説明

画像形成装置

【課題】 定着液の画像形成装置内部への漏出を防止し、定着液消費量を低減化しつつ、未定着トナー像に適量の定着液を塗布でき、高精細および高画像濃度の高品位画像を長期にわたって安定的に形成する。
【解決手段】 中間転写ベルト22上のトナー像に、塗布ローラ32によって定着液9を付与してトナー像を膨潤・軟化させて記録媒体に定着させる画像形成装置1において、フィルム状部材39と支持部材40とを含む第2のシール部材33を設け、開口部31aを有して塗布ローラ32を収容する定着液槽31と塗布ローラ32との間の間隙を閉鎖することによって、定着液9の漏出を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式、静電記録方式などの、トナーを用いて画像を形成する画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリなどに汎用されている。電子写真方式の画像形成装置としては、たとえば、表面に感光層を有する感光体と、感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電状態にある感光体表面に信号光を照射して画像情報に対応する静電潜像を形成する露光手段と、感光体表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像化(現像)する現像手段と、感光体表面のトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体上のトナー像を記録媒体に定着させる定着手段と、トナー像の記録媒体への転写後に感光体表面に残留するトナーを除去するクリーニング手段とを含むものが挙げられる。このような画像形成装置の定着手段においては、トナー像を構成するトナーを溶融させて定着を行うために、トナー像を高温で加熱する熱定着方式が一般的に利用される。熱定着方式は、電力消費量の大きいヒータなどを用いて加熱を行うので、自ずと消費電力量が多くなる。このため、地球温暖化などの環境問題を踏まえて、消費電力量の低減化を図るため、種々の研究がなされている。消費電力量の少ない定着方法としては、たとえば、ヒータなどの加熱手段を用いない湿式定着方式が知られている。湿式定着方式によれば、トナーの膨潤・軟化作用を有する定着液をトナー像に塗布し、トナー像を構成するトナーを膨潤・軟化させることによって、トナー像を記録媒体に定着させる。より具体的には、たとえば、感光体表面に形成されるトナー像を中間転写ベルトなどの中間転写媒体に転写し、この中間転写媒体上のトナー像を記録媒体に転写定着する方式の画像形成装置において、中間転写媒体上のトナー像に定着液を塗布してトナー像を構成するトナーを膨潤・軟化させた後に、記録媒体に転写定着させることが行われる。
【0003】
また、定着液を貯留しかつ塗布ローラを収容する定着液槽と、中間転写媒体上の未定着トナー像に定着液を接触塗布する塗布ローラとを含む定着液塗布装置も知られている(たとえば、特許文献1参照)。さらに特許文献1の図8(b)には、未定着トナー像に定着液を接触塗布する塗布ローラの一例として、その軸心部分に定着液通路が形成されたスポンジローラが記載される。該スポンジローラによれば、外部から定着液通路に供給される定着液を表面まで浸透させることによって、未定着トナー像に定着液を接触塗布する。すなわち、特許文献1には、液体浸透性を有する材料で構成され、内部に定着液を貯留する空間を有し、内部に貯留される定着液をその表面まで沁み出させ、この沁み出した定着液を接触塗布する塗布ローラが記載される。また、特許文献1の図9および段落[0050]〜[0051]には、定着液槽および塗布ローラとともに、記録媒体上に残留する余剰の定着液を回収する余剰液回収部を含む定着液塗布装置が記載され、さらに余剰液回収部がカートリッジ方式に構成され、交換可能であることも記載される。すなわち、特許文献1には、定着液塗布装置の構成要素の一部をカートリッジ方式とし、画像形成装置本体に対して着脱可能に設けることが記載される。
【0004】
特許文献1のスポンジローラは、単一の液体浸透性材料から構成され、定着液塗布量の制御が非常に困難であるため、必要量以上の定着液が記録媒体に塗布され、特に記録媒体が紙類である場合に、記録媒体にしわ、カールなどが発生し易い。定着液消費量が増大するという欠点もある。また、特許文献1の定着液塗布手段では、定着液槽の鉛直方向下部にスポンジローラを設ける構成を採るので、スポンジローラが回転する際に、スポンジローラと定着液槽との接触部分においてスポンジローラ表面が押圧されることによって定着液が外部に漏出するのを避け得ない。漏出した定着液は画像形成装置内部の各構成部材を汚染し、画像形成装置の耐用寿命を短縮化する。したがって、漏出した定着液を除去する維持管理作業が必要になるとともに、定着液消費量が一層増大するおそれがある。加えて、スポンジローラの長期的な耐用性は充分満足できるものではなく、スポンジローラの交換が必要になるけれども、特許文献1にはスポンジローラの交換手段が一切開示されない。この点からも、画像形成装置の長期的な耐用性が損なわれるおそれがある。
【0005】
また、特許文献1のスポンジローラの定着液通路には、該ローラの回転軸部分に該定着液通路に連通するように形成される供給路を介して定着液が供給される。しかしながら、特許文献1には、外部から回転軸部分への定着液の供給方法については具体的な記載はなく、スポンジローラの構成は実施困難である。スポンジローラの回転軸の最先端部分に外部からの定着液供給手段が接続されると仮定する場合、回転軸は画像形成時に常に回転する構成が採られているので、接続部分の耐用性に問題を生じ、接続部分から軸受け部に定着液が漏出し、画像形成装置内部を汚染するおそれがある。また、特許文献1の定着液塗布装置では、余剰液回収部のみをカートリッジ方式とするため、定着液の補充と余剰液の廃棄という維持管理作業を別々に行う必要が生じ、画像形成装置としての取り扱い性を低下させる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−333866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、定着液の画像形成装置内部への漏出が防止され、定着液消費量を低減化しつつ、未定着トナー像に適量の定着液を塗布でき、高精細および高画像濃度の高品位画像を長期にわたって安定的に形成できる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
未定着トナー像を担持するトナー像担持手段と、トナー像担持手段上の未定着トナー像にトナーを記録媒体に定着させる作用を有する定着液を塗布する定着液塗布手段とを含み、電子写真方式または静電記録方式を利用して画像を形成する画像形成装置において、
定着液塗布手段が、
トナー像担持手段を臨んで開口部が形成され、その内部空間に塗布部材を収容する定着液槽と、
定着液槽内部において回転自在かつトナー像担持手段に対して離接可能に支持され、少なくとも一部が定着液槽の開口部から外方に突出してトナー像担持手段に対向し、開口部の定着液槽壁との間に間隙を有するように設けられ、定着液をトナー像担持手段上の未定着トナー像に接触塗布するローラ状の塗布部材と、
定着液槽の開口部と塗布部材との間隙を密閉するシール部材と、
塗布部材がトナー像担持手段に対して離接可能になるように定着液槽を支持する離接手段とを含み、
少なくとも定着液槽と塗布部材とシール部材とが一体化され、画像形成装置本体に対して脱着可能に設けられることを特徴とする画像形成装置である。
【0009】
また本発明の画像形成装置は、
前記の定着液槽が、
その内部空間に塗布部材を収容するとともに、定着液を貯留し、
前記の塗布部材が、
定着液槽内部において回転自在かつトナー像担持手段に対して離接可能に支持され、少なくとも一部が定着液槽の開口部から外方に突出してトナー像担持手段に対向し、開口部の定着液槽壁との間に間隙を有しかつ少なくとも一部が定着液槽内の定着液よりも鉛直方向上方に位置するように設けられ、長手方向の端部付近から端部にかけて、長手方向に垂直な方向の断面径が連続的に小さくなる傾斜部を有する第1の塗布部材であり、かつ
前記のシール部材が、
塗布部材に対して離接可能に設けられ、その長手方向の端部が塗布部材の傾斜部に接触することによって定着液槽の開口部と塗布部材との間隙を密閉する第1のシール部材であることを特徴とする。
【0010】
さらに本発明の画像形成装置は、
前記の定着液塗布手段が、
定着液槽内にて回転自在に支持されて第1の塗布部材に接触しかつ定着液槽内に貯留される定着液に接触しないように設けられ、少なくともその表面が第1の塗布部材表面よりも水に対する接触角の大きい材料からなるクリーニング部材をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の画像形成装置は、
前記の定着液塗布手段が、
定着液槽内に収容され、開口部を有して内部に定着液が充填される変形可能な定着液容器と、
一端が定着液容器の開口部からその内部に挿入されて定着液に接触し、他端が第1の塗布部材に圧接するように設けられて、第1の塗布部材に定着液容器内の定着液を供給する塗布ウィックとをさらに含むことを特徴とする。
【0012】
さらに本発明の画像形成装置は、
前記の定着液塗布手段が、
定着液槽内の定着液量を検知する液量検知手段と、
液量検知手段による検知結果に応じて、定着液塗布手段の交換時期を報知する交換時期報知手段とをさらに含むことを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の画像形成装置は、
前記の液量検知手段が、
側面に定着液の流入および流出が可能な複数の貫通孔が形成され、一端が定着液槽内の定着液の液面から定着液槽の内部空間に向けて突出し、かつ他端が定着液中に浸漬して定着液槽に支持される中空状位置規制部材と、
中空状位置規制部材の内部空間に、定着液に浮遊して定着液の増減に応じて鉛直方向に上下動可能に収容される第1の定着液量指示部材と、
第1の定着液量指示部材の鉛直方向における位置を検知する第1の位置検知手段と、
第1の位置検知手段による検知結果に応じて定着液量を算出する定着液量算出手段とを含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明の画像形成装置は、
前記の塗布部材が、
定着液槽内部において回転自在かつトナー像担持手段に対して離接可能に支持され、少なくとも一部が定着液槽の開口部から外方に突出してトナー像担持手段に対向し、開口部の定着液槽壁との間に間隙を有するように設けられ、内部に定着液を貯留する定着液貯留槽を有し、定着液貯留槽中の定着液をトナー像担持手段上の未定着トナー像に接触塗布するローラ状の第2の塗布部材であり、かつ
前記のシール部材が、
定着液槽内部の塗布部材表面に密着または間隙を有して離隔するように設けられるフィルム状部材と、
定着液槽開口部の長手方向両端部および該両端部近傍の塗布部材表面に接触するように設けられ、フィルム状部材を支持する支持部材とを有し、
定着液槽の開口部と塗布部材との間隙を密閉する第2のシール部材であることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の画像形成装置は、
前記の第2の塗布部材が、
定着液貯留槽内において第2の塗布部材の軸心回りに回転可能に支持され、定着液の増減に応じて回転する第2の定着液量指示部材と、
第2の定着液量指示部材の位置を検知する第2の位置検知手段と、
第2の位置検知手段による検知結果に応じて定着液量を算出する定着液量算出手段とを含むことを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の画像形成装置は、
前記のいずれか1つの定着液槽が、
画像形成装置への装着時に底面になる平面部分と、
曲率を有する面によって構成される側面部分とを含む容器状部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トナー像担持手段と定着液塗布手段とを含む電子写真方式または静電記録方式の画像形成装置において、開口部を有しかつ塗布部材を収容する定着液槽と、少なくとも一部が開口部から外方に向けて突出し、トナー像担持手段上のトナー像に定着液を接触塗布する塗布部材と、シール部材と、塗布部材がトナー像担持手段に離接可能になるように定着液槽を支持する離接手段とを含む定着液塗布手段を設け、該定着液塗布手段を画像形成装置本体に対して着脱可能とし、シール部材によって定着液槽の開口部と塗布部材との間隙を密閉する構成を採ることによって、たとえば、定着液塗布手段の着脱時、画像形成装置の搬送時、地震などの自然災害発生時などに定着液が漏出し、漏出した定着液によって画像形成装置内部が汚染されるのが防止される。また、定着液塗布手段のうち、少なくとも定着液槽と塗布部材とシール部材とが一体化されたカートリッジ方式に構成され、定着液の補給、塗布部材およびシール部材の交換などを同時に実施できるので、塗布部材およびシール部材の劣化による定着液の漏出、定着液のトナー像への過剰な供給などを起こすことがなく、定着液の塗布を安定して実行できる。その結果、高精細および高画像濃度の高品位画像を長期にわたって安定的に形成できる。さらに、塗布部材およびシール部材は一定期間後に交換されるので、これらを構成する材料として安価な材料を使用でき、定着液塗布手段の低コスト化を図り得る。
【0018】
本発明によれば、定着液槽に塗布部材を収容するとともに、定着液を貯留する構成において、塗布部材として、少なくとも一部が定着液に浸漬し、長手方向の端部付近から端部にかけて、長手方向に垂直な方向の断面径が連続的に小さくなる傾斜部を有する第1の塗布部材を用い、シール部材として、長手方向端部が第1の塗布部材の傾斜部に接触することによって定着液槽の開口部と第1の塗布部材との間隙を密閉する第1のシール部材を用いることによって、第1の塗布部材の長手方向に垂直な断面の半径方向に第1のシール部材を移動させるだけで、第1のシール部材が定着液槽の開口部の全周にわたって第1の塗布部材と定着液槽との隙間を密閉できる。さらに、第1の塗布部材からの離反時および第1の塗布部材への当接時に、第1のシール部材が第1の塗布部材表面と摺擦することがないので、第1の塗布部材表面の損傷による第1の塗布部材の回転トルク増大、第1のシール部材の摩耗などを防止できる。
【0019】
本発明によれば、定着液槽内において、第1の塗布部材に接触しかつ定着液に接触しないようにクリーニング部材を設け、クリーニング部材の少なくとも表面を、第1の塗布部材表面よりも水に対する接触角が大きい材料で形成することによって、第1の塗布部材表面に付着する膨潤化トナーがクリーニング部材に付着し、第1の塗布部材に再付着することがないので、第1の塗布部材表面からトナーが除去され、第1の塗布部材の未定着トナー像への定着液塗布性能が長期にわたって高い水準に維持され、高品位画像を安定的に形成できる。また、クリーニング部材は定着液から離隔するように設けられるので、クリーニング部材表面に付着する膨潤化トナーは次第に乾燥してクリーニング部材表面に固着し、剥落または剥離することがない。このため、クリーニング部材の表面に、第1の塗布部材表面の膨潤化トナーを重ねて付着させ得る。これによって、第1の塗布部材表面のトナーを一層確実に除去できる。また、トナーの混入によるが定着液の汚染が起こらない。さらに、第1の塗布部材と定着液槽とクリーニング部材とが一体化した定着液塗布手段として構成されるので、第1の塗布部材とクリーニング部材とが常に一定の位置関係を保ち、画像形成装置本体への着脱時にも位置のずれを生じることが無い。したがって、第1の塗布部材のクリーニング(第1の塗布部材表面からのトナーの除去)を確実に実行できる。一体化は、定着液の補給ならびに第1の塗布部材およびクリーニング部材の交換を同時に実施できるという利点をも有する。これによって、クリーニング部材へのトナーの付着過多による第1の塗布部材のクリーニング不良が発生しないので、長期間にわたり安定的にトナー像に定着液を塗布できる。
【0020】
本発明によれば、定着液槽内に、定着液が充填される容器であって、開口部を有し変形可能な定着液容器を収容する構成を採ることによって、定着液の漏出による画像形成装置内部の汚染が一層確実に防止される。変形しない密閉容器を用いる方が漏出防止には有利であるけれども、このような密閉容器において定着液の消費が進むと、密閉容器内の圧力と大気圧との差によって密閉容器内に負圧が生じ、定着液を塗布ローラに供給できなくなる。本発明のように、変形可能な定着液容器を用いることによって、定着液の消費に伴って容器の内容積が減少する変形が生じるので、容器内に負圧が生じることがない。したがって、塗布部材に安定的に定着液を供給できる。また、定着液容器に充填される定着液の第1の塗布部材への供給手段として、一端が定着液容器の開口部から該容器内に挿入されて定着液に接触し、他端が第1の塗布部材に圧接するように設けられる塗布ウィックを用いるという簡易な構成を採ることによって、供給手段が壊れ難く、定着液の塗布部材への安定的な供給が可能になる。
【0021】
本発明によれば、定着液塗布手段が、定着液槽内の定着液量を検知する液量検知手段と、定着液塗布手段の交換時期を報知する交換時期報知手段とをさらに含む構成を採ることによって、定着液塗布手段の交換時期を正確に把握でき、定着液の不足などによるトナー像の記録媒体への定着不良が起こるのを防止できる。特に、定着液は揮発性成分を含むので、トナー像の定着に使用される量よりも多くの定着液が消費される場合があり、画像形成枚数のみで定着液の消費量を予測するよりも、実際の消費量を確実に把握できる。
【0022】
本発明によれば、定着液に浮遊可能で定着液の増減に応じて鉛直方向に上下動可能な第1の定着液量指示部材を用いることによって、定着液の実際の消費量を容易に把握できる。この第1の定着液指示部材を、定着液槽によって鉛直方向に支持され、少なくとも一部が定着液中に浸漬するように設けられ、側面に定着液の流入出が可能な複数の貫通孔が形成された中空状部材の内部空間に収容することによって、第1の定着液指示部材が水平方向への移動を制限され、鉛直方向のみに移動するようになる。従って、第1の定着液指示部材の鉛直方向への位置を第1の位置検知手段によって検知し、その検知結果に応じて定着液算出手段(たとえば、CPUにおける演算部)において定着液量を算出すれば、定着液槽中の定着液量を正確に把握できる。すなわち、第1の定着液指示部材と、中空状部材と、第1の位置検知手段と、定着液算出手段とを含む液量検知手段によって、定着液消費量(=定着液槽中の定着液量)を容易にかつ正確に把握できる。
【0023】
また、液量検知手段のうち第1の定着液指示部材と中空状部材とは、定着液槽、第1の塗布部材などとともに定着液塗布手段として一体化され、カートリッジ方式に構成され、第1の位置検知手段および定着液算出手段は画像形成装置内部の所定位置に固定して取り付けられる。このため、定着液塗布手段の画像形成装置本体への着脱時などに、第1の定着液指示部材、中空状部材、第1の位置検知手段および定着液算出手段の位置がずれ、定着液量の把握に支障を来たすことがない。したがって、定着液槽内の定着液量を常に正確に把握できる。また、内部に定着液が充填された定着液槽を含んで一体化された定着液塗布手段を着脱するので、定着液のみを補充する場合などに比べて、定着液の漏出によって画像形成装置内部が汚染するのを確実に防止できる。
【0024】
本発明によれば、本発明の画像形成装置において、塗布部材として、内部に定着液貯留槽を有し、定着液貯留槽中に定着液を表面まで浸透させてトナー像に塗布する形式の第2の塗布部材を用い、定着液槽開口部において第2の塗布部材が外方に向けて露出する部分以外の部分を密閉することによって、定着液槽開口部と第2の塗布部材との間隙を密閉する形式の第2のシール部材を用いることによって、定着液の外部への漏出および揮散を防止しながら、定着液塗布手段の小型化ひいては画像形成装置本体の小型化を行い得る。また、定着液槽、第2の塗布部材および第2のシール部材といった構成部材が一体化されたカートリッジ方式に定着液塗布手段に構成され、定着液塗布手段の画像形成装置本体への着脱時などに、構成部材同士の位置関係が変化しないので、トナー像に定着液を安定的に塗布できる。さらに、定着液塗布手段がカートリッジ方式に構成されるので、その着脱時に定着液の漏出が起こらず、定着液の補給と構成部材の交換とを同時に実施できる。
【0025】
本発明によれば、第2の塗布部材の定着液貯留槽内に第2の定着液量指示部材を設け、第2の塗布部材の外部に設けられる第2の位置検知手段によって第2の定着液量指示部材の定着液貯留槽内における位置を検知し、その検知結果に応じて定着液算出手段にて定着液量を算出すれば、定着液の空気中への揮散分を見逃すことなく、第2の塗布部材内の定着液残量を正確に把握できる。また、第2の塗布部材はカートリッジ化された定着液塗布手段に組み込まれ、第2の定着液量指示部材は第2の塗布部材によってその軸心回りに回転可能に支持され、第2の位置検知手段は画像形成装置によって定着液槽外部の所定位置に支持されるので、これらの位置関係にずれを生じることがない。したがって、定着液残量を常に正確に把握できる。また、第2の定着液量指示部材は第2の塗布部材の軸心を支点にして、定着液中を浮遊する簡易な構造で安価な部材として構成されるので、一体化して他の構成部材と同時に交換されても、コストを上昇させる要因にはならない。さらに、定着液塗布手段がカートリッジ方式に構成されるので、その着脱時に定着液の漏出が起こらず、定着液の補給と構成部材の交換とを同時に実施できる。
【0026】
本発明によれば、定着液槽として、平面状の底面と、底面以外の面が曲率を有する面で構成される容器状部材を用いることによって、一体化された定着液塗布手段のカートリッジを、画像形成装置本体に装着しない時でも、定着液の漏出を起こすことなく放置できる。このように構成すれば、定着液塗布手段のカートリッジを予め大量に製造して保存し得るので、コストの低減化などを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の実施の第1形態である画像形成装置1の構成を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述のトナー像形成手段2)の構成を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述の定着液塗布手段4)の構成を拡大して示す断面図である。画像形成装置1は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のトナー像を順次重ね合わせて転写するタンデム構成の電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、中間転写手段3と、定着液塗布手段4と、転写定着手段5と、記録媒体供給手段6と、排出手段7とを含む。
【0028】
トナー像形成手段2は、作像ユニット10y,10m,10c,10bを含む。作像ユニット10y,10m,10c,10bは、後述する中間転写ベルト22の回転駆動方向(副走査方向)、すなわち矢符29の方向の上流側からこの順番に一列に配置され、デジタル信号などとして入力される各色の画像情報に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像に対応する色のトナーを供給し、現像して各色のトナー像を形成する。すなわち、作像ユニット10yはイエローの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10mはマゼンタの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10cはシアンの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10bはブラックの画像情報に対応するトナー像を形成する。作像ユニット10yは、感光体ドラム11yと、帯電ローラ12yと、光走査ユニット13yと、現像装置14yと、ドラムクリーナ15yとを含む。
【0029】
感光体ドラム11yは、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に支持され、その表面に静電潜像ひいてはトナー像が形成される感光層を有するローラ状部材である。感光体ドラム11yとしては、たとえば、図示しない導電性基体と、導電性基体表面に形成される感光層とを含むものが挙げられる。導電性基体には、円筒状、円柱状、シート状などの導電性基体を使用でき、その中でも円筒状導電性基体が好ましい。感光層には、たとえば、有機感光層、無機感光層などを使用できる。有機感光層としては、電荷発生物質を含む樹脂層と電荷輸送物質を含む樹脂層との積層体、1つの樹脂層中に電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む樹脂層などが挙げられる。無機感光層としては、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどから選ばれる1種または2種以上を含む層が挙げられる。導電性基体と感光層との間には、下地層を介在させてもよく、感光層の表面には主に感光層を保護するための表面層を設けてもよい。本実施の形態では、導電性基体であり、接地電位(GND)に接続されるアルミニウム素管と、アルミニウム素管の表面に形成される厚さ20μmの有機感光層とを含み、直径30mmの感光体ドラムを使用する。また本実施の形態では、感光体ドラム11yは、時計回りの方向に周速度200mm/sで回転駆動する。
【0030】
帯電ローラ12yは、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に支持され、感光体ドラム11yの表面を所定の極性および電位に帯電させるローラ状部材である。帯電ローラ12yには図示しない電源が接続され、該電源から電圧を印加されて放電することによって、感光体ドラム11y表面を帯電させる。本実施の形態では、帯電ローラ12yに−1200Vの電圧が印加され、感光体ドラム11y表面は−600Vに帯電する。帯電ローラ12yに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、スコロトロンなどのコロナ帯電器などを使用できる。
【0031】
光走査ユニット13は、帯電ローラ12yによって帯電された感光体ドラム11y表面に、イエローの画像情報に対応する信号光13yを照射し、感光体ドラム11y表面にイエローの画像情報に対応する静電潜像を形成する。光走査ユニット13には、半導体レーザなどを使用できる。本実施の形態では、−600Vに帯電した感光体ドラム11y表面に、露光電位−70Vの静電潜像を形成する。
【0032】
現像装置14yは、現像ローラ16yと、現像ブレード17yと、現像槽18yと、攪拌ローラ19y,20yとを含む。現像ローラ16yは、その表面にイエロートナー8yを担持し、このイエロートナー8yを、現像ローラ16yと感光体ドラム11yとの最近接部(現像ニップ部)において、感光体ドラム11y表面の静電潜像に供給する。現像ローラ16yは、現像槽18y内に収容され、現像槽18yの感光体ドラム11yを臨む面に形成される開口部21yからその一部が外方に向けて突出し、感光体ドラム11yとの間に間隙を有して離隔しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられ、図示しない固定磁極を内包するローラ状部材である。現像ローラ16yは、感光体ドラム11yと逆方向に回転駆動する。したがって、現像ニップ部において、現像ローラ16yと感光体ドラム11yとは同じ方向に回転駆動する。また、現像ローラ16yには図示しない電源が接続され、該電源から直流電圧(現像電圧)が印加される。これによって、現像ローラ16y表面のイエロートナー8yが静電潜像に円滑に供給される。本実施の形態では、現像ローラ16yは、感光体ドラム11yの周速度の1.5倍である300mm/sの周速度で回転する。また、現像ローラ16yには、−240Vの現像電位が印加される。現像ローラ16y表面のイエロートナー層が現像ニップ部において感光体ドラム11yと接触し、静電潜像にイエロートナー8yが供給される。現像ブレード17yは、一端が現像槽18yによって支持され、他端が現像ローラ16yとの間に空隙を有して離隔するように設けられる板状部材であり、現像ローラ16y表面に担持されるイエロートナー層を均一化(層規制)する。現像槽18yは前記のように感光体ドラム11yを臨む面に開口部21yが形成され、内部空間を有する容器状部材である。現像槽18yは、その内部空間に現像ローラ16yと攪拌ローラ19y,20yとを内蔵し、かつイエロートナー8yを貯留する。現像槽18yには、イエロートナー8yの消費状況に応じて、図示しないトナーカートリッジからイエロートナー8yが補給される。本実施の形態では、イエロートナー8yは磁性キャリアと混合された2成分現像剤の形態で使用されるけれども、それに限定されず、イエロートナー8yのみを含む1成分現像剤の形態でも使用できる。攪拌ローラ19y,20yは、現像槽18yの内部空間において互いに空隙を有して離隔しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられるスクリュー状部材である。攪拌ローラ19yは、現像ローラ16yを臨み、現像ローラ16yとの間に空隙を有して離隔するように設けられる。攪拌ローラ19y,20yは、それぞれの回転駆動によって、図示しないトナーカートリッジから現像槽18y内に補給されるイエロートナー8yと、予め現像槽18y内に充填される磁性キャリアとを混合して現像ローラ16yの周辺に送給する。本実施の形態では、感光体ドラム11y、現像ローラ16y、現像ブレード17yおよび攪拌ローラ19y,20yがそれぞれ圧接するように設けられるけれども、それに限定されず、感光体ドラム11yと現像ローラ16y、現像ローラ16yと現像ブレード17y、現像ローラ16yと攪拌ローラ19yおよび攪拌ローラ19yと攪拌ローラ20yとがそれぞれ離隔するように設けられる構成をも採用できる。
【0033】
ドラムクリーナ15yは、後述のように、感光体ドラム11y表面のイエロートナー像を中間転写ベルト22に転写した後、感光体ドラム11y表面に残留するイエロートナー8yを除去、回収する。
【0034】
作像ユニット10yによれば、帯電ローラ12yによって帯電状態にある感光体ドラム11yの表面に、光走査ユニット13からイエロートナーの画像情報に対応する信号光13yを照射して静電潜像を形成し、該静電潜像に現像装置14yからイエロートナー8yを供給して該静電潜像を現像し、イエロートナー像が形成される。このイエロートナー像は、後述のように、感光体ドラム11y表面に圧接して矢符29の方向に回転駆動する中間転写ベルト22に転写される。感光体ドラム11y表面に残留するイエロートナー8yはドラムクリーナ15yによって除去され、回収される。この画像(トナー像)形成動作が繰返し実行される。作像ユニット10m,10c,10bは、イエロートナー8yに代えて、マゼンタトナー8m、シアントナー8cまたはブラックトナー8bを使用する以外は、作像ユニット10yに類似する構造を有するので、同一の参照符号を付し、かつ各参照符号の末尾にマゼンタを示す「m」、シアンを示す「c」およびブラックを示す「b」を付し、説明を省略する。
【0035】
トナー8y,8m,8c,8b(以後特に断らない限り「トナー8」と総称する)は、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有する。
【0036】
結着樹脂としては、後述する定着液9によって膨潤または軟化する樹脂であれば特に制限されず、たとえば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレンおよびその置換体から選ばれる2種以上の共重合体であるスチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。これらの結着樹脂の中でも、カラートナー用としては、保存性、耐久性、定着液9による膨潤または軟化制御などの観点から、軟化点100〜150℃、ガラス転移点が50〜90℃の結着樹脂が好ましく、前記の軟化点およびガラス転移点を有するポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは入手容易な有機溶剤によって膨潤・軟化し易く、膨潤・軟化状態で透明になる。結着樹脂が前記のポリエステルである場合は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックから選ばれる2種以上のトナー像が重ね合わされた多色トナー像を定着液9によって記録媒体に定着させると、ポリエステル自体は透明化するので、減法混色によって充分な発色が得られる。また、熱定着方式で使用されるトナーに含まれる結着樹脂よりも軟化点または分子量の高い樹脂を用いても、定着液9による定着が可能である。軟化点または分子量の高い樹脂を用いれば、現像の際の負荷による劣化が防止され、長期にわたって高画質画像が得られる。また、軟化点または分子量の高い樹脂を用いると、熱定着方式では充分に定着および発色しないけれども、定着液9の塗布によって化学的にトナーを膨潤・軟化させる場合には、高画質画像が得られる。
【0037】
着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成に用いられるトナー用顔料および染料を使用できる。その中でも、定着液9の塗布によって、特にトナー像の記録媒体への転写定着時に滲みなどが発生するのを防止するために、定着液9に溶解しない顔料が好ましい。顔料としては、たとえば、カーボンブラックなどのアゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ぺリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などの有機系顔料、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロムおよびベルリンブルーなどの無機系顔料、アルミニウム粉などの金属粉などが挙げられる。顔料は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0038】
離型剤としては、たとえば、ワックスを使用できる。ワックスとしてはこの分野で常用されるものを使用でき、その中でも、定着液9によって膨潤または軟化するものが好ましい。その具体例としては、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。本実施の形態では、軟化点が70℃で、トナー8の結着樹脂よりも軟化点が低い低分子ポリエチレンワックスを用いる。このため、結着樹脂ひいてはトナー8の軟化点よりも低い温度下でも、ワックスが軟化することによって、トナー同士およびトナー8のトナー像担持体、記録媒体Pへの付着力が増加する。したがって、定着液9のトナー像への塗布時に、トナー流れ、トナー8の凝集などが発生することを防止できる。さらに、ワックスが軟化することによって、ワックスの存在箇所からトナー粒子内部に定着液9が浸透し易くなる。このため、定着液9の塗布時にトナー8全体が短時間で膨潤・軟化するので、記録媒体Pへの転写定着時に充分な定着強度が得られると同時に、トナー像の重ね合わせによる充分な発色が得られる。
【0039】
トナー8は、結着樹脂、着色剤および離型剤のほかに、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電材などの一般的なトナー添加剤の1種または2種以上を含有できる。
【0040】
トナー8は、着色剤、離型剤などを結着樹脂に分散して粉砕する粉砕法、着色剤、離型剤、結着樹脂のモノマーなどを均一に分散した後、結着樹脂のモノマーを重合させる重合法、結着樹脂粒子、着色剤、離型剤などを凝集剤の存在下に凝集させ、得られる凝集物を加熱する凝集法などの公知の方法に従って製造できる。なお、トナー8の形状は、表面積を大きくするために、完全球形よりは不定形の方が好ましい。これによって、定着液9と接触し易くなるので、定着液9の消費量を低減化し得ると同時に、トナー像の短時間での定着および乾燥が可能になる。トナー8の体積平均粒径は特に制限されないけれども、好ましくは2〜7μmである。このような小粒径トナーを用いると、トナー像の単位面積当りのトナー表面積が大きくなり、定着液9との接触面積が増加するので、トナー8を短時間で記録媒体Pに定着させ得る。短時間での定着は、定着液9の消費量の低減化にも寄与する。また、定着液9が速やかに乾燥するので、記録媒体Pにしわ、カールなどが発生することがない。また、トナー8の粒径が小さいほど、重量は同じ場合でも記録媒体Pに対する被覆率が向上するので、より少ない付着量で高画質画像を形成できる。すなわち、トナー消費量の低減化と高画質化とを両立できる。本実施の形態では、トナー8としては、着色剤含有量がトナー8全量の12重量%、ワックス含有量がトナー8全量の7重量%および残部がポリエステル(結着樹脂、ガラス転移点90℃、軟化点120℃)からなり、体積平均粒径6μmおよび定着液9に対する接触角47度の負帯電性の絶縁性非磁性トナーを用いる。このトナーを用いて所定の画像濃度(X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4)を得るには、単位面積当たり5g/mのトナー量が必要である。
【0041】
中間転写手段3は、中間転写ベルト22と、中間転写ローラ23y,23m,23c,23bと、支持ローラ24,25,26と、ベルトクリーナ28、温度検知手段30とを含んで構成される。
【0042】
中間転写ベルト22は、支持ローラ24,25,26によって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状のトナー像担持手段であり、感光体ドラム11y,11m,11c,11bとほぼ同じ周速度で矢符29の方向に回転する。中間転写ベルト22としては、定着液9がその内部に浸透しない構成であれば特に制限されないけれども、たとえば、フィルム状基材と、フィルム状基材の表面に形成される弾性樹脂層と、弾性樹脂層の表面に形成されるフッ素樹脂含有被覆層とを含む積層体が挙げられる。被覆層表面がトナー像担持面22aになる。フィルム状基材には、たとえば、ポリイミド、ポリカーボネートなどの樹脂材料、フッ素ゴムなどのゴム材料をフィルム状に成形したものを使用できる。フッ素樹脂被覆層は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、これらの混合物などのフッ素樹脂を含んで構成される。フィルム状基材、弾性樹脂層およびフッ素樹脂含有被覆層の1または2以上には、中間転写ベルト22としての電気抵抗値を調整するために、導電材が配合されてもよい。導電材としては、たとえば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトカーボンなどが挙げられる。中間転写ベルト22はベルト形態に限定されず、たとえば、ドラム形態に形成することもできる。本実施の形態では、厚さ100μmのポリイミドフィルム表面に、厚さ300μmのシリコーンゴム層と、PTFEおよびPFAを8:2(重量比)の割合で含むフッ素樹脂組成物からなり、定着液9に対する接触角が70度である厚さ20μmのフッ素樹脂含有被覆層と順次を形成した積層体を、ベルト状の中間転写ベルト22として使用する。このように、定着液9を浸透しない材料を用いて中間転写ベルト22を構成すれば、塗布される定着液9の大部分をトナー8の表面に付着させ得る。これによって、定着液9の記録媒体Pへの浸透によるしわ、カールなどの発生を防止できるとともに、定着液9の消費量の低減化を図り得る。中間転写ベルト22のトナー像担持面22aは、その回転方向(矢符29の方向)上流側から、感光体ドラム11y,11m,11c,11bにこの順番で圧接する。中間転写ベルト22の感光体ドラム11y,11m,11c,11bに圧接する位置が、各色トナー像の中間転写ベルト22への転写位置(中間転写ニップ部)である。
【0043】
中間転写ローラ23y,23m,23c,23bは、それぞれ、中間転写ベルト22を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向してトナー像担持面22aの反対面に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。中間転写ローラ23y,23m,23c,23bには、たとえば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面に被覆される導電性層とを含むローラ状部材が用いられる。軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属から形成される。軸体の直径は特に制限されないけれども、好ましくは8〜10mmである。導電性層は中間転写ベルト22に高電圧を均一に印加するためのものであり、たとえば、導電性弾性体から形成される。導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、発泡EPDM、発泡ウレタンなどのマトリックス中にカーボンブラックなどの導電材を分散させた導電性弾性体が挙げられる。中間転写ローラ23y,23m,23c,23bには、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト22上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト22のトナー像担持面22aにおける中間転写ニップ部に順次重ね合わさって転写され、多色トナー像が形成される。ただし、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの一部のみの画像情報が入力される場合は、作像ユニット10y,10m,10c,10bのうち、入力される画像情報の色に対応する作像ユニットのみにおいてトナー像が形成される。
【0044】
支持ローラ24,25,26は、図示しない駆動手段によって軸心回りに回転駆動可能に設けられ、中間転写ベルト22を張架して矢符29の方向に回転駆動させる。支持ローラ24,25,26には、たとえば、直径30mmおよび肉厚1mmのアルミニウム製パイプ状ローラが用いられる。支持ローラ24は、その内部に加熱手段27が設けられ、加熱ローラとしても機能する。加熱手段27は、支持ローラ24よりも中間転写ベルト22の回転駆動方向下流側に配置される温度検知手段30による中間転写ベルト22の温度検知結果に応じて、画像形成装置1の全動作を制御する制御手段であるCPUによって制御される。制御の詳細については後述する。加熱手段27によって、トナー像を、該像を構成するトナー8に含まれる結着樹脂のガラス転移点以上に加熱するのが好ましい。これによって、結着樹脂が軟化し、トナー8同士およびトナー8と中間転写ベルト22との付着力が増加するので、後述する塗布ローラ32によって定着液9を塗布する際に、トナー8が塗布ローラ32にオフセットすること、トナー像が乱れることなどを防止できる。したがって、塗布ローラ32による定着液9のトナー像への接触塗布を容易に実行できる。本実施の形態では、ガラス転移点が90℃である結着樹脂を含むトナー8を用い、中間転写ベルト22の温度がトナー8に含まれる結着樹脂のガラス転移点よりも高い100℃に保持されるように制御される。このように制御すれば、中間転写ベルト22上のトナー像は支持ローラ23の表面を通過する際に、中間転写ベルト22とほぼ同じ温度に加熱され、結着樹脂の軟化によって、トナー粒子8同士およびトナー粒子8と中間転写ベルト22との付着力が増加するので、トナー8の塗布ローラ32へのオフセット、トナー像の乱れなどを防止できる。その結果、塗布ローラ32によるトナー像表面への定着液9の接触塗布を円滑に実行できる。また、後述の塗布ローラ32によって定着液9を接触塗布すると、定着液9の塗布による中間転写ベルト22およびトナー像の温度低下を補う熱量がその場で補充され、トナー像を構成するトナー8の膨潤・軟化が一層円滑に進行する。また、加熱手段27は中間転写ベルト22の回転駆動時のみに動作するように制御される。加熱手段27は、定着液9によるトナー像の定着を補助し、定着液9の消費量のさらなる低減化を目的として設けられるので、トナー像を熱定着するほどの発熱量を必要としない。したがって、加熱手段27を設けても、画像形成装置1の電力消費量は一般的な熱定着方式の画像形成装置の電力消費量よりも大幅に少ない。加熱手段27には、たとえば、ハロゲンランプなどが用いられる。支持ローラ25は電気的に接地され、後述の転写定着手段において転写定着のためのバックアップローラとしての機能をも有する。支持ローラ26は、中間転写ベルト22に張力を塗布するテンションローラとして機能する。
【0045】
ベルトクリーナ28は、中間転写ベルト22のトナー像担持面22a上のトナー像を後述の転写定着手段5において記録媒体Pに転写した後、トナー像担持面22aに残存するトナーを除去する部材である。ベルトクリーナ28は、クリーニングブレード28aと、トナー容器28bとを含んで構成される。クリーニングブレード28aは、中間転写ベルト22を介して支持ローラ26に対向しかつ図示しない加圧手段によってトナー像担持面22aに圧接するように設けられ、トナー像担持面22a上の残存トナー、紙粉などを掻き取る板状部材である。クリーニングブレード28aには、たとえば、ウレタンゴムなどのゴム材料からなるブレードを使用できる。トナー容器28bは、クリーニングブレード28aによって掻き取られた残存トナー、オフセットトナー、紙粉などを貯留する。
【0046】
温度検知手段30は、中間転写ベルト22の温度を検知する。温度検知手段30による検知結果は、画像形成装置1の全動作を制御する図示しないCPUに送られる。CPUは記憶部と演算部と制御部とを有し、温度検知手段30による検知結果は記憶部に入力される。記憶部には、トナー8に含まれる結着樹脂および離型剤の軟化点などの物性データに基づく中間転写ベルト22の制御温度が予め入力される。CPUは演算部において、温度検知手段30による検知結果と中間転写ベルト22の制御温度とを比較する。CPUは、検知結果が制御温度よりも低いという演算結果に応じて制御部から加熱手段27の電源に制御信号を送り、中間転写ベルト22の温度を上昇させる制御を行う。検知結果が制御温度よりも高いという検知結果に応じて、制御部から加熱手段27に制御信号を送り、加熱手段27による加熱を停止する制御を行う。本実施の形態では、温度検知手段30には温度センサが用いられる。
【0047】
中間転写手段3によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上に形成される各色トナー像が、中間転写ベルト22のトナー像担持面22aの中間転写ニップ部に重ね合わされて転写され、トナー像が形成される。このトナー像が定着液塗布手段4によって定着液9の塗布を受け、次いで転写定着手段5によって記録媒体Pへ転写された後、中間転写ベルト22のトナー像担持面22a上に残留するトナーなどがベルトクリーナ28によって除去され、トナー像担持面22aには引き続きトナー像が転写される。
【0048】
定着液塗布手段4は、中間転写ベルト22のトナー像担持面22a上に担持されるトナー像に、該トナー像を軟化および/または膨潤させる定着液9を接触下で塗布する。定着液9を接触塗布するという構成を採ると、非画像部に付着するかぶりトナーにも定着液9を塗布でき、かぶりトナーをも定着できる。したがって、かぶりトナーが手、衣服などに付着するのを防止できる。かぶりトナーは微量なので、記録媒体Pに定着させても画像には実質的な影響は及ぼさない。定着液塗布手段4は、定着液槽31と、塗布ローラ32と、第2のシール部材33と、離接手段34とを含む。定着液塗布手段4は、塗布ローラ32の内部に定着液9を貯蔵しかつ少なくとも塗布ローラ32と定着液槽31と第2のシール部材33とがカートリッジ形式に一体化され、画像形成装置1に対して着脱可能に設けられることを特徴とする。少なくとも定着液槽31と塗布ローラ32と第2のシール部材33とをカートリッジ形式に構成することによって、塗布ローラ32内部の定着液9が全て消費されても、そのカートリッジを交換することで、定着液9を補充できる。このため、定着液9を補充する際に液体として取り扱う必要がなく、定着液9が飛散して画像形成装置1の内部を汚染することがない。上記カートリッジは、たとえば、塗布ローラ32の回転軸に垂直な方向(鉛直方向)に着脱可能に設けられる。これによって、着脱動作時に塗布ローラ32と中間転写ベルト22とが摺擦されて損傷することを防止できる。また、上記カートリッジは、画像形成装置1の側面1aに設けられる開閉自在の開閉扉43を開放して着脱される。また、定着液9が塗布ローラ32内部に貯蔵されることによって、定着液塗布手段4を小型化でき、画像形成装置1からの着脱操作が容易になる。さらに、塗布ローラ表面に接触する第2のシール部材33を備えることにより、塗布ローラ32表面から定着液9の蒸発、定着液槽31からの定着液9の漏出などを防止できる。
【0049】
定着液槽31は、画像形成装置1への装着状態での底面31bが平面によって構成され、それ以外の面が曲率を有する面で構成され、全体としては略円筒形状を有する容器状部材である。定着液槽31は、中間転写ベルト22を臨む面に開口部31aが形成され、塗布ローラ32を回転可能に支持しながらその内部空間に収容する。定着液槽31の材質は特に制限されず、たとえば、合成樹脂、金属などが挙げられる。定着液槽31の外周面であって、開口部31aよりも下方でありかつ温度検知手段30を臨む外周面には、ピボット41が定着液槽31と一体化して設けられる。ピボット41は、画像形成装置1の側面1aに矢符49の方向に開閉自在に設けられる開閉扉43の定着液槽31を臨む側面に設けられるU字形のガイド溝42に摺動可能に挿入される。ピボット41がガイド溝42を摺動することによって、定着液槽31が矢符48の方向に移動して定着液槽31の着脱が可能になる。ピボット41がガイド溝42の先端に位置するときは、塗布ローラ32が中間転写ベルト22に接触可能な動作位置にある。定着液槽31の底面31bには押圧ばね47が当接される。押圧ばね47は、一端が押圧ばね47に当接され、他端が画像形成装置1の本体に支持されるように設けられ、定着液槽31を鉛直方向上方に向けて押圧する。このとき、定着液槽31がピボット41を中心にして回動可能に支持されることになる。これによって、定着液槽31内の塗布ローラ32が中間転写ベルト22に所定の軽い押圧力で圧接される。圧接の押圧力は、たとえば、押圧ばね47の種類の変更などによっても調整できる。押圧ばね47には、たとえば、コイルばね、板ばね、ねじりばねなどを使用できる。
【0050】
塗布ローラ32は、定着液槽31の中間転写ベルト22を臨む面に形成される開口部31aからその一部が外方に向けて突出し、中間転写ベルト22に対して離接可能に設けられるローラ状部材であり、芯金35と、芯金35の表面に形成される浸透制御層36と、浸透制御層36の表面に形成される多孔質層37とを含むローラ状部材である。また、塗布ローラ32の長手方向両端部には、芯金35に連なるようにフランジが設けられ、フランジと一体の回転軸が定着液槽31内に設けられる図示しない軸受けに支持されることによって、塗布ローラ32は定着液槽31によって回転可能に支持される。塗布ローラ32をローラ状部材の形態に構成することによって、塗布ローラ32の内部に閉空間を形成でき、定着液9の貯蔵・保持が容易になる。
【0051】
芯金35には、この分野で常用される芯金が使用できる。本実施の形態では、外径30mm、肉厚0.5mmのアルミニウム製芯金を使用する。また芯金35には、定着液9を通過させる貫通孔である定着液供給孔35aが複数個形成される。本実施の形態では、径0.1mmの定着液供給孔35aが、芯金35の円周方向に等角度で16箇所、軸方向には半位相ずらして5mm間隔で形成される。芯金35の内部は定着液貯留槽になり、定着液9が貯留される。すなわち、芯金35は塗布ローラ32の剛性を高めるとともに、定着液貯留層としても機能する。このように、芯金35内部に定着液9が貯留されるので、一体ユニットとしての定着液塗布手段4の小型化が可能になり、画像形成装置1に対する着脱操作が容易になる。芯金35内部の定着液9は、定着液供給孔35aを介して、芯金35の表面に形成される浸透制御層36に供給される。
【0052】
芯金35の内部に貯蔵される定着液9としては、トナー8に含まれる結着樹脂、離型剤などを膨潤・軟化させ得る液状成分を含むものを使用でき、その中でも1または2種以上の有機溶剤と水とを含むものが好ましい。ここで有機溶剤としては、結着樹脂、離型剤などを膨潤・軟化させることができかつ水に溶解または分散可能なものを使用でき、たとえば、アルコール類(メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、フェノール、ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなど)、エーテル類(メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテルン、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、オクチルフェニルエーテルなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、オレイン酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、コハク酸ジブチル、フタル酸ジエチル、酒石酸ジエチル、パルミチン酸エチル、ジオクチルフタレートなど)が挙げられる。これらの中でも、エーテル類およびエステル類が好ましく、エステル類が最も好ましい。これらの有機溶剤はポリエステルを初めとするトナー8の結着樹脂を膨潤軟化させる作用に優れる。有機溶剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0053】
定着液9中の水の含有量は、好ましくは定着液9全量の20〜95重量%、さらに好ましくは30〜90重量%である。また定着液9中の有機溶剤の含有量は、好ましくは定着液9全量の5〜80重量%以上、さらに好ましくは10〜70重量%である。これらの含有比率はトナー8の結着樹脂を膨潤、軟化させるに好適である。水の含有量が95重量%を超えると、トナー8の膨潤、軟化作用が低下し、充分な定着強度が得られない。水の含有量が20重量%未満では、定着液9のトナー像に対する浸透性が低下し、記録媒体P上にトナー量の多い未定着トナー像が転写されている場合に、トナー像表面のトナーのみが膨潤軟化し、記録媒体Pとの接触面のトナーが膨潤・軟化しないので、トナー像を充分な定着強度で記録媒体Pに定着させ得ない。
【0054】
定着液9は、水および有機溶剤のほかに、界面活性剤を含有できる。界面活性剤は、たとえば、有機溶剤の定着液9中での分散性を向上させ、トナー8と定着液9との濡れ性を向上させる。界面活性剤としては、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩などの高級アルコール硫酸エステル塩、オレイン酸ナトリウムなどの高級脂肪酸金属塩、脂肪酸誘導体硫酸エステル塩、リン酸エステルなどの陰イオン(アニオン)界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミンなどの陽イオン(カチオン)界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸などの両性イオン(ノニオン)界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。界面活性剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、定着液9は分散助剤を含有できる。分散助剤としては、たとえば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、モノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカップリング剤が挙げられる。
【0055】
なお、定着液9は揮発性を有する。定着液9の揮発性は、20℃における蒸気圧を目安とする。定着液9の20℃における蒸気圧は、好ましくは0.005MPa以上、さらに好ましくは0.005〜0.28MPaである。蒸気圧を前記のように調整することによって、定着液9が短時間で乾燥するので、画像形成装置1における単位時間当たりの出力枚数を増加させ得る。具体的には、たとえば、毎分40枚のスループットで画像形成した記録媒体を連続出力しても、相前後して出力される記録媒体において、後に出力される記録媒体に前に出力された記録媒体からトナー像、トナー8および定着液9が付着することがない。なお、0.028MPaを超えると、定着液9の乾燥が速くなり過ぎて、定着に必要な量の定着液9をトナー像に安定的に塗布することが困難になる。また、塗布動作中にも塗布ローラ32表面から定着液9が揮発するので、定着液9の消費量を徒に増大させる。さらに、定着液9の蒸気圧が大気圧と等しい場合には、定着液9は沸騰して瞬時に気化する。前記のような範囲の蒸気圧を有する定着液9を用いることによって、画像形成装置1において、画像を高速でかつ安定的に出力できる。また、定着液9の消費量ひいては定着液9の画像形成装置1への供給頻度を低減化できる。また、画像形成装置1内に定着液9の貯蔵タンクを設ける場合は、貯蔵タンクを小型化できる。
【0056】
本実施の形態では、中間転写ベルト22の定着液9に対する接触角が70度、塗布ローラ32の多孔質層37の定着液9に対する接触角が65度、およびトナー8の定着液9に対する接触角が47度の定着液9を使用する。
【0057】
芯金35の表面に形成される浸透制御層36は、芯金35と多孔質層37とが直接接触し、多孔質層37に過剰の定着液9が供給されるのを防止するために設けられる層であり、定着液9の浸透および保持が可能でかつ弾性変形が可能な材料によって形成される。芯金35と多孔質層37との間に浸透制御層36を介在させる構成によって、塗布ローラ32が中間転写ベルト22に圧接する際に、塗布ローラ32表面に過剰な定着液9が付着し、塗布ローラ32と中間転写ベルト22との圧接ニップ部の入り口で定着液9がメニスカスを形成することを防止出来る。その結果、定着液9とトナー像とが接触した状態で定着液9の激しい流動が発生せず、トナー像が乱れることがないので、高品位で高精細な画像が得られる。また、浸透制御層36は、その中に存在する微細な空孔中に定着液9を保持し、この空孔は塗布ローラ32の接触相手の表面状態に応じて多孔質層37とともに弾性変形する。接触相手の表面状態が比較的平滑である場合には弾性変形の度合が少なく、弾性変形によって空孔中から押出される定着液9の量は少なく、巨視的な面積当りの定着液9の塗布量が小さくなる。一方、凹凸の大きい多色トナー像に接触すると空孔の弾性変形の度合が大きくなり、多量の定着液9が押出されるので、巨視的な面積当りの定着液9の塗布量が大きくなる。このようにして、浸透制御層36によって定着液9の塗布量が制御される。また、浸透制御層36は芯金35に接するので、充分な定着液9の供給を受けることができる。浸透制御層36には、たとえば、フェルト、ゴムの連続気泡体(スポンジ)などが用いられる。本実施の形態では、厚さ5mmのフェルトが用いられる。また本実施の形態では、浸透制御層36の弾性体としての指標になるヤング率(弾性率)は3MPaであり、トナー8に比べて1/100以下である。浸透制御層36を構成するスポンジなどの連続発泡ゴム、フェルトなどは、定着液9を保持する機能を有するので、多孔質層37の層厚を小さくして多孔質層37の定着液9の保持量が少なくても、中間転写ベルト22上のトナー像に充分量の定着液9を塗布できる。したがって、高価な多孔質膜からなる多孔質層37を薄層化し、かつ内部の浸透制御層36を安価な連続発泡ゴム、フェルトなどで構成することによって、塗布ローラ32の製造コストを低下させ得る。
【0058】
多孔質層37は、浸透制御層36から供給される定着液9を中間転写ベルト22のトナー像担持面21a上のトナー像に接触塗布する。多孔質層37は定着液9を保持できる微細な空孔を多数含み、その表面近傍に存在する定着液9の量が多い時は定着液9を吸収し、定着液9の量が少ない時は定着液9を放出する特性を持つ。したがって、塗布ローラ32と中間転写ベルト22とのニップ部入り口で定着液9がメニスカスを形成して滞留するのを防止できる。その結果、定着液9の流動によるトナー像の乱れが発生せず、高品位で高精細な画像が得られる。また、多孔質層37には、定着液9の消費状況に応じて、浸透制御層36から定着液9が遅滞なく供給されるので、トナー量の多いベタ画像を連続して出力しても、定着画像が安定的に得られる。多孔質層37の材料としては、弾性変形および多孔質化が可能な材料であれば特に制限されず使用でき、たとえば、PTFE、ポリウレタン、ポリイミドなどが挙げられる。多孔質層37の材料、空孔径、空孔率などは、定着液9の組成に応じて適宜選択できる。多孔質層37の空孔径は特に制限はないけれども、好ましくは0.1〜2μmである。0.1μm未満では、定着液9の透過量が不充分になり、トナー像におけるトナー量が多い部分で定着強度が不足する。2μmを超えると、トナー粒子8が空孔に嵌り込んで強固に付着し、多孔質層37を目詰まりさせる。また、多孔質層37の空孔率も特に制限はないけれども、好ましくは60〜90%である。60%未満では、定着液9の保持量と透過量とが不足し、トナー像におけるトナー量が多い部分で定着強度が不足する。90%を超える、多孔質層37を復元可能な弾性変形層として形成することが困難になる。また、多孔質層37の層厚も特に制限はないけれども、好ましくは10〜200μmである。10μm未満では、多孔質層として形成することが困難であり、200μmを超えると、定着液9の透過量が不足し、トナー像におけるトナー量が多い部分で定着強度が不足する。
【0059】
多孔質層37は、定着液9に対する接触角が中間転写ベルト22のトナー像担持面21aの定着液9に対する接触角より小さくなるように構成するのが好ましい。これによって、多孔質層37と中間転写ベルト22とが接触するときに、定着液9が中間転写ベルト22よりも多孔質層37に優先的に付着する。このため、中間転写ベルト22上のトナーが付着しない非画像部に多孔質層37から塗布される定着液9の量を低減化し得る。これによって、定着液9の消費量を低減化でき、定着液9の補充回数を減らすことができる。多孔質層37と中間転写ベルト22との接触角の差は好ましくは5度以上である。また、多孔質層37は、定着液9に対する接触角がトナー8の定着液9に対する接触角よりも大きくなるように構成するのが好ましい。これによって、多孔質層37とトナー像とが接触するときに、定着液9が多孔質層37よりもトナー像に付着しやすい。このため、画像部であるトナー像に多孔質層37から定着液9を充分に塗布できる。その結果、面積当たりのトナー量が多い部分のトナー像も充分な定着強度で定着できる。多孔質層37と定着液9との接触角の差は好ましくは10度以上である。本実施の形態では、PTFEからなる厚さ50μmの多孔質層37が設けられ、該多孔質層37における空孔径は0.5μm、空孔率は80%である。また、本実施の形態では、多孔質層37の定着液9に対する接触角は65°である。
【0060】
前記のような構成を有する塗布ローラ32は、中間転写ベルト22上のトナー像に定着液9を塗布する場合には、中間転写ベルト22に対して一定の押圧力で軽く圧接するように構成するのが好ましい。これによって、大面積でトナー量の多いベタ画像が中間転写ベルト22と塗布ローラ32との圧接部(定着液ニップ部)に入っても、塗布ローラ32と中間転写ベルト22との間隔が拡がり、塗布ローラ32表面の定着液9の層が定着液ニップ部を通過できる。その結果、塗布ローラ32は定着液9の薄層を介して中間転写ベルト22に圧接し、定着液9をトナー像に充分に塗布できる。また、定着液ニップ部の入り口で定着液9が大きなメニスカスを形成して滞留することがない。したがって、定着液9とトナー像とが接触した状態で定着液9の大きな流動が発生せず、トナー像を乱すことがなく、高品位で高精細な画像が得られる。さらに、定着液9を介してトナー像と塗布ローラ32とが接触し、トナー像を構成するトナー8が塗布ローラ32に直接接触し難いので、トナー8が塗布ローラ32に付着することを防止できる。塗布ローラ32の中間転写ベルト22に対する押圧力は、前記のような作用が発揮される押圧力であれば特に制限はないけれども、好ましくは線圧で0.05〜1.0N/cmである。0.05N/cm未満では、塗布ローラ32と中間転写ベルト22との接触状態が不安定になり、中間転写ベルト22上のトナー像に定着液9を均一に塗布できない。また、塗布ローラ32が中間転写ベルト22の微妙な凹凸、トナー像の凹凸に倣って弾性変形できなくなり、トナー像の凹所に定着液9を充分に塗布できない。このため、定着液9の塗布むらひいては定着むらが発生し、定着ムラに伴う光沢むら、色むらなどが生じる。1.0N/cmを超えると、塗布ローラ32と中間転写ベルト22とが圧接して回転する状態で、塗布ローラ32表面の定着液9が定着液ニップ部を通過できない。このため、定着液ニップ部入り口で定着液9がスクイーズしてメニスカスを形成し、余剰の定着液9が塗布ローラ9の回転方向上流側へ逆流する。その結果、定着液ニップ部の入り口で定着液9が激しく流動し、それによってトナー像が乱される。本実施の形態では、塗布ローラ32の中間転写ベルト22に対する押圧力は、0.1N/cmであり、塗布ローラ32は中間転写ベルト22の回転に従動して回転する。
【0061】
また、塗布ローラ32表面が弾性材料で構成されるので、トナー像の凹凸に倣って、塗布ローラ32表面が弾性変形する。また、トナー像が存在する部分では、定着液9の薄層を介して塗布ローラ32がトナー像に圧接する。これによって、トナー量が部分的に異なっても、トナー像の高い部分にも低い部分にも定着液9を均一に塗布できる。トナー量が部分的に大きく変化する多色トナー像でも均一に定着でき、高品位画像が得られる。塗布ローラ32の弾性率はトナー8の弾性率よりも小さい方が好ましく、トナー8の弾性率の1/10以下がさらに好ましく、1/100以下が特に好ましい。なお、2色以上のトナー像を重ね合わせた多色トナー像では、トナー量の多い箇所と少ない箇所が微細に入り交じって分布すると共に、トナー像全体としてのトナー量が多くなる。たとえば、単色のトナー像の低濃度部分と、3色のトナー像を重ね合わせた多色トナー像における高濃度部分とでは、トナー層の厚み(高さ)が3倍以上になることがある。このため、トナー量に応じた量の定着液9を塗布するには、弾性を有する塗布ローラ32を一定の押圧力で接触させることが特に重要である。また、定着液9は粘度の低い水溶液であることから、トナー粒子8間、トナー粒子8と中間転写ベルト22との間などに速やかに浸透し、トナー粒子8を瞬時に膨潤・軟化させる。また、中間転写ベルト22は、支持ローラ24内に設けられる加熱手段27によって加熱されるので、中間転写ベルト22に塗布される定着液9は、トナー8を膨潤・軟化させた後、短時間で乾燥する。その結果、記録媒体Pに余剰定着液9が付着し、しわ、カールなどが発生するのを防止できる。
【0062】
図4は、塗布ローラ32による中間転写ベルト22上のトナー像への定着液9の塗布を模式的に示す断面図である。塗布ローラ32が中間転写ベルト22上に担持されるトナー像(画像部)に接触すると、塗布ローラ32の浸透制御層36および多孔質層37が弾性変形を起こして凹む。トナー8の集合体であるトナー像には多くの隙間が存在し、巨視的な面積当たりの表面積が大きいので、多孔質膜32から多量の定着液9が浸み出し、トナー粒子8の周囲の隙間を満たし、トナー粒子8を膨潤・軟化させる。一方、中間転写ベルト22におけるトナー像が担持されない平滑な部分(非画像部)では、浸透制御層36および多孔質層37の弾性変形も起こらず、巨視的な面積当たりの表面積も小さく、多孔質層37からの定着液9の浸み出し量も少ないので、画像部のみに選択的に定着液9が塗布され、中間転写ベルト22の定着液9による汚染などが防止され、定着液9の使用量の低減化を図り得る。また、トナー像におけるトナーが積層されて面積当たりのトナー量が多い部分は、面積当たりの表面積も大きくなるので、定着液9の塗布量が多くなる。これによって、面積当たりのトナー量に応じて、定着液9の塗布量を制御でき、画像部と非画像部で面積当たりの塗布量を変化させる定着液9の塗り分けが可能になる。弾性変形可能な多孔質層37が定着液9を保持し、トナー像の凹凸に倣って、塗布ローラ32の表面が変形する。このため、トナー量が部分的に異なっても、トナー像の高さの低い部分にも定着液9を塗布できる。これによって、多色トナー像のようにトナー付着量が部分的に大きく変化するトナー像でも均一に定着でき、高品位画像が得られる。また、浸透制御層36および多孔質層37が弾性変形することによって、空孔中の定着液9が押し出される。平滑な中間転写ベルト22上にトナーが部分的に付着する場合、トナーに接触する部分の多孔質層37は局所的に変形する。これによって、トナーが付着する部分すなわちトナー像が存在する部分に多量の定着液9塗布できる。また、定着液9を介して塗布ローラ32とトナー像とが接触するので、トナー像が塗布ローラ32に直接接触しにくい。これによって、トナー8の塗布ローラ32への付着するのを防止できる。
【0063】
塗布ローラ32の長手方向の一端部には塗布ローラギア38が設けられ、他端部には液量検知手段50が設けられる。塗布ローラギア38は、中間ギア44および駆動ギア45とともに、塗布部材である塗布ローラ32の回転駆動手段を構成する。塗布ローラギア38は、中間ギア44に噛合して回転可能に設けられる。中間ギア44は、後記するピボット41と同軸に設けられ、一方で塗布ローラギア38に噛合し、他方で駆動ギア45と噛合する。駆動ギア45は、中間ギア44と噛合しかつ図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられる。駆動ギア45の回転が中間ギア44を介して塗布ローラギア38に伝達され、それによって塗布ローラ32が回転駆動する。なお、中間ギア44と同軸に設けられるピボット41は定着液槽31の回転中心であるので、定着液槽31が後記する離接手段34によって上下動または回動しても、塗布ローラギア38、中間ギア44および駆動ギア45の中心間距離は変化しない。したがって、塗布ローラ32が中間転写ベルト22に対して接触状態または離隔状態のいずれにあっても、塗布ローラ32を安定的に回転駆動させ得る。本実施の形態では、塗布ローラ32の回転周速度を、中間転写ベルト22の回転周速度よりも遅く設定する。さらに、塗布ローラギア38に図示しないワンウェイクラッチを設け、塗布ローラ30が中間転写ベルト22に対して接触状態にある場合には、中間転写ベルト22の回転周速度と等速で従動回転するように構成してもよい。これによって、塗布ローラ32と中間転写ベルト22との回転周速度の違いに基因する、中間転写ベルト22上でのトナー像の乱れを防止できる。
【0064】
図5は、液量検知手段50の構成を模式的に示す図である。図5(a)は塗布ローラ32の軸心を含む鉛直方向における部分断面図である。図5(b)および図5(c)は矢符59の方向から見た塗布ローラ32の軸心に対して垂直方向の断面図である。液量検知手段50は、塗布ローラ32の塗布ローラギア38が設けられる長手方向端部とは反対側の他端部に設けられる。液量検知手段50は、第2の定着液量指示部材であるフロート51と、第2の位置検知手段である透磁センサ52とを含む。
【0065】
フロート51は、塗布ローラ32の他端部に、塗布ローラ32と同じ軸芯を有する回転軸54と一体化して設けられるフランジ53の定着液貯留槽(芯金35の内部)側の面(フランジ53の厚み方向において回転軸54が形成されるのと反対側の面)にフランジ53と一体化しかつ回転軸54と同軸になるように形成される支持軸55に、ピン形状のストッパー部材56によって軸方向の位置の規制を受けながら回転可能に固定される。すなわちフロート51は、定着液貯留槽(芯金35の内部)において、支持軸55を中心にして芯金35の内面35aに非接触状態で回転可能に支持される。フロート51は、ほぼ扇形の板状中空部材51aと、磁性金属板51bとを含む。扇形板状中空部材51aは、たとえば、定着液9によって損傷を受けることのない合成樹脂などによって形成される。板状中空部材51aの内部空間は、板状中空部材51a内部の全領域に形成されても良く、または1もしくは2以上の部分領域形成されても良い。この中空板状部材51aが、支持軸55を中心にして回転する。磁性金属板51bは、扇形板状中空部材51aの定着液貯留槽を臨む面の周方向中央部に取り付けられる。磁性金属板51bには、たとえば、磁性ステンレス鋼板を使用できる。
【0066】
フロート51は、内部空間の定着液9に対する浮力によって、定着液9の液面9aの鉛直方向高さに応じて、一定の姿勢を保持する。図5(b)に示すように、定着液貯留槽(芯金35の内部)において定着液9が支持軸55よりも鉛直方向の高い位置まで貯留される場合、すなわち定着液9の液面9aが支持軸55よりも高い場合には、フロート51は内部空間の浮力によって定着液9中に浮遊し、一部が液面9aよりも高く位置するような姿勢に保持される。したがって、磁性金属板51bも定着液貯留槽内の上部に位置することになる。また、図5(c)に示すように、定着液9の消費が進んで定着液9の液面高さが低くなり、ある液面高さ以下になるとフロート51は全く回転せず、磁性金属板51bが定着液貯留槽の鉛直方向最下部に最も近接するような姿勢に保持される。このように、定着液貯留槽内部に貯留される定着液9の液量に応じて、フロート51ひいては磁性金属板51bが保持される位置が変化する。したがって、所定の位置から、磁性金属板51bの保持位置による磁力変化を検知すれば、定着液貯留槽内の定着液9の残量を正確に知ることができる。
【0067】
透磁センサ52は、フランジ53を介してフロート51に対向するように設けられ、回転軸54の軸受け57と一体的に形成されてフランジ53に装着される端部筺体58によって支持される。透磁センサ52は、磁性金属板51bから発せられる磁力の強さを検知する。磁力の強さは、透磁センサ52と磁性金属板51bとの間の距離によって変化するので、磁力を検知することによって磁性金属板51bの位置を決め、磁性金属板51bの位置によって定着液9の液量を正確に算出することができる。透磁センサ52は、画像形成装置1の全動作を制御する図示しないCPUと電気的に接続される。CPUは記憶部と演算部と制御部とを有する。記憶部には、実験によって決定された磁力と定着液量との関係、円滑な画像形成を行うのに必要な定着液貯留槽内における定着液量などがデータとして予め入力される。透磁センサ52による検知結果は、CPUの記憶部に入力される。演算部は、記憶部から透磁センサ52による検知結果と前記データとを取り出して比較することによって現在の定着液量を算出し、さらに現在の定着液量が円滑な画像形成を行うのに適するか否かを判定する。制御部は、演算部による現在の定着液量が円滑な画像形成を行うのに適しないという判定結果に応じて、画像形成装置1の上面に設けられる図示しない操作パネルに制御信号を送付し、使用者に定着液塗布手段4の取換え時期を報知する表示を行う。使用者はこの表示に基づいて定着液塗布手段4を取り換える。
【0068】
このような液量検知手段50を用いれば、定着液9の残量を正確に検知できる。すなわち、定着液9は揮発性を有するので、トナー像への塗布量から定着液9の残量を算出するだけでは、揮発分が考慮されず、正確な残量を把握し得ない。液量検知手段50によれば、塗布ローラ32の定着液貯留槽内の定着液量を、フロート51に取り付けられた磁性金属板51bの位置変化を透磁センサ52によって磁力変化として検知し、この検知結果に応じて現在の定着液量を算出し、必要に応じて定着液塗布手段4の交換時期を報知する表示を行い、使用者に認識させる。
【0069】
第2のシール部材33はフィルム状部材39と支持部材40とを含む。フィルム状部材39は、塗布ローラ32が定着液槽31の開口部31aにおいて外方空間に露出する部分を除く、塗布ローラ32表面(定着液槽31に内包される部分の塗布ローラ32の表面全面)に密着または間隙を有して離隔するように設けられる。好ましくは密着するように設けられる。また、フィルム状部材39は、熱融着などによって支持部材40に接着される。フィルム状部材39を塗布ローラ32表面に密着させても、塗布ローラ32表面に定着液9が僅かに滲出して潤滑作用を示すので、塗布ローラ32の回転駆動を妨げることがない。フィルム状部材39には、定着液9によって劣化または損傷を受けることがない合成樹脂から形成されるシートが用いられる。本実施の形態では、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムが用いられる。支持部材40は、定着液槽31の開口部31aにおける端部31cと、該端部31c近傍の塗布ローラ32表面とに接触するように設けられる。好ましくは、端部31cに支持され、かつ該端部31c近傍の塗布ローラ32表面とに接触するように設けられる。なお、支持部材40は、塗布ローラ32表面に対しては軽く圧接するように設けられるので、塗布ローラ32の回転駆動を妨げることがなく、塗布ローラ32表面を損傷させることもない。支持部材40には、フィルム状部材39の熱融着などが可能でかつ剛性の高い材料、たとえば、金属、合成樹脂などが用いられる。本実施の形態では、支持部材40には針金が用いられる。
【0070】
第2のシール部材33によれば、定着液槽31の開口部31a付近において、定着液槽31と塗布ローラ32との間隙を閉鎖するので、重力、振動などによる定着液9の定着液槽31からの漏出、定着液9の揮発などを防止でき、定着液9の消費量を低減化し得る。
【0071】
離接手段34は偏心カム46を含み、塗布ローラ32が中間転写ベルト22に対して離接可能になるように定着液槽31を支持する。偏心カム46は、図示しない駆動手段によって回転軸46aを中心にして回転駆動可能に支持され、定着液槽31の開口部31aにおける開閉扉43に近接する方の端部31c近傍の定着液槽31外周面に長径部が当接するように設けられる。偏心カム46は、その回転駆動によって、定着液槽31を鉛直方向に移動させ、塗布ローラ32の中間転写ベルト22に対する離接を行う。図3には、偏心カム46の短径部と定着液槽31の外周面とが空隙を有して離隔し、塗布ローラ32が中間転写ベルト22に圧接する状態が示される。この状態から、偏心カム46が半回転すると、偏心カム46の長径部が定着液槽31の外周面に当接して定着液槽31を鉛直方向下方に押圧する。偏心カム46によって押圧される定着液槽31は、ピボット41を中心にして回転し、塗布ローラ32は中間転写ベルト22から離反する。
【0072】
偏心カム46の回転駆動は、画像形成装置1の全動作を制御する図示しないCPUによって制御される。CPUは、塗布ローラ32が中間転写ベルト22に対して離隔位置または当接位置にあることを常に認識する。塗布ローラ32の位置の認識は、たとえば、光学センサなどの位置センサを設け、位置センサによる検知結果に応じて判定できる。また、前回の偏心カム46の回転動作を記憶することによっても判定できる。CPUは、画像を形成すべき画像情報のCPUへの入力を受け、入力時の塗布ローラ32の位置を確認する。塗布ローラ32が離隔位置にある場合は、偏心カム46を回転させる図示しない駆動手段に制御信号を送付し、偏心カム46の短径部が定着液槽31の外周面に間隙を有して離隔するように偏心カム46を回転させる。塗布ローラ32が当接位置にある場合は、偏心カム46の姿勢を保持する。画像情報の入力が途切れた時には、CPUは偏心カム46の駆動手段に制御信号を送り、偏心カム46の長径部が定着液槽31の外周面に当接するように偏心カム46を回転させる。画像情報は、画像形成装置1に電気的に接続されるスキャナ、コンピュータなどの外部機器から入力される。また、画像形成装置1にファクシミリ受信機能を設け、外部ファクシミリ機器から画像情報を入力することもできる。
【0073】
なお、塗布ローラ32が中間転写ベルト22に対して離隔位置にあり、離隔位置から中間転写ベルト22に対する当接位置に移動させる場合には、塗布ローラ32が当接位置に達する前に、塗布ローラ32を少なくとも半回転、好ましくは少なくとも1回転させるのが好ましい。塗布ローラ32は離隔位置で回転を停止する。このとき、定着液9が主に重力よって、塗布ローラ32の鉛直方向下部表面に集まり、塗布ローラ32の鉛直方向上部の定着液量が減少する。この定着液9が不均一に存在する塗布ローラ32を用いて定着液9を塗布すると、トナー像に均一に定着液9を塗布できない。その結果、定着画像に光沢むら、濃度むらなどが発生し、画像品位が低下するのを避け得ない。したがって、塗布ローラ32を中間転写ベルト22に当接させる前に、塗布ローラ32を少なくとも半回転させることによって、塗布ローラ32表面の定着液9の分布が均一になり、塗布むらひいては光沢むら、濃度むらの発生を防止し、高品位画像を安定的に得ることができる。
【0074】
定着液塗布手段4によれば、画像形成を行う場合のみに、塗布ローラ32を中間転写ベルト21に当接させてトナー像に定着液9を接触塗布し、トナー像を構成するトナー8を膨潤・軟化させる。定着液9の塗布によって膨潤・軟化したトナー像は、中間転写ベルト22の回転駆動によって転写定着手段5に搬送される。
【0075】
転写定着手段5は、支持ローラ25と、転写定着ローラ60とを含む。転写定着ローラ60は、中間転写ベルト22を介して支持ローラ25に圧接し、かつ軸線方向に回転駆動可能に設けられ、主に加圧ローラとして機能するローラ状部材である。転写定着ローラ60にはこの分野で常用されるものを使用できるけれども、本実施の形態では、外径が30mmで、芯金と、芯金表面に設けられる弾性層として厚さ3mmで硬度50度(JIS−A)のシリコーンゴム層と、シリコーンゴム層表面に設けられる表層としての厚さ20μmのPFA層とを含むローラ状部材が用いられる。また、本実施の形態では、転写定着ローラ60は8N/cmの線圧で中間転写ベルト22を介して支持ローラ25に圧接され、電圧は印加されない。支持ローラ25と転写定着ローラ60との圧接部(転写定着ニップ部)に、膨潤・軟化状態にあるトナー像が搬送されると、それに同期して、後述する記録媒体供給手段6から記録媒体Pが送給され、中間転写ベルト22上のトナー像が記録媒体Pの表面に押圧されて転写され、定着される。
【0076】
中間転写ベルト22表面にフッ素樹脂層が形成される場合は、中間転写ベルト22とトナー8との付着力が低いので、トナー像はほぼ全量が記録媒体Pに転写される。また、中間転写ベルト22がゴム層を有する場合は、トナー像担持面21aが記録媒体Pの凹凸に倣って変形し、記録媒体Pの凹部にもトナー像を接触させ得るので、均一な転写定着像が得られる。また、記録媒体Pがセルロース繊維を含むものである場合、トナー像が記録媒体Pに押圧されると、トナー像がセルロース繊維に強く入り込むと同時にトナー8同士が融合するので、記録媒体P上のトナー像は表面が平滑になる。これによって、減法混色による良好な発色と、表面の平滑性による高い光沢とを併せ持つ高品位カラー画像が得られる。また、中間転写ベルト22が定着液9を浸透しない材料によって形成され、さらにトナー像のみに定着液9をほぼ選択的に付与する構成を採るので、定着液9の記録媒体Pへの浸透を防止し、記録媒体Pにしわ、カールなどが発生するのを防止するとともに、定着液9の使用量を低減化できる。また、定着液9を付与するための塗布ローラ32と記録媒体Pとが直接接触しない構成を採るので、記録媒体Pがセルロース繊維を含むものである場合に、セルロース繊維などの紙粉が塗布ローラ32表面に付着することに起因する目詰まりが発生しない。したがって、目詰まりによる定着液9の塗布むらが生じることがなく、高品位画像が長期にわたって安定的に得られる。転写定着手段5によれば、膨潤・軟化状態のトナー像が記録媒体Pに押圧によって転写定着される。
【0077】
記録媒体供給手段6は、記録媒体Pを貯留する記録媒体カセット61と、記録媒体Pを搬送路に1枚ずつ送給するピックアップローラ62と、中間転写ベルト21上のトナー像が転写定着ニップ部に搬送されるのに同期して、該ニップ部に記録媒体Pを送給する1対のレジストローラ63,64とを含んで構成される。記録媒体供給手段6によれば、記録媒体カセット61内に貯留される記録媒体Pが、ピックアップローラ62により1枚ずつ搬送路に送給され、さらに、レジストローラ63,64によって、転写定着ニップ部に送給される。
【0078】
排出手段7は、搬送ベルト65と、駆動ローラ66と、テンションローラ67と、排紙ローラ68とを含んで構成される。搬送ベルト65は、駆動ローラ66とテンションローラ67との間に張架されてループ状の搬送経路を形成する無端ベルトであり、転写定着手段6により画像が形成された記録媒体Pを排紙ローラ68に搬送する。搬送ベルト65には、たとえば、導電剤を添加して導電性を付与した厚さ100μmのポリイミドフィルムの少なくとも記録媒体搬送面に、PTFEからなる厚さ10μmの被覆層を設けたものを使用できる。駆動ローラ66は、図示しない駆動手段により、軸線回りに回転駆動可能に設けられる。駆動ローラ66には、たとえば、アルミニウムなどの金属からなる中空ローラを使用できる。テンションローラ67は、搬送ベルト65が弛まないように、搬送ベルト65に所定の張力を付与する。テンションローラ67には、たとえば、金属製軸体と、金属製軸体の表面に形成される被覆層とを含んで構成される。また、金属製軸体のみからなるものでもよい。金属製軸体の材料には、たとえば、ステンレス鋼が使用され、被覆層の材料にはたとえばフッ素ゴムが使用される。排紙ローラ68は、搬送ベルト65により搬送される記録媒体Pを画像形成装置1の外部側面に設けられる排紙トレイ69に排出する部材であり、互いに圧接するように設けられる1対のローラを含んで構成され、各ローラはそれぞれの軸線方向に回転駆動可能に支持される。排出手段7によれば、転写定着手段5によって画像が定着された記録媒体Pを、画像形成装置1の外部に設けられる排紙トレイ69に排出する。
【0079】
画像形成装置1には、図示しない制御手段が設けられる。制御手段は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、図示しない、制御部、演算部、記憶部などからなる中央処理装置(CPU)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。CPUの記憶部には、画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する画像形成命令、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力され、入力される各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)に基づいて演算部において判定が行われ、演算部の判定結果に応じて制御部から制御信号が送付され、画像形成装置1の全動作が制御される。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、ファクシミリ装置などが挙げられる。制御手段は、前述の処理回路とともに電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置1内部における各装置にも電力を供給する。
【0080】
画像形成装置1によれば、トナー像形成手段2により、トナー像担持体である中間転写ベルト22上に形成されるトナー像に、定着液塗布手段4による定着液9の接触付与が施され、トナー像を膨潤・軟化させ、これを転写定着手段5により記録媒体Pに転写定着して画像を形成し、排紙トレイ69に排出する。
【0081】
図6は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置70の構成を模式的に示す断面図である。図7は、図6に示す画像形成装置70の要部(定着液塗布手段71および転写定着手段72)の構成を模式的に示す断面図である。図8は、第1のシール部材80の動作を示す図である。図8(a)および図8(b)は、第1のシール部材80による定着液槽74と塗布ローラ75との間隙の閉鎖動作を示す断面図である。図8(c)は、図8(a)および図8(b)に示す第1シール部材80による閉鎖動作を示す、塗布ローラ75の軸線に垂直な方向の断面図である。図9は、液量検知手段81の構成を模式的に示す断面図である。図10は、塗布ローラ75による転写定着ローラ101上のトナー像への定着液9の塗布を模式的に示す断面図である。画像形成装置70は、画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0082】
画像形成装置70は、画像形成装置1に比し、中間転写手段3a、定着液塗布手段71、転写定着手段72、記録媒体供給手段6aおよび排出手段73が異なることを特徴とする。さらに具体的には、画像形成装置70は、中間転写手段3aに含まれる中間転写ベルト22から記録媒体Pに直接トナー像を転写定着するのではなく、中間転写ベルト22と記録媒体Pとの間にトナー像担持手段でもある転写定着ローラ101を介在させ、中間転写ベルト22から転写定着ローラ101に転写されるトナー像に、加熱下に、定着液塗布手段71によって定着液9を塗布する構成を採る。これによって、中間転写ベルト22に定着液9が付着しない。また、転写定着ローラ101上でトナー像を加熱するので、中間転写ベルト22の温度が上昇し難い。このため、トナー像形成手段2を構成する各部材の温度上昇、該各部材への定着液9の付着などによって、トナー像形成過程中でトナー8が変質するのを防ぎ、長期間にわたり安定して高品位画像を形成できる。また、画像形成装置70は、定着液塗布手段71が第1のシール部材80を有することをも特徴とする。
【0083】
中間転写手段3aは、中間転写ベルト22と、中間転写ローラ23y,23m,23c,23bと、支持ローラ24a,26と、ベルトクリーナ28とを含む。中間転写手段3aでは、中間転写ベルト22の回転駆動方向(矢符29の方向)において中間転写ローラ23bの下流には、その内部に加熱手段を有しない支持ローラ24aが配置される。すなわち、中間転写手段3aでは、中間転写ベルト22およびトナー像を加熱しない構成であり、したがって温度センサを設けても設けなくてもよい。また、中間転写ベルト22は画像形成装置1における3点支持に代えて、支持ローラ24a,26によって2点支持される。なお、本実施の形態では、中間転写ベルト22には、ポリイミド製基材の表面にフッ素樹脂層を積層したものを用いる。
【0084】
定着液塗布手段71は、転写定着手段72の鉛直方向下方において、塗布ローラ75が転写定着ローラ101に対して離接可能になるように設けられる。定着液塗布手段71は、定着液槽74と、塗布ローラ75と、供給ローラ76と、規制ローラ77と、クリーニングローラ78と、隔壁79と、第1のシール部材80と、液量検知手段81と、ピボット86と、偏心カム87と、押圧ばね88とを含み、画像形成装置70によって支持される透磁センサ85、ピボット86、偏心カム87および押圧ばね88を除く他の部材が一体化され、画像形成装置70に対して着脱可能なカートリッジ方式に構成される。
【0085】
定着液槽74は内部空間を有し、画像形成装置70装着時に底面となる面74aが略平面であり、それ以外の面が曲率を有する面で構成される容器状部材である。このような面構成を採ることによって、画像形成装置70に装着しない時でも、装着時とほぼ同じ姿勢で定着液槽74を長期間保存することができ、その際に定着液9が定着液槽74と塗布ローラ75との隙間に接触して漏出するのを防止できる。定着液槽74は、塗布ローラ75、供給ローラ76、規制ローラ77およびクリーニングローラ78を収容し、隔壁79が設けられるとともに、定着液9を貯留する。定着液槽74の転写定着ローラ101を臨む面には、定着液槽74の長手方向に開口部74bが形成される。定着液槽74の開閉扉43を臨む側面の反対側の側面近傍には、定着液槽74を貫通するようにピボット86が設けられる。さらに、開閉扉43の定着液槽74を臨む面には、該面からピボット86に向けて延びる図示しないU字形のガイド溝が設けられる。ピボット86は、前記U字形のガイド溝に摺動可能に挿入される。ピボット86がガイド溝を摺動することによって、定着液槽74が矢符48の方向に移動して定着液槽74の着脱が可能になる。ピボット86がガイド溝の先端に位置するときは、塗布ローラ72が転写定着ローラ101に接触可能な動作位置にある。定着液槽74の鉛直方向底面の開閉扉43に近接する側には、定着液槽74を鉛直方向に上下動可能に支持する押圧ばね88が設けられる。押圧ばね88は、一端が定着液槽74を支持し、他端が画像形成装置70本体に支持される。押圧ばね88には、たとえば、コイルばね、板ばね、やじりばねなどを使用できる。ピボット86と押圧ばね88との協働によって、塗布ローラ75を適切な押圧力で転写定着ローラ101に圧接させることができる。
【0086】
塗布ローラ75は、その一部が、定着液槽74の開口部74bから鉛直方向上方に向けて突出し、転写定着ローラ101表面に対して離接可能に設けられるかつ定着液槽74によって回転可能に支持されるローラ状部材であり、転写定着ローラ101上のトナー像に定着液9を付与する。本実施の形態では、塗布ローラ75は定着液槽74内に貯留される定着液9とは全く接触しないように設けられる。
【0087】
塗布ローラ75には、たとえば、芯金と、芯金の表面に形成される弾性層とを含むローラ状部材が用いられる。塗布ローラ75の長手方向両端部の弾性層には、図8(a)および図8(b)に示すように、端部近傍から端部に向けて、塗布ローラ75の軸線に垂直な方向の断面径が徐々に小さくなるテーパ形状を有する傾斜部75aが形成される。断面径の端部に向けての縮小率は特に制限はなく、弾性層を構成する材料の弾性率、機械的強度などを考慮して適宜選択できる。塗布ローラ75に傾斜部75aを形成することによって、後記するシール部材80の、定着液槽74の開口部74b断面および塗布ローラ75の傾斜部75aに接する内周エッジを略平面状で構成しても、定着液槽74と塗布ローラ75との間隙を容易に閉鎖できるので、シール部材80の構造を簡略化できる。また、塗布ローラ75による定着液9の接触塗布を行うために、シール部材80を塗布ローラ75から離反させる場合でも、塗布ローラ75の半径方向にシール部材80の弾性変形分の移動を行うだけでよく、それによって塗布ローラ75とシール部材80との接触による両部材の磨耗が防止されるので、シール部材80の定着液槽74および塗布ローラ75に対する離接手段の構造を簡略化できる。また、離接動作時に塗布ローラ75とシール部材80とが接触して摺動することがない。
【0088】
弾性層を構成する材料としては、弾性を有しかつ定着液9に対して濡れ性を有する材料が用いられる。ここで、弾性を示す指標としては、弾性層の半径方向の弾性率が用いられる。弾性層の半径方向の弾性率はトナー8またはトナー8に含まれる結着樹脂、離型剤などのトナー材料よりも小さいことが好ましく、トナー8またはトナー材料の1/10以下であることがさらに好ましく、トナー8またはトナー材料の1/100以下であることが特に好ましい。定着液9に対する濡れ性を示す指標は、定着液9の当該材料に対する接触角である。該接触角は、好ましくは50度以下である。このような特性を満たす材料としては、たとえば、アルミニウムなどの弾性を有する金属、親水性樹脂、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴム材料などが挙げられる。本実施の形態では、塗布ローラ75として、径12mmの芯金と、該芯金の表面に形成されるヤング率2MPaのエチレンプロピレンゴムからなる弾性層とを含む径20mmのローラ状部材を用いる。また本実施の形態では、塗布ローラ75は転写定着ローラ101に圧接する場合、転写定着ローラ101の表面速度と等速で回転する。塗布ローラ75の弾性層に用いられる材料は定着液9との親和性が高いので、定着液9を塗布ローラ75表面に薄い層として保持できる。このため、少量の定着液9を塗布ローラ75表面の広い範囲に均一な定着液9の薄層を形成できる。したがって、定着液9の消費量を低減化し得るとともに、過剰量の定着液9が塗布ローラ75表面に付与されることによって、定着液9が未定着のトナー像を押し流して画像を乱すことを防止できる。
【0089】
塗布ローラ75はその表面に弾性層を有するので、圧力を受けると弾性変形する。塗布ローラ75と転写定着ローラ101との圧接部においては、図10に示すように、転写定着ローラ101の表面のトナー像が存在する部分に圧接する塗布ローラ75表面はトナー像の凹凸に倣って弾性変形して凹む。トナー像は塗布ローラ75の表面によってトナー像が存在しない部分よりも高い圧力で加圧される。塗布ローラ75表面には定着液9の薄層が存在し、トナー像(画像部)にはトナー像がない部分(非画像部)よりも高い圧力で定着液9が接触する。このため、トナー像の凹凸に関係なく、トナー8が多く付着して高くなった部分にも、トナー8の付着量が少なくて低い部分にも定着液9を均一に付与でき、非画像部への付与量は少なくなる。凹凸の度合が顕著な多色トナー像に対しても定着液9を均一にかつ選択的に付与できる。一方、トナー像(画像部)は粉体であるトナー8が集合して形成されるので、巨視的な面積当りの表面積が大きい。数色のカラートナー像を重ねあわすことによって形成された多色トナー像のように、トナー量の多いトナー像では、巨視的な面積当りの表面積はさらに大きくなる。これに対し、転写定着ローラ101表面のトナー像が付着しない部分(非画像部)はほぼ平滑であり、巨視的な面積当りの表面積が小さい。したがって、画像部への定着液9の付与量は、非画像部への定着液9の付与量よりも遥かに大きくなる。これによって、面積当りのトナー量に応じて定着液9の付与量を制御することが可能になり、画像部と非画像部とで定着液9の付与量を変化させ得る。このようにして、トナー像のみに定着液9を付与することが可能になり、記録媒体Pに対する定着性に優れる高品位画像を長期にわたって安定的に形成できる。
【0090】
塗布ローラ75を転写定着ローラ101に圧接させる場合、塗布ローラ75の転写定着ローラ101に対する押圧力(線圧)は、好ましくは0.05〜1.0N/cmである。押圧力が0.05N/cm未満では、塗布ローラ75と転写定着ローラ101との接触状態が不安定になり、定着液9をトナー像に均一に付与できない。さらに、塗布ローラ75の弾性変形が不充分になり、トナー像の凹所部分への定着液9の付与が不充分になるおそれがある。その結果、定着液9の塗布むらひいては光沢むら、濃度むら、色むらなどが生じる。一方、押圧力が1.0N/cmを超えると、塗布ローラ75と転写定着ローラ101との圧接部において、塗布ローラ75表面の定着液9が前記圧接部を通過し得なくなり、定着液9がスクイーズする。スクイーズした定着液9は前記圧接部の入り口でメニスカスを形成し、余剰の定着液9が、塗布ローラ75の回転方向上流側へもどる。このため、このニップ部の入り口で液が激しく流動することになり、トナー像が定着液の流動により乱される。本実施の形態では、塗布ローラ75が転写定着ローラ101に圧接する場合、転写定着ローラ101に対する押圧力は0.5N/cmである。前記範囲の押圧力とすることによって、トナー像の凸部に接触する塗布ローラ75表面が確実に弾性変形して凹み、塗布ローラ75が定着液9の薄層を介してトナー像に圧接するので、トナー像が高いトナー量の多い部分にも定着液9を充分に塗布できる。また、トナー量の多い部分に囲まれたトナー量の少ない部分(凹所)にも、定着液を塗布できる。したがって、トナー量に関係なくトナー像を均一に定着できるので、高品位な定着画像を得ることが出来る。
【0091】
なお、塗布ローラ75の表面には、後記するように、供給ローラ76、規制ローラ77およびクリーニングローラ78という3つのローラが当接するので、当接部分の定着液量が他の部分と異なることがある。したがって、塗布ローラ75が停止した状態から直ぐに定着液9の塗布を行うと、転写定着ローラ101上で定着液9の塗布ムラが発生し、定着画像に濃度むら、光沢などが生じるおそれがある。これを防止するために、転写定着ローラ101に接触させる前に、塗布ローラ75を回転させ、塗布ローラ75表面の定着液9の液量を均一化するのが好ましい。このような塗布ローラ75の回転制御は、画像形成装置70の全動作を制御するCPUによって行われ、画像濃度および光沢が均一な高品位画像が得られる。
【0092】
前記のような構成を有する塗布ローラ75を用いて転写定着ローラ101上のトナー像に定着液9を塗布するので、非画像部に付着するかぶりトナーにも定着液9を塗布し、かぶりトナーも定着できる。これによって、かぶりトナーが手、衣服などを汚すのを防止できる。
【0093】
供給ローラ76は、塗布ローラ75に圧接しかつ少なくとも一部が定着液槽74内に貯留される定着液9に浸漬するように設けられるローラ状部材である。また供給ローラ76は、図示しない駆動手段によって矢符75aの方向に回転駆動可能に設けられる。本実施の形態では、供給ローラ76には、径10mmの芯金と、該芯金の表面に形成される厚さ5mmのウレタンの連続気泡発泡体層とを含むスポンジローラを用いる。供給ローラ76は矢符75a方向の回転駆動によって定着液9中に浸漬してその表面に定着液9を担持する。供給ローラ76表面に担持された定着液9は、塗布ローラ75と供給ローラ76との圧接部において、塗布ローラ75表面に付与される。このように、定着液9を塗布ローラ75の外周面に供給することによって、塗布ローラ75の内部に定着液9を保持しなくても良いので、塗布ローラ75の小型化が可能である。また、定着液貯蔵手段を塗布ローラ75の外部に設ければ、定着液9の大量貯蔵が可能になり、定着液9の補充回数を低減化できる。なお、本実施の形態では、供給ローラ76を介して塗布ローラ75に定着液9を供給する構成を採るけれども、それに限定されず、たとえば、塗布ローラ75の少なくとも一部が常時定着液9中に浸漬する構成を採ることもできる。これによって、供給ローラが不要になり、構造の簡素化、低コスト化などを図り得る。
【0094】
規制ローラ77は、塗布ローラ75に圧接しかつ図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。規制ローラ77は、定着液槽74内に貯留される定着液9には接触しないように設けられる。規制ローラ77は、塗布ローラ75との圧接部において、塗布ローラ75表面における定着液9の担持量を適量に調整(または規制)し、均一な定着液9の薄層を形成する。本実施の形態では、規制ローラ91には、径12mmのステンレス鋼製ローラが用いられる。規制ローラ77を設けることによって、塗布ローラ75表面に過剰量の定着液9が付着し、塗布ローラ75と転写定着ローラ101との圧接ニップ部の入り口定着液9がメニスカスを形成することを防止できる。これによって、定着液9とトナー像が接触した状態で定着液9の流動が発生せず、トナー像を乱さないので、高品位で高精細な画像が得られる。
【0095】
クリーニングローラ78は、塗布ローラ75に圧接しかつ図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。クリーニングローラ78は、定着液槽74、塗布ローラ75などの部材とともに一体化され、画像形成装置70に着脱可能なカートリッジ方式に構成される。クリーニングローラ78を構成する材料は、塗布ローラ75の少なくとも表面を構成する材料よりも水に対する接触角が小さく、離型性の低い材料であることが好ましく、さらに耐久性、加工性などを考慮すると、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属材料が特に好ましい。塗布ローラ75よりも接触角が小さく、離型性の低いクリーニングローラ78を用いると、塗布ローラ75表面のトナー8がクリーニングローラ78に優先的に付着する。これによって、塗布ローラ75表面にトナー8が蓄積し、定着液9の塗布量が不足または不均一になることを防止できる。クリーニングローラ78は、定着液槽74内に貯留される定着液9とは隔壁79によって隔てられるので、クリーニングローラ78表面のトナーが定着液9に落下して分散することが無く、定着液9の汚染を防止できる。また、クリーニングローラ78表面に付着するトナー8は、定着液9の乾燥によってクリーニングローラ78と固着する。このため、クリーニングローラ78上のトナー8が塗布ローラ75に再付着することがない。さらに、クリーニングローラ78に固着したトナー8の上にさらにトナー8を固着させ得るので、長期間にわたり安定して塗布ローラ75表面の清浄化を実施できる。また、クリーニングローラ78の塗布ローラ75に対する当接圧を一定に保持すると、クリーニングローラ78による塗布ローラ75の清浄化効果が一層向上し、かつその清浄化効果が安定して発揮される。本実施の形態では、前記したようにクリーニングローラ78は塗布ローラ75などとともに一体のユニットとしてカートリッジ形式に構成され、定着液9が消費された時点で新しいカートリッジに交換されるので、塗布ローラ75とクリーニングローラ78との位置関係にずれを生じることがなく、クリーニングローラ78の塗布ローラ75に対する当接圧は常に一定に保持される。また、カートリッジの交換によって、表面にトナー8が固着したクリーニングローラ78も交換され、クリーニングローラ78表面に際限なくトナー8が固着することがない。したがって、クリーニングローラ78の清浄化効果が低下することがない。
【0096】
隔壁79は、定着液槽74内において、クリーニングローラ78と定着液槽74内の定着液9の液面との間に、短手方向の一端が塗布ローラ75に対してその回転駆動を妨げない程度の僅かな間隙を有して離隔するように設けられる板状部材である。隔壁79を設けることによって、前記したように、クリーニングローラ78に付着するトナー8の落下による定着液9の汚染が防止される。
【0097】
第1のシール部材80は、図8(a)〜(c)に示すように、図示しない離接手段によって塗布ローラ75の軸線75bに垂直な方向に移動可能に支持され、定着液槽74の開口部74b及び塗布ローラ75に当接可能に設けられ、外周と内周とを有する枠体状部材である。第1のシール部材80を構成する材料は、定着液9に対する耐食性を有するものを使用でき、その中でも、シリコーンゴムのような適度の弾性および機械的強度を有するゴム材料が好ましい。第1のシール部材80は、当接位置と離隔位置との間を矢符112の方向、すなわち塗布ローラ75の軸線75bに垂直な方向に移動する。このように移動することによって、第1のシール部材80の定着液槽74および塗布ローラ75との離接動作時に、これらの部材と摺擦することがなく、塗布ローラ75の回転トルクの増大、第1のシール部材80自体の摩耗などを防止できる。
【0098】
図8(a)は第1のシール部材80の当接位置を示す。また、図8(c)において、第1のシール部材80の実線で示される位置が当接位置である。当接位置は、第1のシール部材80が開口部74bおよび塗布ローラ75に当接し、定着液槽74と塗布ローラ75との間隙を閉鎖し、定着液槽74を密閉状態にする位置である。第1のシール部材80は、その鉛直方向の底面が平面状に形成され、この底面が定着液槽74および塗布ローラ75に当接する。定着液槽74の開口部74bエッジ部は外側に開いたテーパ面として形成され、この面が第1のシール部材80と当接する。また、塗布ローラ75の長手方向端部に形成される傾斜部75aは、開口部74bエッジ部のテーパ面とは逆方向の外側に開いたテーパ面であり、第1のシール部材80と当接する。すなわち、第1のシール部材80底面の外周エッジ部が開口部74bエッジ部のテーパ面に当接し、第1のシール部材80底面の内周エッジ部が塗布ローラ75の傾斜部75aに当接し、弾性変形を起こして密着する。これによって、定着液槽74と塗布ローラ75との間隙が全周にわたって閉鎖される。第1のシール部材80を当接位置にあるのは、定着液槽74、塗布ローラ75などの各部材とともに第1のシール部材80がカートリッジ方式に構成された一体化ユニットの画像形成装置70への着脱時である。また、該ユニットが画像形成装置70に装着された状態でも、画像形成が行われない待機中、電源OFF時などには第1のシール部材80が当接位置にあるように構成しても良い。第1のシール部材80を当接位置から離隔位置に変位させる場合は、図示しない離接手段によって矢符110の方向に移動させればよい。このとき、塗布ローラ75が傾斜部75aを有するので、第1のシール部材80の弾性変形分を考慮して移動を行えばよく、移動距離は短いので、一体化ユニットを大型化させる必要がない。
【0099】
図8(b)は第1のシール部材80の離隔位置を示す。また、図8(c)において、第1のシール部材80の破線で示される位置が離隔位置である。離隔位置は、第1のシール部材80の底面と、定着液槽74の開口部74bのテーパ面および塗布ローラ75の傾斜部75aとがそれぞれ間隙を有して離隔する位置である。第1のシール部材80が離隔位置にあるのは、一体化ユニットの画像形成装置70への装着時である。特に、塗布ローラ75の動作時に、塗布ローラ75表面とは離隔する位置にあるので、塗布ローラ75表面の定着液層を掻き落とすことがない。したがって、定着液9の塗布むらが発生することがない。第1のシール部材80を離隔位置から当接位置に変位させる場合は、図示しない離接手段によって矢符111の方向に移動させればよい。
【0100】
第1のシール部材80は、前記したように、定着液槽74、塗布ローラ75などとともにカートリッジ方式の一体化ユニットに構成される。これによって、前記一体化ユニットの画像形成装置70本体への着脱時に、第1のシール部材80によって定着液槽74と塗布ローラ75との間隙を常に封鎖した状態に維持できるので、定着液9の漏出を防止できる。また、一体化ユニットを交換することによって、定着液9の漏出を起こすことなく、定着液9の補給と塗布ローラ74、第1のシール部材80などの交換とを同時に実行できるので、長期間にわたって定着液9を安定的に塗布できる状態を維持できる。また、第1のシール部材80と定着液槽74の開口部74bおよび塗布ローラ75との当接を高精度に安定して行うためには、これら部材の位置関係を一定に保持することが重要である。その意味でも、第1のシール部材80をも含むカートリッジ形式の一体化ユニットに構成するのが好ましい。一体化ユニットを交換する方式を採れば、これら部材の位置関係を一定に保つのが容易になる。第1のシール部材80によれば、定着液槽74と塗布ローラ75との間隙を閉鎖し、定着液槽74を密閉状態にすることができるので、特に、定着液槽74、塗布ローラ75などとともに第1のシール部材80を一体化したユニットの画像形成装置70への着脱時に定着液9の漏出を防止できる。
【0101】
なお、第1のシール部材80の離接手段としては、たとえば、図12に示す離接手段120が挙げられる。図12は離接手段120の構成を模式的に示す図面であり、図12(a)は離接手段120の上面図であり、図12(b)は図12(a)に示す離接手段120の切断面線XIIb−XIIbにおける断面図である。離接手段120は、スライド部材121と、くさび部材122とを含む。スライド部材121は、第1のシール部材80の長手方向における両端部に第1のシール部材80と一体化して設けられ、図示しないばね部材によって矢符12aの方向に往復移動可能(すなわち鉛直方向に上下動可能)に設けられる。ばね部材は一端が第1のシール部材121の鉛直方向頂部に接続され、他端が画像形成装置70本体または定着液槽74の長手方向両端部に設けられる図示しない支持部材に支持される。スライド部材121は金属、合成樹脂などによって形成できる。スライド部材121を鉛直方向に上下動させることによって、第1のシール部材80が定着液槽74の開口部74bおよび塗布ローラ75に対して、離接を繰り返す。くさび部材122は、第1のシール部材80の短辺に平行に設けられる部材である。くさび部材122は、鉛直方向の底面が方形であり、かつ上面にはその短手方向の中心線またはその近傍からスライド部材121に向う方向の端部に向けて傾斜するテーパ面が形成され、このテーパ面とスライド部材121の鉛直方向底面とが当接するように設けられる。くさび部材122は、図示しない駆動手段によって矢符122aの方向(すなわち第1のシール部材80の短辺に平行な方向)に往復直線移動可能に支持される。くさび部材122は金属、合成樹脂などによって形成できる。くさび部材122を矢符122aの方向に移動させると、スライド部材121の底面が当接するテーパ面の位置(または当接位置でのテーパ面の鉛直方向の高さ)が変化し、それによってスライド部材121が矢符121aの方向に移動し、第1のシール部材80を定着液槽74の開口部74bおよび塗布ローラ75に対して離接させ得る。くさび部材122の矢符122a方向への移動は、たとえば、画像形成装置70の全動作を制御する図示しないCPUによって行われる。CPUは画像形成装置1におけるのと同様に、制御部、演算部、記憶部などを含み、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路である。記憶部には、第1のシール部材80が当接位置にある場合および離隔位置にある場合が予め入力される。第1のシール部材80を当接位置にあるのは、定着液槽74、塗布ローラ75などの各部材とともに第1のシール部材80がカートリッジ方式に構成された一体化ユニットの画像形成装置70への着脱時である。また、画像形成が行われない待機中、電源OFF時などである。第1のシール部材80が離隔位置にあるのは、前記以外の場合である。演算部は、記憶部からデータを取り出し、判定時点において第1のシール部材80が当接位置または離隔位置のいずれにあるべきかを判定し、判定結果を制御部に送る。制御部は判定部による判定結果に応じて、くさび部材122の駆動手段に制御信号を送付し、くさび部材122を移動させる。また、定着液槽74、塗布ローラ75などの各部材とともに第1のシール部材80がカートリッジ方式に構成された一体化ユニットを画像形成装置70に装着する場合に、くさび部材122が第1のシール部材80を離隔位置まで押し上げる画像形成装置70本体内の位置に固定してもよい。これによって、該一体化ユニットが装着されている間は第1のシール部材80が離隔位置にあり、該一体化ユニットが装着される前および取外された後は第1のシール部材80が当接位置にあるように構成される。
【0102】
液量検知手段81は、中空状位置規制部材82と、第1の定着液量指示部材であるフロート83と、第1の位置検知手段を構成する磁性金属板84および透磁センサ85とを含む。
【0103】
中空状位置規制部材82は、その側面に定着液9の流入および流出が可能な貫通孔82aが複数形成され、一端が定着液槽74内の定着液9の液面9aから定着液槽74の内部空間に向けて突出し、かつ他端が定着液9中に浸漬して定着液槽74に支持されるパイプ状部材である。中空状位置規制部材82の側面に形成される貫通孔82aによって、中空状位置規制部材82内部の定着液9の液面高さは、定着液槽74内の定着液9の液面高さ9aと同じになる。中空状位置規制部材82は、フロート83の水平方向への移動を規制する。これによって、フロート83が鉛直方向のみに上下動するので、フロート83と透磁センサ85との位置関係が一定に保持され、定着液槽74内の定着液9の残量を正確に知ることが可能になる。
【0104】
フロート83は、中空状位置規制部材82の内部空間に収容され、それ自体が閉鎖された内部空間を有し、定着液9中に浮遊する円筒状部材である。フロート83は、定着液9の増減に応じて、鉛直方向に上下動する。フロート83は、定着液9に対して耐食性を有する合成樹脂によって形成される。
【0105】
磁性金属板84は、フロート83の鉛直方向底面に取り付けられ、フロート83の上下動に対応して上下動する。磁性金属板84には、磁性金属板51bと同様に、磁性ステンレス板を使用できる。
【0106】
透磁センサ85は、定着液槽74の底面74aを介して、フロート83ひいては磁性金属板84に対向する位置に設けられ、画像形成装置70本体によって支持される。透磁センサ85は、磁性金属板84から発せられる磁力の強さを検知する。磁力の強さは、磁性金属板84と透磁センサ85との間の距離によって変化するので、磁力の強さを検知することによって、磁性金属板の位置さらには定着液9の液面高さを把握し、それによって定着液9の残量を正確に把握できる。透磁センサ85による定着液9の残量の把握は、透磁センサ52によるのと同様に行うことができる。
【0107】
液体検知手段81は、定着液槽74および定着液槽74内の各部材とともに、カートリッジ方式の一体化ユニットに構成されてもよい。これによって、特に、フロート83と透磁センサ85との位置関係にずれを生じることがないので、常に、正確な定着液9の残量を把握できる。液量検知手段81を用いれば、トナー像への塗布に用いられる定着液9の消費量に、定着液9の揮発量を加味した正確な定着液9の消費量を把握できるので、定着液槽74と定着液槽74内に収容される各部材とを一体化したカートリッジ方式のユニットの交換時期を正確に知ることができる。また、フロート83の底面に取り付けた磁性金属板84の磁力を検知するという簡単な構成なので、コストはほとんどアップしない。
【0108】
偏心カム87は、画像形成装置1における偏心カム46と全く同様に動作し、ピボット86および押圧ばね88と協働して、塗布ローラ75が転写定着ローラ101に対して離接可能になるように定着液槽74を支持する。また、偏心カム87の回転駆動は、偏心カム46の場合と同様にして制御される。
【0109】
定着液塗布手段71によれば、画像形成時には塗布ローラ75を転写定着ローラ101表面に圧接させ、転写定着ローラ101上のトナー像に定着液9を接触塗布し、画像非形成時には塗布ローラ75を転写定着ローラ101から離隔させる。定着液塗布手段71の定着液槽74および定着液槽74に収容される各部材はカートリッジ方式の一体化ユニットに形成され、該ユニットを画像形成装置70に着脱させるに際し、定着液槽74と塗布ローラ75との間隙を第1のシール部材80で閉鎖することによって、定着液槽74からの定着液9の漏出を防止できる。
【0110】
転写定着手段72は、転写定着ローラ101と、加圧ローラ103と、ローラクリーナ104と、温度検知手段105とを含む。
【0111】
転写定着ローラ101は、一方で中間転写ベルト22を介して支持ローラ24aに圧接し、他方で加圧ローラ103に圧接し、図示しない駆動手段によって矢符101aの方向に回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。本実施の形態では、転写定着ローラ101には、厚さ1mmの炭素鋼からなる芯金と、該芯金の表面に形成される体積抵抗が108〜109Ω・cmで厚さ8mmのシリコーンゴム層と、該シリコーンゴム層の表面に形成される厚さ20μmのPFA層とを含む外径30mmのローラ状部材である。また、本実施の形態では、転写定着ローラ101と中間転写ベルト22との間には、トナー像を構成するトナー8の帯電電位とは逆電位の+1kVの転写電圧が印加され、トナー8が静電的に引きつけられて中間転写ベルト22から転写定着ローラ101にトナー像が転写されるよう構成される。転写定着ローラ101は、中間転写ベルト22から転写されるトナー像をその表面に担持して矢符102aの方向に回転駆動する。
【0112】
転写定着ローラ101の内部には、加熱手段102が設けられる。加熱手段102には、たとえば、ハロゲンランプなどが用いられる。加熱手段102によって、転写定着ローラ101の表面は、全周にわたって均一な温度に加熱される。また、転写定着ローラ101表面に担持されるトナー像も転写定着ローラ101とほぼ同じ温度まで加熱される。加熱手段102には、ハロゲンランプなどが用いられる。本実施の形態では、ガラス転移点が90℃である結着樹脂を含むトナー8を用いるので、転写定着ローラ101の表面温度は100℃に保持される。トナー像をトナー8中の結着樹脂のガラス転移点以上に加熱すると、結着樹脂が軟化して、転写定着ローラ101とトナー8との付着力が増加する。これによって、トナー8が塗布ローラ75にオフセットすること、定着液9付与の際にトナー像が乱れることなどを防止でき、塗布ローラ75によって定着液9をトナー像の表面から接触塗布できる。また、転写定着ローラ101表面に担持されるトナー像、塗布ローラ75によって定着液9を接触塗布すると、トナー像および転写定着ローラ101の温度低下が起こるけれども、転写定着ローラ101の表面がトナー8に含まれる結着樹脂のガラス転移温度よりも10℃高い温度に加熱されることによって、温度低下を瞬時に補正し、トナー像を構成するトナー8の膨潤軟化が支障なく行われる。なお、転写定着ローラ101の加熱温度は、省エネルギーの観点から、トナー8中の結着樹脂のガラス転移点より10℃程度高い温度でよい。その程度の温度であれば、放熱による熱エネルギーの損失が小さく出来る。さらに、起動後の昇温時に必要なエネルギーが少ないので、短時間で所定の温度に達するため、ウォームアップ時間が短くできる。これにより、待機時間中の保温動作が不要になるので、装置全体としての省エネルギーを実現することができる。転写定着ローラ101の表面温度の制御機構については、後述する。
【0113】
外周が均一な温度に加熱された転写定着ローラ101上に、中間転写ベルト22から静電的に転写されるトナー像は、転写定着ローラ101との接触面から加熱され、その反対側の外周側から定着液9が塗布される。定着液9が塗布されたトナー像は、加熱された状態で膨潤・軟化する。このトナー像は、転写定着ローラ101の回転駆動によって、転写定着ローラ101と加圧ローラ103との圧接部(転写定着ニップ部)に搬送される。このように、中間転写ベルト22とは別のトナー像担持体上である転写定着ローラ101にトナー像に定着液9を塗布するので、定着液9が中間転写ベルト22に付着しない。また、中間転写ベルト22とは別の転写定着ローラ101を加熱するので、中間転写ベルト22の温度が上昇しない。これによって、トナー像形成過程中でトナーを変質させることがなく、長期間にわたり安定して高品位な画像が得られる。また、トナー像は、転写定着ローラ101との接触面においてに加熱され、トナー像の厚み方向において、前記接触面とは反対側の面から定着液9の付与を受ける。すなわち、トナー像は厚み方向の両面からトナーを膨潤および/または軟化させる作用を有する処理を受ける。これによって、記録媒体Pへの定着強度の高い画像が安定的に得られる。加熱および定着液9の付与のいずれか一方が施されない場合は、画像の記録媒体Pへの定着が不充分になる可能性がある。
【0114】
加圧ローラ103は、転写定着ローラ101に圧接しかつ図示しない駆動手段によって矢符103aの方向に回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。本実施の形態では、加圧ローラ103には、芯金と、芯金の表面に形成される硬度50度(JIS−A)のシリコーンゴムからなる厚さ2mmの弾性層と、弾性層の表面に形成されるPFAからなる厚さ20μmの表層とを含む、外径40mmのローラが用いられる。本実施の形態では、加圧ローラ104は10N/cm(線圧)の押圧力で転写定着ローラ101に圧接する。
【0115】
ローラクリーナ104は、転写定着ローラ101上のトナー像を記録媒体Pに転写した後に、転写定着ローラ101上に残存するトナー8および/または定着液9を除去する部材であり、クリーニングブレード104aと貯留容器104bとを含む。クリーニングブレード104aは、図示しない加圧手段により転写定着ローラ101に圧接し、転写定着ローラ101上の残存トナー8などを掻き取る。貯留容器104bは、クリーニングブレード104aに掻き取られるトナー8、定着液9などを貯留する。
【0116】
温度検知手段105は、転写定着ローラ101の表面温度を検知するために、転写定着ローラ101の回転方向すなわち矢符101aの方向において、転写定着ローラ101と支持ローラ24aとのニップ部の上流側の位置に、転写定着ローラ101に接するかまたは近接するように設けられる。温度検知手段105には、温度センサなどが用いられる。温度検知手段105による検知結果は、画像形成装置70の全動作を制御する図示しないCPUに入力され、CPUは入力される検知結果に基づいて、加熱手段102に制御信号を送って転写定着ローラ101の加熱を制御し、転写定着ローラ101表面は全周にわたって均一な温度に加熱される。本実施の形態では、転写定着ローラ101の表面温度は、前述のように100℃に保持される。
【0117】
転写定着手段87によれば、中間転写ベルト22上のトナー像が、一定温度に加熱された転写定着ローラ101表面に静電的に転写され、定着付与手段71によって定着液9の接触付与を受けて膨潤軟化し、転写定着ニップ部において記録媒体Pに定着される。トナー像を記録媒体Pに転写した後に転写定着ローラ101表面に残留するトナー8、紙粉などはローラクリーナ105によって除去され、転写定着ローラ101表面には中間転写ベルト21から新たにトナー像が転写される。
【0118】
記録媒体供給手段6aは、記録媒体Pを貯留する記録媒体カセット61と、記録媒体Pを搬送路に1枚ずつ送給するピックアップローラ62とを含む。記録媒体供給手段6aによれば、記録媒体カセット61内に貯留される記録媒体Pが、ピックアップローラ62により1枚ずつ転写定着ニップ部に送給される。
【0119】
排出手段73は、搬送ローラ106と、排紙ローラ107とを含む。排出手段73によれば、トナー像が転写定着された記録媒体Pは搬送ローラ106によって排紙ローラ107に向けて搬送され、さらに排紙ローラ107によって画像形成装置70外部に排出され、画像形成装置70の上面に設けられる排紙トレイ108上に蓄積される。
【0120】
画像形成装置70によれば、トナー像形成手段2によって中間転写ベルト22上に形成されたトナー像が転写定着ローラ101に転写され、定着液塗布手段71によって定着液9を接触付与されて膨潤軟化した後、転写定着ニップ部において記録媒体Pに転写される。トナー像が転写された記録媒体Pは排出手段73によって排紙トレイ108に排出される。
【0121】
本実施の形態では、定着液塗布手段71を用いるけれども、それに限定されず、図11に示す定着液塗布手段115を用いることもできる。図11は、別形態の定着液塗布手段115の構成を模式的に示す断面図である。定着液塗布手段115は定着液塗布手段71に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。定着液塗布手段115は、定着液槽74内に収納される定着液収容器116と塗布ウィック117とを含むことを特徴とする。
【0122】
定着液収容器116は、開口部116aを有し、可撓性を有する合成樹脂フィルムまたは合成樹脂シートから構成される変形可能な容器状部材であり、その内部空間に定着液9を収容する。本実施の形態では、厚さ30μmのポリエチレンテレフタレートフィルムから形成される容器を用いる。塗布ウィック117は、一端の少なくとも一部が定着液収容器116の開口部116aからその内部に挿入されて定着液9に接触し、他端の少なくとも一部が塗布ローラ75に圧接するように設けられる板状部材である。塗布ウィック117は、たとえば、液体浸透性を有する材料によって形成される。本実施の形態では、フェルトが用いられる。塗布ウィック117の定着液9に接触する一端から塗布ウィック117内に吸い上げられた定着液9は、塗布ウィック117内を移動し、他端の塗布ローラ75との接触部分において塗布ローラ75表面に付与される。塗布ウィック117は規制ローラの機能をも併せ持ち、塗布ローラ75表面に均一に定着液9を付与できる。なお、定着液収容器116の開口部116aと塗布ウィック117との接触部分には、液漏れの発生を一層防止するために、接着処理を施してもよい。また、本実施の形態では、定着液収容器116および塗布ウィック117は、定着液槽74、塗布ローラ75などの構成部材とともにカートリッジ方式の一体化ユニットに構成されるので、定着液収容器116内の定着液9が消費された場合には、前記一体化ユニットを交換することによって、定着液9の補充と塗布ローラ75などの構成部材の交換とを同時に実行できる。また、本実施の形態では、定着液槽74内に密閉され液漏れを起こさない定着液収容器116を収納する構成を採るので、定着液槽74を含む一体化ユニットが、画像形成装置70への装着時とは異なる姿勢で長期間保存されても、定着液9の漏出が起こらない。
【0123】
本発明の画像形成装置において、トナーを膨潤・軟化させる定着液9として、1または2種の有機溶剤と水とを含むものを用いるけれども、それに限定されず、従来からトナー用定着液として知られるものをいずれも使用できる。また、公知の接着成分、粘着成分などを含む定着液も使用できる。接着成分の具体例としては、たとえば、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、SBRゴムなどの高分子エラストマーを主成分とするゴム系接着剤、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリル樹脂などの親水性合成樹脂を水中に分散させてなるエマルジョン接着剤などが挙げられる。この構成を採ることによって、トナーと記録媒体Pとの付着力が、トナーの膨潤・軟化だけではなく、接着成分または粘着成分によっても付与されるので、付着力を高め、トナー像の記録媒体Pへの定着強度を向上させ得る。さらに、定着液としては、従来からこの分野で使用されるものおよび知られるものをいずれも使用できる。本発明の画像形成装置において、中間転写ベルト、搬送ベルト、各ローラなどに用いられる材料、層構造、寸法などは、前述のものに限定されず、電子写真方式の画像形成分野で常用されるものをそのまままたは適宜変更して用いることができる。また、ローラに代えて、ベルトなどの無端状部材を用いることもできる。さらに中間転写ベルト、搬送ベルトなどは無端状部材とされるけれども、ローラ形態にすることもできる。
【0124】
本発明の画像形成装置は、各実施の形態において、タンデム方式のカラー画像形成装置として示すけれども、それに限定されず、たとえば、中間転写ベルトが1回回転する毎に1色の画像を重ね合わせる、いわゆる4回転方式のカラー画像形成装置とすることもできる。また、カラー画像形成装置に限定されず、単色画像形成装置とすることもできる。
【0125】
このような本発明の画像形成装置は、たとえば、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの2種以上の複合機として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施の第1形態である画像形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図4】塗布ローラによる中間転写ベルト上のトナー像への定着液の塗布を模式的に示す断面図である。
【図5】液量検知手段の構成を模式的に示す図であり、図5(a)は部分断面図であり、図5(b)および図5(c)は塗布ローラの軸心に対して垂直方向の断面図である。
【図6】本発明の実施の第2形態である画像形成装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図7】図6に示す画像形成装置の要部の構成を模式的に示す断面図である。
【図8】第1のシール部材の構成および動作を示す図である。図8(a)および図8(b)は、第1のシール部材による定着液槽と塗布ローラとの間隙の閉鎖動作を示す断面図である。図8(c)は図8(a)および図8(b)に示す第1シール部材による閉鎖動作を示す、塗布ローラの軸線に垂直な方向の断面図である。
【図9】液量検知手段81の構成を模式的に示す断面図である。
【図10】塗布ローラ75による転写定着ローラ101上のトナー像への定着液9の塗布を模式的に示す断面図である。
【図11】別形態の定着液塗布手段の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】離接手段の構成を模式的に示す図面であり、図12(a)は離接手段の上面図であり、図12(b)は図12(a)に示す離接手段の切断面線XIIb−XIIbにおける断面図である。
【符号の説明】
【0127】
1,70 画像形成装置
2 トナー像形成手段
3,3a 中間転写手段
4,71,115 定着液塗布手段
5,72 転写定着手段
6,6a 記録媒体供給手段
7,73 排出手段
8 トナー
9 定着液
10y,10m,10c,10b 作像ユニット
22 中間転写ベルト
31,74 定着液槽
31a 開口部
32,75 塗布ローラ
33 第2のシール部材
34 離接手段
50,81 液量検知手段
60,101 転写定着ローラ
80 第1のシール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着トナー像を担持するトナー像担持手段と、トナー像担持手段上の未定着トナー像にトナーを記録媒体に定着させる作用を有する定着液を塗布する定着液塗布手段とを含み、電子写真方式または静電記録方式を利用して画像を形成する画像形成装置において、
定着液塗布手段は、
トナー像担持手段を臨んで開口部が形成され、その内部空間に塗布部材を収容する定着液槽と、
定着液槽内部において回転自在かつトナー像担持手段に対して離接可能に支持され、少なくとも一部が定着液槽の開口部から外方に突出してトナー像担持手段に対向し、開口部の定着液槽壁との間に間隙を有するように設けられ、定着液をトナー像担持手段上の未定着トナー像に接触塗布するローラ状の塗布部材と、
定着液槽の開口部と塗布部材との間隙を密閉するシール部材と、
塗布部材がトナー像担持手段に対して離接可能になるように定着液槽を支持する離接手段とを含み、
少なくとも定着液槽と塗布部材とシール部材とが一体化され、画像形成装置本体に対して脱着可能に設けられることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
定着液槽は、
その内部空間に塗布部材を収容するとともに、定着液を貯留し、
塗布部材は、
定着液槽内部において回転自在かつトナー像担持手段に対して離接可能に支持され、少なくとも一部が定着液槽の開口部から外方に突出してトナー像担持手段に対向し、開口部の定着液槽壁との間に間隙を有しかつ少なくとも一部が定着液槽内の定着液よりも鉛直方向上方に位置するように設けられ、長手方向の端部付近から端部にかけて、長手方向に垂直な方向の断面径が連続的に小さくなる傾斜部を有する第1の塗布部材であり、かつ
シール部材は、
塗布部材に対して離接可能に設けられ、その長手方向の端部が塗布部材の傾斜部に接触することによって定着液槽の開口部と塗布部材との間隙を密閉する第1のシール部材であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
定着液塗布手段は、
定着液槽内にて回転自在に支持されて第1の塗布部材に接触しかつ定着液槽内に貯留される定着液に接触しないように設けられ、少なくともその表面が第1の塗布部材表面よりも水に対する接触角の大きい材料からなるクリーニング部材をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
定着液塗布手段は、
定着液槽内に収容され、開口部を有して内部に定着液が充填される変形可能な定着液容器と、
一端が定着液容器の開口部からその内部に挿入されて定着液に接触し、他端が第1の塗布部材に圧接するように設けられて、第1の塗布部材に定着液容器内の定着液を供給する塗布ウィックとをさらに含むことを特徴とする請求項2または3記載の画像形成装置。
【請求項5】
定着液塗布手段は、
定着液槽内の定着液量を検知する液量検知手段と、
液量検知手段による検知結果に応じて、定着液塗布手段の交換時期を報知する交換時期報知手段とをさらに含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
液量検知手段は、
側面に定着液の流入および流出が可能な複数の貫通孔が形成され、一端が定着液槽内の定着液の液面から定着液槽の内部空間に向けて突出し、かつ他端が定着液中に浸漬して定着液槽に支持される中空状位置規制部材と、
中空状位置規制部材の内部空間に、定着液に浮遊して定着液の増減に応じて鉛直方向に上下動可能に収容される第1の定着液量指示部材と、
第1の定着液量指示部材の鉛直方向における位置を検知する第1の位置検知手段と、
第1の位置検知手段による検知結果に応じて定着液量を算出する定着液量算出手段とを含むことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
塗布部材は、
定着液槽内部において回転自在かつトナー像担持手段に対して離接可能に支持され、少なくとも一部が定着液槽の開口部から外方に突出してトナー像担持手段に対向し、開口部の定着液槽壁との間に間隙を有するように設けられ、内部に定着液を貯留する定着液貯留槽を有し、定着液貯留槽中の定着液をトナー像担持手段上の未定着トナー像に接触塗布するローラ状の第2の塗布部材であり、かつ
シール部材は、
定着液槽内部の塗布部材表面に密着または間隙を有して離隔するように設けられるフィルム状部材と、
定着液槽開口部の長手方向両端部および該両端部近傍の塗布部材表面に接触するように設けられ、フィルム状部材を支持する支持部材とを有し、
定着液槽の開口部と塗布部材との間隙を閉鎖する第2のシール部材であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
第2の塗布部材は、
定着液貯留槽内において第2の塗布部材の軸心回りに回転可能に支持され、定着液の増減に応じて回転する第2の定着液量指示部材と、
第2の定着液量指示部材の位置を検知する第2の位置検知手段と、
第2の位置検知手段による検知結果に応じて定着液量を算出する定着液量算出手段とを含むことを特徴とする請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
定着液槽は、
画像形成装置への装着時に底面になる平面部分と、
曲率を有する面によって構成される側面部分とを含む容器状部材であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−233197(P2007−233197A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56841(P2006−56841)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】