説明

画像測定装置

【課題】高精度なオートフォーカス処理が可能な画像測定装置を安価に提供する。
【解決手段】画像測定装置は、ワークを撮像するローリングシャッター式の撮像装置と、撮像装置の合焦位置を制御して合焦位置を合焦軸方向の位置情報として出力する位置制御システムと、撮像装置から取得した画像情報から画像情報のコントラスト情報を算出する演算処理装置とを備え、演算処理装置は、取得した画像を複数の領域に分割し、各領域の、画像内における位置とコントラスト情報とに基づいて画像情報のコントラスト情報を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象を撮像する事によって測定対象を測定する画像測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オートフォーカス機能を備えた画像測定装置では、カメラ等の撮像装置又はその光学系を光軸方向に移動させながら順次測定対象の画像を取得し、コントラストから光軸方向の合焦位置を算出する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−168607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、一般にこの様な画像測定装置にはグローバルシャッター式の撮像装置が搭載されていた。グローバルシャッター式の撮像装置は全ての受光素子において同時に露光を行うため、上記のコントラスト式のオートフォーカスに適している。
【0005】
一方、グローバルシャッター方式の撮像装置とは異なる方式として、ローリングシャッター式の撮像装置が知られている。ローリングシャッター式の撮像装置は、グローバルシャッター式の撮像装置と比較して安価である。しかしながら、ローリングシャッター式の撮像装置を上記のコントラスト式のオートフォーカスに利用するにあたり、次のような問題があった。
【0006】
即ち、ローリングシャッター式の画像測定装置は、行列状に配列されて構成された受光素子の、1列ごと又は1画素毎に順次撮像を行う。従って、ローリングシャッター式の撮像装置を光軸方向に移動させながら撮像を行った場合、取得した画素の位置によって撮像装置の位置が異なる事となる。
【0007】
受光タイミングの中心における撮像装置の位置を基準位置としていた場合、行列状に配列された受光素子のうち、中心に位置するものの受光と同時に、撮像装置の位置情報が撮像位置として取得される。従って、撮像開始直後に撮像を行った部分は基準位置より前で撮像されることになり、同様に撮像終了直前に撮像を行った部分は基準位置より後で撮像されることになる。従って、撮像範囲中で最もコントラストが大きく変化する部分が撮像範囲の中心位置から離れていた場合、取得された画像から算出したコントラストと取得された撮像位置との間に誤差が生じることとなる。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、高精度なオートフォーカス処理が可能な画像測定装置を安価に提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る画像測定装置は、ワークを撮像するローリングシャッター式の撮像装置と、撮像装置の合焦位置を制御して合焦位置を合焦軸方向の位置情報として出力する位置制御システムと、撮像装置から取得した画像情報から画像情報のコントラスト情報を算出する演算処理装置とを備え、演算処理装置は、取得した画像を複数の領域に分割し、各領域の、画像内における位置とコントラスト情報とに基づいて画像情報のコントラスト情報を補正する。
【0010】
本発明の一実施形態に係る画像測定装置において、演算処理装置は、連続して撮像した前後の画像情報における各領域のコントラスト情報及び撮像タイミングから、その領域のコントラスト情報を補正する。
【0011】
又、本発明の一実施形態に係る画像測定装置において、演算処理装置は、前後の画像情報の対応する領域についてのコントラスト情報をそれぞれ算出し、コントラスト情報にそれぞれの撮像タイミングに応じた重みを乗じて足し合わせる
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高精度なオートフォーカス処理が可能な画像測定装置を安価に提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像測定装置の全体図である。
【図2】同装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同装置の一部の構成を表すブロック図である。
【図4】同装置におけるオートフォーカスの方法を示す図である。
【図5】グローバルシャッター式の撮像装置における撮像タイミングを示すタイミングチャートである。
【図6】ローリングシャッター式の撮像装置における撮像タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【図7】オートフォーカス動作中に撮像装置によって撮像される画像の例である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る画像測定装置におけるコントラストの補正方法を説明する為の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態に係る画像測定装置の構成について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る画像測定装置の全体図である。画像測定装置は、ワーク3を撮像する撮像装置としてカメラ141が搭載された画像測定機1と、この画像測定機1と電気的に接続されたコンピュータ(以下、「PC」と呼ぶ。)2とを備えている。
【0016】
画像測定機1は、次のように構成されている。即ち、試料移動手段11の上には、試料台12がその上面をベース面として水平面と一致するように載置され、試料移動手段11の両側端から立設されたアーム支持体13a,13bの上端でX軸ガイド13cを支持している。試料台12は、試料移動手段11によってY軸方向に駆動される。X軸ガイド13cには、撮像ユニット14がX軸方向に駆動可能に支持されている。撮像ユニット14の下端には、ローリングシャッター式のCMOSカメラ141が装着されている。
【0017】
尚、本実施形態においては試料台12上に配置されたワーク3を撮像する形式をとっているが、当然他の形式でも良く、例えば床に設置されたワークを横方向から撮像する様な形式でも良い。
【0018】
図2は、本施形態に係る画像測定装置のブロック図である。本実施形態において、画像測定装置は、例えば画像測定機1の内部にコントローラ15を備えており、コントローラ15は位置制御システム151及び照明制御装置152を備えている。また、撮像ユニット14はワーク3に光を照射する照明装置142を備えている。PC2は位置制御システム151を介してカメラ141の焦点位置を制御する。また、PC2はカメラ141にフレームレートを指定する信号を、照明制御装置152に照明装置142の光量を指定する信号を送信する。カメラ141は照明装置142から光を照射されたワーク3を、指定されたフレームレートで撮像し、画像情報をPC2に送信する。この際、位置制御システム151からはカメラ141の位置情報が送信される。尚、照明装置142としては種々の照明が使用可能であり、例えばPWM制御のLED等も使用可能である。
【0019】
次に、本実施形態に係る画像測定装置における撮像ユニット14の構成について説明する。図3は、本実施形態に係る画像測定装置の一部の構成を示すブロック図である。本実施形態において、撮像ユニット14は、カメラ141と、カメラ141のZ座標を検出し、出力するリニアエンコーダ143と、カメラ141をZ軸方向に駆動するカメラ駆動機構144と、カメラ駆動機構144を駆動するZ軸モータ145とを備えている。Z軸モータ145は、画像測定機1に備えられたパワーユニット16を介して位置制御システム151により制御される。又、リニアエンコーダ143は、スケールまたは検出ヘッドがカメラ141と連動してZ軸方向に移動する様に取り付けられている。位置制御システム151はラッチカウンタ及びZ値ラッチバッファを備えており、トリガ信号に応じてリニアエンコーダ143からカメラ141のZ座標情報を取得し、Z値ラッチバッファに保持する。カメラ141は、USBケーブルを介してPC2と、専用DIO(デジタル入出力)を介して位置制御システム151とそれぞれ接続されている。
【0020】
位置制御システム151はパワーユニット16に対してZ軸駆動命令を出力する。パワーユニット16はZ軸モータ145に駆動電力を供給し、Z軸モータ145は、カメラ駆動機構144によってカメラ141を駆動する。カメラ141は任意のフレームレートで撮像を行い、USBケーブルを介してPC2に画像情報を送信する。この際、カメラ141から位置制御システム151へトリガ信号として垂直同期信号が出力される様にしても良い。この場合、位置制御システム151は垂直同期信号を受信し、これに応じてリニアエンコーダ143からカメラ141のZ座標を取得する。取得されたZ座標はZ値ラッチバッファに保持され、ラッチカウンタが更新される。保持されたZ値は読み出し命令に応じてPC2に送信される。尚、本実施形態においてはカメラ141をZ軸方向に駆動しているが、カメラ141に設けられたレンズ等の光学系を調整する事によっても同様の動作が可能である。また、本実施形態においては、デジタルシリアル通信手段としてUSBインターフェイスを使用しているが、Gig−E、FireWire等他の手段を用いることも当然可能である。又、デジタルシリアル通信手段でなく、アナログ通信手段(NTSC出力、コンポジット出力)を用いることも可能である。アナログ通信手段を用いる場合には、PC2側は、フレームグラバを介して画像を取得する。
【0021】
次に、本実施形態に係る画像測定装置のオートフォーカスの方法について説明する。図4は、本実施形態に係る画像測定装置のオートフォーカスの方法を説明する為の図であり、横軸はカメラ141のZ座標を、縦軸はコントラストをそれぞれ表している。
【0022】
本実施形態に係る画像測定装置のオートフォーカスにおいては、複数のZ座標において撮像を行い、それぞれの座標位置における画像からコントラストを算出し、算出された複数のコントラストによって図4の実線で示すコントラストカーブを求め、このコントラストカーブのピーク位置を合焦位置と判断する。図4の例においては、7か所のZ座標(Z1〜Z7)において撮像を行っており、それぞれのZ座標におけるコントラスト(P1〜P7)が計算されている。
【0023】
従来、このようなコントラスト式のオートフォーカスにおいて画像を取得する際には、グローバルシャッター式のCCDカメラが使用されてきた。図5は、グローバルシャッター式の撮像装置における撮像タイミングを示すタイミングチャートである。
【0024】
図5の上段はCCDカメラの撮像素子の露光タイミングを、下段は画像情報及び垂直同期信号の出力タイミングを示している。図に示す通り、グローバルシャッター方式のCCDカメラにおいては全ての撮像素子を同時に露光しており、その後、順次画像を転送する。
【0025】
これに対し、ローリングシャッター式のCMOSカメラは画素列毎に撮像タイミングが異なる。図6は、ローリングシャッター式のCMOSカメラにおける撮像タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【0026】
図6は図5と同様に、上段にCMOSカメラの撮像タイミングを、下段に画像情報及び垂直同期信号の出力タイミングを示している。今、説明のためにCMOSカメラの画素数をx個×y個とし、左上の画素を(1,1)、右下の画素を(x,y)とする。
【0027】
ローリングシャッター方式のCMOSカメラにおいて撮像が開始されると、画素(1,1)、(2,1)、(3,1)…の様に、1行目に配置された受光素子を順次露光し、その後、2列目以降に配置されている受光素子についても順番に露光を行う。又、撮像素子による各画素の画像情報は、各画素の受光終了と同時に、画素毎に出力される。
【0028】
オートフォーカス動作時には、カメラ141でワーク3を撮像しながらカメラ141を移動させる。この時の、1フレーム分の撮像を開始する際のカメラ141のZ軸方向位置をZ1、中間のZ軸方向位置をZ2、撮像終了のZ軸方向位置をZ3とする。この場合、画素(1,1)を撮像する時のカメラ141の位置はZ1、撮像範囲の中心位置の画素を撮像する時のカメラ141の位置はZ2、画素(x,y)を撮像する時のカメラ141の位置はZ3となる。
【0029】
位置制御システム151がラッチするカメラ141のZ軸方向位置(以下、「基準位置」という)をZ2とすると、Z値ラッチバッファにはZ2が保持され、PC2に転送される。従って、PC2においては画素(0,0)から画素(x,y)までの画像データは、全てカメラ141の位置がZ2である時に撮像されたものであると認識される。従って、実際にそれぞれの画素が取得された時点でのカメラ141の位置と、PC2によって認識されるカメラ141の位置との間には誤差が生じる。この場合、画素(1,1)を撮像した時の誤差はZ2−Z1、画素(x,y)を撮像した時の誤差はZ3−Z2となり、共に最大の値となる。
【0030】
図7は、オートフォーカス動作中にカメラ141によって撮像される画像の例である。図7の(a)は撮像範囲の全体像であり、図7の(b)及び(c)は、オートフォーカス処理に用いる画像範囲を規定する図7(a)に示すツールT内の拡大画像である。今、ツールT内にコントラストの最も大きく変化する領域Dが存在し、領域Dを撮像する時のカメラ141の位置がZdであるものとする。
【0031】
PC2は、転送されたツールT内の画像からコントラスト値Cを算出する。コントラスト値Cは、一般的には、次のように求めることが知られている(例えば特開平11−283035号)。
【0032】
【数1】

【0033】
ここで、g(x,y)は、XY座標平面状の(x,y)に位置する画素の輝度である。ツールT内のm×n画素について計算を行う。
【0034】
この場合、図7(b)のように、領域DがツールTの中心位置よりも上(Y軸方向)にずれている場合、最大コントラストが得られるのは、カメラ141がZ2に到達する前の領域Dを撮像しているタイミングZdが合焦位置である場合である。一方、図7(c)に示すように、領域DがツールTの中心位置よりも下(Y軸方向)にずれている場合、最大コントラストが得られるのは、カメラ141がZ2に到達した後の領域Dを撮像しているタイミングZdが合焦位置である場合である。したがって、いずれの場合も、画像中心の撮像タイミングであるZ2が合焦位置であるとしても最大のコントラストは得られないことになる。このように、コントラストに最も多く寄与する領域Dが画像中心からずれている場合、図4に示すコントラストカーブ自体が左右にずれてしまうため、正確な合焦位置が求められない。
【0035】
そこで、この実施形態では、行毎に、その撮像タイミングを考慮してコントラスト値C+を求め、求めたコントラスト値の加算平均を取ってフレームのコントラスト値Cを求めるようにしている。
【0036】
図8は、このコントラスト値算出処理を説明するための図である。図中▽で示すタイミングTzpre,Tzcur,Tznextが各フレームの基準位置である。この例では、基準位置が先頭の行の撮像タイミングに合致している。なお、各行の各画素の撮像タイミングは異なっているが、処理の簡便化を図るため、各行の撮像タイミングは各行の中心位置としている。各行の撮像タイミングは、今のフレームの基準位置の撮像タイミングTzcurから時間tcurだけ遅れ、次のフレームの基準位置の撮像タイミングTznextに対して時間tnextだけ進んでいる。従って、今のフレームの各行のコントラストをΔCcur、次のフレームの各行のコントラストをΔCnextとすると、これらの撮像タイミングを考慮して比例配分により修正された今のフレームの各行のコントラスト値C+は、次式のように算出することができる。
【0037】
【数2】

【0038】
ここで、kは、tnext/(tcur+tnext)であり、Y座標値を用いて算出することができる。このように各行のコントラスト値C+を求めることにより、今のフレームの基準位置に対して、前のフレームの撮像タイミングと今のフレームの撮像タイミングといずれが近いかに基づいてコントラスト値を修正することができる。そして、求められた各行のコントラスト値C+から各フレームのコントラスト値Cを次のように算出する。
【0039】
【数3】

【0040】
なお、以上の実施形態では、コントラスト値C+を行毎に求めたが、画素毎に求めても良い。また、図8の領域Rで示したように、数行毎にコントラスト値C+を求めても良い。画素毎に求めれば、精度は向上し、それよりも広い領域R毎に求めれば、演算処理の負担が軽減される。更に、基準位置は、フレームの最初ではなく、中間又は最後に設定することもできる。
【0041】
この様な方法によれば、カメラ141に、比較的安価なローリングシャッター方式のCMOSカメラを用いた際にも精度良くオートフォーカスを行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1…画像測定機、2…コンピュータ(PC)、3…ワーク、11…試料移動手段、12…試料台、13a、b…アーム支持体、13c…X軸ガイド、14…撮像ユニット、15…コントローラ、16…パワーユニット、141…カメラ、142…照明装置、143…リニアエンコーダ、144…カメラ駆動機構、145…Z軸モータ、151…位置制御システム、152…照明制御装置、153…フレームレート検出器、154…標準フレームレート保持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを撮像するローリングシャッター式の撮像装置と、
前記撮像装置の合焦位置を制御して前記合焦位置を合焦軸方向の位置情報として出力する位置制御システムと、
前記撮像装置から取得した画像情報から前記画像情報のコントラスト情報を算出する演算処理装置と
を備え、
前記演算処理装置は、
取得した画像を複数の領域に分割し、
前記各領域の、画像内における位置とコントラスト情報とに基づいて前記画像情報のコントラスト情報を補正する
ことを特徴とする画像測定装置。
【請求項2】
前記演算処理装置は、連続して撮像した前後の前記画像情報における前記各領域のコントラスト情報及び撮像タイミングから、その領域のコントラスト情報を補正する
ことを特徴とする請求項1記載の画像測定装置。
【請求項3】
前記演算処理装置は、前記前後の画像情報の対応する領域のコントラスト情報をそれぞれ算出し、前記コントラスト情報にそれぞれの撮像タイミングに応じた重みを乗じて足し合わせる
ことを特徴とする請求項2記載の画像測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−168137(P2012−168137A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31483(P2011−31483)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】