説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置を使用するユーザがユーザ認証を行う際の操作性を改善すると共に、画像形成装置に高いセキュリティを確保する。
【解決手段】画像形成装置1の正面側には操作パネル5が設けられており、この操作パネル5にはジョブの実行を指示するためにユーザが操作する実行キー52aが設けられる。操作パネル5の前縁部5aにはユーザの手の指から生体情報を読み取る生体情報読取装置7が設けられる。画像形成装置1は、実行キー52aが操作されるタイミングで生体情報読取装置7から生体情報を取得してユーザ認証を行い、ユーザを特定することができた場合にジョブの実行を許可するように構成される。そして実行キー52aは、生体情報読取装置7がユーザの手の指から生体情報を読み取り可能な状態において、その同じ指の指先で操作可能な位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報を用いてユーザを認証する機能を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合機やMFP(Multi Function Peripheral)などと呼ばれる画像形成装置は、近年、ネットワーク環境で使用されるようになっており、例えば画像形成装置において原稿を読み取った際の画像データをネットワーク経由で他のコンピュータに出力することや、画像形成装置がネットワーク上のコンピュータにアクセスし、そこに保存されている画像データを読み出して出力することなどが可能である。そのため画像形成装置を使用することによる情報の流出や消失などを防止するため、近年は画像形成装置を使用するに際して高いセキュリティ機能が求められるにようになっている。
【0003】
従来、画像形成装置のセキュリティを高める技術として、例えばユーザの指紋などの生体情報を読み取ってユーザ認証を行い、その認証結果に応じて画像形成装置における各種機能の利用を許可する技術が知られている(例えば、特許文献1)。このような従来技術によれば、ユーザは指紋認証を行って画像形成装置にログインすることにより、画像形成装置の各種機能を利用することができるようになる。
【0004】
また従来は、図16に示すような画像形成装置100も公知である。この画像形成装置100は、装置本体100aの前面側に操作パネル110が設けられており、この操作パネル110にはユーザ認証を行うために操作する認証キー112と画像形成装置100に対してジョブの実行を指示する実行キー113とが設けられている。ユーザの手の指から生体情報を読み取る生体情報読取装置130は、操作パネル110とは別に設けられ、装置本体100aの側面に取り付けられたワーキングテーブル120の上に設置されている。そのため、ユーザが画像形成装置100を使用する際には、ワーキングテーブル120に設置された生体情報読取装置130に手の指を載せた状態でユーザ認証を行って画像形成装置にログインすることにより、各種機能を使用することができるようになる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−123699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術の場合、ユーザが画像形成装置にログインするためにユーザ認証を行う際の操作が煩雑なものとなる。例えば、特許文献1の場合、ユーザは操作パネルに設けられた指紋読取装置に認証指の指先を置いた状態としてさらに別の指で実行キーや認証キーを操作する必要があり、ユーザ認証を行うためには、指紋読取装置に認証指を置く動作と、実行キーや認証キーを操作する動作との2つの動作(アクション)を行う必要がある。また図16に示した画像形成装置100の場合も同様であり、ユーザはワーキングテーブル120上に設置された生体情報読取装置130に一方の手の認証指を置いた状態としてさらに他方の手の指で操作パネル110の実行キー113や認証キー112を操作する必要があり、ユーザ認証を行うために2つの動作を行う必要がある。
【0007】
ところで従来の画像形成装置は、ログインしたユーザが確実にログアウト操作を行うことを前提としており、例えばログインしたユーザがログアウト操作することを忘れてしまった場合の対応措置が十分でない。そのため、ユーザの入れ替わりが激しいオフィス環境などでは画像形成装置が不正に使用される可能性がある。
【0008】
これを防止するための方法として、例えば操作パネルが操作されない時間が所定時間経過することにより、自動でログアウト処理を行う方法がある。この方法の場合、所定時間を短く設定しておくことにより、ログインしたユーザと入れ替わったユーザが不正に画像形成装置を使用することを防止することができる。
【0009】
しかしその一方で、ユーザは画像形成装置にログインしてからジョブの実行を指示する実行キーを操作するまで絶えず短い間隔で操作パネルを操作し続ける必要があり、操作途中で上述の短く設定された所定時間を経過すると自動でログアウト処理が実行されることになる。この場合、ユーザが継続して画像形成装置を使用するためには、上述したユーザ認証のための煩雑な操作を再度行って画像形成装置に再びログインする必要があり、画像形成装置の操作性が著しく低下する。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解決することを目的としてなされたものであり、ユーザ認証を行う際の操作性を改善しつつ、高いセキュリティを確保し、さらに装置全体としての操作性も向上させた画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、画像形成装置であって、画像処理に関するジョブを実行する画像処理ユニットと、前記画像処理ユニットによるジョブの実行を指示するために操作可能な実行キーと、ユーザの手の指から生体情報を読み取る生体情報読取手段と、前記生体情報読取手段から得られる生体情報に基づいてユーザ認証を行い、ユーザを特定することができた場合にジョブの実行を許可する制御手段と、を備えており、前記実行キーは、前記生体情報読取手段がユーザの手の指から生体情報を読み取り可能な状態において、同じ指の指先で操作可能な位置に設けられていることを特徴としている。
【0012】
かかる構成によれば、ユーザは、生体情報読取手段によって手の指から生体情報の読み取りを可能にするための動作と、その同じ指の指先で実行キーを操作する動作とを一連の動作として行うことができるようになるので、ユーザ認証を行う際の操作性が良くなる。
【0013】
また請求項2にかかる発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記制御手段は、前記実行キーが操作されたタイミングでユーザ認証を行うことを特徴としている。
【0014】
かかる構成によれば、ユーザによって実行キーが操作される都度、ユーザ認証が行われることになる。
【0015】
また請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記制御手段は、初期状態において前記実行キーが操作されたタイミングでユーザ認証を行い、ユーザを特定することができた場合に画像処理に関する設定入力操作を受け付け、その後さらに前記実行キーが操作されたタイミングで再度ユーザ認証を行って同一のユーザを特定することができた場合に入力された設定情報を反映させて前記画像処理ユニットにジョブを実行させることを特徴としている。
【0016】
かかる構成によれば、再度のユーザ認証によって同一のユーザを特定することができた場合にジョブが実行されるようになっており、同一のユーザを特定できなかった場合にはジョブは実行されないので、画像形成装置のセキュリティが向上する。
【0017】
また請求項4にかかる発明は、請求項3記載の画像形成装置において、前記設定情報を記憶する記憶手段をさらに備えており、前記制御手段は、再度ユーザ認証を行った際に同一のユーザを特定することがでなかった場合に、前記設定情報を前記記憶手段に保存することを特徴としている。
【0018】
かかる構成によれば、ユーザが設定入力した画像処理に関する設定情報を失うことなく、保持しておくことができる。
【0019】
また請求項5にかかる発明は、請求項4記載の画像形成装置において、前記制御手段は、ユーザ認証を行ってユーザを特定することができたとき、特定されたユーザが入力した設定情報が前記記憶手段に保存されている場合、その設定情報を読み出して反映させることを特徴としている。
【0020】
かかる構成によれば、ユーザがログインしたとき、前回途中で中断した設定情報が保存されていると、その設定情報が反映され、途中で中断した状態から引き続き操作することが可能になるので、操作性が向上する。
【0021】
また請求項6にかかる発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記生体情報読取手段は、ユーザの手の指の指先を除く部分の静脈パターンを読み取ることを特徴としている。
【0022】
かかる構成によれば、指紋認証や顔認証などに比べて、よりセイキュリティの高いユーザ認証を行うことができる。
【0023】
また請求項7にかかる発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記生体情報読取手段は、ユーザの手の指から生体情報を読み取る読取部と、前記読取部を支持する支持部と、を備え、前記支持部が前記読取部を揺動可能に支持することを特徴としている。
【0024】
かかる構成によれば、ユーザが一連の動作でユーザ認証を行う際、生体情報読取手段の読取部がユーザの手の指の姿勢に応じて揺動するので、操作性がより一層向上する。
【0025】
また請求項8にかかる発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成装置において、ユーザが操作可能な操作パネルをさらに備えると共に、前記実行キーは前記操作パネルに設けられており、前記生体情報読取手段は、前記実行キーの前方側に配置されていることを特徴としている。
【0026】
また請求項9にかかる発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置において、前記実行キーは、前記生体情報読取手段の一部に設けられることを特徴としている。かかる構成によれば、操作性の優れた生体情報読取手段を画像形成装置の任意の部分に設けることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる画像形成装置によれば、ユーザがユーザ認証を行う際、生体情報読取手段に対して手の指から生体情報の読み取りを可能にするための動作と、その同じ指の指先で実行キーを操作する動作とを一連の動作として行うことができるので、2つの動作を行う必要がなく、操作性が著しく向上すると共に、画像形成装置に高いセキュリティを確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する幾つかの実施形態において互いに共通する部材については同一符号を付しており、それらについて繰り返しとなる説明は省略する。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態における画像形成装置の外観構成を示す斜視図である。図1には互いに直交するXYZ座標系を示しており、画像形成装置1の前後方向はX軸方向に対応し、上下方向がY軸方向に対応し、左右方向がZ軸に対応する(尚、他の図にXYZ座標系を示している場合も同様である)。
【0030】
図1に示すように、この画像形成装置1は、いわゆる複合機やMFPなどと呼ばれる装置であり、コピー機能、FAX機能、プリンタ機能、スキャナ機能など、複数の機能を備えており、例えばLANなどのネットワークに接続可能であると共に、電話回線などの通信網にも接続可能である。このような画像形成装置1は、原稿から読み取った画像データをネットワーク経由で他のコンピュータに出力することや、ネットワーク上のコンピュータにアクセスしてそこに保存されている画像データを取得して印刷出力することなどができると共に、通信網を介してFAXデータなどのデータの送受信ができるように構成されている。この画像形成装置1は、装置本体1aの上部に設けられた画像読取部2と、装置本体1aのほぼ中央内部に設けられた画像形成部3とを備えており、これら画像読取部2と画像形成部3とにより、ユーザによって指定された画像処理に関するジョブを実行する画像処理ユニット4が構成されている。
【0031】
画像読取部2は、原稿を読み取って画像データを生成する画像読取手段であり、例えば画像形成装置1のコピー機能、FAX機能又はスキャナ機能が使用される際に動作する。画像読取部2は、読取ガラス2aの上に載置された原稿を読み取って画像データを生成する。例えば画像形成装置1においてコピー機能に関するジョブの実行が指示された場合、画像読取部2は原稿を読み取って画像データを生成し、その画像データを画像形成部3に出力する。またFAX機能又はスキャナ機能に関するジョブの実行が指示された場合、画像読取部2は、原稿を読み取って画像データを生成し、その画像データを画像形成装置1の外部に出力する。尚、読取ガラス2aの上部には、読取ガラス2aに対して接離自在なように回動する蓋部材2bが設けられているが、この蓋部材2bの代わりに、複数枚の原稿を1枚ずつ画像読取部2に自動搬送する自動原稿搬送装置(いわゆるADF)を設けても良い。
【0032】
画像形成部3は、入力する画像データに基づいて画像形成を行う画像形成手段であり、例えば画像形成装置1のコピー機能、FAX機能又はプリンタ機能が使用される際に動作する。この画像形成部3は、入力する画像データに基づいて画像形成媒体となる用紙などに画像形成を行い、プリント出力を行う。例えば画像形成装置1においてコピー機能に関するジョブの実行が指示された場合、画像形成部3は、画像読取部2から入力する画像データに基づいて用紙に画像形成を行って出力する。またFAX機能又はプリンタ機能に関するジョブの実行が指示された場合、画像形成部3は画像形成装置1の外部から入力する画像データに基づいて用紙に画像形成を行って出力する。
【0033】
画像形成装置1の装置本体1aの前面側には、ユーザが画像形成装置1を使用する際に各種設定やジョブの実行を指示するために操作する操作入力手段として操作パネル5が設けられている。操作パネル5は、ユーザに対して各種情報を表示するために設けられたタッチパネル式の表示部51を備えている。この表示部51の周囲には、ユーザが操作可能な複数の操作ボタン52が設けられており、これら操作ボタン52にはユーザが画像形成装置1に対してジョブの実行を指示するために操作する実行キー52aが含まれている。本実施形態では、実行キー52aは、ジョブの実行開始を検知するだけでなく、画像形成装置1においてユーザ認証を行う契機を検知するように構成される。またこの実行キー52aは、例えば図1に示すように操作パネル7の前縁部5aの近傍位置に設けられる。
【0034】
そして操作パネル5の前縁部5aには、実行キー52aの位置に対応して生体情報読取装置7が取り付けられている。図2は操作パネル5と生体情報読取装置7を示す図であり、(A)は操作パネル5の拡大図であり、(B)は実行キー52aと生体情報読取装置7との位置関係を操作パネル5の上方からみた図である。図2(A)に示すように、生体情報読取装置7は、操作パネル5の左右方向に関し、実行キー52とほぼ同じ位置に取り付けられる。この生体情報読取装置7は、ユーザの手の指から生体情報を読み取る読取部70を備えた本体部7aと、その本体部7aの底部を支持して操作パネル5の前縁部5aに固定される支持部7bとを備えて構成される。本体部7aの上部には、ユーザの手の指を置くことが可能な断面略半円状の溝部7cが前後方向に沿って形成されており、この溝部7cが読取部70を構成している。
【0035】
生体情報読取装置7はユーザ認証を行うためにユーザの手の指から生体情報を読み取る生体情報読取手段であり、本実施形態ではユーザの手の指の指先を除く部分から静脈の血管パターンを読み取る静脈パターン読取装置として構成されている。そのため、溝部7cは本体部7aの前端部から後端部に亘って形成されており、ユーザが手の指の中程の部分或いは付根の部分を溝部7cに添わせて置くことができるようになっている。そして図2(B)に示すように、この溝部7cを操作パネル5に向かって延長した軸線L上に実行キー52aが位置するように生体情報読取装置7が取り付けられている。また生体情報読取装置7の端部と実行キー52aとの距離Dは、ユーザが手の指を溝部7cに置いた状態でその同じ指の指先で実行キー52aを操作することが可能な距離に設定されている。
【0036】
したがって、図3に示すようにユーザは例えば人差し指などの認証指Fを溝部7cに添えるように置き、生体情報読取装置7が認証指Fから生体情報を読み取り可能な状態としたままでその認証指Fの指先で操作パネル5の実行キー52aを操作することができるようになっている。
【0037】
図4は、本実施形態における画像形成装置1の機能的な構成を示したブロック図である。図4に示すように、画像形成装置1の装置本体1aには、上述した画像読取部2および画像形成部3の他、CPU10と、メモリ11と、データ通信部13とが設けられている。画像読取部2および画像形成部3は上述したように画像形成装置1における画像処理ユニット4を構成しており、この画像処理ユニット4によってコピー機能、FAX機能、プリンタ機能およびスキャナ機能における各種の画像処理が行われる。データ通信部13は、その内部に通信インタフェースを備えており、ネットワークや通信網と接続して外部の装置(例えばコンピュータやFAX装置など)とデータの送受信を行う。
【0038】
生体情報読取装置7は、溝部7cの側面に配置された投光部71と、溝部7cの底面に配置された撮像部72とを備えており、投光部71が溝部7cに沿って配置されたユーザの認証指の側面に対して赤外光を照射し、その認証指の内部を透過して溝部7cの底面に向かう光を撮像部72が受光して静脈パターンを読み取るように構成されている。この生体情報読取装置7は、例えばCPU10から読取指令を受信するとそれに応答して静脈パターンの読み取りを行い、生体情報をCPU10に出力する。なお、生体情報は静脈パターンを撮像した画像データである。
【0039】
メモリ11は、各種情報やプログラムなどを記憶する記憶手段であり、本実施形態ではユーザ管理データ12が格納されている。ユーザ管理データ12は、画像形成装置1のセキュリティを向上させるため、画像形成装置1を使用することができるユーザを管理するデータである。このユーザ管理データ12には、画像形成装置1を使用することが許可されたユーザごとに生体情報登録データ12aが予め登録されている。生体情報登録データ12aは、ユーザ登録時に生体情報読取装置7で読み取った生体情報を予め登録したデータである。
【0040】
CPU10は、所定のプログラムを実行することにより、画像形成装置1の動作を制御する制御手段である。このCPU10は、生体情報読取装置7からユーザの生体情報(静脈パターン)を入力してユーザの認証を行い、その認証の結果、ユーザを特定することができた場合にそのユーザに対して画像形成装置1の各種機能の使用を許可し、ユーザがそれら機能を使用できる状態とする。例えばCPU10は、ユーザによって操作パネル5の実行キー52aが操作されると、その都度、生体情報読取装置7に対して読取指令を送出し、生体情報読取装置7の溝部7cに置かれたユーザの指から読み取った生体情報を取得してユーザ認証を行う。このときユーザは、生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を置く動作と、その認証指の指先で実行キー52aを操作する動作とを一連のひとつの動作として行うことができるので、ユーザ認証を行う際の操作性が向上する。
【0041】
また本実施形態では、ユーザ認証において、生体情報読取装置7が読み取った静脈パターンが、メモリ11の生体情報登録データ12aに予め登録されたユーザの静脈パターンに一致するか否かの静脈認証が行われる。静脈認証は、静脈パターンという生体内部の特徴を利用してユーザの認証を行うものであるため、指紋認証や顔認証などのようにユーザの外見に現れる特徴を読み取って認証する場合と比較すれば、ユーザに与える心理的抵抗感は少なく、また偽造が極めて困難であるという利点を有している。そのため、本実施形態の画像形成装置1は、利用しやすく、かつ高いセキュリティレベルでのユーザ認証が行えるようになっている。
【0042】
図5は、画像形成装置1のCPU10によって実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。この画像形成装置1の初期の状態では、CPU10は操作パネル5の表示部51に対して初期画面を表示している(ステップS10)。この初期状態では、画像形成装置1の各種機能はロック状態となっており、操作パネル5の表示部51には、初期画面として、生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を添えた状態で実行キー52aを操作すれば画像形成装置1の各種機能が使用できるようになる旨の表示が行われる。尚、この初期画面では、文章による説明だけでなく、絵柄やアニメーション動画などによって認証指を溝部7cに添えた状態で実行キー52aを操作する態様の案内表示を行うようにすれば、操作性がより一層向上する。
【0043】
このような初期状態においてCPU10は実行キー52aが操作されたか否かを監視している(ステップS11)。そしてユーザが初期画面を見て、操作パネル5の実行キー52aを操作すると、CPU10は実行キー52aがオンになったことを検知し(ステップS11でYES)、そのタイミングで生体情報読取装置7に読取指令を送出して生体情報の読み取りを行う(ステップS12)。そしてCPU10は、生体情報読取装置7から生体情報を入力すると、メモリ11から生体情報登録データ12aを読み出し、生体情報読取装置7から入力した生体情報をその生体情報登録データ12aと照合することにより、ユーザの特定を行う(ステップS13)。ここで実行キー52aを操作したユーザが予め登録されたユーザであると特定できた場合(ステップS14でYES)、CPU10は、画像形成装置1のロック状態を解除して特定ユーザによるログイン状態とし、各種機能の実行を許可する(ステップS15)。これにより、ユーザは画像形成装置1の各種機能を使用することができるようになる。
【0044】
CPU10は、操作パネル5の表示部51に対し、ロック解除された各種機能に関する操作メニュー画面を表示し(ステップS16)、ユーザによる設定操作を受け付ける(ステップS17)。これにより、ユーザは画像形成装置1に対してジョブの実行を指示する前に、各種機能に関する設定操作を行うことができる。このときCPU10は、実行キー52aが操作されたか否かを監視しており(ステップS18)、ユーザが実行キー52aを操作するまで設定操作を受け付ける。そしてユーザが実行キー52aを操作したことを検知すると(ステップS18でYES)、CPU10はそのタイミングで再び生体情報読取装置7に読取指令を送出し、生体情報の読み取りを行う(ステップS19)。そしてCPU10は、生体情報読取装置7から生体情報を入力すると、メモリ11から生体情報登録データ12aを読み出し、生体情報読取装置7から入力した生体情報をその生体情報登録データ12aと照合することにより、ユーザの特定を行う(ステップS20)。そして実行キー52aを操作したユーザが予め登録されたユーザであると特定できた場合(ステップS20でYES)、CPU10は、操作パネル5を介して入力された設定情報を反映して画像読取部2又は画像形成部3にジョブの実行を指示することにより、画像処理ユニット4におけるジョブの実行を制御する(ステップS22)。
【0045】
そしてジョブの実行が終了すると、このフローチャートの処理は終了し、再び初期状態(ステップS10)に戻る。尚、ステップS14及びS21において実行キー52aを操作したユーザが予め登録されたユーザでないと判断された場合には、ステップS23に進み、CPU10は操作パネル5の表示部51に警告画面を表示する。この警告画面には、例えばユーザが未登録である旨の表示や、ユーザ登録を行えば操作することができるようになる旨の表示などが含まれる。そして警告表示が終了すると、このフローチャートの処理は終了し、再びステップS10に戻って初期状態となる。
【0046】
以上のような処理手順によれば、ユーザによって操作パネル5の実行キー52aを操作される都度、そのタイミングでCPU10が生体情報読取装置7からユーザの認証指の生体情報を読み取ってユーザ認証を行うように構成されている。そのため、ログインしたユーザと異なる未登録ユーザが画像形成装置1にジョブを実行させようとして実行キー52aを操作した場合でも、そのジョブは実行されないので、未登録ユーザが画像形成装置1を不正に使用することはできない構成となっており、セキュリティの高い装置が実現されている。
【0047】
またユーザ認証を行うためにユーザが行う動作は、生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を置く動作と、その同じ認証指の指先で実行キー52aを操作する動作とが一連のひとつの動作となっているので、画像形成装置1にログインする際、或いは画像形成装置1にジョブを実行させる際の操作性が著しく向上する。
【0048】
そして本実施形態の場合には、上述のステップS17においてユーザが各種機能に関する設定操作を行っているとき、操作パネル5が操作されない時間が比較的長時間生じた場合でも、自動でログアウト処理が行われることがないので、ユーザが頻繁にログイン操作を繰り返す必要もなく、装置全体としての操作性も向上する。
【0049】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。本実施形態では、画像形成装置に対して登録されたユーザが使用できる機能を予め登録しておくことにより、ログインしたユーザにのみ許可された機能が使用できるようにした画像形成装置について説明する。また本実施形態では、ログインしたユーザが操作パネルを介して許可された機能の設定操作を行っていた途中で、操作パネルを操作するユーザが別のユーザに入れ替わった場合でも、元のユーザが再度ログインした後に前回の設定状態から引き続いて操作できるようにした画像形成装置について説明する。尚、本実施形態においても、画像形成装置1の全体構成及び操作パネル5に対して生体情報読取装置7が取り付けられている構成は第1の実施の形態で説明したものと同様である。
【0050】
図6は、本実施形態における画像形成装置1の機能的な構成を示したブロック図である。図6に示した構成が第1の実施の形態(図4)と異なる点は、メモリ11に記憶されているユーザ管理データ12に、上述した生体情報登録データ12aの他、機能登録データ12bが含まれる点と、メモリ11に設定情報記憶領域13が設けられている点の2点である。
【0051】
ユーザ管理データ12には、画像形成装置1を使用することが許可されたユーザごとに生体情報登録データ12aと機能登録データ12bとが互いに関連づけられて登録されている。機能登録データ12bは、登録されたユーザが使用できる画像形成装置1の機能を予め登録したデータである。例えば、あるユーザは画像形成装置1のコピー機能のみを使用できるが、別のユーザはコピー機能とスキャナ機能とを使用することができ、さらに別のユーザは画像形成装置1の全ての機能を使用することができる、というように機能登録データ12bには登録されたユーザごとに使用することが許可された機能が登録されている。
【0052】
設定情報記憶領域13は、画像形成装置1にログインしたユーザが操作パネルを介して許可された機能の設定操作を行っている途中で、操作パネルを操作するユーザが別のユーザに入れ替わった場合に、それまでに入力された設定情報を一時的に記憶する記憶手段として設けられており、設定情報記憶領域13への設定情報の書き込み及び設定情報記憶領域13からの設定情報の読み出しはCPU10によって行われる。
【0053】
CPU10は、ユーザによって実行キー52aが操作されたタイミングで生体情報読取装置7からユーザの生体情報(静脈パターン)の読み取りを行う。そして生体情報読取装置7から得られる生体情報と、メモリ11の生体情報登録データ12aとを照合して生体情報の認証、すなわちユーザの認証を行い、生体情報読取装置7から取得した生体情報が、生体情報登録データ12aに含まれる複数ユーザの生体情報のうちいずれか一つと適合する場合には、その適合した生体情報の登録ユーザとして認証する。実行キー52aを操作したユーザが登録ユーザであることが特定されると、CPU10は、画像形成装置1における各種機能のうち、特定されたユーザに予め許可された機能を使用可能な状態に移行させる。具体的には、メモリ11から機能登録データ12bを読み込み、特定されたユーザに対して機能登録データ12bに登録されている1つ又は複数の機能を特定し、画像形成装置1においてそれらの機能を実行することが可能な実行許可状態とする。したがって、登録ユーザが画像形成装置1にログインすると、その登録ユーザに許可された機能のみを使用することができるようになる。
【0054】
またCPU10は、操作パネル5の実行キー52aが操作される都度、生体情報読取装置7に対して読取指令を送出し、生体情報読取装置7の溝部7cに置かれたユーザの指から読み取った生体情報を取得してユーザ認証を行う。このときユーザが行う動作は、第1の実施の形態と同様であり、生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を置く動作と、その認証指の指先で実行キー52aを操作する動作とを一連のひとつの動作として行うことができるので、ユーザ認証を行う際の操作性が向上する。
【0055】
そしてCPU10は、ある登録ユーザがログインしている状態で実行キー52aが操作されたタイミングでもユーザ認証を行い、このユーザ認証でログインしているユーザと異なるユーザが特定された場合には、それまでログインしていたユーザが操作パネル5を操作して入力した設定情報をメモリ11の設定情報記憶領域13に格納保存すると共に、新たにログインしたユーザに許可された機能を実行許可状態として操作パネル5の表示内容を切り替える。その後、先にログインしていたユーザが再び画像形成装置1にログインした場合、CPU10はメモリ11の設定情報記憶領域13に保存しておいた設定情報を読み出して操作パネル5の表示内容に反映させることにより、ユーザは前回の設定状態から引き続いて操作できるようになる。
【0056】
図7及び図8は、上記のような処理手順の一例を示すフローチャートであり、画像形成装置1のCPU10によって実行される処理を示している。本実施形態においても、画像形成装置1の初期状態では、CPU10が操作パネル5の表示部51に対して初期画面を表示している(ステップS30)。この初期状態は、第1の実施の形態で説明したものと同様であり、画像形成装置1の各種機能はロック状態となっている。初期状態において、CPU10は実行キー52aが操作されたか否かを監視しており(ステップS31)、ユーザが実行キー52aを操作すると、それを検知し(ステップS31でYES)、そのタイミングで生体情報読取装置7に読取指令を送出してユーザの認証指から生体情報の読み取りを行う(ステップS32)。そしてCPU10は、生体情報読取装置7から生体情報を取得すると、メモリ11から生体情報登録データ12aを読み出し、生体情報読取装置7から入力した生体情報をその生体情報登録データ12aと照合することにより、ユーザの特定を行う(ステップS33)。ここでユーザが予め登録されたユーザであると特定できた場合(ステップS34でYES)、CPU10は、画像形成装置1のロック状態を解除してログイン状態とすると共に、メモリ11から機能登録データ12bを読み出し(ステップS35)、特定されたユーザに許可された機能を特定してその機能のみの実行を許可する(ステップS36)。これにより、ユーザは自身に対して許可された画像形成装置1の少なくとも1つの機能を使用することができるようになる。
【0057】
そしてCPU10は、操作パネル5の表示部51に対し、ユーザに対して許可された機能に関する操作メニュー画面を表示し(ステップS37)、ユーザによる設定操作を受け付ける(ステップS38)。これにより、ユーザは画像形成装置1に対してジョブの実行を指示する前に、使用可能な機能に関する設定操作を行うことができる。このときCPU10は、実行キー52aが操作されたか否かを監視しており(ステップS39)、ユーザが実行キー52aを操作するまで設定操作を受け付ける。そしてユーザが実行キー52aを操作したことを検知すると(ステップS39でYES)、CPU10はそのタイミングで再び生体情報読取装置7に読取指令を送出し、ユーザの認証指から生体情報の読み取りを行う(ステップS40)。そして生体情報読取装置7から生体情報を入力すると、メモリ11から生体情報登録データ12aを読み出し、生体情報読取装置7から入力した生体情報をその生体情報登録データ12aと照合することにより、再びユーザの特定を行う(ステップS41)。そして実行キー52aを操作したユーザが予め登録されたユーザであると特定できた場合(ステップS41でYES)、図8のフローチャートに進み、ステップS42で特定されたユーザがステップS34で特定されたユーザと同一のユーザであるか否かを判定する(ステップS45)。
【0058】
ステップS45において同一ユーザでないと判定されると、CPU10はユーザが入れ替わったことを認識し(ステップS50)、それまでログインしていたユーザが操作パネル5を介して入力した設定情報をメモリ11の設定情報記憶領域13に格納保存する(ステップS51)。
【0059】
そしてCPU10は、ステップS42で特定されたユーザがログインした状態に移行させると共に、メモリ11からそのユーザに関する機能登録データ12bを読み出し(ステップS52)、そのユーザに許可された機能を特定してその機能のみの実行を許可する(ステップS53)。CPU10は、入れ替わったユーザ(ステップS42で特定されたユーザ)の設定情報がメモリ11の設定情報記憶領域13に記憶されているか否かを確認し(ステップS54)、設定情報が記憶されている場合(ステップS55でYES)、その設定情報を読み出し(ステップS56)、その設定を画像形成装置1に反映させる(ステップS57)。そして処理は図7のステップS37に戻り、操作パネル5の表示部51に、前回ログインしたときに設定途中で中断した設定状態を反映させて操作メニュー画面を表示する(ステップS37)。したがって、これ以降の処理では、ユーザが前回ログインしたときの状態から引き続いて設定操作を行うことができるようになる。
【0060】
そしてステップS45で再びユーザの入れ替わりが検知された場合には、上述の処理が繰り返され、入れ替わり前のユーザが操作途中の設定情報がある場合には、メモリ11の設定情報記憶領域13にその設定情報が保存されると共に、新たにログインしたユーザの前回の設定情報が設定情報記憶領域13に保存されている場合にはその設定情報を読み出されて前回ログインしたときに設定途中で中断した設定状態が反映されるようになる。
【0061】
そしてステップS45で、実行キー52aを操作したユーザが現在ログインしているユーザと同一ユーザであることが確認できた場合、ステップS45からステップS46に進み、CPU10は、操作パネル5を介して入力された設定情報を反映して画像読取部2又は画像形成部3にジョブの実行を指示することにより、画像処理ユニット4におけるジョブの実行を制御する(ステップS46)。そしてジョブの実行が終了すると、そのユーザに対応する設定情報がメモリ11の設定情報記憶領域13に保存されている場合、それを削除することにより設定情報記憶領域13をクリアして(ステップS47)、処理を終了する。
【0062】
尚、ステップS34及びS42において実行キー52aを操作したユーザが予め登録されたユーザでないと判断された場合には、ステップS44に進み、CPU10は操作パネル5の表示部51に警告画面を表示する。この処理は、図5のステップS23と同様の処理である。以上で、このフローチャートの処理は終了し、再び初期状態(図7のステップS30)に戻って以後、上述した処理が繰り返される。
【0063】
以上のような処理手順によれば、ある登録ユーザが画像形成装置1にログインしているときに、別の登録ユーザが実行キー52aを操作した場合、いわゆる割り込み機能と同様の処理が行われることとなり、あらたにログインした別の登録ユーザが画像形成装置1を使用することができる。そして、はじめにログインしていた登録ユーザが操作パネル5を介して許可された機能の設定操作を行っている途中で、別の登録ユーザに入れ替わった場合でも、元の登録ユーザが再度ログインした場合には前回の設定状態から引き続いて操作できるように構成されているため、画像形成装置1の操作性がさらに向上する。
【0064】
そして本実施形態の画像形成装置1は、登録されたユーザが使用できる機能を予めユーザ毎に登録しており、ユーザがログインしたときにはそのユーザに対して許可された機能のみを使用することができるようにするので、より高いレベルのセキュリティが確保されている。
【0065】
尚、本実施形態でも、ユーザ認証を行う際にユーザが行う動作は、第1の実施の形態と同様であり、生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を置く動作と、その同じ認証指の指先で実行キー52aを操作する動作とが一連のひとつの動作となっているので、画像形成装置1にログインする際、或いは画像形成装置1にジョブを実行させる際の操作性が向上する。
【0066】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。本実施形態では、操作パネル5に対する生体情報読取装置7の取り付け態様をさらに改良し、画像形成装置1にログインする際、或いは画像形成装置1にジョブを実行させる際の操作性をより一層改善することができる形態について説明する。尚、本実施形態においても画像形成装置1の全体構成などは第1の実施の形態で説明したものと同様である。
【0067】
図9は、本実施形態の画像形成装置1における操作パネル5の一部(生体情報読取装置7が取り付けられた部分)を拡大した図である。本実施形態でも、生体情報読取装置7は、本体部7aと、その本体部7aを支持する支持部7bとから成り、支持部7bが操作パネル5の前縁部5aに固定されている。そして生体情報読取装置7の本体部7aは、支持部7bによってZ軸に平行な左右方向の軸L1周りに回動可能に支持されている。そのため、ユーザが生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を添わせた状態で、同じ認証指の指先で操作パネル5の実行キー52aを操作しようとすると、生体情報読取装置7の本体部7aが前後方向に揺動するので、実行キー52aの操作がより行いやすくなる。
【0068】
特に、画像形成装置1を使用するユーザは身長の違いなど体格差が様々であり、全てのユーザに対して最適となる生体情報読取装置7の本体部7aの取り付け姿勢を決定することは難しい。それ故、本体部7aを支持部7bに対してある姿勢で固定した状態で取り付けてしまうと、ユーザによっては生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を添わせた状態で実行キー52aを操作しようとすると、認証指の付根の部分などが溝部7cから浮き上がってしまい、読取部70が生体情報を正確に読み取ることができなくなる可能性があり、登録ユーザであるにもかかわらず、ユーザ認証の結果、不適合となってしまう虞がある。そこで、上述したように生体情報読取装置7の本体部7aが前後方向に揺動する機構を設けることにより、ユーザが生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を添わせた状態で、同じ認証指の指先で操作パネル5の実行キー52aを操作しようとすると、本体部7aはユーザの体格などに応じて姿勢変化するので、ユーザの認証指の浮き上がりなどを防止でき、生体情報を安定して正確に読み取ることができるようになる。
【0069】
図10は、生体情報読取装置7における本体部7aの揺動機構の一例を示す断面図であり、(A)はZ軸に平行な縦断面を、(B)はX軸に平行な縦断面を示している。尚、生体情報読取装置7の投光部71及び撮像部72などの電気的構成は図示を省略している。図10に示すように、生体情報読取装置7の本体部7aは、その下部が支持部7bに嵌め込まれており、その嵌め込まれた部分の左右側面には、軸L1と同軸の回動軸7dが突出して設けられている。一方、支持部7bは、底部材75と、その底部材75に対して上方から被せられるカバー部材76とを備えており、底部材75には本体部7aの左右側面から突出する一対の回動軸7dを回動可能に保持するための左右一対の保持部75aが設けられている。これら保持部75aが回動軸7dを保持した状態でカバー部材76を上方から被せることにより、カバー部材76の上部周縁部76aが本体部7aを包囲すると共に、その周縁部76aが回動軸7dの上部を抑える。これにより、回動軸7dは保持部75aから離脱することが防止され、本体部7aは軸L1周りに回動可能に支持される。その結果、図10(B)に示すように、本体部7aは矢印R1で示す前後方向に揺動自在となる。尚、本実施形態の場合、本体部7aの回転量は、本体部7aの前後方向の端面或いは底面が支持部7bの内面に当たることによって規制されるが、支持部7bの内側などに本体部7aの回転量を規制するための規制手段を別途設けても良い。
【0070】
このように本実施形態では、操作パネル5の前方側に配置された生体情報読取装置7において、ユーザの手の指から生体情報を読み取る読取部70を備えた本体部7aを、支持部7bが前後方向に揺動可能に支持しているため、様々な体格のユーザが生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を置いたとき、本体部7aが認証指の置かれた角度に応じてその姿勢を変化させることができると共に、ユーザが実行キー52aを操作するときには、本体部7aが認証指の動きに伴って前方側に傾くようになっている。したがって、本実施形態では、ユーザ認証を行う際の操作性がさらに改善されると共に、画像形成装置1において正確なユーザ認証を安定して行うことができるようになる。
【0071】
尚、本実施形態でも、第1及び第2の実施の形態で説明した処理手順を適用することにより、セキュリティが高く、かつ、操作性の優れた画像形成装置1を実現することができるようになる。
【0072】
(第4の実施の形態)
次に第4の実施の形態について説明する。本実施形態では、第3の実施の形態の更なる改良について説明する。尚、本実施形態においても画像形成装置1の全体構成などは第1の実施の形態で説明したものと同様である。
【0073】
図11は、本実施形態の画像形成装置1における操作パネル5の一部(生体情報読取装置7が取り付けられた部分)を拡大した図である。本実施形態でも、生体情報読取装置7は、本体部7aと、その本体部7aを支持する支持部7bとから成り、支持部7bが操作パネル5の前縁部5aに固定されている。そして本実施形態では、生体情報読取装置7の本体部7aは、支持部7bによってZ軸に平行な左右方向の軸L1周りに回動可能に支持されると共に、前後方向の軸L2周りにも回動可能に支持されている。そのため、ユーザが生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を添わせた状態で、同じ認証指の指先で操作パネル5の実行キー52aを操作しようとすると、生体情報読取装置7の本体部7aが前後方向(図中、矢印R1の方向)に揺動すると共に、左右方向(図中、矢印R2の方向)にも揺動するので、本体部7aの姿勢変動に関する自由度がさらに増し、認証指と溝部7cとの密着度を上げることができるので、実行キー52aの操作がより行いやすくなる。
【0074】
図12は、生体情報読取装置7における本体部7aの揺動機構(姿勢変動機構)の一例を示す断面図であり、(A)はZ軸に平行な縦断面を、(B)はX軸に平行な縦断面を示している。尚、生体情報読取装置7の投光部71及び撮像部72などの電気的構成は図示を省略している。図12に示すように、生体情報読取装置7の本体部7aは、その下部が支持部7bを構成するケース部材77に嵌め込まれており、ケース部材77に嵌め込まれた部分の左右側面には、本体部7aの姿勢変動を規制するための規制部材7eが突出して設けられている。一方、支持部7bのケース部材77は、左右の側面部がその内側に規制部材7eを収容できるように幅広に形成され、その底面には本体部7aの底部の四隅に対応する位置に凹部が形成されており、それらの各凹部に本体部7aを上方に向けて付勢する付勢手段としてバネ部材7fが設けられている。そしてケース部材77の上部周縁部が本体部7aを包囲すると共に、その周縁部の内側が規制部材7eと係合して本体部7aの浮き上がりを規制するように構成されている。各バネ部材7fによる付勢力は、ユーザの手の指の押圧力よりも小さくなっており、ユーザが溝部7cに認証指を置いた状態で軽く本体部7aを押さえると、それに応じて本体部7aがバネ部材7fに抗してその姿勢を変動させるようになっている。
【0075】
また図13は、図12とは別の構成例を示す断面図であり、(A)はZ軸に平行な縦断面を、(B)はX軸に平行な縦断面を示している。尚、この図においても生体情報読取装置7の投光部71及び撮像部72などの電気的構成は図示を省略している。図13の構成が、図12の構成と異なる点は、バネ部材の代わりに、本体部7aの底部とケース部材77の内側底面との間に、発泡材或いはゴム材等のように柔軟性があり、かつ弾発力に富んだ弾性部材7gを配置した点である。弾性部材7gは、無負荷状態では本体部7aを上方に向けて付勢しており、認証指からの押圧力を受けると容易に収縮するようになっている。そのため、図13で示した構成の場合にも、ユーザが溝部7cに認証指を置いた状態で軽く本体部7aを押さえると、それに応じて本体部7aが弾性部材7gに抗してその姿勢を変動させるようになっている。
【0076】
生体情報読取装置7を図12又は図13に示した構成とすれば、ユーザが本体部7aの溝部7cに認証指を置いた状態でその認証指を左右方向に捻れば、それに応じて本体部7aは左右方向(矢印R2方向)に揺動する。またユーザが本体部7aの溝部7cに認証指を置いた状態で実行キー52aを操作しようとすれば、それに応じて本体部7aは前後方向(矢印R1方向)に揺動する。そしてこれら2方向への揺動動作が組み合わさることにより、本体部7aはさらに多様な姿勢変動を行うことができるようになり、ユーザがユーザ認証を行うために認証指を差し出す方向が多少傾いている場合であっても本体部7aをその認証指に追従させることが可能になる。
【0077】
このように本実施形態では、操作パネル5の前方側に配置された生体情報読取装置7において、ユーザの手の指から生体情報を読み取る読取部70を備えた本体部7aを、支持部7bが前後方向及び左右方向に揺動可能に支持しているため、本体部7aの変動可能な姿勢がより多様なものとなっている。それ故、本体部7aは、ユーザの体格に応じた姿勢をとることができるだけでなく、ユーザが認証指を差し出す方向などにも応じてその姿勢を変化させるので、ユーザが実行キー52aを操作するときには、より操作し易い構成となっている。そしてユーザ認証を行う際の操作性がさらに改善されると共に、画像形成装置1において正確なユーザ認証を安定して行うことができるようになる。
【0078】
尚、本実施形態でも、第1及び第2の実施の形態で説明した処理手順を適用することにより、セキュリティが高く、かつ、操作性の優れた画像形成装置1を実現することができるようになる。
【0079】
(第5の実施の形態)
次に第5の実施の形態について説明する。上述した第1乃至第4の実施の形態では、画像形成装置1において生体情報読取装置7が操作パネル5の前縁部5aに取り付けられる場合を例示した。本実施形態では、生体情報読取装置7を操作パネル5とは別に場所に設置する場合の一構成例について説明する。
【0080】
図14は、本実施形態における画像形成装置1の外観構成を示す斜視図である。この画像形成装置1は、操作パネル5とは別の位置に、装置本体1aの側面に棚状に取り付けられたワーキングテーブル9を備えている。ワーキングテーブル9は、ユーザが画像形成装置1を使用する際、原稿などを一時的に置くための作業領域として機能するものであるが、本実施形態では、このワーキングテーブル9の一部に生体情報読取装置7が設置される。
【0081】
図15は、ワーキングテーブル9上に設置される生体情報読取装置7を示す拡大図である。生体情報読取装置7は、ユーザの手の指から生体情報を読み取る読取部70を備えた本体部7aから成り、この本体部7aがワーキングテーブル9に設置される。生体情報読取装置7の本体部7aの上部には、ユーザの手の指を置くことが可能な断面略半円状の溝部7cが前後方向に沿って形成されており、この溝部7cの前方側(画像形成装置1の正面側)に読取部70が設けられており、さらに溝部7cの後方側(画像形成装置1の後方側)には、ユーザが認証指を溝部7cに置いた状態でその認証指の指先で操作可能な押しボタン形式の操作部材79が設けられている。
【0082】
操作部材79は、操作パネル5に設けられた実行キー52aと同一の機能を有しており、ユーザがこの操作部材79を操作することにより、画像形成装置1においてユーザ認証が行われると共に、ジョブの実行が行われる。したがって、本実施形態では、実行キー52aは、操作パネル5だけでなく、生体情報読取装置7の一部であって、生体情報読取装置7がユーザの認証指から生体情報を読み取り可能な状態でその同じ認証指の指先でユーザが操作することができる位置にも設けられている。
【0083】
このように生体情報読取装置7の一部に操作パネル5の実行キー52aと同じ機能を有する操作部材79を上述した位置に設けることにより、生体情報読取装置7を操作パネル5とは別の位置に設置する場合でも、ユーザ認証を行う際にユーザが行う動作は、生体情報読取装置7の溝部7cに認証指を置く動作と、その認証指の指先で操作部材79(すなわち、実行キー52a)を操作する動作とを一連のひとつの動作として行うことができるので、操作性を向上させることができる。
【0084】
そして本実施形態のように生体情報読取装置7の一部に実行キー52aと同じ機能の操作部材79を設けることにより、ユーザ認証時における操作性の優れた生体情報読取装置7をひとつのユニットとして構成できるので、ワーキングテーブル9に設置する場合に限られず、画像形成装置1の任意の部分に独立して取り付けることが可能である。
【0085】
尚、生体情報読取装置7と操作パネル5との間での腕の移動を少なくするためには、本実施形態においても生体情報読取装置7をなるべく操作パネル5の近傍位置に設置しておくことが好ましい。
【0086】
また本実施形態において生体情報読取装置7の操作部材79(実行キー52a)が操作されたことに伴って行われる画像形成装置1の処理手順は第1の実施の形態又は第2の実施の形態で説明したものと同様である。
【0087】
さらに、本実施形態においても、第3の実施の形態及び第4の実施の形態で説明したように読取部70を前後方向に、或いは前後方向と左右方向の双方に揺動可能な構成としても良い。
【0088】
(変形例)
以上、本発明に関する幾つかの実施の形態について説明したが、本発明は上述した内容のものに限定されるものではない。
【0089】
例えば、上述の各実施形態では、画像形成装置1が、コピー機能、FAX機能、プリンタ機能、スキャナ機能などの複数の機能を備えた装置である場合を例示したが、本発明では必ずしも複数の機能を備えている必要はなく、複数の機能のうちの少なくとも1つの機能を備えていれば良い。
【0090】
またその他にも、上述した各実施形態に対し、本発明の範囲内において種々の変形例が適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1の実施の形態における画像形成装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】操作パネルと生体情報読取装置を示す図である。
【図3】ユーザ認証を行う際のユーザの認証指による操作態様の一例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態における画像形成装置の機能的な構成を示したブロック図である。
【図5】第1の実施の形態において画像形成装置のCPUによって実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態における画像形成装置の機能的な構成を示したブロック図である。
【図7】第2の実施の形態において画像形成装置のCPUによって実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施の形態において画像形成装置のCPUによって実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】第3の実施の形態において操作パネルの一部(生体情報読取装置が取り付けられた部分)を拡大した図である。
【図10】第3の実施の形態において生体情報読取装置に設けられた本体部の揺動機構の一例を示す断面図であり
【図11】第4の実施の形態において操作パネルの一部(生体情報読取装置が取り付けられた部分)を拡大した図である。
【図12】第4の実施の形態において生体情報読取装置に設けられた本体部の揺動機構(姿勢変動機構)の一例を示す断面図である。
【図13】第4の実施の形態において生体情報読取装置に設けられた本体部の揺動機構(姿勢変動機構)を示す断面図であり、図12とは異なる例を示す図である。
【図14】第5の実施の形態における画像形成装置の外観構成を示す斜視図である。
【図15】第5の実施の形態における生体情報読取装置を示す拡大図である。
【図16】従来の画像形成装置を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 画像形成装置
2 画像読取部
3 画像形成部
4 画像処理ユニット
5 操作パネル
7 生体情報読取装置(生体情報読取手段)
7a 本体部
7b 支持部
7c 溝部
10 CPU(制御手段)
11 メモリ(記憶手段)
52a 実行キー
70 読取部
79 操作部材(実行キー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理に関するジョブを実行する画像処理ユニットと、
前記画像処理ユニットによるジョブの実行を指示するために操作可能な実行キーと、
ユーザの手の指から生体情報を読み取る生体情報読取手段と、
前記生体情報読取手段から得られる生体情報に基づいてユーザ認証を行い、ユーザを特定することができた場合にジョブの実行を許可する制御手段と、
を備え、
前記実行キーは、前記生体情報読取手段がユーザの手の指から生体情報を読み取り可能な状態において、同じ指の指先で操作可能な位置に設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記実行キーが操作されたタイミングでユーザ認証を行うことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、初期状態において前記実行キーが操作されたタイミングでユーザ認証を行い、ユーザを特定することができた場合に画像処理に関する設定入力操作を受け付け、その後さらに前記実行キーが操作されたタイミングで再度ユーザ認証を行って同一のユーザを特定することができた場合に入力された設定情報を反映させて前記画像処理ユニットにジョブを実行させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定情報を記憶する記憶手段をさらに備えており、
前記制御手段は、再度ユーザ認証を行った際に同一のユーザを特定することがでなかった場合に、前記設定情報を前記記憶手段に保存することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、ユーザ認証を行ってユーザを特定することができたとき、特定されたユーザが入力した設定情報が前記記憶手段に保存されている場合、その設定情報を読み出して反映させることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記生体情報読取手段は、ユーザの手の指の指先を除く部分の静脈パターンを読み取ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記生体情報読取手段は、
ユーザの手の指から生体情報を読み取る読取部と、
前記読取部を支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は前記読取部を揺動可能に支持することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
ユーザが操作可能な操作パネルをさらに備えると共に、前記実行キーは前記操作パネルに設けられており、前記生体情報読取手段は、前記実行キーの前方側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記実行キーは、前記生体情報読取手段の一部に設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−277169(P2009−277169A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130341(P2008−130341)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】