説明

画像形成装置及びファームウェアの更新方法

【課題】画像形成装置自身に、ファームウェアプログラムの更新の許可・禁止を制御する機能を持たせることによりユーザあるいはサービスマンによる誤操作を抑止する。
【解決手段】ネットワーク経由で送信されたデータを受信する(301)と、機器への送信URL等の情報を元に、受信したデータが印刷データか、ファームウェアデータかを判断し、ファームウェアデータであった場合、受信したデータをファームウェア更新管理サービスモジュールへ転送する(302)。ファームウェア更新管理サービスモジュールは、データを受信したら予め設定されている更新許可フラグを参照し、更新が許可されているか否かを判定する(303)。更新が許可されていた場合、受信したデータによりファームウェアの更新を行い(304、305)、更新が許可されていなかった場合、受信したファームウェアデータを読み捨てる(306、307)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びファームウェアの更新方法に係り、特に、書き換え可能な記録媒体上にコントローラを動作させるためのファームウェアプログラムを保持し、ネットワーク経由でファームウェアを更新可能なプリンタ、複合装置(MFP)等の画像形成装置及びファームウェアの更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理装置を使用する電子機器の市場において、Windows(登録商標)やLinux、Mac 等のOS環境、ネットワーク環境が多岐にわたり、ベンダが製造したシステムのみでは部分的に不十分な点も見られるようになっており、特別顧客に向けた対応(以下、特注という)や、市場での任意のアプリケーションを追加可能な仕組み(以下、SDKという)が多く見られるようになった。
【0003】
また、ネットワークの普及に伴い、プリンタ、MFP等の画像形成装置を制御するためのプログラムであるコントローラファームウェアプログラムをネットワークを経由して更新することが可能な仕組みを持つ画像形成装置も、例えば、特許文献1等に記載されて知られている。
【特許文献1】特開2004−114674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した特注対応を施した画像形成装置は、何らかのカスタマイズがなされているため、ユーザあるいはサービスマンが、誤って標準仕様のファームウェアを上書きしてしまうと、カスタマイズされた部分が失われることになり、この結果、ユーザの業務に支障をきたすという問題点を生じさせてしまう。
【0005】
前述のような問題点を防ぐためには、機器に導入されているファームウェアを管理する必要があり、そのための管理作業がユーザにとって非常にわずらわしいものになるという問題点を生じさせていた。
【0006】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点に鑑み、画像形成装置自身に、ファームウェアプログラムの更新の許可・禁止を制御する機能を持たせることによりユーザあるいはサービスマンによる誤操作を抑止することができるようにした画像形成装置及びファームウェアの更新方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の第1の手段は、書き換え可能な記録媒体上にコントローラを動作させるためのファームウェアプログラムを保持している画像形成装置において、ファームウェアの更新を許可あるいは禁止するフラグを設け、該フラグを参照することにより前記ファームウェアプログラムの更新処理の実行を制御するファームウェア更新管理サービスモジュールを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の第2の手段は、第1の手段において、前記フラグが、ネットワークを経由して操作することが可能であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第3の手段は、第2の手段において、前記フラグの操作が、ネットワーク管理者等の特定の認証を得られた利用者にのみ許可されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第4の手段は、第1、第2または第3の手段において、前記ファームウェアの更新が、ネットワークを経由して指示されることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の第5の手段は、書き換え可能な記録媒体上にコントローラを動作させるためのファームウェアプログラムを保持している画像形成装置におけるファームウェアの更新方法において、ファームウェアの更新を許可あるいは禁止するフラグを参照することにより前記ファームウェアプログラムの更新処理の実行を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カスタマイズされたファームウェアプログラムが導入された画像形成装置に対して、誤って標準ファームウェアを導入することを抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明の一実施形態による複合装置の画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。図1において、52はオペレーションパネル、60はコントローラボード、61はCPU、62はノースブリッジ(NB)、63はシステムメモリ(MEM−P)、64はローカルメモリ(MEM−C)、65はHDD、66はASIC、67はAGP(Accelerated Graphics Port)、68はFCU、69はG3規格対応ユニット、70はG4規格対応ユニット、79はエンジン、80はフラッシュメモリ、173はサウスブリッジ(SB)、174はNIC(Network Interface Card)、175はUSBデバイス、176はIEEE1394デバイス、177はセントロニクスデバイスである。
【0014】
図1に示す本発明の実施形態による複合装置は、コントローラボード60と、オペレーションパネル52と、FCU68と、エンジン79とを含んで構成されている。そして、FCU68は、G3規格対応ユニット69と、G4規格対応ユニット70とを有する。
【0015】
また、コントローラボード60は、CPU61と、ASIC66と、HDD65と、システムメモリ(MEM−P)63と、ローカルメモリ(MEM−C)64と、フラッシュメモリ80と、ノースブリッジ(以下、NBという)62と、サウスブリッジ(以下、SBという)173と、NIC174(Network Interface Card)と、USBデバイス175と、IEEE1394デバイス176と、セントロニクスデバイス177とを含んで構成されている。
【0016】
オペレーションパネル52は、コントローラボード60のASIC66に接続されている。また、SB173と、NIC174と、USBデバイス175と、IEEE1394デバイス176と、セントロニクスデバイス177とは、NB62にPCIバスにより接続されている。
【0017】
また、FCU68と、エンジン79とは、コントローラボード60のASIC66にPCIバスにより接続されている。
【0018】
なお、コントローラボード60は、ASIC66にローカルメモリ64、HDD65等が接続されると共に、CPU61とASIC66とがCPUチップセットのNB62を介して接続されている。このように、NB62を介してCPU61とASIC66とを接続すれば、CPU61のインタフェースが公開されていない場合に対応できる。
【0019】
また、ASIC66とNB62とは、PCIバスを介して接続されているのでなく、AGP(Accelerated Graphics Port)67を介して接続されている。本発明の実施形態では、このように、後述するアプリケーション層やプラットホーム層を形成する1つ以上のプロセスを実行制御するため、ASIC66とNB62とを低速のPCIバスではなくAGP67を介して接続しておくことにより、パフォーマンスの低下を防いでいる。
【0020】
CPU61は、複合装置の全体の制御を行うものであり、後述する各種のサービスモジュールをOS上にそれぞれプロセスとして起動して実行させると共に、アプリケーション層を形成するプリンタアプリ、コピーアプリ、ファックスアプリ、スキャナアプリ、ネットファイルアプリ等を起動して実行させる。
【0021】
NB62は、CPU61、システムメモリ63、SB173及びASIC66を接続するためのブリッジである。システムメモリ63は、複合装置の描画用メモリ等として用いるメモリである。SB173は、NB62とPCIバス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。また、ローカルメモリ64は、コピー用画像バッファ、符号バッファとして用いるメモリである。フラッシュメモリ80には、コントローラを動作させるためのファームウェアプログラムがネットワーク経由で更新可能に格納される。
【0022】
ASIC66は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのICである。HDD65は、画像の蓄積、文書データの蓄積、プログラムの蓄積、フォントデータの蓄積、フォームの蓄積などを行うためのストレージである。また、オペレーションパネル52は、ユーザからの入力操作を受け付けると共に、ユーザに向けた表示を行う操作部である。
【0023】
図2は本発明の一実施形態によるプリンタ装置の画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。図2において、21はネットワークインタフェース(I/F)、22はOS、23はシステム管理サービスモジュール、24はネットワーク管理サービスモジュール、25はファームウェア更新管理サービスモジュール、26はNV−RAM、27はプリンタアプリケーションモジュール、28はパネル表示モジュールである。
【0024】
図2に示すように、本発明の一実施形態によるプリンタ装置は、図示しないネットワークとプリンタ装置とを物理的に接続するためのインタフェースであるネットワークI/F21と、OS22と、システム管理サービスモジュール23、ネットワーク管理サービスモジュール24、ファームウェア更新管理サービスモジュール25、NV−RAM26によるサービス層と、パネル表示モジュール28を含むプリンタアプリケーションによるアプリケーション層とにより構成される。
【0025】
前述において、OS22は、画像形成装置のコントローラプログラムを動作させるためのオペレーティングシステムであり、各種サービスモジュール及びアプリケーションは、このOS22の上で動作する。
【0026】
サービス層のシステム管理サービスモジュール23は、画像形成装置の全体に関する機能を提供するサービスであり、サービス及びプロッタ等のリソース調停を行う。また、ネットワーク管理サービスモジュール24は、ネットワークに関するサービスを提供するモジュールであり、ネットワーク経由で受信した印刷データ、ファームウェアデータを受け付け、対象となるモジュールへ転送する機能を持つ。
【0027】
ファームウェア更新管理サービスモジュール25は、ファームウェアデータを受信し、そのデータの内容を検証し、データの内容が正しい場合にフラッシュメモリ80への書き込みを行ってシステムの再起動を行う。その際、本発明の実施形態は、NV−RAM26等に用意した更新許可フラグを参照し、受信したファームウェアデータをフラッシュメモリ80に書き込むか、そのデータを読み捨ててエラーとするかを制御する。
【0028】
プリンタアプリケーションモジュール27は、ネットワーク管理サービスモジュール24から印刷データを受け付けてデータのパース処理を行い、エンジン79に対して印字命令を出す。なお、図2に示す例は、プリンタ装置の機能構成の例としているので、プリンタアプリケーションモジュール27のみを示しているが、MFPの場合にはコピー、FAX、スキャナ等の他のアプリケーションモジュールがアプリケーション層に設けられることは言うまでもない。
【0029】
NV−RAM26は、本発明におけるファームウェアデータに対する予め設定される更新許可、禁止フラグを保持するための不揮発性RAMであり、前述のフラグの他に、管理者認証を行うためのアカウント名やパスワード等を保持する。更新許可、禁止フラグの設定は、ネットワーク管理者等の特定の認証を得られた利用者にのみフラグ操作を許可して行わせることができ、また、ネットワークを経由してフラグを操作することができる。
【0030】
図3は本発明の実施形態での各モジュールの働きと処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0031】
(1)ネットワークに接続されたユーザ機器からネットワーク経由で送信された全てのデータは、画像形成装置上のネットワーク管理サービスモジュール24により受信される(ステップ301)。
【0032】
(2)ネットワーク管理サービスモジュール24は、機器への送信URL等の情報を元に、受信したデータが印刷データか、ファームウェアデータかを判断し、ファームウェアデータであった場合、受信したデータをファームウェア更新管理サービスモジュール25へ転送する(ステップ302)。
【0033】
(3)ファームウェア更新管理サービスモジュール25は、データを受信したらNV−RAM26上に保持された更新許可フラグを参照し、更新が許可されているか否かを判定する(ステップ303)。
【0034】
(4)ステップ303の判定で、更新が許可されていた場合、ファームウェア更新管理サービスモジュール25は、データの内容を検証し、検証結果が妥当であれば、ネットワーク管理サービスモジュール24に対して正常更新を応答し、受信したデータをフラッシュメモリ80へ書き込み、全てのデータの書き込みが完了したら装置全体に再起動をかけ、ここでの処理を終了する(ステップ304、305)。
【0035】
(5)ステップ303の判定で、更新が許可されていなかった場合、ファームウェア更新管理サービスモジュール25は、受信したファームウェアデータを読み捨てて、ネットワーク管理サービスモジュール24に対して更新が許可されていない旨のエラーを応答して、ここでの処理を終了する(ステップ306、307)。
【0036】
前述した本発明の実施形態での処理は、プログラムにより構成し、装置に備えられるCPUに実行させることができ、また、それらのプログラムは、FD、CDROM、DVD等の記録媒体に格納して提供することができ、また、ネットワークを介してディジタル情報により提供することができる。
【0037】
前述した本発明の実施形態によれば、カスタマイズされたファームウェアが導入された画像形成装置に対して、許可された管理者等が、ファームウェアの更新を禁止するフラグを予め設定しておくことにより、誤って標準ファームウェアを導入することを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態による複合装置の画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるプリンタ装置の画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態での各モジュールの働きと処理動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
21 ネットワークインタフェース(I/F)
22 OS
23 システム管理サービスモジュール
24 ネットワーク管理サービスモジュール
25 ファームウェア更新管理サービスモジュール
26 NV−RAM
27 プリンタアプリケーションモジュール
28 パネル表示モジュール
52 オペレーションパネル
60 コントローラボード
61 CPU
62 ノースブリッジ(NB)
63 システムメモリ(MEM−P)
64 ローカルメモリ(MEM−C)
65 HDD
66 ASIC
67 AGP(Accelerated Graphics Port)
68 FCU
69 G3規格対応ユニット
70 G4規格対応ユニット
79 エンジン
80 フラッシュメモリ
173 サウスブリッジ(SB)
174 NIC(Network Interface Card)
175 USBデバイス
176 IEEE1394デバイス
177 セントロニクスデバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き換え可能な記録媒体上にコントローラを動作させるためのファームウェアプログラムを保持している画像形成装置において、ファームウェアの更新を許可あるいは禁止するフラグを設け、該フラグを参照することにより前記ファームウェアプログラムの更新処理の実行を制御するファームウェア更新管理サービスモジュールを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記フラグは、ネットワークを経由して操作することが可能であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記フラグの操作は、ネットワーク管理者等の特定の認証を得られた利用者にのみ許可されていることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ファームウェアの更新は、ネットワークを経由して指示されることを特徴とする請求項1、2または3記載の画像形成装置。
【請求項5】
書き換え可能な記録媒体上にコントローラを動作させるためのファームウェアプログラムを保持している画像形成装置におけるファームウェアの更新方法において、ファームウェアの更新を許可あるいは禁止するフラグを参照することにより前記ファームウェアプログラムの更新処理の実行を制御することを特徴とするファームウェアの更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−4377(P2007−4377A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182167(P2005−182167)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】