説明

画像監視センサ

【課題】画像による撮影範囲の一部を検知範囲とする人体センサを備えた画像監視センサにおいて、画像上に対する人体センサの検知エリアの位置を精度良く特定する。
【解決手段】監視空間を撮影した画像を取得する画像取得部と、監視空間内の一部に設定された検知空間から得られる検知信号に応じて人体を検知する人体検知部とを有し、画像取得部による取得画像を表示する画像表示部と、人体の検知レベルを表示するレベル表示部と、設定者により操作され、表示画像上において所定の範囲を指定する操作部と、指定範囲を画像に対する検知エリアの位置として登録するエリア設定部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知空間内の人体を検知するセンサ機能と、検知空間を含む監視空間を撮影するカメラ機能とを備えた画像監視センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視空間を撮影するカメラと受動型の赤外線センサ(PIRセンサ:Passive Infrared Ray センサ)とを備えた装置が提案されている。このような装置を侵入監視に用いると、PIRセンサが侵入者を検知して発報したときに、カメラが撮影した画像によってPIRセンサの検知空間を含む範囲をモニタすることができる。また、カメラの撮影画像をモニタ表示する際、画像上にPIRセンサの検知エリアを示すことで、監視者による発報要因の確認作業を支援することもできる。例えば、特許文献1には、PIRセンサの検知エリアがどのような位置(範囲)に設定されているかを操作者が確認可能なように、カメラで撮影した画像上に検知エリアを示すマーカを重畳して表示する監視カメラが開示されている。しかし、装置の設置場所の状況などに応じてカメラの画角とPIRセンサの視野角との関係は変わり得るので、画像上での検知エリアの位置を設置場所に応じて都度設定する必要がある。
【0003】
これに対し、特許文献2では、ウォークテストにより検知エリアの設定作業を簡易化させた侵入検知装置が開示されている。ウォークテストでは、例えば、設定作業者が監視空間内を歩き回り、PIRセンサが人体を検知して発報したときの画像上の人像の位置を記録する。そして、記録した人像の位置の集合が画像上の検知エリアとして特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−23373号公報
【特許文献2】特開2006−178515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、人体検知を目的としたPIRセンサは、焦電素子を用いて構成される。焦電型PIRセンサは、一又は複数の検知ゾーンで構成された検知エリアが設定され、各検知ゾーンにおける熱エネルギーの変化を検知する。熱エネルギーの変化を検出するためには人体の移動に伴うある程度の時間を要するため、原理上、人体が通過した検知エリア内の位置と実際に人体が存在していた検知エリア内の位置(検知ゾーン)との間にずれが生じる場合もある。また、PIRセンサは人体の動きに対して連続的に発報し続けるわけではないため、移動する人体の位置(軌跡)を網羅的に記録することはできない。
したがって、特許文献2に記載の技術では、カメラで撮影した画像上のPIRセンサの検知エリアの位置(範囲)を正確に特定できないことがある。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、人体センサの検知空間に対応した画像上の検知エリアの位置を、設定作業者が適切に設定可能な画像監視センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の画像監視センサは、監視空間を撮影した画像を取得する画像取得部と、前記監視空間内の一部に設定された検知空間から得られる検知信号に応じて人体を検知する人体検知部と、を有し、前記画像取得部による取得画像を表示する画像表示部と、前記人体検知部による人体の検知レベルを表示するレベル表示部と、設定者により操作され、前記画像表示部に表示された画像上において所定の範囲を指定する操作部と、前記操作部による指定範囲を前記画像上での前記検知空間に対応する検知エリアとし、前記画像に対する前記検知エリアの位置関係を登録するエリア設定部と、を備えたことを特徴とする。
かかる構成によれば、検知エリアの設定作業者は画像上の人像の位置とそれに対応する検知レベルとを視認できるため、画像上の検知エリアの位置を容易かつ高精度に設定可能である。
【0008】
また、上記構成において、前記エリア設定部は、前記取得画像から抽出した人像の動きに応じて前記検知レベルの表示を制御する。特に、前記エリア設定部は、前記人像が停止しているときは当該人像が動いていたときの過去の検知レベルを表示させる。例えば、人像が停止中は前回表示した検知レベルを維持する。なお、ここでいう停止とは人像の動きが完全にない場合だけでなく、一定以上の検知レベルが得られない程度に小さい動きがある場合も含む。
かかる構成によれば、人体が存在するにもかかわらず検知レベルが低く表示されることで、当該人体がいる場所が検知エリア外であると設定作業者が誤認してしまうことを防ぐことができる。
【0009】
また、上記構成において、前記エリア設定部は、前記取得画像から抽出した人像の動きに応じて移動速度を算出し、当該移動速度に応じて前記画像表示部に表示する画像上の人像の位置を補正する。
かかる構成によれば、設定作業者のテスト歩行にかかる移動速度が大きく、人体検知部が人体を検知したタイミングと画像上の人像の位置とにズレが生じた場合であっても、検知タイミングに合わせた人像の位置が表示されるため、検知エリアをより高精度に設定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、人体センサの検知空間に対応した画像上の検知エリアの位置を、設定作業者が適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の画像監視センサを含む警備システムの概略全体構成図である。
【図2】撮像部10による撮影範囲とセンサ部12による検知範囲との位置関係の一例を示す模式図である。
【図3】警戒モード中の処理を示すフローチャートである。
【図4】登録モード中の処理を示すフローチャートである。
【図5】登録モード中における表示部18の表示内容の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態である画像監視センサについて、図面を参照して説明する。図1は、画像監視センサを用いて構成される警備システムの概略構成を示すブロック図である。この警備システムは、画像監視センサ1、警備装置2、操作表示器3、通信網4、監視センタ5を含んで構成される。画像監視センサ1が監視エリアへ侵入した不審者を検出すると、異常通報信号と共に監視エリアを撮影した画像が監視センタ5へ送信される。異常通報を受けた監視センタ5では、監視員が受信した画像を閲覧して現場の状況を把握し、警備員の派遣や関係機関への緊急連絡など適切な対処をとることができる。
【0013】
画像監視センサ1は、監視対象の物件に一又は複数設置され、例えば監視対象の家屋の庭や建物の外周に侵入した人物を検知する。なお、画像監視センサ1を屋内監視に用いてもよい。画像監視センサ1は監視エリア内にて不審者を検知すると、異常通報信号及びその前後所定期間に撮影した画像を警備装置2へ出力する。このように、画像監視センサ1は、監視エリア内の人体を検知するセンサ機能と、監視エリアを撮影するカメラ機能とを備える。
【0014】
警備装置2は、監視対象の物件に設置され、画像監視センサ1及び操作表示器3と無線/有線によって相互に通信可能に接続される。また、通信網4を介して遠隔の監視センタ5と接続され、画像監視センサ1からの異常通報信号及び画像を監視センタ5へ送信する。なお、警備装置2に画像監視センサ1のほか種々のセンサを接続させ、複数のセンサからの信号を統合判定して最終的な異常判定を行ってもよい。例えば、監視エリアへの入場を許可された人物が携帯すべきRFID(Radio Frequency Identification)タグを検知するためのリーダを設置し、リーダがタグを検知していない状態で画像監視センサ1が発報した場合に検知した人体を不審者と認識し、侵入異常と判定する。また、画像監視センサ1自体にリーダを備えて侵入異常を判定させてもよい。
【0015】
操作表示器3は、画像監視センサ1で撮影された監視画像を表示するモニタを備える。例えば監視対象の家屋の居住者等、警備システムのユーザは操作表示器3を使って監視エリアの状況を画像により確認することができる。また、操作表示器3には警備装置2に対する各種操作を行うためのボタン、スイッチ、テンキーなどの入力手段、及び音声ガイドや異常検知時の警報を出力するスピーカ等が設けられる。
【0016】
通信網4は、警備装置2と監視センタ5との間の通信経路であり、公衆回線網や移動体通信網などが適用される。
監視センタ5は、複数の物件を統括監視する。監視センタ5には監視員が駐在し、警備装置2から異常通報信号を受信すると、監視員が異常発生時の画像をモニタ表示して確認し、異常の要因を判断する。異常通報が不審者である場合には、警備員を派遣したり、警察等の第三者機関に連絡したり、状況に応じて適切に対処を行う。
【0017】
次に、図1を参照して、画像監視センサ1の構成を説明する。画像監視センサ1は、撮像部10、センサ部12、監視処理部14、記憶部16、表示部18、操作部20、通信部22を含んで構成される。
【0018】
撮像部10は、監視空間を撮影して画像を取得するカメラであり、例えば、CCD撮像素子等を用いて監視空間の画像信号を生成する。本実施形態では撮像部10による撮影範囲に含まれる空間を監視空間と称する。
【0019】
センサ部12は、監視空間の一部分に設定された検知空間から得られる赤外線(熱源)の変化を検出する赤外線センサを人体センサとして備え、その検知信号に応じて検知空間にて人体を検知する。本実施形態では特に焦電素子を用いたPIRセンサを用いる。PIRセンサは、検知空間内の赤外線をミラーやレンズなどの光学系により集光して焦電素子で受光する。例えば、焦電素子の前方にそれぞれ焦電素子を臨むように配置された複数のフレネルレンズからなる光学系が設けられる。光学系は複数のゾーンからの赤外線を焦電素子に入射させる構成とされ、これら複数のゾーンが一体となって焦電型PIRセンサの検知範囲を形成する。センサ部12は、PIRセンサを中心として水平方向、垂直方向にそれぞれ扇形の検知範囲を形成する。検知範囲の角度は撮像部10のカメラ画角より狭く設定される。例えば、水平方向の検知範囲を絞り、建物の外壁に沿って設定することで建物に近づいた人体だけを検知可能となり、建物へ侵入しようとしている不審者を効率よく検知できる。
【0020】
センサ部12は、PIRセンサが出力する検知信号の振幅に応じた量を人体の検知レベルとし、検知レベルを示す信号を監視処理部14へ出力する。監視処理部14ではこの検知レベルに基づき閾値判定して検知空間における人体の有無が判定される。なお、人体の存在可能性が認められる一定以上の検知レベルの場合のみ、監視処理部14へ出力するようにしてもよい。
【0021】
図2は、撮像部10による撮影範囲とセンサ部12による検知範囲との位置関係の一例を示す模式図である。図2(a)は、撮像部10の撮影範囲とセンサ部12の検知範囲とを斜め方向からみたときの位置関係を示している。また、図2(b)は、撮像部10の撮影範囲とセンサ部12の検知範囲とを撮像部10の撮影方向(視軸)に沿った水平面での位置関係を示している。図2において、102は撮像部10の画角であり、撮像部10が撮影範囲100を撮影するように設定される。また、視野角122はセンサ部12の視野角であり、検知範囲120に含まれる人体を検知可能なように設定される。図2に示すように、撮像部10の撮影範囲100はセンサ部12の検知範囲120を含む広範囲に設定され、監視員が画像による異常確認を行うときに発報要因や周囲の状況を容易に把握できる。
【0022】
撮像部10とセンサ部12とは必ずしも同じ位置でなくてもよいが、撮像部10の撮影範囲とセンサ部12の検知範囲とを一対一の関係とする場合は、比較的小型の画像監視センサとしてユニット化し一箇所に配置するのが好ましい。この場合、撮像部10の視軸の原点とセンサ部12の検知範囲の中心軸の原点とは略一致する。一方、撮像部10の視軸とセンサ部12の中心軸との間の角度は変更可能である。例えば、撮像部10のY軸方向の画角の大きさに対してセンサ部12のY軸方向の視野角の大きさがほぼ同等である場合などは、両者間のパン方向(X軸方向)の角度θを変更可能とし、チルト方向(Y軸方向)には固定とする。このように角度を変更可能とすることで、様々に異なり得る監視対象や設置位置に対して、監視空間を好適に設定することができる。
【0023】
監視処理部14はマイクロプロセッサ等を用いて構成され、実行されるプログラムに応じて撮像部10が撮影した監視画像及びセンサ部12からの信号についての処理を行う。監視処理部14は、異常監視手段30及びエリア設定手段32として機能する。異常監視手段30は画像監視センサ1を警戒モードで動作させ、センサ部12からの信号に基づいて侵入者を検知し、侵入異常を判定して通報および警報する監視処理を行う。一方、エリア設定手段32は画像監視センサ1を登録モードで動作させ、エリア登録処理を行う。エリア登録処理では、ウォークテストに伴うセンサ部12からの信号及び撮像部10からの信号に基づいて表示部18にエリア設定用の画像等を表示し、操作部20を介した設定作業者の操作入力に基づいて画像上での検知エリアの位置(撮像部10の撮影範囲とセンサ部12の検知範囲との位置関係に相当)を特定する。そして、撮影した監視画像に対する検知エリアの位置関係を記憶部16に登録する。監視処理の動作およびエリア登録処理の動作については、後に詳述する。
【0024】
記憶部16は、監視処理部14にて実行される各種プログラムやそれに必要なデータが格納される。特に記憶部16は、エリア設定手段32によって登録された検知エリアの画像上の位置情報を記憶する。検知エリアの位置情報は、例えば、撮像部10の撮影画像を二次元座標で表現した場合の所定範囲を示す座標データとして表すことができる。
【0025】
表示部18は、撮像部10で撮影した監視画像を表示する画像表示部40と、センサ部12による検知レベルを表示するレベル表示部42とで構成される。画像表示部40は、液晶ディスプレイ等の画像表示手段であり、登録モードにて設定作業者が画像を確認するために利用される。レベル表示部42は、例えばLED等の表示ランプであり、登録モードにて設定作業者がセンサ部12による検知レベルがどの程度であるかを多段階で認識可能とする。レベル表示部42は画像表示部40の表示画像上にメーター表示として重畳表示させてもよく、検知レベルの表示の仕方については特に限定されるものではない。
【0026】
操作部20は、例えばキーボード、ポインティングデバイス、ボタン等で構成され、設定作業者が警戒モードと登録モードとを切替操作したり、登録モードにおいて、各種の設定、指示等を監視処理部14に入力したりする手段である。特に操作部20は、登録モードにおいて、設定作業者が画像表示部40の表示画像上に検知エリアの位置を指定する操作の入力に利用される。なお、操作部20は画像表示部40と共にタッチパネルディスプレイとして構成してもよい。また、表示部18及び操作部20は、PDA(Personal Digital Assistants)等の携帯情報端末などにより画像監視センサ1とは別体構成とし、登録モードにてエリア設定を行う際に画像監視センサ1と無線または有線で接続させてもよい。
通信部22は、警備装置2との通信インタフェースである。
【0027】
次に、監視処理部14による警戒モード及び登録モードでの処理について説明する。
図3は、警戒モード中の処理を示すフローチャートである。監視処理部14は、センサ部12から入力されるPIRセンサの検知レベル(P値)を監視し(S300)、P値が人体の存在を認める発報基準である閾値Th以上となると、侵入異常と判定する(S302)。この場合、監視処理部14は、異常判定したときの撮影画像(異常画像)にPIRセンサの検知エリアを合成する(S304)。具体的には、記憶部16に登録されている検知エリアの位置情報に基づき、画像上において検知エリアを識別可能に表示した合成画像を生成する。例えば合成画像は、検知エリアを示す枠を重畳した画像とする。監視処理部14は、侵入異常時に監視センタ5へ送信すべき所定期間内の各フレームの画像に対してそれぞれ合成画像を生成し、警備装置2を介して、侵入異常の発生を示す侵入異常信号と共に合成画像を順次監視センタ5へ送信する(S306)。これにより監視センタ5では、監視員が異常発生時の画像上で検知エリアを視認することができ、発報要因の判断を容易に行える。なお、監視センタ5へは異常画像と共に検知エリアの位置情報を送信し、合成画像の生成は監視センタ5で行う構成としてもよい。
【0028】
一方、検知レベル(P値)が閾値Th未満である場合には(S300のNo)、監視処理部14は監視に支障を来たすような障害物の有無を判断するため、監視画像の変化の有無を判定する(S308)。具体的には、過去の画像と現在の画像とを比較して変化領域を抽出し、一定時間動かない所定以上の大きさの変化領域が生じた場合に障害物を示す画像変化ありと判定する(S308のYes)。障害物を認識した場合、当該変化領域の画像上の位置がPIRセンサの検知エリアと重複しているか否かを判定する(S310)。変化領域が検知エリアと重複している場合は障害物異常と判定するとともに(S312)、S304と同様に異常画像に検知エリアを合成する(S314)。そして、警備装置2を介して、障害物の発生を示す障害物異常信号と共に合成画像を監視センタ5へ送信する(S316)。このようにS310の重複判定を行うことで、センサ部12による人体検知に支障を来たす障害物が存在する場合に限定して障害物異常と判定できるが、検知エリア外であっても障害物を検知したい場合にはS310の処理を省略すればよい。
【0029】
次に、登録モード中の処理について説明する。図4は、登録モード中の処理を示すフローチャートである。また図5は、登録モード中における表示部18の表示内容の一例を示す模式図である。設定作業者は、操作部16を操作することで監視処理部14を登録モードに切り替え、監視空間内を動き回るテスト歩行によりセンサ部12に検知されるか否かをチェックするウォークテストを実施する。監視処理部14は、撮像部10から入力された撮影画像を画像表示部40に表示すると共に、センサ部12から入力されたPIRセンサの検知レベルをレベル表示部42に表示する。図5の例では、レベル表示部42は検知レベルの複数の段階に応じてLEDを点灯させることで検知レベルを明示する構成であり、例えば検知レベルが最高レベルである場合には全ての段階のLEDを点灯させる。設定作業者は表示部18を通してウォークテスト中の人体の位置、及びそのときのPIRセンサの検知レベルを視認する。設定作業者はこの工程を繰り返すことで、ウォークテストによる人体の移動範囲と各位置でのPIRセンサの検知レベルを把握し、画像上の検知エリアの位置を特定する。そして操作部20を介して表示画像上に検知エリア50の位置を指定する。監視処理部14は、指定された画像上の検知エリアの位置を記憶部16に登録し、登録モードを終了する。
【0030】
以下、登録モード中における表示部18への表示処理について、図4を用いて詳細に説明する。登録モード中の本処理は、設定作業者により検知エリアが指定され記憶部16に登録するか、設定作業者により登録モードが中止された場合に終了する。監視処理部14は、ウォークテスト中に入力された撮影画像に対して人体を示す人像の抽出処理を行い、人像が抽出されたか否かを判定する(S400)。人像の抽出処理は、例えば、背景画像(過去の画像)と現在の画像とを比較して変化領域を抽出し、この変化領域が人体に起因する人像であるか否かを変化領域の大きさや形状、動き等により判定する。人像が抽出されていない場合は(S400のNo)、撮影画像を画像表示部40に表示するとともに(S410)、このときセンサ部12から入力されるPIRセンサの検知レベルをレベル表示部42に表示する(S412)。なお、人像が抽出されていない場合は検知レベルの表示を行わなくてもよい。
【0031】
人像が抽出された場合(S400のYes)、監視処理部14は、当該人像が動いているか停止しているかを判定する(S402)。例えば、過去数フレームの画像における人像と位置がほぼ一致している場合には停止中と判断し、位置が異なる場合には移動中と判断する。
人像が移動中であると判断した場合(S402のNo)、監視処理部14は続いて画像上における人像位置の補正処理を行う(S404〜S406)。
【0032】
この補正処理は、ウォークテストを実施する設定作業者の移動速度によって生じた位置ずれを吸収するために行う。ウォークテストで得られた画像上の人像の位置とセンサ部12の検知データとは、移動速度が大きいほど正確に対応しない。つまり、画像上の人像の位置は撮影時点での人体の位置そのものを示すが、センサ部12のPIRセンサは原理上一定の遅延が生じるため、移動速度が大きい場合には遅延時間分の移動量だけ人像の位置がずれてしまうことになる。そこで、監視処理部14は、現在の画像と過去の画像(例えば1又は数周期前の画像)との間で人体の位置の変化量及び変化方向を求め、この変化量および撮影時刻の差から設定作業者の移動速度を算出すると共に、この変化方向を移動方向と推定する。
【0033】
監視処理部14は、画像から抽出した人像に対し、推定した移動方向と逆方向に、移動速度に比例した距離だけ位置補正を行い、画像における人像の補正位置を算出する(S404)。そして、算出した画像上の補正位置に、人体を示す補正人像を重畳させた合成画像を生成する(S406)。補正人像は元の人像を切り出して貼り付けてもよいし、元の人像とは別に補正人像であることを明示して合成してもよい。また、実際の人体の位置である旨をマーカー表示するだけでもよい。なお、移動速度が小さい場合は位置補正を行わなくてもよい。
続いて監視処理部14は、作成した補正画像を画像表示部40に表示すると共に(S410)、このときセンサ部12から入力されるPIRセンサの検知レベルをレベル表示部42に表示する(S412)。
【0034】
このように、ウォークテストを実施する設定作業者の移動速度および移動方向に応じて画像上の人像の位置を補正することで、センサ部12が人体の検知信号を得たとき実際に人体が存在する位置を画像上で正確に示すことができる。
【0035】
S402の判定処理において画像から抽出した人像が停止中であると判断した場合(S402のYes)、監視処理部14は、この画像を撮影したときセンサ部12から入力された検知レベルを破棄し、前回の検知レベル表示に採用した検知レベルを当該画像に対応する検知レベルとして維持する(S408)。上述したように、センサ部12のPIRセンサは、人体の移動に応じた熱源の変化量に基づき人体の検知レベルを出力する。たとえセンサ部12の検知空間に人体が存在したとしても、その人体が静止している状態であれば熱源の変化はほぼ生じないため検知レベルは高くならない。そこで本実施形態の画像監視センサ1は、有意な検知レベルを得られない程度に人体が移動していない場合、当該人体を抽出した画像に対応する検知レベルを、過去に得た人体移動中の検知レベルに補正する。
続いて監視処理部14は、撮影画像を画像表示部40に表示すると共に(S410)、前回表示したPIRセンサの検知レベルをレベル表示部42に継続して表示する(S412)。
【0036】
このように、画像中の人体の移動有無に応じて、撮影時の検知レベルではなく人体が移動していた過去の検知レベルを表示画像に対応させてレベル表示することで、実際に人体が写っているにもかかわらず検知レベルが不適切に過小表示(例えば検知レベル「0」)されてしまい、今人体がいる場所がセンサ部12の検知範囲外であると設定作業者が誤認することを防止できる。
【0037】
なお、上記実施形態において、センサ部12はPIRセンサに限らず他の赤外線センサを用いて構成してもよい。また、空間に存在する人体によって生じる状態変化を検知可能な他のセンサ(いわゆる空間センサ)を用いて構成することも可能であり、例えば、超音波センサやマイクロ波センサなどを用いることもできる。
【0038】
また、上記実施形態では、ウォークテストを行う人体の移動速度および移動方向に応じて画像上における人像の位置を補正する処理を説明したが、本処理を省略して構成することもできる。この場合、図4の登録モード中の処理においてS404〜S406の補正処理は省略され、S402で移動中と判断された場合にはS410に移行する。本処理を省略する場合は、ウォークテストでは歩行速度を小さくすることをルール決めする等、人体検知タイミングに対する人像位置のずれが生じないようにしておくとよい。
【0039】
また、上記実施形態では、ウォークテストを行う人体が移動中であるか否かに応じて検知レベルの補正を行う処理を説明したが、本処理を省略して構成することもできる。この場合、図4の登録モード中の処理においてS408の処理は省略され、S402で停止中と判断された場合にはS410に移行する。
その他、本発明は上記実施形態の構成および処理に限定されるものではなく、本発明の範囲内で実施される形態に併せて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 画像監視センサ、2 警備装置、3 操作表示器、4 通信網、5 監視センタ、10 撮像部、12 センサ部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空間を撮影した画像を取得する画像取得部と、前記監視空間内の一部に設定された検知空間から得られる検知信号に応じて人体を検知する人体検知部と、を有する画像監視センサにおいて、
前記画像取得部による取得画像を表示する画像表示部と、
前記人体検知部による人体の検知レベルを表示するレベル表示部と、
設定者により操作され、前記画像表示部に表示された画像上において所定の範囲を指定する操作部と、
前記操作部による指定範囲を前記画像上での前記検知空間に対応する検知エリアとし、前記画像に対する前記検知エリアの位置関係を登録するエリア設定部と、
を備えたことを特徴とする画像監視センサ。
【請求項2】
前記エリア設定部は、前記取得画像から抽出した人像の動きに応じて前記検知レベルの表示を制御する、請求項1に記載の画像監視センサ。
【請求項3】
前記エリア設定部は、前記人像が停止しているときは当該人像が動いていたときの過去の検知レベルを表示させる、請求項2に記載の画像監視センサ。
【請求項4】
前記エリア設定部は、前記取得画像から抽出した人像の動きに応じて移動速度を算出し、当該移動速度に応じて前記画像表示部に表示する画像上の人像の位置を補正する、請求項1乃至3のいずれかに記載の画像監視センサ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−155530(P2012−155530A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14022(P2011−14022)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】