説明

異物除去部材及び異物除去装置

【課題】面倒な作業が不要で、エコロジーに優れ、異物除去対象が限定的とならない異物除去部材を提供する。
【解決手段】異物除去対象の搬送経路を構成する板状の異物除去部材20に、異物除去対象の搬送方向に対して所要の角度で平面方向に延びる幾つかの溝部22が搬送経路に形成する。溝部22には、選択的に幾つかの貫通孔24が設けられている。異物除去部材20は、搬送ユニット30に取り付けられる。この結果、異物は、溝部22に落下し、さらに、貫通孔24などを経由して除去されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、山菜、キノコ、果物、海藻、魚介類などの乾物に混在しているゴミ、小骨や欠片等の異物除去部材及び異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、海藻・小魚・野菜又は山菜は入り込まないが魚網片や頭髪などの異物は入り込むようなサイズに形成され且つ流体が通過可能に形成された多数の隙間を有する載置部であって所定のルートを循環的に移動する載置部の上に海藻・小魚・野菜又は山菜を載置し、前記載置部に載せられた海藻・小魚・野菜又は山菜の上方から前記各隙間に向けて所定の勢いを有する流体を供給することにより、前記各隙間に前記異物のみを入り込ませるようにした装置がある。この技術によれば、比重や色や形状が海藻・小魚・野菜又は山菜と近似しており帯電性も有していない魚網片や頭髪などの異物でも有効に海藻・小魚・野菜又は山菜から除去することができるとされている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−191829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている異物除去装置は、「多数の隙間」を有するところ、そこには「流体」の供給によって入り込んだ異物が詰まることが想定され、それを除去するといった面倒なメンテナンス作業も必要になる。
【0005】
また、特許文献1に開示されている異物除去装置は、「流体を供給」しているため、「流体」を使用する点、「供給」のためにポンプ等を駆動させている点で、エコロジーの面で問題がある。
【0006】
さらに、特許文献1に開示されている異物除去装置は、「流体」を用いているところ、たとえば、鰹節の削り節のような乾物を、異物除去対象とすることができない。乾物が「流体」から水分等を吸収してしまうためである。したがって、特許文献1に開示されている異物除去装置は、異物除去対象が限定されるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、面倒な作業が不要で、エコロジーに優れ、異物除去対象が限定的とならない異物除去部材及び異物除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、振動によって異物除去対象が搬送される経路に設置される異物除去部材であって、当該異物除去対象の進行方向に対して所要の角度で平面方向に延びる幾つかの凹凸が形成されている異物除去部材である。
【0009】
本発明の異物除去部材によれば、一度異物が凹部内に落下すると、異物は、凹部から出ることはほとんどない。その理由は、異物は相対的にサイズが小さく、凸部を越えることができないことによる。また、凸部上を搬送されていく異物除去対象が蓋のような機能を果たすことによる。
【0010】
一方、異物除去対象は、大きなサイズのものであれば、そもそも凹部内に落下することがない。また、小さなサイズの異物除去対象は、凹部内に落下することもあっても、通常、異物よりはサイズが大きいし、典型的には異物除去対象として削り節を想定すれば理解しやすいと思うが、順次搬送されてくる他の異物除去対象(削り節)との接触機会が多いため、これによって押し出されるようにして、凹部から出ることになる。
【0011】
そして、凹部は、典型的には、異物除去対象の進行方向に対して平面方向でみて斜め方向に形成された溝部とすることができ、この場合には、溝部内の異物は、振動によって溝部内を進行して、搬送経路から逸れていくことになる。したがって、効率の良い異物除去が実現できる。
【0012】
また、本発明は、上記異物除去部材と、この異物除去部材が取り付けられる搬送ユニットとを備える異物除去装置である。搬送ユニットは、飼い葉桶状をしており、内壁に当該異物除去部材を受ける受け部を有する。搬送ユニットは、異物除去対象及び異物を搬送するための振動ユニットを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係る異物除去装置の分解斜視図である。
【図2】図1に示す異物除去装置の平面図である。
【図3】図1に示す異物除去装置の長手方向の側面図である。
【図4】図1に示す異物除去装置の短手方向の側面図である。
【図5】図1に示す異物除去装置の異物除去部材の一部の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る異物除去部材20の平面図である。
【符号の説明】
【0014】
1 ドライブユニット
2 トラフケース
3 ドライブフレーム
4 トラフベース
5 クズ受けシュート
8,9 揺動マウント
10 キャスター
20 異物除去部材
21 平面部
22 溝部
30 搬送ユニット
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る異物除去装置の斜視図である。図2は、図1に示す異物除去装置の平面図である。図3は、図1に示す異物除去部材の長手方向の側面図である。図4は、図1に示す異物除去部材の短手方向の側面図である。図5は、図1に示す異物除去装置の異物除去部材の一部の拡大図である。
【0017】
本実施形態では、異物除去対象として鰹節の削り節を、異物として鰹の小骨を例に説明する。もっとも、異物除去対象及び異物がこれに限定されるものではなく、たとえば、異物除去対象として鰹節以外の魚節の削り節、或いは、野菜、果物、豆などとすることもでき、異物として鰹の小骨以外の魚の小骨、砂、ゴミなどとすることもできる。
【0018】
図1等には、削り節から鰹の小骨などを除去する異物除去部材20と、削り節を袋詰め装置等に向けて搬送する搬送ユニット30とを備える異物除去装置を示している。異物除去装置のサイズは、一例としては、長さが約1700cm、幅が約500cm、高さが約420cmである。実際には、このようなサイズの異物除去装置を、複数連結して用いる。この際、異物除去装置の設置スペースがあまりない場合には、異物除去装置を垂直方向に配置して、交互に削り節の搬送開始位置が反対となるよう配置すればよい。
【0019】
具体的には、たとえば、一番上の異物除去装置の下流口が、真中の異物除去装置の上流口の上方となり、真中の異物除去装置の下流口が一番下の異物除去装置の上流口の上方となるように配置すればよい。
【0020】
異物除去部材20は、搬送ユニット30の鰹節の削り節が搬送される経路に取り付けられる。異物除去部材20は、鰹節の削り節の搬送及び小骨の除去がスムーズになされるように、フッ素樹脂などを用いて表面加工して、摩擦抵抗を少なくするとよい。
【0021】
図5(a)には、異物除去部材20の平面図を示している。図5(b)には、図1の円部分付近の断面斜視図を示している。図5(c)には、図5(b)の断面斜視図の断面方向に対する直交方向の断面斜視図を示している。異物除去部材20の大きさは、異物除去装置の大きさに対応しており、たとえば、長さが約1680cm、幅が約450cmとしている。異物除去部材20は、鰹節の削り節の進行方向に対して30度〜60度程度の角度で、平面方向に延びる複数の平面部21と溝部22とから構成される。
【0022】
ここで、平面部21及び溝部22の構成は、凹凸構成の一態様であり、たとえば、平面部21と突部とから構成してもよいし、サインカーブのように連続した波状で構成されてもよい。ただし、実験の結果、平面部21つまり水平面が形成されている方が、鰹節の削り節の搬送効率が良いことがわかった。平面部21及び溝部22は、一例としては、以下のような条件で形成すればよい。
【0023】
まず、溝部22は、U字状或いはV字状とする。溝部22は、開口部幅Aは0.5cm〜1.5cm、最大深さBは0.5cm〜1.5cm、溝の開口端と溝の底部とを結ぶ直線と平面部21との為す角度Cは40度〜70度、異物除去部材20の長手方向に対する溝120の形成角度Dは30度〜60度、溝120間の幅Eは2cm〜5cmとする。もっとも、溝部22の条件は、鰹節の削り節の大きさ、搬送ユニット30の駆動条件などを考慮して決定されるものであり、上記各条件に限定されるものではない。
【0024】
搬送ユニット30は、内壁下側に異物除去部材20が取り付けられる飼い葉桶状のトラフケース2を備える。トラフケース2を飼い葉桶状としているのは、その内壁によって削り節が搬送ユニット30の外側に落下することを防止するためである。
【0025】
異物除去部材20とトラフケース2とは、ねじ止めなどによって固定する。具体的には、図5(c)に示すように、トラフケース2の内壁に、これと直交方向に延びる、ねじ穴を有する異物除去部材受け部を形成し、異物除去部材20にも当該ねじ穴に対応するねじ穴を形成し、異物除去部材受け部の下側に異物除去部材20が位置する態様で、異物除去部材20とトラフケース2とをねじ止めする。
【0026】
こうすると、削り節の進路は、主として、異物除去部材20の平面部21とトラフケース2の内壁とによって規定される。一方、小骨の進路は、主として、異物除去部材20の溝部22によって規定される。換言すると、小骨の大半は、溝部22を経て、トラフケース2の内壁を通過し、異物除去部材20からトラフケース2の底面に落下し、トラフケース2の底面を進行して、クズ受けシュート5に収容される。
【0027】
なお、たとえば、異物除去部材20の下流部分をなくして(異物除去部材20を短くして)、その分、搬送ユニット30の下流側の底面に、網目部を設けてもよい。こうすると、異物除去部材20を搬送されてきて、網目部上に落下する鰹節の削り節に万が一小骨などの異物が紛れていた場合には、網目部への落下時の衝撃と相俟って、当該異物が網目部を通過して落下することが期待できる。
【0028】
トラフケース2の下流には、小骨などの異物が収容されるクズ受けシュート5が設けられている。トラフケース2の下方には、トラフケース2に対して振動を付与するドライブユニット1が位置している。ドライブユニット1は、ドライブフレーム3に設置されている。
【0029】
ドライブユニット1は、ここでは、2mm〜3mm程度の距離だけ偏心した偏心錘を回転させることで、トラフケース2に対して振動を付与している。ただし、これと同様の振幅が得られるのであれば、超音波、誘電コイル、圧電素子、ビータロールなどを用いて、トラフケース2に対して振動を付与してもよい。
【0030】
また、トラフケース2とドライブユニット1とは、揺動マウント8,9によって連結されている。揺動マウント8,9は、軸方向に伸縮可能なシリンダーである。このため、ドライブユニット1を駆動すると、偏心錘の偏心量に応じた振動を、トラフケース2に付与することができる。
【0031】
この際、揺動マウント8,9の取り付け角度、長さなどを所定の条件に設定すると、既知のように、鰹節の削り節及び小骨は、図3の右方向から左方向に向けて進行することになる。
【0032】
なお、ドライブユニット1の駆動条件は、異物除去装置に搬送される削り節量、異物除去部材20の溝部22の条件によっても異なるが、一例としては、偏心錘を1分間あたりに約800〜1200回転させる条件とすればよい。
【0033】
トラフケース2をドライブフレーム3の底部には、スプリングを介してトラフベース4が接続されている。トラフベース4の各角部には、搬送ユニット30を移動させる際に用いるキャスター10が取り付けられている。
【0034】
つぎに、異物除去装置に、削り節が搬送されてきた場合に、そこから異物を除去する原理について説明する。
【0035】
まず、搬送ユニット30に取り付けられている異物除去部材20の上に、削り節が搬送されてくる。
【0036】
削り節は、通常、大小の様々なサイズのものが混在しているが、サイズ大きいものは、異物除去部材20の平面部21を、図3の右方向から左方向に向けて、拡散しながら移動していくことになる。一方、サイズ小さいものは、時折、異物除去部材20の溝部22及び平面部21を経ながら、図3の右方向から左方向に向けて、拡散しながら移動していくことになる。
【0037】
これに対して、削り節に紛れて小骨が混在していた場合には、小骨は、図3の右方向から左方向に向けて移動していくことになるが、異物除去部材20の溝部22に一度落下すると、小骨の大半は、その溝部22内から飛び出すことなく、当該溝部22内を進行する。
【0038】
また、小骨の一部は、異物除去部材20の溝部22に一度落下した場合であっても、その溝部22内から飛び出すこともありうる。しかし、係る場合には、その小骨は、当該溝部22の下流に位置するいずれかの溝部22に落下し、その溝部22内から飛び出すことなく進行する。このような事象が繰り返されながら、いずれ、ほぼすべての小骨は、いずれかの溝部22を経由して、異物除去部材20の脇から落下し、クズ受けシュート5に到達する。
【0039】
結局、異物除去装置を3台連結すれば、3台目の異物除去装置を経た鰹節の削り節からは、ほぼ100%の確率で、すべての小骨が削り節内から除去される。実際に、小骨のみを異物除去部材20に搬送した場合と、小骨と削り節との混在物を異物除去部材20に搬送した場合とに、きちんと小骨が溝部22内を進行するか否かを100回程度か実験してみた。
【0040】
この結果、いずれの実験においても、小骨のすべてが、搬送地点からせいぜい約2000cm地点までにいずれかの溝部22を進行したことが確認できた。
【0041】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2に係る異物除去部材20の平面図である。本実施形態では、下流側の溝部22の底に貫通孔24を形成している。異物除去装置は、ドライブユニット1を駆動した場合、上流側に比して下流側の方が上下の振幅が大きくなることが知られている。このため、下流側の溝部22に落下した小骨は、その溝部22内から相対的には飛び出しやすいという性質がある。このような性質を考慮して、下流側の溝部22に貫通孔24を形成して、せっかく溝部22に落下した小骨が、そこから飛び出して鰹節の削り節に再度紛れることを防止している。なお、貫通孔24は、下流側の溝部22のみならず、上流側のみ、上流側及び下流側の双方に設けてもよい。
【0042】
実施形態1の異物除去装置の場合には、2段目の異物除去装置までに、ほぼ100%の小骨が除去できたが、本実施形態の異物除去装置の場合には、1段目の異物除去装置で、既に、ほぼ100%の小骨が除去できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物除去対象の搬送経路を構成する板状の異物除去部材であって、
当該異物除去対象の搬送方向に対して所要の角度で平面方向に延びる幾つかの凹凸が前記搬送経路に形成されている異物除去部材。
【請求項2】
前記凹凸の凹部には、貫通孔が設けられている、請求項1記載の異物除去部材。
【請求項3】
前記凹凸は、平面部分を含む、請求項1記載の異物除去部材。
【請求項4】
請求項1記載の異物除去部材と、
前記異物除去部材が取り付けられる搬送ユニットとを備える異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−62588(P2011−62588A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212929(P2009−212929)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(509259426)エフ・エム食品機械有限会社 (1)
【Fターム(参考)】