説明

画像形成装置用ローラシャフト及びそれを備える導電性ローラ

【課題】ギア等の部材に傷や歪みが生じることなく組み付けることができ、製造が比較的容易で、しかも、加工コストの軽減が図られた画像形成装置用ローラシャフト及び、それを備える導電性ローラを提供する。
【解決手段】本発明は、先端に面取り部12によって取り囲まれた端面11を有し、この端面11をギア等の部材に通して当該部材を固定すると共に、画像形成装置内に回転可能に保持される画像形成装置用ローラシャフトである。このシャフト10は、面取り部12と端面11との稜線Lよりも径方向外側の位置に、当該面取り部12からシャフト軸線O方向に沿って延在するDカット部13を設けることにより、面取り部12が、シャフト10の最外周部から軸線Oに向かって径方向内側に、加工量Cだけ面取りすることにより形成されるのに対し、Dカット部13は、シャフト10の最外周部からのカット量Xが加工量Cよりも小さく(X<C)、稜線Lまでの深さよりも浅くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に面取り部によって取り囲まれた端面を有し、この端面をギア等の部材に形成した貫通孔に通して当該部材を固定すると共に、複写機、プリンタ等の画像形成装置内に回転可能に保持される画像形成装置用ローラシャフト及び、それを備える導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、給紙や印刷等を目的に、様々な種類のローラが内蔵されており、こうしたローラには、例えば、表面に被覆層を設けたローラ本体がローラシャフトを介して画像形成装置に回転可能に保持された現像ローラがある(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−19835号公報
【0003】
こうしたローラに設けたローラシャフトには、モータ等からの動力を入力するため、又は、隣接するローラとの動きを同期させるため、その先端からギアを通して当該ギアを固定保持している。
【0004】
このため、ギアを挿入し易くする目的で、ローラシャフトの先端の角部を面取りすると共に、ローラシャフトの先端から挿入したギアの空転を防止する目的で、ローラシャフトの先端からシャフト軸線方向に沿った一部を取り除いてDカット部を形成している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、図4(a),(b)はそれぞれ、ローラシャフト20の端面21とこの端面21を取り囲む面取り部22との稜線(先端エッジ)Lからシャフト20の軸線に沿ってDカット部23を形成した状態を示す側面図及び斜視図である。
【0006】
このようにDカット部23がシャフト端面21と干渉する深さで形成されると、Dカット部23における先端エッジEは、図4(a)に示すように端面21に対して直角をなす。こうした直角なエッジは、ギア孔にローラシャフトを挿入するに当たりギア孔を傷つけて歪みを生じさせる虞があり、特に、ギアが樹脂で形成されている場合には、こうした問題を生じやすい。
【0007】
また、図4のように、Dカット部23をシャフト端面21と干渉する深さに形成する場合、その切削方向がシャフト端面21に対して直角となるため、Dカット部23における先端エッジEにバリが発生することがある。
【0008】
このため、シャフト端面21と干渉する深さにDカット部23を形成する場合には、以下のような追加工が必要となる。
【0009】
図5(a),(b)はそれぞれ、図4に示す先端エッジEを面取り加工した状態を示す側面図及び斜視図である。
【0010】
ここでは、先端エッジEを面取り加工することにより、新たな面取り部24が形成されている。こうした面取り部24を形成すれば、ローラシャフト20は、ギア孔に挿入する際の当たりが小さく、バリの無いものとなる。
【0011】
しかしながら、こうしたシャフト端面21と干渉する深さにDカット部23を形成するローラシャフトは、上述のように、Dカット部23における先端エッジEを取り除くための追加工をする必要があるため、製造工程及び加工コストの点で改善の余地がある。
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、ギア等の部材に傷や歪みが生じることなく組み付けることができ、製造が比較的容易で、しかも、加工コストの軽減が図られた画像形成装置用ローラシャフト及び、それを備える導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、先端に面取り部によって取り囲まれた端面を有し、この端面をギア等の部材に形成した貫通孔に通して当該部材を固定すると共に、画像形成装置内に回転可能に保持される画像形成装置用ローラシャフトであって、前記面取り部と前記端面との稜線よりも径方向外側の位置に、当該面取り部からシャフト軸線方向に沿って延在するDカット部を備えることを特徴とするものである。
【0014】
更に詳細には、シャフトの先端角部を取り除いてなる前記面取り部が、シャフトの最外周部からシャフト軸線に向かって径方向内側に、加工量Cだけ面取りすることにより形成されるのに対し、前記Dカット部は、シャフトの最外周部からのカット量Xが加工量Cよりも小さく(X<C)、即ち、前記Dカット部の深さは、シャフトの最外周部から前記面取り部と前記端面との稜線Lまでの深さよりも浅くする。
【0015】
この場合、前記面取り部は、Dカット部を形成する前の外観形状が、前記端面と共に、円すい台形状又は球帯形状を形成してなるものであることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、前記部材として樹脂製のギアを備えるものであることが好ましい。
【0017】
更に、本発明の導電性ローラは、上記の画像形成装置用ローラシャフトと、この画像形成装置用ローラシャフトを取り囲んで一体に固定されるローラ本体とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の画像形成装置用ローラシャフトは、先端に面取り部によって取り囲まれた端面を有し、前記面取り部と前記端面との稜線よりも径方向外側の位置に、当該面取り部からシャフト軸線方向に沿って延在するDカット部を備えることにより、このDカット部と面取り部とにより形成される先端エッジは、ギア等の部材への挿入時の当たりが強く、バリを生じさせ易い直角に立ったエッジではなく、直角よりも大きな鈍角をなすエッジとなる。
【0019】
このため、本発明によれば、ギア等の部材に形成した貫通孔に挿入するに際し、Dカット部における先端エッジが、前記部材に傷を付けたり、その貫通孔を歪ませることがない。しかも、本発明によれば、上述したように、Dカット部を設けても、Dカット部における先端エッジは鈍角となるため、その加工時においてバリを生じさせ難い。このため、エッジを取り除くための後加工を行う必要もない。
【0020】
従って、本発明によれば、ギア等の部材に傷や歪みが生じることなく組み付けることができ、製造が比較的容易で、しかも、加工コストの軽減が図られた画像形成装置用ローラシャフトを提供することができる。
【0021】
また本発明において、前記面取り部は、前記端面と共に、円すい台形状又は球帯形状を形成してなるものであれば、Dカット部と前記面取り部との稜線は、先端に向かって凸となるR形状となるため、ローラシャフトをギア等の部材に通したときに、前記稜線に沿った両側部分での引っ掛かりも抑えられるため、組み付け時の作業性が向上し、更に容易な製造が実現される。
【0022】
特に本発明は、前記部材として樹脂製のギアを備えるものであれば、当該ギアに傷や歪みが生じることなく、精度の高い組み付けが実現され、製造が比較的容易で、しかも、加工コストの軽減が図られたギア付きローラシャフトを提供することができる。
【0023】
更に、本発明は、上述したローラシャフトと、このローラシャフトを取り囲んで一体に固定されるローラ本体とを備える導電性ローラであれば、当該ギアに傷や歪みが生じることなく、精度の高い組み付けが実現され、製造が比較的容易で、しかも、加工コストの軽減が図られた導電性ローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に従うローラシャフトの一形態を詳細に説明する。
【0025】
画像形成装置としては、例えば、像担持体として静電潜像を保持した感光ドラムを用い、この感光ドラムにトナーを供給して当該感光ドラム上の潜像をトナーの付着により可視化させる現像方法(加圧現像法)を利用した図1に示すような装置1が知られている。
【0026】
図1において、符号2は、帯電させたトナーTを供給するためのトナー供給ローラである。符号3は、トナー供給ローラ2からのトナーTを感光ドラム5に送給する機能を有する現像ローラである。符号4は、現像ローラ1の外表面をなぞって、トナー搬送量を一定に調整する成層ブレードである。
【0027】
符号5は、一様に帯電させたのち、レーザー等を用いて印刷部分を露光させて当該印刷部分にトナーTを付着させる感光ドラムである。トナー供給ローラ2、現像ローラ3及び感光ドラム5はそれぞれ図中の矢印方向に回転する。
【0028】
符号6は、感光ドラム5の表面に付着させたトナーTを紙等の媒体に転写させる転写ローラ6aを備える転写部である。更に、符号7は、クリーニング部であり、そのクリーニングブレード7aが転写後に感光ドラム5に残留するトナーTを除去する。
【0029】
トナー供給ローラ2の回転によりその表面に付着したトナーTは、現像ローラ3に供給され、現像ローラ3の最外層である被覆層3aに担持されたのち、成層ブレード4により均一な薄い層に整えられる。現像ローラ3の表面上に均一に整えられたトナーTは、感光ドラム5の潜像に付着して当該潜像を可視化させたのち、転写部6にて、紙等の媒体にトナー画像を転写させる。これにより、紙等の媒体上に文字等が印刷される。
【0030】
図2(a),(b)はそれぞれ、現像ローラ3と、現像ローラ3に固定される樹脂製のギア8とを分解した状態で示す斜視図及びその断面図である。
【0031】
現像ローラ3は、トナーTを担持するための被覆層3aが形成された弾性層3bを有し、この弾性層3bが、ローラシャフト10を介して画像形成装置に回転可能に保持されている。なお、本形態では、ローラ本体が被覆層3a及び弾性層3bからなる二層のものであるが、ローラ本体の構造は、単層・多層を問わない。
【0032】
ローラシャフト10は、良導電性の金属材料からなり、樹脂製のギア8を備える。ギア8の中心には、ローラシャフト10の空転を防止するための合せ面8fを有し、ローラシャフト10を、その先端から通す貫通孔hが形成されている。
【0033】
ここで、図3(a),(b)はそれぞれ、本発明に従うローラシャフト10の先端部分を示す側面図及び斜視図である。
【0034】
ローラシャフト10は、その先端に円柱形のシャフトの角部を面取りして形成された端面11を有し、前記角部を面取りして形成した面取り部12は、端面11と共に、円すい台形状を形成してなる。
【0035】
更に詳細には、面取り部12は、図3(a)に示すように、シャフト10の先端の角部をシャフト10の最外周部からシャフト軸線Oに向かって径方向内側に、加工量(C面取り深さ寸法)Cだけ面取りすることにより形成されている。
【0036】
面取り部12には更に、シャフト軸線O方向に沿って延在するDカット部13が形成されている。このDカット部13は、シャフト10の最外周部からのカット量(Dカット深さ寸法)Xが加工量Cよりも小さい(X<C)。即ち、Dカット部13の深さは、シャフト10の最外周部から端面11と面取り部12との稜線Lにまでの深さよりも浅くなっている。
【0037】
即ち、ローラシャフト10に形成されたDカット部13は、面取り部12と端面11との稜線Lよりもシャフト径方向外側の位置にあって、当該面取り部12からシャフト軸線O方向に沿って延在している。
【0038】
更にDカット部13は、平坦な合せ面f1を有し、この合せ面f1がローラシャフト10をギア8に挿入するにあたり、ギア8に形成した合せ面8fと合さる。これにより、ローラシャフト10は、ギア8に、回転不能に挿入することができ、その挿入量は、合せ面f1から起立する突き当て面f2にギア8が接触することにより規制される。
【0039】
また、面取り部12とDカット部13とにより形成される先端エッジEは、図3(a)に示すように、その成す角度θが、ギア8への挿入時の当たりが強く、バリを生じさせ易い直角に立ったエッジではなく、直角よりも大きな鈍角(90°<θ)をなすエッジとなる。
【0040】
このため、ギア8に形成した貫通孔hに挿入するに際し、Dカット部13における先端エッジEは、ギア8に傷を付けたり、貫通孔hを歪ませることがない。しかも、この場合、Dカット部13を設けても、上述したように、Dカット部13において面取り部12との間に形成される先端エッジEは鈍角となるため、その加工時においてバリを生じさせ難い。このため、エッジEを取り除くための後加工を行う必要もない。
【0041】
従って、本発明に従うローラシャフト10によれば、ギア8に傷や歪みが生じることなく組み付けることができ、製造が比較的容易で、しかも、加工コストの軽減が図られた画像形成装置用ローラシャフトを提供することができる。
【0042】
また本発明に従うローラシャフト10において、面取り部12は、Dカット部13を形成する前の外観形状が、端面11と共に、円すい台形状を形成してなるから、Dカット部13と面取り部12との稜線Roは、図3(b)に示すように、ローラシャフト10の先端に向かって凸となるR形状となるため、ローラシャフト10をギア8に通したときに、稜線Roに沿った両側部分での引っ掛かりも抑えられるため、組み付け時の作業性が向上し、更に容易な製造が実現される。なお、面取り部12が、端面11と共に、球帯形状を形成してなるものである場合も同様の作用効果を奏することができる。
【0043】
またローラシャフト10は、樹脂製のギア8を備えるものであるから、当該ギア8に傷や歪みが生じることなく、精度の高い組み付けが実現され、製造が比較的容易で、しかも、加工コストの軽減が図られたギア付きローラシャフトとなる。
【0044】
更に、この場合、ローラシャフト10は、このローラシャフト10を取り囲んで一体に固定される被覆層3a及び弾性層3bからなるローラ本体を一体に備え、本発明に従う現像ローラ3となる。これにより、本発明に従う現像ローラ3は、ギア8に傷や歪みが生じることなく、精度の高い組み付けが実現され、製造が比較的容易で、しかも、加工コストの軽減が図られた導電性ローラとなる。
【0045】
上述したところは本発明の好適な形態を説明したものであるが、請求の範囲内で種々の変更を加えることができる。例えば、本発明であるローラシャフトは、現像ローラに採用されるものに限らず、トナー供給ローラ、感光ドラム5、転写ローラ6a等、画像形成装置に回転可能に保持されるシャフトであり、ギア等の部材に通して当該部材を固定するものであればよい。また、本発明であるローラシャフトは、その用途に応じて樹脂材料からなるものとしてもよく、その材質は問わない。更に、本発明であるローラシャフトを通して固定される部材も、樹脂製ギア以外に、金属製ギアは勿論、ローラシャフトに通して一体に固定させる部材であれば、その材質や種類は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】画像形成装置の一例を示す模式断面図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、同装置に採用される本発明の一形態である現像ローラと、この現像ローラに固定される樹脂製のギアとを分解した状態で示す斜視図及びその断面図である。
【図3】(a),(b)はそれぞれ、本発明の一形態であるローラシャフトの先端部分を示す側面図及び斜視図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、ローラシャフトの端面とこの端面を取り囲む面取り部との稜線(先端エッジ)Lからシャフトの軸線に沿ってDカット部を形成した状態を示す側面図及び斜視図である。
【図5】(a),(b)はそれぞれ、図4に示す先端エッジEを面取り加工した状態を示す側面図及び斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 画像形成装置
2 トナー供給ローラ
3 現像ローラ
4 成層ブレード
5 感光ドラム
6 転写部
7 クリーニング部
7a クリーニングブレード
10 ローラシャフト
11 端面
12 面取り部
13 Dカット部
E エッジ
f1 平坦面
f2 突き当て面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に面取り部によって取り囲まれた端面を有し、この端面をギア等の部材に形成した貫通孔に通して当該部材を固定すると共に、画像形成装置内に回転可能に保持される画像形成装置用ローラシャフトであって、
前記面取り部と前記端面との稜線よりも径方向外側の位置に、当該面取り部からシャフト軸線方向に沿って延在するDカット部を備えることを特徴とする画像形成装置用ローラシャフト。
【請求項2】
前記面取り部は、Dカット部を形成する前の外観形状が、前記端面と共に、円すい台形状又は球帯形状を形成してなるものである、請求項1に記載の画像形成装置用ローラシャフト。
【請求項3】
前記部材として樹脂製のギアを備える、請求項1又は2に記載の画像形成装置用ローラシャフト。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置用ローラシャフトと、この画像形成装置用ローラシャフトを取り囲んで一体に固定されるローラ本体とを備えることを特徴とする導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−129528(P2008−129528A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317393(P2006−317393)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】