説明

画像表示装置

【課題】外光による悪影響を排除し、高コントラストで表示することができる画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置は、波長が420nm以下の紫外または青色の表示用レーザ光を出射するレーザ光源11と、前記表示用レーザ光の照射により蛍光を生成する表示膜13aを含み、該表示膜13aにて生成された蛍光を用いて画像を表示する表示部13と、を備え、表示部13は、その背面側から照射される外光であって、前記蛍光が生成される波長領域にある外光が表示膜13aに入射されないように透明板12及び外光フィルタ膜13eをさらに含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示用レーザ光の照射により生成された蛍光を用いて画像を表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の表示装置は、主にドライバーに対して車両の情報をアナログ式計器やデジタル式計器により表示する表示装置である。車両用の表示装置には、アナログ式の指針やインジケーターによる表示方式や、デジタル式のLEDや電子管のセグメントを組み合わせた表示方式が用いられ、時々刻々と変化する車両の様々な情報を的確にリアルタイムで表示するように構成されている。
【0003】
一方、ドライバーは、運転中に車外の状況の把握、車両の表示装置の情報の読み取りおよび運転操作等を、安全かつ迅速に行うことが要求される。このため、ドライバーの視点移動の範囲が運転中の車外の状況の把握に必要な範囲内で車両の表示装置の情報が読み取れることが望ましい。したがって、例えば車両のフロントガラスなどの透明板の一部にレーザ光を照射することにより文字または画像を表示する画像表示装置の実現などが期待されている。
【0004】
このような画像表示装置として、車両のフロントガラスをスクリーンとして自分が運転する車両の情報やナビゲーション情報をレーザ光で表示する画像表示装置が提案されている。例えば、車両のフロントガラスの車内側の面に情報表示領域を設定して、所望の波長の発光が得られる蛍光色素を含有した透明樹脂からなる表示膜をこの情報表示領域内に形成し、表示膜上に青色のレーザ光を照射することにより車両の情報が表示される画像表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このときに、表示膜に対してレーザ光を走査して、かつ透過光や反射光の発生量を制御することにより画像表示装置の表示画面の高精細化および高輝度化を図り、ドライバーが見やすい画像表示装置としている。
【0005】
また、他の例では、車両のフロントガラスの半透明用反射板に情報を表示する画像表示装置において、車両内で使用される複数のスイッチを半透明用反射板に表示して、ドライバーが所望のスイッチのオン/オフを少ない視点移動の回数や範囲内で実施できる構成が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このことにより、ドライバーは安全かつ迅速に車両および車外の状況や情報などを把握して運転操作などを行うことができる。
【特許文献1】特開2000−168352号公報
【特許文献2】特開平8−76050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来の構成では、フロントガラスを経て車内に直接入射する太陽光によって、車内が明るくなり表示面上に表示される画像などの明るさと車内の明るさの差が小さくなり、表示された情報が見難くなるという課題が生じる。また、フロントガラス表面の表示領域は、蛍光色素を含有した透明樹脂からなる表示膜で形成されている。このため、フロントガラスを経て車内に直接入射する太陽光の紫外線が、透明樹脂中の蛍光色素を励起して目的外の領域を発光させて、必要とする情報が鮮明に表示できなくなるという課題も生じる。
【0007】
また、上記の従来の構成では、光源としてレーザ光源を使用しているが、レーザ光線が予期しないところで反射し、あるいは散乱することによりドライバーや同乗者の眼に入ることを妨げるような安全性についての配慮がなされていない。
【0008】
本発明の目的は、外光による悪影響を排除し、高コントラストで表示することができる画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る画像表示装置は、波長が420nm以下の紫外または青色の表示用レーザ光を出射するレーザ光源と、前記表示用レーザ光の照射により蛍光を生成する蛍光生成部を含み、該蛍光生成部にて生成された蛍光を用いて画像を表示する表示部と、を備え、前記表示部は、その背面側から照射される外光であって、前記蛍光が生成される波長領域にある外光が前記蛍光生成部に入射されないように遮断する外光遮断部をさらに備えている。
【0010】
表示用レーザ光が照射されることにより蛍光を発して画像を表示する表示部を備えた画像表示装置において、前記蛍光が生成される波長領域にある外光が前記表示部の背面側から入射されると、前記表示用レーザ光に加え、外光からも蛍光が生成される。このため、全体として、表示に用いられる蛍光が多くなりすぎ、表示部で表示のコントラストが低下してしまう。
【0011】
これに対し、上記の構成によれば、前記表示部は、その背面側から照射される外光であって、前記蛍光が生成される波長領域にある外光が前記蛍光生成部に入射されないように遮断する外光遮断部を備えていることにより、前記外光が、表示に用いる蛍光を生成する蛍光生成部に入射されることを防止することができる。このため、前記蛍光生成部は、前記外光の影響がない蛍光を生成することができ、スペックルノイズのない高い視認性の画像(文字を含む)を高輝度かつ高コントラストで前記表示部に表示することができる。
【0012】
上記の構成において、前記外光遮断部は、前記蛍光生成部の背面側に形成された透明板を含み、当該透明板は、前記蛍光が生成される波長領域にある外光を遮断する材料を含むことが望ましい。
【0013】
また、上記の構成において、前記外光遮断部は、前記蛍光生成部の背面側に形成された外光フィルタ膜を含み、前記外光フィルタ膜は、前記蛍光が生成される波長領域にある外光を遮断する材料を含むことが望ましい。
【0014】
上記の構成によれば、前記蛍光が生成される波長領域にある外光が蛍光生成部に入射されることを防止できる確実性を向上させることができる。このため、スペックルノイズのない高い視認性の画像(文字を含む)を高輝度かつ高コントラストでより安定的に表示部に表示することができる。
【0015】
上記の構成において、上記表示部は、前記蛍光生成部の背面側に形成され、当該蛍光生成部に到達する外光の量を調整する光量調節膜をさらに含む構成とすることが望ましい。
【0016】
前記光量調節膜としては、例えば、予め所定の可視光透過率を有する遮光性被膜などを用いることができる。
【0017】
上記の構成において、さらに、前記光量調節膜を制御する制御部と、前記蛍光生成部の背面側に配置された受光素子とを含み、前記制御部は、前記受光素子で受光した外光の光量に基づいて、前記光量調節膜を制御し、前記外光が当該光量調節膜を透過する光量を調節する構成とすることが望ましい。
【0018】
上記の構成によれば、前記蛍光生成部の背面側に形成された光量調節膜により、当該蛍光生成部に到達する外光の量を調整することができる。このため、例えば、前記蛍光生成部に照射される表示用レーザ光の光量との関係で、当該外光の量を適切に調整することができる。よって、前記光量調節膜での外光量の調整と、前記外光遮断部での蛍光が生成される波長領域にある外光の遮断とにより、蛍光が生成される波長領域にある外光による悪影響をより低減することができる。この結果、スペックルノイズのない高い視認性の画像を高輝度かつ高コントラストでより安定的に表示部に表示することができる。
【0019】
上記の構成において、前記表示部が、少なくとも前記蛍光生成部の内側の表面を覆うように形成された反射防止膜をさらに含むことが望ましい。
【0020】
上記の構成によれば、前記蛍光生成部に照射される前記表示用レーザ光が、前記蛍光生成部の内側の表面を覆うように形成された反射防止膜を透過し、前記蛍光生成部及び透明板に吸収される。これにより、前記表示用レーザ光の反射光を抑制することができるため、反射光による影響のない高輝度かつ高コントラストの表示が可能となることに加え、安全面にも配慮した画像表示装置を実現することができる。
【0021】
上記の構成において、前記反射防止膜が、光触媒作用を有する材料を含むことが望ましい。
【0022】
上記の構成によれば、反射防止膜の光触媒材料の作用により、反射防止膜表面の塵埃や気体による汚れが光触媒反応により除去されるため、反射防止膜表面を清浄に維持することができる。これにより、常に反射防止膜表面での反射や散乱を防止することができる。
【0023】
前記反射防止膜は、単層または多層で構成されていてもよい。この反射防止膜の材料としては、例えば、高屈折率の誘電体材料からなる単層膜や、高屈折率の誘電体材料と低屈折率の誘電体材料とを交互に積層させた2層以上の多層膜を用いることができる。高屈折率の材料としてはTa、TiO等を挙げることができる。低屈折率の誘電体材料としては、SiO、Al、MgF、フッソ系樹脂、シリコーン系樹脂等を挙げることができる。
【0024】
上記の構成において、前記レーザ光源は、前記表示用レーザ光が、前記蛍光生成部の中に焦点を結ぶように集光される構成としてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、前記蛍光生成部は、集光された表示用レーザ光により効率的に蛍光を生成することができる。
【0026】
上記の構成において、前記表示部に対して前記表示用レーザ光を走査する走査部をさらに備え、前記蛍光生成部は、前記走査部により前記表示用レーザ光が前記蛍光生成部上を走査することよって前記画像を表示する蛍光を生成する構成とすることが望ましい。
【0027】
上記の構成によれば、前記走査部で前記表示用レーザ光を迅速に走査させて2次元画像を高輝度かつ高コントラストで描画することができる。
【0028】
前記レーザ光源は、複数のストライプ状の活性領域を有する半導体レーザ素子を含むことが望ましい。
【0029】
上記の構成によれば、集光性に優れた高出力のレーザ光源を実現することができる。
【0030】
前記蛍光としては、緑色が望ましい。
【0031】
上記の構成によれば、視認者に対して視感度が最も高く、かつ連続視認で視覚神経疲労が小さい緑色波長による画像(文字を含む)であり、疲れにくく高い視認性の画像を表示することができる。
【0032】
上記の構成において、前記レーザ光源は、少なくとも中心波長が異なる3つの波長領域のレーザ光を出射する半導体レーザ素子を含み、前記蛍光生成部は、前記表示用レーザ光の照射により、赤色、緑色及び青色の蛍光を生成する構成とすることが望ましい。
【0033】
上記の構成によれば、スペックルノイズのない高い視認性のカラー画像(文字を含む)を高コントラストで前記表示部に表示することができる。
【0034】
上記の構成において、前記蛍光生成部の裏面側に形成された透明板が車両のフロントガラスの一部を構成する画像表示装置であって、前記表示部に対して前記表示用レーザ光を走査する走査部と、前記レーザ光源から出射される前記表示用レーザ光を前記走査部に導く光ファイバとを備えている構成とすることが望ましい。
【0035】
上記の光ファイバを用いた構成によれば、前記レーザ光源を、ダッシュボードまたは座席の下部等の放熱性が高い金属部等に配置することができる。これにより、高い配置自由度で前記レーザ光源の発熱による問題を抑制することができる車両用の画像表示装置を実現することができる。また、前記レーザ光源から発生する発熱を効率よく車両全体に放熱することにより、低消費電力動作および高信頼性動作を実現することができる。
【0036】
上記の構成において、前記レーザ光源は、前記車両におけるダッシュボードまたは座席の下部に配置されている構成とすることが望ましい。
【0037】
前記レーザ光源を、前記車両におけるダッシュボードまたは座席の下部の放熱環境のよいところや収納しやすい場所に配置した上記の構成によれば、レーザ光源で発熱した熱を効果的に放熱することができる。これにより、レーザ光源を室温に近い温度で低消費電力かつ長寿命で動作させることができる。
【0038】
上記の構成において、さらに、前記走査部にて走査した前記表示用レーザ光が、前記車両の乗車者の視覚空間へ入ることを防止する表示用レーザ光遮蔽部を備えている構成とすることが望ましい。
【0039】
上記の構成によれば、前記車両の乗車者の眼への表示用レーザ光の入射による問題を防止し、安全で快適な運転を可能にする車両用の画像表示装置を実現することができる。
【0040】
上記の構成において、前記制御部は、前記運転席または前記助手席のシートベルトが所定の位置に固定されていない状態では、前記レーザ光源の電源を切断するように制御する構成とすることが望ましい。
【0041】
上記の構成によれば、安全性がより高い車両用の画像表示装置を実現することができる。
【0042】
本発明の画像表示装置によれば、外光の強弱に影響されることなく、高輝度かつ高コントラストで画像を表示することができる。また、本画像表示装置を車両に用いた場合、運転に必要な車両情報などを車両のフロントガラスの一部に表示することができる。この場合、運転中のドライバーは視点を大きく移動させる必要がないため、安全かつ快適な車両の運転が可能となる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、外光による悪影響を排除し、高コントラストで表示することができる画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0045】
(実施の形態1)
本発明の一実施の形態に画像表示装置について、図1ないし図8を参照し以下に説明する。
【0046】
図1は、本実施の形態に係る画像表示装置を搭載した車両の概略構成を示す説明図である。すなわち、図1は、前記車両の乗車者である運転席と助手席との間で車両を垂直方向に切断し、切断面から運転席側を見た概略断面図である。図2は、実施の形態に係る画像表示装置の構成を示す機能ブロック図である。図3は、本実施の形態に係る表示部の概略構成を示す断面図である。図3中、(a)は、図1の表示部の概略構成を示す拡大断面図、であり、(b)及び(c)は、図1に示す表示部の変形例としての表示部の概略構成を示す拡大断面図である。図4は、本実施の形態に係る画像表示装置の表示部が備える画像光量検出部の概略構成を示している。
【0047】
本実施の形態に係る車両21は、図1に示すように、画像表示装置10を構成する透明板12が車両のフロントガラス21aの一部を構成している。
【0048】
図1に示すように、本実施の形態に係る画像表示装置10は、図中、破線で囲んだ領域内に、波長が420nm以下の紫外または青色の表示用レーザ光(不図示)16を出射するレーザ光源11、画像(文字を含む)を表示する表示部13、表示部13に対して表示用レーザ光16を走査するビーム走査部(走査部)18、レーザ光源11から出射される表示用レーザ光16を走査部に導く光ファイバ18a及び、レーザ光源11、表示部13、ビーム走査部18等を制御する制御部14を備えている。
【0049】
表示部13は、表示用レーザ光16の照射により蛍光17を生成する表示膜(蛍光生成部)13aを含み、当該表示膜13aで生成された蛍光17を用いて画像を表示する。表示膜13aの材料としては、例えば紫外線や可視光を透過するエポキシ系、ビフェニール系、アクリル系、ポリイミド系もしくはシリコーン系のうちの何れかの樹脂を用いることができる。
【0050】
また、表示膜13a中に含有させる蛍光材料には、例えば無機材料で透明性の高いSnをドーピングしたInO(酸化インジウム)、ZnO、希土類−金属ナノクラスタを分散した有機材料、不透明なものではCu、Au、AlをドーピングしたZnS等の緑色蛍光で発光する材料を用いることができる。
【0051】
このように、視認者に対して視感度が最も高く、かつ連続視認で視覚神経疲労が小さい緑色発光波長による画像(文字を含む)の表示を行うことにより、疲れにくく視認性の高い画像を表示することができる。
【0052】
表示部13は、さらに表示膜13aの背面側に、表示部13の背面13c側から照射される太陽光等を含む外光であって、蛍光が生成される波長領域にある外光が表示膜13aに入射されないように遮断する外光遮断部としての透明板12を備えている。透明板12は、厚さtに形成されており、表示膜13aが、この透明板12の表示側の主面12b上に形成されている。
【0053】
ここで、蛍光が生成される波長領域にある外光が表示部13の背面側から入射されると、表示用レーザ光16に加え、外光からも蛍光が生成されることとなる。このため、全体として、表示に用いられる蛍光が多くなりすぎ、表示部での表示のコントラストが低下してしまう。
【0054】
これに対し、本実施の形態に係る画像表示装置10の構成によれば、蛍光17が生成される波長領域にある外光が表示膜13aに入射されないように遮断する外光遮断部としての透明板12を備えることにより、前記外光が、表示に用いる蛍光17を生成する表示膜13aに入射されることを防止することができる。このため、表示膜13aは、外光による悪影響を受けることなく、適正量の蛍光17を生成することができる。これにより、スペックルノイズのない高い視認性の画像(文字含む)を高輝度かつ高コントラストで表示膜13aに表示することができる。
【0055】
透明板12としては、例えば、酸化セリウム(CeO)含有紫外線カットガラスや金属微粒子含有紫外線カットガラス等公知の紫外線カットガラスを用いることができる。
【0056】
表示部13は、前記外光遮断部として、さらに表示膜13aの背面側に形成された外光フィルタ膜13eを備えている。外光フィルタ膜13eの基材としては、例えばポリイミド樹脂等の可撓性膜を用いてもよく、またアクリル樹脂等を用いてもよい。さらに、外光フィルタ膜13eには、例えば、金属クロム、酸化クロムもしくはSi等の単層膜や、MoとNiにFeとTa、MoとNiにFeおよびMoとNiにZrなどを含有した多層膜を使用してもよい。
【0057】
すなわち、外光フィルタ膜(外光遮断部)13eは、蛍光17が生成される波長領域にある外光を遮断する材料から形成されている。
【0058】
本実施の形態に係る画像表示装置10は、外光フィルタ膜13eを備えることにより、蛍光17が生成される波長領域にある外光が表示膜13aに入射されること防止できる確実性を向上させることができる。このため、スペックルノイズのない高い視認性の画像情報を高輝度かつ高コントラストでより安定的に表示膜13aに表示することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、透明板12及び外光フィルタ膜13eの双方が、蛍光17が生成される波長領域にある外光を遮断する外光遮断部としての機能を備えている。しかしながら、本実施の形態はこれに限らず、透明板12及び外光フィルタ膜13eのうちの少なくとも何れか一方が上記外光遮断部としての機能を備えていればよい。
【0060】
本実施の形態に係る外光フィルタ膜13eは、外光中の紫外線および波長が420nm以下の青色光に対して高い遮光率を有する一方、波長420nmの青色よりも波長の長い可視光に対しては高い透過率を有する膜で構成されている。
【0061】
このように外光フィルタ膜13eを車両21内の乗車者から見て表示膜13aの外側に設けることにより、車両21外からの外光が表示膜13aの外側から表示膜13aに入射することを防止することができる。これにより、外光によって生成される蛍光に起因する画像ノイズの発生を防止することができる。この結果、画像表示装置10の表示部13で表示される画像を鮮明に視認しうるコントラストを得ることができる。一方、外部の景色を見る際、420nmの青色光よりも長い波長の可視光波長領域の外光は表示部13を透過し、運転者は外部の景色を見ることが可能であり、運転に支障をきたすことはない。また、同乗者にとっても、同様に、表示部13が実際の景色と異なる配色になることがないため不快感をもつことはない。
【0062】
図3及び図4に示すように、表示部13は、さらに少なくとも表示膜13aの内側の表面を覆うように形成された反射防止膜13bを備えている。反射防止膜13bは、波長が420nm以下の紫外または青色の表示用レーザ光16のほとんどを透過させるように構成されている。したがって、表示膜13aに照射される表示用レーザ光16は、反射防止膜13bを透過し、表示膜13a及び透明板12に吸収される。
【0063】
本実施の形態では、乗車者の眼22a(図1)への安全性を考慮して反射光16bのパワーは50μW以下に抑えている。通常レーザ安全性のクラス2は1mW以下で良いが、ここでは運転中安全な50μW以下とした。この出力は所定の値とすることができる。このように、反射防止膜13bを備えることにより、反射光16bによる影響を低減することができ、高輝度かつ高コントラストの表示が可能となることに加え、安全面にも配慮した画像表示装置を実現することができる。
【0064】
反射防止膜13bは、少なくとも表示膜13aの内側の表面全体を覆うように形成されており、乗車者の眼22aを保護する機能を有している。本実施の形態では、図3に示すように、さらに表示膜13a周辺の透明板12の内側の面上にも形成されている。
【0065】
反射防止膜13bの材料としては、例えば、誘電体材料からなる単層膜や、高屈折率の誘電体材料と低屈折率の誘電体材料とを交互に積層させた2層以上の多層膜を用いることができる。高屈折率の材料としてはTa、TiO等を挙げることができる。低屈折率の誘電体材料としては、SiO、Al、MgF、フッソ系樹脂、シリコーン系樹脂等を挙げることができる。
【0066】
反射防止膜13bは、一部に光触媒作用を有する光触媒材料を混ぜて形成することが望ましい。このように、光触媒作用を有する材料を含むことにより、反射防止膜13bは、光触媒材料の作用により、反射防止膜13bの表面の塵埃や気体による汚れが光触媒反応により除去される。このため、反射防止膜13bの表面を清浄に維持することができる。これにより、常に反射防止膜13bの表面での反射や散乱を防止することができる。
【0067】
表示部13は、表示膜13aの背面側に形成され、車両21の外から表示膜13aに到達する太陽光に含まれる紫外線、可視光等外光の量を調整する光量調節膜13dをさらに含んでいる。光量調整膜13dは、外光フィルタ膜13eの外側に形成されている。光量調節膜13dとしては、例えばマトリクス上に配列されて複数のシャッターを備える膜において任意の場所と数のシャッターを電気的に開閉することで所望する採光量が得られる薄膜電子シャッター(液晶シャッター等)や、予め所定の可視光透過率を有する遮光性被膜などを用いることができる。このような光量調節膜13dを、表示膜13aの背面側に形成することにより、蛍光生成部としての表示膜13aに到達する外光の量を調整することができる。このため、例えば、表示膜13aに照射される表示用レーザ光16の光量との関係で、当該外光の量を適切に調整することができる。
【0068】
次に、少なくとも前記外光が光量調節膜13dを透過する光量を調節する本実施の形態に係る画像表示装置10が備える制御部14による制御について、図2の機能ブロック図を参照し説明する。
【0069】
図2に示すように、本実施の形態に係る画像表示装置10は、レーザ電源A1、視認性判定部A2、外光光量検出部B1、画像光量検出部B2、レーザ光源11、表示部13、ビーム走査部18、及びこれらを制御する制御部14を備えている。
【0070】
視認性判定部A2は、外光光量検出部B1で検出した外光光量データと、画像光量検出部B2で検出した画像光量データとを比較して表示画像の表示面に対するコントラストを判定する。そして、制御部14は、視認性判定部A2の判定結果に基づいて、適宜コントラストを調節するように構成されている。
【0071】
なお、コントラストの調整は、例えば図1に示すレーザ光源11から出射される表示用レーザ光16の光出力の調整により行うことができる。このように、制御部14は、視認性判定部A2から各種の外光および画像などの光量データ並びにコントラストの判定結果などの情報に基づいて、レーザ電源A1およびレーザ光源11を制御して表示用レーザ光16の光出力を調整している。
【0072】
外光光量検出部B1は、鮮明なコントラストを得るために外光の光量を検出している。外光光量検出部B1は、車両21の外部の光量を図1に示す受光素子19などで連続して検出し、検出した信号を視認性判定部A2に送信している。
【0073】
図1に示すように、受光素子19は、表示膜13aの背面側12aに設けられている。そして、受光素子19で受光した太陽光15などの外光の光量に基づいて、光量調節膜13dを制御し、前記外光が光量調節膜13dを透過する光量を調節している。より具体的には、受光素子19は、例えば車両21の外部のフロントガラス21a近傍の表示部13に隣接する領域の周辺や、ボンネット(不図示)上に設けることができる。
【0074】
受光素子19の受光面は、大気中の塵埃の付着や、雨水または雪による水滴や雪の付着によって、受光感度の変化を生じることがある。このため、塵埃や雨水の付着を回避して受光面を清浄に維持するために、例えば、受光面材料中もしくはその表面層に光触媒作用を有する材料を配合した構成にしてもよい。また、受光面に光触媒作用を有する材料を配合した透明膜を貼り付けてもよい。
【0075】
表示部13の背面側から照射される外光は、昼間は主に太陽15aからの太陽光15などが対象となる。一方、夜間は照明灯や車両のヘッドランプなどからの可視光および紫外光などが対象となる。
【0076】
本実施の形態では、表示膜13aの背面側に光量調節膜13dを設けた構成により、表示膜13aに照射される表示用レーザ光16の光量との関係で、外光の量を適切に調整することができる。これにより、光量調節膜13dでの外光量の調整と、表示膜13aで蛍光17が生成される波長領域にある外光の遮断(透明板12等の外光遮断部による作用)とにより、蛍光が生成される波長領域にある外光による悪影響をより確実に防止することができる。この結果、スペックルノイズのない高い視認性の画像を高輝度かつ高コントラストでより安定的に表示膜13aに表示することができる。
【0077】
また、本実施の形態に係る表示部は、例えば、図3中、(b)に示す構成の表示部13Aや、(c)に示す構成の表示部13Bとしてもよい。
【0078】
表示部13A(図3中、(b))は、保護膜13fが光量調節膜13dおよび外光フィルタ膜13eを覆うように形成されている。
【0079】
表示部13B(図3中、(c))は、外光フィルタ膜13eが、表示膜13aと透明板12との間に挿入されており、反射防止膜13bが、外光フィルタ膜13e及び表示膜13aの全体を覆うように形成されている。
【0080】
なお、図3中、(a)に示すように、表示用レーザ光16は表示膜13aの中に焦点を結ぶように集光され、集光されたレーザ光16により効率的に表示膜13aから蛍光17を発生させることができる。この構成により、当然、空間分解能を高めることができる。
【0081】
図4に示すように、画像光量検出部B2は、蛍光受光素子23aと、蛍光受光素子23aに隣接して設けられた光量検出領域23bとを含んでいる。蛍光受光素子23aは、図4中、(b)に示すように透明接着剤23cに囲まれて配置されており、透明板12における車両21の内部側の面上の表示部13の領域内に少なくとも1個設けられている。本実施の形態では、蛍光受光素子23aは、表示部13における画像表示領域23の周辺部外側の左右にそれぞれ設けられている。蛍光受光素子23aは、表示用レーザ光16が表示膜13aに照射されることにより生成された蛍光17の一部を検出している。一方、光量検出領域23bは、表示膜13aを走査するレーザ光(不図示)の一部を受光素子(不図示)にて検出している。
【0082】
また、制御部14は、必要に応じて、ビーム走査部18および表示部13における、表示用レーザ光16および画像光量データに関係した部分の機能や動作などを制御する構成としてもよい。そして、制御部14は、車両制御部C1によって車両21全体の中で電気的に制御され、車両制御部C1との間で様々な情報をやり取りしている。前記車両制御部C1は、車両21自体を制御すると共に、車両21の内部および車両21の外部の様々な情報を処理するものである。
【0083】
なお、レーザ電源A1および視認性判定部A2は、図1に示す制御部14が備える構成にすることもできる。
【0084】
ところで、レーザ光源11は、座席20の下部における放熱の良い、例えば金属部などに取り付けられている。そして、レーザ光源11から発生する発熱を効率よく車両全体に放熱することにより低消費電力動作および高信頼性動作を実現することができる。
【0085】
本実施の形態に係る画像表示装置10では、図1に示すように、レーザ光源11はダッシュボード21bまたは座席20の下部に配置されている。そして、レーザ光源11から出射される表示用レーザ光16は、光ファイバ11aにより表示部13に対して表示用レーザ光16を走査するビーム走査部18に導かれている。
【0086】
上記の光ファイバ11aを用いた構成によれば、レーザ光源11を、ダッシュボード21bまたは座席20の下部等の放熱性が高い金属部等に配置することができる。これにより、高い配置自由度でレーザ光源11の発熱による問題を抑制することができる車両用の画像表示装置10を実現することができる。また、レーザ光源11から発生する発熱を効率よく車両全体に放熱することにより、低消費電力動作および高信頼性動作を実現することができる。
【0087】
また、上記の構成のように、放熱環境のよい場所や、収納しやすい場所にレーザ光源11を配置すれば、レーザ光源11で発熱した熱を効果的に放熱することができる。これにより、レーザ光源11を室温に近い温度で低消費電力かつ長寿命で動作させることができる。
【0088】
また、本実施の形態に係る画像表示装置10は、車両21の乗車者の眼22aに表示用レーザ光16が入射する問題を防止するための安全装置として、以下の構成を備えている。すなわち、シートベルトが使用されている時の適正な位置やシートベルトに係る張力の異常を感知する検知機構(不図示)を備え、制御部14(図1及び図2)は、この検知機構による検知結果に基づいて、シートベルトが適正に着用されていない状態では、表示用レーザ光16の遮蔽やレーザ光源11の遮断機能が作動するように電源遮断機構を制御している。
【0089】
上記の構成によれば、シートベルト不使用時の乗車者の眼への表示用レーザ光16の入射による問題を防止することができる。これにより、安全かつ安心な車両の運転を可能にする車両用の画像表示装置を実現することができる。
【0090】
また、本実施の形態の車両用の画像表示装置10は、乗車者の眼に対する安全性についても配慮した他の構成として、図1に示すように、表示用レーザ光を遮蔽する表示用レーザ光遮蔽部22cを備えている。この表示用レーザ光遮蔽部22cは、ビーム走査部18から表示部13に表示用レーザ光16が走査される走査空間18aと、当該走査空間18aから運転席22および助手席(図示せず)の乗車者の眼22aが位置する視覚空間22bとの間に設けられている。
【0091】
表示用レーザ光遮蔽部22cは、ビーム走査部18にて走査した表示用レーザ光16が、車両21の乗車者の視覚空間22bへ入ることを防止する機能を有している。
【0092】
上記の表示用レーザ光遮蔽部22cを備えた構成によれば、表示用レーザ光16が予期せぬ反射や散乱をした場合であっても、車両21の乗車者の眼22aへ表示用レーザ光16が入射するのを防止し、安全で快適な運転を可能にする車両用の画像表示装置10を実現することができる。
【0093】
上記の各安全機構は、以下に示す本実施の形態においても当然適用できる。
【0094】
次に、本実施の形態に係る画像表示装置10のレーザ光源11を含む光学系について、図5ないし図8を参照し以下に説明する。
【0095】
図5は、本実施の形態に係る画像表示装置が備える表示部近傍の光学系の概略構成を示す説明図である。図6は、本実施の形態に係る画像表示装置が備えるレーザ光源近傍の光学系の概略構成を示す説明図である。図7は、本実施の形態に係る画像表示装置が備えるレーザ光源近傍の他の光学系の概略構成を示す説明図である。図8は、本実施の形態に係る画像表示装置が備える表示用レーザ光の走査部を含む光学系の概略構成を示す説明図である。
【0096】
本実施の形態に係る画像表示装置10が備えるレーザ光源11は、前述の通り、波長が420nm以下の紫外または青色の表示用レーザ光16(この例では405nmを使用)を出射している。
【0097】
図5に示すように、レーザ光源11から出射された表示用レーザ光16は、光ファイバ11aにより導波されてレンズ11bにより緩やかに集光されて、表示部13における表示膜13aの中で焦点を結んでいる。表示膜13aは、この表示用レーザ光16の照射により生成された蛍光17を用いて画像を表示し、乗車者の眼22aで視認されることになる。
【0098】
なお、説明の便宜上図5中、表示用レーザ光16の走査系については省略している。
【0099】
次に、レーザ光源11の近傍の光学系について図6を参照し説明する。
【0100】
図6に示す光学系は、レーザ光源11と光ファイバ11aとが結合されてなる。レーザ光源11は、図6に示すように、複数のストライプ状の活性領域24aを有する半導体レーザ素子24を備えている。半導体レーザ素子24は、放熱性の良い金属板24bに、電気的かつ機械的にはんだ接続されている。半導体レーザ素子24の複数の活性領域24aから出射される各表示用レーザ光16は、レンズ24cにより集光され光ファイバ11aに効率よく入射される。
【0101】
1つの活性領域からのレーザ光を表示用レーザ光として用いる構成では、画像表示装置の表示部に走査される光量が不足してしまう。そこで、本実施の形態に係るレーザ光源11は、複数の活性領域24aを備える構成とし、走査に要する表示用レーザ光16の充分な光量が確保できるようにしている。さらに、半導体レーザ素子24は、放熱性の良い金属板24bに接続されているため、W級の出力光を出射した場合であっても、半導体レーザ素子24の温度上昇を抑えることができる。
【0102】
したがって、低動作電流で動作することができる集光性に優れた高出力のレーザ光源11を利用することができる。さらに、複数のストライプ状の活性領域24aの隣接距離を数μm程度にすると、それぞれの活性領域24aで発生するレーザ光の位相が互いにロックされたレーザアレイとして半導体レーザ素子24を動作させることができる。このようなレーザアレイとして走査する半導体レーザ素子24は、水平方向の拡がり角が数度と平行光線に近い状態で出射される。このため、シリンドリカルレンズなどを用いた簡単な光学系で光ファイバ11aと結合することができる。
【0103】
図7は、本実施の形態のレーザ光源11と光ファイバ11aとが結合されてなる他の光学系について示している。図7ではストライプ状の活性領域24aが、各半導体レーザ素子24に形成されている。半導体レーザ素子24は、図6の光学系と同様に、例えば、はんだにより放熱性のよい金属板24bに電気的かつ機械的に接続されている。また、分離して配置された各半導体レーザ素子24の活性領域24aから出射される表示用レーザ光16は、例えば複数のレンズ24d、24e、24fからなる光学レンズ系により光ファイバ11aに結合される。
【0104】
1つの活性領域からのレーザ光を表示用レーザ光として用いる構成では、画像表示装置の表示部に走査される光量が不足してしまうところ、本実施の形態の図7に示すレーザ光源11は、複数の半導体レーザ素子24がそれぞれ活性領域24aを備える構成とし、走査に要する表示用レーザ光16の充分な光量が確保できるようにしている。さらに、半導体レーザ素子24は、放熱性の良い金属板24bに接続されているため、W級の出力光を出射した場合であっても、半導体レーザ素子24の温度上昇を抑えることができる。これにより、低動作電流で動作することができる集光性に優れた高出力のレーザ光源11を利用することができる。
【0105】
なお、レーザ光源11の金属板24bは比較的低温が維持される車両の金属部分に熱的に接続されることにより、良好な放熱経路が確保されている。また、半導体レーザ素子24には、例えばGaN系の材料で構成された波長が420nm以下の紫外または青色の表示用レーザ光を出射する半導体レーザ素子を用いている。
【0106】
次に、本実施の形態に係る画像表示装置10が備える表示用レーザ光の走査部を含む光学系について図8を参照し説明する。この光学系は、表示膜13aに対して表示用レーザ光16を走査するビーム走査部25をさらに備えている。表示膜13aは、この表示用レーザ光16の走査により生成された蛍光(不図示)を用いて画像を表示している。
【0107】
図8中破線で示すように、ビーム走査部25は、ポリゴンミラー25a、反射ミラー25b及び光変調器25cを備えている。図8に示すように、光ファイバ11aによって導波された表示用レーザ光16は、ポリゴンミラー25aで走査光26(26a、26b、26c)として矢印27aの方向に走査されて反射ミラー25bに入射される。反射ミラー25bに入射された走査光26は、さらに矢印27bの方向に反射ミラー25bが回転することにより、矢印27aの方向と直交する矢印27cの方向に走査されて表示膜13aに照射される。
【0108】
上記の構成により、ビーム走査部25で表示膜13aに対して表示用レーザ光16を迅速に走査して2次元画像を高輝度かつ高コントラストで描画することができる。なお、表示用レーザ光16を走査するポリゴンミラー25aに換えてガルバノミラー(Galvano-mirror(不図示))を用いてもよい。また、図8中、破線で示している光の強度を変調する光変調器25cを用いて表示用レーザ光16を変調しながら走査する構成としてもよい。この場合、ポリゴンミラー25aの位置に、矢印27aの方向に回転可能な反射ミラーを配置すればよい。
【0109】
なお、走査方法として、光MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)(マイクロマシーン)用いれば、小型化が容易となる。また、走査方法として光MEMSを用いれば、1つの素子(光MEMS)で2軸ともに走査することも可能となる。
【0110】
(実施の形態2)
本発明の他の実施の形態について、図面を参照し以下に説明する。
【0111】
なお、本実施の形態に係る画像表示装置は、実施の形態1の画像表示装置と基本的な構成が共通するため、特徴部分のみを説明し、共通する部分について共通の符号を図示することにしてそれらの説明は適宜省略する。
【0112】
本実施の形態に係る車両用の画像表示装置の構成について、図9及び図10を参照し以下に説明する。
【0113】
図9は、本発明の実施の形態2に係る車両用のカラー画像表示装置30に使用する表示部13の主要部を示す概略断面図である。図10は、本実施の形態に係るカラー画像の表示が可能な画像表示装置40の表示レーザ光の走査部を含む光学系の構成を示す説明図である。
【0114】
本実施の形態に係る画像表示装置は、カラー画像の表示が可能な画像表示装置である。このため、前述の実施の形態1に係る画像表示装置10と、表示膜及び光学系の構成が異なっている。しかしながら、他の基本構成については、実施の形態1とほぼ同様であるため、重複する部分の説明は省略する。
【0115】
本実施の形態に係る表示部13は、図9に示すように、実施の形態1に係る表示膜13aに換えて、透明板12における車両21の内部側の面に形成された表示膜31を備えている。この表示膜31は、それぞれ異なる蛍光材料を含有する3層の透明膜からなる。具体的には、表示膜31は、透明板12側から赤色蛍光発光膜31a、緑色蛍光発光膜31b、及び青色蛍光発光膜31cがこの順番で積層された積層構造を有している。
【0116】
赤色蛍光発光膜31aは、紫外の表示用レーザ光32aで照射することで中心波長が610nm近傍の赤色の蛍光発光が得られる蛍光材料を含有している。緑色蛍光発光膜31bは、紫外の表示用レーザ光32bで照射することで中心波長が540nm近傍の緑色の蛍光発光が得られる蛍光材料を含有している。青色蛍光発光膜31cは、紫外の表示用レーザ光32cで照射することで中心波長が470nm近傍の青色の蛍光発光が得られる蛍光材料を含有している。
【0117】
画像表示装置30は、実施の形態1のレーザ光源11に換えて、レーザ光源36を備えている。
【0118】
また、本実施の形態に使用するレーザ光源36の主要部を構成する半導体レーザ素子24は、少なくとも中心波長が異なる3つの波長領域の表示用レーザ光32a、32b及び32cを出射する3つのストライプ状の活性領域24a、24b及び24cを備えている。紫外レーザ光32の中心波長は、それぞれ赤色蛍光発光膜31aに入射させる表示用レーザ光32aが405nm、緑色蛍光発光膜 31bに入射させる表示用レーザ光32bが390nm、青色蛍光発光膜31cに入射させる表示用レーザ光32cが380nmとなっている。表示膜31は、これらの表示用レーザ光の照射により、赤色、緑色及び青色の各蛍光を生成する。
【0119】
そして、中心波長がそれぞれ405nm、390nm、380nmの表示用レーザ光32a、32b及び32cは、半導体レーザ素子24の活性領域24a、24b、24cに注入する電流を変調させる変調信号(図示せず)をそれぞれの活性領域24a、24b及び24cに印加することすることにより、原画像の色調に対応して変調される。また、表示膜31は、これらの表示用レーザ光の照射により、赤色、緑色及び青色の各蛍光33を生成し、カラー表示を行うことができる。これにより、高輝度かつ高コントラストのカラー表示を行うことができる画像表示装置30を実現することができる。
【0120】
さらに、実施の形態1におけるビーム走査部18と同様の構成のビーム走査部35を使用することにより2次元のカラー画像を表示することもできる。
【0121】
図10は、本実施の形態に係る画像表示装置の他の構成例として画像表示装置40を示している。画像表示装置40は、レーザ光源36が、少なくとも中心波長が異なる3つの波長領域の表示用レーザ光32a、32b及び32cを出射する3つの半導体レーザ素子34A、34B及び34Cを備えている点で図9の画像表示装置30と異なっている。そして、表示膜31は、図9の画像表示装置30と同様に、表示用レーザ光32a、32b及び32cの照射により生成された赤色、緑色および青色の蛍光33を用いてカラー画像の表示を行っている。
【0122】
上記の構成によれば、太陽光に混じっている420nm以下の紫外線は遮断されるため、邪魔な蛍光が励起されることはない。また、太陽光下の車両21の内部においても多彩な色調で、高輝度かつ高コントラストのカラー画像表示が可能な車両用のカラー画像表示装置を実現することができる。
【0123】
本実施の形態に係るレーザ光源は、図9に示すように、1つの半導体レーザ素子24により構成してもよいし、図10に示すように複数の半導体レーザ素子34A、34A、34Aにより構成してもよい。図10の構成では、複数の半導体レーザ素子34A、34A、34Aから出射される表示用レーザ光32a、32b、32cをダイクロイックミラー37a、37bにより1本の表示用レーザ光32にまとめてビーム走査部35に入射させることができる。
【0124】
また、3つのレーザ光源を別々の光ファイバに入射させバンドル化させてもよいし、光合波としてもよい。これにより、安定性の面でより優れた画像表示装置を実現することができる。
【0125】
なお、実施の形態中では、透明板12等の外光遮断部で遮断される外光の波長を420nm以下として説明しているが、例えばレーザ光源として、波長410nmの場合でかつ、蛍光が430nmまで発生する可能性がある場合、外光遮断部で遮断される外光の波長を430nm以下にすれば良い。また、レーザ光源として、波長390nmの場合でかつ、蛍光が410nmまで発生する可能性がある場合、外光遮断部で遮断される外光の波長を410nm以下にすれば良い。これにより、蛍光生成部としての表示膜31は、太陽光等に含まれる蛍光の生成に寄与し得る外光の影響を受けることなく、所望の蛍光を生成することができる。これにより、外光によるコントラストの低下を防止することができる。
【0126】
なお、外光遮断部としての紫外線遮蔽膜や蛍光生成部としての表示膜をシート状の有機膜シートで作り透明板に貼ると簡単である。この際、紫外線遮蔽膜は運転席側から見て外側に貼ると良い。また、蛍光生成部としての表示膜は運転席側から見て内側に貼ると良い。どちらかのみ有機膜シートとして貼ることもコストを下げることができ有効である。
【0127】
なお、本実施の形態1及び2で説明した画像表示装置は車両用を例にとって説明してきたが、本発明の画像表示装置は、車両用に限定するものではなく、背面から太陽光などの外光が照射するような透明板の表面に表示部を形成しているものであれば車両用以外の用途のものにも適用することができる。
【0128】
また、本実施の形態1および2において、画像表示装置の蛍光生成部としての表示膜にレーザ光を走査して照射する構成例を用いて説明したが、レーザ光が2次元画像デバイスを用いて変調されたのちに表示膜全体または一部に照射されて蛍光を生じさせて文字または画像が表示されるようにしてもよい。2次元画像デバイスには透過型液晶よりも反射型のディジタルミラーデバイス(DMD)が適している。何故なら、紫外レーザ光を透過させる場合、透過率が落ちたり、また紫外レーザ光で液晶が劣化したりということが生じるからである。一方、DMDは紫外レーザ光を反射させるだけなので、このような問題は生じない。また、レーザ光源から2次元画像デバイスにレーザ光を照射するまでのレーザ光の伝搬に関し、レーザ光を2次元画像デバイスの直前まで光ファイバで引いてくるのが良い。このような構成とすることにより、放熱環境のよいところや収納しやすいところにレーザ光源を配置して、レーザ光源で発熱した熱を効果的に放熱することができる。これにより、レーザ光源を室温に近い温度で低消費電力かつ長寿命で動作させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本画像表示装置は、運転に必要な車両情報などがフロントガラスの一部に表示されるために運転中のドライバーは視点を大きく移動させる必要がなく、また、表示される画像情報などを外光の強弱に関係なく高輝度かつ高コントラストで表示することができる。本画像表示装置によれば、安全かつ快適な車両の運転が可能となるため、車両などの移動用の乗り物などに特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る画像表示装置を搭載した車両の概略構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る画像表示装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る画像表示装置の表示部の概略構成を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る画像表示装置の表示部を構成する画像光量検出部の概略構成を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る画像表示装置が備える表示部近傍の光学系の概略構成を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る画像表示装置が備えるレーザ光源近傍の光学系の概略構成を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る画像表示装置が備えるレーザ光源近傍の他の光学系の概略構成を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る画像表示装置が備える表示用レーザ光の走査部を含む光学系の概略構成を示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る車両用のカラー画像表示装置が備える表示部の主要部の概略構成を示す断面図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に係る車両用のカラー画像表示装置が備える走査部を含む光学系の概略構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0131】
10 画像表示装置
11,36 レーザ光源
11a 光ファイバ
11b レンズ
12 透明板(外光遮断部)
12a 背面側
12b 主面
13,13A,13B,30 40 表示部
13a,31 表示膜(蛍光生成部)
13b 反射防止膜
13c 背面
13d 光量調節膜
13e 外光フィルタ膜(外光遮断部)
13f 保護膜
14 制御部
15 太陽光
15a 太陽
16,32(32a,32b,32c) レーザ光
16b 反射光
17,33 蛍光
18,25,35 ビーム走査部
18a 走査空間
19 受光素子
20 座席
21 車両
21a フロントガラス
21b ダッシュボード
22 運転席
22a 眼
22b 視覚空間
22c 表示用レーザ光遮蔽部
23 画像表示領域
23a 蛍光受光素子
23b 光量検出領域
23c 透明接着剤
24,34(34A,34B,34C) 半導体レーザ素子
24a (24A,24B,24C) 活性領域
24b 金属板
24c,24d,24e,24f レンズ
25a ポリゴンミラー
25b 反射ミラー
25c 光変調器
26(26a,26b,26c) 走査光
27a,27b,27c 矢印
31a 赤色蛍光発光膜(蛍光生成部)
31b 緑色蛍光発光膜(蛍光生成部)
31c 青色蛍光発光膜(蛍光生成部)
34A, 34B, 34C 半導体レーザ素子
37a,37b ダイクロイックミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長が420nm以下の紫外または青色の表示用レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記表示用レーザ光の照射により蛍光を生成する蛍光生成部を含み、該蛍光生成部にて生成された蛍光を用いて画像を表示する表示部と、を備え、
前記表示部は、その背面側から照射される外光であって、前記蛍光が生成される波長領域にある外光が前記蛍光生成部に入射されないように遮断する外光遮断部をさらに含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記外光遮断部は、前記蛍光生成部の背面側に形成された透明板を含み、
前記透明板は、前記蛍光が生成される波長領域にある外光を遮断する材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記外光遮断部は、前記蛍光生成部の背面側に形成された外光フィルタ膜を含み、
前記外光フィルタ膜は、前記蛍光が生成される波長領域にある外光を遮断する材料を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
上記表示部は、前記蛍光生成部の背面側に形成され、当該蛍光生成部に到達する外光の量を調整する光量調節膜をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の画像表示装置。
【請求項5】
さらに、前記光量調節膜を制御する制御部と、
前記蛍光生成部の背面側に配置された受光素子と、を含み、
前記制御部は、前記受光素子で受光した外光の光量に基づいて、前記光量調節膜を制御し、前記外光が当該光量調節膜を透過する光量を調節することを特徴とする請求項4に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記表示部は、少なくとも前記蛍光生成部の内側の表面を覆うように形成された反射防止膜をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記反射防止膜が、光触媒作用を有する材料を含むことを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記反射防止膜は、単層または多層で構成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記レーザ光源は、前記表示用レーザ光が、前記蛍光生成部の中に焦点を結ぶように構成されていることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記表示部に対して前記表示用レーザ光を走査する走査部をさらに備え、
前記蛍光生成部は、前記走査部により前記表示用レーザ光が前記蛍光生成部上を走査することよって前記画像を表示する蛍光を生成することを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記レーザ光源は、複数のストライプ状の活性領域を有する半導体レーザ素子を含むことを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の画像表示装置。
【請求項12】
前記蛍光が緑色であることを特徴とする請求項1ないし11の何れか1項に記載の画像表示装置。
【請求項13】
前記レーザ光源は、少なくとも中心波長が異なる3つの波長領域のレーザ光を出射する半導体レーザ素子を含み、前記蛍光生成部は、前記表示用レーザ光の照射により、赤色、緑色及び青色の蛍光を生成することを特徴とする請求項1ないし11の何れか1項に記載の画像表示装置。
【請求項14】
前記蛍光生成部の裏面側に形成された透明板が車両のフロントガラスの一部を構成する画像表示装置であって、
前記表示部に対して前記表示用レーザ光を走査する走査部と、
前記レーザ光源から出射される前記表示用レーザ光を前記走査部に導く光ファイバと、を備えたことを特徴とする請求項1ないし13の何れか1項に記載の画像表示装置。
【請求項15】
前記レーザ光源は、前記車両におけるダッシュボードまたは座席の下部に配置されていることを特徴とする請求項14に記載の画像表示装置。
【請求項16】
さらに、前記走査部にて走査した前記表示用レーザ光が、前記車両の乗車者の視覚空間へ入ることを防止する表示用レーザ光遮蔽部を備えていることを特徴とする請求項14または15に記載の画像表示装置。
【請求項17】
前記車両の乗車者のシートベルトが所定の位置に固定されていない状態では、前記レーザ光源の電源を切断するように制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項14ないし16の何れか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−139940(P2009−139940A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290955(P2008−290955)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】