説明

画像形成装置

【課題】 複数色の同期検知信号が発生しない時間に印刷開始信号を発生できるようにする。
【解決手段】 各同期検知センサ4k〜4yが同期検知信号を同期検知信号時間差計測部6に出力し、同期検知信号時間差計測部6はブラックの同期検知信号の受信からその他の色の同期検知信号の受信との時間差を計測し、全ての時間差の計測を終了したら、各時間差を印刷開始信号発生タイミング決定部7に送信し、印刷開始信号発生タイミング決定部7は、各時間差に予め設定されている各同期検知信号の発生がばらついた場合の時間を考慮して印刷開始信号の発生タイミングの時間を決定し、記憶部8に記憶する。印刷開始信号生成部9は、通常の印刷動作時の画像書込み動作では、ブラックの同期検知信号の受信から記憶部8の時間が経過したら印刷開始信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置において、副走査方向の1走査分のレジストずれを起こさないようにするために、複数のポリゴンモータの回転基準クロックの位相を変更し、副走査同期信号(印刷開始信号)がONするタイミングに同期検知信号がかからないようにして、1走査ピッチに近い副走査方向の画像ずれが突然発生しないようにする画像形成装置(例えば、特許文献1参照)があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の画像形成装置では、副走査同期信号をONするタイミングが同期検知信号の時間差の範囲(変動範囲も含む)に入らないように、基準クロックの位相を変更するためのハードウェアが複雑になるという問題があった。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、複数色の同期検知信号が発生しない時間に印刷開始信号を発生できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は上記の目的を達成するため、光ビームを発生する光ビーム発生手段と、上記光ビーム発生手段で発生した光ビームを像担持体に偏向走査する回転多面鏡と、上記回転多面鏡を回転駆動させることによって偏向走査された光ビームを走査経路上の所定位置で検出する光ビーム検出手段とを複数組備え、上記各光ビーム検出手段によってそれぞれ検出した各光ビーム検出信号の時間差を計測する時間差計測手段と、上記時間差計測手段の計測結果に基づいて、上記各光ビーム検出信号の出力されるタイミングと重ならないように画像書込み動作の開始を指示する開始信号の発生タイミングの時間を決定する発生タイミング決定手段と、その発生タイミング決定手段によって決定された発生タイミングの時間に基いて上記開始信号を発生させる開始信号発生手段と設けた画像形成装置を提供する。
【0005】
また、上記のような画像形成装置において、上記時間差計測手段が、上記各光ビーム検出手段によってそれぞれ検出した各光ビーム検出信号のうち、予め選択した基準となる光ビーム検出信号とその他の光ビーム検出信号との時間差を計測する手段を有するようにするとよい。
【0006】
さらに、上記のような画像形成装置において、上記発生タイミング決定手段が、画像書込み動作の開始を指示する開始信号の発生タイミングの時間を決定する際には、上記各光ビーム検出信号の出力されるタイミングが変動する時間にも重ならないようにする手段を有するようにするとよい。
【0007】
さらにまた、上記のような画像形成装置において、上記発生タイミング決定手段によって決定した発生タイミングの時間を記憶する記憶手段を設け、上記開始信号発生手段は、通常の印刷動作時の画像書込み動作では、上記記憶手段に記憶されている発生タイミングの時間算出結果に基いて上記開始信号を発生させる手段を有するようにするとよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明による画像形成装置は、複数色の同期検知信号が発生しない時間に印刷開始信号を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図2に示す複合機における画像形成の露光に係る主要部の構成を示す図である。
【図2】この発明の画像形成装置の一実施例である複合機の外観図である。
【0010】
【図3】図2に示す複合機における印刷開始信号発生の処理を示すフローチャート図である。
【図4】図1に示す同期検知信号時間差計測部6各同期検知センサから同期検知信号を受信したときのタイミングの一例を示すタイミングチャート図である。
【図5】従来の複合機における印刷動作の処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図2は、この発明の画像形成装置の一実施例である複合機の外観図である。
この複合機10は、無線通信機能,コピー機能,プリント機能,スキャナ機能,及びFAX通信機能を含む複数の機能を有し、複数のポリゴンミラーを用いて、ブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色の画像形成によるフルカラー印刷を行う画像形成装置である。なお、ファクシミリ装置,プリンタ,複写機等の画像形成装置にも適用できる。
【0012】
図1は、図2に示した複合機10における画像形成の露光に係る主要部の構成を示す図である。
光源1k〜1yは、それぞれLD等の発光体からカラー画像を構成するブラック,シアン,マゼンタ,イエローの各色の画像を露光するためのレーザ光の光ビームを発生させる光ビーム発生手段である。
【0013】
感光体2k〜2yは、それぞれブラック,シアン,マゼンタ,イエローの各色の画像のトナー像が形成される像担持体である。この感光体2k〜2yにそれぞれ形成されたトナー画像は用紙に重ね合わされて転写されることにより、用紙にカラー画像を印刷する。
この感光体2k〜2yへのトナー画像の形成から用紙への印刷までに係る構成と説明は公知なので、その説明を省略する。
ポリゴンミラー3k〜3yは、それぞれ光源1k〜1yが発生した光ビームを感光体2k〜2yのそれぞれに偏向走査する回転多面鏡であり、図示を省略したポリゴンモータによって回転駆動される。
【0014】
同期検知センサ4k〜4yは、それぞれポリゴンミラー3k〜3yを回転駆動させることによって偏向走査された光ビームを走査経路上の所定位置で検出し、各光ビームの主走査方向の走査開始位置を検出する同期検知手段である。
この複合機10では、ブラック,シアン,マゼンタ,イエローの各色の画像用の4組の露光、偏向、同期検知手段を備えた場合を示しているが、複数であれば何組でも良い。
【0015】
制御部5は、CPU、ROM及びRAMを含むマイクロコンピュータによって実現され、この複合機10の全体の制御を司ると共に、同期検知信号時間差計測部6、印刷開始信号発生タイミング決定部7、記憶部8、および印刷開始信号生成部9の各機能部も実現する。
【0016】
同期検知信号時間差計測部6は、ライン周期よりも十分高速なクロックによって基準色の同期検知信号とその他の色の同期検知信号をカウントすることによって、各光ビーム検出信号のうち、予め選択した基準となる光ビーム検出信号とその他の光ビーム検出信号との時間差を計測する時間差計測手段の機能を果たす。
この実施例では、基準色をブラックとし、同期検知センサ4kの出力する同期検知信号の受信時間と、その他の同期検知センサ4c〜4yとの受信時間との時間差を計測し、その各時間差を印刷開始信号発生タイミング決定部7へ送信する。
【0017】
印刷開始信号発生タイミング決定部7は、同期検知信号時間差計測部6の計測結果に基づいて、各光ビーム検出信号の出力されるタイミングと重ならないように画像書込み動作の開始を指示する開始信号の発生タイミングの時間を決定する発生タイミング決定手段の機能を果たし、同期検知信号時間差計測部6から受信した各時間差に基づいて各同期検知センサ4k〜4yの同期検知信号の発生タイミングと、その発生が変動した場合の発生タイミングに重ならない時間を画像書込み動作の開始信号の発生タイミングの時間に決定し、記憶部8に記憶する。
【0018】
記憶部8は、例えば、RAMであり、印刷開始信号発生タイミング決定部7が決定した画像書込み動作の開始信号の発生タイミングの時間を記憶するメモリである。
印刷開始信号生成部9は、ライン周期よりも十分高速なクロックによって動作し、同期検知センサ4kから出力される基準色の同期検知信号の受信持から記憶部8に記憶されている発生タイミングの時間が経過した後に画像書込み動作の開始信号(印刷開始信号)を画像書込みに係る部分に出力する。
【0019】
次に、副走査方向に1走査分の色ずれが起きる原理を説明する。
図5は、従来の複合機における印刷動作の処理を示すフローチャート図である。
ステップ(図中「S」で示す)11で印刷要求が発生し、ステップ12で基準色の同期検知信号を検知すると、ステップ13で記憶部に予め記憶している時間が経過したか否かを判断し、経過したら、ステップ14で印刷開始信号を発生し、ステップ15で、各同期検知信号あるいは各同期検知信号から生成する信号により各色の副走査書き出しタイミングをカウントアップする。
【0020】
ここで、印刷開始信号の発生と同期検知信号の検知とが時間的に近いと、同期検知信号の発生のばらつきによって、同期検知信号が印刷開始信号の前にくる場合と後ろに来る場合がある。
【0021】
例えば、色あわせ動作を実行したときに、印刷開始信号の後ろに同期検知信号が来ていた場合、実際の印刷時に印刷開始信号の後ろに同期検知信号が来れば問題ないが、同期検知信号のばらつきによって印刷開始信号との位相関係が逆転し、同期検知信号が印刷開始信号の前に来た場合、ステップ16の判断で上記カウントアップによって得られたカウント値が色ずれ補正動作で決定した値と一致するまでに約1走査分時間がかかってしまうことがあり、それによってステップ17での書込み開始により副走査方向に1走査分色ずれしてしまう。
【0022】
次に、この実施例の複合機10における処理を説明する。
図3は、この実施例の複合機10における印刷開始信号発生の処理を示すフローチャート図である。
図4は、図1に示した同期検知信号時間差計測部6が各同期検知センサ4k〜4yから同期検知信号を受信したときのタイミングの一例を示すタイミングチャート図である。
【0023】
図示を省略した点灯制御手段により光ビームが点灯すると、各ポリゴンミラー3k〜3yによってそれぞれ光ビームが偏向され、各同期検知センサ4k〜4yに入射する。
図3のステップ1で、各ポリゴンミラーによって光ビームの偏向が開始され、ステップ2で、各同期検知センサが同期検知信号を同期検知信号時間差計測部に出力する。
【0024】
ここで、各同期検知センサ4k〜4yは、光ビームが入射すると同期検知信号を発生するが、ポリゴンミラー3k〜3yをそれぞれ回転駆動させるポリゴンモータは、位相が決まっていないため、同期検知信号は不規則なタイミングで発生される。
したがって、同期検知信号時間差計測部6では、図4に示すように、不規則なタイミングで各同期検知信号を受信する。
【0025】
図3のステップ3で、同期検知信号時間差計測部が基準色であるブラックの同期検知信号の受信からその他の色の同期検知信号の受信との時間差を計測し、ステップ4へ進む。
ステップ4で、同期検知信号時間差計測部は、全ての同期検知信号の時間差の計測を終了したか否かを判断し、終了しなければステップ3の処理を繰り返し、終了したら、ステップ5で、各時間差を印刷開始信号発生タイミング決定部に送信し、印刷開始信号発生タイミング決定部は、各時間差に予め設定されている各同期検知信号の発生がばらついた場合の時間を考慮して印刷開始信号の発生タイミングの時間を決定し、この処理を終了する。
【0026】
例えば、図4に示すように、基準色であるブラックの同期検知信号の受信からC色の同期検知信号の受信までの時間が150us、ブラックの同期検知信号の受信からM色の同期検知信号の受信までの時間が200us、ブラックの同期検知信号の受信からY色の同期検知信号の受信までの時間が130us、それぞれの同期検知信号の発生のばらつきの変動範囲が±5usであり、1ライン周期が300usの場合を示す。
【0027】
この場合、ブラックの同期検知信号の受信からの経過時間が0〜5us、125us〜135us、145us〜155us、195us〜205us、295us〜300usの時間に印刷開始信号を発生すると、同期検知信号が印刷開始信号を跨ぐ可能性があり、副走査方向に1走査分色ずれしてしまう。
【0028】
そこで、印刷開始信号発生タイミング決定部7は、ブラックの同期検知信号の受信からの経過時間が0〜5us、125us〜135us、145us〜155us、195us〜205us、295us〜300usの以外の時間を、印刷開始信号の発生のタイミングの時間に決定する。
【0029】
例えば、印刷開始信号が発生しても良い時間帯の中で最も長い時間の中央値である「65us」を印刷開始信号の発生のタイミングの時間に決定し、記憶部8に記憶する。
そして、印刷開始信号生成部9は、通常の印刷動作時の画像書込み動作では、ブラックの同期検知信号の受信持に記憶部8に記憶してある「65us」を参照し、「65us」をだけ時間が経過した後に、印刷開始信号を生成する。
【0030】
このようにして、副走査の書出しタイミングをカウントする印刷開始信号のもとになる基準の同期検知信号と、その他の全ての同期検知信号との時間差を計測し、各同期検知信号の発生に変動があっても同期検知信号が確実に発生しない時間に印刷開始信号を発生するように制御するので、複数のポリゴンモータの位相関係により副走査方向に発生する可能性がある1走査分の色ずれを簡単な構成で確実になくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明による画像形成装置は、ファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1k〜1y:光源 2k〜2y:感光体 3k〜3y:ポリゴンミラー 4k〜4y:同期検知センサ 5:制御部 6:同期検知信号時間差計測部 7:印刷開始信号発生タイミング決定部 8:記憶部 9:印刷開始信号生成部 10:複合機
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開平09−274156号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを発生する光ビーム発生手段と、前記光ビーム発生手段で発生した光ビームを像担持体に偏向走査する回転多面鏡と、前記回転多面鏡を回転駆動させることによって偏向走査された光ビームを走査経路上の所定位置で検出する光ビーム検出手段とを複数組備え、
前記各光ビーム検出手段によってそれぞれ検出した各光ビーム検出信号の時間差を計測する時間差計測手段と、前記時間差計測手段の計測結果に基づいて、前記各光ビーム検出信号の出力されるタイミングと重ならないように画像書込み動作の開始を指示する開始信号の発生タイミングの時間を決定する発生タイミング決定手段と、該発生タイミング決定手段によって決定された発生タイミングの時間に基いて前記開始信号を発生させる開始信号発生手段と設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記時間差計測手段は、前記各光ビーム検出手段によってそれぞれ検出した各光ビーム検出信号のうち、予め選択した基準となる光ビーム検出信号とその他の光ビーム検出信号との時間差を計測する手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記発生タイミング決定手段は、画像書込み動作の開始を指示する開始信号の発生タイミングの時間を決定する際には、前記各光ビーム検出信号の出力されるタイミングが変動する時間にも重ならないようにする手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記発生タイミング決定手段によって決定した発生タイミングの時間を記憶する記憶手段を設け、前記開始信号発生手段は、通常の印刷動作時の画像書込み動作では、前記記憶手段に記憶されている発生タイミングの時間算出結果に基いて前記開始信号を発生させる手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−153034(P2012−153034A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14709(P2011−14709)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】