説明

画像読取装置、画像読取装置の制御方法及びプログラム

【課題】熱膨張等によりレンズと読取センサとの位置関係がずれたとしても、カラー画像か白黒画像かの自動検出を正確に行なうことができる画像読取装置を提供する。
【解決手段】画像読取装置は、光源から原稿に照射された光の反射光を結像するレンズ、及びレンズで結像した反射光を受光して原稿の画像を読み取る読取センサを有し、レンズにおける原稿の読取に用いられる領域外にマークが設けられた読取手段104と、読取手段104による読取画像データからマーク位置を検出する基準位置検出手段107と、読取手段104による読取画像データがカラー画像か白黒画像かを判断するカラー白黒検出手段111と、基準位置検出手段107によって検出されたマーク位置と初期位置とを比較する比較手段101と、カラー白黒検出手段111でカラー画像か白黒画像かを判断する基準値を比較手段101による比較結果に基づいて決定する決定手段109とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像がカラー画像か白黒画像かを自動で検出する機能を備えた画像読取装置、画像読取装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スキャナ等の画像読取装置おいて、白黒原稿とカラー原稿を混在してスキャンできるものがある。このような画像読取装置では、スキャンされた原稿画像が白黒かカラーかを自動検出して、白黒原稿は白黒画像で記憶され、カラー原稿はカラー画像で記憶されるので、ファイルサイズを小さくすることができる。
【0003】
また、下地が色つきの原稿や白黒原稿は白黒画像と判断する画像読取装置(特許文献1)や、白黒原稿をカラーでスキャンしても白黒エッジ部の色ずれを生じさせないようにした画像読取装置(特許文献2)が提案されている。
【0004】
ところで、原稿の画像をラインセンサ等の読取センサで読み取る画像読取装置では、光源の照明ムラ、ラインセンサ素子間の感度のバラツキ、レンズの光量ムラ等があり、例えば白無地の原稿を読み取った場合に読取手段からの出力が不均一になる。
【0005】
特に、原稿からの反射光をレンズアレイで結像させてラインセンサに読み取らせる読取手段は、レンズの光量ムラが著しい。
【0006】
即ち、図9に示すように、レンズアレイは、複数の小型レンズが主走査方向に並べられているため、隣接するレンズの光量分布が干渉して、レンズアレイとしての光量分布が不均一となる。
【0007】
このため、均一の入射光をレンズアレイに照射したとしても、レンズアレイを透過した透過光は、レンズアレイの光量分布にしたがって不均一な光量分布となり、光量ムラが発生してしまう。
【0008】
このため、従来から、白板や白無地の原稿等を用いることで、読取手段からの出力が均一に、かつ白色になるようにシェーディング補正等の画像処理を行っている。
【0009】
一般的なシェーディング補正の方法として、黒基準データと白基準データとの差分データを用いて1画素単位に全画素補正データ(シェーディング補正データ)を作成し、そのデータを用いて画像処理をしている。
【0010】
図10及び図11に、シェーディング補正の一例を示す。
【0011】
図11の黒基準データVbは、図10(a)のように光源からの光の供給を停止してラインセンサで反射光を読み取ったときの出力信号である。
【0012】
図11の白基準データVwは、図10(b)のように光源から光を供給して、白板等の反射率が高い被写体からの反射光を読み取ったときのラインセンサの出力信号である。
【0013】
図11のセンサ出力V0は、図10(c)のように光源から光を供給して、原稿からの反射光を読み取ったときのラインセンサの出力信号である。
【0014】
図11のセンサ出力V0は、黒基準データVbから、原稿の反射率が上昇するにつれて直線的に上昇し、白板を用いたときに白基準データVwになる。
【0015】
また、図11のセンサ出力Vrは、補正後のセンサ出力であり、Vrは、センサ出力をA/D変換した後の例えば8ビットのデジタル信号により、黒基準データVbを00(H)、白基準データVwをFF(H)とする補正を行った後の出力信号である。
【0016】
以上のように、シェーディング補正データとして、この黒基準データVbと白基準データVwを、画素ごとに保存しておく。ここで、白基準データVwが、レンズアレイの光量分布に大きく左右される値になる。
【特許文献1】特開平5−284372号公報
【特許文献2】特開平4−252667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、光源を有する読取手段は、光源の発熱による温度上昇が避けられない。読取手段を構成する部品は、それぞれの熱膨張係数が異なることから、温度上昇による熱膨張のため、ひずみが生じてレンズアレイとラインセンサとの位置関係が若干ずれる現象が発生する。
【0018】
RGBの各シェーディング補正データは、それぞれがセットで補正されることによって正しくシェーディング補正される。従って、たとえば、前述したように、レンズアレイとラインセンサとの位置関係がずれると、前述したレンズアレイの光量分布等によってセンサ出力が大きく変化してしまい、正確にシェーディング補正されない。この場合、白色の原稿等をスキャンしても色味がかった画像になってしまう。
【0019】
このため、カラー原稿か白黒原稿かを自動で検出する機能を備える画像読取装置において、白色を色味がかった画像としてスキャンしてしまうと、白黒原稿にもかかわらずカラー原稿と誤判断してしまうという問題が発生する。
【0020】
この問題を解決するために、読取手段を構成するすべての部品に、同じ熱膨張係数のものを用いて、レンズアレイとラインセンサとの位置関係がずれないようにすることが考えられるが、部品が限定されてしまい、すべての部品をそろえるのが困難である。
【0021】
また、温度上昇しないように、読取手段に冷却用の部品を配置したり、読取手段の形状を大きくして熱を逃げやすくしたりすることなども考えられるが、高価で大型化するため実用的ではない。
【0022】
また、スキャンするたびに、シェーディング補正データを取り直す方法が考えられるが、この場合、毎回シェーディング補正データを作成するなど、スキャン以外の動作をする必要が生じ、スキャンするまでの所要時間が長くなってしまう等の問題が残る。
【0023】
そこで、本発明は、熱膨張等によりレンズと読取センサとの位置関係がずれたとしても、カラー画像が白黒画像かの自動検出を正確に行なうことができる画像読取装置、画像読取装置の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために、本発明の画像読取装置は、光源から原稿に照射された光の反射光を結像するレンズ、及び該レンズで結像した反射光を受光することで原稿の画像を読み取る読取センサを有し、前記レンズにおける原稿の読取に用いられる領域の外側の位置にマークが設けられた読取手段と、該読取手段により読み取られた画像データから前記マークの位置を検出する基準位置検出手段と、前記読取手段により読み取られた画像データがカラー画像か白黒画像かを判断するカラー白黒検出手段と、前記基準位置検出手段によって検出された前記マークの位置に対して、それ以前に検出された前記マークの位置又は予め設定された初期位置を比較する比較手段と、前記カラー白黒検出手段においてカラー画像か白黒画像かを判断する基準値を前記比較手段による比較結果に基づいて決定する判断基準決定手段と、を備える。
【0025】
本発明の画像読取装置の制御方法は、光源から原稿に照射された光の反射光を結像するレンズ、及び該レンズで結像した反射光を受光することで原稿の画像を読み取る読取センサを有し、前記レンズにおける原稿の読取に用いられる領域の外側の位置にマークが設けられた読取手段を備える画像読取装置の制御方法であって、前記読取手段により読み取られた画像データから前記マークの位置を検出する基準位置検出ステップと、前記読取手段により読み取られた画像データがカラー画像か白黒画像かを判断するカラー白黒検出ステップと、前記基準位置検出ステップで検出された前記マークの位置に対して、それ以前に検出された前記マークの位置又は予め設定された初期位置を比較する比較ステップと、前記カラー白黒検出ステップにおいてカラー画像か白黒画像かを判断する基準値を前記比較ステップでの比較結果に基づいて決定する判断基準決定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0026】
本発明のプログラムは、光源から原稿に照射された光の反射光を結像するレンズ、及び該レンズで結像した反射光を受光することで原稿の画像を読み取る読取センサを有し、前記レンズにおける原稿の読取に用いられる領域の外側の位置にマークが設けられた読取手段を備える画像読取装置を制御するプログラムであって、前記読取手段により読み取られた画像データから前記マークの位置を検出する基準位置検出ステップと、前記読取手段により読み取られた画像データがカラー画像か白黒画像かを判断するカラー白黒検出ステップと、前記基準位置検出ステップで検出された前記マークの位置に対して、それ以前に検出された前記マークの位置又は予め設定された初期位置を比較する比較ステップと、前記カラー白黒検出ステップにおいてカラー画像か白黒画像かを判断する基準値を前記比較ステップでの比較結果に基づいて決定する判断基準決定ステップと、をコンピュータに実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、熱膨張等によりレンズと読取センサとの位置関係がずれたとしても、カラー画像か白黒画像かの自動検出を正確に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態の一例である画像読取装置を説明するためのブロック図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の画像読取装置は、CPU101、RAM102、ROM103、読取手段104、画像記憶手段105、シェーディング補正データ作成手段106を備える。
【0031】
また、本実施形態の画像読取装置は、基準位置検出手段107、シェーディング補正データ記憶手段108、判断基準決定手段109、データ転送手段110、カラー白黒検出手段111を備える。
【0032】
CPU101は、ROM103に格納されたプログラムに従って、画像読取装置全体を制御する。RAM102は、CPU101の作業領域やデータの一時記憶領域として使用される。ROM103は、プログラムや固定データを格納する。
【0033】
読取手段104は、白色光の光源、レンズアレイ、及びラインセンサ(読取センサ)を備える。この読取手段104は、光源の白色光を原稿に照射してその反射光をレンズアレイで結像したのち、ラインセンサで受光してその受光光を電圧に変換して出力することで、原稿を画像データとして読み取る。
【0034】
画像記憶手段105は、読取手段104で読み取った画像データを記憶する。シェーディング補正データ作成手段106は、ラインセンサの出力を均一にするための補正データを作成する。作成方法については、既に図10〜図12で説明した内容と同様である。
【0035】
基準位置検出手段107は、読取手段104を構成するレンズアレイに付加したマーク位置を検出する。この検出方法については後述する。
【0036】
シェーディング補正データ記憶手段108は、シェーディング補正データ作成手段106で作成したデータを記憶する。
【0037】
判断基準決定手段109は、基準位置検出手段107によって検出された基準位置を基に、カラー白黒検出手段111に用いられる判断基準値を決定する。判断基準値の決定方法については後述する。
【0038】
データ転送手段110は、画像記憶手段105に記憶された画像データを外部装置に送信すしたり、外部装置からデータを受信したりする。
【0039】
カラー白黒検出手段111は、画像記憶手段105に記憶された画像データがカラー画像か白黒画像かを検出する。検出方法については後述する。
【0040】
次に、図2及び図3を参照して、基準位置検出手段107によりレンズアレイのマーク位置を検出する方法について説明する。
【0041】
図2に示すレンズアレイ501において、原稿搬送区間SL〜SRの外側の位置には、光を吸収する黒マーク502,503が付加されている。黒マーク502,503を付加したレンズアレイ501に光源から光を照射すると、黒マーク502,503位置でのラインセンサの出力は小さくなる。
【0042】
ここで、ラインセンサの左基準位置を求める。まず、センサ出力が閾値Vot以下となるときの左からの画素位置Sa1(不図示)と、再びセンサ出力が閾値Votを超える直前の画素位置Sa2(不図示)を記憶する。
【0043】
そして、画素位置Sa1と画素位置Sa2との中間に位置する画素Sa(不図示)を左基準位置にする。たとえば、図2の場合では、画素位置S4がSa1、画素位置S6がSa2、画素位置S4と画素位置S6の中間位置S5が画素Saに相当する。
【0044】
同様にして、ラインセンサの右基準位置を求める。まず、センサ出力が閾値Vot以下となるときの左からの画素位置Sb1(不図示)と、再びセンサ出力が閾値Votを超える直前の画素位置Sb2(不図示)を記憶する。
【0045】
そして、画素位置Sb1と画素位置Sb2の中間に位置する画素Sbを右基準位置にする。たとえば、図2の場合では、画素位置Sn−5がSb1、画素位置Sn−3がSb2、画素位置Sn−5と画素位置Sn−3との中間位置Sn−4が画素Sbに相当する。
【0046】
なお、左からの画素位置SLから画素位置SRまでの範囲は、原稿が搬送される可能性のある範囲であるので、この間の画素についてはそのライン出力を無視する。画素位置SLおよび画素位置SRは、あらかじめ決められている固定値である。
【0047】
次に、図3を参照して、図2での処理の流れについて説明する。
【0048】
図3において、比較器A510は、図2の閾値Vot、各センサ出力Vo、及び左からの画素位置を示すCNTが入力され、センサ出力Voと閾値Votとを比較してセンサ出力Voが閾値Vot未満であれば1を出力する。データA記憶手段511は、比較器A510の今回の比較結果Nと前回の比較結果Pとを保持する。
【0049】
比較器B512は、データA記憶手段511に保持された前回の比較結果Pと今回の比較結果Nとが入力される。そして、比較器B512は、前回の比較結果Pと今回の比較結果Nとを比較して、前回の結果Pが1で今回の結果Nが0のとき、つまり、センサ出力Voが閾値Votを下回った直後の画素位置をデータB記憶手段513に記憶する。
【0050】
また、比較器B512は、前回の比較結果Pが0で今回の比較結果Nが1のとき、つまり、センサ出力Voが閾値Votを上回る直前の画素位置をデータC記憶手段514に記憶する。
【0051】
データB記憶手段513、データC記憶手段514の画素位置データの更新は、それぞれ比較器B512からの出力O1とO3が1のとき、O2とO3が1のときに行なう。比較器B512の出力O3は、前回の比較結果Pと今回の比較結果Nが異なる場合に1になる。
【0052】
計算機515は、不図示の加算器と不図示の除算器とを備え、データB記憶手段513及びデータC記憶手段514に記憶されているそれぞれの画素位置S及び画素位置Eが入力され、両者を加算器で加算後、除算器により2で割って中間位置を計算する。
【0053】
以上のようにして、レンズアレイ501に付加した黒マーク502,503の基準位置をラインセンサの画素単位で検出する。
【0054】
次に、図4を参照して、カラー白黒検出手段111の処理例について説明する。なお、図4でのカラー白黒検出手段111の各処理は、ROM103等に記憶されたプログラムがRAM102にロードされて、CPU101の制御により実行される。
【0055】
まず、ステップS600では、カラー白黒検出手段111は、主走査方向に連続するカラー画素数を格納する変数Wと、連続するカラーライン数を格納する変数Hとのそれぞれ値を0にして、ステップS601に進む。
【0056】
ステップS601では、カラー白黒検出手段111は、画像記憶手段105からRGBの画素データDを取得し、ステップS602に進む。
【0057】
ステップS602では、カラー白黒検出手段111は、取得したRGBの画素データDを明度Dv、彩度Dsに変換し、ステップS603に進む。なお、RGBデータをHSVに変換する方法は、既知の方法なのでここでは説明を省略する。
【0058】
ステップS603では、カラー白黒検出手段111は、画素明度データDvが明度閾値の範囲内かどうか判断し、満たす場合はステップS604に進み、満たさない場合はステップS610に進む。
【0059】
ステップS604では、カラー白黒検出手段111は、画素彩度データDsが彩度閾値Stを超えているか否かを判断し、超えている場合はステップS605に進み、超えていない場合はステップS610に進む。
【0060】
ステップS605では、カラー白黒検出手段111は、変数Wをインクリメントし、ステップS606に進む。
【0061】
ステップS606では、カラー白黒検出手段111は、変数Wが連続するカラー画素数の閾値Wtを超えているか否かを判断し、超えている場合はステップS607に進み、超えていない場合はステップS610に進む。
【0062】
ステップS607では、カラー白黒検出手段111は、該当ラインをカラーラインと判断して、変数Hをインクリメントし、ステップS608に進む。
【0063】
ステップS608では、カラー白黒検出手段111は、変数Hが連続するカラーライン数の閾値Htを超えているか否かを判断し、超えている場合は、ステップS609でカラー画像と判断して処理を終了し、超えていない場合は、ステップS611に進む。
【0064】
一方、ステップS610では、カラー白黒検出手段111は、ステップS601で取得した画素データが現在のラインの最終画素か否かを判断し、最終画素である場合はステップS611に進み、最終画素でない場合はステップS601に戻る。
【0065】
ステップS611では、カラー白黒検出手段111は、現在のラインが最終ラインか否かを判断する。
【0066】
そして、カラー白黒検出手段111は、最終ラインの場合は、ステップS612で白黒画像と判断して処理を終了し、最終ラインでない場合は、ステップS613でカラー画素数Wをリセットして0にした後、ステップS601に戻る。
【0067】
以上のようにして、カラー白黒検出手段111は、画像データがカラー画像であるか白黒画像であるかを検出する。
【0068】
ところで、図4の処理では、彩度閾値St、明度閾値Vt、連続するカラー画素数閾値Wt、連続するカラーライン数閾値Htの4つのパラメータを使用している。
【0069】
これらのパラメータを変更することによって、画像データを、白黒画像に判定しやすくしたり、カラー画像に判定しやすくしたりすることができる。
【0070】
一般的に、カラー白黒検出における閾値は、不図示のユーザインターフェイスを介して、ユーザに指定させるようにしていることが多い。たとえば、ユーザインターフェイスに1〜5の5段階の閾値を指定できるようにしておき、閾値の段階が5に近づくにつれて、画像データを白黒画像に判定しやすくしている。
【0071】
しかし、前述したように、読取手段104の光源の発熱等による温度上昇に起因してレンズアレイとラインセンサとの位置関係がずれると、正しくシェーディング補正が行なわれず、画像データをカラー画像と判定しやすくなってしまう。
【0072】
このため、たとえばユーザが画像データを白黒画像と判定しやすくするように閾値の段階を5に指定していたとしても、白黒画像と判定されず、カラー画像と判定されてしまうことがある。
【0073】
そこで、本実施形態では、彩度閾値St、明度閾値Vt、連続するカラー画素数閾値Wt、連続するカラーライン数閾値Htの4つのパラメータを、基準位置検出手段107によって検出された基準位置を基に判断基準決定手段109によって決定する。
【0074】
図5は、判断基準決定手段109によるパラメータの決定方法について説明するための説明図である。
【0075】
図5では、レンズアレイ701と正常時のラインセンサ702との位置関係、及びレンズアレイ701と熱膨張等によるずれ発生時のラインセンサ703との位置関係を示している。
【0076】
正常時のラインセンサ702は、左基準位置をSa、右基準位置をSb、左基準位置Saから右基準位置Sbまでの長さをWとする。また、画素Na,Nbは、それぞれずれ発生時のラインセンサ703の左基準位置と右基準位置に相当する画素位置を示す。正常時の左基準位置Sa、右基準位置Sbは、工場出荷時等に予め設定してもよく、また、例えば電源投入時等に自動又はユーザ操作により初期位置を検出して設定されるようにしてもよい。
【0077】
ずれ発生時のラインセンサ703は、左基準位置をNa、右基準位置をNb、左基準位置Naから右基準位置Nbまでの長さをW′とする。
【0078】
図5に示すように、正常時のラインセンサ702とずれ発生時のラインセンサ703との左基準位置のずれ量ΔLは、|Na−Sa|になる。
【0079】
ここでは、ずれ発生時のラインセンサ703が正常時のラインセンサ702に比べてやや長くなる場合を説明しているが、実際はレンズアレイの膨張がラインセンサの膨張より大きくなる可能性があり、この場合の左基準位置のずれ量ΔLは、Sa−Naになる。このため、ΔLを絶対値としている。
【0080】
同様に、正常時のラインセンサ702とずれ発生時のラインセンサ703との右基準位置のずれ量ΔRは、|Nb−Sb|になる。
【0081】
ここで、左基準位置ΔLと右基準位置ΔRの大きい方を全体の基準位置のずれ量ΔDとする。
【0082】
当然ながら、基準位置のずれ量ΔDが大きいほど、レンズアレイの光量分布特性によりシェーディング補正が正しく行なえなくなる。つまり、基準位置のずれの大きさに比例して、白色を色味を帯びた画素データに補正してしまうことになる。
【0083】
そこで、基準位置検出手段107によって検出された基準位置のずれ量を基に、判断基準決定手段109によって前述した彩度閾値St、明度閾値Vt、連続するカラー画素数閾値Wt、連続するカラーライン数閾値Htの4つのパラメータを決定する。
【0084】
まず、図6を参照して、明度閾値Vtと彩度閾値Stについて説明する。明度閾値Vtは、Vt1,Vt2として説明する。
【0085】
図6において、円錐体は、色相H,明度V,彩度Sの色空間を示し、Vt1,Vt2は、それぞれ有彩色領域の明度の上限閾値と下限閾値であり、Vt2<V<Vt1のとき有彩色の判定が可能な明度である。
【0086】
また、St(Vt1),St(V0),St(Vt2)は、それぞれ明度がVt1,V0,Vt2のときの彩度閾値である。彩度閾値Stは明度Vを変数にした関数St(V)とすることが好適であるが、明度Vによらず固定値であってもよい。ここでは彩度閾値Stは、St(V)として説明する。
【0087】
図6の明度閾値Vtの範囲内で、彩度閾値St(V)の外側の斜線領域が有彩色領域であり、カラー画素と判断する領域である。この領域を狭めることでカラー画素と判定する条件を厳しくすることができる。
【0088】
次に、図7を参照して、カラー画像と判定するための2つの条件を規定する連続カラー画素数閾値Wtと連続カラーライン数閾値Htの決定方法について説明する。
【0089】
図7(a)において、画像データ801中にある連続したカラー画素が占める領域が斜線領域(横Wt、縦Ht)より大きな領域になればカラー白黒検出手段111はカラー画像を検出する。したがって、例えばこの領域を広くすることでカラー画像と判定する条件を厳しくすることができる。図7(b)のように、主走査方向にずれて連続したカラー画素が存在する場合でもカラーラインが全てWtより長く、かつ連続してHt以上のカラーラインが存在すればカラー画像を検出する。
【0090】
以上より、たとえば次のようにして連続カラー画素数閾値Wtと連続カラーライン数閾値Htとを決定する。
ΔD=0のときは、Wt=Wtdef、Ht=Htdef
ΔD=1のときは、Wt=Wtdef*1.2、Ht=Htdef*1.2
ΔD=2のときは、Wt=Wtdef*1.4、Ht=Htdef*1.4
ここで、Wtdef及びHtdefは、それぞれのパラメータのデフォルト値とする。
【0091】
なお、ここでは、基準位置検出手段107によって検出された基準位置を基に連続するカラー画素数閾値Wtと連続するカラーライン数閾値Htを変更するようにしたが、彩度閾値Stと明度閾値Vt1と明度閾値Vt2の少なくとも1つを変更してもよい。また、これらの変更とWt,Htの変更を組み合わせてもよい。
【0092】
また、本実施形態では、ΔDに比例してWt、Htを大きくしているが、ΔDが大き過ぎると、スキャンした画像に帯状のすじが発生する。従って、たとえば、ある程度大きな値Nを定め、ΔD≧Nのときは、自動的にシェーディング補正データを取り直したり、エラー表示してシェーディング補正データを取り直すようにユーザに促すようにしてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、ΔDに比例してWt、Htの倍数を固定値にしているが、データ転送手段110を介して外部PC等から倍数を指定できるようにしてもよい。
【0094】
また、本実施形態では、左基準位置のずれΔLと右基準値のずれΔRの大きい方をΔDにしているが、これに限定されない。例えば、画像データの左半分に位置する画素に対してはΔD=ΔL、画像データの右半分に位置する画素に対してはΔD=ΔRとして、彩度閾値Stと明度閾値Vtを決定して、左右別々に閾値を決定するようにしてもよい。
【0095】
次に、図8を参照して、本実施形態の画像読取装置の動作例について説明する。なお、図8での各処理は、ROM103等に記憶されたプログラムがRAM102にロードされて、CPU101により実行される。
【0096】
まず、ステップS1では、CPU101は、ユーザにより不図示のスタートボタンが押下されたか否かを判断し、押下された場合は、不図示の搬送手段を制御して、原稿の搬送を開始し、ステップS2に進む。
【0097】
ステップS2では、CPU101は、シェーディング補正データ作成手段106によって作成されたシェーディング補正データをシェーディング補正データ記憶手段108から読み出し、ステップS3に進む。
【0098】
ステップS3では、CPU101は、基準位置検出手段107によって検出された左右の基準位置を不図示の基準位置記憶手段から読み出し、ステップS4に進む。この左右の基準位置をP1、Pr番目の画素とする。
【0099】
ステップS4では、CPU101は、不図示の紙センサによって原稿が読取手段104に到達したことを検知されると、ステップS5に進む。
【0100】
ステップS5では、CPU101は、読取手段104によって原稿の画像データを1ラインごとに取得し、ステップS6に進む。
【0101】
ステップS6では、CPU101は、原稿1ページ分の画像データを取得したか否かを判断し、取得した場合はステップS7に進み、取得しない場合はステップS5に戻る。
【0102】
ステップS7では、CPU101は、基準位置検出手段107によって左右の基準位置を取得する。ここで取得した左右の基準位置をD1、Dr番目の画素とする。
【0103】
ここで、CPU101は、今回取得した基準位置Dl、DrとステップS3で読み出した前回(以前に取得した)の基準位置Pl、Prとを比較し、一致した場合、ラインセンサは位置ずれが発生していないと判断する。
【0104】
この場合、ΔD=0なので、ステップS8において、CPU101は、判断基準決定手段109を制御して、カラー白黒検出のためのパラメータ値としてWt=Wtdef、Ht=Htdefを決定する。
【0105】
そして、ステップS9で、CPU101は、カラー白黒検出手段111を制御して、Wt=Wtdef、Ht=Htdefを用いて読取画像データがカラー画像か白黒画像かを判断し、ステップS10に進む。
【0106】
一方、ステップS7において、左基準位置Dlと左基準位置Plとを比較して結果、左基準位置Dlが左基準位置Plより2画素分左にシフトし、かつ右基準位置Drが右基準位置Prより2画素分右にシフトしていたとする。
【0107】
この場合、ΔD=2なので、ステップS8では、CPU101は、判断基準決定手段109を制御して、カラー白黒検出のためのパラメータ値としてWt=Wtdef*1.4、Ht=Htdef*1.4を決定する。
【0108】
そして、ステップS9で、CPU101は、カラー白黒検出手段111を制御して、Wt=Wtdef*1.4、Ht=Htdef*1.4を用いて読取画像データがカラー画像か白黒画像かを判断し、ステップS10に進む。
【0109】
ステップS10では、CPU101は、カラー画像を検出したかどうか判断し、検出した場合は、ステップS11に進み、検出しない場合は、ステップS12に進む。
【0110】
ステップS12では、CPU101は、不図示の画像処理手段によって画像データを2値化し、ステップS11に進む。
【0111】
ステップS11では、CPU101は、データ転送手段110を介して画像記憶手段105に記憶しているカラー画像または白黒画像を外部PCに送信し、ステップS13に進む。
【0112】
ステップS13では、CPU101は、次原稿があるか否かを判断し、次原稿があればステップS4に戻り、次原稿がなければ処理を終了する。
【0113】
以上説明したように、本実施形態では、読取手段104を構成するレンズアレイとラインセンサとの位置関係にずれが生じても、そのずれ量を考慮してカラー白黒検出の判断基準を変更するようにしている。これにより、カラー画像か白黒画像かの自動検出を正確に行うことができる。
【0114】
なお、本発明は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0115】
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによっても達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。
【0116】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0117】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、次のものを用いることができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等である。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0118】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現される場合も本発明に含まれる。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0119】
更に、前述した実施形態の機能が以下の処理によって実現される場合も本発明に含まれる。即ち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行う場合である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の実施形態の一例である画像読取装置を説明するためのブロック図である。
【図2】基準位置検出手段によりレンズアレイのマーク位置を検出する方法について説明するための説明図である。
【図3】図2での処理の流れについて説明するためのブロック図である。
【図4】カラー白黒検出手段の処理例を説明するためのフローチャート図である。
【図5】レンズアレイと正常時のラインセンサとの位置関係、及びレンズアレイと熱膨張等によるずれ発生時のラインセンサとの位置関係を示す図である。
【図6】明度閾値と彩度閾値を説明するための説明図である。
【図7】連続カラー画素数閾値と連続カラーライン数閾値の決定方法について説明するための説明図である。
【図8】画像読取装置の動作例について説明するためのフローチャート図である。
【図9】レンズアレイの光量分布について説明するための説明図である。
【図10】シェーディング補正の一例を説明するための図である。
【図11】シェーディング補正の一例を説明するためのグラフ図である。
【図12】シェーディング補正データの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0121】
101 CPU
102 RAM
103 ROM
104 読取手段
105 画像記憶手段
106 シェーディング補正データ作成手段
107 基準位置検出手段
108 シェーディング補正データ記憶手段
109 判断基準決定手段
110 データ転送手段
111 カラー白黒検出手段
501,701 レンズアレイ
702,703 ラインセンサ
502,503 黒マーク
504 原稿搬送区間
510,512 比較器
511,513,514,516 データ記憶手段
515 計算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から原稿に照射された光の反射光を結像するレンズ、及び該レンズで結像した反射光を受光することで原稿の画像を読み取る読取センサを有し、前記レンズにおける原稿の読取に用いられる領域の外側の位置にマークが設けられた読取手段と、
該読取手段により読み取られた画像データから前記マークの位置を検出する基準位置検出手段と、
前記読取手段により読み取られた画像データがカラー画像か白黒画像かを判断するカラー白黒検出手段と、
前記基準位置検出手段によって検出された前記マークの位置に対して、それ以前に検出された前記マークの位置又は予め設定された初期位置を比較する比較手段と、
前記カラー白黒検出手段においてカラー画像か白黒画像かを判断する基準値を前記比較手段による比較結果に基づいて決定する判断基準決定手段と、を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記判断基準決定手段は、前記基準位置検出手段によって検出された前記マークの位置に対する、それ以前に検出された前記マークの位置又は前記初期位置のずれ量に比例して前記基準値が大きくなるように該基準値を変更する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
光源から原稿に照射された光の反射光を結像するレンズ、及び該レンズで結像した反射光を受光することで原稿の画像を読み取る読取センサを有し、前記レンズにおける原稿の読取に用いられる領域の外側の位置にマークが設けられた読取手段を備える画像読取装置の制御方法であって、
前記読取手段により読み取られた画像データから前記マークの位置を検出する基準位置検出ステップと、
前記読取手段により読み取られた画像データがカラー画像か白黒画像かを判断するカラー白黒検出ステップと、
前記基準位置検出ステップで検出された前記マークの位置に対して、それ以前に検出された前記マークの位置又は予め設定された初期位置を比較する比較ステップと、
前記カラー白黒検出ステップにおいてカラー画像か白黒画像かを判断する基準値を前記比較ステップでの比較結果に基づいて決定する判断基準決定ステップと、を備えることを特徴とする画像読取装置の制御方法。
【請求項4】
光源から原稿に照射された光の反射光を結像するレンズ、及び該レンズで結像した反射光を受光することで原稿の画像を読み取る読取センサを有し、前記レンズにおける原稿の読取に用いられる領域の外側の位置にマークが設けられた読取手段を備える画像読取装置を制御するプログラムであって、
前記読取手段により読み取られた画像データから前記マークの位置を検出する基準位置検出ステップと、
前記読取手段により読み取られた画像データがカラー画像か白黒画像かを判断するカラー白黒検出ステップと、
前記基準位置検出ステップで検出された前記マークの位置に対して、それ以前に検出された前記マークの位置又は予め設定された初期位置を比較する比較ステップと、
前記カラー白黒検出ステップにおいてカラー画像か白黒画像かを判断する基準値を前記比較ステップでの比較結果に基づいて決定する判断基準決定ステップと、をコンピュータに実行させる、ことを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−28646(P2010−28646A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189857(P2008−189857)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】