説明

画像形成装置

【課題】中間転写ベルト等について適正な寿命判断を行う。
【解決手段】中間転写ベルト表面上における互いに異なる複数の位置の反射光量を検
知するための光学式センサ110により検知した各位置の反射光量のバラツキを示す
指標値である初期時バラツキ指標値M_disp(ini)と現在バラツキ指標値M_disp(current)との差を求め、この差が寿命判定値αを越えている場合には、中間転写ベルト101が寿命に達したと判断する。これにより、より適正な寿命判断を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に係り、詳しくは、像担持体上に担持された画像を最終的に記録材へ転写する画像形成装置、あるいは、周回移動する表面に記録材を担持して搬送する記録材搬送部材を有し、その記録材搬送部材により搬送された記録材へ像担持体上に担持された画像を最終的に転写する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置としては、例えば、感光体等の潜像担持体上に形成したトナー像を記録材へ直接的に転写するのではなく、中間転写体上に一旦転写してから最終的に記録材へ転写するものが知られている。中間転写体は、繰り返し使用されることで、潜像担持体や中間転写体クリーニング装置などの当接部材との摺擦により、表面に無数の傷が発生して劣化する。また、トナー像を潜像担持体から中間転写体へ一次転写させる際やトナー像を中間転写体から記録材等へ二次転写させる際に生じる放電生成物や記録材の破片(紙片等)などが中間転写体表面に付着することでも、中間転写体は劣化する。中間転写体にこのような劣化が生じてくると、転写性が悪化し、本来の画像品質を保つことができなくなる。そのため、中間転写体は、定期的に交換せざるを得ないのが一般的であり、通常は消耗品として取り扱われる。
【0003】
中間転写体を交換する従来の画像形成装置においては、中間転写体の交換時期が到来したことを何らかの手段によりユーザーへ報知する。これにより、その報知を受けたユーザーは中間転写体を交換するための作業を行うことになる。中間転写体の交換時期は、前回の交換時からのプリント枚数や使用時間を基準とする場合が多いので、一般には次のような処理が行われる。すなわち、プリント枚数や使用時間を画像形成装置本体でカウントし、そのカウント値が所定の値に達したときに、画像形成装置本体の操作パネル等に交換時期を知らせる画像を表示したり、交換時期を知らせる警告灯を点滅させたりする。そして、中間転写体を交換したら、そのカウント値をゼロにリセットする。
【0004】
ところが、中間転写体の劣化度合いは、画像形成装置の使用環境や使用状態によって大きく異なり、必ずしもプリント枚数や使用時間だけで正確に判断することができない。そのため、中間転写体の交換時期をプリント枚数や使用時間だけで判断する従来の画像形成装置では、中間転写体の劣化度合いに応じた適切な交換時期をユーザーへ報知することはできない。しかも、通常、本来の交換時期が到来する前に交換時期がユーザーへ報知されるように、中間転写体が劣化しやすい使用環境や使用状況を想定して中間転写体の交換時期を報知するように設定される。したがって、従来の画像形成装置では、その使用環境や使用状態によっては、未だ十分に使用可能な中間転写体であっても交換されてしまうような事態が起こり得る。
【0005】
特許文献1には、中間転写体の表面特性を光学式センサによって検出し、その検出値と機械固有の閾値とを比較した結果と、中間転写体の使用時間や走行距離の検出結果とを併用して、中間転写体の寿命(交換時期)を判断する画像形成装置が記載されている。具体的には、中間転写体の表面状態を示す指標値として光学式センサにより反射光量を検知し、その検知結果(センサの出力電圧)が所定の閾値よりも小さいときには、中間転写体が寿命に達した(交換時期が到来した)と判断し、所定の閾値以上であれば、プリント枚数に応じた中間転写体の寿命判断を行う。特許文献1の記載によれば、中間転写体の劣化度合いを決定付ける最終的な要因である中間転写体の表面状態の検知結果を中間転写体の寿命判断に用いているので、適切な寿命の特定精度が向上するとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、初期時の中間転写体の表面状態は均一なものであるが、繰り返しの使用により劣化が進むにつれて、中間転写体の表面状態は不均一な状態へと徐々に遷移していくことが確認されている。より詳しくは、中間転写体の表面は、その全面が一律に同じように劣化していくわけではなく、その表面位置によって劣化度合いが相違し、表面位置間における劣化度合いの差は、劣化が進むにつれて徐々に大きくなる。よって、劣化が進んだ中間転写体では、その表面位置によって表面状態が大きく異なり、そのため、光学式センサにより検知される表面部分の違いによって、その光学式センサの反射光量は大きく異なってくる。これにより、上記特許文献1に記載の画像形成装置のように中間転写体の表面状態を示す指標値として光学式センサによる反射光量を用いる構成では、劣化が進んだ同じ中間転写体に対して寿命判断を行う場合でも、光学式センサによる中間転写体表面上の検知位置の違いによって、寿命に達したと判断する場合もあれば、未だ寿命に達していないと判断する場合もある。したがって、適正な寿命判断を行うことができないという問題が生じる。
【0007】
また、一般に、光学式センサは、発光素子の出力や受光素子出力について個体差が大きく、また、温度特性及び経時劣化の影響も大きい。そのため、上記特許文献1に記載の画像形成装置のように中間転写体の表面状態を示す指標値として光学式センサによる反射光量を用いる構成では、劣化が進んだ同じ中間転写体に対して寿命判断を行う場合でも、光学式センサの個体差によって、寿命に達したと判断する場合もあれば、未だ寿命に達していないと判断する場合もある。したがって、適正な寿命判断を行うことができないという問題が生じる。
一方、光学式センサの個体差や特性変化に応じて寿命判断に用いる所定の閾値を適宜修正すれば、光学式センサの個体差や特性変化の影響を軽減して適正な寿命判断を行うことも不可能ではない。しかし、個々の画像形成装置においてこのような修正を行うことは、煩雑な処理あるいは作業を伴う事態を招き、コスト高騰という新たな問題を引き起こすことになる。
【0008】
以上の問題は、中間転写体のみならず、感光体などの他の像担時体や、記録材を搬送する記録材搬送部材の寿命(交換時期)を判断する場合でも、その表面状態を示す指標値として光学式センサによる反射光量を用いる構成では、同様に生じ得る。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、像担持体や記録材搬送部材について適正な寿命判断を行うことが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面が周回移動する像担持体上に担持された画像を最終的に記録材へ転写することで、記録材上に画像を形成する画像形成装置において、上記像担持体の表面上における互いに異なる複数の位置の反射光量を検知するための反射光量検知手段と、該反射光量検知手段により検知した各位置の反射光量のバラツキに基づいて、該像担持体の寿命判断を行う寿命判断手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記像担持体の表面に付着するトナー付着量を検知するためのトナー付着量検知手段と、該トナー付着量検知手段の検知結果に基づいて、画像濃度が所定の濃度となるように調整する画像濃度調整手段とを有し、上記反射光量検知手段として、該トナー付着量検知手段を用いることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、周回移動する表面に記録材を担持して搬送する記録材搬送部材を有し、該記録材搬送部材により搬送された記録材へ像担持体上に担持された画像を最終的に転写することで、記録材上に画像を形成する画像形成装置において、上記記録材搬送部材の表面上における互いに異なる複数の位置の反射光量を検知するための反射光量検知手段と、該反射光量検知手段により検知した各位置の反射光量のバラツキに基づいて、該記録材搬送部材の寿命判断を行う寿命判断手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、所定の修正タイミングが到来するたびに、上記反射光量検知手段により検知した反射光量の少なくとも1つを用いて、該反射光量検知手段による検知条件を修正する検知条件修正手段と、上記寿命判断手段とは別に、該検知条件修正手段による修正後の検知条件に基づいて、上記像担持体又は上記記録材搬送部材の寿命判断を行う第2の寿命判断手段とを有することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記反射光量検知手段は、上記像担持体又は上記記録材搬送部材の表面上における互いに異なる位置の反射光量をそれぞれ検知する複数の検知部材で構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記寿命判断手段の判断結果を報知する報知手段を有することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、上記反射光量検知手段は、上記像担持体又は上記記録材搬送部材が1周する前に、上記複数の位置の反射光量を検知するように動作することを特徴とするものである。
【0011】
本発明は、像担持体や記録材搬送部材(以下「寿命判断対象」という。)の表面上における互いに異なる複数の位置についての各反射光量を検知し、これらの反射光量がどの程度バラついているかを、寿命判断対象の表面状態を示す指標として用いる。すなわち、本発明は、繰り返しの使用により劣化が進むにつれて寿命判断対象の表面状態は不均一な状態へと徐々に遷移していき、各表面位置での反射光量のバラツキが大きくなるという事象を利用して、寿命判断対象の寿命判断を行う。したがって、当然、劣化により寿命判断対象の表面状態が不均一になることで適正な寿命判断を行うことができないといった従来の画像形成装置による問題は解消される。
また、各表面位置の反射光量のバラツキに基づいて寿命判断を行うので、この寿命判断では個々の反射光量の大きさが判断結果に影響しない。したがって、反射光量検知手段の個体差や特性変化の影響が無くなり、この影響により適正な寿命判断を行うことができないといった従来の画像形成装置による問題も解消される。
【発明の効果】
【0012】
以上より、本発明によれば、寿命判断対象(像担持体や記録材搬送部材)について適正な寿命判断を行うことが可能となるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図である。
【図2】同プリンタの画像形成部の概略構成を示した説明図である。
【図3】実施形態における光学式センサに関わる制御図を示すブロック図である。
【図4】黒トナーのトナー付着量を検知する光学式センサを示す説明図である。
【図5】カラートナーのトナー付着量を検知する光学式センサを示す説明図である。
【図6】光学式センサの発光光量調整処理(Vsg調整処理)の手順を示すフローチャートである。
【図7】Vsg調整処理を行った場合における発光素子の電流PWM値と中間転写ベルト駆動時間との関係を示すグラフである。
【図8】反射光量のバラツキに基づいて寿命判定を行う第2の寿命判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置であるプリンタに適用した一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタの要部の概略構成を示した説明図である。
本プリンタは、図1に示すように、複数の張架ローラに張架された像担持体である中間転写体としての中間転写ベルト101に沿って画像形成部102Y(イエロー),102M(マゼンダ),102C(シアン),102K(黒)が設けられている。また、各画像形成部102Y,102M,102C,102Kにより形成された各色トナー像は、一次転写装置106Y,106M,106C,106Kにより、中間転写ベルト101上へ転写される。また、後述する中間転写ベルト上に転写されたトナー像のトナー付着量を検出するトナー付着量検知手段としての光学式センサ110が中間転写ベルト101に対向して設けられている。中間転写ベルト101上のトナー像は、二次転写装置111により記録材としての転写紙112へ転写される。この転写紙112は、表面が周回移動する記録材搬送部材としての転写搬送ベルト115の表面に担持された状態で搬送される。また、中間転写ベルト上の転写残トナーなどをクリーニングするクリーニング手段としての中間転写ベルトクリーニング装置114も備わっている。
【0015】
図2は、画像形成部102Y,102M,102C,102Kの概略構成を示した説明図である。
なお、各画像形成部102Y,102M,102C,102Kの構成は同様のものであるので、以下互いに区別することなく説明する。
像担持体である潜像担持体としての感光体202の周りには、感光体表面を一様に帯電させる帯電手段としての帯電装置201、書き込み光Lにより感光体表面に静電潜像を書き込む潜像形成手段としての書込装置203、静電潜像をトナーによって現像する現像手段としての現像装置206、感光体上の転写残トナーなどをクリーニングするクリーニング手段としての感光体クリーニング装置200、及び、感光体表面を除電する除電手段としての除電装置207、電位検知手段としての電位センサ210が設けられている。
【0016】
本実施形態の帯電装置201は、スコロトロンチャージャからなる非接触式帯電器であり、スコロトロンチャージャのグリット電圧(帯電バイアス)Vgを目標帯電電位(本実施形態ではマイナス電位)に設定することで、感光体表面の電位をその目標帯電電位とするものである。なお、帯電装置201は、これに限らず、他の非接触式帯電器や、接触式帯電器を用いることもできる。
【0017】
本実施形態の書込装置203は、光源としてレーザーダイオード(LD)を用い、断続的な書き込み光すなわち繰り返しパルス状の書き込み光Lを照射することで、感光体表面上に1ドットごとの静電潜像(1ドット静電潜像)を形成する。本実施形態では、1ドット静電潜像を形成する際の露光時間(単位露光時間)を変更することで、1ドット静電潜像に付着するトナー付着量を制御して階調制御を行うことが可能となっている。本実施形態では、最大単位露光時間を15分割(それぞれの単位露光時間を以下「露光デューティ」という。)して、16階調の階調制御が可能となっている。したがって、本実施形態では、露光デューティを0(露光しない)〜15(最大単位露光時間)の16段階で調整可能となっている。
【0018】
本実施形態の現像装置206は、感光体表面に対向配置される現像剤担持体としての現像ローラを備えており、所定極性(本実施形態ではマイナス極性)に帯電したトナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を現像ローラ上に担持させて、感光体表面にトナーを供給する。現像ローラには、絶対値が露光部電位VLよりも十分に大きくかつ帯電電位Vdよりも十分に小さい現像バイアスVbが印加されている。これにより、感光体表面と現像ローラとが対向する現像領域において、感光体表面上の静電潜像(露光部)に向けてトナーを移動させ、かつ、感光体表面上の非静電潜像(非露光部)にはトナーが移動しないような電界を形成でき、静電潜像をトナーで現像することができる。
【0019】
画像形成を行うときには、まず、感光体202の表面が一様に目標帯電電位(マイナス電位)となるように、帯電装置201により感光体表面を帯電する。次に、帯電された感光体表面部分に対し、画像データに応じた書き込み光Lを書込装置203の光源(LD)から感光体202Yへ露光し、これにより感光体表面の露光部の電位(絶対値)が下がることにより、感光体表面に静電潜像が形成される。この後、感光体202上に形成された静電潜像(本実施形態では露光部)は、現像装置206の現像ローラ上に担持されたトナーによってトナー像に現像される。感光体202上に形成されたトナー像は、一次転写装置106により中間転写ベルト101上に転写される。中間転写ベルト101に転写されずに感光体202上に残った転写残トナーは感光体クリーニング装置200で回収される。また、中間転写ベルト101上にトナー像を転写した後の感光体表面は、除電装置207により一様に除電光が照射されることにより、非静電潜像部分が除去されて、一様に除電された状態になる。
【0020】
このようにして各画像形成部102Y,102M,102C,102Kで形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト101上に互いに重なり合うように一次転写される。その後、中間転写ベルト101上に転写された各色トナー像を二次転写装置111により中間転写ベルト101から転写紙112へ転写される。このとき、転写紙112に転写されずに中間転写ベルト101上に残った転写残トナーは中間転写ベルトクリーニング装置114で回収される。その後、図示しない定着装置によってトナー像が転写紙112に定着され一連の印刷プロセスが終了する。
【0021】
図3は、本プリンタが備える各部の電気的な接続を示すブロック図である。
図3に示すように、本プリンタには、コンピュータ構成のメイン制御部41が備えられており、このメイン制御部41が各部を駆動制御する。メイン制御部41は、各種演算や各部の駆動制御を実行するCPU(Central Processing Unit)42にバスライン45を介して、コンピュータプログラム等の固定的データを予め記憶するROM(Read Only Memory)44と各種データを書き換え自在に記憶するワークエリア等として機能するRAM(Random Access Memory)43とが接続されて構成されている。
【0022】
メイン制御部41には、黒トナーのトナー付着量を検知する光学式センサ110と、黒トナー以外のカラートナーのトナー付着量を検知する光学式センサ210とが接続されており、これらの光学式センサ110,210の検出結果は、メイン制御部41に送り出される。また、メイン制御部41には図示しない帯電装置、書込装置、現像装置、電位センサも接続されている。
【0023】
次に、本実施形態におけるトナー付着量検知手段だけでなく反射光量検知手段としても機能する光学式センサの構成について説明する。
図4は、黒トナーのトナー付着量を検知する光学式センサ110の構成を示す図である。
図5は、カラートナーのトナー付着量を検知する光学式センサ210の構成を示す図である。
【0024】
図4に示すように、光学式センサ110は、発光ダイオード(LED)等からなる発光素子110aと、正反射光を受光する受光素子110bとから構成されている。発光素子110aは中間転写ベルト101の表面に光を照射し、この照射光は中間転写ベルト101の表面で反射される。受光素子110bは、この反射光のうちの正反射光を受光する。
一方、図5に示す光学式センサ210では、発光ダイオード(LED)等からなる発光素子210aと、正反射光を受光する第1受光素子210bと、拡散反射光を受光する第2受光素子210cとから構成されている。発光素子210aは、図4に示した光学式センサ110の場合と同様、中間転写ベルト101上に光を照射し、この照射光は、中間転写ベルト101の表面で反射される。第1受光素子210bは、この反射光のうちの正反射光を受光し、第2受光素子210cは、反射光のうち拡散反射光を受光する。
【0025】
本実施形態では、発光素子110a,210aとして、発光される光のピーク波長λpが950nmであるGaAs赤外発光ダイオードを用いる。受光素子110b,210b,210cとしては、ピーク受光感度が800nmであるSiフォトトランジスタなどを用いる。また、光学式センサ110,210と検知対象物である中間転写ベルト101の表面との間には、5mmの距離を設けている。本実施形態では、これらの光学式センサ110,210で中間転写ベルト上に形成される予め決められた画像濃度調整用のトナーパターン113のトナー付着量を検知し、その検知結果に基づいて、露光量や現像バイアスなどの作像条件を決定し、画像濃度を調整する。
【0026】
次に、光学式センサ110の発光素子110aの発光光量調整処理(Vsg調整処理)について説明する。
図6は、本実施形態におけるVsg調整処理の手順を示すフローチャートである。
(ステップ1)
まず、メイン制御部41の命令によりVsg調整処理が開始されたら、発光素子210aをONにする。本実施形態において、光学式センサ110の発光光量の制御は、発光素子210aへ流す電流をPWM(Pulse Width Modulation)制御することにより行う。ステップ1において発光素子210aへの電流PWM値は、RAM43に保存されている前回のPWM制御による発光量調整値IFを用いる。
【0027】
(ステップ2)
次に、受光素子110bの出力データをサンプリングする。このときのサンプリング時間の間隔は2msecで、中間転写ベルト101の反射光量のバラツキの影響を軽減するために、互いに異なる10点の位置についてサンプリングし、その平均値を求める。以下、この平均値をセンサ出力値Vsg_REGという。
【0028】
(ステップ3)
このセンサ出力値Vsg_REGが目標値である4.0Vの±0.2Vの範囲内であれば、発光量調整値IFは更新せずに前回値のままとし、Vsg調整処理を終了する。一方、センサ出力値Vsg_REGが4.0V±0.2Vの範囲内でなければ、発光量調整値IFの調整動作を行う。この調整動作では、本実施形態では2分割探索法を用い、センサ出力値Vsg_REGが目標値である4.0Vに最も近くなるような発光量調整値IFに調整する。
【0029】
次に、Vsg調整処理を利用した第1の寿命判定処理について説明する。
図7は、Vsg調整処理を行った場合における発光素子110aの電流PWM値と、中間転写ベルト101の駆動時間との関係を示すグラフである。
図7に示すように、中間転写ベルト101の駆動時間が長くなるにつれて、発光素子110aの電流PWM値は徐々に上昇していく傾向にある。これは、次の理由による。
中間転写ベルト101が劣化して寿命に近づくと、その表面の平滑性が低下し、正反射光量が減少する。すなわち、光学式センサ110が中間転写ベルト101の表面に光を照射し、中間転写ベルト101の表面で反射した光の受光光量が減少することを意味する。このため、中間転写ベルト101が繰り返し使用されると、センサ出力値Vsg_REGが低下する。そのため、センサ出力値Vsg_REGを目標値に近付けるために、Vsg調整処理において発光素子の電流PWM値を高める調整が行われる。その結果、中間転写ベルトの劣化度合いを示す中間転写ベルト101の駆動時間に応じて、発光素子の電流PWM値が徐々に大きくなる。
【0030】
本実施形態においては、Vsg調整処理を行ったときの発光量調整値IFの値が、予め決められた寿命判定定数γを超えた場合、中間転写ベルト101が寿命に達したと判定する。この寿命判定定数γは、本プリンタ固有の値であり、実験から求めることができる。ただし、本実施形態では、中間転写ベルト101の駆動時間が予め決められた規定値Ts以下である場合、発光量調整値IFが寿命判定定数γを超えたと判断されても、中間転写ベルト101が寿命に達したとは判定しない。これは、中間転写ベルト101の駆動時間が既定値Ts以下の場合には、中間転写ベルト101が寿命に達することは通常起こり得ないので、発光量調整値IFが寿命判定定数γを超えた原因は、中間転写ベルト101の寿命以外の外乱による影響である可能性が高いからである。したがって、規定値Tsは、期待される中間転写ベルト101の寿命に対応する駆動時間の例えば30%以下に設定する。
【0031】
次に、本発明の特徴部分である第2の寿命判定処理について説明する。
図8は、第2の寿命判定処理の手順を示すフローチャートである。
(ステップ1)
メイン制御部41より中間転写ベルトの第2の寿命判定処理の実行命令があった場合、まず、中間転写ベルト101が安定した速度で駆動している状態において、光学式センサ110を用いて中間転写ベルト101の表面の反射光量を検知することで、中間転写ベルト101の表面状態を検知する。このときの発光素子110aの電流PWM値は、RAM43に保存されている前回の発光量調整値IFを用いる。なお、中間転写ベルト101の表面状態検知を行う前には、少なくとも一回は光学式センサ110のVsg調整処理が終了していることが望ましい。
【0032】
ここで使用される光学式センサは、黒トナー用の光学式センサ110だけであるが、カラートナー用の光学式センサ110を併用してもよい。特に、これらの光学式センサ110,210は、中間転写ベルトの幅方向にほぼ均等に複数配置されている場合には、第2の寿命判定処理にとって好適に利用できる。また、画像濃度調整用のトナーパターンを検知するための光学式センサに限らず、色ズレ補正に使用される光学式センサなどの他の用途に使用されるものを利用してもよいし、第2の寿命判定処理専用の光学式センサでもよい。
【0033】
本実施形態において、中間転写ベルト101の表面状態を検知するときのサンプリング時間の間隔は4msecとしている。また、中間転写ベルト101の反射光量のバラツキの影響を軽減するために、本実施形態では、少なくとも互いに異なる100点の位置についてサンプリングし、5点移動平均値を求めるようにしている。そして、求めた5点移動平均値の中から最大値M_maxと最小値M_minを選択し、それぞれをRAM43に保存する。
【0034】
(ステップ2)
本実施形態のプリンタでは、前回の中間転写ベルト101の交換時点からのプリント枚数がRAM43にカウントされている。このカウント値が所定の閾値X以下である場合は、初期時最大値M_max(ini)=M_maxとし、初期時最小値M_min(ini)=M_minとして、RAM43に保存する。一方、このカウント値が所定の閾値Xよりも大きい場合は、現在最大値M_max(current)=M_maxとし、現在最小値M_min(current)=M_minとして、RAM43に保存する。ここで用いる閾値Xは、本プリンタ固有の又は本プリンタの機種固有の値であり、実験などによって求めることができる。なお、初期時最大値M_max(ini)及び初期時最小値M_min(ini)の値は、上記カウント値が所定の閾値Xよりも大きい場合でも、RAM43に保持されたままである。すなわち、このときの初期時最大値M_max(ini)及び初期時最小値M_min(ini)の値は、カウント値が所定の閾値X以下である場合に求めた最後の最大値M_maxと最小値M_minのまま保持される。
【0035】
(ステップ3)
次に、初期時最大値M_max(ini)、初期時最小値M_min(ini)、現在最大値M_max(current)、現在最小値M_min(current)が取得できたら、これらの値から中間転写ベルトの表面状態のバラツキ(光学式センサ110で検知した各検知位置における反射光量のバラツキ)の指標値として、下記の式(1)及び式(2)より、初期時バラツキ指標値M_disp(ini)と、現在バラツキ指標値M_disp(current)を算出する。
M_disp(ini)=M_max(ini)−M_min(ini) ・・・(1)
M_disp(current)=M_max(current)−M_min(current) ・・・(2)
【0036】
(ステップ4)
本実施形態において、第2の寿命判定処理における中間転写ベルト101の寿命判定は、前回の中間転写ベルト101の交換時点からのプリント枚数を示す上記カウント値が所定の閾値Xを越えている場合のみ行い、このカウント値が所定の閾値X以下である場合には行わない。そして、上記カウント値が所定の閾値Xを越えている場合、寿命判断手段としてのCPU41は、M_disp(ini)とM_disp(current)との差が所定の寿命判定値αを越えていると判断したら中間転写ベルト101が寿命に達したと判定し、M_disp(ini)とM_disp(current)との差が所定の寿命判定値α以下であると判断した場合は中間転写ベルト101が寿命に達していないと判定する。
【0037】
中間転写ベルト101の交換直後は、中間転写ベルト101の表面は平滑性が高く、また傷や付着物もほとんど無いため、中間転写ベルト101の表面上のどの位置を光学式センサ110で検知しても、あまりバラツキのない正反射光量を得ることができる。しかし、中間転写ベルト101が劣化して寿命に近づくと、その表面に傷や付着物が多数生じるため、中間転写ベルト101の表面上における複数の位置について正反射光量を検知すると、その正反射光量の値は大きくばらつく。すなわち、正反射光量のバラツキは、中間転写ベルト交換直後よりも寿命に近づくにつれて大きくなる。本実施形態では、このバラツキの変化を利用して寿命判断を行う。
【0038】
具体的には、上述したように、M_disp(current)−M_disp(ini)が寿命判定値αよりも大きい場合、中間転写ベルトの寿命に達していると判断する。この場合、報知手段としての図示しない操作パネルに交換時期を知らせる画像を表示するなど、中間転写ベルト101の交換を促すための報知処理を行う。
また、本実施形態では、M_disp(current)−M_disp(ini)が寿命判定値α以下であっても、寿命警告値β以上である場合には、寿命が近い状態であると判断する。この場合、図示しない操作パネルに交換時期が近いことを知らせる画像を表示するなど、もうじき中間転写ベルト101の交換が必要であることを知らせるための報知処理を行う。
なお、寿命判定値αや寿命警告値βは、本プリンタ固有の値であり、実験から求めることができるが、α>βの関係を満たす。
【0039】
実際に中間転写ベルト101が交換された場合、メイン制御部41のRAM43に記憶されているM_max(ini)、M_min(ini)、M_max(current)、M_min(current)の値はゼロにリセットされる。また、上記カウント値もゼロにリセットされる。
【0040】
以上、本実施形態におけるプリンタは、表面が周回移動する像担持体としての中間転写ベルト101上に担持された画像(トナー像)を最終的に記録材としての転写紙112へ転写することで転写紙112上に画像を形成するものであり、中間転写ベルト101の表面上における互いに異なる複数の位置の反射光量を検知するための反射光量検知手段としての光学式センサ110と、この光学式センサ110により検知した各位置の反射光量のバラツキに基づいて、具体的には、そのバラツキを示す指標値である初期時バラツキ指標値M_disp(ini)と現在バラツキ指標値M_disp(current)との差が寿命判定値αを越えているか否かによって、中間転写ベルト101の寿命判断を行う第2の寿命判定処理を実行する寿命判断手段としてのメイン制御部41とを有している。すなわち、本実施形態では、繰り返しの使用により劣化が進むにつれて中間転写ベルト101の表面状態が不均一な状態へと徐々に遷移していき、各表面位置での反射光量のバラツキが大きくなるという事象を利用して、中間転写ベルト101の寿命判断を行う。したがって、当然、劣化により中間転写ベルト101の表面状態が不均一になることで適正な寿命判断を行うことができないといった従来の画像形成装置による問題は解消される。また、各表面位置の反射光量のバラツキに基づいて寿命判断を行うので、この寿命判断では個々の反射光量の大きさが判断結果に影響しない。したがって、光学式センサ110の個体差や特性変化の影響が無くなり、この影響により適正な寿命判断を行うことができないといった従来の画像形成装置による問題も解消される。
特に、本実施形態では、中間転写ベルト101の表面に付着するトナー付着量を検知するためのトナー付着量検知手段としての光学式センサ110と、この光学式センサ110の検知結果に基づいて画像濃度が所定の濃度となるように調整する画像濃度調整手段としてのメイン制御部41とを有し、この光学式センサを用いて第2の寿命判定処理を行う。よって、第2の寿命判定処理専用の光学式センサを用いる場合に比べて、部品コストの削減等の効果が得られる。
また、本実施形態では、所定の修正タイミングが到来するたびに光学式センサ110により検知した反射光量の少なくとも1つを用いて、光学式センサ110による検知条件である発光光量(発光量調整値IF)を修正するVsg調整処理を実行する検知条件修正手段としてのメイン制御部41と、上記第2の寿命判定処理とは別に、このVsg調整処理による修正後の検知条件である発光量調整値IFに基づいて、具体的には発光量調整値IFが寿命判定定数γを超えているか否かによって、中間転写ベルト101の寿命判断を行う第1の寿命判定処理を実行する第2の寿命判断手段としてのメイン制御部41とを有している。このように第1の寿命判定処理と第2の寿命判定処理とを併用することで、それぞれ単体で寿命判断を行う場合よりも精度の高い寿命判断が可能となる。
また、本実施形態では、寿命判断結果を報知する報知手段を有するので、本プリンタのユーザー等に中間転写ベルト101の寿命が到来したことを知らせることができる。
また、本実施形態において、光学式センサ110は、中間転写ベルト101が1周する前に、第2の寿命判定処理に用いる必要数の出力データ(反射光量)を得ることができるように動作する。中間転写ベルト101の1周分以上の出力データ(反射光量)を取得して第2の寿命判定処理を行った方がより精度の高い寿命判定が可能となるが、その分だけ第2の寿命判定処理に時間がかかる。寿命判定の精度向上による効果よりも、その分の時間がかかることの不利益の方が大きい場合があり、この場合に対応できる。
【0041】
なお、本実施形態では、第2の寿命判定処理における寿命判断を、バラツキの経時変化(初期時バラツキ指標値M_disp(ini)と現在バラツキ指標値M_disp(current)との差)によって行う場合について説明したが、現時点のバラツキ(現在バラツキ指標値M_disp(current))だけから寿命判断を行うことも可能である。具体的には、例えば、現在バラツキ指標値M_disp(current)が所定の寿命判定値α'を越えているか否かによって寿命判断を行う。
また、本実施形態では、中間転写ベルトの表面状態のバラツキ(光学式センサ110で検知した各検知位置における反射光量のバラツキ)の指標値として、最大値と最小値の差を用いているが、バラツキを示す公知の指標値(例えば分散値σ)を用いてもよい。
また、本実施形態では、黒トナー用の光学式センサ110の出力データを用いて第2の寿命判定処理を行う場合について説明したが、カラートナー用の光学式センサ210を併用してもよい。
また、本実施形態では、中間転写ベルト101の寿命判定を例に挙げているが、本発明は、このような中間転写体以外の像担持体(例えば感光体202)や、記録材搬送部材である転写搬送ベルト115の寿命判定にも、同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
41 メイン制御部
101 中間転写ベルト
102Y,102M,102C,102K 画像形成部
110,210 光学式センサ
110a,210a 発光素子
110b,210b,210c 受光素子
112 転写紙
113 トナーパターン
115 転写搬送ベルト
202 感光体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2003−302878号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が周回移動する像担持体上に担持された画像を最終的に記録材へ転写することで、記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
上記像担持体の表面上における互いに異なる複数の位置の反射光量を検知するための反射光量検知手段と、
該反射光量検知手段により検知した各位置の反射光量のバラツキに基づいて、該像担持体の寿命判断を行う寿命判断手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記像担持体の表面に付着するトナー付着量を検知するためのトナー付着量検知手段と、
該トナー付着量検知手段の検知結果に基づいて、画像濃度が所定の濃度となるように調整する画像濃度調整手段とを有し、
上記反射光量検知手段として、該トナー付着量検知手段を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
周回移動する表面に記録材を担持して搬送する記録材搬送部材を有し、該記録材搬送部材により搬送された記録材へ像担持体上に担持された画像を最終的に転写することで、記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
上記記録材搬送部材の表面上における互いに異なる複数の位置の反射光量を検知するための反射光量検知手段と、
該反射光量検知手段により検知した各位置の反射光量のバラツキに基づいて、該記録材搬送部材の寿命判断を行う寿命判断手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
所定の修正タイミングが到来するたびに、上記反射光量検知手段により検知した反射光量の少なくとも1つを用いて、該反射光量検知手段による検知条件を修正する検知条件修正手段と、
上記寿命判断手段とは別に、該検知条件修正手段による修正後の検知条件に基づいて、上記像担持体又は上記記録材搬送部材の寿命判断を行う第2の寿命判断手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記反射光量検知手段は、上記像担持体又は上記記録材搬送部材の表面上における互いに異なる位置の反射光量をそれぞれ検知する複数の検知部材で構成されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記寿命判断手段の判断結果を報知する報知手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
上記反射光量検知手段は、上記像担持体又は上記記録材搬送部材が1周する前に、上記複数の位置の反射光量を検知するように動作することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−191396(P2010−191396A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38567(P2009−38567)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】