説明

画像形成装置

【課題】トナーを、定着液を用いて記録媒体への定着に適した状態とし、液体現像に限定されず、定着の際の加熱に要する電力の低減を図り、定着液による、画像の乱れ、乾燥に要する電力、定着所要時間の増加、機内部材への悪影響、記録媒体に塗布される定着液量のムラの回避を図る。
【解決手段】トナーを膨潤、軟化させ媒体Sへの定着に適した状態にするための可塑剤を含む定着液を、トナー像担持前の媒体Sに塗布し、定着液塗布後の媒体Sに、トナー像担持体11上のトナー像を、媒体S上の定着液に接触させながら転写し、媒体S上のトナー像と定着液とを加熱してトナーを前記状態にして媒体Sに定着する。定着液を記録媒体Sに塗布する塗布部材44に、定着液が、供給手段56から、受け渡し部Dおいて受け渡される。受け渡し部Dに溜まった定着液を受け渡し部D外に誘導する定着液誘導部材49を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー像を構成するトナーを、記録媒体への定着の際に加熱して用紙等の記録媒体に定着することで画像形成を行う画像形成装置であって、かかるトナーを、定着液を用いて記録媒体への定着に適した状態として、かかる定着を行い画像形成を行う、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トナー像を構成するトナーを、記録媒体への定着の際に加熱して用紙等の記録媒体に定着することで画像形成を行う、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置が広く知られている。この画像形成装置では、トナーを加熱により軟化させて記録媒体上に固定化するものであるため、確実な定着性を得るには、記録媒体に接触する部分のトナーの軟化が十分であることを要する。かかる軟化を十分に行うには、かかるトナー等の加熱を十分に行う必要があるが、このような加熱には多くの電力を必要とする。しかし、昨今、画像形成装置全体の省電力化の要求が高まっている。そこで、画像形成装置全体の消費電力に占める、かかる加熱に要する電力量の割合が比較的大きいことに鑑みれば、この電力量を低減することが望まれる。そのための方策として、記録媒体に対するトナーの定着性を向上する液体を用いる技術が種々提案されている(たとえば、〔特許文献1〕〜〔特許文献4〕参照)。
【0003】
たとえば、記録媒体上のトナー像上に、トナーを軟化および/または膨潤させる定着液を塗布する技術が提案されている(たとえば、〔特許文献1〕参照)。このような技術では、熱を用いない定着も可能となるため、従来と比較し大幅な省電力化が図れる。同様に、熱によりトナーを軟化させる必要がなく省エネ化が可能な技術として、中間転写体上にあるトナー像の上から定着液を付与し、トナーを粘着性をもったフィルム状に変化させ、このフィルム化したトナーを自身の粘着性により記録媒体上に転写・定着させる技術が提案されている(たとえば、〔特許文献2〕参照)。
【0004】
しかし、記録媒体あるいは中間転写体に担持されたトナー像の上から定着液を塗布すると、画像の乱れが生じるという問題がある。この問題に対して、非接触のインクジェット方式のような手段で定着液を塗布することとし、塗布量を記録紙移動方向に徐々に増す技術が提案されているが(たとえば、〔特許文献1〕参照)、粉体であるトナー像に対してインクジェット方式のヘッドで定着液を噴射する場合、定着液の量を減らした場合でも、着弾時に乱したトナーが飛び散り、インクジェットヘッドの吐出口に付着してしまうという不具合がある。そして、トナーが膨潤、溶解する液の吐出口にトナーが付着すると、吐出口の詰まりの原因となる。また、記録媒体に担持されたトナー像の上から定着液を塗布する場合、確実な定着のためにトナーと記録媒体との接触部分に定着液を到達させるには、多くの液を塗布する必要があるが、多くの液を塗布すると、乾燥のための加熱の必要性が生じ、これによって必要電力量、定着所要時間が増加するなどの問題が生じる。
【0005】
また、定着液を付与してトナーを中間転写体上でフィルム状に変化させて記録媒体に転写する技術では、画像形成が成り立つためには、定着液が加熱せずともトナーのフィルム化に機能する状態となっていることが必須となるが、中間転写体上のトナーに定着液を付与するため、中間転写体と接する画像形成部への定着液の混入が問題となるとともに、この定着液は画像形成装置の使用環境温度においてトナーをフィルム化する機能を示すものなので、機内の他の部材に対して悪影響を及ぼす可能性があるという問題がある。
【0006】
定着液が画像形成装置の使用環境温度で機能する技術として、トナーとキャリア液を用いた液体現像方式を採用した画像形成装置において、キャリア液と親和性がよい定着液を、記録媒体に予め付与しておき、液体現像で形成したトナー層のトナー間に存在するキャリア液を流すとともに、トナー層を溶解膨潤させて記録媒体に定着する技術が提案されている(たとえば、〔特許文献3〕参照)。この技術では、定着液の付与による画像の乱れが抑制され得るが、定着液がキャリア液に作用する際に画像の乱れが生じる可能性があるとともに、定着液が画像形成装置の使用環境温度で機能するため、機内の他の部材に対して悪影響を及ぼす可能性があるという問題がある。また、かかる技術に関しては、像の転写前に定着液を付与すると、像の転写後に定着液を付与する場合に比べて定着時間が長くなるという認識があるとともに、定着液が液体現像剤と親和性があることが重要であり、液体現像でない現像手段により形成されたトナー像に対しての適用が出来ないとの認識がなされ得る。
【0007】
記録媒体がトナー像を担持する前に記録媒体に液を塗布するため、液の塗布による画像の乱れが抑制され得るものの、記録媒体に多くの液を塗布することを要し乾燥のための加熱の必要性及びこれによる消費電力量および定着所要時間の増加が予測される技術として、トナージェット、ダイレクトトーニング、トナープロジェクションなどと称される、トナーを記録媒体に対して飛翔、着弾させることによって記録媒体上に画像を直接記録する方式を採用した技術が提案されている(たとえば、〔特許文献4〕参照)。この技術では、トナー着弾前の記録媒体に、トナーに含まれる樹脂を溶解または膨潤させる軟化剤を含む塗布液を塗布することで、直接記録方式での着弾時のトナーの飛び散りを低減し、さらに定着を促進することを狙っている。すなわち、予め記録媒体の表面に軟化剤を含む塗布液を塗布することで、トナーが衝突した時のトナーと印写面との付着力が大きくなり、またトナーが衝突したときの反発力が低減し、トナーの飛び散りが抑制低減され改善されることを狙ったものである。トナーが付着する以前に記録媒体に塗布された塗布液が、記録紙の表面の繊維に吸収された状態となり、水分の吸収により繊維がやわらかくなることで、トナーの着弾時のチリが低減されることを狙ったものであるが、トナーを溶解、膨潤させ定着性に影響をあたえるには、相当量の塗布液がトナーに接触する必要がある。飛翔してきたトナーが記録媒体上に付着するだけでは、記録媒体表面にある極微量の塗布液がトナーに接触するのみであるため、トナー層への塗布液の染み込みが見込めず、トナーの飛び散り低減やのみならず定着性の確保が現実的ではない。またこの技術には、中間転写体に予め液を塗布し、飛翔させたトナーにより作像、記録媒体に接触して転写させる技術も含まれるが、この場合、トナー層への液の染み込みは促されるものの、機内の部材に対して悪影響を及ぼす可能性があるという問題がある。
【0008】
なお、液体を塗布する対象物に液体を塗布するローラとこのローラに液体を供給するローラとの間に、封止板を用いて液体を貯める技術(たとえば、〔特許文献5〕参照)、液体を塗布する対象物に液体を塗布するローラの周面にブレードを当接させ余剰の液体を除去する技術(たとえば、〔特許文献6〕参照)、液体を塗布する対象物に液体を塗布するローラの周面に液体を吸収する部材やワイパーを当接させ、またかかるローラの側面に液体を吸収する部材を当接させて、ローラの回転による液体の飛散を防止する技術(たとえば、〔特許文献7〕参照)が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、定着の際の加熱に要する電力の低減を図るために定着性を向上する液体を用いながら、かかる液体を用いることによる問題すなわち画像の乱れ、乾燥のための消費電力、定着所要時間の増加、機内部材への悪影響の回避、さらにはかかる液体の機能低下の回避を図りつつ、液体現像への適用に限定されずに画像形成を行うことを可能とした技術は未だ提案されていない。
【0010】
なお、定着性を向上する液体を記録媒体に塗布する構成とした場合、この構成として、記録媒体にかかる液体を塗布するローラとこのローラにかかる液体を供給する部材との間にかかる液体が溜まる構成を採用したとすると、かかるローラの回転に伴い、溜まった液体が、ローラの端部を伝って、ローラと記録媒体との対向領域に回り込もうとする現象が見られる。この場合、回り込んだ液体が記録媒体に塗布されると、ローラの端部領域に対応する部分において、記録媒体に塗布される液体量が増加し、塗布量にムラが生じるという問題を生ずる。この問題は、ローラの周面にブレード、液体を吸収する部材、ワイパーを当接させる構成で解消することは難しいと考えられる一方で、ローラの側面に封止板、液体を吸収する部材を当接させる構成では解消される可能性があると考えられる。しかし、封止板を用いた構成により、ローラの端部を伝ってかかる対向領域に回り込もうとする液体を堰き止めるには、封止板を比較的大きな圧力でローラ側面に当接させることを要し、ローラの回転トルクを増大させ、消費電力が上昇するという問題があり、また液体を吸収する部材を用いた構成により、ローラの端部を伝ってかかる対向領域に回り込もうとする液体を吸収するには、かかる部材を比較的大きな面積でローラ側面に当接させることを要し、同様の問題を生ずると考えられる。
【0011】
本発明は、トナー像を構成するトナーを、定着液を用いて記録媒体への定着に適した状態とすることで、定着の際の加熱に要する電力の低減を図りながら、定着液を用いることによる、画像の乱れ、乾燥のための消費電力、定着所要時間の増加、機内部材への悪影響の回避、さらには記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を図りつつ、液体現像に限定されない画像形成を行うことを可能とした、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、トナー像を構成するトナーを膨潤及び軟化させ記録媒体への定着に適した状態にするための可塑剤を含む定着液を、トナー像を担持する前の記録媒体に塗布する定着液塗布手段と、この定着液塗布手段によって前記定着液を塗布された記録媒体に、トナー像担持体上のトナー像を、記録媒体上の前記定着液に接触させながら転写する転写手段と、この転写手段によって転写された記録媒体上のトナー像を構成するトナーと前記定着液とを加熱して同トナーを前記状態にして同トナー像を記録媒体に定着する定着手段とを有し、前記定着液塗布手段は、記録媒体の、前記転写手段によってトナー像を転写される側の面に、表面に担持した前記定着液を塗布する塗布部材を有し、前記塗布部材に前記定着液を供給する供給手段と、前記供給手段から前記塗布部材に前記定着液が受け渡される受け渡し部に溜まった前記定着液を前記受け渡し部外に誘導するための定着液誘導部材とを有する画像形成装置にある。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、前記定着液誘導部材は、前記定着液を前記受け渡し部外に誘導するための経路として、前記塗布部材と前記供給手段とに対向した第1の経路と、前記塗布部材と前記供給手段とに非対向の第2の経路とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の画像形成装置において、前記定着液誘導部材は、前記塗布部材と前記供給手段とに非接触であり、前記受け渡し部に溜まっている前記定着液及び/又は前記受け渡し部の側部から流れ出る前記定着液に接触して前記受け渡し部外に誘導することを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の画像形成装置において、前記定着液誘導部材は、前記塗布部材及び/又は前記供給手段の、前記受け渡し部を形成した部分の側部に接触しており、前記受け渡し部に溜まっている前記定着液及び/又は前記受け渡し部の側部から流れ出る前記定着液に接触して前記受け渡し部外に誘導することを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置において、前記供給手段は、前記塗布部材に対向し同塗布部材に前記定着液を供給する供給部材を有し、前記定着液誘導部材は、前記受け渡し部外に誘導された前記定着液が前記供給部材に再び供給される位置に前記定着液を誘導することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記可塑剤は、トナーを前記状態とする機能が、画像形成装置を使用する環境温度において発現せず、同環境温度を超える昇温時に発現することを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記可塑剤は、画像形成装置を使用する環境温度において、前記定着液とされる前の単体の状態で固体であることを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記転写手段によって記録媒体に転写されるトナー像を担持したトナー像担持体は感光体であることを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記転写手段によって記録媒体に転写されるトナー像を担持したトナー像担持体は感光体に担持されたトナー像を転写される中間転写体であることを特徴とする。
【0021】
請求項10記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記転写手段によって記録媒体に転写されるトナー像を担持したトナー像担持体はトナー担持体に担持されたトナーを転写されトナー像を形成される中間転写体であることを特徴とする。
【0022】
請求項11記載の発明は、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の画像形成装置において、前記定着手段は、ローラ状の定着部材を有し、ローラ定着方式によって定着を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、トナー像を構成するトナーを膨潤及び軟化させ記録媒体への定着に適した状態にするための可塑剤を含む定着液を、トナー像を担持する前の記録媒体に塗布する定着液塗布手段と、この定着液塗布手段によって前記定着液を塗布された記録媒体に、トナー像担持体上のトナー像を、記録媒体上の前記定着液に接触させながら転写する転写手段と、この転写手段によって転写された記録媒体上のトナー像を構成するトナーと前記定着液とを加熱して同トナーを前記状態にして同トナー像を記録媒体に定着する定着手段とを有し、前記定着液塗布手段は、記録媒体の、前記転写手段によってトナー像を転写される側の面に、表面に担持した前記定着液を塗布する塗布部材を有し、前記塗布部材に前記定着液を供給する供給手段と、前記供給手段から前記塗布部材に前記定着液が受け渡される受け渡し部に溜まった前記定着液を前記受け渡し部外に誘導するための定着液誘導部材とを有する画像形成装置にあるので、比較的簡易な構成で定着液を記録媒体に塗布しコストの抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を高効率に用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を図ることができるとともに、定着液誘導部材により受け渡し部に溜まった定着液を受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を図ることができ、これにより良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【0024】
前記定着液誘導部材は、前記定着液を前記受け渡し部外に誘導するための経路として、前記塗布部材と前記供給手段とに対向した第1の経路と、前記塗布部材と前記供給手段とに非対向の第2の経路とを有することとすれば、比較的簡易な構成で定着液を記録媒体に塗布しコストの抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を高効率に用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を図ることができるとともに、定着液誘導部材の第1の経路、第2の経路により受け渡し部に溜まった定着液を受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避をより高度に図ることができ、これにより良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【0025】
前記定着液誘導部材は、前記塗布部材と前記供給手段とに非接触であり、前記受け渡し部に溜まっている前記定着液及び/又は前記受け渡し部の側部から流れ出る前記定着液に接触して前記受け渡し部外に誘導することとすれば、比較的簡易な構成で定着液を記録媒体に塗布しコストの抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を高効率に用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を図ることができるとともに、塗布部材と供給手段とに非接触の定着液誘導部材により受け渡し部に溜まった定着液を受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を、塗布部材、供給手段、定着液誘導部材の磨耗を防止し、また定着液の粘度変化を抑制しつつ図ることができ、これにより経時的に良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【0026】
前記定着液誘導部材は、前記塗布部材及び/又は前記供給手段の、前記受け渡し部を形成した部分の側部に接触しており、前記受け渡し部に溜まっている前記定着液及び/又は前記受け渡し部の側部から流れ出る前記定着液に接触して前記受け渡し部外に誘導することとすれば、比較的簡易な構成で定着液を記録媒体に塗布しコストの抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を高効率に用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を図ることができるとともに、塗布部材及び/又は供給手段の、受け渡し部を形成した部分の側部に接触した接触定着液誘導部材により受け渡し部に溜まった定着液をより確実に受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を図ることができ、これにより良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【0027】
前記供給手段は、前記塗布部材に対向し同塗布部材に前記定着液を供給する供給部材を有し、前記定着液誘導部材は、前記受け渡し部外に誘導された前記定着液が前記供給部材に再び供給される位置に前記定着液を誘導することとすれば、比較的簡易な構成で定着液を循環させて記録媒体に塗布しコストのより高度な抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を高効率に用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を図ることができるとともに、定着液誘導部材により受け渡し部に溜まった定着液を受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を図ることができ、これにより良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【0028】
前記可塑剤は、トナーを前記状態とする機能が、画像形成装置を使用する環境温度において発現せず、同環境温度を超える昇温時に発現することとすれば、比較的簡易な構成で定着液を記録媒体に塗布しコストの抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を高精度に図ることができるとともに、定着液誘導部材により受け渡し部に溜まった定着液を受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を図ることができ、これにより良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【0029】
前記可塑剤は、画像形成装置を使用する環境温度において、前記定着液とされる前の単体の状態で固体であることとすれば、比較的簡易な構成で定着液を記録媒体に塗布しコストの抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を、定着液とされる前の単体の状態で固体であることを指標に選択された可塑剤を用いることで図ることができるとともに、定着液誘導部材により受け渡し部に溜まった定着液を受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を図ることができ、これにより良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【0030】
前記転写手段によって記録媒体に転写されるトナー像を担持したトナー像担持体は感光体であることとすれば、構造の簡易化及びこれによるコストの抑制を図ることができ、また比較的簡易な構成で定着液を記録媒体に塗布しコストの抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を図ることができるとともに、定着液誘導部材により受け渡し部に溜まった定着液を受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を図ることができ、これにより良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【0031】
前記転写手段によって記録媒体に転写されるトナー像を担持したトナー像担持体は感光体に担持されたトナー像を転写される中間転写体であることとすれば、感光体及び感光体に当接した他の部材への定着液の付着及びこれによる不具合の抑制を図ることができ、また比較的簡易な構成で定着液を記録媒体に塗布しコストの抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を図ることができるとともに、定着液誘導部材により受け渡し部に溜まった定着液を受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を図ることができ、これにより良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【0032】
前記転写手段によって記録媒体に転写されるトナー像を担持したトナー像担持体はトナー担持体に担持されたトナーを転写されトナー像を形成される中間転写体であることとすれば、中間転写体から他の部材への定着液の付着及びこれによる不具合の抑制を図ることができ、また比較的簡易な構成で定着液を記録媒体に塗布しコストの抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を図ることができるとともに、定着液誘導部材により受け渡し部に溜まった定着液を受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を図ることができ、これにより良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【0033】
前記定着手段は、ローラ状の定着部材を有し、ローラ定着方式によって定着を行うこととすれば、比較的簡易な構成で均一な加熱及びこれによる定着性の向上を図ることができ、また比較的簡易な構成で定着液を記録媒体に塗布しコストの抑制及び定着性の向上を図ることができるとともに、液体現像に限定されることなく、定着液を用いることで定着に要する温度を低減し加熱についての省エネルギー化を図りつつ定着性を確保しながら、定着液を用いることによる機内部材への不具合の回避を図ることができるとともに、定着液誘導部材により受け渡し部に溜まった定着液を受け渡し部外に誘導することで塗布部材の端部から定着液が回り込んで記録媒体に付着することによる記録媒体に塗布される定着液の量のムラの回避を図ることができ、これにより良好な画像形成を行い得る画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の概略正面図である。
【図2】図1に示した定着装置を制御する制御系の一部のブロック図である。
【図3】加熱によってトナーを膨潤及び軟化させる機能を発現する可塑剤によって定着下限温度が低下することを示す概念図である
【図4】加熱によってトナーを膨潤及び軟化させる機能を発現する可塑剤によってスミア性が向上することを示す実験結果を表した図である。
【図5】トナーを記録媒体に接触させて転写したときと非接触で転写したときとで定着液がトナーに付着する態様が異なることを示した概念図である。
【図6】トナーを記録媒体に接触させて転写したときにトナーに付着した定着液が加熱によりトナーを膨潤及び軟化させ定着に適した状態となることを示した概念図である。
【図7】図1に示した定着液塗布手段及びこれを制御する制御系の一部の概略構成図である。
【図8】図7に示した定着液塗布手段の概略平面図である。
【図9】図7に示した定着液塗布手段に備えられた定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図10】図7に示した定着液塗布手段に備えられる別の構成例の定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図11】図7に示した定着液塗布手段に備えられるまた別の構成例の定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図12】図7に示した定着液塗布手段に備えられるさらに別の構成例の定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図13】図7に示した定着液塗布手段に備えられるさらにまた別の構成例の定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図14】図7に示した定着液塗布手段に備えられるさらにまた別の構成例の定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図15】図7に示した定着液塗布手段に備えられるさらにまた別の構成例の定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図16】図7に示した定着液塗布手段に備えられるさらにまた別の構成例の定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図17】図7に示した定着液塗布手段に備えられるさらにまた別の構成例の定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図18】図7に示した定着液塗布手段に備えられるさらにまた別の構成例の定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図19】図7に示した定着液塗布手段の別の構成例の概略側面図である。
【図20】図19に示した定着液塗布手段の概略平面図である。
【図21】図19に示した定着液塗布手段に備えられた定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図22】図19に示した定着液塗布手段の概略正面図である。
【図23】図19に示した定着液塗布手段に備えられた定着液誘導部材の一部の拡大概略正面図である。
【図24】図19に示した定着液塗布手段の別の状態の概略正面図である。
【図25】図24に示した状態における、図19に示した定着液塗布手段に備えられた定着液誘導部材の拡大概略側断面図である。
【図26】図19に示した定着液塗布手段の別の構成例の概略側面図である。
【図27】図26に示した定着液塗布手段に備えられた定着液誘導部材の拡大概略平面図である。
【図28】図26に示した定着液塗布手段に備えられた定着液誘導部材の拡大概略側断面図である。
【図29】本発明を適用した他の構成の画像形成装置の一部の概略正面図である。
【図30】本発明を適用した別の構成の画像形成装置の一部の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に本発明を適用した画像形成装置の概略を示す。画像形成装置100は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機であってフルカラーの画像形成を行うことが可能になっているが、他の画像形成装置、すなわち、モノクロ機や、複写機、プリンタ、ファクシミリの単体、あるいは複写機とプリンタとの複合機等他の複合機であっても良い。画像形成装置100は、プリンタとして用いられる場合には、外部から受信した画像情報に対応する画像信号に基づき画像形成処理を行なう。これは画像形成装置100がファクシミリとして用いられる場合も同様である。
【0036】
画像形成装置100は、一般にコピー等に用いられる普通紙の他、OHPシートや、カード、ハガキ等の厚紙や、封筒等の何れをも転写媒体としてのシート状の記録媒体としてこれに画像形成を行なうことが可能である。画像形成装置100は、記録媒体である用紙としての記録体である記録材たる転写紙Sの両面に画像形成可能な両面画像形成装置でもある。
【0037】
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に色分解された色にそれぞれ対応する像としての画像を形成可能なドラム状の像担持体としての潜像担持体である感光体たる感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを、転写ベルト11の張り渡し方向に沿って4連タンデム式に並べて設け平行配設したタンデム構造、言い換えるとタンデム方式を採用している。
【0038】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、画像形成装置100のプリンタ部として機能する本体99の図示しないフレームに回転自在に支持され、中間転写体である転写体たる中間転写ベルトとしてのトナー像担持体である転写ベルト11の移動方向であって図1において反時計回り方向であるA1方向の上流側からこの順で並んでいる。各符号の数字の後に付されたY、M、C、BKは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している。
【0039】
各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(BK)の画像を形成するための作像装置としての画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられている。
【0040】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、本体99の内部のほぼ中央部に配設された無端のベルトとして構成されたエンドレスの転写ベルト11の外周面側すなわち作像面側に、その回転軸が互いに平行となるとともに転写ベルト11の移動方向であるA1方向に等間隔の所定のピッチで配列された状態で位置している。
【0041】
転写ベルト11は、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対峙しながら矢印A1方向に移動可能となっている。各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成された可視像すなわちトナー像は、矢印A1方向に移動する転写ベルト11に対しそれぞれ重畳転写され、その後、転写紙Sに一括転写されるようになっている。よって画像形成装置100は中間転写方式の画像形成装置となっている。したがって画像形成装置100はタンデム型間接転写方式の電子写真装置となっている。
【0042】
転写ベルト11は、その下側の部分が各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向しており、この対向した部分である対向位置が、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上のトナー像を転写ベルト11に転写する1次転写領域としての1次転写部58を形成している。
【0043】
転写ベルト11に対する重畳転写は、転写ベルト11がA1方向に移動する過程において、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに形成されたトナー像が、転写ベルト11の同じ位置に重ねて転写されるよう、転写ベルト11を挟んで各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向する位置に配設された1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによる電圧印加によって、A1方向上流側から下流側に向けてタイミングをずらして行われる。
【0044】
画像形成装置100は、本体99内に、4つの作像装置としての画像形成ステーションである画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKと、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの上方に対向して配設され、転写ベルト11を備えた中間転写装置たる一次転写ユニットとしての中間転写ユニットである転写ベルトユニット10と、図1における転写ベルト11の右側において転写ベルト11に対向して配設された2次転写手段としての転写手段である二次転写ユニットたる2次転写装置5と、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKの下方に対向して配設された潜像形成手段としての光書込みユニットである光学ユニットとしての書き込み装置たる露光装置としての光走査装置8とを有している。
【0045】
画像形成装置100はまた、本体99内の光走査装置8の下方に、転写ベルト11と2次転写装置5との間の2次転写領域としての2次転写部57に向けて搬送される転写紙Sを多数枚積載可能な給紙ユニットとしての給紙トレイである給紙装置たる給紙手段としてのシート給送装置61と、シート給送装置61から搬送されてきた転写紙Sを、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKによるトナー像の形成タイミングに合わせた所定のタイミングで、2次転写部57に向けて繰り出す搬送ローラとしてのレジストローラ対4と、転写紙Sの先端がレジストローラ対4に到達したことを検知する図示しないセンサとを有している。
【0046】
画像形成装置100はまた、本体99内に、トナー像を転写された転写紙Sに同トナー像を定着させるためのローラ定着方式の定着ユニットとしての定着部である定着装置6と、レジストローラ対4から2次転写部57に向けて送り出された転写紙Sすなわち2次転写部57においてトナー像を転写され担持する前の転写紙Sに後述する定着液を塗布する定着液塗布手段としての定着液塗布ユニットである定着液塗布装置41と、定着済みの転写紙Sを本体99の外部に排出する排出ローラである排紙ローラ対としての排紙装置である排紙ローラ7と、転写ベルトユニット10の上方に配設され、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーを充填されたトナーボトル9Y、9M、9C、9BKと、本体99の上側に配設され排出ローラ7により本体99の外部に排出された転写紙Sを積載する、胴内排紙部によって形成された排紙トレイ17とを有している。
【0047】
画像形成装置100はまた、本体99の、同図における右側面に取り付けられた両面ユニット51と、本体99の上側に位置し原稿を読み取るスキャナとしての画像読取装置である読取装置98とを有している。
【0048】
画像形成装置100はまた、本体99内に、同図における右側に下方から上方に向けて形成され、その中途部に2次転写部57、レジストローラ対4、定着装置6及び排紙ローラ7が設けられ、シート給送装置61から繰り出された転写紙Sが進入する用紙搬送路81と、用紙搬送路81における転写紙Sの搬送方向においてレジストローラ対4の上流側で両面ユニット51から用紙搬送路81に合流する給紙路82と、用紙搬送路81における転写紙Sの搬送方向において定着装置6の下流側で用紙搬送路81から両面ユニット51に向けて分岐した再給紙搬送路83とを有している。
【0049】
画像形成装置100はまた、本体99内に、各感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKを回転駆動する図示しない駆動装置と、画像形成装置100の動作全般を制御する演算部としてのCPU、記憶手段としての記憶部たるメモリ等を含む制御手段91と、外部電源から給電され画像形成装置100に備えられている各構成に給電する図示しない電源ユニットとしての電源とを有している。
【0050】
画像形成装置100はまた、本体99の外面に、画像形成開始指示を行うための図示しないスタートスイッチ、転写紙Sの厚みを入力する紙種入力手段としての紙種入力キー等を備え画像形成装置100の動作、作動態様を指定することが可能となっているとともに、所定の表示を行うための表示手段としての図示しない液晶表示装置を備えた図示しない操作パネルを有している。
図1に示すように、画像形成装置100は、排紙トレイ17が本体99の上方でかつ読取装置98の下側に位置した胴内排紙型の画像形成装置である。
【0051】
転写ベルトユニット10は、転写ベルト11の他に、1次転写バイアスローラとしての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、転写ベルト11を巻き掛けられ掛けまわした複数のローラとしての、駆動部材である駆動ローラ72と、張架ローラとしてのクリーニング対向ローラ74と、駆動ローラ72及びクリーニング対向ローラ74とともに転写ベルト11を張架する支持ローラとしての張架ローラ33、34と、転写ベルト11の外側から転写ベルト11に当接しクリーニング対向ローラ74とともに転写ベルト11に所定の張力を与えるためのテンションローラ75とを有している。
【0052】
転写ベルトユニット10はまた、クリーニング対向ローラ74に対向する位置において転写ベルト11に対向して配設され転写ベルト11表面をクリーニングする中間転写体クリーニング装置であるベルトクリーニング装置としてのクリーニング装置13と、駆動ローラ72を回転駆動する図示しない駆動系としてのベルト駆動装置と、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKに1次転写バイアスを印加し1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKとともに一次転写装置をそれぞれ構成する図示しないバイアス印加手段としての電源及びバイアス制御手段とを有している。
【0053】
クリーニング対向ローラ74、張架ローラ33、34、テンションローラ75は、駆動ローラ72によって回転駆動される転写ベルト11に連れ回りする従動ローラとなっている。1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKは、転写ベルト11をその裏面から感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに向けて押圧してそれぞれ1次転写ニップを形成する。この1次転写ニップは、転写ベルト11の、クリーニング対向ローラ74と張架ローラ33との間でほぼ水平に張り渡した部分において形成されている。クリーニング対向ローラ74、張架ローラ33、テンションローラ75は、1次転写ニップを安定化する機能を有する。
【0054】
各1次転写ニップには、1次転写バイアスの影響により、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKと1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKとの間に1次転写電界が形成される。感光体ドラム20Y、20M、20C、20BK上に形成された各色のトナー像は、この1次転写電界やニップ圧の影響によって転写ベルト11上に1次転写される。
【0055】
駆動ローラ72は、転写ベルト11を介して2次転写装置5を当接されており、2次転写部57を形成している。
クリーニング対向ローラ74は、テンションローラ75とともに、転写ベルト11に、転写に適した所定の張力を与える加圧部材としてのテンションローラたる機能を有している。
【0056】
クリーニング装置13は、図1において転写ベルトユニット10の左下方、具体的にはクリーニング対向ローラ74の下方に配設されている。クリーニング装置13は、図示を省略するが、クリーニング対向ローラ74に対向する位置で転写ベルト11に当接するように配設されたクリーニング部材としてのブラシローラ及びクリーニングブレードと、クリーニング部材をその内部に収容したケースと、図1においてケースの紙面手前側に配設された廃トナー回収ボトルとを有している。
【0057】
クリーニング装置13は、転写ベルト11上の残留トナー等の異物をクリーニング部材で掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。転写ベルト11から除去されたかかる異物は廃トナーボトルとしての廃トナー回収ボトルに貯蔵される。廃トナー回収ボトルは前面パネルを開いた状態で図1における紙面手前側に取り出し可能となっており、内部の異物が満杯になったときに新たなものと交換可能になっている。なお、後述するクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKも同様に交換可能な廃トナー回収ボトルを有している。
【0058】
2次転写装置5は、詳細な図示を省略するが、駆動ローラ72に対向して配置され転写ベルト11に当接した転写部材である2次転写ローラと、2次転写ローラを転写ベルト11に向けて付勢し2次転写ローラと転写ベルト11との間でニップである2次転写部57を形成した付勢手段としてのバネとを有している。2次転写ローラは、電源によってトナーと逆極性の電圧が印加され、バネによる転写ベルト11への圧接のみならず、バイアスによっても転写ベルト11上のトナー像を転写紙Sに転写させる。2次転写ローラは、トナー像を転写された転写紙Sを定着装置6へと搬送するシート搬送機能も有している。バネは、2次転写部57に送り込まれた転写紙Sを転写ベルト11に密着させ、転写ベルト11上に担持されているトナー像を、転写紙Sの、定着液塗布装置41によって定着液を塗布されている側の面に圧接の態様で接触させながら転写させるために備えられている。
【0059】
光走査装置8は、図示を省略するが、半導体レーザー等の光源、ポリゴンミラー、F−θレンズ、反射ミラー等を備え、形成すべき画像に対応したデータに基づいて制御手段91によって光源が発光制御されるとともにポリゴンミラーが回転駆動制御されることで、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKのそれぞれの表面に、レーザー光を走査しながら照射し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した静電潜像を形成する。
【0060】
シート給送装置61は、転写紙Sを複数枚重ねた転写紙束の状態で収容するものであり、本体99の下部において光走査装置8の下方に配設されている。シート給送装置61は、複数枚の転写紙Sを紙束の状態で収容可能な鉛直方向に複数重なるように、本形態では2段に備えられた給紙カセット25と、各給紙カセット25に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙Sの上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ24と、給紙ローラ24によって送り出された転写紙Sのうちの1枚のみを分離してさらに搬送する図示しない分離ローラと、給紙カセット25が本体99に対して開閉されたことを検出する図示しない検出手段としての開閉検知センサとを有しており、給送ローラ24が所定のタイミングで反時計回り方向に回転駆動されることにより、最上位の転写紙Sをレジストローラ対4に向けて給送するようになっている。
【0061】
シート給送装置23は、給送ローラ24が選択的に図中反時計回り方向に回転駆動され、分離ローラが作用することにより、その給紙カセット25に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙Sを用紙搬送経路81に入れてレジストローラ対4に向けて給送し、搬送された転写紙Sがレジストローラ対4のローラ間に挟まれた状態で突き当られ止められるようになっている。
【0062】
両面ユニット51は、外側面側に配設された手差し給紙装置53と、手差し給紙装置53から両面ユニット51内を横切るように配設された、給紙路82の一部と、再給紙搬送経路83を経た転写紙Sを給紙路82に向けて反転して搬送する反転搬送経路21と、反転搬送経路21中に配設され転写紙Sを給紙路82に向けて搬送する搬送ローラ23とを有している。
【0063】
手差し給紙装置53は、転写紙Sを積載可能な手差し給紙トレイとしての手差しトレイ27と、手差しトレイ27に積載された転写紙Sのうち最上位の転写紙の上面に当接する給紙ローラとしての給送ローラ28と、給送ローラ28により繰り出された転写紙を1枚ずつ分離する図示しない分離ローラとを有している。
【0064】
手差し給紙装置53は、給送ローラ28が図中時計回り方向に回転駆動され、分離ローラが作用することにより、最上位の転写紙Sをレジストローラ対4に向けて給送し、搬送された転写紙Sがレジストローラ対4のローラ間に挟まれた状態で突き当られ止められるようになっている。
【0065】
定着装置6は、ローラ状の定着部材としての定着ローラ65と、定着ローラ65に圧接し転写紙Sを押圧する圧接部である定着部としての定着ニップ62を形成するためのローラ状の加圧部材としての加圧ローラ63と、定着ローラ65の内部に配設され定着ローラ65を加熱して定着ニップ62を所定の温度に加熱するための加熱手段としての定着熱源たるハロゲンヒータであるヒータ66と、定着ローラ65の外周面に近接して配設され定着ローラ65の温度を検知する定着部材温度検知手段である温度検知手段としての非接触型のサーミスタ68とを有している。
【0066】
定着装置6はまた、図2に示すように、ヒータ66を駆動する加熱駆動手段としてのPWM駆動回路92aと、後述する温度に設定された定着ローラ65の目標制御温度とサーミスタ68により検知された定着ローラ65の温度との間の温度偏差の情報を基にPWM駆動回路92aを通してヒータ66への印加電力を単位時間当たりの通電時間(=DUTY)で制御し定着ローラ65の温度を制御する加熱駆動制御手段としての定着温度制御手段である温度コントローラとしての定着温度コントローラ92bとを有している。
【0067】
PWM駆動回路92aと定着温度コントローラ92bとは、制御手段91の一機能として実現されている。この点、制御手段91は、定着温度制御手段として機能する。定着温度制御手段として機能する制御手段91は、定着ローラ65の温度制御を行うことで、実質的に、定着ニップ62の温度制御を行うものである。
【0068】
定着装置6は、トナー像を担持した転写紙Sを定着ニップ62に挟み込む態様で通し、定着ローラ65が転写紙Sのトナー像を担持した画像面に接触することで、熱と圧力との作用により、担持したトナー像を構成しているトナーを溶融させて圧着し、転写紙Sの表面に定着するようになっている。
【0069】
なお、同図に示されているように定着ニップ62に進入してくる転写紙Sには、すでに、トナーを担持している側の面に、定着液塗布装置41によって定着液を塗布されているが、同図において定着液の図示は省略している。
定着装置6のその余については後述する。
【0070】
トナーボトル9Y、9M、9C、9BK内のイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色のトナーは、重合トナーであって、図示しない駆動手段によって回転されることでトナーを吐出し、図示しないパイプ等によって構成された搬送経路を経て、所定の補給量だけ、後述するように画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKに備えられた現像装置80Y、80M、80C、80BKに補給される。
【0071】
読取装置98は、詳細な図示を省略するが、原稿を載置するコンタクトガラス、コンタクトガラスに載置された原稿に光を照射する光源及び光源から原稿に照射され反射された光を反射する第1の反射体を備え図1における左右方向に走行する第1走行体、第1走行体の反射体によって反射された光を反射する第2の反射体を備えた第2走行体、第2走行体からの光を結像するための結像レンズ、結像レンズを経た光を受け原稿の内容を読み取る読み取りセンサ等を備えている。
【0072】
画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKは互いに同様の構成となっている。画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKはそれぞれ、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの周囲に、図1中時計方向であるその回転方向B1に沿って、プロセス手段として、1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKと、クリーニング手段としてのクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKと、除電手段としての図示しない除電装置と、AC帯電を行なう帯電手段としての図示しない帯電ローラを備えた帯電装置79Y、79M、79C、79BKと、トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤である現像剤により現像を行う現像手段としての現像装置80Y、80M、80C、80BKとを有している。
【0073】
これらは周知の構成であって、たとえば、現像装置80Y、80M、80C、80BKは、詳細な図示を省略するが、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに対向した現像剤担持体としての現像ローラ、現像剤を搬送しながら撹拌するスクリュー、現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度検知センサとしてのトナー濃度センサ、トナー濃度センサの出力に応じてトナーボトル9Y、9M、9C、9BK内のトナーを装置本体内に補給するトナー補給手段としてのトナー補給装置等を有し、現像ローラは、装置本体側に固定された磁石と、この磁石の外側に回転自在に支持されたスリーブとを有している。
【0074】
感光体ドラム20Y、クリーニング装置71Y、除電装置、帯電装置79Y、現像装置80Yは、一体化されてプロセスカートリッジを構成している。感光体ドラム20M、20C、20BKの周りの各構成も同様にそれぞれ一体化されてプロセスカートリッジを構成している。これらプロセスカートリッジは、前面パネルを開いた状態で図1における手前側である感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKの回転軸方向に着脱可能となっている。このようにプロセスカートリッジ化することは、交換部品として取り扱うことができるため、メンテナンス性が著しく向上し、大変好ましい。
【0075】
このような構成の画像形成装置100においては、スタートスイッチの押下等により画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKにおいてそれぞれ次の画像形成プロセスが実行されること等によって、画像形成が行われる。すなわち、カラー画像を形成すべき旨の信号が入力されると、適宜、読取装置98において原稿の読み取りが行われる等して形成すべき画像に対応したデータが取得され制御手段91に入力されるとともに、駆動ローラ72が駆動され、転写ベルト11、クリーニング対向ローラ74、張架ローラ33、34、テンションローラ75が従動回転するとともに、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKがB1方向に回転駆動される。
【0076】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKはそれぞれ、B1方向への回転に伴い、電源からの電力供給を受けた、帯電装置79Y、79M、79C、79BKの帯電ローラにより表面を一様に帯電され、形成すべき画像に対応したデータに基づいて制御手段91によって駆動される光走査装置8からのレーザー光の露光走査によりイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に対応した静電潜像を書き込まれて形成され、この静電潜像を現像装置80Y、80M、80C、80BKによりイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーにより現像されて顕像化され、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像によって構成された単色画像が形成される。
【0077】
現像により得られたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像は、順次、電源によってトナーと逆極性の電圧が印加された1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによって、A1方向に回転している転写ベルト11上の同じ位置に重ねて転写され、転写ベルト11上には合成カラー画像が形成される。
【0078】
一方、カラー画像を形成すべき旨の信号の入力に伴い、各給紙カセット25に対応する給紙ローラ24、手差しトレイ27に対応する給送ローラ28の何れかが選択されて回転駆動され、転写紙Sを繰り出すとともに1枚ずつ分離して搬送し、搬送された転写紙Sはレジストローラ対4に突き当てられた状態で停止する。両面画像形成の場合は、定着装置6においてその片面に後述のように画像が定着された転写紙Sが、反転搬送経路21を通って表裏反転された状態で、レジストローラ対4に突き当てられた状態で停止する。
【0079】
転写ベルト11上に重ね合わされた合成カラー画像が転写ベルト11のA1方向の回転に伴って2次転写部57まで移動するタイミングに合わせて、レジストローラ対4が回転し、レジストローラ対4の回転によって送り出された転写紙Sは、定着液塗布装置41によって、2次転写部57でトナー像である合成カラー画像が転写される側の面に定着液を塗布される。
【0080】
定着液を塗布された転写紙Sは、2次転写部57において、合成カラー画像を、転写ベルト11に向けて付勢された2次転写ローラによって密着され、ニップ圧、及び電源によって2次転写ローラに印加された、合成カラー画像を構成しているトナーと逆極性の電圧の作用によって転写紙Sに2次転写され、記録される。
【0081】
転写紙Sは2次転写装置5およびA1方向に回転する転写ベルト11によって搬送されて定着装置6に送り込まれ、定着装置6において定着ローラ65と加圧ローラ63との間の定着部である定着ニップ62を通過する際、熱と圧力との作用及び後述する定着液の作用により、担持したトナー像すなわち合成カラー画像を定着される。
【0082】
定着装置6を通過した、合成カラー画像を定着済みの転写紙Sは、排紙ローラ7を経て本体99外に排出され、本体99の上部の排紙トレイ17上にスタックされる。両面画像形成の場合は、片面に定着済みの転写紙Sは再給紙経路83及び反転搬送経路21を通って再度レジストローラ対4に向けて搬送される。
【0083】
感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKは、転写後に残留した転写残トナーをクリーニング装置71Y、71M、71C、71BKにより除去され、除電装置によって除電され、帯電装置79Y、79M、79C、79BKによる次の帯電に供される。
【0084】
2次転写を終えた2次転写部57を通過後の転写ベルト11は、クリーニング装置13に備えられたクリーニング部材によってその表面をクリーニングされ、次の転写に備える。
【0085】
このような画像形成を行うのに用いられる定着液について説明する。
定着液は、2次転写部57において転写紙Sに転写され担持されるトナー像を構成するトナーを、膨潤及び軟化させ転写紙Sへの定着に適した状態にするための可塑剤と、かかるトナー像を構成しているトナー相互間への定着液の浸透性を向上するための界面活性剤と、これら可塑剤及び界面活性剤の希釈液として機能する溶媒とを含んでいる。
【0086】
可塑剤は、熱を与えられたとき軟化機能を示す固体可塑剤を採用している。熱を与えられたとき、とは、画像形成装置100においては、定着装置6による定着の際に加熱されたときであり、画像形成装置100が使用される一般的な環境温度すなわち常温から40〜50℃程度以下の温度を超えたとき、をいう。かかる環境温度は、たとえばオフィスの温度であり、またあるいは、本体99内における、昇温動作中の定着装置6やその周辺の雰囲気の温度を除く温度である。
【0087】
そのため、可塑剤は、たとえば2次転写部57において転写ベルト11、2次転写ローラに付着するなど、定着装置6を除く画像形成装置100の構成に付着しても、その機能が発現せず、かかる構成に付着したことによる機内汚染の不具合が生じることが防止ないし抑制される。
【0088】
その一方で、定着装置6により加熱され昇温してかかる環境温度を超える昇温時には、トナーを、膨潤及び軟化させ転写紙Sへの定着に適した状態とする機能が発現する。この機能について図3を用いて説明すると次のとおりである。
【0089】
図3は、トナーが定着に適した状態となる温度のうちの下限温度すなわち定着下限温度が、可塑剤によって低下することを示す概念図である。同図において、貯蔵弾性率とは、トナーの硬さを示す値であり、貯蔵弾性率が高ければトナーが硬く低ければトナーが柔らかいことを意味する。貯蔵弾性率がK以下であれば、トナーが転写紙Sに固定され定着が行われ得る状態となる。よって貯蔵弾性率がKのときの温度が定着下限温度である。また同図において、固体可塑剤とは、画像形成装置100において使用する定着液に使用される可塑剤を意味している。この可塑剤は、かかる環境温度において、定着液とされる前の単体の状態で、固体であるためである。また同図において、液体可塑剤とは、かかる環境温度において、単体の状態で液体のものを意味している。
【0090】
同図に示されているように、固体可塑剤が含まれた定着液がトナーに付与されると、定着下限温度が、定着液不使用のときの定着下限温度T2よりも低いT1となる。よって、定着ローラ65の目標制御温度を、定着液不使用の場合に比べて低く設定することが可能となり、定着装置6、画像形成装置100の消費電力を低減可能となる。
【0091】
同図にはまた、同図示の液体可塑剤が、T1より低い温度、たとえば環境温度に含まれる常温でトナーを軟化等する能力をもつことが示されているとともに、固体可塑剤を含んだ定着液は、かかる液体可塑剤がトナーを軟化等する機能を持つ温度では機能せず、かかる液体可塑剤を含んだ定着液と異なり、かかる環境温度では軟化能力をほとんど持たないことが示されている。よって、かりに液体可塑剤を含む定着液を使用したとすれば、機内汚染を生ずるが、画像形成装置100では、固体可塑剤を含む定着液を用いることにより、機内汚染が生じることがない。トナーの貯蔵弾性率を低下させる機能を有する可塑剤が、常温等の環境温度で単体で固体であるか液体であるかが、その可塑剤を定着液としたときに機内汚染を生じ得るか否かの1つの指針となるため、画像形成装置100で用いる定着液を構成する可塑剤は、環境温度で単体で固体であることを選択の1つの基準としている。
【0092】
固体可塑剤は、分子鎖中に、エチレンオキサイド基−(CHCHO)−やプロピレンオキサイド基−(CH(CH)CHO)−を含む化合物で、一般にグリコールエーテル類やグリコール脂肪酸エステル類と呼ばれているもののうち、常温では固体で、融点が40℃以上、望ましくは50℃以上である材料である。
【0093】
具体的には、化合物(1)であらわされるポリオキシエチレングリコール類が望ましい。
HO−(CHCHO)n−OH・・・(1)
nは10以上で100以下が望ましい。nが10未満では、室温で固体にならず、nが100より大きい場合、分子が大きくなりすぎて、熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。具体的材料としては、ポリエチレングリコール#1000、ポリエチレングリコール#1540、ポリエチレングリコール#2000、ポリエチレングリコール#4000、ポリエチレングリコール#6000、ポリエチレングリコール#8000などが適する。
【0094】
または、化合物(2)であらわされるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類も望ましい。
HO−(CHCHO)n(CH(CH)CHO)m−OH・・・(2)
nは10以上で200以下が望ましい。mは5以上で50以下が望ましい。nが10未満では、室温で固体にならず、nが200より大きい場合、分子が大きくなりすぎて、熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。mが5未満では、室温で固体にならず、mが50より大きい場合、分子が大きくなりすぎて、熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。具体的材料としては、花王(株)のエマルゲン290や第一工業製薬のエパン450、エパン750、エパン785などが適する。
【0095】
または、化合物(3)であらわされるポリオキシエチレンアルキルエーテル類が望ましい。
R−O−(CHCHO)n−OH・・・(3)
nは10以上で100以下が望ましい。nが10未満では、室温で固体にならず、nが100より大きい場合、分子が大きくなりすぎて、熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。
Rは直鎖のアルキル基又は分岐型のアルキル基で、炭素数は、10以上で22以下が望ましい。炭素数10未満だと固体として柔らかく、また、皮膚刺激や眼刺激など安全性の問題がある。炭素数22より大きいと、熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。具体的材料としては、花王(株)のエマルゲン350、エマルゲン420、エマルゲン4085、日本エマルジョン(株)のEMALEX611、EMALEX620、EMALEX710、EMALEX720などが適する。
【0096】
また、化合物(4)や化合物(5)であらわされるポリオキシエチレン脂肪酸エステル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル類が望ましい。
R−COO−(CH2CH2O)n−OH・・・(4)
R−COO−(CH2CH2O)n−COO−R’・・・(5)
nは10以上で100以下が望ましい。nが10未満では、室温で固体にならず、nが100より大きい場合、分子が大きくなりすぎて、熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。R及びR’はノルマル型のアルキル基又は分岐型のアルキル基で、炭素数は、10以上で22以下が望ましい。炭素数10未満だと固体として柔らかく、また、皮膚刺激や眼刺激など安全性の問題がある。炭素数22より大きいと、熱を加えたときの可塑能力が低く、トナーが軟化しにくくなる。具体的材料としては、花王(株)のエマノーン3199V、エマノーン3299RV、日本エマルジョン(株)のEMALEX820、EMALEX830などが適する。
【0097】
界面活性剤は、トナー層への定着液の浸透性をよくするために使用する。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が適する。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類やアセチレン系界面活性剤が望ましい。具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキル(12−14)エーテル(12E.O.)やポリオキシエチレンアルキル(12−14)エーテルで日光ケミカルズ社のBT−12など、アセチレン系界面活性剤としては、アセチレングリコールが優れ、日信化学工業(株)のオルフィン1010やオルフィン4051Fなどが適する。
【0098】
これらの材料の溶媒である希釈液には、水が適する。市水はカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの不純物が多く含まれるため、これらの金属イオンをある程度除去した水が望ましい。ただし、水としては、蒸留水である必要はなく、イオン交換膜にて不純物イオンを除去した水、所謂、イオン交換水が適する。
【0099】
かかる固体可塑剤を含んだ定着液を塗布された転写紙Sにトナー像を定着させるための加熱温度すなわち定着ローラ65の目標制御温度について説明する。
かかる定着液を使用するため、すでに述べたように、定着下限温度が低下するが、定着下限温度は一般に、所定のスミア性を確保する温度に設定される。スミア性は、加熱定着後の記録媒体を擦った際のトナー汚れに関する指標であり、トナー汚れの濃度を表す数値が低いほどトナー汚れの濃度が低くすなわちトナー汚れが少なく定着性が良好であることを示し、後述するようにして得られるスミアIDが0.40以下であれば実使用上許容されるものとされている。したがって、貯蔵弾性率がK以下となり、スミアIDが0.40以下となる定着ローラ65の温度が、定着ローラ65の目標制御温度とされる。
【0100】
図4に示すように、画像形成装置100では、定着液を不使用の、熱定着のみの定着構成をもつ画像形成装置と比較して、同じ温度条件下でのスミア性が向上している。同図は、トナー像を転写される前に定着液を予め転写紙Sに塗布した画像形成装置100と、熱定着のみの画像形成装置とで、摩擦試験結果であるスミア試験結果を行った場合の比較を示している。定着液は、固体可塑剤としてポリエチレングリコール#2000を用いるとともに、界面活性剤としてオルフィン4051Fを用い、これらを溶媒であるイオン交換水で希釈し、それぞれ25wt%、0.5wt%とした液である。
【0101】
このスミア試験は、スミア試験器(摩擦試験機I型、JIS L0823、摩擦子径:15φ)を用いて行った。摩擦子に、25×25mm程度の白綿布(JIS L0803 綿3号)を繊維方向が摩擦子の可動方向と水平になるように両面テープで貼り付けた。そして、評価画像を5往復、連続動作にて擦った。評価画像は画像面積率55%のハーフトーン画像と100%の全ベタ画像である。白綿布をはがし、画像が付着している摩擦子跡における任意の3箇所の画像濃度を、分光計(X−Rite社製、938スペクトロデンシトメータ)を用いて測定し、その平均値をスミアIDとした。上述のように、このスミアIDが低いほど定着画像を擦ったときのトナーによる汚れが少なく、0.40以下であれば実使用上許容される。
【0102】
よって、同図より、画像形成装置100では、定着ローラ65の目標制御温度すなわち設定温度が121℃でもスミア性が確保され、熱定着のみの画像形成装置では、設定温度を139℃としなければスミア性が確保されないことがわかる。
【0103】
画像形成装置100では、かかる試験結果を踏まえて、定着温度設定言い換えると目標制御温度を121℃としている。この温度は、熱定着のみの画像形成装置における定着下限温度よりも18℃低く、したがって、画像形成装置100は、かかる画像形成装置より省電力となり、低環境負荷の画像形成装置となっている。なお、本形態では、上述のように、固体可塑剤としてポリエチレングリコール#2000、界面活性剤としてオルフィン4051Fをそれぞれ25wt%、0.5wt%含んだ定着液を採用しているが、可塑剤の濃度を調整することで、スミア性を確保する温度は変更可能であり、定着設定温度はこの限りではない。
【0104】
画像形成装置100においてスミア性が向上し、定着設定温度が従来に比べて非常に低い温度とすることが可能となっており、またこのように非常に低い定着設定温度でスミア性を確保した良好な定着、画像形成が可能となっているのは、単に、かかる固体可塑剤を含んだ定着液を用いているからではなく、かかる定着液を、トナー像担持前の転写紙Sに予め塗布しておき、定着液を塗布された側の転写紙Sの面に、転写ベルト11上のトナー像を、2次転写装置5により当接させながら転写し、そのうえで、定着装置6において加熱等により定着を行っているためである。この理由を以下説明する。
【0105】
まず、定着液を塗布された転写紙Sに、転写ベルト11上のトナー像を当接させながら転写すると、図5を参照すれば明らかなように、転写紙Sに予め塗布されている定着液が、転写紙S上に転写されたトナー像を構成する多数のトナーの相互間に、毛細管現象によって染み込み、転写ベルト11に接触しているトナー像表面付近まで、各トナーの表面が定着液に覆われる。とくに、転写紙S表面に近い側にあるトナーには多くの定着液が付着する。かかる毛細管現象は、転写ベルト11上のトナー像を転写紙Sに接触させながら転写することで強まるため、単に静電的な飛翔によって転写ベルト11から転写紙Sに転写するよりもトナー相互間への定着液の染み込みが促される。毛細管現象は、本形態のように、転写紙Sを転写ベルト11に圧接させながら転写することでとくに強まり、かかる染み込みが良好に生じる。
【0106】
次に、トナー相互間に定着液が染み込みトナー表面が定着液に覆われたトナー像を担持した転写紙Sを、定着ニップ62において加熱すると、定着液中の可塑剤が、トナーとともに昇温し、図6に示すように、トナー中のトナー樹脂に浸透してトナーを膨潤及び軟化させる機能を発現する。定着ニップ62においては圧力も加えられるため、トナー層への定着液の染み込みが一層促され、また軟化したトナーに転写紙Sへのアンカー効果が効率的に発生し、トナーが転写紙Sに固定される。本形態のようにトナー像の表面側から加熱を行う場合、トナー像の表面に比べて転写紙Sとトナー像との界面付近には熱が伝わりにくいが、上述のように、定着液は、転写紙S表面に近いトナーによく付着しているので、可塑剤が上述の機能を発揮する温度に達すると同機能が発揮され、定着が高効率に行われる。とくに、本形態では、トナー像側からの加熱を行うため、転写紙Sの裏面側からのみの加熱に比べ、転写紙Sによる吸熱量が少なく、加熱を要する可塑剤の昇温効率が高くなっていることから、可塑剤の機能が速やかに発揮される。なお、転写紙Sの裏面側からの加熱も行うように、すなわち加圧ローラ63を加熱する加熱手段を併用するようにしても良いが、この場合には省電力化が達成される範囲で転写紙S側からの加熱を併用するのが好ましい。
【0107】
このように、画像形成装置100では、従来の定着設定温度よりも低い温度で機能を発現する定着液が、転写紙Sに予め塗布されており、この予め塗布されている定着液が、トナー像の転写の際に、接触転写によってとくに転写紙S表面側のトナーに効率よく付着するため、従来よりも低い温度で、且つ少ない熱量でとくに転写紙S表面側のトナーが定着に適した軟化状態となり、良好に定着が行われる。転写紙Sに予め塗布されている定着液が、トナー像の転写の際に、接触転写によってとくに転写紙S表面側のトナーに効率よく付着することは、トナー像の表面側から定着液を供給する場合よりも定着液の供給量を少なくし、定着液を乾燥するための加熱に要する電力や時間を低減することにも寄与する。接触転写を行うことで、毛細管現象を利用するため、トナーを転写紙Sに飛翔、着弾させて転写を行う場合よりも、予め転写紙Sに付着させておくべき定着液の量が少なくて済み、このことも、定着液を乾燥するための加熱に要する電力や時間を低減することに寄与する。
【0108】
また、定着液の塗布をトナー像の転写前に行うので、定着液の塗布の際にトナー像を乱すことが無く、良好な定着画像が得られる。さらに、定着液の機能が、定着のための昇温時に発現するので、かりに定着液が転写ベルト11等に付着しても影響を与えることがない。この技術が液体現像への適用に限定されることもない。
【0109】
なお、定着液をフォーム状とせず液状としたことで空隙による転写性の悪化が回避されている。定着液が、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKや転写ベルト11、さらにはこれらに当接している部材に付着することによる機内汚染は、定着液が昇温により機能を発現することによるもののみならず、付着自体によっても、たとえば、かかる部材の機能低下や、かかる部材への残留トナーや飛散トナー等の固着といった態様でも生じ得るが、このような機能低下についても、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKや転写ベルト11上のトナー像に対して定着液を供給する構成となっていないことにより、抑制ないし防止される。
【0110】
図7、図8に沿って定着液塗布装置41の構成について説明する。
定着液塗布装置41は、用紙搬送経路81において搬送されている転写紙Sに定着液を塗布して付着させる定着液塗布部材としての塗布部材であるローラ状をなした回転体である塗布ローラ44と、用紙搬送経路81を挟んで塗布ローラ44に対向して配設された対向ローラ45と、塗布ローラ44を回転駆動する駆動手段としてのモータ46と、定着液を収容した定着液収容部としての液室47とを有している。
【0111】
定着液塗布装置41はまた、液室47に収容された定着液に浸漬され塗布ローラ44に従動回転して表面に定着液を担持するとともに担持した定着液を塗布ローラ44に供給する供給部材としてのローラ状をなした回転体である供給ローラ48と、供給ローラ48から塗布ローラ44に受け渡される定着液の一部を下方に誘導して逃がすための、塗布ローラ44及び供給ローラ48の各端部にそれぞれ対応して配設された一対の定着液誘導部材49と、モータ46の図示しないドライバとを有している。
【0112】
塗布ローラ44と、対向ローラ45と、供給ローラ48とは、図7において紙面に垂直な方向、図8において紙面の上下方向に長く、この方向を長手方向とし、互いに平行且つ長手方向で同じ長さをもち長手方向の同位置に配設されている。塗布ローラ44と、対向ローラ45と、供給ローラ48とは、画像形成装置100が正常に設置された状態、すなわち画像形成装置100が図1において紙面の上下方向が鉛直方向を向くように載置された状態において、長手方向が水平方向に一致するようになっている。
【0113】
塗布ローラ44は、用紙搬送経路81の、2次転写部57において転写紙Sにトナー像が転写される側に配設されており、転写紙Sの、同側の面に、その表面すなわち周面に担持した定着液を塗布する。
【0114】
対向ローラ45は、塗布ローラ44に従動回転するか、塗布ローラ44との間を塗布ローラ44の回転駆動によって搬送される転写紙Sに従動回転する。対向ローラ45は、直径25mmで、ステンレスの芯金にクロロプレンが巻きつけられ、その表面に直径100μmのガラスビーズがエポキシ系接着剤で固定された、ガラスビーズローラである。
【0115】
塗布ローラ44と供給ローラ48とは共に直径25mmで、ステンレスの芯金にクロロプレンが巻きついたローラを採用している。ローラの硬度はJIS-Aで35度である。塗布ローラ44と供給ローラ48とは、長手方向である同図の紙面に垂直な方向における両端部にてその軸間に片側20Nずつ互いに加圧された状態となっている。
【0116】
塗布ローラ44と対向ローラ45とは、その中心が互いに同じ高さに配置されている。供給ローラ48は塗布ローラ44の中心より10mm低い位置にその中心をもつ。供給ローラ48は、液室47に溜められた定着液に5mmの深さで漬けられている。塗布ローラ44の中心と供給ローラ48の中心とがオフセットしていることで、転写紙Sが塗布ローラ44と対向ローラ45とのニップに入った際に、塗布ローラ44と供給ローラ45との間の加圧力への影響を低減している。
【0117】
塗布ローラ44は、モータ46がドライバを介して制御手段91によって駆動されることで、所定方向具体的には図7に示された矢印方向すなわち用紙搬送経路81における転写紙Sの搬送方向に沿って回転駆動される。この点、制御手段91は、定着液塗布装置41による転写紙Sへの定着液の塗布を制御する定着液塗布制御手段として機能するとともに、塗布ローラ44による転写紙Sへの定着液の塗布を制御する定着液塗布部材駆動制御手段として機能する。
【0118】
塗布ローラ44、供給ローラ48の回転方向はともに、塗布ローラ44と供給ローラ48との接触部言い換えると塗布ローラ44と供給ローラ48との間のニップ部N1において下方に移動する方向である。塗布ローラ44、供給ローラ48がこのように回転することにより、定着液は供給ローラ48から塗布ローラ44に受け渡されるが、塗布ローラ44の回転によりニップ部N1を通過して塗布ローラ44と対向ローラ45との間のニップ部N2に搬送され転写紙Sに塗布される定着液の量は、塗布ローラ44と供給ローラ48との間の当接圧によって適量となるように管理されている。
【0119】
供給ローラ48によって液室47から汲み上げられニップ部N1に至った定着液の量がニップ部N1を通過する定着液の量を上回る場合には、その差の量の定着液が余剰の定着液として、塗布ローラ44と供給ローラ48との間の、ニップ部N1よりも上側の楔状の空間に溜まり、この溜まった定着液が、ニップ部N1及びかかる空間において塗布ローラ44に受け渡される。
【0120】
ニップ部N2において定着液が転写紙Sに常時塗布されるように、供給ローラ48によってニップ部N1に搬送される定着液の量は、ニップ部N1を通過する定着液の量を上回るように設定されているため、かかる空間には定着液の液溜まりが形成されている。よって、定着液は、ニップ部N1及びニップ部N1よりも上側の楔状の空間において供給ローラ48から塗布ローラ44に受け渡されることとなる。この点、ニップ部N1及びニップ部N1よりも上側の楔状の空間は、定着液が供給ローラ48から塗布ローラ44に受け渡される受け渡し部Dを形成している。
【0121】
ところで、このような液溜まりが形成される構成では、すでに述べたように、液体の回り込みの現象が生じ得る。この現象を上述の構成に当てはめてみると、塗布ローラ44の端部から液溜まりの定着液が流れ出して塗布ローラ44の端面に付着し、塗布ローラ44の回転に伴ってニップ部N2に至り、転写紙Sに付着することで、塗布ローラ44の端部に対応する位置において、転写紙Sに付着する定着液の量が増加し、長手方向において、かかる位置における定着液の量が他の位置における定着液の量より多い態様での定着液のムラが生じることになる。そのため、塗布ローラ44の端部に対応する位置において転写紙Sに付着する定着液の量は、上述のように管理された、転写紙Sに塗布される定着液の量を上回り、いわゆる端部汚れという不具合が発生する。
【0122】
定着液誘導部材49は、この不具合を防止ないし抑制するために、供給ローラ48から塗布ローラ44に受け渡される定着液の一部、すなわち受け渡し部Dに溜まった、余剰の定着液を下方に誘導して受け渡し部D外に逃がすようになっている。
【0123】
図7ないし図9に示すように、定着液誘導部材49は棒状の部材であり、その上端部の角部が塗布ローラ44、供給ローラ48の長手方向において受け渡し部Dの近傍に位置し、またその下端部が液室47内の定着液に浸漬されるようにその下端が液室47の底面上に位置する状態で側面内壁に固定されている。定着液誘導部材49の延在方向は、画像形成装置100が正常に設置された状態において鉛直方向に一致するようになっている。
【0124】
定着液誘導部材49の形状及び配設位置等をより具体的に説明する。
定着液誘導部材49は、延在方向の長さが35mmで、延在方向に垂直な断面が5mm角の四角柱状の、POM製の部材である。定着液誘導部材49は、下端部の側面が液室47の内壁に固定されており、またこの側面の反対側の側面が受け渡し部Dにおいて塗布ローラ44及び供給ローラ48の端面に0.5mmの近接した位置で対向している。定着液誘導部材49は、塗布ローラ44及び供給ローラ48の端面側の、鉛直方向に伸びた角を含む、図9(b)において丸で囲んだ角部Cが、定着液を上方から下方に向けて誘導するようになっている。
【0125】
よって、定着液誘導部材49は、供給ローラ44によってニップ部N1に搬送された定着液のうち、ニップ部N1を抜け出てニップ部N2に向けて塗布ローラ44により搬送される定着液以外の、受け渡し部Dに溜まっている余剰の定着液と、長手方向における受け渡し部Dの側部から流れ出る余剰の定着液との少なくとも一方に、上端部の角部Cで接触し、かかる余剰の定着液の自重及び表面張力により、かかる余剰の定着液を、角部Cを伝わせ下方に案内することで受け渡し部D外に誘導し、液室47に戻す。
【0126】
これにより、受け渡し部Dから流れ出た定着液が塗布ローラ44の端面に付着しニップ部N2に至ることによる回り込みの減少が防止ないし抑制され、端部汚れが防止ないし抑制され、長手方向においても転写紙Sにムラなく均一に塗布される。また、定着液誘導部材49によって誘導され液室47に流れ落ちた定着液は、再度、供給ローラ44に供給される位置に誘導されたこととなり、供給ローラ44によってニップ部N1に向けて再び搬送され得る状態となる。これにより、定着液は、ニップ部N2に向けて搬送され消費されない限り、液室47と受け渡し部Dとの間で循環し、高い効率で使用される。定着液誘導部材49は、定着液を循環させる点において、定着液循環部材として機能する。
【0127】
定着液誘導部材49は、塗布ローラ44及び供給ローラ48に非接触であるため、定着液誘導部材49と、塗布ローラ44や供給ローラ48との摩擦による塗布ローラ44の回転トルクの増大やこれに起因する消費電力の増加を回避するとともに、かかる摩擦による摩擦熱に起因する定着液の粘度変化が回避されるという利点もある。
【0128】
定着液塗布部材駆動制御手段として機能する制御手段91は、レジストローラ対4から2次転写部57に向けて送り出された転写紙Sがニップ部N2を通過するタイミングで、転写紙Sに定着液が塗布されるようにモータ46を駆動し塗布ローラ44を回転駆動する。そのため、定着液塗布部材駆動制御手段として機能する制御手段91は、かかるタイミングをレジストローラ対4の駆動タイミングに基づいて測り、モータ46の駆動制御に関する信号をドライバに送り、ドライバは送られた信号に基づいて、モータ46の駆動をON/OFFし、これによって塗布ローラ44による転写紙Sへの定着液の塗布をON/OFFする。これにより、供給ローラ48によって塗布ローラ44に供給された適量の定着液は、塗布ローラ44の回転により、ニップ部N2へ搬送され、このニップ部N2において転写紙Sにムラなく塗布される。
【0129】
このようにして塗布ローラ44がモータ46によって回転駆動され転写紙Sに定着液の塗布を行うとき、供給ローラ48は塗布ローラ44に従動回転し液室47の定着液を周面に一定量担持し言い換えると保持し、かかる従動回転に伴って受け渡し部Dに搬送し、この受け渡し部Dにおいて塗布ローラ44に供給する。液室47と供給ローラ48とは、塗布ローラ44に定着液を供給する定着液供給手段としての供給手段56を構成している。
【0130】
画像形成装置100は、定着液塗布装置41を備えていることにより、トナー像の転写前の転写紙Sに定着液の塗布を行うため、塗布ローラ44による定着液の塗布によるトナー像の乱れおよび塗布ローラ44へのトナーの付着が生じることがないことから、塗布ローラ44に付着したトナーが再度転写紙Sに付着することによる画像不良を生ずることもない。
【0131】
以上説明した構成の画像形成装置100において、転写紙SとしてA4サイズの普通紙(リコー社製 RICOPY PPC用紙 TYPE6200)を用いた場合、1枚あたりに定着液が図9、図10に示したように一定量、具体的には170mg、経時的に、転写紙Sの全体にわたって均一に、安定して塗布される。この量は、定着ニップ62による加熱を考慮すると、乾燥を必要としない量となっている。
【0132】
なお、用紙搬送経路81を、転写紙Sの搬送をガイドするガイド板等の案内部材によって形成する場合には、転写紙Sの搬送方向において定着液塗布装置41よりも下流側の、とくに定着により定着液が乾燥する定着装置6よりも上流側の範囲には、転写紙Sの裏面側にのみ案内部材を設け、転写紙Sの、定着液を塗布されている塗布面言い換えるとトナーを担持した画像面側には案内部材を設けず、案内部材が定着液やトナー画像に当接して定着液の塗布状態やトナー画像を乱すことのないようにする。
【0133】
以下、定着液誘導部材49の種々の構成例について説明する。この説明においては、当該構成例の説明よりも先に説明した構成例と異なる事項について主に記載し、当該構成例の説明よりも先に説明した事項については適宜記載を省略する。
【0134】
図10に示す構成例において、定着液誘導部材49は、塗布ローラ44及び供給ローラ48の端面に対向する角部Cに含まれている側面中央に、幅及び深さが2mmの矩形状の溝を、延在方向全体にわたって有している。この形状の定着液誘導部材49では、図9に示した構成例と比べて、溝により、定着液に触れる表面積が増し、定着液を誘導する機能が増す。
【0135】
図11に示す構成例において、定着液誘導部材49は、塗布ローラ44及び供給ローラ48の端面に対向する角部Cに含まれている側面全体が、中央が深さ2.5mmの三角形状の、延在方向全体にわたって形成された溝によって構成されている。この形状の定着液誘導部材49では、図10に示した構成例よりもさらに、溝により、定着液に触れる表面積が増し、定着液を誘導する機能が増す。
【0136】
図12に示す構成例において、定着液誘導部材49は、塗布ローラ44及び供給ローラ48の端面に対向する角部Cに含まれている側面中央に、半径2mmの半円形の溝を、延在方向全体にわたって有し、かかる側面がハーフパイプ状になっている。この形状の定着液誘導部材49では、図11に示した構成例と同様に、図10に示した構成例と比べて、溝により、定着液に触れる表面積が増し、定着液を誘導する機能が増す。なお、溝の体積は、図11に示した構成例とほとんど変わらないものの、図11に示した構成例よりも溝の形状が定着液に濡れやすく、定着液の濡れ性が低い場合であって定着液の誘導機能が高い。
【0137】
図13に示す構成例において、定着液誘導部材49は、延在方向に垂直な断面が3mm角の四角柱状となっている。断面形状が小さい分、図9ないし図12に示した構成例と異なり、定着液誘導部材49は、その下端部が、液室47の側面内壁でなく底面内壁に固定され、側面内壁からは離れている。この定着液誘導部材49では、図9に示した構成例と比べて、断面積が小さい分、定着液が、角部Cに接触するだけでなく、角部Cと反対側にも回り込んで接触することで、定着液に触れる表面積が増し、定着液を誘導する機能が増す。
【0138】
図14ないし図18にそれぞれ示すように、定着液誘導部材49は、塗布ローラ44と供給ローラ48との少なくとも一方の、受け渡し部Dを形成した部分の側部、具体的には端面、より詳細には受け渡し部Dの周りの端面に接触して配設するようにしても良い。この場合、受け渡し部Dにおける余剰の定着液の量や受け渡し部Dの側部から流れ出る余剰の定着液の量が変動しても、定着液誘導部材49が定着液に確実に接触するため、その誘導機能、循環機能が良好に発揮される。また、この場合も、定着液誘導部材49を摺動性に優れたPOM製とすることで、定着液誘導部材49と、塗布ローラ44や供給ローラ48との摩擦による塗布ローラ44の回転トルクの増大やこれに起因する消費電力の増加を最小限に留めるとともに、かかる摩擦による摩擦熱に起因する定着液の粘度変化が最小限に留められる。
【0139】
図14ないし図18にそれぞれ示されている定着液誘導部材49の断面形状は、図9ないし図13にそれぞれ示した定着液誘導部材49の断面形状に対応し、溝を有する場合はその形状、大きさがそれぞれ互いに一致しているが、図9ないし図12にそれぞれ示した定着液誘導部材49の断面の外形は5mm角であるのに対し、図14ないし図17にそれぞれ示されている定着液誘導部材49の断面の外形は5.5mmとなっている。なお、図18に示した定着液誘導部材49の断面の外形は、図13に示した定着液誘導部材49の断面の外形と同じ3mm角である。
【0140】
図14ないし図18にそれぞれ示されている定着液誘導部材49の角部Cは、図9ないし図13にそれぞれ示されている定着液誘導部材49の角部Cの位置と異なり、塗布ローラ44、供給ローラ48に対向する位置ではなく、この位置から各図において時計回りに90度ずれた位置に備えられ、塗布ローラ44側を向いている。これにより、とくに、溝を有する図15ないし図17にそれぞれ示されている定着液誘導部材49の角部Cにおいて、この角部Cに備えられている溝が塗布ローラ44や供給ローラ48と摺擦することによる摩擦が抑制されるとともに、溝が塗布ローラ44側を向いていることで定着液の誘導機能が良好に発揮される。
【0141】
以上、一方向に延在した棒状の定着液誘導部材49の各構成例について説明したが、定着液誘導部材49は、断面形状が円型やD型など、角部Cを備えていない曲面部を有するものであっても良く、この場合には、曲面部が塗布ローラ44や供給ローラ48と接触しても、塗布ローラ44や供給ローラ48との摩擦による塗布ローラ44の回転トルクの増大やこれに起因する消費電力の増加が抑制されるとともに、かかる摩擦による摩擦熱に起因する定着液の粘度変化が抑制される。
【0142】
図19ないし図21に示すように、定着液誘導部材49は、一方向に延在した棒状の部材でなく、L字状の部材であっても良い。この定着液誘導部材49は、図9ないし図18に示した各構成例における定着液誘導部材49のように、画像形成装置100が正常に設置された状態においてその延在方向が鉛直方向に一致する第1の部分である、その下端部が液室47に支持された基部49aに加えて、基部49aの先端部にその基端部が支持された第2の部分である、その延在方向が塗布ローラ44や供給ローラ48の長手方向、言い換えると受け渡し部D、ニップ部N1の長手方向に一致した樋部49bを有している。基部49aと樋部49bとは互いに直角に接続されており、基部49aの延在方向と樋部49bの延在方向とは、互いに直交している。
【0143】
基部49aは、その下端が液室47の底面内壁に固定されているとともに、側面内壁から離れている。基部49a、樋部49bは何れも外径4mm、内径2.5mmのパイプを縦半分に割ったハーフパイプ形状の、POM製の部材である。基部49aは、塗布ローラ44及び供給ローラ48に0.5mmの近接した位置に非接触で配置されており、その延在方向に延びる開口部である凹部すなわち溝側が、液室47の側面内壁に対向している。樋部49bは、塗布ローラ44及び供給ローラ48に非接触で配置されており、その延在方向に延びる開口部である凹部すなわち溝側が、ニップ部N1と逆の、上方を向いている。
【0144】
基部49aは、図9ないし図18に示した定着液誘導部材49と同様に、図22に示すように、供給ローラ44によってニップ部N1に搬送された定着液のうち、ニップ部N1を抜け出てニップ部N2に向けて塗布ローラ44により搬送される定着液以外の、受け渡し部Dに溜まっている余剰の定着液と、長手方向における受け渡し部Dの側部から流れ出る余剰の定着液との少なくとも一方に、上端部の塗布ローラ44及び供給ローラ48側の曲面部で接触し、かかる余剰の定着液の自重及び表面張力により、かかる余剰の定着液を、かかる曲面部を伝わせ下方に案内することで受け渡し部D外に誘導し、液室47に戻す。
【0145】
これにより、受け渡し部Dから流れ出た定着液が塗布ローラ44の端面に付着しニップ部N2に至ることによる回り込みの減少が防止ないし抑制され、端部汚れが防止ないし抑制され、長手方向においても転写紙Sにムラなく均一に塗布される。また、定着液誘導部材49によって誘導され液室47に流れ落ちた定着液は、再度、供給ローラ44に供給される位置に誘導されたこととなり、供給ローラ44によってニップ部N1に向けて再び搬送され得る状態となる。これにより、定着液は、ニップ部N2に向けて搬送され消費されない限り、液室47と受け渡し部Dとの間で循環し、高い効率で使用される。定着液誘導部材49は、定着液を循環させる点において、定着液循環部材として機能する。
【0146】
定着液誘導部材49は、塗布ローラ44及び供給ローラ48に非接触であるため、定着液誘導部材49と、塗布ローラ44や供給ローラ48との摩擦による塗布ローラ44の回転トルクの増大やこれに起因する消費電力の増加を回避するとともに、かかる摩擦による摩擦熱に起因する定着液の粘度変化が回避されるという利点もある。
【0147】
樋部49bは、図23に示すように、受け渡し部Dに溜まっている定着液の量が、たとえば画像形成装置100が傾いて配置された場合、温湿度環境の変化に伴い定着液の粘度が変化した場合などに、増加したときに、受け渡し部Dに溜まっている余剰の定着液に接触し、かかる余剰の定着液の表面張力により、かかる余剰の定着液を伝わせ、基部49aに案内することで受け渡し部D外に誘導して基部49aに接触させ、基部49aにより液室47に戻す。樋部49bはとくに、図23に示すように、受け渡し部Dに溜まっている定着液がその溝部に進入するレベル以上に増加したときには、図24、図25に示すように、溝部を含む上面でも受け渡し部Dに溜まっている余剰の定着液に接触し、かかる余剰の定着液の表面張力により、かかる余剰の定着液を上面を含む表面に伝わせ、基部49aに案内することで受け渡し部D外に誘導し、基部49aにより液室47に戻す。
【0148】
このように、樋部49bを有する構成例では、定着液誘導部材49は、定着液を受け渡し部D外に誘導し液室47に戻すための経路として、塗布ローラ44と供給ローラ48とに対向した第1の経路と、塗布ローラ44と供給ローラ48とに非対向の第2の経路とを有している。第2の経路は受け渡し部Dに溜まっている余剰の定着液の量が増加したときに機能するが、第1の経路は第2の経路が定着液を誘導しない場合であっても定着液を誘導する機能を発揮し、とくに基部49aに関する第1の経路に関しては、樋部49bが定着液を誘導しない場合であっても定着液を誘導する機能を発揮する場合がある。
【0149】
したがって、画像形成装置100が傾いて配置された場合など、受け渡し部Dの長手方向が水平方向に保たれないときには、端部汚れがとくに生じやすいが、樋部49bを有する構成例では、使用環境に対応して増減する、受け渡し部Dに溜まっている余剰の定着液の量に応じてかかる定着液を誘導するようになっていることで、使用環境に応じて定着液を誘導する機能を十分に発揮し、端部汚れを防止ないし抑制し、長手方向においても転写紙Sにムラなく均一に定着液を塗布するようになっている。
【0150】
樋部49bを有する構成例であっても、定着液誘導部材49は、図14ないし図18にそれぞれ示した構成例と同様に、塗布ローラ44と供給ローラ48との少なくとも一方の、受け渡し部Dを形成した部分に接触して配設するようにしても良い。図26ないし図28はそれぞれ、図19、図21、図25に対応した図であり、基部49aを、塗布ローラ44と供給ローラ48との、受け渡し部Dを形成した部分の側部、具体的には端面、より詳細には受け渡し部Dの周りの端面に接触して配設した構成例を示している。
【0151】
このように、定着液誘導部材49を、塗布ローラ44と供給ローラ48との少なくとも一方の、受け渡し部Dを形成した部分に接触して配設すると、受け渡し部Dにおける余剰の定着液の量や受け渡し部Dの側部から流れ出る余剰の定着液の量が変動しても、定着液誘導部材49が定着液に確実に接触するため、その誘導機能、循環機能が良好に発揮される。また、この場合も、定着液誘導部材49を摺動性に優れたPOM製とすることで、定着液誘導部材49と、塗布ローラ44や供給ローラ48との摩擦による塗布ローラ44の回転トルクの増大やこれに起因する消費電力の増加を最小限に留めるとともに、かかる摩擦による摩擦熱に起因する定着液の粘度変化が最小限に留められる。
【0152】
樋部49bについても、回転する塗布ローラ44や供給ローラ48との接触に対する定着液誘導部材49の強度が確保されるのであれば、塗布ローラ44と供給ローラ48との少なくとも一方の、受け渡し部Dを形成した部分の上面部に接触して配設しても良い。何れにしても、定着液誘導部材49の曲面側が塗布ローラ44や供給ローラ48に接触するため、塗布ローラ44や供給ローラ48との摩擦による塗布ローラ44の回転トルクの増大やこれに起因する消費電力の増加が抑制されるとともに、かかる摩擦による摩擦熱に起因する定着液の粘度変化が抑制される。
【0153】
ここで、制御手段91は、メモリに、トナーを膨潤及び軟化させ転写紙Sへの定着に適した状態にするための可塑剤を含む定着液を、トナー像を担持する前の転写紙Sに塗布する定着液塗布装置41と、この定着液塗布装置41によって定着液を塗布された転写紙Sに、転写ベルト11上のトナー像を、転写紙S上の定着液に接触させながら転写する2次転写手段5と、この2次転写手段5によって転写された転写紙S上のトナー像を構成するトナーと定着液とを加熱してトナーをかかる状態にしてトナー像を転写紙Sに定着する定着装置6とを用い、定着液塗布装置41は、転写紙Sの、転写手段5によってトナー像を転写される側の面に、表面に担持した定着液を塗布する塗布ローラ44を用い、塗布ローラ44に定着液を供給する供給手段56と、供給手段56から塗布ローラ44に定着液が受け渡される受け渡し部Dに溜まった定着液を受け渡し部D外に誘導するための定着液誘導部材49とを用いる定着方法、画像形成方法を実行するための定着プログラム、画像形成プログラムを記憶している。この点、制御手段91ないしメモリは、定着プログラム記憶手段、画像形成プログラム記憶手段として機能している。かかる定着プログラム、画像形成プログラムは、制御手段91に備えられたメモリのみならず、半導体媒体(たとえば、ROM、不揮発性メモリ等)、光媒体(たとえば、DVD、MO、MD、CD−R等)、磁気媒体(たとえば、ハードディスク、磁気テープ、フレキシブルディスク等)その他の記憶媒体に記憶可能であり、かかるメモリ、他の記憶媒体は、かかる定着プログラム、画像形成プログラムを記憶した場合に、かかる定着プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体、画像形成プログラムを記憶したコンピュータ読取可能な記録媒体を構成する。
【0154】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0155】
たとえば、回転体である塗布部材、供給部材の形状はローラ状に限られるものではなく、ベルト状等であっても良い。
定着液誘導部材は、定着液循環部材として機能する場合、定着液を、供給部材に再び供給する位置に誘導するのであれば、その誘導する位置は、供給手段に備えられた液室に限られるものではない。この点において、供給手段は、液室を有する構成に限られない。
【0156】
本発明を適用した画像形成装置は、タンデム型であっても、上述した間接転写方式でなく、図29に示すように、直接転写方式を採用可能である。この画像形成装置において、すでに述べた画像形成装置100、すなわち、4連タンデム中間転写方式を採用し、転写紙Sに転写されるトナー像を担持したトナー像担持体として、感光体である感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKに担持さえたトナー像を転写される中間転写体である転写ベルト11を備えた画像形成装置に備えられているのと同様の構成には、画像形成装置100に備えられている構成に付した符号と同じ符号を付し、また適宜図示を省略し、説明についても適宜省略する。
【0157】
この直接転写方式、具体的には4連タンデム直接転写方式を採用した画像形成装置において、転写紙Sに転写されるトナー像を担持したトナー像担持体は感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKであって、上述の転写ベルト11に代えて記録媒体搬送体であるシート搬送ベルト11’を備え、シート搬送ベルト11’で搬送されている過程の、定着液塗布装置41によって定着液を塗布された転写紙Sに、画像ステーション60BK、60C、60M、60Yで形成した各色のトナー像を、転写手段としての1次転写ローラ12Y、12M、12C、12BKによって順次重ね転写したのち、定着装置6によって定着を行う。
【0158】
また、本発明を適用した画像形成装置は、4連タンデム中間転写方式を採用し、中間転写体としての転写ベルト11を備えている場合であっても、転写ベルト11は、感光体ドラム20Y、20M、20C、20BKのような感光体でなく、トナー担持体に担持されたトナーを転写されトナー像をその表面に直接形成される構成であっても良い。
【0159】
このような構成の画像形成装置の例を図30に示す。この画像形成装置において、すでに述べた画像形成装置100に備えられているのと同様の構成には、画像形成装置100に備えられている構成に付した符号と同じ符号を付し、また適宜図示を省略し、説明についても適宜省略する。
【0160】
この画像形成装置は、トナージェット、ダイレクトトーニング、トナープロジェクションなどと称される、トナーを転写ベルト11に対して飛翔、着弾させることによって転写ベルト11上に画像を直接記録する方式を採用したものであり、画像形成ユニット60Y、60M、60C、60BKが、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーを担持したトナー担持体93Y、93M、93C、93BKを備えトナー担持体93Y、93M、93C、93BKに担持されているトナーを転写ベルト11に飛翔させるトナー噴射手段94Y、94M、94C、94BKと、トナー噴射手段制御手段94Y、94M、94C、94BKにトナーを飛翔させて転写ベルト11上に画像を形成する、トナー噴射手段制御手段94Y、94M、94C、94BKから飛翔したトナーを通過させる図示しないトナー通過孔を備えたトナー制御手段95Y、95M、95C、95BKとを有している。
【0161】
また、本発明を適用する画像形成装置は、いわゆるタンデム方式の画像形成装置ではなく、1つの感光体ドラム上に順次各色のトナー像を形成して各色トナー像を順次重ね合わせてカラー画像を得るいわゆる1ドラム方式の画像形成装置にも同様に適用することが可能である。
【0162】
その他、画像形成装置は、近年では、市場からの要求にともない、カラー複写機やカラープリンタなど、カラーのものが多くなってきているが、画像形成装置は、モノカラー画像のみを形成可能なものであっても良い。
【0163】
現像剤は、二成分現像剤でも一成分現像剤であっても良い。
本発明を適用する画像形成装置に備えられる定着手段は、上述の形態において備えられているローラ定着方式を採用した定着手段でなく、定着部材として無端ベルト状の定着ベルトを備えたベルト定着方式を採用した定着手段であっても良い。ローラ定着方式を採用した定着手段では、比較的簡易な構成で均一な加熱を実現可能であるという利点があり、ベルト定着方式を採用した定着手段では、消費電力が比較的少なくて済むという利点がある。
【0164】
画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリの複合機でなく、これらの単体であっても良いし、その他、複写機とプリンタとの複合機等の他の組み合わせの複合機であっても良い。
【0165】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0166】
5 転写手段
6 定着手段
11 トナー像担持体である中間転写体
12Y、12M、12C、12BK 転写手段
20Y、20M、20C、20BK トナー像担持体である感光体
41 定着液塗布手段
44 塗布部材
48 供給部材
49 定着液誘導部材
56 供給手段
65 ローラ状の定着部材
93Y、93M、93C、93BK トナー担持体
100 画像形成装置
D 受け渡し部
S 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0167】
【特許文献1】特許第4224076号公報
【特許文献2】特許第4354164号公報
【特許文献3】特開2007−121652号公報
【特許文献4】特開2009−39977号公報
【特許文献5】特開2009−095990号公報
【特許文献6】特開2007−301818号公報
【特許文献7】特開2008−149259号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を構成するトナーを膨潤及び軟化させ記録媒体への定着に適した状態にするための可塑剤を含む定着液を、トナー像を担持する前の記録媒体に塗布する定着液塗布手段と、
この定着液塗布手段によって前記定着液を塗布された記録媒体に、トナー像担持体上のトナー像を、記録媒体上の前記定着液に接触させながら転写する転写手段と、
この転写手段によって転写された記録媒体上のトナー像を構成するトナーと前記定着液とを加熱して同トナーを前記状態にして同トナー像を記録媒体に定着する定着手段とを有し、
前記定着液塗布手段は、記録媒体の、前記転写手段によってトナー像を転写される側の面に、表面に担持した前記定着液を塗布する塗布部材を有し、
前記塗布部材に前記定着液を供給する供給手段と、
前記供給手段から前記塗布部材に前記定着液が受け渡される受け渡し部に溜まった前記定着液を前記受け渡し部外に誘導するための定着液誘導部材とを有する画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
前記定着液誘導部材は、前記定着液を前記受け渡し部外に誘導するための経路として、前記塗布部材と前記供給手段とに対向した第1の経路と、前記塗布部材と前記供給手段とに非対向の第2の経路とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記定着液誘導部材は、前記塗布部材と前記供給手段とに非接触であり、前記受け渡し部に溜まっている前記定着液及び/又は前記受け渡し部の側部から流れ出る前記定着液に接触して前記受け渡し部外に誘導することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の画像形成装置において、
前記定着液誘導部材は、前記塗布部材及び/又は前記供給手段の、前記受け渡し部を形成した部分の側部に接触しており、前記受け渡し部に溜まっている前記定着液及び/又は前記受け渡し部の側部から流れ出る前記定着液に接触して前記受け渡し部外に誘導することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置において、
前記供給手段は、前記塗布部材に対向し同塗布部材に前記定着液を供給する供給部材を有し、
前記定着液誘導部材は、前記受け渡し部外に誘導された前記定着液が前記供給部材に再び供給される位置に前記定着液を誘導することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記可塑剤は、トナーを前記状態とする機能が、画像形成装置を使用する環境温度において発現せず、同環境温度を超える昇温時に発現することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記可塑剤は、画像形成装置を使用する環境温度において、前記定着液とされる前の単体の状態で固体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記転写手段によって記録媒体に転写されるトナー像を担持したトナー像担持体は感光体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記転写手段によって記録媒体に転写されるトナー像を担持したトナー像担持体は感光体に担持されたトナー像を転写される中間転写体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記転写手段によって記録媒体に転写されるトナー像を担持したトナー像担持体はトナー担持体に担持されたトナーを転写されトナー像を形成される中間転写体であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記定着手段は、ローラ状の定着部材を有し、ローラ定着方式によって定着を行うことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−42690(P2012−42690A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183487(P2010−183487)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】