説明

画像形成装置に用いられるブラシローラ

【課題】基布端部(耳部)にブラシパイルが植設されていないブラシ繊維布を用いるブラシローラにおいてブラシパイルの密度のばらつきを抑制する。
【解決手段】ブラシローラの一例であるトナー供給ローラ52は、中空円筒形状の芯棒521と、その芯棒521に巻き付けられるブラシ繊維布523とから構成される。ブラシ繊維布523は、芯棒521に螺旋状に巻き付けられる帯状の形状を備える。芯棒521の表面には、ブラシ繊維布523のブラシパイルが現れる面どうしを対向させた部分を収める、螺旋状の切り欠き部522を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー像を形成する複写機、プリンタ、ファクシミリ機又はこれらのうち2以上を組み合わせた複合機等の画像形成装置に用いられるブラシローラに関し、特に、トナー供給ローラ、クリーニングローラ又は帯電ローラ等に好適に用いることができる、ブラシローラに関する。
【背景技術】
【0002】
トナー像を形成する複写機、プリンタ、ファクシミリ機又はこれらのうち2以上を組み合わせた複合機等の画像形成装置では、通常、露光プロセスにて感光体のような像担持体上に静電潜像を形成し、現像プロセスにて該静電潜像を現像して可視トナー像を形成し、転写プロセスにて該可視トナー像を記録紙等の記録媒体に転写し、或いは一旦中間転写ベルト等の中間転写体に1次転写し、該中間転写体から記録媒体に2次転写し、定着プロセスにてこのように記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体に定着させることができる。
【0003】
現像プロセスにおいて感光体上の静電潜像に現像ローラが静電気を帯びたトナーを付着させる。この現像ローラにはトナー供給ローラによりトナーが供給される。このトナー供給ローラには、従来、スポンジ素材のローラが用いられてきた。このトナー供給ローラにより、現像ローラにトナーが均一に供給されるようにしなければならない。この点では、スポンジ素材のローラは好適ではあるが、現像ローラとトナー供給ローラとが互いに逆回転することに加えてスポンジ素材の表面摩擦抵抗が大きいため、ローラの回転抵抗が大きいという問題が発生していた。
【0004】
一方、上述した画像形成装置においては、多くのローラを搭載している。その中には、ブラシ繊維からなるブラシパイル(ブラシ毛)を基布に植設し、該基布を筒状の芯金に貼着したブラシローラがある(なお、「芯金」とは、ローラの骨格となる構造物を指し、必ずしも金属である必要はない)。このブラシローラは、接触抵抗が低く、トナー供給ローラに用いても、ローラの回転抵抗が大きいという問題が発生しにくい。
【0005】
しかしながら、このブラシローラは、多くの場合、芯金に螺旋状に基布を巻きつけて製造されるのであるが、基布のつなぎ目(合わせ目とも記載する)でブラシパイルの密度が疎になり密度がばらつく。このため、ブラシパイルが均一に分布するローラでないために、均一にトナーを現像ローラに供給できないという問題がある。これは、基布の側端側(耳側)までブラシパイルを植設するとブラシパイルが抜けやすくなるので、ブラシパイルは基布の側端縁(耳端)よりやや内側までしか植設されない。このために、耳側どうしが合わせられる基布のつなぎ目でブラシパイルの密度が疎になる。
【0006】
このような問題に対して、トナー供給ローラではないが、特開2000−56538号公報(特許文献1)は、画像形成装置において均一な帯電を実現するためのローラ形状の荷電ブラシを開示する。この荷電ブラシは、被荷電体に荷電するために該被荷電体に対し接触回転される荷電ブラシであり、導電性の芯棒と、該芯棒に螺旋状に巻き付けられた帯状の導電性ブラシ基材とを含んでおり、該導電性ブラシ基材は、帯状基体に導電性ブラシ毛を植え込んだもので、該導電性ブラシ基材のブラシ毛密度と芯棒上での各隣り合う導電性ブラシ基材側端縁部のつなぎ目部分でのブラシ毛密度とを均一化するように、該芯棒上で各隣り合う導電性ブラシ基材側端縁部が互いに重なるように該芯棒に巻き付けられていることを特徴とする。
【0007】
この荷電ブラシによると、導電性の芯棒に螺旋状に巻き付けられた帯状の導電性ブラシ基材は、帯状基体に導電性ブラシ毛が植え込まれている。この導電性ブラシ基材は、そのブラシ毛密度と芯棒上での各隣り合う導電性ブラシ基材側端縁部のつなぎ目部分でのブラシ毛密度とを均一化するように、該芯棒上で各隣り合う導電性ブラシ基材側端縁部が互いに重なるように該芯棒に巻き付けられている。従って被荷電体に対し均一に安定して荷電でき、例えば画像露光に先立って静電潜像担持体表面を帯電させる主帯電装置として用いる場合でも、画像ノイズ(いわゆる巻目ムラによる画像ノイズ)の発生を抑制することができる。
【0008】
また、特開平8−146713号公報(特許文献2)は、感光体の外周を均一に帯電させ得る帯電ブラシを開示する。この帯電ブラシは、弾性を有する導電性の繊維が植毛された長尺状の基布を断面形状が円形の軸の外周に螺旋状に巻回して固着してなる帯電ブラシにおいて、基布の幅方向における中央部に植毛された繊維よりも外側に植毛された繊維の方の腰の強さを弱く設定したことを特徴とする。
【0009】
この帯電ブラシによると、繊維は感光体の外周に圧接されたときに弾性的に倒れる方向に屈撓するが、基布の中央部に植毛された繊維よりも外側に植毛された繊維の方が腰の強さが弱く屈撓量が大きくなるため、基布の中央部の繊維より外側の繊維の方が感光体に対する接触面積が増加する。これにより、基布の外側における繊維の密度の低下が補われる。
【0010】
さらに、特開平9−114195号公報(特許文献3)は、被帯電体を帯電させるために被帯電体の表面に接触するように配置されたブラシローラを開示する。このブラシローラは、帯状導電性ブラシを導電性シャフトの外周に設けて成り、帯状導電性ブラシにおいて継ぎ目側のブラシ密度を他の部分より高くしたことを特徴とする。
【0011】
このブラシローラによると、ブラシローラのブラシの継ぎ目におけるブラシ密度が高くすることにより、継ぎ目以外の部分における被帯電体に接触するブラシ本数と継ぎ目付近において被帯電体に接触するブラシ本数の差が小さくなり、帯電が均一化される。
【0012】
【特許文献1】特開2000−56538号公報
【特許文献2】特開平8−146713号公報
【特許文献3】特開平9−114195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に開示された荷電ブラシは、ローラ径が小さい場合等においては、芯棒上で各隣り合う導電性ブラシ基材側端縁部を互いに重ねるように該芯棒に巻き付けることが困難な場合が想定できる。また、特許文献2に開示された帯電ブラシは、基布上に植設されたブラシパイルの腰の強さを基布の部位により適切に変更して設定することが困難であり、特許文献3に開示された帯電ブラシは、基布上に植設されたブラシパイルの密度を基布の部位により適切に変更して設定することは困難である。すなわち、基布端部以外では一様な密度で一様な腰の強さのブラシパイルを植設したブラシ繊維布であって、かつ、基布端部(耳部)にブラシパイルが植設されていないブラシ繊維布を用いるブラシローラにおいてブラシパイルの密度のばらつきを抑制することは困難である。
【0014】
そこで本発明は、電子写真方式により画像を形成する画像形成装置に用いられる、芯棒にブラシ繊維布が巻き付けられたブラシローラであって、ブラシ繊維布が基布端部以外にブラシパイルを植設し基布端部にブラシパイルが植設されていないものであっても、ブラシパイルの密度のばらつきを抑制したブラシローラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため本発明は次のブラシローラを提供する。
電子写真方式により画像を形成する画像形成装置に用いられるブラシローラであって、
前記ブラシローラは、中空円筒形状の芯棒と、前記芯棒に螺旋状に巻き付けられた帯状のブラシ繊維布とを含んでおり、前記ブラシ繊維布は、基布端部以外にブラシパイルを植設したものであって、
前記芯棒には、円筒外表面から内周面に貫通する切り欠きが、螺旋状に設けられ、
前記芯棒に巻き付けられたブラシ繊維布の合わせ目における前記ブラシパイルが植設されていない基布端部において、前記ブラシパイルが現れる面どうしの基布端部を対向させて合わせて前記切り欠きに収めてあるブラシローラ。
【0016】
ブラシローラを製造する場合に、円筒形状の芯棒に螺旋状に帯状のブラシ繊維布を巻き付けると効率的である。このときに、螺旋状に巻かれたブラシ繊維の合わせ目においてブラシパイルが植設されていない基布端部どうしが当接される。単に基布端部どうしが当接してしまうと、その部分にブラシパイルが植設されていないので、ブラシパイルの密度が螺旋状に疎になる。本発明に係るブラシローラにおいては、ブラシパイルが現れる面どうし(この面は基布端部であってブラシパイルが植設されていない)を対向させて(向かい合わせて)、円筒外表面から内周面に芯棒を貫通する螺旋状の切り欠きに収める。このとき、合わせ目の基布端部を重ねて切り欠きに挟み込むようにして収める。このようにすると、ブラシパイルが植設されていない部分を向かい合わせて、切り欠きに収めてしまうので、ローラ表面に螺旋状に現れていたブラシパイルの密度が疎である部分が現れないようにできる。このため、ブラシパイルの密度が疎になる部分を、ローラ表面から隠すことになり、ローラ表面に螺旋状に現れるブラシパイルに密度のばらつきが発生することを抑制できる。
【0017】
なお、本発明に係るブラシローラは、例えば複写機、プリンタ等の画像形成装置における静電潜像担持体(感光体)を画像露光に先立って帯電するときに用いられる帯電ブラシローラ、可視トナー像を静電潜像担持体上に形成する現像ローラにトナーを供給するトナー供給ローラ、及び、トナー像転写後の静電潜像担持体上に残存するトナーや中間転写ベルト上に残存するトナーを除去するときに用いられるクリーニングローラ等に利用できる。
【0018】
また、中空円筒形状の芯棒の素材が弾性変形可能である場合には、基布端部が前記切り欠きに収められていない状態における切り欠きの幅は、前記ブラシパイルが現れる面どうしの基布端部の重なりの厚みよりも狭く、前記対向させ合わせて前記切り込み部に収められた基布端部は該芯棒の弾性復元力で該切り欠きに挟着されているようにすることができる。切り欠きは、円筒外表面から内周面に芯棒を貫通する螺旋状であるので、芯棒を螺旋の巻方向と逆方向に捩じると切り欠きの幅が広がる。この状態で、ブラシパイルが植設されていない基布端部の重なり部分を向かい合わせて切り欠きに収めて、その後に捩じりを解放すると芯棒が弾性変形して切り欠きが狭まり、基布端部の重なりを切り欠きに挟み込むことができる。
【0019】
さらに、中空円筒形状の芯棒の素材が塑性変形可能である場合には、基布端部が前記切り欠きに収められる前の切り欠きの幅は、前記ブラシパイルが現れる面どうしの基布端部の重なりの厚みよりも広く、前記対向させ合わせて前記切り込み部に収められた基布端部は該芯棒の、切り欠き幅を狭める方向への捩じりによる塑性変形で該切り欠きに挟着されているようにすることができる。切り欠きは、円筒外表面から内周面に芯棒を貫通する螺旋状であるので、芯棒を螺旋の巻方向と同じ方向に捩じると切り欠きの幅が狭まる。捩じらない状態で、ブラシパイルが植設されていない基布端部の重なり部分を向かい合わせて切り欠きに収めて、その後に捩じると芯棒が塑性変形して切り欠きが狭まり、基布端部の重なりを切り欠きに挟み込むことができる。
【0020】
さらに、ブラシローラは、前記中空円筒形状の芯棒の両側端部に設けられた、円板形状のフランジ部材をさらに備えることができる。切り欠きは、円筒外表面から内周面に芯棒を貫通する螺旋状であるので、芯棒を捩じると切り欠きの幅が変わる。フランジ部材は芯棒の両側端部に設けられるので端部が相対的に回転することを抑制する。このため、芯棒が捩じられることが抑制できて、切れ込みからブラシ繊維布が抜け出ることを抑制できる。
【0021】
さらに、このフランジ部材は、前記ブラシ繊維布と前記芯棒の円周部の厚みとを嵌合する凹部を有しており、該両フランジ部材は、該芯棒に通された連結部材で互いに連結されているように構成できる。凹部で前記ブラシ繊維布と前記芯棒の円周部の厚みとを合わせて嵌合させる。芯棒の両側側部において、このように嵌合させ、芯棒に通された連結部材で、互いのフランジを連結するので、端部が相対的に回転することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によると、電子写真方式により画像を形成する画像形成装置に用いられる、芯棒にブラシ繊維布が巻き付けられたブラシローラであって、ブラシ繊維布が基布端部以外にブラシパイルを植設し基布端部にブラシパイルが植設されていないものであっても、ブラシパイルの密度のばらつきを抑制したブラシローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0024】
以下に、本発明の実施の形態に係るブラシローラについて説明する。
[ブラシローラが適用される画像形成装置]
図1は、本実施の形態に係るブラシローラが適用される画像形成装置の例Aを示している。
【0025】
図1に示した画像形成装置Aは、モノクロプリンタである。なお、本発明に係るブラシローラが適用される画像形成装置Aは、このようなモノクロ画像形成装置でも、2色以上のトナーを用いて画像形成できるカラー画像形成装置(代表的にはフルカラー画像形成装置)でもよい。
【0026】
この画像形成装置Aは、帯電部2で感光体1を帯電させて、半導体レーザー、各種レンズ及びポリゴンミラー等から構成される画像露光部4で感光体1に静電潜像を撮像した後に現像部5で静電潜像をトナー像に現像し、転写部6で記録媒体S(以下、記録紙Sと記載する場合がある)にトナー像を転写した後に定着部7で記録媒体Sにトナー像を固定し、排出部(図示しない)に排紙する。
【0027】
画像形成装置Aは、回転駆動されるドラム型の負帯電性の感光体1を備えており、感光体1表面を帯電用電源装置3から帯電電圧が印加されるコロナ放電方式の帯電部2で一様に所定電位に帯電させ、その帯電域に画像露光部4から画像露光を施して静電潜像を形成し、該潜像を現像部5の現像ローラ51を用いて負帯電性のトナーにより反転現像して可視トナー像を形成できる。現像部5の現像ローラ51へのトナーTの供給は、トナー供給ローラ52により行なわれる。
【0028】
感光体1上に形成される可視トナー像は、給紙トレイから1枚ずつ供給される転写紙(記録紙)等の記録媒体Sに転写される。転写部6でトナー像が転写された記録媒体Sは、定着部7で加熱加圧されて記録媒体Sにトナー像が定着されてモノクロ画像となる。このようにしてトナー像が定着された記録媒体Sは排出部の排出ローラ対にて排出トレイ上に排出される。転写後に感光体1上の転写残トナーはクリーニングローラ8又は/及びクリーニングブレードで除去清掃される。
【0029】
このような画像形成装置Aにおいて、本実施の形態に係るブラシローラは、トナー供給ローラ52への適用が好適である。図1において、感光体1は反時計回りに回転し、現像ローラ51は時計回りに回転し、トナー供給ローラ52は時計回りに回転する。現像ローラ51とトナー供給ローラ52との回転方向が逆であって、トナー供給ローラ52として、表面摩擦抵抗が大きいスポンジ素材が表面に貼付されたローラを用いると、回転抵抗が大きい。これに対して、本実施の形態に係るブラシローラは、表面摩擦抵抗が小さく、回転抵抗が小さい。この点で、本実施の形態に係るブラシローラをトナー供給ローラ52として用いることが好適である。また、本実施の形態に係るブラシローラは、クリーニングローラ8に適用することもできる。さらに、本実施の形態に係るブラシローラは、帯電部2が帯電ローラにより構成される場合には、感光体1を画像露光に先立って帯電する帯電ローラ等に適用することもできる。以下においては、本実施の形態に係るブラシローラは、トナー供給ローラ52へ適用したものとして説明する。なお、このトナー供給ローラ52は、導電性のローラである。
【0030】
なお、画像形成装置Aは、以下のような現像部とすることにより、所謂4サイクルフルカラー画像形成装置とすることもできる。現像部を回転駆動されるラックにイエロー現像部、マゼンタ現像部、シアン現像部及びブラック現像部を搭載する。これらの4色の現像部は、例えばラックに着脱可能のカートリッジに構成される。感光体1には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像データに基づいて各色に対応する静電潜像が順次形成され、一つの色に対応する潜像が形成されるごとに該潜像が4色の現像部のうち該色に対応する現像部で現像される。このようにして感光体1上に順次形成される各色のトナー像は、一つのトナー像が形成されるごとに中間転写ベルト(中間転写体の1例)に1次転写され、且つ、先に転写されたトナー像の上に重ねて転写される。このようにして中間転写ベルト上に形成された多重トナー像は、給紙トレイから1枚ずつ供給された転写紙等の記録媒体Sに2次転写され、定着部で該記録媒体に加熱加圧下に定着されてフルカラー画像となる。本実施の形態に係るブラシローラは、このようなフルカラー画像形成装置における各色のトナーを供給するトナー供給ローラへ適用することも、転写後に中間転写ベルト上の転写残トナーを除去清掃するクリーニングローラへ適用することも可能である。なお、これ以外にもタンデム型のフルカラー画像形成装置であっても、本実施の形態に係るブラシローラを適用できる。
【0031】
このように、本実施の形態に係るブラシローラは、電子写真方式により画像を形成する画像形成装置において、例えば、小さな接触抵抗で回転することが望まれ、均一性が必要なローラ(導電、非導電を問わない)への適用(帯電ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラ等)が好適である。
【0032】
[ブラシローラの構成]
図2に、本実施の形態に係るブラシローラが適用されるトナー供給ローラ52の斜視図を示す。図2は、中空円筒形状の芯棒521にブラシ繊維布523を巻き付ける前の状態を示している。
【0033】
図2に示すように、このトナー供給ローラ52は、芯棒521と、その芯棒521に巻き付けられるブラシ繊維布523とから構成される。ブラシ繊維布523は、芯棒521に螺旋状に巻き付けられた帯状の形状を備える。芯棒521には、その外周面と内面との間を貫通し、ブラシ繊維布523の端部の基布524Bを対向させた部分を収める、螺旋状の切り欠き部522を備える。詳しくは後述するように、この切り欠き部522の幅については、図2の白矢印の方向及び逆方向のいずれにも捩じっていない切り欠き部522に基布524Bを挟み込まない状態(弾性変形の場合)又は挟み込む前の状態(塑性変形の場合)で、以下の通りである。芯棒521が弾性変形可能な素材である場合には、切り欠き部522の幅は、基布524Bの2枚分よりも広く、芯棒521が塑性変形可能な素材である場合には、切り欠き部522の幅は、基布524Bの2枚分よりも狭い。
【0034】
切り欠き部522を備えた芯棒521に、図2の黒曲線矢印で示す方向に、ブラシ繊維布523を螺旋状に巻き付ける。このように、帯状のブラシ繊維布523を、芯棒521に対して螺旋状に巻き付け、基布524Aを芯棒521の円筒表面に沿わせ、かつ、基布524Bを切り欠き部522に挟み込んでいく。このようにすると、例えば、芯棒521を回転させてブラシ繊維布523を芯棒521に対して斜めに当接させて巻き付けることにより、効率的にブラシローラを製造することができる。
【0035】
図2に示すように、ブラシ繊維布523の基布524のブラシパイル525が植設されていない基布524Bどうしを対向させた部分は、切り欠き部522に収められる。基布524Bは、ブラシパイル525が植設された部分の基布524Aではない基布の部分であって、ブラシパイル525が植設されていない耳部を折り曲げた部分である。なお、基布524は、芯棒521の円筒表面に沿う基布524Aと切り欠き部522に収められる基布524Bとから構成される。切り欠き部522へ収められるブラシ繊維布523の構造について、以下に説明する。
【0036】
[ブラシ繊維布の断面構造]
ブラシ繊維布523の側端側(耳側)までブラシパイルを植設するとブラシパイルが抜けやすくなるので、ブラシパイルは基布の側端縁(耳端)よりやや内側までしか植設されていない。本実施の形態に係るトナー供給ローラ52においては、耳側どうしが合わせられるブラシ繊維布523のつなぎ目でブラシパイルの密度が疎になることを抑制すべく、ブラシ繊維布523においてブラシパイル525が植設されていない基布524Bどうしを、ブラシパイル525が現れる面どうしを対向させて切り欠き部522に収めたことを特徴とする。
【0037】
図3に、本実施の形態に係るブラシローラの一例であるトナー供給ローラ52の断面図を示す。この図に示すように、ブラシ繊維布523は、基布524にブラシパイル525を植設したものである。なお、基布524の側端縁(耳端)の基布524Bは、ブラシパイル525の抜け落ちを防止するために、ブラシパイル525が植設されていない。このようなブラシ繊維布523は、一般的に、経二重又は緯二重の織物を製織して、その経糸又は緯糸の一部を適当な位置で切断して、織物の表面に毛羽(ブラシパイル又はパイル)を現した繊維布である。一般的な織物の構造上、耳部において経糸と緯糸との交錯が外れやすいので、この耳部までブラシパイル525を形成すると、経糸と緯糸との交錯が外れたときにブラシパイル525が抜け落ちてしまう。このため、経糸と緯糸との交錯が外れやすい耳部においてはブラシパイル525を形成しないようにしている。なお、基布524を構成する経緯の繊維によりパイルの束がU字型に縫われているような構造であっても構わない。
【0038】
従来は、例えば、ブラシ繊維布523のブラシパイル525が植設されていない側端縁(耳端)の基布524Bどうしを(図3のように折り曲げることなく真っ直ぐに)突き当てていた。このため、ブラシ繊維布523において、突き合わせた部分においてブラシパイル525がない部分が生じる。すなわち、耳端どうしが合わせられるブラシ繊維布523の合わせ目においてブラシパイルの密度が疎になっている。
【0039】
これに対して、本実施の形態に係るブラシローラの一例であるトナー供給ローラ52においては、図3に示すように、芯棒521に巻き付けられたブラシ繊維布523の合わせ目におけるブラシパイル525が植設されていない耳端の基布524Bについて、ブラシパイル525が現れる面どうしを対向させている。このため、図3に示すように、ブラシ繊維布523において、突き合わせたブラシ繊維布523の間におけるブラシパイル525の間隔が大きくなることを抑制している。すなわち、耳端どうしが合わせられるブラシ繊維布523のつなぎ目でブラシパイルの密度が疎にならないようにしている。
【0040】
そして、ブラシパイル525が植設されていない耳端における対向されたブラシパイル525が現れる面(基布524Bの左右外側面)は、芯棒521の切り欠き部522に収められる。なお、このようにして、構成されたトナー供給ローラ52は、芯棒521にブラシ繊維布523が貼付された後に、ブラシパイル525の長さが刈り揃えられることもある。
【0041】
このように構成されたブラシローラは、ブラシ繊維布523の耳部である基布524Bにブラシパイル525が植設されておらず、この耳部どうしが当接する合わせ目においても、ブラシパイルの密度が疎になることを抑制して、均一なブラシパイルの密度を実現することができる。
【0042】
[基布の切り欠きへの挟み込み]
上述したように、本実施の形態に係るブラシローラの一例であるトナー供給ローラ52における、基布524Bを切り欠き部522へ挟み込む方法について、以下に詳しく説明する。なお、この挟み込み方法には、芯棒521の弾性変形を利用した第1の方法と、芯棒521の塑性変形を利用した第2の方法とがある。この第1の方法及び第2の方法は、本実施の形態に係るブラシローラの製造方法に関係する。
【0043】
第1の方法は、芯棒521の素材に弾性変形可能な素材を用いる。芯棒521を捩じって、弾性変形可能な芯棒521の切り欠き部522の幅を広げておいて、その時にブラシ繊維布523の(ブラシパイル525が植設されていない)基布524Bを重ねて切り欠き部522に挟み込む。芯棒521を螺旋の巻方向と逆方向(図2の白矢印の方向)に捩じると切り欠き部522の幅が広がる。この状態で、ブラシパイル525が植設されていない端部の基布524Bの重なり部分を向かい合わせて切り欠き部522に収めて、その後に捩じりを解放する。
【0044】
捩じりを解放すると、弾性変形可能な芯棒521が弾性変形して切り欠き部522の幅が狭まる。これにより、基布524Bの重なりを切り欠き部522に十分な力で挟み込むことができる。切り欠き部522の幅は、捩じりを解放した状態でブラシパイル525が植設されていない基布524Bの重なりの厚みよりも狭くなり十分な把持力が発現し、切り欠き部522の幅が広がるように捩じりを与えた状態でブラシパイル525が植設されていない基布524Bの重なりの厚みよりも広くなり挟み込みが容易に行なえるようにすることが好ましい。
【0045】
このようにして、捩じりを解放したときの芯棒521の弾性変形(元の形に戻ろうとするとする変形)により、ブラシ繊維布523の端部の基布524Bを切り欠き部522に挟み込ませて保持することができる。
【0046】
第2の方法は、芯棒521の素材に塑性変形可能な素材を用いる。芯棒521を捩じらない状態で、塑性変形可能な芯棒521の切り欠き部522にブラシ繊維布523の(ブラシパイル525が植設されていない)基布524Bを重ねて切り欠き部522に挟み込む。その後に、芯棒521を螺旋の巻方向と同じ方向(図2の白矢印の逆方向)に捩じると切り欠き部522の幅が狭まる。すなわち、ブラシパイル525が植設されていない端部の基布524Bの重なり部分を向かい合わせて切り欠き部522に収めた後に、捩じりを与える。
【0047】
捩じりを与えると塑性変形可能な芯棒521が塑性変形して、切り欠き部522の幅が(ほぼ恒久的に)狭まる。これにより、基布524Bの重なりを切り欠き部522に十分な力で挟み込むことができる。切り欠き部522の幅は、捩じりを解放した状態でブラシパイル525が植設されていない基布524Bの重なりの厚みよりも広くなり挟み込みが容易に行なえるように、切り欠き部522の幅が狭まるように捩じりを与えた状態でブラシパイル525が植設されていない基布524Bの重なりの厚みよりも狭くなり十分な把持力が発現することが好ましい。
【0048】
このようにして、捩じりを与えたときの芯棒521の塑性変形(ほぼ恒久的な変形)により、ブラシ繊維布523の端部の基布524Bを切り欠き部522に挟み込ませて保持することができる。
【0049】
[挟み込みの保持]
本実施の形態に係るブラシローラの一例であるトナー供給ローラ52の回転により、芯棒521の切り欠き部522の幅が変化すると(特に広がると)、基布524Bが切り欠き部522から抜け出て、ブラシパイルの密度が均一にならない可能性がある。このため、図4に示すように、中空円筒形状の芯棒521の両側端部に、回転軸531を備えた円板形状のフランジ53が設けられる。図4(A)に、フランジ53を嵌め込む前の状態の断面図を、図4(B)に、フランジ53を嵌め込んだ後の状態の断面図を、それぞれ示す。
【0050】
図4(A)及び図4(B)に示すように、このフランジ53は円板形状の板部532からなり、板部532には芯棒521側の逆面に回転軸531が突設されており回転軸531は、芯棒521の回転中心軸となっている。左右のフランジ53の板部532は、芯棒521の回転中心と一致する中心連結棒534で互いに連結されている。中心連結棒534の各端部534Aは板部532を貫通して外側に突出しておりそれに回転軸531が、例えば螺着されることにより、回転軸531、板部532及び中心連結棒534が一体とされている。さらに、板部532の内側面には、ブラシ繊維布524の基布524Aと芯棒521の円周部の厚みとを嵌合する凹部533が、芯棒521により形成された円筒の端部形状に合致する円形状に設けられている。なお、2つのフランジ53のうち少なくとも一方のフランジは、このような螺着等により構成されている必要があるが(ブラシローラの組み立て上の必要性)、一方のフランジ53においては、回転軸531、板部532及び中心連結棒534が接合により一体とされていても構わない。また、螺着については、本実施の形態に係るブラシローラの一例であるトナー供給ローラ52の回転によっても弛まない方向のネジで螺着されていることが好ましい。
【0051】
基布の切り欠きへの挟み込みを上述した2つの方法のいずれかで行ない、図4(A)のように、フランジ53を左右からブラシ繊維布523を螺旋状に巻き付けた芯棒521に接近させて、図4(B)に示すように、ブラシ繊維布523の基布524Aと芯棒521の円周部分とを凹部533に嵌合させる。さらに、図4(B)に示す逆側も同じように嵌合させるとともに、左右のフランジ53を中心連結棒534で連結する。
【0052】
中心連結棒534により連結されたフランジ53により、芯棒521及びブラシ繊維布523が保持されるとともに、これらのフランジ53が相対的に回転することが抑制される。このため、芯棒521が捩じれることがないので、芯棒521の切り欠き部522の幅が変化することがなくなり、トナー供給ローラ52が回転しても、基布524Bが切り欠き部522から抜け出ることがなく、ブラシパイルの密度を安定して均一に維持できる。
【0053】
以上のようにして、本実施の形態に係るブラシローラは、回転抵抗も小さく、均一な密度のブラシパイルを備える。このようなブラシローラを、例えば、トナー供給ローラに適用すると、回転抵抗が小さく、現像ローラ51にトナーTを均一に供給することができる。なお、本実施の形態に係るブラシローラをクリーニングローラに適用した場合には、転写残トナーを均一に除去清掃することができる。さらに、本実施の形態に係るブラシローラを帯電(荷電)ローラに適用した場合には、感光体等を所定の電位に均一に帯電させることができる。
【0054】
<変形例>
以下に、本発明の実施の形態に係るブラシローラの変形例について説明する。
【0055】
(1)切り欠き部におけるブラシパイルの重なりを許容するようにしても構わない。上述した実施の形態においては、ブラシ繊維布523の合わせ目において、ブラシパイル525が重なることを許容しないで、基布524Bのブラシパイル525が現れる面どうしを対向させて切り欠き部522に収めていたが、本変形例においては、ブラシ繊維布523の合わせ目において、ブラシパイル525が重なることを許容して、基布524Bのブラシパイル525が現れる面どうしを対向させて切り欠き部522に収める。
【0056】
このようにすると、ブラシ繊維布523において、突き合わせたブラシ繊維布523どうしのブラシパイル525のない部分が大きくなることを抑制することに加えて、突き合わせたブラシ繊維布523において、一部のブラシパイル525が重なり合わせることができる。これにより、ブラシパイル525が存在しない部分をより確実になくすことができる。
【0057】
このとき、合わせ目においては、ブラシパイル525が倒れて、ブラシパイルの密度が他の部分の密度より増える可能性も想定できるが、ブラシパイルが存在しない部分を残す可能性をよりも好適な場合がある。例えば、本変形例に係るブラシローラをトナー供給ローラ52に適用した場合には、トナーTが供給されないことによる形成画像の不具合は、原画像に描かれていた線画が記録紙Sに転写されないという重大な不良画像となるが、ブラシパイルが存在しない部分を残さないようにしてトナーTが供給されない場合をなくすることにより、このような重大な不良画像を抑制できる。
【0058】
このようにして、本実施の形態に係るブラシローラは、回転抵抗も小さく、均一な密度のブラシパイルを備え、特にブラシパイルの密度が密になることがあっても疎になることをより確実に抑制できる。
【0059】
(2)ブラシ繊維布は、その一辺が芯棒の回転軸に平行になるように芯棒に巻き付けられる長方形の形状を備えるものであっても構わない。この場合には、芯棒の表面には、ブラシ繊維布の端部を対向させた部分を収める、回転軸に平行な溝形状の円筒外表面から内周面に貫通する切り欠き部を備えるものとすることができる。
【0060】
(3)さらに、図4のフランジ53を備えないもの、又は、図4のフランジ53を備えるが中心連結棒534を備えないものであっても構わない。ブラシローラとして完成した後に、螺旋状の切り欠き部522の幅が変化しないものであればよい。
【0061】
(4)また、フランジ53の形状は図4に示すものに限定されるものではなく、芯棒が捩じれないようにして螺旋状の切り欠き部522の幅が変化しないようにするフランジであればよい。
【0062】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上述した実施の形態のみに限定されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るブラシローラが適用される画像形成装置の一例であるプリンタの構成の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るブラシローラの一例であるトナー供給ローラの斜視図である。
【図3】図2に示したトナー供給ローラの断面図(その1)である。
【図4】図2に示したトナー供給ローラの断面図(その2)である。
【符号の説明】
【0064】
A プリンタ
1 感光体
2 帯電部
3 帯電用電源装置
4 画像露光部
5 現像部
6 転写部
7 定着部
8 クリーニングローラ
51 現像ローラ
52 トナー供給ローラ
521 芯棒
522 切り欠き部
523 ブラシ繊維布
53 フランジ
531 回転軸
532 板部
533 凹部
534 中心連結棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式により画像を形成する画像形成装置に用いられるブラシローラであって、
前記ブラシローラは、中空円筒形状の芯棒と、前記芯棒に螺旋状に巻き付けられた帯状のブラシ繊維布とを含んでおり、前記ブラシ繊維布は、基布端部以外にブラシパイルを植設したものであって、
前記芯棒には、円筒外表面から内周面に貫通する切り欠きが、螺旋状に設けられ、
前記芯棒に巻き付けられたブラシ繊維布の合わせ目における前記ブラシパイルが植設されていない基布端部において、前記ブラシパイルが現れる面どうしの基布端部を対向させて合わせて前記切り欠きに収めてあるブラシローラ。
【請求項2】
前記中空円筒形状の芯棒の素材は、弾性変形可能であって、
前記基布端部が前記切り欠きに収められていない状態における切り欠きの幅は、前記ブラシパイルが現れる面どうしの基布端部の重なりの厚みよりも狭く、前記対向させ合わせて前記切り込み部に収められた基布端部は該芯棒の弾性復元力で該切り欠きに挟着されていることを特徴とする、請求項1に記載のブラシローラ。
【請求項3】
前記中空円筒形状の芯棒の素材は、塑性変形可能であって、
前記基布端部が前記切り欠きに収められる前の切り欠きの幅は、前記ブラシパイルが現れる面どうしの基布端部の重なりの厚みよりも広く、前記対向させ合わせて前記切り込み部に収められた基布端部は該芯棒の、切り欠き幅を狭める方向への捩じりによる塑性変形で該切り欠きに挟着されていることを特徴とする、請求項1に記載のブラシローラ。
【請求項4】
前記中空円筒形状の芯棒の両側端部に設けられた、円板形状のフランジ部材をさらに備える、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のブラシローラ。
【請求項5】
前記フランジ部材は、前記ブラシ繊維布と前記芯棒の円周部の厚みとを嵌合する凹部を有しており、
該両フランジ部材は、該芯棒に通された連結部材で互いに連結されている、請求項4に記載のブラシローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−39233(P2010−39233A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202559(P2008−202559)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】