説明

画像形成装置

【課題】 周辺に形成されるドットからの影響に依らず、所望の大きさを有するドットを形成して良好な階調再現を実現する。
【解決手段】 それぞれが規定するドットの成長パターンが異なる複数のディザマトリックスを有するとともに、注目セルをハーフトーン処理するにあたり使用するディザマトリックス(選択マトリックス)を、注目セルの周囲画素(ハッチング)の階調値に関する値(参照値)から選択する。つまり、複数のディザマトリックスのうち、γ特性を最適にするマトリックスを選択マトリクスとして選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像データをハーフトーン処理することにより階調再現を行う画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置により画像形成を行う場合、各画素または各画素の一部領域に対して必要に応じてトナーを付着させることで所望の画像を形成する。つまり、画素毎に該画素の全領域にトナーを付着させるか否かを示す二値または該画素の一部領域にトナーを付着させるか否かを示す多値に基づいて、露光及び現像を実行する。
【0003】
しかしながら、形成すべき画像に関する情報であるCMYKデータ等の画像データは、1画素毎に階調値を多階調で表した多値の画像階調データであり上述のような画素毎に該画素の全領域または一部領域にトナーを付着させるか否かを示すデータではない。したがって、プリンタ等の画像形成装置において階調再現を実現するためには、画像データを、上述のようなトナーを付着させるか否かを示すデータに変換する必要がある。なお、「階調再現を実現するために、画像データを、画素毎に該画素の全領域にトナーを付着させるか否かを示す二値または該画素の一部領域にトナーを付着させるか否かを示す多値に変換する処理」を、以下「ハーフトーン処理」と呼ぶ。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1のようなハーフトーン処理が従来より提案されている。かかるハーフトーン処理では、画像データを、互いに隣接する複数の画素から構成されたセル単位にディザマトリックスと比較して二値化している。つまり、特許文献1に記載の技術では、ディザマトリックスはセルが有する各画素に一対一で対応する閾値を有しており、各画素毎に画像データと閾値とを比較して、画像データが閾値以上であれば対応する画素の露光・現像を行うとともに、閾値より小さい場合は露光・現像を行わない。
【0005】
そして、さらに特許文献1に記載のディザマトリックスは、該ディザマトリックスが有する閾値がディザマトリックスの中央部に行くほど小さく逆に端部に行くほど大きくなるように構成されている。したがって、ディザマトリックスにより二値化されたデータに基づいて各画素を露光・現像することで、セル毎に該セルの画像データが有する階調に対応した大きさのドットが形成される。つまり、かかるハーフトーン処理を実行する画像形成方法では、セル毎に画像データに対応した大きさのドットを形成することで、多段階の階調再現を実現している。
【0006】
【特許文献1】特開2005−99817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようにして形成されるドットの大きさは、次に図9を用いて説明するように、該ドットの周囲に形成されるドットの影響により変動する場合があった。その結果、本来形成されるべきドット(以下「理想ドット」と言う)の大きさに対して実際に形成されるドット(以下、単に「ドット」と言う場合は実際に形成されるドットを指す)の大きさが異なる場合があった。
【0008】
図9は、異なる大きさのドットを隣接して形成した場合の、理想ドットとドットとを比較した図である。ここで、小さい正方形は1画素を表し、太実線は1セルを表し、ハッチングは理想ドットまたはドットを表す。つまり、同図のセルは4画素×4画素で構成されている。同図が示すように、比較的小さい理想ドットが隣接する場合は、ドットは理想ドットに対して大きくなる。また、中程度の大きさの理想ドットが隣接する場合は、ドットは理想ドットに対して小さくなる。また、比較的大きい理想ドットが隣接する場合は、ドットはセルの全領域に形成され理想ドットに対して大きいドットが形成される。
【0009】
このように、周囲に形成されるドットの大きさにより、理想ドットに対してドットの大きさがズレるということは、周囲の画像データの階調値によって理想ドットに対してドットの大きさがズレることを意味する。言い換えると、周囲の画像データの階調値が、ある階調範囲に在る場合は理想ドットに対してドットの大きさが大きくなる方向にズレる一方、他の階調範囲に在る場合は理想ドットに対するドットの大きさが小さくなる方向にズレるという現象が発生することとなる。その結果、画像データの階調値と実際に形成される画像の階調値とが異なり、画像データの階調値と実際に形成される画像の階調値の関係を表すいわゆるγ特性のリニアリティが低下するため、良好な階調再現が実現できないという問題が発生する場合があった。
【0010】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、周囲に形成されるドットの影響に依らず所望の大きさのドットの形成を可能とすることでγ特性のリニアリティの低下を防止し、良好な階調再現を実現する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明にかかる画像形成装置は、互いに隣接する複数の画素から構成されるセルを副走査方向に駆動される潜像担持体表面に対して仮想的に複数配列するとともに、1画素毎に階調値を表した画像データに対してセル毎に画像データの階調値に応じた大きさのドットを潜像担持体の表面にトナーを付着させることで形成して階調再現を行う画像形成装置であって、上記目的を達成するために、複数のディザマトリックスを有するとともに該複数のディザマトリックスの1つを選択マトリックスとしてセル毎に選択し、該セルの画像データと選択マトリックスとを1画素毎に比較することで、画像データを、画素毎に該画素の全領域にトナーを付着させるか否かを示す二値または該画素の一部領域にトナーを付着させるか否かを示す多値であるハーフトーン階調データに変換するハーフトーン処理を実行する画像処理手段と、ハーフトーン階調データに基づいて潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像にトナーを付着させてドットを形成する現像手段とを備え、複数のディザマトリックスは、それぞれが規定する階調値の増大に対するドットの大きさの成長パターンが互いに異なっており、画像処理手段は、ハーフトーン処理を実行しようとする注目セルの周囲に存在する複数の周囲画素の階調値に関する値である参照値から、該注目セルに本来形成されるべき理想ドットの大きさに対するドットの大きさのズレを予測し、該予測に基づいてズレを補償する成長パターンを有するディザマトリックスを選択マトリックスとして選択することを特徴としている。
【0012】
このように構成された発明では、それぞれが規定する階調値の増大に対するドットの大きさの成長パターンが互いに異なる複数のディザマトリックスを備えている。また、ハーフトーン処理を実行しようとする注目セルの周囲に存在する複数の周囲画素の階調値に関する値である参照値から、該注目セルに本来形成されるべき理想ドットの大きさに対するドットの大きさのズレを予測し、該予測に基づいて該ズレを補償する成長パターンを有するディザマトリックスを選択マトリックスとして選択する。そして、このように選択された選択マトリックスを用いて注目セルに対するハーフトーン処理を実行する。
【0013】
このように、本発明では、注目セルの周囲に形成されるドットの影響により発生する理想ドットとドットとの大きさにおけるズレを、該注目セルの周囲に存在する周囲画素から予測している。そして、該予想に基づいて、該ズレを補償する成長パターンを有するディザマトリックスを用いてハーフトーン処理を行う。したがって、該ハーフトーン処理により求められたハーフトーン階調データに基づいて露光・現像を行って形成されるドットは、該ドットの周囲の影響に依らず、所望の大きさのドットが形成されることとなる。よって、良好な階調再現を実現することができる。
【0014】
また、画像形成装置のエンジン特性等に起因して、周囲に形成されるドットの大きさが与える注目セルに形成されるドットの大きさへの影響の程度は、該周囲に形成されるドットと注目セルとの位置関係によって異なる場合がある。そこで、画像処理手段は、注目セルの周囲に存在する複数の周囲画素をそれぞれの位置に応じて複数のグループに分け、複数の周囲画素それぞれついて該周囲画素の階調値に該周囲画素が属するグループに対応した係数で重み付けした値の平均値である重み付け平均値を参照値として、注目セルに本来形成されるべき理想ドットの大きさに対するドットの大きさのズレを予測するように構成しても良い。このように構成することで、上述のような位置関係による影響の違いを参照値に反映させて、より適切なディザマトリックスを選択可能となるため、より正確に所望の大きさのドットが形成される。よって、より良好な階調再現を実現することができるため好適である。
【0015】
特に、現像手段として、その表面が潜像担持体表面の駆動方向と同一方向で且つ潜像担持体表面より速い速度で駆動されるとともに、該表面に担持するトナーを潜像担持体表面の静電潜像に付着させてドットを形成する現像ローラを採用した現像手段を用いた装置では、次のように構成するのが好適である。すなわち、複数のグループの1つを注目セルの副走査方向上流側に位置する周囲画素から構成された上流グループとし、該上流グループに対応する係数を該上流グループ以外のグループに対応する係数より大きく設定する。この理由について図7を例示しながら説明する。
【0016】
図7において、実線の正方形は1画素である。また、太実線の正方形は注目セルを表す。つまり、同図では副走査方向に4画素で、該副走査方向に略直交する主走査方向方向に4画素の4×4セルを用いている。また、太破線はグループを表す。つまり、同図では、それぞれ8画素の周囲画素から構成される4つのグループA,B,C,Dを、同図中において注目セルの上下左右に設けている。ただし、図7は、上記問題を説明するための例であって、本発明に適用可能なグループの構成はこれに限られるものではない。つまり、注目セルの各辺に隣接する4画素×4辺=16画素を周囲画素とするとともに、各グループA,B,C,Dを4画素の周囲画素から構成しても良い。また、注目セルの同図における上下方向に位置する辺に隣接する4画素×2辺=8画素を周囲画素とするとともに、グループA,Dをそれぞれ4画素の周囲画素から構成しても良い。
【0017】
図7を用いて説明を続ける。上述の通り、今、現像ローラの表面は潜像担持体よりも速い速度で副走査方向に駆動されている。よって、現像ローラ表面側から見ると感光体を、(1)グループD(2)注目セル(3)グループAの順番に追い越すこととなる。したがって、グループDに属する周囲画素の階調値が大きくグループDを含むセルに大きなドットを形成するような場合、現像ローラ表面に担持されたトナーの多くが、グループDを含むセルにドットを形成するために消費されてしまう。その結果、注目セルにドットを形成する際に現像ローラ表面に担持されるトナーの量は少なくなる。逆に、グループDに属する周囲画素の階調値が小さくグループDを含むセルに小さなドットを形成するような場合、グループDを含むセルにドットを形成するために使用されるトナーは少ない。その結果、注目セルにドットを形成する際に現像ローラ表面に担持されるトナーの量は多くなる。そして、このような、注目セルにドットを形成する際の現像ローラ表面に担持されるトナー量の差異は、実際に注目画素に形成するドットの大きさに影響を与えることとなる。
【0018】
このように、グループDに属する周囲画素は、他のクループA,B,Cよりも大きな影響を、注目セルに形成されるドットに与える。しかしながら、上述のように構成された発明では、参照値を求めるにあたって、上流グループ(グループD)に対応する係数を該上流グループ(グループD)以外のグループに対応する係数より大きく設定するように構成している。よって、上流グループ(グループD)の影響を適切に参照値に反映させて、最適なディザマトリックスを選択可能となるため、より正確に所望の大きさのドットが形成される。よって、より良好な階調再現を実現することができるため好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置は、いわゆるタンデム方式のカラープリンタであり、潜像担持体としてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の感光体2Y、2M、2C、2Kを装置本体5内に並設している。そして、各感光体2Y、2M、2C、2K上のトナー像を重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する装置である。すなわち、この画像形成装置では、ユーザからの画像形成要求に応じてホストコンピュータなどの外部装置から印字指令がメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11のCPU111からの印字指令に応じてエンジンコントローラ10がエンジン部EGの各部を制御して複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートSに印字指令に対応する画像を形成する。
【0020】
このエンジン部EGでは、4つの感光体2Y、2M、2C、2Kのそれぞれに対応して帯電ユニット、現像ユニット(現像手段)、露光ユニット(露光手段)およびクリーニング部が設けられている。このように、各トナー色ごとに、感光体、帯電ユニット、現像ユニット、露光ユニットおよびクリーニング部を備えて該トナー色のトナー像を形成する画像形成手段が設けられている。なお、これらの画像形成手段(感光体、帯電ユニット、現像ユニット、露光ユニットおよびクリーニング部)の構成はいずれの色成分についても同一であるため、ここではイエローに関する構成について説明し、その他の色成分については相当符号を付して説明を省略する。
【0021】
感光体2Yは図1の矢印方向(副走査方向)に回転自在に設けられているとともに、該矢印方向に駆動される。つまり、感光体2Yの表面(潜像担持体表面)が、副走査方向に駆動されることとなる。このように駆動される感光体2Yの周りにその回転方向に沿って、帯電ユニット3Y、現像ユニット4Yおよびクリーニング部(図示省略)がそれぞれ配置されている。帯電ユニット3Yは例えばスコロトロン帯電器で構成されており、帯電制御部103からの帯電バイアス印加によって感光体2Yの外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。そして、この帯電ユニット3Yによって帯電された感光体2Yの外周面に向けて露光ユニット6Yから走査光ビームLyが照射される。これによって印字指令に含まれるイエロー画像データに対応する静電潜像が感光体2Y上に形成される。このように露光ユニット6Yは本発明の「露光手段」に相当するものであり、露光制御部102Y(図4)からの制御指令に応じて動作する。
【0022】
図3は図1の画像形成装置に装備された露光ユニットの構成を示す主走査断面図ある。以下、図2、3を参照しつつ、露光ユニット6の構成および動作について詳述する。なお、露光ユニット6の構成はいずれの色成分についても同一であるため、ここではイエローに関する構成について説明し、その他の色成分については相当符号を付して説明を省略する。
【0023】
この露光ユニット6Y(6M,6C,6K)は露光筐体61を有している。そして、露光筐体61に単一のレーザー光源62Yが固着されており、レーザー光源62Yから光ビームを射出可能となっている。このレーザー光源62Yは、図2に示す露光制御部102Yの光源駆動部(図示省略)と電気的に接続されている。そして、後述するように画像信号に応じて光源駆動部がレーザー光源62YをON/OFF制御してレーザー光源62Yから画像データに対応して変調された光ビームが射出される。
【0024】
露光筐体61の内部には、レーザー光源62Yからの光ビームを感光体2Yの表面(図示省略)に走査露光するために、コリメータレンズ631、シリンドリカルレンズ632、偏向器65、走査レンズ66が設けられている。すなわち、レーザー光源62Yからの光ビームは、コリメータレンズ631により適当な大きさのコリメート光にビーム整形された後、副走査方向Yにのみパワーを有するシリンドリカルレンズ632に入射される。そして、シリンドリカルレンズ632を調整することでコリメート光は副走査方向Yにおいて偏向器65の偏向ミラー面651付近で結像される。このように、この実施形態では、コリメータレンズ631およびシリンドリカルレンズ632がレーザー光源62Yからの光ビームを整形するビーム整形系63として機能している。
【0025】
この偏向器65は半導体製造技術を応用して微小機械を半導体基板上に一体形成するマイクロマシニング技術を用いて形成されるものであり、共振振動する振動ミラーで構成されている。すなわち、偏向器65では、共振振動する偏向ミラー面651により光ビームを主走査方向Xに偏向可能となっている。より具体的には、偏向ミラー面651は主走査方向Xとほぼ直交する揺動軸(ねじりバネ)周りに揺動自在に軸支されるとともに、作動部(図示省略)から与えられる外力に応じて揺動軸周りに正弦揺動する。この作動部は露光制御部102のミラー駆動部(図示省略)からのミラー駆動信号に基づき偏向ミラー面651に対して静電気的、電磁気的あるいは機械的な外力を作用させて偏向ミラー面651をミラー駆動信号の周波数で揺動させる。なお、作動部による駆動方式は静電吸着、電磁気力あるいは機械力などのいずれの方式を採用してもよく、それらの駆動方式は周知であるため、ここでは説明を省略する。
【0026】
偏向ミラー面651により偏向された光ビームは、走査レンズ66を介して感光体2Yの表面に走査される。また、上述の通り偏向ミラー面651は、遥動軸周りに正弦遥動する。したがって、光ビームは感光体2Yの表面に往復走査されることとなる。また、走査方向(+X)の上流側において走査光ビームの走査経路の端部を折り返しミラー69により水平同期センサ60に導いている。かかる水平同期センサ60は、主走査方向に往復走査される光ビームの1周期毎に光ビームを検出し、水平同期信号Hsyncを出力する。そして、該水平同期信号Hsyncに基づいて潜像形成動作が制御されることとなる。
【0027】
図1,2に戻って説明を続ける。上述の露光ユニット6Yにより形成された静電潜像は、現像ユニット4Y(現像手段)によってトナー現像される。この現像ユニット4Yはイエロートナーを内蔵している。そして、現像器制御部104から現像バイアスが現像ローラ41Yに印加されると、現像ローラ41Y上に担持されたトナーが感光体2Yの表面各部にその表面電位に応じて部分的に付着する。その結果、感光体2Y上の静電潜像がイエローのトナー像として顕像化される。また、トナーを担持する現像ローラ41Yの表面は、感光体2Yの表面(潜像担持体表面)と同一方向(副走査方向)に駆動されているとともに、その速度は感光体2Yの表面の速度よりも速い。つまり、現像ローラ41Yの周速度は感光体2Yの周速度よりも速く設定されている。なお、現像ローラ41Yに与える現像バイアスとしては、直流電圧、もしくは直流電圧に交流電圧を重畳したもの等を用いることができるが、特に感光体2Yと現像ローラ41Yとを離間配置し、両者の間でトナーを飛翔させることでトナー現像を行う非接触現像方式の画像形成装置では、効率よくトナーを飛翔させるために直流電圧に対して正弦波、三角波、矩形波等の交流電圧を重畳した電圧波形とすることが好ましい。
【0028】
現像ユニット4Yで現像されたイエロートナー像は、一次転写領域TRy1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。また、イエロー以外の色成分についても、イエローと全く同様に構成されており、感光体2M、2C、2K上にマゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像がそれぞれ形成されるとともに、一次転写領域TRm1、TRc1、TRk1でそれぞれ中間転写ベルト71上に一次転写される。
【0029】
この転写ユニット7は、2つのローラ72、73に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラ72を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向R2に回転させるベルト駆動部(図示省略)とを備えている。また、中間転写ベルト71を挟んでローラ73と対向する位置には、該ベルト71表面に対して不図示の電磁クラッチにより当接・離間移動可能に構成された二次転写ローラ74が設けられている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、一次転写タイミングを制御することで各トナー像を重ね合わせてカラー画像を中間転写ベルト71上に形成するとともに、カセット8から取り出されて中間転写ベルト71と二次転写ローラ74との間の二次転写領域TR2に搬送されてくるシートS上にカラー画像を二次転写する。一方、モノクロ画像をシートSに転写する場合には、ブラックトナー像のみを感光体2Kに形成するとともに、二次転写領域TR2に搬送されてくるシートS上にモノクロ画像を二次転写する。また、こうして画像の2次転写を受けたシートSは定着ユニット9を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部に向けて搬送される。
【0030】
なお、中間転写ベルト71へトナー像を一次転写した後の各感光体2Y、2M、2C、2Kは、不図示の除電手段によりその表面電位がリセットされ、さらに、その表面に残留したトナーがクリーニング部により除去された後、帯電ユニット3Y、3M、3C、3Kにより次の帯電を受ける。
【0031】
また、ローラ72の近傍には、転写ベルトクリーナ75、および垂直同期センサ77(図2)が配置されている。これらのうち、クリーナ75は図示を省略する電磁クラッチによってローラ72に対して近接・離間移動可能となっている。そして、ローラ72側に移動した状態でクリーナ75のブレードがローラ72に掛け渡された中間転写ベルト71の表面に当接し、二次転写後に中間転写ベルト71の外周面に残留付着しているトナーを除去する。また、垂直同期センサ77は、中間転写ベルト71の基準位置を検出するためのセンサであり、中間転写ベルト71の副走査方向への回転駆動に関連して出力される同期信号、つまり垂直同期信号Vsyncを得るための垂直同期センサとして機能する。そして、この装置では、各部の動作タイミングを揃えるとともに各色のトナー像を正確に重ね合わせるために、装置各部の動作はこの垂直同期信号Vsyncに基づいて制御される。また、ローラ72,73の間には、色ずれセンサ78が配置されており、各色のトナー像の色ずれ量を検出する。
【0032】
なお、図2において、符号110はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像データを記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリであり、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
【0033】
次に、本発明にかかる画像形成装置において実行される信号処理について説明する。図4は、本発明にかかる画像形成装置の信号処理を示す図である。この画像形成装置では、ホストコンピュータ100などの外部装置から画像信号が入力されると、メインコントローラ11がその画像信号に対し所定の信号処理を施す。メインコントローラ11は、色変換部113、画像処理ユニット115、2種類のラインバッファ116A,116B、方向切換部116Cおよびパルス変調部117などの機能ブロックを備えている。なお、これらの各機能ブロックはハードウェアにより構成されてもよく、またCPU111、101により実行されるソフトウェアによって実現されてもよい。
【0034】
ホストコンピュータ100から画像信号が与えられたメインコントローラ11では、色変換部113がその画像信号に対応する画像内の各画素のRGB成分の階調レベルを示したRGB階調データを、対応するCMYK成分の階調レベルを示したCMYK階調データ(本発明における「画像データ」に相当する)へ変換する。この色変換部113では、入力RGB階調データは例えば1画素1色成分当たり8ビット(つまり256階調を表す)であり、出力CMYK階調データも同様に1画素1色成分当たり8ビット(つまり256階調を表す)である。そして、色変換部113から出力されるCMYK階調データは画像処理ユニット115に入力される。
【0035】
画像処理ユニット115(画像処理手段)は、入力されるCMYK階調データに対してハーフトーン処理を行う。本発明におけるハーフトーン処理では、互いに隣接する複数の画素により構成されるセルを感光体表面に対して仮想的に複数配列するとともに、各セルに対して階調値に応じた大きさのドットが形成されるように、CMYK階調データ(画像データ)をハーフトーン階調データに変換する。
【0036】
第1実施形態では、副走査方向Yに4画素で主走査方向Xに4画素の4×4セルCL44を、感光体2Yの表面に仮想的に複数配列する。そして、該4×4セルCL44の1画素に対して1個の閾値を有する(つまり合計で4×4=16個の閾値を有する)4×4ディザマトリックスを使用してハーフトーン処理を実行する。かかる4×4ディザマトリックスを用いたハーフトーン処理では、4×4セルCL44のYMCK階調データと4×4ディザマトリックスの閾値とを1画素毎に比較する。そして、CMYK階調データが閾値以上である場合は、対応する画素に対して露光・現像を行うと決定する一方、CMYK階調データが閾値未満である場合は、対応する画素に対して露光・現像を行わないと決定する。
【0037】
図5は、第1実施形態におけるハーフトーン処理で使用するディザマトリックスを示す図である。第1実施形態における画像処理ユニット115は、3つの4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3(複数のディザマトリックス)を有する。また、4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3は、それぞれが規定する階調値の増大に対するドットの大きさの成長パターンが互いに異なっている。同図には、階調値が50,120,200と増大した場合におけるドットの成長の様子が示されている。ここで、ハッチングがされた画素は、ディザマトリックスにより露光・現像を行うと決定された画素である。
【0038】
例えば階調値50において、4×4ディザマトリックスMTX44-1を用いた場合は、ドットは3画素から構成される。また、4×4ディザマトリックスMTX44-2を用いた場合は、ドットは4画素から構成される。また、4×4ディザマトリックスMTX44-3を用いた場合は、ドットは2画素から構成される。このように同じ階調値に対して、いずれの4×4ディザマトリックスを用いるかで、ドットの大きさが異なり、4×4ディザマトリックスMTX44-2を用いた場合は、比較的大きいドットが形成される。また、4×4ディザマトリックスMTX44-1を用いた場合は、比較的小さいドットが形成される。また、4×4ディザマトリックスMTX44-3を用いた場合は、4×4ディザマトリックスMTX44-1を用いた場合よりもさらに小さいドットが形成される。
【0039】
階調値120においても上述の事情は同様であり、4×4ディザマトリックスMTX44-1を用いた場合は、ドットは7画素から構成される。また、4×4ディザマトリックスMTX44-2を用いた場合は、ドットは8画素から構成される。また、4×4ディザマトリックスMTX44-3を用いた場合は、ドットは6画素から構成される。
【0040】
さらに、階調値200においても上述の事情は同様であり、4×4ディザマトリックスMTX44-1を用いた場合は、ドットは12画素から構成される。また、4×4ディザマトリックスMTX44-2を用いた場合は、ドットは13画素から構成される。また、4×4ディザマトリックスMTX44-3を用いた場合は、ドットは11画素から構成される。
【0041】
このように、第1実施形態における3つの4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3は、それぞれが規定する階調値の増大に対するドットの大きさの成長パターンが互いに異なっている。そして、同じ階調値に対して、4×4ディザマトリックスMTX44-2を用いた場合は比較的大きいドットが形成され、4×4ディザマトリックスMTX44-1を用いた場合は比較的小さいドットが形成され、4×4ディザマトリックスMTX44-3を用いた場合は4×4ディザマトリックスMTX44-1を用いた場合よりもさらに小さいドットが形成される。
【0042】
第1実施形態における画像処理ユニット115は、4×4セルCL44を感光体2Yの表面に仮想的に複数配列するとともに、セル毎に上述した4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3のうちの1つを選択マトリックスとして選択する。そして、かかる選択にあたっては、これからハーフトーン処理を実行しようとする4×4セル(注目セル)に対して、周囲画素を設定する。また、周囲画素は、該注目セルの周囲に存在する画素から選ばれる。図6は、第1実施形態における注目セルと周囲画素との関係を示す図である。同図において、実線で囲まれた正方形は画素を、太実線で囲まれた正方形は注目セルを、ハッチングがなされた画素は周囲画素を現す。同図に示すように、第1実施形態では、注目セルの周囲に存在する32画素を周囲画素として定義している。
【0043】
次に、画像処理ユニット115は、上述のように設定した32画素の周囲画素の階調値から、該周囲画素の階調値に関連する値である参照値Eを求める。第1実施形態では、32画素の周囲画素の平均値を参照値Eとして求める。よって、参照値Eは、周囲画素が0〜255の階調値を取るのに対応して0〜255の階調値を取ることとなる。そして、該参照値に基づいて、3つの4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3から1つの選択マトリックスを選択する。
【0044】
表1は、参照値Eと選択マトリックスとの関係を示す表である。画像処理ユニット115は、参照値Eが0以上32未満である場合は、4×4ディザマトリックスMTX44-1を選択マトリックスとして選択する。つまり、参照値Eが0以上32未満であるとき、注目セルに形成されるドットは、本来形成されるべき理想ドットよりも大きく形成されると予想する。そして、このように予想した理想ドットに対するドットの大きさのズレを補償するために、3つの4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3のうち、階調値に対して比較的小さいドットが形成される4×4ディザマトリックスMTX44-1を選択マトリックスとして選択する。
【0045】
【表1】

【0046】
また、参照値Eが32以上128未満であるとき、注目セルに形成されるドットは、本来形成されるべき理想ドットよりも小さく形成されると予想する。そして、このように予想した理想ドットに対するドットの大きさのズレを補償するために、3つの4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3のうち、階調値に対して比較的大きいドットが形成される4×4ディザマトリックスMTX44-2を選択マトリックスとして選択する。
【0047】
また、参照値Eが128以上255以下であるとき、注目セルに形成されるドットは、本来形成されるべき理想ドットよりも小さく形成されると予想する。そして、このように予想した理想ドットに対するドットの大きさのズレを補償するために、3つの4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3のうち、階調値に対してより大きいドットが形成される4×4ディザマトリックスMTX44-3を選択マトリックスとして選択する。
【0048】
そして、参照値Eから決定された選択マトリックスに基づいて、CMYK画像データに対してハーフトーン処理を実行し、全ての画素の各々に対して露光・現像を行うか否かを示すデータとしてハーフトーン階調データを求める。
【0049】
再び図4に戻って説明を続ける。上述のようにして求められたハーフトーン階調データは、順方向ラインバッファ116Aおよび逆方向ラインバッファ116Bに入力される。これらのラインバッファ116A,116Bは画像処理ユニット115から出力されるハーフトーン階調データを走査線1ライン分だけ記憶するものである点で共通するが、階調データの読出し順序が相違する。すなわち、順方向ラインバッファ116Aは走査線1ライン分のハーフトーン階調データを先頭から順方向に出力するものであるのに対し、逆方向ラインバッファ116Bは最後から逆方向に出力するものである。ここで、走査線とは、感光体表面に往復走査される光ビームの軌跡を言う。また、走査線1ライン分のハーフトーン階調データとは、1回の往路走査または復路走査の間に出力されるハーフトーン階調データを言う。このような2種類のラインバッファ116A,116Bを設けた理由は次のとおりである。
【0050】
上述した露光制御部102Yの光源駆動部は、パルス変調部117からのビデオ信号を受けて露光ユニット6Yのレーザー光源62YをON/OFF制御する。そして、かかるビデオ信号は、パルス変調部117によって、画像処理ユニット115から出力されるハーフトーン階調データを用いて、エンジン部EGの各色画像の露光レーザーパルスをパルス幅変調するために作成されるものである。一方、上述の通り、第1実施形態では共振振動する偏向ミラー面651により光ビームを主走査方向Xに往復走査している。つまり、光ビームは、互いに走査方向が逆である往路と復路とを交互に往復走査されることとなる。したがって、パルス変調部117にハーフトーン階調データを入力するにあたっては、光ビームの走査方向の違いに応じてパルス変調部117に入力するハーフトーン階調データの入力順序を変える必要がある。そこで、第1実施形態では順方向ラインバッファ116Aと逆方向ラインバッファ116Bとを設けている。
【0051】
そして、こうして出力されるハーフトーン階調データは方向切換部116Cに入力され、方向切換信号に基づき、一方のラインバッファから出力されるハーフトーン階調データのみが適当なタイミングで方向切換部116Cからパルス変調部117に出力される。つまり、光ビームが順方向に走査される際には、方向切換信号として順方向信号が方向切換部116Cに与えられ、順方向ラインバッファ116Aからのハーフトーン階調データがパルス変調部117へ向けて出力される。一方、光ビームが逆方向に走査される際には、方向切換信号として逆方向信号が方向切換部116Cに与えられ、逆方向ラインバッファ116Aからのハーフトーン階調データがパルス変調部117へ向けて出力される。そして、このようにパルス変調部117に入力されたハーフトーン階調データはビデオ信号に変換された後、図示を省略するビデオインターフェイスを介してエンジンコントローラ10に出力される。
【0052】
上述のビデオ信号を受けた露光制御部102Yの光源駆動部(図示省略)は、露光ユニット6(露光手段)のレーザー光源62YをON/OFF制御する。そして、レーザー光源からの光ビームが感光体表面に走査され静電潜像が形成される。さらに、このように形成された静電潜像が現像ユニット4(現像手段)により現像されて各セルに階調値に応じた大きさのドットが形成される。
【0053】
このように、第1実施形態における画像処理ユニット115(画像処理手段)は、注目セルの周囲に周囲画素を設定するとともに、該周囲画素の階調値に関する値である参照値Eから、該注目セルに本来形成される理想ドットに対するドットの大きさのズレを予測している。そして、互いに異なるドットの大きさの成長パターンを規定する複数の4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3のうち、該ズレを補償する成長パターンを有するディザマトリックスを選択マトリックスして選択し、該選択マトリックスを用いてハーフトーン処理を実行する。そして、該ハーフトーン処理により得られたハーフトーン階調データに基づいて露光・現像を実行する。よって、周囲に存在するドットの影響により、ドットの大きさが理想ドットの大きさからズレるという現象の発生を抑制して、所望の大きさのドットの形成が可能となっている。よって、γ特性のリニアリティの低下が防止され、良好な階調再現を実現することが可能となっている。
【0054】
<第2実施形態>
図7は、本発明にかかる画像形成装置の第2実施形態における、画像処理ユニット115(画像処理手段)の動作の説明図である。なお、第2実施形態では、特徴部分のみを説明し、その他の部分については、第1実施形態と同様であるので相当符号を付して説明を省略する。図7の画像処理ユニット115は、図7のハッチングで示す32画素を周囲画素としている点で、第1実施形態と同様である。しかしながら、第2実施形態では、32画素の周囲画素を、注目セルの各辺に対応させて、それぞれ8画素を有する4つのグループA,B,C,Dに分けている。つまり、周囲画素を、副走査方向Yにおいて注目セルの上流側に位置するグループD(上流グループ)と、下流側に位置するグループAと、図7中において注目セルの左側に位置するグループBと、右側に位置するグループCとにグループ分けしている。そして、参照値Eを式1より求めることとしている。
【0055】
【数1】

【0056】
ただし、式1において、Ave(A)はグループAに属する周囲画素の階調値の平均値を表し、Ave(B)はグループBに属する周囲画素の階調値の平均値を表し、Ave(C)はグループCに属する周囲画素の階調値の平均値を表し、Ave(D)はグループDに属する周囲画素の階調値の平均値を表す。式1に示すように、参照値Eを求めるにあたり、グループDに属する周囲画素の階調値に対して係数2を乗じている。つまり、他のグループA,B,Cに属する周囲画素の階調値に対して乗じている係数は1であるのに対して、グループDに属する周囲画素はより大きい係数2を乗じることで重み付けされている。このように、第2実施形態では、画像処理ユニット115は、参照値EをグループDに属する周囲画素に対して重み付けを行った重み付け平均値として求められている。そして、このようにして求められた参照値Eから、上記表1に従って選択マトリックスを選択する。よって、グループDに属する周囲画素の階調値は、選択マトリックスの選択結果に他のグループA,B,Cより大きく反映されることとなる。
【0057】
そして、参照値Eから選択された選択マトリックスを用いてハーフトーン処理が行われるとともに、該ハーフトーン処理により求められたハーフトーン階調データに基づいて露光・現像が行われドットが形成される。
【0058】
上述の通り、第2実施形態における画像処理ユニット115では、参照値Eを求めるにあたって、グループDに属する周囲画素を他のグループA,B,Cに属する周囲画素よりも大きい係数で重み付けをして求めている。このように、参照値Eを求める理由について以下に説明する。
【0059】
画像形成装置のエンジン特性等に起因して、周囲に形成されるドットの大きさが与える注目セルに形成されるドットの大きさへの影響の程度は、該周囲に形成されるドットと注目セルとの位置関係によって異なる場合がある。特に、上述した実施形態のように、現像ローラ41Yの周速度が感光体2Yの周速度より速く設定されている場合、次に示すような問題が発生する場合がある。
【0060】
図7を用いて、上述の問題について説明する。今、現像ローラ41Yの表面は、感光体2Yの表面(潜像担持体表面)よりも速い速度で副走査方向Yに駆動されている。よって、現像ローラ41Y表面側から見ると感光体を、(1)グループD(2)注目セル(3)グループAの順番に追い越すこととなる。したがって、グループDに属する周囲画素の階調値が大きくグループDを含むセルに大きなドットを形成するような場合、現像ローラ41Yの表面に担持されたトナーの多くが、グループDを含むセルにドットを形成するために消費されてしまう。その結果、注目セルにドットを形成する際に現像ローラ41Y表面に担持されるトナーの量は少なくなる。逆に、グループDに属する周囲画素の階調値が小さくグループDを含むセルに小さなドットを形成するような場合、グループDを含むセルにドットを形成するために使用されるトナーは少ない。その結果、注目セルにドットを形成する際に現像ローラ41Y表面に担持されるトナーの量は多くなる。そして、このような、注目セルにドットを形成する際の現像ローラ表面に担持されるトナー量の差異は、実際に注目画素に形成するドットの大きさに影響を与えることとなる。このように、グループDに属する周囲画素は、他のクループA,B,Cよりも大きな影響を、注目セルに形成されるドットに与える。
【0061】
これに対して、第2実施形態にかかる画像処理ユニット115では、参照値Eを求めるにあたって、グループD(上流グループ)に属する周囲画素に対する係数を他のグループA,B,Cに属する周囲画素に対する係数よりも大きく設定している。よって、Dグループ(上流グループ)の影響を適切に参照値に反映させて、最適なディザマトリックスを選択可能となるため、より正確に所望の大きさのドットが形成される、よって、より良好な階調再現を実現することができるため好適である。
【0062】
<その他>
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。上記実施形態では、セルとして副走査方向に4画素で主走査方向に4画素の4×4セルCL44を用いたが、セルの形状または大きさはこれに限られるものではなく、要求される階調分解能や解像度に応じて変更可能である。
【0063】
また、上記実施形態では、ハーフトーン処理において4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3を用いたが、使用可能なディザマトリックスとしてはこれらに限られるものではなく、ハーフトーン処理において使用するセルに応じて変更可能であり、要求される階調分解能や解像度に応じて変更可能である。
【0064】
また、上記実施形態では、画像処理ユニット114は、4×4ディザマトリックスMTX44-1,MTX44-2,MTX44-3の3個のディザマトリックスを有しているが、ディザマトリックスの個数としては、これに限られるものではなく、要求されるγ特性のリニアリティ応じて変更可能である。つまり、γ特性のリニアリティが特に要求されるような場合は、それぞれ異なるドット成長パターンを規定する多くのディザマトリックスを用意するとともに、かかる多くのディザマトリックスから最適な選択マトリックスを選択することが好適である。
【0065】
また、上記第1実施形態では、周囲画素として注目セルの周囲にある32画素を用いたが、例えば、図8に示すように周囲画素(ハッチング)を注目セルの周囲にある48画素を用いても良い。ここで、図8は、周囲画素の他の取り方を示す図である。また、副走査方向Yにおいて注目セルの上流側8画素と下流側8画素の合計16画素を周囲画素としても良い。また、上記第2実施形態において、注目セルの各辺に隣接する4画素×4辺=16画素を周囲画素とするとともに、各グループA,B,C,Dを4画素の周囲画素から構成しても良い。また、注目セルの同図における上下方向に位置する辺に隣接する4画素×2辺=8画素を周囲画素とするとともに、グループA,Dをそれぞれ4画素の周囲画素から構成しても良い。
【0066】
また、上記第2実施形態において、参照値Eを求めるにあたりグループDに属する周囲画素に乗じる係数として2を採用したが、かかる係数は2に限られるものではなく、エンジン特性等に応じて適宜変更可能である。要は、理想ドットとドットとのズレを最適に補償する選択マトリックスを選択するように参照値Eを求めればよい。
【0067】
また、上記実施形態では、画像データを画素毎の該画素の全領域にトナーを付着させるか否かを示す二値に変換するディザマトリックスを用いてハーフトーン処理を実行したが、本発明に使用可能なディザマトリックスはこれに限られるものではなく、例えば、各画素の一部領域にトナーを付着させるか否かを示す多値に変換するようなものを使用しても良い。
【0068】
また、上記実施形態では、偏向ミラー面651により光ビームを走査させる露光ユニット6を用いたが、露光ユニットはこれに限られるものではなく、例えば従来から提案されているような、ポリゴンミラーを用いて光ビームを走査させても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、カラー画像を形成する画像形成装置を用いて説明したが、単色印字のみを行う画像形成装置においても本発明を適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】図1の画像形成装置における露光ユニットの構成を示す主走査断面図。
【図4】図1の画像形成装置における信号処理ブロックを示す図。
【図5】ハーフトーン処理で使用するディザマトリックスを示す図。
【図6】第1実施形態における注目セルと周囲画素との関係を示す図。
【図7】第2実施形態における、画像処理手段の動作の説明図。
【図8】周囲画素の他の取り方を示す図。
【図9】本発明の課題を説明する図。
【符号の説明】
【0071】
2,2Y,2M,2C,2K…感光体(潜像担持体)、 4,4Y,4M,4C,4K…現像ユニット(現像手段)、 41Y,41M,41C,41K…現像ローラ、 6,6Y,6M,6C,6K…露光ユニット(露光手段)、 60…水平同期センサ、 62,…レーザー光源、 71…中間転写ベルト、 651…偏向ミラー面、 Ly,Lm,Lc,Lk…走査光ビーム、 11…メインコントローラ、 115…画像処理ユニット(画像処理手段)、 CMYK…CMYK階調データ(画像データ)、 X…主走査方向、 Y…副走査方向、 MTX44-1,MTX44-2,MTX44-3…ディザマトリックス、 CL44…セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接する複数の画素から構成されるセルを副走査方向に駆動される潜像担持体表面に対して仮想的に複数配列するとともに、1画素毎に階調値を表した画像データに対して前記セル毎に前記画像データの階調値に応じた大きさのドットを前記潜像担持体の表面にトナーを付着させることで形成して階調再現を行う画像形成装置において、
複数のディザマトリックスを有するとともに該複数のディザマトリックスの1つを選択マトリックスとして前記セル毎に選択し、該セルの画像データと前記選択マトリックスとを1画素毎に比較することで、前記画像データを、画素毎に該画素の全領域にトナーを付着させるか否かを示す二値または該画素の一部領域にトナーを付着させるか否かを示す多値であるハーフトーン階調データに変換するハーフトーン処理を実行する画像処理手段と、
前記ハーフトーン階調データに基づいて前記潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像にトナーを付着させて前記ドットを形成する現像手段と
を備え、
前記複数のディザマトリックスは、それぞれが規定する階調値の増大に対するドットの大きさの成長パターンが互いに異なっており、
前記画像処理手段は、前記ハーフトーン処理を実行しようとする注目セルの周囲に存在する複数の周囲画素の階調値に関する値である参照値から、該注目セルに本来形成されるべき理想ドットの大きさに対するドットの大きさのズレを予測し、該予測に基づいて前記ズレを補償する成長パターンを有するディザマトリックスを前記選択マトリックスとして選択する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記参照値は、前記注目セルの周囲に存在する複数の周囲画素の階調値の平均値である請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、前記注目セルの周囲に存在する複数の周囲画素をそれぞれの位置に応じて複数のグループに分け、前記複数の周囲画素それぞれについて該周囲画素の階調値に該周囲画素が属するグループに対応した係数で重み付けした値の平均値である重み付け平均値を前記参照値として、前記注目セルに本来形成されるべき理想ドットの大きさに対するドットの大きさのズレを予測する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像手段は、その表面が前記潜像担持体表面の駆動方向と同一方向で且つ前記潜像担持体表面より速い速度で駆動されるとともに、該表面に担持するトナーを前記潜像担持体表面の前記静電潜像に付着させて前記ドットを形成する現像ローラを有する請求項3記載の画像形成装置であって、
前記複数のグループの1つは前記注目セルの副走査方向上流側に位置する周囲画素から構成された上流グループであり、
前記画像処理手段は、前記上流グループに対応する前記係数を該上流グループ以外のグループに対応する前記係数より大きく設定している画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−140398(P2007−140398A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−337577(P2005−337577)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】