説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】表面に規則的な凹凸を設けたトナー担持ローラを使用する画像形成装置および画像形成方法において、トナー担持ローラに担持されたトナーを効率よく現像に寄与させて十分な画像濃度を得る。
【解決手段】交流現像バイアスの印加により、感光体22と現像ローラ44との間の現像ギャップDGに形成される交番電界Eによってトナーが往復運動する。トナーが一往復する間に現像ローラ44が移動する距離V/F(Vは現像ローラ周速、Fは現像バイアス周波数)と、現像ローラ44表面における周方向の凸部441の配列ピッチPとが等しくなるように各パラメータを設定する。凹部442から飛翔したトナーT1が一往復すると他の凹部に飛び込んでそこに担持されたトナーを叩き出すので、凹部442に担持されたトナーを効率よく飛翔させ現像に寄与させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面に規則的な凹凸を設けたトナー担持ローラを用いて静電潜像をトナーにより現像する画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
像担持体上に担持された静電潜像をトナーにより現像するための現像装置およびこれを備えた画像形成装置においては、略円筒形状に形成され表面にトナーを担持するトナー担持ローラを像担持体に対向配置したものが広く使用されている。本願出願人は、このようなトナー担持ローラの表面に担持されるトナーの特性を改善するため、円筒形状に形成されたローラの表面に規則的に配置された凸部と、該凸部の周囲を取り囲む凹部とを設けたトナー担持ローラを採用した画像形成装置について先に開示した(特許文献1参照)。このような構造は、表面の凹凸パターンが管理されて均一であるために、ローラ表面に担持されるトナー層の厚さや帯電量等を制御しやすいという利点がある。
【0003】
【特許文献1】特開2007−233195号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなトナー担持ローラ表面ではトナーは主として凹部に担持されるため、例えば表面をブラスト加工されたトナー担持ローラに比べると、トナー搬送に寄与する実効的なトナー担持ローラ表面積が小さくなっている。これに伴うトナー搬送量の低下を補うべく凹凸の高低差を大きくしたとしても、凹部の深部に担持されたトナーは現像に寄与しにくいため、現像効率の点では十分でない。そのため、形成される画像の濃度が不足する場合がある。
【0005】
このように、表面に規則的な凹凸を設けたトナー担持ローラを使用する画像形成装置および画像形成方法においては、トナー担持ローラに担持されたトナーを如何に効率よく現像に寄与させ現像効率を高めるかが、十分な画像濃度を得るために解決されるべき課題となっている。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、表面に規則的な凹凸を設けたトナー担持ローラを使用する画像形成装置および画像形成方法において、トナー担持ローラに担持されたトナーを効率よく現像に寄与させて十分な画像濃度を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、表面に静電潜像を担持する像担持体と、前記像担持体と対向配置され、表面に帯電トナーを担持しながら所定の回転方向に回転して前記トナーを前記像担持体との対向位置に搬送するトナー担持ローラと、前記トナー担持ローラに現像バイアスとしての交流電圧を印加することで前記静電潜像を前記トナーにより現像させるバイアス印加手段とを備え、前記トナー担持ローラの表面には、周方向に一定のピッチで配列された複数の凸部およびそれを取り囲む凹部からなる周期的な凹凸が形成されており、その配列ピッチをP、前記現像バイアスの周波数をF、前記トナー担持ローラ表面の周方向の移動速度をVとしたとき、VをFで除した商がPの自然数倍または略自然数倍であることを特徴としている。
【0008】
すなわち、この発明では、任意の自然数nについて、下記の式:
V/F ≒ n・P
が成立している。この関係式の左辺は、現像バイアスの1周期に相当する時間(1/F)の間に速度Vで移動するトナー担持ローラ表面が進む距離を表している。したがってこの関係式は、現像バイアスの1周期の間にトナー担持ローラ表面が進む距離が、凸部の配列ピッチPの自然数倍に等しいまたは略等しいことを意味している。つまり、この発明は、トナー担持ローラ表面の凸部の配列ピッチとその周速、現像バイアス周波数の三者の関係を規定した点に特徴を有するものである。
【0009】
現像バイアスとしてトナー担持ローラに印加される交流電圧により形成される交番電界の作用によって、帯電トナーは像担持体表面とトナー担持ローラ表面との間で往復駆動される。上記関係が成立しているとき、トナー担持ローラ表面の凹部から離昇したトナーが再びトナー担持ローラ表面に戻ってくるまでに、トナー担持ローラの表面は凸部の配列ピッチPのほぼ自然数倍だけ移動している。そのため、凹部から出たトナーは別の凹部に向かって飛び込むことになるが、このトナーは電界により加速されているため、凹部に残っていたトナーを叩き出す作用をする。こうして叩き出されたトナーはさらに別の凹部に飛び込んでさらなるトナーの飛び出しを誘起する。
【0010】
このように、この発明では、現像バイアスによるトナーの往復運動と、トナー担持ローラ表面の移動とを同期させることによって、凹部に担持されているトナーを効率よく離昇させてより多くのトナーを現像に寄与させることができ、その結果、現像効率を高めて十分な画像濃度で画像を形成することができる。
【0011】
なお、本発明では、理想的にはVをFで除した商がPの自然数倍である、つまり上記関係式において等号が成立しているのが望ましいことはもちろんであるが、これより若干ずれていてもよい。その理由は以下のとおりである。すなわち、上記関係式において等号から少しずれた条件では、トナーの往復移動が繰り返されるうちに、凹部から出たトナーが凹部に戻らず凸部に付着してしまう確率が次第に増加することになる。しかしながら、トナーの往復運動は像担持体とトナー担持ローラとが最近接した小さな領域内でのみ起こるものであるから、トナーの往復回数も有限である。本発明の技術思想によれば、この有限回数の往復運動の間だけ凹部から凹部への移動が行われればよいので、上記関係式において厳密に等号が成立していなくてもよい。
【0012】
また、凹部からのトナーの飛び出しを最も効率よく行わせるためには、トナーの往復回数をできるだけ大きくするのが好ましい。すなわち、上記関係式においてnの値が1である場合、本発明の効果が最も顕著となる。
【0013】
また、前記像担持体と前記トナー担持ローラとが所定のギャップを隔てて対向配置されている画像形成装置において、本発明の効果が顕著である。このような装置では、トナーが像担持体とトナー担持ローラとのギャップを往復飛翔することによって現像が行われるが、凹部から飛翔したトナーが他の凹部のトナー飛翔を誘起することで高い現像効率が得られる。
【0014】
また、前記トナー担持ローラの回転方向において前記対向位置よりも上流側で前記トナー担持ローラ表面に当接して前記凸部の頂面へのトナー付着を規制する規制手段をさらに備えてもよい。このような構成によれば、トナーの担持はほぼ凹部のみに限定されるため、現像効率を高めることが非常に重要である。このような構成の装置に本発明を適用することにより、現像効率を高めて十分な画像濃度を得ることができる。
【0015】
また、前記トナー担持ローラが内部に前記トナーを貯留するハウジングに回転自在に軸着され、前記トナー担持ローラの回転方向において前記対向位置よりも下流側で前記トナー担持ローラ表面と前記ハウジングとの間隙には前記ハウジングからのトナー漏れを防止するシール部材が介挿されてもよい。このような構成によれば、凸部に付着したトナーが凸部とシール部材との間で圧迫されて、シール部材やトナー担持ローラに固着してしまうことがある。しかしながら、本発明によれば凹部に担持されていたトナーが凹部に戻るため、像担持体とトナー担持ローラとの対向位置よりも下流側において凸部に付着するトナーが少なくなっている。そのため、このような固着を起こしにくいという効果がある。
【0016】
また、この発明にかかる画像形成装置の他の態様は、表面に静電潜像を担持する像担持体と、前記像担持体と対向配置され、表面に帯電トナーを担持しながら所定の回転方向に回転して前記トナーを前記像担持体との対向位置に搬送するトナー担持ローラと、前記トナー担持ローラに現像バイアスとしての交流電圧を印加することで前記静電潜像を前記トナーにより現像させるバイアス印加手段とを備え、前記トナー担持ローラの表面には、周方向に一定のピッチで配列された複数の溝が設けられており、その配列ピッチをP、前記現像バイアスの周波数をF、前記トナー担持ローラ表面の周方向の移動速度をVとしたとき、VをFで除した商がPの自然数倍または略自然数倍であることを特徴としている。
【0017】
先の説明では凸部の配列ピッチと、トナー担持ローラの周速、現像バイアス周波数の三者の関係について述べた。これとは別に、凹部をトナー担持ローラに周期的に設けられた溝と見ることもでき、そのように考えれば溝の配列ピッチとトナー担持ローラの周速、現像バイアス周波数の関係として本発明を規定することもできる。その作用効果は上記したものと同じである。なお、この溝は周方向に直交する方向、すなわちトナー担持ローラの回転軸に平行な軸方向に沿って延びるものに限定されない。
【0018】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するため、像担持体の表面に静電潜像を形成する工程と、表面に帯電トナーを担持しながら所定の回転方向に回転するトナー担持ローラを前記像担持体と対向配置し、前記トナー担持ローラに現像バイアスとしての交流電圧を印加することで前記静電潜像を前記トナーにより現像する工程とを備え、前記トナー担持ローラの表面には、周方向に一定のピッチで配列された複数の凸部およびそれを取り囲む凹部からなる周期的な凹凸を形成しておくとともに、その配列ピッチをP、前記現像バイアスの周波数をF、前記トナー担持ローラ表面の周方向の移動速度をVとしたとき、VをFで除した商がPの自然数倍または略自然数倍であることを特徴としている。このように構成された発明では、上記した画像形成装置の発明と同様に、高い現像効率で、十分な画像濃度の画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1はこの発明を適用した画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナー(現像剤)を重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像信号がメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11からの指令に応じてエンジンコントローラ10に設けられたCPU101がエンジン部EG各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、シートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0020】
このエンジン部EGでは、感光体22が図1の矢印方向D1に回転自在に設けられている。また、この感光体22の周りにその回転方向D1に沿って、帯電ユニット23、ロータリー現像ユニット4およびクリーニング部25がそれぞれ配置されている。帯電ユニット23は所定の帯電バイアスを印加されており、感光体22の外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。クリーニング部25は一次転写後に感光体22の表面に残留付着したトナーを除去し、内部に設けられた廃トナータンクに回収する。これらの感光体22、帯電ユニット23およびクリーニング部25は一体的に感光体カートリッジ2を構成しており、この感光体カートリッジ2は一体として装置本体に対し着脱自在となっている。
【0021】
そして、この帯電ユニット23によって帯電された感光体22の外周面に向けて露光ユニット6から光ビームLが照射される。この露光ユニット6は、外部装置から与えられた画像信号に応じて光ビームLを感光体22上に露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。
【0022】
こうして形成された静電潜像は現像ユニット4によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では、現像ユニット4は、図1紙面に直交する回転軸中心に回転自在に設けられた支持フレーム40、支持フレーム40に対して着脱自在のカートリッジとして構成されてそれぞれの色のトナーを内蔵するイエロー用の現像器4Y、シアン用の現像器4C、マゼンタ用の現像器4M、およびブラック用の現像器4Kを備えている。この現像ユニット4は、エンジンコントローラ10により制御されている。そして、このエンジンコントローラ10からの制御指令に基づいて、現像ユニット4が回転駆動されるとともにこれらの現像器4Y、4C、4M、4Kが選択的に感光体22と所定のギャップを隔てて対向する所定の現像位置に位置決めされると、当該現像器に設けられて選択された色のトナーを担持する現像ローラ44が感光体22に対し対向配置され、その対向位置において現像ローラ44から感光体22の表面にトナーを付与する。これによって、感光体22上の静電潜像が選択トナー色で顕像化される。
【0023】
図3は現像器の外観を示す図である。また、図4は現像器の構造および現像バイアス波形を示す図である。より詳しくは、図4(a)は現像器の構造を示す断面図である。また、図4(b)は現像バイアス波形と感光体表面電位との関係を示す図である。各現像器4Y、4C、4M、4Kはいずれも同一構造を有している。したがって、ここでは、現像器4Kの構成について図3および図4(a)を参照しながらさらに詳しく説明するが、その他の現像器4Y、4C、4Mについてもその構造および機能は同じである。
【0024】
この現像器4Kでは、その内部に非磁性一成分トナーTを収容するハウジング41に供給ローラ43および現像ローラ44が回転自在に軸着されており、当該現像器4Kが上記現像位置に位置決めされると、現像ローラ44が感光体2と現像ギャップDGを隔てて対向位置決めされるとともに、これらのローラ43、44が本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転する。供給ローラ43は例えば発泡ウレタンゴム、シリコンゴムなどの弾性材料により円筒状に形成されている。また、現像ローラ44は、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属または合金により円筒状に形成されている。そして、2つのローラ43、44が接触しながら回転することでトナーが現像ローラ44の表面に擦り付けられて所定厚みのトナー層が現像ローラ44表面に形成される。この実施形態では負帯電トナーを用いるが、正帯電トナーであってもよい。
【0025】
ハウジング41の内部空間は隔壁41aによって第1室411および第2室412に仕切られている。供給ローラ43および現像ローラ44はともに第2室412に設けられており、これらのローラの回転に伴って第2室412内のトナーが流動し攪拌されながら現像ローラ44の表面に供給される。一方、第1室411に貯留されているトナーは、供給ローラ43および現像ローラ44とは隔離されているので、これらの回転によっては流動しない。このトナーは、現像ユニット4が現像器を保持したまま回転することによって、第2室412に貯留されたトナーと混合され攪拌される。
【0026】
このように、この現像器では、ハウジング内部を2室に仕切り、供給ローラ43および現像ローラ44の周囲をハウジング41の側壁および隔壁41aで囲み比較的容積の小さい第2室412を設けることにより、トナー残量が少なくなった場合でも、トナーが効率よく現像ローラ44の近傍に供給されるようにしている。また、第1室411から第2室412へのトナー供給およびトナー全体の攪拌を現像ユニット4の回転によって行うようにすることで、現像器内部にトナー攪拌のための攪拌部材(オーガ)を省いたオーガレス構造を実現している。
【0027】
また、この現像器4Kでは、現像ローラ44の表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード46が配置されている。この規制ブレード46は、ステンレスやリン青銅などの弾性を有する板状部材461と、板状部材461の先端部に取り付けられたシリコンゴムやウレタンゴムなどの樹脂部材からなる弾性部材462とで構成されている。この板状部材461の後端部はハウジング41に固着されており、図4の矢印に示す現像ローラ44の回転方向D4において、板状部材461の先端部に取り付けられた弾性部材462が板状部材461の後端部よりも上流側に位置するように配設されている。そして、その弾性部材462が現像ローラ44表面に弾性的に当接することで規制ニップを形成し、現像ローラ44の表面に形成されるトナー層を最終的に所定の厚みに規制する。
【0028】
このようにして現像ローラ44の表面に形成されたトナー層は、現像ローラ44の回転によって順次、その表面に静電潜像が形成されている感光体2との対向位置に搬送される。そして、エンジンコントローラ10に制御されるバイアス用電源140からの現像バイアスが現像ローラ44に印加される。図4(b)に示すように、感光体22の表面電位Vsは、帯電ユニット23により均一に帯電された後露光ユニット6からの光ビームLの照射を受けた露光部では残留電位Vr程度にまで低下し、光ビームLが照射されなかった非露光部ではほぼ均一の電位Voとなっている。一方、現像ローラ44に与えられる現像バイアスVbは直流電位Vaveを重畳した矩形波交流電圧であり、そのピーク間電圧を符号Vppにより表す。このような現像バイアスVbが印加されることにより、現像ローラ44上に担持されたトナーは現像ギャップDGにおいて飛翔して感光体22の表面各部にその表面電位Vsに応じて部分的に付着し、こうして感光体22上の静電潜像が当該トナー色のトナー像として顕像化される。
【0029】
現像バイアス電圧Vbとしては、例えば、ピーク間電圧Vppが1500Vで後述する周波数を有する矩形波電圧を用いることができる。また、その直流成分Vaveは、感光体22の残留電位Vrとの電位差がいわゆる現像コントラストとなり画像濃度に影響を与えるので、所定の画像濃度を得るために必要な値とすることができる。
【0030】
さらに、ハウジング41には、現像ローラ44の回転方向において感光体22との対向位置よりも下流側で現像ローラ44表面に圧接されたシール部材47が設けられている。シール部材47は、ポリエチレン、ナイロンまたはフッ素樹脂などの柔軟性を有する樹脂材料により形成され、現像ローラ44の回転軸に平行な方向Xに沿って延びる帯状のフィルムであり、長手方向Xに直交する短手方向(現像ローラ44の回転方向に沿った方向)における一方端部がハウジング41に固着されるとともに、他方端部が現像ローラ44表面に当接されている。他方端部は現像ローラ44の回転方向D4における下流側に向かうように、いわゆるトレイル方向に現像ローラ44に当接されており、感光体22との対向位置を通過した現像ローラ44表面に残留しているトナーをハウジング41内に案内するともに、ハウジング内のトナーが外部へ漏れ出すのを防止している。
【0031】
図5は現像ローラおよびその表面の部分拡大図を示す図である。現像ローラ44は略円筒形のローラ状に形成されており、その長手方向の両端にはローラと同軸にシャフト440が設けられており、該シャフト440が現像器本体により軸支されて現像ローラ44全体が回転自在となっている。現像ローラ44表面のうちその中央部44aには、図5の部分拡大図(点線円内)に示すように、規則的に配置された複数の凸部441と、それらの凸部441を取り囲む凹部442とが設けられている。
【0032】
後の説明のために、現像ローラ44の周方向、つまり現像ローラ44の周面の移動方向における凸部441の配列ピッチを符号Pにより表す。すなわち、現像ローラ44表面は、その周方向に沿って一定のピッチPで等間隔に凸部441を配置してなる凸部列を、現像ローラ44の軸方向に沿って等間隔に複数配置した構造を有している。
【0033】
複数の凸部441のそれぞれは、図5紙面の手前側に向けて突出しており、各凸部441の頂面は、現像ローラ44の回転軸と同軸である単一の円筒面の一部をそれぞれ成している。また、凹部442は凸部441の周りを網目状に取り囲む連続した溝となっており、凹部442全体も現像ローラ44の回転軸と同軸かつ凸部のなす円筒面とは異なる1つの円筒面をなす。そして、凸部441とそれを取り囲む凹部442との間は緩やかな側面443によって繋がれている。すなわち、該側面443の法線は現像ローラ44の半径方向外向き(図において上方)、つまり現像ローラ44の回転軸から遠ざかる方向の成分を有する。
【0034】
図1に戻って画像形成装置の説明を続ける。上記のようにして現像ユニット4で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。転写ユニット7は、複数のローラ72〜75に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラ73を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向D2に回転させる駆動部(図示省略)とを備えている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体22上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト71上に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、カセット8から1枚ずつ取り出され搬送経路Fに沿って二次転写領域TR2まで搬送されてくるシートS上にカラー画像を二次転写する。
【0035】
このとき、中間転写ベルト71上の画像をシートS上の所定位置に正しく転写するため、二次転写領域TR2にシートSを送り込むタイミングが管理されている。具体的には、搬送経路F上において二次転写領域TR2の手前側にゲートローラ81が設けられており、中間転写ベルト71の周回移動のタイミングに合わせてゲートローラ81が回転することにより、シートSが所定のタイミングで二次転写領域TR2に送り込まれる。
【0036】
また、こうしてカラー画像が形成されたシートSは定着ユニット9によりトナー像を定着され、排出前ローラ82および排出ローラ83を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部89に搬送される。また、シートSの両面に画像を形成する場合には、上記のようにして片面に画像を形成されたシートSの後端部が排出前ローラ82後方の反転位置PRまで搬送されてきた時点で排出ローラ83の回転方向を反転し、これによりシートSは反転搬送経路FRに沿って矢印D3方向に搬送される。そして、ゲートローラ81の手前で再び搬送経路Fに乗せられるが、このとき、二次転写領域TR2において中間転写ベルト71と当接し画像を転写されるシートSの面は、先に画像が転写された面とは反対の面である。このようにして、シートSの両面に画像を形成することができる。
【0037】
また、図2に示すように、各現像器4Y,4C,4Mおよび4Kには該現像器の製造ロットや使用履歴、内蔵トナーの残量などに関するデータを記憶するメモリ91〜94がそれぞれ設けられている。さらに、各現像器4Y,4C,4M、4Kには無線通信器49Y、49C、49M、49Kがそれぞれ設けられている。そして、必要に応じて、これらが選択的に本体側に設けられた無線通信器109と非接触にてデータ通信を行い、インターフェース105を介してCPU101と各メモリ91〜94との間でデータの送受を行って該現像器に関する消耗品管理等の各種情報の管理を行っている。なお、この実施形態では、無線通信等の電磁的手段を用いて非接触にてデータ送受を行っているが、本体側および各現像器側にコネクタ等を設け、コネクタ等を機械的に嵌合させることで相互にデータ送受を行うようにしてもよい。
【0038】
また、この装置では、図2に示すように、メインコントローラ11のCPU111により制御される表示部12を備えている。この表示部12は、例えば液晶ディスプレイにより構成され、CPU111からの制御指令に応じて、ユーザへの操作案内や画像形成動作の進行状況、さらに装置の異常発生やいずれかのユニットの交換時期などを知らせるための所定のメッセージを表示する。
【0039】
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリである。また、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
【0040】
また、ローラ75の近傍には、クリーナ76が配置されている。このクリーナ76は図示を省略する電磁クラッチによってローラ75に対して近接・離間移動可能となっている。そして、ローラ75側に移動した状態でクリーナ76のブレードがローラ75に掛け渡された中間転写ベルト71の表面に当接し、二次転写後に中間転写ベルト71の外周面に残留付着しているトナーを除去する。
【0041】
さらに、ローラ75の近傍には、濃度センサ60が配置されている。この濃度センサ60は、中間転写ベルト71の表面に対向して設けられており、必要に応じ、中間転写ベルト71の外周面に形成されるトナー像の画像濃度を測定する。そして、その測定結果に基づき、この装置では、画像品質に影響を与える装置各部の動作条件、例えば各現像器に与える現像バイアスや、露光ビームLの強度、さらには装置の階調補正特性などの調整を行っている。
【0042】
この濃度センサ60は、例えば反射型フォトセンサを用いて、中間転写ベルト71上の所定面積の領域の濃淡に対応した信号を出力するように構成されている。そして、CPU101は、中間転写ベルト71を周回移動させながらこの濃度センサ60からの出力信号を定期的にサンプリングすることで、中間転写ベルト71上のトナー像各部の画像濃度を検出することができる。
【0043】
次に、上記のように構成された画像形成装置の現像器4K等における、現像ローラ44上のトナー層規制の詳細について説明する。上記のようにトナーを担持する現像ローラ44表面に凹凸を設けた構成においては、その凸部441および凹部442の双方にトナーを担持させることが可能であるが、この実施形態では、規制ブレード46を直接現像ローラ44表面の凸部441に当接することにより凸部441のトナーを除去するようにしている。このようにする理由は以下の通りである。
【0044】
まず、凸部441に均一なトナー層を形成するためには規制ブレード46と凸部441とのギャップの精密な管理が必要となるが、凹部442のみにトナーを担持させるためには規制ブレード46と凸部442とを当接させて凸部441のトナーを全て除去すればよいので実現が比較的容易である。また、搬送されるトナーの量は規制ブレード46と凹部442との隙間に生じる空間の容積によって決まるので、トナー搬送量を安定させることができる。
【0045】
また、搬送されるトナー層の良好さという点においても利点がある。すなわち、凸部441にトナーを担持させると規制ブレード46との摺擦に起因するトナーの劣化が起こりやすい。具体的には、トナーの流動性や帯電性が低下したり、トナーが圧粉状態となり凝集したり現像ローラ44に固着してフィルミングを生じさせるなどの問題がある。これに対し、規制ブレード46からの押圧をあまり受けない凹部442にトナーを担持させるとこのような問題が起こりにくい。また、凸部441に担持されるトナーと凹部442に担持されるトナーとでは規制ブレード46との摺接のされ方が大きく異なるため、トナーの帯電量のばらつきが大きくなることが予想されるが、凹部442のみにトナーを担持させることでこのようなばらつきも抑えられる。
【0046】
特に近年では、画像の高精細化やトナー消費量および消費電力の削減を実現するためにトナーの小粒径化や定着温度の低温化が求められているが、本実施形態の構成はこのような要求にも対応することが可能なものである。小粒径トナーにおいては帯電の立ち上がりが鈍いにもかかわらず飽和帯電量が高いため、凸部441に担持されたトナーは凹部442に担持されたトナーよりも帯電量が著しく高く(過帯電)なる傾向にある。このような帯電量の差はいわゆる現像履歴として画像に現れる。また、低融点トナーでは摺擦によるトナー同士または現像ローラ44等への固着が起きやすい。しかしながら、凹部442のみにトナーを担持する本実施形態の構成ではこのような問題は生じにくい。
【0047】
次に、現像バイアスVbの周波数について説明する。この実施形態では、現像バイアスVbの周波数と、現像ローラ44の凸部441の配列ピッチ、さらに現像ローラ44表面の周速(または回転速度)の各パラメータ間に一定の相関性を持たせることによって、高い現像効率が得られる。以下、この点について詳しく説明する。
【0048】
図6は現像ギャップを模式的に示す図である。バイアス用電源140から現像ローラ44に印加される現像バイアスVbにより現像ギャップDGに形成される交番電界の作用によって、図6(a)に示すように、トナーTは現像ギャップDGにおいて現像ローラ44と感光体22との間を往復運動する。往復の周期は現像バイアス周波数の逆数である。現像ローラ44表面から飛翔したトナーがこうして往復運動する間にも、現像ローラ44表面は方向D4に移動している。このため、現像ローラ44表面から見れば、図6(b)に示すように、トナーTは現像ギャップDGにおいて感光体22表面との間を往復しながら方向D4とは反対方向に相対移動していることになる。この実施形態では、次に説明するように、トナーが一往復する間の現像ローラ44表面の移動量がちょうど凸部441の配列ピッチPと同じになるようにしている。
【0049】
図7はこの実施形態における凸部配列ピッチと現像ローラ表面移動量との関係を示す図である。現像ローラ44の回転に伴うその表面の周方向移動速度をV、現像バイアスVbの周波数をFとすると、図7(a)に示すように、現像バイアスVbによって現像ギャップDGに形成される交番電界Eの作用によるトナーの一往復、つまり現像バイアスVbの一周期に相当する時間(1/F)におけるトナーと現像ローラ44表面との相対移動距離は、V/Fによって表すことができる。
【0050】
この実施形態では、この相対移動距離V/Fが現像ローラ44表面における凸部441の配列ピッチPと等しくなるように、現像バイアスVbの周波数Fを設定している。すなわち、この実施形態では次式:
V/F=P … (式1)
が成立するように、凸部441の配列ピッチP、現像ローラ44表面の移動速度Vおよび現像バイアス周波数Fが設定されている。
【0051】
例えば、凸部441の配列ピッチが100μmであるとき、現像ローラ44表面の移動速度すなわち周速を400mm/sec、現像バイアスVbの周波数を4kHzとすることにより、上記関係式(式1)を満たすことができる。
【0052】
そのため、図7(a)に示すように、凹部442に担持され交番電界Eの作用により飛翔したトナーT1は、一往復する間に現像ローラ44表面に対し凸部配列ピッチPだけ相対移動して隣接する凹部に飛び込むことになる。この凹部においても交番電界Eの作用によって飛翔開始するトナーT2が生じるとともに、電界により加速されたトナーT1が衝突することにより、電界の作用のみでは飛翔できなかったトナーT3が叩き出されて飛翔開始する。電界の作用のみでは飛翔しないトナーとしては、例えば帯電量が不十分であるために電界の作用が弱いトナーや、鏡像力により現像ローラ44表面に強く引き付けられているトナーなどがある。このように飛翔しにくいトナーであっても、飛び込んできたトナーに叩き出されることによりいったん飛翔開始すると、現像ギャップDGを往復運動して現像に寄与することとなる。そして、こうして飛翔したトナーはさらに他の凹部に飛び込んで新たなトナー飛翔を誘起する。
【0053】
このように、この実施形態では、現像バイアスVbの印加によって往復運動するトナーの一往復の間におけるトナーと現像ローラ44表面との相対移動量(V/F)が、現像ローラ44表面における凸部441の周方向配列ピッチPと等しくなるようにしている。こうすることで、凹部に担持されていたトナーが飛翔し一往復したとき他の凹部に飛び込み新たなトナー飛翔を誘起する作用をする。これが次々と繰り返されることにより、電界の作用のみでは飛翔しなかったトナーについても現像ギャップDGに飛翔させて現像に寄与させることができる。つまり、現像効率を高めることができる。その結果、この実施形態では、現像ギャップDGにおける十分なトナー飛翔量を確保して、十分な画像濃度で静電潜像をトナー現像することが可能となっている。
【0054】
なお、当然のことではあるが、このように現像ローラ44の周速と現像バイアスVbの周波数との関係を規定することができるのは、現像ローラ44の表面構造が規則的で周期性を有しているからである。ブラスト加工によって表面処理された現像ローラでは表面構造が不規則で一定の周期性を持たないため、このような関係を規定することは不可能である。
【0055】
また、この実施形態では、現像ローラ44の回転方向D4において現像ギャップDGよりも上流側で、規制ブレード46により現像ローラ44表面のうち凸部441へのトナー付着が規制されている。凸部441にトナーを担持させない場合、現像ローラ44表面の一部がトナー搬送に寄与しないこととなりトナー搬送量が低下することが懸念される。しかしながら、この実施形態では、飛翔したトナーによる叩き出しを行わせることにより、電界の作用のみでは飛翔しにくい凹部の深部に担持されたトナーも飛翔させることが可能であるため、凸部441と凹部442との高低差を大きくすることによってより多くのトナーを担持させることができる。このことによっても現像ギャップDGにおけるトナー飛翔量を増大させることができる。
【0056】
逆に言えば、凹部442に十分な量のトナーを担持させそれらを効率よく飛翔させることが可能であるため、凸部441にもトナーを担持させる必要性が薄い。凸部441にトナーを担持させないことの利点については先に説明したが、この実施形態ではさらに次のような効果も得られる。
【0057】
前記したように、この実施形態では現像ローラ44の回転方向D4において現像ギャップDGよりも下流側位置でシール部材47を現像ローラ44表面に当接させることにより、外部へのトナーの漏れ出しを防止している。ここで、凸部441にトナーが担持されていると、凸部441とシール部材47との間でトナーが圧迫されて現像ローラ44表面またはシール部材47表面に固着し、シール効果の低下やフィルミング発生等の問題を引き起こす。この実施形態では、凹部442に担持されたトナーが現像ギャップDGにおいて飛翔した後にも凹部442に進入する構成としているため、現像ギャップDGの下流側でも凸部441へのトナー付着が最小限に抑えられており、現像ローラ44表面やシール部材47表面へのトナー付着を効果的に抑制することが可能となっている。
【0058】
これに対して、凸部441の配列ピッチP、現像ローラ44表面の移動速度Vおよび現像バイアス周波数Fをそれぞれ任意に定めた場合、凹部442から飛び出したトナーは他の凹部に飛び込むだけでなく、凸部441にも衝突することになる。そのため、トナーの叩き出し効果が薄れるほか、凸部441に衝突したトナーが鏡像力によって凸部441に付着して現像効率を低下させたり、フィルミングを引き起こすなどの問題を生じるおそれがある。
【0059】
図7(a)では、1つの凹部442から飛翔したトナーが、一往復して隣接する凹部に進入する場合を示しているが、凹部から飛翔したトナーを再び他の凹部に進入させる、という観点からは、トナーの飛び込む先が必ずしも隣接する凹部である必要はない。例えば図7(b)に示すように、飛翔したトナーT4が隣接する凹部を飛び越えてさらに先の凹部に飛び込んでトナーT5を叩き出すような構成としてもよい。より一般的には次式:
V/F=n・P (nは自然数) … (式2)
の関係が成立していればよい。図7(a)および図7(b)の例は、(式2)においてそれぞれn=1、n=2とした場合に相当している。
【0060】
ただ、飛翔したトナーが凹部に担持された他のトナーを叩き出すという現象を利用して現像効率を高めるという点からは、飛翔したトナーが他の凹部に飛び込む回数ができるだけ多くなることが望ましく、トナーの往復回数が最大となるn=1の場合が最も好ましいと言える。
【0061】
なお、上記の例では、トナーが一往復する間のトナーと現像ローラ44表面との相対移動量(V/F)が凸部配列Pの自然数倍となる場合について説明したが、現実的には、上記(式1)または(式2)において厳密に等号が成立していなくてもよく、等号が成立する場合を中心としてある程度の差が許容されると考えられる。それは、現像ギャップDGにおいて1つのトナーが往復運動する時間はごく僅かであり、その限られた往復運動の間だけ凹部から凹部への移動が保証されればよいからである。この点に対する考察の一例について、図8を参照しながら説明する。
【0062】
図8は現像ギャップの広がりとトナーの往復パターンとの関係を示す図である。図8(a)にハッチングを付して示すように、現像ローラ44と感光体22とが対向する現像ギャップDGにおいては、両者の距離が最も接近して電界強度が最も高い一部の領域のみでトナー飛翔が起こっている。この領域こそが狭義の現像ギャップと言うこともできるが、より理解を容易とするため、以下ではこの領域を「飛翔領域JR」と称するとともに、飛翔領域JRの現像ローラ44の周方向における長さを符号Ljによって表す。
【0063】
ある凹部442に担持されたトナーについて考えると、現像ローラ44の回転によって当該凹部が飛翔領域JRに差し掛かるとトナーの飛翔が開始され、飛翔したトナーは往復運動によって飛翔領域JR内の他の凹部へ次々に進入を繰り返す。1つのトナーの往復回数は、飛翔領域JRに含まれる凹部442の数によってほぼ決まる。飛翔領域JRの長さLjに対して凸部441の配列ピッチがPであるとき、飛翔領域JRにおける現像ローラ44表面の凹凸の繰り返し回数mは概ね次式:
m=Lj/P … (式3)
により表すことができる。例えば、凸部配列ピッチPが100μm、飛翔領域JRの長さLjが2mmであれば、m=20、すなわち飛翔領域JRの中には20回の凹凸の繰り返しが含まれることになる。
【0064】
第1番目の凹部から飛翔開始したトナーが第m番目の凹部まで順番に移ってゆく際の往復回数は(m−1)回である。つまり、飛翔領域JR内で飛翔開始したトナーの往復運動の回数は、最大でも(m−1)回程度である。この回数の往復の間、もともと凹部にあったトナーが凸部に移動することがないようにすればよい。
【0065】
図8(b)および図8(c)は、飛翔領域JR中に6回の凹凸が繰り返されている場合の例を示している。すなわち、m=6であり、このときのトナーの往復回数は5回である。図8(b)は、トナーが一往復する間のトナーと現像ローラ44との相対移動量(V/F)の値が許容される最大値となる場合を示しており、1つの凹部の中でも最下流側端部位置(図において左端)にあったトナーT6が5往復して6つめの凹部の中の最上流側端部位置(図において右端)に付着して飛翔を終える。逆に、図8(c)は、相対移動量(V/F)の値が許容される最小値となる場合を示しており、1つの凹部の中でも最下流側端部位置にあったトナーT7が5往復して6つめの凹部の中の最下流側端部位置に付着して飛翔を終える。いずれも、トナーが5往復する間に凸部に移動してしまうことのない最も極端なケースである。
【0066】
図8(b)および図8(c)のケースにおいてトナーが5往復する間に移動する距離をそれぞれ符号Lmax、Lminにより表す。そうすると、1回の往復におけるトナーと現像ローラ44との相対移動距離が(V/F)であり、5往復では5(V/F)であるから、次式:
Lmin≦5×(V/F)≦Lmax … (式4)
が、1回の往復におけるトナーと現像ローラ44との相対移動量(V/F)の許容範囲を表すことになる。より一般的には、次式:
Lmin≦(m−1)×(V/F)≦Lmax … (式4a)
である。
【0067】
ここで、Lmax、Lminについては、より厳密には現像ローラ44の表面構造、例えば凸部441の寸法や凹部442の幅などに基づいて考える必要があるが、ここでは単純に凸部441と凹部442とがそれぞれ配列ピッチPのうち半分ずつの長さを占めると仮定して検討する。そうすると、図8(b)の例では、長さLmaxの中に6つの凹部および5つの凸部が含まれる。したがって、Lmaxは次式:
Lmax=(5+6)×P/2 … (式5)
により表すことができる。同様に、Lminについては、4つの凹部および5つの凸部を含むため、次式:
Lmin=(4+5)×P/2 … (式6)
により表される。より一般的には下式:
Lmax={(m−1)+m}×P/2=(2m−1)×P/2 … (式5a)
Lmin={(m−2)+(m−1)}×P/2=(2m−3)×P/2 … (式6a)
である。
【0068】
したがって、(式4a)、(式5a)および(式6a)より、以下の関係式:
(1−Q)×P≦V/F≦(1+Q)×P … (式7)
ただし、Q=1/{2×(m−1)}
が得られる。
【0069】
以上より、トナーが一往復する間のトナーと現像ローラ表面との相対移動量(V/F)については、凸部配列ピッチPと同値を中心とする所定の範囲内に収まっていればよいことがわかる。つまり、(式7)の関係が満たされていれば、もともと凹部442に担持されていたトナーが往復飛翔の間凹部442への飛び込みを繰り返すことが、少なくとも飛翔領域JR内においては保証されることになる。また、飛翔領域JRの長さLjが短くその中に含まれる現像ローラ44表面の凹凸の繰り返し回数mが小さければ相対移動量(V/F)の許容範囲が比較的大きい一方、飛翔領域JRの長さLjが長くなり凹凸の繰り返し回数mが大きくなるほど相対移動量(V/F)の許容範囲が狭くなり配列ピッチPと同値に収束してゆくことがわかる。
【0070】
つまり、飛翔領域JRがどんなに広くても凹部から凹部へのトナー移動を確実に行わせることができるのが、(式7)においてQ=0(m=∞)、つまり(式1)の関係が満たされているときである。そして、実際の装置では各部の寸法から決まる飛翔領域JRの広さが有限であるから、その広さに対応して上記(式7)の関係が満たされていれば、凹部から飛翔したトナーは確実に凹部に飛び込むこととなり、本発明の効果を得ることができる。なお、ここではn=1の場合について検討したが、nが2以上の場合についても同様に、飛翔領域JRにおいて想定されるトナーの往復回数に基づいて上記(式7)に相当する関係式を導出することが可能である。
【0071】
以上説明したように、この実施形態では、感光体22、現像ローラ44およびバイアス用電源140がそれぞれ本発明の「像担持体」、「トナー担持ローラ」および「バイアス印加手段」として機能している。また、現像器ハウジング41に設けられた規制ブレード46およびシール部材47がそれぞれ本発明の「規制手段」および「シール部材」として機能している。
【0072】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態は感光体22と現像ローラ44とを所定のギャップを隔てて対向させ両者の間でトナーを飛翔させる、いわゆるジャンピング現像方式の画像形成装置であるが、両者を当接させた状態で交流現像バイアスを印加する装置に対しても、本発明を適用することが可能である。
【0073】
また、現像バイアス波形は矩形波に限らず、例えば三角波や正弦波であってもよい。また、周期が一定で上記関係式を満たす限りにおいて、波形のデューティ比を1:1以外の値としてもよい。
【0074】
また、上記実施形態における現像ローラ44の表面構造は、頂面が略菱形の凸部441を多数配列したものであるが、周方向の配列ピッチPが一定であれば、凸部の形状はこれに限定されるものでなく任意である。
【0075】
また、上記実施形態の説明では、現像ローラ44表面における凸部441の配列ピッチPと周速V、現像バイアス周波数Fとの関係について規定したが、凸部441を取り囲む溝状の凹部442の配列ピッチで考えても、技術的には等価である。
【0076】
また、この実施形態における現像ローラ44の表面構造は、互いに交わる多数の溝によって構成された凹部442と、これらの溝に取り囲まれた凸部441とからなると見ることもできる。一方、互いに平行で交わらない多数の溝が周方向に一定ピッチで形成された表面構造を有する現像ローラを用いた画像形成装置に対しても、本発明を適用することが可能である。この場合、各溝の延設方向は、周方向の配列を持たないローラ回転軸方向に直交するものを除き、回転軸方向に平行な方向およびこれに対してねじれた方向のいずれであってもよい。
【0077】
また、上記実施形態の画像形成装置は、ロータリー現像ユニット4に現像器4K等を装着したカラー画像形成装置であるが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。例えば、中間転写ベルトに沿って複数の現像器を並べたいわゆるタンデム方式のカラー画像形成装置や、現像器を1個だけ備えてモノクロ画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】この発明を適用した画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】現像器の外観を示す図。
【図4】現像器の構造および現像バイアス波形を示す図。
【図5】現像ローラおよびその表面の部分拡大図を示す図。
【図6】現像ギャップを模式的に示す図。
【図7】凸部配列ピッチと現像ローラ表面移動量との関係を示す図。
【図8】現像ギャップの広がりとトナーの往復パターンとの関係を示す図。
【符号の説明】
【0079】
22…感光体(像担持体)、 41…ハウジング、 44…現像ローラ(トナー担持ローラ)、 46…規制ブレード(規制手段)、 47…シール部材、 140…バイアス用電源(バイアス印加手段)、 441…凸部、 442…凹部(溝)、 DG…現像ギャップ、 JR…飛翔領域、 P…凸部配列ピッチ、 Vb…現像バイアス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に静電潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体と対向配置され、表面に帯電トナーを担持しながら所定の回転方向に回転して前記トナーを前記像担持体との対向位置に搬送するトナー担持ローラと、
前記トナー担持ローラに現像バイアスとしての交流電圧を印加することで前記静電潜像を前記トナーにより現像させるバイアス印加手段と
を備え、
前記トナー担持ローラの表面には、周方向に一定のピッチで配列された複数の凸部およびそれを取り囲む凹部からなる周期的な凹凸が形成されており、その配列ピッチをP、前記現像バイアスの周波数をF、前記トナー担持ローラ表面の周方向の移動速度をVとしたとき、VをFで除した商がPの自然数倍または略自然数倍である
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
VをFで除した商がPと等しいまたはほぼ等しい請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体と前記トナー担持ローラとが所定のギャップを隔てて対向配置されている請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナー担持ローラの回転方向において前記対向位置よりも上流側で前記トナー担持ローラ表面に当接して前記凸部の頂面へのトナー付着を規制する規制手段をさらに備える請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナー担持ローラは内部に前記トナーを貯留するハウジングに回転自在に軸着されており、前記トナー担持ローラの回転方向において前記対向位置よりも下流側で前記トナー担持ローラ表面と前記ハウジングとの間隙には前記ハウジングからのトナー漏れを防止するシール部材が介挿されている請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
表面に静電潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体と対向配置され、表面に帯電トナーを担持しながら所定の回転方向に回転して前記トナーを前記像担持体との対向位置に搬送するトナー担持ローラと、
前記トナー担持ローラに現像バイアスとしての交流電圧を印加することで前記静電潜像を前記トナーにより現像させるバイアス印加手段と
を備え、
前記トナー担持ローラの表面には、周方向に一定のピッチで配列された複数の溝が設けられており、その配列ピッチをP、前記現像バイアスの周波数をF、前記トナー担持ローラ表面の周方向の移動速度をVとしたとき、VをFで除した商がPの自然数倍または略自然数倍である
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
像担持体の表面に静電潜像を形成する工程と、
表面に帯電トナーを担持しながら所定の回転方向に回転するトナー担持ローラを前記像担持体と対向配置し、前記トナー担持ローラに現像バイアスとしての交流電圧を印加することで前記静電潜像を前記トナーにより現像する工程と
を備え、
前記トナー担持ローラの表面には、周方向に一定のピッチで配列された複数の凸部およびそれを取り囲む凹部からなる周期的な凹凸を形成しておくとともに、その配列ピッチをP、前記現像バイアスの周波数をF、前記トナー担持ローラ表面の周方向の移動速度をVとしたとき、VをFで除した商がPの自然数倍または略自然数倍である
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−288474(P2009−288474A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140406(P2008−140406)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】