説明

画像形成装置用シームレスベルトおよびその製法並びに該シームレスベルトを用いた画像形成装置

【課題】 シームレスベルトと表面保護層との界面の平滑性を低くし、ひいてはベルト表面の光沢度を低減し、使用に伴う光沢度変化を抑制することができるシームレスベルトを提供すること。
【解決手段】 シームレスベルトを構成するベルト基材の表面に継ぎ目のない表面保護層が2〜400g/25mm幅の剥離強度で剥離可能に設けられ、前記ベルト基材の表面に凹凸が形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーが混入された表面保護層が被着された成装置用シームレスベルトおよびその製法並びに該シームレスベルトを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年高画質なカラー画像形成を求めるというニーズから、転写紙にトナー像を転写する像担持体として中間転写体を用いる画像形成装置が広く採用されている。中間転写体の移動方向に沿って複数配置された1次転写体である感光体ドラムの表面に形成された各色のトナー像は、二次転写体である中間転写体に転写して重畳した後、さらに中間転写体から転写紙に二次転写される。
【0003】
かかる中間転写体として、又は転写搬送用ベルトとして、シームレスベルトが採用されている。しかしながら、シームレスベルトに対しては、半導電性領域の電気抵抗の均一性が要求され、種々の使用環境下で鮮明な画像を得るために、使用温度・湿度が変っても電気抵抗の変化が小さく、そして電圧を繰り返し印加しても電気抵抗の変化が小さいといった電気的特性や、応力をかけても伸びが少ないといった機械的特性のほか、ベルトの表面特性が要求されている。そして、トナーが直接接触する中間転写ベルトは、ベルトの表面状態(表面粗さ、表面の接触角、表面の汚れ、傷、折り目)が重要である。表面粗さと表面接触角は、概ねベルトの原料の配合や加工方法によって決まるのであるが、ベルト表面の汚れ、傷、折り目は、シームレスベルトに加工後のハンドリンリング時に生じる虞があり、製品の歩留まりの低下を招くという問題があった。
【0004】
かかる問題に対処するために、特許文献1に記載された発明では、当該シームレスベルトの表面に、継ぎ目のない表面保護層を弱接着する、すなわち使用時に容易に除去できる、2g/25mm〜400g/25mm幅の剥離強度をもつ継ぎ目のない表面保護層を設けることを提案している。
【0005】
特許文献1の発明では、シームレスベルトと表面保護層と界面の平滑性が高いので、ベルト表面の光沢度が高くなる。そのため、表面保護層を剥離してコート層を塗布しても、下地ベルト表面に起因し、光沢度が高くなる。ベルト上へのトナーの載り量は、ベルト表面の光沢度と光沢度ムラをセンサで読み込み制御をしているため、光沢度が高く、光沢度ムラが大きいと耐久変化等により制御が困難となる。ベルト表面の光沢度を下げるためには、表面コート層をベルト表面に塗布する際の塗布条件を調製する必要があった。しかし、塗布条件で調製した場合、コート層の光沢度が不均一になり易く、光沢度ムラが大きくなり、所望の光沢度が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−234127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は上記問題を解決するために、シームレスベルトと表面保護層との界面の平滑性を低くし、ひいてはベルト表面の光沢度を低減し、使用に伴う光沢度変化を抑制することができるシームレスベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は以下の構成からなる。
請求項1に係る発明は、画像形成装置用のシームレスベルトであって、該シームレスベルトを構成するベルト基材の表面に継ぎ目のない表面保護層が2〜400g/25mm幅の剥離強度で剥離可能に設けられ、
前記ベルト基材の表面に凹凸が形成されてなる
ことを特徴とする画像形成装置用のシームレスベルトに関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記表面保護層がフィラーを含み、当該フィラーが、前記ベルト基材の表面と前記表面保護層との間に介在されてなる
ことを特徴とする画像形成装置用のシームレスベルトに関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記表面保護層が剥離された状態で、前記ベルト基材の表面にコート層が塗布されてなる請求項1または2記載の画像形成装置用のシームレスベルトに関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、画像形成装置用のシームレスベルトの製法であって、
(a)当該シームレスベルトを構成するベルト基材の成分を混練機に投入し、混練して、ペレットを得る工程と、
(b)前記工程(a)で得たペレットを押し出し機により押し出して管状体を得る工程と、
(c)前記管状体を金型に被せた後、前記管状体に、表面保護層を構成する成分から形成された管状体を被せ、加熱して融着する工程と
を含み、
前記表面保護層を構成する成分に、フィラーが含まれてなる
ことを特徴とするシームレスベルトの製法に関する。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項3記載のシームレスベルトを中間転写ベルトとして用いた画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、画像形成装置用のシームレスベルトであって、該シームレスベルトを構成するベルト基材の表面に継ぎ目のない表面保護層が2〜400g/25mm幅の剥離強度で剥離可能に設けられ、前記ベルト基材の表面に凹凸が形成されてなることを特徴としているので、ベルト基材と表面保護層との界面の平滑性を低くすることができ、その結果シームレスベルト表面の光沢度を低減することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、前記表面保護層がフィラーを含み、当該フィラーが、前記ベルト基材の表面と前記表面保護層との間に介在されてなることを特徴としているので、当該フィラーによって、ベルト基材の表面に凹凸を形成することができる。その結果、ベルト基材と表面保護層との界面の平滑性を低くすることができ、シームレスベルト表面の光沢度を低減することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、前記表面保護層が剥離された状態で、前記ベルト基材の表面にコート層が塗布されてなることを特徴としているので、ベルト基材と表面保護層との界面の平滑性を低くし、ひいてはシームレスベルト表面の光沢度を低減することができ、使用に伴う光沢度変化を抑制することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、画像形成装置用のシームレスベルトの製法であって、 (a)当該シームレスベルトを構成するベルト基材の成分を混練機に投入し、混練して、レットを得る工程と、(b)前記工程(a)で得たペレットを押し出し機により管状体を得る工程と、(c)前記管状体を金型に被せた後、前記管状体に、表面保護層を構成する成分から形成された管状体を被せ、加熱して融着する工程とを含み、前記表面保護層を構成する成分に、フィラーが含まれてなることを特徴としているので、ベルト基材の表面に表面保護層を熱融着することによって、ベルト基材の表面に凹凸が形成され、ベルト基材と表面保護層との界面の平滑性を低くすることができ、ひいてはシームレスベルト表面の光沢度を低減することができるシームレスベルトを提供することができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、画像形成装置を構成する中間転写ベルトに請求項3記載のシームレスベルトを用いているので、一層改善された高画質なカラー画像形成を実現する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置用のシームレスベルトの製法の工程を示す説明図である。
【図1b】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置用のシームレスベルトの製法によって得られた保護表面付きのベルト基材から保護表面が除去された状態を示す説明図である。
【図1c】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置用のシームレスベルトの製法によって得られたシームレスベルトの断面説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る中間転写装置周辺の垂直断面拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る画像形成部周辺の垂直断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の画像形成装置用のシームレスベルトおよび該シームレスベルトの製法並びに該シームレスベルトを用いた画像形成装置について、添付図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。
図1aは本発明の一実施の形態に係る画像形成装置用のシームレスベルトの製法の工程を示す説明図である。図1bは本発明の一実施の形態に係る画像形成装置用のシームレスベルトの製法によって得られた保護表面付きのベルト基材から保護表面が除去された状態を示す説明図である。図1cは本発明の一実施の形態に係る画像形成装置用のシームレスベルトの製法によって得られたシームレスベルトの断面説明図である。図2は本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の概略断面図である。図3は本発明の一実施形態に係る中間転写装置周辺の垂直断面拡大図である。図4は本発明の一実施形態に係る画像形成部周辺の垂直断面拡大図である。
【0020】
実施の形態1
図1aを参照すると、本実施の形態に係る画像形成装置用のシームレスベルトの製法はつぎの工程(a)、工程(b)および工程(c)を含んでいる。なお、図1aにおける矢印は加熱処理をすることを示している。
【0021】
工程(a)において、ベルト基材(B1)および(B2)を構成する成分からなる素材を二軸混練機(図示略)に投入し、混練して、ベルト基材のペレットを得る。
図示されたベルト基材(B1)、(B2)は、上層部(B1)と下層部(B2)とから構成されているが、かかる構成に限られず、例えば、上層部(31)一層から構成されるもの(この場合は、一軸混練機を用いる)、上層部(B1)と下層部(B2)との間に中間層を備えるものであってもよく、このような構成も本発明に含まれる。本実施の形態に係るベルト基材(B1)、(B2)に採用される材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリイミドのほか水添スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエーテルエステル、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性エラストマーの一種または二種以上があげられる。
【0022】
工程(b)においては、前記工程(a)で得たベルト基材のペレットを、環状ダイス(図示略)を装着した押し出し機(図示略)を用いて取り出して管状体に成形する。
【0023】
工程(c)においては、前記工程(b)で得られた管状体を、金型に被せ、さらに前記管状体の上に、表面保護層(PL)を構成する成分から形成された管状体を被せ、加熱・加圧する。なお、表面保護層を構成する成分に、フィラー(F)が含まれている。
【0024】
表面保護層(PL)の材料として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン等の一種または二種以上を採用することができる。
面粗さのシームレスベルトを得ることができる。また、フィラー(F)の材料としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のほか、融点が溶融温度以上の有機物系フィラーや酸化チタンなどの無機系フィラーを採用することができ、フィラー(F)の形状は、図示された球形に限られず、無定形のものであってもよい。
【0025】
表面保護層(PL)は、ベルト基材(B1)と弱接着するために、ベルト基材(B1)と表面保護層(PL)との間の剥離強度は2〜400g/25mm幅とするのがよい。そのためには、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニル、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂が好ましい。
【0026】
本実施の形態に係るシームレスベルトは、前述のベルト基材(B1)の成分を二軸混練機で混練してペレットとした後、環状のダイスを装着した押出し機によって上層部(B1)、下層部(B2)を夫々単独に所定の厚さをもつ管状体を押し出し、その後当該管状体を輪切りにして、円筒状の金型に重ね合せて加熱することによりベルト基材(B1)、(B2)と表面保護層(PL)とを熱融着することによって得られ、熱融着によって、ベルト基材上層部(B1)に凹凸部(B1a)、(B1b)が生じ、ベルト基材(31)、(32)に表面保護層(PL)が熱融着されたものが得られる。その後、表面保護層(PL)を剥離して、除去して、図1bに示されるとおり、ベルト基材(B1)に凹凸部(B1a)、(B1b)が設けられたベルト基材(B1)、(B2)が得られる。
ついで、図1cに示されるように、凹凸部(B1a)、(B1b)が存在するベルト基材(31)の表面に、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系の合成樹脂材料からなるコート層(CL)を塗布することによって、中間転写ベルト用のシームレスベルトが得られる。
本実施の形態によれば、表面保護層(PL)を構成する成分に、フィラー(F)が含まれているので、ベルト基材(B1)の表面に表面保護層(PL)を熱融着することによって、ベルト基材上層部(31)の表面に凹凸部(B1a)、(B1b)が形成され、ベルト基材上層部(B1)と表面保護層(PL)との界面の平滑性を低くすることができ、ひいてはシームレスベルト表面の光沢度を低減することができる。
【0027】
実施の形態2
本実施の形態に係る画像形成装置について、図2、図3及び図4を用いてその構造の概略を説明する。
【0028】
図2に示すように、画像形成装置(1)の本体(2)の内部下方には、給紙カセット(3)が配置されている。給紙カセット(3)の左方には、第1用紙搬送部(4)が備えられている。第1用紙搬送部(4)は、給紙カセット(3)から送り出された用紙(P)を受け取り、本体(2)の左側面に沿って垂直上方に二次転写部(40)まで搬送する。
【0029】
給紙カセット(3)の上方であって、第1用紙搬送部(4)が形設された本体(2)の左側面とは反対側の側面である右側面の箇所には、手差し給紙部(5)が備えられている。手差し給紙部(5)には、給紙カセット(3)に入っていないサイズの用紙や厚紙、OHPシートのように1枚ずつ送り込みたいものが載置される。
【0030】
手差し給紙部(5)の左方には、第2用紙搬送部(6)が備えられている。第2用紙搬送部(6)は、給紙カセット(3)のすぐ上方にあって、手差し給紙部(5)から第1用紙搬送部(4)まで略水平に延び、第1用紙搬送部(4)に合流している。そして、第2用紙搬送部(6)は、手差し給紙部(5)から送り出された用紙などを受け取り、略水平に第1用紙搬送部(4)まで搬送する。
【0031】
一方、画像形成装置(1)は、外部コンピュータ(図示略)から原稿画像データを受信する。この画像データの情報は、第2用紙搬送部(6)の上方に配置された露光手段であるレーザ照射部(7)に送られる。レーザ照射部(7)により、画像データに基づいて制御されたレーザ光(L)が、画像形成部(20)に向かって照射される。
【0032】
図2及び図3に示すように、レーザ照射部(7)の上方には計4台の画像形成部(20)が、更にそれら各画像形成部(20)の上方には中間転写体を無端ベルトの形で用いた中間転写ベルト(8)が備えられている。
本実施の形態においては、この中間転写ベルト(8)として、実施の形態1において詳術した図1cに示されるように、凹凸部(B1a)、(B1b)が存在するベルト基材(31)の表面にコート層(CL)を塗布することによって得られたシームレスベルトを採用したことに最大の特徴がある。
この中間転写ベルト(8)は、複数のローラに巻き掛けられて支持され、駆動装置(図示略)により図3において時計方向に回転する。
【0033】
4台の画像形成部(20)は、図2及び図3に示すように、中間転写ベルト(8)の回転方向に沿って、回転方向上流側から下流側に向けて一列にして配置された所謂タンデム方式である。4台の画像形成部(20)とは、上流側から順に、マゼンダ用の画像形成部(20M)、シアン用の画像形成部(20C)、イエロー用の画像形成部(20Y)、及びブラック用の画像形成部(20B)である。これらの画像形成部(20)には、各色に対応する現像剤供給容器及び搬送手段(図示せず)により、現像剤(トナー)が補給される。なお、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、「M」「C」「Y」「B」の識別記号は、省略するものとする。
【0034】
各画像形成部(20)では、露光手段であるレーザ照射部(7)によって照射されたレーザ光(L)により原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。トナー像は、各画像形成部(20)の上方に備えられた一次転写部(30)で、中間転写ベルト(8)表面に一次転写される。そして、中間転写ベルト(8)の回転とともに、所定のタイミングで各画像形成部(20)のトナー像が中間転写ベルト(8)に転写されることにより、中間転写ベルト(8)表面にはマゼンダ、シアン、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
【0035】
中間転写ベルト(8)が用紙搬送路に懸かる箇所には、二次転写ローラ(41)を備えた二次転写部(40)が配置されている。中間転写ベルト(8)表面に一旦担持されたカラートナー像は、第1用紙搬送部(4)によって同期をとって送られてきた用紙に、中間転写ベルト(8)と二次転写ローラ(41)とが圧接して形成される二次転写ニップ部にて転写される。
【0036】
二次転写後、中間転写ベルト(8)表面に残存するトナーなどの付着物は、中間転写ベルト(8)に対してマゼンダ用の画像形成部(20M)の回転方向上流側に設けられた中間転写ベルト(8)用のクリーニング装置(9)によってクリーニング、回収される。
【0037】
二次転写部(40)の上方には、定着部(10)が備えられている。二次転写部(40)にて未定着トナー像を担持した用紙(P)は、定着部(10)へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0038】
定着部(10)の上方には、分岐部(11)が備えられている。定着部(10)から排出された用紙は、画面印刷を行わない場合、分岐部(11)から画像形成装置(1)の上部に設けられた用紙排出部(12)に排出される。
【0039】
分岐部(11)から用紙排出部(12)に向かって用紙が排出されるその排出口部分は、スイッチバック部(13)としての機能を果たす。両面印刷を行う場合には、このスイッチバック部(13)において、定着部(10)から排出された用紙の搬送方向が切りかえられる。そして、用紙は、分岐部(11)、定着部(10)の左方、及び二次転写部(40)の左方を通って、下方に送られ、再度第1用紙搬送部(4)を経て二次転写部(40)へと送られる。
【0040】
続いて、画像形成装置(1)の画像形成部(20)と中間転写ベルト(8)との周辺の詳細な構成について、図3に加えて、図4を用いて説明する。図4は、画像形成部周辺を示す垂直断面拡大図である。なお、4色の各画像形成部(20)は構造が共通するので、前述のように「M」「C」「Y」「B」の識別記号は省略するものとする。
【0041】
図4に示すように、画像形成部(20)には、その中心に像担持体である感光体ドラム(21)が備えられている。そして、感光体ドラム(21)の近傍には、その回転方向に沿って順に、帯電装置(50)、現像装置(60)、除電装置(70)、及びドラム用のクリーニング装置(80)が配置されている。一次転写部(30)は、感光体ドラム(21)の回転方向に沿って、現像装置(60)と除電装置(70)との間に設けられている。
【0042】
感光体ドラム(21)は、画像形成装置(1)内の用紙搬送方向と直角をなす用紙幅方向、すなわち図3の紙面奥行き方向に延び、その軸線方向を水平にして配置されている。感光体ドラム(21)は、アルミニウム等により構成される導電性ローラ状基体の外側に、真空蒸着等によって無機光導電性材料であるアモルファスシリコンの感光層を設けた無機感光体のドラムで、例えば直径が30mmである。感光体ドラム(21)は、図示しない駆動装置によって、その周速度が用紙搬送速度(150mm/s)とほぼ同じになるように回転する。なお、図2に示す4台の画像形成装置(20)は、DCモータとギアとを備えた夫々別々の駆動装置によって回転する。
【0043】
帯電装置(50)は、そのハウジング(51)の内部に、感光体ドラム(21)に接触する帯電ローラ(52)を備えている。帯電ローラ(52)は、所定の圧力で感光体ドラム(21)に圧接し、感光体ドラム(21)の回転に従って回転する。この帯電ローラ(52)は、感光体ドラム(21)の表面を所定の極性及び電位で一様に帯電させる。この時の帯電電位は、通常はプラス350Vである。なお、ハウジング(51)内には、感光体ドラム(21)に対して帯電ローラ(52)を隔てた位置にクリーニングブラシ(53)が備えられ、このクリーニングブラシ(53)により帯電ローラ(52)表面がクリーニングされる。
【0044】
現像装置(60)は、そのハウジング(61)の内部に、現像ローラ(62)と、供給スクリュー(63)とを備えている。現像ローラ(62)は、現像方式が接触、あるいは非接触であって、感光体ドラム(21)の近傍に設けられている。現像ローラ(62)には、感光体ドラム(21)の帯電極性と同極性のバイアスが印加される。次いで現像ローラ(62)は、現像剤であるトナーを帯電させるとともに感光体ドラム(21)の表面の静電潜像に移動させ、静電潜像を現像する。
【0045】
現像装置(60)は、現像剤として、極性キャリアと非極性トナーとを混合してなる2成分系トナーを使用するが、磁性あるいは非磁性の1成分系トナーを使用するタイプのものであっても構わない。また、感光体ドラム(21)表面を研磨するようにしてクリーニングするために、微量の酸化チタン、シリカなどの粉末を外添剤としてトナーに混入している。トナーは、現像剤供給容器(図示せず)に収容され、現像装置(60)の箇所まで図示しない搬送手段により搬送されて、供給スクリュー(63)によりハウジング(61)の内部に補給される。
【0046】
一次転写部(30)には、中間転写ベルト(8)を介して感光体ドラム(21)に接触する一次転写ローラ(31)が設けられている。一次転写ローラ(31)は、例えば直径8mmの金属軸に、6mmの厚さでEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡体を設けた直径20mmのローラであって、電気抵抗値は6.5log[Ω]である。一次転写ローラ(31)は、駆動装置を有することなく、中間転写ベルト(8)に接触することによって、中間転写ベルト(8)の回転に従って回転する。
【0047】
中間転写ベルト(8)を支持するローラのうち、図2に示すように、二次転写部(40)の近傍において、中間転写ベルト(8)を挟んで二次転写ローラ(41)に対応する箇所に設けられたローラが駆動ローラ(8a)である。
【0048】
図3に示すように、画像形成部(20)の除電装置(70)は、感光体ドラム(21)の回転方向に沿って、一次転写部(30)の下流側に配置されている。除電装置(70)は、LED(発光ダイオード)(71)と、反射板(72)とで構成されている。LED(71)は、クリーニング装置(80)のハウジング(81)の上面に取り付けられている。LED(71)の代わりに、EL(エレクトロルミネッセンス)光源、蛍光灯などを用いることもできる。反射板(72)は、LED(71)の上方にLED(71)をカバーするように設けられている。除電装置(70)は、LED(71)の除電光を感光体ドラム(21)に照射することにより、その表面の帯電電荷を除去し、次回の画像形成動作時における帯電工程のための準備を整える。
【0049】
クリーニング装置(80)は、感光体ドラム(21)の回転方向に沿って、一次転写部(30)、除電装置(70)のさらに下流側に配置されている。クリーニング装置(80)は、そのハウジング(81)の内部に、クリーニングローラ(82)、クリーニングブレード(83)、トナー受け部材(84)、搬送パドル(85)、及びトナー排出スクリュー(86)を備えている。クリーニングローラ(82)及びクリーニングブレード(83)は、感光体ドラム(21)に圧接し、感光体ドラム(21)表面に残留したトナーなどの付着物を除去してクリーニングする。感光体ドラム(21)表面から除去されたトナーは、トナー受け部材(84)の内側に一旦貯留され、そこから溢れたものが搬送パドル(85)を介してトナー排出スクリュー(86)により、クリーニング装置(80)の外部の図示しない廃棄トナー回収容器に排出される。
【実施例】
【0050】
以下、本発明に係るシームレスベルトに関する実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。
但し、本発明は下記実施例には限定されない。
【0051】
二軸混練機を用いて、熱可塑性ポリウレタン(TPU)100重量部に対し、ポリエチレンオキシ4.0重量部、過塩素酸リチウム0.4重量部を溶融混練してペレットAとして、
低密度ポリエチレン(LDPE)管状体A:低密度ポリエチレン100重量部に対し、PTFEフィラー(5μm)50重量部と、
低密度ポリエチレン(LDPE)管状体B:低密度ポリエチレン100重量部に対し、PTFEフィラー(5μm)20重量部と、
低密度ポリエチレン(LDPE)管状体B:低密度ポリエチレンのみ
を調製した。
実施例1
リップ径50mmの環状ダイスを装着した25mm押出し機を用いて、前記ペレットAを、厚さ500μm、折り径125mmの単層の管状体とした。得られた管状体を外径80mmの金型に被せ、さらにその上へ折り径125mm、厚さ50μmの低密度ポリエチレン(LDPE)管状体Aを被せて、加熱融着して、外径80mmの表面保護層付きシームレスベルトが得られた。得られた表面保護層付きシームレスベルトの表面保護層の剥離強度、表面粗さ(Rz)、光沢度を表1に示す。
実施例2
リップ径50mmの環状ダイスを装着した25mm押出し機を用いて、前記ペレットAを、厚さ500μm、折り径125mmの単層の管状体とした。得られた管状体を外径80mmの金型に被せ、さらにその上へ折り径125mm、厚さ50μmの低密度ポリエチレン(LDPE)管状体Bを被せて、加熱融着して、外径80mmの表面保護層付きシームレスベルトが得られた。得られた表面保護層付きシームレスベルトの表面保護層の剥離強度、表面粗さ(Rz)、光沢度を表1に示す。
比較例1
リップ径50mmの環状ダイスを装着した25mm押出し機を用いて、前記ペレットA
0mmの金型に被せ、さらにその上へ折り径125mm、厚さ50μmの低密度ポリエチレン(LDPE)管状体Cを被せて、加熱融着して、外径80mmの表面保護層付きシームレスベルトが得られた。得られた表面保護層付きシームレスベルトの表面保護層の剥離強度、表面粗さ(Rz)、光沢度を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1から、実施例1及び2の剥離強度は比較例1とほぼ同じであり、表面粗さは従来の4倍乃至10倍強であり、光沢度は従来の18乃至36%であった。このことから、本発明に係るベルト基材と表面保護層との界面の平滑性を低くすることができ、ひいてはシームレスベルト表面の光沢度を低減することができた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るシームレスベルトおよび該シームレスベルトを用いた画像形成装置は、様々なコピー機、プリンター、FAXに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・画像形成装置
8・・・中間転写ベルト
9・・・クリーニング装置
14・・濃度検出センサ
20・・画像形成部
21・・感光体ドラム
30・・一次転写部
31・・一次転写ローラ
40・・二次転写部
41・・二次転写ローラ
60・・現像装置
70・・除電装置
80・・クリーニング装置(ドラム用)
B1・・ベルト基材(上層部)
B2・・ベルト基材(下層部)
F・・・フィラー
PL・・表面保護層
CL・・コート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置用のシームレスベルトであって、該シームレスベルトを構成するベルト基材の表面に継ぎ目のない表面保護層が2〜400g/25mm幅の剥離強度で剥離可能に設けられ、
前記ベルト基材の表面に凹凸が形成されてなる
ことを特徴とする画像形成装置用のシームレスベルト。
【請求項2】
前記表面保護層がフィラーを含み、当該フィラーが、前記ベルト基材の表面と前記表面保護層との間に介在されてなる
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置用のシームレスベルト。
【請求項3】
前記表面保護層が剥離された状態で、前記ベルト基材の表面にコート層が塗布されてなる請求項1または2記載の画像形成装置用のシームレスベルト。
【請求項4】
画像形成装置用のシームレスベルトの製法であって、
(a)当該シームレスベルトを構成するベルト基材の成分を混練機に投入し、混練して、ペレットを得る工程と、
(b)前記工程(a)で得たペレットを押し出し機により押し出して管状体を得る工程と、
(c)前記管状体を金型に被せた後、前記管状体に、表面保護層を構成する成分から形成された管状体を被せ、加熱して融着する工程と
を含み、
前記表面保護層を構成する成分に、フィラーが含まれてなる
ことを特徴とするシームレスベルトの製法。
【請求項5】
請求項3記載のシームレスベルトを中間転写ベルトに用いた画像形成装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−78522(P2012−78522A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222920(P2010−222920)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】