説明

画像形成装置

【課題】クリーニング装置の耐久性を向上し得て、よって、安定したクリーニング性を実現することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】一方の静電ファーブラシ27に現像に寄与するトナー帯電極性と同極性のクリーニングバイアスを印加し且つ他方の静電ファーブラシ27にトナー帯電極性と逆極性のクリーニングバイアスを印加すると共に所定のタイミングにて画像形成部9によって中間転写ベルト8表面に転写紙に転写しない非印字パターン像を形成させた後にクリーニング電源による一対の静電ファーブラシ27のうちの一方の静電ファーブラシ27へのクリーニングバイアスを印加せず且つ他方の静電ファーブラシ27へのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と同極性に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成部によって像担持体表面に形成したトナー像を転写紙に転写した後に、前記像担持体の表面と接触して該像担持体の表面に残存するトナーを除去するクリーニング装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、電子写真方式にて画像形成する画像形成装置においては、多種多様な転写紙への高画質な画像形成を求めるというニーズから、転写紙に多色画像を転写する像担持体として中間転写体を用いる画像形成装置が広く採用されている。
【0003】
即ち、画像データに基づいて一次転写体(像担持体)としての感光体ドラム等の表面に形成されたトナー像(多色画像)は、二次転写体(像担持体)としての中間転写体に重ね転写(一次転写)した後、その中間転写体から転写紙に転写(二次転写)される。
【0004】
また、中間転写体としては、中間転写ベルトが広く用いられているが、この中間転写ベルトとしては、一般的にポリイミド等に代表される樹脂ベルトが高画質・長寿命等の特性を有していることからも広く採用されている。
【0005】
一方、転写紙に多色画像を転写した後の中間転写ベルトには、残存トナー等が付着しているため、その残存トナー等をクリーニング装置によって除去した後に、次の画像形成処理を行っている。
【0006】
このクリーニング装置としては、中間転写ベルトに樹脂ベルトを採用した場合、その表面特性等を考慮したクリーニング能力を高く維持するため、ブレード方式が広く用いられている。
【0007】
ところが、最近では、更なる高画質化・高速化が要求されると共に、上述したブレード方式によるクリーニング能力の安定化が確保されたことと相俟って、現像剤(トナー)においても、その粒子の小粒径化及び非球形化へと変化してきている。
【0008】
これにより、中間転写ベルトとして樹脂ベルトを採用したのでは、現像剤(トナー)粒子の変化に伴って転写の際に生じる、中抜け現象が問題となってきている。
【0009】
この中抜け現象とは、トナー像を転写紙に転写する際、トナー像に大きな圧力が加わることで、トナー像が応力変形してトナー粒子間の凝集力が増大し、トナー像の一部分が転写紙に転写しきれずに中間転写ベルトの表面に残留してしまう現象で、特に、トナー像が文字やライン画像等の場合に顕著に現れる。
【0010】
そこで、この中抜け現象を解消するために、中間転写ベルトとして樹脂ベルトに替えて層構成に少なくとも一層の弾性層を用いた弾性中間転写ベルトが一般的に採用されつつある。
【0011】
弾性中間転写ベルトは、層構成に少なくとも一層の弾性層を有すために柔軟性を備え、転写紙に転写する際のトナー像に作用する圧力を低減することができ、中抜け現象の発生抑制効果があることが知られている。また、二次転写の際の転写紙との密着性が良好であることから、一般的な普通紙に対する転写効率を向上することができるばかりでなく、厚紙に対する転写性や、凹凸を有する紙への転写性にも効果を発揮することができる。
【0012】
しかしながら、弾性中間転写ベルトをクリーニングする場合、ブレード方式を用いると表層が弾性を有するために、弾性中間転写ベルトに対するクリーニングブレードの接触負荷が大きくなる。
【0013】
このため、クリーニングブレードのエッジ先端が、ベルト表層に喰い込んでしまい、クリーニングブレードのエッジ先端の挙動が不安定となって、クリーニング不良を引き起こす要因となるという問題が生じていた。
【0014】
また、弾性中間転写ベルトとクリーニングブレードとの間での摩擦力が増大することに伴い、クリーニングブレードにめくれ・びびり・鳴き等の問題が発生し易くなるうえ、弾性中間転写ベルトの表層に傷やトナー融着等が発生するといった弊害が起こり、画質を乱してしまう虞があった。
【0015】
そこで、上記の弊害を避けるために、近年では、クリーニングブレードに替えて弾性中間転写ベルトとの接触負荷の少ない静電ファーブラシを採用するブラシ方式が一般的となってきている。
【0016】
このブラシ方式のクリーニング装置の構成としては、中間転写ベルトの表面と接触するように芯金に多数のブラシ繊維等を巻き付けた円筒状の静電ファーブラシと、静電ファーブラシに所定量食込ませて静電ファーブラシで掻き取った残存トナーを回収する回収ローラと、回収ローラの表面とカウンタ接触して回収ローラで回収した残存トナーを掻き取るクリーニングブレード等を備えている。
【0017】
この際、回収ローラには、トナーの極性と逆極性のクリーニングバイアスが電源から印可され、静電ファーブラシと中間転写ベルトとにより形成される電流回路にて回収ローラから順次電圧が低下することで、クリーニング電界を形成している。
【0018】
この電界の効果により、中間転写ベルトの表面に残存したトナー等は、静電ファーブラシに吸着された後、回収ローラに転移し、クリーニングブレードにより回収ローラから掻き取られる。
【0019】
しかしながら、二次転写後の中間転写ベルトの表面の残存トナーは、現像時と同極性を持つものと、二次転写時の放電の影響を受けて逆極性を持つものと、が存在する。
【0020】
このため、一つの静電ファーブラシを用いて片極性のクリーニングバイアスを印加しただけでは、全ての残存トナーを回収することができないという問題が発生する。
【0021】
そこで、このような極性の異なる残存トナーを回収するため、中間転写ベルトの表面二箇所で独立して接触する一対のファーブラシを設置すると共に、その一対のファーブラシの各々に互いに異なった極性のクリーニングバイアスを印加する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−207403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところが、上記の如く構成された画像形成装置にあっては、二次転写後の残留トナー等は、非常に極性が不安定であり、印字パターンや使用環境によっては、残存トナーの全てが現像時と同極性のままであるという場合もある。
【0023】
このような場合、一対のファーブラシのうちの一方によって、中間転写ベルト表面の残存トナーは全て回収することができてしまう。
【0024】
従って、他方のファーブラシにて残留トナーが回収されない状態が続くと、その他方用の回収ローラに残留トナーが供給されなくなり、片寄ったクリーニングとなってしまう。
【0025】
この状態にて、印字が続けられると、回収ローラと回収ローラに当接されているブレードとの間に、潤滑剤としての役割を果たす残留トナーが減少し、ブレードが巻き上がるという新たな問題が生じていた。
【0026】
そこで、本発明は、上記事情を考慮し、クリーニング装置の耐久性を向上し得て、よって、安定したクリーニング性を実現することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の画像形成装置は、画像形成部によって像担持体表面に形成したトナー像を転写紙に転写した後に、前記像担持体の表面と接触して該像担持体の表面に残存するトナーを除去するクリーニング装置を備えた画像形成装置において、前記クリーニング装置は、前記像担持体の表面と接触し且つ互いに離間状態で配置された一対の回転清掃体と、該一対の回転清掃体にクリーニングバイアスを印加するクリーニング電源と、前記像担持体の回転移動方向上流側に配置された回転清掃体の一方に現像に寄与するトナー帯電極性と同極性のクリーニングバイアスを印加し且つ前記一対の回転清掃体の他方にトナー帯電極性と逆極性のクリーニングバイアスを印加するバイアス極性制御部と、を備え、前記バイアス極性制御部は、所定のタイミングにて、前記像担持体表面に転写紙に転写しない非印字トナーパターン像を形成させると共に、前記クリーニング電源による前記一対の回転清掃体のうちの前記像担持体の回転移動方向上流側に配置された回転清掃体へのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と同極性のまま常時の値よりも弱め且つ前記他方の回転清掃体へのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と逆極性に切り換えることを特徴とする。
【0028】
この際、前記バイアス極性制御部は、前記一対の回転清掃体のうちの前記一方の回転清掃体へのクリーニングバイアスを印加しないのが好ましい。
【0029】
また、前記バイアス極性制御部は、前記一対の回転清掃体の離間距離に対する前記像担持体の移動時間をタイムラグとして考慮したうえで、前記一対の回転清掃体間へのクリーニングバイアスの印加電圧を制御するのが好ましい。
【0030】
さらに、前記バイアス極性制御部は、画像形成処理枚数・画像形成処理時間・累積印字率の何れかが予め設定された所定値に達した時を所定のタイミングとして、前記一対の回転清掃体へのクリーニングバイアスの印加電圧を制御するのが好ましい。
【0031】
尚、前記バイアス極性制御部は、印刷ジョブ単位又はページ単位で画像形成処理が終了した時を所定のタイミングとして、前記一対の回転清掃体へのクリーニングバイアスの印加電圧を制御しても良い。
【0032】
この際、印刷ジョブ単位とは、例えば、画像形成装置としてプリンタ機能を利用している場合には、パーソナルコンピュータ等から出力された印刷データ単位であっても良いし、その印刷データが複数部数のソート印刷を行う場合には部数単位であっても良い。
【発明の効果】
【0033】
本発明の画像形成装置は、クリーニング装置の耐久性を向上し得て、よって、安定したクリーニング性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0035】
図1は本発明の一実施形態に係るクリーニング装置を搭載した画像形成装置としてのプリンタの説明図、図2は本発明の一実施形態に係るクリーニング装置の要部の説明図である。
【0036】
図1において、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのカラープリンタ1は、プリンタ本体2の一面(例えば、正面)から引き出し可能な給紙カセット3と、プリンタ本体2の一面に起倒可能に設けられた手差し給紙トレイ4と、給紙カセット3又は手差し給紙トレイ4にセットされた転写紙(図示せず)を搬送する搬送経路5と、搬送経路5の上流端を構成する給紙ユニット部6と、搬送経路5の中途部に配置された二次転写ローラ7と、二次転写ローラ7と協働して転写紙の表面にトナー転写像を形成する無端ベルト状の中間転写ベルト8と、中間転写ベルト8の表面に必要に応じた各色(例えば、イエロー(Y)・マゼンダ(M)・シアン(C)・ブラック(K))のトナーをトナー像として転写する複数の画像形成部9と、搬送経路5の終端寄りに配置されて転写紙の表面に形成されたトナー転写像を定着させる定着ユニット10と、定着後の転写紙を搬送経路5の下流端からプリンタ本体2の排紙トレイ部11へと排出する排出部12とを備えている。
【0037】
中間転写ベルト8は、像担持体としての機能を具備しており、層構成に少なくとも一層の弾性層を用いた弾性中間転写ベルトが採用され、駆動ローラ13、従動ローラ(テンションローラ)14、加圧ローラ15の間で回動移動(図示矢印参照)する。
【0038】
加圧ローラ15は中間転写ベルト8を挟んで二次転写ローラ7と対向配置されており、二次転写ローラ7に転写バイアスを印加することによって搬送経路5に搬送された転写紙の表面にトナー像を転写してトナー転写像を形成する。
【0039】
画像形成部9は、本実施の形態では中間転写ベルト8の回動移動方向に沿って4ヶ所に配置され、基本的には同一構成のものが配置されている。また、画像形成部9は、各色のトナーを収納したトナーカートリッジ16と、トナーカートリッジ16に収納したトナーを供給する供給部17と、表面に供給部17からトナーが供給されるアルミ等から構成されたドラム状(管体状)の感光体ドラム18と、中間転写ベルト8を挟んで感光体ドラム18に対向配置された転写ローラ19と、感光体ドラム18の表面に付着した残存トナー等を除去するクリーニングデバイス20と、感光体ドラム18の電荷を除去する除電デバイス21と、感光体ドラム18の表面を帯電する帯電デバイス22と、感光体ドラム18の表面に所定の静電潜像を形成する露光デバイス23とを備えている。尚、各画像形成部9は、本実施の形態では、図示左側の端部にブラック用の画像形成部9(K)が配置され、以下、中間転写ベルト8の回動移動方向に沿ってシアン用の画像形成部9(C)、マゼンダ用の画像形成部9(M)、イエロー用の画像形成部9(Y)の順で配置されている。
【0040】
一方、二次転写ローラ7によってトナー像を転写した後の中間転写ベルト8は、図2に示すように、二次転写ローラ7よりも回動移動方向下流側に配置された一対のクリーニングユニット24,25を備えたクリーニング装置26によって、その表面に残存したトナー等が除去される。
【0041】
クリーニングユニット24,25は、中間転写ベルトの表面と接触するように多数の導電性ブラシ繊維を芯金に巻き付けた回転清掃体としての円筒状の静電ファーブラシ27と、静電ファーブラシ27に所定量食込ませて静電ファーブラシ27で掻き取った残存トナーを回収する回収ローラ28と、回収ローラ28の表面とカウンタ接触して回収ローラ28で回収した残存トナーを掻き取るクリーニングブレード29と、クリーニングブレード29で掻き取った残存トナーを搬送・捕集するスパイラル30とを備えている。
【0042】
また、クリーニング装置26は、各回収ローラ28並びに二次転写ローラ7にバイアスを印加する電源回路31と、各回収ローラ28並びに二次転写ローラ7に印加するクリーニングバイアス並びに転写バイアスの電圧並びに極性を制御するバイアス制御回路32,33,34と、電源回路31を含めた画像形成処理全般を制御する制御回路35と、画像形成処理全般に係わる各種制御プログラムの他、本発明に係わるクリーニング制御に関する制御プログラムが格納されたROM36と、制御回路35によるクリーニングバイアスの極性切り換えを所定のタイミングとしての画像処理枚数(例えば、1枚・3枚・5枚等)毎で行うように画像形成処理枚数をカウントするカウンタ37とを備えている。
【0043】
尚、制御回路35とROM36とは、本発明に係わるクリーニング制御を実行するマイクロコンピュータを構成している。
【0044】
上記の構成において、
中間転写ベルト8は、
材質:CRゴム(SiAcコート+PTFEコート)+PVDF
厚さ:618[μm](CRゴム:500μm、PTFE:5μm+Si:10μm)
PVDF:100μm
体積抵抗率:11.0[log(Ω・cm)](500V N/N)
表面抵抗率:12.0[log(Ω/sqr)](500V N/N)
静電ファーブラシ27は、
ブラシ材質:BR−1(ポリエステル) SUM Niメッキ
ブラシ密度・太さ:150KF・330D/48F
外径:φ14(シャフト径φ6)
抵抗値:ブラシ毛/本 12.0log(Ω・cm) 100(V) N/N
線速:123.2(mm/sec)<ベルト回動移動方向に対しカウンタ方向>
回収ローラ28は、
材質:SUS
外径:φ13
線速:130.6(mm/sec)<ブラシ回転方向に対しトレーディング方向>
クリーニングブレード29は、
材質:ウレタンブレード#1577E
自由端:6.0mm
厚み:1.6mm
とし、これらを用いた本実施例と比較例とを図3に示す。また、図4に本実施例のバイアス印加の極性変化のタイミングチャートの概要を示す(尚、比較例では非印字パターン像を形成せず且つクリーニングバイアスの印加電圧の極性制御は行わない)。
【0045】
本実施例として、制御回路35は、カウンタ37が画像形成処理枚数50枚をカウントした際を所定タイミングとして、画像形成部9(例えば、ブラック用の画像形成部9(K))によって正規のトナー帯電極性の非印字トナーパターン像を形成させ、その非印字トナーパターン像を中間転写ベルト8に転写する。
【0046】
この際、制御回路35は、所定タイミングの発生が画像形成処理継続中の場合には、連続して搬送される転写紙の間に形成する。
【0047】
尚、中間転写ベルト8に転写される非印字トナーパターン像としては、例えば、転写紙A4サイズを最大許容サイズとした場合、中間転写ベルト8の回動移動方向に対して直交する幅方向に対して216mm、中間転写ベルト8の回動移動方向に対して沿う方向に対して1mmのライン画像とした。
【0048】
また、非印字トナーパターン像は正規のトナー帯電極性と同極性であるため、2次転写後の残存トナーとは異なり、一方の(トナー帯電極性と同極性の)クリーニング極性のみでクリーニング可能であるが、この時、使われる非印字トナーパターン像としては、下流側に配置されたクリーニングユニット25の負荷を低減させるためにも、単位あたりのトナー量は少ない方が良い。
【0049】
さらに、制御回路35は、中間転写ベルト8の回動移動方向上流側(以下、単に「上流側」と称する。)に配置されたクリーニングユニット24と中間転写ベルト8の回動移動方向下流側(以下、単に「下流側」と称する。)に配置されたクリーニングユニット25とが互いに離間状態で配置されているため、図4に示すように、各クリーニングユニット24,25の静電ファーブラシ27の離間距離に応じた中間転写ベルト8の回動移動時間tをタイムラグとして考慮したうえで、クリーニングバイアスの極性を制御するのが好ましい。
【0050】
具体的には、制御回路35は、図5に示すように、常時は一対の静電ファーブラシ27のうち、上流側に配置されたクリーニングユニット24の回収ローラ28へのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と逆極性(−)とし、下流側に配置されたクリーニングユニット25の回収ローラ28へのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と同極性(+)としており、中間転写ベルト8の表面に付着したトナー帯電極性と同極性(+)の残存トナーT1は上流側に配置されたクリーニングユニット24によって回収され、中間転写ベルト8の表面に付着したトナー帯電極性と逆極性(−)の残存トナーT2は上流側に配置されたクリーニングユニット24をスルーして下流側に配置されたクリーニングユニット25によって回収される。
【0051】
一方、上述した所定のタイミングを制御回路35が検出すると、制御回路35は、画像形成部9によって中間転写ベルト8の表面に転写紙に転写しない非印字パターン像T3を形成する。
【0052】
また、図6に示すように、中間転写ベルト8の回動移動に伴って非印字パターン像T3が上流側に配置されたクリーニングユニット24の直前にまで到達すると、制御回路35は、回収ローラ28へのクリーニングバイアスの印加を停止する。
【0053】
尚、非印字パターン像T3が上流側のクリーニングユニット24の直前に到達したか否かは、クリーニングユニット24の直前に専用の残存トナー検知センサ(図示せず)を設けることによって検出しても良いが、通常、連続搬送される転写紙の搬送間隔は一定に制御され、転写紙の搬送位置はレジストセンサやジャムセンサ等の公知のセンサ等で認識可能とされ、中間転写ベルト8の回動移動速度も略一定で制御されていることから、画像形成部9から上流側のクリーニングユニット24の直前までの距離に応じて時間で制御することが可能である。
【0054】
さらに、図7に示すように、非印字トナーパターン像T3が、上流側に配置されたクリーニングユニット24をスルーした(期間A経過)後、下流側に配置されたクリーニングユニット25の直前にまで到達(時間t経過)すると、下流側に配置されたクリーニングユニット25の回収ローラ28へのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と逆極性(−)へと切り換えると共に、上流側に配置されたクリーニングユニット24の回収ローラ28へのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と逆極性(−)として印加する。
【0055】
この際、下流側に配置されたクリーニングユニット25の回収ローラ28へのクリーニングバイアスの印加電圧は、上流側に配置されたクリーニングユニット24の常時のクリーニングバイアスの印加電圧と略同じ電圧を印加するのが好ましい。
【0056】
これにより、図8に示すように、非印字パターン像T3は下流側に配置されたクリーニングユニット25によって回収され、新たに中間転写ベルト8の表面に付着したトナー帯電極性と逆極性(−)の残存トナーT1が上流側に配置されたクリーニングユニット24によって回収される。
【0057】
尚、制御回路35は、非印字パターン像T3が下流側に配置されたクリーニングユニット25によって回収された後(期間A経過)は、再び常時の状態、即ち、下流側に配置されたクリーニングユニット25の回収ローラ28へのクリーニングバイアスの印加電圧はトナー帯電極性と同極性(+)に再び切り換える。
【0058】
本発明の実施した時の効果を確認するために、残存トナーの帯電極性の状態を意図的に変化させるために、二次転写電流の条件を−20〜−50μAまで振って実験を行った。
【0059】
その結果、二次転写電流が高いほど、二次転写部(二次転写ローラ7と加圧ローラ15とのニップ部分)での放電の影響を受けて、残存トナーの極性は、現像に寄与する正規の帯電よりも逆側の帯電トナーの割合が多くなることが判明した。
【0060】
従って、本実施例では、ベルト回動移動方向上流側と下流側の両方の静電ファーブラシ27から、周期的に各々の回収ローラ28にトナーが供給されるため、回収ローラ28とクリーニングブレード29と間にトナーが十分に介在することにより、クリーニングブレード29のめくれ現象は発生しなかった。
【0061】
一方、比較例では、二次転写電流が−40μA以上の場合には、トナーの現像に寄与する正規の帯電極性と逆極性のトナーが発生し、ベルト回動移動方向上流側に配置したクリーニングユニット24ではクリーニング性を確保することができず、ベルト回動移動方向下流側に配置したクリーニングユニット25でもトナーを回収するため、回収ローラ28とクリーニングブレード29との間にトナーが十分に介在し、ブレードのめくれ現象は発生しなかった。
【0062】
しかしながら、比較例では、二次転写電流が低い−20〜−40μAの領域では、ほとんどの残存トナーが正規の帯電極性のままであるため、残存トナーの極性と逆極性(−)のバイアスを印加した上流側のクリーニングユニット24にてベルト上トナーが回収されるため、下流側のクリーニングユニット25では回収ローラ28に残存トナーが供給されず、回収ローラ28とクリーニングブレード29との間に潤滑剤となるトナーが不足し、クリーニングブレード29にめくれ現象が発生した。
【0063】
このように、本発明にあっては、二次転写後の残存トナーが如何なる帯電極性をもっていたとしても、常時は残存トナーの正規の帯電極性に対して、同極性・逆極性のバイアスの掛かった静電ファーブラシ27によって、静電気的に回収されるとともに上流側/下流側の両方の回収ローラ28にトナーが回収されることにより、クリーニングブレード29のめくれを抑えることができる。
【0064】
また、所定のタイミングにて、画像形成部9によって中間転写ベルト8の表面に転写紙に転写しない非印字トナーパターン像を形成させると共に、電源回路31による一対の静電ファーブラシ27のうちの一方に対してのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と逆極性のまま常時の値よりも弱め且つ他方へのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と逆極性に切り換えることにより、他方の静電ファーブラシ27によるトナー回収が長期間行われないということが無くなり、クリーニングブレード29のめくれをより一層抑えることができる。
【0065】
ところで、上記実施の形態では、本発明のクリーニング装置26を画像形成装置としてのカラープリンタ1に搭載したものとして説明したが、例えば、複写機や複合機等、画像形成装置全般に適用することができることは勿論である。
【0066】
また、上記実施の形態では、クリーニングバイアスの極性制御をカウンタ37を用いた画像形成処理枚数(50枚)で行う場合で示したが、このカウンタ37に替えて、タイマーによる画像形成処理時間、或いは、印字率検出(公知技術)による累積印字率(累積トナー使用量を含む)等によって切り換えることも可能である。
【0067】
さらに、クリーニングバイアスの極性制御のタイミングは、印刷ジョブ単位又はページ単位(転写紙1枚単位)で画像形成処理が終了した時を所定のタイミングとしても良い。
【0068】
この際、印刷ジョブ単位とは、例えば、画像形成装置としてプリンタ機能を利用している場合には、パーソナルコンピュータ等から出力された印刷データ単位であっても良いし、その印刷データが複数部数のソート印刷を行う場合には部数単位であっても良い。
【0069】
尚、一方の静電ファーブラシによる非印字トナーパターン像の回収を避けるために、上記具体例では、一方(上流側)の回収ローラ28へはクリーニングバイアスを印加しない場合で開示したが、転写紙間距離や一対のクリーニングユニット24,25の離間距離等の条件を考慮して、例えば、次の残存トナーを上流側のクリーニングユニット24で回収するために、一方(上流側)の回収ローラ28へのクリーニングバイアスの印加電圧を常時の印加電圧よりも弱い電圧で印加しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置を搭載した画像形成装置としてのプリンタの説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置の要部の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置と比較例との条件を示す比較図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置におけるクリーニングバイアスの印加タイミング例のタイミング図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置の要部の常時の状態の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置の要部のバイアス制御初期状態の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置の要部のバイアス制御中期状態の説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るクリーニング装置の要部のバイアス制御終期状態の説明図である。
【符号の説明】
【0071】
8…中間転写ベルト(像担持体)
9…画像形成部
26…クリーニング装置
27…静電ファーブラシ(回転清掃体)
28…回収ローラ
31…電源回路(クリーニング電源)
35…制御回路(バイアス極性制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部によって像担持体表面に形成したトナー像を転写紙に転写した後に、前記像担持体の表面と接触して該像担持体の表面に残存するトナーを除去するクリーニング装置を備えた画像形成装置において、
前記クリーニング装置は、前記像担持体の表面と接触し且つ互いに離間状態で配置された一対の回転清掃体と、該一対の回転清掃体にクリーニングバイアスを印加するクリーニング電源と、前記一対の回転清掃体の前記像担持体の回転移動方向上流側に配置された回転清掃体に、現像に寄与するトナー帯電極性と同極性のクリーニングバイアスを印加し且つ前記一対の回転清掃体の他方にトナー帯電極性と逆極性のクリーニングバイアスを印加するバイアス極性制御部と、を備え、
前記バイアス極性制御部は、所定のタイミングにて、前記像担持体表面に転写紙に転写しない非印字トナーパターン像を形成させると共に、前記クリーニング電源による前記一対の回転清掃体のうちの前記一方の回転清掃体へのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と逆極性のまま常時の値よりも弱め且つ前記他方の回転清掃体へのクリーニングバイアスの印加電圧をトナー帯電極性と逆極性に切り換えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記バイアス極性制御部は、前記一対の回転清掃体のうちの前記像担持体の回転移動方向上流側に配置された回転清掃体へのクリーニングバイアスを印加しないことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記バイアス極性制御部は、前記一対の回転清掃体の離間距離に対する前記像担持体の移動時間をタイムラグとして考慮したうえで、前記一対の回転清掃体間へのクリーニングバイアスの印加電圧を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項2の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記バイアス極性制御部は、画像形成処理枚数・画像形成処理時間・累積印字率の何れかが予め設定された所定値に達した時を所定のタイミングとして、前記一対の回転清掃体へのクリーニングバイアスの印加電圧を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記バイアス極性制御部は、印刷ジョブ単位又は1ページ単位で画像形成処理が終了した時を所定のタイミングとして、前記一対の回転清掃体へのクリーニングバイアスの印加電圧を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体が、無端ベルト状の中間転写体であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−163074(P2009−163074A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1776(P2008−1776)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】