画像記録方法
【課題】画像の絵柄と画像の凹凸パターンとが対応し、且つ高画質な印刷物を容易に得る画像記録方法を提供する。
【解決手段】液滴吐出法を用いて形成材料を溶解または分散させた液状体を塗布することにより、支持体上に画像と該画像に対応した凹凸形状とを記録する画像記録方法であって、画像の画像データの一部を用いて、支持体上に選択的に設けられる下地層の画像データである下地層データを生成する工程S3と、下地層データに基づいて、描画領域の輪郭が下地層データを構成する複数の画素間の境界と重ならないように縮小したビットマップデータを作成する工程S4と、ビットマップデータに基づいて、支持体上に選択的に液状体を塗布することにより下地層を形成する工程S5と、画像データに基づいて、下地層および支持体の上に液状体を塗布することにより下地層及び支持体の表面に接する画像層を形成する工程S6と、を有する。
【解決手段】液滴吐出法を用いて形成材料を溶解または分散させた液状体を塗布することにより、支持体上に画像と該画像に対応した凹凸形状とを記録する画像記録方法であって、画像の画像データの一部を用いて、支持体上に選択的に設けられる下地層の画像データである下地層データを生成する工程S3と、下地層データに基づいて、描画領域の輪郭が下地層データを構成する複数の画素間の境界と重ならないように縮小したビットマップデータを作成する工程S4と、ビットマップデータに基づいて、支持体上に選択的に液状体を塗布することにより下地層を形成する工程S5と、画像データに基づいて、下地層および支持体の上に液状体を塗布することにより下地層及び支持体の表面に接する画像層を形成する工程S6と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表面に凹凸を有する画像を印刷することにより、陰影や質感などをより豊かに表現する印刷技術が開発されている。このような技術を用いると、例えば、木目調の印刷物を例に取ると、表面に凹凸を形成することで、一見して平板な印刷物と分かるものではなく、より木の質感に近い表現がなされた印刷物を得ることができる。
【0003】
このような印刷物は、従来、画像が印刷された印刷物の表面に、エンボス加工や箔押しによって凹凸を形成することにより製造されてきた。しかし、エンボス加工には、専用の金型が必要である上、エンボス加工および箔押しのいずれの方法であっても、すでに印刷された画像に対応した凹凸を設けるためには高精度の加工が必要となり、印刷された画像の絵柄と、重ねて形成する凹凸のパターンと、を一致させることが困難であった。
【0004】
そこで近年では、印刷された画像の絵柄と、凹凸パターンと、を一致させるべく、画像を印刷する工程において凹凸も同時に形成する技術が検討されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
特許文献1では、印刷する画像の輪郭と同じ、またはより大きい輪郭を有する画像をベース画像として支持体上に形成し、該ベース画像に絵柄画像を重ねて形成することにより、支持体から絵柄全体が盛り上がった印刷物を実現している。
【0006】
特許文献2では、支持体上に3次元形状を印刷するにあたって、まず印刷したい3次元形状のイメージ情報のうち支持体表面方向のデータ(2次元データ)を用いて画像を印刷し、次いで、残る支持体表面の法線方向(高さ方向)のデータを用いて、印刷した2次元画像上の所望箇所に透明または不透明のインクで印刷を繰り返すことにより、立体形状を印刷することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−119243号公報
【特許文献2】特開2004−306593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記方法には次のような問題がある。すなわち、特許文献1の方法においては、印刷する画像全体が支持体から盛り上がった印刷物となるため、画像内に凹凸形状を付与し難い。また、画像内に凹凸形状を付与する方法として、印刷時に所望領域範囲のみインク量を増やすことによって絵柄画像やベース画像の層厚を部分的に変化させるという製造方法が開示されているものの、当該所望領域範囲をどのように設定し凹凸を設けるのかという点については記載がない。
【0009】
画像の絵柄と凹凸パターンとを一致させるためには、どのように凹凸を設ける箇所を設定し、更に、形成する凹凸パターンと絵柄画像とをどのように一致させるかという点が最も重要な技術となる。特許文献1にはこの点に記載がないため、絵柄に対応した凹凸形状を有する印刷物を得ることは困難である。
【0010】
また、特許文献2の方法では、予め所望の2次元画像を印刷した上に、高さ方向の情報を付与することとしている。下地となる2次元画像と同じ色の不透明インクを用い、高さ方向の情報を印刷で表現しようとする場合には、積層する各層は、高さを表現すると共に、画像形成も行うこととなる。このような場合、積層する各層においては、支持体上でインクが塗れ広がることがほぼ不可避的に生じるため、複数層を積層させて高さと絵柄とを表現する場合、インクの塗れ広がりによって画像の輪郭がぼけやすく、鮮明な画質の印刷物を得にくい。
【0011】
また、下地となる2次元画像が視認できる透明インクを用いて高さ方向の情報を表現する場合には、平らな面に印刷された画像の表面に凹凸を有する透明な層が形成されることによって、擬似的に2次元画像に凹凸が付いているように認識させるに過ぎず、画像そのものが凹凸を有し3次元的に表現された印刷物と比べて、乏しい表現しかできない。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、画像の絵柄と画像の凹凸パターンとが対応し、且つ高画質な印刷物(記録物)を容易に得る画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の画像記録方法は、液滴吐出法を用いて形成材料を溶解または分散させた液状体を塗布することにより、支持体上に画像と該画像に対応した凹凸形状とを記録する画像記録方法であって、前記画像の画像データの一部を用いて、前記支持体上に選択的に設けられる下地層の画像データである下地層データを生成する工程と、前記下地層データに基づいて、描画領域の輪郭が前記下地層データを構成する複数の画素間の境界と重ならないように縮小したビットマップデータを作成する工程と、前記ビットマップデータに基づいて、前記支持体上に選択的に前記液状体を塗布することにより前記下地層を形成する工程と、前記画像データに基づいて、前記下地層および前記支持体の上に前記液状体を塗布することにより前記下地層及び前記支持体の表面に接する画像層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、下地層を形成するための画像データ(下地層データ)が、画像層を形成するための画像データと共通したデータから生成されることとなる。このようなデータを元に画像を重ね合わせることにより、画像層の表面には絵柄に対応した起伏が生じ、容易に下地層の凹凸パターンと画像層の絵柄とを合わせることができる。
【0015】
しかし、下地層と画像層とを共通する画像データを基にして作成すると、下地層の画像データの解像度と画像層の画像データの解像度とが同じとなることから、画像層の絵柄と下地層の凹凸パターンとを一致させるように重ねる場合、各層の画像データを構成する画素の境界が一致することになる。
【0016】
対して、本発明の方法では、下地層形成用の画像データを基に実際に描画を行う際、描画用のビットマップデータは、下地層形成用の画像データが示す輪郭よりも小さくなるように作成する。この際、ビットマップデータを基に形成される下地層の輪郭が、画像データを構成する画素の境界と重ならないように、データを作成する。
【0017】
このようにして作成したビットマップデータに基づいて下地層を作成し、さらに下地層に重なる画像層を形成すると、下地層の輪郭は画像データを構成する画素を横切る形で存在することとなるため、下地層の側面には画像層の画素に対応する描画が施されることとなる。そのため、下地層の側面を確実に覆い、下地層の側面が露出する色抜けを防止して画像層を形成できる。
【0018】
そのため、画像の絵柄と画像の凹凸パターンとを対応させ、更には同じ画像データを元にしながら、下地層を確実に覆う画像層を設ける事ができ、高画質な印刷物を容易に印刷することができる。
【0019】
本発明においては、前記画像層における前記下地層部と平面的に重なる箇所において、該下地層の形成に要する液状体量よりも多くの前記液状体を用いて、前記画像層を形成することが望ましい。
この方法によれば、縮小した輪郭を有する下地層と重なる画像層が、相対的に下地層よりも多くの液状体を用いて形成されることとなるため、形成される画像層が確実に下地層を覆い、色抜けを防止することができる。
【0020】
本発明においては、前記画像層を形成する工程では、前記画像層における前記下地層の端部と平面的に重なる箇所において、該下地層の形成に要する液状体量よりも多くの前記液状体を用いて、前記画像層を形成することとしても良い。
この方法によれば、下地層の端部と重なる箇所に、選択的に多くの液状体を塗布して画像層を形成することで、効果的に色抜けを抑制することができる。
【0021】
本発明においては、前記画像データに含まれる明度データに基づき、予め定めた明度の閾値を境に多値化して前記下地層データを生成することが望ましい。
画像には凹凸に起因した陰影が表現されるため、窪んだ部分は影となり暗い画像となっていることが多い。そのため、この方法によれば、印刷する画像のグレースケールデータ(明度データ)に基づいて凹凸の情報を代用することで、容易に凹凸を表現するための下地層データとすることができる。
【0022】
本発明においては、前記画像データは、複数の色情報を含み、前記複数の色情報毎に含まれる明度データの少なくとも1つに基づいて、前記下地層データを生成することが望ましい。
この方法によれば、凹凸を強調したい色成分に基づいて下地層を形成することができるため、豊かな凹凸表現が可能となる。
【0023】
本発明においては、前記複数の色情報毎に含まれる明度データ毎に、前記下地層データを生成し、前記下地層を形成する工程では、複数の前記下地層データに基づいて下地層を形成することが望ましい。
この方法によれば、各色の画像データについて、多値化された下地層の画像データ(下地層データ)を生成するため、各色に基づいた複数の下地層データを重ね合わせることによって、下地層の高さが場所によって変化することになり、より豊かな凹凸表現が可能となる。
【0024】
本発明においては、前記下地層データの生成に先だって、前記画像の元となる対象物の表面凹凸を実測し、該表面凹凸の実測値を用いて前記下地層データを補正することが望ましい。
この方法によれば、画像の絵柄の濃淡と実際の凹凸形状とを整合させ、より質感の高い凹凸表現が可能となる。例えば、例えば画像としては暗く濃い色で表されているものの、実際には窪んでいないような、実際の凹凸形状に起因した陰影と、印刷画像として再現しようとする対象物の柄の濃淡と、が整合していない場合に、実測値を参照して実際の凹凸形状に整合させることが可能となる。
【0025】
本発明においては、記下地層データの生成に先だって、前記画像の元となる対象物の表面凹凸を実測し、前記表面凹凸の実測値を用いて前記下地層データを生成することとしても良い。
この方法によれば、実測値に基づいて下地層の高さや位置を再現することができるため、再現したい対象物の表面凹凸を良好に反映した印刷物を形成することが可能となる。
【0026】
本発明においては、前記下地層を形成する工程に先だって、前記支持体の表面を前記液状体に対して撥液化する撥液工程を有することが望ましい。
この方法によれば、下地層を形成する液状体が塗れ広がってしまうことに起因する解像度低下を抑制し、良好に凹凸表現がなされた下地層を形成することができる。
【0027】
本発明においては、前記下地層を形成する工程では、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させることにより、前記下地層を形成することが望ましい。
この方法によれば、形成される下地層データに基づいて起伏を有する下地層を容易に形成することが可能となる。
【0028】
本発明においては、前記画像層を形成する工程では、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させることにより、前記画像層を形成することが望ましい。
この方法によれば、インクを配した直後に光照射を行うことによって速やかに硬化させることができるため、インクの濡れ拡がりを防止することができ、起伏を有する下地層の上であっても良好に画像層の形成を行うことができる。
【0029】
本発明においては、前記下地層を形成する工程において、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクの一部を硬化させ、前記画像層を形成する工程では、一部を硬化させた光硬化型インクによって形成された前記下地層の上に、前記光硬化型インクを塗布し、光照射を行って、前記下地層および前記画像層を形成する前記光硬化型インクを併せて硬化させることが望ましい。
【0030】
ここで「一部を硬化」とは、光硬化型インクが、塗布された初期状態から一部は重合が進行しているものの、重合度が100%に達しておらず、モノマーやオリゴマーの官能基が残存している状態を指す。半硬化状態のインクは、粘度が上昇しているために、配置した箇所から塗れ広がることなく、また他のインクを重ねた場合に混ざり合って混色することはない。
【0031】
この方法によれば、半硬化状態として形成した下地層の上に画像層を積層させて硬化させることにより、未反応のまま残存する下地層の官能基と画像層の光硬化型インクとが反応し、両者の界面が強固に結合する。そのため、下地層と画像層とが界面で剥離し難くなり、形成される印刷物の表面の耐スクラッチ性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態の画像記録方法にて印刷する印刷物の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の描画装置の概略構成図である。
【図3】キャリッジの概略構成を示す側面図である。
【図4】キャリッジの概略構成を示す底面図である。
【図5】液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
【図6】光照射手段の説明図である。
【図7】画像データを処理する回路構成を示す概略説明図である。
【図8】画像データ処理のフローチャートである。
【図9】画像データの処理例を示す説明図である。
【図10】画像層を印刷する様子を示す工程図である。
【図11】第1実施形態の画像記録方法による印刷物の印刷工程を示す工程図である。
【図12】印刷方法の例を説明する説明図である。
【図13】第2実施形態の画像記録方法にて印刷する印刷物の一例を示す斜視図である。
【図14】第2実施形態の画像記録方法による印刷物の印刷工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態]
以下、図1〜図12を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る画像記録方法および描画装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0034】
図1は、本発明の画像記録方法にて形成される印刷物100Aの一例を示す斜視図である。印刷物100Aは、支持体Pの表面に絵柄が印刷されている。ここでは、例として木目調の絵柄が印刷された印刷物100Aを示す。詳しくは、支持体Pの表面に凹凸を形成する下地層101が設けられ、下地層101を覆って支持体Pの表面全面に木目調の絵柄を表示する画像層102が形成されている。
【0035】
支持体Pは、例えば樹脂材料を形成材料とし、可撓性を有するフィルムを用いることができる。形成材料としては、例えばPC(ポリカーボネート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)など、通常知られた材料を例示することができる。支持体Pは、光透過性を有していても良く、また不透明であっても良い。
【0036】
下地層101は、印刷物100Aの表面の凹凸を表現している層であり、支持体Pの表面のうち、所定の箇所に選択的に配置されている。下地層101の形成材料は、白色または透明な光硬化型インク(液状体)を用いる。光硬化型インクとしては、紫外線硬化型インクを好適に用いることができる。例えば、通常知られたウレタン系のモノマー、オリゴマーと、紫外線に反応する重合開始剤とを混合した組成物を、透明な紫外線硬化型インクとして用いることができ、このような透明な光硬化型インクをベースとして、白色顔料を混合したものを白色の紫外線硬化型インクとして用いることができる。
【0037】
画像層102は、印刷物100Aの絵柄を表現している層であり、下地層101の上面や側面を覆って、支持体Pの表面全面に形成されている。画像層102の形成材料は、上述の透明な光硬化型インク(ベースインク)に、例えばC(シアン)M(マゼンダ)Y(イエロー)K(黒)の顔料を混合した組成物を用いることができる。下地層101と画像層102とのベースインクには、同種のモノマーやオリゴマーを含む物を用いると、下地層101と画像層102との界面の密着性が高くなり好ましい。同じベースインクを用いることとすると簡便である。
【0038】
このようなインクが有色透明である場合、または有色不透明であっても画像層102が薄く、画像層を介して裏が透けて見えるような場合、画像層102に描かれた画像の視認性を高めるため、支持体Pは不透明であることが好ましい。支持体Pが白色に着色している場合、画像層102の発色を助け、良好な画質の画像を表現することができる。同様の理由から、支持体Pが透明である場合には、支持体Pの表面に白色の着色層を1層設け、全体として不透明であることと好ましい。
【0039】
このような印刷物100Aは、支持体Pとは反対側(画像層102側)から画像層102に描かれた画像を観察する構成となっている。印刷物100Aにおいては、画像が描かれた画像層102の表面に、下地層101によって形成されている凹凸が反映しており、画像層102に描かれた画像が立体的に表現されている。ここでは、画像層102に描かれた木目模様のうち、濃い色で描かれた木目部分に対応する箇所が凹部として表現されており、薄い色で描かれた部分が凸部として表現されている。
【0040】
図2は、本発明の描画装置の概略構成図である。描画装置1は、支持体P上に光硬化型インクを吐出し、吐出した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させ、支持体P上に文字・数字や各種の絵柄などを描画するものである。
【0041】
この描画装置1は、支持体Pを載置する基台2と、基台2上の支持体Pを図2中のX方向(第1方向)に搬送する搬送装置3と、光硬化型インクを吐出する液滴吐出ヘッド(図示せず)と、該液滴吐出ヘッドを複数備えてなるキャリッジ4と、このキャリッジ4を、X方向と直交するY方向(第2方向)に移動させる送り装置5と、を具備して構成されている。なお、本実施形態では、搬送装置3及び送り装置5により、支持体Pとキャリッジ4とを、第1方向(X方向)及び該第1方向に直交する第2方向(Y方向)にそれぞれ相対移動させる移動装置が構成されている。
【0042】
搬送装置3は、基台2上に設けられたワークステージ6及びステージ移動装置7を備えて構成されたものである。ワークステージ6は、ステージ移動装置7によって基台2上をX方向に移動可能に設けられたもので、製造工程において描画装置1の上流側に配置された搬送装置(図示せず)から搬送される支持体Pを、例えば真空吸着機構によってXY平面上に保持するものである。ステージ移動装置7は、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたもので、制御装置8から入力される、ワークステージ6のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ6をX方向に移動させるよう構成されたものである。
【0043】
図3,4は、キャリッジ4の説明図であり、図3は側断面図、図4は底面図である。図に示すように、キャリッジ4は、送り装置5に移動可能に取り付けられた矩形板状のもので、底面4a側に複数(本実施形態では4つ)の液滴吐出ヘッド9を、Y方向(第2方向)に沿って配列させた状態で保持したものである。
【0044】
これら複数の液滴吐出ヘッド9(9Y、9C、9M、9K、9W)は、後述するように多数(複数)のノズルを備えたもので、制御装置8から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、光硬化型インクの液滴を吐出するものである。また、これら液滴吐出ヘッド9(9Y、9C、9M、9K、9W)は、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(黒)に対応した光硬化型インク、および白色(W)の光硬化型インクをそれぞれ吐出するものであり、それぞれの液滴吐出ヘッド9には、図2に示すようにキャリッジ4を介してチューブ(配管)10が連結されている。
【0045】
Y(イエロー)に対応する液滴吐出ヘッド9Yには、チューブ10を介してY(イエロー)用の光硬化型インクを充填・貯蔵した第1タンク11Yが接続されており、これによって液滴吐出ヘッド9Yには、この第1タンク11YからY(イエロー)用の光硬化型インクが供給されるようになっている。
【0046】
同様に、C(シアン)に対応する液滴吐出ヘッド9CにはC(シアン)用の光硬化型インクを充填した第2タンク11C、M(マゼンタ)に対応する液滴吐出ヘッド9MにはM(マゼンタ)用の光硬化型インクを充填した第3タンク11M、K(黒)に対応する液滴吐出ヘッド9KにはK(黒)用の光硬化型インクを充填した第4タンク11K、W(白)に対応する液滴吐出ヘッド9WにはW(白)用の光硬化型インクを充填した第5タンク11W、がそれぞれ接続されている。このような構成によって各液滴吐出ヘッド9には、対応する光硬化型インクが供給されるようになっている。
【0047】
これら液滴吐出ヘッド9Y、9C、9M、9K、9W、チューブ(配管)10、タンク11Y、11C、11M、11K、11Wには、各色(Y、C、M、K、W)の系それぞれに、ヒーター等の加熱手段(図示せず)が設けられている。すなわち、それぞれの色の系では、液滴吐出ヘッド9、チューブ10、タンク11のうちの少なくとも一つに、光硬化型インクの粘度を低下させてその流動性を高める加熱手段が設けられており、これによって光硬化型インクは、液滴吐出ヘッド9からの吐出性が良好になるように調整されている。
【0048】
ここで、光硬化型インクは、例えば紫外線硬化型のインクなど、所定波長の光を受けて硬化するタイプのもので、モノマーと光重合開始剤と各色に対応する顔料とを含有し、さらに必要に応じて、界面活性剤や熱ラジカル重合禁止剤などの各種添加剤が配合されたものである。なお、このような光硬化型インクは、通常はその成分(配合)等によって吸収する光(紫外線)の波長域等が異なることから、硬化する波長の最適値、すなわち最適硬化波長も、インク毎に異なっている。
【0049】
図5は、液滴吐出ヘッド9の概略構成図である。図5(a)は液滴吐出ヘッド9をワークステージ6側から見た平面図、図5(b)は液滴吐出ヘッド9の部分斜視図、図5(c)は液滴吐出ヘッド9の1ノズル分の部分断面図である。
【0050】
図5(a)に示すように、液滴吐出ヘッド9は、複数(例えば180個)のノズルNをY方向(第2方向)と交差する方向、本実施形態ではX方向(第1方向)に配列しており、これら複数のノズルNによってノズル列NAを形成している。なお、図では1列分のノズルを示したが、液滴吐出ヘッド9に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能であり、例えばX方向に配列したノズル列NAをY方向に複数列設けてもよい。
【0051】
また、図5(b)に示すように、チューブ10と連結される材料供給孔20aが設けられた振動板20と、ノズルNが設けられたノズルプレート21と、振動板20とノズルプレート21との間に設けられたリザーバー(液溜まり)22と、複数の隔壁23と、複数のキャビティー(液室)24とを備えて構成されている。ノズルプレート21の表面(底面)は、複数のノズルNを形成したノズル面21aとなっている。振動板20上には、各ノズルNに対応して圧電素子(駆動素子)PZが配置されている。圧電素子PZは、例えばピエゾ素子からなっている。
【0052】
リザーバー22には、材料供給孔20aを介して供給される光硬化型インクが充填されるようになっている。キャビティー24は、振動板20と、ノズルプレート21と、1対の隔壁23とによって囲まれるようにして形成されおり、各ノズルNに対して1対1に対応して設けられている。また、各キャビティー24には、一対の隔壁23の間に設けられた供給口24aを介して、リザーバー22から光硬化型インクが導入されるようになっている。
【0053】
また、図5(c)に示すように、圧電素子PZは、圧電材料25を一対の電極26で挟持したもので、一対の電極26に駆動信号が印加されることにより、圧電材料25が収縮するように構成されたものである。したがって、このような圧電素子PZが配置されている振動板20は、圧電素子PZと一体になって同時に外側(キャビティー24の反対側)へ撓曲するようになっており、これによってキャビティー24の容積が増大するようになっている。
【0054】
よって、キャビティー24内に増大した容積分に相当する光硬化型インクが、液溜まり22から供給口24aを介して流入する。また、このような状態から圧電素子PZへの駆動信号の印加が停止すると、圧電素子PZと振動板20とは共に元の形状に戻り、キャビティー24も元の容積に戻る。これにより、キャビティー24内の光硬化型インクの圧力が上昇し、ノズルNから支持体Pに向けて光硬化型インクの液滴Lが吐出されるようになっている。
【0055】
なお、このような構成からなる液滴吐出ヘッド9は、そのノズルプレート21の底面、すなわちノズルNの形成面(ノズル面)NSが、図3に示すようにキャリッジ4の底面4aより下側となるように、該底面4aから突出して配置されている。
【0056】
また、キャリッジ4には、図3、図4に示すように、配列する複数(図では5つ)の液滴吐出ヘッド9を挟んで両側に光照射手段12が隣り合って配置されている。すなわち、光照射手段12は、Y方向に配列された液滴吐出ヘッド9の配列方向に沿って、その両側にそれぞれ配置されている。
【0057】
これら光照射手段12は、光硬化型インクを硬化させるためのもので、本実施形態では多数のLED(発光ダイオード)からなっている。ただし、本発明では、光照射手段12は、光硬化型インクの重合を促進する波長の光を射出可能であればLEDに限定されることなく、これ以外にも例えばレーザーダイオード(LD)や、さらには水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を光照射手段12として用いることができる。例えば、光硬化型インクとして紫外線硬化型のインクを用いる場合には、紫外線を射出する各種光源を用いることができる。
【0058】
本実施形態のLEDからなる光照射手段12は、照射する光が、液滴吐出ヘッド9が吐出する光硬化型インクの、最適硬化波長を含む波長帯域を有する光となっている。つまり、前述したように各光硬化型インクは、その成分(配合)等によって最適硬化波長が異なることが想定されるが、上述のような光を照射することにより、各光硬化型インクの最適硬化波長を有した光を照射するようになっている。
【0059】
図6は、光照射手段12の説明図である。光照射手段12にあっては、例えば図6(a)に示すような市販のLEDを光源13aが用いられるが、図6(b)に示すように、素子胴体側面を長方形や正方形などの多角形に加工した光源13bがより好適に用いられる。すなわち、この光源13bは、図6(c)に示すように縦横に整列させられて、矩形状の大きな一つの光照射源(光照射手段12)としてキャリッジ4に取り付けられ、用いられる。その際、各光源13bが図6(b)に示したように平面視長方形または正方形などに形成されていることにより、これを縦横に整列させた際に高密度で配置されるようになっている。したがって、形成した光照射源(光照射手段12)は、その光量が十分に多くなっている。
【0060】
また、光照射手段12は、図6(c)に示したように、対応する液滴吐出ヘッド9のノズル列NAの長さに対応して、これとほぼ同じ長さとなるように光源13bを配列して形成されている。そして、これら光源13bは、隣り合う一対の光源13b間15が、複数のノズルNの、隣り合う一対のノズルN間16に対応するようにして、配置されている。このような構成によって光照射手段12は、ノズルNから吐出された光硬化型インクに対して、光源13bからの光を確実に照射できるようになっている。すなわち、光源13b間15と対応する位置にノズルNがある場合に、このノズルNから吐出されたインクに対して光源13bからの光が十分に照射されない、といった不都合が回避されている。
【0061】
なお、図6(c)では、ノズルNと光源13bとが1:1で配置されているように記載しているが、実際にはノズルNは光源13bに比べて格段に小さく、したがって複数のノズルに対して1つの光源13bが対応するようになっている。その場合にも、前述したように、隣り合う一対の光源13b間15が、隣り合う一対のノズルN間16に対応するように構成される。
【0062】
また、図6(c)では、ノズル列NAに沿う光源13bの列を2列形成しているが、1列でもよく、3列以上でもよいのはもちろんである。さらに、図6(c)では光照射手段12を単一の光源群として示したが、例えば図4に示したように、複数の光源群によって一つの光照射手段12を構成するようにしてもよい。
【0063】
そして、このような光源13bからなる光照射手段12は、図6(b)に示した光源13bの発光面14が、図3に示したようにキャリッジ4の底面4aとほぼ面一になるようにキャリッジ4に取り付けられている。これにより、光照射手段12はその発光面が、対応する液滴吐出ヘッド9のノズル面より高い位置となっている。したがって、液滴吐出ヘッド9では、光照射手段12から照射された光がノズルNに照射され、ノズルN内のインクが硬化させられてノズル詰まりを生じる、といった不都合が確実に防止されている。
【0064】
また、キャリッジ4には、光照射手段12の近傍に、冷却手段(図示せず)が設けられている。冷却手段は、冷却水を循環させる方式のものや、ペルティエ素子(ペルチェ素子)からなるものなど、公知のものが用いられる。このような冷却手段が光照射手段12の近傍に配置されることにより、LEDからなる光源13b(13a)が自身や周辺の熱によって劣化し、寿命が低下するといったことが抑制され、光照射手段12の長寿命化が図られる。
【0065】
図2に戻って、キャリッジ4を移動させる送り装置5は、例えば基台2を跨ぐ橋梁構造をしたもので、Y方向(第2方向)及びXY平面に直交するZ方向(第3方向)に対して、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたものである。このような構成のもとに送り装置5は、制御装置8から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいて、キャリッジ4をY方向(第2方向)に移動させるとともに、Z方向(第3方向)にも移動させるようになっている。
【0066】
制御装置8は、ステージ移動装置7にステージ位置制御信号を出力し、送り装置5にキャリッジ位置制御信号を出力し、さらには液滴吐出ヘッド9の駆動回路基板(図示せず)に描画データ及び駆動制御信号を出力するものである。これによって制御装置8は、支持体Pとキャリッジ4とを相対移動させるべく、ワークステージ6の移動による支持体Pの位置決め動作、及びキャリッジ4の移動による液滴吐出ヘッド9の位置決め動作の同期制御を行い、さらに液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせることにより、支持体P上の所定の位置に光硬化型インクの液滴を配するようになっている。また、この制御装置8は、液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせるのとは別に、光照射手段12に光照射動作を行わせるようにもなっている。
描画装置は、以上のような構成となっている。
【0067】
図7〜9は、制御装置8における画像データの処理を説明する説明図であり、図7は、制御装置8において画像データを処理する回路構成を示す概略説明図、図8は画像データ処理のフローチャート、図9は、画像データの処理例を示す説明図である。
【0068】
本発明においては、印刷する画像の画像データを用いて、図2に示す支持体Pの表面に凹凸を表現するための下地層と、絵柄を表現する画像層とを描画し、図1に示すような印刷物100Aを形成する。以下、各図を参照しながら、画像データの処理を説明する。
【0069】
図7に示すように、制御装置8は、印刷する画像データおよび後述する任意の閾値を入力する入力部81、画像データをグレースケールに変換する下地層データ生成部83、閾値に基づいてグレースケールで表された画像データを2値化することにより下地層の画像データ(下地層データ)を生成する演算部85、2値化された下地層データおよび画像データを用いて駆動制御信号を生成し、液滴吐出ヘッドに出力する駆動信号生成部87、を有している。その他、各入力データおよび算出データを一時保存するメモリや、ルックアップテーブルなどの参照データを記憶する記憶部を有している。
【0070】
図8に示すように、入力部81から印刷する画像の画像データが入力されると(ステップS1)、下地層データ生成部83において画像データのグレースケールが作成され、明度に関するデータが取り出される(ステップS2)。
【0071】
入力された画像データが色情報を含むデータである場合には、下地層データ生成部83では、入力された画像データそのものをグレースケールに変換することとしても良く、画像データをR(赤)G(緑)B(青)やCMYKの単色毎に分版したデータについて、それぞれグレースケールに変換することとしても良い。
【0072】
次に、演算部85では、任意の閾値を境に、グレースケールに変換された画像データを2値化し、下地層データを生成する(ステップS3)。
【0073】
図9には、画像データを2値化した例を示す。例えば、図に示すように、データ入力部81から木目調の画像データが入力された場合、下地層データ生成部83にて、図9(a)に示すような木目画像のグレースケール画像が生成される。演算部85では、予め入力された閾値を元に、グレースケール画像を2値化し白黒表示とする。
【0074】
図9(b)では、図9(a)の画像を元に、元図の色の濃い(明度が低い)箇所を黒表示、色の薄い(明度が高い)箇所を白表示として2値化している。図9(c)では、図9(b)とは逆に、色の濃い(明度が低い)箇所を白表示、色の薄い(明度が高い)箇所を黒表示としている。図9(b)と図9(c)とは、丁度白黒が反転した画像となっている。
【0075】
ここで、図9(b)(c)のいずれの画像データを下地層データとして採用するかは、閾値の入力の際に決定しておき、図9(b)(c)のいずれか一方の画像データのみを生成する。例えば、元の画像データの色の濃い箇所を凹ませた印刷物を得る場合には、元の画像データの色の薄い箇所が盛り上がった下地層を形成すべく、図9(c)を下地層データとして生成し、黒表示箇所に印刷を行う駆動信号を生成する。この時、閾値が異なると得られる2値化データの線幅を変化するため、これを利用して、所望の線幅の下地層データを形成することができる。
【0076】
RGBやCMYKの単色毎に分版したデータについて、それぞれグレースケール画像に変換している場合には、演算部85において各色のグレースケール画像をそれぞれ2値化する。凹凸を強調したい色情報があれば、該当する色情報から得られる明度データについてのみ2値化する。
【0077】
次に、駆動信号生成部87では、2値化した画像データ(下地層データ)を用いて液滴吐出ヘッドの駆動信号を生成する(ステップS4)。駆動信号の生成には、まず画像情報である下地層データを用いてビットマップデータを作成し、印刷データを基に駆動信号を生成する。本発明では、ビットマップデータにおける描画領域の輪郭が、下地層データにおける描画領域の輪郭よりも小さくなるように、ビットマップデータを生成する。
【0078】
図10は、ビットマップデータの生成の様子を示す説明図である。図10(a)に示す図が、下地層データの一部を示すものであるとすると、まず、図10(b)に示すように、下地層データの解像度よりも高解像度なビットマップデータを作成する。図では、下地層データにおける1画素が、3×3のビットマップデータで表されることとしている。
【0079】
次いで、図10(c)に示すように、ビットマップデータの輪郭部分にあたるデータを削除して、下地層データの描画領域AR1の輪郭よりも小さい描画領域AR2に下地層を形成するためのビットマップデータを作成する。この際、輪郭部分の削除幅が、元の下地層データの画素ピッチに対して整数倍となると、縮小後の描画領域AR2の輪郭が下地層データのデータ境界部と重なるため好ましくない。
【0080】
ここでは、図10(b)に示す描画領域AR1の輪郭に沿って一律1ドット分削除することとしているが、削除の仕方はこれに限らない。例えば、描画する下地層の幅に応じて削除幅を変更させることとしても良い。駆動信号生成部87では、このようにして得られたビットマップデータを用いて、下地層作成用の駆動信号を生成する。
【0081】
次に、駆動信号生成部87は、作成した駆動信号をキャリッジ4に送信し、液滴吐出ヘッドから光硬化型インクを吐出して、下地層を印刷する(ステップS5)。
【0082】
ここで、上述のように、RGBやCMYKの単色毎に分版したデータについて、下地層データを生成している場合、各色に基づいた複数の下地層データについてそれぞれビットマップデータを作成する。複数のビットマップデータをもとに下地層を重ね合わせることによって、下地層の高さが場所によって変化することになるため、豊かな凹凸表現が可能となる。凹凸を強調したい色情報から得られる明度データについてのみ2値化している場合には、該当する色に対応した下地層が形成される。
【0083】
また、閾値を複数用意しておき、複数の閾値についてステップS3からS5を行うことにより、線幅が高さ方向に段階的に変化した下地層を形成することができ、なめらかな凹凸表現が可能な下地層とすることもできる。
【0084】
下地層の印刷が終了すると、駆動信号生成部87は、画像データを用いて液滴吐出ヘッドの駆動信号を生成し、画像層を印刷する(ステップS6)。ここで、画像層の印刷は、下地層と平面的に重なる領域に画像層を設けるかどうか(画像層の印刷箇所に重なる下地層があるかどうか)で、光硬化型インクの塗布量を制御しながら行うことができる。具体的には、下地層と重なる印刷箇所では、下地層と重ならない印刷箇所よりも多くの光硬化型インクを塗布して画像層を形成することとしても良い。更には、下地層の端部と重なる部分だけ選択的にインクの塗布量を増加させることもできる。このようにすると、縮小した下地層の輪郭部分を確実に覆って画像層を形成することができる。
【0085】
塗布量の制御は、例えば、液滴吐出ヘッドから一度に吐出されるインク量を増減させて行っても良く、また、一度に吐出されるインク量は一定とした上で、同じ箇所に多くの液滴を吐出することにより行っても構わない。
【0086】
図11、12は、印刷物100Aの印刷工程を示す説明図であり、図11は工程図、図12は印刷方法の例を説明する説明図である。以下に示す工程は、上述のフローチャートにおいてはステップS4,S5で示された工程に該当する。
【0087】
まず、図11(a)に示すように、紫外線硬化型インクを用い、画像層と共通する画像データから作成した下地層データを用いて、支持体Pの上に下地層101を印刷する。支持体P上に塗布された紫外線硬化型インクには、不図示の液滴吐出ヘッドに併設された光照射手段から紫外線が照射され、下地層101が形成される。
【0088】
このとき、紫外線硬化型インクの塗れ広がりを防ぐため、支持体Pの表面に予め撥液処理を行っておくと好ましい。撥液処理のための撥液材料としては、通常知られたシラン化合物、フルオロアルキル基を有する化合物、フッ素樹脂(フッ素を含む樹脂)、及びこれらの混合物を用いることができ、支持体Pの表面に塗布して撥液層を形成することにより、支持体Pの表面に撥液性を付与することができる。
【0089】
また、下地層101を形成する際、線幅の太い下地層パターンでは盛り上げを高く、線幅の細い下地層パターンでは盛り上げを低くすることにより、印刷面内の高さ分布に幅を持たせ、より立体的な印刷を行うことができる。
【0090】
具体的には、線幅L1の太い下地層パターンを印刷する際に、まず、支持体P表面に、互いに離間した状態で下地層の一部を形成する紫外線硬化型インクI1を配置して硬化させ(図12(a))、次いで、先に配置した紫外線硬化型インクI1の間に紫外線硬化型インクI2を配置して(図12(b))印刷を行う。このようにして下地層を形成することにより、一度に全てが繋がった状態で紫外線硬化型インクIを配置する場合(図12(c))と比べて、盛り上げを高くすることができる。
【0091】
これは、図12(c)のように一度に全てが繋がった状態で印刷すると、硬化前のインクが自重に押されて塗れ広がりやすく、平らな印刷状態となりやすいのに対し、図12(a)(b)のように、分割して印刷すると、すでに硬化して高さが出ているインクI1に
インクI2が乗り上げる形となるため、高さ(下地層の厚さ)を稼ぎやすいことによる。
【0092】
もちろん、図12(c)のように平らな印刷状態となる印刷を行うことにより、線幅の太い下地層パターンと線幅の細い下地層パターンとの高さ分布を一定にすることも可能である。
【0093】
次に、図11(b)に示すように、紫外線硬化型インクを用い、支持体Pの上に下地層101を覆う画像層102を印刷する。本発明の印刷方法では、下地層の凹凸パターンが、画像層の絵柄を元に生成されているため、絵柄と良好に対応した凹凸パターンとなっている。
【0094】
また、従来の印刷方法では、絵柄と凹凸のパターンとを合わせた印刷物とすることが困難であったが、本発明では、下地層101と画像層102との元となる画像データが共通している。そのため、互いのビットマップ座標を重ね合わせることで、容易に下地層101の凹凸パターンと画像層102の絵柄とを位置合わせすることができる。
【0095】
更に、下地層101の形成時に光照射量を制御し、下地層101を半硬化状態としておくと、半硬化状態の下地層101の上に画像層102を積層させることとなる。すると、画像層102の形成時における光照射時に、未反応のまま残存する下地層101の官能基と画像層102の紫外線硬化型インクの官能基とが反応し、両者の界面が強固に結合する。そのため、下地層101と画像層102とが界面で剥離し難くなり、印刷物100Aの表面の耐スクラッチ性が高まるため好ましい。
【0096】
このような場合、画像層102形成後に、下地層101と画像層102とを完全に硬化させるための光照射工程を別途設けることとしても良い。このような光照射工程では、使用する紫外線硬化型インクの完全硬化を目的とするため、波長帯域が広く照度量が多いハロゲンランプなどを光源として用いることが好ましい。
以上のようにして、本発明の画像記録方法を用い、印刷物100Aを形成する。
【0097】
以上のような方法の画像記録方法によれば、画像の絵柄と画像の凹凸パターンとを良好に一致させ、更に、下地層101と重なる位置で画像層102の色抜けが無い、高画質な印刷物100Aを印刷することができる。
【0098】
また、以上のような描画装置1によれば、制御装置8において、元のデータが共通する画像データ及び下地層データに基づいて、液滴吐出ヘッド9の駆動信号を形成することとなる。元となるデータが共通するため、両データのビットマップ座標を重ね合わせ易く、容易に下地層101の凹凸パターンと画像層102の絵柄とを合わせた画像を描画できる描画装置1とすることができる。
【0099】
なお、本実施形態においては、再現する凹凸形状の情報として明度データを用いることとしたが、これに加え、本発明の画像記録方法にて再現しようとする対象物の表面の凹凸を実測しておき、実測値を参照情報として用いることもできる。例えば、明度データからは凹んでいると判断される箇所について、実測値では凹んでいないことが明らかな場合、2値で表した当該箇所の下地層データの白黒を反転させることにより、対象物の表面凹凸を良好に再現する印刷物を形成することができる。
【0100】
また、本実施形態においては、画像データを2値化し下地層データを生成する際に用いる閾値について、使用者が指定する任意の値を用いる(閾値指定法)こととしたが、他にも閾値の指定の仕方については下記のような方法も用いることができる。
【0101】
例えば、形成される(下地層データ)2値データのうち、白データの面積比率(白データ数/全データ数)を指定して閾値を決定する方法(Pタイル法)、グレースケール画像の明度についてのヒストグラムが双峰性を持つ場合、その谷間を閾値とする方法(モード法)が挙げられる。
【0102】
また、2値化した時、白領域と黒領域とに関するクラス内分散とクラス間分散との分散比が、最大となるように閾値を決定する方法(判別分析法)、画像データの部分領域毎に閾値を変化させて2値化を行う方法(動的閾値決定法)、画像データの模様(輪郭)付近に存在する濃淡の変化を利用して閾値を決定する方法(ラプラシアン・ヒストグラム法、微分ヒストグラム法)を用いることもできる。
【0103】
また、本実施形態においては、再現する凹凸形状の情報として明度データを用いることとしたが、明度データを用いずに、上述の表面凹凸の実測値に基づいて、下地層データを作成し、当該下地層データに基づいて下地層を形成することとしても良い。このようにすると、実際に再現したい対象物の表面凹凸を良好に再現することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態においては、液滴吐出法を用いて下地層および画像層を形成したが、これに限らず、ロールスクリーン法やフレキソ印刷法などの通常知られた印刷方法を用いることができる。このような液滴吐出法以外の印刷方法を用いる場合には、下地層データを形成する場合に、閾値を元に3値以上に多値化することによって下地層データを形成することとしても良い。
【0105】
また、本実施形態においては、制御装置8において画像データを変換し下地層データを形成することとしたが、予め外部の計算機において下地層データを算出しておき、当該画像データを入力して下地層を形成することとしても構わない。
【0106】
また、本実施形態においては、光照射手段12は、複数の液滴吐出ヘッド9を挟んで両側に配置される事としたが、液滴吐出ヘッド9毎に設けることとしても構わない。このような構成の場合、光照射装置が、対応する液滴吐出ヘッド9が吐出する光硬化型インクの最適硬化波長を有した光を照射するようになっていると好ましい。
【0107】
[第2実施形態]
図13,14は、本発明の第2実施形態に係る画像記録方法の説明図である。本実施形態の画像記録方法で形成する印刷物100Bは、第1実施形態と一部共通している。異なるのは、印刷物100Bが支持体Pを介して画像層102の絵柄を観察する構成となっていることである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0108】
図13は、印刷物100Bの一例を示す斜視図である。印刷物100Bは、支持体Pの表面に絵柄が印刷されている。ここでは、例として木目調の絵柄が印刷された印刷物100Bを示す。詳しくは、光透過性を有する支持体Pの表面に凹凸を形成する下地層101が設けられ、下地層101を覆って支持体Pの表面全面に木目調の絵柄を表示する画像層102が形成されており、更に画像層102を覆って裏地層103が形成されている。
【0109】
支持体Pは、例えば光透過性を有する樹脂材料を形成材料とし、可撓性を有するフィルムを用いることができる。形成材料としては、例えばPC(ポリカーボネート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)など、通常知られた材料を例示することができる。
【0110】
下地層101は、上述の透明な光硬化型インクを用いて形成されており、下地層101の上面や側面を覆って印刷物100Bの絵柄を表現している画像層102が設けられている。
【0111】
更に、画像層102に描かれた画像の視認性を高めるため、不透明な裏地層103を設けることが好ましい。裏地層103が白色に着色している場合、画像層102の発色を助け、良好な画質の画像を表現することができる。裏地層103は、例えば白色の光硬化型インクを塗布して設けられている。
【0112】
このような印刷物100Bは、支持体Pを介して画像層102に描かれた画像を観察する構成となっている。印刷物100においては、支持体Pの視認側表面から、画像が描かれた画像層102までの距離が、透明な下地層101によって形成されている凹凸に応じて異なっており、画像層102に描かれた画像が立体的に表現されている。ここでは、画像層102に描かれた木目模様のうち、濃い色で描かれた木目部分に対応する箇所が凹部として表現されており、薄い色で描かれた部分が凸部として表現されている。
【0113】
図14は、印刷物100Bの印刷工程を示す工程図である。まず、図14(a)に示すように、下地層データに基づいて紫外線硬化型インクを塗布し紫外線照射を行って、支持体Pに接する下地層101を印刷する。次に、図14(b)に示すように、紫外線硬化型インクを用い、支持体Pの上に下地層101を覆う画像層102を印刷する。更に、図14(c)に示すように、白色の紫外線硬化型インクを用い、画像層102を覆う裏地層103を印刷する。
【0114】
以上のようにして、画像の絵柄と画像の凹凸パターンとを良好に一致させ、更に、下地層101と重なる位置で画像層102の色抜けが無い、高画質な印刷物100Bを印刷することができる。
【0115】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0116】
1…描画装置、8…制御装置、9…液滴吐出ヘッド、100…印刷物、101…下地層、102…画像層、I,I1,I2…インク(液状体)、L…液滴、P…支持体
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、表面に凹凸を有する画像を印刷することにより、陰影や質感などをより豊かに表現する印刷技術が開発されている。このような技術を用いると、例えば、木目調の印刷物を例に取ると、表面に凹凸を形成することで、一見して平板な印刷物と分かるものではなく、より木の質感に近い表現がなされた印刷物を得ることができる。
【0003】
このような印刷物は、従来、画像が印刷された印刷物の表面に、エンボス加工や箔押しによって凹凸を形成することにより製造されてきた。しかし、エンボス加工には、専用の金型が必要である上、エンボス加工および箔押しのいずれの方法であっても、すでに印刷された画像に対応した凹凸を設けるためには高精度の加工が必要となり、印刷された画像の絵柄と、重ねて形成する凹凸のパターンと、を一致させることが困難であった。
【0004】
そこで近年では、印刷された画像の絵柄と、凹凸パターンと、を一致させるべく、画像を印刷する工程において凹凸も同時に形成する技術が検討されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
特許文献1では、印刷する画像の輪郭と同じ、またはより大きい輪郭を有する画像をベース画像として支持体上に形成し、該ベース画像に絵柄画像を重ねて形成することにより、支持体から絵柄全体が盛り上がった印刷物を実現している。
【0006】
特許文献2では、支持体上に3次元形状を印刷するにあたって、まず印刷したい3次元形状のイメージ情報のうち支持体表面方向のデータ(2次元データ)を用いて画像を印刷し、次いで、残る支持体表面の法線方向(高さ方向)のデータを用いて、印刷した2次元画像上の所望箇所に透明または不透明のインクで印刷を繰り返すことにより、立体形状を印刷することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−119243号公報
【特許文献2】特開2004−306593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記方法には次のような問題がある。すなわち、特許文献1の方法においては、印刷する画像全体が支持体から盛り上がった印刷物となるため、画像内に凹凸形状を付与し難い。また、画像内に凹凸形状を付与する方法として、印刷時に所望領域範囲のみインク量を増やすことによって絵柄画像やベース画像の層厚を部分的に変化させるという製造方法が開示されているものの、当該所望領域範囲をどのように設定し凹凸を設けるのかという点については記載がない。
【0009】
画像の絵柄と凹凸パターンとを一致させるためには、どのように凹凸を設ける箇所を設定し、更に、形成する凹凸パターンと絵柄画像とをどのように一致させるかという点が最も重要な技術となる。特許文献1にはこの点に記載がないため、絵柄に対応した凹凸形状を有する印刷物を得ることは困難である。
【0010】
また、特許文献2の方法では、予め所望の2次元画像を印刷した上に、高さ方向の情報を付与することとしている。下地となる2次元画像と同じ色の不透明インクを用い、高さ方向の情報を印刷で表現しようとする場合には、積層する各層は、高さを表現すると共に、画像形成も行うこととなる。このような場合、積層する各層においては、支持体上でインクが塗れ広がることがほぼ不可避的に生じるため、複数層を積層させて高さと絵柄とを表現する場合、インクの塗れ広がりによって画像の輪郭がぼけやすく、鮮明な画質の印刷物を得にくい。
【0011】
また、下地となる2次元画像が視認できる透明インクを用いて高さ方向の情報を表現する場合には、平らな面に印刷された画像の表面に凹凸を有する透明な層が形成されることによって、擬似的に2次元画像に凹凸が付いているように認識させるに過ぎず、画像そのものが凹凸を有し3次元的に表現された印刷物と比べて、乏しい表現しかできない。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、画像の絵柄と画像の凹凸パターンとが対応し、且つ高画質な印刷物(記録物)を容易に得る画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の画像記録方法は、液滴吐出法を用いて形成材料を溶解または分散させた液状体を塗布することにより、支持体上に画像と該画像に対応した凹凸形状とを記録する画像記録方法であって、前記画像の画像データの一部を用いて、前記支持体上に選択的に設けられる下地層の画像データである下地層データを生成する工程と、前記下地層データに基づいて、描画領域の輪郭が前記下地層データを構成する複数の画素間の境界と重ならないように縮小したビットマップデータを作成する工程と、前記ビットマップデータに基づいて、前記支持体上に選択的に前記液状体を塗布することにより前記下地層を形成する工程と、前記画像データに基づいて、前記下地層および前記支持体の上に前記液状体を塗布することにより前記下地層及び前記支持体の表面に接する画像層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、下地層を形成するための画像データ(下地層データ)が、画像層を形成するための画像データと共通したデータから生成されることとなる。このようなデータを元に画像を重ね合わせることにより、画像層の表面には絵柄に対応した起伏が生じ、容易に下地層の凹凸パターンと画像層の絵柄とを合わせることができる。
【0015】
しかし、下地層と画像層とを共通する画像データを基にして作成すると、下地層の画像データの解像度と画像層の画像データの解像度とが同じとなることから、画像層の絵柄と下地層の凹凸パターンとを一致させるように重ねる場合、各層の画像データを構成する画素の境界が一致することになる。
【0016】
対して、本発明の方法では、下地層形成用の画像データを基に実際に描画を行う際、描画用のビットマップデータは、下地層形成用の画像データが示す輪郭よりも小さくなるように作成する。この際、ビットマップデータを基に形成される下地層の輪郭が、画像データを構成する画素の境界と重ならないように、データを作成する。
【0017】
このようにして作成したビットマップデータに基づいて下地層を作成し、さらに下地層に重なる画像層を形成すると、下地層の輪郭は画像データを構成する画素を横切る形で存在することとなるため、下地層の側面には画像層の画素に対応する描画が施されることとなる。そのため、下地層の側面を確実に覆い、下地層の側面が露出する色抜けを防止して画像層を形成できる。
【0018】
そのため、画像の絵柄と画像の凹凸パターンとを対応させ、更には同じ画像データを元にしながら、下地層を確実に覆う画像層を設ける事ができ、高画質な印刷物を容易に印刷することができる。
【0019】
本発明においては、前記画像層における前記下地層部と平面的に重なる箇所において、該下地層の形成に要する液状体量よりも多くの前記液状体を用いて、前記画像層を形成することが望ましい。
この方法によれば、縮小した輪郭を有する下地層と重なる画像層が、相対的に下地層よりも多くの液状体を用いて形成されることとなるため、形成される画像層が確実に下地層を覆い、色抜けを防止することができる。
【0020】
本発明においては、前記画像層を形成する工程では、前記画像層における前記下地層の端部と平面的に重なる箇所において、該下地層の形成に要する液状体量よりも多くの前記液状体を用いて、前記画像層を形成することとしても良い。
この方法によれば、下地層の端部と重なる箇所に、選択的に多くの液状体を塗布して画像層を形成することで、効果的に色抜けを抑制することができる。
【0021】
本発明においては、前記画像データに含まれる明度データに基づき、予め定めた明度の閾値を境に多値化して前記下地層データを生成することが望ましい。
画像には凹凸に起因した陰影が表現されるため、窪んだ部分は影となり暗い画像となっていることが多い。そのため、この方法によれば、印刷する画像のグレースケールデータ(明度データ)に基づいて凹凸の情報を代用することで、容易に凹凸を表現するための下地層データとすることができる。
【0022】
本発明においては、前記画像データは、複数の色情報を含み、前記複数の色情報毎に含まれる明度データの少なくとも1つに基づいて、前記下地層データを生成することが望ましい。
この方法によれば、凹凸を強調したい色成分に基づいて下地層を形成することができるため、豊かな凹凸表現が可能となる。
【0023】
本発明においては、前記複数の色情報毎に含まれる明度データ毎に、前記下地層データを生成し、前記下地層を形成する工程では、複数の前記下地層データに基づいて下地層を形成することが望ましい。
この方法によれば、各色の画像データについて、多値化された下地層の画像データ(下地層データ)を生成するため、各色に基づいた複数の下地層データを重ね合わせることによって、下地層の高さが場所によって変化することになり、より豊かな凹凸表現が可能となる。
【0024】
本発明においては、前記下地層データの生成に先だって、前記画像の元となる対象物の表面凹凸を実測し、該表面凹凸の実測値を用いて前記下地層データを補正することが望ましい。
この方法によれば、画像の絵柄の濃淡と実際の凹凸形状とを整合させ、より質感の高い凹凸表現が可能となる。例えば、例えば画像としては暗く濃い色で表されているものの、実際には窪んでいないような、実際の凹凸形状に起因した陰影と、印刷画像として再現しようとする対象物の柄の濃淡と、が整合していない場合に、実測値を参照して実際の凹凸形状に整合させることが可能となる。
【0025】
本発明においては、記下地層データの生成に先だって、前記画像の元となる対象物の表面凹凸を実測し、前記表面凹凸の実測値を用いて前記下地層データを生成することとしても良い。
この方法によれば、実測値に基づいて下地層の高さや位置を再現することができるため、再現したい対象物の表面凹凸を良好に反映した印刷物を形成することが可能となる。
【0026】
本発明においては、前記下地層を形成する工程に先だって、前記支持体の表面を前記液状体に対して撥液化する撥液工程を有することが望ましい。
この方法によれば、下地層を形成する液状体が塗れ広がってしまうことに起因する解像度低下を抑制し、良好に凹凸表現がなされた下地層を形成することができる。
【0027】
本発明においては、前記下地層を形成する工程では、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させることにより、前記下地層を形成することが望ましい。
この方法によれば、形成される下地層データに基づいて起伏を有する下地層を容易に形成することが可能となる。
【0028】
本発明においては、前記画像層を形成する工程では、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させることにより、前記画像層を形成することが望ましい。
この方法によれば、インクを配した直後に光照射を行うことによって速やかに硬化させることができるため、インクの濡れ拡がりを防止することができ、起伏を有する下地層の上であっても良好に画像層の形成を行うことができる。
【0029】
本発明においては、前記下地層を形成する工程において、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクの一部を硬化させ、前記画像層を形成する工程では、一部を硬化させた光硬化型インクによって形成された前記下地層の上に、前記光硬化型インクを塗布し、光照射を行って、前記下地層および前記画像層を形成する前記光硬化型インクを併せて硬化させることが望ましい。
【0030】
ここで「一部を硬化」とは、光硬化型インクが、塗布された初期状態から一部は重合が進行しているものの、重合度が100%に達しておらず、モノマーやオリゴマーの官能基が残存している状態を指す。半硬化状態のインクは、粘度が上昇しているために、配置した箇所から塗れ広がることなく、また他のインクを重ねた場合に混ざり合って混色することはない。
【0031】
この方法によれば、半硬化状態として形成した下地層の上に画像層を積層させて硬化させることにより、未反応のまま残存する下地層の官能基と画像層の光硬化型インクとが反応し、両者の界面が強固に結合する。そのため、下地層と画像層とが界面で剥離し難くなり、形成される印刷物の表面の耐スクラッチ性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1実施形態の画像記録方法にて印刷する印刷物の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の描画装置の概略構成図である。
【図3】キャリッジの概略構成を示す側面図である。
【図4】キャリッジの概略構成を示す底面図である。
【図5】液滴吐出ヘッドの概略構成図である。
【図6】光照射手段の説明図である。
【図7】画像データを処理する回路構成を示す概略説明図である。
【図8】画像データ処理のフローチャートである。
【図9】画像データの処理例を示す説明図である。
【図10】画像層を印刷する様子を示す工程図である。
【図11】第1実施形態の画像記録方法による印刷物の印刷工程を示す工程図である。
【図12】印刷方法の例を説明する説明図である。
【図13】第2実施形態の画像記録方法にて印刷する印刷物の一例を示す斜視図である。
【図14】第2実施形態の画像記録方法による印刷物の印刷工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第1実施形態]
以下、図1〜図12を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る画像記録方法および描画装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0034】
図1は、本発明の画像記録方法にて形成される印刷物100Aの一例を示す斜視図である。印刷物100Aは、支持体Pの表面に絵柄が印刷されている。ここでは、例として木目調の絵柄が印刷された印刷物100Aを示す。詳しくは、支持体Pの表面に凹凸を形成する下地層101が設けられ、下地層101を覆って支持体Pの表面全面に木目調の絵柄を表示する画像層102が形成されている。
【0035】
支持体Pは、例えば樹脂材料を形成材料とし、可撓性を有するフィルムを用いることができる。形成材料としては、例えばPC(ポリカーボネート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)など、通常知られた材料を例示することができる。支持体Pは、光透過性を有していても良く、また不透明であっても良い。
【0036】
下地層101は、印刷物100Aの表面の凹凸を表現している層であり、支持体Pの表面のうち、所定の箇所に選択的に配置されている。下地層101の形成材料は、白色または透明な光硬化型インク(液状体)を用いる。光硬化型インクとしては、紫外線硬化型インクを好適に用いることができる。例えば、通常知られたウレタン系のモノマー、オリゴマーと、紫外線に反応する重合開始剤とを混合した組成物を、透明な紫外線硬化型インクとして用いることができ、このような透明な光硬化型インクをベースとして、白色顔料を混合したものを白色の紫外線硬化型インクとして用いることができる。
【0037】
画像層102は、印刷物100Aの絵柄を表現している層であり、下地層101の上面や側面を覆って、支持体Pの表面全面に形成されている。画像層102の形成材料は、上述の透明な光硬化型インク(ベースインク)に、例えばC(シアン)M(マゼンダ)Y(イエロー)K(黒)の顔料を混合した組成物を用いることができる。下地層101と画像層102とのベースインクには、同種のモノマーやオリゴマーを含む物を用いると、下地層101と画像層102との界面の密着性が高くなり好ましい。同じベースインクを用いることとすると簡便である。
【0038】
このようなインクが有色透明である場合、または有色不透明であっても画像層102が薄く、画像層を介して裏が透けて見えるような場合、画像層102に描かれた画像の視認性を高めるため、支持体Pは不透明であることが好ましい。支持体Pが白色に着色している場合、画像層102の発色を助け、良好な画質の画像を表現することができる。同様の理由から、支持体Pが透明である場合には、支持体Pの表面に白色の着色層を1層設け、全体として不透明であることと好ましい。
【0039】
このような印刷物100Aは、支持体Pとは反対側(画像層102側)から画像層102に描かれた画像を観察する構成となっている。印刷物100Aにおいては、画像が描かれた画像層102の表面に、下地層101によって形成されている凹凸が反映しており、画像層102に描かれた画像が立体的に表現されている。ここでは、画像層102に描かれた木目模様のうち、濃い色で描かれた木目部分に対応する箇所が凹部として表現されており、薄い色で描かれた部分が凸部として表現されている。
【0040】
図2は、本発明の描画装置の概略構成図である。描画装置1は、支持体P上に光硬化型インクを吐出し、吐出した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させ、支持体P上に文字・数字や各種の絵柄などを描画するものである。
【0041】
この描画装置1は、支持体Pを載置する基台2と、基台2上の支持体Pを図2中のX方向(第1方向)に搬送する搬送装置3と、光硬化型インクを吐出する液滴吐出ヘッド(図示せず)と、該液滴吐出ヘッドを複数備えてなるキャリッジ4と、このキャリッジ4を、X方向と直交するY方向(第2方向)に移動させる送り装置5と、を具備して構成されている。なお、本実施形態では、搬送装置3及び送り装置5により、支持体Pとキャリッジ4とを、第1方向(X方向)及び該第1方向に直交する第2方向(Y方向)にそれぞれ相対移動させる移動装置が構成されている。
【0042】
搬送装置3は、基台2上に設けられたワークステージ6及びステージ移動装置7を備えて構成されたものである。ワークステージ6は、ステージ移動装置7によって基台2上をX方向に移動可能に設けられたもので、製造工程において描画装置1の上流側に配置された搬送装置(図示せず)から搬送される支持体Pを、例えば真空吸着機構によってXY平面上に保持するものである。ステージ移動装置7は、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたもので、制御装置8から入力される、ワークステージ6のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ6をX方向に移動させるよう構成されたものである。
【0043】
図3,4は、キャリッジ4の説明図であり、図3は側断面図、図4は底面図である。図に示すように、キャリッジ4は、送り装置5に移動可能に取り付けられた矩形板状のもので、底面4a側に複数(本実施形態では4つ)の液滴吐出ヘッド9を、Y方向(第2方向)に沿って配列させた状態で保持したものである。
【0044】
これら複数の液滴吐出ヘッド9(9Y、9C、9M、9K、9W)は、後述するように多数(複数)のノズルを備えたもので、制御装置8から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、光硬化型インクの液滴を吐出するものである。また、これら液滴吐出ヘッド9(9Y、9C、9M、9K、9W)は、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(黒)に対応した光硬化型インク、および白色(W)の光硬化型インクをそれぞれ吐出するものであり、それぞれの液滴吐出ヘッド9には、図2に示すようにキャリッジ4を介してチューブ(配管)10が連結されている。
【0045】
Y(イエロー)に対応する液滴吐出ヘッド9Yには、チューブ10を介してY(イエロー)用の光硬化型インクを充填・貯蔵した第1タンク11Yが接続されており、これによって液滴吐出ヘッド9Yには、この第1タンク11YからY(イエロー)用の光硬化型インクが供給されるようになっている。
【0046】
同様に、C(シアン)に対応する液滴吐出ヘッド9CにはC(シアン)用の光硬化型インクを充填した第2タンク11C、M(マゼンタ)に対応する液滴吐出ヘッド9MにはM(マゼンタ)用の光硬化型インクを充填した第3タンク11M、K(黒)に対応する液滴吐出ヘッド9KにはK(黒)用の光硬化型インクを充填した第4タンク11K、W(白)に対応する液滴吐出ヘッド9WにはW(白)用の光硬化型インクを充填した第5タンク11W、がそれぞれ接続されている。このような構成によって各液滴吐出ヘッド9には、対応する光硬化型インクが供給されるようになっている。
【0047】
これら液滴吐出ヘッド9Y、9C、9M、9K、9W、チューブ(配管)10、タンク11Y、11C、11M、11K、11Wには、各色(Y、C、M、K、W)の系それぞれに、ヒーター等の加熱手段(図示せず)が設けられている。すなわち、それぞれの色の系では、液滴吐出ヘッド9、チューブ10、タンク11のうちの少なくとも一つに、光硬化型インクの粘度を低下させてその流動性を高める加熱手段が設けられており、これによって光硬化型インクは、液滴吐出ヘッド9からの吐出性が良好になるように調整されている。
【0048】
ここで、光硬化型インクは、例えば紫外線硬化型のインクなど、所定波長の光を受けて硬化するタイプのもので、モノマーと光重合開始剤と各色に対応する顔料とを含有し、さらに必要に応じて、界面活性剤や熱ラジカル重合禁止剤などの各種添加剤が配合されたものである。なお、このような光硬化型インクは、通常はその成分(配合)等によって吸収する光(紫外線)の波長域等が異なることから、硬化する波長の最適値、すなわち最適硬化波長も、インク毎に異なっている。
【0049】
図5は、液滴吐出ヘッド9の概略構成図である。図5(a)は液滴吐出ヘッド9をワークステージ6側から見た平面図、図5(b)は液滴吐出ヘッド9の部分斜視図、図5(c)は液滴吐出ヘッド9の1ノズル分の部分断面図である。
【0050】
図5(a)に示すように、液滴吐出ヘッド9は、複数(例えば180個)のノズルNをY方向(第2方向)と交差する方向、本実施形態ではX方向(第1方向)に配列しており、これら複数のノズルNによってノズル列NAを形成している。なお、図では1列分のノズルを示したが、液滴吐出ヘッド9に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能であり、例えばX方向に配列したノズル列NAをY方向に複数列設けてもよい。
【0051】
また、図5(b)に示すように、チューブ10と連結される材料供給孔20aが設けられた振動板20と、ノズルNが設けられたノズルプレート21と、振動板20とノズルプレート21との間に設けられたリザーバー(液溜まり)22と、複数の隔壁23と、複数のキャビティー(液室)24とを備えて構成されている。ノズルプレート21の表面(底面)は、複数のノズルNを形成したノズル面21aとなっている。振動板20上には、各ノズルNに対応して圧電素子(駆動素子)PZが配置されている。圧電素子PZは、例えばピエゾ素子からなっている。
【0052】
リザーバー22には、材料供給孔20aを介して供給される光硬化型インクが充填されるようになっている。キャビティー24は、振動板20と、ノズルプレート21と、1対の隔壁23とによって囲まれるようにして形成されおり、各ノズルNに対して1対1に対応して設けられている。また、各キャビティー24には、一対の隔壁23の間に設けられた供給口24aを介して、リザーバー22から光硬化型インクが導入されるようになっている。
【0053】
また、図5(c)に示すように、圧電素子PZは、圧電材料25を一対の電極26で挟持したもので、一対の電極26に駆動信号が印加されることにより、圧電材料25が収縮するように構成されたものである。したがって、このような圧電素子PZが配置されている振動板20は、圧電素子PZと一体になって同時に外側(キャビティー24の反対側)へ撓曲するようになっており、これによってキャビティー24の容積が増大するようになっている。
【0054】
よって、キャビティー24内に増大した容積分に相当する光硬化型インクが、液溜まり22から供給口24aを介して流入する。また、このような状態から圧電素子PZへの駆動信号の印加が停止すると、圧電素子PZと振動板20とは共に元の形状に戻り、キャビティー24も元の容積に戻る。これにより、キャビティー24内の光硬化型インクの圧力が上昇し、ノズルNから支持体Pに向けて光硬化型インクの液滴Lが吐出されるようになっている。
【0055】
なお、このような構成からなる液滴吐出ヘッド9は、そのノズルプレート21の底面、すなわちノズルNの形成面(ノズル面)NSが、図3に示すようにキャリッジ4の底面4aより下側となるように、該底面4aから突出して配置されている。
【0056】
また、キャリッジ4には、図3、図4に示すように、配列する複数(図では5つ)の液滴吐出ヘッド9を挟んで両側に光照射手段12が隣り合って配置されている。すなわち、光照射手段12は、Y方向に配列された液滴吐出ヘッド9の配列方向に沿って、その両側にそれぞれ配置されている。
【0057】
これら光照射手段12は、光硬化型インクを硬化させるためのもので、本実施形態では多数のLED(発光ダイオード)からなっている。ただし、本発明では、光照射手段12は、光硬化型インクの重合を促進する波長の光を射出可能であればLEDに限定されることなく、これ以外にも例えばレーザーダイオード(LD)や、さらには水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を光照射手段12として用いることができる。例えば、光硬化型インクとして紫外線硬化型のインクを用いる場合には、紫外線を射出する各種光源を用いることができる。
【0058】
本実施形態のLEDからなる光照射手段12は、照射する光が、液滴吐出ヘッド9が吐出する光硬化型インクの、最適硬化波長を含む波長帯域を有する光となっている。つまり、前述したように各光硬化型インクは、その成分(配合)等によって最適硬化波長が異なることが想定されるが、上述のような光を照射することにより、各光硬化型インクの最適硬化波長を有した光を照射するようになっている。
【0059】
図6は、光照射手段12の説明図である。光照射手段12にあっては、例えば図6(a)に示すような市販のLEDを光源13aが用いられるが、図6(b)に示すように、素子胴体側面を長方形や正方形などの多角形に加工した光源13bがより好適に用いられる。すなわち、この光源13bは、図6(c)に示すように縦横に整列させられて、矩形状の大きな一つの光照射源(光照射手段12)としてキャリッジ4に取り付けられ、用いられる。その際、各光源13bが図6(b)に示したように平面視長方形または正方形などに形成されていることにより、これを縦横に整列させた際に高密度で配置されるようになっている。したがって、形成した光照射源(光照射手段12)は、その光量が十分に多くなっている。
【0060】
また、光照射手段12は、図6(c)に示したように、対応する液滴吐出ヘッド9のノズル列NAの長さに対応して、これとほぼ同じ長さとなるように光源13bを配列して形成されている。そして、これら光源13bは、隣り合う一対の光源13b間15が、複数のノズルNの、隣り合う一対のノズルN間16に対応するようにして、配置されている。このような構成によって光照射手段12は、ノズルNから吐出された光硬化型インクに対して、光源13bからの光を確実に照射できるようになっている。すなわち、光源13b間15と対応する位置にノズルNがある場合に、このノズルNから吐出されたインクに対して光源13bからの光が十分に照射されない、といった不都合が回避されている。
【0061】
なお、図6(c)では、ノズルNと光源13bとが1:1で配置されているように記載しているが、実際にはノズルNは光源13bに比べて格段に小さく、したがって複数のノズルに対して1つの光源13bが対応するようになっている。その場合にも、前述したように、隣り合う一対の光源13b間15が、隣り合う一対のノズルN間16に対応するように構成される。
【0062】
また、図6(c)では、ノズル列NAに沿う光源13bの列を2列形成しているが、1列でもよく、3列以上でもよいのはもちろんである。さらに、図6(c)では光照射手段12を単一の光源群として示したが、例えば図4に示したように、複数の光源群によって一つの光照射手段12を構成するようにしてもよい。
【0063】
そして、このような光源13bからなる光照射手段12は、図6(b)に示した光源13bの発光面14が、図3に示したようにキャリッジ4の底面4aとほぼ面一になるようにキャリッジ4に取り付けられている。これにより、光照射手段12はその発光面が、対応する液滴吐出ヘッド9のノズル面より高い位置となっている。したがって、液滴吐出ヘッド9では、光照射手段12から照射された光がノズルNに照射され、ノズルN内のインクが硬化させられてノズル詰まりを生じる、といった不都合が確実に防止されている。
【0064】
また、キャリッジ4には、光照射手段12の近傍に、冷却手段(図示せず)が設けられている。冷却手段は、冷却水を循環させる方式のものや、ペルティエ素子(ペルチェ素子)からなるものなど、公知のものが用いられる。このような冷却手段が光照射手段12の近傍に配置されることにより、LEDからなる光源13b(13a)が自身や周辺の熱によって劣化し、寿命が低下するといったことが抑制され、光照射手段12の長寿命化が図られる。
【0065】
図2に戻って、キャリッジ4を移動させる送り装置5は、例えば基台2を跨ぐ橋梁構造をしたもので、Y方向(第2方向)及びXY平面に直交するZ方向(第3方向)に対して、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備えたものである。このような構成のもとに送り装置5は、制御装置8から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいて、キャリッジ4をY方向(第2方向)に移動させるとともに、Z方向(第3方向)にも移動させるようになっている。
【0066】
制御装置8は、ステージ移動装置7にステージ位置制御信号を出力し、送り装置5にキャリッジ位置制御信号を出力し、さらには液滴吐出ヘッド9の駆動回路基板(図示せず)に描画データ及び駆動制御信号を出力するものである。これによって制御装置8は、支持体Pとキャリッジ4とを相対移動させるべく、ワークステージ6の移動による支持体Pの位置決め動作、及びキャリッジ4の移動による液滴吐出ヘッド9の位置決め動作の同期制御を行い、さらに液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせることにより、支持体P上の所定の位置に光硬化型インクの液滴を配するようになっている。また、この制御装置8は、液滴吐出ヘッド9に液滴吐出動作を行わせるのとは別に、光照射手段12に光照射動作を行わせるようにもなっている。
描画装置は、以上のような構成となっている。
【0067】
図7〜9は、制御装置8における画像データの処理を説明する説明図であり、図7は、制御装置8において画像データを処理する回路構成を示す概略説明図、図8は画像データ処理のフローチャート、図9は、画像データの処理例を示す説明図である。
【0068】
本発明においては、印刷する画像の画像データを用いて、図2に示す支持体Pの表面に凹凸を表現するための下地層と、絵柄を表現する画像層とを描画し、図1に示すような印刷物100Aを形成する。以下、各図を参照しながら、画像データの処理を説明する。
【0069】
図7に示すように、制御装置8は、印刷する画像データおよび後述する任意の閾値を入力する入力部81、画像データをグレースケールに変換する下地層データ生成部83、閾値に基づいてグレースケールで表された画像データを2値化することにより下地層の画像データ(下地層データ)を生成する演算部85、2値化された下地層データおよび画像データを用いて駆動制御信号を生成し、液滴吐出ヘッドに出力する駆動信号生成部87、を有している。その他、各入力データおよび算出データを一時保存するメモリや、ルックアップテーブルなどの参照データを記憶する記憶部を有している。
【0070】
図8に示すように、入力部81から印刷する画像の画像データが入力されると(ステップS1)、下地層データ生成部83において画像データのグレースケールが作成され、明度に関するデータが取り出される(ステップS2)。
【0071】
入力された画像データが色情報を含むデータである場合には、下地層データ生成部83では、入力された画像データそのものをグレースケールに変換することとしても良く、画像データをR(赤)G(緑)B(青)やCMYKの単色毎に分版したデータについて、それぞれグレースケールに変換することとしても良い。
【0072】
次に、演算部85では、任意の閾値を境に、グレースケールに変換された画像データを2値化し、下地層データを生成する(ステップS3)。
【0073】
図9には、画像データを2値化した例を示す。例えば、図に示すように、データ入力部81から木目調の画像データが入力された場合、下地層データ生成部83にて、図9(a)に示すような木目画像のグレースケール画像が生成される。演算部85では、予め入力された閾値を元に、グレースケール画像を2値化し白黒表示とする。
【0074】
図9(b)では、図9(a)の画像を元に、元図の色の濃い(明度が低い)箇所を黒表示、色の薄い(明度が高い)箇所を白表示として2値化している。図9(c)では、図9(b)とは逆に、色の濃い(明度が低い)箇所を白表示、色の薄い(明度が高い)箇所を黒表示としている。図9(b)と図9(c)とは、丁度白黒が反転した画像となっている。
【0075】
ここで、図9(b)(c)のいずれの画像データを下地層データとして採用するかは、閾値の入力の際に決定しておき、図9(b)(c)のいずれか一方の画像データのみを生成する。例えば、元の画像データの色の濃い箇所を凹ませた印刷物を得る場合には、元の画像データの色の薄い箇所が盛り上がった下地層を形成すべく、図9(c)を下地層データとして生成し、黒表示箇所に印刷を行う駆動信号を生成する。この時、閾値が異なると得られる2値化データの線幅を変化するため、これを利用して、所望の線幅の下地層データを形成することができる。
【0076】
RGBやCMYKの単色毎に分版したデータについて、それぞれグレースケール画像に変換している場合には、演算部85において各色のグレースケール画像をそれぞれ2値化する。凹凸を強調したい色情報があれば、該当する色情報から得られる明度データについてのみ2値化する。
【0077】
次に、駆動信号生成部87では、2値化した画像データ(下地層データ)を用いて液滴吐出ヘッドの駆動信号を生成する(ステップS4)。駆動信号の生成には、まず画像情報である下地層データを用いてビットマップデータを作成し、印刷データを基に駆動信号を生成する。本発明では、ビットマップデータにおける描画領域の輪郭が、下地層データにおける描画領域の輪郭よりも小さくなるように、ビットマップデータを生成する。
【0078】
図10は、ビットマップデータの生成の様子を示す説明図である。図10(a)に示す図が、下地層データの一部を示すものであるとすると、まず、図10(b)に示すように、下地層データの解像度よりも高解像度なビットマップデータを作成する。図では、下地層データにおける1画素が、3×3のビットマップデータで表されることとしている。
【0079】
次いで、図10(c)に示すように、ビットマップデータの輪郭部分にあたるデータを削除して、下地層データの描画領域AR1の輪郭よりも小さい描画領域AR2に下地層を形成するためのビットマップデータを作成する。この際、輪郭部分の削除幅が、元の下地層データの画素ピッチに対して整数倍となると、縮小後の描画領域AR2の輪郭が下地層データのデータ境界部と重なるため好ましくない。
【0080】
ここでは、図10(b)に示す描画領域AR1の輪郭に沿って一律1ドット分削除することとしているが、削除の仕方はこれに限らない。例えば、描画する下地層の幅に応じて削除幅を変更させることとしても良い。駆動信号生成部87では、このようにして得られたビットマップデータを用いて、下地層作成用の駆動信号を生成する。
【0081】
次に、駆動信号生成部87は、作成した駆動信号をキャリッジ4に送信し、液滴吐出ヘッドから光硬化型インクを吐出して、下地層を印刷する(ステップS5)。
【0082】
ここで、上述のように、RGBやCMYKの単色毎に分版したデータについて、下地層データを生成している場合、各色に基づいた複数の下地層データについてそれぞれビットマップデータを作成する。複数のビットマップデータをもとに下地層を重ね合わせることによって、下地層の高さが場所によって変化することになるため、豊かな凹凸表現が可能となる。凹凸を強調したい色情報から得られる明度データについてのみ2値化している場合には、該当する色に対応した下地層が形成される。
【0083】
また、閾値を複数用意しておき、複数の閾値についてステップS3からS5を行うことにより、線幅が高さ方向に段階的に変化した下地層を形成することができ、なめらかな凹凸表現が可能な下地層とすることもできる。
【0084】
下地層の印刷が終了すると、駆動信号生成部87は、画像データを用いて液滴吐出ヘッドの駆動信号を生成し、画像層を印刷する(ステップS6)。ここで、画像層の印刷は、下地層と平面的に重なる領域に画像層を設けるかどうか(画像層の印刷箇所に重なる下地層があるかどうか)で、光硬化型インクの塗布量を制御しながら行うことができる。具体的には、下地層と重なる印刷箇所では、下地層と重ならない印刷箇所よりも多くの光硬化型インクを塗布して画像層を形成することとしても良い。更には、下地層の端部と重なる部分だけ選択的にインクの塗布量を増加させることもできる。このようにすると、縮小した下地層の輪郭部分を確実に覆って画像層を形成することができる。
【0085】
塗布量の制御は、例えば、液滴吐出ヘッドから一度に吐出されるインク量を増減させて行っても良く、また、一度に吐出されるインク量は一定とした上で、同じ箇所に多くの液滴を吐出することにより行っても構わない。
【0086】
図11、12は、印刷物100Aの印刷工程を示す説明図であり、図11は工程図、図12は印刷方法の例を説明する説明図である。以下に示す工程は、上述のフローチャートにおいてはステップS4,S5で示された工程に該当する。
【0087】
まず、図11(a)に示すように、紫外線硬化型インクを用い、画像層と共通する画像データから作成した下地層データを用いて、支持体Pの上に下地層101を印刷する。支持体P上に塗布された紫外線硬化型インクには、不図示の液滴吐出ヘッドに併設された光照射手段から紫外線が照射され、下地層101が形成される。
【0088】
このとき、紫外線硬化型インクの塗れ広がりを防ぐため、支持体Pの表面に予め撥液処理を行っておくと好ましい。撥液処理のための撥液材料としては、通常知られたシラン化合物、フルオロアルキル基を有する化合物、フッ素樹脂(フッ素を含む樹脂)、及びこれらの混合物を用いることができ、支持体Pの表面に塗布して撥液層を形成することにより、支持体Pの表面に撥液性を付与することができる。
【0089】
また、下地層101を形成する際、線幅の太い下地層パターンでは盛り上げを高く、線幅の細い下地層パターンでは盛り上げを低くすることにより、印刷面内の高さ分布に幅を持たせ、より立体的な印刷を行うことができる。
【0090】
具体的には、線幅L1の太い下地層パターンを印刷する際に、まず、支持体P表面に、互いに離間した状態で下地層の一部を形成する紫外線硬化型インクI1を配置して硬化させ(図12(a))、次いで、先に配置した紫外線硬化型インクI1の間に紫外線硬化型インクI2を配置して(図12(b))印刷を行う。このようにして下地層を形成することにより、一度に全てが繋がった状態で紫外線硬化型インクIを配置する場合(図12(c))と比べて、盛り上げを高くすることができる。
【0091】
これは、図12(c)のように一度に全てが繋がった状態で印刷すると、硬化前のインクが自重に押されて塗れ広がりやすく、平らな印刷状態となりやすいのに対し、図12(a)(b)のように、分割して印刷すると、すでに硬化して高さが出ているインクI1に
インクI2が乗り上げる形となるため、高さ(下地層の厚さ)を稼ぎやすいことによる。
【0092】
もちろん、図12(c)のように平らな印刷状態となる印刷を行うことにより、線幅の太い下地層パターンと線幅の細い下地層パターンとの高さ分布を一定にすることも可能である。
【0093】
次に、図11(b)に示すように、紫外線硬化型インクを用い、支持体Pの上に下地層101を覆う画像層102を印刷する。本発明の印刷方法では、下地層の凹凸パターンが、画像層の絵柄を元に生成されているため、絵柄と良好に対応した凹凸パターンとなっている。
【0094】
また、従来の印刷方法では、絵柄と凹凸のパターンとを合わせた印刷物とすることが困難であったが、本発明では、下地層101と画像層102との元となる画像データが共通している。そのため、互いのビットマップ座標を重ね合わせることで、容易に下地層101の凹凸パターンと画像層102の絵柄とを位置合わせすることができる。
【0095】
更に、下地層101の形成時に光照射量を制御し、下地層101を半硬化状態としておくと、半硬化状態の下地層101の上に画像層102を積層させることとなる。すると、画像層102の形成時における光照射時に、未反応のまま残存する下地層101の官能基と画像層102の紫外線硬化型インクの官能基とが反応し、両者の界面が強固に結合する。そのため、下地層101と画像層102とが界面で剥離し難くなり、印刷物100Aの表面の耐スクラッチ性が高まるため好ましい。
【0096】
このような場合、画像層102形成後に、下地層101と画像層102とを完全に硬化させるための光照射工程を別途設けることとしても良い。このような光照射工程では、使用する紫外線硬化型インクの完全硬化を目的とするため、波長帯域が広く照度量が多いハロゲンランプなどを光源として用いることが好ましい。
以上のようにして、本発明の画像記録方法を用い、印刷物100Aを形成する。
【0097】
以上のような方法の画像記録方法によれば、画像の絵柄と画像の凹凸パターンとを良好に一致させ、更に、下地層101と重なる位置で画像層102の色抜けが無い、高画質な印刷物100Aを印刷することができる。
【0098】
また、以上のような描画装置1によれば、制御装置8において、元のデータが共通する画像データ及び下地層データに基づいて、液滴吐出ヘッド9の駆動信号を形成することとなる。元となるデータが共通するため、両データのビットマップ座標を重ね合わせ易く、容易に下地層101の凹凸パターンと画像層102の絵柄とを合わせた画像を描画できる描画装置1とすることができる。
【0099】
なお、本実施形態においては、再現する凹凸形状の情報として明度データを用いることとしたが、これに加え、本発明の画像記録方法にて再現しようとする対象物の表面の凹凸を実測しておき、実測値を参照情報として用いることもできる。例えば、明度データからは凹んでいると判断される箇所について、実測値では凹んでいないことが明らかな場合、2値で表した当該箇所の下地層データの白黒を反転させることにより、対象物の表面凹凸を良好に再現する印刷物を形成することができる。
【0100】
また、本実施形態においては、画像データを2値化し下地層データを生成する際に用いる閾値について、使用者が指定する任意の値を用いる(閾値指定法)こととしたが、他にも閾値の指定の仕方については下記のような方法も用いることができる。
【0101】
例えば、形成される(下地層データ)2値データのうち、白データの面積比率(白データ数/全データ数)を指定して閾値を決定する方法(Pタイル法)、グレースケール画像の明度についてのヒストグラムが双峰性を持つ場合、その谷間を閾値とする方法(モード法)が挙げられる。
【0102】
また、2値化した時、白領域と黒領域とに関するクラス内分散とクラス間分散との分散比が、最大となるように閾値を決定する方法(判別分析法)、画像データの部分領域毎に閾値を変化させて2値化を行う方法(動的閾値決定法)、画像データの模様(輪郭)付近に存在する濃淡の変化を利用して閾値を決定する方法(ラプラシアン・ヒストグラム法、微分ヒストグラム法)を用いることもできる。
【0103】
また、本実施形態においては、再現する凹凸形状の情報として明度データを用いることとしたが、明度データを用いずに、上述の表面凹凸の実測値に基づいて、下地層データを作成し、当該下地層データに基づいて下地層を形成することとしても良い。このようにすると、実際に再現したい対象物の表面凹凸を良好に再現することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態においては、液滴吐出法を用いて下地層および画像層を形成したが、これに限らず、ロールスクリーン法やフレキソ印刷法などの通常知られた印刷方法を用いることができる。このような液滴吐出法以外の印刷方法を用いる場合には、下地層データを形成する場合に、閾値を元に3値以上に多値化することによって下地層データを形成することとしても良い。
【0105】
また、本実施形態においては、制御装置8において画像データを変換し下地層データを形成することとしたが、予め外部の計算機において下地層データを算出しておき、当該画像データを入力して下地層を形成することとしても構わない。
【0106】
また、本実施形態においては、光照射手段12は、複数の液滴吐出ヘッド9を挟んで両側に配置される事としたが、液滴吐出ヘッド9毎に設けることとしても構わない。このような構成の場合、光照射装置が、対応する液滴吐出ヘッド9が吐出する光硬化型インクの最適硬化波長を有した光を照射するようになっていると好ましい。
【0107】
[第2実施形態]
図13,14は、本発明の第2実施形態に係る画像記録方法の説明図である。本実施形態の画像記録方法で形成する印刷物100Bは、第1実施形態と一部共通している。異なるのは、印刷物100Bが支持体Pを介して画像層102の絵柄を観察する構成となっていることである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0108】
図13は、印刷物100Bの一例を示す斜視図である。印刷物100Bは、支持体Pの表面に絵柄が印刷されている。ここでは、例として木目調の絵柄が印刷された印刷物100Bを示す。詳しくは、光透過性を有する支持体Pの表面に凹凸を形成する下地層101が設けられ、下地層101を覆って支持体Pの表面全面に木目調の絵柄を表示する画像層102が形成されており、更に画像層102を覆って裏地層103が形成されている。
【0109】
支持体Pは、例えば光透過性を有する樹脂材料を形成材料とし、可撓性を有するフィルムを用いることができる。形成材料としては、例えばPC(ポリカーボネート)やPET(ポリエチレンテレフタレート)など、通常知られた材料を例示することができる。
【0110】
下地層101は、上述の透明な光硬化型インクを用いて形成されており、下地層101の上面や側面を覆って印刷物100Bの絵柄を表現している画像層102が設けられている。
【0111】
更に、画像層102に描かれた画像の視認性を高めるため、不透明な裏地層103を設けることが好ましい。裏地層103が白色に着色している場合、画像層102の発色を助け、良好な画質の画像を表現することができる。裏地層103は、例えば白色の光硬化型インクを塗布して設けられている。
【0112】
このような印刷物100Bは、支持体Pを介して画像層102に描かれた画像を観察する構成となっている。印刷物100においては、支持体Pの視認側表面から、画像が描かれた画像層102までの距離が、透明な下地層101によって形成されている凹凸に応じて異なっており、画像層102に描かれた画像が立体的に表現されている。ここでは、画像層102に描かれた木目模様のうち、濃い色で描かれた木目部分に対応する箇所が凹部として表現されており、薄い色で描かれた部分が凸部として表現されている。
【0113】
図14は、印刷物100Bの印刷工程を示す工程図である。まず、図14(a)に示すように、下地層データに基づいて紫外線硬化型インクを塗布し紫外線照射を行って、支持体Pに接する下地層101を印刷する。次に、図14(b)に示すように、紫外線硬化型インクを用い、支持体Pの上に下地層101を覆う画像層102を印刷する。更に、図14(c)に示すように、白色の紫外線硬化型インクを用い、画像層102を覆う裏地層103を印刷する。
【0114】
以上のようにして、画像の絵柄と画像の凹凸パターンとを良好に一致させ、更に、下地層101と重なる位置で画像層102の色抜けが無い、高画質な印刷物100Bを印刷することができる。
【0115】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0116】
1…描画装置、8…制御装置、9…液滴吐出ヘッド、100…印刷物、101…下地層、102…画像層、I,I1,I2…インク(液状体)、L…液滴、P…支持体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出法を用いて形成材料を溶解または分散させた液状体を塗布することにより、支持体上に画像と該画像に対応した凹凸形状とを記録する画像記録方法であって、
前記画像の画像データの一部を用いて、前記支持体上に選択的に設けられる下地層の画像データである下地層データを生成する工程と、
前記下地層データに基づいて、描画領域の輪郭が前記下地層データを構成する複数の画素間の境界と重ならないように縮小したビットマップデータを作成する工程と、
前記ビットマップデータに基づいて、前記支持体上に選択的に前記液状体を塗布することにより前記下地層を形成する工程と、
前記画像データに基づいて、前記下地層および前記支持体の上に前記液状体を塗布することにより前記下地層及び前記支持体の表面に接する画像層を形成する工程と、を有することを特徴とする画像記録方法。
【請求項2】
前記画像層を形成する工程では、前記画像層における前記下地層部と平面的に重なる箇所において、該下地層の形成に要する液状体量よりも多くの前記液状体を用いて、前記画像層を形成することを特徴とする請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項3】
前記画像層を形成する工程では、前記画像層における前記下地層の端部と平面的に重なる箇所において、該下地層の形成に要する液状体量よりも多くの前記液状体を用いて、前記画像層を形成することを特徴とする請求項2に記載の画像記録方法。
【請求項4】
前記画像データに含まれる明度データに基づき、予め定めた明度の閾値を境に多値化して前記下地層データを生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項5】
前記画像データは、複数の色情報を含み、
前記複数の色情報毎に含まれる明度データの少なくとも1つに基づいて、前記下地層データを生成することを特徴とする請求項4に記載の画像記録方法。
【請求項6】
前記複数の色情報毎に含まれる明度データ毎に、前記下地層データを生成し、
前記下地層を形成する工程では、複数の前記下地層データに基づいて下地層を形成することを特徴とする請求項5に記載の画像記録方法。
【請求項7】
前記下地層データの生成に先だって、前記画像の元となる対象物の表面凹凸を実測し、該表面凹凸の実測値を用いて前記下地層データを補正することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項8】
前記下地層データの生成に先だって、前記画像の元となる対象物の表面凹凸を実測し、前記表面凹凸の実測値を用いて前記下地層データを生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項9】
前記下地層を形成する工程に先だって、前記支持体の表面を前記液状体に対して撥液化する撥液工程を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項10】
前記下地層を形成する工程では、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させることにより、前記下地層を形成することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項11】
前記画像層を形成する工程では、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させることにより、前記画像層を形成することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項12】
前記下地層を形成する工程において、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクの一部を硬化させ、
前記画像層を形成する工程では、一部を硬化させた光硬化型インクによって形成された前記下地層の上に、前記光硬化型インクを塗布し、
光照射を行って、前記下地層および前記画像層を形成する前記光硬化型インクを併せて硬化させることを特徴とする請求項11に記載の画像記録方法。
【請求項1】
液滴吐出法を用いて形成材料を溶解または分散させた液状体を塗布することにより、支持体上に画像と該画像に対応した凹凸形状とを記録する画像記録方法であって、
前記画像の画像データの一部を用いて、前記支持体上に選択的に設けられる下地層の画像データである下地層データを生成する工程と、
前記下地層データに基づいて、描画領域の輪郭が前記下地層データを構成する複数の画素間の境界と重ならないように縮小したビットマップデータを作成する工程と、
前記ビットマップデータに基づいて、前記支持体上に選択的に前記液状体を塗布することにより前記下地層を形成する工程と、
前記画像データに基づいて、前記下地層および前記支持体の上に前記液状体を塗布することにより前記下地層及び前記支持体の表面に接する画像層を形成する工程と、を有することを特徴とする画像記録方法。
【請求項2】
前記画像層を形成する工程では、前記画像層における前記下地層部と平面的に重なる箇所において、該下地層の形成に要する液状体量よりも多くの前記液状体を用いて、前記画像層を形成することを特徴とする請求項1に記載の画像記録方法。
【請求項3】
前記画像層を形成する工程では、前記画像層における前記下地層の端部と平面的に重なる箇所において、該下地層の形成に要する液状体量よりも多くの前記液状体を用いて、前記画像層を形成することを特徴とする請求項2に記載の画像記録方法。
【請求項4】
前記画像データに含まれる明度データに基づき、予め定めた明度の閾値を境に多値化して前記下地層データを生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項5】
前記画像データは、複数の色情報を含み、
前記複数の色情報毎に含まれる明度データの少なくとも1つに基づいて、前記下地層データを生成することを特徴とする請求項4に記載の画像記録方法。
【請求項6】
前記複数の色情報毎に含まれる明度データ毎に、前記下地層データを生成し、
前記下地層を形成する工程では、複数の前記下地層データに基づいて下地層を形成することを特徴とする請求項5に記載の画像記録方法。
【請求項7】
前記下地層データの生成に先だって、前記画像の元となる対象物の表面凹凸を実測し、該表面凹凸の実測値を用いて前記下地層データを補正することを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項8】
前記下地層データの生成に先だって、前記画像の元となる対象物の表面凹凸を実測し、前記表面凹凸の実測値を用いて前記下地層データを生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項9】
前記下地層を形成する工程に先だって、前記支持体の表面を前記液状体に対して撥液化する撥液工程を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項10】
前記下地層を形成する工程では、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させることにより、前記下地層を形成することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項11】
前記画像層を形成する工程では、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させることにより、前記画像層を形成することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項12】
前記下地層を形成する工程において、前記液状体として光硬化型インクを塗布し、塗布した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクの一部を硬化させ、
前記画像層を形成する工程では、一部を硬化させた光硬化型インクによって形成された前記下地層の上に、前記光硬化型インクを塗布し、
光照射を行って、前記下地層および前記画像層を形成する前記光硬化型インクを併せて硬化させることを特徴とする請求項11に記載の画像記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−79231(P2011−79231A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233494(P2009−233494)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]