説明

画像表示装置及びその修正方法

【課題】あらゆる表示画像において高い表示品質を確保することが可能な画像表示装置及びその修正方法を提供する。
【解決手段】マトリクス状に配置された複数の発光画素と、発光画素列ごとに対応して配置された複数の信号線12とを備えた画像表示装置1であって、前記複数の発光画素のそれぞれは、信号線12から各発光画素の発光を決定する信号電圧がゲートに印加されることにより信号電圧に応じたドレイン電流を発生する駆動トランジスタ22と、信号線12と駆動トランジスタ22のゲート端子との間に挿入された選択トランジスタと、ドレイン電流が流れることにより発光する発光素子とを備え、発光画素11Pにおいて、選択トランジスタのソース−ドレイン間は固定抵抗体25であり、信号線12と駆動トランジスタ22のゲート端子とは固定抵抗体25を介して常時導通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置及びその修正方法に関し、特に画素ごとに駆動回路を有する画像表示装置及びその修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流駆動型の発光素子を用いた画像表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と記す。)を用いた有機ELディスプレイが知られている。この有機ELディスプレイは、視野角特性が良好で、消費電力が少ないという利点を有するため、次世代のFPD(Flat Panal Display)候補として注目されている。
【0003】
通常、画素を構成する有機EL素子はマトリクス状に配置される。例えば、アクティブマトリクス型の有機ELディスプレイでは、複数の走査線と複数のデータ線との交点に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が設けられ、このTFTに保持容量素子(コンデンサ)、駆動トランジスタのゲート、及び補償回路などが接続されている。そして、選択した走査線を通じてこのTFTをオンさせ、データ線からのデータ信号等を駆動トランジスタ、保持容量素子及び補償回路に入力し、その駆動トランジスタ及び保持容量素子及び補償回路によって有機EL素子の発光輝度及び発光タイミングを制御する。この画素駆動回路の構成により、アクティブマトリクス型の有機ELディスプレイでは、次の走査(選択)まで有機EL素子を発光させることが可能であるため、デューティ比が上がってもディスプレイの輝度減少を招くようなことはない。
【0004】
しかしながら、従来の有機ELパネルでは、画素駆動回路を構成する素子および配線のうち何れか1つでも異常があると、駆動トランジスタのゲートには正確な信号電圧が供給されない場合がある。これにより、駆動トランジスタが異常な電流値を流し続ける(輝点)あるいは電流を流さない(滅点)という不具合が発生する。これは、複雑な画素駆動回路構成を必要とするアクティブマトリクス型の有機ELディスプレイに特有の問題である。また、画素駆動回路構成が複雑になるほど、また、発光画素数が増加するほど、薄膜積層構造の微細化が必要とされるので、画素駆動回路素子や配線の短絡や開放といった電気的な不具合が発生する。
【0005】
これを改善するために、輝点より滅点の方が目立たないという観点から、製造時に画素駆動回路の一部をレーザー加工などにより切断し、駆動素子を駆動させないことにより輝点化を滅点化するという手法をとることが一般的である。
【0006】
特許文献1では、画素駆動回路素子や配線の形成時に、不具合が生じた発光画素を修正する方法が提案されている。回路素子の短絡等により常に発光状態となり輝点化された不良発光画素を修正するために、全ての発光画素領域に、他の導電部及び配線から離間して電気接続された非重畳部が設けられている。不良発光画素については、この非重畳部にレーザーを照射することにより、当該非重畳部を切断する。これにより、不良画素は、電気信号の伝達が遮断され、しかも、レーザー照射によるダメージを受けることなく滅点化される。
【0007】
これにより、輝点化していた不良画素による表示品質の低下を防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−203636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された画像表示装置の修正方法に代表されるように、輝点化していた不良画素を滅点化する方法では、修正後に滅点画素が残る。この場合、明るい表示画像に対しては、その中に滅点画素が存在するので表示品質が改善されず、むしろ滅点化の修正により表示品質が低下してしまう。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、あらゆる表示画像においても高い表示品質を確保することが可能な画像表示装置及びその修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の画像表示装置は、マトリクス状に配置された複数の発光画素と、発光画素列ごとに対応して配置された複数の信号線とを備えた画像表示装置であって、前記複数の発光画素のそれぞれは、前記信号線から発光画素の発光を決定する信号電圧がゲートに印加されることにより、前記信号電圧に応じたドレイン電流を発生する駆動トランジスタと、前記信号線と前記駆動トランジスタのゲート端子との間に挿入された選択トランジスタと、前記ドレイン電流が流れることにより発光する発光素子とを備え、前記複数の発光画素のうち少なくとも一の発光画素において、前記選択トランジスタのソース−ドレイン間は固定抵抗体に変成されており、前記信号線と前記駆動トランジスタのゲート端子とは前記固定抵抗体を介して常時導通していることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、例えば、駆動回路形成時に選択トランジスタの不具合により動作異常と判断された発光画素、または駆動トランジスタのゲート配線に接続された付加回路のオープン不良により動作異常と判断された発光画素において、当該選択トランジスタのソース−ドレイン間が固定抵抗体に変成されている。従って、上記動作異常であった発光画素には、当該発光画素に接続された信号線から、当該発光画素の属する発光画素列に供給される複数の発光画素の信号電圧が順次リアルタイムで印加される。この場合、上記動作異常であった発光画素は、1フレーム期間において、上記発光画素列の各発光輝度が時間平均された発光輝度で発光しているように見える。よって、駆動回路の形成時に選択トランジスタや付加回路に不具合が発生していることにより駆動トランジスタのゲート端子に信号電圧が供給されない状態である発光画素の発光動作を、発光画素列の発光輝度が時間平均された発光輝度で発光することが可能となる。つまり、発光画素の滅点化が回避され、あらゆる表示画像において高い表示品質を確保することが可能となる。
【0013】
また、前記固定抵抗体は、前記一の発光画素の有する前記選択トランジスタのソース−ドレイン間に形成された半導体からなるチャネル層に、レーザーが照射されることにより変成されていてもよい。
【0014】
半導体からなるチャネル層に所定条件のレーザーを照射することにより、他の回路素子にダメージを与えることなく、チャネル層は局所的に加熱される。この加熱により、チャネル層を構成する半導体のキャリア濃度や結晶構造を変化させることが可能となる。これにより、チャネル層の半導体は抵抗値が低下し固定抵抗体へと変成することが可能となる。
【0015】
また、前記複数の発光画素のそれぞれは、さらに、前記信号線からの前記信号電圧に対応した電圧を保持することが可能な付加回路を備え、前記一の発光画素において、前記駆動トランジスタのゲート端子と前記選択トランジスタのソース及びドレインの一方とを電気接続するゲート配線と、前記付加回路との電気接続が遮断されていてもよい。
【0016】
これにより、例えば、付加回路の不具合により動作異常と判断された発光画素において、当該選択トランジスタのソース−ドレイン間が固定抵抗体に変成されており、しかも付加回路とゲート配線との電気接続は遮断されている。従って、上記動作異常であった発光画素には、当該発光画素に接続された信号線から、当該発光画素の属する発光画素列に供給される複数の発光画素の信号電圧が順次リアルタイムで印加される。しかも駆動トランジスタのゲート端子には付加回路からの異常保持電圧が印加されない。よって、駆動回路の形成時に付加回路に不具合が発生していることにより駆動トランジスタのゲート端子に異常信号電圧が供給される状態である発光画素の発光動作を、発光画素列の発光輝度が時間平均された発光輝度で発光することが可能となる。
【0017】
また、前記一の発光画素において、前記ゲート配線と前記付加回路との接続部にレーザーが照射されることにより前記電気接続が遮断されていてもよい。
【0018】
これにより、他の回路素子にダメージを与えることなく、高精度な接続部の切断が可能となる。また、レーザー照射を用いることにより、発光画素ごとに切断工程を実現することができ修正工程の簡略化を図ることができる。
【0019】
また、本発明は、このような特徴的な手段を備える画像表示装置として実現することができるだけでなく、上述した画像表示装置の製造段階または完成後において、画像表示装置を修正する方法として実現することができる。
【0020】
具体的には、本発明の半導体装置の修正方法は、発光を決定する信号電圧が信号線からゲート端子に印加されることにより前記信号電圧に応じたドレイン電流に変換する駆動トランジスタ及び前記信号線と前記駆動トランジスタのゲート端子との間に挿入された選択トランジスタを有する駆動回路層と、前記ドレイン電流が流れることにより発光する発光素子を有する発光層とを備えた複数の発光画素がマトリクス状に配置された画像表示装置の修正方法であって、前記駆動回路層の形成時に、前記発光画素の有する前記駆動トランジスタのゲート端子に、前記発光画素に対応した前記信号電圧が正常に印加されるかを、全発光画素について検査する検査ステップと、前記検査ステップで前記発光画素に対応した前記信号電圧が正常に印加されていないと判断された一の発光画素の前記選択トランジスタのソース−ドレイン間を固定抵抗体に変成する変成ステップを含むことを特徴とする。
【0021】
この方法によれば、例えば、駆動回路形成時に選択トランジスタの不具合により動作異常と判断された発光画素、または駆動トランジスタのゲート配線に接続された付加回路のオープン不良により動作異常と判断された発光画素において、当該選択トランジスタのソース−ドレイン間が固定抵抗体となる。従って、上記動作異常であった発光画素には、当該発光画素に接続された信号線から、当該発光画素の属する発光画素列に供給される複数の発光画素の信号電圧が順次リアルタイムで印加される。この場合、上記動作異常であった発光画素は、1フレーム期間において、上記発光画素列の各発光輝度が時間平均された発光輝度で発光しているように見える。よって、例えば、駆動回路の形成時に選択トランジスタに不具合が発生していることにより、または、付加回路のオープン不良により駆動トランジスタのゲート端子に信号電圧が供給されない状態である発光画素の発光動作を、発光画素列の発光輝度が時間平均された発光輝度で発光することが可能となる。つまり、発光画素の滅点化が回避され、あらゆる表示画像において高い表示品質を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の画像表示装置及びその修正方法によれば、駆動回路の形成時には動作異常であった発光画素の有する選択トランジスタのソース−ドレイン間が固定抵抗体に変成されている。よって、上記動作異常であった発光画素は、常時輝点化または常時滅点化状態が回避され、当該発光画素が接続された信号線から供給される複数の信号電圧による平均的な発光状態となり、あらゆる表示画像において高い表示品質を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。(b)は、本発明の実施の形態に係る発光画素の主要な回路構成図である。
【図2】(a)は、本発明の実施の形態に係る、選択トランジスタが固定抵抗体に変成された発光画素の回路構成図である。(b)は、本発明の実施の形態に係る、選択トランジスタが固定抵抗体に変成された発光画素の断面図の一例である。
【図3】正常動作する発光画素の1フレーム期間における発光動作を説明する動作タイミングチャートである。
【図4】選択トランジスタが固定抵抗体に変成された発光画素の1フレーム期間における発光動作を説明する動作タイミングチャートである。
【図5】(a)は、本発明の実施の形態に係る画像表示装置の修正方法を説明する駆動回路層形成時の画素上面図である。(b)は、本発明の実施の形態に係る画像表示装置の修正方法を説明する駆動回路層形成時の構造断面図である。
【図6】本発明の画像表示装置の修正方法を示す動作フローチャートである。
【図7】本発明の画像表示装置を内蔵した薄型フラットTVの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態および各図面において、同じ構成要素には同じ符号を付し説明する。また、以下では、上面発光方式の陽極(アノード)を下面に、また、陰極(カソード)を上面とする有機EL素子からなる画像表示装置を例に説明するが、これに限られない。
【0025】
(実施の形態)
本実施の形態における画像表示装置は、複数の発光画素がマトリクス状に配置され、当該複数の発光画素のそれぞれは、信号線からの信号電圧に応じたドレイン電流を発生する駆動トランジスタと、当該信号線と駆動トランジスタのゲート端子との間に挿入された選択トランジスタと、上記ドレイン電流が流れることにより発光する発光素子とを備え、当該複数の発光画素のうち少なくとも一の発光画素は、選択トランジスタのソース−ドレイン間が固定抵抗体である。これにより、駆動回路の形成時に正常動作しない発光画素の発光動作を、発光画素列の発光輝度が時間平均された発光輝度で発光することが可能となる。つまり、発光画素の滅点化が回避され、あらゆる表示画像において高い表示品質を確保することが可能となる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。同図における画像表示装置1は、表示パネル10と、制御回路20とを備える。表示パネル10は、複数の発光画素11と、発光画素列ごとに配置された複数の信号線12と、発光画素行ごとに配置された複数の走査線13と、走査線駆動回路14と、信号線駆動回路15とを備える。
【0028】
発光画素11は、表示パネル10上に、マトリクス状に配置されている。
【0029】
走査線駆動回路14は、各走査線13へ走査信号を出力することにより、発光画素の有する回路素子を駆動する。
【0030】
信号線駆動回路15は、信号線12へ信号電圧及び基準電圧を出力することにより、輝度信号に対応した発光画素の発光を実現する。
【0031】
制御回路20は、走査線駆動回路14から出力される走査信号の出力タイミングを制御する。また、制御回路20は、信号線駆動回路15から出力される信号電圧を出力するタイミングを制御する。
【0032】
図1(b)は、本発明の実施の形態に係る発光画素の主要な回路構成図である。同図に記載された発光画素11は、正常動作が可能な発光画素であり、駆動回路層11A及び発光層11Bで構成されている。駆動回路層11Aは、選択トランジスタ21と、駆動トランジスタ22と、保持容量素子23とを備える。そして、選択トランジスタ21のドレイン電極は信号線12に、選択トランジスタ21のゲート電極は走査線13に、さらに、選択トランジスタ21のソース電極は、保持容量素子23及び駆動トランジスタ22のゲート電極に接続されている。また、駆動トランジスタ22のドレイン電極は電源Vddに接続され、ソース電極は発光層11Bのアノードに接続されている。
【0033】
この構成において、走査線13に走査信号が入力され、選択トランジスタ21をオン状態にすると、信号線12を介して供給された信号電圧が保持容量素子23に書き込まれる。そして、保持容量素子23に書き込まれた保持電圧は、1フレーム期間を通じて保持され、この保持電圧により、駆動トランジスタ22のコンダクタンスがアナログ的に変化し、発光階調に対応した駆動電流が発光層11Bのアノードに供給される。さらに、発光層11Bのアノードに供給された駆動電流は、発光層11Bの有機EL素子24及びカソードへと流れる。これにより、発光層11Bの有機EL素子24が発光し画像として表示される。
【0034】
なお、駆動回路層11Aは、上述した回路構成に限定されない。つまり、選択トランジスタ21、駆動トランジスタ22及び保持容量素子23は、輝度信号の電圧値に応じた駆動電流を発光層11Bに流すために必要な回路構成要素であるが、上述した形態に限定されない。また、上述した回路構成要素に、別の回路構成要素が付加される場合も、本発明に係る駆動回路層11Aに含まれる。例えば、駆動トランジスタ22のゲート配線に接続された保持容量素子23は付加回路として機能するが、付加回路は、駆動トランジスタ22の閾値電圧を補正することを目的とした選択トランジスタ及びそれを制御する制御線などを備えていてもよい。
【0035】
図2(a)は、本発明の実施の形態に係る、選択トランジスタが固定抵抗体に変成された発光画素の回路構成図である。同図に記載された画像表示装置1は、発光画素11Pを備える。発光画素11Pは、駆動回路層11Aの形成時において、駆動回路層11Aを構成する駆動トランジスタ22を除く回路素子または配線の不具合により動作異常と判断された発光画素である。この動作異常の原因としては、保持容量素子23のオープン・ショート不良、選択トランジスタ21のオープン不良などが挙げられる。
【0036】
これに対し、発光層11Bの形成前には、発光画素11Pの駆動トランジスタ22のゲート配線と保持容量素子23との電気接続が遮断され、選択トランジスタ21が固定抵抗体25に変成されている。
【0037】
図2(b)は、本発明の実施の形態に係る、選択トランジスタが固定抵抗体に変成された発光画素の断面図の一例である。同図に記載された発光画素11Pは、基板100と、駆動回路層11Aと、発光層11Bと、透明封止膜110とを備える。
【0038】
基板100は、例えば、ガラス基板である。また、基板100は、樹脂からなるフレキシブル基板を用いることも可能である。基板100は、駆動回路層11Aとともに、薄膜トランジスタ(TFT)基板を構成する。なお、図2に記載されたようなトップエミッション構造の場合には、基板100は透明である必要はないので、非透明の基板、例えば、シリコン基板を用いることもできる。
【0039】
発光画素11Pの有する駆動回路層11Aは、基板100の上に形成された図示されていない信号線12と、駆動トランジスタ22と、図示されていない保持容量素子23と、固定抵抗体25と、ゲート絶縁膜201と、層間絶縁膜202と、平坦化膜203と、ドレイン211と、ソース212と、ドレイン電極213と、ソース電極214と、ゲート電極215とを備える。
【0040】
信号線12は、ドレイン電極213と接続されている。正常動作する発光画素11では、信号線が選択トランジスタ21のドレイン電極213と接続されていることにより、当該発光画素に対応した信号電圧が駆動トランジスタのゲート端子に印加され、有機EL素子は正常発光タイミング及び正常発光輝度にて発光する。
【0041】
これに対し、発光画素11Pは、駆動回路の形成時に駆動トランジスタ以外の回路素子または配線に不具合が発生していることにより駆動トランジスタのゲート端子には正常な信号電圧が供給されない状態である。
【0042】
ドレイン211、ソース212、ドレイン電極213、ソース電極214及びゲート電極215は、正常動作する発光画素11においては、選択トランジスタ21の構成要素である。
【0043】
これに対し、発光画素11Pでは、ドレイン211とソース212との間には、チャネル層ではなく固定抵抗体25が形成されているので、信号線12と駆動トランジスタ22のゲート端子との間には、選択トランジスタ21ではなく、固定抵抗体25が直列に挿入されている。
【0044】
固定抵抗体25は、ゲート絶縁膜201の上に形成され、選択トランジスタ21のチャネル層が変成されたものであり、例えば、リン(P)が拡散した非晶質シリコンまたは、リン(P)が拡散した微結晶シリコンであり、膜厚は50nmである。選択トランジスタ21のチャネル層は、例えば、ノンドープの非晶質シリコンであり、これを固定抵抗体に変成する方法については、後述する画像表示装置の修正方法にて説明する。
【0045】
ドレイン211及びソース212は、ゲート絶縁膜201の上に形成され、例えば、リン(P)をドープした非晶質シリコンであり、膜厚は150nmである。
【0046】
ドレイン電極213及びソース電極214は、それぞれ、ドレイン211及びソース212の上に形成され、例えば、モリブデン(Mo)とタングステン(W)との合金/アルミニウム(Al)/モリブデン(Mo)とタングステン(W)との合金の3層構造であり、膜厚は100nmである。
【0047】
ゲート電極215は、基板100の上に形成され、例えば、モリブデン(Mo)とタングステン(W)との合金からなり、膜厚は100nmである。
【0048】
ゲート絶縁膜201は、ゲート電極215形成後、基板100の上に形成され、例えば、SiN、SiONまたはSiO2からなり、膜厚は150nmである。
【0049】
ゲート配線は、図2(b)において図示していないが、ソース電極214と駆動トランジスタのゲート端子とが接続されるよう、層間絶縁膜202の内部及びその表面上に形成されている。
【0050】
また、保持容量素子23は、図2(b)において図示していないが、駆動回路層11Aにおいて積層方向に対向する2つの電極層で挟まれた平行平板型の容量素子であり、保持電圧を駆動トランジスタ22のゲート端子に印加することが可能な付加回路として機能する。正常動作する発光画素11では、上記電極層のうち一方は、駆動回路層11A内においてゲート配線に接続されている。また、上記電極層のうち他方は電源Vddに接続されている。電極層の材料としては、例えば、モリブデン(Mo)とタングステン(W)との合金、または、MoとWとの合金/アルミニウム(Al)/MoとWとの合金の積層構造であり、膜厚は、例えば、150nmである。
【0051】
これに対し、発光画素11Pでは保持容量素子23が2つの電極間でショートしている場合が想定される。この場合には、保持容量素子23とゲート配線とが接続されたままの状態では、電源Vddの電圧が常時駆動トランジスタ22のゲート端子に印加されるため、発光画素11Pは常時輝点状態となってしまう。
【0052】
この状態を回避するため、発光画素11Pでは、選択トランジスタ21のチャネル層を固定抵抗体に変成するだけでなく、保持容量素子23とゲート配線との電気接続を遮断するため、当該電気接続のための配線が切断されている。
【0053】
なお、発光画素11Pのゲート配線と保持容量素子23との接続配線は、断線していなくてもよい場合がある。例えば、保持容量素子23とゲート配線との電気接続が駆動回路形成時に遮断されている場合、または、選択トランジスタ21の動作異常であって保持容量素子23を含む付加回路は正常動作している場合などが挙げられる。これらの場合には、選択トランジスタ21のチャネル層を固定抵抗体に変成することのみで、発光画素11Pの常時輝点化及び常時滅点化を回避することが可能となる。
【0054】
駆動トランジスタ22は、基板100の上に形成されたTFTである。駆動トランジスタ22は、ゲート絶縁膜201、ドレイン221、ソース222、ドレイン電極223、ソース電極224、ゲート電極225、ドレイン221及びソース222に接触して形成された半導体層226から構成される。上述した各構成要素の材料および膜厚については、選択トランジスタ21の構成要素とほぼ同様である。
【0055】
基板100の上には、駆動トランジスタ22の形成後、層間絶縁膜202及び平坦化膜203が形成されている。
【0056】
層間絶縁膜202は、固定抵抗体25、ドレイン電極213、ソース電極214、駆動トランジスタ22及び保持容量素子23を覆うように形成されており、これにより、上記回路素子と、信号線12及びゲート配線などの回路配線とが離間して配置されることが可能となる。
【0057】
平坦化膜203は、その表面が平坦化されており、これにより、駆動回路層11Aの上に積層される多層膜からなる発光層11Bの形成を可能にする。
【0058】
なお、層間絶縁膜202と平坦化膜203との間には、保護膜が形成されていてもよい。保護膜は、駆動回路層11A内に形成された回路素子及び回路配線が外部の環境変化を受けて劣化してしまうことを防止する機能を有し、上記回路素子と、信号線12及びゲート配線などの回路配線とを覆うように形成される。
【0059】
層間絶縁膜202、保護膜及び平坦化膜203の材料としては、例えば、シリコン酸化膜(SiOx)やシリコン窒化膜(SiN)であり、例えば、CVD法やスパッタリング法などにより形成される。また、形成された膜を、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などにより平坦化することにより、平坦化膜203が形成される。
【0060】
なお、層間絶縁膜202及び保護膜は、必ずしも表面を平坦化する必要はない。層間絶縁膜202及び保護膜の平坦度は、それぞれの表面上を回路配線が連続して形成できる程度に平坦であればよい。
【0061】
発光層11Bは、陽極103と、正孔注入層104と、正孔輸送層105と、有機発光層106と、バンク層107と、電子注入層108と、透明陰極109とを備える。
【0062】
図2(b)に記載された発光画素11Pは、トップエミッション構造を有している。つまり、発光層11Bに電圧を印加すると、有機発光層106で光が生じ、透明陰極109及び透明封止膜110を通じて光が上方に出射する。また、有機発光層106で生じた光のうち下方に向かったものは、陽極103で反射され、透明陰極109及び透明封止膜110を通じて光が上方に出射する。
【0063】
陽極103は、駆動回路層11Aの平坦化膜203の表面上に積層され、透明陰極109に対して正の電圧を発光層11Bに印加する電極である。陽極103と駆動トランジスタ22のソース電極224とは駆動回路層11A内に形成されたビアAPで接続されている。陽極103を構成する陽極材料としては、例えば、反射率の高い金属であるAl、Ag、またはそれらの合金が好ましい。また、陽極103の厚さは、例えば、100〜300nmである。
【0064】
正孔注入層104は、陽極103の表面上に形成され、正孔を安定的に、又は正孔の生成を補助して、有機発光層106へ正孔を注入する機能を有する。これにより、発光層11Bの駆動電圧が低電圧化され、正孔注入の安定化により素子が長寿命化される。正孔注入層104の材料としては、例えばPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)などを用いることができる。また、正孔注入層104には、正孔注入性の他に、光透過性が要求される。正孔注入層104の膜厚が大きくなるほど、正孔注入層104の反射率は低下するので、正孔注入層104の膜厚は、例えば、10nm〜100nm程度にすることが好ましい。
【0065】
正孔輸送層105は、正孔注入層104の表面上に形成され、正孔注入層104から注入された正孔を有機発光層106内へ効率良く輸送し、有機発光層106と正孔注入層104との界面での励起子の失活防止をし、さらには電子をブロックする機能を有する。正孔輸送層105としては、例えば、生じた正孔を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を有する有機高分子材料であり、例えば、トリフェルアミン、ポリアニリンなどが挙げられる。また、正孔輸送層105の厚さは、例えば、5〜50nm程度である。
【0066】
なお、正孔輸送層105は、その隣接層である正孔注入層104や有機発光層106の材料により、省略される場合がある。
【0067】
有機発光層106は、正孔輸送層105の表面上に形成され、正孔と電子が注入され再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。
【0068】
有機発光層106としては、インクジェットやスピンコートのような湿式成膜法で成膜できる発光性の有機材料を用いることが好ましい。これにより、大画面の基板に対して、簡易で均一な成膜が可能となる。この材料としては、特に限定されるものではないが、高分子有機材料が好ましい。高分子有機材料の特徴としては、デバイス構造が簡単であること、膜の信頼性に優れ、低電圧駆動のデバイスであることも挙げることができる。
【0069】
芳香環または縮合環のような共役系を持った高分子あるいはπ共役系高分子は蛍光性を有することから、有機発光層106を構成する高分子有機材料として用いることができる。有機発光層106を構成する高分子発光材料としては、例えば、ポリフェニレンビニレン(PPV)またはその誘導体(PPV誘導体)、ポリフルオレン(PFO)またはその誘導体(PFO誘導体)、ポリスピロフルオレン誘導体などを挙げることができる。また、ポリチオフェンまたはその誘導体を用いることも可能である。
【0070】
バンク層107は、正孔注入層104の表面上に形成され、湿式成膜法を用いて形成される正孔輸送層105及び有機発光層106を所定の領域に形成するバンクとしての機能を有する。バンク層107に用いられる材料は、無機物質および有機物質のいずれであってもよいが、有機物質の方が、一般的に、撥水性が高いので、より好ましく用いることができる。このような材料の例としては、ポリイミド、ポリアクリルなどの樹脂が挙げられる。バンク層107のパターニングの方法としては、特に限定されるものではないが、感光性の材料を用いたフォトリソグラフィ法を適用することが好ましい。バンク層107の厚さは、例えば、100〜3000nm程度である。
【0071】
電子注入層108は、有機発光層106の上に形成され、有機発光層106への電子注入の障壁を低減し発光層11Bの駆動電圧を低電圧化すること、励起子失活を抑制する機能を有する。これにより、電子注入を安定化し素子を長寿命化すること、透明陰極109との密着を強化し発光面の均一性を向上させ素子欠陥を減少させることが可能となる。電子注入層108は、特に限定されるものではないが、好ましくはバリウム、アルミニウム、フタロシアニン、フッ化リチウム、さらに、バリウム−アルミニウム積層体などからなる。電子注入層108の厚さは、例えば、2〜50nm程度である。
【0072】
透明陰極109は、電子注入層108の表面上に積層され、陽極103に対して負の電圧を発光層11Bに印加し、電子を素子内(特に有機発光層106)に注入する機能を有する。透明陰極109としては、特に限定されるものではないが、透過率の高い物質および構造を用いることが好ましい。これにより、発光効率が高いトップエミッション有機EL素子を実現することができる。透明陰極109の構成としては、特に限定されるものではないが、金属酸化物層が用いられる。この金属酸化物層としては、特に限定されるものではないが、インジウム錫酸化物(以下、ITOと記す)、あるいはインジウム亜鉛酸化物(以下、IZOと記す)からなる層が用いられる。また、透明陰極109の厚さは、例えば、5〜200nm程度である。
【0073】
透明封止膜110は、透明陰極109の表面上に形成され、水分から素子を保護する機能を有する。また、透明封止膜110は、透明であることが要求される。透明封止膜110は、例えば、SiN、SiON、または有機膜からなる。また、透明封止膜110の厚さは、例えば、20〜5000nm程度である。
【0074】
以上説明した発光画素11Pの構造によれば、駆動回路形成時には、選択トランジスタ21または付加回路に不具合が発生していることにより駆動トランジスタ22のゲート電極225に正確な信号電圧が供給されない。しかし、選択トランジスタ21のチャネル層が固定抵抗体に変成されたことにより、発光画素11Pの駆動トランジスタ22のゲートには、上記信号線12から当該発光画素列の有する複数の発光画素に対応した信号電圧が順次印加される。この場合、発光画素11Pは、1フレーム期間において、上記信号線12の出力する複数の信号電圧の各発光輝度が時間平均された発光輝度で発光しているように見える。よって、発光画素11Pは、上記発光画素列の発光輝度が時間平均された発光輝度で発光することが可能となる。つまり、発光画素11Pの滅点化及び輝点化が回避され、あらゆる表示画像において高い表示品質を確保することが可能となる。
【0075】
次に、本実施の形態に記載された画像表示装置1の発光動作について説明する。
【0076】
図3は、正常動作する発光画素の1フレーム期間における発光動作を説明する動作タイミングチャートである。同図において、横軸は時間の経過を表している。また縦方向には、上から順に、(n−1)行の走査線13、n行の走査線13、(n+1)行の走査線13、m列の信号線12、(n−1)行の発光層11Bのアノード、n行の発光層11Bのアノード、及び(n+1)行の発光層11Bのアノードに発生する電圧の波形図が示されている。以下、n行m列に配置された正常な発光画素の発光動作を中心に説明する。
【0077】
まず、時刻t0において、制御回路20は、(n−1)行m列の発光画素が発光動作を開始する。制御回路20は、(n−1)行の走査線13の電圧レベルをVgoffからVgonに変化させ、(n−1)行m列の選択トランジスタ21をオン状態とする。
【0078】
t0〜t1の期間、(n−1)行m列の選択トランジスタ21はオン状態を維持し、この期間に(n−1)行m列の発光画素の保持容量素子23には、m列の信号線12に供給されている信号電圧が書き込まれる。上記保持容量素子23に書き込まれた信号電圧値により、(n−1)行m列の発光画素の駆動トランジスタ22を流れる電流量が決定し、その電流量に対応する明るさで(n−1)行m列の発光画素の発光層11Bが発光する。このとき、上記発光層11Bのアノードの電位は、Vn-1となり、以降1フレーム期間中当該電圧を持続し、発光を継続する。
【0079】
次に、時刻t1において、制御回路20は、n行m列の発光画素が発光動作を開始する。制御回路20は、n行の走査線13の電圧レベルをVgoffからVgonに変化させ、n行m列の選択トランジスタ21をオン状態とする。
【0080】
t1〜t2の期間、n行m列の選択トランジスタ21はオン状態を維持し、この期間にn行m列の発光画素の保持容量素子23には、m列の信号線12に供給されている信号電圧が書き込まれる。上記保持容量素子23に書き込まれた信号電圧値により、n行m列の発光画素の駆動トランジスタ22を流れる電流量が決定し、その電流量に対応する明るさでn行m列の発光画素の発光層11Bが発光する。このとき、上記発光層11Bのアノードの電位は、Vnとなり、以降1フレーム期間中当該電圧を持続し、発光を継続する。
【0081】
次に、時刻t2において、制御回路20は、(n+1)行m列の発光画素が発光動作を開始する。制御回路20は、(n+1)行の走査線13の電圧レベルをVgoffからVgonに変化させ、(n+1)行m列の選択トランジスタ21をオン状態とする。
【0082】
t2〜t3の期間、(n+1)行m列の選択トランジスタ21はオン状態を維持し、この期間に(n+1)行m列の発光画素の保持容量素子23には、m列の信号線12に供給されている信号電圧が書き込まれる。上記保持容量素子23に書き込まれた信号電圧値により、(n+1)行m列の発光画素の駆動トランジスタ22を流れる電流量が決定し、その電流量に対応する明るさで(n+1)行m列の発光画素の発光層11Bが発光する。このとき、上記発光層11Bのアノードの電位は、Vn+1となり、以降1フレーム期間中当該電圧を持続し、発光を継続する。
【0083】
次に、t4〜t7の期間において、t0〜t3の期間の発光動作が繰り返される。t0〜t4の期間は、画像表示装置1の全発光画素の発光強度が書き換えられる1フレーム期間に相当し、以降、t0〜t4の期間の発光動作が繰り返される。
【0084】
なお、上述した発光動作において、各発光画素の有する保持容量素子23により、各発光画素は1フレーム期間中、発光動作を継続している例を示したが、本発明の画像表示装置の発光動作はこれに限られない。例えば、電源Vddの電圧レベルを制御したり、電源Vddと駆動トランジスタ22との間に別途選択トランジスタを配置するなどにより、発光期間の前後に非発光期間が設けられていてもよい。
【0085】
また、駆動トランジスタ22の閾値電圧を補正する期間が、1フレーム期間中に設けられていてもよい。
【0086】
上述した正常発光画素の発光動作に対して、駆動回路層11A及び発光層11Bの形成時において異常動作し、選択トランジスタが固定抵抗体に変成された発光画素11Pの1フレーム期間における発光動作を以下説明する。
【0087】
図4は、選択トランジスタが固定抵抗体に変成された発光画素の1フレーム期間における発光動作を説明する動作タイミングチャートである。同図において、横軸は時間の経過を表している。また縦方向には、上から順に、(n−1)行の走査線13、n行の走査線13、(n+1)行の走査線13、m列の信号線12、(n−1)行の発光層11Bのアノード、n行の発光層11Bのアノード、及び(n+1)行の発光層11Bのアノードに発生する電圧の波形図が示されている。ここで、n行m列に配置された発光画素は、駆動回路層11A及び発光層11Bの形成時において異常動作し、図2に記載されたように選択トランジスタが固定抵抗体に変成された発光画素11Pである。
【0088】
まず、時刻t0において、制御回路20は、(n−1)行m列の正常な発光画素が発光動作を開始する。制御回路20は、(n−1)行の走査線13の電圧レベルをVgoffからVgonに変化させ、(n−1)行m列の選択トランジスタ21をオン状態とする。
【0089】
t0〜t1の期間、(n−1)行m列の選択トランジスタ21はオン状態を維持し、この期間に(n−1)行m列の発光画素の保持容量素子23には、m列の信号線12に供給されている信号電圧が書き込まれる。上記保持容量素子23に書き込まれた信号電圧値により、(n−1)行m列の発光画素の駆動トランジスタ22を流れる電流量が決定し、その電流量に対応する明るさで(n−1)行m列の発光画素の発光層11Bが発光する。このとき、上記発光層11Bのアノードの電位は、Vn-1となり、以降1フレーム期間中当該電圧を持続し、発光を継続する。
【0090】
次に、時刻t1において、制御回路20は、n行の走査線13の電圧レベルをVgoffからVgonに変化させる。ここで、発光画素11Pが接続された信号線12から駆動トランジスタ22のゲート端子までの信号伝達経路は、固定抵抗体25を介している状態となっている。従って、発光画素11Pの駆動トランジスタ22のゲート端子には、n行の走査線13の電圧レベルの変化に関係なく、発光画素11Pの属する発光画素列の有する複数の発光画素に対応した信号電圧が、順次、固定抵抗体25を介して印加される。
【0091】
よって、t1〜t2の期間では、発光画素11Pの駆動トランジスタ22のゲート端子には、発光画素11Pに印加すべき信号電圧Vnが印加されるので、発光画素11Pは、Vnに応じた発光輝度で発光する。一方、t0〜t1の期間では、発光画素11Pの駆動トランジスタ22のゲート端子には、(n−1)行m列の発光画素に印加すべき信号電圧Vn-1が印加されるので、発光画素11Pは、Vn-1に応じた発光輝度で発光する。また、t2〜t3の期間では、発光画素11Pの駆動トランジスタ22のゲート端子には、(n+1)行m列の正常な発光画素に印加すべき信号電圧Vn+1が印加されるので、発光画素11Pは、Vn+1に応じた発光輝度で発光する。以降、発光画素11Pは、m列に配置された信号線12の出力した信号電圧をリアルタイムに反映した発光輝度で発光する。ここで、発光画素11Pは、選択トランジスタが固定抵抗体に変成されていない場合には、異常動作により常時輝点状態または常時滅点状態となってしまう。これに対し、本発明の実施の形態に係る画像表示装置1の有する発光画素11Pは、発光画素11Pの属する発光画素列の有する複数の発光画素の信号電圧に順次対応して発光する。この場合、発光画素11Pは、1フレーム期間において、信号線12が接続された発光画素列の各発光輝度が時間平均された発光輝度で発光しているように見える。よって、選択トランジスタが固定抵抗体に変成されていなければ常時輝点化または常時滅点化していた発光画素11Pの発光動作を、上記発光画素列の発光輝度が時間平均された発光輝度で発光することが可能となる。つまり、発光画素の輝点化及び滅点化が回避され、あらゆる表示画像において高い表示品質を確保することが可能となる。
【0092】
以下、時刻t2において、制御回路20は、(n+1)行m列の発光画素が発光動作を開始する。制御回路20は、(n+1)行の走査線13の電圧レベルをVgoffからVgonに変化させ、(n+1)行m列の選択トランジスタ21をオン状態とする。
【0093】
t2〜t3の期間、(n+1)行m列の選択トランジスタ21はオン状態を維持し、この期間に(n+1)行m列の発光画素の保持容量素子23には、m列の信号線12に供給されている信号電圧が書き込まれる。上記保持容量素子23に書き込まれた信号電圧値により、(n+1)行m列の発光画素の駆動トランジスタ22を流れる電流量が決定し、その電流量に対応する明るさで(n+1)行m列の発光画素の発光層11Bが発光する。このとき、上記発光層11Bのアノードの電位は、Vn+1となり、以降1フレーム期間中当該電圧を持続し、発光を継続する。
【0094】
次に、t4〜t7の期間において、t0〜t3の期間の発光動作が繰り返される。t0〜t4の期間は、画像表示装置1の全発光画素の発光強度が書き換えられる1フレーム期間に相当し、以降、t0〜t4の期間の発光動作が繰り返される。
【0095】
なお、上述した発光動作において、各発光画素の有する保持容量素子23により、各発光画素は1フレーム期間中、発光動作を継続している例を示したが、本発明の画像表示装置の発光動作はこれに限られない。例えば、電源Vddの電圧レベルを制御したり、電源Vddと駆動トランジスタ22との間に別途選択トランジスタを配置するなどにより、発光期間の前後に非発光期間が設けられていてもよい。
【0096】
また、駆動トランジスタ22の閾値電圧を補正する期間が、1フレーム期間中に設けられていてもよい。
【0097】
次に、本実施の形態に記載された画像表示装置1の修正方法について説明する。
【0098】
図5(a)及び図5(b)は、それぞれ、本発明の実施の形態に係る画像表示装置の修正方法を説明する駆動回路層形成時の画素上面図及び構造断面図である。
【0099】
また、図6は、本発明の画像表示装置の修正方法を示す動作フローチャートである。
【0100】
まず、本発明の画像表示装置1の製造工程において、駆動回路層11Aのうち層間絶縁膜202が形成される前の段階において、全ての発光画素について、回路動作を検査する(図6記載のS10)。具体的には、例えば、アレイテスタ(Agilent社:HS100)、走査線13及び信号線12を用いて各発光画素11へ順次テスト電圧を出力して保持容量素子23に当該電圧を書き込む。その後、アレイテスタは、保持容量素子23に書き込まれた電圧を順次信号線12を介し読み込む。これにより、読み込んだ電圧が所定の電圧でない発光画素11Pを特定する。これにより、保持容量素子23のオープン/ショート不良、選択トランジスタ21のオープン不良などの不具合を有する発光画素11Pの画素特定プロセスが完了する。
【0101】
なお、この回路動作の検査工程は、層間絶縁膜202が形成される前の段階にて実行されなくてもよく、例えば、層間絶縁膜202の形成後や平坦化膜203の形成後の段階であってもよい。
【0102】
次に、図5(a)に示されたように、ステップS10で特定された、回路動作異常と判定された発光画素11Pの有する選択トランジスタにレーザーを照射して抵抗体に変成する(図6記載のS20)。具体的には、図5(b)に記載されたように、発光画素11Pの有する選択トランジスタのチャネル層の表面にレーザーを照射する。レーザー照射条件としては、例えば、以下の条件が挙げられる。連続発振にて200W以上の発振能力を有するエキシマレーザーを光源として出射された波長308nm付近のレーザー光を、マイクロレンズアレイ等を用いて集光させる。この集光されたレーザー光ビームLは、約2mW/μm2程度の光強度を有する。このレーザー光ビームLを上記チャネル層の表面に30μ秒照射することにより、当該チャネル層が加熱され非晶質シリコンが再構成される。同時に、リン(P)ドープされた非晶質シリコンからなるドレイン211及びソース212から、当該チャネル層に向けてドーパントであるリン(P)が熱拡散する。このチャネル層の結晶再構成及びキャリア注入により、半導体であった当該チャネル層の抵抗値が低下し、固定抵抗体25へと変成する。固定抵抗体25は、例えば、抵抗値が1MΩ以下となる。
【0103】
次に、発光画素11Pの駆動トランジスタ22のゲート配線と付加回路26との電気接続を遮断する(図6記載のS30)。図5(a)では、切断箇所をBと図示している。駆動トランジスタ22のゲート配線と付加回路26との電気接続を遮断する手段としては、例えば、レーザー照射を適用することが可能である。使用するレーザー条件としては、例えば、YAG(Yttrium Aluminium Garnet)レーザーを光源としたレーザー発振器を用いて、例えば、波長532nm、パルス幅10ns、パワー0.5mWである。本条件の場合、上記電気接続の配線幅が、例えば、4μm、膜厚が150nmであれば、当該電気接続は遮断される。このとき、電気接続の配線材料としては、例えば、前述したMoとWとの合金/アルミニウム(Al)/MoとWとの合金の積層構造が挙げられる。
【0104】
最後に、固定抵抗体25、ドレイン電極213、ソース電極214、駆動トランジスタ22及び付加回路26を覆うように、層間絶縁膜202及び平坦化膜203を形成する。平坦化膜203の材料としては、例えば、シリコン酸化膜(SiOx)やシリコン窒化膜(SiN)であり、例えば、CVD法やスパッタリング法などにより形成される。その後形成された膜を、例えば、CMP法などにより膜表面を平坦化する。
【0105】
なお、層間絶縁膜202と平坦化膜203との間に、保護膜を形成してもよい。保護膜は、駆動回路層11A内に形成された回路素子及び回路配線が外部の環境変化を受けて劣化してしまうことを防止する機能を有し、上記回路素子と、信号線12及びゲート配線などの回路配線とを覆うように形成する。
【0106】
以上の工程により、駆動回路形成時には異常動作する発光画素が修正され、駆動回路層11Aの形成が完了する。その後、駆動回路層11Aの上に、発光層11B及び透明封止膜110が順次形成される。
【0107】
この修正方法によれば、例えば、駆動回路形成時に選択トランジスタ21の不具合により動作異常と判断された発光画素、または駆動トランジスタ22のゲート配線に接続された付加回路のオープン不良/ショート不良により動作異常と判断された発光画素において、当該選択トランジスタのソース−ドレイン間が固定抵抗体となる。従って、上記動作異常であった発光画素11Pには、発光画素11Pに接続された信号線から、発光画素11Pの属する発光画素列に供給される複数の発光画素の信号電圧が順次リアルタイムで印加される。この場合、発光画素11Pは、1フレーム期間において、上記発光画素列の各発光輝度が時間平均された発光輝度で発光しているように見える。
【0108】
よって、例えば、駆動回路の形成時に選択トランジスタに不具合が発生していることにより、または、付加回路のオープン不良/ショート不良により駆動トランジスタのゲート端子に正確な信号電圧が供給されない状態である発光画素の発光動作を、発光画素列の発光輝度が時間平均された発光輝度で発光することが可能となる。つまり、発光画素の滅点化が回避され、あらゆる表示画像において高い表示品質を確保することが可能となる。
【0109】
なお、ステップS20での固定抵抗体25への変成、ステップS30でのゲート配線と付加回路26との接続配線の切断を、全て同じレーザー加工装置で実行することにより、本実施の形態における画像表示装置の修正工程を簡略化することが可能となる。
【0110】
また、ステップS30でのゲート配線と付加回路26との接続配線の切断工程は無くてもよい場合がある。例えば、付加回路26とゲート配線との電気接続が駆動回路形成時に既に遮断状態である場合、または、選択トランジスタ21の動作異常であって保持容量素子23を含む付加回路は正常動作している場合などが挙げられる。これらの場合には、選択トランジスタ21のチャネル層を固定抵抗体に変成することのみで、発光画素11Pの常時輝点化及び常時滅点化を回避することが可能となる。
【0111】
また、ステップS20での固定抵抗体25への変成工程と、ステップS30でのゲート配線と付加回路26との接続配線の切断工程とは、この順で実行しなくてもよい。
【0112】
以上、本発明の画像表示装置及びその修正方法について、実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明に係る画像表示装置及びその修正方法は、上記実施の形態に限定されるものではない。本実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る画像表示装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0113】
例えば、本発明に係る画像表示装置は、図7に記載されたような薄型フラットTVに内蔵される。これにより、異常発光画素の輝点または滅点状態が回避され、あらゆる表示画像において高い表示品質が確保された薄型フラットTVが実現される。
【0114】
なお、上述した実施の形態では、選択トランジスタを固定抵抗体に変成して、発光画素の常時輝点化および常時滅点化を回避しているが、例えば、付加回路の有するスイッチングトランジスタを固定抵抗体に変成することにより、同様の効果が得られる場合がある。例えば、常時オープン状態であった付加回路のスイッチングトランジスタを固定抵抗体に変成して常時導通状態とすることにより、信号電圧に対応した付加回路からの電圧が駆動トランジスタのゲートに印加可能となり、輝点化、滅点化またはこれらに準ずる発光状態を改善することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の画像表示装置及びその修正方法は、大画面及び高解像度が要望される、薄型テレビ、パーソナルコンピュータ等のディスプレイ及びその修正方法として有用である。
【符号の説明】
【0116】
1 画像表示装置
10 表示パネル
11、11P 発光画素
11A 駆動回路層
11B 発光層
12 信号線
13 走査線
14 走査線駆動回路
15 信号線駆動回路
20 制御回路
21 選択トランジスタ
22 駆動トランジスタ
23 保持容量素子
24 有機EL素子
25 固定抵抗体
100 基板
103 陽極
104 正孔注入層
105 正孔輸送層
106 有機発光層
107 バンク層
108 電子注入層
109 透明陰極
110 透明封止膜
201 ゲート絶縁膜
202 層間絶縁膜
203 平坦化膜
211、221 ドレイン
212、222 ソース
213、223 ドレイン電極
214、224 ソース電極
215、225 ゲート電極
226 半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配置された複数の発光画素と、発光画素列ごとに対応して配置された複数の信号線とを備えた画像表示装置であって、
前記複数の発光画素のそれぞれは、
前記信号線から発光画素の発光を決定する信号電圧がゲートに印加されることにより、前記信号電圧に応じたドレイン電流を発生する駆動トランジスタと、
前記信号線と前記駆動トランジスタのゲート端子との間に挿入された選択トランジスタと、
前記ドレイン電流が流れることにより発光する発光素子とを備え、
前記複数の発光画素のうち少なくとも一の発光画素において、
前記選択トランジスタのソース−ドレイン間は固定抵抗体に変成されており、前記信号線と前記駆動トランジスタのゲート端子とは前記固定抵抗体を介して常時導通している
画像表示装置。
【請求項2】
前記固定抵抗体は、前記一の発光画素の有する前記選択トランジスタのソース−ドレイン間に形成された半導体からなるチャネル層に、レーザーが照射されることにより変成されている
請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記複数の発光画素のそれぞれは、さらに、
前記信号線からの前記信号電圧に対応した電圧を保持することが可能な付加回路を備え、
前記一の発光画素において、前記駆動トランジスタのゲート端子と前記選択トランジスタのソース及びドレインの一方とを電気接続するゲート配線と、前記付加回路との電気接続が遮断されている
請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記一の発光画素において、前記ゲート配線と前記付加回路との接続部にレーザーが照射されることにより前記電気接続が遮断されている
請求項3記載の画像表示装置。
【請求項5】
発光を決定する信号電圧が信号線からゲート端子に印加されることにより前記信号電圧に応じたドレイン電流に変換する駆動トランジスタ及び前記信号線と前記駆動トランジスタのゲート端子との間に挿入された選択トランジスタを有する駆動回路層と、前記ドレイン電流が流れることにより発光する発光素子を有する発光層とを備えた複数の発光画素がマトリクス状に配置された画像表示装置の修正方法であって、
前記駆動回路層の形成時に、
前記発光画素の有する前記駆動トランジスタのゲート端子に、前記発光画素に対応した前記信号電圧が正常に印加されるかを、全発光画素について検査する検査ステップと、
前記検査ステップで前記発光画素に対応した前記信号電圧が正常に印加されていないと判断された一の発光画素の前記選択トランジスタのソース−ドレイン間を固定抵抗体に変成する変成ステップを含む
画像表示装置の修正方法。
【請求項6】
前記変成ステップでは、前記選択トランジスタのソース−ドレイン間に形成された半導体からなるチャネル層にレーザーを照射することにより、当該チャネル層を固定抵抗体に変成する
請求項5記載の画像表示装置の修正方法。
【請求項7】
さらに、前記駆動回路層の形成時に、
前記信号線からの前記信号電圧に対応した電圧を保持することが可能な付加回路と、前記駆動トランジスタのゲート端子と前記選択トランジスタのソース及びドレインの一方とを電気接続するゲート配線との電気接続を遮断する遮断ステップを含む
請求項5または6に記載の画像表示装置の修正方法。
【請求項8】
前記遮断ステップでは、前記ゲート配線と前記付加回路とを電気接続する配線にレーザーを照射することにより当該配線を切断する
請求項7記載の画像表示装置の修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−262225(P2010−262225A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114612(P2009−114612)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】