説明

画像形成装置

【課題】 投影面上の画素密度の差異を是正し、投影面の形状によらず、どの位置から投影面を見ても、撓みや歪みのない自然な画像が観測されるように、投影面に画像を描画することのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 画像形成装置1は、非平面の投影面21を有するスクリーン2と、光出射部4から出射された光を反射する光反射部511eを備えた可動板511aが少なくとも一方向または互いに直交する二方向へ回動可能に設けられ、回動によって光反射部511eで反射した光を投影面21に走査するアクチュエータ51を備える光走査部5とを有し、投影面21上の画素密度を均一化するように、光出射部4からの光の出射タイミングを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、光を投影して画像を表示する画像形成装置として、特許文献1のような投射型プロジェクタが知られている。
特許文献1の投射型プロジェクタは、プロジェクタ本体をスクリーンに対して傾斜して配置した場合に、スクリーン上に映し出される画像(映像)の上側と下側とで、スクリーン横方向の長さが異なる「台形歪み」と呼ばれる歪みを補正する台形歪み補正手段を有している。
【0003】
しかしながら、特許文献1の投射型プロジェクタでは、平面のスクリーンに画像を投影する場合には、歪みが補正された自然な画像を形成することができるが、例えば、蒲鉾状に湾曲したような非平面状のスクリーンに画像を投影する場合には、スクリーンの各部位で、スクリーンに対する光の入射角およびプロジェクタ本体との離間距離が異なることとなり、これに起因してスクリーン上の画素密度(単位長さあたりの画素の数)が不均一になり、画像に歪みや撓みが発生し、自然な画像を形成することができない。
【0004】
より具体的に説明すれば、例えば、スクリーンの各部で光の入射角が異なる場合、平面スクリーンに画像を描画するときと同様にプロジェクタを作動させると、光の入射角が大きい部位の単位画素の大きさが、光の入射角が小さい部位の単位画素よりも大きくなってしまい、これによって画素密度(単位長さあたりの単位画素の数)の疎密が発生し、画像に歪みや撓みが生じる。
また、スクリーンの各部でプロジェクタ本体との離間距離が異なる場合についても、離間距離が大きい部位の単位画素の大きさが、離間距離が小さい部位の単位画素よりも大きくなってしまい、これによって画素密度の疎密が発生し、画像に歪みや撓みが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−249401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、投影面上の画素密度の差異を是正し、投影面の形状によらず、どの位置から投影面を見ても、撓みや歪みのない自然な画像が観測されるように、投影面に画像を描画することのできる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の画像形成装置は、非平面の投影面を有するスクリーンと、
光出射部から出射された光を反射する光反射部を備えた可動板が少なくとも一方向または互いに直交する二方向へ回動可能に設けられ、回動によって前記光反射部で反射した光を前記投影面に走査するアクチュエータを備える光走査部とを有し、
前記投影面上の画素密度を均一化するように、前記光出射部からの光の出射タイミングを変更することを特徴とする。
これにより、投影面の形状によらず、どの位置から投影面を見ても、撓みや歪みのない自然な画像を描画することができる。
【0008】
本発明の画像形成装置では、前記投影面上の前記光の走査方向における長さが、それぞれほぼ等しくなるような多数の単位照射領域を設定し、前記単位照射領域ごとに所望の色の前記光が走査されるよう前記出射タイミングを変更することが好ましい。
これにより、光走査面上に単位照射領域をほぼ均一に設定することができ、不本意な歪みや撓みのない自然な画像を描画することができる。
【0009】
本発明の画像形成装置では、前記投影面に対する前記光の入射角または前記光出射部との離間距離に起因する前記投影面上の前記画素密度の差異を是正するようなタイミングおよび出射時間で前記光を出射する前記光出射部の駆動パターンを生成する駆動パターン生成手段と、
前記駆動パターン生成手段により生成された前記駆動パターンに対応させて、前記光出射部の作動を制御する制御手段とを有し、
前記駆動パターン生成手段は、前記投影面の形状を特定する形状特定部と、該形状特定部により特定された前記投影面の形状に基づいて、前記投影面上での前記光の照射軌跡を設定する照射軌跡設定部と、設定された前記照射軌跡上に多数の単位照射領域を前記光の走査方向における長さが互いに等しくなるように設定する単位照射領域設定部と、前記多数の単位照射領域ごとに、その領域に照射される前記光の照射時間および強度を決定する光強度設定部と、該光強度設定部により設定された前記光の照射時間および強度に基づいて前記駆動パターンを生成する生成部とを有していることが好ましい。
これにより、比較的簡単な構成で、かつ、精度の高い光出射部の駆動パターンを生成することができる。
【0010】
本発明の画像形成装置では、前記駆動パターン生成手段は、前記多数の単位照射領域ごとに、その領域に照射される前記光の色を決定する色決定部をさらに有し、前記生成部は、該光強度設定部により設定された各前記単位照射領域における前記光の照射時間および強度と前記色決定部により決定された各前記単位照射領域における前記光の色とを対応付けることにより駆動パターンを生成することが好ましい。
これにより、より精度の高い光出射部の駆動パターンを生成することができる。
本発明の画像形成装置では、互いに直交するx軸、y軸およびz軸の3つの座標軸を想定し、該各座標軸に対応する前記投影面上の座標をx、yおよびzとしたとき、前記投影面が幾何学的形状をなすものであり、その形状が関数f(x、y、z)で表されるか、または近似することができる場合、前記形状特定部は、前記関数に基づいて前記投影面の形状を特定するよう構成されていることが好ましい。
これにより、より正確に投影面の形状を特定することができる。
【0011】
本発明の画像形成装置では、前記投影面が不規則に湾曲および/または屈曲した部位を有する形状をなす場合、前記形状特定部は、前記投影面を複数の多角形(ポリゴン)の集合体として定義し、各多角形の頂点の3次元座標から前記投影面の形状を特定するよう構成されていることが好ましい。
これにより、より正確に投影面の形状を特定することができる。
【0012】
本発明の画像形成装置では、前記駆動パターン生成手段は、前記単位照射領域に対する前記光の入射角が大きいほど、前記光出射部から出射される光の出射時間が短くなるような前記駆動パターンを生成することが好ましい。
これにより、より効果的に、投影面に、撓みや歪みのない自然な画像を描画することができる。
【0013】
本発明の画像形成装置では、前記駆動パターン生成手段は、前記単位照射領域と前記光出射部との離間距離が長いほど、前記光出射部から出射される光の出射時間が短くなるような前記駆動パターンを生成することが好ましい。
これにより、より効果的に、投影面に、撓みや歪みのない自然な画像を描画することができる。
【0014】
本発明の画像形成装置では、前記駆動パターン生成手段は、前記単位照射領域ごとに、その領域に照射される前記光の強度を変化させた前記駆動パターンを生成することが好ましい。
これにより、投影面に描画された画像に明暗のムラが生じてしまうことを抑制することができ、投影面に、より自然な画像を描画することができる。
【0015】
本発明の画像形成装置では、前記駆動パターン生成手段は、前記単位照射領域に対する前記光の照射時間に対応して、前記光出射部から出射される光の強度を変更するような前記駆動パターンを生成することが好ましい。
これにより、投影面に描画された画像に明暗のムラが生じてしまうことを抑制することができ、投影面に、より自然な画像を描画することができる。
【0016】
本発明の画像形成装置では、前記光走査部は、1対の前記アクチュエータを備え、
前記1対のアクチュエータは、それぞれ、前記可動板と、該可動板を回動可能に支持する支持部と、前記可動板と前記支持部とを連結する連結部と、前記可動板を回動させる駆動手段とを有しており、互いに、前記可動板の回動中心軸が直交するように設けられていることが好ましい。
これにより、比較的簡単な構成で、光出射部から出射した光を投影面に2次元的に走査することができる。
【0017】
本発明の画像形成装置では、前記光走査部は、前記アクチュエータの前記可動板の挙動を検知する挙動検知手段を有し、前記制御手段は、前記挙動検知手段の検知結果および前記駆動パターンに基づいて、前記光出射部の作動を制御することが好ましい。
これにより、より確実に、光出射部から光を投射するタイミングを導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す画像描画装置のブロック図である。
【図3】図2のアクチュエータを示す模式的斜視図である。
【図4】図3に示すコイルに印加する電圧の一例を示す図である。
【図5】図3のアクチュエータの駆動を示す模式的断面図である。
【図6】図2の駆動パターン生成手段を示すブロック図である。
【図7】図6の照射軌跡設定部が設定した照射軌跡を示す図である。
【図8】第2実施形態にかかる画像形成装置が備えるスクリーンを示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る画像描画装置が備えるアクチュエータを示す模式的平面図である。
【図10】図9中のB−B線断面図である。
【図11】図10に示すアクチュエータが備える駆動手段を示すブロック図である。
【図12】図11に示す第1の電圧発生部および第2の電圧発生部での発生電圧の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の画像形成装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の画像形成装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す構成図、図2は、図1に示す画像描画装置のブロック図、図3は、図2のアクチュエータを示す模式的斜視図、図4は、図3に示すコイルに印加する電圧の一例を示す図、図5は、図3のアクチュエータの駆動を示す模式的断面図、図6は、図2の駆動パターン生成手段を示すブロック図、図7は、図6の照射軌跡設定部が設定した照射軌跡を示す図である。なお、以下では、説明の便宜上、図3、図5中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」と言い、左側を「左」と言う。また、図1に示すように、互いに直交する3つの軸をそれぞれ、X軸、Y軸およびZ軸とする。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置1は、スクリーン2と、スクリーン2上に光(レーザ光)を走査し画像を形成する画像形成装置本体3とで構成される。このような画像形成装置1は、図示しない観測者が、いずれの場所からスクリーン2を見たときでも、歪みや撓みのない自然な画像が視認されるように、スクリーン2上に画像を描画するよう構成されている。以下、これらについて順次説明する。
【0021】
本実施形態のスクリーン2は、人間の顔面部分の形状をなしており、その形状および位置が実質的に一定に保たれている。また、スクリーン2は、顔面に当たる部分が画像形成装置本体3の方を向くようにして固定されていている。このようなスクリーン2の画像形成装置本体3側の表面は、画像形成装置本体3によってレーザ光が走査される光走査面(投影面)21を構成する。すなわち、スクリーン2は、非平面の光走査面21を有している。このようなスクリーン2を用いることにより、画像の視認性が向上する。例えば、光走査面21には、画像形成装置本体3により、光走査面21の形状に対応させた人間の顔が描画される。
【0022】
このようなスクリーン2の構成材料としては、実質的に形状を一定に保つことができれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、アクリル系樹脂、ABS樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
次に、画像形成装置本体3について説明する。
図2に示すように、画像形成装置本体3は、光を出射する光源ユニット(光出射部)4と、光源ユニット4から出射した光を光走査面21に走査する光走査部5と、光源ユニット4の駆動パターンを生成する駆動パターン生成手段7と、光源ユニット4の作動を制御する作動制御装置(制御手段)8とを有している。以下、これらについて順次説明する。
図2に示すように、光源ユニット4は、各色のレーザ光源41r、41g、41bと、各レーザ光源41r、41g、41bに対応して設けられたコリメータレンズ42r、42g、42bおよびダイクロイックミラー43r、43g、43bとを備えている。
【0024】
各色のレーザ光源41r、41g、41bは、それぞれ赤色、緑色、及び青色のレーザ光RR、GG、BBを射出する。レーザ光RR、GG、BBは、それぞれ、作動制御装置8から送信される駆動信号(後述する駆動パターンに対応する信号)に対応して変調された状態で射出され、コリメート光学素子であるコリメータレンズ42r、42g、42bによって平行化されて細いビームとされる。
ダイクロイックミラー43r、43g、43bは、それぞれ、赤色レーザ光RR、緑色レーザ光GG、青色レーザ光BBを反射する特性を有し、各色のレーザ光RR、GG、BBを結合して1つのレーザ光LLを射出する。
【0025】
なお、コリメータレンズ42r、42g、42bに代えてコリメータミラーを用いることができ、この場合も、平行光束の細いビームを形成することができる。また、各色のレーザ光源41r、41g、41bから平行光束が射出される場合、コリメータレンズ42r、42g、42bは、省略することができる。さらに、レーザ光源41r、41g、41bについては、同様の光束を発生する発光ダイオード等の光源に置換することができる。
【0026】
次に、光走査部5について説明する。
図2に示すように、光走査部5は、一対のアクチュエータ51、51と、各アクチュエータ51の挙動を検知する挙動検知手段52とを有している。なお、一対のアクチュエータ51、51は、互いに同様の構成であるため、以下では、一方のアクチュエータ51について代表して説明し、他方のアクチュエータ51については、その説明を省略する。
【0027】
図3に示すように、アクチュエータ51は、基体511と、基体511の下面に対向するよう設けられた対向基板513と、基体511と対向基板513との間に設けられたスペーサ部材512とを有している。
基体511は、可動板511aと、可動板511aを回動可能に支持する支持部511bと、可動板511aと支持部511bとを連結する1対の連結部511c、511dとを有している。
【0028】
可動板511aは、その平面視にて、略長方形状をなしている。このような可動板511aの上面には、光反射性を有する光反射部511eが設けられている。光反射部511eは、例えば、Al、Ni等の金属膜で構成されている。また、可動板511aの下面には、永久磁石514が設けられている。
支持部511bは、可動板511aの平面視にて、可動板511aの外周を囲むように設けられている。すなわち、支持部511bは、枠状をなしていて、その内側に可動板511aが位置している。
【0029】
連結部511cは、可動板511aの左側にて、可動板511aと支持部511bとを連結し、連結部511dは、可動板511aの右側にて、可動板511aと支持部511bとを連結する。
連結部511c、511dは、それぞれ、長手形状をなしている。また、連結部511c、511dは、それぞれ、弾性変形可能である。このような1対の連結部511c、511dは、互いに同軸的に設けられており、この軸(以下「回動中心軸J」と言う)を中心として、可動板511aが支持部511bに対して回動する。
【0030】
このような基体511は、例えば、シリコンを主材料として構成されていて、可動板511aと支持部511bと連結部511c、511dとが一体的に形成されている。このように、シリコンを主材料とすることにより、優れた回動特性を実現できるとともに、優れた耐久性を発揮することができる。また、微細な処理(加工)が可能であり、アクチュエータ51の小型化を図ることができる。
【0031】
スペーサ部材512は、枠状をなしていて、その上面が基体511の下面と接合している。また、スペーサ部材512は、可動板511aの平面視にて、支持部511bの形状とほぼ等しい。このようなスペーサ部材512は、例えば、各種ガラス、各種セラミックス、シリコン、SiOなどで構成されている。
対向基板513は、スペーサ部材512と同様に、例えば、各種ガラス、シリコン、SiOなどで構成されている。このような対向基板513の上面であって、可動板511aと対向する部位には、コイル515が設けられている。
【0032】
永久磁石514は、板棒状をなしていて、可動板511aの下面に沿って設けられている。このような永久磁石514は、可動板511aの平面視にて、回動中心軸Jに対して直交する方向に磁化(着磁)されている。すなわち、永久磁石514は、両極(S極、N極)を結んだ線分が、回動中心軸Jに対して直交するよう設けられている。図5では、回動中心軸Jの左側がN極、右側がS極となっている。
このような永久磁石514としては、特に限定されず、例えば、ネオジウム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石などを用いることができる。
【0033】
コイル515は、可動板511aの平面視にて、永久磁石514の外周を囲むように設けられている。このようなコイル515は、作動制御装置8と接続されていて、作動制御装置8により所定の電圧が印加される。
例えば、作動制御装置8によりコイル515に、図4に示すような交番電圧が印加されると、可動板511aの厚さ方向(図5中上下方向)の磁界が発生し、かつ、その磁界の向きが周期的に切り換わる。すなわち、コイル515の上側付近がS極、下側付近がN極となる状態Aと、コイル515の上側付近がN極、下側付近がS極となる状態Bとが交互に切り換わる。
【0034】
状態Aでは、図5(a)に示すように、永久磁石514の右側が、コイル515への通電により発生する磁界との反発力により上側へ変位するとともに、永久磁石514の左側が、前記磁界との吸引力により下側へ変位する。これにより、可動板511aが反時計回りに傾斜する。
反対に、状態Bでは、図5(b)に示すように、永久磁石514の右側が下側へ変位するとともに、永久磁石514の左側が上側へ変位する。これにより、可動板511aが時計回りに傾斜する。
このような状態Aと状態Bとを交互に繰り返すことにより、連結部511c、511dを捩り変形させながら、可動板511aが回動中心軸Jまわりに回動する。
【0035】
なお、このようなアクチュエータ51の構成としては、可動板511aを回動させることができれば、特に限定されず、いわゆる2自由度振動系のアクチュエータであってもよいし、コイル515と永久磁石514とを用いた電磁駆動にかえて、圧電素子を用いた圧電駆動や静電引力を用いた静電駆動としてもよい。
以上のような構成のアクチュエータ51、51は、図2に示すように、互いの回動中心軸Jが直交するように設けられている。これにより、比較的簡単な構成で、光源ユニット4から出射したレーザ光LLを光走査面21に2次元的に走査することができる。
【0036】
次に、挙動検知手段52について説明する。
なお、一方のアクチュエータ51の可動板511aの挙動を検知する手段と、他方のアクチュエータ51の可動板511aの挙動を検知する手段とは、互いに同様の構成であるため、一方のアクチュエータ51について代表して説明し、他方のアクチュエータについては、その説明を省略する。
【0037】
図3に示すように、挙動検知手段52は、アクチュエータ51の連結部321c上に設けられた圧電素子521と、圧電素子521から発生する起電力を検出する起電力検出部522と、起電力検出部522の検出結果に基づいて可動板511aの挙動を検知する挙動検知部523とを有している。
圧電素子521は、可動板511aの回動に伴って連結部511cが捩り変形すると、それに伴って変形し、その変形量に応じた大きさの起電力を発生する。
【0038】
挙動検知部523は、起電力検出部522で検出された起電力の大きさに基づいて、連結部511cの捩れの程度を求め、さらに、その捩れの程度から可動板511aの挙動(回動角)を検知する。挙動検知部523で検知された可動板511aの挙動情報の信号は、作動制御装置8に送信される。
このような挙動検知手段52は、可動板511aの挙動をリアルタイムで検知していてもよいし、例えば、所定のタイミング(時刻)で可動板511aの挙動を検知した後は、その検知タイミングと、コイル515に印加する交番電圧(波形や周波数)とに基づいて可動板511aの挙動を予測してもよい。
【0039】
なお、挙動検知手段52としては、可動板511aの挙動を検知することができれば、本実施形態のような圧電素子を用いたものに限定されず、例えば、フォトダイオードを用いてもよい。この場合には、例えば、可動板511aが所定の回動角となった時に、フォトダイオードが光を受光する(または、受光が遮られる)よう構成されていて、このフォトダイオードでの受光タイミング(または遮断タイミング)から可動板511aの挙動を検知するよう構成してもよい。
【0040】
次に、駆動パターン生成手段7について説明する。
図6に示すように、駆動パターン生成手段7は、光走査面21の形状を特定する形状特定部71と、アクチュエータ51等の3次元座標が格納された格納部72と、光走査面21上でのレーザ光LLの照射軌跡を設定する照射軌跡設定部73と、照射軌跡上に多数の単位照射領域を設定する単位照射領域設定部74と、単位照射領域ごとに、照射するレーザ光LLの色(各色の輝度)を決定する色決定部75と、単位照射領域ごとに、レーザ光LLの照射時間および強度を決定する光強度設定部76と、光源ユニット4の駆動パターンを生成する生成部77とを有している。
【0041】
形状特定部71は、スクリーン2の光走査面21の形状を複数の多角形(ポリゴン)の集合体として定義するとともに、各ポリゴンの頂点の3次元座標から光走査面21の形状を特定する。各頂点の3次元座標は、形状特定部71に格納される。前述したように、本実施形態の光走査面21は、人間の顔面形状をなし、不規則に湾曲または屈曲した部位を有しているため、このようにして光走査面21の形状を特定することにより、より正確に光走査面21の形状を特定することができる。言うまでもないが、ポリゴンの数が多いほど、より高精度に光走査面21の形状を特定することができる。また、1つのポリゴンは、通常三角形または四角形で構成されるが、五角形以上であっても構わない。なお、「3次元座標」とは、X軸、Y軸およびZ軸の3つの座標軸に対応する座標を言う。
【0042】
格納部72には、一対のアクチュエータ51、51間のレーザ光LLの光路と、一対のアクチュエータ51、51の3次元座標とが格納されている。
照射軌跡設定部73は、形状特定部71および格納部72に接続されている。このような照射軌跡設定部73は、形状特定部71から、光走査面21上の各頂点の3次元座標に関する信号を受信するとともに、格納部72から、前記レーザ光LLの光路および各アクチュエータ51、51の3次元座標に関する信号を受信する。照射軌跡設定部73は、これらの信号(情報)に基づいて、一対のアクチュエータ51、51と光走査面21との相対的位置関係を求める。
【0043】
さらに、照射軌跡設定部73は、前述した挙動検知手段52に接続されていて、この挙動検知手段52から各可動板511aの挙動に関する信号を受信する。この信号と前記相対的位置関係とによれば、一対の可動板511a、511aのそれぞれの傾きと、その傾きの時に光源ユニット4から出射されたレーザ光LLが投射される光走査面21上の部位とを対応付けることができる。
【0044】
そのため、照射軌跡設定部73は、光源ユニット4からレーザ光LLが連続して出射されたと仮定した場合の光走査面21上におけるレーザ光LLの照射軌跡(通り道)を求めることができ、求めた照射軌跡を記録(設定)する。すなわち、照射軌跡設定部73は、レーザ光LLが光走査面21上をどのように走査されるのかを記録する。以下では、説明の便宜上、図7に示す照射軌跡Rについて代表して説明するが、照射軌跡が照射軌跡Rに限定されないのは言うまでもない。また、照射軌跡Rの始点を「始点R」とし、終点を「終点R」とする(ただし、nは自然数である)。
【0045】
単位照射領域設定部74は、照射軌跡設定部73に記録された照射軌跡Rに基づいて、その照射軌跡R上に、照射軌跡R上の長さ(すなわち、レーザ光LLの走査方向の長さ)がそれぞれ等しくなるように、多数の単位照射領域S、S…Sn−1を設定する。なお、本願明細書中の「単位照射領域」とは、レーザ光LLが照射される領域を意味し、単位照射領域ごとにレーザ光LLを照射することにより、光走査面21に所望の画像が描画される。このように、多数の単位照射領域S〜Sn−1を設定することにより、光走査面21上に単位照射領域S〜Sn−1をほぼ均一に設定することができ(すなわち、画素密度を均一化することができ)、これにより、画素密度の差異を是正し、不本意な歪みおよび撓みのない自然な画像を描画することができる。なお、「画素密度」とは、照射軌跡R上の単位長さあたりに存在する単位照射領域の数を意味する。
ここで、単位照射領域S〜Sn−1の設定の仕方の一例を説明するが、単位照射領域S〜Sの設定の仕方としては、これに限定されるものではない。
【0046】
本実施形態の単位照射領域設定部74は、照射軌跡設定部73で設定された照射軌跡Rに基づいて、始点Rの3次元座標を求める。次いで、単位照射領域設定部74は、照射軌跡Rに基づいて、始点Rから所定長さ(以下、この長さを「長さL」と言う)分だけ照射軌跡Rを走査方向に移動した点Rの3次元座標を求める。単位照射領域設定部74は、照射軌跡R上の始点Rと点Rの間の領域を単位照射領域Sとして設定する。
【0047】
これと同様にして、単位照射領域設定部74は、点Rから照射軌跡R上を走査方向に長さLだけ移動した点Rの3次元座標を求め、照射軌跡R上の点Rと点Rの間の領域を単位照射領域Sとして設定する。このようにして、単位照射領域設定部74は、照射軌跡R上の全域にわたって(すなわち始点Rから終点Rの間で)、単位照射領域S〜Sn−1を設定する。このような方法によれば、正確かつ簡単に単位照射領域S〜Sn−1を設定することができる。
【0048】
以上のような単位照射領域設定部74によれば、光走査面21に描画される画像に求められる品位(解像度)に応じて長さLを適宜変更し、画像の品位に対応した数の単位照射領域を簡単に設定することができるため、極めて効率的に光走査面21に所望の画像(すなわち、撓みや歪みの抑制された画像)を描画することができる。単位照射領域の数としては、光走査面21の大きさや形状、描画する画像に求められる品位等によって異なるが、10万〜1000万(例えば横640×縦480)であることが好ましい。
【0049】
なお、本実施形態では、隣り合う一対の単位照射領域(例えば単位照射領域S、S)を、実質的に間隔を隔てずに設定したものについて説明したが、これに限定されず、隣り合う一対の単位照射領域の間を隔てて設定してもよい。この場合、各間隔は、それぞれ等しいことが好ましい。
色決定部75は、図示しない外部装置から入力された画像情報(信号)に基づいて、単位照射領域S〜Sn−1ごとに、その領域に表示する各色の輝度を決定する。例えば、色決定部75は、画像情報に対応した画像を光走査面21に仮想的に形成し、各単位照射領域S〜Sn−1に対応する部位に表示されている各色の輝度を特定することにより、前記各色の輝度の決定を行ってもよい。
【0050】
一方、光強度設定部76は、単位照射領域S〜Sn−1ごとに、その領域に照射されるレーザ光LLの照射時間および強度を決定する。以下、レーザ光LLの強度を決定する方法の一例を説明する。
まず、光強度設定部76は、単位照射領域Sの両端に位置する一対の点R、Rの3次元座標をそれぞれ単位照射領域設定部74から読み出す。次いで、光強度設定部76は、挙動検知手段52から送信される各可動板511a、511aの挙動に関する信号に基づいて、光源ユニット4から出射されたレーザ光LLが、単位照射領域Sの走査方向上流側の端に位置する点Rに照射されてから、下流側の端に位置するRに照射されるまでの時間(すなわち、照射時間)を求める。光強度設定部76は、これと同様にして、その他の単位照射領域S〜Sn−1についてもそれぞれ照射時間を求める。
【0051】
次いで、光強度設定部76は、単位照射領域S(mは1からn−1までの整数)における照射時間をT、レーザ光LLの最大強度をPMとしたとき、(T×PM)の値が等しくなるように、単位照射領域ごとにレーザ光LLの最大強度PMを決定(変更)する。ここで、レーザ光LLの最大強度PMとは、単位照射領域Sの光輝度を階調表現する場合の最大値である。例えば、単位照射領域Sに256段階の輝度レベルの中で、127段階目の輝度を表示したい場合には、レーザ光LLの強度Pは、最大輝度PMの0.5倍となる。また、単位照射領域Sの照射時間が、単位照射領域Sの照射時間の2倍である場合には、単位照射領域Sに照射されるレーザ光LLの最大強度PM1は、単位照射領域Sに照射されるレーザ光LLの最大強度PM2の0.5倍となる。
【0052】
すなわち、光強度設定部76は、照射時間に対応してレーザ光LLの最大強度を決定し、照射時間が長いほどレーザ光LLの最大強度を小さくするよう構成されている。
このように、単位照射領域ごとにレーザ光LLの最大強度PMを決定することにより、各単位照射領域S1〜Sn−1に照射される光量の最大値をそれぞれほぼ等しくすることができる。その結果、画像に明暗のムラが生じてしまうことを抑制することができ、光走査面21に、より自然な画像を描画することができる。
【0053】
生成部77は、色決定部75および光強度設定部76に接続されている。この生成部77は、色決定部75から各単位照射領域S〜Sn−1についての各色の輝度情報に関する信号を受信するとともに、光強度設定部76から各単位照射領域S〜Sn−1についてのレーザ光LLの照射時間および最大強度に関する信号を受信し、これら信号に基づいて、各単位照射領域S〜Sn−1について、それぞれ、その領域に照射するレーザ光LLの照射時間および各色レーザ光LLの強度を対応付け、これを駆動パターンとして生成する。生成された駆動パターンに関する信号は、作動制御装置8に送信される。
【0054】
ここで、単位照射領域に対するレーザ光LLの入射角(平均入射角)が大きいほど、レーザ光LLが単位照射領域の走査方向上流側の点から下流側の点まで走査されるのに必要な時間が短くなる。そのため、生成部77では、単位照射領域に対するレーザ光LLの入射角が大きいほど、その領域にレーザ光LLを照射する時間(照射時間)が短くなるような駆動パターンが生成されることとなる。これにより、より効果的に、光走査面21上に、撓みや歪みのない自然な画像を描画することができる。
【0055】
また、単位照射領域と光源ユニット4との離間距離が長いほど、すなわち、レーザ光LLの光路が長いほど、レーザ光LLが単位照射領域の走査方向上流側の点から下流側の点まで走査されるのに必要な時間が短くなる。そのため、生成部77では、単位照射領域と光源ユニット4との離間距離が長いほど、その領域にレーザ光LLを照射する時間が短くなるような駆動パターンが生成される。これにより、より効果的に、光走査面21上に、撓みおよび歪みのない自然な画像を描画することができる。
以上のような構成の駆動パターン生成手段7によれば、比較的簡単な構成で、かつ、精度の高い光源ユニット4の駆動パターンを生成することができる。
【0056】
作動制御装置8は、格納部72と接続されていて、格納部72から前述した一対のアクチュエータ51、51間のレーザ光LLの光路と、一対のアクチュエータ51、51の3次元座標とに関する信号を受信する。これにより、一対のアクチュエータ51、51と各点R〜Rとの相対的位置関係を導くことができ、各可動板511a、511aの傾きと、その傾きの時に光源ユニット4から出射されたレーザ光LLが投射される光走査面21上の部位とを対応付けることができる。
【0057】
さらに、作動制御装置8は、挙動検知手段52から一対の可動板511a、511aの挙動に関する信号を受信している。そのため、生成部77で生成された駆動パターンに対応させて、例えば、一対の可動板511a、511aのそれぞれの傾きが点Rに対応するものとなるとほぼ同時に、単位照射領域Sと対応付けられた、照射時間および各色の強度でレーザ光LLの出射を開始し、単位照射領域Sへのレーザ光LLの照射が終了すると同時に、単位照射領域Sと対応付けられた照射時間および各色の強度でレーザ光LLの出射を開始し、単位照射領域S以降についてもこれと同様に光源ユニット4を作動させる。これにより、光走査面21に、歪みや撓みのない自然な画像を描画することができ、観測者は、どの位置から光走査面21を観測しても、自然な画像を観測することができる。
【0058】
以上のような画像形成装置1によれば、光走査面21の形状に応じて、レーザ光LLを照射する領域である単位照射領域を多数設定し、その単位照射領域に所望の色のレーザ光LLを投射するよう構成されているため、光走査面21に対するレーザ光LLの入射角および光源ユニット4と各単位照射領域との離間距離に起因する画素密度の差異を是正することができ、自然な画像を光走査面21上に描画することができる。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態について説明する。
図8は、第2実施形態にかかる画像形成装置が備えるスクリーンを示す図である。
以下、第2実施形態の画像表示装置について、前述した実施形態の画像表示装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第2実施形態にかかる画像形成装置は、スクリーンの形状が異なる以外は、第1実施形態の画像形成装置とほぼ同様である。また、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0060】
図8に示すように、画像形成装置1Aが有するスクリーン2Aは、略球状をなしていて、その表面が光走査面21Aを構成している。このような場合には、互いに直交する3つの軸をそれぞれ、X軸、Y軸およびZ軸とし、各座標軸に対応する光走査面21A上の座標をx、yおよびzとしたとき、光走査面21Aの形状は、関数(x、y、z)で表すことができる。例えば、スクリーン2Aの中心点の座標が(x、y、z)で、半径がrの場合には、光走査面21Aは、(x−x+(y−y+(z−z=rで表すことができる。
【0061】
そのため、駆動パターン生成手段7の形状特定部71には、前記関数が記録されており、この関数に基づいて光走査面21の形状を特定するように構成されている。これによれば、より正確に光走査面21の形状を特定することができる。なお、光走査面21Aの形状を関数(x、y、z)で近似することができる場合にも、関数(x、y、z)に基づいて、光走査面21の形状を特定することができる。
このような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0062】
<第3実施形態>
次に、本発明の画像形成装置の第3実施形態について説明する。
図9は、本発明の第3実施形態に係る画像描画装置が備えるアクチュエータを示す模式的平面図、図10は、図9中のB−B線断面図、図11は、図10に示すアクチュエータが備える駆動手段を示すブロック図、図12は、図11に示す第1の電圧発生部および第2の電圧発生部での発生電圧の一例を示す図である。なお、以下では、説明の便宜上、図9中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図10中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0063】
以下、第3実施形態の画像表示装置について、前述した実施形態の画像表示装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第3実施形態にかかる画像形成装置は、画像描画装置の光走査部が備えるアクチュエータの構成が異なる以外は、第1実施形態の画像形成装置とほぼ同様である。また、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
光走査部5は、1つのアクチュエータ53を有している。
【0064】
アクチュエータ53は、図9に示すような第1の振動系54aと第2の振動系54bと支持部54cとを備える基体54と、基体54と対向配置された対向基板56と、基体54と対向基板56との間に設けられたスペーサ部材55と、永久磁石57と、コイル58とを備えている。
第1の振動系54aは、枠状の支持部54cの内側に設けられた枠状の駆動部541aと、駆動部541aを支持部54cに両持ち支持する1対の第1の連結部542a、543aとで構成されている。
【0065】
第2の振動系54bは、駆動部541aの内側に設けられた可動板541bと、可動板541bを駆動部541aに両持ち支持する1対の第2の連結部542b、543bとで構成されている。
駆動部541aは、図9の平面視にて、円環状をなしている。なお、駆動部541aの形状は、枠状をなしていれば特に限定されず、例えば、図9の平面視にて、四角環状をなしていてもよい。このような駆動部541aの下面には、永久磁石57が接合されている。
【0066】
第1の連結部542a、543aは、それぞれ、長手形状をなしており、弾性変形可能である。第1の連結部542a、543aは、それぞれ、駆動部541aを支持部54cに対して回動可能とするように、駆動部541aと支持部54cとを連結している。このような、第1の連結部542a、543aは、互いに同軸的に設けられており、この軸(以下、「回動中心軸J1」という)を中心として、駆動部541aが支持部54cに対して回動するように構成されている。
【0067】
第1の連結部542aには、可動板541bの挙動(回動中心軸J1まわりの回動角)を検知するための圧電素子521が設けられている。
可動板541bは、図9の平面視にて、円形状をなしている。だたし、可動板541bの形状は、駆動部541aの内側に形成することができれば特に限定されず、例えば、図9の平面視にて、楕円形状をなしていてもよいし、四角形状をなしていてもよい。このような可動板541bの上面には、光反射性を有する光反射部544bが形成されている。
【0068】
第2の連結部542b、543bは、それぞれ、長手形状をなしており、弾性変形可能である。第2の連結部542b、543bは、それぞれ、可動板541bを駆動部541aに対して回動可能とするように、可動板541bと駆動部541aとを連結している。このような第2の連結部542b、543bは、互いに同軸的に設けられており、この軸(以下、「回動中心軸J2」という)を中心として、可動板541bが駆動部541aに対して回動するように構成されている。
第2の連結部542bには、可動板541bの挙動(回動中心軸J2まわりの回動角)を検知するための圧電素子521が設けられている。
【0069】
図9に示すように、回動中心軸J1と回動中心軸J2とは、互いに直交している。また、駆動部541aおよび可動板541bの中心は、それぞれ、図9の平面視にて、回動中心軸J1と回動中心軸J2との交点上に位置している。なお、以下、説明の便宜上、回動中心軸J1と回動中心軸J2との交点を「交点G」ともいう。
図10に示すように、以上のような基体54は、スペーサ部材55を介して対向基板56と接合している。対向基板56の上面には、永久磁石57に作用する磁界を発生させるコイル58が設けられている。
【0070】
永久磁石57は、図9の平面視にて、交点Gを通り、回動中心軸J1および回動中心軸J2のそれぞれの軸に対して傾斜した線分(以下、この線分を「線分M」と言う)に沿って設けられている。
このような永久磁石57は、交点Gに対して長手方向の一方側がS極、他方側がN極となっている。図10では、永久磁石57の長手方向の左側がS極、右側がN極となっている。
【0071】
図9の平面視にて、線分Mの回動中心軸Xに対する傾斜角θは、30〜60度であるのが好ましく、40〜50度であるのがより好ましく、ほぼ45度であるのがさらに好ましい。このように永久磁石57を設けることで、円滑に、可動板541bを回動中心軸J1および回動中心軸J2のそれぞれの軸まわりに回動させることができる。本実施形態では、線分Mは、回動中心軸Xおよび回動中心軸Yのそれぞれの軸に対して約45度傾斜している。
また、図10に示すように、永久磁石57の上面には、凹部57aが形成されている。この凹部57aは、永久磁石57と可動板541bとの接触を防止するための逃げ部である。このような凹部57aを形成することで、可動板541bが回動中心軸J2まわりに回動する際、永久磁石57と接触してしまうことを防止することができる。
【0072】
図9に示すように、コイル58は、図9の平面視にて、駆動部541aの外周を囲むように形成されている。これにより、アクチュエータ53の駆動の際、駆動部541aとコイル58との接触を確実に防止することができる。その結果、コイル58と永久磁石57との離間距離を比較的短くすることができ、コイル58から発生する磁界を効率的に永久磁石57に作用させることができる。
コイル58は、電圧印加手段59と電気的に接続されていて、電圧印加手段59によりコイル58に電圧が印加されると、コイル58から回動中心軸J1および回動中心軸J2のそれぞれの軸に直交する軸方向の磁界が発生する。
【0073】
図11に示すように、電圧印加手段59は、可動板541bを回動中心軸J1まわりに回動させるための第1の電圧V1を発生させる第1の電圧発生部591と、可動板541bを回動中心軸J2まわりに回動させるための第2の電圧V2を発生させる第2の電圧発生部592と、第1の電圧V1と第2の電圧V2とを重畳し、その電圧をコイル58に印加する電圧重畳部593とを備えている。
【0074】
第1の電圧発生部591は、図12(a)に示すように、周期T1で周期的に変化する第1の電圧V1(垂直走査用電圧)を発生させるものである。
第1の電圧V1は、鋸波のような波形をなしている。そのため、アクチュエータ53は、効果的に光を垂直走査(副走査)することができる。なお、第1の電圧V1の波形は、これに限定されない。ここで、第1の電圧V1の周波数(1/T1)は、垂直走査に適した周波数であれば、特に限定されないが、30〜80Hz(60Hz程度)であるのが好ましい。
【0075】
本実施形態では、第1の電圧V1の周波数は、駆動部541aと1対の第1の連結部542a、543aとで構成された第1の振動系54aのねじり共振周波数と異なる周波数となるように調整されている。
一方、第2の電圧発生部592は、図12(b)に示すように、周期T1と異なる周期T2で周期的に変化する第2の電圧V2(水平走査用電圧)を発生させるものである。
【0076】
第2の電圧V2は、正弦波のような波形をなしている。そのため、アクチュエータ53は効果的に光を主走査することができる。なお、第2の電圧V2の波形は、これに限定されない。
このような第2の電圧V2の周波数は、第1の電圧V1の周波数よりも高いのが好ましい。これにより、より確実かつより円滑に、可動板541bを回動中心軸J1まわりに第1の電圧V1の周波数で回動させつつ、回動中心軸J2まわりに第2の電圧V2の周波数で回動させることができる。
【0077】
また、第2の電圧V2の周波数は、第1の電圧V1の周波数と異なり、かつ、水平走査に適した周波数であれば、特に限定されないが、10〜40kHzであるのが好ましい。このように、第2の電圧V2の周波数を10〜40kHzとし、前述したように第1の電圧V1の周波数を60Hz程度とすることで、スクリーンでの描画に適した周波数で、可動板541bを回動中心軸J1および回動中心軸J2のそれぞれの軸まわりに回動させることができる。ただし、可動板541bを回動中心軸J1および回動中心軸J2のそれぞれの軸まわりに回動させることができれば、第1の電圧V1の周波数と第2の電圧V2の周波数との組み合わせなどは、特に限定されない。
【0078】
本実施形態では、第2の電圧V2の周波数は、可動板541bと1対の第2の連結部542b、543bとで構成された第2の振動系54bのねじり共振周波数と等しくなるように調整されている。これにより、可動板541bの回動中心軸J2まわりの回動角を大きくすることができる。
また、第1の振動系54aの共振周波数をf[Hz]とし、第2の振動系54bの共振周波数をf[Hz]としたとき、fとfとが、f>fの関係を満たすことが好ましく、f≧10fの関係を満たすことがより好ましい。これにより、より円滑に、可動板541bを回動中心軸J1まわりに第1の電圧V1の周波数で回動させつつ、回動中心軸J2まわりに第2の電圧V2の周波数で回動させることができる。
【0079】
第1の電圧発生部591および第2の電圧発生部592は、それぞれ、作動制御装置8に接続され、この作動制御装置8からの信号に基づき駆動する。このような第1の電圧発生部591および第2の電圧発生部592には、電圧重畳部593が接続されている。
電圧重畳部593は、コイル58に電圧を印加するための加算器593aを備えている。加算器593aは、第1の電圧発生部591から第1の電圧V1を受けるとともに、第2の電圧発生部592から第2の電圧V2を受け、これらの電圧を重畳しコイル58に印加するようになっている。
以上のような構成のアクチュエータ53は、次のようにして駆動する。
【0080】
例えば、図12(a)に示すような第1の電圧V1と、図12(b)に示すような電圧V2とを電圧重畳部593にて重畳し、重畳した電圧をコイル58に印加する(この重畳された電圧を「電圧V3」ともいう)。
すると、電圧V3中の第1の電圧V1に対応する電圧によって、永久磁石57のS極側をコイル58に引き付けようとするとともに、N極側をコイル58から離間させようとする磁界と、永久磁石57のS極側をコイル58から離間させようとするとともに、N極側をコイル58に引き付けようとする磁界とが交互に切り換わる。これにより、第1の連結部542a、543aを捩れ変形させつつ、駆動部541aが可動板541bとともに、第1の電圧V1の周波数で回動中心軸J1まわりに回動する。
【0081】
なお、第1の電圧V1の周波数は、第2の電圧V2の周波数に比べて極めて低く設定されており、また、第1の振動系54aの共振周波数は、第2の振動系54bの共振周波数よりも低く設計されている。そのため、第1の振動系54aは、第2の振動系54bよりも振動しやすくなっており、第1の電圧V1によって、可動板541bが回動中心軸J2まわりに回動してしまうことを防止することができる。
【0082】
一方、電圧V3中の第2の電圧V2に対応する電圧によって、永久磁石57のS極側をコイル58に引き付けようとするとともに、N極側をコイル58から離間させようとする磁界と、永久磁石57のS極側をコイル58から離間させようとするとともに、N極側をコイル58に引き付けようとする磁界とが交互に切り換わる。これにより、第2の連結部542b、543bを捩れ変形させつつ、可動板541bが第2の電圧V2の周波数で回動中心軸J2まわりに回動する。
【0083】
なお、第2の電圧V2の周波数が第2の振動系54bのねじり共振周波数と等しいため、第2の電圧V2によって、支配的に、可動板541bを回動中心軸J2まわりに回動させることができる。そのため、第2の電圧V2によって、可動板541bが回動中心軸J1まわりに回動してしまうことを防止することができる。
以上のようなアクチュエータ53によれば、1つのアクチュエータで2次元的に光を走査でき、光走査部5の省スペース化を図ることができる。また、例えば、第1実施形態のように一対のアクチュエータを用いる場合には、アクチュエータ同士の相対的位置関係を高精度に設定しなければならないが、本実施形態ではその必要がないため、製造の容易化を図ることができる。
【0084】
このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
以上、本発明の画像形成装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の画像形成装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
また、前述した実施形態では、画像形成装置本体がスクリーン上に画像を描画するものについて説明したが、これに限定されず、例えば、岩、壁などに画像を描画してもよい。また、光走査面の形状としては、特に限定されず、例えば、平面状をなすものであってよい。
【符号の説明】
【0085】
1、1A……画像形成装置 2、2A……スクリーン 21、21A……光走査面 3……画像形成装置本体 4……光源ユニット(光出射部) 41r、41g、41b……レーザ光源 42r、42g、42b……コリメータレンズ 43r、43g、43b……ダイクロイックミラー 5……光走査部 51……アクチュエータ 511……基体 511a……可動板 511b……支持部 511c、511d……連結部 511e……光反射部 512……スペーサ部材 513……対向基板 514……永久磁石 515……コイル 52……挙動検知手段 521……圧電素子 522……起電力検出部 523……挙動検知部 53……アクチュエータ 54……基体 54a……第1の振動系 541a……駆動部 542a、543a……第1の連結部 54b……第2の振動系 541b……可動板 542b、543b……第2の連結部 544b……光反射部 54c……支持部 55……スペーサ部材 56……対向基板 57……永久磁石 57a……凹部 58……コイル 59……電圧印加手段 591……第1の電圧発生部 592……第2の電圧発生部 593……電圧重畳部 593a……加算器 7……駆動パターン生成手段 71……形状特定部 72……格納部 73……照射軌跡設定部 74……単位照射領域設定部 75……色決定部 76……光強度設定部 77……生成部 8……作動制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非平面の投影面を有するスクリーンと、
光出射部から出射された光を反射する光反射部を備えた可動板が少なくとも一方向または互いに直交する二方向へ回動可能に設けられ、回動によって前記光反射部で反射した光を前記投影面に走査するアクチュエータを備える光走査部とを有し、
前記投影面上の画素密度を均一化するように、前記光出射部からの光の出射タイミングを変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記投影面上の前記光の走査方向における長さが、それぞれほぼ等しくなるような多数の単位照射領域を設定し、前記単位照射領域ごとに所望の色の前記光が走査されるよう前記出射タイミングを変更する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記投影面に対する前記光の入射角または前記光出射部との離間距離に起因する前記投影面上の前記画素密度の差異を是正するようなタイミングおよび出射時間で前記光を出射する前記光出射部の駆動パターンを生成する駆動パターン生成手段と、
前記駆動パターン生成手段により生成された前記駆動パターンに対応させて、前記光出射部の作動を制御する制御手段とを有し、
前記駆動パターン生成手段は、前記投影面の形状を特定する形状特定部と、該形状特定部により特定された前記投影面の形状に基づいて、前記投影面上での前記光の照射軌跡を設定する照射軌跡設定部と、設定された前記照射軌跡上に多数の単位照射領域を前記光の走査方向における長さが互いに等しくなるように設定する単位照射領域設定部と、前記多数の単位照射領域ごとに、その領域に照射される前記光の照射時間および強度を決定する光強度設定部と、該光強度設定部により設定された前記光の照射時間および強度に基づいて前記駆動パターンを生成する生成部とを有している請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記駆動パターン生成手段は、前記多数の単位照射領域ごとに、その領域に照射される前記光の色を決定する色決定部をさらに有し、前記生成部は、該光強度設定部により設定された各前記単位照射領域における前記光の照射時間および強度と前記色決定部により決定された各前記単位照射領域における前記光の色とを対応付けることにより駆動パターンを生成する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
互いに直交するx軸、y軸およびz軸の3つの座標軸を想定し、該各座標軸に対応する前記投影面上の座標をx、yおよびzとしたとき、前記投影面が幾何学的形状をなすものであり、その形状が関数f(x、y、z)で表されるか、または近似することができる場合、前記形状特定部は、前記関数に基づいて前記投影面の形状を特定するよう構成されている請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記投影面が不規則に湾曲および/または屈曲した部位を有する形状をなす場合、前記形状特定部は、前記投影面を複数の多角形(ポリゴン)の集合体として定義し、各多角形の頂点の3次元座標から前記投影面の形状を特定するよう構成されている請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記駆動パターン生成手段は、前記単位照射領域に対する前記光の入射角が大きいほど、前記光出射部から出射される光の出射時間が短くなるような前記駆動パターンを生成する請求項3ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記駆動パターン生成手段は、前記単位照射領域と前記光出射部との離間距離が長いほど、前記光出射部から出射される光の出射時間が短くなるような前記駆動パターンを生成する請求項3ないし7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記駆動パターン生成手段は、前記単位照射領域ごとに、その領域に照射される前記光の強度を変化させた前記駆動パターンを生成する請求項3ないし8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記駆動パターン生成手段は、前記単位照射領域に対する前記光の照射時間に対応して、前記光出射部から出射される光の強度を変更するような前記駆動パターンを生成する請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記光走査部は、1対の前記アクチュエータを備え、
前記1対のアクチュエータは、それぞれ、前記可動板と、該可動板を回動可能に支持する支持部と、前記可動板と前記支持部とを連結する連結部と、前記可動板を回動させる駆動手段とを有しており、互いに、前記可動板の回動中心軸が直交するように設けられている請求項1ないし10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記光走査部は、前記アクチュエータの前記可動板の挙動を検知する挙動検知手段を有し、前記制御手段は、前記挙動検知手段の検知結果および前記駆動パターンに基づいて、前記光出射部の作動を制御する請求項1ないし11のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−134469(P2010−134469A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1523(P2010−1523)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【分割の表示】特願2008−20344(P2008−20344)の分割
【原出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】