説明

疾患誘発性運動失調症および非運動失調性平衡異常の治療法

疾患誘発性運動失調症および非運動失調性平衡異常の治療方法が開示されている。該方法はニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物で患者を処置することからなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は2008年3月31日付け出願の米国仮特許出願番号第61/041069号;2008年4月1日付け出願の出願番号第61/041408号;2008年4月9日付け出願の出願番号第61/043522号;2008年5月27日付け出願の出願番号第61/056173号;および2008年6月27日付け出願の出願番号第61/076343号の利益を主張するものであり、その内容を出典明示により本願明細書の一部とする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、疾患誘発性運動失調症および非運動失調性平衡異常の治療法に関する。ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を患者に投与することにより該患者におけるこれらの症状を治療することができる。
【0003】
ニコチンのヒトの大脳での役割は不明である。ニコチン性受容体は、アルツハイマー病、不安、薬物依存、癲癇、パーキンソン病、精神分裂症およびトゥレット症候群などの障害に関与しているのは明らかである。Pireiraらは、その報告(NeuroReport 2001、8、1223−1226)にて、ニコチンが非喫煙者の、場合によっては喫煙者の姿勢平衡異常と関連付けられること、また眼振および身体の揺れに起因することを明らかにした(Spillane JD Br. Med. J. 1955、2:1345、1345−1351)。出産前の、または新生児へのニコチン照射はヒトおよび動物実験の両方で脳の発育を妨げると考えられている。実際、ニコチンは胎盤を通過する(Al−Rejaieら、Alcohol Clin. Exp. Res. 2006、30(7)、1223−33)。妊娠の間の喫煙は流産、突然胎児死亡症候群(SIDS)、および過剰活性、うつ病および不安を含む、神経行動障害と関連付けられる(Smithら、Brain Res. 2006、1115(1)、16−25;Katzら、J. Physiol. 1967 138、63−80)。一の実験で、脳が急成長する間に、ヒトの脳をアルコールおよびニコチンに同時に暴露すると、プルキンエ細胞の総数が減少することが判明した(Arnericら、Biochemical Pharmacology 2007、74、1092−1101)。もう一つ別の実験で、5−12週の妊娠で流産した喫煙女性と非喫煙女性の、脳橋、延髄および小脳における第一期のニコチン性およびムスカリン性アセチルコリン受容体の発現を比較した(Katzら、J. Physiol. 1967、前掲)。これら領域でのα4およびα7両方のニコチン性受容体サブユニットの遺伝子発現パターンが喫煙後に変化した。これらの知見は初期の出産前のニコチン暴露がヒト胎児のコリン作動性システムの正常な発育パターンに影響を及ぼすことを示唆する。
【0004】
ニコチンと異なり、ニコチン性アセチルコリン受容体、例えばαβニコチン性アセチルコリン受容体の選択的活性化は運動失調症を改善する可能性がある(Al-Rejaieら、Alcohol Clin. Exp. Res. 2006、前掲)。この受容体の部分的作動は、動物実験にて、アルコール(Al-Rejaieら、Alcohol Clin. Exp. Res. 2006、前掲)またはテトラヒドロカンナビノイド(Smithら、Brain Res. 2006、前掲)で誘発された運動失調症を軽減することが明らかとなった。ニコチン性アセチルコリン受容体は速やかにアップレギュレーションにより脱感作され(Katzら、J. Physiol. 1967、前掲)、部分的αβニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストは、バレニクリンのように、アゴニストよりもむしろアンタゴニストとして逆説的に行動する可能性もある(Arnericら、Biochemical Pharmacology 2007、前掲)。
【0005】
哺乳動物の脳のαβ受容体はニコチンの利益、許容範囲および感受性と関連付けられる(Westら、Psychopharmacology 2008;197(3):371−7)。ニコチン性アセチルコリン受容体のインビボ実験で喫煙者の脳のいくつかの領域で小脳および脳幹にある分布容量の顕著な局所的差異と共に、非喫煙者と比べて喫煙者での吸収の増加と共に、[3H]ニコチンの結合が増加することがわかった(Westら、Psychopharmacology 2008、前掲)。
【0006】
バレニクリンは、喫煙習慣を撲滅するための処方薬として用いられる、構造的にシチシンに基づいて最近開発された薬物である。バレニクリンは、小脳にて認められた、αβサブタイプを含む、多くのニコチン性アセチルコリン受容体の部分的アゴニストとして作用する、ニコチン性受容体アゴニストである(Schmitz-Hiibschら、Neurology 2006、前掲)。最近では、バレニクリンが強力で完全なα受容体サブタイプのアゴニストとして作用することを示すことも報告されている(K. Minalakら、Molec. Pharm. 70(3):801−805(2006))。上記したように、ニコチン性アセチルコリン受容体は活性成分のアップレギュレーションにより速やかに脱感作し、特定の薬剤がアゴニストとしてよりも機能的にアンタゴニストとしてこれらの受容体に対して作用するとの仮定を導くこととなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の神経変性疾患および毒物暴露は行動の協調能を進行的に喪失させる。これらの物理的に破壊的な病気および症状の徴候として、運動失調、平衡異常および感覚異常が挙げられる。とりわけ、小脳疾患、進行性核上まひ(PSP)および非定型パーキノンシムにより惹起される運動失調症および平衡異常は、今でも治療または治癒できない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の種々の態様は、疾患誘発性運動失調症および非運動失調性平衡異常の治療法を提供することである。
【0009】
簡単には、したがって、本発明は、一の態様において、ヒトにおける疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常を治療する方法であって、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を投与することを含む、方法を対象とする。
【0010】
本発明のもう一つ別の態様は、ヒトの疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常を治療する方法であって、ヒトの運動失調症または非運動失調性平衡異常のベースライン値を測定し、その後でニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物をヒトに投与し、化合物を投与する間に、あるいはその後でヒトにおける運動失調症または非運動失調性平衡異常の2回目の値を測定し、2回目の値がベースライン値に対して改善されていることが運動失調症または非運動失調性平衡異常の治療を示す、方法を対象とする。
【0011】
本発明のもう一つ別の態様は、ヒトの疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常を治療する方法であって、ヒトの運動失調症または非運動失調性平衡異常のベースライン値を測定し、その後でニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物をヒトに投与し、化合物の投与を終了した少なくとも1カ月後にヒトにおける運動失調症または非運動失調性平衡異常の2回目の値を測定し、2回目の値がベースライン値に対して改善されているところの方法を対象とする。
【0012】
本発明のもう一つ別の態様は、ヒトの疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常を治療する方法であって、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物をヒトに投与し、化合物の投与が終了した後に測定した運動失調症または非運動失調性平衡異常の2回目の値が化合物の投与前に測定された運動失調症または非運動失調性平衡異常のベースライン値に対して改善されているところの方法を対象とする。
【0013】
本発明のもう一つ別の態様は、疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常の治療のための医薬の製造におけるニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物の使用を対象とする。
【0014】
本発明のもう一つ別の態様は、疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常の療法的治療にて使用するための、(i)アリール縮合アザポリサイクリック化合物;(ii)ピリドピラノアゼピン;(iii)アリール置換のオレフィン性アミン化合物;(iv)ベンジリデン−またはシンナミリデン−アナバセイン化合物;(v)ヘテロサイクリックエーテル化合物;(vi)3−ピリジルオキシアルキルヘテロサイクリックエーテル化合物;(vii)N−置換のジアザビサイクリック化合物;(viii)ヘテロサイクリック置換のアミノアザサイクル化合物;または(ix)インダゾール、ベンゾチオアゾールまたはベンゾイソチアゾール化合物を対象とする。
【0015】
本発明のもう一つ別の態様は、疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常の療法的治療にて用いるためのアリール縮合のアザポリサイクリック化合物を対象とする。
【0016】
これらの各々の、および他の態様において、一の一般的実施形態において、該化合物は、ABT−089、ABT−894、アルファ−ブンガロトキシン、アナバセイン、ブプロピオン、ブスピロン、BW284c51、シチシン、ジアニクリン(SSR591813)、ジヒドロ−ベータ−エリソイジン、DMXB、DMXB−A(GTS−21)、ジアゾキソン、ドネペジル、エキセロン、フルオキセチン、ガランタミン、フペルジンA、イソプロニクリン(TC−1734/AZD−3480)、ロベリン、メカミラミン、MEM3454、MEM63908、メチルライカコニチン、ネファゾドン、オクタノール/エタノール、OmIA、パロキセチン、セルトラリン、タクリン、TC−2559,TC−5214((S)−(+)−メカミラミン)、TC−5619、テバニクリン(ABT−594)、バレニクリン、ベンラファキシン、XY4083、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。一の一般的実施態様において、該化合物は、ABT−089、ABT−894、ブプロピオン、シチシン、ジアニクリン(SSR591813)、DMXB−A(GTS−21)、イソプロニクリン(TC−1734/AZD−3480)、ロベリン、メカミラミン、メチルライカコニチン、TC−2559,TC−5214((S)−(+)−メカミラミン)、テバニクリン(ABT−594)、バレニクリン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。もう一つ別の一般的な実施形態において、該化合物は、ドネペジル、エキセロン、フルオキセチン、ガランタミン、フペルジンA、MEM3454、MEM63908、タクリン、XY4083、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。これらのおよび他の実施形態において、該化合物は、例えば、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を介して作用する禁煙剤であり;一の特定の実施形態において、例えば、該化合物はバレニクリンである。
【0017】
他の目的および特徴は、一部にて明らかであり、後記にて指摘されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の患者の治療コースの期限を示す。
【0019】
【図2】実施例1の患者の脳のT2評量した画像を示す。FXTASの典型的な中脳脚(MCP)の白質過剰強度に留意すること。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の開示は、患者、典型的にはヒトにおける特定の疾患誘発性症状の治療方法を提供する。特に、該症状は、運動失調症および非運動失調性平衡異常より選択される。該開示は、一部に、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物(およびかかる化合物を含む医薬組成物)が、広範囲の基礎疾患より派生する、運動失調症および非運動失調性平衡異常の治療に用いられるという知見に関する。したがって、該開示の好ましい実施形態は、運動失調症および失調性平衡異常の治療方法における、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する、例えば、バレニクリンなどの薬剤および化合物の使用である。例えば、該開示の一の実施態様は、ヒトの疾患誘発性運動失調症の治療方法であって、該ヒトにニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を投与することを含む方法を対象とする。該開示のもう一つ別の実施態様は、ヒトの疾患誘発性非運動失調性平衡異常の治療方法であって、該ヒトにニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を投与することを含む方法を対象とする。これらの特定の他の実施形態において、患者に投与される化合物はバレニクリンである。
【0021】
一般に、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物は作動性、拮抗性および/または調節性活性を有する。ある実施形態において、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物はニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストである。一の好ましい実施形態において、該化合物はバレニクリンである。これらの、および他の化合物は、一連の基礎疾患およびトキシン(例えば、薬、アルコールまたは他の薬剤)との慢性または長期にわたる暴露の結果としての疾患を含む症状よりもたらされる運動失調症または非運動失調性平衡異常の治療方法にて用いられる。該疾患は、ニコチン性アセチルコリン受容体活性化合物を患者に投与することを含む。
【0022】
上記したように、本願明細書に記載の方法は、基礎疾患の結果としての運動失調症および/または非運動失調性平衡異常症状を示している患者に、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を投与することを含む。ある実施形態において、患者に、該化合物を含む医薬組成物を投与する;一の特定の実施形態において、該化合物はバレニクリンである。かかる治療を受ける患者は治療前に算定または決定される基礎評点に対して実質的な改善を示しうる。本願明細書に開示されている治療はまた、精神保護作用または疾患修飾作用を提供することもできる;すなわち、該治療は治療を停止した後であっても患者にて存在する化学的または生化学的変化に影響を及ぼすことを含む。特定の理論に拘束されるわけではないが、化合物の投与は、経時的に、神経細胞の細胞膜を安定化し、および/または神経細胞の機能の正常化(例えば、かかる機能の維持および回復)を補助すると考えられる。
【0023】
ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物は、臨床的有意性を有する広範囲の疾患からの運動失調性および他の症状の治療に用いることができる。ニコチン性アセチルコリン受容体活性化合物を用いて、例えば、とりわけ、脊髄小脳失調症、脆弱性X/振戦運動失調症候群、およびフリードライヒ失調症に付随する運動失調症の逆作用の症状を治療することもできる。
【0024】
したがって、本願明細書に開示の方法の一の実施態様は、かかる治療を必要とするヒトに、典型的にはニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を含む医薬組成物の形態にて該化合物を投与することを含む。該化合物は、一般に、有効量;すなわち患者の運動失調症および/または非運動失調性平衡異常症状に対して検出可能な治療作用を示すのに十分な量の用量にて投与される。該治療作用は、例えば、患者の症状を改善する、さもなければかかる不利な状態を軽減、緩和または最小とするいずれの処置であってもよい。本発明において、症状の重篤度の軽減または該症状の進行の遅延が患者にとって望ましいと考えられる。この点、本願明細書に記載の方法は基礎疾患の治療または予防を対象とするものではなく、物理学的および生理学的徴候または反応、特に運動失調症および非運動失調性平衡異常を含む、該疾患(すなわち症状)を特徴付ける自覚のある適用症を改善、緩和、軽減または最小化することを対象とする。ヒト患者は、種々の実施態様において、幼児、子供、青年または成人であってもよい。
運動失調症および/または非運動失調性平衡異常
【0025】
上記したように、該開示は運動失調症および/または非運動失調性平衡異常の治療に関する。一般に、患者の運動失調症または非運動失調性平衡異常症状はいずれの病因の疾患より現れるものであってもよい。運動失調症または非運動失調性平衡異常は、広範囲の基礎疾患(病的障害または医学的症状を含む)の主たるまたは副次的症状であってもよい。患者の運動失調症および非運動失調性平衡異常は疾患誘発性であり;すなわち、例えば薬物またはアルコールあるいは他のトキシンに直接的に暴露されることによりもたらされる、薬物誘発の運動失調症および非運動失調性平衡異常と区別されるように、疾患により惹起されるものである。加えて、あるいはまた、運動失調症および非運動失調性平衡異常にて現れる基礎疾患は不明であってもよく、すなわち該運動失調症および非運動失調性平衡異常はまた、不安またはエージングによる疾患を含め、特発性疾患から由来のものであってもよい。
【0026】
小脳性運動失調症および脊髄性運動失調症(後脊髄性運動失調症を含む)を含め、運動失調症は、一般に、筋肉協調の喪失または不能を含む。運動失調を示す患者は、姿勢およびバランスを含め、筋肉の力、範囲、方向、速度およびリズムを調節することが困難である。例えば、体幹筋肉の運動失調は、姿勢の傾きの増大、および重力中心を支持基盤上に維持する能力の困難性の増大もたらしうる。運動失調症および失調性歩行および四肢の揺れの一次または二次症状はまた、言語障害、嚥下障害、異常呼吸および筋失調症などの不随意運動が現れるかもしれず、時に自律神経症状または座対性まひならびに錐体路または錐体外路疾患を発症し、それにより生活の活動を実質的に干渉することとなる。
【0027】
上記したように、運動失調症は、小脳および神経変性障害ならびにトキシンへの慢性および長期の暴露によりもたらされる、広範囲に及ぶ基本疾患および症状をもたらすかもしれない。運動失調の症状は、広範囲に及ぶ疾患、症状および環境要素よりもたらされ、該症状は、種々の他の疾患のうち、感染疾患、代謝疾患、神経変性疾患、遺伝性疾患、血管疾患、腫瘍性疾患、脱髄性疾患、神経筋疾患および長期または慢性のトキシン(薬物およびアルコールを含む)への暴露より由来の疾患を包含し、;一の実施態様にて、例えば、運動失調症は代謝疾患、神経変性疾患、血管疾患、神経筋、またはトキシンへの長期または慢性暴露よりもたらされる疾患の結果である。本願明細書に記載の方法にしたがって治療され得る、運動失調症状をもたらしうる疾患、障害、徴候および症状は、限定されるものではないが、筋萎縮性側索硬化症、両性発作性頭位目まい、小脳運動失調症1型((常染色体劣性)、小脳運動失調症(常染色体劣性)、小脳運動失調症(優勢的純粋)小脳皮質萎縮症、小脳変性症(亜急性)、小脳機能障害、小脳形成不全、小脳形成不全(骨内硬化症)、小脳形成不全(色素上皮網膜変性)、小脳実質性常染色体劣性障害3、小脳実質性障害V、小脳形成不全(水頭症)、脳アミロイド血管症(家族性)、脳性まひ、脱髄障害、脊髄後索症状、自律神経障害、平衡異常症候群、内分泌疾患、トキシン(例えば、アルコール、薬物、抗癲癇剤、神経弛緩剤)への慢性暴露により惹起される疾患、脆弱性X/振戦運動失調症候群、フリードライヒ失調症、前頭葉機能不全、遺伝性疾患、中枢神経系の肉芽種性血管炎、ハレルフォルデン・スパッツ病、遺伝性運動感覚ニューロパシー、水頭症(例えば、低圧または正常圧)、低血圧、先天性眼振、運動失調症および異常聴覚脳幹応答、幼児発症脊髄小脳運動失調症、マカド−ジョセフ病、メニエール病、代謝障害、ミラーフィッシャー症候群、水俣病、多発性硬化症、筋ジストロフィー、ミオクローヌス−運動失調症、神経変性疾患、オリーブ橋小脳萎縮症、腫瘍随伴性障害、パーキンソン病(非定型)、はい骨筋萎縮、フェニトイン毒性、網膜色索変性を伴う後柱運動失調症、ポリオ後症候群、脳への重度のダメージ(例えば、頭部損傷、脳手術、多発性硬化症または脳性まひ、慢性アルコール/薬物中毒、トキシンへの慢性曝露、ウイルス感染、または脳腫瘍により惹起される)、痙攣性片側不全まひ、痙攣性パラプレジア23、痙攣性パラプレジア緑内障性的早熟、SPG、脊髄小脳運動失調症、脊髄小脳運動失調症(筋萎縮性難聴)、脊髄小脳運動失調症(異形症)、脊髄小脳運動失調症11、脊髄小脳運動失調症17、脊髄小脳運動失調症20、脊髄小脳運動失調症25、脊髄小脳運動失調症29、脊髄小脳運動失調症3、脊髄小脳運動失調症(常染色体劣性1)、脊髄小脳運動失調症(常染色体劣性3)、脊髄小脳運動失調症(常染色体劣性4)、脊髄小脳運動失調症(常染色体劣性5)、脊髄小脳運動失調症(軸索神経障害を伴う常染色体劣性)、脊髄小脳運動失調症(マカド−ジョセフII型)、脊髄小脳運動失調症(X−結合、2)、脊髄小脳運動失調症(X−結合、3)、脊髄小脳運動失調症(X−結合、4)、脊髄小脳デジェネレッセンス(degenerescence)(本型)、脳卒中(例えば、急性または出血性)、椎骨動脈解離、脊椎−基底機能不全、およびビタミン欠乏により惹起される疾患を包含する。一の特定の実施態様において、運動失調症は脊髄小脳運動失調症、フリードライヒ失調症、および脆弱性X/振戦運動失調症候群の結果である。もう一つ別の個々の実施態様において、運動失調症は脊髄小脳運動失調症または脆弱性X/振戦運動失調症候群の結果である。
【0028】
本発明はまた、非運動失調性平衡異常の治療に関する。非運動失調性平衡異常とは、一般に、平衡の喪失、協調の損傷および筋肉協調の機能停止と関連付けられる目まいをいう。運動失調症と同様、非運動失調性平衡異常の徴候は、種々の疾患のうち、感染疾患、代謝疾患、神経変性疾患、遺伝性疾患、血管疾患、腫瘍性疾患、脱髄性疾患、および神経筋疾患を含む、広範囲に及ぶ疾患、障害および環境因子に由来する可能性もある。一の実施態様において、例えば、非運動失調性平衡異常は、代謝疾患、神経変性疾患、血管疾患、神経筋疾患、またはトキシンへの長期または慢性の暴露に由来する疾患の結果である。本願明細書に記載の方法に従って治療でき、非運動失調性平衡異常の徴候をもたらす可能性のある、個々の疾患、障害、症候群および刺激は、限定されるものではないが、種々の疾患のうち、聴神経鞘腫、脳梁欠損、長期の薬物およびアルコール依存により惹起される疾患、毛細血管拡張性運動失調症、アンジェルマン症候群、総合的平衡障害(例えば、目まい、感覚の低下、不安定、不均衡)、脳腫瘍、脳性まひ、キアリ奇形、伝統的子供ALD、大脳皮質基底核変性症、耳帯状疱疹、HIV/AIDS、水頭症、多発硬化症、筋ジストロフィー、オリーブ橋小脳萎縮症、パーキンソン病、非定型パーキンソン病、レッツ症候群、シャイ−ドラガー症候群、脳卒中、目まい、ボンヒッペル−リンダ病、ウォーレンバーグ症候群、およびウィルソン病の結果である。一の個々の実施態様において、非運動失調性平衡異常は、脊髄小脳運動失調症、フリードライヒ運動失調症、および脆弱性X/振戦運動失調症候群より選択される疾患の結果である。もう一つ別の個々の実施態様において、非運動失調性平衡異常は、脊髄小脳運動失調症または脆弱性X/振戦運動失調症候群の結果である。
ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物
【0029】
本願明細書に記載の方法に従って運動失調症または非運動失調性平衡異常症状を治療する化合物は、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する。上記したように、この活性はアゴニスト活性、アンタゴニスト活性、または調節活性であってもよい。該化合物は神経型ニコチン性アセチルコリン受容体、筋肉型ニコチン性アセチルコリン受容体、またはその両方に対して作用するかもしれない。例えば、該化合物はα1、β1、δ、γおよびε受容体サブユニットおよびその混合物に対して作用しうるかもしれない。別の一例として、該化合物は17種のニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットの種々の同種または異種組み合わせ:α2ないしα10およびβ2ないしβ4(例えば、神経サブユニット:(α4)(β2)、(α4)(β2)、および(α7))に対して作用しうるかもしれない。概して言えば、これは、例えば、神経I型受容体サブユニット(例えば、α9、α10)、神経II型受容体サブユニット(例えば、α7、α8)、神経III型(1)受容体サブユニット(例えば、α2、α3、α4およびα6)、神経III型(2)受容体サブユニット(例えば、β2、β4)、神経III型(3)受容体サブユニット(例えば、β3、β5)、筋肉IV型受容体サブユニット(例えば、α1、β1、δ、γおよびε)およびそれらの組み合わせを包含する。
【0030】
例えば、該化合物はα4β2受容体のアゴニストまたは部分アゴニスト(選択的アゴニストまたは選択的部分アゴニストを含む)であってもよい(例えば、とりわけ、ABT−089、ABT−894、シトシン、ジアニクリン(SSR591813)、TC−1734、TC−2559、およびバレニクリン)。加えて、もう一つの例として、該化合物はα4β2受容体のアンタゴニストであってもよい(例えば、アナバセイン、DMXB−A、ロベリン、メカミラミン、メチルリカコニチン、およびTC−5214)。別の例として、該化合物はα3β2受容体のアンタゴニスト(非競合性アンタゴニストを含む)であってもよい(例えば、アルファ−ブンガロトキシン、ブプロピオン、フルオキセチン、ロベリンおよびメカミラミン)。別の一例として、該化合物はα7受容体のアゴニスト(選択的アゴニストを含む)であってもよい(例えば、アナバセイン、DMXB−A、ガランタミン、MEM3454、MEM63908、TC−5214およびバレニクリン)。もう一つ別の例において、該化合物はα7受容体のアンタゴニストであってもよい(例えば、アルファ-ブンガロトキシン、ジヒドロ−ベータ−エリスロイジン、メカミラミン、パロキセチン、セルトラリンおよびベンラファキシン)。もう一つ別の例において、該化合物はα3β4受容体のアンタゴニストであってもよい(例えば、アルファ−ブンガロトキシン、ブプロピオン、フルオキセチン、ロベリンおよびメカミラミン)。もう一つ別の例によれば、化合物はα3β4受容体のアンタゴニストであってもよい(例えば、フルオキセチン、ネファゾドン、パロキセチン、セルトラリンおよびベンラファキシン)。さらに別の一例によれば、該化合物はα3β2、α6、β2、(α1)2β1δεおよび(α1)2β1δγ、α3、および/またはα6β2受容体に対して活性(例えば、アゴニスト活性、アンタゴニスト活性または他の活性)を有してもよい(例えば、バレニクリン、シトシン、アルファ−ブンガロトキシン、ABT−594およびOmIA)。
【0031】
ある場合において、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する活性剤は、例えば禁煙において臨床的効能が証明されている既知の化合物である。ある実施態様では、該化合物は、(i)アリール縮合アザポリサイクリック化合物;(ii)ピリドピラノアゼピン;(iii)アリール置換のオレフィン性アミン化合物;(iv)ベンジリデン−またはシンナミリデン−アナバセイン化合物;(v)ヘテロサイクリックエーテル化合物;(vi)3−ピリジルオキシアルキルヘテロサイクリックエーテル化合物;(vii)N−置換のジアザビサイクリック化合物;(viii)ヘテロサイクリック置換のアミノアザサイクル化合物;および(ix)インダゾール、ベンゾチオアゾールまたはベンゾイソチアゾール化合物からなる群より選択される。一の実施態様に置いて、該化合物は、ABT−089、ABT−894、アルファ−ブンガロトキシン、アナバセイン、ブプロピオン、ブスピロン、BW284c51、シチシン、ジアニクリン(SSR591813)、ジヒドロ−ベータ−エリソイジン、DMXB、DMXB−A(GTS−21)、ジアゾキソン、ドネペジル、エキセロン、フルオキセチン、ガランタミン、フペルジンA、イソプロニクリン(TC−1734/AZD−3480)、ロベリン、メカミラミン、MEM3454、MEM63908、メチルライカコニチン、ネファゾドン、オクタノール/エタノール、OmIA、パロキセチン、セルトラリン、タクリン、TC−2559、TC−5214((S)−(+)−メカミラミン)、TC−5619、テバニクリン(ABT−594)、バレニクリン、ベンラファキシン、XY4083、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。特定の実施態様において、該化合物は、ABT−089、ABT−894、ブプロピオン、シチシン、ジアニクリン(SSR591813)、DMXB−A(GTS−21)、イソプロニクリン(TC−1734/AZD−3480)、ロベリン、メカミラミン、メチルライカコニチン、TC−2559、TC−5214((S)−(+)−メカミラミン)、テバニクリン(ABT−594)、バレニクリン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。もう一つ別の個々の実施態様において、該化合物は、ドネペジル、エキセロン、フルオキセチン、ガランタミン、フペルジンA、MEM3454、MEM63908、タクリン、XY4083、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。好ましい実施態様において、該化合物は、バレニクリン、ジアニクリン、イソプロニクリン、およびその組み合わせからなる群より選択され;より好ましくは、この実施態様において、該化合物はバレニクリンである。
【0032】
一の特定の実施態様において、該化合物はアリール縮合のアザポリサイクリック化合物である。この実施態様によれば、例えば、患者に投与される化合物は、式(i):
【化1】

【0033】
[式中
は水素、(C−C)アルキル、コンジュゲートしていない(C−C)アルケニル、ベンジル、XC(=O)R13または−CHCH−O−(C−C)アルキルであり;
【0034】
およびRは、独立して、水素、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、ハロ、シアノ、−SOq(C−C)アルキル(qは0、1または2である)、(C−C)アルキルアミノ−、[(C−C)アルキル]アミノ−、−CO、−CONR、−SONR、−C(=O)R13、−XC(=O)R13、アリール−(C−C)アルキル−またはアリール−(C−C)アルキル−O−(ここで、該アリールはフェニルおよびナフチルより選択される)、ヘテロアリール−(C−C)アルキル−またはヘテロアリール−(C−C)アルキル−O−(ここで、該ヘテロアリールは酸素、窒素および硫黄より選択される1ないし4個のヘテロ原子を含有する5ないし7員の芳香族環より選択される)、およびX(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−からなる群より選択され、ここで、Xは不在であるか、またはXは(C−C)アルキルアミノ−または[(C−C)アルキル]アミノ−であり、該X(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−の(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−部分は少なくとも1個の炭素原子を含有し、該(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−部分の1ないし3個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄原子により置換されていてもよい、ただしこの2個のヘテロ原子は少なくとも2個の炭素原子で分離されていなければならず、該(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−のアルキル部分は2ないし7個のフッ素原子で置換されていてもよく、該アリール−(C−C)アルキル−および該ヘテロアリール−(C−C)アルキル−の各アルキル部分の炭素原子のうち1個は酸素、窒素または硫黄原子により置換されていてもよく、上記したアリールおよびヘテロアリール基の各々は、0ないし7個のフッ素原子により置換されていてもよい(C−C)アルキル、2ないし7個のフッ素原子により置換されていてもよい(C−C)アルコキシ、ハロ(例えば、塩素、フッ素、臭素またはヨウ素)、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、(C−C)−、[(C−C)アルキル]アミノ−、−CO、−CONR、−SONR、−C(=O)R13および−XC(=O)R13より独立して選択される、1個または複数の置換基、好ましくは0ないし2個の置換基で置換されていてもよい;あるいはRおよびRはその結合する炭素と一緒になって、飽和または不飽和であってもよい、4ないし7員の単環式環または10ないし14員の二環式炭素環を形成し、ここで該単環式環の1ないし3個の縮合していない炭素原子、および式(i)のベンゾ環の一部ではない、該二環式環の1ないし5個の炭素原子は、所望により、独立して、窒素、酸素または硫黄により置換されていてもよく、該単環式環および二環式環は、単環式環の場合、所望により、1個または複数の置換基、好ましくは0ないし2個の置換基で置換されていてもよく、二環式環の場合、0ないし3個の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、独立して、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−より選択され、炭素原子の総数は6個を越えることはなく、アルキル部分のいずれも1ないし7個のフッ素原子;ニトロ、オキソ、シアノ、ハロ、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ヒドロキシ、アミノ、(C−C)アルキルアミノ−、[(C−C)アルキル]アミノ−、−CO、−CONR、−SONR、-C(=O)R13、および−XC(=O)R13で置換されていてもよく;
【0035】
、R、R、R、RおよびR13の各々は、独立して、水素および(C−C)アルキルからなる群より選択されるか、あるいはRおよびR、またはRおよびRはその結合する窒素となってピロリジン、ピペリジン、モルホリン、アゼチジン、ピペラジン、−N−(C−C)アルキルピペラジンまたはチオモルホリン環を形成し、ここで環硫黄はスルホキシドまたはスルホンで置換されていてもよく;Xは、各々、独立して、(C−C)アルキレンである:ただし(a)R、RおよびRの少なくとも1個は水素以外でなければならず、(b)RおよびRが水素である場合、Rはメチルまたは水素以外の基である]
で示される化合物またはその化合物の医薬上許容される塩である。
【0036】
一の実施態様において、R、R、およびRは、各々、水素であり;より好ましくは、この実施態様において、該化合物は式:
【化2】

で示される。
【0037】
この化合物、7,8,9,10−テトラヒドロ−6,10−メタノ−6H−ピラジノ(2,3−h)(3)ベンズアゼピン(ベレニクリンまたはChantix(登録商標)としても知られている)はニコチン依存症の治療用医薬として承認されている。式(i)に対応する化合物およびベレニクリンが国際公開第WO2001/062736号;米国特許第6410550号;米国特許第6605610号;米国特許第6605610号;米国特許第6890927号;および米国特許第7265119号(その各々は、出典明示により本明細書の一部とする)にさらに詳細に記載されている。個々の実施態様において、患者に投与される化合物は、ベレニクリンである。
【0038】
もう一つ別の個々の実施態様において、化合物はピリドピラノアゼピンである。この実施態様に従って、例えば、患者に投与される化合物は、式(ii):
【化3】

【0039】
[式中:
は水素原子、(C−C)アルキル 基、フェニル(C−C)アルキル基、フェニルヒドロキシ(C−C)アルキル基、フラニル(C−C)アルキル 基、またはフラニル−ヒドロキシ(C−C)アルキル基であり、Rは水素またはハロゲン原子またはトリフルオロメチル、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アセチル、(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシ基であるか、あるいは一般式:NR(ここで、Rは水素原子または(C−C)アルキルまたは(C−C)アルカノイル基であり、Rは水素原子または(C−C)アルキル基であるか、あるいはRおよびRはそれらと結合する窒素原子と一緒になってC−C環を、またはハロゲン原子またはトリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、アセチル、(C−C)アルキル、(C−C)アルコキシまたはフェニル環の2および3位にて結合したメチレンジオキシで置換されていてもよい、フェニルまたはナフチル基 を形成し、Rは水素またはハロゲン原子もしくは(C−C)アルキル基である]
で示される。
【0040】
一般式(ii)の化合物は、塩基の状態または酸付加塩の状態にて存在しうる。加えて、位置5aおよび10aの原子は不斉原子であり、例えば、純粋な位置および光学異性体または後者の混合物の形態にて存在しうる。個々の実施態様において、R、R、および R は、各々、水素であり;より好ましくは、この実施態様において、該化合物は、式:
【化4】

で示される。
【0041】
この化合物、(5aS,8S,10aR)−5a,6,9,10−テトラヒドロ,7H,11H−8,10a−メタノピリド[2’,3’:5,6]ピラノ[2,3−d]アゼピン(SSR-591,813またはジアニクリンとしても知られている)は、ニコチン依存症の治療用医薬として臨床試験中である。式(ii)の化合物およびジアニクリン(SSR591813)は米国特許第6538003号(出典明示によりその内容を本願明細書の一部とする)はさらに詳細に記載されている。
【0042】
もう一つ別の個々の実施態様において、化合物はアリール置換のオレフィンアミン化合物である。この実施態様によれば、例えば、患者に投与される化合物は、式(iii):
【化5】

[式中、XおよびX’は、各々、Hanschら、Chem. Rev. 91:165(1991)によって測定されるように、シグマm値が0よりも大きな、時に0.1より大きな、一般に0.2より大きな、さらには0.3より大きく;0より小さく、一般に−0.1または0よりも小さく;mが整数であり、nもm+nの合計が1、2、3、4、5、6、7または8、好ましくは1、2または3、最も好ましくは2または3であるような整数として特徴付けられる置換基種に結合する窒素または炭素であり;該構造式の波線は該化合物がシス(Z)またはトランス(E)形態であることを示し;E、EII、EIII、EIV、EおよびEVIは個々に水素または低級アルキル(例えば、C−C、好ましくはC−Cの直鎖または分岐鎖アルキル、例えばメチル、エチルまたはイソプロピル)またはハロ置換の低級アルキル(例えば、C−C、好ましくはC−Cの直鎖または分岐鎖アルキル、例えばトリフルオロメチルまたはトリクロロメチル)であり、E、EII、EIII、EIV、EおよびEVIのうち少なくとも1つは水素以外であり、残りのE、EII、EIII、EIV、EおよびEVIは水素であり;Z’およびZ“は、個々に、水素または低級アルキル(例えば、C−C、好ましくはC−Cの直鎖または分岐鎖アルキル、例えばメチル、エチルまたはイソプロピル)であり、好ましくは少なくともZ’およびZ”の少なくとも1つが水素であり、最も好ましくはZ’が水素であり、Z“がメチルであるか、あるいはまたZ’が水素であり、Z”が環構造(シクロアルキルまたは芳香族)、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、キヌクリジニル、ピリジル、キノリニル、ピリミジニル、フェニル、ベンジル(そのいずれも、アルキル、ハロ、またはアミノ置換基などの少なくとも1個の置換基で適宜置換されていてもよく);あるいはまた、Z’、Z“および結合する窒素原子が、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、キヌクリジニル、ピペラジニルまたはモルホリニルなどの環構造を形成しうる]
で示される。
【0043】
一般的構造式(iii)を有する代表的な化合物は、(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(5−ピリミジニル)−4ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(5−メトキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(6−アミノ−5−メチル−3−ピリジル)−4ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジル)−4ペンテン−2−アミン、(2R)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(5−ブロモ−3−ピリジル)−4ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(5−エトキシ−3−ピリジル)−4ペンテン−2−アミン、(2S)−(4E)−N−メチル−5−(3−ピリジル)−4ペンテン−2−アミン、(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジル)−4ペンテン−2−アミン および(2S)−(4E)−N−メチル−5−(5−イソプロポキシ−3−ピリジル)−4−ペンテン−2−アミン(イソプロニクリン、TC−1734またはAZD−3480としても知られている)を包含する。式(iii)に対応する化合物は、国際公開WO99/65876およびWO00/75710;米国特許出願番号2002/0052497;米国特許第6979695号および米国特許第7045538号(その各々の内容を出典明示により本願明細書の一部とする)にさらに詳細に記載されている。
【0044】
もう一つ別の個々の実施態様において、該化合物はベンジリデン−またはシンナミリデン−アナバセイン化合物である。この実施態様によれば、例えば、患者に投与される化合物は、式(iv):
【化6】

[式中、R、RおよびRは水素またはC-Cアルキルであり;Rは=CHCH=CHXであり、Xは
【化7】

(ここで、R、RおよびRは、水素、各アルキルが1ないし4個の炭素原子を有するN,N−ジアルキルアミノで置換されていてもよいC−Cアルキル、各アルキルが1ないし4個の炭素原子を有するN,N−ジアルキルアミノで置換されていてもよいC−Cアルコキシ、アルコキシにおいて1ないし4個の炭素原子を有するカルボアルコキシ(例えば、アセトキシ)、アミノ、アシルにおいて1ないし4個の炭素原子を有するアミド(例えば、アセチルアミノ)、シアノ、各アルキルが1ないし4個の炭素原子を有するN,N−ジアルキルアミノ、ハロ、ヒドロキシルおよびニトロからなる群より選択される)
である]
で示される。
【0045】
一般式(iv)で示される代表的なシンナミリデン−アナバセインは、限定されるものではないが、3−(4−アセチルアミノシンナミリデン)アナバセイン、3−(4−ヒドロキシシンナミリデン)アナバセイン、3−(4−メトキシシンナミリデン)アナバセイン、3−(4−ヒドロキシ−2−メトキシシンナミリデン)アナバセイン、3−(2,4−ジメトキシシンナミリデン)アナバセイン、および3−(4−アセトキシシンナミリデン)アナバセインを包含する。一般式(iv)で示される代表的なベンジリデン−アナバセインは、限定されるものではないが、3−(2,4−ジメトキシベンジリデン)アナバセイン(DMXB−AおよびGTS−21としても知られている)、3−(4−ヒドロキシベンジリデン)アナバセイン、3−(4−メトキシベンジリデン)アナバセイン、3−(4−アミノベンジリデン)アナバセイン、3−(4−ヒドロキシ−2−メトキシベンジリデン)アナバセイン、3−(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンジリデン)アナバセイン、3−(4−イソプロポキシベンジリデン)アナバセイン、および(7’−メチル−3−(2,4−ジメトキシベンジリデン))を包含する。式(iv)に対応する化合物は国際公開WO99/10338およびWO2006/133303;米国特許第5741802号;および米国特許第5977144号(その内容を出典明示により本願明細書の一部とする)にさらに詳細に記載されている。
【0046】
もう一つ別の個々の実施態様において、該化合物はヘテロサイクリックエーテル化合物である。この実施態様によれば、例えば、患者に投与される化合物は、式(v):
【化8】

[式中
星印はキラル中心を意味し;nは1、2または3であり;yは1または2であり;RはH、アリルまたはC−C−アルキルであり;RはH、F、ClまたはC−C−アルキルであり;Rは、独立して、H、F、Cl、BrまたはC−C−アルキルより選択される;ただし、(a)RがC−C−アルキルである場合、RはHであり、および(b)yが2である場合、Rは水素である]
で示される。
【0047】
一般式(v)で示される代表的なヘテロサイクリックエーテルは、限定されるものではないが、3−(2−(S)−アゼチジニルメトキシ)ピリジン;3−((1−メチル−2−S)−アゼチジニル)メトキシ)ピリジン;2−メチル−3−(2−(S)−アゼチジニルメトキシ)ピリジン(ABT−089としても知られている);5−クロロ−3−(2−(S)−アゼチジニルメトキシ)ピリジン;5−([(2R)−アゼチジン−2−イル]メトキシ)−2−クロロピリジン(テバニクリンまたはABT−594としても知られている);6−メチル−3−(2−(S)−アゼチジニルメトキシ)ピリジン;3−(2−(S)−アゼチジニルメトキシ)クロロピリジン;3−(2−(R)−アゼチジニルメトキシ)ピリジン;3−((1−メチル−2−(R)−アゼチジニル)メトキシ)ピリジン;3−(2−(S)−アゼチジニルメトキシ)−5−ブロモピリジン;3−((1−メチル−2−(S)−アゼチジニル)メトキシ)−5−ブロモピリジン;および 5,6−ジクロロ−3−(2−(S)−アゼチジニルメトキシ)ピリジン;3−(2−(R)−ピロリジニルメトキシ)ピリジン;3−(2−(S)−ピロリジニルメトキシ)ピリジン;5−クロロ−3−(2−(S)−ピロリジニルメトキシ)ピリジン;2−メチル−3−(2−(S)−ピロリジニルメトキシ)ピリジン;6−メチル−3−(2−(S)−ピロリジニルメトキシ)ピリジン;5−クロロ−3−(2−(R)−ピロリジニルメトキシ)ピリジン;6−メチル−3−(2−(R)−ピロリジニルメトキシ)ピリジン;3-(2−(S)−ピロリジニルメトキシ)−6−クロロピリジン;5−ブロモ−3−(2−(S)−ピロリジニルメトキシ)ピリジン;3−((1−メチル−2−(S)−ピロリジニル)メトキシ)ピリジン;5-クロロ−3−(1−メチル−2−(S)−ピロリジニル)メトキシ)ピリジン;6−メチル−3−((1−メチル−2−(S)−ピロリジニル)メトキシ)ピリジン;5−ブロモ−3−((1−メチル−2−(S)−ピロリジニル)メトキシ)ピリジン;6−クロロ3−((1−メチル−2−(S)−ピロリジニル)メトキシ)ピリジン;5−n−ブチル−3−((1−メチル−2−(S)−ピロリジニル)メトキシ)ピリジン;5−n−プロピル−3−((1−メチル−2−(S)−ピロリジニル)メトキシ)ピリジン;5−メチル−3−(1−メチル−2−(S)−ピロリジニルメトキシ)ピリジン;および 5−エチル−3−(1−メチル−2−(S)−ピロリジニルメトキシ)ピリジン;またはその医薬上許容される塩もしくはプロドラッグを包含する。式(v)に対応する化合物は、国際公開WO99/32480;米国特許第5914328号;および米国特許第5948793号(その内容を出典明示により本願明細書の一部とする)にさらに詳細に記載されている。
【0048】
もう一つ別の個々の実施態様において、該化合物は3-ピリジルオキシアルキルヘテロサイクリックエーテル化合物である。この実施態様によれば、例えば、患者に投与される化合物は、式(vi):
【化9】

[式中
星印はキラル中心を意味し;nは1、2または3より選択される整数であり;Xは酸素または硫黄であり;RはH、アリルまたはC−C−アルキルであり;Rは水素であるか、あるいはnが2の場合、−CHOH、−CHF、−CHCN、−CHOCH、−Br、−Cl、−F、−OH、−CH、-(C-Cアルコキシル)、−OCOCH、およびO−メタンスルホニルからなる群より選択される単一の置換基である;ただし、Rがピロリジニル環の3−位または5−位にて置換されている場合、それはC−Cの基であり;Aは
【化10】

(ここで、RはHまたはC−Cアルキルであり;yは1、2または3である);ただし、a)yが1である場合、Rは(i)ピリジン環の2−位にて塩素およびフッ素より選択される単一の置換基、および(ii)ピリジン環の5−または6−位にて、−CN、−CF、−NO、−CHOH、−CHCN、−NH、-NH-CHO、−NHCO(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)−CO(C−Cアルキル)、−NH−(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)、−COOH、−COO(C−Cアルキル)、−CONH、-CONH(C−Cアルキル)、−CONHベンジル、および−OCO(C−C−アルキル)からなる群より選択される単一の置換基、からなる群より選択され;b)yが2である場合、Rはピリジン環の2,5−、2,6−または5,6−位にて、2−位の置換基が−Br、−Cl、−F、−OH、−(C−Cアルキル)および−(C−Cアルコキシ)からなる群より選択され、ピリジン環の5−または6−位の置換基が−Br、−Cl、−F、−OH、−(C-Cアルキル)、−CN、−CF、−NO、−CHOH、−CHCN、−(C−Cアルコキシ)、−NH、−NH−CHO、−NHCO(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)CO(C−Cアルキル)、−NH−(C-Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)、−COOH、−COO(C−Cアルキル)、−CONH、−CONH−(C−Cアルキル)、−CONHベンジル、および−OCO(C−Cアルキル)からなる群より選択され;およびc)yが3である場合、Rは、ピリジン環の2−位にて、−Br、−Cl、−F、−OH、−C−Cアルキルおよび−C−Cアルコキシからなる群より選択される置換基であり;ピリジン環の5−および6−位にある第2および第3の置換基は、独立して、−Br、−Cl、−F、−OH、−C−Cアルキル、−CN、−CF、−NO、−CHOH、−CHCN、−(C−Cアルコキシ)、−NH、−NH−CHO、−NHCO(C−Cアルキル)、−N(C−Cアルキル)CO(C−Cアルキル)、−NH−(C−Cアルキル)、−N(C−C−アルキル)、−COOH、−COO(C−C−アルキル)、−CONH、−CONH(C−Cアルキル)、−CONHベンジル、および−OCO(C−Cアルキル)からなる群より選択される]
で示される。
【0049】
式(vi)に対応する化合物は、国際公開WO96/040682(その内容を出典明示により本願明細書の一部とする)にさらに詳細に記載されている。
【0050】
もう一つ別の個々の実施態様において、該化合物はN−置換ジアザ二環式化合物である。この実施態様によれば、例えば、患者に投与される化合物は、式(vii):
【化11】

[式中
Aは共有結合、CH、CHCHおよびCHCHCHからなる群より選択され;BはCHおよびCHCHからなる群より選択される;ただし、AがCHCHCHである場合、BはCHである;Yは共有結合、CHおよびCHCHからなる群より選択され;Zは共有結合、CHおよびCHCHからなる群より選択される;ただし、YがCHCHである場合、Zは共有結合であり、さらにZがCHCHである場合、Yは共有結合であり;
【0051】
は:
【化12】

からなる群より選択され;
【0052】
は水素、アルキルおよびハロゲンからなる群より選択され;
【0053】
は水素、アルコキシ、アルキル、アミノ、ハロゲンおよびニトロからなる群より選択され;
【0054】
は水素、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アミノアルキル、アミノカルボニル、アミノカルボニルアルキル、アミノスルホニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、5−テトラゾリル、−NRS(O)、-C(NR)NR、−CHC(NR)NR、−C(NOR)R、−C(NCN)R、-C(NNR)R、-S(O)ORおよび−S(O)からなる群より選択され;
【0055】
、RおよびRは、独立して、水素およびアルキルからなる群より選択され;および
【0056】
は水素、アルコキシカルボニル、アルキル、アミノ、アミノアルキル、アミノカルボニルアルキル、ベンジルオキシカルボニル、シアノアルキル、ジヒドロ−3−ピリジニルカルボニル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、および フェノキシカルボニルからなる群より選択される]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩もしくはプロドラッグである。
【0057】
一般構造式(vii)で示される代表的なヘテロサイクリックエーテルは、限定されるものではないが、(1R,5R)−6−(6−クロロ−3−ピリジニル)−2,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1R,5R)−6−(3−ピリジニル)−2,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(シス)−6−(3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(シス)−6−(6−クロロ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1R,5S)−6−(3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1R,5S)−6−(5−ブロモ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1S,5R)−6−(6−クロロ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1S,5R)−6−(3−ピリジニル)−3,6ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1R,5S)−6−(6−クロロ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1S,5R)−6−(5−エチニル−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1S,5R)−6−(5−ビニル−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;5−[(1S,5R)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−6−イル]ニコチノニトリル;(1S,5R)−6−(5−ブロモ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1S,5R)−6−(6−ブロモ−5−ビニル−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;2−ブロモ−5−[(1R,5S)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−6−イル]ニコチノニトリル;(1R,5S)−6−(5−エチニル−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;5−[(1R,5S)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−6−イル]ニコチノニトリル;(シス)−8−(3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(シス)−8−(6−クロロ−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(1S,6R)(シス)−8−(6−クロロ−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(−)(シス)−8−(6−クロロ−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;5−[(1R,6S)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタ−8−イル]ニコチノニトリル;(1S,6R)−5−[3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタ−8−イル]ニコチノニトリル;(1R,5S)−6−(5,6−ジクロロ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1S,5R)−6−(5,6−ジクロロ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(シス)−6−(5,6−ジクロロ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(シス)−8−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(1R,5S)−6−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1S,5R)−6−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(シス)−6−(6−ブロモ−5−メトキシ−3−ピリジニル)−3,6ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1R,5S)−6−(6−クロロ−5−メチル−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1S,5R)−6−(6−クロロ−5−メチル−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1S,6R)(シス)−8−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(1R,6S)−8−(5−メトキシ−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(シス)−8−(6−クロロ−5−メチル−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(1S,6R)−8−(6−クロロ−5−メチル−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(1R,6S)−8−(6−クロロ−5−メチル−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(1S,6R)−8−(3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(1R,6S)−8(3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(シス)−8−(5,6−ジクロロ−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン(1S,6R)−8−(5,6−ジクロロ−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(1R,6S)−8−(5,6−ジクロロ−3−ピリジニル)−3,8−ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン;(シス)−6−(6−ブロモ−5−メトキシ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1R,5S)−6−(6−ブロモ−5−メトキシ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(1S,5R)−6−(6−ブロモ−5−メトキシ−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;(シス)−6−(5−アジド−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビサイロ[3.2.0]ヘプタン;(1R,5S)−6−(5−アジド−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン;および(1R,5S)−6−(5−アジド−3−ピリジニル)−3,6−ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタンを包含する。式(vii)に対応する化合物は、国際公開WO2004/0186107;および米国特許第6809105(その内容を出典明示により本願明細書の一部とする)にてさらに詳細に記載されている。
【0058】
もう一つ別の個々の実施態様において、該化合物はヘテロサイクリック置換のアミノアザサイクル化合物である。この実施態様によれば、例えば、患者に投与される化合物は、式(viii):
Z−R (viii)
[式中
Zは
【化13】

ここで、RおよびRは、独立して、水素およびアルキルからなる群より選択され;AおよびBは、独立して、不在であるか、あるいは、独立して、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキル、アルキニル、カルボキシ、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシルおよびヒドロキシアルキルからなる群より選択され;Rは、
【化14】

からなる群より選択され;
【0059】
は、水素、アルキルおよびハロゲンからなる群より選択され;Rは水素、アルキル、ハロゲン、ニトロおよび−NR1011からなる群より選択、ここでR10およびR11は、独立して、水素および低級アルキルからなる群より選択され;Rは、水素、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アルキニル、アミノ、アミノアルキル、アミノカルボニル、アミノカルボニルアルキル、アミノスルホニル、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、シアノアルキル、ホルミル、ホルミルアルキル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、メルカプト、メルカプトアルキル、ニトロ、5−テトラゾリル、−NRSO、-C(NR)NR、−CHC(NR)NR、−C(NOR)R、-C(NCN)R、−C(NNR)R、-S(O)ORおよび−S(O)からなる群より選択;およびR、RおよびRは、独立して、水素およびアルキルからなる群より選択される;ただし、Rがピリダジンである場合、Rはアルキルである]
【0060】
式(viii)の代表的化合物は、限定されるものではないが、N−[(3S)−1−(6−クロロ−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N−メチルアミン;(3S)−1−(6−クロロ−3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−[(3S)−1−(6−クロロ−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N,N−ジメチルアミン;(3R)−1−(6−クロロ−3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−[(3R)−1−(6−クロロ−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N−メチルアミン;N−[(3R)−1−(6−クロロ−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N,N−ジメチルアミン;1−(6−クロロ−3−ピリジニル)−3−ピロリジニルアミン;(3S)−1−(3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−メチル−N−[(3S)−1−(3−ピリジニル)ピロリジニル]アミン;1−(3−ピリジニル)−3−ピロリジニルアミン;(3R)−1−[5−(トリフルオロメチル)−3−ピリジニル]ピロリジニルアミン;N−メチル−N−{(3R) 1−[5−(トリフルオロメチル)−3−ピリジニル]ピロリジニル}アミン;(3S)−1−[5−(トリフルオロメチル)−3−ピリジニル]ピロリジニルアミン;N−メチル−N−{(3S)−1−[5−(トリフルオロメチル)−3−ピリジニル]ピロリジニル}アミン;(3R)−1−(6−クロロ−5−クロロ−5−メチル−3−ピリジニル)ピロリジニル アミン;N−[(3R)−1−(6−クロロ−5−メチル−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N−メチルアミン;(3S)−1−(6−クロロ−5−メチル−3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−[(3S)−1−(6−クロロ−5−メチル−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N−メチルアミン;(3S)−1−(5,6−ジクロロ−3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−[(3S)−1−(5,6−ジクロロ−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N−メチルアミン;(3R)−1−(5,6−ジクロロ−3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−[(3R)−1−(5,6−ジクロロ−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N−メチルアミン;(3S)−1−(6−クロロ−5−メトキシ−3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−[(3S)−1−(6−クロロ−5−メトキシ−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N−メチルアミン;(3S)−1−(6−フルオロ−5−メチル−3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−[(3S)−1−(6−フルオロ−5−メチル−3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−[(3S)−1−(6−フルオロ−5−メチル−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N−メチルアミン;(3R)−1−(6−フルオロ−5−メチル−3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−[(3R)−1−(6−フルオロ−5−メチル−3−ピリジニル)ピロリジニル]−N−メチルアミン;(3S)−1−(5−ニトロ−3−ピリジニル) ピロリジニルアミン;N−メチル−N−[(3S)−1−(5−ニトロ−3−ピリジニル)ピロリジニル]アミン;(3R)−1−(5−ニトロ−3−ピリジニル)ピロリジニルアミン;N−メチル−N−[(3R)−1−(5−ニトロ−3−ピリジニル)ピロリジニル]アミン;および(2S,3R)−2−(クロロメチル) 1−(3−ピリジニル)ピロリジニルアミンを包含する。式(viii)に対応する化合物は、国際公開WO00/71534;および米国特許第6833370号(その内容を出典明示により本願明細書の一部とする)にてさらに詳細に記載されている。
【0061】
もう一つ別の個々の実施態様において、該化合物は、インダゾール、ベンゾチオアゾールまたはベンゾイソチアゾールである。この実施態様によれば、例えば、患者に投与される化合物は、式(ix)(a)、(ix)(b)、(ix)(c)または(ix)(d):
【化15】

【0062】
[式中、Aは
【化16】

【0063】
[ここで、縮合環を横切る斜線は、化合物の縮合した化学的部分が残りの部分に結合する結合手を意味し;XはOまたはSであり;RはH、F、Cl、Br、I、OH、CN、ニトロ、NH、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数1ないし4のフッ素化アルキル(例えば、CF)、炭素数3ないし7のシクロアルキル、炭素数4ないし7のシクロアルキルアルキル、炭素数1ないし4のアルコキシ(例えば、OCH)、炭素数3ないし7のシクロアルコキシ、炭素数4ないし7のシクロアルキルアルコキシ、炭素数1ないし4のアルキルチオ(例えば、SCH)、炭素数1ないし4のフッ素化アルコキシ(例えば、OCF、OCHF)、炭素数1ないし4のヒドロキシアルキル、炭素数2ないし4のヒドロキシアルコキシ、炭素数1ないし4のモノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ(各アルキル基は、独立して、1ないし4個の炭素原子を有する)、ArまたはHetであり;RはH、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数3ないし7のシクロアルキル、または炭素数4ないし7のシクロアルキルアルキルであり;RはH、F、Cl、Br、I、OH、CN、ニトロ、NH、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数1ないし4のフッ素化アルキル(例えば、CF)、炭素数3ないし7のシクロアルキル、炭素数4ないし7のシクロアルキルアルキル、炭素数1ないし4のアルコキシ(例えば、OCH)、炭素数3ないし7のシクロアルコキシ、炭素数4ないし7のシクロアルキルアルコキシ、炭素数1ないし4のアルキルチオ(例えば、SCH)、炭素数1ないし4のフッ素化アルコキシ(例えば、OCF、OCHF)、炭素数1ないし4のヒドロキシアルキル、炭素数2ないし4のヒドロキシアルコキシ、炭素数1ないし4のモノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ(各アルキル基は、独立して、1ないし4個の炭素原子を有する)、ArまたはHetであり;RはH、F、Cl、Br、I、OH、CN、ニトロ、NH、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数1ないし4のフッ素化アルキル(例えば、CF)、炭素数3ないし7のシクロアルキル、炭素数4ないし7のシクロアルキルアルキル、炭素数1ないし4のアルコキシ(例えば、OCH)、炭素数3ないし7のシクロアルコキシ、炭素数4ないし7のシクロアルキルアルコキシ、炭素数1ないし4のアルキルチオ(例えば、SCH)、炭素数1ないし4のフッ素化アルコキシ(例えば、OCF、OCHF)、炭素数1ないし4のヒドロキシアルキル、炭素数2ないし4のヒドロキシアルコキシ、炭素数1ないし4のモノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ(各アルキル基は、独立して、1ないし4個の炭素原子を有する)、ArまたはHetであり;RはH、F、Cl、Br、I、OH、CN、ニトロ、NH、炭素数1ないし4のアルキル、炭素数1ないし4のフッ素化アルキル(例えば、CF)、炭素数3ないし7のシクロアルキル、炭素数4ないし7のシクロアルキルアルキル、炭素数1ないし4のアルコキシ(例えば、OCH)、炭素数3ないし7のシクロアルコキシ、炭素数4ないし7のシクロアルキルアルコキシ、炭素数1ないし4のアルキルチオ(例えば、SCH)、炭素数1ないし4のフッ素化アルコキシ(例えば、OCF、OCHF)、炭素数1ないし4のヒドロキシアルキル、炭素数2ないし4のヒドロキシアルコキシ、炭素数1ないし4のモノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ(各アルキル基は、独立して、1ないし4個の炭素原子を有する)、ArまたはHetであり;Arは6ないし10個の炭素原子を有するアリール基であり、かかるアリール基は置換されていなくても、あるいは炭素数1ないし8のアルキル、炭素数1ないし8のアルコキシ、ハロゲン(F、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはCl)、ジアルキルアミノ(アルキル部は、各々、1ないし8個の炭素原子を有する)、アミノ、シアノ、ヒドロキシル、ニトロ、炭素数1ないし8のハロゲン化アルキル、炭素数1ないし8のハロゲン化アルコキシ、炭素数1ないし4のヒドロキシアルキル、炭素数2ないし8のヒドロキシアルコキシ、炭素数3ないし8のアルケニルオキシ、炭素数1ないし8のアルキルチオ、炭素数1ないし8のアルキルスルフィニル、炭素数1ないし8のアルキルスルホニル、炭素数1ないし8のモノアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ(シクロアルキル基は3ないし7個の炭素原子を有し、置換されていてもよい)、アリールオキシ(アリール部分は6ないし10個の炭素原子を含有し(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル)、置換されていてもよく)、アリールチオ(アリール部分は6ないし10個の炭素原子を含有し(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル)、置換されていてもよく)、シクロアルキルオキシ(シクロアルキル基は3ないし7個の炭素原子を有し、置換されていてもよく)、スルホ、スルホニルアミノ、アシルアミド(例えば、アセトアミド)、アシルオキシ(例えば、アセトキシ)またはそれらの組み合わせにより1回または複数回置換されており;Hetは、完全に飽和の、部分的に飽和の、あるいは完全に不飽和の、5ないし10個の環原子を有するヘテロサイクリック基であり、そのうちの少なくとも1つの環原子はN、OまたはS原子であり、置換されていなくても、ハロゲン(F、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはCl)、炭素数6ないし10の、置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル)、炭素数1ないし8のアルキル、炭素数1ないし8のアルコキシ、シアノ、トリフルオロメチル、ニトロ、オキソ、アミノ、炭素数1ないし8のモノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ(各アルキル基は1ないし8個の炭素原子を有する)またはそれらの組み合わせにより1回または複数回置換されている]
で示される化合物またはその医薬上許容される塩である。
【0064】
式(ix)(a)、(ix)(b)、(ix)(c)および(ix)(d)に対応する化合物は、米国特許第7429664号(その内容を出典明示により本願明細書の一部とする)にさらに詳細に記載されている。
【0065】
一般に、式(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、および(ix)(a−d)の化合物について、種々の置換基にて引用されている化学的部分の定義は、その式との関連で上記した特許または出願公開に開示されている定義と同じである。また、立体異性体に関して、化合物の置換基のキラル炭素原子への結合についての式(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)、(vi)、(vii)、(viii)、および(ix)(a−d)(および本願明細書の他の式)に対応する構造中の結合についての実線表示は、これらの基が頁の面よりも下に、または上に(すなわち、
【化17】


)のいずれにあってもよいことを意味する。ラセミ体、ラセミ混合物、個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーを含む、本願明細書に開示の化合物の異性体の形態はすべて意図されるものである。
【0066】
本願明細書に記載の方法に用いることのできる別の化合物は、アナバセイン、すなわち、2−(3−ピリジル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジンであり、特定の海産の虫およびアリ中に天然に存在するトキシンであり(例えば、Kemら、Toxicon、9:23、1971を参照のこと)、哺乳動物のニコチン性受容体の強力な活性化剤である(例えば、Kem、Amer. Zoologist、25、99、1985を参照のこと)。DMAB(3−[4−(ジメチルアミノ)ベンジリデン]−3,4,5,6−テトラヒドロ−2’,3’−ビピリジン)(例えば、米国特許第5602257号およびWO92/15306(その内容を出典明示により本願明細書の一部とする))および(E−3−[2,4−ジメトキシ−ベンジリデン]−アナバシン(GTS−21およびDMXBとしても知られている)(例えば、米国特許第5741802号および米国特許第5977144号(その内容を出典明示により本願明細書の一部とする))などの特定のアナバセインアナログを利用することもできる。利用可能なもう一つ別の化合物はトロピセトロン、すなわち、1αH,5αH−トロパン−3α−イル インドール−3−カルボキシレート(J. E. Macorら、Bioorg. Med. Chem. Lett. 2001、319−321を参照のこと)である。
【0067】
本願明細書に開示の方法に用いることのできるニコチン性アセチルコリン受容体活性を有するさらに別の化合物が、例えば、米国公開特許出願番号第2002/00288809;米国公開特許出願番号第2009/0012127号;米国特許第6303638号;米国特許第6846817号;米国特許第7244745号;および米国特許第7429664号(その内容を出典明示により本願明細書の一部とする)に記載されている。
【0068】
運動失調症および非運動失調性平衡異常の改善
患者における運動失調症および非運動失調性平衡異常、またはその組み合わせより選択される徴候を改善する方法も提供される。一般に、該方法は、上記した化合物などの、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を、該徴候を示す患者に投与することからなる。一の実施態様において、該化合物はABT−089、ABT−894、アルファ−ブンガロトキシン、アナバセイン、ブプロピオン、ブスピロン、BW284c51、シチシン、ジヒドロ−ベータ−エリソイジン、DMXB、DMXB−A(GTS−21)、ジアゾキソン、ドネペジル、エキセロン、フルオキセチン、ガランタミン、フペルジンA、イソプロニクリン(TC−1734/AZD−3480)、ロベリン、メカミラミン、MEM3454、MEM63908、メチルリカコニチン、ネファゾドン、オクタノール/エタノール、OmIA、パロキセチン、セルトラリン、タクリン、TC−2559、TC−5214((S)−(+)−メカミラミン)、TC-5619、テバニクリン(ABT−594)、ベレニクリン、ベンラファキシン、XY4083およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。一のもう一つ別の実施態様において、該化合物はABT−089、ABT−894、ブプロピオン、シチシン、ジアニクリン(SSR591813)、DMXB−A(GTS−21)、イソプロニクリン(TC−1734/AZD−3480)、ロベリン、メカミラミン、メチルリカコニチン、TC−2559、TC−5214((S)−(+)−メカミラミン)、テバニクリン(ABT−594)、ベレニクリンおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。もう一つ別の実施態様において、該化合物はドネペジル、エキセロン、フルオキセチン、ガランタミン、フペルジンA、MEM3454、MEM63908、タクリン、XY4083およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。一の好ましい実施態様において、該化合物はベレニクリンである。
【0069】
一般に、該方法は、第一に、患者における運動失調症または他の徴候のレベルを診断または評価して該徴候の(例えば、その重篤度または強度により)ベースラインのレベルまたは測定値を得る。その後で、患者に、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を、典型的には、該化合物および医薬上許容される担体を含む医薬組成物の形態にて投与する(すなわち、治療する)。
【0070】
該化合物を投与する間またはその後の時点で(例えば、5分、10分、15分、30分、1時間、3時間、6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間または72時間、あるいはそれ以上(例えば、数週間、数ヶ月等)の時点で)、患者の徴候を再び診断または評価する。すなわち、該徴候の2回目の測定またはレベル化を行い;この測定値はさらに処理を行うか否かに応じて(すなわち、化合物をさらに投与するか否かに応じて)中点レベルまたは終点レベルと称されうる。2回目(またはその後)の測定値をベースラインの測定値と比較し、治療薬の効能を評価してもよい。化合物を投与した後に評価した2回目(またはその後)の測定値(中点または終点としての測定値)がベースラインの測定値に対して改善されていることが好ましい。
【0071】
この治療および評価レジメは、所望により何回でも、2回、3回、4回、5回等と繰り返し、その測定値を化合物が投与される前の、さもなければ処理を始める前の元のベースラインの測定値と比較してもよい。評価は患者が治療レジメにある間に(すなわち、患者に化合物を投与している間で、その治療システムにある間に)行うことができ、また患者が治療を停止した後、および/または患者のシステムから該化合物が完全に洗い流された後または排除された後に評価を行ってもよい。
【0072】
種々の尺度で患者の運動失調症または非運動失調性平衡異常の徴候を、および本願明細書の記載の化合物の該徴候の治療についての効果を評価することができる。限定されるものではないが、例えば、運動失調症を評価および評定する尺度(SARA)、フリードリッチ運動失調評定尺度(FARS)、国際共同運動失調評定尺度(ICARS)、PourcherおよびBarbeau運動失調臨床評定尺度、統合された複数のシステムアトロフィー評定尺度(UMSARS)等がある。例えば、SARAはSchmitz-Hubschら、Neurology 66、1717−1720(2006)に記載されている。例えば、FARSはLynchら、Neurology 2006;66:1711−1716に記載されている。例えば、ICARSはTrouillasら、J. Neurological Sciences 1997;145(2):205−211に記載されている。例えば、PourcherおよびBarbeau尺度はLeoneら、Ital. J. of Neurological Sciences 1986;7(1):61−62に記載されている。これらの他の評定尺度のいくつかはHerndon, Handbook of Neurologic Rating Scales(第2版、2006)に記載されている。
【0073】
これらの尺度または測定は、一般に、患者を観察し(例えば、患者の行動または特定の課題の実現に対する努力に気を付けること)、患者が種々の課題を解決するその能力、部分的な能力または無能に基づいて評点を付与することにより行うことができる。これらの尺度はまた、従前の評価からの徴候の改善を標的とするものであってもよく、あるいはその改善に焦点を当てるものであってもよい。特定の実施態様において、評価または尺度に対する総合的または全体の評点を計算する。必要ならば、複数の尺度または試験を試行し、その結果を合わせてもよい。典型的には、ベースラインの評点を2回目、その後の(中点または終点の)評点と比較し、本願明細書に記載の化合物で処理した後の運動失調症または非運動失調性平衡異常の重篤度または頻度の変化を測定する。
【0074】
該化合物が一旦投与されると、処置を終え、化合物のさらなる投与が行われなかったとしても、患者の徴候はベースラインのレベルに対して改善された状態を維持しうる。患者の徴候は、化合物を最後に投与してから、例えば、1日、3日、5日、7日、3週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年またはそれ以上の長期にわたって、改善されたレベルを維持しうる。この点において、本願明細書に記載の方法は、患者の化学的および/または生化学的経路を有益に改変しうると言うことができる。
【0075】
投与および治療方法
一般的には、上記の医薬品が上記の1以上の症状の治療を必要とする患者に投与される場合、該薬剤は、有効量、すなわち、治療効果を得るための量で投与される。
【0076】
一般的には、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物は、該化合物を含む医薬組成物または医薬製剤の形態で患者に投与される。該組成物または製剤は、一般的には、少なくとも1種のニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する医薬成分および医薬上許容される担体(以下にさらに詳述する)を含む。多数のニコチン性アセチルコリン受容体活性化合物の構造および合成は、当業者に周知である。複数の具体的な化合物の記載は上記されており、また特許および他の文献においても見出されうる。これは、例えば、特許および本明細書に記載の公開された出願を含み、その各々は、その全体を出典明示により本明細書の一部とする。
【0077】
患者に投与される医薬品の用量または量は、用途、すなわち、上記の1以上の症状の治療のための有効量であろう。一般的に言えば、患者に投与される薬剤の有効量は、種々の因子、例えば、年齢、体重、性別、食事、投与経路、および患者の健康状態にしたがって変化しうる。特に好ましい用量は、以下にさらに十分に説明されているか、または投与される医薬品(群)のラベル上にて提供されるか、または当業者の範囲内にある。本明細書に記載の化合物の1日量は、適切な医療判断の範囲内で主治医によって決定されることは理解されるであろう。
【0078】
任意の特定の患者に対する明確な治療上有効な量のレベルは、疾患、病理学的障害、または患者の健康状態、および治療を受けている特定の症状およびその重症度;用いられる特定の組成物(群)の活性;患者の年齢、体重、一般的健康、性別および食事;投与時間;投与経路;用いられる特定の組成物(群)の排出速度;治療の継続時間;用いられる特定の組成物(群)と組み合わせてまたは同時に用いられる薬剤を含む、種々の因子に依存するであろうし、同様の因子は、医療分野にて周知である。例えば、組成物(群)の用量を望ましい効果を得るのに必要な量より低レベルで開始し、望ましい効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることは十分当該分野の範囲内である。別例として、用量レベルは、投与される化合物の望ましくない副作用を最小限に抑えるために徐々にまたは急に減少されうる。望ましい場合、有効な1日量は、投与のために複数回量に分割されうる。結果的に、単回量の組成物は、1日量を形成するためにかかる量または分割量を含有しうる。
【0079】
医薬品の投与は、単事象としてまたは治療の時間経過とともに起こりうる。例えば、1種または複数の医薬組成物は、時間ごと(例えば、1時間ごと、2時間ごと、3時間ごと、4時間ごと、5時間ごと、6時間ごとなど)、日ごと、週ごと、隔週ごと、または月ごとに投与されうる。急性状態の治療について、治療の時間経過は、少なくとも数時間または数日であってもよい。ある病態は、数日〜数週間治療を延長できた。例えば、治療は、1週、2週、または3週以上延長できた。より慢性状態について、治療は、数週間〜数ヶ月、1年以上、またはかかる治療を必要とする患者の寿命まで延長できた。あるいは、組成物は、数週間、数年間または患者の寿命にわたって、時間ごと、日ごと、週ごと、隔週ごと、または月ごとに投与されうる。医薬組成物は、空腹時に患者に投与されうるか、または食事と一緒(すなわち、食前、食事中、または食後)に投与されうる。
【0080】
活性剤についての用量レベルは、一般的には、医薬品のラベル上に示されるものである。1種または複数の化合物は、例えば、1日当たり約0.05〜約200mg/体重kgの範囲内、好ましくは、約0.1〜100mg/kg/日の範囲内、最も好ましくは、0.25〜50mg/kg/日の範囲内の適当な用量レベルで医薬上許容される担体、添加剤または賦形剤中に利用されうる。上記するように、望ましい用量は、都合の良いことには、単回量でまたは適当な間隔で投与される分割量、例えば、1日当たり2回、3回、4回またはそれ以上の分割量で存在しうる。
【0081】
理想的には、活性成分は、約0.05μM〜約5μMの範囲内の活性化合物の有効なピーク血漿濃度を得るために投与されるであろう。経口投与は、適当な場合、GI管からの組成物のバイオアベイラビリティならびに投与される組成物の薬物動態に依存するであろう。静脈内使用について、これらの濃度は、例えば、活性成分の約0.05〜10%溶液、所望によりセイライン中溶液の静脈内注射によって達成されうるか、または活性化合物およびその標的に依存する、約1mg〜約5g、好ましくは、活性成分の約5mg〜約500mgを含有するボーラスとして経口投与されうる。望ましい血液レベルは、約0.01mg/kg/時間〜約2.0mg/kg/時間を好ましく提供するために持続注射によってまたは活性成分の約0.05mg/kg〜約15mg/kgを含有する間欠的注射によって維持されうる。同様に、持続(例えば、時間ごとまたは日ごと)経口投与は、望ましいかまたは必要でありうる。療法としての使用について、本発明の1種または複数の組成物が化学物質原料として投与されうることは可能であるが、医薬上許容される担体、賦形剤、または添加剤と組み合わせて存在する、活性成分が医薬製剤として存在することが好ましい。
【0082】
上記するように、上記の化合物は、一般的に、患者への投与前に医薬上許容される担体中に分散される。賦形剤、ビヒクル、補助剤、アジュバント、または希釈剤としても当該分野にて周知である、担体は、典型的には、医薬上不活性である物質であり、適当な濃度または形態を組成物にもたらし、化合物の有効性を低下させない。患者、特にヒトに投与される場合に許容されない副作用、アレルギーまたは他の有害反応をもたらさなければ、担体は、一般的には、「医薬上または薬理学上許容される」ものであると考えられる。
【0083】
医薬上許容される担体の選択はまた、一部、投与経路の機能であろう。一般的には、組成物は、血液循環系がその経路を介して利用可能である限り、任意の投与経路のために処方されうる。例えば、適当な投与経路には、限定されるものではないが、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、動脈内投与、皮下投与、直腸投与、皮下投与、筋肉内投与、眼窩内投与、嚢内投与、腹腔内投与、または胸骨内投与)、局所投与(鼻腔内投与、経皮投与、眼内投与)、嚢内投与、髄腔内投与、腸内投与、経肺投与、リンパ管内投与、腔内(intracavital)投与、膣内投与、経尿道投与、皮内投与、耳投与、乳房内投与、口腔投与、同所投与、気管内投与、病巣内投与、経皮投与、内視鏡的投与、経粘膜投与、舌下投与および腸管投与が含まれる。典型的には、投与経路は経口投与である。
【0084】
本明細書に記載の化合物と組み合わせて用いるための医薬上許容される担体は、当業者に周知であり、多数の因子:用いられる特定の化合物、およびその濃度、安定性および目的バイオアベイラビリティ;対象、その年齢、サイズおよび一般的状態;および投与経路に基づき選択される。適当な非水性の、医薬上許容される極性溶媒には、限定されるものではないが、アルコール(例えば、α−グリセロール型、β−グリセロール型、1,3−ブチレングリセロール、2〜30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールまたは芳香族アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、アミレン水和物、ベンジルアルコール、グリセリン(グリセロール)、グリコール、ヘキシレングリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、またはステアリルアルコール、脂肪アルコール、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、ソルビタン、スクロースおよびコレステロールの脂肪酸エステル);アミド(例えば、ジメチルアセトアミド(DMA)、安息香酸ベンジルDMA、ジメチルホルムアミド、N−(β−ヒドロキシエチル)−ラクタミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピロリジノン、またはポリビニルピロリドン);エステル(例えば、1−メチル−2−ピロリジノン、2−ピロリジノン、酢酸エステル、例えば、モノアセチン、ジアセチン、およびトリアセチン、脂肪族エステルまたは芳香族エステル、例えば、カプリル酸エチルまたはオクタン酸エチル、オレイン酸アルキル、安息香酸ベンジル、酢酸ベンジル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセリンのエステル、例えば、クエン酸または酒石酸モノ、ジ、またはトリグリセリル、安息香酸エチル、酢酸エチル、炭酸エチル、乳酸エチル、オレイン酸エチル、ソルビタンの脂肪酸エステル、脂肪酸由来PEGエステル、モノステアリン酸グリセリル、グリセリドエステル、例えば、モノ、ジ、またはトリグリセリド、脂肪酸エステル、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、脂肪酸由来PEGエステル、例えば、PEG−ヒドロキシオレートおよびPEG−ヒドロキシステアレート、N−メチルピロリジノン、プルロニック60、ポリオキシエチレンソルビトールオレイン酸ポリエステル、例えば、ポリ(エトキシ化)30−60ソルビトールポリ(オレイン酸エステル)2−4、ポリ(オキシエチレン)15−20モノオレイン酸エステル、ポリ(オキシエチレン)15−20モノ12−ヒドロキシステアリン酸エステル、およびポリ(オキシエチレン)15−20モノリシノール酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えば、ポリオキシエチレン−ソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン−ソルビタンモノパルミチン酸エステル、ポリオキシエチレン−ソルビタンものラウリル酸エステル、ポリオキシエチレン−ソルビタンモノステアリン酸エステル、およびICI Americas,Wilmington,DEからのポリソルベート(登録商標)20、40、60または80、ポリビニルピロリドン、アルキレンオキシ修飾脂肪酸エステル、例えば、ポリオキシル40水素化ヒマシ油およびポリオキシエチル化ヒマシ油(例えば、Cremophor(登録商標)EL溶液またはCremophor(登録商標)RH40溶液)、サッカリド脂肪酸エステル(すなわち、モノサッカリド(例えば、ペントース、例えば、リボース、リブロース、アラビノース、キシロース、リキソースおよびキシリロース、ヘキソース、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースおよびソルボース、トリオース、テトロース、ヘプトース、およびオクトース)、ジサッカリド(例えば、スクロース、マルトース、ラクトースおよびトレハロース)またはオリゴサッカリドまたはC−C22脂肪酸(群)(例えば、飽和脂肪酸、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸、ならびに不飽和脂肪酸、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸およびリノール酸)とのその混合物)、またはステロイドエステル);2〜30個の炭素原子を有するアルキル、アリール、または環状エステル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルイソソルビド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル);グリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル);3〜30個の炭素原子を有するケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン);4〜30個の炭素原子を有する脂肪族、環状脂肪族または芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ジオキソラン、ヘキサン、n−デカン、n−ドデカン、n−ヘキサン、スルホラン、テトラメチレンスルホン、テトラメチレンスルホキシド、トルエン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはテトラメチレンスルホキシド);鉱油、植物油、動物油、精油または合成オリジンオイル(例えば、鉱油、例えば、脂肪族またはワックスベース炭化水素、芳香族炭化水素、混合型脂肪族および芳香族ベース炭化水素、および精製パラフィン油、植物油、例えば、アマニ油、キリ油、サフラワー油、大豆油、ヒマシ油、綿実油、ラッカセイ油、菜種油、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、トウモロコシ油、トウモロコシ胚芽油、ゴマ油、杏仁油およびピーナッツ油、ならびにグリセリド、例えば、モノ、ジまたはトリグリセリド、動物油、例えば、魚油、マリンオイル、マッコウクジラ油、肝油、ハリバ肝油(haliver)、スクアレン、スクアラン、およびサメ肝油、オレイン油(oleic oils)、ならびにポリオキシエチル化ヒマシ油);1〜30個の炭素原子および所望により1個以上のハロゲン置換基を有するハロゲン化アルキルまたはアリール;塩化メチレン、モノエタノールアミン;石油ベンジン;トロラミン、オメガ−3 ポリ不飽和脂肪酸(例えば、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、またはドコサヘキサエン酸);12−ヒドロキシステアリン酸のポリグリコールエステルおよびポリエチレングリコール(BASF,Ludwigshafen,Germanyからの、Solutol(登録商標)HS−15);ポリオキシエチレングリセロール;ラウリン酸ナトリウム;オレイン酸ナトリウム;またはソルビタンオレイン酸モノエステルが含まれる。
【0085】
製剤に用いるための他の医薬上許容される溶媒は、当業者に周知であり、The Chemotherapy Source Book(Williams & Wilkens Publishing)、The Handbook of Pharmaceutical Excipients,(American Pharmaceutical Association,Washington,D.C.,およびThe Pharmaceutical Society of Great Britain,London,England,1968)、Modern Pharmaceutics,(G.Bankerら,eds.,3d ed.)(Marcel Dekker,Inc.,New York,New York,1995)、The Pharmacological Basis of Therapeutics,(Goodman & Gilman,McGraw Hill Publishing)、Pharmaceutical Dosage Forms,(H.Liebermanら, eds.)(Marcel Dekker,Inc.,New York,New York,1980)、Remington’s Pharmaceutical Sciences(A.Gennaro, ed.,19th ed.)(Mack Publishing,Easton,PA,1995)、The United States Pharmacopeia 24、The National Formulary 19,(National Publishing,Philadelphia,PA,2000)、およびA.J.Spiegelら,Use of Nonaqueous Solvents in Parenteral Products,Journal of Pharmaceutical Sciences,Vol.52,No.10,pp.917−927(1963)にて特定されている。
【0086】
上記の活性剤を含有する製剤は、固体、半固体、凍結乾燥粉末、または液体剤形、例えば、エアロゾル、カプセル、クリーム、エマルジョン、泡沫、ゲル/ジェル、ローション、軟膏、ペースト、パウダー、ソープ、溶液、スプレー、坐剤、懸濁液、徐放性製剤、錠剤、チンキ剤、経皮パッチ剤などの形を成してもよく、正確な投与量の簡単な投与に適当な単位剤形が好ましい。典型的には、活性剤は、例えば、軟チュアブル錠、硬チュアブル錠、および硬い嚥下可能な錠剤(hard swallowable tablet)を含む、錠剤、ピル形態で投与される;錠剤の種々のサイズおよび形は、一般的には、ダイ(die)およびパンチ(punch)のサイズおよび形を変化させることによって、形成されうる。錠剤のサイズおよび形は、一部、錠剤中の種々の成分および錠剤中の他の成分に相対的なその量に依存しうる。
【実施例】
【0087】
実施例
本発明をさらに説明するために、以下の非限定的実施例を与える。実施例に開示された技術が、本発明者らが本発明の実施に際して十分に機能することを見出したアプローチを意味することは当業者には理解でき、かくして、実施方法の例を構成するものであると考えられる。しかしながら、当業者は、本願の開示を考慮して、開示されている特定の実施例において多くの変更を行い、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、類似のまたは同じ結果を得ることができることは明らかである。
【0088】
目的:脊髄小脳失調(SCA)および脆弱X関連振戦・失調症候群(FXTAS)の小脳性症状の治療における、バレニクリン(Chantix(登録商標))の予備的効果を評価する。
【0089】
背景:バレニクリン(Varenicline)は、ニコチン性42受容体の部分アゴニストであり、SCA(実施例2)およびFXTAS(実施例1)における小脳性症状を改善することができる。
【0090】
設計/方法:脊髄小脳失調(n=6)およびFXTAS(n=1)を患っている大学の運動障害センターの7人の患者を、非盲検でバレニクリン1mgで1日2回治療した。2人の患者は遺伝性SCA3であり、1人の患者は遺伝性SCA6であり、3人の患者は家族歴がない脊髄小脳失調であり、1人の患者は遺伝性FXTASであった。患者らをバレニクリンで4週間治療し、30日目で終えた。彼らを、治療開始前および4週間後に、運動失調の評価およびレーティング(Assessment and Rating of ataxia)(SARA)(Schmitz−Hubsch et al,2006)および臨床全般印象(Clinical Global Impression)(CGI)スケールに関する評価スケールを用いて評価した。運動失調の専門家は、患者のビデオテープをブラインドに評価した。
【0091】
結果:2人の患者(一人はSCA6であり、もう一人は散発性運動失調)は、インフルエンザに似た症状および振戦の増加が見られたために、バレニクリンを中止した。残りの5人の患者において、バレニクリン投与により、平均して、歩行スコアが2.4ポイントおよびトータルSARAスコアが5ポイント改善した。CGIにより測定した場合、バレニクリンの使用により、3人の患者は著しい改善が見られ、2人の患者は歩行において中程度の改善が見られた。バレニクリンにより歩行が著しく改善された2人の患者は喫煙者であり、バレニクリン投与の間、喫煙を50%に減らした。
【0092】
結論/関連:この運動失調患者のブラインドビデオ分析において、バレニクリンにより小脳性症状を効果的に治療されることが示された。さらに、比較試験により、バレニクリンおよび喫煙が小脳性症状に与える影響に関する調査を保証する。
【0093】
実施例1
脆弱X関連振戦・失調症候群(FXTAS)は、脆弱性X精神遅滞1(FMR−1)前突然変異を持つ50歳を超える成人男性に生じる神経変性障害である。FXTASの症状は、企画振戦および姿勢振戦、運動失調、認知低下、パーキンソニズム、および自律神経機能障害を含む(1)。現在、運動失調の効果的な治療はない。本発明者らは、FXTASを患っている男性について、彼の運動失調および平衡異常が、禁煙する目的でバレニクリンを投与し始めた後に、大きく改善されたケースを報告する。バレニクリン投与を停止すると、歩行の運動失調が悪化した。バレニクリンの非盲検再開により、5ヶ月に及ぶ持続的な応答が得られた。
【0094】
患者は、腕の姿勢および企画振戦歴が9年、歩行の運動失調歴が4年である64歳の男性である。彼の症状は、この1年の間に、歩行器を断続的に使用しているにも拘わらず、頻繁に転倒し、日常生活に支障を来すようになった。彼の振戦は、進行性の構音障害および記憶障害を伴い、1年の間に、日常生活の活動が著しく低下した。
【0095】
患者は、患者の孫娘および孫息子(彼の娘が産んだ)が脆弱X症候群(>200のFMR1遺伝子のCGG繰り返し)を有する家系であることが分かっており、それにより同定された。彼は、その後に、FMR1前突然変異(90CGGトリヌクレオチド繰り返し)および公表されている臨床基準(1)に基づいて、FXTASであることが診断された。彼の母方の叔母および彼の母も、前突然変異キャリアであり、彼の4人の兄弟のうち2人も、姿勢振戦および企画振戦および歩行運動失調を患っていた。彼の過去の病歴は、35年前にうつ病の治療をしたが、別の点では要因はないことが明らかとなった。彼は現在のうつ病を否定した。彼は、50年間1日あたり2箱までのタバコを吸っており、毎週1〜2回飲酒しているが、中毒ではなかった。彼は、薬剤の摂取をしていなかった。
【0096】
患者の臨床経過のタイムラインを図1に示す。患者は、バレニクリン1mgを1日2回で開始し、数日間の禁煙を助けた。バレニクリン投与1週間後、彼は、歩行が改善され、歩き回るのに歩行器の助けを必要としないことに気付いた。また、彼の平衡感覚もまた著しく改善された。バレニクリンの副作用は、開始後2日間起こった鮮明な夢だけであった。
【0097】
患者は、南フロリダ大学(USF)運動障害センターにより、バレニクリン開始7週間後に評価された。バイタルサインおよび身体検査は正常であった。彼の神経学的検査では、26/30のミニ・メンタル・ステート検査(MMSE)、軽度の構音障害、軽度の声の震え、腕の重度の姿勢および企画振戦、軽度の硬直、および全手足の中程度のディスメトリアを示した。彼は補助なしに椅子から立ち上がることができ、休みなく歩行器を用いずに6メートルの歩行を5回続けた(合計30メートル)。彼は、2〜3歩のタンデム歩行ができた。脳神経、反射、運動および知覚試験を含む、残りの神経学的試験は、正常の範囲内であった。この患者は、ベックうつ病スケール(BDI)(2)において、スコア5(最大の可能性あるスコア=63の範囲外)であった。脳の磁気共鳴映像(MRI)は、皮質および小脳容積減少を伴うFXTASに典型的な中小脳脚の過剰な強度を示した(図2)。胸部X−線により、新生組織形成の証拠がないことは明らかであった。
【0098】
患者は開始後7週間でバレニクリンを止めた。10日以内に、彼は、残った運動失調および平衡異常が僅かに悪化したことを報告した。3週間以内に、彼は、再び、歩行に際し、歩行器を必要とし、日常生活に支障を来たし始めた。患者は、バレニクリンが切れて病院に戻った。彼のバイタルサインおよび身体検査は正常であり、彼の神経学的検査は、バレニクリン投与状態前に戻っていた。彼は、再び、歩行に補助を必要とし、補助があってさえもタンデム歩行ができなかった。残りの神経学的検査は、姿勢および企画振戦を含め変化がないままであった。BDIスコアは変化なかった。
【0099】
11週で、患者は、再びバレニクリン1mgを1日2回投与し始め、再び、1週間以内に運動失調の改善に気付いた。鮮明な夢のために、バレニクリン容量を12週で1日1mgに減らした。患者は、22週間バレニクリンを摂取し、運動失調の改善が持続した。
【0100】
患者のビデオテープを、運動障害の専門家が、SARA(運動失調の評価およびレーティングのためのスコア)(3)により評価した。1日1回バレニクリン1mg投与でのSARAスコアは、運動失調の機能的段階で「2」(運動失調の症状が存在し、患者に認識されているが、中程度である)、タンデム歩行については「1」(患者は完全なやりかたではないがタンデム歩行ができるか、患者は8ステップ未満、4以上の連続ステップでタンデム歩行ができる)、歩行については「0」(正常)であった。患者がバレニクリンを3週間中止した後のSARAスコアは、運動失調の機能的段階については「3」(運動失調の症状が明らかで有意であった)、タンデム歩行については「3」(患者は、タスクの試みに対して非常に協調的でないように思えた)、歩行については「2」(患者は明確な運動失調を伴って歩行し;歩行に際し断続的な補助を必要とし、または、試験者が、安全のために患者と一緒に歩く必要があった)であった。
【0101】
バレニクリンは、α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体の高選択的部分アゴニストであり、禁煙の目的にFDAにより認可されている。この報告のケースにおいては、FXTASである患者は、バレニクリン投与の間、歩行運動失調および平衡異常の著しい改善を経験した。このケースにおける臨床観察は、バレニクリン使用の間および後で撮ったビデオテープのブラインドレーティングおよび、バレニクリン停止後すぐの運動失調および平衡異常の再出現により指示されている。
【0102】
運動失調および平衡異常の効果的な治療は、現在不足している。ブスピロン、フルオキセチン、ゾルピデムおよびラモトリジンを含む症例シリーズおよび小規模な対照試験により、矛盾のある結果または限定的な効果が得られている(4)。
【0103】
上記したように、近年の報告は、α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体サブタイプの選択的活性化が、アルコール(10)および実験動物においてテトラヒドロカンナビノイド[ΔTHC]−誘導運動失調(11)を改善することを示唆している。α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体の選択的活性化は、中脳辺縁系のドーパミン受容体のシナプス後アップレギュレーション(すなわち、脱感作)を生じさせることが知られている(12、13)。これは耐性および依存に関連し得るが、バレニクリンの抗運動失調効果を説明できそうにない。むしろ、早期の兆候は、他の神経伝達物質様グルタメートが、エタノール誘発運動失調のニコチン−介在減衰をモジュレートできることを示唆している(10)。加えて、α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストRJR−2403の小脳内注射に続く酸化ニコチン(NO)産生の増加は、強力なNO細胞内シグナリングシステムにより介在される交差耐性のメカニズムを介して、ΔTHC−誘発運動失調を改善することができる(11)。バレニクリンのこれらのおよび他の非ドーパミン作用について、さらなる研究が待望されている。
【0104】
患者は、バレニクリン投与開始と同時に禁煙したので、禁煙により歩行が改善されたとすることはもっともらしい。しかしながら、タバコを数週間前に止めているにも拘わらず、バレニクリン投与を止めた場合に運動失調が再発したことから、この説は妥当ではない。患者はアルコールを時々飲むので、バレニクリンが、FXTAS単独により引き起こされたというよりむしろアルコール誘発運動失調を減少させたとする可能性もまた、検討すべきである。
【0105】
バレニクリンの運動失調および平衡異常改善効果のさらなる対照研究が必要とされている。バレニクリンには、自殺行動、うつ病気分および興奮の潜在的なリスクが付随するので注意が必要である。
【0106】
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【0107】
実施例2
脊髄小脳失調(SCA)は、進行性歩行機能不全、平衡異常、手足の調整障害、および会話能力の変化により特徴付けられる、遺伝性神経変性障害の一群である。現在、いずれのSCA障害についても効果的な治療はない。本発明者らは、2人のSCA患者(タイプ3および14)において、禁煙の補助のために認可されている薬剤であるバレニクリン(Chantix(登録商標)、Pfizer、New York,NY)投与の間、運動失調および平衡異常を含む小脳性症状の著しい改善が見られたケースを報告する。
【0108】
最初の患者は、16年の平衡異常、歩行機能不全および構音障害歴を有する63歳の女性であり、症状のマネジメントのために、大学の運動障害センターに訪れた。彼女は、12年前からSCAタイプ3であると遺伝子試験により診断され、3世代にわたりSCAタイプ3であった。彼女の病歴は、2年前に一度心筋梗塞を患っており、冠動脈疾患、高血圧および高脂血症を含む。患者は、タバコを1年に50箱喫煙していた。
【0109】
試験によると、患者のバイタルサインおよび身体検査は正常であった。彼女の神経学的検査では、30/30のミニ・メンタル・ステート検査(MMSE)、軽度の構音障害、軽度から中程度の姿勢振戦および企画振戦、軽度の腕のジストニア、軽度の運動不能および全手足の中程度のディスメトリアを示した。手を素早く入れ替える動きは規則的でなく、途切れがはっきりとしており、踵から脛へのスライドは、両方で重度な異常があった。彼女の歩行は失調性であり、ディスメトリックであり、彼女は、動き回るために歩行器または杖を常に必要とした。靴下・手袋型分布で、軽いおよび強い接触に対する感覚検査で軽微な疾患があったが、彼女の脳神経および運動性検査は正常であった。下肢における緊張増加および過反射があった。脳の磁気共鳴映像(MRI)は、小脳の著しい萎縮を示した。
【0110】
評価後、患者は、1日2回のバレニクリン0.5mg投与を禁煙のために開始した。1週間後に、バレニクリンの投与量を、1日2回1mgに増やした。バレニクリン投与開始10日後、患者は、奥行き感覚が改善されたこと、および歩行がより容易かつ安定に思えることを報告した。最初のバレニクリン投与から21日後、患者は、歩行器ではなく杖を用いて3ブロック歩くことができ、平衡感覚も著しく改善された。しかしながら、バレニクリンの投与の間タバコは止めてなかった。
【0111】
患者は、所定の経過観察のために、バレニクリン開始の1ヶ月後に大学の運動障害センターに戻った。彼女の歩行機能不全および運動不能は著しく改善されており、彼女は、時折壁に手を掛けるのみで安定に歩くことができた。手足のディスメトリア、手を素早く入れ替える動き、指鼻試験および踵脛スライド試験もまた、著しく改善された。患者のビデオテープを、運動失調の専門家が、SARA(運動失調の評価およびレーティングのスケール)(1)を用いて評価した。患者にバレニクリン1mgを1日2回投与する前のトータルSARAスコアは29であったが、投与1ヶ月後のスコアは13であった。
【0112】
2人目の患者は、神経学的評価のために大学の運動障害センターを訪れた51歳の女性であった。1年の平衡異常、協調運動失調、および言語障害の後、彼女は遺伝子試験を受け、染色体19q13.4−qterのSCA14遺伝子座に対応する、PRKCG遺伝子における突然変異が明らかになった。SCAに関する遺伝子試験を受けていないが、患者の兄弟および父は、協調運動失調およびぎこちない動作の症状を示し、これは以前の交通事故に起因する。患者は、ドイツ人およびオランダ人の血統に属する。彼女はタバコを吸わず、薬剤やアルコールの使用もなく、アレルギーもなかった。彼女の病歴は、重度の高血圧であり、325mgのバルサルタン(Diovan)で治療していた。彼女の小脳性症状を治療するための以前の薬は、レボドパ/カルビドパ(Sinemet)、ロラゼパム(Ativan)、クロナゼパム(Klonopin)、およびゾルピデム(Ambien)を含むが、効果はなかった。
【0113】
評価により、患者のバイタルサインおよび身体検査は正常であった。彼女の神経学的検査では、30/30のミニ・メンタル・ステート検査、軽度の構音障害、軽度の姿勢振戦および企画振戦、および全手足で中程度のディスメトリアを含む。彼女の歩行は、中程度から重度の運動失調であり、彼女は、歩き回るのに常に歩行器または杖を必要とした。患者は、サポート有りでタンデム歩行ができた。下肢に緊張増加および過反射が見られ、右足に時折ミオクローヌスが見られた。脳の磁気共鳴映像(MRI)は、小脳萎縮を示した。
【0114】
患者は、これが認可されていない医薬としての使用であることを理解した上で、0.5mgのバレニクリン(Chantix(登録商標))を1日1回で開始し、1週間後に1日2回1mgにまで漸増した。彼女は、医薬の投与後7日間吐き気を訴えたが、バレニクリン投与開始8日後には、歩行、協調、会話および平衡感覚の著しい改善を報告した。患者は、バレニクリン投与開始後3週間で大学の運動障害センターに戻った。彼女の歩行機能障害は著しく改善され、彼女は補助なしに歩くことができた。会話、ディスメトリアおよび指鼻試験および踵脛スライドを含む他の症状もまた改善した。患者を、SARAを用いて運動障害の専門家が評価した。患者のトータルSARAスコアは、1mgのバレニクリンを1日2回投与する前は22であったのに対し、バレニクリン投与開始後3週間のスコアは8であった。患者は、持続的な効果を得、8週間バレニクリンを続けたが、自身の経済的な理由からこれを中止した。彼女は、バレニクリン中止後4週間で再び検査を受け、彼女の神経学的検査は、バレニクリン投与前の状態に戻っていた。
【0115】
バレニクリンは、α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体の高選択的部分アゴニストであり、α7ニコチン性アセチルコリン受容体(2)の完全アゴニストである。これらのケースにおけるバレニクリンの有益な効果の正確な作用メカニズムは知られていない。ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットが、ヒトのモジュレーティング小脳活性に関与していることが仮定されている(3)。ニコチン性アセチルコリン受容体α3、α4、α6およびα7は、ヒトの剖検標本において、プルキンエ細胞および顆粒層に局在し、これらの受容体が小脳の神経末端に存在することを示唆している(3)。さらに、α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体サブタイプの選択的活性化は、アルコール(4)および動物におけるテトラヒドロカンナビノイド[ΔTHC]−誘発運動失調(5)を改善する。
【0116】
運動失調の効果的な治療はなく、抗不安剤、抗うつ剤、および抗癲癇剤を含むいくつかの医薬の症例シリーズおよび小規模な対照試験により、効果が限定的であるか、矛盾することが示されている(6)。かくして、バレニクリンの運動失調および平衡異常に対する効果の対照試験が必要とされている。バレニクリンの副作用は、吐き気、睡眠障害、便秘、鼓腸および嘔吐を含む。バレニクリンには、その使用に伴い自殺行動の報告があるので、処方には注意が必要である。
【0117】
1.Schmitz−Hubsch T,du Montcel ST,BalikoLら、「Scale for the assessment and rating of ataxia:development of a new clinical scale」、Neurology.2006 Jun 13;66(11):1717−20
2.Mihalak KB,Carroll FI,Luetje CW,Varenicline is a partial agonist at alpha4beta2 and a full agonist at alpha7 neuronal nicotinic receptors」、Mol.Pharmacol.2006;70(3):801−805
3.Graham A,Court JA,Martin−RuizCMら、「Immunohistochemical localisation of nicotinic acetylcholine receptor subunits in human cerebellum」、Neuroscience 2002;113(3):493−507
4.Al−Rejaie S,Dar MS、「Behavioral interaction between nicotine and ethanol:possible modulation by mouse cerebellar glutamate」、Alcohol Clin.Exp.Res.2006;30(7):1223−1233
5.Smith AD,Dar MS,Mouse cerebellar nicotinic−cholinergic receptor modulation of Delta9−THC ataxia:role of the alpha4beta2 subtype」、Brain Res.2006;1115(1):16−25
6.Chen WJ,Edwards RB,Romero RDら、「Long−term nicotine exposure reduces Purkinje cell number in the adult rat cerebellar vermis」、Neurotoxicol Teratol 2003;25(3):329−334

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおける疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常を治療する方法であって、ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を該ヒトに投与することを含む、方法。
【請求項2】
ヒトにおける疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常を治療する方法であって、
ヒトにおける運動失調症または非運動失調性平衡異常のベースライン値を測定し、その後でニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を該ヒトに投与し;および
該化合物を投与する間に、あるいはその後でヒトにおける運動失調症または非運動失調性平衡異常の2回目の値を測定し、2回目の値がベースライン値に対して改善されていることが運動失調症または非運動失調性平衡異常の治療を示すところの、方法。
【請求項3】
ヒトにおける疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常を治療する方法であって、
ヒトにおける運動失調症または非運動失調性平衡異常のベースライン値を測定し、その後でニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を該ヒトに投与し;および
該化合物の投与を終了した少なくとも1カ月後に該ヒトにおける運動失調症または非運動失調性平衡異常の2回目の値を測定し;
2回目の値がベースライン値に対して改善されているところの、方法。
【請求項4】
ヒトにおける疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常を治療する方法であって、
ニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物を該ヒトに投与し、該化合物の投与が終了した後に測定した運動失調症または非運動失調性平衡異常の2回目の値が化合物の投与前に測定された運動失調症または非運動失調性平衡異常のベースライン値に対して改善されているところの、方法。
【請求項5】
化合物が禁煙用剤である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
化合物が(i)アリール縮合アザポリサイクリック化合物;(ii)ピリドピラノアゼピン;(iii)アリール置換のオレフィン性アミン化合物;(iv)ベンジリデン−またはシンナミリデン−アナバセイン化合物;(v)ヘテロサイクリックエーテル化合物;(vi)3−ピリジルオキシアルキルヘテロサイクリックエーテル化合物;(vii)N−置換のジアザビサイクリック化合物;(viii)ヘテロサイクリック置換のアミノアザサイクル化合物;および(ix)インダゾール、ベンゾチオアゾールまたはベンゾイソチアゾール化合物からなる群より選択される、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
化合物が、ABT−089、ABT−894、アルファ−ブンガロトキシン、アナバセイン、ブプロピオン、ブスピロン、BW284c51、シチシン、ジアニクリン(SSR591813)、ジヒドロ−ベータ−エリソイジン、DMXB、DMXB−A(GTS−21)、ジアゾキソン、ドネペジル、エキセロン、フルオキセチン、ガランタミン、フペルジンA、イソプロニクリン(TC−1734/AZD−3480)、ロベリン、メカミラミン、MEM3454、MEM63908、メチルライカコニチン、ネファゾドン、オクタノール/エタノール、OmIA、パロキセチン、セルトラリン、タクリン、TC−2559、TC−5214((S)−(+)−メカミラミン)、TC−5619、テバニクリン(ABT−594)、バレニクリン、ベンラファキシン、XY4083、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
化合物が、ABT−089、ABT−894、ブプロピオン、シチシン、ジアニクリン(SSR591813)、DMXB−A(GTS−21)、イソプロニクリン(TC−1734/AZD−3480)、ロベリン、メカミラミン、メチルライカコニチン、TC−2559、TC−5214((S)−(+)−メカミラミン)、テバニクリン(ABT−594)、バレニクリン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
化合物が、ドネペジル、エキセロン、フルオキセチン、ガランタミン、フペルジンA、MEM3454、MEM63908、タクリン、XY4083、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
化合物がバレニクリンである、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常の治療用医薬の製造におけるニコチン性アセチルコリン受容体活性を有する化合物の使用。
【請求項12】
化合物が、ABT−089、ABT−894、アルファ−ブンガロトキシン、アナバセイン、ブプロピオン、ブスピロン、BW284c51、シチシン、ジアニクリン(SSR591813)、ジヒドロ−ベータ−エリソイジン、DMXB、DMXB−A(GTS−21)、ジアゾキソン、ドネペジル、エキセロン、フルオキセチン、ガランタミン、フペルジンA、イソプロニクリン(TC−1734/AZD−3480)、ロベリン、メカミラミン、MEM3454、MEM63908、メチルライカコニチン、ネファゾドン、オクタノール/エタノール、OmIA、パロキセチン、セルトラリン、タクリン、TC−2559、TC−5214((S)−(+)−メカミラミン)、TC−5619、テバニクリン(ABT−594)、バレニクリン、ベンラファキシン、XY4083、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11記載の使用。
【請求項13】
化合物が、ABT−089、ABT−894、ブプロピオン、シチシン、ジアニクリン(SSR591813)、DMXB−A(GTS−21)、イソプロニクリン(TC−1734/AZD−3480)、ロベリン、メカミラミン、メチルライカコニチン、TC−2559、TC−5214((S)−(+)−メカミラミン)、テバニクリン(ABT−594)、バレニクリン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11記載の使用。
【請求項14】
化合物が、ドネペジル、エキセロン、フルオキセチン、ガランタミン、フペルジンA、MEM3454、MEM63908、タクリン、XY4083、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11記載の使用。
【請求項15】
化合物がバレニクリンである、請求項11記載の使用。
【請求項16】
疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常の治療的処理にて用いるための、(i)アリール縮合アザポリサイクリック化合物;(ii)ピリドピラノアゼピン;(iii)アリール置換のオレフィン性アミン化合物;(iv)ベンジリデン−またはシンナミリデン−アナバセイン化合物;(v)ヘテロサイクリックエーテル化合物;(vi)3−ピリジルオキシアルキルヘテロサイクリックエーテル化合物;(vii)N−置換のジアザビサイクリック化合物;(viii)ヘテロサイクリック置換のアミノアザサイクル化合物;または(ix)インダゾール、ベンゾチオアゾールまたはベンゾイソチアゾール化合物。
【請求項17】
疾患誘発性運動失調症または非運動失調性平衡異常の治療的処理にて用いるためのアリール縮合アザポリサイクリック化合物。
【請求項18】
アリール縮合アザポリサイクリック化合物が、式(i):
【化1】

[式中
は水素、(C−C)アルキル、コンジュゲートしていない(C−C)アルケニル、ベンジル、XC(=O)R13または−CHCH−O−(C−C)アルキルであり;
およびRは、独立して、水素、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、ハロ、シアノ、−SOq(C−C)アルキル(qは0、1または2である)、(C−C)アルキルアミノ−、[(C−C)アルキル]アミノ−、−CO、−CONR、−SONR、−C(=O)R13、−XC(=O)R13、アリール−(C−C)アルキル−またはアリール−(C−C)アルキル−O−(ここで、該アリールはフェニルまたはナフチルより選択される)、ヘテロアリール−(C−C)アルキル−またはヘテロアリール−(C−C)アルキル−O−(ここで、該ヘテロアリールは酸素、窒素および硫黄より選択される1ないし4個のヘテロ原子を含有する5ないし7員の芳香族環より選択される)、およびX(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−からなる群より選択され、ここで、Xは不在であるか、またはXは(C−C)アルキルアミノ−または[(C−C)アルキル]アミノ−であり、該X(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−の(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−部分は少なくとも1個の炭素原子を含有し、該(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−部分の1ないし3個の炭素原子は酸素、窒素または硫黄原子により置換されていてもよい、ただしこの2個のヘテロ原子は少なくとも2個の炭素原子で分離されていなければならず、該(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−のアルキル部分は2ないし7個のフッ素原子で置換されていてもよく、該アリール−(C−C)アルキル−および該ヘテロアリール−(C−C)アルキル−の各アルキル部分の炭素原子のうち1個は酸素、窒素または硫黄原子により置換されていてもよく、上記したアリールおよびヘテロアリール基の各々は、0ないし7個のフッ素原子により置換されていてもよい(C−C)アルキル、2ないし7個のフッ素原子により置換されていてもよい(C−C)アルコキシ、ハロ(例えば、クロロ、フルオロ、ブロモまたはヨード)、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、(C−C)−、[(C−C)アルキル]アミノ−、−CO、−CONR、−SONR、−C(=O)R13および−XC(=O)R13より独立して選択される、1個または複数の置換基、好ましくは0ないし2個の置換基で置換されていてもよい;あるいはRおよびRはその結合する炭素と一緒になって、飽和または不飽和であってもよい、4ないし7員の単環式環または10ないし14員の二環式炭素環を形成し、ここで該単環式環の1ないし3個の縮合していない炭素原子、および式(i)のベンゾ環の一部ではない、該二環式環の1ないし5個の炭素原子は、任意に独立して、窒素、酸素または硫黄により置換されていてもよく、該単環式環および二環式環は、単環式環の場合、1個または複数の置換基、好ましくは0ないし2個の置換基で置換されていてもよく、二環式環の場合、0ないし3個の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、独立して、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル−より選択され、炭素原子の総数は6個を越えることはなく、アルキル部分のいずれも1ないし7個のフッ素原子;ニトロ、オキソ、シアノ、ハロ、(C−C)アルケニル、(C−C)アルキニル、ヒドロキシ、アミノ、(C−C)アルキルアミノ−、[(C−C)アルキル]アミノ−、−CO、−CONR、−SONR、-C(=O)R13、および−XC(=O)R13で置換されていてもよく;
、R、R、R、RおよびR13の各々は、独立して、水素および(C−C)アルキルからなる群より選択されるか、あるいはRおよびR、またはRおよびRはその結合する窒素となってピロリジン、ピペリジン、モルホリン、アゼチジン、ピペラジン、−N−(C−C)アルキルピペラジンまたはチオモルホリン環を形成し、ここで環硫黄はスルホキシドまたはスルホンで置換されていてもよく;Xは、各々、独立して、(C−C)アルキレンである:ただし(a)R、RおよびRの少なくとも1個は水素以外でなければならず、(b)RおよびRが水素である場合、Rはメチルまたは水素以外の基である]
で示される化合物またはその化合物の医薬上許容される塩である、請求項17記載の使用。
【請求項19】
アリール縮合アザポリサイクリック化合物がバレニクリンである、請求項17記載の使用。
【請求項20】
脊髄小脳失調症、フリードライヒ失調症、および脆弱性X/振戦運動失調症候群より選択される疾患より由来の運動失調症を治療するための、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
脊髄小脳失調症、フリードライヒ失調症、および脆弱性X/振戦運動失調症候群より選択される疾患より由来の非運動失調性平衡異常を治療するための、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
脊髄小脳失調症または脆弱性X/振戦運動失調症候群より由来の運動失調症を治療するための、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
脊髄小脳失調症または脆弱性X/振戦運動失調症候群より由来の非運動失調性平衡異常を治療するための、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−516489(P2011−516489A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503096(P2011−503096)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2009/038948
【国際公開番号】WO2009/146031
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510261131)ユニバーシティ・オブ・サウス・フロリダ (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTH FLORIDA
【Fターム(参考)】