説明

画像形成装置

【課題】中間転写ベルト8の駆動制御方式をベルト定速制御からモーター定速制御に切り替えることに起因する色ずれの悪化を抑える。
【解決手段】感光体1Y,C,M,Kに対する光書込開始タイミングを補正する光書込位置補正処理を実施する際には、ローラエンコーダー171による検知結果に基づいて中間転写ベルト8を一定速度で走行させるように共用駆動モーター162の駆動速度を調整するベルト定速制御を実施し、厚紙使用時には、フラッシュメモリに記憶しているアルゴリズム又はデータテーブルに基づいて、光書込位置補正処理による補正後の光書込開始タイミングを一時的に補正した状態で、FG信号に基づいて共用駆動モーター162を一定速度で回転させるモーター定速制御を実施するように、制御装置200を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成した互いに異なる色のトナー像を無端状のベルト部材の表面あるいは同表面に保持している記録部材に重ね合わせて転写して多色画像を得る画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置では、ベルト移動方向において、各色のトナー像を位置ずれして転写することによる色ずれを引き起こすことがある。色ずれを引き起こす原因の1つとしては、各色の潜像担持体に対する潜像書込位置の相対的なずれが挙げられる。具体的には、反射ミラーや走査レンズなどの潜像書込系部品が温度変化に伴って伸縮すると、各色の潜像担持体の間で潜像書込位置が相対的にずれることがある。このような潜像書込位置のずれが生ずると、各色の潜像担持体の間で潜像の相対的な位置ずれが発生するので、色ずれを引き起こしてしまうのである。
【0003】
そこで、特許文献1や特許文献2に記載の画像形成装置においては、潜像担持体たる各色の感光体に対する潜像書込位置を補正する書込位置補正処理を定期的に実施して、各色の感光体の間における潜像書込位置の相対的なずれを低減するようになっている。その書込位置補正処理においては、まず、各色の感光体にそれぞれ形成した所定のトナー像をベルト部材の表面に転写して、色ずれ検知用画像をベルト表面上に形成する。そして、その色ずれ検知用画像における各色のトナー像をそれぞれ反射型フォトセンサによって検知するタイミングに基づいて、各色のトナー像におけるベルト移動方向の位置ずれ量を算出する。次いで、その算出結果に基づいて、潜像書込を行う光走査系の反射ミラーの傾斜角度を微調整したり、感光体に対する走査光の照射タイミングを微調整したりする。これにより、各色の感光体の間における潜像書込位置の相対的なずれを低減して、色ずれを低減することができる。
【0004】
また、特許文献2に記載の画像形成装置においては、ベルト部材の移動速度を検知した結果に基づいてベルト部材を一定速度で無端移動させるように駆動モーターを駆動するベルト定速制御を実施することで、ベルト部材の速度安定化を図っている。具体的には、ベルト部材を張架している複数の張架ローラのうち、ベルト部材の無端移動に伴って従動回転する従動ローラにロータリーエンコーダーを設け、これによる検知結果に基づいてベルト部材の移動速度を検知させている。そして、ベルト部材の速度変動があった場合に、その変動とは逆位相の速度変動を発生させるように、駆動モーターに対してロータリーエンコーダーの検知結果をフィードバックしている。これにより、駆動ローラの偏心に起因するベルト部材の速度変動を抑えて速度安定化を図ることで、ベルト速度変動に起因する色ずれを低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、本発明者らは、特許文献2に記載の画像形成装置と同様の構成の試験機において、プリント速度をより高速化していく実験を行ったところ、厚紙使用時にスジ状の画像乱れを引き起こし易くなることを見出した。具体的には、試験機は、ベルト部材の表面上に重ね合わせて1次転写して得たカラートナー像を、ベルト部材と2次転写ローラとの当接による2次転写ニップでベルト部材から記録紙に一括2次転写する構成になっている。かかる構成において、記録紙として厚紙を用いると、それを2次転写ニップに進入させる際に、急激な負荷上昇によってベルト部材の移動速度を一瞬だけ大きく低下させてしまう。プリント速度を従来よりも高速化した条件下では、その低下率が従来よりも大きくなる。すると、その速度低下を駆動モーターの駆動制御にフィードバックすると、ベルト部材の速度を一瞬だけ過剰に速めてしまう。このような、厚紙ニップ進入時における一瞬の速度低下と、その後の一瞬の速度上昇とが起こると、感光体からベルト部材への1次転写においてトナー像が正常に転写されずに、上述のようなスジ状の画像乱れを引き起こしていたのである。このスジ状の画像乱れは、駆動ローラの偏心に起因して生ずる色ずれよりも遙かに目立つため、色ずれよりも優先して対策を講ずるべきものであった。
【0006】
そこで、本発明者らは、厚紙使用時には、上述したベルト定速制御に代えて、FG信号によるモーター定速制御を実施するように試験機を改良した(以下、この試験機を改良試験機という)。FG信号は、モーター軸について所定の回転角変位を検出する毎にパルス波を発生させるFG信号発電機(Frequency Generator)から発せられる信号である。モーター定速制御においては、FG信号の周波数を一定に保つように駆動モーターを駆動することで、駆動モーターを所定の目標回転速度で一定に回転させる。厚紙がニップに進入する際には、ベルト部材の速度が一瞬だけ大きく低下するが、このとき、ベルトの伸びなどが起こるため、駆動モーターの回転速度はそれほど低下しない。このため、厚紙のニップ進入時に、モーター回転速度の急激な低下は検出されず、厚紙のニップ進入からニップ排出に至るまで、駆動モーターを目標回転速度で安定して回転させ続けることができる。
【0007】
しかしながら、このような改良試験機で試運転を行ったところ、顕著な色ずれを引き起こしてしまった。そして、この顕著な色ずれは、次のような原因によって引き起こされていることがわかった。即ち、モーター定速制御においては、上述したように、駆動モーターを所定の目標回転速度で回転させる。駆動ローラの径が設計通りの値であれば、そのときのベルト部材の平均線速は、所定の目標ベルト速度とほぼ同じ値になる。ところが、駆動ローラの径が加工誤差や温度変化に伴う伸縮によって設計値からずれていると、ベルト部材の平均線速が目標ベルト速度からずれてしまう。すると、ベルト上に転写されたトナー像をベルト部材とともに上流側の転写ニップから下流側の転写ニップまで移動させる時間が設計値からずれてしまうため、色ずれを引き起こしてしまうのである。
【0008】
なお、厚紙を使用する際にモーター定速制御を行う構成に限らず、何らかの理由により、ベルト定速制御とモーター定速制御とを切り替える構成を採用した場合には、同様の問題が生じ得る。
【0009】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような画像形成装置を提供することである。即ち、ベルト部材の駆動制御方式をベルト定速制御からモーター定速制御に切り替えることに起因する色ずれの悪化を抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ベルト定速制御からモーター定速制御に切り替えたことに起因する各色トナー像の重ね合わせずれの増加量と、駆動回転体の径の設計値からのずれ量とに、相関関係が成立することに着目して本発明を完成させるに至った。具体的には、重ね合わせずれの増加は、ベルト部材の線速が目標ベルト速度からずれることによって起こるものであり、その量と、ベルト部材の線速の目標ベルト速度からのずれ量とには、相関関係が成立する。そして、ベルト部材の線速の目標ベルト速度からのずれ量と、駆動回転体の径の設計値からのずれ量とにも、相関関係が成立する。従って、重ね合わせずれの増加量と、駆動回転体の径の設計値からのずれ量とには、相関関係が成立するのである。
【0011】
駆動回転体の径が設計値からずれるのは、駆動回転体が加工精度の限界から寸法誤差を引き起こしていたり、駆動回転体が温度変化に伴って伸縮したりするからである。寸法誤差による駆動回転体の径のずれがある場合、その径のずれに起因してモーター定速制御の実施時に発生する重ね合わせずれの増加量を、工場出荷時に予め把握しておくことが可能である。また、その増加量を低減し得る潜像書込位置の補正量も予め把握しておくことが可能である。よって、駆動回転体が加工精度の限界から寸法誤差を引き起こしていることに起因してモーター定速制御の実施時に重ね合わせずれが増加してしまう場合には、予め把握しておいた補正量で潜像書込位置を一時的に補正することで、その増加を抑えることが可能である。
【0012】
また、駆動回転体が温度変化に伴って伸縮したことに起因して、駆動回転体の径が設計値からずれる場合、そのずれ量と、所定の基準温度からの温度変化量とには、相関関係が成立する。そして、径のずれ量と、そのずれ量に対応する重ね合わせずれの増加量を低減し得る潜像書込位置の補正量との関係を示すアルゴリズムについては、予め把握しておくことが可能である。よって、温度変化に伴って駆動回転体の径が設計値からずれたことに起因してモーター定速制御の実施時に重ね合わせずれが増加してしまう場合であっても、予め把握しておいたアルゴリズムと、温度変化量とに基づいて潜像書込位置を一時的に補正することで、その増加を抑えることが可能である。
【0013】
そこで、上記目的を達成するために、本発明は、複数の潜像担持体にそれぞれ書き込んだ潜像を互いに異なる色のトナーで現像する作像手段と、無端移動させている無端状のベルト部材の表面あるいは前記表面に保持されている記録シートに対して、前記複数の潜像担持体上のトナー像を重ね合わせて転写して多色画像を得る転写手段と、前記ベルト部材を自らの周面の一部に掛け回しながら回転駆動するのに伴って前記ベルト部材を無端移動せしめる駆動回転体と、前記駆動回転体の駆動源である駆動モーターと、前記作像手段、転写手段、及び駆動モーターの駆動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記ベルト部材の移動速度をベルト速度検知手段によって検知した結果に基づいて、前記ベルト部材を目標ベルト速度で無端移動させるように前記駆動モーターの駆動速度を制御するベルト定速制御を実施し、且つ前記ベルト部材の表面に形成した色ずれ検知用画像に含まれる各色のトナー像をトナー像検知手段によって検知したタイミングに基づいて前記複数の潜像担持体についてそれぞれ潜像書込位置を個別に補正する書込位置補正処理を所定のタイミングが到来する毎に実施するものである画像形成装置において、前記駆動モーターの回転速度を検知する回転速度検知手段を設けるとともに、所定の条件が具備された場合に、前記ベルト定速制御に代えて、前記回転速度検知手段による検知結果に基づいて前記駆動モーターを所定の目標回転速度で回転させるモーター定速制御によって前記ベルト部材を駆動する処理と、前記書込位置補正処理を実施する際には、前記所定の条件が具備されているか否かにかかわらず、前記ベルト部材を前記ベルト定速制御で駆動する処理と、前記モーター定速制御を実施する際には、データ記憶手段に記憶している所定のデータに基づいて、前記書込位置補正処理による補正後の潜像書込位置を一時的に補正する処理とを実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、モーター定速制御を実施する際に、データ記憶手段に予め記憶しているデータに基づいて潜像担持体に対する潜像書込位置を一時的に補正することで、駆動回転体の径が設計値からずれていることに起因してベルト部材を目標ベルト速度からずれた線速で移動させてしまうことによるトナー像の重ね合わせのずれ増加を低減する。よって、ベルト部材の駆動制御方式をベルト定速制御からモーター定速制御に切り替えることに起因する色ずれの悪化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】同プリンタにおけるY用のプロセスユニットを拡大して示す拡大構成図。
【図3】同プロセスユニットと、プリンタ本体に固定されたY用の感光体ギヤとを示す斜視図。
【図4】同プリンタのプロセス駆動ユニットを示す斜視図。
【図5】同プリンタの転写ユニットと、中間転写ベルトなどを駆動する共用駆動モーターとを示す斜視図。
【図6】同共用駆動モーターとその周囲構成とを拡大して示す拡大斜視図。
【図7】同転写ユニットと、各色の感光体とプリンタ本体内に支持された各ギヤとを示す模式図。
【図8】同プリンタの駆動制御部と、これに電気接続される各種機器とを示す模式図。
【図9】同中間転写ベルトの線速Vを説明するための模式図。
【図10】K用の感光体に出現する駆動ローラ回転周期に同期した速度変動曲線を示すグラフ。
【図11】K用の感光体の表面における光書込位置から転写ニップ中央位置までの距離を説明する模式図。
【図12】感光体間距離を説明する模式図。
【図13】同プリンタの中間転写ベルトの一部を光学センサユニットとともに示す拡大斜視図。
【図14】同中間転写ベルトに形成されるシェブロンパッチを示す拡大模式図。
【図15】各色ドットの重ね合わせ位置を説明するための拡大模式図。
【図16】1/4ドットずつずれている状態の各色ドットの位置を示す拡大模式図。
【図17】書込位置補正処理を実施してもなお残ってしまう残存ずれの一例を示す拡大模式図。
【図18】モーター定速制御の実施時に発生する仮想重ね合わせずれの一例を示す拡大模式図。
【図19】同プリンタの制御装置によって実施される一時補正処理における処理フローを示すフローチャート。
【図20】Y,C,Mの3色の位置を全て一律にずらす方法で、それら位置を全て1ドット分だけベルト移動方向上流側にずらした例を示す拡大模式図。
【図21】Y,C,Mの3色の位置を全て一律にずらす方法で、それら位置を全て1ドット分だけベルト移動方向下流側にずらした例を示す拡大模式図。
【図22】同プリンタにおいて図18の状態からモーター定速制御及び一時補正処理を実施した場合に生ずる重ね合わせずれを示す拡大模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、このプリンタは、イエロー,シアン,マゼンタ,黒(以下、Y,C,M,Kと記す)のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット6Y,C,M,Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,C,M,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Yトナー像を生成するためのプロセスユニット6Yを例にすると、図2に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体1Y、ドラムクリーニング装置2Y、除電装置(不図示)、帯電装置4Y、現像器5Y等を備えている。プロセスユニット6Yは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
【0017】
帯電装置4Yは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体1Yの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体1Yの表面は、レーザー光Lによって露光走査されてY用の静電潜像を担持する。このYの静電潜像は、Yトナーと磁性キャリアとを含有するY現像剤を用いる現像器5YによってYトナー像に現像される。そして、後述するベルト部材としての中間転写ベルト8上に中間転写される。ドラムクリーニング装置2Yは、中間転写工程を経た後の感光体1Y表面に残留したトナーを除去する。また、上記除電装置は、クリーニング後の感光体1Yの残留電荷を除電する。この除電により、感光体1Yの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色のプロセスユニット(6C,M,K)においても、同様にして感光体(1C,M,K)上に(C,M,K)トナー像が形成されて、中間転写ベルト8上に中間転写される。
【0018】
現像器5Yは、そのケーシングの開口から一部露出させるように配設された現像ロール51Yを有している。また、互いに平行配設された2つの搬送スクリュウ55Y、ドクターブレード52Y、トナー濃度センサ(以下、Tセンサという)56Yなども有している。
【0019】
現像器5Yのケーシング内には、磁性キャリアとYトナーとを含む図示しないY現像剤が収容されている。このY現像剤は2つの搬送スクリュウ55Yによって撹拌搬送されながら摩擦帯電せしめられた後、上記現像ロール51Yの表面に担持される。そして、ドクターブレード52Yによってその層厚が規制されてからY用の感光体1Yに対向する現像領域に搬送され、ここで感光体1Y上の静電潜像にYトナーを付着させる。この付着により、感光体1Y上にYトナー像が形成される。現像器5Yにおいて、現像によってYトナーを消費したY現像剤は、現像ロール51Yの回転に伴ってケーシング内に戻される。
【0020】
2つの搬送スクリュウ55Yの間には仕切壁が設けられている。この仕切壁により、現像ロール51Yや図中右側の搬送スクリュウ55Y等を収容する第1供給部53Yと、図中左側の搬送スクリュウ55Yを収容する第2供給部54Yとがケーシング内で分かれている。図中右側の搬送スクリュウ55Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部53Y内のY現像剤を図中手前側から奥側へと搬送しながら現像ロール51Yに供給する。図中右側の搬送スクリュウ55Yによって第1供給部53Yの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられた図示しない開口部を通って第2供給部54Y内に進入する。第2供給部54Y内において、図中左側の搬送スクリュウ55Yは、図示しない駆動手段によって回転駆動せしめられ、第1供給部53Yから送られてくるY現像剤を図中右側の搬送スクリュウ55Yとは逆方向に搬送する。図中左側の搬送スクリュウ55Yによって第2供給部54Yの端部付近まで搬送されたY現像剤は、上記仕切壁に設けられたもう一方の開口部(図示せず)を通って第1供給部53Y内に戻る。
【0021】
透磁率センサからなる上述のTセンサ56Yは、第2供給部54Yの底壁に設けられ、その上を通過するY現像剤の透磁率に応じた値の電圧を出力する。トナーと磁性キャリアとを含有する二成分現像剤の透磁率は、トナー濃度と良好な相関を示すため、Tセンサ56YはYトナー濃度に応じた値の電圧を出力することになる。この出力電圧の値は、図示しない制御部に送られる。この制御部は、Tセンサ56Yからの出力電圧の目標値であるY用Vtrefを格納したRAMを備えている。このRAM内には、他の現像器に搭載された図示しないTセンサからの出力電圧の目標値であるC用Vtref、M用Vtref、K用Vtrefのデータも格納されている。Y用Vtrefは、後述するY用のトナー搬送装置の駆動制御に用いられる。具体的には、上記制御部は、Tセンサ56Yからの出力電圧の値をY用Vtrefに近づけるように、図示しないY用のトナー搬送装置を駆動制御して第2供給部54Y内にYトナーを補給させる。この補給により、現像器5Y内のY現像剤中のYトナー濃度が所定の範囲内に維持される。他のプロセスユニットの現像器についても、C,M,K用のトナー搬送装置を用いた同様のトナー補給制御が実施される。
【0022】
先に示した図1において、プロセスユニット6Y,C,M,Kの図中下方には、潜像書込装置としての光書込ユニット7が配設されている。光書込ユニット7は、画像情報に基づいて発したレーザー光Lを、プロセスユニット6Y,C,M,Kにおけるそれぞれの感光体に照射して露光する。この露光により、感光体1Y,C,M,K上にY,C,M,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット7は、光源から発したレーザー光(L)を、モーターによって回転駆動したポリゴンミラーで走査しながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。
【0023】
光書込ユニット7の図中下側には、紙収容カセット26、これらに組み込まれた給紙ローラ27など有する紙収容手段が配設されている。紙収容カセット26は、シート状の記録体たる転写紙Pを複数枚重ねて収納しており、それぞれの一番上の転写紙Pには給紙ローラ27を当接させている。給紙ローラ27が図示しない駆動手段によって図中反時計回りに回転せしめられると、一番上の転写紙Pが給紙路70に向けて送り出される。
【0024】
この給紙路70の末端付近には、レジストローラ対28が配設されている。レジストローラ対28は、転写紙Pを挟み込むべく両ローラを回転させるが、挟み込んですぐに回転を一旦停止させる。そして、転写紙Pを適切なタイミングで後述の2次転写ニップに向けて送り出す。
【0025】
プロセスユニット6Y,C,M,Kの図中上方には、中間転写ベルト8を張架しながら無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。転写手段としての転写ユニット15は、ベルト部材たる中間転写ベルト8の他に、2次転写バイアスローラ19、ベルトクリーニング装置10などを備えている。また、4つの1次転写バイアスローラ9Y,C,M,K、駆動ローラ12、クリーニングバックアップローラ13、従動ローラ14、テンションローラ11なども備えている。中間転写ベルト8は、これらのローラに張架されながら、駆動ローラ12の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。1次転写バイアスローラ9Y,C,M,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト8を感光体1Y,C,M,Kとの間に挟み込んでそれぞれ1次転写ニップを形成している。これらは中間転写ベルト8の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する方式のものである。1次転写バイアスローラ9Y,C,M,Kを除くローラは、全て電気的に接地されている。中間転写ベルト8は、その無端移動に伴ってY,C,M,K用の1次転写ニップを順次通過していく過程で、感光体1Y,C,M,K上のY,C,M,Kトナー像が重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト8上に4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0026】
駆動回転体としての駆動ローラ12は、2次転写ローラ19との間に中間転写ベルト8を挟み込んで2次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8上に形成された可視像たる4色トナー像は、この2次転写ニップで転写紙Pに転写される。そして、転写紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト8には、転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトベルトクリーニング装置10によってクリーニングされる。2次転写ニップで4色トナー像が一括2次転写された転写紙Pは、転写後搬送路71を経由して定着装置20に送られる。
【0027】
定着装置20は、内部にハロゲンランプ等の発熱源を有する定着ローラ20aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ20bとによって定着ニップを形成している。定着装置20内に送り込まれた転写紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ20aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化せしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0028】
定着装置20内でフルカラー画像が定着せしめられた転写紙Pは、定着装置20を出た後、排紙路72と反転前搬送路73との分岐点にさしかかる。この分岐点には、第1切替爪75が揺動可能に配設されており、その揺動によって転写紙Pの進路を切り替える。具体的には、爪の先端を反転前送路73に近づける方向に動かすことにより、転写紙Pの進路を排紙路72に向かう方向にする。また、爪の先端を反転前搬送路73から遠ざける方向に動かすことにより、転写紙Pの進路を反転前搬送路73に向かう方向にする。
【0029】
第1切替爪75によって排紙路72に向かう進路が選択されている場合には、転写紙Pは、排紙路72から排紙ローラ対100を経由した後、機外へと配設されて、プリンタ筺体の上面に設けられたスタック50a上にスタックされる。これに対し、第1切替爪75によって反転前搬送路73に向かう進路が選択されている場合には、転写紙Pは反転前搬送路73を経て、反転ローラ対21のニップに進入する。反転ローラ対21は、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pをスタック部50aに向けて搬送するが、転写紙Pの後端をニップに進入させる直前で、ローラを逆回転させる。この逆転により、転写紙Pがそれまでとは逆方向に搬送されるようになり、転写紙Pの後端側が反転搬送路74内に進入する。
【0030】
反転搬送路74は、鉛直方向上側から下側に向けて湾曲しながら延在する形状になっており、路内に第1反転搬送ローラ対22、第2反転搬送ローラ対23、第3反転搬送ローラ対24を有している。転写紙Pは、これらローラ対のニップを順次通過しながら搬送されることで、その上下を反転させる。上下反転後の転写紙Pは、上述の給紙路70に戻された後、再び2次転写ニップに至る。そして、今度は、画像非担持面を中間転写ベルト8に密着させながら2次転写ニップに進入して、その画像非担持面に中間転写ベルトの第2の4色トナー像が一括2次転写される。この後、転写後搬送路71、定着装置20、排紙路72、排紙ローラ対100を経由して、機外のスタック部50a上にスタックされる。このような反転搬送により、転写紙Pの両面にフルカラー画像が形成される。
【0031】
転写ユニット15と、これよりも上方にあるスタック部50aとの間には、ボトル支持部31が配設されている。このボトル支持部31は、Y,C,M,Kトナーを収容するトナー収容部たるトナーボトル32Y,C,M,Kを搭載している。トナーボトル32Y,C,M,Kは、互いに水平よりも少し傾斜した角度で並ぶように配設され、Y、C、M、Kという順で配設位置が高くなっている。トナーボトル32Y,C,M,K内のY,C,M,Kトナーは、それぞれ後述するトナー搬送装置により、プロセスユニット6Y,C,M,Kの現像器に適宜補給される。これらのトナーボトル32Y,C,M,Kは、プロセスユニット6Y,C,M,Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
【0032】
本プリンタは、4つのプロセスユニット6Y,C,M,Kや、各種の機器の駆動を制御する制御手段としての図示しない制御装置を備えている。そして、この制御装置は、メイン制御部、光書込制御部、駆動制御部などを有している。メイン制御部は、演算手段たるCPU(Central Processing Unit)、データ記憶手段たるRAM(Random Access Memory)、データ記憶手段たるROM(Read Only Memory)などを具備しており、ROMに記憶しているプログラムに基づいて、各種の機器制御や演算処理を行うものである。また、光書込制御部は、外部機器から送られてくる画像情報に基づいて、光書込ユニット7の駆動を制御して各色の感光体に対する光書込を制御するものである。また、駆動制御部は、CPUや、ROM、データ記憶手段たる不揮発性RAMなどを具備しており、ROMに記憶しているプログラムに基づいて、後述する共用駆動モーターやカラー感光体モーターの駆動を制御するものである。
【0033】
図3は、プリンタ本体に対して着脱可能なY用のプロセスユニット6Yと、プリンタ本体に固定されたY用の感光体ギヤ151Yとを示す斜視図である。同図において、感光体ギヤ151Yは、プリンタ本体内で回転可能に支持されている。一方、プロセスユニット6Yは、プリンタ本体に対して脱着可能になっている。プロセスユニット6Yの感光体1Yは、円柱状のドラム部と、これの回転軸線方向の両端面からそれぞれ突出する軸部材とを具備しており、それら軸部材をそれぞれユニット筐体の外部に突出させている。そして、2つの軸部材のうち、図中奥側に存在している図示しない方の軸部材には、周知のカップリングが固定されている。プリンタ本体側の感光体ギヤ151Yの回転中心に、カップリング部152Yが形成されている。このカップリング部152Yは、感光体1Yの軸部材に固定された前述のカップリングと軸線方向に連結する。この連結により、感光体ギヤ151Yの回転駆動力がカップリング連結部を介して感光体1Yに伝達される。プロセスユニット6Yがプリンタ本体内から引き抜かれると、感光体1Yの軸部材に固定された図示しないカップリングと、感光体ギヤ151Yに形成されたカップリング部152Yとの連結が解除される。Y用のプロセスユニット6Yについて、プリンタ本体に対する着脱時における感光体1Yと感光体ギヤ151Yとの連結や連結解除の仕組みを説明したが、他色用のプロセスユニットも同様の構成になっている。
【0034】
図4は、同プリンタのプロセス駆動ユニットを示す斜視図である。このプロセス駆動ユニットは、各色の感光体にそれぞれ対応する4つの感光体ギヤ151Y,C,M,K、図示しないプロセス駆動モーターなどを有しており、プリンタ本体に固定されている。そして、感光体ギヤ等を保持する保持板から、感光体ギヤ151Y,C,M,Kのカップリング部152Y,C,M,Kを突出させている。プリンタ本体に対してY,C,M,K用のプロセスユニットが装着されると、Y,C,M,K用の感光体の軸部材に固定されたカップリングと、感光体ギヤ151Y,C,M,Kのカップリング152Y,C,M,Kとが連結する。
【0035】
図5は、転写ユニット15と、中間転写ベルトなどを駆動する共用駆動モーター162とを示す斜視図である。また、図6は、共用共用駆動モーター162とその周囲構成とを拡大して示す拡大斜視図である。これらの図において、中間転写ベルト8を掛け回した状態で、自らの回転駆動によって中間転写ベルト8を無端移動せしめる駆動ローラ12の軸部12aにおける軸線方向の端部には、カップリング160が固定されている。一方、プリンタ本体内には、ベルト駆動中継ギヤ161が回転自在に支持されており、このベルト駆動中継ギヤ161の中心部にはカップリング部161aが形成されている。転写ユニット15は、プリンタ本体に対して着脱可能に構成されている。図5や図6では、転写ユニット15がプリンタ本体内に装着されている状態を示している。この状態では、転写ユニット15の駆動ローラ12に固定されたカップリング160と、プリンタ本体内に支持されるベルト駆動中継ギヤ161のカップリング部161aとが軸線方向で連結している。転写ユニット15がプリンタ本体内から抜き取られると、転写ユニット15の駆動ローラ12に固定されたカップリング160と、プリンタ本体内に支持されるベルト駆動中継ギヤ161のカップリング部161aとの連結が解除される。
【0036】
プリンタ本体内において、ベルト中継ギヤ161の近傍には共用共用駆動モーター162が固定されており、そのモーターギヤがベルト中継ギヤ161に噛み合っている。共用駆動モーター162が回転駆動すると、その駆動力がベルト中継ギヤ161とカップリング連結部と駆動ローラ12とを介して、中間転写ベルト8に伝達される仕組みである。
【0037】
図7は、転写ユニット15と、各色の感光体1Y,C,M,Kと、プリンタ本体内に支持された各ギヤとを示す模式図である。同図において、プリンタ本体内には、各色の感光体ギヤ151Y,C,M,Kやベルト駆動中継ギヤ161の他に、K用第1中継ギヤ152、K用第2中継ギヤ153、Y用中継ギヤ155などが回転自在に支持されている。また、像担持体駆動源としてのカラー感光体モーター154が固定されている。
【0038】
上述したベルト駆動中継ギヤ161には、共用共用駆動モーター162のモーターギヤの他に、K用第1中継ギヤ152が噛み合っている。このK用第1中継ギヤ152の近傍には、入力ギヤ部153aと出力ギヤ部153bとを同一軸線上に一体形成したK用第2中継ギヤ153が配設されている。前述したK用第1中継ギヤ152は、このK用第2中継ギヤ153の入力ギヤ部153aとも噛み合っている。そして、K用第2中継ギヤ153の出力ギヤ部153bは、K用の感光体ギヤ151Kと噛み合っている。以上のようなギヤ配列により、共用共用駆動モーター162の回転駆動力は、ベルト中継ギヤ161と、K用第1中継ギヤ152と、K用第2中継ギヤ153と、K用の感光体ギヤ151とを介して、K用の感光体1Kに伝えられる。即ち、本プリンタでは、共用駆動モーター162が、駆動ローラ12や中間転写ベルト8の駆動源であるベルト駆動源として機能しているとともに、像担持体駆動源の1つであるK用の感光体の駆動源としても機能している。
【0039】
一方、Y,C,M用の感光体1Y,C,Mは、共用駆動モーター162とは異なる駆動源によって駆動される。具体的には、プリンタ本体内に固定された像担持体駆動源としてのカラー感光体モーター154のモーターギヤは、C用の感光体ギヤ151Cと、M用の感光体ギヤ151Mとの間に位置している。そして、それらギヤに同時噛み合っている。これにより、カラー感光体モーター154のモーターギヤは、回転駆動力をC用の感光体ギヤ151Cに直接伝えるとともに、M用の感光体ギヤ151Mにも直接伝えるようになっている。
【0040】
プリンタ本体に回転可能に支持されるY用中継ギヤ155は、Y用の感光体ギヤ151Yと、C用の感光体ギヤ151Cとの間に位置して、それら感光体ギヤにそれぞれ噛み合っている。そして、C用の感光体ギヤ151Cの回転駆動力を、自らを介してY用の感光体ギヤに伝達する。
【0041】
図8は、制御装置200と、これに電気接続される各種機器とを示す模式図である。中間転写ベルト21のループ内側でベルトを張架している張架部材の1つであり、ベルトの無端移動に伴って従動回転する従動ローラ14の線速は、中間転写ベルト21の線速と同じになる。よって、従動ローラ14の回転角速度や回転角変位は、中間転写ベルト21の無端移動速度を間接的に示すことになる。従動ローラ14の軸部材には、ロータリーエンコーダーからなるローラエンコーダー171が固定されている。このローラエンコーダー171は、従動ローラ14の回転角速度や回転角変位を検知して、その結果を駆動制御部210に出力する。このようなローラエンコーダー171は、駆動ローラ12の温度変化に伴う径変化に起因する中間転写ベルト8の速度変動を検知する速度変動検知手段として機能している。また、中間転写ベルト8の無端移動速度を検知する速度検知手段としても機能している。駆動制御部210は、ローラエンコーダー171からの出力に基づいて、中間転写ベルト8の速度変動や無端移動速度を把握することができる。
【0042】
なお、本プリンタでは、速度変動検知手段や速度検知手段として、従動ローラ14の回転角速度や回転角変位を検知するローラエンコーダー171を用いたが、他の方式によって速度変動や速度を検知するものを用いてもよい。例えば、複数の目盛をベルト周方向に所定ピッチで配設したスケールを中間転写ベルトに設け、その目盛を検知する時間間隔に基づいてベルトの速度変動や速度を検知する光学センサを用いてもよい。また、パーソナルコンピュータの入力装置である光学式マウスなどに採用されている光学イメージセンサを、ベルト表面の速度変動や速度を検知する手段として用いてもよい。また、温度センサによって機内温度を検知した結果と、駆動ローラ12の熱膨張の理論値とに基づいてベルト速度を予測する手段を検知手段として設けてもよい。
【0043】
図9は、中間転写ベルト8の線速Vを説明するための模式図である。中間転写ベルト8は、駆動ローラ12の表面に追従することから、駆動ローラ12と同じ線速で移動する。そして、中間転写ベルト8の線速Vと、駆動ローラ12の半径rと、駆動ローラ12の角速度ωとには、「V=rω」という関係が成立している。共用駆動オー他162を一定の駆動速度で駆動すると、駆動ローラ12の角速度ωも一定になる。すると、駆動ローラ12の径が設計値からずれていると、そのずれに伴ってベルトの線速Vが目標ベルト速度からずれてしまい、各色トナー像の重ね合わせずれが発生してしまう。
【0044】
そこで、駆動制御部210は、ローラエンコーダー171から出力されるパルス信号の周波数を、基準クロックの周波数に合わせるように共用共用駆動モーター162を加減速制御するベルト定速制御を行う。このベルト定速制御により、ローラエンコーダー171が取り付けられた従動ローラ14を一定の回転角速度で回転させるように、共用共用駆動モーター162の駆動速度を制御する。従動ローラ14は、中間転写ベルト8の移動に追従して回転するものであるので、従動ローラ14が一定の回転角速度で回転することは、中間転写ベルト8が一定の線速Vで移動していることを意味している。つまり、駆動制御部210は、ベルト定速制御により、中間転写ベルト8を目標ベルト速度とほぼ同じ線速Vで移動させる。このようなベルト定速制御を実施することで、中間転写ベルト8を、駆動ローラ12の径変化にかかわらず、目標ベルト速度で無端移動させることができる。
【0045】
なお、ベルト定速制御では、駆動ローラ12の径の誤差に起因するベルトの線速Vの目標ベルト速度からのずれに加えて、ベルト1周内における短期間での速度変動も検出している。ベルト1周内における短期間での速度変動としては、2次転写ニップに記録紙が進入する際の突発的な速度変動や、駆動ローラ12の偏心に起因する周期的な速度変動などがある。駆動ローラ12が偏心していると、駆動ローラ12の1周あたりに1周期のサインカーブを描くような微妙な速度変動が中間転写ベルト8に出現する。上述したベルト定速制御では、このような微妙な速度変動も検知してその結果を共用共用駆動モーター162の駆動制御に反映させることで、短期間での速度変動も抑えることができる。
【0046】
しかしながら、駆動ローラ12の偏心に起因する微妙な速度変動を検出してその結果を共用共用駆動モーター162の駆動制御にフィードバック制御すると、中間転写ベルト8の速度を安定化させる代わりに、K用の感光体1Kの線速を図9に示すように微妙に変動させてしまう。同図におけるサインカーブ状の速度変動曲線の周期は、駆動ローラ12の回転周期と同じである。このような周期の速度変動をK用の感光体1Kに出現させても、次のようにすれば、速度変動に起因する画質劣化の発生を抑えることができる。即ち、図10に示すように、K用の感光体1Kの表面における光書込位置Pから1次転写ニップのベルト移動方向の中心位置Pまでの距離である書込〜転写間距離Lを、駆動ローラ12の周長Sの整数倍に設定するのである。このようにすれば、感光体1Kの線速を光書込時と転写時とで同じにして、ベルトに転写されるトナー像のドット形状を安定化させることができる。
【0047】
図11に示した設定が困難である場合には、図12に示すように、感光体間のピッチである感光体距離Lを、駆動ローラ12の周長Sの整数倍に設定するとよい。このように設定することで、トナー像の副走査方向における各位置が各転写ニップを通過するときの中間転写ベルト8の線速を一致させて、各色の重ね合わせずれを抑えることができる。
【0048】
ところで、中間転写ベルト8の線速Vを駆動ローラ12の径にかかわらず一定にするように、共用共用駆動モーター162の駆動速度を制御すると、駆動ローラ12の径変化に伴って、K用の感光体1Kの線速を微妙に変化させることになる。すると、カラー感光体モーター154によって駆動されるY,C,M用の感光体1Y,C,Mと、共用駆動モーター162によって駆動されるK用の感光体1Kとの間に線速差を発生させて、Y,C,Mトナー像と、Kトナー像とで重ね合わせずれを発生させてしまう。
【0049】
そこで、本プリンタでは、先に図8に示したように、K用の感光体1Kの回転軸に、その回転角速度あるいは回転角変位を検知するロータリーエンコーダーからなるドラムエンコーダー172を設けている。また、駆動制御部210の図示しないデータ記憶手段には、ドラムエンコーダー172からの出力(K用感光体の回転速度)に基づいて、Y,C,M用の感光体1Y,M,Cの線速をK用の感光体1Kの線速に一致させ得るカラー感光体モーター154の駆動速度の制御目標を求めるためのアルゴリズムあるいはデータテーブルを記憶させている。そして、ドラムエンコーダー172からの出力に基づいて、前述の制御目標を求める処理を実施するように、駆動制御部210を構成している。
【0050】
プリントジョブがスタートすると、まず、共用駆動モーター162や、カラー感光体モーター154の駆動が開始される。共用共用駆動モーター162は、ベルト定速制御が実行されることで、中間転写ベルト8を目標ベルト速度で駆動する。このときの共用共用駆動モーター162の駆動速度は、駆動ローラ12の径に応じた値になる。また、K用の感光体1Kの線速も、駆動ローラ12の径に応じた値になる。このときの感光体1Kの線速に、Y,C,M用の感光体1Y,C,Mの線速を一致させるために、駆動制御部210は、ドラムエンコーダーからの出力値を取得する。そして、出力値と、データ記憶手段に記憶している上述のアルゴリズムあるいはデータテーブルとに基づいて、線速を一致させ得るカラー感光体モーター154の駆動速度の制御目標を演算する。この演算結果と、現行の制御目標の設定値との差が所定の閾値を超える場合には、線速差による重ね合わせずれの発生が危惧されるので、制御目標を演算値に補正する。これに対し、閾値以下である場合には、線速差による重ね合わせずれが問題ないレベルになるので、現行の制御目標を維持する。その後、開始フラグがOFFになっている場合には、開始フラグをONにする。この開始フラグは、画像処理用のフローの開始について、その是非を決定するためのものである。画像処理用のフローとは、光書込処理を行ったり、現像処理を行ったりするためのフローである。開始フラグは、プリントジョブがスタートした直後にOFFされる。そして、この状態では、画像処理用のフローが開始されないようになっている。開始フラグがONされると、画像処理用のフローが開始されて、プリントジョブが行われる。
【0051】
このように、本プリンタでは、共用駆動モーター162の駆動速度をベルト定速制御によって制御することで、中間転写ベルト8を駆動ローラ12の径にかかわらず目標の速度で無端移動させることができる。しかも、共用共用駆動モーター162によって駆動されるK用の感光体1Kの速度を反映する、回転検知手段としてのドラムエンコーダー172からの出力に基づいて、カラー感光体モーター154の駆動速度を制御することで、K用の感光体1Kと、Y,C,M用の感光体1Y,C,Mとの線速差を低減する。これにより、それら感光体の線速差に起因する重ね合わせずれの発生を抑えることもできる。
【0052】
実施形態に係るプリンタにおいて、色ずれは、各色トナー像の副走査レジストずれなどによっても発生する。副走査レジストずれは、トナー像の正規の転写位置が中間転写ベルト8の移動方向である副走査方向に全体的にずれてしまう現象である。そして、副走査レジストずれの主な原因は、反射ミラーやレンズなどといった光書込ユニット7の部品が温度変化に伴って伸縮することにある。複数の記録紙に対して連続して画像を形成する連続プリント動作中には、光書込ユニット7が昇温を続けることから、連続動作時間が長くなるに従って色ズレ量が増加していく。
【0053】
そこで、本プリンタのメイン制御部220は、所定枚数のプリントを行う毎に、次のような書込位置補正処理を行う。即ち、各色の感光体にそれぞれ形成したトナー像をベルト上に並べて転写した後、それらトナー像を位置ずれ量検知手段としての光学センサで検知したタイミングに基づいて各色トナー像の位置ズレ量を検出する。そして、検出結果に基づいて、潜像書込開始タイミングを補正することで、副走査レジストズレ量を低減する。これにより、連続プリントモードにおいて、連続プリント枚数の増加に伴って徐々に大きくなっていく色ずれ量を、書込位置補正処理の定期的な実施によって定期的に低減することができる。
【0054】
図13は、中間転写ベルト8の一部をトナー像検知手段としての光学センサユニット136とともに示す拡大斜視図である。図示のように、中間転写ベルト8における駆動ローラ12に対する掛け回し箇所には、光学センサユニット136が所定の間隙を介して対向している。メイン制御部220は、図示しない電源スイッチがONされた直後や、所定枚数のプリントを実施する毎に、書込位置補正処理を実施するようになっている。そして、この書込位置補正処理において、中間転写ベルト5の幅方向の一端部、中央部、他端部にそれぞれ、シェブロンパッチPVと呼ばれる複数のトナー像からなる色ずれ検知用画像を形成する。光学センサユニット136は、中間転写ベルト8の幅方向における一端部に対向する第1光学センサ137と、中央部に対向する第2光学センサ138、他端部に対向する第3光学センサ139とを具備している。そして、第1光学センサ137は、発光手段から発した光を集光レンズに通した後、中間転写ベルト8の表面で反射させ、その反射光を受光手段で受光して受光量に応じた電圧を出力する。中間転写ベルト8の一端部に形成されたシェブロンパッチPV内のトナー像が第1光学センサ137の直下を通過する際には、第1光学センサ137の受光手段による受光量が大きく変化する。これにより、メイン制御部220は、中間転写ベルト8の幅方向の一端部に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することができる。また、同様にして、第2光学センサ138からの出力に基づいて、中間転写ベルト8の中央部に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することもできる。また、第3光学センサ139からの出力に基づいて、中間転写ベルト8の他端部に形成されたシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知することもできる。そして、その検知タイミングに基づいて、各トナー像の位置ずれ量を検知することが可能である。なお、発光手段としては、トナー像を検出するために必要な反射光を作り得る光量をもつLED等が用いられている。また、受光手段としては、多数の受光素子が直線状に配列されたCCDなどが用いられている。
【0055】
メイン制御部220は、シェブロンパッチPV内の各トナー像を検知することで、各トナー像における主走査方向の位置、副走査方向(ベルト移動方向)の位置、主走査方向の倍率誤差、主走査方向からのスキューをそれぞれ検出する。ここで言う主走査方向とは、ポリゴンミラーでの反射に伴ってレーザー光が感光体表面上で位相する方向を示している。シェブロンパッチは、図14に示すように、Y,C,M,Kの各色のトナー像を主走査方向から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。このようなシェブロンパッチPV内のY,C,Mトナー像について、Kトナー像との検知時間差を読み取っていく。同図では、紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,C,M,Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK,M,C,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tyk、tck、tmkについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ちレジストズレ量を求める。そして、そのレジストズレ量に基づいて、感光体に対する光書込開始タイミングの補正値を算出して、その結果を光書込制御部230に送信する。光書込制御部230は、メイン制御部220から送られてくる補正値に基づいて、Y,C,M感光体に対する光書込開始タイミングを補正することで、各色トナー像のレジストズレを低減する。また、メイン制御部220は、ベルト両端部間での副走査方向ズレ量の差に基づいて、各色トナー像の主走査方向からの傾き(スキュー)を求める。そして、その結果に基づいて、反射ミラーの面倒れ補正を実施して、各色トナー像のスキューズレを低減する。以上のように、色ずれ検知用画像であるシェブロンパッチPV内における各トナー像を検知したタイミングに基づいて光書込開始タイミングを補正してレジストズレやスキューズレを低減する処理が、書込位置補正処理である。
【0056】
本プリンタのように、4つの感光体(1Y,C,M,K)に対する4つのレーザー光を、共通の1つのポリゴンミラーによって偏向せしめてそれぞれの感光体に対する主走査方向の光走査を行うものでは、各感光体に対する光書込開始タイミングが、1ライン分(1走査線分)の書込に相当する時間単位で補正される。そして、本プリンタでは、K用の感光体1Kに形成されるKトナー像の位置を基準にして、Y,C,Mのレジストずれを補正する。具体的には、Y,C,Mトナー像と、Kトナー像とで、1ドット(1画素)以上のレジストズレが発生している場合、Y,C,M用の感光体1Y,C,Mに対する光書込開始タイミングが、1ライン分の書込時間の整数倍だけ前後にずらされる。これにより、副走査方向における重ね合わせズレ量が1ドット未満に抑えられる。但し、通常は、重ね合わせずれを完全に無くすことはできない。例えば、Yトナー像がKトナー像に対して5/4ドット分のレジストずれを引き起こしていたとする。この場合、Y用の感光体1Yに対する光書込開始タイミングを1ライン分だけ前後にずらすことで、レジストずれ量を1/4ドット分にまで低減することができる。但し、この1/4ドット分のレジストずれ量をゼロにすることはできない。
【0057】
次に、本プリンタの特徴的な構成について説明する。
本発明者らは、以上の基本的な構成を備えるプリンタ試験機において、近年の高速プリント化の要望に応えるべく、プリント速度をより高速化していく実験を行った。すると、記録紙として厚紙を用いた場合に、スジ状の画像乱れを顕著に引き起こしてしまった。このスジ状の画像乱れは、厚紙を2次転写ニップに進入させる際の衝撃に起因するものであることがわかった。具体的には、厚紙を2次転写ニップに進入させる際に、急激な負荷上昇によって中間転写ベルト8の移動速度を一瞬だけ大きく低下させてしまう。プリント速度を従来よりも高速化した条件下では、その低下率が従来よりも大きくなる。すると、その速度低下を共用共用駆動モーター162の駆動制御にフィードバックすると、中間転写ベルト8の速度を一瞬だけ過剰に速めてしまう。このように、厚紙のニップ進入時における一瞬の速度低下と、その後の一瞬の速度上昇とが連続して起こると、各色の1次転写ニップにおいて各色のトナー像が正常に転写されずに、スジ状の画像乱れを引き起こしていた。このスジ状の画像乱れは、駆動ローラ12の偏心に起因して生ずる色ずれよりも遙かに目立つため、色ずれよりも優先して対策を講ずる必要がある。
【0058】
そこで、本プリンタの駆動制御部210は、必要に応じて、共用共用駆動モーター162の制御方式をベルト定速制御からモーター定速制御に切り替えるようになっている。このモーター定速制御は、共用共用駆動モーター162のFG信号発電機から発せられるFG信号に基づいて、共用駆動モーター162のモーター軸を一定の回転速度で回転させるように共用駆動モーター162の駆動を制御する方式である。また、回転速度検知手段としてのFG信号発電機は、周知のように、共用駆動モーター162に内蔵され、共用駆動モーター162のモーター軸が所定の回転角度だけ回転する毎にパルス信号を発生させるものである。FG信号を所定の周波数にするように共用駆動モーター162を駆動制御することで、共用駆動モーター162を所定の回転速度で回転させることができる。厚紙がニップに進入する際には、中間転写ベルト8の速度が一瞬だけ大きく低下するが、このとき、ベルトの伸びやギヤ間微小ギャップの狭小化などが起こるため、共用駆動モーター162の回転速度はそれほど低下しない。このため、モーター定速制御においては、厚紙のニップ進入時に、モーター回転速度の急激な低下は検出されず、厚紙のニップ進入からニップ排出に至るまで、共用駆動モーター162を目標回転速度で安定して回転させ続ける。すると、厚紙のニップ進入直後にベルト部材の速度を一瞬だけ過剰にしてしまうことがなくなる。よって、必要に応じて駆動方式をベルト定速制御からモーター定速制御に切り替えることで、駆動ローラ12の偏心に起因する色ずれは許容してしまうものの、スジ状の画像乱れを抑えることができる。
【0059】
駆動制御部210は、ベルト定速制御からモーター定速制御への切り替えを次のようにして行う。即ち、スジ状の画像乱れを引き起こす可能性が高いか否かを、ユーザーからの指示命令に基づいて把握する。具体的には、本プリンタは、2次転写ニップに送り込まれる記録紙の厚みの情報を取得する厚み情報取得手段を備えている。かかる厚み情報取得手段としては、ユーザーによって入力される厚み情報を受け付けるタッチパネル等の操作部を例示することができる。また、記録紙を挟み込みながら搬送する搬送ローラ対の紙挟み込み時の移動量に基づいて記録紙の厚みを検知する厚み検知手段でもよい。記録紙として、厚みの比較的小さいものが用いられる場合には、記録紙のニップ進入時におけるベルト速度変動がそれほど大きくならない。これに対し、記録紙として、厚みの比較的小さいものが用いられる場合には、記録紙のニップ進入時に比較的大きなベルト速度変動が生ずるので、スジ状の画像乱れを引き起こす可能性が高くなる。そこで、制御装置200のメイン制御部220は、厚み情報取得手段によって取得した厚み情報が所定の厚みを超えるものである場合に、駆動制御部210に対して、ベルト定速制御からモーター定速制御への切り替えを指示する信号を出力する。これにより、駆動制御部210は、共用駆動モーター162を一時的にモーター定速制御で駆動するようになる。
【0060】
なお、モノクロモードにおいては、色ずれが発生しないので、必ずしもベルト定速制御を実行する必要はない。むしろ、ベルトに対する急激な負荷変動があった場合でもベルトを安定して走行させ得るモーター定速制御を実施した方が、メリットが大きい。そこで、メイン制御部220は、モノクロモードである場合には、記録紙の厚みにかかわらず、モーター定速制御の実施を指示する信号を駆動制御部210に出力するようになっている。
【0061】
本プリンタのように、ニップ進入時に大きなベルト速度変動を発生させる可能性が高い場合やモノクロモードにおいて、制御方式をベルト定速制御からモーター定速制御へ切り替えることで、スジ状の画像乱れの発生を抑えることができる。
【0062】
しかしながら、制御方式をベルト定速制御からモーター定速制御に切り替えた際に、顕著な色ずれを引き起こすおそれがある。この顕著な色ずれは、次のような原因によって引き起こされるものである。即ち、モーター定速制御においては、共用駆動モーター162を所定の目標回転速度で回転させる。駆動ローラ12の径が設計通りの値であれば、そのときの駆動ローラ12の平均の線速Vは、目標ベルト速度とほぼ同じ値になる。しかしながら、駆動ローラ12として、低コスト化の観点から、ある程度の寸法誤差を許容したものを用いると、ローラ径が設計値からずれていることにより、共用駆動モーター162を所定の目標回転速度で回転させた場合におけるローラ表面の平均線速が、目標ベルト速度から僅かにずれてしまう。このずれにより、モーター定速制御では、中間転写ベルト8をベルト定速制御とは異なる線速Vで走行させてしまう。書込位置補正処理については、ベルト定速制御の条件下で実施するが、その実施によって色ずれを抑えることができるのは共用駆動モーター162をベルト定速制御で駆動したときだけである。ベルト定速制御からモーター定速制御への切り替えによって中間転写ベルト8の線速Vを目標ベルト速度からずらしてしまうと、色ずれを引き起こしてしまう。線速Vを変化させると、上流側の1次転写ニップから下流側の1次転写ニップに至るまでに要するベルト移動時間を変化させてしまうので、各1次転写ニップでトナー像をずれなく重ね合わせることができなくなるからである。
【0063】
図15は、各色ドットの重ね合わせ位置を説明するための拡大模式図である。同図において、大きな円は、各色ドットの輪郭を表している。また、小さな円は、ドットの中心位置を示す仮想円である。また、この仮想円の中に示されているアルファベットは、ドットの色を示している。同図では、Y,C,M,Kの4つのドットが全くずれることなくピタリと重ね合わさった状態を示している。このため、4つのドットがあるにもかかわらず、ドットの輪郭を示す大きな円や、ドットの中心を示す小さな円は、1つしか示されていない。参考までに、各色のドットがそれぞれ1/4ドット分ずつずれた場合、その状態は、図16のように示される。
【0064】
上述した書込位置補正処理を実施しても、例えば、図17に示すような重ね合わせずれ(色ずれ)が残ってしまうとする。この例では、MドットがKドットに対してずれずにピタリと重ね合わさっている。これに対し、Yトッドは、Kドットに対してベルト移動方向下流側に1/4ドット分だけずれている(+1/4ドット)。また、Cドットは、Kドットに対してベルト移動方向上流側に1/4ドット分だけずれている(−1/4ドット)。4色全体の重ね合わせずれ量は、+1/4の絶対値と、−1/4の絶対値との合計であることから、1/2ドット分である。このように、書込位置補正処理を実施すれば、4色の重ね合わせずれ量を1ドット未満にすることが可能である。
【0065】
ところが、共用駆動モーター162の制御方式をモーター定速制御に切り替えると、中間転写ベルト8の線速Vを目標ベルト速度からずらしてしまうことで、重ね合わせずれ量を増加させてしまう。例えば、中間転写ベルト8の線速Vが、本来であれば互いに隣り合う1次転写ニップ間の移動に要する時間(以下、ニップ間標準移動時間という)内で、1次転写ニップ間よりも1/4ドット分だけ多く移動するように、目標ベルト速度よりも速くなったとする。すると、Yドットは、ニップ間標準移動時間の3倍の時間だけベルトが駆動されると、本来であれば、Y用の1次転写ニップの中心からK用の1次転写ニップの中心に移動するところ、1/4×3=3/4ドット分だけ、前記中心よりもベルト移動方向下流側にずれた場所に位置してしまう。つまり、Yドットは、Kドットに対して3/4ドット分だけベルト移動方向下流側にずれてしまう。また、Cドットは、ニップ間標準移動時間の2倍の時間だけベルトが駆動されると、本来であれば、C用の1次転写ニップの中心からK用の1次転写ニップの中心に移動するところ、1/4×2=1/2ドット分だけ、前記中心よりもベルト移動方向下流側にずれた場所に位置してしまう。つまり、Cドットは、Kドットに対して1/2ドット分だけベルト移動方向下流側にずれてしまう。また、Mドットは、ニップ間標準移動時間と同じ時間でベルトが駆動されると、本来であれば、M用の1次転写ニップの中心からK用の1次転写ニップの中心に移動するところ、1/4×1=1/4ドット分だけ、前記中心よりもベルト移動方向下流側にずれた場所に位置してしまう。つまり、Mドットは、Kドットに対して1/4ドット分だけベルト移動方向下流側にずれてしまう。このように、Y,M,Cの3つのドットがそれぞれ、Kドットに対してベルト移動方向下流側にずれてしまう。
【0066】
書込位置補正処理を実施してもなお、先に図17に示したような小さな重ね合わせずれが残っている状態で、モーター定速制御が実施されたとする。そして、このモーター定速制御において、駆動ローラ12の径が設計値よりも僅かに大きくなっていることに起因して、中間転写ベルト8の線速Vが目標ベルト速度よりも僅かに速くなって、中間転写ベルト8がニップ間標準移動時間で「ニップ間距離+1/4ドット」だけ進むとする。すると、図17に示される重ね合わせずれは、図18に示されるように増大してしまう。Yドットは、図17の状態では、Kドットに対して1/4ドット分だけベルト移動方向下流側にずれたところに位置していたが、モーター定速制御が実施されると、更に3/4ドット分だけベルト移動方向下流側にずれる。これにより、図18に示されるように、Kドットに対して1ドット分もベルト移動方向下流側にずれてしまう。また、Cドットは、図17の状態では、Kドットに対して1/4ドット分だけベルト移動方向上流側にずれたところに位置していたが、モーター定速制御が実施されると、更に1/2ドット分だけベルト移動方向下流側にずれる。これにより、図18に示されるように、Kドットに対して1ドット分だけベルト移動方向上流側にずれてしまう。また、Mドットは、図17の状態では、Kドットに対してピタリと重なっているが、モーター定速制御が実施されると、図18に示されるように、Kドットに対して1/4ドット分だけベルト移動方向下流側にずれてしまう。4色全体のずれ量としては、図17の状態では1/2ドット分であったところ、図18のように、1ドット分に増大してしまう。
【0067】
そこで、メイン制御部220は、モーター定速制御で共用駆動モーター162に駆動する際には、Y,C,M用の感光体(1Y,C,M)に対する光書込開始タイミングを一時的に補正する一時補正処理を実施するようになっている。この一時補正処理においては、Yドット、Cドット、Mドットについてそれぞれ、データ記憶手段たるフラッシュメモリ内に記憶しているずれ増大量に基づいて、Y,C,Mの光書込開始タイミングを一時補正する。
【0068】
かかる一時補正処理を実施する前提として、メイン制御部220は、上述した書込位置補正処理において、Y,C,Mドットについてそれぞれ、Y,C,M用の感光体(1Y,C,M)に対する光書込開始タイミングを補正してもなお残ってしまうKドットとの重ね合わせずれ量である残存ずれ量のデータを、フラッシュメモリ内に記憶している。600[dpi]の解像度(1ドット径=42.3μm)で画像を形成する構成で、図17に示される残存ずれが残っている場合を例にすると、Yドットについては、「+10.575」という残存ずれ量がフラッシュメモリ内に記憶されている(42.3×1/4)。また、Cドットについては、「−10.575」という残存ずれ量がフラッシュメモリ内に記憶されている(−42.3×1/4)。また、Mドットについては、「0」という残存ずれ量がフラッシュメモリ内に記憶されている。
【0069】
また、メイン制御部220は、Y,C,Mについてそれぞれ、モーター定速制御を実施した場合に発生するKとのずれ増大量のデータをフラッシュメモリ内に記憶している。既に説明したように、このずれ増大量[μm]のデータは、Y,C,Mの順で大きな値になっている。それぞれ、駆動ローラ12の径を精密機械によって測定した結果の設計値からのずれ量に基づいて算出され、工場出荷時にフラッシュメモリ内に入力されたものである。駆動ローラ12の製造方法として、同一ロットであればほぼ同じ径になる方法を採用すれば、個々の駆動ローラ12の径を測定することなく、ロット毎の測定で足りるので効率的である。
【0070】
図19は、制御装置200によって実施される一時補正処理における処理フローを示すフローチャートである。一時補正処理を開始した制御装置200においては、まず、メイン制御部200が、Y,C,Mについてそれぞれ、フラッシュメモリ内に記憶している残存ずれ量とずれ増大量との合算により、モーター定速制御の実施時に光書込開始タイミングの一時的な補正を実施しないと仮定した場合における重ね合わせずれ量を、仮想ずれ量として算出する(ステップ1:以下、ステップをSと記す)。図17に示される残存ずれが残っており、且つ、駆動ローラ12の径が、設計値よりも僅かに大きくなっていることで、ニップ間標準移動時間でベルトを本来よりも1/4ドット分(42.3μm)だけベルト移動方向下流側に進めてしまう例で説明すると、次のようになる。即ち、Yについては、「+31.725」という値のずれ増大量がフラッシュメモリ内に記憶されている(42.3×3/4)。また、Cについては、「+21.15」という値のずれ増大量がフラッシュメモリ内に記憶されている。また、Mについては、「+10.575」という値のずれ増大量がフラッシュメモリ内に記憶されている。そして、メイン制御部200は、Yについては、残存ずれ量=+10.575μmと、ずれ増大量=+31.725μmとの合算により、仮想ずれ量を42.3[μm]と求める。また、Cについては、残存ずれ量=−10.575μmと、ずれ増大量=+21.15μmとの合算により、仮想ずれ量を+10.575[μm]と求める。また、Mについては、残像ずれ量=0μmと、ずれ増大量=+10.575μmとの合算により、+10.757と求める。これにより、図18に示されるような重ね合わせずれが生じてしまうことを把握する(以下、この重ね合わせずれを仮想重ね合わせずれという)。
【0071】
次に、メイン制御部220は、26通りのドット位置修正態様について、4色全体での重ね合わせずれ量を修正態様毎ずれ量として算出する(S2)。26通りのドット位置修正態様とは、仮想重ね合わせずれの状態から、少なくともY,C,Mドットの何れかの位置を1ドット分だけ前後にずらしてドット位置を修正する場合に成立し得る態様である。Y,C,Mの3色についてそれぞれ、ずらさない、1ドット分だけベルト移動方向上流側にずらす、1ドット分だけベルト移動方向下流側にずらすの3通りがあるので、3色での組み合わせは全部で27通りであるが、そのうちの1つは、3色すべてをずらさないという無修正の態様である。よって、ドット位置修正態様としては、26通りである。これら26通りのドット位置修正態様についてそれぞれ、4色全体での重ね合わせずれ量を修正態様毎ずれ量として算出するのである。例えば、26通りのドット位置修正態様の1つとして、図18のYドットを1ドット分だけベルト移動方向下流側にずらす(光書込開始タイミングを1ドット分遅らせる)態様がある。この位置修正態様については、修正態様毎ずれ量を「+10.575」と求める。
【0072】
かかる修正態様毎ずれ量を求めるのは、次に説明する理由による。即ち、ドットの位置を修正する方法としては、Y,C,Mの3色の位置を全て一律にずらす方法と、3色でそれぞれずらし方(ずらさない場合も含む)を必要に応じて変更する方法とがある。前者の方法を採用した場合、図18に示される仮想重ね合わせずれであれば、図20に示されるようなドット位置の修正、あるいは、図21にしめされるようなドット位置の修正、の何れかを実施することになる。図20に示される修正では、Y,C,Mドットの位置を全て1ドット分だけベルト移動方向上流側にずらしている。これにより、4色全体での重ね合わせずれ量は、図18の1ドットから、図20の3/4ドットに低減することが可能である。一方、図21に示される修正では、Y,C,Mドットの位置を全て1ドット分だけベルト移動方向下流側にずらしている。すると、4色全体での重ね合わせずれ量は、図18の1ドットから、図21の2ドットに増加してしまう。このため、Y,C,Mの3色の位置を全て一律にずらす方法では、図20に示される修正を採用することになる。なお、図18の仮想重ね合わせずれの例では、3色の位置を全てベルト移動方向上流側にずらす場合に、仮想重ね合わせずれよりもずれ量を低減することができたが、仮想重ね合わせずれによっては、一律にずらす方向を上流側、下流側の何れにしても、仮想重ね合わせずれよりもずれ量を低減できないこともある。このような場合には、Y,C,Mの光書込位置の一時的な補正を実施しないようになっている。
【0073】
また、ドットの位置を修正する方法として、3色でそれぞれずらし方を必要に応じて変更する方法を採用する場合、どのようなずらし方をすれば、最もずれ量を低減し得るのかについて、検証する必要がある。本プリンタでは、その検証のために、上述した26通りの修正態様毎ずれ量を算出するのである。図18の仮想重ね合わせずれの場合、26通りの修正態様毎ずれ量のうち、最もずれ量を低減するのは、図22に示されるように、Yドットだけをベルト移動方向上流側に1ドット分だけずらし、CドットやMドットについては、位置を修正しない態様である。4色全体でのずれ量は、図示のように1/4ドットであり、図20の3/4ドットよりも大幅に低減することが可能である。
【0074】
そこで、メイン制御部220は、26通りの修正態様毎ずれ量を算出すると、次に、それらのうち、4色全体でのずれ量が最小になるものを特定する(図18のS3)。そして、特定結果の修正態様毎ずれ量と同じ結果が得られるように、Y,C,Mの3色についてそれぞれ、光書込開始タイミングの一時補正データである書込一時補正データを構築する(S4)。例えば、図22に示される例であれば、Yの一時補正データとして、「−1」を構築する。また、C、Mの一時補正データとして、「0」、「0」を構築する。その後、メイン制御部220は、Y,C,Mの書込一時補正データを、光書込制御部230に送信する。そして、光書込制御部230が、それら書込一時補正データに基づいて、Y,C,M用の感光体1Y,C,Mに対する光書込開始タイミングをそれぞれ個別に決定した後(S5)、それぞれの光書込を行う(S6)。このようにして光書込開始タイミングを補正して、Y,C,Mドットの光書込位置を一時的に補正することで、共用駆動モーター162の制御方式をベルト定速制御からモーター定速制御に切り替えることに起因する色ずれの悪化を抑えることができる。
【0075】
なお、プリントジョブが終了すると、一時補正した光書込開始タイミングを元に戻してから、一連の処理フローを終了する。また、上記S1〜S4の処理を一時補正処理の処理フロー内で実施する例について説明したが、上述した書込位置補正処理の終期において、上記S1〜S4の処理を実施して、一時補正処理の前に予め書込一時補正データを構築しておいてもよい。また、駆動ローラ12の径が設計値よりも大きくなっている例について説明したが、小さくなっている場合でも、同様にして、Y,C,Mドットの光書込位置を一時的に補正することが可能である。例えば、駆動ローラ12の径が設計値よりも小さくなっていることにより、ニップ間標準移動時間で中間転写ベルト8がニップ間距離よりも1/4ドット分だけ少ない距離しか移動しないとする。この場合、Yについては、「−31.725」という値のずれ増大量がフラッシュメモリ内に記憶される(−42.3×3/4)。また、Cについては、「−21.15」という値のずれ増大量がフラッシュメモリ内に記憶される。また、Mについては、「−10.575」という値のずれ増大量がフラッシュメモリ内に記憶される。これらずれ増大量と、上述した残存ずれ量とにより、仮想ずれ量を求めた後、26通りの修正態様毎ずれ量を求めればよい。
【0076】
本プリンタは、駆動ローラ12の交換がなされたことを検知する交換検知手段を有している。交換検知手段は、転写ユニット15のプリンタ本体に対する脱着を検知するユニット脱着検知手段と、これによって転写ユニット15の脱着を検知した後に、駆動ローラ12の交換を行ったか否かをユーザーに問い合わせるための処理を実施する問い合わせ用プログラムとを具備している。また、本プリンタは、この交換検知手段による検知結果に基づいて、メイン制御部220のフラッシュメモリ内のずれ増大量のデータを更新するためのデータ更新手段も有している。このデータ更新手段は、メイン制御部220に記憶されている指示命令用プログラムと、パーソナルコンピュータにインストールされるプリンタユーティリティソフトと、駆動ローラ12に付属されているずれ増大量更新用ソフトを記録したCD−ROMとを具備している。
【0077】
交換検知手段のユニット脱着検知手段は、プリンタ本体の電源スイッチの状態にかかわらず、電源ケーブルがコンセントに接続されている限り、転写ユニット15の脱着を検知する。また、メイン制御部220は、ユニット脱着検知手段によって転写ユニットの脱着が検知された際に、上記問い合わせ用プログラムを起動して、ユーザーに対して問い合わせを行う。具体的には、まず、図示しないタッチパネルに、「駆動ローラを交換しましたか?Yes、No」というメッセージを表示する。そして、ユーザーにより、タッチパネルにおける「No」の箇所がタッチされた場合には、転写ユニット15の交換を非検知とする。これに対し、「Yes」の箇所がタッチされた場合には、転写ユニット15の交換がなされたものとみなす。この場合、データ更新sh津案の指示命令用プログラムを起動して、「駆動ローラに付属されているCD−ROMをパソコンの光ディスクドライブにセットしてください。」というメッセージをタッチパネルに表示する。ユーザーがその指示に従ってCD−ROMをパソコンにセットすると、パソコンにおいてCD−ROM内に記録されているずれ増大量更新用ソフトが自動起動する。そして、パソコンのハードディスクの所定領域に記憶されているずれ増大量のデータを、CD−ROM内に記録されているずれ増大量と同じ値に更新する。更に、プリンタユーティリティソフトを自動起動する。自動起動されたプリンタユーティリティソフトは、更新後のずれ増大量に基づいて、LANケーブルやUSBケーブルを介してパソコンに接続されている本プリンタのメイン制御部220に記録されているずれ増大量のデータを、ハードディスク内のデータと同じ値に更新するための処理を実施する。これにより、ずれ増大量のデータが、交換後の駆動ローラ12の径に見合ったものに更新される。
【0078】
次に、実施形態に係るプリンタに、より特徴的な構成を付加した実施例のプリンタについて説明する。なお、以下に特筆しない限り、実施例に係るプリンタの構成は、実施形態と同様である。
【0079】
駆動ローラ12は、グリップ力を高める狙いから、金属製の芯金と、これの表面に被覆されたゴム層とを具備している。かかる構成では、機内温度が変化すると、ゴムの伸縮によって駆動ローラ12の径が比較的大きく伸縮する。つまり、機内温度の変動に伴って駆動ローラ12の径が変動してしまう。
【0080】
そこで、実施例に係るプリンタにおいては、メイン制御部220が、Y,C,Mのずれ増大量のデータとしてそれぞれ、機内温度と、ずれ増大量との関係を示すアルゴリズムをフラッシュメモリ内に記憶している。前記関係は、工場における実験室において、室内温度を意図的に変化させながら、各温度における駆動ローラ12の径をそれぞれ精密測定器で測定し、それぞれの径におけるずれ増大量を算出した結果に基づいて構築されたものである。アルゴリズムの具体的態様としては、データテーブルや関数式を例示することができる。何れの場合にも、機内温度に対応するずれ増大量を求めることが可能である。
【0081】
本プリンタの機内には、機内温度を測定する温度センサが設けられており、その検知結果をメイン制御部220に送信する。メイン制御部220は、上述した一時補正処理において、Y,C,Mについてそれぞれ、温度検知手段たる温度センサによる検知結果と、上記アルゴリズムとに基づいて、現時点の駆動ローラ12の径で発生するずれ増大量を求める。そして、その結果を、上述した仮想重ね合わせずれや、26通りの修正態様毎ずれ量を求めるために用いる。
【0082】
これまで、各色の感光体に形成した各色のトナー像を中間転写ベルト8に重ね合わせて転写する構成のプリンタについて説明したが、各色のトナー像を、ベルト部材たる紙搬送ベルトの表面に保持している記録紙に転写する構成においても、本発明の適用が可能である。また、実施形態や実施例に係るプリンタにおいては、各所のプロセスユニット6Y,M,C,K、光書込ユニット7、制御装置200などにより、複数の潜像担持体にそれぞれ書き込んだ潜像を互いに異なる色のトナーで現像する作像手段が構成されている。
【0083】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aにおいては、作像手段と、中間転写ベルト8などの無端移動させている無端状のベルト部材の表面あるいは前記表面に保持されている記録シートに対して、前記複数の潜像担持体上のトナー像を重ね合わせて転写して多色画像を得る転写ユニット15等の転写手段と、ベルト部材を自らの周面の一部に掛け回しながら回転駆動するのに伴って前記ベルト部材を無端移動せしめる駆動ローラ12等の駆動回転体と、前記駆動回転体の駆動源である共用駆動モータ162等の駆動モーターと、前記作像手段、転写手段、及び駆動モーターの駆動を制御する制御装置200等の制御手段とを備える。そして、前記制御手段が、前記ベルト部材の移動速度をローラエンコーダー171等のベルト速度検知手段によって検知した結果に基づいて、前記ベルト部材を目標ベルト速度で無端移動させるように前記駆動モーターの駆動速度を制御するベルト定速制御を実施し、且つ前記ベルト部材の表面に形成した色ずれ検知用画像に含まれる各色のトナー像を光学センサユニット136等のトナー像検知手段によって検知したタイミングに基づいて前記複数の潜像担持体についてそれぞれ潜像書込位置を個別に補正する書込位置補正処理を所定のタイミングが到来する毎に実施する。更には、前記駆動モーターの回転速度を検知するFG信号発電器等の回転速度検知手段を設けるとともに、所定の条件が具備された場合に、前記ベルト定速制御に代えて、前記回転速度検知手段による検知結果に基づいて前記駆動モーターを所定の目標回転速度で回転させるモーター定速制御によって前記ベルト部材を駆動し、前記書込位置補正処理を実施する際には、前記所定の条件が具備されているか否かにかかわらず、前記ベルト部材を前記ベルト定速制御で駆動し、且つ、前記モーター定速制御を実施する際には、フラッシュメモリ等のデータ記憶手段に記憶している所定のデータに基づいて、前記書込位置補正処理による補正後の潜像書込位置を一時的に補正する処理を実施するように、制御装置200等の制御手段を構成している。かかる構成では、既に説明したように、モーター定速制御を実施する際に、データ記憶手段に予め記憶しているデータに基づいて潜像担持体に対する潜像書込位置を一時的に補正することで、駆動回転体の径が設計値からずれていることに起因してベルト部材を目標ベルト速度からずれた線速で移動させてしまうことによるトナー像の重ね合わせのずれ増加を低減する。よって、ベルト部材の駆動制御方式をベルト定速制御からモーター定速制御に切り替えることに起因する色ずれの悪化を抑えることができる。
【0084】
[態様B]
態様Bにおいては、実施形態に係るプリンタと同様に、制御手段が、前記所定のデータとして、前記モーター定速制御を実施した場合に生ずる各色トナー像のずれ増大量のデータを前記データ記憶手段に記憶しており、前記書込位置補正処理にて、複数の潜像担持体に対する潜像書込開始タイミングの補正によって前記潜像書込位置を補正し、色ずれ検知用画像に含まれる各色のトナー像をトナー像検知手段によって検知したタイミングと、補正後の潜像書込開始タイミングとに基づいて、各色トナー像について潜像書込開始タイミングを補正してもなお残ってしまう重ね合わせずれ量を残存ずれ量として前記データ記憶手段に記憶し、且つ、前記ずれ増大量と前記残存ずれ量とに基づいて前記潜像書込開始タイミングの一時的な補正量であるタイミング一時補正量(例えば書込一時補正データ)を算出し、前記モーター定速制御を実施する際に、前記潜像書込開始タイミングを前記タイミング一時補正量に基づいて一時的に補正することで、前記潜像書込位置を一時的に補正する。かかる構成では、光学走査系内の温度変化等により、残存ずれ量が経時変化する場合であっても、変化後の残存ずれ量に対応する仮想重ね合わせずれ量を正確に求めることができる。なお、潜像書込位置を補正する方法としては、潜像書込開始タイミングを補正する方法の他、各色について光書込ユニット7内の光学ミラーの角度を個別に調整する方法が挙げられる。かかる方法を採用した場合、各色の潜像書込位置をそれぞれ個別に自由に調整することが可能になるので、書込位置補正処理により残存ずれ量をゼロにすることが可能である。但し、光学ミラーの角度を個別に調整する機構を設ける分、コスト高になる。
【0085】
[態様C]
態様Cにおいては、実施形態に係るプリンタと同様に、駆動ローラ12等の駆動回転体の交換を検知する交換検知手段を設けるとともに、前記データを交換後の前記駆動回転体の径に応じて更新するためのデータ更新手段を設ける。かかる構成では、駆動回転体が交換されても、交換後の駆動回転体の径に合わせて、モーター定速制御を実施するときにおける各色の潜像書込位置を適切に一時補正することができる。なお、実施例に係るプリンタのように、モーター定速制御を実施する際の各色のずれ増大量として、機内温度に応じたものを選択して使用する場合には、温度とずれ増大量との関係を示すデータを、交換後の駆動ローラ12に対応するものに更新することとする。
【0086】
[態様D]
態様Dにおいては、実施例に係るプリンタと同様に、温度センサなどの機内温度を検知する温度検知手段を備え、且つ、前記制御手段が、ずれ増大量のデータとして、機内温度とずれ増大量との関係を表すデータを前記データ記憶手段に記憶しており、前記モーター定速制御を実施する際には、温度検知手段による検知結果と前記データとに基づいて、機内温度に対応する前記増大量を求める処理を実施する。かかる構成においては、機内温度の変動によって駆動回転体の径が変動しても、変動後の径に応じて潜像書込位置を適切に一時補正することができる。
【0087】
[態様E]
態様Eにおいては、実施形態に係るプリンタと同様に、制御手段が、前記書込位置補正処理の実施時に、前記残存ずれ量と前記ずれ増大量とに基づいて、前記潜像書込開始タイミングを一時的に補正しないと仮定した場合に生ずる各色トナー像の重ね合わせずれ量(例えば仮想重ね合わせずれ量)を算出し、算出結果に基づいて、複数の潜像担持体のうち、前記潜像書込開始タイミングの一時的な補正が必要であると判定した潜像担持体についてのみ、前記潜像書込開始タイミングの一時的な補正を実施する。かかる構成においては、実施形態に係るプリンタを例にして説明したように、全ての色について潜像書込開始タイミングを一律に補正する場合に比べて、モーター定速制御を実施する際の色ずれ量を低減することができる。
【符号の説明】
【0088】
1Y,C,M,K:感光体(潜像担持体)
6Y,C,M,K:プロセスユニット(作像手段の一部)
7:光書込ユニット(作像手段の一部)
8:中間転写ベルト(ベルト部材)
12:駆動ローラ(駆動回転体)
15:転写ユニット(転写手段)
136:光学センサユニット(トナー像検知手段)
162:共用駆動モーター(駆動モーター)
171:ローラエンコーダー(ベルト速度検知手段)
200:制御装置(制御手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0089】
【特許文献1】特開2008−号公報139614号公報
【特許文献2】特開2004−205717号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の潜像担持体にそれぞれ書き込んだ潜像を互いに異なる色のトナーで現像する作像手段と、無端移動させている無端状のベルト部材の表面あるいは前記表面に保持されている記録シートに対して、前記複数の潜像担持体上のトナー像を重ね合わせて転写して多色画像を得る転写手段と、前記ベルト部材を自らの周面の一部に掛け回しながら回転駆動するのに伴って前記ベルト部材を無端移動せしめる駆動回転体と、前記駆動回転体の駆動源である駆動モーターと、前記作像手段、転写手段、及び駆動モーターの駆動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、前記ベルト部材の移動速度をベルト速度検知手段によって検知した結果に基づいて、前記ベルト部材を目標ベルト速度で無端移動させるように前記駆動モーターの駆動速度を制御するベルト定速制御を実施し、且つ前記ベルト部材の表面に形成した色ずれ検知用画像に含まれる各色のトナー像をトナー像検知手段によって検知したタイミングに基づいて前記複数の潜像担持体についてそれぞれ潜像書込位置を個別に補正する書込位置補正処理を所定のタイミングが到来する毎に実施するものである画像形成装置において、
前記駆動モーターの回転速度を検知する回転速度検知手段を設けるとともに、
所定の条件が具備された場合に、前記ベルト定速制御に代えて、前記回転速度検知手段による検知結果に基づいて前記駆動モーターを所定の目標回転速度で回転させるモーター定速制御によって前記ベルト部材を駆動する処理と、前記書込位置補正処理を実施する際には、前記所定の条件が具備されているか否かにかかわらず、前記ベルト部材を前記ベルト定速制御で駆動する処理と、前記モーター定速制御を実施する際には、データ記憶手段に記憶している所定のデータに基づいて、前記書込位置補正処理による補正後の潜像書込位置を一時的に補正する処理とを実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置であって、
前記制御手段が、前記所定のデータとして、前記モーター定速制御を実施した場合に生ずる各色トナー像の重ね合わせずれの増大量のデータを前記データ記憶手段に記憶しており、前記書込位置補正処理にて、複数の潜像担持体に対する潜像書込開始タイミングの補正によって前記潜像書込位置を補正し、色ずれ検知用画像に含まれる各色のトナー像をトナー像検知手段によって検知したタイミングと、補正後の潜像書込開始タイミングとに基づいて、各色トナー像について潜像書込開始タイミングを補正してもなお残ってしまう重ね合わせずれ量を残存ずれ量として前記データ記憶手段に記憶し、且つ、前記増大量と前記残存ずれ量とに基づいて前記潜像書込開始タイミングの一時的な補正量であるタイミング一時補正量を算出し、前記モーター定速制御を実施する際に、前記潜像書込開始タイミングを前記タイミング一時補正量に基づいて一時的に補正することで、前記潜像書込位置を一時的に補正するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
前記駆動回転体の交換を検知する交換検知手段を設けるとともに、
前記データを交換後の前記駆動回転体の径に応じて更新するためのデータ更新手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3の画像形成装置であって、
機内温度を検知する温度検知手段を備え、
且つ、前記制御手段が、前記増大量のデータとして、機内温度と前記増大量との関係を表すデータを前記データ記憶手段に記憶しており、前記モーター定速制御を実施する際には、温度検知手段による検知結果と前記データとに基づいて、機内温度に対応する前記増大量を求める処理を実施するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れかの画像形成装置において、
前記制御手段が、前記書込位置補正処理の実施時に、前記残存ずれ量と前記増大量とに基づいて、前記潜像書込開始タイミングを一時的に補正しないと仮定した場合に生ずる各色トナー像の重ね合わせずれ量を算出し、算出結果に基づいて、複数の潜像担持体のうち、前記潜像書込開始タイミングの一時的な補正が必要であると判定した潜像担持体についてのみ、前記潜像書込開始タイミングの一時的な補正を実施するものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−3485(P2013−3485A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136972(P2011−136972)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】