説明

画像形成装置及びプログラム

【課題】キャリッジを昇降させてギャップ調整を行うとき、キャリッジ下降時に自重による速度変化の影響を受けて衝突音が発生したりする。
【解決手段】ギャップ調整手段50はキャリッジ3を移動させてギャップ下降レバー51、ギャップ上昇レバー52を押し込むことでキャリッジ3を下降、上昇させ、キャリッジ3を移動走査する主走査モータ5をPID制御で駆動制御し、キャリッジ3を下降させるときにはPID制御における比例制御のみを有効とし、キャリッジ3を上昇させるときにはPID制御における比例と、積分及び微分制御の少なくともいずれかとを有効としてモータ5を駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及びプログラムに関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置及びこの画像形成装置で使用されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
このような画像形成装置においては、ヘッドと被記録媒体(媒体搬送面)の間隔(ギャップ)が滴着弾位置精度に影響を与えることから、被記録媒体の厚みに応じてギャップを調整するギャップ調整機構を備えることが知られている。
【0005】
この場合、ギャップ調整機構を駆動するための駆動源を備えるもの(特許文献1)がある。また、キャリッジに設けた第1当接部と、キャリッジの走査方向に応じて収納、突出する第2当接部とを有し、フレーム側に第2当接部の収納、突出を切替える第1、第2押圧手段を備え、第1当接部又は第2当接部がフレームに対して選択的に摺接することによってキャリッジの姿勢が変わり、ギャップが調整されるようにしたもの(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−103835号公報
【特許文献2】特開2004−322515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に開示されているように、ギャップ調整手段を駆動するための独立の駆動源を備えると構成が複雑になり、コストが高くなるという問題が生じる。この点は、特許文献2に開示されているように、キャリッジの移動走査でメカ的にキャリッジの姿勢を替える手段を備えることによって解決できるが、メカ的な構成が複雑になるという課題がある。
【0008】
ところで、ギャップ調整機構の構成を簡略化し、コストを低減するために、キャリッジの主走査動作をキャリッジの昇降動作に変換する場合、キャリッジの上昇時及び下降時のいずれでも同じモータの駆動制御を行うと、キャリッジを下降させるとき(ギャップを小さくするとき)にはキャリッジの自重によってキャリッジの移動速度が高くなり、キャリッジの減速が間に合わず、キャリッジが側板に衝突して、衝突音の発生や部品の破損が生じやすくなるという課題がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、ギャップ調整に伴う衝突音や部品破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出するヘッドと、
前記ヘッドが搭載されたキャリッジと、
前記キャリッジを摺動自在に支持し、昇降可能に配設されたガイドロットと、
前記ヘッドに対向して被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記ガイドロッドを昇降させて前記キャリッジを昇降させることで、前記ヘッドと前記被記録媒体とのギャップを調整するギャップ調整手段と、
前記キャリッジを主走査方向に移動させるモータと、
前記モータをPID制御で駆動制御するモータ駆動制御手段と、を備え、
前記ギャップ調整手段は、前記キャリッジの主走査方向への移動を前記ガイドロッドの昇降動作に変換する手段を有し、
前記モータ駆動制御手段は、
前記キャリッジを下降させて前記ギャップを小さくするときには前記PID制御における比例制御のみを有効とし、前記キャリッジを上昇させて前記ギャップを大きくするときには前記PID制御における比例制御、積分及び微分制御の少なくともいずれかを有効とする
構成とした。
【0011】
ここで、前記変換する手段は、
前記キャリッジが主走査方向の第1の方向に移動されることで押される第1レバーと、前記第1レバーが前記キャリッジで押されることで前記ガイドロッドを上昇させる上昇機構と、
前記キャリッジが主走査方向の第2の方向に移動されることで押される第2レバーと、前記第2レバーが前記キャリッジで押されることで前記ガイドロッドを下降させる下降機構と、を有する
構成とできる。
【0012】
本発明に係るプログラムは、
液滴を吐出するヘッドと、
前記ヘッドが搭載されたキャリッジと、
前記キャリッジを摺動自在に支持し、昇降可能に配設されたガイドロットと、
前記ヘッドに対向して被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記ガイドロッドを昇降させて前記キャリッジを昇降させることで、前記ヘッドと前記被記録媒体とのギャップを調整するギャップ調整手段と、
前記キャリッジを主走査方向に移動させるモータと、
前記モータをPID制御で駆動制御するモータ駆動制御手段と、を備え、
前記ギャップ調整手段は、前記キャリッジの主走査方向への移動を前記ガイドロッドの昇降動作に変換する手段を有する
画像形成装置における前記モータを駆動制御して前記ギャップを調整する処理をコンピュータに行なわせるプログラムであって、
前記キャリッジを下降させて前記ギャップを小さくするときには前記PID制御における比例制御のみを有効とし、前記キャリッジを上昇させて前記ギャップを大きくするときには前記PID制御における比例制御、積分及び微分制御の少なくともいずれかを有効とする処理を行わせる
構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像形成装置によれば、ギャップ調整手段は、キャリッジの主走査方向への移動をガイドロッドの昇降動作に変換する手段を有し、モータ駆動制御手段は、キャリッジを下降させてギャップを小さくするときにはPID制御における比例制御のみを有効とし、キャリッジを上昇させてギャップを大きくするときにはPID制御における比例制御、積分及び微分制御の少なくともいずれかを有効とする構成としたので、簡単な構成でギャップ調整を行うことができるとともに、キャリッジを下降させるときの自重の影響を低減できて、ギャップ調整に伴う衝突音や部品破損を防止することができる。
【0014】
本発明に係るプログラムによれば、ギャップ調整手段はキャリッジの主走査方向への移動をガイドロッドの昇降動作に変換する手段を有する画像形成装置におけるモータを駆動制御してギャップを調整する処理を行なうとき、キャリッジを下降させてギャップを小さくするときにはPID制御における比例制御のみを有効とし、キャリッジを上昇させてギャップを大きくするときにはPID制御における比例制御、積分及び微分制御の少なくともいずれかを有効とする構成としたので、簡単な構成でギャップ調整を行うことができるようにしても、キャリッジを下降させるときの自重の影響を低減できて、ギャップ調整に伴う衝突音や部品破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】ギャップ調整手段の説明に供する斜視説明図である。
【図4】同装置の制御部を説明する概略ブロック説明図である。
【図5】モータ駆動制御に関わる部分の説明に供するブロック図である。
【図6】ギャップ調整制御の説明に供するフロー図である。
【図7】キャリッジ上昇時の説明に供する説明図である。
【図8】キャリッジ下降時の説明に供する説明図である。
【図9】比較例におけるキャリッジ下降時の説明に供する説明図である。
【図10】キャッピング時のキャリッジの昇降制御の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明を適用する画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概要について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同インクジェット記録装置の概略構成を示す平面説明図、図2は同じく正面説明図である。
このインクジェット記録装置は、左右の側板100L,100R間に横架した主ガイドロッド1及び図示しない従ガイド部材でキャリッジ3を摺動自在に保持し、主走査モータ5によって、駆動プーリ6と従動プーリ7間に渡したタイミングベルト8を介して主走査方向に移動走査する。
【0017】
このキャリッジ3には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド4y、4m、4c、4k(区別しないときは「記録ヘッド4」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0018】
記録ヘッド4を構成する液体吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0019】
一方、用紙を搬送するために、用紙を静電吸着して記録ヘッド4に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト12を備えている。この搬送ベルト12は、無端状ベルトであり、搬送ローラ13とテンションローラ14との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成し、周回移動しながら帯電ローラ15によって帯電(電荷付与)される。
【0020】
また、搬送ベルト12は、副走査モータ16によってタイミングベルト17及びタイミングプーリ18を介して搬送ローラ13が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0021】
さらに、キャリッジ3の主走査方向の一方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4の維持回復を行う維持回復機構21が配置され、他方側には搬送ベルト12の側方に記録ヘッド4から空吐出を行う空吐出受け21がそれぞれ配置されている。
【0022】
なお、維持回復機構20は、例えば記録ヘッド4のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングする4個のキャップ部材31、ノズル面を払拭するワイパ部材32、画像形成に寄与しない液滴(空吐出滴)を受ける空吐出受け33などで構成されている。
【0023】
また、キャリッジ3の主走査方向に沿って両側板100L、100R間に、所定のパターン(位置識別部、目盛り、スリットなどともいう。以下「スリット」という。)を形成したエンコーダスケール23を張装し、キャリッジ23にはエンコーダスケール23のスリットを読取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ24を設け、これらのエンコーダスケール23とエンコーダセンサ24によってキャリッジ23の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)を構成している。
【0024】
また、搬送ローラ13の軸にはエンコーダスケール(コードホイール)25を取り付け、このエンコーダスケール25に形成したパターン(スリット)を検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ26を設けて、これらのエンコーダスケール25とエンコーダセンサ26によって搬送ベルト12の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)を構成している。
【0025】
このように構成したこの画像形成装置においては、図示しない給紙トレイから用紙が帯電された搬送ベルト12上に給紙されて吸着され、搬送ベルト12の周回移動によって用紙が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ3を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド4を駆動することにより、停止している用紙にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙を図示しない排紙トレイに排紙する。
【0026】
次に、記録ヘッド3と用紙搬送面を形成する搬送ベルト12との間のギャップを調整するギャップ調整手段について図3も参照して説明する。なお、図3は同ギャップ調整手段の説明に供する斜視説明図である。
ギャップ調整手段は、キャリッジ3の主走査方向への移動をガイドロッド1の昇降動作、すなわち、キャリッジ3の昇降動作に変換する手段としての変換機構50を有している。
【0027】
変換機構50は、上昇機構であり、キャリッジ3の主走査方向の一方側(図1参照)に配置した第1レバーであるギャップ上昇レバー52を有し、ギャップ上昇レバー52の端部にはギヤ53が取付けられ、ギヤ53に噛み合うギヤ54を有し、ギヤ54には回転部材55が取付けられている。一方、ガイドロッド1は、側板100L、100Rに対して昇降可能に配設され、端部に回転部材55に圧接される昇降部材(支持受け部材)56が設けられている。
【0028】
また、図示しないが、キャリッジ3の主走査方向の他方側(図1参照)に配置した第2レバーであるギャップ下降レバー51を有し、同様な下降機構としての変換機構50が設けられている。
【0029】
そして、ギャップを大きくする(広くする)ときには、キャリッジ3を、ギャップ上昇レバー52を押し込む方向(これを「主走査方向の第1の方向」とする)側に移動させて、ギャップ上昇レバー52を押し込むことによって、ギヤ54が回転されて回転部材55が図3で矢示方向に回転し、昇降部材56が同じく矢示方向に上昇することで、ガイドロッド1が上昇するので、キャリッジ3が搬送ベルト12の搬送面に対して上昇して、ギャップが大きくなる。
【0030】
また、ギャップを小さくする(狭くする)ときには、キャリッジ3を、ギャップ下降レバー51を押し込む方向(これを「主走査方向の第2の方向」とする)側に移動させて、ギャップ下降レバー51を押し込むことによって、同様にしてガイドロッド1が下降するので、キャリッジ3が搬送ベルト12の搬送面に対して下降して、ギャップが小さくなる。
【0031】
なお、昇降機構としての変換機構50は、下降機構でキャリッジ3を下降させてギャップを小さくするときには、上述したと逆方向に移動されてギャップ上昇レバー52は元の位置に戻り、同様に、下降機構としての変換機構50は、上昇機構でキャリッジ3を上昇させてギャップを大きくするときには、上述したと逆方向に移動されてギャップ下降レバー51は元の位置に戻る。
【0032】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部200は、この装置全体の制御を司るCPU201と、CPU201が実行する、本発明におけるギャップ調整時のキャリッジの移動制御(主走査モータ5の駆動制御)を行う本発明に係るプログラムを含む各種プログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205を備えている。
【0033】
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F206と、記録ヘッド4を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド4を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ4及び副走査モータ16を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ15にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ24、26からの各検出信号、温度センサなどの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル214が接続されている。
【0034】
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置(イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などでもよい。:ホスト)600側からの画像データ等をケーブル或いはネットを介してI/F206で受信する。
【0035】
そして、制御部200のCPU201は、I/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データをヘッド駆動制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0036】
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
【0037】
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド4の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド4の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド47を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0038】
また、CPU201は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ24からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ5に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ4を駆動する。同様に、ロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ26からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ16対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介しモータドライバを介して副走査モータ16を駆動する。
【0039】
次に、この制御部におけるキャリッジを移動走査する主走査モータの駆動制御に関わる部分(本発明に係るモータ駆動制御手段)について図4のブロック説明図を参照して説明する。
制御部200のCPU201などで構成されるエンジン制御部301は、目標とする位置と速度と、比例演算するPパラメータ、積分演算するIパラメータ、微分演算するDパラメータの指示を与える。
【0040】
なお、PID制御に代えてPI制御のみ、あるいは、PD制御のみを行なう制御方式を採用することもできる。
【0041】
位置速度検出部302は、エンコーダセンサ24からの検出パルスをカウントしてキャリッジ3の移動の速度変換と移動量を検出する。比較演算部303は、エンジン制御部301から指示された目標位置、目標速度に対する偏差量を算出して、PID制御演算部304に与える。PID制御演算部304は、比較演算部303からの偏差量に対しPID(比例、積分、微分)演算をして、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)出力値を求め、モータドライバ210にPWM出力設定を行い、モータドライバ210は設定されたPWM出力値に応じて主走査モータ5を駆動する。
【0042】
次に、本発明におけるギャップ調整制御について図6のフロー図を参照して説明する。
このギャップ調整制御(処理)は、ギャップ調整が必要と判定されたときにエントリイされて、ギャップ調整を開始し、まず、ギャップ調整方向を判別する。このギャップ調整方向の判別は、画像形成情報に付加されている用紙(媒体)の種類(種別)と現在のギャップの大きさに基づいて行なう。例えば、用紙種別が厚みのある厚紙、封筒であり、現在のギャップが小であれば、ギャップ大(キャリッジ上昇)と判定する。
【0043】
そして、ギャップ調整方向がギャップを大きくする(キャリッジを上昇する)ときには、主走査モータ5を、ギャップ上昇レバー52を押し込む方向に移動させて、キャリッジ3を上昇させることでギャップを拡大(大きく)する。
【0044】
これに対し、ギャップ調整方向がギャップを小さくする(キャリッジを下降する)ときには、主走査モータ5を、ギャップ下降レバー51を押し込む方向に移動させて、キャリッジ3を下降させることでギャップを縮小(小さく)する。
【0045】
次に、キャリッジ3を上昇させてギャップを大きくするときのモータ駆動制御について図7を参照して説明する。
このキャリッジ上昇時には、エンジン制御部301からPIDの各パラメータとして、いずれも「0」以外の値を与え、PID制御演算部304における比例制御(P制御)、積分制御(I制御)、微分制御(D制御)をいずれも有効とし、比較演算部303からの偏差量に対してP、I、Dの各制御による演算を行わせるようにする。なお、I制御或いはD制御のいずれかを行なうようにすることもできる。
【0046】
そして、エンジン制御部301は、図7(a)に破線で示すキャリッジ3の速度プロファイルに従って目標速度を比較演算部303に与えることにより、比較演算部303からはキャリッジ3の検出速度との偏差量が算出されてPID制御演算部304に与えられるので、PID制御演算部304は偏差量に対してP制御、I制御、D制御によるPWM出力値を演算してモータドライバ210に与える。このときPID制御演算部304からは例えば図7(b)に示すようなPWM出力値がモータドライバ210に与えられる。これにより、キャリッジ3は図7(a)に実線で示すような速度(実速度)で移動する。
【0047】
次に、キャリッジ3を下降させてギャップを小さくするときのモータ駆動制御について図8を参照して説明する。
このキャリッジ下降時には、エンジン制御部301からPIDの各パラメータとして、Pパラメータは「0」以外の値を与え、I及びDの各パラメータは「0」を与え、PID制御演算部304によおける比例制御(P制御)のみを有効とし、積分制御(I制御)及び微分制御(D制御)をいずれも無効とし、比較演算部303からの偏差量に対してP制御(演算)のみを行わせるようにする。
【0048】
そして、エンジン制御部301は、図8(a)に破線で示すキャリッジ3の速度プロファイルに従って目標速度を比較演算部303に与えることにより、比較演算部303からはキャリッジ3の検出速度との偏差量が算出されてPID制御演算部304に与えられるので、PID制御演算部304は偏差量に対してP制御のみによるPWM出力値を演算してモータドライバ210に与える。このときPID制御演算部304からは例えば図8(b)に示すようなPWM出力値がモータドライバ210に与えられる。これにより、キャリッジ3は図8(a)に実線で示すような速度(実速度)で移動する。
【0049】
つまり、キャリッジ3の下降時にはキャリッジ3の自重が下降速度に影響を与えるために、目標速度に対してキャリッジ3の速度が上昇する傾向になる。そこで、キャリッジ3を下降させるときには、制御遅れのない比例制御のみでモータ3をフィードバック制御することにより、ブレーキ効果として最も有効なモータ出力の逆転により上昇するキャリッジ速度を抑えこむことでより目標速度に近づけることができる。
【0050】
この点について、比較例として、キャリッジ下降時にもPIDの各制御をいずれも有効にして演算を行なった場合(キャリッジ上昇時と同じ駆動制御を行った場合)の例を図9に示している。
キャリッジ3を降下させるとき、キャリッジ3の重さによって急激に降下することになる。このとき、PID制御演算部304でPIDの各演算を行なっていると、PWM出力値は図9(b)に示すようになる。つまり、キャリッジ2の自重による降下速度の上昇に対して積分演算では制御遅れが発生し、また、継続的に発生する外乱に微分演算で対処することができなくなる。
【0051】
このように、キャリッジ3の自重による速度変化に対する制御遅れが発生することから、図9(a)に示すように、キャリッジ3の実速度(実線図示)は、加速から等速に移行するときに目標速度(破線図示)に対して大きくオーバーシュートし、また、等速から減速に移行するときに応答遅れによるオーバーシュートが発生し、キャリッジ3が側板に衝突したり、あるいは、ガイドロッド1の支持受けにも勢いよく衝突してしまうことになる。
【0052】
これに対し、本発明では、キャリッジ下降時は制御遅れのない比例制御のみでフィードバック制御するので、キャリッジ速度をより速度プロファイル(目標速度)に近づけた速度で制御することができ、キャリッジが側板などに衝突することもなくなる。
【0053】
なお、上記実施形態では、キャリッジを下降させるとき(ギャップを小さくするとき)にはPIDのうちのP制御のみを有効とし、キャリッジを上昇させるとき(ギャップを大きくするとき)にはPIDの各制御のいずれも使用するようにしているが、搬送手段側(上記の例では搬送ベルト側)を昇降させることもでき、この場合には、搬送手段を下降させるとき(ギャップを大きくするとき)にはPIDのうちのP制御のみを有効とし、搬送手段を上昇させるとき(ギャップを小さくするとき)にはPIDのいずれも使用するようにすればよい。
【0054】
このように、ギャップ調整手段は、キャリッジの主走査方向への移動を前記ガイドロッドの昇降動作に変換する手段を有し、モータ駆動制御手段は、キャリッジを下降させてギャップを小さくするときにはPID制御における比例制御のみを有効とし、キャリッジを上昇させてギャップを大きくするときにはPID制御における比例制御、積分及び微分制御の少なくともいずれかを有効とする構成とすることで、簡単な構成でギャップ調整を行うことができるとともに、キャリッジを下降させるときの自重の影響を低減できて、ギャップ調整に伴う衝突音や部品破損を防止することができる。
【0055】
次に、記録ヘッドを維持回復機構のキャップでキャッピングするときの制御について図10のフロー図を参照して説明する。
維持回復機構20のキャップ21によって記録ヘッド4のノズル面をキャッピングするときには、記録ヘッド4の高さ位置を確実に封止される位置に設定する必要がある。そこで、記録ヘッド4のキャッピングを開始するときには、主走査モータ5を駆動制御してギャップ上昇制御を実施したこと示す値を保持したレジスタやフラグを参照して、現在のギャップ位置(キャリッジ高さ位置)を判定する。
【0056】
そして、キャリッジが上昇位置にあるときには、主走査モータ5を駆動制御してキャリッジ3を下降させる制御を行った後キャッピングを行い、キャリッジが下降位置にあるときには、そのままキャッピングを行う。
【0057】
以上のギャップ調整におけるモータの駆動制御に係る処理は、ROM202に格納されているプログラムによってコンピュータに実行させる。このプログラムは、情報処理装置側にダウンロードして画像形成装置にインストールすることができ、あるいは、記憶媒体に記憶して提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ガイドロッド
2 キャリッジ
4、4k、4c、4m、4y 記録ヘッド
20 維持回復機構
50 上昇機構
51 ギャップ下降レバー
52 ギャップ上昇レバー
200 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するヘッドと、
前記ヘッドが搭載されたキャリッジと、
前記キャリッジを摺動自在に支持し、昇降可能に配設されたガイドロットと、
前記ヘッドに対向して被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記ガイドロッドを昇降させて前記キャリッジを昇降させることで、前記ヘッドと前記被記録媒体とのギャップを調整するギャップ調整手段と、
前記キャリッジを主走査方向に移動させるモータと、
前記モータをPID制御で駆動制御するモータ駆動制御手段と、を備え、
前記ギャップ調整手段は、前記キャリッジの主走査方向への移動を前記ガイドロッドの昇降動作に変換する手段を有し、
前記モータ駆動制御手段は、
前記キャリッジを下降させて前記ギャップを小さくするときには前記PID制御における比例制御のみを有効とし、前記キャリッジを上昇させて前記ギャップを大きくするときには前記PID制御における比例制御、積分及び微分制御の少なくともいずれかを有効とする
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記変換する手段は、
前記キャリッジが主走査方向の第1の方向に移動されることで押される第1レバーと、前記第1レバーが前記キャリッジで押されることで前記ガイドロッドを上昇させる上昇機構と、
前記キャリッジが主走査方向の第2の方向に移動されることで押される第2レバーと、前記第2レバーが前記キャリッジで押されることで前記ガイドロッドを下降させる下降機構と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
液滴を吐出するヘッドと、
前記ヘッドが搭載されたキャリッジと、
前記キャリッジを摺動自在に支持し、昇降可能に配設されたガイドロットと、
前記ヘッドに対向して被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記ガイドロッドを昇降させて前記キャリッジを昇降させることで、前記ヘッドと前記被記録媒体とのギャップを調整するギャップ調整手段と、
前記キャリッジを主走査方向に移動させるモータと、
前記モータをPID制御で駆動制御するモータ駆動制御手段と、を備え、
前記ギャップ調整手段は、前記キャリッジの主走査方向への移動を前記ガイドロッドの昇降動作に変換する手段を有する
画像形成装置における前記モータを駆動制御して前記ギャップを調整する処理をコンピュータに行なわせるプログラムであって、
前記キャリッジを下降させて前記ギャップを小さくするときには前記PID制御における比例制御のみを有効とし、前記キャリッジを上昇させて前記ギャップを大きくするときには前記PID制御における比例制御、積分及び微分制御の少なくともいずれかを有効とする処理を行わせる
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−116006(P2012−116006A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265324(P2010−265324)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】