説明

画像形成装置

【課題】ベルトユニットのメンテナンス作業を簡単にすることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像形成装置(カラープリンタ100)は、画像形成部(プロセスカートリッジ500)に対向配置されたベルトユニット(用紙搬送ベルトユニット600)と、ベルトユニットを挟んで画像形成部とは反対側に配される搬送経路ユニット(両面搬送経路ユニット800)と、搬送経路ユニットの下方に配され、記録シートを収容するシート収容部と、シート収容部が配された空間S1に搬送経路ユニットを退避させる退避機構150と、ベルトユニットを装置本体110に係脱自在に保持する保持機構900と、を備え、ベルトユニットは、前記退避機構150により退避された搬送経路ユニットが存在した空間S2を介してシート収容部が配される空間S1まで変位可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成部に対向するベルトユニットを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光ドラムを有する複数のプロセスカートリッジ(画像形成部)と、各感光ドラムの下に対向して配置され、各感光ドラムとの間で用紙を搬送するベルトを有するベルトユニットと、各プロセスカートリッジを一体に支持して装置本体から引出可能なドロワとを備える画像形成装置が知られている(特許文献1参照)。この技術では、ベルトユニット周りをメンテナンス(交換、清掃、ジャム処理等)する場合には、ドロワを装置本体から取り外した後、ドロワを取り外すことにより形成される空間を通してベルトユニットを装置本体から取り外している。
【0003】
なお、各プロセスカートリッジに設けられる各部品(例えば感光ドラム)に、装置本体の駆動源から駆動力を伝達すべく、各プロセスカートリッジと駆動源とはカップリング等を介して連結されている。そのため、ベルトユニット周りをメンテナンスする際には、装置本体の駆動源と各プロセスカートリッジとの連結を切った後で、ドロワを引き出すといった作業を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−57953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、ベルトユニット周りをメンテナンスする際には、複数のプロセスカートリッジと装置本体の駆動源との連結を切る必要があるため、手間が掛かり、メンテナンス作業が煩雑になるといった問題があった。さらに、画像形成に必要なプロセスカートリッジは、可能な限り頻繁に着脱させたくないという要望もあった。
【0006】
そこで、本発明は、ベルトユニットのメンテナンス作業を簡単にすることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、装置本体内に画像形成部とベルトユニットが対向配置された画像形成装置であって、前記ベルトユニットを挟んで前記画像形成部とは反対側に配され、記録シートを前記ベルトユニットのベルト面に沿うように搬送する搬送経路ユニットと、前記搬送経路ユニットの下方に配され、記録シートを収容するシート収容部と、前記シート収容部が配された空間に前記搬送経路ユニットを退避させる退避機構と、前記ベルトユニットを前記装置本体に係脱自在に保持する保持機構と、を備え、前記ベルトユニットは、前記保持機構から外れたときに、前記退避機構により退避された前記搬送経路ユニットが存在した空間を介して前記シート収容部が配される空間まで変位可能となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、例えばシート収容部内の記録シートをすべて抜いてシート収容部内の空間を確保した後、この空間に退避機構で搬送経路ユニットを退避させることで、ベルトユニットを、搬送経路ユニットが存在した空間を介してシート収容部内の空間に移動させることができる。そのため、本発明では、画像形成部を取り外すことなく、シート収容部側からベルトユニットのメンテナンスを行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成部を取り外すことなく、シート収容部側からベルトユニットのメンテナンスを行うことができるので、ベルトユニットのメンテナンス作業を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】画像形成装置の一例としてのカラープリンタの全体構成を示す説明図である。
【図2】用紙搬送ベルトユニットを着脱させる構造を示す説明図である。
【図3】装置本体から給紙トレイを引き出した状態を示す説明図である。
【図4】用紙搬送ベルトユニットと両面搬送経路ユニットを下方に揺動させた状態を示す説明図である。
【図5】用紙搬送ベルトユニットを装置本体から取り外す動作を示す説明図である。
【図6】中間転写方式のカラープリンタに本発明を適用した形態を示す図であり、カラープリンタ内の各構成を示す説明図(a)と、装置本体から給紙トレイを引き出した状態を示す説明図(b)である。
【図7】図6(a)の中間転写ベルトユニットと手差し用搬送経路ユニットとを下方に揺動させた状態を示す説明図(a)と、中間転写ベルトユニットを装置本体から取り外す動作を示す説明図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の説明において、方向は、カラープリンタ使用時のユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1において、紙面に向かって右側を「前側(手前側)」、紙面に向かって左側を「後側(奥側)」、紙面と直交する方向の奥側を「右側」、紙面と直交する方向の手前側を「左側」とする。また、紙面に向かって上下方向を「上下方向」とする。
【0012】
図1に示すように、カラープリンタ100は、シート収容部の一例としての給紙トレイ200と、給紙ユニット300と、スキャナユニット400と、画像形成部の一例としての複数のプロセスカートリッジ500とを備えている。さらに、カラープリンタ100は、ベルトユニットの一例としての用紙搬送ベルトユニット600と、定着装置700と、搬送経路ユニットの一例としての両面搬送経路ユニット800とを備えている。
【0013】
カラープリンタ100では、上から下へ向けて、スキャナユニット400、複数のプロセスカートリッジ500、用紙搬送ベルトユニット600、両面搬送経路ユニット800および給紙トレイ200が順に配置されている。用紙搬送ベルトユニット600および両面搬送経路ユニット800の前方には、給紙ユニット300が配置され、用紙搬送ベルトユニット600の後方に定着装置700が配置されている。これらを収容する箱状の装置本体110の前面には、プロセスカートリッジ500(後述するドロワ520)を前後に着脱するための開口部111と、給紙トレイ200を前後に着脱するための引出口112とが形成され、開口部111にはフロントカバー120が開閉可能に設けられている。
【0014】
給紙トレイ200は、記録シートの一例としての用紙Pを収容するトレイであり、装置本体110の前側から装置本体110に対して前後方向にスライドして着脱可能となっている。給紙トレイ200には、その前面にユーザによって把持される取手部210が設けられている。
【0015】
給紙ユニット300は、給紙トレイ200内の用紙Pや、両面搬送経路ユニット800から送られてくる用紙Pを用紙搬送ベルトユニット600に供給する装置である。給紙ユニット300は、給紙トレイ200内の用紙Pと接する給紙ローラ310と、用紙Pの先端の位置を揃えるためのレジストローラ320と、給紙ローラ310からレジストローラ320へ用紙を案内する給紙用ガイド部材331,332と、両面搬送経路ユニット800から送られてくる用紙Pをレジストローラ320に案内する両面用ガイド部材333などを備えている。
【0016】
スキャナユニット400は、主に、図示しないレーザ発光部、ポリゴンミラー、レンズおよび反射鏡などを備えた公知の構造となっている。そして、スキャナユニット400では、レーザビームを、後述する各プロセスカートリッジ500の感光ドラム510の表面上に高速走査にて照射する。
【0017】
各プロセスカートリッジ500は、静電潜像が形成される感光ドラム510を備える他、図示しない公知の帯電器、トナー収容室、供給ローラ、現像ローラ等を備えている。各プロセスカートリッジ500は、前後に並べられた状態でドロワ520に一体に支持されている。このドロワ520は、装置本体110の左右の壁を構成する一対のサイドフレーム114に設けられた図示しない公知のガイドレールにより前後移動可能に支持され、フロントカバー120を開けることで形成される開口部111から外部に引き出し可能となっている。
【0018】
そして、このプロセスカートリッジ500では、まず、帯電器で帯電された感光ドラム510がスキャナユニット400から出射されるレーザ光で露光されることで、感光ドラム510の表面に静電潜像が形成される。その後、トナー収容室内のトナー(現像剤)が供給ローラ等を介して感光ドラム510上の静電潜像に供給されて、感光ドラム510上にトナー像(現像剤像)が担持される。
【0019】
用紙搬送ベルトユニット600は、各感光ドラム510に対向する無端状のベルト610と、ベルト610を張設しながら回転させるための駆動ローラ620および従動ローラ630と、これらのローラ620,630を回転可能に支持するフレーム640とを備えている。この用紙搬送ベルトユニット600は、装置本体110の前面に設けた給紙トレイ200の引出口112から装置本体110に対して着脱可能となっている。なお、用紙搬送ベルトユニット600を着脱させる構造については、後で詳述する。
【0020】
そして、この用紙搬送ベルトユニット600では、用紙Pをベルト610の上面(各感光ドラム510側の面)に載置させ、ベルト610と各感光ドラム510とが用紙Pを挟持しながら回転することで、用紙Pが搬送される。なお、この搬送の際に、ベルト610の内側に配置された複数の転写ローラ650によって各感光ドラム510上のトナー像が用紙Pに転写される。
【0021】
定着装置700は、用紙Pに転写されたトナー像を熱定着させる装置であり、加熱ローラ710や加圧ローラ720等を備えて構成されている。そして、定着装置700で熱定着された用紙Pは、排紙ローラ130によって装置本体110上に形成される排紙トレイ113に排出される。
【0022】
なお、排紙ローラ130は、両面印字時においては、用紙Pの全体を排紙トレイ113上に排紙する前に逆回転することで、用紙Pを装置本体110内に戻す。装置本体110内に戻された用紙Pは、下方に揺動したフラッパ140の上面で案内されることで、定着装置700の後側を通った後、両面搬送経路ユニット800に送られる。
【0023】
両面搬送経路ユニット800は、両面搬送のための搬送装置であり、用紙搬送ベルトユニット600を挟んで各プロセスカートリッジ500とは反対側に配されている。ここで、「両面搬送」とは、表面が印字された用紙Pの裏面を印字するために、用紙Pを、表裏を逆にした状態で各プロセスカートリッジ500の用紙搬送方向上流側に戻すために行う搬送をいう。
【0024】
両面搬送経路ユニット800は、定着装置700の後側を通って下方に搬送されてくる用紙Pの向きを前方に切り替えるガイド部材810と、ガイド部材810で案内されてきた用紙Pを前方に向けて搬送するために前後に並列された複数対の戻しローラ820と、ガイド部材810が固定されるとともに戻しローラ820を回転可能に支持するフレーム830とを備えている。
【0025】
そして、この両面搬送経路ユニット800では、用紙Pを水平方向、詳しくは用紙搬送ベルトユニット600のベルト面660(ベルト610の外側の面であって両面搬送経路ユニット800と対向する面)に沿うように搬送している。なお、両面搬送経路ユニット800を装置本体110で支持する構造については、後で詳述する。
【0026】
<ベルトユニットを着脱させる構造>
次に、用紙搬送ベルトユニット600を着脱させる構造の詳細について説明する。
図2に示すように、カラープリンタ100は、給紙トレイ200が配された空間S1(図4参照)に両面搬送経路ユニット800を退避させる退避機構150と、用紙搬送ベルトユニット600を両面搬送経路ユニット800を介して装置本体110に係脱自在に保持する保持機構900とをさらに備えている。
【0027】
退避機構150は、装置本体110の左右のサイドフレーム114にそれぞれ設けられる一対の軸受部材151と、両面搬送経路ユニット800の左右のフレーム830の後側において左右方向外側に突出するように設けられる一対の回転軸部152とを備えて構成されている。
【0028】
そして、各軸受部材151で各回転軸部152が回転可能に支持されることで、両面搬送経路ユニット800が、後端側の回転軸部152を揺動中心として前端側が揺動端となるように装置本体110に揺動可能に支持される。言い換えると、両面搬送経路ユニット800の揺動端(前端)は、用紙Pを取り出すための開口の一例としての引出口112側に配置されている。
【0029】
ここで、「用紙P(記録シート)を取り出すための開口」とは、本実施形態では用紙Pを給紙トレイ200(シート収容部)ごと取り出すための開口(引出口112)を意味し、また、シート収容部が装置本体から着脱不能な場合には、装置本体の一部として形成されたシート収容部に形成された開口を意味する。
【0030】
保持機構900は、装置本体110に設けられるロック機構910と、用紙搬送ベルトユニット600を支持する支持部の一例としての一対の支持アーム920とを備えて構成されている。
【0031】
ロック機構910は、両面搬送経路ユニット800を装置本体110に保持する機構であり、装置本体110の左右のサイドフレーム114にそれぞれ回動可能に設けられる一対のフック911と、フック911を所定位置に付勢するトーションバネ等の図示せぬ付勢部材とを備えている。フック911は、L字状に屈曲形成されており、その一端がサイドフレーム114に回動可能に支持されている。
【0032】
両面搬送経路ユニット800の左右のフレーム830の前側には、それぞれ左右方向外側に突出する一対の係合突起831が設けられている。そして、この係合突起831がフック911の他端側で支持されるようになっている。
【0033】
支持アーム920は、略T字状の部材であり、両面搬送経路ユニット800の左右のフレーム830の前側上部に設けられている。一方、用紙搬送ベルトユニット600の左右のフレーム640には、前後に離間して配置されて、左右方向外側に突出する一対の前突起642および一対の後突起643が設けられている。
【0034】
そして、用紙搬送ベルトユニット600は、その後突起643が後述するサイドフレーム114の案内溝160で支持されるとともに、その前突起642が支持アーム920で支持されることで、装置本体110における取付位置(図2の位置:画像形成時の位置)に保持されるようになっている。また、用紙搬送ベルトユニット600の前突起642は、案内溝160内に入らないように案内溝160よりも左右方向内側にずれて配置されている。
【0035】
そのため、両面搬送経路ユニット800を揺動させると、支持アーム920で支持された用紙搬送ベルトユニット600も後突起643を揺動中心部として一緒に揺動するようになっている。すなわち、用紙搬送ベルトユニット600は、引出口112側にある揺動端としての前端(前突起642)が、両面搬送経路ユニット800の揺動端としての前端(支持アーム920)で支持されるので、両面搬送経路ユニット800の前端の上下動に連動して用紙搬送ベルトユニット600の前端が上下動することで、揺動する。
【0036】
なお、支持アーム920の上面921は、両面搬送経路ユニット800を最下方の退避位置まで揺動したときにおいても(図4参照)、用紙搬送ベルトユニット600の前突起642の支持を維持できるような長さで形成されている。すなわち、支持アーム920は、両面搬送経路ユニット800が装置本体110に保持される保持位置(図2の位置)と前述した退避位置(図4の位置)との間で揺動する間、前突起642を摺接させながら支持するように構成されている。
【0037】
また、装置本体110の左右のサイドフレーム114には、用紙搬送ベルトユニット600の後突起643を支持して、用紙搬送ベルトユニット600を装置本体110外または装置本体110内に案内するための案内溝160が形成されている。すなわち、各サイドフレーム114は、用紙搬送ベルトユニット600を装置本体110外に引き出す、または、装置本体110外から内部に用紙搬送ベルトユニット600を装着するために用紙搬送ベルトユニット600を案内する案内部材となっている。
【0038】
具体的に、案内溝160は、用紙搬送ベルトユニット600が前述した取付位置(図2の位置)に位置しているときに後突起643を支持する第1溝161と、第1溝161よりも前斜め下方の一段下がった位置に形成される第2溝162と、第2溝162よりも前斜め下方の一段下がった位置に形成される第3溝163とを一体に連続して有する。そして、第3溝163は、引出口112から装置本体110外に向けて開口しており、これにより、引出口112を通して用紙搬送ベルトユニット600が装置本体110に対して着脱自在となっている。
【0039】
第1溝161、第2溝162および第3溝163は、それぞれ前後方向に沿って互いに平行に延びており、斜めに延びる連結溝164,165を介してそれぞれ連続して形成されている。そして、後側の連結溝164の後端部(第1溝161から連結溝164が下がり始める部分)が、最後方の感光ドラム510よりも後側に位置することで、案内溝160で案内される用紙搬送ベルトユニット600の後突起643周りの部位と、最後方の感光ドラム510との干渉が抑制されている。また、案内溝160は、退避位置に位置した両面搬送経路ユニット800から所定距離だけ離れた位置に形成されており、これにより、用紙搬送ベルトユニット600の後突起643周りの部位と、両面搬送経路ユニット800との干渉が抑制されている。
【0040】
また、用紙搬送ベルトユニット600のフレーム640の前部には、ユーザや修理業者等によって把持される取手部641が設けられている。さらに、両面搬送経路ユニット800のフレーム830の前部にも、ユーザ等によって把持される取手部832が設けられている。
【0041】
<用紙搬送ベルトユニットの着脱方法>
次に、用紙搬送ベルトユニット600の着脱方法について説明する。
用紙搬送ベルトユニット600を装置本体110から取り外す場合には、ユーザ等は、まず、図3に示すように給紙トレイ200の取手部210に指をかけて引き出すことで、給紙トレイ200を装置本体110から取り外す。
【0042】
その後、ユーザ等が両面搬送経路ユニット800の取手部832を持ちつつ、フック911を両面搬送経路ユニット800の係合突起831から外して、両面搬送経路ユニット800を下方に揺動させると、図4に示すように、両面搬送経路ユニット800とともに用紙搬送ベルトユニット600も下方に揺動する。これにより、用紙搬送ベルトユニット600が各感光ドラム510から離れるため、用紙搬送ベルトユニット600と各感光ドラム510との間で用紙Pが詰まっている場合には、詰まった用紙Pが用紙搬送ベルトユニット600上に載るか、あるいは、傾斜した用紙搬送ベルトユニット600の上面を滑って引出口112側に落ちてくる。そのため、ユーザ等は引出口112から手を入れて、詰まった用紙Pを取り出す処理(以下、「ジャム処理」ともいう)を簡単に行うことができる。
【0043】
また、両面搬送経路ユニット800とともに用紙搬送ベルトユニット600が下方に揺動すると、用紙搬送ベルトユニット600の取手部641が引出口112から外部に臨む。これにより、ユーザ等が取手部641を掴み易くなっている。
【0044】
その後、ユーザ等が外部に臨んだ取手部641を掴んで少し持ち上げてから引っ張ると、図5に示すように、後突起643が案内溝160で案内されることで、用紙搬送ベルトユニット600が各感光ドラム510と両面搬送経路ユニット800とに干渉することなく、引出口112から引き出されてメンテナンス(交換や清掃等)される。言い換えると、用紙搬送ベルトユニット600は、両面搬送経路ユニット800が存在していた空間S2を介して給紙トレイ200が存在していた空間S1まで移動(変位)した後、装置本体110から取り外されてメンテナンスされる。
【0045】
また、用紙搬送ベルトユニット600を装置本体110に装着する場合には、ユーザ等は、用紙搬送ベルトユニット600の後突起643を案内溝160内の後端まで挿入していき、図4に示すように、前突起642を両面搬送経路ユニット800の支持アーム920上に載せる。その後、ユーザ等は、両面搬送経路ユニット800の取手部832を掴んで持ち上げることで、図3に示すように、両面搬送経路ユニット800の前端と用紙搬送ベルトユニット600の前端を一緒に上方に揺動させる。
【0046】
そして、両面搬送経路ユニット800の前端を所定位置まで上げると、両面搬送経路ユニット800の係合突起831によってフック911が後方に押し退けられた後、付勢部材の付勢力によってフック911が係合突起831に係合する。これにより、両面搬送経路ユニット800と用紙搬送ベルトユニット600が、装置本体110に装着される。
【0047】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
用紙搬送ベルトユニット600を給紙トレイ200の引出口112から着脱することにより、各プロセスカートリッジ500と装置本体110側の駆動源との連結を切り離す作業や重いドロワ520を装置本体110から取り外す作業が不要となるので、用紙搬送ベルトユニット600のメンテナンス作業を簡単にすることができる。
【0048】
シート収容部として装置本体110に対してスライドして着脱可能となる給紙トレイ200を採用したので、給紙トレイ200内から用紙Pを取り除かなくても、用紙Pを給紙トレイ200ごと取り外すだけで、簡単にメンテナンス用の空間S1を形成することができる。すなわち、シート収容部が装置本体の一部として一体に形成されている形態では、用紙をシート収容部内からすべて取り除く必要があるので、用紙の枚数が多すぎてすべての用紙をまとめて掴めない場合には、複数回に分けて用紙を取り除く必要があるが、本実施形態では、このような作業が不要となるので、簡単にメンテナンス用の空間S1を形成することができる。
【0049】
両面搬送経路ユニット800の支持アーム920で用紙搬送ベルトユニット600を支持するので、両面搬送経路ユニット800と用紙搬送ベルトユニット600とをまとめて操作することができ、用紙搬送ベルトユニット600のメンテナンスをより簡単に行うことができる。
【0050】
両面搬送経路ユニット800と用紙搬送ベルトユニット600をまとめて1つのロック機構910で保持することができるので、両面搬送経路ユニットと用紙搬送ベルトユニットにそれぞれロック機構を設ける場合に比べ、部品点数を削減することができる。
【0051】
両面搬送経路ユニット800の揺動端(前端)が引出口112側に配置されているので、用紙搬送ベルトユニット600を装置本体110から取り外した後は、斜めに傾いた両面搬送経路ユニット800の上部が引出口112に向く。そのため、両面搬送経路ユニット800のフレーム830の上部が開口していれば、例えば内部の戻しローラ820間に用紙Pが詰まっていても、両面搬送経路ユニット800を装置本体110から取り外すことなく、引出口112から手を入れることで簡単にジャム処理を行うことができる。また、例えば戻しローラ820(特に前側に配置された戻しローラ820)に塵埃等が付着している場合には、引出口112から清掃用の道具を差し込むことで、簡単に戻しローラ820の清掃も行うことができる。
【0052】
また、本実施形態とは逆に両面搬送経路ユニット800の前端(引出口112側の端部)を両面搬送経路ユニット800の揺動中心とする場合には、装置本体110の後側(引出口112の反対側)にメンテナンス用の開口を別途設ける必要があるが、本実施形態の構造によれば、メンテナンス用の開口として給紙トレイ200の引出口112を利用できるので、構造を簡易化することができる。
【0053】
用紙搬送ベルトユニット600の揺動端(前端)が引出口112側に配置されているので、両面搬送経路ユニット800とともに用紙搬送ベルトユニット600を下方に傾けると、用紙搬送ベルトユニット600の上面が引出口112側に向く。これにより、用紙搬送ベルトユニット600をわざわざ装置本体110から取り外さなくても、用紙搬送ベルトユニット600と各感光ドラム510の間のジャム処理や、ベルト610の清掃等を簡単に行うことができる。
【0054】
また、本実施形態とは逆に用紙搬送ベルトユニット600の前端(引出口112側の端部)を用紙搬送ベルトユニット600の揺動中心とする場合には、装置本体110の後側(引出口112の反対側)にメンテナンス用の開口を別途設ける必要があるが、本実施形態の構造によれば、メンテナンス用の開口として給紙トレイ200の引出口112を利用できるので、構造を簡易化することができる。
【0055】
用紙搬送ベルトユニット600を案内溝160で案内しながら装置本体110に対して着脱できるので、用紙搬送ベルトユニット600と他の部材(感光ドラム510や両面搬送経路ユニット800等)との干渉を抑えることができる。
【0056】
用紙搬送ベルトユニット600の揺動中心部である後突起643を案内溝160で支持して案内するので、用紙搬送ベルトユニット600を揺動自在に支持する部材と用紙搬送ベルトユニット600を案内する案内部材とを別個に設ける構造に比べ、構造を簡易化することができる。
【0057】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、ベルトユニットとして用紙Pを搬送する用紙搬送ベルトユニット600を採用し、搬送経路ユニットとして両面搬送のための両面搬送経路ユニット800を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図6(a)に示すように、各プロセスカートリッジ500(画像形成部)によって画像が形成される中間転写ベルトユニット601をベルトユニットして採用し、手差しで挿入された用紙Pを搬送するための手差し用搬送経路ユニット801を搬送経路ユニットとして採用してもよい。ここで、図6および図7において、前記実施形態と略同じ構造・機能を有するものについては同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0058】
図6(a)に示すように、中間転写ベルトユニット601は、各プロセスカートリッジ500の下側に対向して配置され、手差し用搬送経路ユニット801は、中間転写ベルトユニット601と給紙トレイ201との間に配置されている。ここで、給紙トレイ201は、取手部210の位置が給紙ローラ310等とは反対側に設けられる点で前記実施形態と異なるだけであり、その他の構造は前記実施形態と略同様となっている。
【0059】
中間転写ベルトユニット601は、前記実施形態と略同じ構造を有するが、各転写ローラ650が各感光ドラム510からベルト610にトナー像を転写させる1次転写ローラとして機能する点で前記実施形態とは異なっている。なお、ベルト610に転写されたトナー像は、ベルト610の後方に隣接して配置される2次転写ローラ670によって用紙Pに転写される。
【0060】
また、手差し用搬送経路ユニット801は、装置本体170の前壁に形成される手差し口171から挿入された用紙Pを後方に搬送する複数対の搬送ローラ821と、搬送ローラ821で搬送されてきた用紙Pを2次転写ローラ670とベルト610との間に案内するガイド部材811とを備えている。
【0061】
そして、中間転写ベルトユニット601、手差し用搬送経路ユニット801および装置本体170には、図6(b)に示すように、前記実施形態と同様の前突起642、後突起643、係合突起831、保持機構900(ロック機構910および支持アーム920)、退避機構150および案内溝160等が設けられている。
【0062】
この形態でも、図6(b)に示すように、給紙トレイ201を装置本体170から取り外した後、図7(a)に示すように、手差し用搬送経路ユニット801を下方に揺動させることで、中間転写ベルトユニット601の上面を引出口112に臨ませて、ジャム処理等を行うことができる。さらに、この状態から、図7(b)に示すように、中間転写ベルトユニット601を引出口112から取り出すことで、中間転写ベルトユニット601の交換や、手差し用搬送経路ユニット801内のジャム処理等を行うことができる。
【0063】
前記実施形態では、ベルトユニットを装置本体から完全に取り外すことができる構造を採用したが、本発明はこれに限定されず、ベルトユニットが単に傾動するように構成されていてもよい。この場合であっても、ベルトユニットと各感光ドラムとの間のジャム処理等を行うことができる。
【0064】
前記実施形態では、シート収容部として装置本体に着脱可能な給紙トレイを採用したが、本発明はこれに限定されず、装置本体の一部としてシート収容部を着脱不能に形成してもよい。この場合であっても、シート収容部から記録シートを取り出せば、その取り出した空間にベルトユニットを退避させてメンテナンスを行うことができる。
【0065】
前記実施形態では、退避機構として搬送経路ユニットを回動させながら退避させる機構を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば搬送経路ユニットを下方にスライドさせる機構を退避機構として採用してもよい。
【0066】
前記実施形態では、ベルトユニットを搬送経路ユニットを介して間接的に保持する機構を保持機構(ロック機構910および支持アーム920)としたが、本発明はこれに限定されず、例えばベルトユニットを直接保持するロック機構を保持機構としてもよい。
【0067】
前記実施形態では、フック911を有するロック機構910を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えば搬送経路ユニットに対して進退するピンと、搬送経路ユニットに形成され、かつ前記ピンが嵌合する穴とをロック機構として採用してもよい。
【0068】
前記実施形態では、案内部材として案内溝160が形成されたサイドフレーム114を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばサイドフレームの内面に固定したリブ状の案内レールを案内部材として採用してもよい。また、案内部材は、前記実施形態のようにベルトユニットの揺動中心部を支持するのではなく、揺動中心部以外の部位を支持して案内するように構成されていてもよい。
【0069】
なお、ドロワ520は、装置本体110から取り外すことが可能な構造であってもよいし、引き出された状態で一部が装置本体110に係合したままに保持されることで、装置本体110から完全には取り外せない構造、すなわち分離不能に構成されていてもよい。ドロワ520が装置本体110から分離不能な構造である場合には、本発明が特に有効となる。
【0070】
前記実施形態では、カラープリンタ100に本発明を適用したが、本発明はこれに限定されず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機などに本発明を適用してもよい。
前記実施形態では、記録シートの一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Pを採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートであってもよい。
【0071】
前記実施形態では、画像形成部として感光ドラム510を備えたプロセスカートリッジ500を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばベルト状の感光体を備えたものを画像形成部として採用してもよい。
【符号の説明】
【0072】
100 カラープリンタ
110 装置本体
112 引出口
150 退避機構
200 給紙トレイ
500 プロセスカートリッジ
600 用紙搬送ベルトユニット
620 駆動ローラ
630 従動ローラ
640 フレーム
641 取手部
642 前突起
643 後突起
660 ベルト面
800 両面搬送経路ユニット
810 ガイド部材
820 戻しローラ
830 フレーム
831 係合突起
832 取手部
900 保持機構
910 ロック機構
911 フック
920 支持アーム
P 用紙
S1 空間
S2 空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体内に画像形成部とベルトユニットが対向配置された画像形成装置であって、
前記ベルトユニットを挟んで前記画像形成部とは反対側に配され、記録シートを前記ベルトユニットのベルト面に沿うように搬送する搬送経路ユニットと、
前記搬送経路ユニットの下方に配され、記録シートを収容するシート収容部と、
前記シート収容部が配された空間に前記搬送経路ユニットを退避させる退避機構と、
前記ベルトユニットを前記装置本体に係脱自在に保持する保持機構と、を備え、
前記ベルトユニットは、前記退避機構により退避された前記搬送経路ユニットが存在した空間を介して前記シート収容部が配される空間まで変位可能となっていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記シート収容部は、前記装置本体に対してスライドして着脱可能となることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送経路ユニットは、前記ベルトユニットを支持する支持部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記保持機構は、
前記搬送経路ユニットを前記装置本体に保持するロック機構を備え、前記搬送経路ユニットを介して前記ベルトユニットを保持するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送経路ユニットは、一端側を揺動中心として他端側が揺動端となるように前記装置本体に揺動可能に支持され、前記他端が記録シートを取り出すための開口側に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記ベルトユニットは、一端側を揺動中心として他端側が揺動端となるように前記装置本体に揺動可能に支持され、前記他端が記録シートを取り出すための開口側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ベルトユニットは、前記装置本体に対して前記開口を通して着脱自在に構成され、
前記装置本体には、前記ベルトユニットを装置本体外に引き出す、または、装置本体外から内部に前記ベルトユニットを装着するために前記ベルトユニットを案内する案内部材が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記案内部材は、前記ベルトユニットの揺動中心部を支持して案内するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ベルトユニットは、記録シートを前記画像形成部側に載置して搬送する用紙搬送ベルトユニットであり、
前記搬送経路ユニットは、両面搬送のための両面搬送経路ユニットであることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ベルトユニットは、前記画像形成部によって画像が形成される中間転写ベルトユニットであり、
前記搬送経路ユニットは、手差しで挿入された記録シートを搬送するための手差し用搬送経路ユニットであることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−276905(P2010−276905A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130049(P2009−130049)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】