留め金具及び軽量コンクリートパネルの取付構造
【課題】 ALCパネルを取付ける取付用ドリリングタッピングのねじ部にALCパネルの粉詰まりがあっても、留め金具により確実に螺合させて確実にALCパネルを固定することができるALCパネルの取付構造を提供する。
【解決手段】 スパナ等に嵌合する形状の外壁部と薄くて平坦な底部とで形成された空間を備えた袋ナット形状をなしており、前記底部にはドリリングタッピングねじが貫通する下孔を有していて、ねじ部に詰まった軽量コンクリートパネル粉を掻き出して空間に収容するように構成した留め金具を採用した。
【解決手段】 スパナ等に嵌合する形状の外壁部と薄くて平坦な底部とで形成された空間を備えた袋ナット形状をなしており、前記底部にはドリリングタッピングねじが貫通する下孔を有していて、ねじ部に詰まった軽量コンクリートパネル粉を掻き出して空間に収容するように構成した留め金具を採用した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量コンクリートパネル(以下,ALCパネルと呼ぶ。)をドリリングタッピングねじを用いて建物躯体に取付ける方法に関し、その際に使用する留め金具とそれを使用した軽量コンクリートパネルの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からALCパネルは建物の床材、屋根材、壁材として広く使用されている。ALCパネルの取付構造の一例としては、建物躯体に取付けた取付金具を介してドリリングタッピングねじを用いてALCパネルを建物躯体に取付け方法が採用されている。
例えば、H型鉄骨の上に取付金具をなす薄肉C型断面を有する下地材を配置し、この薄肉下地材上にALCパネルを載置し、かつこのパネルを前記薄肉下地材にセルフドリルビスで取付ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、この方法では梁の上に下地材を設けるため、躯体のレベルから床上までのレベルが大きくなり、建物の天井高が低くなると言う問題点があった。また、パネルを支持する部分の全長にわたり薄肉下地材(殆どの場合リップ溝型鋼を使用)を使用するため、鋼材自体のコストがかさむ問題点があった。更に、梁への固定方法が溶接が殆どであり、下地材自体の板厚が薄く、梁などの躯体に確実に固定するにはかなり高い溶接技術が必要である。
【0003】
第2の固定方法の従来例として、上部に雄ねじ部があり、他端側に掛止部となるフックを設けたほぼ円形断面のフックボルトを用いてボルトの共回りを防止する取付金物がある。ここでは予めパネルに該フックボルトを差し込むための貫通した穴と、座金を埋込むための座掘り加工が施されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
第3の従来例として、H形鉄骨のフランジに係止めされる横U字型の係止部材と、この係止部材に固設された板状体とで構成された取付金物を用い、該取付金物は梁にボルトで固定でき、ALCパネル表面から該取付金物の板状体に向けてパネル固定用ネジを打込むことで、ALCパネルを固定するパネルの取付構造がある。この従来例では予めパネルの裏面に取付金物がはめ込まれる切り込み部の加工が施されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
第4の従来例として、H形鉄骨のフランジに止着される挟着部と、平板支持部に面一に突出する固定用平板部とで一体構成され、挟着部は平板支持部と平板支片部とでH型鉄骨のフランジを弾圧的に挟持する圧接片部とからなり、狭着部はH型鉄骨のフランジへ圧入することにより躯体に固定され、載置されたALCパネル表面よりタッピンねじを固定用平板部へ打ち込むことでALCパネルを固定する取付金物がある。ここでは予めパネルの裏面に取付金物がはめ込まれる切り込み部の加工が施されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
第5の従来例として、図19に一部破断斜視図で示すように、H形鉄骨2のフランジ2aに平板部材5及び取付金物44を止着させ、この取付金物44上にALCパネル1を載置し、ALCパネル1の裏側に設けた取付金具用切り込み部を該取付金物44に嵌め込んだ後、ALCパネル表面側の取付ネジ用孔からネジ9を打ち込んで、取付金物44にねじ止め固定する方法がある(例えば、特許文献5参照。)。
この方法で使用するALCパネル1には、図20に示すようにALCパネル裏面側の取付金具用切り込み部3cと、該切り込み部3cの位置に対応するALCパネル表面側の取付ネジ用孔3bとがALCパネル製造工場内で予め設けられている。取付ネジ用孔3bのALCパネル表面側は座金などを埋め込むための座堀り3aが加工形成されている。
また、この方法で使用する取付金物44は、図21に示すように2枚の側板44b、44bを有する断面コの字型の鋼片に、取付金物がH形鉄骨2のフランジ部2aにはめ込むための切り込み部44cの加工が施されている。取付金物44は2個一対としてH形鉄骨2のフランジ2aに止着させて使用する。
【0007】
しかしながら、前述した第2から第5の従来例においては、パネルに取付金物がはめ込まれるU字形やコの字形の切り込み部、あるいはパネルの表面側に取付ネジ用孔を予め製造工場内で設ける必要があり、パネルの加工設備等が必要なのでコストも高くなる。また、第3、第4、第5の従来例については、取付金物が梁に固定された後、パネルが載置され、パネル表面よりねじを取付金物目掛けて打込むが、パネル表面からは金物位置が見えないことから、パネル長さおよび幅方向に取付金物位置を墨出しするなど、施工時に取付金物の設置位置についても気を使う必要があった。
【0008】
第5の従来例では、金物点数が増えてコストが上がる上に、取付金物や平板を設置する位置をパネルの割付に合わせる必要があるため、施工の際予めパネルの割付を把握した上での金物設置が必要となり、施工効率が悪くなると言う問題点があった。
更に、前述した予めパネルに特殊な加工を施さなければならない問題点を解決できる方法としていくつかの例が提案されている。これらの提案について以下に簡単に説明する。
【0009】
第6の従来例としては、図21に示すように第5の従来例の前衛となる手段で、ALCパネルをH形鉄骨のフランジに取り付けるためのALCパネル用取付金具、およびその取付金具を設置した間に設ける平板部材を用いた取付構造であって、取付金具は平板とその両側に直角に設けられた側板とから構成された断面下向きコ字状体であるとともに、該側板にその横方向に沿って前記フランジに嵌合する嵌合溝が形成されている金具であり、該取付金具はその嵌合溝に前記フランジが嵌合されて取り付けられており、ALCパネルはその表面から前記取付金具の平板に対してネジが打ち込まれて取り付けられており、かつ、取付金物同士の間にできるフランジとパネルとの高低差を無くすために、パネルの版間に位置する部分に平板部材をフランジにあてがう取付構造がある(例えば、特許文献6参照。)。
【0010】
第7の従来例としては、図22(a)に示すようにボルト頭部6aが外形が略円形または多角形のフランジからなるとともに、図22(b)に示すように該フランジの裏面には突起部6dがあり、且つボルト軸部にはナットを螺合するネジ部6bを設けると共に、先端には軽量コンクリートパネルに貫入する刃6cを備えてなる軽量コンクリートパネルの固定ボルトを使用する例がある(例えば、特許文献7参照。)。
このボルト6を使用したALCパネルの固定方法を図23に断面で示す。この従来例では、ALCパネル1と取付金具7とでH形鉄骨2のフランジ2aを挟み込み、固定用ボルト6とナット8とで締め付けてALCパネルをフランジ2aに固定する。
第7の従来例では、パネルへの特殊な加工の必要がなく、また、ALCパネル載置後に固定用ボルト6を打ち、取付金物の位置がボルトを打った位置に決まるため、取付金物の位置をそれほど気にする必要がない。しかしながら、固定用ボルト6の先端に刃6cがあり、ALCパネル1を固定用ボルト自体で穴を開け打込むこととなっているが、実際にはALCパネル1に貫入させた際に固定用ボルト6のねじ部6bにはパネルの粉が詰まりナット8を螺合することが困難となる。電動の工具などを用い強固な力で無理やりナット8を螺合させようとした場合には、固定用ボルト6が共回りを起こしたり、ALCパネル表面側へ抜けてしまうなどしてしまい、固定用ボルト6とナット8を螺合することができず、ALCパネルを固定することが出来ない難点がある。
【特許文献1】特開平05−148929号公報
【特許文献2】特許2835485号公報
【特許文献3】特開平08−209832号公報
【特許文献4】特開平09−287229号公報
【特許文献5】特開2000−273996号公報
【特許文献6】特開平11−166282号公報
【特許文献7】特開2004−11678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した各従来例においては、建物の天井高が低くなる、あるいは屋や床および壁の厚みが厚くなるという問題点や、取付金物の周辺部に取付金物を嵌め込む切り込み部、あるいはALCパネルに固定用のボルトやネジなどを挿入するための特殊な加工を予め工場で施す必要があり、ALCパネルの生産性が低くなるとともにパネルの加工設備等が必要となるのでコストも高くなるという問題点があった。
また、これらの加工を現場で行うには、取付け精度に影響を及ぼしかねないことや施工での手間が極端に大きくなるなどと言う問題点があった。
更に、ALCパネルを固定するドリリングタッピングねじのねじ部に粉が詰まり、ドリリングタッピングねじを螺合する際のドリリングタッピングねじの共廻りや抜けが発生したりするので確実なALCパネルの固定ができない上、取付金物の位置がALCパネルの割付によるため、金物設置の際の位置に充分な注意を払う必要があり、施工効率が悪いと言った問題点があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決し、建物の天井高を必要以上に低くするあるいは屋や床および壁の厚みを厚くすることなく、現場および工場にてALCパネルへの加工を施す必要がなく、またALCパネルの表面側から取付用ドリリングタッピングねじの打ち込みを容易にするとともに、ALCパネルを取付ける取付用ドリリングタッピングねじがねじ部にALCパネルの粉詰まりがあっても留め金具により確実に螺合させて確実にALCパネルを固定することができるALCパネルの取付構造を提供するとともに、安定した施工性を確保でき、各種金物の設置を取付用ドリリングタッピングねじの設置後に行えることで、取付用ドリリングタッピングねじや取付金物の位置を既に敷いてあるALCパネルに合わせることが可能となり施工効率が向上するALCパネルの取付構造を提供する。更には、ALCパネルのコストだけでなく、金物点数を減らし簡易な形状の金物とすることで金物コストも最小限に押えた躯体へのALCパネルの取付構造を提供するとともに、これを構成するための留め金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために、パネル取付用のドリリングタッピングねじのねじ谷部に多少のALCパネルの粉詰まりがあっても粉を掻き出すことができる留め金具を使用して、ALCパネルを建物躯体へ固定する取付構造を採用した。
すなわち、本発明の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具は、スパナ等と嵌合可能な形状の外壁部と薄くて平坦な底部とで形成された一定の空間を有する袋ナット形状からなり、前記底部にはドリリングタッピングねじが貫通する下孔が設けられ、且つ前記外壁部と螺合されたドリリングタッピングねじとの間に隙間ができるような空間が設けられて構成された軽量コンクリートパネル固定用の留め金具とした。
本発明の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具においては、前記下孔の直径がドリリングタッピングねじの谷径以上山径未満のものであっても良い。
【0014】
本発明の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具においては、前記底部の下孔には、更に切れ込み部を設けたものであることが好ましい。
また、留め金具の外形形状寸法は、使用するドリリングタッピングねじの頭部の形状寸法と同じであることが好ましい。
前記外壁部の底部から離れた一端の周囲に、ドリリングタッピングねじに螺合して締め付ける際に取付金物と接する支圧面を設けたものであっても良い。
さらに、前記袋ナット形状が薄板鋼板のプレス材からなるものであっても良い。
【0015】
本発明の軽量コンクリートパネルの取付構造は、軽量コンクリートパネルを建物躯体の梁や柱のフランジ若しくは下地鋼材上に載置し、該軽量コンクリートパネルにドリリングタッピングねじを打ち込んだ後、前記建物躯体の梁や柱のフランジ若しくは下地鋼材を挟み込むような取付金具を介して前記本発明の留め金具を前記ドリリングタッピングねじに螺合させて軽量コンクリートパネルを固定してなる軽量コンクリートパネルの取付構造を採用した。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、次のような効果が得られる。すなわち、パネルに取付金物がはめ込まれる切り込み部や、取付用ドリリングタッピングねじのために明ける穴などの大掛かりな加工が不要になり、パネル製造原価が低減するとともに、パネルへの加工が不要になることにより製造工程が簡素化され、生産効率が改善される。
また、ALCパネルを固定するドリリングタッピングねじのねじ部に粉が詰まっても、ドリリングタッピングねじを螺合する際に粉が空間部に排出されるので螺合が円滑となり、ドリリングタッピングねじの共廻りや抜けが発生したりしないので、確実なALCパネルの固定ができる。
【0017】
また、建設現場においては、取付用ドリリングタッピングねじの設置位置についても、取付金物の位置が打ち込んだ取付用ドリリングタッピングねじに合せて設置されることから、取付用ドリリングタッピングねじを打ち込む位置を厳密にする必要がなく、墨出しの作業などが減らせるとともに、取付金物の設置位置を予めパネルの割付に合せて設置する必要もなくなることで作業が低減される。また、取付用ドリリングタッピングねじと留め金具がひとつの工具にて作業が可能になるとともに、非常に単純な作業でパネルを固定することができるので、パネルの建て込みを専門としない多能工においても作業が可能となり、現場での作業効率の向上が見込める。
更に、使用する取付用ドリリングタッピングねじが特殊なねじである必要もなく、金物自体が非常に簡単な形状をしており、金物作製時の製造原価が低く抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、薄板から留め金具を形成した場合の一実施例について図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
本発明における留め金具の一実施例を示す外観斜視図を図1に示し、図1の線A−A’の沿った断面図を図2に示した。
図1に示す留め金具10は、薄板鋼板をプレス加工して形成した袋ナット形状をしており、外壁部10aはスパナ等に嵌合する形状であって、袋ナットの底部10bにはドリリングタッピングねじを貫通させる下孔10cがあけてある。留め金具10の底部10bと反対側には、後述の取付金具を圧接して支持する支圧面10fが設けてある。袋ナット状の留め金具10の外壁部10aと底部10bで囲まれた中心部は空間10gをなしている。
留め金具10の左右から見た側面図を図3(a)及び(b)に、上から見た平面図を図4に、下から見た底面図を図5に示す。
【0019】
本発明の留め金具10は、例えば板厚が0.25mm以上3.5mm以下の平坦な底部10bを有し、留め金具10の外壁部10a形状が六角形や楕円形などの形状をすることでスパナ等で回転させることが可能な形状となっている。
留め金具10は、単純に0.25mm以上3.5mm以下の薄鋼板を曲げたり、押し出したりすることで外周の形状を形成させる場合や、厚い板をプレスしてキャップ状の形状にしたもの、あるいは中央付近を押し潰したり、削ったりすることで薄板状の底部10bを形成することも可能である。厚さが3.5mm以上になると、単純にプレス加工では成形するのが困難となる。
【0020】
ALCパネル取付用にドリリングタッピンねじを用いる場合、板厚が0.25mm〜0.5mm程度の極薄い鋼板を用いて留め金具を製作すると、留め金具の下孔10cを設置しなくても取付用ドリリングタッピングねじと留め金具との螺合が可能となる。このような場合には、取付用ドリリングタッピングねじと留め金具との螺合がし易くなるが、あまり薄いと締め付け強度が弱くなる。
更に、留め金具の板厚が2〜3mm程度の場合であっても、留め金具の薄板部に取付用ドリリングタッピングねじのねじ山径未満の下孔10cを予め設けておけば、取付用ドリリングタッピングねじと留め金具との螺合がし易くなる。
必要となる取付部強度にもよるが、留め金具は1.2mm程度の板厚で下孔10cの径が取付用ドリリングタッピングねじのねじ谷径以上ねじ山径未満であることが最も施工性が良く好ましい。
留め金具10の板厚が2mm程度以上の場合には、タッピングドリルであらかじめ下孔10c内面にねじ溝を刻んでおくのが好ましい。
【0021】
底部10bの設置位置は平面的には留め金具10の中心部に設けるが、高さ方向では図6に示すように、留め金具10の厚さ方向の端部(図6(a)参照。)あるいは中間部(図6(b)参照。)など、どの部分にあっても良いが、底部10bの内径(図6(c)のd0)は取付用ドリリングタッピングねじ9のねじ部山径(図6(c)のd1)より大きくする(図6でd0>d1)必要がある。
図6(b)及び図6(c)は、外壁部10aの厚さが底部10bの厚さtよりも厚い場合を示しているが、図6(a)に示すように外壁部10aの厚さtと底部10bの厚さtを同じに構成しても良い。
次に、本発明におけるドリリングタッピングねじ9と留め金具10との関係を図7に断面図で示す。
図7はドリリングタッピングねじ9を留め金具10に螺合させた状態を示している。留め金具10の下孔10aの直径d3は、ドリリングタッピングねじ9のねじ山径d1よりも小さく、ねじ谷径d2よりも大きくなっている。すなわち、図においてd1>d3>d2の関係になっている。また、図に示すように、外壁部10aと螺合されたドリリングタッピングねじ9との間に隙間ができるような空間10gが設けられている。この空間10gは留め金具10とドリリングタッピングねじを螺合する際に、ドリリングタッピングねじ溝に詰まっている粉が逃げる空間を提供する役割を果たしている。
【0022】
図1及び図2において、袋ナット状の留め金具10の外壁部10aと底部10bで囲まれた中心部が空間10gをなしている。図7に示すように、空間10gはドリリングタッピングねじ9と螺合させた際に、下孔10cで掻き出されたALCパネルの粉を空間10gに収容する機能を果たしている。
空間10gは、ALCパネルより突き出した取付用ドリリングタッピングねじの先端に螺合させる際には、打ち込む位置決めのガイドの役割を果たしており、施工性を向上させることができる。
【0023】
また、袋ナット状の留め金具10の外壁部10aの形状は、図8に示すように多角形などの形状で構成し、電動ドリルの回転に対して抵抗が取れる形状とすることで回転させる構造を実現している。図8(a)は楕円形、図8(b)は三角形、図8(c)は正方形、図8(d)は六角形、図8(e)は向かい合う一対の面が窪んだ四角形の例である。
袋ナット状の留め金具10の外壁部10aで囲まれたこれら頭部の形状は、使用する取付用ドリリングタッピングねじの頭部の形状と同じにしておくのが望ましい。電動ドリル等共通の工具で締め付け作業ができるからである。工具とのかかりを確保するために、取付用ドリリングタッピングねじの頭部の高さと留め金具10の頭部の高さは3mm以上〜10mm程度あることが望ましい。
留め金具10の底部10bと反対側の周囲には、取付用ドリリングタッピングねじに螺合して締め付ける際に、取付金物と接する支圧面10fを設けておいても良い。
【0024】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る留め金具20の外観斜視図を図9に示す。
第2の実施形態に係る留め金具20が、先の第1の実施形態に係る留め金具10と異なる点は、第2の実施形態に係る留め金具20の底部20bには、下孔20cと共にところどころに下孔20cから連なる切れ込み部20eを設けてある点である。他の構成要件はすべて第1の実施形態の場合と同様である。
切れ込み部20eの形状は特に制限はない。例えば図10に示すような様々な形状が利用できる。図10(a)は2個の扇形切れ込み部の場合、図10(b)は4個の扇形切れ込み部の場合、図10(c)は先端が丸い歯車状の場合、図10(d)は星形歯車状の場合、図10(e)は4個の短冊の場合である。いずれの形状においても例えば図9のように、切れ込み部20eは下孔20cの内縁から繋がっていることが重要である。
切れ込み部20eの長さ(図10のd4)は、使用するタッピングドリルねじの太さ(図10のd3)よりも大きくしておく(d4>d3)必要がある。
このように、下孔20cに続く切れ込み部20eを設けておくことにより、ALCパネルへ取付用ドリリングタッピングねじを打ち込んだ際に、ねじ溝部にALCパネルの粉などが多量に詰まっても、留め金具と嵌合させる際に、ねじのねじ山に詰まったALCパネル粉を掻き落とし、切れ込み部20eや空間20gに取り除くことができるため、粉詰まりを気にする必要がなくなり、かつ、ねじの共廻りや抜けを少なくして、施工性の向上が図ることが可能となる。
図11は、ドリリングタッピングねじ9を留め金具20に螺合させた状態を示している。留め金具20の下孔20cの直径d3は、ドリリングタッピングねじ9のねじ山径d1よりも小さく、ねじ谷径d2よりも大きくなっている。すなわち、図においてd1>d3>d2の関係になっている。
さらに、ところどころに切れ込み部20eが設けてあり、切れ込み部20eの深さd4はドリリングタッピングねじ9のねじ山径d1よりも大きい。すなわち、図においてd4>d1>d3>d2の関係になっている。
ところどころに切れ込み部20eが設けてあることにより、ドリリングタッピングねじ9のねじ山に詰まったALCパネルの粉を取り除くことが可能となっている。
下孔20cの直径(図11のd3)と、これを越える径の切れ込み部(図11のd4、ここでd4>d3)とを交互に設けることで、粉の除去にとってより大きな効果が得られるようになる。
切れ込み部20eの幅と下孔20cの円周との関係は、取付強度にもよるが切れ込み部20eの幅が下孔20cの外周長さの半分以上で、径切れ込み部20eの幅:下孔20cの外周長さ=1:1程度を占めることが望ましい。
【0025】
本発明において使用するドリリングタッピングねじの一実施例の外観図を図12に示す。
本発明において使用するALCパネル取付用のドリリングタッピングねじ9は、前述した留め金具10の特徴により制約を受ける部分は少なく、従来と同様に殆どのねじが対応可能である。
本発明において使用するドリリングタッピングねじ9は、先端9cが尖っており、先端部にねじ部9aが刻まれている。他端には通常六角形の頭部9bを有している。
また、取付用ドリリングタッピングねじ9をALCパネル1へ打ち込む際に、打ち込みをより簡易にするためには、図13に示すように、取付用ドリリングタッピングねじ9の先端9cの尖った先端部分にもねじ山を設ける方法(図13(a)参照。)や、先端9cを単純に斜めにする方法(図13(b)参照。)、あるいは先端9cを尖らせかつ切り欠きを設ける方法(図13(c)参照。)などがある。
更に、取付用ドリリングタッピングねじ9のねじ部9aは、取付用ドリリングタッピングねじ9の先端9cから頭部9c近傍までより長い範囲にねじ山が設けてあるほど、留め金具10を螺合させる際の取付用ドリリングタッピングねじ9の共周りや抜けを防止することができる。
【0026】
本発明における取付金物11の一具体例を図14に斜視図で示す。
取付金物11については、取り付ける鉄骨のフランジの厚さに合せた段差11dを設けることにより、安定した止め付けが可能となる。また、取付金物11には、取付用ドリリングタッピングねじの径より若干大きく、かつ、留め金具10の支圧面10fの径より小さい挿入穴11aをあらかじめ設けておき、ALCパネルを固定する時に取付用ドリリングタッピングねじが挿入でき、かつ、取付金物を留め金具で押さえつけられる形状としておく必要がある。図において(a)は段差の下側に挿入穴を設けた場合、(b)は段差の上側に挿入穴を設けた場合、(c)は緩やかな段差を設けて段差の上側に挿入穴を設けた例を示す。
【0027】
ALCパネルの取付けにおいて、高い取付部強度を必要とする場合には、図15に示すようにH形鉄骨のフランジに掛かる取付金物11の長手方向に沿って折り返し11b(図15(a)参照。)や、孔11c、リブ11dを設けたり(図15(b)、(c)参照。)、取付金物11の板圧を厚くする方法や留め金具10の支圧面の面積を大きくする方法、取付用ドリリングタッピングねじの頭部を大きくしたりフランジを設けるなどの対策を施して、ALCパネルへの支圧面積を大きくする方法、更には、取付用ドリリングタッピングねじとALCパネルの間、あるいは留め金具と取付金物の間に座金を配置するなどの方法を組み合わせることで対応が可能となる。
【0028】
図16は高い取付部強度を必要とする場合の別の対策例を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)は線B−B’に沿った断面図である。
図16では留め金具10から突起させた爪10hを折り曲げて、取付金物11の取付用ドリリングタッピングねじを差し込む穴11aに引掛けることで脱落を防止するとともに、留め金具10が回転できるように取付けられ、留め金具10および取付金物11を一体化することも可能である。これにより、施工時に作業員が準備する金物点数が減り、作業がより効率よく行うことが可能となる。
【0029】
次に、本発明におけるALCパネルの取付構造を、床または屋根の場合の一実施例について図面に基づいて説明する。
図17は本発明におけるALCパネルの取付構造を示す一部破断斜視図であり、図18は図17に示すALCパネルの取付構造の線C−C’に沿った断面図を示す。
ALCパネル1をH形鉄骨2のフランジ2aの上に載置した後、ALCパネル1の表面から取付用ドリリングタッピングねじ9を頭部9bが沈む状態まで打ち込む。その後、ALCパネル1の裏面側より突出した取付用ドリリングタッピングねじ9の先端9cに、取付金物11の挿入穴を通して押さえ込み、本発明の留め金具10を取付用ドリリングタッピングねじ9の先端9cに螺合させて嵌め込み、電動ドライバーなどを用いて締め付けてフランジ2aと取付金物11とでALCパネル1を挟み込んで固定する。
【0030】
このような取付構造にすれば、留め金具10の外壁部10aとドリリングタッピングねじ9との間に空間10gを設けてあるので、ALCパネルへドリリングタッピングねじを打ち込んだ際に、ねじ溝部にALCパネルの粉が多量に詰まっても、嵌合させる際に粉が掻き出されると共に、粉の逃げ道が有るので粉詰まりが発生することはなく、かつねじの共廻りや抜けを防いで施工性の向上を図ることが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る留め金具の一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す留め金具の線A−A’に沿った断面図である。
【図3】図1に示す留め金具の側面図であって、(a)は正面から見た図、(b)は右側から見た図である。
【図4】図1に示す留め金具の上から見た平面図である。
【図5】図1に示す留め金具の下から見た底面図である。
【図6】本発明の留め金具の底部位置を説明する図で、(a)は外壁部端面に設けた例、(b)は外壁部中央に設けた例を示し、(c)は留め金具の空間の径とドリリングタッピングねじの外形との寸法関係を説明する図である。
【図7】本発明の留め金具とドリリングタッピングねじとの寸法関係を説明する図である。
【図8】本発明の留め金具の外壁部形状の例を示す図で、(a)は小判型、(b)は三角形、(c)は正方形、(d)は六角形、(e)は向かい合う一対の面が窪んだ四角形の例である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る留め金具の一例を示す外観斜視図である。
【図10】切れ込み部の例を示す図で、(a)2個の扇形切れ込み部の場合、(b)4個の扇形切れ込み部の場合、(c)先端が丸い歯車状の場合、(d)星形歯車状の場合、(e)4個の短冊の場合である。
【図11】本発明の切り欠き部を有する留め金具とドリリングタッピングねじとの寸法関係を説明する図である。
【図12】本発明で使用するドリリングタッピングねじの一例を示す外観図である。
【図13】本発明で使用するドリリングタッピングねじの先端部を示す外観図で、(a)は先端部にもねじ山を設けた例、(b)は先端部を斜めにした例、(c)は先端部に切り欠きを設けた例を示す。
【図14】本発明で使用する取付金具の例を示す外観図で、(a)は段差の下側に挿入穴を設けた場合、(b)は段差の上側に挿入穴を設けた場合、(c)は緩やかな段差を設けて段差の上側に挿入穴を設けた例を示す。
【図15】本発明で使用する高い取付部強度を必要とする場合の取付金具の例を示す外観図で、(a)は長手方向に沿って折り曲げ部を形成した場合、(b)は長手方向に沿ってリブを形成した場合、(c)はリブの変形の例を示す。
【図16】本発明の留め金具を取付金具と一体化して使用する例を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)は線B−B’の沿った断面図である。
【図17】本発明のALCパネルの取付構造の一例を示す一部破断斜視図である。
【図18】図17の線C−C’に沿った断面図である。
【図19】第5の従来例に係るALCパネルの取付構造を示す一部破断斜視図である。
【図20】第5の従来例で使用するALCパネルを示す外観斜視図である。
【図21】第6の従来例で使用する取付金具を示す外観斜視図である。
【図22】第7の従来例で使用する固定ボルトの外観図で(a)は従来のねじを上から見た斜視図、(b)は従来のねじを下から見た斜視図である。
【図23】第7の従来例に係るALCパネルの取付構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ALCパネル
2 H形鉄骨
4 取付金物
5 平板部材
6 固定用ボルト
7 取付金物
8 ナット
9 ドリリングタッピングねじ
10,20 留め金具
10a,20a 外壁部
10b、20b 底部
10c,20c 下孔
10d、20d ネジ溝
10e,20e 切れ込み部
10f,20f 支圧面
10g、20g 空間
11 取付金物
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量コンクリートパネル(以下,ALCパネルと呼ぶ。)をドリリングタッピングねじを用いて建物躯体に取付ける方法に関し、その際に使用する留め金具とそれを使用した軽量コンクリートパネルの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からALCパネルは建物の床材、屋根材、壁材として広く使用されている。ALCパネルの取付構造の一例としては、建物躯体に取付けた取付金具を介してドリリングタッピングねじを用いてALCパネルを建物躯体に取付け方法が採用されている。
例えば、H型鉄骨の上に取付金具をなす薄肉C型断面を有する下地材を配置し、この薄肉下地材上にALCパネルを載置し、かつこのパネルを前記薄肉下地材にセルフドリルビスで取付ける方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、この方法では梁の上に下地材を設けるため、躯体のレベルから床上までのレベルが大きくなり、建物の天井高が低くなると言う問題点があった。また、パネルを支持する部分の全長にわたり薄肉下地材(殆どの場合リップ溝型鋼を使用)を使用するため、鋼材自体のコストがかさむ問題点があった。更に、梁への固定方法が溶接が殆どであり、下地材自体の板厚が薄く、梁などの躯体に確実に固定するにはかなり高い溶接技術が必要である。
【0003】
第2の固定方法の従来例として、上部に雄ねじ部があり、他端側に掛止部となるフックを設けたほぼ円形断面のフックボルトを用いてボルトの共回りを防止する取付金物がある。ここでは予めパネルに該フックボルトを差し込むための貫通した穴と、座金を埋込むための座掘り加工が施されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
第3の従来例として、H形鉄骨のフランジに係止めされる横U字型の係止部材と、この係止部材に固設された板状体とで構成された取付金物を用い、該取付金物は梁にボルトで固定でき、ALCパネル表面から該取付金物の板状体に向けてパネル固定用ネジを打込むことで、ALCパネルを固定するパネルの取付構造がある。この従来例では予めパネルの裏面に取付金物がはめ込まれる切り込み部の加工が施されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
第4の従来例として、H形鉄骨のフランジに止着される挟着部と、平板支持部に面一に突出する固定用平板部とで一体構成され、挟着部は平板支持部と平板支片部とでH型鉄骨のフランジを弾圧的に挟持する圧接片部とからなり、狭着部はH型鉄骨のフランジへ圧入することにより躯体に固定され、載置されたALCパネル表面よりタッピンねじを固定用平板部へ打ち込むことでALCパネルを固定する取付金物がある。ここでは予めパネルの裏面に取付金物がはめ込まれる切り込み部の加工が施されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
第5の従来例として、図19に一部破断斜視図で示すように、H形鉄骨2のフランジ2aに平板部材5及び取付金物44を止着させ、この取付金物44上にALCパネル1を載置し、ALCパネル1の裏側に設けた取付金具用切り込み部を該取付金物44に嵌め込んだ後、ALCパネル表面側の取付ネジ用孔からネジ9を打ち込んで、取付金物44にねじ止め固定する方法がある(例えば、特許文献5参照。)。
この方法で使用するALCパネル1には、図20に示すようにALCパネル裏面側の取付金具用切り込み部3cと、該切り込み部3cの位置に対応するALCパネル表面側の取付ネジ用孔3bとがALCパネル製造工場内で予め設けられている。取付ネジ用孔3bのALCパネル表面側は座金などを埋め込むための座堀り3aが加工形成されている。
また、この方法で使用する取付金物44は、図21に示すように2枚の側板44b、44bを有する断面コの字型の鋼片に、取付金物がH形鉄骨2のフランジ部2aにはめ込むための切り込み部44cの加工が施されている。取付金物44は2個一対としてH形鉄骨2のフランジ2aに止着させて使用する。
【0007】
しかしながら、前述した第2から第5の従来例においては、パネルに取付金物がはめ込まれるU字形やコの字形の切り込み部、あるいはパネルの表面側に取付ネジ用孔を予め製造工場内で設ける必要があり、パネルの加工設備等が必要なのでコストも高くなる。また、第3、第4、第5の従来例については、取付金物が梁に固定された後、パネルが載置され、パネル表面よりねじを取付金物目掛けて打込むが、パネル表面からは金物位置が見えないことから、パネル長さおよび幅方向に取付金物位置を墨出しするなど、施工時に取付金物の設置位置についても気を使う必要があった。
【0008】
第5の従来例では、金物点数が増えてコストが上がる上に、取付金物や平板を設置する位置をパネルの割付に合わせる必要があるため、施工の際予めパネルの割付を把握した上での金物設置が必要となり、施工効率が悪くなると言う問題点があった。
更に、前述した予めパネルに特殊な加工を施さなければならない問題点を解決できる方法としていくつかの例が提案されている。これらの提案について以下に簡単に説明する。
【0009】
第6の従来例としては、図21に示すように第5の従来例の前衛となる手段で、ALCパネルをH形鉄骨のフランジに取り付けるためのALCパネル用取付金具、およびその取付金具を設置した間に設ける平板部材を用いた取付構造であって、取付金具は平板とその両側に直角に設けられた側板とから構成された断面下向きコ字状体であるとともに、該側板にその横方向に沿って前記フランジに嵌合する嵌合溝が形成されている金具であり、該取付金具はその嵌合溝に前記フランジが嵌合されて取り付けられており、ALCパネルはその表面から前記取付金具の平板に対してネジが打ち込まれて取り付けられており、かつ、取付金物同士の間にできるフランジとパネルとの高低差を無くすために、パネルの版間に位置する部分に平板部材をフランジにあてがう取付構造がある(例えば、特許文献6参照。)。
【0010】
第7の従来例としては、図22(a)に示すようにボルト頭部6aが外形が略円形または多角形のフランジからなるとともに、図22(b)に示すように該フランジの裏面には突起部6dがあり、且つボルト軸部にはナットを螺合するネジ部6bを設けると共に、先端には軽量コンクリートパネルに貫入する刃6cを備えてなる軽量コンクリートパネルの固定ボルトを使用する例がある(例えば、特許文献7参照。)。
このボルト6を使用したALCパネルの固定方法を図23に断面で示す。この従来例では、ALCパネル1と取付金具7とでH形鉄骨2のフランジ2aを挟み込み、固定用ボルト6とナット8とで締め付けてALCパネルをフランジ2aに固定する。
第7の従来例では、パネルへの特殊な加工の必要がなく、また、ALCパネル載置後に固定用ボルト6を打ち、取付金物の位置がボルトを打った位置に決まるため、取付金物の位置をそれほど気にする必要がない。しかしながら、固定用ボルト6の先端に刃6cがあり、ALCパネル1を固定用ボルト自体で穴を開け打込むこととなっているが、実際にはALCパネル1に貫入させた際に固定用ボルト6のねじ部6bにはパネルの粉が詰まりナット8を螺合することが困難となる。電動の工具などを用い強固な力で無理やりナット8を螺合させようとした場合には、固定用ボルト6が共回りを起こしたり、ALCパネル表面側へ抜けてしまうなどしてしまい、固定用ボルト6とナット8を螺合することができず、ALCパネルを固定することが出来ない難点がある。
【特許文献1】特開平05−148929号公報
【特許文献2】特許2835485号公報
【特許文献3】特開平08−209832号公報
【特許文献4】特開平09−287229号公報
【特許文献5】特開2000−273996号公報
【特許文献6】特開平11−166282号公報
【特許文献7】特開2004−11678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した各従来例においては、建物の天井高が低くなる、あるいは屋や床および壁の厚みが厚くなるという問題点や、取付金物の周辺部に取付金物を嵌め込む切り込み部、あるいはALCパネルに固定用のボルトやネジなどを挿入するための特殊な加工を予め工場で施す必要があり、ALCパネルの生産性が低くなるとともにパネルの加工設備等が必要となるのでコストも高くなるという問題点があった。
また、これらの加工を現場で行うには、取付け精度に影響を及ぼしかねないことや施工での手間が極端に大きくなるなどと言う問題点があった。
更に、ALCパネルを固定するドリリングタッピングねじのねじ部に粉が詰まり、ドリリングタッピングねじを螺合する際のドリリングタッピングねじの共廻りや抜けが発生したりするので確実なALCパネルの固定ができない上、取付金物の位置がALCパネルの割付によるため、金物設置の際の位置に充分な注意を払う必要があり、施工効率が悪いと言った問題点があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、上記問題点を解決し、建物の天井高を必要以上に低くするあるいは屋や床および壁の厚みを厚くすることなく、現場および工場にてALCパネルへの加工を施す必要がなく、またALCパネルの表面側から取付用ドリリングタッピングねじの打ち込みを容易にするとともに、ALCパネルを取付ける取付用ドリリングタッピングねじがねじ部にALCパネルの粉詰まりがあっても留め金具により確実に螺合させて確実にALCパネルを固定することができるALCパネルの取付構造を提供するとともに、安定した施工性を確保でき、各種金物の設置を取付用ドリリングタッピングねじの設置後に行えることで、取付用ドリリングタッピングねじや取付金物の位置を既に敷いてあるALCパネルに合わせることが可能となり施工効率が向上するALCパネルの取付構造を提供する。更には、ALCパネルのコストだけでなく、金物点数を減らし簡易な形状の金物とすることで金物コストも最小限に押えた躯体へのALCパネルの取付構造を提供するとともに、これを構成するための留め金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するために、パネル取付用のドリリングタッピングねじのねじ谷部に多少のALCパネルの粉詰まりがあっても粉を掻き出すことができる留め金具を使用して、ALCパネルを建物躯体へ固定する取付構造を採用した。
すなわち、本発明の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具は、スパナ等と嵌合可能な形状の外壁部と薄くて平坦な底部とで形成された一定の空間を有する袋ナット形状からなり、前記底部にはドリリングタッピングねじが貫通する下孔が設けられ、且つ前記外壁部と螺合されたドリリングタッピングねじとの間に隙間ができるような空間が設けられて構成された軽量コンクリートパネル固定用の留め金具とした。
本発明の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具においては、前記下孔の直径がドリリングタッピングねじの谷径以上山径未満のものであっても良い。
【0014】
本発明の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具においては、前記底部の下孔には、更に切れ込み部を設けたものであることが好ましい。
また、留め金具の外形形状寸法は、使用するドリリングタッピングねじの頭部の形状寸法と同じであることが好ましい。
前記外壁部の底部から離れた一端の周囲に、ドリリングタッピングねじに螺合して締め付ける際に取付金物と接する支圧面を設けたものであっても良い。
さらに、前記袋ナット形状が薄板鋼板のプレス材からなるものであっても良い。
【0015】
本発明の軽量コンクリートパネルの取付構造は、軽量コンクリートパネルを建物躯体の梁や柱のフランジ若しくは下地鋼材上に載置し、該軽量コンクリートパネルにドリリングタッピングねじを打ち込んだ後、前記建物躯体の梁や柱のフランジ若しくは下地鋼材を挟み込むような取付金具を介して前記本発明の留め金具を前記ドリリングタッピングねじに螺合させて軽量コンクリートパネルを固定してなる軽量コンクリートパネルの取付構造を採用した。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、次のような効果が得られる。すなわち、パネルに取付金物がはめ込まれる切り込み部や、取付用ドリリングタッピングねじのために明ける穴などの大掛かりな加工が不要になり、パネル製造原価が低減するとともに、パネルへの加工が不要になることにより製造工程が簡素化され、生産効率が改善される。
また、ALCパネルを固定するドリリングタッピングねじのねじ部に粉が詰まっても、ドリリングタッピングねじを螺合する際に粉が空間部に排出されるので螺合が円滑となり、ドリリングタッピングねじの共廻りや抜けが発生したりしないので、確実なALCパネルの固定ができる。
【0017】
また、建設現場においては、取付用ドリリングタッピングねじの設置位置についても、取付金物の位置が打ち込んだ取付用ドリリングタッピングねじに合せて設置されることから、取付用ドリリングタッピングねじを打ち込む位置を厳密にする必要がなく、墨出しの作業などが減らせるとともに、取付金物の設置位置を予めパネルの割付に合せて設置する必要もなくなることで作業が低減される。また、取付用ドリリングタッピングねじと留め金具がひとつの工具にて作業が可能になるとともに、非常に単純な作業でパネルを固定することができるので、パネルの建て込みを専門としない多能工においても作業が可能となり、現場での作業効率の向上が見込める。
更に、使用する取付用ドリリングタッピングねじが特殊なねじである必要もなく、金物自体が非常に簡単な形状をしており、金物作製時の製造原価が低く抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、薄板から留め金具を形成した場合の一実施例について図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
本発明における留め金具の一実施例を示す外観斜視図を図1に示し、図1の線A−A’の沿った断面図を図2に示した。
図1に示す留め金具10は、薄板鋼板をプレス加工して形成した袋ナット形状をしており、外壁部10aはスパナ等に嵌合する形状であって、袋ナットの底部10bにはドリリングタッピングねじを貫通させる下孔10cがあけてある。留め金具10の底部10bと反対側には、後述の取付金具を圧接して支持する支圧面10fが設けてある。袋ナット状の留め金具10の外壁部10aと底部10bで囲まれた中心部は空間10gをなしている。
留め金具10の左右から見た側面図を図3(a)及び(b)に、上から見た平面図を図4に、下から見た底面図を図5に示す。
【0019】
本発明の留め金具10は、例えば板厚が0.25mm以上3.5mm以下の平坦な底部10bを有し、留め金具10の外壁部10a形状が六角形や楕円形などの形状をすることでスパナ等で回転させることが可能な形状となっている。
留め金具10は、単純に0.25mm以上3.5mm以下の薄鋼板を曲げたり、押し出したりすることで外周の形状を形成させる場合や、厚い板をプレスしてキャップ状の形状にしたもの、あるいは中央付近を押し潰したり、削ったりすることで薄板状の底部10bを形成することも可能である。厚さが3.5mm以上になると、単純にプレス加工では成形するのが困難となる。
【0020】
ALCパネル取付用にドリリングタッピンねじを用いる場合、板厚が0.25mm〜0.5mm程度の極薄い鋼板を用いて留め金具を製作すると、留め金具の下孔10cを設置しなくても取付用ドリリングタッピングねじと留め金具との螺合が可能となる。このような場合には、取付用ドリリングタッピングねじと留め金具との螺合がし易くなるが、あまり薄いと締め付け強度が弱くなる。
更に、留め金具の板厚が2〜3mm程度の場合であっても、留め金具の薄板部に取付用ドリリングタッピングねじのねじ山径未満の下孔10cを予め設けておけば、取付用ドリリングタッピングねじと留め金具との螺合がし易くなる。
必要となる取付部強度にもよるが、留め金具は1.2mm程度の板厚で下孔10cの径が取付用ドリリングタッピングねじのねじ谷径以上ねじ山径未満であることが最も施工性が良く好ましい。
留め金具10の板厚が2mm程度以上の場合には、タッピングドリルであらかじめ下孔10c内面にねじ溝を刻んでおくのが好ましい。
【0021】
底部10bの設置位置は平面的には留め金具10の中心部に設けるが、高さ方向では図6に示すように、留め金具10の厚さ方向の端部(図6(a)参照。)あるいは中間部(図6(b)参照。)など、どの部分にあっても良いが、底部10bの内径(図6(c)のd0)は取付用ドリリングタッピングねじ9のねじ部山径(図6(c)のd1)より大きくする(図6でd0>d1)必要がある。
図6(b)及び図6(c)は、外壁部10aの厚さが底部10bの厚さtよりも厚い場合を示しているが、図6(a)に示すように外壁部10aの厚さtと底部10bの厚さtを同じに構成しても良い。
次に、本発明におけるドリリングタッピングねじ9と留め金具10との関係を図7に断面図で示す。
図7はドリリングタッピングねじ9を留め金具10に螺合させた状態を示している。留め金具10の下孔10aの直径d3は、ドリリングタッピングねじ9のねじ山径d1よりも小さく、ねじ谷径d2よりも大きくなっている。すなわち、図においてd1>d3>d2の関係になっている。また、図に示すように、外壁部10aと螺合されたドリリングタッピングねじ9との間に隙間ができるような空間10gが設けられている。この空間10gは留め金具10とドリリングタッピングねじを螺合する際に、ドリリングタッピングねじ溝に詰まっている粉が逃げる空間を提供する役割を果たしている。
【0022】
図1及び図2において、袋ナット状の留め金具10の外壁部10aと底部10bで囲まれた中心部が空間10gをなしている。図7に示すように、空間10gはドリリングタッピングねじ9と螺合させた際に、下孔10cで掻き出されたALCパネルの粉を空間10gに収容する機能を果たしている。
空間10gは、ALCパネルより突き出した取付用ドリリングタッピングねじの先端に螺合させる際には、打ち込む位置決めのガイドの役割を果たしており、施工性を向上させることができる。
【0023】
また、袋ナット状の留め金具10の外壁部10aの形状は、図8に示すように多角形などの形状で構成し、電動ドリルの回転に対して抵抗が取れる形状とすることで回転させる構造を実現している。図8(a)は楕円形、図8(b)は三角形、図8(c)は正方形、図8(d)は六角形、図8(e)は向かい合う一対の面が窪んだ四角形の例である。
袋ナット状の留め金具10の外壁部10aで囲まれたこれら頭部の形状は、使用する取付用ドリリングタッピングねじの頭部の形状と同じにしておくのが望ましい。電動ドリル等共通の工具で締め付け作業ができるからである。工具とのかかりを確保するために、取付用ドリリングタッピングねじの頭部の高さと留め金具10の頭部の高さは3mm以上〜10mm程度あることが望ましい。
留め金具10の底部10bと反対側の周囲には、取付用ドリリングタッピングねじに螺合して締め付ける際に、取付金物と接する支圧面10fを設けておいても良い。
【0024】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る留め金具20の外観斜視図を図9に示す。
第2の実施形態に係る留め金具20が、先の第1の実施形態に係る留め金具10と異なる点は、第2の実施形態に係る留め金具20の底部20bには、下孔20cと共にところどころに下孔20cから連なる切れ込み部20eを設けてある点である。他の構成要件はすべて第1の実施形態の場合と同様である。
切れ込み部20eの形状は特に制限はない。例えば図10に示すような様々な形状が利用できる。図10(a)は2個の扇形切れ込み部の場合、図10(b)は4個の扇形切れ込み部の場合、図10(c)は先端が丸い歯車状の場合、図10(d)は星形歯車状の場合、図10(e)は4個の短冊の場合である。いずれの形状においても例えば図9のように、切れ込み部20eは下孔20cの内縁から繋がっていることが重要である。
切れ込み部20eの長さ(図10のd4)は、使用するタッピングドリルねじの太さ(図10のd3)よりも大きくしておく(d4>d3)必要がある。
このように、下孔20cに続く切れ込み部20eを設けておくことにより、ALCパネルへ取付用ドリリングタッピングねじを打ち込んだ際に、ねじ溝部にALCパネルの粉などが多量に詰まっても、留め金具と嵌合させる際に、ねじのねじ山に詰まったALCパネル粉を掻き落とし、切れ込み部20eや空間20gに取り除くことができるため、粉詰まりを気にする必要がなくなり、かつ、ねじの共廻りや抜けを少なくして、施工性の向上が図ることが可能となる。
図11は、ドリリングタッピングねじ9を留め金具20に螺合させた状態を示している。留め金具20の下孔20cの直径d3は、ドリリングタッピングねじ9のねじ山径d1よりも小さく、ねじ谷径d2よりも大きくなっている。すなわち、図においてd1>d3>d2の関係になっている。
さらに、ところどころに切れ込み部20eが設けてあり、切れ込み部20eの深さd4はドリリングタッピングねじ9のねじ山径d1よりも大きい。すなわち、図においてd4>d1>d3>d2の関係になっている。
ところどころに切れ込み部20eが設けてあることにより、ドリリングタッピングねじ9のねじ山に詰まったALCパネルの粉を取り除くことが可能となっている。
下孔20cの直径(図11のd3)と、これを越える径の切れ込み部(図11のd4、ここでd4>d3)とを交互に設けることで、粉の除去にとってより大きな効果が得られるようになる。
切れ込み部20eの幅と下孔20cの円周との関係は、取付強度にもよるが切れ込み部20eの幅が下孔20cの外周長さの半分以上で、径切れ込み部20eの幅:下孔20cの外周長さ=1:1程度を占めることが望ましい。
【0025】
本発明において使用するドリリングタッピングねじの一実施例の外観図を図12に示す。
本発明において使用するALCパネル取付用のドリリングタッピングねじ9は、前述した留め金具10の特徴により制約を受ける部分は少なく、従来と同様に殆どのねじが対応可能である。
本発明において使用するドリリングタッピングねじ9は、先端9cが尖っており、先端部にねじ部9aが刻まれている。他端には通常六角形の頭部9bを有している。
また、取付用ドリリングタッピングねじ9をALCパネル1へ打ち込む際に、打ち込みをより簡易にするためには、図13に示すように、取付用ドリリングタッピングねじ9の先端9cの尖った先端部分にもねじ山を設ける方法(図13(a)参照。)や、先端9cを単純に斜めにする方法(図13(b)参照。)、あるいは先端9cを尖らせかつ切り欠きを設ける方法(図13(c)参照。)などがある。
更に、取付用ドリリングタッピングねじ9のねじ部9aは、取付用ドリリングタッピングねじ9の先端9cから頭部9c近傍までより長い範囲にねじ山が設けてあるほど、留め金具10を螺合させる際の取付用ドリリングタッピングねじ9の共周りや抜けを防止することができる。
【0026】
本発明における取付金物11の一具体例を図14に斜視図で示す。
取付金物11については、取り付ける鉄骨のフランジの厚さに合せた段差11dを設けることにより、安定した止め付けが可能となる。また、取付金物11には、取付用ドリリングタッピングねじの径より若干大きく、かつ、留め金具10の支圧面10fの径より小さい挿入穴11aをあらかじめ設けておき、ALCパネルを固定する時に取付用ドリリングタッピングねじが挿入でき、かつ、取付金物を留め金具で押さえつけられる形状としておく必要がある。図において(a)は段差の下側に挿入穴を設けた場合、(b)は段差の上側に挿入穴を設けた場合、(c)は緩やかな段差を設けて段差の上側に挿入穴を設けた例を示す。
【0027】
ALCパネルの取付けにおいて、高い取付部強度を必要とする場合には、図15に示すようにH形鉄骨のフランジに掛かる取付金物11の長手方向に沿って折り返し11b(図15(a)参照。)や、孔11c、リブ11dを設けたり(図15(b)、(c)参照。)、取付金物11の板圧を厚くする方法や留め金具10の支圧面の面積を大きくする方法、取付用ドリリングタッピングねじの頭部を大きくしたりフランジを設けるなどの対策を施して、ALCパネルへの支圧面積を大きくする方法、更には、取付用ドリリングタッピングねじとALCパネルの間、あるいは留め金具と取付金物の間に座金を配置するなどの方法を組み合わせることで対応が可能となる。
【0028】
図16は高い取付部強度を必要とする場合の別の対策例を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)は線B−B’に沿った断面図である。
図16では留め金具10から突起させた爪10hを折り曲げて、取付金物11の取付用ドリリングタッピングねじを差し込む穴11aに引掛けることで脱落を防止するとともに、留め金具10が回転できるように取付けられ、留め金具10および取付金物11を一体化することも可能である。これにより、施工時に作業員が準備する金物点数が減り、作業がより効率よく行うことが可能となる。
【0029】
次に、本発明におけるALCパネルの取付構造を、床または屋根の場合の一実施例について図面に基づいて説明する。
図17は本発明におけるALCパネルの取付構造を示す一部破断斜視図であり、図18は図17に示すALCパネルの取付構造の線C−C’に沿った断面図を示す。
ALCパネル1をH形鉄骨2のフランジ2aの上に載置した後、ALCパネル1の表面から取付用ドリリングタッピングねじ9を頭部9bが沈む状態まで打ち込む。その後、ALCパネル1の裏面側より突出した取付用ドリリングタッピングねじ9の先端9cに、取付金物11の挿入穴を通して押さえ込み、本発明の留め金具10を取付用ドリリングタッピングねじ9の先端9cに螺合させて嵌め込み、電動ドライバーなどを用いて締め付けてフランジ2aと取付金物11とでALCパネル1を挟み込んで固定する。
【0030】
このような取付構造にすれば、留め金具10の外壁部10aとドリリングタッピングねじ9との間に空間10gを設けてあるので、ALCパネルへドリリングタッピングねじを打ち込んだ際に、ねじ溝部にALCパネルの粉が多量に詰まっても、嵌合させる際に粉が掻き出されると共に、粉の逃げ道が有るので粉詰まりが発生することはなく、かつねじの共廻りや抜けを防いで施工性の向上を図ることが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る留め金具の一例を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示す留め金具の線A−A’に沿った断面図である。
【図3】図1に示す留め金具の側面図であって、(a)は正面から見た図、(b)は右側から見た図である。
【図4】図1に示す留め金具の上から見た平面図である。
【図5】図1に示す留め金具の下から見た底面図である。
【図6】本発明の留め金具の底部位置を説明する図で、(a)は外壁部端面に設けた例、(b)は外壁部中央に設けた例を示し、(c)は留め金具の空間の径とドリリングタッピングねじの外形との寸法関係を説明する図である。
【図7】本発明の留め金具とドリリングタッピングねじとの寸法関係を説明する図である。
【図8】本発明の留め金具の外壁部形状の例を示す図で、(a)は小判型、(b)は三角形、(c)は正方形、(d)は六角形、(e)は向かい合う一対の面が窪んだ四角形の例である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る留め金具の一例を示す外観斜視図である。
【図10】切れ込み部の例を示す図で、(a)2個の扇形切れ込み部の場合、(b)4個の扇形切れ込み部の場合、(c)先端が丸い歯車状の場合、(d)星形歯車状の場合、(e)4個の短冊の場合である。
【図11】本発明の切り欠き部を有する留め金具とドリリングタッピングねじとの寸法関係を説明する図である。
【図12】本発明で使用するドリリングタッピングねじの一例を示す外観図である。
【図13】本発明で使用するドリリングタッピングねじの先端部を示す外観図で、(a)は先端部にもねじ山を設けた例、(b)は先端部を斜めにした例、(c)は先端部に切り欠きを設けた例を示す。
【図14】本発明で使用する取付金具の例を示す外観図で、(a)は段差の下側に挿入穴を設けた場合、(b)は段差の上側に挿入穴を設けた場合、(c)は緩やかな段差を設けて段差の上側に挿入穴を設けた例を示す。
【図15】本発明で使用する高い取付部強度を必要とする場合の取付金具の例を示す外観図で、(a)は長手方向に沿って折り曲げ部を形成した場合、(b)は長手方向に沿ってリブを形成した場合、(c)はリブの変形の例を示す。
【図16】本発明の留め金具を取付金具と一体化して使用する例を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)は線B−B’の沿った断面図である。
【図17】本発明のALCパネルの取付構造の一例を示す一部破断斜視図である。
【図18】図17の線C−C’に沿った断面図である。
【図19】第5の従来例に係るALCパネルの取付構造を示す一部破断斜視図である。
【図20】第5の従来例で使用するALCパネルを示す外観斜視図である。
【図21】第6の従来例で使用する取付金具を示す外観斜視図である。
【図22】第7の従来例で使用する固定ボルトの外観図で(a)は従来のねじを上から見た斜視図、(b)は従来のねじを下から見た斜視図である。
【図23】第7の従来例に係るALCパネルの取付構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ALCパネル
2 H形鉄骨
4 取付金物
5 平板部材
6 固定用ボルト
7 取付金物
8 ナット
9 ドリリングタッピングねじ
10,20 留め金具
10a,20a 外壁部
10b、20b 底部
10c,20c 下孔
10d、20d ネジ溝
10e,20e 切れ込み部
10f,20f 支圧面
10g、20g 空間
11 取付金物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量コンクリートパネルを建物躯体に固定するためのドリリングタッピングねじに螺合させる留め金具であって、前記留め金具は、スパナ等と嵌合可能な形状の外壁部と薄くて平坦な底部とで形成された一定の空間を有する袋ナット形状からなり、前記底部にはドリリングタッピングねじが貫通する下孔が設けられ、且つ前記外壁部と螺合されたドリリングタッピングねじとの間に隙間ができるような空間が設けられて構成されたことを特徴とする軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項2】
前記下孔の直径がドリリングタッピングねじの谷径以上山径未満であることを特徴とする請求項1に記載の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項3】
前記底部の下孔には、更に切れ込み部が設けられて構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項4】
留め金具の外形形状寸法が、使用するドリリングタッピングねじの頭部の形状寸法と同じであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項5】
前記外壁部の底部から離れた一端の周囲には、ドリリングタッピングねじに螺合して締め付ける際に、取付金物と接する支圧面を設けてなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項6】
前記袋ナット形状が薄板鋼板のプレス材からなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項7】
軽量コンクリートパネルを建物躯体の梁や柱のフランジ若しくは下地鋼材上に載置し、該軽量コンクリートパネルにドリリングタッピングねじを打ち込んだ後、前記建物躯体の梁や柱のフランジ若しくは下地鋼材を挟み込むような取付金具を介して前記請求項1から6のいずれか1項に記載の留め金具を前記ドリリングタッピングねじに螺合させて、軽量コンクリートパネルを固定してなることを特徴とする軽量コンクリートパネルの取付構造。
【請求項1】
軽量コンクリートパネルを建物躯体に固定するためのドリリングタッピングねじに螺合させる留め金具であって、前記留め金具は、スパナ等と嵌合可能な形状の外壁部と薄くて平坦な底部とで形成された一定の空間を有する袋ナット形状からなり、前記底部にはドリリングタッピングねじが貫通する下孔が設けられ、且つ前記外壁部と螺合されたドリリングタッピングねじとの間に隙間ができるような空間が設けられて構成されたことを特徴とする軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項2】
前記下孔の直径がドリリングタッピングねじの谷径以上山径未満であることを特徴とする請求項1に記載の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項3】
前記底部の下孔には、更に切れ込み部が設けられて構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項4】
留め金具の外形形状寸法が、使用するドリリングタッピングねじの頭部の形状寸法と同じであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項5】
前記外壁部の底部から離れた一端の周囲には、ドリリングタッピングねじに螺合して締め付ける際に、取付金物と接する支圧面を設けてなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項6】
前記袋ナット形状が薄板鋼板のプレス材からなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の軽量コンクリートパネル固定用の留め金具。
【請求項7】
軽量コンクリートパネルを建物躯体の梁や柱のフランジ若しくは下地鋼材上に載置し、該軽量コンクリートパネルにドリリングタッピングねじを打ち込んだ後、前記建物躯体の梁や柱のフランジ若しくは下地鋼材を挟み込むような取付金具を介して前記請求項1から6のいずれか1項に記載の留め金具を前記ドリリングタッピングねじに螺合させて、軽量コンクリートパネルを固定してなることを特徴とする軽量コンクリートパネルの取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図8】
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【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−291923(P2008−291923A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138348(P2007−138348)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(399117730)住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(399117730)住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【Fターム(参考)】
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