説明

画像診断支援装置及び画像診断支援方法

【課題】診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度及び過去の脊椎画像から計測されたコブ角度に基づいて、適切に側弯症の診断を支援する。
【解決手段】診断対象の脊椎画像のコブ角度Aが予め定められた閾値B未満であって(ステップS15;YES)、予め定められた閾値C以上である場合には(ステップS16;YES)、画像診断支援装置から画像サーバ装置に過去検査の問い合わせを行う(ステップS17)。画像診断支援装置は、画像サーバ装置からD回分の過去のコブ角度計測結果を取得し(ステップS19)、これらの値を重み付け平均して過去の参照値を算出し、現在のコブ角度Aと過去の参照値との差分、及び、現在のコブ角度Aを加味して、判定値Fを算出する(ステップS20)。判定値Fが基準値Eより大きい場合には(ステップS21;YES)、表示部にインジケータを表示する(ステップS22)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断支援装置及び画像診断支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野の診断において、X線等の放射線により患者を撮影した画像が用いられている。例えば、脊椎を撮影した画像は、側弯症の診断に用いられる。具体的には、図3に示すように、脊椎において最も強く側弯を示している部位の上下端にある終椎(傾斜角の最も大きな椎体)の上位終椎の上面と下位終椎の下面のなす角、すなわち、コブ角度θを計測する。一般的には、コブ角度が25度を超えると要治療と診断される。
【0003】
また、心胸比や脊柱の側弯度等、画像を幾何学的に計測するための計測処理装置において、自動計測を効率よく行うために、同一被写体・同一部位を表す複数の画像のうち、過去の画像に対して設定された計測点の位置情報と計測対象画像の画像データとに基づいて、計測対象画像を幾何学的に計測するための計測点を自動的に設定するものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−203248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、コブ角度に基づいて側弯症の診断を行う場合に、現在のコブ角度が25度以下であるとしても、前回の撮影時と比較して急激にコブ角度が増加している場合(例えば、3度から18度に変化した場合等)には、病状が悪化したと考えられ、危険度が高い。一方、現在のコブ角度が25度を超えているとしても、前回の撮影時と比較してコブ角度が減少している場合には、回復に向かっている場合もある。このように、診断を行う際には、現在のコブ角度だけでなく、過去のコブ角度の計測結果を考慮すべき場合があった。
【0005】
本発明は、診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度及び過去の脊椎画像から計測されたコブ角度に基づいて、適切に側弯症の診断を支援することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の画像診断支援装置は、診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度及び前記診断対象の脊椎画像の撮影時よりも過去に撮影された一又は複数の脊椎画像から計測された一又は複数のコブ角度に基づいて、側弯症を判定するための判定値を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された判定値と予め定められた基準値とを比較する比較手段と、前記比較手段による比較結果に基づいて、側弯症に関する警告を発する警告手段と、を備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像診断支援装置において、前記算出手段は、前記過去に撮影された一又は複数の脊椎画像から計測された一又は複数のコブ角度のうち、撮影時が新しいものから遡って所定数分のコブ角度を重み付け平均して過去の参照値を算出し、前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度と前記過去の参照値との差分、及び、前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度を加味して前記判定値を算出する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像診断支援装置において、前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度が予め定められた値以上である場合に、前記算出手段による前記判定値の算出を行わせる制御手段を備える。
【0009】
請求項4に記載の画像診断支援方法は、診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度及び前記診断対象の脊椎画像の撮影時よりも過去に撮影された一又は複数の脊椎画像から計測された一又は複数のコブ角度に基づいて、側弯症を判定するための判定値を算出する算出工程と、前記算出工程において算出された判定値と予め定められた基準値とを比較する比較工程と、前記比較工程における比較結果に基づいて、側弯症に関する警告を発する警告工程と、を含む。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像診断支援方法において、前記算出工程では、前記過去に撮影された一又は複数の脊椎画像から計測された一又は複数のコブ角度のうち、撮影時が新しいものから遡って所定数分のコブ角度を重み付け平均して過去の参照値を算出し、前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度と前記過去の参照値との差分、及び、前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度を加味して前記判定値を算出する。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の画像診断支援方法において、前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度が予め定められた値以上である場合に、前記算出工程における前記判定値の算出を行う。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、4に記載の発明によれば、診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度及び過去の脊椎画像から計測されたコブ角度に基づいて、側弯症を判定するための判定値を算出するので、過去のコブ角度を考慮して側弯症を判定することができる。また、警告を発することにより、ユーザに注意を喚起し、適切に側弯症の診断を支援することができる。
【0013】
請求項2、5に記載の発明によれば、コブ角度の変化と、診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度とに基づいて側弯症の判定を行うことができる。
【0014】
請求項3、6に記載の発明によれば、診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度が予め定められた値未満である場合には判定値の算出を行わないので、処理を高速化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の画像診断支援装置の一実施の形態につき図面を参照して説明する。
図1に、画像診断支援装置40を含むシステムの構成を示す。図1に示すように、RIS(Radiological Information System:放射線情報システム)10、モダリティ20、画像サーバ装置30及び画像診断支援装置40は、ネットワークNを介してデータ通信可能に接続されている。
【0016】
RIS10は、放射線科部門内における診療予約、診断結果のレポート、実績管理、材料在庫管理等の情報管理を行う。RIS10は、撮影や診断の内容を示す検査オーダ情報を生成し、モダリティ20に送信する。
【0017】
モダリティ20は、RIS10から送信された検査オーダ情報に基づいて、患者を撮影し、医用画像の画像データを生成する画像生成装置である。モダリティ20は、画像データを画像サーバ装置30に送信する。モダリティ20としては、CR(Computed Radiography)装置、CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等が用いられる。
【0018】
図2に、画像サーバ装置30の機能的構成を示す。図2に示すように、画像サーバ装置30は、CPU(Central Processing Unit)31、操作部32、表示部33、通信部34、RAM(Random Access Memory)35、記憶部36を備え、各部はバス37により接続されている。
【0019】
CPU31は、操作部32から入力される操作信号又は通信部34により受信される指示信号に応じて、記憶部36に記憶されている各種処理プログラムを読み出し、RAM35内に形成されたワークエリアに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0020】
操作部32は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された操作信号をCPU31に出力する。
【0021】
表示部33は、LCD(Liquid Crystal Display)により構成され、CPU31から入力される表示データに基づいて各種画面を表示する。
【0022】
通信部34は、RIS10、モダリティ20、画像診断支援装置40等の外部機器との間でデータの送受信を行うインターフェースである。
【0023】
RAM35は、CPU31により実行される各種処理プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0024】
記憶部36は、不揮発性の半導体メモリ又はハードディスク等により構成され、制御プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメータやファイル等を記憶している。具体的には、記憶部36には、画像ファイル361、関連情報ファイル362、DB(DataBase)363、設定ファイル364等が記憶されている。
【0025】
画像ファイル361は、モダリティ20から受信した医用画像の画像データのファイルである。関連情報ファイル362は、画像ファイル361の画像に関連する情報を含み、各画像ファイル361に対応付けられている。脊椎画像の場合、関連情報ファイル362には、コブ角度計測結果が含まれる。コブ角度とは、図3に示すように、脊椎において最も強く側弯を示している部位の上下端にある終椎の上位終椎の上面、下位終椎の下面に接線を引いたときの、その交角(あるいは、それぞれの接線の垂線が交わる角)θをいう。
【0026】
DB363は、患者情報テーブル365、検査情報テーブル366、シリーズ情報テーブル367、画像情報テーブル368を含む。患者情報テーブル365には、図4(a)に示すように、患者LID(Link Identification)毎に、患者の名前、患者の生年月日、患者の誕生時刻、患者の性別等の患者に関する各種情報が格納されている。検査情報テーブル366には、図4(b)に示すように、検査LID毎に、検査インスタンスUID(Unique Identification)、患者LID、検査日付、検査時刻等の検査に関する各種情報が格納されている。シリーズ情報テーブル367には、図4(c)に示すように、シリーズLID毎に、シリーズインスタンスUID、検査LID、モダリティ、検査部位等のシリーズに関する各種情報が格納されている。画像情報テーブル368には、図4(d)に示すように、画像LID毎に、SOP(Service Object Pair)インスタンスUID、シリーズLID、画像番号、画像日付、画像時刻、コブ角度計測結果のパス等の画像に関する各種情報が格納されている。コブ角度計測結果のパスとは、画像LIDで特定される画像に対してコブ角度計測結果が存在する場合に、その画像ファイル361に対応する関連情報ファイル362のコブ角度計測結果の所在を示す情報をいう。
【0027】
設定ファイル364には、閾値B、閾値C、過去参照検査数D、重み付け値α,β,γ,σ、基準値Eが予め設定されている。
【0028】
閾値Bは、ある患者の診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度(以下、「現在のコブ角度」という。)Aが閾値B以上である場合に、確実に異常であると判定される境界となる値である。閾値Bの値として、例えば、30が用いられる。
【0029】
閾値Cは、ある患者の現在のコブ角度Aが閾値C未満である場合に、現状では問題ないと判定される境界となる値である。閾値Cの値として、例えば、10が用いられる。
【0030】
過去参照検査数Dは、ある患者の診断対象の脊椎画像の撮影時よりも過去に撮影された一又は複数の脊椎画像から計測された一又は複数のコブ角度(以下、「過去のコブ角度」という。)のうち、過去検査として参照される検査の数である。例えば、過去検査として3回分の検査を参照する場合には、過去参照検査数Dの値は3である。本実施の形態では、D=3の場合について説明する。
【0031】
重み付け値α,β,γは、過去の参照値を算出する際に用いられる値である。重み付け値α,β,γは、1>α>β>γ>0かつα+β+γ=1を満たすように予め定められている。重み付け値σは、側弯症を判定するための判定値Fを算出する際に用いられる値であり、σ>0を満たすように予め定められている。
【0032】
基準値Eは、判定値Fと比較するための値であり、側弯症に関する警告を発するか否かを判定する際に用いられる。基準値Eの値として、例えば、20が用いられる。
【0033】
CPU31は、画像診断支援装置40から過去検査の問い合わせがあった場合に、画像診断支援装置40から受信した患者を特定するための情報(例えば、患者LID)及び検査を特定するための情報(例えば、検査LID)に基づいて、DB363に対して検索を行い、画像診断支援装置40において診断対象となっている検査画像の撮影時よりも過去に同一患者の同一部位を同一モダリティで撮影した検査画像が存在するか否か、さらに、その画像に対してコブ角度計測結果が存在するか否かを判定する。
【0034】
具体的には、CPU31は、画像診断支援装置40から受信した検査LIDに基づいてシリーズ情報テーブル367を検索し、検査LIDに対応する検査のモダリティ及び検査部位を特定する。次に、CPU31は、画像診断支援装置40から受信した患者LIDに基づいて検査情報テーブル366を検索し、患者LIDに対応する患者の検査を抽出する。さらに、CPU31は、抽出された同一患者の検査のうち、シリーズ情報テーブル367に基づいて同一部位を同一モダリティで撮影した検査に絞り込み、同一患者の同一部位を同一モダリティで撮影した過去の検査画像を抽出する。抽出された検査画像について画像情報テーブル368にコブ角度計測結果のパスが格納されている場合には、コブ角度計測結果が存在すると判定する。
【0035】
CPU31は、同一患者の同一部位を同一モダリティで撮影した過去の検査画像のコブ角度計測結果が存在すると判定した場合には、同一患者の同一部位を同一モダリティで撮影した過去の各検査画像について、画像情報テーブル368の画像日付及び画像時刻を参照して、撮影時が新しいものから遡ってD回分の過去の検査画像を特定し、特定された検査画像のコブ角度計測結果のパスを画像診断支援装置40に送信する。
【0036】
図5に、画像診断支援装置40の機能的構成を示す。図5に示すように、画像診断支援装置40は、CPU41、操作部42、表示部43、通信部44、RAM45、記憶部46を備え、各部はバス47により接続されている。
【0037】
CPU41は、操作部42から入力される操作信号又は通信部44により受信される指示信号に応じて、記憶部46に記憶されている各種処理プログラムを読み出し、RAM45内に形成されたワークエリアに展開し、当該プログラムとの協働により各種処理を行う。
【0038】
操作部42は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された操作信号をCPU41に出力する。
【0039】
表示部43は、LCDにより構成され、CPU41から入力される表示データに基づいて各種画面を表示する。
【0040】
通信部44は、画像サーバ装置30等の外部機器との間でデータの送受信を行うインターフェースである。
【0041】
RAM45は、CPU41により実行される各種処理プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0042】
記憶部46は、不揮発性の半導体メモリ又はハードディスク等により構成され、制御プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメータやファイル等を記憶している。
【0043】
CPU41は、読影を行うためのアプリケーションの起動時に、通信部44を介して、画像サーバ装置30の記憶部36に記憶されている設定ファイル364を取得する。設定ファイル364には、閾値B、閾値C、過去参照検査数D、重み付け値α,β,γ,σ、基準値Eが含まれる。
【0044】
CPU41は、現在のコブ角度Aが閾値B以上である場合に、確実に異常であると判定する。また、CPU41は、現在のコブ角度Aが閾値C未満である場合には、現状では問題ないと判定する。また、CPU41は、現在のコブ角度Aが閾値B未満であって、かつ、現在のコブ角度Aが閾値C以上である場合に、通信部44を介して、画像サーバ装置30に対して、過去検査の問い合わせを行う。この際、CPU41は、診断対象となっている検査画像の患者LID及び検査LIDを取得し、画像サーバ装置30に送信する。
【0045】
CPU41は、診断対象の検査画像の撮影時よりも過去に撮影された検査画像のうち、撮影時が新しいものから遡ってD回分のコブ角度計測結果のパスを画像サーバ装置30から受信すると、コブ角度計測結果のパスに基づいて、画像サーバ装置30の記憶部36に記憶されている関連情報ファイル362からそれぞれD回分の過去のコブ角度計測結果を取得する。
【0046】
CPU41は、画像サーバ装置30からD回分の過去のコブ角度計測結果を取得すると、現在のコブ角度A及びD回分の過去のコブ角度に基づいて、判定値Fを算出する。具体的には、まず、下記式(1)に従って、重み付け値α,β,γを用いてD回分の過去のコブ角度の重み付け平均をとり、過去の参照値を算出する。
過去の参照値=(1回前の検査時のコブ角度)×α+(2回前の検査時のコブ角度)×β
+(3回前の検査時のコブ角度)×γ (1)
【0047】
次に、CPU41は、下記式(2)に従って、現在のコブ角度A、過去の参照値、重み付け値σに基づいて、判定値Fを算出する。
判定値F=(現在のコブ角度A−過去の参照値)×σ+現在のコブ角度A (2)
すなわち、判定値Fには、現在のコブ角度Aと過去の参照値との差分、及び、現在のコブ角度Aとが加味されている。過去の参照値と比べて現在のコブ角度Aが増加している場合には、判定値Fは現在のコブ角度Aより大きくなり、過去の参照値と比べて現在のコブ角度Aが減少している場合には、判定値Fは現在のコブ角度Aより小さくなる。判定値Fを算出するにあたって、最近のコブ角度の変化(現在のコブ角度Aと過去の参照値との差分)と、現在のコブ角度Aとに対してどの程度重み付けに差を付けるかは、重み付け値σにより決まる。重み付け値σは、設定ファイル364に予め設定されている値であるが、ユーザが任意に変更可能としてもよい。
【0048】
CPU41は、判定値Fと予め定められた基準値Eとを比較し、判定値Fが基準値Eより大きい場合には、側弯症に関する警告を発する。具体的には、CPU41は、判定値Fが基準値Eより大きい場合に、表示部43にインジケータを表示させ、ユーザに注意を喚起する。
【0049】
次に、動作を説明する。
図6は、画像サーバ装置30において実行される処理を示すフローチャートである。この処理は、CPU31と、記憶部36に記憶されているプログラムとの協働によるソフトウェア処理によって実現される。
【0050】
まず、画像診断支援装置40から過去検査の問い合わせがあった場合には(ステップS1;YES)、CPU31により、画像診断支援装置40から受信した患者LID及び検査LIDに基づいて、DB363に対して検索が行われ、画像診断支援装置40において診断対象となっている検査画像と同一患者の同一部位を同一モダリティで撮影した過去の検査画像に対してコブ角度計測結果が存在するか否かが判定される(ステップS2)。
【0051】
同一患者の同一部位を同一モダリティで撮影した過去の検査画像のコブ角度計測結果が存在すると判定された場合には(ステップS2;YES)、CPU31により、同一患者の同一部位を同一モダリティで撮影した過去の各検査画像について、画像情報テーブル368の画像日付及び画像時刻が参照され、診断対象の検査画像の撮影時よりも過去に撮影された検査画像のうち、撮影時が新しいものから遡ってD回分の過去の検査画像が特定される。そして、通信部34により、D回分の過去のコブ角度計測結果のパスが画像診断支援装置40に送信される(ステップS3)。
【0052】
ステップS2において、同一患者の同一部位を同一モダリティで撮影した過去の検査画像のコブ角度計測結果が存在しないと判定された場合には(ステップS2;NO)、そのまま処理が終了する。
【0053】
図7は、画像診断支援装置40において実行される処理を示すフローチャートである。この処理は、CPU41と、記憶部46に記憶されているプログラムとの協働によるソフトウェア処理によって実現される。
【0054】
まず、読影を行うためのアプリケーションが起動される際に、CPU41により、通信部44を介して、画像サーバ装置30の記憶部36に記憶されている設定ファイル364が取得され(ステップS11)、設定ファイル364の内容がRAM45に展開される。設定ファイル364には、閾値B、閾値C、過去参照検査数D、重み付け値α,β,γ,σ、基準値Eが含まれる。
【0055】
次に、操作部42からの操作により、診断対象となる脊椎画像の画像ファイル361が選択され、CPU41により、通信部44を介して、画像サーバ装置30の記憶部36に記憶されている画像ファイル361が取得され、表示部43に表示される。そして、医師による読影が開始される(ステップS12)。
【0056】
次に、表示部43に表示されている脊椎画像についてコブ角度計測処理が行われる(ステップS13)。ここで、図8を参照して、コブ角度計測処理を説明する。まず、操作部42からの操作により、表示部43に表示されている脊椎画像上で最も強く側弯を示している部位の上下端にある終椎の上位終椎の上面が設定され(ステップS31)、下位終椎の下面が設定される(ステップS32)。次に、CPU41により、設定された上位終椎の上面の位置、下位終椎の下面の位置に基づいて、現在のコブ角度Aが算出される(ステップS33)。算出された現在のコブ角度Aは、CPU41により、通信部44を介して画像サーバ装置30に送信される。画像サーバ装置30では、CPU31により、診断対象となっている画像ファイル361に対応する関連情報ファイル362に現在のコブ角度Aが記憶される。
【0057】
次に、CPU41により、コブ角度計測処理により得られた現在のコブ角度AがRAM45から取得され(ステップS14)、現在のコブ角度Aが閾値B未満であるか否かが判定される(ステップS15)。現在のコブ角度Aが閾値B未満である場合には(ステップS15;YES)、現在のコブ角度Aが閾値C以上であるか否かが判定される(ステップS16)。現在のコブ角度Aが閾値C以上である場合には(ステップS16;YES)、CPU41により、画像サーバ装置30に過去検査の問い合わせが行われる(ステップS17)。
【0058】
次に、画像サーバ装置30からD回分の過去のコブ角度計測結果のパスが受信された場合には(ステップS18;YES)、CPU41により、当該パスに基づいて、画像サーバ装置30の記憶部36に記憶されている関連情報ファイル362からそれぞれD回分の過去のコブ角度計測結果が取得される(ステップS19)。
【0059】
次に、CPU41により、式(1)に従って、重み付け値α,β,γを用いてD回分の過去のコブ角度が重み付け平均され、過去の参照値が算出される。次に、CPU41により、式(2)に従って、現在のコブ角度A、過去の参照値、重み付け値σに基づいて、判定値Fが算出される(ステップS20)。
【0060】
次に、CPU41により、判定値Fと基準値Eとが比較され、判定値Fが基準値Eより大きい場合には(ステップS21;YES)、表示部43にインジケータが表示される(ステップS22)。
【0061】
図9に、表示部43に表示される脊椎画像の読影画面431を示す。判定値Fが基準値Eより大きい場合には、図9に示すようなインジケータ432が表示され、ユーザに対して注意を喚起することができる。
【0062】
ステップS15において現在のコブ角度Aが閾値B以上である場合にも(ステップS15;NO)、確実に異常であると判定され、CPU41により、表示部43にインジケータが表示される(ステップS22)。
【0063】
ステップS16において現在のコブ角度Aが閾値C未満である場合には(ステップS16;NO)、現状では問題ないと判定され、処理が終了する。また、ステップS18において画像サーバ装置30からコブ角度計測結果のパスが受信されない場合には(ステップS18;NO)、画像サーバ装置30に過去のコブ角度計測結果が存在しないため、そのまま処理が終了する。また、ステップS21において、判定値Fが基準値E以下である場合には(ステップS21;NO)、側弯症の危険性は低いと判定され、処理が終了する。
【0064】
以上説明したように、画像診断支援装置40によれば、現在のコブ角度A及び過去のコブ角度に基づいて、側弯症を判定するための判定値Fを算出するので、過去のコブ角度を考慮して側弯症を判定することができる。また、判定値Fと基準値Eとを比較し、比較結果に基づいて警告を発することにより、ユーザに注意を喚起し、適切に側弯症の診断を支援することができる。
【0065】
また、現在のコブ角度Aと過去の参照値との差分、及び、現在のコブ角度Aを加味して判定値Fを算出するので、コブ角度の変化と、現在のコブ角度Aとに基づいて側弯症の判定を行うことができる。
【0066】
また、現在のコブ角度Aが閾値C以上である場合には判定値Fの算出を行い、現在のコブ角度Aが閾値C未満である場合には判定値Fの算出を行わないので、処理を高速化することができる。
【0067】
また、現在のコブ角度Aが閾値B未満である場合には判定値Fの算出を行い、現在のコブ角度Aが閾値B以上である場合には判定値Fの算出を行わないので、処理を高速化することができる。
【0068】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る画像診断支援装置の例であり、これに限定されるものではない。装置を構成する各部の細部構成及び細部動作に関しても本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【0069】
例えば、上記実施の形態では、画像診断支援装置40において判定値Fが基準値Eより大きい場合に、表示部43にインジケータを表示することとしたが、警告文の表示や警告音により、注意を喚起することとしてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、過去参照検査数Dが3の場合について説明したが、過去のコブ角度のうち何回分の検査を参照するかは、任意に変更可能としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態における画像診断支援装置を含むシステムの構成を示す図である。
【図2】画像サーバ装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】コブ角度を説明するための図である。
【図4】(a)は患者情報テーブルの例である。(b)は検査情報テーブルの例である。(c)はシリーズ情報テーブルの例である。(d)は画像情報テーブルの例である。
【図5】画像診断支援装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図6】画像サーバ装置において実行される処理を示すフローチャートである。
【図7】画像診断支援装置において実行される処理を示すフローチャートである。
【図8】画像診断支援装置において実行されるコブ角度計測処理を示すフローチャートである。
【図9】脊椎画像の読影画面の例である。
【符号の説明】
【0072】
10 RIS
20 モダリティ
30 画像サーバ装置
31 CPU
32 操作部
33 表示部
34 通信部
35 RAM
36 記憶部
361 画像ファイル
362 関連情報ファイル
363 DB
364 設定ファイル
365 患者情報テーブル
366 検査情報テーブル
367 シリーズ情報テーブル
368 画像情報テーブル
37 バス
40 画像診断支援装置
41 CPU
42 操作部
43 表示部
431 脊椎画像の読影画面
432 インジケータ
44 通信部
45 RAM
46 記憶部
47 バス
N ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度及び前記診断対象の脊椎画像の撮影時よりも過去に撮影された一又は複数の脊椎画像から計測された一又は複数のコブ角度に基づいて、側弯症を判定するための判定値を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された判定値と予め定められた基準値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、側弯症に関する警告を発する警告手段と、
を備える画像診断支援装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記過去に撮影された一又は複数の脊椎画像から計測された一又は複数のコブ角度のうち、撮影時が新しいものから遡って所定数分のコブ角度を重み付け平均して過去の参照値を算出し、前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度と前記過去の参照値との差分、及び、前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度を加味して前記判定値を算出する請求項1に記載の画像診断支援装置。
【請求項3】
前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度が予め定められた値以上である場合に、前記算出手段による前記判定値の算出を行わせる制御手段を備える請求項1又は2に記載の画像診断支援装置。
【請求項4】
診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度及び前記診断対象の脊椎画像の撮影時よりも過去に撮影された一又は複数の脊椎画像から計測された一又は複数のコブ角度に基づいて、側弯症を判定するための判定値を算出する算出工程と、
前記算出工程において算出された判定値と予め定められた基準値とを比較する比較工程と、
前記比較工程における比較結果に基づいて、側弯症に関する警告を発する警告工程と、
を含む画像診断支援方法。
【請求項5】
前記算出工程では、前記過去に撮影された一又は複数の脊椎画像から計測された一又は複数のコブ角度のうち、撮影時が新しいものから遡って所定数分のコブ角度を重み付け平均して過去の参照値を算出し、前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度と前記過去の参照値との差分、及び、前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度を加味して前記判定値を算出する請求項4に記載の画像診断支援方法。
【請求項6】
前記診断対象の脊椎画像から計測されたコブ角度が予め定められた値以上である場合に、前記算出工程における前記判定値の算出を行う請求項4又は5に記載の画像診断支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−259452(P2010−259452A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214858(P2007−214858)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】