説明

画像形成装置

【課題】簡易な構成で、転写部に記録材を案内するガイド部材にトナーが付着することを防止して、ガイド部材に付着したトナーが記録材に付着することで記録材が汚れるのを防止することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】像担持体の回転中において、下ガイド部材22上に記録材Pが存在する間は、下ガイド部材電圧印加手段14から下ガイド部材22にトナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧を印加し、下ガイド部材22上に記録材Pが存在しない間は、下ガイド部材電圧印加手段14から下ガイド部材22に電圧を印加しないか又はトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式などの画像形成プロセスを採用した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を利用した複写機、プリンタなどの画像形成装置が広く使用されている。電子写真方式の画像形成装置は、次のような画像形成プロセスによって画像を形成する。即ち、一般的にドラム形状とされる電子写真感光体(感光体ドラム)を所定のプロセススピードで回転させながら、その表面を帯電器で一様に帯電させる。帯電した感光体ドラムの表面に、画像情報を担持する光を照射することで、感光体ドラム上に静電潜像を形成する。感光体ドラム上に形成した静電潜像を、現像剤であるトナーを用いて現像して、感光体ドラム上に可視像(トナー像)を形成する。このトナー像を転写領域において記録紙などの記録材に転写して記録画像を得る。
【0003】
記録材は、搬送ローラ対に挟持されながら搬送され、ガイド部材によって案内されてトナー像の転写部に到達する。そして、この転写部で感光体ドラム上のトナーが記録材上に転写される。ここで、ガイド部材が金属などの導電材料で構成されており、電源などにより一定の電圧が付与される構成が知られている。
【0004】
ガイド部材に電圧を付与する目的としては、次の2つが挙げられる。先ず、トナーと逆極性の電圧を付与することにより、ガイド部材への転写電流の流れ込みを防止することである。又、トナーと同極性の電圧を付与することにより、ガイド部材へのトナー付着及びそれによる記録材のトナーによる汚れを防止することである。
【0005】
又、ガイド部材への転写電流の流れ込みとトナーの付着とを防止する試みとして、次のようなものが提案されている。特許文献1では、ガイド部材を記録材の搬送方向と直交する方向で複数に分割して、記録材のサイズにより電圧を印加する部分を変更することが提案されている。又、特許文献2は、記録材の搬送方向に複数のガイド部材を設け、そのうち転写部に近いものと遠いものとに発生する電圧が異なるようにすることが提案されている。又、特許文献3、特許文献4には、画像形成装置内に温湿度検知手段を設け、その出力値によってガイド部材に発生させる電圧のON/OFFやその電圧値の調整を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3223024号
【特許文献2】特開昭63−210978号
【特許文献3】特許第3073931号
【特許文献4】特許第3581525号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に記載されるようにガイド部材を記録材の搬送方向と直交する方向や搬送方向に複数設ける構成は、装置の複雑化が避けられない。又、特許文献3、特許文献4に記載されるように温湿度検知手段の出力値に応じてガイド部材に発生させる電圧を制御する構成も、装置の複雑化を招く虞がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、簡易な構成で、転写部に記録材を案内するガイド部材にトナーが付着することを防止して、ガイド部材に付着したトナーが記録材に付着することで記録材が汚れるのを防止することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、トナーを担持する回転可能な像担持体と、回転する前記像担持体上のトナーを転写部において記録材に転写させる転写手段と、前記転写部へと記録材を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって前記転写部に搬送される記録材を前記転写部よりも前記記録材の搬送方向上流側で案内するガイド手段であって、前記転写部に向かう記録材の下側に配置される導電材料で形成された下ガイド部材を有するガイド手段と、前記下ガイド部材に電圧を印加する下ガイド部材電圧印加手段と、を有し、前記像担持体の回転中において、前記下ガイド部材上に記録材が存在する間は、前記下ガイド部材電圧印加手段から前記下ガイド部材に前記トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧を印加し、前記下ガイド部材上に記録材が存在しない間は、前記下ガイド部材電圧印加部材から前記下ガイド部材に電圧を印加しないか又は前記トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加することを特徴とする画像形成装置である。
【0010】
本発明の他の態様によれば、トナーを担持する回転可能な像担持体と、回転する前記像担持体上のトナーを転写部において記録材に転写させる転写手段と、前記転写部へと記録材を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって前記転写部に搬送される記録材を前記転写部よりも前記記録材の搬送方向上流側で案内するガイド手段であって、前記転写部に向かう記録材の下側に配置される導電材料で形成された下ガイド部材を有するガイド手段と、前記下ガイド部材に電圧を印加する下ガイド部材電圧印加手段と、を有し、前記転写部における搬送方向と直交する方向の幅が前記転写部でトナーを転写することのできる最大値となる第1の記録材に画像を形成する際には、前記像担持体の回転中において、前記下ガイド部材上に記録材が存在する間は、前記下ガイド部材電圧印加手段から前記下ガイド部材に前記トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧を印加し、前記下ガイド部材上に記録材が存在しない間は、前記下ガイド部材電圧印加手段から前記下ガイド部材に電圧を印加しないか又は前記トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加し、前記転写部における搬送方向と直交する方向の幅が前記最大値よりも小さい値となる第2の記録材に画像を形成する際には、前記像担持体の回転中において、前記下ガイド部材上に記録材が存在する間及び前記下ガイド部材上に記録材が存在しない間の両方ともに、前記下ガイド部材電圧印加手段から前記下ガイド部材に電圧を印加しないか又は前記トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡易な構成で、転写部に記録材を案内するガイド部材にトナーが付着することを防止して、ガイド部材に付着したトナーが記録材に付着することで記録材が汚れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像形成装置の転写部の近傍を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像形成動作のシーケンス図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像形成動作の他の例のシーケンス図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置の概略制御ブロック図である。
【図6】比較例1の画像形成装置の転写部の近傍を示す模式図である。
【図7】比較例2に係る画像形成動作のシーケンス図である。
【図8】本発明の他の実施例に係る画像形成装置の転写部の近傍を示す模式図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る画像形成動作のシーケンス図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る画像形成装置の概略制御ブロック図である。
【図11】本発明の更に他の実施例に係る画像形成動作のシーケンス図である。
【図12】本発明の更に他の実施例において記録材の種類により画像形成動作のシーケンスを選択する処理のフローチャート図である。
【図13】本発明の更に他の実施例に係る画像形成動作の他の例のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0014】
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略構成を示す模式図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を利用したレーザービームプリンタである。
【0015】
画像形成装置100は、記録材Pとして記録紙などが積載される給紙トレイ11を有する。給紙トレイ11に積載された記録材Pは、給紙ローラ9によって、1枚ずつ分離されて搬送され、給紙ガイド(図示せず)を通過して、搬送ローラ(レジストローラ)10に到達する。搬送ローラ10は、記録材Pが到達した時点で回転を一時停止する。これにより、搬送されてきた記録材Pの先端がレジスト機構部の位置に倣い、記録材Pの斜行が矯正される。搬送ローラ10は、転写部Nへと記録材Pを搬送する搬送手段である。
【0016】
又、画像形成装置100は、トナー像を担持する回転可能な像担持体として、ドラム形状の電子写真感光体、即ち、感光体ドラム1を有する。感光体ドラム1は、駆動手段としてのメインモータ(図示せず)によって、図中矢印A方向に回転駆動される。この感光体ドラム1は、アルミニウムなどからなる導電性基体と、この導電性基体に積層されたCGL(電荷発生層)及びCTL(電荷輸送層)からなる感光体層と、を有している。本実施例における感光体ドラム1は、直径30mmの円筒形である。この感光体ドラム1が150rpmの速度で回転することにより、プロセススピード235.6mm/secとなり、1分あたり40枚のA4サイズの記録材Pに画像を形成して出力することができる。
【0017】
尚、本実施例の画像形成装置100において画像を形成して出力することのできる記録材Pの、搬送方向と直交する方向の幅の最大値(以下「最大使用可能幅」という。)は、縦送り(長手方向を搬送方向とする搬送方向)時のA4サイズの幅(210mm)である。又、本実施例の画像形成装置100は、記録材Pを、その搬送方向と直交する方向において中央に寄せて搬送する。
【0018】
感光体ドラム1には、帯電手段としての帯電ローラ2が圧接して配置されている。帯電ローラ2は、感光体ドラム1に従動して回転する。この帯電ローラ2により、感光体ドラム1の表面が一様に帯電される。帯電動作時に、帯電ローラ2には、帯電電圧印加手段としての帯電バイアス電源(図示せず)から、感光体ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)の直流電圧である帯電バイアスが印加される。その後、露光手段としてのレーザースキャナ(露光装置)3のレーザー照射部から、画像情報に応じたレーザー光Lが、帯電した感光体ドラム1の感光体層に照射され、感光体ドラム1上に静電潜像(静電像)が形成される。感光体層にレーザー光Lが照射される位置(露光部)よりも感光体ドラム1の回転方向下流側には、現像手段としての現像器4が配置されている。現像器4は、現像剤担持体として回転する現像スリーブを有しており、この現像スリーブから感光体ドラム1に現像剤であるトナーが供給される。感光体ドラム1上に形成された静電潜像が現像器4の現像スリーブに対向する位置(現像部)Gに来ると、この静電潜像に現像スリーブからトナーが供給され、感光体ドラム1上にトナー像(可視像)が形成される。現像動作時に、現像器4の現像スリーブには、現像電圧印加手段としての現像バイアス電源(図示せず)から、直流成分と交流成分とが重畳された現像バイアスが印加される。本実施例では、現像器4は、一様に帯電された感光体ドラム1上の露光によって電荷が減衰した部分(露光部)に、感光体ドラム1の帯電極性(本実施例では負極性)と同極性に帯電したトナーを付着させる(反転現像)。
【0019】
一方、搬送ローラ10は、感光体ドラム1上に形成されたトナー像の移動速度に同期したタイミングで回転を開始する。この回転開始とともに、レジスト機構部で斜行が矯正された記録材Pは、搬送ローラ10から転写前ガイド手段20へと送り出される。転写前ガイド手段20は、搬送ローラ10によって転写部Nに搬送される記録材Pを、転写部Nよりも記録材Pの搬送方向上流側で案内するものである。詳しくは後述するように、転写前ガイド手段20は、金属製の板状の転写前上ガイド21と転写前下ガイド22とを有する。記録材Pは、転写前上ガイド21と転写前下ガイド22とに挟まれた領域を通り、感光体ドラム1に到達する。
【0020】
感光体ドラム1に到達した記録材Pは、感光体ドラム1と転写ローラ5との圧接部である転写部(転写ニップ)Nで、感光体ドラム1上のトナー像が転写される。転写ローラ5は、回転する像担持体上のトナーを転写部Nにおいて記録材Pに転写させる転写手段である。転写動作時に、転写ローラ5には、転写電圧印加手段としての転写バイス電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性(本実施例では負極性)とは逆極性の直流電圧である転写バイアスが印加される。転写部Nよりも感光体ドラム1の回転方向下流側には、クリーニング手段としてのクリーニング装置6が配置されている。クリーニング装置6は、クリーニング部材として、感光体ドラム1の表面に接触するクリーニングブレードを有する。このクリーニングブレードによって、転写後に感光体ドラム1に残留したトナー(転写残トナー)が掻き落とされて回収される。
【0021】
トナー像が転写された記録材Pは、搬送ガイド(図示せず)を通り、定着手段としての定着器7に搬送される。定着器7は、互いに対向して圧接された2つのローラを有し、このローラ間に記録材Pを挟持して搬送することで、熱と圧力により記録材P上のトナー像を記録材Pに溶融定着させる。その後、記録材Pは排紙ローラ8によって画像形成装置100の外部へと排出され、プリントの1サイクルが終了する。
【0022】
2.転写前ガイド手段
転写前ガイド手段20について更に説明する。図2は、本実施例の画像形成装置100の転写部Nの近傍を示す模式図である。
【0023】
本実施例では、転写前ガイド手段20は、転写部Nに向かう記録材Pの上側に配置される導電材料で形成された上ガイド部材である転写前上ガイド21を有する。又、転写前ガイド手段20は、転写部Nに向かう記録材Pの下側に配置される導電材料で形成された下ガイド部材である転写前下ガイド22を有する。
【0024】
更に説明すると、転写前上ガイド21は、転写前ガイド手段20が有する、記録材Pの移動経路を規制する2個のガイド部材のうち、重力方向上方に配置されている方のガイド部材である。転写前上ガイド21は、感光体ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿う長さ(長手方向長さ)と、記録材Pの搬送方向に沿う方向の長さ(短手方向長さ)を有する、導電材料としての金属で作製された1枚の板状部材である。
【0025】
又、転写前下ガイド22は、転写前ガイド手段20が有する、記録材Pの移動経路を規制する2個のガイド部材のうち、重力方向下方に配置されている方のガイド部材である。転写前下ガイド22は、感光体ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿う長さ(長手方向長さ)と、記録材Pの搬送方向に沿う方向の長さ(短手方向長さ)を有する、導電材料としての金属で作製された1枚の板状部材である。本実施例では、この転写前下ガイド22は、転写前ガイド手段20における、電圧の印加により電位の変化する導電部分を構成する。
【0026】
転写前上ガイド21と転写前下ガイド22は、互いに対向して配置されており、その間に記録材Pが通過する領域を形成している。本実施例では、転写前上ガイド21と転写前下ガイド22との間の間隔は、記録材Pの搬送方向下流側に行くに従って狭くされている。これにより、転写部Nに記録材Pを案内し易くなっている。又、転写前上ガイド21と転写前下ガイド22の記録材Pの搬送方向における上流側の端部から所定範囲の部分は、両者の間の間隔が記録材Pの搬送方向上流側に行くに従って広くなるようにそれぞれ屈曲されている。これにより、記録材Pを両者に挟まれた領域に受け入れ易くなっている。又、転写前上ガイド21と転写前下ガイド22は、記録材Pを転写部Nに適正に案内できるように、記録材Pの搬送方向下流側のそれぞれの端部を感光体ドラム1の表面と近接させて配置されている。
【0027】
図2に示すように、転写前下ガイド22には、転写前下ガイド22に電圧を印加する下ガイド部材電圧印加手段としての電源(転写前下ガイドバイアス電源)14が接続されている。電源14と転写前下ガイド22との間には、抵抗(転写前下ガイド抵抗)13が接続されている。これは、記録材Pが高湿度環境で吸湿した場合など、記録材Pの電気的抵抗が低いときに、転写下ガイド22の電流が転写前上ガイド21に流れ込むことにより、転写前上ガイド21の電位が変化してトナーが付着することを防止するためである。本実施例では、抵抗13としては100MΩのものを接続した。
【0028】
電源14は、転写前下ガイド22に、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である転写前下ガイドバイアスを印加することが可能となっている。
【0029】
詳しくは後述するように、本実施例では、感光体ドラム1の回転中において、転写前下ガイド22(下ガイド部材上)上に記録材Pが存在する間は、電源14からトナーの正規の帯電極性とは逆極性の転写前下ガイドバイアスを印加する。そして、感光体ドラム1の回転中において、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間は、電源14から転写前下ガイド22に電圧を印加しないか、トナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)の電圧を印加する。転写前下ガイド22上に記録材Pが存在するとは、記録材Pの搬送方向に沿う方向における、転写前下ガイド22の上流側の端部の位置から下流側の端部の位置までの範囲に、記録材Pの少なくとも一部が存在することを言う。又、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しないとは、記録材Pの搬送方向に沿う方向における、転写前下ガイド22の上流側の端部の位置から下流側の端部の位置までの範囲に、記録材Pが存在しないことを言う。
【0030】
3.転写前下ガイドに対する電圧の印加
図3は、本実施例における画像形成動作のシーケンス図である。図3のシーケンス中に付した符号は、以下説明する各タイミングを表している。図3は、特に、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間に電源14から転写前下ガイド22に電圧を印加しない場合の画像形成動作のシーケンス図である。
【0031】
図3に示すように、画像形成装置100がプリント信号を受けると(T1)、メインモータが回転を開始する(T3)。メインモータは、感光体ドラム1を駆動しており、メインモータが回転を開始すると、感光体ドラム1が回転を開始し、メインモータの回転が停止すると感光体ドラム1の回転が停止する。又、同時にレーザースキャナ3の内部のポリゴンモータが回転を開始する(T5)。ポリゴンモータの回転が立ち上がった後に、給紙ローラ9が回転することにより記録材Pが給紙される(T11)。又、感光体ドラム1には、帯電ローラ2を介して、帯電バイアスが印加される(T13)。感光体ドラム1が一定の電位に帯電された後、画像パターンに応じてレーザーによる露光が行われる(T7)。レーザーによる露光で感光体ドラム1に形成された静電潜像は、現像部Gに到達すると、現像器4の現像スリーブに現像バイアスが印加されることで(T17)、現像スリーブからトナーが供給されてトナー像として現像される。又、感光体ドラム1に形成されたトナー像が転写部Nに到達した際には、転写ローラ5には転写バイアスが印加されており(T21)、感光体ドラム1から記録材Pにトナー像が転写される。
【0032】
ところで、感光体ドラム1が回転することにより、画像形成装置100の内部には空気の流れが発生する。現像部Gから転写部Nにかけての空気の流れを、図2中の点線で示す。この空気の流れは、感光体ドラム1の周辺の空気が、感光体ドラム1の回転に伴って移動することによって発生するものである。即ち、転写部Nの近傍までは感光体ドラム1に沿って空気の流れが発生した後、この空気の流れが転写部Nで跳ね返されて、転写前ガイド手段20の上を抜ける。その後、この空気の流れは、画像形成装置100の内部で拡散されていく。このとき、現像部Gから転写部Nの間の、感光体ドラム上に存在するトナーが、この空気の流れによって飛ばされ、飛散トナーとなって、転写前ガイド手段20を汚染する。又、このトナーは、空気の流れに乗って更に画像形成装置100の内部に広がることによって、レーザースキャナ3の内部に侵入するなどして問題を引き起こすことがある。
【0033】
そこで、本実施例では、記録材Pの搬送方向先端が、記録材Pの搬送方向における上流側の転写前下ガイド22の端部の位置に到達したときに(T25)、転写前下ガイド22への転写前下ガイドバイアスの印加が開始される。本実施例では、転写前下ガイドバイアスとして、+1kVのDCバイアスを印加した。又、転写前下ガイド22への転写前下ガイドバイアスの印加は、記録材Pの搬送方向後端が、記録材Pの搬送方向における下流側の転写前下ガイド22の端部の位置を通過したときに停止される(T26)。そして、次の記録材Pの搬送方向先端が転写前下ガイド22の上流側端部の位置まで来たときに(T27)、再び転写前下ガイド22への転写前下ガイドバイアスの印加が開始される。
【0034】
このように、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在する間は、トナーとは逆極性の転写前下ガイドバイアスを印加することで、転写部Nの近辺に飛散するトナーは、転写前下ガイド22の電位により記録材Pに引き付けられる。これにより、この飛散トナーは画像形成装置100の内部を汚染することなく、記録材P上に目立たない程度に付着し、画像形成装置100の外へ排出される。又、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間は、転写前下ガイドバイアスをOFFとする。これによって、転写前ガイド手段20へのトナーの付着を防止する。
【0035】
尚、図3のシーケンスにおいて、T8は1枚目の記録材Pに対する画像形成時のレーザーによる露光の終了タイミングである。又、T14は1枚目の記録材Pに対する画像形成時の帯電バイアスの印加終了タイミングである。又、T18は、1枚目の記録材Pに対する画像形成時の現像バイアスの印加終了タイミングである。又、T22は、1枚目の記録材Pに対する画像形成時の転写バイアスの印加終了タイミングである。又、T2は、2枚目の記録材Pに対する画像形成時のプリント信号の受信タイミングである。又、T4は、複数の記録材Pに対する画像形成時に連続して駆動されていたメインモータの停止タイミングである。又、T6は、複数の記録材Pに対する画像形成時に連続して駆動されていたスキャナモータの停止タイミングである。又、2枚目の画像形成時のT9、T10は、1枚目の画像形成時のT7、T8と同様のタイミングである。又、2枚目の画像形成時のT12は、1枚目の画像形成時のT11と同様のタイミングである。又、2枚目の画像形成時のT15、T16は、1枚目の画像形成時のT13、T14と同様のタイミングである。又、2枚目の画像形成時のT19、T20は、1枚目の画像形成時のT17、T18と同様のタイミングである。又、2枚目の画像形成時のT23、T24は、1枚目の画像形成時のT21、T22と同様のタイミングである。そして、2枚目の画像形成時のT28は、1枚目の画像形成時のT26と同様のタイミングである。
【0036】
又、別法として、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間は、電源14から転写前下ガイド22にトナーの正規の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)の電圧を印加してもよい。これにより、転写前下ガイド22へのトナーの付着をより防止することができる。又、この期間においては、トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を転写前下ガイド22に印加しても、転写前下ガイド22への転写電流の流れ込みによる転写不良は発生しない。又、この期間においては、感光体ドラム1上にトナー像は無いので、転写前下ガイド22にトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加しても、その電圧によりトナーが静電気力を受けて散乱し、機内を汚染することもない。
【0037】
図4は、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間に、電源14から転写前下ガイド22にトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加する場合の画像形成動作のシーケンス図である。図4のシーケンス中、図3に示すシーケンスのものと同じタイミングには同じ符号を付している。この場合、T26において、電源14から転写前下ガイド22に印加する電圧の極性を、正極性(トナーの正規の帯電極性とは逆極性)から、負極性(トナーの正規の帯電極性と同極性)に切り替える。その後、T27において、再び該極性を負極性から正極性に切り替える。
【0038】
4.制御態様
図5は、本実施例の画像形成装置100の概略制御態様を示す。本実施例では、画像形成装置100の動作は、画像形成装置100が有する制御部30の制御の中心的素子であるCPU31が統括的に制御する。本実施例との関連において、CPU31は、感光体ドラム1、帯電ローラ2、レーザースキャナ3、現像器4、転写ローラ5などで構成される、トナー像を記録材Pに形成するための画像形成手段50を制御する。又、CPU31は、転写前下ガイド22に電圧を印加する電源14を制御する。CPU31は、パーソナルコンピュータなどの外部装置200から送られる画像情報、記録材Pの種類などの画像形成条件を指示する情報に応じて、ROM32に記憶されているプログラム、RAM33に記憶したデータなどに従って、画像形成動作を制御する。又、CPU31には、画像形成装置100に設けられた操作部40が接続されており、操作部40から記録材Pの種類を指定する情報などの画像形成条件を指示する情報が入力されることがある。
【0039】
本実施例では、電源14は、電圧出力部としての正電圧出力部を有する。又、電源14は、該正電圧出力部からの電圧の出力のON/OFFを切り替える手段としてのON/OFFスイッチを有する。そして、CPU531は、上述のシーケンスに従って、電源14から転写前下ガイド22への電圧の印加のON/OFFを制御する。尚、CPU31は、記録材Pの搬送経路に設けられた記録材Pの位置を検知するセンサからの信号、記録材Pの搬送手段の搬送動作の設定などに基づいて、記録材Pの位置を把握して、転写前下ガイド22への電圧の印加のタイミングを求めることができる。
【0040】
又、上述のように、別法として、記録材Pが転写前下ガイド22上に存在しない間に、トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を転写前下ガイド22に印加することができる。この場合、電源14は、第1の電圧出力部としての正電圧出力と、第2の電圧出力部としての負電圧出力部と、を有する。又、この場合、電源14は、第1、第2の電圧出力部のいずれから電圧を出力するかを切り替える手段としての極性切り替えスイッチを有する。又、電源14は、第1、第2の電圧出力部のそれぞれからの電圧の出力のON/OFFを切り替える手段としてのON/OFFスイッチを有する。そして、CPU31は、上述のシーケンスに従って、電源14から転写前下ガイド22へ印加する電圧の極性の切り替え、電圧の印加のON/OFFを制御する。
【0041】
5.評価試験
5−1.本実施例
本実施例の画像形成装置100を用いて、印字率25%のハーフトーン画像を500枚連続出力した。記録材Pとしては、A4サイズの紙を縦送りで使用した。その結果、転写前上ガイド21に若干のトナーによる汚れが見られたものの、転写前下ガイド22にはトナーの付着は無く、出力された記録材Pにも、トナーによる汚れは見られなかった。
【0042】
更に、印字パターンを2%印字率の横線画像に切り替え、15万枚連続出力した。その結果、それ以上の転写前ガイド手段20のトナーによる汚れの進行は見られず、レーザースキャナ3の内部にトナーが侵入することなどによる他の問題も発生しなかった。
【0043】
尚、上述の結果は、転写前下ガイド22上に転写材Pが存在しない間に転写前下ガイドバイアスをOFFとした場合の結果であるが、その期間にトナーと同極性の転写前下ガイドバイアスを印加した場合も同様の結果が得られた。その期間にトナーと同極性の転写前下ガイドバイアスを印加した場合の方が、転写前下ガイド22へのトナーの付着を防止する効果は高くなる傾向がある。
【0044】
5−2.比較例1
本比較例は、図6に示すように、実施例1の画像形成装置100から、転写前下ガイド22への電圧印加機構を省いたものである。尚、便宜上、本比較例についても、本実施例のものに対応する機能、構成を有する要素には同一の符号を付して説明する。
【0045】
本比較例の画像形成装置100を用いて、実施例1の場合と同様、印字率25%のハーフトーン画像を500枚連続出力した。記録材Pとしては、A4サイズの紙を縦送りで使用した。その結果、200枚目以降の記録材Pの搬送方向先端部に、トナーによる汚れが発生した。連続出力の終了後に、転写前ガイド手段20を観察すると、転写前上ガイド21の下流側端部にトナーの付着が見られた。本比較例では、転写前上ガイド21に付着する飛散トナー量が、実施例1の場合に比べて増大したため、転写前上ガイド21の端部がトナーにより汚れたものと考えら得る。そして、このトナーによる汚れを、記録材Pの搬送方向先端部が掻き取ることによって、記録材Pのトナーによる汚れとして顕在化したものと考えられる。
【0046】
又、実施例1の場合と同様、印字パターンを2%印字率の横線画像に切り替え、15万枚連続出力した。その結果、連続出力の後に再びハーフトーン画像を出力した際の濃度が低下していた。これは、画像形成装置100の内部の飛散トナー量が増大したために、レーザースキャナ3の内部にも飛散トナーが入り込み、レーザーやポリゴンミラーなどを汚染することにより、感光体ドラム1の表面に到達する露光量が減少したためと考えられる。
【0047】
5−3.比較例2
本比較例は、実施例1の画像形成装置100から、転写材Pが転写前下ガイド22上に存在しないときも転写前下ガイドバイアスを印加し続けるように変更したものである。尚、便宜上、本比較例についても、本実施例のものに対応する機能、構成を有する要素には同一の符号を付して説明する。
【0048】
図7は、本比較例における画像形成動作のシーケンス図である。図7のシーケンス中、図3のシーケンスのものと同じタイミングには同じ符号を付している。
【0049】
図7に示すように、本比較例における画像形成動作のシーケンスは実施例1の画像形成装置100のものと概略同様である。但し、本比較例では、T25において印加が開始された転写前下ガイドバイアスは、記録材Pが転写前下ガイド22上にいないときも印加され続け、画像形成装置100の動作(メインモータの回転)が停止する時点で停止される(T29)。
【0050】
本比較例の画像形成装置100を用いて、実施例1の場合と同様、印字率25%のハーフトーン画像を500枚連続出力した。記録材Pとしては、A4サイズの紙を縦送りで使用した。その結果、記録材Pの裏面にトナーによる汚れが発生した。この時点で画像形成装置100の内部を観察すると、転写前下ガイド22の下流側端部にトナーが堆積しており、このトナーが記録材Pの裏面に付着したものと考えられる。
【0051】
6.効果
本実施例では、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在する間は、トナーとは逆極性の転写前下ガイドバイアスを印加することで、転写部Nの近辺に飛散するトナーは、転写前下ガイド22の電位により記録材Pに引き付けられる。このことにより、飛散トナーは画像形成装置100の内部を汚染することなく、記録材P上に目立たない程度に付着し、画像形成装置100の外へ排出される。飛散トナーは、次々に記録材Pによって画像形成装置100の外部に排出されるので、1枚の記録材Pに付着するトナーは僅かであり、実用上問題無い程度である。そして、このように飛散トナーが次々に記録材Pによって画像形成装置100の外部に排出されることで、トナーが転写前下ガイド22に付着して蓄積することを防止することができる。一方、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間にトナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧を転写前下ガイド22に印加すると、転写前下ガイド22に直接トナーが引き付けられる。これにより、転写前下ガイド22上にトナーが蓄積することにより、記録材Pのトナーによる汚れにつながる。そのため、本実施例では、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間は、転写前下ガイドバイアスをOFFとするか、トナーと同極性の電圧を印加する。これによって、転写前ガイド手段20へのトナーの付着を防止し、それによる記録材Pのトナーによる汚れを防止することができる。
【0052】
ここで、転写前下ガイド22へのトナー付着防止のためには、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在する間に転写前下ガイド22にトナーと同極性の電圧を印加することが考えられる。しかし、そのように転写前下ガイド22にトナーと同極性の電圧を印加した場合には、その電圧によりトナーが静電気力を受けることにより散乱し、機内を汚染する可能性がある。特に、レーザースキャナの内部にトナーが侵入することによる、ミラー汚れや、レーザー光量の低下による、画像濃度低下などが問題となることがある。上述のように、本実施例によれば、このようなことは無い。
【0053】
実施例2
本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0054】
本実施例では、転写前ガイド手段20において、転写前下ガイド22だけでなく、転写前上ガイド21にも、電圧を印加する。即ち、本実施例では、転写前上ガイド21もまた、転写前ガイド手段20における電圧の印加により電位の変化する導電部分を構成する。但し、本実施例では、転写前上ガイド21には、転写前下ガイド22とは異なり、トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加する。
【0055】
図8は、本実施例の画像形成装置100の転写部Nの近傍を示す模式図である。図8に示すように、実施例1と同様、転写前下ガイド22には、下ガイド部材電圧印加手段としての第1の電源(転写前下ガイドバイアス電源)14が接続されている。又、第1の電源14と転写前下ガイド22との間には第1の抵抗(転写前下ガイド抵抗)13が接続されている。そして、本実施例では、転写前上ガイド21には、転写前上ガイド21に電圧を印加する上ガイド部材電圧印加手段としての第2の電源(転写前上ガイドバイアス電源)16が接続されている。又、第2の電源16と転写前上ガイド21との間には、第2の抵抗(転写前上ガイド抵抗)15が接続されている。第2の抵抗15は、第1の抵抗13と同様に、転写前上ガイド21の電流が転写前下ガイド22に流れ込むことを防止するためのものであり、本実施例では、第2の抵抗15としては100MΩのものを接続した。
【0056】
第2の電源16は、転写前上ガイド21に、トナーの正規の帯電極性と同極性の直流電圧である転写前上ガイドバイアスを印加することが可能となっている。
【0057】
図9は、本実施例における画像形成動作のシーケンス図である。図9のシーケンス中、図3のシーケンスのものと同じタイミングには同じ符号を付している。
【0058】
図9に示すように、本実施例における画像形成動作のシーケンスは実施例1の画像形成装置100のものと概略同様である。但し、本実施例では、画像形成装置100の動作(メインモータの回転)が開始した時点で、転写前上ガイド21への転写前上ガイドバイアスの印加が開始される(T30)。本実施例では、転写前上ガイドバイアスとして、−1kVのDCバイアスを印加した。転写前上ガイドバイアスは、画像形成装置100が動作している間は印加され続け、そして画像形成装置100の動作(メインモータの回転)が停止する時点で停止される(T31)。
【0059】
尚、実施例1で説明したように、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間に転写前下ガイド22にトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加してもよい。又、転写前上ガイドバイアスも、転写前下ガイドバイアスと同様に、転写前下ガイド22上に転写材Pが存在する間に印加すると共に、存在しない間には印加しないようにしてもよい。即ち、本実施例では、感光体ドラム1の回転中において、少なくとも転写前下ガイド22上に記録材Pが存在する間は、転写前上ガイド21にトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加する。そして、更に、感光体ドラム1の回転中において、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間にも、転写前上ガイド21にトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加する期間を有していてよい。典型的には、本実施例のように、転写前下ガイド22上に転写材Pが存在しない間にも転写前上ガイドバイアスを印加することで、その間に画像形成装置100内で飛散しているトナーが転写前下ガイド22に付着するのをより良好に防止することができる。
【0060】
図10は、本実施例の画像形成装置100の概略制御態様を示す。図10に示す制御態様は、図5に示す実施例1の画像形成装置100の制御態様と同様である。但し、本実施例では、転写前下ガイド22に電圧を印加する第1の電源14を制御することに加えて、転写前上ガイド21に電圧を印加する第2の電源16を制御する。
【0061】
本実施例では、第2の電源16は、電圧出力部としての負電圧出力部を有する。又、第2の電源16は、該負電圧出力部からの電圧の出力のON/OFFを切り替える手段としてのON/OFFスイッチを有する。そして、CPU31は、上述のシーケンスに従って、第2の電源16から転写前上ガイド21への電圧の印加のON/OFFを制御する。第1の電源14の制御については、実施例1における電源14の制御と同様である。
【0062】
本実施例の画像形成装置100を用いて、実施例1の場合と同様、印字率25%のハーフトーン画像を500枚連続出力した。記録材Pとしては、A4サイズの紙を縦送りで使用した。その結果、記録材Pのトナーによる汚れは発生しなかった。又、画像形成装置100の内部を観察したところ、転写前下ガイド22、転写前上ガイド21とも、トナーの付着はほとんど見当たらなかった。
【0063】
更に、実施例1の場合と同様、印字パターンを印字率2%の横線画像に切り替え、15万枚連続出力した。その結果、それ以上の転写前ガイド手段20のトナーによる汚れの進行は見られず、レーザースキャナ3の内部にトナーが侵入することなどによる他の問題も発生しなかった。
【0064】
尚、上述の結果は、転写前下ガイド22上に転写材Pが存在しない間に転写前下ガイドバイアスをOFFとした場合の結果であるが、その期間にトナーと同極性の転写前下ガイドバイアスを印加した場合も同様の結果が得られた。その期間にトナーと同極性の転写前下ガイドバイアスを印加した場合の方が、転写前下ガイド22へのトナーの付着を防止する効果は高くなる傾向がある。
【0065】
以上のように、本実施例によれば、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在する間は、トナーとは逆極性の転写前下ガイドバイアスを印加することで、飛散トナーを記録材P上に目立たない程度に付着させて画像形成装置100の外へ排出する。又、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間は、転写前下ガイドバイアスをOFFとすることで、転写前ガイド手段20へのトナーの付着を防止する。そして、本実施例では、更に、転写前上ガイド21へのトナーの付着を防止するために、転写前上ガイド21にトナーと同極性の電圧を印加する。このように転写前上ガイド21にトナーと同極性の電圧を印加しても、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在する間は、飛散トナーは転写前下ガイド22の電位により記録材Pに引き付けられている。そのため、トナーと同極性の電圧によりトナーが静電気力を受けることにより散乱し、機内を汚染することはなく、転写前上ガイド21へのトナーの付着を防止するように有効に働く。抵抗13、15によって転写前上ガイド21から転写前下ガイド22に電流が流れ込むことも防止されている。又、本実施例では、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間にも、転写前上ガイド21にトナーと同極性の電圧を印加することで、転写前上ガイド21へのトナーの付着をより良好に防止することができる。この期間においては、感光体ドラム1上にトナー像は無い。そのため、転写前上ガイド21にトナーと同極性の電圧を印加しても、その電圧によりトナーが静電気力を受けて散乱し、機内を汚染することはなく、転写前上ガイド21へのトナーの付着を防止するように有効に働く。
【0066】
実施例3
本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例2のものと同じである。従って、実施例2の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0067】
本実施例では、実施例2と同様に、転写前ガイド手段20において、転写前上ガイド21と転写前下ガイド22とに電圧を印加できる。但し、本実施例では、転写前下ガイド22に印加する電圧を、画像を形成して出力するために使用する記録材Pのサイズに応じて、換言すれば、転写前ガイド手段20を通過する記録材Pのサイズに応じて変化させる。
【0068】
更に説明すると、本実施例の画像形成装置100は、画像形成装置100におけるその搬送方向と直交する方向の幅が異なる複数種類の記録材Pに画像を形成して出力することができる。
【0069】
前述のように、本実施例の画像形成装置100の最大使用可能幅は、A4サイズの縦送り時の幅(210mm)である。又、本実施例の画像形成装置100は、記録材Pを、その搬送方向と直交する方向において中央に寄せて搬送する。従って、最大使用可能幅より狭い幅の記録材P(例えば、A5サイズの紙の縦送り、はがき、封筒など)を使用する場合、該記録材Pが転写前下ガイド22上に存在する場合にも、転写前下ガイド22の記録材P側の面の、記録材Pの幅より外側の領域は露出する。
【0070】
そこで、本実施例では、記録材Pとして、その幅が最大使用可能幅よりも狭い記録材Pを使用する場合には、転写前下ガイド22に転写前下ガイドバイアスを印加しない。
【0071】
即ち、記録材Pの幅が最大使用可能幅よりも狭い場合に、実施例1又は2のように転写前下ガイドバイアスを印加すると、本来最大使用可能幅の記録材Pに付着して機外に排出されるべき飛散トナーが、転写前下ガイド22に付着してしまうことがある。そして、その後より幅の大きい記録材P(例えば最大使用可能幅の記録材P)を使用した際に、その記録材Pの幅方向の端部に転写前下ガイド22のトナーによる汚れが付着することがある。従って、本実施例では、上述のように、最大使用可能幅よりも狭い幅の記録材Pを使用する場合には、転写前下ガイドバイアスを印加しない。
【0072】
図11は、最大使用可能幅よりも狭い幅の記録材Pを使用する場合の画像形成動作のシーケンス図である。図11のシーケンス中、図9に示すシーケンスのものと同じタイミングには同じ符号を付している。
【0073】
図11に示すように、この場合の画像形成動作のシーケンスは、実施例2の画像形成装置100のものと概略同様である。但し、本実施例では、転写前下ガイド22に転写前下ガイドバイアスが印加されないことが実施例2とは異なる。
【0074】
図12は、記録材Pの種類により画像形成動作時の転写前ガイド手段20に対する電圧印加態様を選択する処理の概略フローを示す。制御部30のCPU31は、プリント信号を受信すると、操作部40又は外部機器200から入力された記録材Pの種類を指示する信号を読み取り(ステップ1)、使用する記録材Pが最大使用可能幅の記録材Pであるか否かを判断する(ステップ2)。そして、最大使用可能幅の記録材Pであると判断した場合は、図9に示すシーケンス(転写前下ガイドバイアスと転写前上ガイドバイアスを印加)に従って画像形成動作を開始する(ステップ3)。一方、最大使用可能幅より狭い幅の記録材Pであると判断した場合は、図11に示すシーケンス(転写前上ガイドバイアスのみを印加)に従って画像形成動作を開始する(ステップ4)。
【0075】
本実施例の画像形成装置100の制御態様は、図10に示す実施例1の画像形成装置100の制御態様と同様である。但し、本実施例では、CPU31は、図12に示すような、記録材Pの種類により画像形成動作のシーケンスを選択する処理を実行する。
【0076】
又、別法として、最大使用可能幅よりも狭い幅の記録材Pを使用する場合に、転写前下ガイドバイアスとしてトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加してもよい。図13は、その場合における画像形成動作のシーケンス図である。図13のシーケンス中、図11のシーケンスのものと同じタイミングには同じ符号を付している。図13の例では、画像形成装置100の動作(メインモータの回転)が開始した時点で、転写前下ガイド21へのトナーの正規の帯電極性と同極性の転写前上ガイドバイアスの印加が開始される(T32)。例えば、転写前下ガイドバイアスとして、−1kVのDCバイアスを印加することができる。又、この転写前下ガイドバイアスは、画像形成装置100が動作している間は印加され続け、そして画像形成装置100の動作(メインモータの回転)が停止する時点で停止される(T33)。尚、この転写前下ガイド22に印加するトナーの正規の帯電極性と同極性の転写前下ガイドバイアスは、例えば図3に示したのと同様にして、転写前下ガイド22上に転写材Pが存在する間に印加すると共に、存在しない間には印加しないようにしてもよい。
【0077】
本実施例の画像形成装置100を用いて、最大使用可能幅よりも狭い幅の記録材(第2の記録材)Pとして、A5サイズの紙を縦送り(長手方向を搬送方向とする搬送方法)で使用し、印字率25%ハーフトーン画像を500枚連続出力した。その結果、転写前ガイド手段20のトナーによる汚れは目立たなかった。又、その後、最大使用可能幅の記録材(第1の記録材)Pとして、A4サイズの紙を縦送り(長手方向を搬送方向とする搬送方法)で使用して画像を出力したところ、記録材Pのトナーによる汚れは発生しなかった。
【0078】
これは、次のような利用によるものと考えられる。即ち、最大使用可能幅よりも狭い幅の記録材Pの使用時は、感光体ドラム1上の印字領域の幅も狭いため、飛散するトナーの量も相対的に少なくなる。そのため、最大使用可能幅よりも狭い幅の記録材Pの使用時は、転写前下ガイドバイアスを印加しなくても、画像形成装置100の内部のトナーによる汚れをある程度小さくできるものと考えられる。
【0079】
尚、上述の結果は、最大使用可能幅よりも狭い幅の記録材Pを使用する場合に、転写前下ガイドバイアスをOFFとしたときの結果であるが、転写前下ガイドバイアスとしてトナーと同極性の電圧を印加しても同様の結果が得られた。トナーと同極性の転写前下ガイドバイアスを印加した場合の方が、転写前下ガイド22へのトナーの付着を防止する効果は高くなる傾向がある。
【0080】
以上のように、本実施例では、転写部Nにおける搬送方向と直交する方向の幅が転写部Nでトナーを転写することのできる最大値となる第1の記録材に画像を形成する際には、実施例1、2で説明したのと同様のシーケンスで画像形成を行う。これに対して、転写部Nにおける搬送方向と直交する方向の幅が上記最大値よりも小さい値となる第2の記録材に画像を形成する際には、次のようにする。即ち、感光体ドラム1の回転中において、転写前下ガイド22上に記録材Pが存在する間及び転写前下ガイド22上に記録材Pが存在しない間の両方ともに、転写前下ガイド22に電圧を印加しないか又はトナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加する。これにより、最大使用可能幅の記録材Pに画像を形成する場合には、トナーと逆極性の転写前下ガイドバイアス、トナーと同極性の転写前上ガイドバイアスにより、転写前ガイド手段20へのトナーの付着を防止することができる。一方、最大使用可能幅よりも狭い幅の記録材Pに画像を形成する場合には、飛散するトナーの量が相対的に少ないため、転写前下ガイドバイアスをOFFするかトナーと同極性として、転写前下ガイド22の露出部に積極的にトナーを引き寄せることを防止する。
【0081】
尚、本実施例では、記録材Pとして、最大使用可能幅の記録材Pを使用しない場合には、転写前下ガイドバイアスを印加しないこととした。しかし、本発明は斯かる態様に限定されるものではなく、記録材Pとして最大使用可能幅よりも狭い所定の幅以下のものを使用する場合に、転写前下ガイドバイアスを印加しないこととしてもよい。
【0082】
又、本実施例では、実施例2と同様に転写前上ガイドバイアスを印加可能な構成において、本実施例を適用した。これにより、転写前上ガイド21へのトナーの付着がより良好に防止される。しかし、所望により、実施例1と同様に転写前下ガイドバイアスのみ印加可能な構成において、本実施例を適用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 感光体ドラム
2 帯電ローラ
3 レーザースキャナ
4 現像装置
5 転写ローラ
6 クリーニング装置
10 搬送ローラ(レジストローラ)
14 転写前下ガイドバイアス電源(第1の電源)
16 転写前上ガイドバイアス電源(第2の電源)
20 転写前ガイド手段
21 転写前上ガイド
22 転写前下ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを担持する回転可能な像担持体と、回転する前記像担持体上のトナーを転写部において記録材に転写させる転写手段と、前記転写部へと記録材を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって前記転写部に搬送される記録材を前記転写部よりも前記記録材の搬送方向上流側で案内するガイド手段であって、前記転写部に向かう記録材の下側に配置される導電材料で形成された下ガイド部材を有するガイド手段と、前記下ガイド部材に電圧を印加する下ガイド部材電圧印加手段と、を有し、
前記像担持体の回転中において、前記下ガイド部材上に記録材が存在する間は、前記下ガイド部材電圧印加手段から前記下ガイド部材に前記トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧を印加し、前記下ガイド部材上に記録材が存在しない間は、前記下ガイド部材電圧印加手段から前記下ガイド部材に電圧を印加しないか又は前記トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ガイド手段は更に、前記転写部に向かう記録材の上側に配置される導電材料で形成された上ガイド部材を有し、前記画像形成装置は更に、前記上ガイド部材に電圧を印加する上ガイド部材電圧印加手段を有し、
前記像担持体の回転中において、少なくとも前記下ガイド部材上に記録材が存在する間は、前記上ガイド部材電圧印加手段から前記上ガイド部材に前記トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
更に、前記像担持体の回転中において、前記下ガイド部材上に記録材が存在しない間にも、前記上ガイド部材電圧印加手段から前記上ガイド部材に前記トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加する期間を有することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナーを担持する回転可能な像担持体と、回転する前記像担持体上のトナーを転写部において記録材に転写させる転写手段と、前記転写部へと記録材を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって前記転写部に搬送される記録材を前記転写部よりも前記記録材の搬送方向上流側で案内するガイド手段であって、前記転写部に向かう記録材の下側に配置される導電材料で形成された下ガイド部材を有するガイド手段と、前記下ガイド部材に電圧を印加する下ガイド部材電圧印加手段と、を有し、
前記転写部における搬送方向と直交する方向の幅が前記転写部でトナーを転写することのできる最大値となる第1の記録材に画像を形成する際には、前記像担持体の回転中において、前記下ガイド部材上に記録材が存在する間は、前記下ガイド部材電圧印加手段から前記下ガイド部材に前記トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧を印加し、前記下ガイド部材上に記録材が存在しない間は、前記下ガイド部材電圧印加手段から前記下ガイド部材に電圧を印加しないか又は前記トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加し、
前記転写部における搬送方向と直交する方向の幅が前記最大値よりも小さい値となる第2の記録材に画像を形成する際には、前記像担持体の回転中において、前記下ガイド部材上に記録材が存在する間及び前記下ガイド部材上に記録材が存在しない間の両方ともに、前記下ガイド部材電圧印加手段から前記下ガイド部材に電圧を印加しないか又は前記トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記ガイド手段は更に、前記転写部に向かう記録材の上側に配置される導電材料で形成された上ガイド部材を有し、前記画像形成装置は更に、前記上ガイド部材に電圧を印加する上ガイド部材電圧印加手段を有し、
前記像担持体の回転中において、少なくとも前記下ガイド部材上に記録材が存在する間は、前記上ガイド部材電圧印加手段から前記上ガイド部材に前記トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
更に、前記像担持体の回転中において、前記下ガイド部材上に記録材が存在しない間にも、前記上ガイド部材電圧印加手段から前記上ガイド部材に前記トナーの正規の帯電極性と同極性の電圧を印加する期間を有することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−83568(P2012−83568A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229964(P2010−229964)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】