説明

異常検出装置及び異常検出方法

【課題】異常放電の判定精度を向上させることが可能な、異常検出装置及び異常検出方法を提供する。
【解決手段】処理室内に載置されたウエハであってプラズマ処理後のウエハの脱離開始から搬送ゲートバルブが開くまでの動作を監視し、動作をウエハ脱離時の動作として特定する監視部72と、特定されたウエハ脱離時の動作中、処理室内に高周波電力を印加する高周波電源と整合器との間もしくは被処理体を載置する載置台として機能する下部電極と整合器との間に設けられた方向性結合器から出力される進行波または反射波の少なくともいずれかの高周波信号を取得する取得部73と、取得された高周波信号の波形パターンを解析する解析部74と、高周波信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定する取得部73と、を備えることを特徴とする異常検出装置70が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置における異常放電を検出するための異常検出装置及び異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、ウエハという。)や基板等の被処理体にプラズマを用いた微細加工を施す場合、プラズマ処理を行う処理室内にガスを導入し、高周波電力を印加して、導入されたガスを分解することによりプラズマを生成し、そのプラズマを用いて被処理体をプラズマ処理する。
【0003】
プラズマが生成される処理室内では、様々な要因により高周波の電界が集中し、アーク放電等の異常放電が発生することがある。異常放電は、被処理体の表面に放電痕を残したり、処理室内に配置された構成部品を焼損させたりする。また、処理室内の構成部品に付着した反応生成物等を剥離させてパーティクルを発生させる原因ともなる。
【0004】
このため、処理室内での異常放電を早期に検出し、異常放電が見られた場合には、直ちにプラズマ処理装置の動作を停止する等適切に対処し、被処理体や各種部品の損傷やパーティクルの発生を防止する必要がある。
【0005】
そこで、従来から異常放電を早期に検出する方法が提案されている。一例としては、ウエハ処理後にテスト工程を設け、テスト工程にて放電痕を目視等により発見する方法が挙げられる。しかし、この方法によれば、ウエハ処理後テスト工程までにはかなりの待ち時間があり、その間にも次々と未処理のウエハに対してプラズマ処理が実行される。これにより、もしテスト工程でウエハの欠陥を発見しても、異常放電が生じているプラズマ処理装置を停止させるまでにそれなりの時間がかかってしまい、その間にかなりの製品ウエハを処理し、大量の不良チップを生産してしまうことになる。
【0006】
異常放電を早期に検出する他の方法として、AE(アコースティックエミッション:Acoustic Emission)センサを用いてAE信号の波形パターンから異常放電を検出することも提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−14608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、AEセンサは感度がよいため、AEセンサにより検出されるAE信号は、プラズマ異常放電に起因する信号だけでなく、プラズマ処理装置の搬送ゲートバルブの開閉や搬送ピンの上下動に起因する機械的振動等のノイズを多く含んでいる。よって、AE信号に含まれるノイズにより、プラズマ処理装置の異常放電の検出精度が低下する懸念がある。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、異常放電の判定精度を向上させることが可能な、異常検出装置及び異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、被処理体をプラズマ処理する処理室内に高周波電力を印加する高周波電源の整合器と被処理体を載置する載置台として機能する下部電極との間に設けられたRFセンサから出力される高周波信号、及び前記処理室において発生するアコースティックエミッションを検出するためのAEセンサから出力されたAE信号を取得する取得部と、前記取得された高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンを解析する解析部と、前記高周波信号の波形パターンの解析結果及び前記AE信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定する異常判定部と、を備えることを特徴とする異常検出装置が提供される。
【0011】
前記解析部は、前記高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンに基づき、前記被処理体脱離時の動作中の前記高周波信号の最大振幅及び前記AE信号の最大振幅の値を抽出し、前記異常判定部は、前記高周波信号の最大振幅と第1の閾値を比較し、かつ前記AE信号の最大振幅と第2の閾値を比較することにより、異常放電の有無を判定してもよい。
【0012】
前記RFセンサは、方向性結合器、RFプローブ又は電流プローブのいずれかであってもよい。
【0013】
本発明の別の態様によれば、処理室内に載置された被処理体であってプラズマ処理後の被処理体の脱離開始から搬送ゲートバルブが開くまでの動作を監視し、前記動作を被処理体脱離時の動作として特定する監視部と、前記特定された被処理体脱離時の動作中、前記処理室内に高周波電力を印加する高周波電源と整合器との間もしくは被処理体を載置する載置台として機能する下部電極と前記整合器との間に設けられた方向性結合器から出力される進行波または反射波の少なくともいずれかの高周波信号を取得する取得部と、前記取得された高周波信号の波形パターンを解析する解析部と、前記高周波信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定する異常判定部と、を備えることを特徴とする異常検出装置が提供される。
【0014】
前記取得部は、前記処理室において発生するアコースティックエミッション(AE)を検出するためのAEセンサから出力されたAE信号を取得し、前記解析部は、前記取得されたAE信号の波形パターンを解析し、前記異常判定部は、前記高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定してもよい。
【0015】
前記解析部は、前記高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンに基づき、前記被処理体脱離時の動作中の前記高周波信号の最大振幅及び前記AE信号の最大振幅の値を抽出し、前記異常判定部は、前記高周波信号の最大振幅と第1の閾値を比較し、かつ前記AE信号の最大振幅と第2の閾値を比較することにより、異常放電の有無を判定してもよい。
【0016】
前記異常判定部は、前記高周波信号の最大振幅の発生時刻と前記AE信号の最大振幅の発生時刻とを比較することにより、異常放電の有無を判定してもよい。
【0017】
前記解析部は、AE信号の波形パターンを周波数解析し、周波数解析されたデータから所望のノイズ除去フィルタを用いてノイズを除去後、ノイズが除去されたデータを解析してもよい。
【0018】
前記AEセンサは、被処理体を載置する載置台としても機能する下部電極に高周波電力を供給する給電棒に取り付けられてもよい。
【0019】
前記高周波信号のサンプリングは、1μsec〜5μsec毎に行われてもよい。
【0020】
前記AE信号のサンプリングは、1μsec〜1msec毎に行われてもよい。
【0021】
前記監視部は、静電チャックの電極に印加する直流高圧電力の出力をオフしたとき、前記直流高圧電力を逆印加したとき、前記プラズマ処理後の被処理体の脱離開始と判定してもよい。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様によれば、被処理体をプラズマ処理する処理室内に高周波電力を印加する高周波電源の整合器と被処理体を載置する載置台として機能する下部電極との間に設けられたRFセンサから出力される高周波信号、及び前記処理室において発生するアコースティックエミッションを検出するためのAEセンサから出力されたAE信号を取得するステップと、前記取得された高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンを解析するステップと、前記高周波信号の波形パターンの解析結果及び前記AE信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする異常検出方法が提供される。
【0023】
また、本発明の別の態様によれば、処理室内に載置された被処理体であってプラズマ処理後の被処理体の脱離開始から搬送ゲートバルブが開くまでの動作を監視し、前記動作を被処理体脱離時の動作として特定するステップと、前記特定された被処理体脱離時の動作中、前記処理室内に高周波電力を印加する高周波電源と整合器との間もしくは被処理体を載置する載置台として機能する下部電極と前記整合器との間に設けられた方向性結合器から出力される進行波または反射波の少なくともいずれかの高周波信号を取得するステップと、前記取得された高周波信号の波形パターンを解析するステップと、前記高周波信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする異常検出方法が提供される。
【0024】
さらに本発明の別の態様によれば、プラズマ処理装置であって、基板を処理する処理室と、前記処理室内にプラズマ生成するプラズマ生成手段と、前記プラズマ生成手段の給電部に接続し、前記プラズマの異状を検出する異常放電検出装置と、を備え、前記異状放電検出装置は、被処理体をプラズマ処理する処理室内に高周波電力を印加する高周波電源の整合器と被処理体を載置する載置台として機能する下部電極との間に設けられたRFセンサから出力される高周波信号、及び前記処理室において発生するアコースティックエミッションを検出するためのAEセンサから出力されたAE信号を取得する取得部と、前記取得された高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンを解析する解析部と、前記高周波信号の波形パターンの解析結果及び前記AE信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定する異常判定部と、を有することを特徴とする、プラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、異常放電の判定精度を向上させることが可能な、異常検出装置及び異常検出方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るエッチング処理装置の縦断面図である。
【図2】一実施形態に係るエッチング処理装置用の制御装置の機能構成図である。
【図3】一実施形態に係るデータ取得処理を示したフローチャートである。
【図4】一実施形態に係るエッチング処理装置で生じる異常波形の一例を説明するための図である。
【図5】一実施形態に係る異常検出処理を示したフローチャートである。
【図6】一実施形態に係る高周波信号の波形パターンをウエハ毎に示した図である。
【図7】一実施形態に係る高周波信号の最大振幅をウエハ毎に示した図である。
【図8】一実施形態に係るAE信号の波形パターンをウエハ毎に示した図である。
【図9】一実施形態に係るAE信号の周波数解析後の波形パターンをウエハ毎に示した図である。
【図10】一実施形態に係るAE信号の最大振幅をウエハ毎に示した図である。
【図11】一実施形態に係る高周波信号とAE信号の最大振幅の発生時刻のずれを示した図である。
【図12】他の実施形態に係るエッチング処理装置の縦断面図である。
【図13】一実施形態に係るRFプローブによる高周波信号の波形パターンとAE信号の波形パターンを示した図である。
【図14】変形例に係る異常検出処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
[装置構成]
まず、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置としてエッチング処理装置を例に挙げ、その装置構成について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るエッチング処理装置の縦断面図である。
【0029】
エッチング処理装置10は、電極板が平行に対向して配置された容量結合型のエッチング装置である。エッチング処理装置10は、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等からなり円筒形状に成形された処理室Cを有している。処理室Cは接地されている。処理室C内の底部にはセラミックスなどの絶縁板(図示せず)を介して、ウエハWを載置するための略円柱状のサセプタ支持台11が設けられている。サセプタ支持台11の上には、下部電極DEを兼ねた載置台12が設けられている。
【0030】
下部電極DE上にウエハWを固定するために、下部電極DEには静電チャック13が設けられている。静電チャック13の電極13aは、例えばポリイミド製の薄膜で形成され、下部電極DEに埋設されている。直流電圧源14から出力された直流電圧が電極13aに印加されると、電極13aの表面上に載置されたウエハWが静電吸着力によって下部電極DEに吸着保持される。
【0031】
サセプタ支持台11、載置台12、静電チャック13には、ウエハWの裏面に、伝熱媒体(例えばHeガス等)を供給するための図示しないガス通路が形成されており、この伝熱媒体を介して載置台12の冷熱がウエハWに伝達されウエハWが所定の温度に維持されるようになっている。
【0032】
載置台12の上方には、下部電極DEに対向して上部電極UEが設けられている。上部電極UEは、処理室Cの天井部に支持されている。上部電極UEは、上部電極板31と、上部電極板31を支持する導電性材料からなる電極支持体32とを有している。
【0033】
処理室Cには、図示しないガス経路からプラズマエッチング処理のためのエッチングガス等が供給される。処理室Cの底部には、排気管34を介して排気装置35が接続されている。排気装置35はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、処理室C内を所定の減圧雰囲気まで真空引きする。また、処理室Cの側壁には搬送ゲートバルブ36が設けられており、搬送ゲートバルブ36を開閉することによりウエハWを隣接する搬送室(図示せず)との間で搬送する。
【0034】
エッチング処理装置10は、上下2周波の高周波電力を供給する。上部電極UEには、整合器41を介して第1の高周波電源40が接続されている。第1の高周波電源40は、例えば、27〜150MHzの範囲の周波数(RF)を有している。エッチングガスを供給しながら上部電極と下部電極の間に高周波電力を印加することにより処理室C内に好ましいエッチングガスのプラズマを形成することができる。
【0035】
下部電極DEとしての載置台12には、整合器51を介して第2の高周波電源50が接続されている。整合器51と下部電極DEとは給電棒52により接続されている。第2の高周波電源50と整合器51との間には方向性結合器60が設けられ、同軸ケーブル53a,53bで接続されている。第2の高周波電源50は、第1の高周波電源40より低い周波数のバイアス用高周波電力を下部電極DEに印加する。これにより、ウエハWに対してダメージを与えることなく適切なイオン作用を与えることができる。第2の高周波電源50の周波数は、例えば1〜20MHzの範囲が好ましい。また、方向性結合器60は、ウエハWを載置する載置台としても機能する下部電極DEと整合器51の間に設けられてもよい。
【0036】
かかる構成により、処理室Cに導入されたエッチングガスは、第1の高周波電源40から出力された高周波電力によりプラズマ化され、生成されたプラズマを用いて載置台上のウエハWに所望のエッチング処理が施される。
【0037】
[異常放電検出]
次に、エッチング処理装置10の異常放電の検出について説明する。
【0038】
エッチング処理装置10による上記エッチング処理中に、第2の高周波電源50から同軸ケーブル53a,方向性結合器60、同軸ケーブル53b、整合器51、給電棒52を介してウエハWに高周波電力を印加する際、処理室C内で異常放電(例えば、アーク放電)が生じる場合がある。そのとき、プラズマのインピーダンスに乱れが生じ、整合器51から第2の高周波電源50側への反射波BtmPrが発生する。方向性結合器60は、この整合器51から第2の高周波電源50に向かう反射波BtmPrを検出する。また、方向性結合器60は、第2の高周波電源50から整合器51に向かう進行波BtmPfを検出することもできる。ただし、方向性結合器60は、進行波BtmPf又は反射波BtmPrの少なくともいずれかを検出すればよい。以下では、方向性結合器60により検出された、進行波BtmPf又は反射波BtmPrの少なくともいずれかの信号を高周波信号と呼ぶ。
【0039】
また、AEセンサ61は、給電棒52のグラウンドラインに接着剤等で取り付けられている。AEセンサ61は、プラズマ異常放電時のエネルギー放出に起因するAE(アコースティックエミッション:Acoustic Emission)を検出する。本実施形態では、ウエハ上に生じる異常放電を検出するために、AEセンサ61をウエハWになるべく近い位置であって、処理室C外の大気空間に取り付ける。なお、AEセンサ61は、ウエハWの上方に取り付けてもよい。ただし、ウエハWの下方にAEセンサ61を装着した方がウエハW上の異常放電を検出しやすいため好ましい。
【0040】
AEセンサ61は感度がよいため、AEセンサ61により検出されるAE信号は、プラズマ異常放電に起因する信号だけでなく、プラズマ処理装置10の搬送ゲートバルブ36の開閉や、載置されたウエハWを搬送するための図示しないピンの昇降に起因する機械的振動等のノイズを多く含んでしまう。よって、AE信号に含まれるノイズにより、プラズマ異常放電の検出精度が低下する懸念がある。
【0041】
そこで、本実施形態に係る異常放電の検出では、方向性結合器60とAEセンサ61をエッチング処理装置10に取り付け、方向性結合器60により検出された高周波信号とAEセンサ61により検出されたAE信号とを高速サンプリングする。以下では、サンプリングされたAE信号を「BtmAE」とも表示する。また、サンプリングされた反射波の高周波信号を「BtmPr」とも表示し、サンプリングされた進行波の高周波信号を「BtmPf」とも表示する。
【0042】
異常検出装置70は、サンプリングされた高周波信号(BtmPf及び/又はBtmPr)を方向性結合器60から取得する。また、異常検出装置70は、サンプリングされたAE信号(BtmAE)をAEセンサ61から取得する。異常検出装置70は、高周波信号の波形パターンの解析結果と、AE信号の波形パターンの解析結果との両方の結果を用いて異常放電の有無を判定する。これにより、AEセンサ61のみを用いた場合にはAE信号に含まれる異常放電の測定値とノイズとを切り分けるのは困難であったが、方向性結合器からの反射波又は進行波の高周波信号を用いて、AEセンサ61の検出結果に含まれるノイズを取り除くことができる。なお、本実施形態に係る異常放電の検出では、方向性結合器60及びAEセンサ61により検出されたサンプリングデータを両方用いて異常放電を検出するが、AEセンサ61により検出されたサンプリングデータは必ずしも必要なく、方向性結合器60により検出されたサンプリングデータだけを解析して、異常放電を検出してもよい。ただし、両方のサンプリングデータを用いて異常放電を検出した方が、精度が高まりより好ましい。
【0043】
また、高周波信号のサンプリングは、1μsec〜5μsec毎に行われることが好ましく、AE信号のサンプリングは、1μsec〜1msec毎に行われることが好ましい。
【0044】
プラズマ処理中、常にAE信号のサンプリングデータを収集すると、収集したデータ量が莫大になる。よって、収集されたすべてのデータを解析して異常放電を検出することは、処理の負荷が大きく効率が悪い。これに対して、異常放電が起こり易い条件を適正に抽出することができれば、その条件を満足する間だけサンプリングデータを収集し、必要なサンプリングデータのみを解析すればよいので処理の負荷が低く、効率的である。
【0045】
(ウエハ脱離時)
これに対して、発明者は、ウエハの除電時にウエハW上での異常放電が生じやすいことを実験で突き止めた。従って、本実施形態では、ウエハW上での異常放電が生じやすいウエハ脱離時のタイミングに応じてサンプリングデータを収集する。これにより、ウエハ上とウエハ裏面で起きる微小な異常放電を検知することができる。ここで、ウエハ脱離時とは、ウエハの脱離開始からウエハWの脱離終了までの間をいう。具体的には、プラズマ処理後、静電チャック13の電極13aに印加する直流高圧電力HVの出力をオフしたとき、又は直流高圧電力HVを逆印加したときをプラズマ処理後のウエハの脱離開始の条件と設定する。また、ウエハの脱離開始後、載置台12に載置されたウエハWを持ち上げるピンを上昇させた後、搬送ゲートバルブ36が開いたときをウエハWの脱離終了の条件と設定する。
【0046】
このように、本実施形態では、直流高圧電力HVの出力をオフしたとき、直流高圧電力HVを逆印加したとき、ピンを昇降させたとき、搬送ゲートバルブ36を開閉したときはいずれもウエハW上での異常放電が起き易いため、ウエハ脱離時に含め、その間サンプリングデータを収集する。しかしながら、ウエハ脱離時のタイミングはこれに限られず、直流高圧電力HVの出力をオフしたときから搬送ゲートバルブ36を開閉させたときまでであってもよく、直流高圧電力HVの出力をオフしたときからピンを昇降させたときまでであってもよく、直流高圧電力HVを逆印加したときから搬送ゲートバルブ36を開閉させたときまでであってもよく、直流高圧電力HVを逆印加したときからピンを昇降させたときまでであってもよい。
【0047】
[機能構成]
次に、異常検出装置70の機能構成について、図2を参照しながら説明する。
【0048】
異常検出装置70は、エッチング処理装置10の異常放電を検出する装置であり、プラズマ処理制御部71、監視部72、取得部73、解析部74、異常判定部75及び記憶部76を有する。ただし、プラズマ処理制御部71及び記憶部76は、必ずしも異常検出装置70に必須の機能ではない。
【0049】
プラズマ処理制御部71は、エッチング処理装置10で実行されるエッチング処理を制御する。具体的には、プラズマ処理制御部71は、第2の高周波電源50からの高周波電力のパワーやオン/オフを制御し、直流高圧電源14の直流高圧電力HVのパワーやオン/オフを制御する。また、プラズマ処理制御部71は、搬送ゲートバルブ36の開閉を制御し、図示しない載置台12に設けられたウエハWを搬送するためのピンの上下動を制御する。
【0050】
監視部72は、処理室C内に載置されたウエハWであってプラズマ処理後のウエハWの脱離開始から搬送ゲートバルブ36が開くまでの動作を監視し、その動作をウエハWの脱離時の動作として特定する。
【0051】
取得部73は、前記特定されたウエハWの脱離時の動作中、処理室C内に高周波電力を印加する第2の高周波電源50と整合器51との間に設けられた方向性結合器60から出力される進行波または反射波の少なくともいずれかの高周波信号を取得する。また、取得部73は、処理室Cにおいて発生するアコースティックエミッション(AE)を検出するためのAEセンサ61から出力されたAE信号を取得する。なお、第1の高周波電源40と整合器41との間に方向性結合器を設け、取得部73は、その方向性結合器から出力される進行波または反射波の少なくともいずれかの高周波信号を取得してもよい。
【0052】
解析部74は、取得された高周波信号の波形パターンを解析する。また、解析部74は、取得されたAE信号の波形パターンを解析する。解析方法の一例としては、解析部74は、高周波信号の波形パターン及びAE信号の波形パターンに基づき、ウエハWの脱離時の動作中の高周波信号の最大振幅及びAE信号の最大振幅の値を抽出し、解析してもよい。また、解析部74は、AE信号の波形パターンを周波数解析(FFT:Fast Fourier Transform)し、周波数解析されたデータから所望のノイズ除去フィルタを用いてノイズを除去後、ノイズが除去されたデータを解析してもよい。
【0053】
ノイズ除去フィルタ62は、AE信号から不要なノイズを除去するために用いられるフィルタである。ノイズ除去フィルタ62は、予め定められた帯域のノイズを除去する。例えば、ノイズ除去フィルタ62は、図9に示したように、70kHz以上の信号のみを通し、それ以外の帯域をノイズとして除去するハイパスフィルタ(HPF)や、所望の帯域の信号のみを通し、それ以外の帯域をノイズとして除去するバンドパスフィルタ(BPF)がある。例えば、本実施形態では、バンドパスフィルタ(BPF)の帯域を、80〜105kHz、130〜150kHz、220〜240kHz、260〜290kHz、300〜325kHz、430〜450kHzに設定し、それ以外の帯域をノイズとして除去する。
【0054】
解析部74は、ノイズ除去フィルタ62に通されたAE信号を、例えば、1MHzの周波数で高速サンプリングしてデジタルデータ(高速サンプリングデータ)に変換し、記憶部76に記憶する。
【0055】
異常判定部75は、高周波信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定する。異常判定部75は、高周波信号の波形パターンの解析結果及びAE信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定してもよい。具体的には、異常判定部75は、高周波信号の最大振幅と第1の閾値(後述する閾値C)を比較し、かつAE信号の最大振幅と第2の閾値(後述する閾値D)を比較することにより、異常放電の有無を判定してもよい。また、AE信号に含まれるノイズを考慮して、異常判定部75は、高周波信号の最大振幅の発生時刻とAE信号の最大振幅の発生時刻とを比較することにより、異常放電の有無を判定してもよい。
【0056】
記憶部76は、異常判定部75が異常放電か否かを判定するための各種閾値を記憶する。また、記憶部76は、AEセンサ61からのサンプリングデータや、方向性結合器60からのサンプリングデータを一時的に蓄積してもよい。各種閾値は、異常放電検出結果をフィードバックして値が最適化されてもよい。
【0057】
なお、プラズマ処理制御部71、監視部72、取得部73、解析部74及び異常判定部75の機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が記憶部76に格納されたプログラムに従って動作することによって実現されうる。このプログラムは、記憶媒体に格納して提供され、図示しないドライバを介して記憶部76に読み込まれるものであってもよく、また、図示しないネットワークからダウンロードされて記憶部76に格納されるものであってもよい。また、上記各部の機能を実現するために、CPUに代えてDSP(Digital Signal Processor)が用いられてもよい。記憶部76は、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどを用いるRAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)として実現されうる。また、プラズマ処理制御部71、監視部72、取得部73、解析部74及び異常判定部75の機能は、ソフトウエアを用いて動作することにより実現されてもよく、ハードウエアを用いて動作することにより実現されてもよい。
【0058】
[動作:データ取得]
次に、本実施形態に係る異常検出装置70のデータ取得の動作について、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る異常検出装置70にて実行されるデータ取得処理のフローチャートを示す。
【0059】
データ取得処理では、まず、取得部73は、プラズマ処理が終了したかを判定する(ステップS305)。プラズマ処理が終了していない場合、取得部73はプラズマ処理が終了するまでステップS305を繰り返す。プラズマ処理が終了した場合、取得部73は、直流高圧電源14からの直流高圧電力HVがオフされ、更に直流高圧電力HVの逆印加が実行されたかを判定する(ステップS310)。直流高圧電力HVの逆印加が実行されていない場合、取得部73は直流高圧電力HVの逆印加が実行されるまでステップS310を繰り返す。
【0060】
直流高圧電力HVの逆印加が実行された場合、取得部73は、高周波信号及びAE信号のデータをウエハ脱離時のサンプリングデータとして記憶部76に蓄積する(ステップS315)。次いで、取得部73は、ウエハWを搬出するための搬送ゲートバルブ36が開いたかを判定する(ステップS320)。取得部73は、搬送ゲートバルブ36が開かれるまでサンプリングデータを取得し、搬送ゲートバルブ36が開かれたら本処理を終了する。
【0061】
以上に説明したデータ取得処理によりサンプリングされたデータの一例を図4に示す。図4の各グラフの横軸は時間、縦軸は電圧である。図4の左方の各グラフは、上から順に、進行波の高周波信号(BtmPf)のデータ、反射波の高周波信号(BtmPr)のデータ、AE信号(BtmAE)のデータ、直流高圧電力HVのデータである。
【0062】
進行波の高周波信号(BtmPf)及び反射波の高周波信号(BtmPr)で電圧値が急激に下がっている部分はプラズマ処理が終了した時点であり、第2の高周波電源50の高周波電力をオフにしたときを示す。
【0063】
図4の中央の各グラフは、図4の左方の各グラフを拡大したものである。図4の中央の最も下のグラフに示したように、直流高圧電力HVをオフした後、逆印加している途中に図4の中央上3つに示した進行波の高周波信号(BtmPf)、反射波の高周波信号(BtmPr)及びAE信号(BtmAE)に、図中に太矢印で示したウエハ上の異常放電が起きていることがわかる。図4の右の各グラフは、図4の中央の上から2グラフを更に拡大したものである。別個に、ウエハの欠陥検査を行うと、図4のような異常波形が検出されたウエハで放電痕が確認された。以上の実験結果から、ウエハ脱離時の動作とウエハ上の異常放電には相関があることがわかった。
【0064】
[動作:異常放電の検出]
以上の検討結果を踏まえて、次では、本実施形態に係る異常検出装置70の異常放電の検出動作について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係る異常検出装置70にて実行される異常放電検出処理のフローチャートを示す。
【0065】
異常放電検出処理では、まず、解析部74は、取得部73により取得されたウエハ脱離時のサンプリングデータを取得する(ステップS505)。例えば、解析部74は、ウエハ脱離時のサンプリングデータを記憶部76から読み込む。
【0066】
次に、異常判定部75は、高周波信号のサンプリングデータのうち、予め定められた閾値Aより大きな値をもつ異常ピークがあるかを判定する(ステップS510)。異常ピークがある場合、異常判定部75は、ウエハW上に異常放電があると判定し(ステップS515)、プロセス実行の停止をプラズマ処理制御部71に指示した後(ステップS520)、本処理を終了する。
【0067】
一方、ステップS510にて、高周波信号のサンプリングデータのうち、予め定められた閾値Aより大きな値をもつ異常ピークがない場合、異常判定部75は、AE信号のサンプリングデータのうち、予め定められた閾値Bより大きな値をもつ異常ピークがあるかを判定する(ステップS525)。異常ピークがない場合、本処理を終了する。一方、AE信号のサンプリングデータのうち、予め定められた閾値Bより大きな値をもつ異常ピークがある場合、異常判定部75は、ウエハW上に異常放電があると判定し(ステップS515)、プロセス実行の停止をプラズマ処理制御部71に指示した後(ステップS520)、本処理を終了する。
【0068】
以上に説明した異常放電処理に使われるデータのうち、高周波信号に関するデータの一例を図6に示す。図6の各グラフの横軸は時間、縦軸は電圧である。図6の各グラフは、1〜12枚目のウエハについて、直流高圧電力HVの逆印加時における方向性結合器60の反射波の高周波信号(BtmPr)のデータである。
【0069】
反射波の高周波信号(BtmPr)の状態を見ると、直流高圧電力HVの逆印加時に、2枚目のウエハ、5枚目のウエハ、6枚目のウエハ、8枚目のウエハ、9枚目のウエハで異常ピークが疑われるスペクトルが検出されている(図6の矢印部分)。
【0070】
そこで、異常判定部75は、ステップS510にて、上記比較処理を行う際、高周波信号の最大振幅と閾値A(第1の閾値に相当)を比較し、異常放電の有無を判定する。図7に反射波の高周波信号(BtmPr)の最大振幅と閾値Aとを比較した図を示す。これによれば、異常判定部75は、2、5、6、9枚目のウエハで異常放電が発生していると判定し、8枚目のウエハでは低度の異常放電が発生していると判定する。発明者がSEM(走査型電子顕微鏡)でアーキング痕をチェックしたところ、2、5、6、9枚目のウエハで生じていたアーキング痕は、8枚目のウエハで生じていたアーキング痕より大きかった。閾値C以上で異常放電が発生していると判断し、電圧値の大小で異常放電の大小を区別する。つまり閾値A以上で比較的大きな異常放電、閾値C以上で低度の異常放電と判断する。
【0071】
このように、HV逆印加時に反射波の高周波信号(BtmPr)で異常波形が発生したウエハとアーキング痕があったウエハが一致することがわかった。また、反射波の高周波信号(BtmPr)の最大振幅の値とアーキング痕の大小に相関があることがわかった。
【0072】
なお、本実施形態に係る異常検知方法では、一枚でも異常放電を検出した場合には、直ちにプラズマ処理を停止させるように制御する。なお、閾値Cについては、後述する変形例において説明する。
【0073】
次に、異常放電処理に使われたデータのうち、AE信号に関するデータの一例を図8に示す。図8の各グラフの横軸は時間、縦軸は電圧である。図8の各グラフは、1〜12枚目のウエハについて、直流高圧電力HVの逆印加時におけるAEセンサ61のAE信号(BtmAE)のデータである。
【0074】
AE信号(BtmAE)の状態を見ると、直流高圧電力HVの逆印加時に、2、5、6、8、9枚目のウエハで異常ピークと疑われるスペクトルが検出されている(図8の矢印部分)。
【0075】
そこで、異常判定部75は、ステップS525にて、上記比較処理を行う際、ノイズ除去後のAE信号の最大振幅と閾値B(第2の閾値に相当)を比較し、異常放電の有無を判定する。その際、解析部74は、AE信号を周波数解析する。図9の左方の各グラフは、2、5、6、8、9枚目のウエハについてのAE信号であり、図9の中央の各グラフは、2、5、6、8、9枚目のウエハについてのAE信号の周波数解析後のデータである。図9の左方の各グラフ及び図9の中央の各グラフに示した矢印が異常放電の有無を判定すべき部分である。
【0076】
更に、解析部74は、周波数解析後のデータを上述したノイズ除去フィルタに通す。図10にノイズ除去後のAE信号(BtmAE)の最大振幅と閾値Bとを比較した図を示す。これによれば、異常判定部75は、ノイズ除去後のAE信号の最大振幅が閾値Bより大きい2、5、6、9枚目のウエハで異常放電が発生していると判定し、ノイズ除去後のAE信号の最大振幅が閾値Bより小さい8枚目のウエハでは低度の異常放電が発生していると判定する。ただし、本実施形態に係る異常検知方法では、一枚でも異常放電を検出した場合には、直ちにプラズマ処理を停止させるように制御する。閾値D以上で異常放電が発生していると判断し、ノイズ除去後のBtmAEの最大振幅の大小で異常放電の大小を区別する。つまり閾値B以上で比較的大きな異常放電、閾値D以上で低度の異常放電と判断する。
【0077】
以上の結果とウエハ欠陥検査の結果を比較して、HV逆印加時にAE信号(BtmAE)で異常波形が発生したウエハとアーキング痕があったウエハが一致することがわかった。また、高周波信号(BtmPr)の最大振幅とAE信号(BtmAE)の最大振幅の値とアーキング痕の大小に相関があることがわかった。
【0078】
AEセンサ61は、センサの感度が非常によいという性質を持っている。そのため、AEセンサ61により検出されるAE信号は、プラズマ異常放電に起因する信号だけでなく、プラズマ処理装置10の搬送ゲートバルブ36の開閉や、ウエハ搬送のためのピンの上下動に起因する機械的振動等のノイズを多く含んでしまう。よって、AE信号に含まれるノイズにより、プラズマ異常放電の検出精度が低下する懸念がある。これに対して、本実施形態に係る異常検出方法では、高周波信号の解析及びAE信号の解析の両方を解析する。そして、それらの解析結果に基づき異常放電を検出した場合には、直ちにプラズマ処理を停止させるように制御する。例えば、各信号の振幅の大きさだけなく、高周波信号の最大振幅の発生時刻とAE信号の最大振幅の発生時刻とを比較することにより、異常放電の有無を判定することもできる。AEセンサは機械的な振動を検出しているため、AEセンサの設置場所や設置方法により異常放電発生場所からAEセンサまでの振動の伝播速度が変化する。そのため、例えば図11に示すように、高周波信号における異常ピークの発生時刻とAE信号における異常ピークの発生時刻にはズレが生じるためである。
【0079】
具体的な高周波信号の最大振幅の発生時刻とAE信号の最大振幅の発生時刻との比較にあたっては、図5のステップS510に代えて先ずステップS525により、AE信号のサンプリングデータに異常ピークがあるかを判定する。そして、異常ピークがある場合、ステップS510に進み、高周波信号のサンプリングデータに異常ピークがあるかを判定する。そして、ステップS510で異常ピークがある場合、高周波信号の最大振幅の発生時刻とAE信号の最大振幅の発生時刻とを比較する。そして、時間ずれが所定の閾値より大きくなった場合は、AE信号に含まれる信号はノイズであると判定し、時間ずれが閾値以内となった場合は異常放電が発生しているものと判定する。このようにして、AE信号に含まれるノイズを高周波信号の解析結果に基づき除去することにより、プラズマ異常放電の検出精度を向上させることができる。なお、高周波信号の解析結果のみに基づき異常放電を検出することができる。一方、AE信号の解析結果のみに基づき異常放電を検出することは上記ノイズを除去できないため好ましくない。
【0080】
以上、本実施形態に係る異常検出装置70によれば、サンプリングデータから微小な異常放電を検知することができる。このようなリアルタイム診断により、異常な処理を早期に止めることができ、歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0081】
また、本実施形態に係る異常検出方法では、ウエハW上での異常放電が生じやすいウエハ脱離時のタイミングに応じてサンプリングデータを収集する。これによれば、必要なサンプリングデータのみを解析すればよいため、処理の負荷を軽減し効率化を図ることができる。
【0082】
なお、以上の実施の形態では、高周波信号の検出に方向性結合器60を用いたが、高周波信号の検出方法は本実施の形態の内容に限定されない。高周波信号の検出には、例えば高周波電圧を検出するRFプローブや高周波電流を検出する電流プローブといった、いわゆるRFセンサを用いることができる。なお、方向性結合器60もRFセンサに含まれる。
【0083】
方向性結合器60以外のRFセンサを用いる場合においても、図12に示すように、当該RFセンサ80は、第2の高周波電源50の整合器51と載置台12の間、より具体的には給電棒52に接続してもよい。下部電極DEを兼ねた載置台12により近い位置にRFセンサ80を設置することで、より正確な高周波信号の検出を行なうことができる。なお、RFプローブや電流プローブを用いた場合においても、異常検出装置70における異常放電の検出動作は上記と同様である。
【0084】
RFセンサ80としてRFプローブを用いてサンプリングされたデータの一例を図13に示す。図13の各グラフの横軸は時間、縦軸は電圧である。図13の各グラフは、上から順に、RFプローブによるデータ、AE信号(BtmAE)、RFプローブによるデータの時間軸を拡大したものである。
【0085】
図13に示すように、RFセンサ80としてRFプローブを用いてサンプリングされたデータの一例を図13に示す。図13の各グラフの横軸は時間、縦軸は電圧である。図13の各グラフは、上から順に、RFプローブによるデータ、AE信号(BtmAE)、RFプローブによるデータの時間軸を拡大したものである。図13のような異常波形が検出されたウエハで別個にウェハの欠陥検査を行なうと、放電痕が確認された。したがって、RFセンサ80として方向性結合60以外のセンサを用いても、異常放電の有無を判定できることが確認された。
【0086】
[変形例]
最後に、上記実施形態の変形例に係る異常検出装置70の異常放電の検出動作について、図14を参照しながら説明する。図14は、上記実施形態の変形例に係る異常検出装置70にて実行される異常放電検出処理のフローチャートを示す。
【0087】
変形例に係る異常放電検出処理では、まず、解析部74は、取得部73により取得されたウエハ脱離時のサンプリングデータを取得する(ステップS505)。次に、異常判定部75は、高周波信号のサンプリングデータのうち、予め定められた閾値C(図7参照)より大きな値をもつ異常ピークがあるかを判定する(ステップS510)。異常ピークがある場合、異常判定部75は、ウエハW上に異常放電があると判定し(ステップS515)、プロセス実行の停止をプラズマ処理制御部71に指示した後(ステップS520)、本処理を終了する。
【0088】
一方、ステップS510にて、高周波信号のサンプリングデータのうち、予め定められた閾値Cより大きな値をもつ異常ピークがない場合、異常判定部75は、AE信号のサンプリングデータのうち、予め定められた閾値Dより大きな値をもつ異常ピークがあるかを判定する(ステップS525)。異常ピークがある場合、異常判定部75は、ウエハW上に異常放電があると判定し(ステップS515)、プロセス実行の停止をプラズマ処理制御部71に指示した後(ステップS520)、本処理を終了する。
【0089】
以上のように、本変形例によれば、図7、図10の閾値C、D以上で異常放電発生とする。閾値A、B以下は、低度の異常放電、閾値A、B以上は比較的大規模な異常放電と異常放電の大小を区別し、FDC(Fault Detection and Classification)として、異常放電発生原因の究明や対策につなげる。
【0090】
ただし、低度の異常放電でも歩留まり低下につながるので、閾値A、B以下でも閾値C、D以上であれば「異常放電発生」と認識し、プラズマ処理装置を止める必要がある。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0092】
例えば、上記実施形態に係る異常検出装置をエッチング処理装置に使用する例を挙げて説明したが、本発明に係る異常検出装置はこれに限られず、例えば、成膜装置、アッシング処理装置等にも用いることができる。また、プラズマ処理装置のプラズマ源についても,既述した実施の形態における平行平板プラズマの他、例えばマイクロ波プラズマ、マグネトロンプラズマ、ICPプラズマ等の各種プラズマを用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
10 エッチング処理装置
12 載置台
13 静電チャック
14 直流高圧電源
36 搬送ゲートバルブ
40 第1の高周波電源
41 整合器
50 第2の高周波電源
51 整合器
52 給電棒
53a、53b 同軸ケーブル
60 方向性結合器
61 AEセンサ
62 ノイズ除去フィルタ
70 異常検出装置
71 プラズマ処理制御部
72 監視部
73 取得部
74 解析部
75 異常判定部
76 記憶部
80 RFセンサ
C 処理室
UE 上部電極
DE 下部電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体をプラズマ処理する処理室内に高周波電力を印加する高周波電源の整合器と被処理体を載置する載置台として機能する下部電極との間に設けられたRFセンサから出力される高周波信号、及び前記処理室において発生するアコースティックエミッションを検出するためのAEセンサから出力されたAE信号を取得する取得部と、
前記取得された高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンを解析する解析部と、
前記高周波信号の波形パターンの解析結果及び前記AE信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定する異常判定部と、を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記解析部は、前記高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンに基づき、前記被処理体脱離時の動作中の前記高周波信号の最大振幅及び前記AE信号の最大振幅の値を抽出し、
前記異常判定部は、前記高周波信号の最大振幅と第1の閾値を比較し、かつ前記AE信号の最大振幅と第2の閾値を比較することにより、異常放電の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記RFセンサは、方向性結合器、RFプローブ又は電流プローブのいずれかであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の異常検出装置。
【請求項4】
処理室内に載置された被処理体であってプラズマ処理後の被処理体の脱離開始から搬送ゲートバルブが開くまでの動作を監視し、前記動作を被処理体脱離時の動作として特定する監視部と、
前記特定された被処理体脱離時の動作中、前記処理室内に高周波電力を印加する高周波電源と整合器との間もしくは被処理体を載置する載置台として機能する下部電極と前記整合器との間に設けられた方向性結合器から出力される進行波または反射波の少なくともいずれかの高周波信号を取得する取得部と、
前記取得された高周波信号の波形パターンを解析する解析部と、
前記高周波信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定する異常判定部と、を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記処理室において発生するアコースティックエミッション(AE)を検出するためのAEセンサから出力されたAE信号を取得し、
前記解析部は、前記取得されたAE信号の波形パターンを解析し、
前記異常判定部は、前記高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定することを特徴とする請求項4に記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンに基づき、前記被処理体脱離時の動作中の前記高周波信号の最大振幅及び前記AE信号の最大振幅の値を抽出し、
前記異常判定部は、前記高周波信号の最大振幅と第1の閾値を比較し、かつ前記AE信号の最大振幅と第2の閾値を比較することにより、異常放電の有無を判定することを特徴とする請求項5に記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記異常判定部は、前記高周波信号の最大振幅の発生時刻と前記AE信号の最大振幅の発生時刻とを比較することにより、異常放電の有無を判定することを特徴とする請求項2または6のいずれかに記載の異常検出装置。
【請求項8】
前記解析部は、AE信号の波形パターンを周波数解析し、周波数解析されたデータから所望のノイズ除去フィルタを用いてノイズを除去後、ノイズが除去されたデータを解析することを特徴とする請求項1〜3、5〜7のいずれか一項に記載の異常検出装置。
【請求項9】
前記AEセンサは、被処理体を載置する載置台としても機能する下部電極に高周波電力を供給する給電棒に取り付けられることを特徴とする請求項1〜3、5〜8のいずれか一項に記載の異常検出装置。
【請求項10】
前記高周波信号のサンプリングは、1μsec〜5μsec毎に行われることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の異常検出装置。
【請求項11】
前記AE信号のサンプリングは、1μsec〜1msec毎に行われることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の異常検出装置。
【請求項12】
前記監視部は、静電チャックの電極に印加する直流高圧電力の出力をオフしたとき、又は前記直流高圧電力を逆印加したとき、前記プラズマ処理後の被処理体の脱離開始と判定することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の異常検出装置。
【請求項13】
被処理体をプラズマ処理する処理室内に高周波電力を印加する高周波電源の整合器と被処理体を載置する載置台として機能する下部電極との間に設けられたRFセンサから出力される高周波信号、及び前記処理室において発生するアコースティックエミッションを検出するためのAEセンサから出力されたAE信号を取得するステップと、
前記取得された高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンを解析するステップと、
前記高周波信号の波形パターンの解析結果及び前記AE信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする異常検出方法。
【請求項14】
処理室内に載置された被処理体であってプラズマ処理後の被処理体の脱離開始から搬送ゲートバルブが開くまでの動作を監視し、前記動作を被処理体脱離時の動作として特定するステップと、
前記特定された被処理体脱離時の動作中、前記処理室内に高周波電力を印加する高周波電源と整合器との間もしくは被処理体を載置する載置台として機能する下部電極と前記整合器との間に設けられた方向性結合器から出力される進行波または反射波の少なくともいずれかの高周波信号を取得するステップと、
前記取得された高周波信号の波形パターンを解析するステップと、
前記高周波信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする異常検出方法。
【請求項15】
プラズマ処理装置であって、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内にプラズマ生成するプラズマ生成手段と、
前記プラズマ生成手段の給電部に接続し、前記プラズマの異状を検出する異常放電検出装置と、を備え、
前記異状放電検出装置は、
被処理体をプラズマ処理する処理室内に高周波電力を印加する高周波電源の整合器と被処理体を載置する載置台として機能する下部電極との間に設けられたRFセンサから出力される高周波信号、及び前記処理室において発生するアコースティックエミッションを検出するためのAEセンサから出力されたAE信号を取得する取得部と、
前記取得された高周波信号の波形パターン及び前記AE信号の波形パターンを解析する解析部と、
前記高周波信号の波形パターンの解析結果及び前記AE信号の波形パターンの解析結果に基づき異常放電の有無を判定する異常判定部と、を有することを特徴とする、プラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−33726(P2013−33726A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−142092(P2012−142092)
【出願日】平成24年6月25日(2012.6.25)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】