説明

画像形成装置

【課題】新たに装置を追加することなく,取り付けられたトナーボトルの種類を自動的に判別できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の画像形成装置は,トナーボトルが交換されると,排出スクリューの駆動を禁止し現像剤の補給を許容する確認モードでの画像形成を行うとともに,確認モードでの画像形成終了後にTC比を検出し,検出したTC比があらかじめ定めた正常範囲の下限値以上である場合には,排出スクリューの駆動を禁止し現像剤の補給を許容する単トナーボトルモードでの画像形成を行い,検出したTC比があらかじめ定めた正常範囲の下限値より低い場合には,排出スクリューの駆動と現像剤の補給とをともに許容する混合ボトルモードでの画像形成を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,プリンター,コピー機,FAX等の電子写真方式の画像形成装置に関する。さらに詳細には,トナーとキャリアーとを含む現像剤を用いる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,トナーとキャリアーとを含むいわゆる二成分現像剤を用いる画像形成装置は,画像形成によってトナーのみを消費する。そこで,消費により減少したトナー量に応じてトナーのみを補給すれば,キャリアーを繰り返し使用できる。しかし,使用を繰り返すとキャリアーも少しずつ劣化し,劣化の進んだキャリアーを使用し続けることは画質低下の原因となる。これに対し,トナーのみではなく新しいキャリアーを含む現像剤を供給し,その一方で劣化したキャリアーを含む使用済み現像剤の一部を排出することにより,キャリアーの状態を一定の範囲内に保持する技術がある。
【0003】
この技術を用いた画像形成装置では,現像剤のトナーとキャリアーとの混合比率を適切な範囲内に維持することが求められる。そのため,例えば現像剤の透磁率を検出して,その結果に基づいて排出される現像剤の量および供給される現像剤の量を適切に制御することが提案されている(例えば,特許文献1,特許文献2等参照。)。特許文献1によれば,現像剤の透磁率の変化によりトナーの比率を検出し,その結果に応じて現像剤の補給量または排出量を制御するとされている。また,特許文献2によれば,現像装置に透磁率検出器を設け,現像剤が適切な磁性材料,すなわちキャリアーを含有するものであるか否かを判別するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−3682号公報
【特許文献2】特開平9−211962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記したいずれの特許文献に記載の画像形成装置においても,ユーザーによって取り付けられるトナーボトルに収容されている現像剤の混合比率は予め分かっていることが必要である。例えば,トナーボトルに収容されている現像剤のキャリアーの割合が設定されたものと異なれば,使用につれてキャリアーの含有割合が変化し,画質に悪影響を与えるおそれがあるからである。
【0006】
なお,画像形成装置の機種によっては,混合比率の異なる複数種のトナーボトルが,いずれも取り付け可能とされているものがある。そういった機種では,一般に,パネル等を使用して取り付けたトナーボトルの種類をユーザーに入力してもらうか,あるいは,ボトルの種類を判別するための専用の判別機構を設けるかなどの方法が用いられてきた。しかし,ユーザーにとってはこのような入力は煩雑であり,誤入力のおそれもある。また,専用の判別機構を設けることは,装置のコストアップに繋がるという問題点がある。
【0007】
本発明は,前記した従来の画像形成装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,新たに装置を追加することなく,取り付けられたトナーボトルの種類を自動的に判別できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,像担持体と,像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成部と,潜像形成部によって形成された静電潜像にトナーを供給して現像する現像部とを有する画像形成装置であって,現像部は,トナーとキャリアーとを含む現像剤を収容する現像容器と,現像容器に収容されている現像剤を像担持体に供給する現像部材と,現像容器に収容されている現像剤中のトナーの割合であるTC比を検出するTC比検出部と,現像容器に収容されている現像剤の一部を現像容器の外へ排出する排出部材と,現像容器へ補給する現像剤を収容するトナーボトルを着脱可能に装着するトナーボトル装着部と,トナーボトルから現像容器へ現像剤を補給する補給部材とを有し,排出部材による排出の制御と,補給部材による補給の制御とを行う搬送制御部と,トナーボトル装着部に装着されているトナーボトルが交換された際にその後の画像形成の方法を,トナーボトル装着部に現に装着されているトナーボトルの種類に応じて変更する画像形成制御部とを有し,画像形成制御部は,トナーボトル装着部に装着されているトナーボトルが交換されると,排出部材の駆動を禁止し補給部材の駆動を許容する確認モードでの画像形成を行うとともに,確認モードでの画像形成終了後にTC比検出部でTC比を検出し,検出したTC比があらかじめ定めた正常範囲の下限値以上である場合には,排出部材の駆動を禁止し補給部材の駆動を許容する単トナーボトルモードでの画像形成を行い,検出したTC比があらかじめ定めた正常範囲の下限値より低い場合には,排出部材の駆動と補給部材の駆動とをともに許容する混合ボトルモードでの画像形成を行うものである。
【0009】
本発明の画像形成装置によれば,トナーボトルが交換された際に,まず確認モードでの画像形成を行う。この確認モードは,排出部材の駆動を禁止するモードであるので,現像容器に収容されている現像剤は排出されない。また,補給部材の駆動を許容するモードであるので,トナーボトルから現像容器中へ現像剤が補給される。従って,確認モードでの画像形成をある程度行えば,画像形成によるトナーの消費とトナーボトルからの現像剤の補給とによって,現像容器中の現像剤のTC比が変化していく。従って,その変化の傾向を得ることによって,トナーボトルの種類を判断することができる。つまり,TC比が正常範囲の下限値以上である場合には,単トナーボトルと判定できる。また,TC比が正常範囲の下限値より低い場合には,混合ボトルと判定できる。これにより本発明の画像形成装置は,新たに装置を追加することなく,取り付けられたトナーボトルの種類を自動的に判別できるものである。
【0010】
さらに本発明では,画像形成制御部は,確認モード終了後に検出したTC比が正常範囲の下限値以上である場合には,排出部材の駆動と補給部材の駆動とをともに禁止する異常確認モードでの画像形成を予め決めた時間行うとともに,異常確認モードでの画像形成終了後にTC比検出部でTC比を検出し,検出したTC比が,正常範囲の上限値より高い予め決めた異常閾値以上である場合には,画像形成を禁止し,検出したTC比が,異常閾値より低い場合には,単トナーボトルモードへ移行することが望ましい。
このようにすれば,補給部材の異常の有無を容易に検出できる。
【0011】
さらに本発明では,画像形成制御部は,異常確認モード終了後に検出したTC比が,異常閾値より低く,かつ,正常範囲の範囲外であった場合には,補給部材の駆動を許容し排出部材の駆動を禁止する画像形成と,補給部材の駆動を許容し排出部材の駆動を時間を区切って許容する画像形成とを,TC比検出部によってTC比を検出しつつ反復して行う過渡期モードでの画像形成を行い,検出されるTC比が予め決めた正常範囲内となってから単トナーボトルモードへ移行し,異常確認モード終了後に検出したTC比が,正常範囲の範囲内であった場合には,直ちに単トナーボトルモードへ移行することが望ましい。
このようにすれば,安定した状態で単トナーボトルモードへ移行することができる。
【0012】
さらに本発明では,画像形成制御部は,確認モード終了後に検出したTC比が正常範囲の下限値より低い場合には,補給部材の駆動と排出部材の駆動とをともに許容する画像形成と,補給部材の駆動を許容し排出部材の駆動を通常より過剰に行う画像形成とを,TC比検出部によってTC比を検出しつつ反復して行う過剰排出モードでの画像形成を行い,検出されるTC比が予め決めた正常範囲内となってから混合ボトルモードへ移行することが望ましい。
このようにすれば,安定した状態で混合ボトルモードへ移行することができる。
【0013】
さらに本発明では,トナーボトルに収容されている現像剤の一部を一時的に収容するサブホッパーと,サブホッパー内の現像剤の量が予め決めた量より少なくなったときにエンプティー信号を送出するサブホッパーエンプティー検出部とを有し,補給部材は,トナーボトルからサブホッパーへ現像剤を搬送するトナーボトルモーターと,サブホッパーから現像容器へ現像剤を補給するサブホッパースクリューとを含むものであり,画像形成制御部は,排出部材の駆動とトナーボトルモーターの駆動とをともに禁止しサブホッパースクリューの駆動を許容するエンプティモードでの画像形成を,予め決めた時間継続して行い,エンプティモードの終了までにサブホッパーエンプティー検出部によってエンプティー信号が送出されれば,エンプティモードを中止して,トナーボトルモーターの駆動を許容して画像形成を行い,エンプティモードの終了に至ってもサブホッパーエンプティー検出部によってエンプティー信号が送出されなければ,画像形成を禁止することが望ましい。
このようにすれば,サブホッパーエンプティー検出部の異常の有無を確実に確認できる。
【0014】
さらに本発明では,画像形成制御部は,確認モード終了後に検出したTC比が正常範囲の下限値より低い場合には,過剰排出モードへ移行する前にエンプティモードを実行することが望ましい。
このようにすれば,サブホッパーエンプティー検出部の異常の有無を,他のモードの処理のついでに容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の画像形成装置によれば,新たに装置を追加することなく,取り付けられたトナーボトルの種類を自動的に判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本形態に係る画像形成装置の主要部分を示す概略構成図である。
【図2】本形態に係る画像形成装置の主要部分を示すシステム構成図である。
【図3】トナーボトル判別処理を示すフローチャートである。
【図4】混合ボトルが装着されている場合の処理を示すフローチャートである。
【図5】単トナーボトルが装着されている場合のTC比の変化を示すグラフ図である。
【図6】混合ボトルが装着されている場合のTC比の変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,2成分現像剤を用いる電子写真方式の画像形成装置に本発明を適用したものである。
【0018】
本形態の画像形成装置1の主要部分の概略構成を図1に示す。画像形成装置1は,感光体11と,その周辺に配置された帯電部12,露光部13,現像部14,転写部15を有するものである。この図ではさらに,イレーサー17,クリーナー18を記載している。なお,これらの部材は現像部14を除いていずれも,既知のどのような構成のものでも良く,この図の形状に限るものではない。また,この図では1つの感光体11のみを示しているが,例えばこれと同様の構成のものを各色ごとに備えているカラープリンターにも,本発明は適用可能である。
【0019】
本形態の現像部14は,トナーとキャリアーとを含む2成分現像剤を使用するものである。そして,現像部14は,図1に示すように,現像容器21,トナーボトル22,サブホッパー23,廃トナー容器24の4種の容器を備えている。現像容器21には,現像ローラー31と3つの攪拌ローラー32とが設けられている。さらに,現像容器21の底部には,収容されている現像剤のトナー・キャリアー比を検出するためのTCR磁気センサー34が設けられている。
【0020】
トナーボトル22は,新しい現像剤を収容しているものであり,本体に対して着脱可能な補給用部材である。本形態では,サブホッパー23を有しているので,トナーボトル22の装着箇所はサブホッパー23に形成されている。トナーボトル22の種類としては,トナーとキャリアーとを本形態の機種に適切な割合で含んだ混合ボトルと,トナーのみを含有する単トナーボトルとがある。これらはいずれも画像形成装置1に適切に取り付けることができる。
【0021】
本形態の画像形成装置1は,通常,トナーボトル22から新しいキャリアーを含む現像剤の補給を受け,現像容器21内の劣化したキャリアーを含む使用済み現像剤の一部を廃トナー容器24へ排出する制御を行うものである。これにより,キャリアーの状態を良好に保持することができる。このように制御される場合には,装着されるトナーボトル22としては,混合ボトルが推奨される。しかし後述するように,画像形成装置1は,単トナーボトルを一時的な救済措置として使用することもできる。
【0022】
サブホッパー23は,トナーボトル22の補給口が取り付けられることによって新しい現像剤の供給を受け,新しい現像剤を一時的に保管するものである。その容量は,トナーボトル22や現像容器21に比較してかなり少ない。なお,サブホッパー23には,収容されている現像剤の上面(以下,便宜上,「液面」という)を検出する液面センサーであるトナーエンプティセンサー36が設けられている。また,廃トナー容器24は,現像容器21から排出される現像剤を収容する容器である。この廃トナー容器24に排出された現像剤は,ある程度繰り返して使用したキャリアーを含むものである。
【0023】
さらに本発明の現像部14は,各容器から容器へと現像剤を搬送するための3つの搬送部材を有している。トナーボトル22からサブホッパー23へと現像剤を搬送するトナーボトルモーター41,サブホッパー23から現像容器21へと現像剤を搬送するサブホッパースクリュー42,現像容器21から廃トナー容器24へと現像剤を搬送する排出スクリュー43である。このうち,トナーボトルモーター41とサブホッパースクリュー42とによって,トナーボトル22から現像容器21へ現像剤が補給される。つまり,トナーボトルモーター41とサブホッパースクリュー42との少なくともいずれか一方が補給部材に相当する。
【0024】
本形態の画像形成装置1の主要部分のシステム構成図を図2に示す。画像形成装置1は,その全体を制御するコントローラーCPU51を有している。コントローラーCPU51には,操作パネル52,画像処理装置53,ドアセンサー54等が接続されている。そしてコントローラーCPU51は,操作パネル52による指示入力や表示出力,画像処理装置53による画像形成処理等の制御を行う。またコントローラーCPU51は,ドアセンサー54の検出結果に基づいて,画像形成装置1の各部のドアが開閉されたことを検出できる。さらに,エンジンCPU61が,コントローラーCPU51に接続されて設けられている。
【0025】
エンジンCPU61は,モーター駆動回路62を介して,トナーボトルモーター41,サブホッパースクリュー42,排出スクリュー43をそれぞれ制御する。エンジンCPU61はさらに,サブホッパー23に設けられているトナーエンプティセンサー36や,現像容器21に設けられているTCR磁気センサー34からの検出結果を受けるようになっている。エンジンCPU61は,センサー34,36の検出結果を使用して,各搬送装置41,42,43を制御するものである。
【0026】
さらに,本形態の画像形成装置1は,現像容器21内の現像剤のTC比を監視し,適切な範囲内となるように制御している。TC比とは,トナーとキャリアーとの混合割合に関する数値であり,現像剤全体の中に含まれるトナーの比率として表される。例えば,TC比が高いとは,現像剤中に占めるトナーの割合が大きいことを示す。以下では,現像容器21内の現像剤のTC比を単にTC比と記載する。
【0027】
本形態の画像形成装置1では,TC比は,TCR磁気センサー34の検出結果に基づいて取得される。TCR磁気センサー34は,現像容器21内の現像剤の透磁率を検出するものである。画像形成装置1は,TCR磁気センサー34の検出結果に基づいてTC比を算出する。
【0028】
TC比は,そのときの装置の状況により異なる値となる。印刷によってトナーのみが消費され,キャリアーは繰り返し使用されるからである。そして,本形態のコントローラーCPU51は,TC比が予め決めた範囲内となるように,各部を制御している。このようにすることにより,形成画像の画質を良好に維持することができる。以下では,コントローラーCPU51が制御の目標とするTC比の予め決めた適切な範囲を,正常範囲と呼ぶ。
【0029】
例えば,TC比が正常範囲を超えて高い状態は,現像容器21に過剰にトナーが補給された場合等に発生する。また,正常範囲よりTC比が低い状態は,例えば,黒ベタ等の通常よりトナー消費のかなり大きい画像を印刷した直後における現像容器21内の現像剤の状態である。なお,トナーボトル22の混合ボトルに収容されている現像剤のTC比は,この正常範囲の中央値よりTC比の高いものである。
【0030】
そして,画像形成装置1のエンジンCPU61は,コントローラーCPU51の制御に基づいて,トナーボトルモーター41,サブホッパースクリュー42,排出スクリュー43を駆動制御する。印刷処理によってトナーが消費されたら,サブホッパースクリュー42が駆動され,サブホッパー23に収納されている新しい現像剤が現像容器21内に補給される。そして,現像剤が追加されるときには適宜排出スクリュー43も駆動され,現像容器21内にある現像剤の一部が廃トナー容器24へ排出される。そして,サブホッパー23に収容されている現像剤が少なくなれば,トナーボトルモーター41を駆動してサブホッパー23に現像剤を追加する。
【0031】
つまり,通常の画像形成時においては,画像形成装置1のコントローラーCPU51は,画像形成によって減少したトナーをサブホッパー23からの現像剤の補給によって補い,現像容器21中の古い現像剤を適宜排出する制御を行う。さらに本形態のコントローラーCPU51は,必要に応じてこの通常の制御に加えて,各搬送部材41〜43を,それぞれ単独で,駆動禁止あるいは駆動許容する制御も行う。ここで,駆動を禁止するとは,通常の制御であれば駆動されるタイミングにおいても駆動しない制御を行うことである。また,駆動を許容するとは,通常の制御において駆動されるタイミングには駆動する制御を行うことである。
【0032】
なお,通常,サブホッパー23から補給される新しい現像剤は,トナーボトル22内に収容されている現像剤である。このトナーボトル22内の現像剤のTC比は,トナーボトル22の種類によって異なる。しかし,トナーボトル22内の現像剤のTC比はトナーボトル22の種類ごとに決まった値であるので,補給される現像剤のTC比は,トナーボトル22を交換しない間は一定の値である。
【0033】
本形態の画像形成装置1は,トナーボトル22として混合ボトルが使用されることが推奨されているものである。しかし,一時的に単トナーボトルを取り付けることもできる。例えば,混合ボトルが手近にない場合に,暫定定期な救済措置として単トナーボトルを使用できるのである。ただし画像形成装置1は,単トナーボトルが取り付けられているときには,混合ボトルが取り付けられているときの通常の制御とは異なる,単トナーボトル用の制御を行う。以下では,混合ボトルが取り付けられているときの通常の制御を混合ボトルモード,単トナーボトルが取り付けられているときの単トナーボトル用の制御を単トナーボトルモードという。
【0034】
トナーボトル22として単トナーボトルが取り付けられているときには,補給される現像剤にキャリアーが含まれていないため,現像容器21中の現像剤を排出すると,現像容器21中の現像剤中のキャリアーの量が不足するおそれがある。従って,単トナーボトルモードでは,画像形成装置1は,現像剤を排出せず,トナーボトル22からの現像剤の補給のみを行って,現像剤のトナー濃度を適正範囲内となるように制御する。なお,トナーボトル22の交換は,現に装着されているトナーボトル22に現像剤が残っている状態で行うこともできる。
【0035】
そこで,本形態の画像形成装置1は,トナーボトル22が交換された可能性がある場合に,今取り付けられているトナーボトル22が,混合ボトルであるか,単トナーボトルであるかを判別する。トナーボトル22が交換された可能性がある場合とは,例えばドアセンサー54によってトナーボトル収容箇所のドアが開閉されたことが検出された場合,電源スイッチがオンオフされた場合等である。本形態の画像形成装置1は,この判別を,ユーザーによる入力によることなく,コントローラーCPU51によって自動で行うことができる。
【0036】
コントローラーCPU51によって実行されるトナーボトル判別処理およびそれに引き続いて実行される過渡期の制御処理のフローチャートを図3と図4に示す。また,これらの処理を実行中のTC比の変化を図5と図6に示す。
【0037】
トナーボトル22が交換された可能性があると判断されると,コントローラーCPU51は,エンジンCPU61を介してモーター駆動回路62を制御し,排出スクリュー43の駆動を禁止する(S101)。そして,排出スクリュー43を停止したままで印刷処理を実行する。これが確認モードである。このとき,トナーボトルモーター41とサブホッパースクリュー42とは,駆動が許容され,通常の制御による駆動状態とする。すなわち,印刷によってトナーが減少したら,サブホッパー23を経由して,トナーボトル22の現像剤が現像容器21へと補給される。
【0038】
この確認モードの状態で予め決めた時間の印刷が行われたら,コントローラーCPU51は,TCR磁気センサー34の検出結果に基づいてTC比を取得する(S102)。この時点を図5と図6では,P1で示す。さらに,取得したTC比を予め決めた正常範囲の値と比較する(S103)。なお,ここでの予め決めた時間P1は,最悪の条件でもTC比が正常範囲より広い限界範囲を逸脱することがないように定めている。つまり,印刷が不可能とならない範囲内に決定されている。
【0039】
図6に示した例のように,図3のS102で取得されたTC比が正常範囲外まで低下していたら(S103:No),キャリアーも補給されていることを示し,コントローラーCPU51は,混合ボトルが装着されていると判断する(S104)。なお,コントローラーCPU51は,ここでは通常制御,つまり,劣化したキャリアーを含む現像剤の排出も行われているという前提での補給量の制御を行っている。そして,印刷処理によって消費されたトナー量に対応して補給される現像剤にはキャリアーが含まれている。そのため,排出スクリュー43を停止した状態での印刷を継続すると,キャリアーの割合が増加することになり,TC比は低下する。この場合には,(A)ヘ進み,続いて図4の処理を行う。この処理については後述する。
【0040】
一方,図5に示した例のように,図3のS102で取得されたTC比が正常範囲内であるかまたはより高めとなっていれば(S103:Yes),印刷によって使用されたものより多くのトナーが補給されたことを示す。この場合には,単トナーボトルが装着されている可能性がある。あるいは,何らかの異常が発生している可能性もある。そこでこの場合には,コントローラーCPU51は,サブホッパースクリュー42をも強制的に停止する(S105)。
【0041】
そして,コントローラーCPU51は,さらにTC比を監視しつつ印刷を継続して行う(図3のS106)。これが,異常確認モードである。その結果,TC比がさらに高くなるようであれば(S107:Yes),あるいは,図5のL1に示すように,P2時点においてTC比の高上判断閾値を超えている場合は,コントローラーCPU51は,サブホッパースクリュー42の異常であると判断する(S108)。つまり,停止しているはずのサブホッパースクリュー42が,回転し続けていると判断される。この場合には,コントローラーCPU51は,ユーザーに異常を知らせるメッセージを表示するとともに,印刷処理を停止する。高上判断閾値は,正常範囲の上限値より高く,予め決めた異常閾値である。
【0042】
図3のS106の処理によって,TC比がさらに高くなることはなく,図5のL2に示すように,P2時点においてもS106の前の値をおよそ維持しているかあるいは低下している場合は(S107:No),コントローラーCPU51は,単トナーボトルが装着されていると判断する(S109)。そこで,コントローラーCPU51は,サブホッパースクリュー42の駆動を許容し(S110),排出スクリュー43の駆動は禁止したまま,単トナーボトルモードでさらに印刷処理を行う。
【0043】
この後ある程度の時間が経過し,図5のP3時点において,TC比が正常範囲を超えて高めまたは低めに変位している場合には(図3のS111:Yes),コントローラーCPU51は,予め決めた時間だけ排出スクリュー43を駆動する。そして,予め決めた時間経過後にコントローラーCPU51は,再び排出スクリュー43を停止する(S112)。コントローラーCPU51は,この後,TC値が正常範囲内となるまで,S111の判断とS112とを繰り返す。これが,過渡期モードである。
【0044】
図5のP4時点において,TC比が正常値の範囲内に安定したら(図3のS113:Yes),コントローラーCPU51は,排出スクリュー43の駆動を禁止したままで,単トナーボトル用の補給制御動作である単トナーボトルモードの実行に戻る(S114)。なお,この状態は,キャリアーの入れ替えを行わないで,消費したトナーのみを単トナーボトルから補給している状態である。そのため,キャリアーの劣化が進行する。この状態は,一時的な救済措置としてのみ許容されるものであり,速やかに混合ボトルに交換されることが望ましい。そこで,コントローラーCPU51は,トナーボトル22についての情報をユーザーに知らせるメッセージを表示する。
【0045】
次に,図3のS104で混合ボトルが装着されているとの判断がなされた場合について,図4を使用して説明する。この場合にはまず,コントローラーCPU51は,トナーボトルモーター41の駆動を停止して,印刷を行う(S201)。これがエンプティモードである。そして,コントローラーCPU51は,TC比を取得しつつ(S202),しばらくエンプティモードでの印刷を繰り返す。その上で,コントローラーCPU51は,サブホッパー23に設けられているトナーエンプティセンサー36からトナーエンプティの信号が発信されているか否かをチェックする(S203)。
【0046】
S201の印刷を繰り返している間に,トナーエンプティセンサー36からトナーエンプティの信号が発信された場合には(S203:Yes),コントローラーCPU51は,図4のS204へ進む。ただし,予め決めた時間が経過した後(図6の時点P5)においても,トナーエンプティセンサー36の信号が発信されない場合は(S205:Yes),トナーエンプティセンサー36の異常であると判断される(S206)。この場合には,コントローラーCPU51は,ユーザーに異常を知らせるメッセージを表示するとともに,印刷処理を停止する。ここでの予め決めた時間は,印刷条件にかかわらずトナーエンプティとなっているはずの時間である。
【0047】
一方,時点P5までに,トナーエンプティセンサー36の信号が発信された場合には(図4のS203:Yes),コントローラーCPU51は,停止していたトナーボトルモーター41と排出スクリュー43との駆動を許容する(S204)。これにより,3つの搬送部は全て駆動が許容された状態となる。この状態が,混合ボトルモードである。さらに,TC比を監視しつつ印刷を継続する(S207)。
【0048】
そして,ある程度の時間の経過後(図6の時点P6)において,TC比が正常範囲より低い場合には(図4のS208:Yes),コントローラーCPU51は,排出スクリュー43を通常より過剰に駆動する(S209)。すなわち,排出スクリュー43の駆動継続時間を通常より長くするか,駆動速度を上昇させることにより,通常制御における場合より多量に現像剤を排出する。これが,過剰排出モードである。
【0049】
その後,コントローラーCPU51は,さらにTC比を取得し,TC比が正常範囲内で安定したかどうかを確認する(S210)。安定していなければ(S210:No),コントローラーCPU51は,もうしばらくTC比を監視し,TC比が正常範囲より低い場合には(図4のS208:Yes),コントローラーCPU51は,排出スクリュー43を通常より過剰に駆動する(S209)ことを繰り返す。
【0050】
TC比が正常範囲内で安定したら(S210:Yes),コントローラーCPU51は,通常処理に戻る(S211)(図6の時点P7)。この通常処理は,混合ボトルが装着された場合に行われる混合ボトルモードであり,トナーボトルモーター41,サブホッパースクリュー42,排出スクリュー43をいずれも駆動を許容しつつ,画像形成を行うものである。これで,この処理の説明を終了する。
【0051】
以上詳細に説明したように本形態の画像形成装置1によれば,新たに装置を追加することなく,取り付けられたトナーボトルの種類を自動的に判別できる。
【0052】
なお,上記の形態では,サブホッパー23を有しているので,トナーボトル22はサブホッパー23に装着されているとともに,トナーボトル22に収容されている現像剤は,サブホッパー23を介して現像容器21に供給されている。しかし本発明はこの構成のものに限るわけではない。サブホッパー23を備えず,トナーボトル22から現像容器21へ直接,現像剤を補給するものであっても良い。
【0053】
この場合には,トナーボトル22は現像容器21の装着箇所に装着されることになる。また,図3のS105,S110において,サブホッパースクリュー42を停止する代わりに,トナーボトル22から現像容器21への補給を停止するものとすればよい。このようにしても,TC比を監視することによって,トナーボトル22の種類を判別することができる。
【0054】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,機種によっては一時的な救済処理が不可能なものがある。そして,単トナーボトルの装着が好ましくない機種であって,単トナーボトルが装着されていると判断された場合には,トナーボトル22の交換を要求するメッセージを操作パネル52に表示子,印刷処理を停止するとよい。単トナーボトルの装着が好ましくない機種とは,単トナーボトルが装着された場合の適切な制御手段を有しない機種のことである。あるいは,単トナーボトルと混合ボトルとを両方装着して,使い分ける制御を行う機種において,混合ボトルが装着されるべき箇所に単トナーボトルが装着された場合も同様に印刷処理を停止するとよい。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成装置
11 感光体
12 帯電部
13 露光部
14 現像部
21 現像容器
23 サブホッパー
31 現像ローラー
34 TCR磁気センサー
36 トナーエンプティセンサー
41 トナーボトルモーター
42 サブホッパースクリュー
43 排出スクリュー
51 コントローラーCPU
61 エンジンCPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と,前記像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成部と,前記潜像形成部によって形成された静電潜像にトナーを供給して現像する現像部とを有する画像形成装置において,
前記現像部は,
トナーとキャリアーとを含む現像剤を収容する現像容器と,
前記現像容器に収容されている現像剤を前記像担持体に供給する現像部材と,
前記現像容器に収容されている現像剤中のトナーの割合であるTC比を検出するTC比検出部と,
前記現像容器に収容されている現像剤の一部を前記現像容器の外へ排出する排出部材と,
前記現像容器へ補給する現像剤を収容するトナーボトルを着脱可能に装着するトナーボトル装着部と,
トナーボトルから前記現像容器へ現像剤を補給する補給部材とを有し,
前記排出部材による排出の制御と,前記補給部材による補給の制御とを行う搬送制御部と,
前記トナーボトル装着部に装着されているトナーボトルが交換された際にその後の画像形成の方法を,前記トナーボトル装着部に現に装着されているトナーボトルの種類に応じて変更する画像形成制御部とを有し,
前記画像形成制御部は,
前記トナーボトル装着部に装着されているトナーボトルが交換されると,前記排出部材の駆動を禁止し前記補給部材の駆動を許容する確認モードでの画像形成を行うとともに,前記確認モードでの画像形成終了後に前記TC比検出部でTC比を検出し,
検出したTC比があらかじめ定めた正常範囲の下限値以上である場合には,前記排出部材の駆動を禁止し前記補給部材の駆動を許容する単トナーボトルモードでの画像形成を行い,
検出したTC比があらかじめ定めた正常範囲の下限値より低い場合には,前記排出部材の駆動と前記補給部材の駆動とをともに許容する混合ボトルモードでの画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において,
前記画像形成制御部は,
前記確認モード終了後に検出したTC比が前記正常範囲の下限値以上である場合には,前記排出部材の駆動と前記補給部材の駆動とをともに禁止する異常確認モードでの画像形成を予め決めた時間行うとともに,前記異常確認モードでの画像形成終了後に前記TC比検出部でTC比を検出し,
検出したTC比が,前記正常範囲の上限値より高い予め決めた異常閾値以上である場合には,画像形成を禁止し,
検出したTC比が,前記異常閾値より低い場合には,前記単トナーボトルモードへ移行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において,
前記画像形成制御部は,
前記異常確認モード終了後に検出したTC比が,前記異常閾値より低く,かつ,前記正常範囲の範囲外であった場合には,前記補給部材の駆動を許容し前記排出部材の駆動を禁止する画像形成と,前記補給部材の駆動を許容し前記排出部材の駆動を時間を区切って許容する画像形成とを,前記TC比検出部によってTC比を検出しつつ反復して行う過渡期モードでの画像形成を行い,検出されるTC比が予め決めた正常範囲内となってから前記単トナーボトルモードへ移行し,
前記異常確認モード終了後に検出したTC比が,前記正常範囲の範囲内であった場合には,直ちに前記単トナーボトルモードへ移行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記画像形成制御部は,
前記確認モード終了後に検出したTC比が前記正常範囲の下限値より低い場合には,前記補給部材の駆動と前記排出部材の駆動とをともに許容する画像形成と,前記補給部材の駆動を許容し前記排出部材の駆動を通常より過剰に行う画像形成とを,前記TC比検出部によってTC比を検出しつつ反復して行う過剰排出モードでの画像形成を行い,検出されるTC比が予め決めた正常範囲内となってから前記混合ボトルモードへ移行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
トナーボトルに収容されている現像剤の一部を一時的に収容するサブホッパーと,
前記サブホッパー内の現像剤の量が予め決めた量より少なくなったときにエンプティー信号を送出するサブホッパーエンプティー検出部とを有し,
前記補給部材は,
前記トナーボトルから前記サブホッパーへ現像剤を搬送するトナーボトルモーターと,
前記サブホッパーから前記現像容器へ現像剤を補給するサブホッパースクリューとを含むものであり,
前記画像形成制御部は,
前記排出部材の駆動と前記トナーボトルモーターの駆動とをともに禁止し前記サブホッパースクリューの駆動を許容するエンプティモードでの画像形成を,予め決めた時間継続して行い,
前記エンプティモードの終了までに前記サブホッパーエンプティー検出部によってエンプティー信号が送出されれば,前記エンプティモードを中止して,前記トナーボトルモーターの駆動を許容して画像形成を行い,
前記エンプティモードの終了に至っても前記サブホッパーエンプティー検出部によってエンプティー信号が送出されなければ,画像形成を禁止することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において,
前記画像形成制御部は,
前記確認モード終了後に検出したTC比が前記正常範囲の下限値より低い場合には,前記過剰排出モードへ移行する前に前記エンプティモードを実行することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83713(P2013−83713A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221965(P2011−221965)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】