯動作を、実行する場合が示されている。この際、各発光DutyはTe(1)/Th、Te(2)/Th、…で与えられ、この発光Dutyを増減させることで、発光素子Eにより感光体ドラム21表面に与えるエネルギー量を調整することができる。ここで、期間Thは、1ラインの潜像を形成するのに要する期間(1ライン走査期間)である。
【0069】
そこで、この実施形態では、分光感度比データI(n)/I(ref)あるいは濃度比計算値に基づいて、駆動電流値ID−Yを補正する代わりに、発光素子Eの発光期間を示すデータTD−Yを補正し、これにより発光素子Eの発光Dutyを調整する。かかる発光制御を各発光素子Eに対して実行することで、各発光素子Eの光照射による電位変化量を安定させることが可能となる。
【0070】
以上のように、第3実施形態では、発光素子Eの光量を検出する光センサーSCの検出結果から求められた推定光量Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)(第1の補正値)のみならず、発光素子Eの分光分布から求められる分光感度比あるいは濃度比計算値(第2の補正値)にも基づいて、データTD−Y(制御信号)が補正され、この補正後のデータTD−Yに応じて発光素子Eが発光する。その結果、発光素子Eの分光分布のばらつきに対して、感光体ドラム21の電位変化量を安定させて、良好な画像を形成することが可能となっている。
【0071】
その他
このように、上記実施形態では、ラインヘッド29あるいはラインヘッド29とヘッドコントローラーHCが協働して本発明の「露光ヘッド」として機能し、感光体ドラム21が本発明の「感光体」に相当し、ラインヘッド制御回路CCが本発明の「発光制御部」および「補正部」に相当し、現像部25が本発明の「現像部」に相当し、光センサーSCが本発明の「検出部」に相当している。また、第1・第2実施形態では、駆動電流値ID−Yが本発明の「制御信号」に相当し、第3実施形態では、データTD−Yが本発明の「制御信号」に相当している。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記第1・第2実施形態では、発光素子Eに駆動電流を供給する具体的な構成、すなわち、第3実施形態でのヘッドパネルモジュールHPMのような構成については言及しなかった。しかしながら、第1・第2実施形態を実施するにあたっては、ラインヘッド29にヘッドパネルモジュールHPMを設けて、このヘッドパネルモジュールに補正後の駆動電流値ID−Y等を記憶しておけば、各発光素子Eをこの補正後の駆動電流値ID−Yで発光させることができる。
【0073】
また、上記第2実施形態では、係数0.09925を演算により求める例を説明したが、相対濃度比に対する係数を予めテーブル化して記憶しておき、相対濃度比に対する係数を適宜読み出して、光量補正電流値に掛けて駆動電流値を補正しても良い。
【0074】
また、上記第3実施形態では、ラインヘッド制御回路CCとヘッドパネルモジュールHPMとを別体で構成した場合について説明したが、これらを一体の回路で実現しても良い。
【0075】
また、上記実施形態では、発光素子Eとしてボトムエミッション型の有機EL素子が用いられている。しかしながら、トップエミッション型の有機EL素子を発光素子Eとして用いても良い。
【0076】
また、本発明に用いられるラインヘッド29としては、上述のような屈折率分布型のロッドレンズアレイRLAを光学系として備えたものに限られない。よって、例えば、特開2008−36937号公報に記載のラインヘッドを用いることもできる。つまり、同文献のラインヘッドでは、凸レンズで構成される結像光学系がアレイ状に配置されており、各結像光学系に対向して、所定個数毎に発光素子をグループ化した発光素子グループが配置されている。
【符号の説明】
【0077】
21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 HC…ヘッドコントローラー、 CC…ヘッド制御回路、 ID−Y,ID−M,ID−C,ID−K…駆動電流値、 TD−Y,TD−M,TD−C,TD−K…データ、 SC…光センサー
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子からの光に感光体を感光させて潜像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体が光により感光して電位変化を起こす性質を利用して、感光体に潜像を形成する画像形成装置が提案されている。例えば特許文献1の画像形成装置では、所定方向に並ぶ複数の発光素子を備えた露光ヘッドが感光体に対向して配置されており、各発光素子からの光が感光体表面にスポット状に照射されて、この光の照射部分の電位が変化する。そして、形成すべき潜像に応じた箇所の電位を光の照射により変化させることで、感光体表面に潜像を形成することができる。さらに、この画像形成装置は、こうして形成した潜像にトナーを付着させることで、当該潜像を画像として現像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−238633号公報
【特許文献2】特開2008−201136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現像時に付着するトナーの量は、感光体表面の電位変化量に依存する。したがって、画像を良好に形成するにあたっては、発光素子の光の照射による感光体の電位変化量を精度良く制御することが重要となる。なぜなら、この電位変化量が所定の変化量から大きく異なると、適切量のトナーを付着させることができず、その結果、画像濃度が大きくずれてしまう等して、所望の画像を得られないからである。
【0005】
これに対して、発光素子の光量は、当該発光素子の温度変化や劣化に伴って変化するため、この発光素子の光量変化によって電位変化量が所定の電位変化量からずれてしまう場合があった。そこで、特許文献2の露光ヘッドは、光センサーにより発光素子の光量を検出して、この検出結果に基づいて発光素子の光量を補正している。
【0006】
しかしながら、このように発光素子の光量を補正したとしても、なお、感光体の電位変化量を精度良く制御することが困難となる場合があった。その原因は、発光素子の分光分布のばらつきである。つまり、発光素子の製造精度には限界があるため、製造する全ての発光素子の分光分布を同じに揃えることは難しい。したがって、発光素子によって、分光分布が波長軸方向にシフトしたり、分光分布の形状そのものが変化したりして、発光素子の分光分布はばらつく。その結果、感光体の電位変化量が安定せず、良好な画像形成ができなくなるおそれがあった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、発光素子の分光分布のばらつきに対して、感光体の電位変化量を安定させて、良好な画像の形成を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、発光素子および発光素子を制御信号に応じて発光させる発光制御部を有する露光ヘッドと、露光ヘッドの発光素子が発光した光に感光して、潜像が形成される感光体と、感光体に形成された潜像を現像する現像部と、発光素子の光量を検出する検出部と、検出部の検出結果から求められる第1の補正値および発光素子の分光分布から求められる第2の補正値に基づいて、制御信号を補正する補正部と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するために、発光素子の光量を検出する検出部の検出結果から求められる第1の補正値および発光素子の分光分布から求められる第2の補正値に基づいて、発光素子の発光を制御する制御信号を補正する第1の工程と、第1の工程で補正された制御信号に応じて発光する発光素子からの光に感光体を感光させて、感光体に潜像を形成する第2の工程と、第2の工程で形成された潜像を現像する第3の工程と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明(画像形成装置、画像形成方法)は、制御信号に応じて発光素子を発光させることで感光体に照射される光により、当該感光体の電位を変化させて潜像を形成する。そして、この発明は、発光素子の光量を検出する検出部の検出結果から求められた第1の補正値のみならず、発光素子の分光分布から求められる第2の補正値にも基づいて、制御信号を補正している。その結果、発光素子の分光分布のばらつきに対して、感光体の電位変化量を安定させて、良好な画像を形成することが可能となっている。
【0011】
この際、補正部は、分光分布の重心波長での感光体の分光感度に基づいて制御信号を補正するように構成しても良い。つまり、分光分布の重心波長は分光分布のばらつきに応じて変化する傾向にあるため、この分光分布の重心波長での感光体の分光感度に基づいて発光素子の発光を制御する制御信号を補正することで、発光素子の分光分布のばらつきに対して、感光体の電位変化量を安定させることができる。
【0012】
また、補正部は、重心波長と、当該重心波長を有する分光分布を示す発光素子で形成した潜像を現像部で現像して得られる画像の濃度との相関関係から、第2の補正値を求めるように構成しても良い。このように、分光分布の重心波長と画像濃度との相関関係から第2の補正値を求めることで、分光分布のばらつきに対して画像濃度をより確実に安定させることができ、良好な画像形成が可能となる。
【0013】
また、第1の補正値に第2の補正値を乗じた値に基づいて、制御信号を補正するように構成しても良い。このように構成することで、発光素子の分光分布のばらつきに対して、感光体の電位変化量を安定させて、良好な画像の形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】ラインヘッドの構造を示す斜視図。
【図4】ラインヘッドの構造を示す部分断面図。
【図5】Yラインヘッド制御回路の構成を示すブロック図。
【図6】感光体の分光感度の一例をグラフとして示した図。
【図7】分光感度比データ記憶部と補正回路とが行う発光制御の説明図。
【図8】分光分布測定の一例を表として示した図。
【図9】分光分布の重心波長の測定結果の一例をグラフで示した図。
【図10】重心波長と画像濃度との相関関係の一例をグラフとして示した図。
【図11】重心波長が660[nm]の発光素子Eで形成される画像の相対濃度を示した図。
【図12】Yラインヘッド制御回路の構成の変形例を示すブロック図。
【図13】Yラインヘッド制御回路に記憶されるデータ等を表1として示した図。
【図14】重心波長vs濃度相関データを表2として示した図。
【図15】ラインヘッドに設けられたヘッドパネルモジュールを示すブロック図。
【図16】発光素子の点灯時間制御の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1実施形態
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部EGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0016】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0017】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0018】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モーターに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0019】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0020】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、長手方向LGDに配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0021】
図3はラインヘッドの構造を示す斜視図である。同図では、ヘッド基板294の裏面側の構成が記載されており、表面側の構成は省略されている。なお、ヘッド基板294が有する2面のうち、同図上側の面を表面とし、同図下側の面を裏面とする。また、図4は、ラインヘッドの構造を示す部分断面図である。これらの図では、主走査方向MDおよび副走査方向SDに直交する方向であって発光素子Eの光の射出方向(換言すれば、ラインヘッド29から感光体ドラム21に向かう方向)に、光軸方向Doaが付されている。
【0022】
ラインヘッド29は、その本体291の内部にガラス基板であるヘッド基板294を備えており、このガラス基板294の裏面294−tには、複数の発光素子Eが主走査方向MD(長手方向LGD)に2行千鳥で並んでいる。各発光素子Eはいわゆるボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である。そして、各発光素子Eは、駆動電流の印加を受けて、光を射出する。
【0023】
また、ヘッド基板294の裏面294−tには、光センサーSCが設けられている(図4)。この光センサーSCは、温度変化や劣化による発光素子Eの光量変化を検出するために設けられており、この光センサーSCの検出結果に基づいて発光素子Eに印加する駆動電流の電流値が補正される。
【0024】
さらに、ヘッド基板裏面294−tに設けられた発光素子Eに対して、屈折率分布型ロッドレンズアレイRLA(以下、レンズアレイRLAと略称する)がヘッド基板表面294−h側から対向する。したがって、発光素子Eの発光面から射出した光はヘッド基板294を透過して、レンズアレイRLAに入射する。こうして発光素子Eから射出した光が、レンズアレイRLAにより正立等倍で結像されて、感光体ドラム21表面にスポットSPが照射される。そして、感光体ドラム21表面のうちスポットSPの照射範囲が感光して、静電潜像が感光体ドラム21の表面に形成される。
【0025】
図1に戻って装置構成の説明を続ける。現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0026】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0027】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0028】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され駆動ローラー82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラーは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0029】
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラー85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0030】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。この下流ガイドローラー86は、一次転写ローラー85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラー85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0031】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラー82と二次転写ローラー121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0032】
二次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0033】
前記した駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラー121のバックアップローラーとしての機能も兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラー121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0034】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラー83と一体的に構成されている。
【0035】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリーがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、各メモリー内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0036】
以上が、画像形成装置の概略構成である。続いて、本実施形態の画像形成装置で実行される、発光素子Eの発光制御について説明する。この発光制御は、ヘッドコントローラーHC内部に各色Y,M,C,K毎に設けられたラインヘッド制御回路CCにより実行される(図2)。そこで、以下では、このラインヘッド制御回路CCの構成および動作について説明する。なお、同回路CCの構成および動作は各色Y,M,C,Kで共通しているので、ここではイエロー(Y)用のYラインヘッド制御回路CCを例にとって説明する。
【0037】
図5は、Yラインヘッド制御回路の構成を示すブロック図である。Yラインヘッド制御回路CCは、補正回路CC1、光量補正データ記憶部CC2および分光感度比データ記憶部CC3から構成されており、メインコントローラーMCから送られてきたイエロー(Y)用のビデオデータVD−Y等に基づいて、発光素子Eの発光期間を示すデータTD−Y(データ信号)と、発光素子Eに供給する駆動電流の電流値ID−Y(電流値信号)とを生成する。
【0038】
光量補正データ記憶部CC2は、光センサーSCの検出結果に基づいて、温度変化や劣化に伴なう発光素子Eの光量を補正するために設けられたものであり、この光量補正データ記憶部CC2と補正回路CC1とが協働して光量補正を実行する。つまり、上述のように、本実施形態では、各発光素子Eからの光を感光体ドラム21表面に照射し、この光の照射部分の電位を変化させることで、感光体ドラム21表面に静電潜像を形成する。この際、感光体ドラム21表面の電位変化量は発光素子Eの光量に依存する。したがって、発光素子Eの光量が温度や劣化に伴なって変化すると、この電位変化量が所望の変化量からずれてしまい、適切な画像が形成できない場合があった。そこで、かかる問題に対応すべく、以下の光量補正が実行される。
【0039】
まず、光量補正を行うために必要なパラメーターがラインヘッド29の工場出荷時に予め測定される。つまり、工場出荷の際に、ラインヘッド29は、光量検出器を用いて各発光素子Eの射出光量を検出する光量測定用ジグに取り付けられる。そして、この光量測定用ジグは、主走査方向MDに並ぶ発光素子Eを順番に発光させて、各発光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…の光量Pg(1)、Pg(2)、…、Pg(n)、…を光量検出器で検出して記憶する。さらに、光量検出器の検出結果の記憶動作と並行して、光量測定用ジグは、各発光素子Eを順次点灯させている間、ラインヘッド29の光センサーSCの検出光量Ph(1)、Ph(2)、…、Ph(n)、…を記憶する。こうして求められたパラメーターPg(n)、Ph(n)から光量補正係数Pg(n)/Ph(n)が各発光素子E毎に算出される。そして、この光量補正係数Pg(n)/Ph(n)が光量補正データ記憶部CC2に記憶された状態で、ラインヘッド29が出荷される。
【0040】
ここで、発光素子Eに付された括弧内の数値は発光素子Eの識別番号であり、主走査方向MDから順番に各発光素子Eに付されている。また、光量Pg(n)は光量測定用ジグの光量検出器が検出した発光素子E(n)の光量を示し、光量Ph(n)はラインヘッド29の光センサーSCが検出した発光素子E(n)の光量を示している。また、以後の説明で用いる、括弧内に識別番号が付されたパラメーター(パラメーターPj(n)等)についても同様である。
【0041】
そして、ラインヘッド29の出荷後において、画像形成装置の電源投入時や画像形成の合間等のタイミングで、光量補正が実行される。つまり、この光量補正では、補正回路CC1が各発光素子Eを順番に発光させるとともに、各発光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…の光量Pj(1)、Pj(2)、…、Pj(n)、…を光センサーSCで検出して記憶する。そして、補正回路CC1は、この光センサーSCの検出光量Pj(n)に光量補正係数Pg(n)/Ph(n)を乗じた値Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)を、発光素子E(n)の実際の光量として推定する。
【0042】
このようにして発光素子E(n)の実際の光量Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)が推定できるため、この推定光量と目標光量とを比較することで、発光素子E(n)の光量の補正量が求まる。そして、この補正量だけ発光素子E(n)の光量を補正するように、発光素子E(n)に供給する駆動電流値が求められる(光量補正)。
【0043】
ところで、発光素子Eからの光照射による感光体ドラム21表面の電位変化量は、発光素子Eの光量のみならず、発光素子Eの分光分布にも依存する。つまり、発光素子Eの製造精度には限界があるため、製造する全ての発光素子Eの分光分布を同じに揃えることは難しい。したがって、発光素子Eによって、分光分布が波長軸方向にシフトしたり、分光分布の形状そのものが変化したりして、発光素子Eの分光分布はばらつく。一方、特許第4115253号公報にも示されているように、一般に感光体の分光感度は光の波長に対して変化する(図6)。したがって、発光素子Eの分光分布がばらつくと、感光体ドラム21の電位変化量が安定しなくなる場合があった。この点について詳述すると次のとおりである。
【0044】
図6は、感光体の分光感度の一例をグラフとして示した図であり、横軸に光の波長[nm]を取り縦軸に感度[m×m/mJ]を取っている。同図では、a−Si(amorphous silicon)、OPC(Organic Photo Conductor)およびSe−Te(セレン−テルル)のそれぞれを材料として用いた、感光体の分光感度が示されている。いずれの感光体の分光感度も光の波長に対して変化しているのが判るが、ここでは、OPC感光体を例に取って説明すると、波長700[nm]付近では、波長が長いほどOPC感光体の分光感度が良く、より少ないエネルギーで電位が変化する(換言すれば、潜像が形成される)したがって、例えば、分光分布が異なる2つの発光素子Eを比較した場合、各発光素子Eの光量(分光分布を波長で積分した値に相当)は同じであっても、長い波長成分をより多く含む分光分布を有する発光素子Eの方が、感光体の電位をより大きく変化させる。このような事情から、上述した発光素子Eの光量補正を行ったとしても、ラインヘッド29の各発光素子Eの分光分布がばらつくと、感光体の電位変化量がまちまちとなってしまい、良好な画像形成ができなくなるおそれがあった。
【0045】
そこで、本実施形態のラインヘッド制御回路CCは、分光感度比データ記憶部CC3を備え、この分光感度比データ記憶部CC3と補正回路CC1とが協働して発光素子Eの発光制御を行なうことで、かかる問題に対応している。
【0046】
図7は、分光感度比データ記憶部と補正回路とが行う発光制御の説明図である。同図で示されるグラフは、横軸に光の波長[nm]を取り縦軸に強度を取って、発光素子E(n)および発光素子E(m)それぞれの分光分布と、感光体ドラム21の分光感度が示されている。なお、図7の感光体ドラム21の分光感度は、図6で例示した感光体の分光感度とは異なるものであり、本実施形態で用いた感光体ドラム21の分光感度である。また、同グラフでは、光センサーSCの分光感度も併記されている。この光センサーSCの分光感度は比較的一定していることが判る。
【0047】
同図に示すように、感光体ドラム21の分光感度は一定ではなく、600[nm]を超えた位から分光感度が低下しているのが判る。したがって、長い波長をより多く含む分光分布を有する発光素子Eほど、変化させる電位変化量が小さくなる。これに対して、同図の例では、発光素子E(n)と発光素子E(m)とはそれぞれ異なる分光分布を有している。つまり、発光素子E(n)、E(m)それぞれの分光分布はピークPKにおいては略一致しているが、発光素子E(n)の分光分布は、発光素子E(m)の分光分布に比べて、長い波長をより多く含んでいる。したがって、発光素子E(n)による電位変化量は、発光素子E(m)による電位変化量と比較して小さくなる傾向にある。そこで、この実施形態では、このような分光感度のばらつきによる電位変化量の変動を抑制するために、分光感度比データ記憶部CC3と補正回路CC1とが、発光素子Eの発光制御を当該発光素子Eの分光分布に基づいて行なう。
【0048】
まず、かかる発光制御を行うために必要なパラメーターがラインヘッド29の工場出荷時に予め測定される。つまり、工場出荷の際に、ラインヘッド29は、分光器を用いて各発光素子Eの分光分布を測定する分光分布測定用ジグに取り付けられる。そして、この分光分布測定用ジグは、主走査方向MDに並ぶ発光素子Eを順番に発光させて、各発光素子E(1)、E(2)、…、E(m)、…、E(n)、…の分光分布を測定する。
【0049】
図8は、分光分布測定の一例を表として示した図である。同表に示すように、分光分布を測定する波長範囲は550[nm]〜850[nm]に設定されている。これは、分光強度が十分に落ちきった波長領域(図7)で分光分布を測定するためである。この場合、分光器の測定波長分解能が10[nm]であれば、31個のデータを取得することとなる。そして、この測定結果から分光分布の重心波長が求められる。具体的には、次の計算式、
【数1】
で重心波長が求められる。こうして、各発光素子E(1)、E(2)、…、E(m)、…、E(n)、…の重心波長G(1)、G(2)、…、G(m)、…、G(n)、…が求められる。
【0050】
図9は、分光分布の重心波長の測定結果の一例をグラフで示した図であり、同グラフは、横軸に発光素子番号nを取り、縦軸に重心波長[nm]を取っている。同図に示すように、グラフ中の矢印で示した範囲では、重心波長が長い方にシフトしており、当該範囲の発光素子Eによる電位変化量は少なくなる。しかも、当該範囲の境界では、分光分布の重心波長が長い発光素子Eにより形成された潜像と、分光分布の重心波長が短い発光素子Eにより形成された潜像とが境界を挟んで隣接することとなる。したがって、かかる分光分布のばらつきを考慮せず形成した潜像を現像した場合、この境界で濃淡差が顕著に出てしまうこととなる。
【0051】
このような問題に対処するために、本実施形態では、各重心波長G(1)、G(2)、…、G(m)、…、G(n)、…での感光体ドラム21の分光感度I(1)、I(2)、…、I(m)、…、I(n)、…が求められる。そして、各発光素子Eのうちから参照用発光素子E(ref)を1個選び、この参照用発光素子E(ref)に対応する分光感度I(ref)と、各発光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…に対応する分光感度I(1)、I(2)、…、I(n)、…との比I(1)/I(ref)、I(2)/I(ref)、…、I(n)/I(ref)、…が分光感度比データとして求められる。そして、この分光感度比データI(1)/I(ref)、I(2)/I(ref)、…、I(n)/I(ref)、…が分光感度比データ記憶部CC3に記憶された状態で、ラインヘッド29が工場出荷される。
【0052】
そして、ラインヘッド29の出荷後の実際の潜像形成動作では、分光感度比データ記憶部CC3に記憶された分光感度比データに基づいて、補正回路CC1が発光素子Eの発光制御を実行する。つまり、光センサーSCの検出値から推定した光量Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)にさらに分光感度比データI(n)/I(ref)を乗じた光量で発光素子E(n)が発光するように、駆動電流値ID−Yが求められる。そして、ビデオデータVD−Yから求めたデータTD−Yが示す発光期間だけ、電流値ID−Yの駆動電流を発光素子E(n)に供給して、発光素子E(n)を発光させる。かかる発光制御を各発光素子Eに対して実行することで、各発光素子Eの光照射による電位変化量を安定させることが可能となる。
【0053】
以上のように、第1実施形態では、発光素子Eの光量を検出する光センサーSCの検出結果から求められた推定光量Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)(第1の補正値)のみならず、発光素子Eの分光分布から求められる分光感度比データI(n)/I(ref)(第2の補正値)にも基づいて、発光素子Eの駆動電流値ID−Y(制御信号)が補正される。その結果、発光素子Eの分光分布のばらつきに対して、感光体ドラム21の電位変化量を安定させて、良好な画像を形成することが可能となっている。
【0054】
また、第1実施形態は、分光分布の重心波長での感光体ドラム21の分光感度に基づいて駆動電流値ID−Y(制御信号)を補正するように構成しており好適である。つまり、分光分布の重心波長は分光分布のばらつきに応じて変化する傾向にあるため。したがって、この分光分布の重心波長での感光体ドラム21の分光感度に基づいて、発光素子Eの駆動電流値ID−Y(制御信号)を補正することで、発光素子Eの分光分布のばらつきに対して、感光体ドラム21の電位変化量を安定させることができる。
【0055】
また、第1実施形態のように、発光素子Eとして有機EL素子を用いた構成に対しては、本発明を適用することが特に好適である。つまり、有機EL素子は、LED(Light Emitting Diode)等のその他の素子と比較して分光分布のばらつきが大きいため、上述した問題が発生しやすい。そこで、発光素子Eに有機EL素子を用いた構成に対しては、本発明を適用して良好な画像形成の実現を図ることが好適となる。
【0056】
第2実施形態
第1実施形態のラインヘッド制御回路CCは、分光感度比データ記憶部CC3に記憶した分光感度比データに基づいて駆動電流の電流値ID−Y等を補正していた。これに対して、第2実施形態のラインヘッド制御回路CCは、分光分布の重心波長と画像濃度との相関関係を記憶しておき、この相関関係に基づいて駆動電流の電流値ID−Y等を補正する。以下、図10〜図14を用いて第2実施形態について詳述する。
【0057】
図10は、重心波長と画像濃度との相関関係の一例をグラフとして示した図であり、横軸に分光分布の重心波長[nm]を取り、縦軸に相対濃度を取っている。この縦軸の相対濃度は、重心波長が660[nm]の分光分布を有する光で形成されるハーフトーン画像の濃度に対して、重心波長が横軸の値である分光分布を有する光で形成されるハーフトーン画像の濃度が相対比で示されている。同図から、重心波長が大きくなるに従って、相対濃度が増加していることが判る。
【0058】
図11は、重心波長が660[nm]の分光分布の光を発光する発光素子Eに対して、横軸の相対電流に対応する駆動電流を流した場合に形成されるハーフトーン画像の相対濃度を示した図である。同図の横軸では、光センサーSCの検出値に基づく光量補正のみを行った際の電流値を「1」とした場合の駆動電流値ID−Y等が示されている。また、同図の縦軸では、相対電流「1」で発光素子Eを駆動した場合に形成されるハーフトーン画像濃度を「1」とした場合のハーフトーン画像濃度が示されている。ここで、相対電流をxとし、相対濃度をyとすると、関係式y=4x−3が成立している。
【0059】
第2実施形態では、発光素子Eの分光分布の重心波長によらず画像濃度を一定にするために、図10に示した相関関係をラインヘッド制御回路CCに記憶しておき、この相関関係に基づいて駆動電流値ID−Y等が補正される。より具体的に例を挙げると、基準重心波長650[nm]の分光分布を有する光で形成されるハーフトーン画像の濃度(基準濃度)に、各重心波長の分光分布を有する光で形成されるハーフトーン画像の濃度を一致させるために、駆動電流値ID−Yが補正される。図10によると、このように一致させるためには、例えば重心波長660[nm]の分光分布の光によるハーフトーン画像の濃度が相対濃度比で0.97に落ちるように、駆動電流値ID−Yを補正しなければならない。そこで、上述した関係式y=4x−3から相対電流を求めると、(3+0.97)/4=0.9925となる。そこで、光センサーSCの検出値に基づく光量補正のみから求められる電流値に、この係数(=0.9925)を掛けた電流値を駆動電流値ID−Y等とすることで、発光素子Eの分光分布の重心波長に依らず画像濃度を一定にすることが可能となる。
【0060】
かかる駆動電流値ID−Yの補正を、図12、図13および図14を用いて説明すると次のとおりである。ここで、図12はYラインヘッド制御回路の構成の変形例を示すブロック図である。図13は、Yラインヘッド制御回路に記憶されるデータおよび当該データから算出される値を表1として示した図である。図14は、重心波長vs濃度相関データを表2として示した図である。なお、ここではイエロー(Y)のみについて説明を行なうが、他の色についても同様である。
【0061】
光量補正後発光電流は、光センサーSCの検出値に基づく光量補正のみを行った際の各発光素子Eへの駆動電流値[uA]であり、第1実施形態と同様の要領で求められて光量補正データ記憶部CC2に記憶されている。重心波長は、第1実施形態と同様の要領でラインヘッド29の工場出荷時に各発光素子E毎に求められて、CC4,重心波長データ記憶部CC4に記憶されている。印字濃度は、表1の重心波長と表2の印字濃度とから、補正回路CC1が各発光素子E毎に求める値である。濃度比計算値は、表1の印字濃度で基準濃度0.592(基準重心波長650[nm]の光で形成されるハーフトーン画像の濃度)を割ることで、補正回路CC1が各発光素子E毎に求める値である。また、電流補正係数は、前述の図11で説明したように、(3+濃度比計算値)/4で求められる係数である。また、波長補正後発光電流は、表1の光量補正後発光電流に表1の電流補正係数を乗じることで、補正回路CC1が各発光素子E毎に求める値である。
【0062】
つまり、補正回路CC1は、重心波長データ記憶部CC4から、各発光素子Eの分光分布の重心波長を読み出す。そして、この読み出した重心波長と、重心波長vs濃度相関データ記憶部CC5に記憶されている相関データ(表2)から、重心波長に対応する印字濃度を発光素子E毎に求める。さらに、この印字濃度で基準濃度を割った濃度比計算値を、光量補正後発光電流に乗じて波長補正後発光電流を、駆動電流値ID−Yとして求める。そして、この駆動電流値ID−Yの電流が発光素子Eに印加される。
【0063】
以上のように、第2実施形態では、発光素子Eの光量を検出する光センサーSCの検出結果から求められた推定光量Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)(第1の補正値)のみならず、発光素子Eの分光分布から求められる濃度比計算値(第2の補正値)にも基づいて、発光素子Eの駆動電流値ID−Y(制御信号)が補正される。その結果、発光素子Eの分光分布のばらつきに対して、感光体ドラム21の電位変化量を安定させて、良好な画像を形成することが可能となっている。
【0064】
また、第2実施形態は、重心波長と、当該重心波長を有する分光分布を示す発光素子Eで形成した潜像を現像部25で現像して得られる画像の濃度との相関関係(表2)から、濃度比計算値(第2の補正値)を求めており好適である。つまり、このように、分光分布の重心波長と画像濃度との相関関係から濃度比計算値を求め、この濃度補正値に基づいて駆動電流値ID−Y(制御信号)を補正することで、分光分布のばらつきに対して画像濃度をより確実に安定させることができ、良好な画像形成が可能となる。
【0065】
第3実施形態
ところで、上記第1・第2実施形態では、上記実施形態では、分光感度比データI(n)/I(ref)あるいは濃度比計算値に基づいて、駆動電流値ID−Yを補正していた。しかしながら、発光素子Eの発光期間を示すデータTD−Yを、分光感度比データI(n)/I(ref)あるいは濃度比計算値に基づいて補正するようにしても良い。
【0066】
図15は、ラインヘッドに設けられたヘッドパネルモジュールの構成を示すブロック図であり、このヘッドパネルモジュールHPMがデータTD−Yに基づいて発光素子を発光させる。なお、ヘッドパネルモジュールHPMは、各色Y,M,C,Kのラインヘッド29それぞれに設けられているが、ヘッドパネルモジュールHPMの構成は各色で共通するので、ここではイエロー(Y)のYラインヘッド29に設けられたヘッドパネルモジュールHPMを例示して説明する。
【0067】
ヘッドパネルモジュールHPMには、適切な発光タイミングで発光素子Eに駆動電流を供給するためのドライバーDVが設けられている。このドライバーDVには、データTD−Yを格納するためのシフトレジスタと、データTD−Yをラッチするためのラッチ回路と、ラッチされたデータTD−Yに応じて発光素子Eの点灯時間を制御する点灯制御回路が内蔵されている。
【0068】
各ドライバーDVには、シフトレジスタの起動のきっかけを与えるStartパルスが入力される。なお、このStartパルスは、メインコントローラーMCからの同期信号Syncに基づいてYラインヘッド制御回路CCが生成してドライバーDVに供給する。そして、Startパルスを受けて起動したシフトレジスタが、Data Clockに同期してデータTD−Yをシフトさせることで、1ライン分のデータTD−Yが複数のドライバーDVのシフトレジスタに渡って格納される。その後、Latch信号によりラッチされたデータTD−Yが示す点灯時間の間、PWM Clockに同期して電流値ID−Yの駆動電流が発光素子Eに供給される。こうして、各発光素子Eの点灯時間が制御される(図16)。ここで、図16は、発光素子の点灯時間制御の一例を示すタイミングチャートであり、1つのドライバーDVの48出力分のデータのラッチタイミングと、48出力それぞれに接続されたある1つの発光素子Eの発光タイミングを示している。同図の例では、ある発光素子EがデータTD(1)の対応するデータに応じて時間Te(1)の間点灯し、その後、データTD(1)に続くデータTD(2)の対応するデータに応じて時間Te(2)の間点灯するといった点灯動作を、実行する場合が示されている。この際、各発光DutyはTe(1)/Th、Te(2)/Th、…で与えられ、この発光Dutyを増減させることで、発光素子Eにより感光体ドラム21表面に与えるエネルギー量を調整することができる。ここで、期間Thは、1ラインの潜像を形成するのに要する期間(1ライン走査期間)である。
【0069】
そこで、この実施形態では、分光感度比データI(n)/I(ref)あるいは濃度比計算値に基づいて、駆動電流値ID−Yを補正する代わりに、発光素子Eの発光期間を示すデータTD−Yを補正し、これにより発光素子Eの発光Dutyを調整する。かかる発光制御を各発光素子Eに対して実行することで、各発光素子Eの光照射による電位変化量を安定させることが可能となる。
【0070】
以上のように、第3実施形態では、発光素子Eの光量を検出する光センサーSCの検出結果から求められた推定光量Pj(n)×Pg(n)/Ph(n)(第1の補正値)のみならず、発光素子Eの分光分布から求められる分光感度比あるいは濃度比計算値(第2の補正値)にも基づいて、データTD−Y(制御信号)が補正され、この補正後のデータTD−Yに応じて発光素子Eが発光する。その結果、発光素子Eの分光分布のばらつきに対して、感光体ドラム21の電位変化量を安定させて、良好な画像を形成することが可能となっている。
【0071】
その他
このように、上記実施形態では、ラインヘッド29あるいはラインヘッド29とヘッドコントローラーHCが協働して本発明の「露光ヘッド」として機能し、感光体ドラム21が本発明の「感光体」に相当し、ラインヘッド制御回路CCが本発明の「発光制御部」および「補正部」に相当し、現像部25が本発明の「現像部」に相当し、光センサーSCが本発明の「検出部」に相当している。また、第1・第2実施形態では、駆動電流値ID−Yが本発明の「制御信号」に相当し、第3実施形態では、データTD−Yが本発明の「制御信号」に相当している。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記第1・第2実施形態では、発光素子Eに駆動電流を供給する具体的な構成、すなわち、第3実施形態でのヘッドパネルモジュールHPMのような構成については言及しなかった。しかしながら、第1・第2実施形態を実施するにあたっては、ラインヘッド29にヘッドパネルモジュールHPMを設けて、このヘッドパネルモジュールに補正後の駆動電流値ID−Y等を記憶しておけば、各発光素子Eをこの補正後の駆動電流値ID−Yで発光させることができる。
【0073】
また、上記第2実施形態では、係数0.09925を演算により求める例を説明したが、相対濃度比に対する係数を予めテーブル化して記憶しておき、相対濃度比に対する係数を適宜読み出して、光量補正電流値に掛けて駆動電流値を補正しても良い。
【0074】
また、上記第3実施形態では、ラインヘッド制御回路CCとヘッドパネルモジュールHPMとを別体で構成した場合について説明したが、これらを一体の回路で実現しても良い。
【0075】
また、上記実施形態では、発光素子Eとしてボトムエミッション型の有機EL素子が用いられている。しかしながら、トップエミッション型の有機EL素子を発光素子Eとして用いても良い。
【0076】
また、本発明に用いられるラインヘッド29としては、上述のような屈折率分布型のロッドレンズアレイRLAを光学系として備えたものに限られない。よって、例えば、特開2008−36937号公報に記載のラインヘッドを用いることもできる。つまり、同文献のラインヘッドでは、凸レンズで構成される結像光学系がアレイ状に配置されており、各結像光学系に対向して、所定個数毎に発光素子をグループ化した発光素子グループが配置されている。
【符号の説明】
【0077】
21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 HC…ヘッドコントローラー、 CC…ヘッド制御回路、 ID−Y,ID−M,ID−C,ID−K…駆動電流値、 TD−Y,TD−M,TD−C,TD−K…データ、 SC…光センサー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子および前記発光素子を制御信号に応じて発光させる発光制御部を有する露光ヘッドと、
前記露光ヘッドの前記発光素子が発光した光に感光して、潜像が形成される感光体と、
前記感光体に形成された前記潜像を現像する現像部と、
前記発光素子の光量を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果から求められる第1の補正値および前記発光素子の分光分布から求められる第2の補正値に基づいて、前記制御信号を補正する補正部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記分光分布の重心波長での前記感光体の前記分光感度に基づいて前記制御信号を補正する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記重心波長と、当該重心波長を有する分光分布を示す前記発光素子で形成した潜像を前記現像部で現像して得られる画像の濃度との相関関係から、前記第2の補正値を求める請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の補正値に前記第2の補正値を乗じた値に基づいて、前記制御信号を補正する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
発光素子の光量を検出する検出部の検出結果から求められる第1の補正値および前記発光素子の分光分布から求められる第2の補正値に基づいて、前記発光素子の発光を制御する制御信号を補正する第1の工程と、
前記第1の工程で補正された前記制御信号に応じて発光する前記発光素子からの光に前記感光体を感光させて、前記感光体に潜像を形成する第2の工程と、
前記第2の工程で形成された前記潜像を現像する第3の工程と、
を備えたことを特徴とする画像形成方法。
【請求項1】
発光素子および前記発光素子を制御信号に応じて発光させる発光制御部を有する露光ヘッドと、
前記露光ヘッドの前記発光素子が発光した光に感光して、潜像が形成される感光体と、
前記感光体に形成された前記潜像を現像する現像部と、
前記発光素子の光量を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果から求められる第1の補正値および前記発光素子の分光分布から求められる第2の補正値に基づいて、前記制御信号を補正する補正部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記分光分布の重心波長での前記感光体の前記分光感度に基づいて前記制御信号を補正する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記重心波長と、当該重心波長を有する分光分布を示す前記発光素子で形成した潜像を前記現像部で現像して得られる画像の濃度との相関関係から、前記第2の補正値を求める請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の補正値に前記第2の補正値を乗じた値に基づいて、前記制御信号を補正する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
発光素子の光量を検出する検出部の検出結果から求められる第1の補正値および前記発光素子の分光分布から求められる第2の補正値に基づいて、前記発光素子の発光を制御する制御信号を補正する第1の工程と、
前記第1の工程で補正された前記制御信号に応じて発光する前記発光素子からの光に前記感光体を感光させて、前記感光体に潜像を形成する第2の工程と、
前記第2の工程で形成された前記潜像を現像する第3の工程と、
を備えたことを特徴とする画像形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−83963(P2011−83963A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238254(P2009−238254)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]