説明

瘢痕組織形成を軽減するための併用薬物治療

【課題】外科的処置、外傷、または創傷の後に続く、瘢痕組織および/または癒着の形成を防ぐためのデバイスおよび方法の提供。
【解決手段】創傷または外科的部位の治癒の間の瘢痕組織および/または癒着の形成を防ぐために、細胞増殖抑制性抗増殖薬が、単独でまたはその他の薬物との併用において内部体組織間に配置される、様々なデバイスおよび方法。この投与を達成するための特定のデバイスは、付着されるシロリムスなどの抗増殖薬を有する永久インプラントまたは生体分解性材料を含むが、それらに限定されない。これらの抗増殖薬は、抗血小板剤、抗血栓剤、または抗凝固剤を含むがそれらに限定されないその他の薬物と併用され得る。さらに、瘢痕組織および/または癒着または吻合部位における癒着形成を軽減するための方法も企図する。特に、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、末期腎疾患を有する患者における動静脈シャント吻合に投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、外科的処置、外傷、または創傷の後に続く、瘢痕組織および/または癒着の形成を防ぐためのデバイスおよび方法に関する。一つの態様において、本発明は、抗増殖薬を含む医療デバイスに関する。別の態様において、本発明は、抗血小板薬(すなわち、例えば、GPIIb/IIIa阻害剤)を含むデバイスおよび方法に関した。別の態様において、本発明は、抗血小板薬、抗血栓薬、または抗凝固薬を含むがそれらに限定されないその他の薬物との併用において細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む、瘢痕組織および/または癒着形成を防ぐ医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
手術後の瘢痕組織および/または癒着形成ならびに血管狭窄は、腹部、神経、血管、またはその他の型の外科手術の後に続く、主要な問題である。例えば、吻合の部位における血管の狭窄は、その場所における瘢痕組織および/または癒着の不要な増殖によって、しばしば引き起こされる。
【0003】
過剰な手術後の瘢痕組織および/または癒着形成ならびに血管狭窄は、古典的開口および関節鏡視下/腹腔鏡下処置の両方を使用する腹部、神経、脊髄、血管、胸部、またはその他の型の外科手術の後に続く、主要な問題である。
【0004】
瘢痕組織および/または癒着は、損傷の自然な治癒プロセスの一部として形成し、体が、完全で即座の創傷治癒応答を通常は開始し、再構築され修復される組織を引き起こす。しかしながら、特定の例において、この正常な治癒プロセスは、過剰な瘢痕組織および/または癒着を引き起こし得る。
【0005】
ある種の外科手術または損傷の後に続いて、過剰な瘢痕組織および/または癒着産生は、外科手術および治癒の結果に影響する主要な問題である。例えば、緑内障手術において、いくつかの抗瘢痕化および/または癒着処方計画が、外科手術結果を改善するために現在使用されているが、重度の合併症により、臨床的には限定的に有用である。外科手術の帰結に負の影響を与える過剰な瘢痕組織および/または癒着産生のその他の例は、癒着溶解手術、血管形成術、脊髄手術、血管手術、および心臓手術を含む。
【0006】
当技術の現在の状況は、低医療リスクおよび高治療的有益を有する薬物を使用する、瘢痕組織および/または癒着の形成を顕著に軽減するための外科手術後および外傷後処理に欠ける。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、外科的処置、外傷、または創傷の後に続く、瘢痕組織および/または癒着の形成を防ぐためのデバイスおよび方法に関する。一つの態様において、本発明は、抗増殖薬を含む医療デバイスに関する。別の態様において、本発明は、抗血小板薬(すなわち、例えば、GPIIb/IIIa阻害剤)を含むデバイスおよび方法に関した。別の態様において、本発明は、抗血小板薬、抗血栓薬、または抗凝固薬を含むがそれらに限定されないその他の薬物との併用において細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む、瘢痕組織および/または癒着形成を防ぐ医療デバイスに関する。
【0008】
本発明は、GPIIb/IIIa阻害剤および抗増殖剤を含む組成物および方法に限定されない。本発明は、GPIIb/IIIa阻害剤が、唯一の薬学的活性化合物であり得ると考えられるような、本明細書において記載されるすべてのものに類似の態様も企図する。一つの態様において、本発明は、医療デバイスに付着される組成物を企図し、該組成物は、GPIIb/IIIa阻害剤を含む。別の態様において、本発明は、フィブリン鞘形成、瘢痕組織および/もしくは癒着形成を引き起こすか、または発生するリスクのある外科的処置を受けているかまたは外科的処置後の患者に、GPIIb/IIIa阻害剤を投与する段階を含む、フィブリン鞘形成、瘢痕組織および/もしくは癒着形成を阻害または軽減する方法を企図する。
【0009】
本発明の一つの態様は、ポリマー医療デバイスに付着される組成物を企図し、該組成物は、GPIIb/IIIa阻害剤を含む。一つの態様において、組成物は、ラパマイシンをさらに含む。一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される。一つの態様において、組成物は、抗トロンビン剤をさらに含む。別の態様において、組成物は、抗凝固剤をさらに含む。さらに別の態様において、組成物は、制御放出薬物溶離を提供する。一つの態様において、組成物は、該ポリマー医療デバイスに共有結合する親水性ポリマーを含む。一つの態様において、該ポリマー医療デバイスは、シリコン、ポリウレタン、および塩化ポリビニルを含むがそれらに限定されない群より選択されるポリマーを含む。一つの態様において、医療デバイスは、透析/アフェレーシスカテーテル、透析カテーテル、腹膜透析カテーテル、固定チップ透析カテーテルを含む群より選択される。別の態様において、医療デバイスは、合成血管移植片を含む。さらに別の態様において、医療デバイスは、抗癒着膜バリアを含む。一つの態様において、膜バリアは、酸化再生セルロースを含む。
【0010】
本発明の一つの態様は、GPIIb/IIIa阻害剤を含む組成物を企図する。一つの態様において、組成物は、ラパマイシンをさらに含む。一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される。一つの態様において、組成物は、抗トロンビン薬をさらに含む。一つの態様において、抗トロンビン薬は、ビバリルジンを含む。一つの態様において、組成物は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、組成物は、ポリマーに基づく媒質をさらに含む。一つの態様において、媒質は、制御放出薬物溶離を提供する。一つの態様において、該媒質のポリマーは、ポリビニルピロリドン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアセトアミド)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレン コ-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸n-ブチル)、およびポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)を含む群より選択される。一つの態様において、媒質は、医療デバイスに付着される。一つの態様において、医療デバイスは、透析/アフェレーシスカテーテル、透析カテーテル、腹膜透析カテーテル、固定チップ透析カテーテルを含む群より選択される。
【0011】
本発明の一つの態様は、PEAポリマーを含む組成物を企図し、該ポリマーは、GPIIb/IIIa阻害剤を含む。一つの態様において、組成物は、ラパマイシンをさらに含む。一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される。一つの態様において、組成物は、抗トロンビン薬をさらに含む。一つの態様において、抗トロンビン薬は、ビバリルジンを含む。一つの態様において、組成物は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、ポリマーは、リジンを含む。別の態様において、ポリマーは、ロイシンを含む。別の態様において、ポリマーは、制御放出薬物溶離を提供する。一つの態様において、ポリマーは、血管ラップに付着される。一つの態様において、ポリマーは、医療デバイスに付着される。一つの態様において、医療デバイスは、透析/アフェレーシスカテーテル、透析カテーテル、腹膜透析カテーテル、固定チップ透析カテーテルを含む群より選択される。
【0012】
本発明の別の態様は、a)i)瘢痕組織および/または癒着形成を引き起こす外科的処置を受けているかまたは外科的処置後の患者、ii)GPIIb/IIIa阻害剤を含む組成物を提供する段階;およびb)該瘢痕組織および/または癒着形成が軽減されるような条件下で、該組成物を該患者に投与する段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、組成物は、ラパマイシンをさらに含む。一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される。一つの態様において、外科的処置は、腎臓移植および吻合を含む群より選択される。一つの態様において、投与する段階は、膜バリアを含む。別の態様において、投与する段階は、水性溶液を含み、該溶液は、該患者との接触の際に重合する。
【0013】
本発明の別の態様は、a)i)瘢痕組織および/または癒着形成を引き起こす外科的処置を受けているかまたは外科的処置後の患者、ii)GPIIb/IIIa阻害剤を含むPEAポリマーを含む組成物を提供する段階;およびb)該瘢痕組織および/または癒着形成が軽減されるような条件下で、該組成物を該患者に投与する段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、ポリマーは、ラパマイシンをさらに含む。一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される。一つの態様において、外科的処置は、腎臓移植および吻合を含む群より選択される。一つの態様において、組成物は、抗トロンビン薬をさらに含む。一つの態様において、抗トロンビン薬は、ビバリルジンを含む。一つの態様において、組成物は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、ポリマーは、リジンを含む。別の態様において、ポリマーは、ロイシンを含む。別の態様において、ポリマーは、制御放出薬物溶離を提供する。一つの態様において、ポリマーは、血管ラップに付着される。一つの態様において、ポリマーは、医療デバイスに付着される。一つの態様において、医療デバイスは、透析/アフェレーシスカテーテル、透析カテーテル、腹膜透析カテーテル、固定チップ透析カテーテルを含む群より選択される。
【0014】
本発明の別の態様は、a)i)瘢痕組織および/または癒着形成のリスクを有する外科的処置を受けているかまたは外科的処置後の患者、ii)GPIIb/IIIa阻害剤を含む組成物を提供する段階;およびb)該瘢痕組織および/または癒着形成が軽減されるような条件下で、該組成物を該患者に投与する段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、組成物は、ラパマイシンをさらに含む。一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される。一つの態様において、外科的処置は、腎臓移植および吻合を含む群より選択される。一つの態様において、投与する段階は、膜バリアを含む。別の態様において、投与する段階は、水性溶液を含み、該溶液は、該患者との接触の際に重合する。
【0015】
本発明の別の態様は、a)i)瘢痕組織および/または癒着形成のリスクを有する外科的処置を受けているかまたは外科的処置後の患者、ii)GPIIb/IIIa阻害剤を含むPEAポリマーを含む組成物を提供する段階;およびb)該瘢痕組織および/または癒着形成が軽減されるような条件下で、該組成物を該患者に投与する段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、ポリマーは、ラパマイシンをさらに含む。一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される。一つの態様において、外科的処置は、腎臓移植および吻合を含む群より選択される。一つの態様において、組成物は、抗トロンビン薬をさらに含む。一つの態様において、抗トロンビン薬は、ビバリルジンを含む。一つの態様において、組成物は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、ポリマーは、リジンを含む。別の態様において、ポリマーは、ロイシンを含む。別の態様において、ポリマーは、制御放出薬物溶離を提供する。一つの態様において、ポリマーは、血管ラップに付着される。一つの態様において、ポリマーは、医療デバイスに付着される。一つの態様において、医療デバイスは、透析/アフェレーシスカテーテル、透析カテーテル、腹膜透析カテーテル、固定チップ透析カテーテルを含む群より選択される。
【0016】
本発明の別の態様は、a)i)フィブリン鞘形成を引き起こす透析カテーテル配置処置を受けている患者;ii)GPIIb/IIIa阻害剤を含み、該透析処置を行なうために該患者に配置される透析カテーテルに付着される組成物を提供する段階;およびb)フィブリン鞘形成が軽減されるような条件下で、該カテーテルを該患者に配置する段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、組成物は、ラパマイシンをさらに含む。一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される。一つの態様において、カテーテルは、腹膜カテーテルおよび大腿カテーテルを含む群より選択される。一つの態様において、カテーテルは、非接着性管腔表面を含む。
【0017】
本発明の別の態様は、a)i)フィブリン鞘形成のリスクを有する透析カテーテル配置処置を受けている患者;ii)GPIIb/IIIa阻害剤を含み、該透析処置を行なうために該患者に配置される透析カテーテルに付着される組成物を提供する段階;およびb)フィブリン鞘形成が軽減されるような条件下で、該カテーテルを該患者に配置する段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、組成物は、ラパマイシンをさらに含む。一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される。一つの態様において、カテーテルは、腹膜カテーテルおよび大腿カテーテルを含む群より選択される。一つの態様において、カテーテルは、非接着性管腔表面を含む。
【0018】
本発明の別の態様は、i)シロリムスおよびシロリムスの類似体および官能性ポリマーを含む第一の媒質、ならびにii)小さな架橋剤分子を含む第二の媒質、を含むヒドロゲルに基づく生体接着剤のための組成物を企図する。一つの態様において、架橋剤分子は、エトキシル化グリセロール、イノシトール、トリメチロールプロパン、コハク酸エステル塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩/2-ヒドロキシ酪酸塩、およびグリコール酸塩/4-ヒドロキシプロリンを含む群より選択される。別の態様において、官能性ポリマーは、ポリエチレンオキシドおよびポリエチレングリコールを含む群より選択される。一つの態様において、第一の媒質は、抗血小板薬、抗トロンビン薬、抗凝固薬、または抗炎症薬を含む群より選択される補足的または相補的薬物をさらに含む。
【0019】
本発明の別の態様は、a)i)外科的部位;およびii)I)シロリムスおよびシロリムスの類似体および官能性ポリマーを含む第一の水性媒質を含む第一のバレル;およびII)小さな架橋剤分子を含む第二の水性媒質を含む第二のバレルを含むシリンジ;を提供する段階;b)該第一および第二の媒質が混合されるような条件下で、該第一および第二の媒質を該外科的部位に接触させる段階;c)生体接着層を造成するために自己重合反応によって開始される該混合された第一および第二の媒質を架橋する段階を含む、外科的部位をヒドロゲルに基づく生体接着剤に接触させるための方法を企図する。一つの態様において、接触させる段階は、噴霧を含む。一つの態様において、第一および第二の媒質を接触させる段階は、逐次的な順番を含む。一つの態様において、第一および第二の媒質は、外科的部位を接触させる段階に先行して混合される。一つの態様において、第一の水性媒質は、抗血小板薬、抗トロンビン薬、抗凝固薬、または抗炎症薬を含む群より選択される補足的または相補的薬物をさらに含む。
【0020】
本発明は、瘢痕組織および/または癒着形成における軽減を達成するために、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体を含むデバイスおよび方法にも関する。一つの態様において、瘢痕組織および/または癒着の形成は、外科的処置の後に続いて軽減される。一つの態様において、本発明は、外科的処置の後に続く瘢痕組織および/または癒着形成を軽減するGPIIIa/IIb阻害剤を含む外科的ラップに関する。一つの態様において、ラップは、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体をさらに含む。別の態様において、本発明は、末期腎疾患を有する患者における外科的処置の後に続く、GPIIIa/IIb阻害剤および/または細胞増殖抑制性抗増殖薬(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体)を含む、瘢痕組織および/または癒着形成を軽減する外科的ラップに関する。別の態様において、本発明は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、本発明は、抗凝固薬をさらに含む。
【0021】
本発明のいくつかの態様は、動静脈移植片、動脈-動脈移植片、または動静脈瘻の構築の後に続く、血管増殖疾患の予防的処理のための方法を含む。その他の態様は、動静脈移植片、動脈-動脈移植片、または動静脈瘻の構築の後に続く、確立した血管増殖疾患に対する処理を含む。その他の態様は、フィブリン鞘形成の軽減および/または予防に対する処置を含む。発明のメカニズムを理解する必要はないが、本明細書において記載される血管増殖疾患に関係する処理が、血栓症、血栓塞栓症、および血栓性閉塞に関与し得ると考えられている。
【0022】
本発明の一つの態様は、外科的に接合されているかまたは外科的に処理されている患者組織の周囲に(すなわち、例えば、隣に)概して配置されるようにデザインされる、外科的材料に付着される細胞増殖抑制性抗増殖薬を含むデバイスを企図する。一つの態様において、該細胞増殖抑制性抗増殖薬は、過剰な手術後の瘢痕組織および/または癒着の形成を防ぐ(すなわち、瘢痕組織および/または癒着形成における全体的な軽減を引き起こす)。一つの態様において、外科的材料は、縫合を含む。別の態様において、外科的材料は、メッシュまたはガーゼを含む(すなわち、例えば、織られたかまたは編まれた固体シート)。一つの態様において、メッシュまたはガーゼは繊維を含む。一つの態様において、外科的材料は隙間(すなわち、例えば、空気孔)を含む。一つの態様において、外科的材料はスポンジを含む。別の態様において、外科的材料はステープルを含む。別の態様において、薬物が付着される外科的材料は、永久インプラントであり得る、またはそれは生体分解性であり得る。一つの態様において、薬物は、吸収性止血剤ガーゼ(すなわち、例えば、サージセル(商標)、Johnson & Johnson)またはVicrylメッシュ製品に付着され得る。一つの態様において、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体を含む。別の態様において、外科的材料は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、外科的材料は抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、薬物は、生体分解性外科的材料から放出され、細胞増殖を減少させ、外科的部位におけるかまたは近くでの癒着の形成を軽減する。別の態様において、薬物は、生体分解性外科的材料から放出され、細胞増殖を減少させ、外科的部位におけるかまたは近くでの血栓症の形成を軽減する。一つの態様において、デバイスを使用する方法は、相補的薬学的薬物の全身投与をさらに含む。一つの態様において、全身投与は、経口摂取、経皮パッチによる、皮膚に適用されるクリームまたは軟膏による、吸入による、および坐薬による投与を含むがそれらに限定されない群より選択され得る。一つの態様において、相補的薬学的薬物は、細胞増殖抑制性抗増殖剤(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスの類似体)、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓剤、抗血小板剤、抗生剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、鎮痛剤、および麻酔剤を含むが、それらに限定されない。一つの態様において、相補的薬学的薬物は、外科的処置に少なくとも1時間〜5日も先行して始まるように投与される。別の態様において、相補的薬学的薬物は、処置後少なくとも1日〜60日もの期間、投与される。相補的薬学的薬物が、本明細書において記載されるいずれのデバイスを使用することなく、全身的に与えられ得ることが理解されるべきである。相補的薬学的薬物が、本明細書において記載されるデバイスの任意の一つまたは複数に付着される細胞増殖抑制性抗増殖薬の応用に加えて、全身的に与えられ得ることが理解されるべきである。最適な結果が、全身投与に対して使用されている複数の異なる相補的薬学的薬物をともなうデバイスに付着される一つの細胞増殖抑制性抗増殖薬を使用して獲得され得ることも理解されるべきである。相補的薬学的薬物の用量が、使用される特定の薬物、患者の状態(すなわち、健康および満足のいく状態の一般的な状況)および特徴(すなわち、例えば、体重、身長、年齢、代謝、既存状態など)に依存することは、当業者にとって公知である。
【0023】
本発明の別の態様は、GPIIb/IIIa阻害剤を含む外科的閉鎖材料を企図する。一つの態様において、外科的閉鎖材料は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、外科的閉鎖材料は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、閉鎖は縫合を含む。別の態様において、閉鎖はステープルを含む。一つの態様において、閉鎖は体組織を接合するために使用される。一つの態様において、閉鎖は2つの血管を接合するために使用される。一つの態様において、血管接合は吻合を含む。一つの態様において、付着される薬物は、閉鎖から放出され、細胞増殖ならびにそれ故に血管壁の縫合貫通の部位における瘢痕組織および/または癒着形成の軽減を引き起こす。一つの態様において、閉鎖材料は、皮膚内に配置される。別の態様において、閉鎖材料は、形成外科手術の方法の間に使用される。別の態様において、閉鎖材料は、眼科手術の間に使用される。一つの態様において、閉鎖は生体再吸収性である。別の態様において、閉鎖は非生体再吸収性である。
【0024】
本発明の別の態様は、概して外科的処置部位の周囲に配置されるか、またはラップされることが可能な、細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む外科的材料を企図し、該薬物は、外科的処置の部位における瘢痕組織および/または癒着形成を軽減する。別の態様において、外科的材料は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、外科的材料は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、外科的材料は、外科的に造成される吻合の部位における血管、尿管、胆管、卵管、および人体の任意のその他の管を含むがそれらに限定されない群より選択される外科的処置部位の周囲にラップされる。一つの態様において、薬物は、ラップより放出され、吻合部位におけるか、または近くでの瘢痕組織および/もしくは癒着形成を軽減する。
【0025】
本発明の別の態様は、外科手術後の癒着および/または瘢痕組織および/または癒着形成に関連する細胞増殖を軽減するために、外科的材料からゆっくりと溶離する付着される薬物を含む、体組織間の配置に適した生体分解性外科的材料またはメッシュを企図する。別の態様において、外科的材料は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、外科的材料は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、付着される薬物は、シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスの類似体などの、細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む。
【0026】
本発明の別の態様は、患者の体への配置が可能なデバイスを企図し、デバイスは、付着される細胞増殖抑制性抗増殖薬を有する。別の態様において、デバイスは、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、デバイスは抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、デバイスの配置は、相補的薬学的薬物を投与する段階をさらに含む。一つの態様において、デバイスは、メッシュ、ガーゼ、または包帯を含む。別の態様において、デバイスは医療デバイスを含む。一つの態様において、相補的薬学的薬物は、過度の外科手術後の瘢痕組織および/または癒着形成を軽減するために、外科的処置に先行するある程度の時間からおよび/またはその処置後のある程度の時間、全身投薬として投与されるのと同じかまたは異なる細胞増殖抑制性抗増殖薬であり得る。一つの態様において、患者はヒトである。別の態様において、患者は非ヒト動物である。
【0027】
本発明の一つの態様は、外科的ラップおよびGPIIb/IIIa阻害剤を含む外科的材料を企図する。一つの態様において、ラップは、細胞増殖抑制性抗増殖薬をさらに含む。一つの態様において、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、媒質に付着される。別の態様において、外科的材料は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、外科的材料は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、外科的ラップは、媒質によって完全にカバーされる。別の態様において、外科的ラップは、媒質によって部分的にカバーされる。別の態様において、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、外科的ラップに付着される。一つの態様において、媒質は、シロリムス、c-mycへのアンチセンス、タクロリムス、エベロリムス、CCI-779、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンを含むがそれらに限定されない群より選択される、少なくとも一つの細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む。一つの態様において、外科的ラップは、環状ラップを含む。別の態様において、外科的ラップは、スリット環状ラップを含む。別の態様において、外科的ラップは、平面長方形を含む。別の態様において、外科的ラップは、外科的閉鎖を含む。一つの態様において、外科的閉鎖は、縫合およびステープルを含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、外科的ラップは生体分解性である。一つの態様において、生体分解性外科的ラップは、少なくとも一つのポリ-ラクチドポリマーを含む。別の態様において、生体分解性外科的ラップは、少なくとも一つのポリ-グリコリドポリマーを含む。一つの態様において、外科的ラップは薬物溶離性である。一つの態様において、外科的ラップは生体安定性である。一つの態様において、媒質は、微小粒子、リポソーム、ゲル、ヒドロゲル、キセロゲル、および発泡体を含む。別の態様において、外科的ラップは、補足的薬学的薬物をさらに含む。別の態様において、外科的ラップは、少なくとも一つの外科的閉鎖をさらに含み、該閉鎖は、吻合を固定することが可能である。
【0028】
本発明の別の態様は、a)i)外科的処置を受けているかまたは外科的処置後の患者、ii)少なくとも一つの相補的薬学的薬物、およびiii)細胞増殖抑制性抗増殖薬を提供する段階;およびb)該相補的薬学的薬物との併用において該細胞増殖抑制性抗増殖薬を該被験体に投与し、該外科的処置の帰結が改善される段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、該相補的薬学的薬物は、細胞増殖抑制性抗増殖薬、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓剤、抗血小板剤、抗生剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、防腐剤、鎮痛剤、および麻酔剤を含むがそれらに限定されない群より選択される。別の態様において、方法は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、方法は抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、該細胞増殖抑制性抗増殖薬は、シロリムス、c-mycへのアンチセンス、タクロリムス、エベロリムス、CCI-779、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンを含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、方法は、皮膚軟膏において第二の細胞増殖抑制性抗増殖薬を投与する段階をさらに含む。一つの態様において、方法は、第三の細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む外科的材料を外科的部位に接触させる段階をさらに含む。一つの態様において、外科的材料は平面長方形を含む。別の態様において、外科的材料は外科的閉鎖を含む。一つの態様において、外科的閉鎖は、縫合およびステープルを含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、外科的材料は外科的ラップを含む。一つの態様において、外科的材料は環状外科的ラップを含む。一つの態様において、外科的材料はスリット環状外科的ラップを含む。
【0029】
本発明の別の態様は、a)i)外科的処置を受けているかまたは外科的処置後の患者、およびii)細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む外科的材料を提供する段階;およびb)瘢痕組織および/または癒着の形成が減少させられる条件下で、該外科的材料を該患者の組織に接触させる段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、シロリムス、c-mycへのアンチセンス、タクロリムス、エベロリムス、CCI-779、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンを含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、外科的材料は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、外科的材料は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、外科的処置は、吻合を含む。一つの態様において、吻合は、動脈、静脈、尿管、尿道、人工移植片、空腸、回腸、十二指腸、結腸、胆管、または卵管を含むがそれらに限定されない群より選択される管を含む。一つの態様において、方法は、該外科的処置に少なくとも1日先行して、少なくとも一つの相補的薬学的薬物を投与する段階をさらに含む。一つの態様において、相補的薬学的薬物は、細胞増殖抑制性抗増殖薬、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓剤、抗血小板剤、抗生剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、防腐剤、鎮痛剤、および麻酔剤を含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、方法は、該外科的処置の少なくとも1日後に、少なくとも一つの第二の相補的薬学的薬物を投与する段階をさらに含む。一つの態様において、第二の相補的薬学的薬物は、細胞増殖抑制性抗増殖薬、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓剤、抗血小板剤、抗生剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、防腐剤、鎮痛剤、および麻酔剤を含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、吻合は静脈および大動脈を含む。一つの態様において、吻合は内胸動脈および冠状動脈を含む。
【0030】
本発明の別の態様は、a)i)創傷を有する患者、ii)細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む媒質、およびiii)包帯を提供する段階;b)該媒質を該創傷に接触させる段階;およびc)瘢痕組織および/または癒着形成が減少させられるような条件下で、該包帯を該媒質上に配置する段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、方法は、少なくとも一つの補足的薬学的薬物をさらに含み、該薬物は、該媒質に付着される。一つの態様において、媒質は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、媒質は抗凝固薬をさらに含む。
【0031】
本発明の別の態様は、a)i)外科的処置を受けているかまたは外科的処置後の患者;ii)細胞増殖抑制性抗増殖薬を含み、少なくとも1日間該薬物を溶離することが可能な外科的材料を提供する段階;およびb)瘢痕組織および/または癒着の形成が減少させられるような条件下で、該外科的処置にまたは近くに該外科的材料を配置する段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、外科的材料は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。一つの態様において、外科的材料は抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、細胞有糸分裂のS期におけるか、またはその前の細胞DNA複製の開始を妨げる。
【0032】
本発明の別の態様は、a)i)腎疾患の少なくとも一つの症候を有する患者;およびii)血管外配置に対して設定される、細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む外科的材料を提供する段階;b)該外科的材料を血管外に(すなわち、例えば、腎動脈の表面上に)配置する段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、腎疾患は、アテローム性動脈硬化症を含む。別の態様において、腎疾患は、末期腎疾患を含む。さらに別の態様において、腎疾患は、腎症を含む。一つの態様において、患者は、血管狭窄または血管再狭窄(すなわち、例えば、腎動脈)の少なくとも一つの症候をさらに含む。一つの態様において、方法は、狭窄または再狭窄の軽減をさらに含む。一つの態様において、狭窄または再狭窄軽減は、瘢痕組織および/または癒着形成における軽減を含む。別の態様において、狭窄または再狭窄軽減は、癒着形成における軽減を含む。一つの態様において、血管狭窄または再狭窄は、血管アクセス部位に起因する。一つの態様において、血管アクセス部位は、動静脈瘻および動静脈移植片を含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、血管アクセス部位は、吻合を含む。一つの態様において、動静脈移植片は、ポリテトラフルオロエチレンを含む。一つの態様において、患者は、ヒト成人およびヒト子供を含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、患者は、非ヒト動物(すなわち、例えば、イヌ、ネコ、トリ、ウマ、ヒツジなど)を含む。一つの態様において、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、シロリムス、c-mycへのアンチセンス、タクロリムス、エベロリムス、CCI-779、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンを含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、外科的材料は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、外科的材料は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、方法は、相補的薬学的薬物を患者に投与する段階をさらに含む。一つの態様において、方法は、補足的薬学的薬物を患者に投与する段階をさらに含む。一つの態様において、細胞増殖抑制抗増殖薬は、媒質に付着される。一つの態様において、媒質は、微小粒子、リポソーム、ゲル、ヒドロゲル、キセロゲル、発泡体、および生体接着剤を含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、外科的材料の配置は、開口外科的部位を含む。別の態様において、外科的材料の配置は、閉鎖外科的部位を含む。一つの態様において、外科的材料は、外科的スリーブ、外科的ラップ、環状外科的ラップ、およびスリット環状外科的ラップを含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、該外科的材料の配置は、外科的閉鎖で固定される。一つの態様において、外科的材料の配置は、カテーテルまたは内視鏡を含む。
【0033】
本発明の別の態様は、a)i)狭窄または再狭窄に対するリスクがある腎動脈と連通する移植腎臓を有する患者;およびii)該腎動脈の外側表面上の(すなわち、例えば、血管外の)配置に対して設定される細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む外科的材料を提供する段階;b)該腎動脈の狭窄または再狭窄のリスクが軽減されるような条件下で、該外科的材料を該腎動脈の外側表面上に配置する段階;を含む方法を企図する。一つの態様において、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、シロリムス、c-mycへのアンチセンス、タクロリムス、エベロリムス、CCI-779、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンを含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、外科的材料は、抗血小板または抗トロンビン薬をさらに含む。別の態様において、外科的材料は、抗凝固薬をさらに含む。一つの態様において、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、媒質に付着される。一つの態様において、媒質は、微小粒子、リポソーム、ゲル、ヒドロゲル、キセロゲル、発泡体、および生体接着剤を含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、方法は、相補的薬学的薬物を患者に投与する段階をさらに含む。一つの態様において、方法は、補足的薬学的薬物を患者に投与する段階をさらに含む。一つの態様において、外科的材料は、外科的スリーブ、外科的ラップ、環状外科的ラップ、およびスリット環状外科的ラップを含むがそれらに限定されない群より選択される。一つの態様において、該外科的材料の配置は、外科的閉鎖で固定される。
【0034】
本発明のこれらおよびその他の態様は、関連する図面を含む本発明の詳細な記載を読むことにより、当業者にとって明白になると思われる。
【0035】
定義
本明細書において使用されるような「付着される」という語は、媒質(または担体)と薬物との任意の相互作用を指す。付着は、可逆的または不可逆的であり得る。そのような付着は、共有結合、ならびにイオン結合、ファンデルワールス力、または摩擦などを含むがそれらに限定されない非共有結合を含むが、それらに限定されない。薬物は、それが浸透させられる、取り込まれる、コーティングされる、懸濁における、溶液における、混合されるなどの場合、媒質(または担体)に付着される。
【0036】
本明細書において使用されるような「共有結合」という語は、電子の共有を含む2つの化合物(すなわち、例えば、媒質と薬物)の間の付着を指す。
【0037】
本明細書において使用されるような「配置」という語は、患者の生物学的組織と外科的材料との間の任意の物理的関係(すなわち、固定されるかまたは固定されない)を指し、外科的材料は、任意で媒質に付着され得る薬学的薬物を含む。そのような物理的関係は、接着、縫合、ステープリング、噴霧、敷設、浸透などであるがそれらに限定されない方法によって固定され得る。
【0038】
本明細書において使用されるような「外側表面」という語は、任意の器官、管、または上皮組織層の外側表面を指す。例えば、外科的材料は、血管管腔内側空間ではなく、腎動脈の外側表面上に(すなわち、例えば、血管外に)配置され得る。
【0039】
本明細書において使用されるような「創傷」という語は、組織構造の正常な統合性の崩壊をともなう身体損傷を意味する。一つの意味において、その語は、「外科的部位」を包含することが意図される。別の意味において、その語は、打撲傷、切創、裂創、閉鎖性創傷(すなわち、皮膚の崩壊はないが、基礎をなす構造への損傷がある創傷)、開放創、穿通創、貫通創、刺創、汚染創、皮下創、火傷などを含むがそれらに限定されない創傷を包含することを意図される。本発明に従って成功して処理され得る創傷または痛む所に関係する状態は、皮膚疾患である。
【0040】
本明細書において使用されるような「外科的部位」という語は、特定の医療目的に対して行なわれる皮膚または内部器官における任意の開口部によって造成される部位を指す。外科的部位は、医療関係者が、伝統的な外科手術におけるように、対象となる領域への直接的な物理的アクセスを有する「開口」であり得る。または、外科的部位は、医療関係者が、活性を可視化するためにフルオロスコープが使用され得るカテーテルおよび;活性を可視化するために光ファイバーシステムが使用され得る内視鏡(すなわち、腹腔鏡)などであるがそれらに限定されない遠隔デバイスを使用して処置を行なう「閉鎖」であり得る。外科的部位は、器官、筋、腱、靭帯、結合組織などを含み得るが、それらに限定されない。
【0041】
本明細書において使用されるような「器官」という語は、静脈、動脈、リンパ管、食道、胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸、直腸、膀胱、尿管、胆嚢、胆管、膵管、心膜嚢、腹膜、心臓、目、耳、および肋膜を非限定的に含む。
【0042】
本明細書において使用されるような「皮膚」という語は、皮膚の表皮層、および曝露される場合は、基礎をなす真皮層も、非常に広範に包囲する。皮膚は、体の最も曝露される部分なので、それは、破裂、切断、擦傷、熱傷、および凍傷、または様々な疾患から生じる損傷などであるがそれらに限定されない様々な種類の損傷を特に受けやすい。
【0043】
本明細書において使用されるような「管」という語は、形状がおおよそ円筒形で管腔を含む、任意の生物学的器官を指す。そのような管は、吻合を含む外科的処置によって、別の管に接合され得る。例えば、管は、血管、消化管、胆管、卵管、リンパ本幹、気管支小管などを含むが、それらに限定されない。
【0044】
本明細書において使用されるような「吻合」という語は、各々管腔を有する2つの管または器官が、成長が刺激されるほど近接して配置され、2つの管または器官が、連続した組織(すなわち、例えば、静脈または動脈などの血管器官)を形成することによって接合される、外科的処置を指す。または、非血管系器官も、吻合によって接合され得る(すなわち、消化管器官、リンパ管、胆嚢、および胆管器官、尿細管など)。当業者は、本発明によって企図される吻合処置が、血管手術に限定されず、器官を接合するすべての外科的処置を含むことを認識すると思われる。行なわれ得る吻合の例は、動脈吻合、静脈吻合、動静脈吻合、リンパ管の吻合、胃食道吻合、胃十二指腸吻合、胃空腸吻合、空腸、回腸、結腸、および直腸の間または内の吻合、尿管小嚢(ureterovesicular)吻合、十二指腸への胆嚢または胆管の吻合、ならびに十二指腸への膵管の吻合を含むが、それらに限定されない。加えて、吻合は、管腔を有する身体器官(すなわち、例えば、血管)に人工移植片(すなわち、例えば、血管移植片)を接合し得る。
【0045】
本明細書において使用されるような「連通」という語は、典型的には接合されている器官ペアに関連する様式で、1つの器官から別の器官へ流動するかまたは拡散することによって体液を交換する、2つの器官の能力を指す。吻合を介して流動し得ると考えられる液の例は、液体、血液などの半固体、尿、リンパ液、胆汁、膵液、摂取物、および膿性分泌物を含むが、それらに限定されない。
【0046】
本明細書において使用されるような「媒質」という語は、処理ポイント(例えば、創傷、外科的部位など)への薬物の送達のための担体または媒体としての機能を果たす、任意の材料、または材料の組み合わせを指す。それ故に、すべての実用的な目的のために、「媒質」という語は、「担体」という語と同義であると考えられる。媒質が担体を含み、該担体が薬物または薬物に付着され、該媒質が、処理ポイントへの該担体の送達を促進することが、当業者によって認識されるべきである。さらに、担体は、付着される薬物を含み得、該担体は、処理ポイントへの該薬物の送達を促進する。好ましくは、媒質は、発泡体、ゲル(ヒドロゲルを含むが、それに限定されない)、キセロゲル、微小粒子(すなわち、微小球、リポソーム、マイクロカプセルなど)、生体接着剤、または液体を含むがそれらに限定されない群より選択される。ヒドロゲル、生体接着剤、発泡体、または液体をともなう微小粒子の組み合わせを含む媒質が、本発明によって具体的に検討される。好ましくは、ヒドロゲル、生体接着剤、および発泡体は、本明細書において企図されるポリマーの任意の1つまたは組み合わせを含む。本発明によって企図される任意の媒質は、制御放出製剤を含み得る。例えば、いくつかの場合において、媒質は、およそ1日〜6ヶ月続く時間の期間にわたって、薬物の制御および持続放出を提供する薬物送達システムを構成する。
【0047】
本明細書において使用されるような「キセロゲル」という語は、複数の気泡および封入薬物を有するシリコンおよび酸素の組み合わせを含む任意のデバイスを指す。結果として生じるガラス状マトリクスは、マトリクスの分解の間に封入薬物の制御放出が可能である。
【0048】
本明細書において使用されるような「瘢痕組織および癒着形成における軽減」という語は、創傷治癒における改善を反映する任意の組織応答を指す。具体的には、過形成または細胞外傷後への有害な反応などであるがそれらに限定されない状態における改善が企図される。すべての瘢痕組織および/または癒着が回避されなければならないことは企図されない。未処理患者と比較して(例えば、刊行された報告、歴史的研究などにおいて指摘されるように)、瘢痕化および/または癒着または過形成の量が軽減されれば十分である。
【0049】
本明細書において使用されるような「発泡体」という語は、体積によるガスの大きな割合が、ガス泡の形式であり、液体、固体、またはゲル内に分散される分散を指す。泡の直径は、泡間の層板の厚さよりも通常は相対的に大きい。
【0050】
本明細書において使用されるような「ゲル」という語は、溶剤に懸濁される場合、媒質粘性液体またはゼリー様産物を様々な程度に形成する任意の材料を指す。ゲルは、水の特定の量を含む固体または半固体コロイドも包含し得る。これらのコロイド溶液は、当技術分野において、ヒドロゾルとしばしば呼ばれる。ゲルの1つの特定の型は、ヒドロゲルである。本明細書において使用されるような「ヒドロゲル」という語は、溶剤、典型的には水またはゼラチンおよびペクチンならびにその分画および誘導体などを含むがそれらに限定されない極性溶剤に懸濁される場合、ゼリー様産物を様々な程度に形成する任意の材料を指す。典型的に、ヒドロゲルは、水中で膨張することが可能であり、分解することなくその構造内に水の顕著な部分を保持する。1つの態様において、本発明は、体温よりも低い温度で液体であり、体温における場合に固いゲルを形成するゲルを企図する。
【0051】
本明細書において使用されるような「薬物」または「化合物」という語は、望ましい効果を達成する、投与されることが可能な任意の薬理学的活性物質を指す。薬物または化合物は、合成的または自然発生的な非ペプチド、タンパク質またはペプチド、オリゴヌクレオチドまたはヌクレオチド、多糖類または糖であり得る。薬物または化合物は、抗生物質活性、抗ウィルス活性、抗真菌性活性、ステロイド活性、細胞毒、細胞増殖抑制、抗増殖、抗炎症、鎮痛、もしくは麻酔活性などの刺激性もしくは抑制性であり得るか、または対比もしくはその他の診断的薬剤として有用であり得る、様々な任意の活性を有し得る。薬物または化合物は、創傷または外科手術後の瘢痕化および/または癒着を軽減することが可能である(すなわち、例えば、薬物または化合物の活性は、細胞増殖抑制性であり得る)。発明のメカニズムを理解する必要はないが、1つの特定の細胞増殖抑制薬が、ラパマイシンの哺乳類標的(すなわち、mTOR)タンパク質に結合した後で、G0またはG1ステージにおける細胞分裂周期を遮断することによって作用し;したがって、細胞を殺さずに増殖を阻害し得ると考えられている。薬物または化合物という語は、任意の1つの特定の媒質の造成を意図されるポリマーまたは樹脂などであるがそれらに限定されない任意の非薬学的活性材料を指すことは意図されない。本明細書において企図される任意の薬物または化合物は、「有効用量」を有して投与され得る。
【0052】
本明細書において使用されるような「有効用量」という語は、順調な臨床応答を引き起こす、本明細書において企図される任意の化合物または薬物の濃度を指す。有効用量は、およそ1 ng/cm2〜100 mg/cm2の間、好ましくは100 ng/cm2〜10 mg/cm2の間、しかしより好ましくは500 ng/cm2〜1 mg/cm2の間の範囲であり得る。
【0053】
本明細書において使用されるような「ラパマイシン」という語は、シロリムスという薬物によって代表される化合物を指す。ラパマイシンは、例えばストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomycetes hygroscopicus)などの放線菌から自然に産生および単離され得る、遺伝子工学細胞培養技術によって化学的に合成または産生され得る、大環状ラクトンである。
【0054】
本明細書において使用されるような「類似体」という語は、類似体が、親化合物と同様の生化学活性を有するように、親化合物との実質的な構造活性相関を有する任意の化合物を指す。例えば、シロリムスは、2-、7-、または32-位のいずれかにおいて置換される多くの類似体を有する。当業者は、「誘導体」という語が、「類似体」という語とほとんど同じ意味で本明細書において使用されることを理解するべきである。
【0055】
本明細書において使用されるような、薬物または化合物を「投与される」または「投与する」という語は、薬物または化合物が、患者に対するその意図される効果を有するように、患者に薬物または化合物を提供する任意の方法を指す。例えば、投与の1つの方法は、カテーテル、アプリケーターガン、シリンジなどであるがそれらに限定されない医療デバイスを使用する間接的なメカニズムによる。投与の第二の例示的な方法は、局部組織投与(すなわち、例えば、血管外配置)、経口摂取、経皮パッチ、局所の、吸入、坐薬などの直接的なメカニズムによる。
【0056】
本明細書において使用されるような「血管外配置」という語は、血管の周囲(periadvential)領域にまたは近くに、任意のデバイスまたは組成物を配置することを指す。
【0057】
本明細書において使用されるような「生体適合性」という語は、宿主における実質的な有害応答を引き出さない任意の材料を指す。異物が生体に導入される場合、その物が、宿主に対する負の効果を有する炎症性応答などの免疫反応を誘導することが常に懸念される。本発明との関連で、生体適合性は、それがデザインされた応用に従って評価される:例えば;包帯は、皮膚と生体適合性があるとみなされるが、インプラントされる医療デバイスは、体の内部組織と生体適合性があるとみなされる。好ましくは、生体適合性材料は、生体分解性および生体安定性材料を含むが、それらに限定されない。
【0058】
本明細書において使用されるような「生体分解性」という語は、生きた細胞もしくは生物体、または水を含むそのプロセスによって生化学的に作用され得、分子構造が変更されているように、より低い分子量産物へと解体され得る任意の材料を指す。
【0059】
本明細書において使用されるような「生体内分解性」という語は、分子構造が変更されていないように、任意の長期間の炎症性効果を生成することなくそれが付着される表面から機械的に磨耗される任意の材料を指す。一つの意味において、生体内分解性は、「生体分解性」の最終ステージを示し、安定な低分子量産物が、最終分解を受ける。
【0060】
本明細書において使用されるような「生体再吸収性」という語は、身体組織へまたは身体組織にわたって吸収される任意の材料を指す。生体再吸収プロセスは、生体分解および/または生体内分解の両方を利用し得る。
【0061】
本明細書において使用されるような「生体安定性」という語は、意図される期間、生理学的環境内で原形を保ち、医療的に有益な効果を引き起こす任意の材料を指す。
【0062】
本明細書において使用されるような「補足的薬学的薬物」という語は、本発明によって企図されるような媒質の一部として投与される任意の薬物を指す。補足的薬学的薬物を含む媒質の投与は、全身、局部送達、インプランテーション、または任意のその他の手段を含むが、それらに限定されない。補足的薬学的薬物は、細胞増殖抑制性であることが可能な、またはmTORタンパク質へ結合することが可能な薬物と同様または異なる活性を有し得る。好ましくは、補足的薬学的薬物は、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓剤、抗血小板剤、抗凝固剤、抗生剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、防腐剤、鎮痛剤、および麻酔剤を含むが、それらに限定されない。
【0063】
本明細書において使用されるような「局部送達」という語は、全身分布なしに組織表面上もしくは近くに配置される任意の薬物または化合物を指す。組織表面は、外部皮膚または任意の内部組織(すなわち、例えば、周囲血管)および/もしくは器官表面を含むが、それらに限定されない。
【0064】
本明細書において使用されるような「相補的薬学的薬物」という語は、本発明において企図されるような媒質から別個に投与される任意の薬物を指す。相補的薬学的薬物の投与は、経口摂取、経皮パッチ、局所の、吸入、坐薬などを含むが、それらに限定されない。好ましくは、相補的薬学的薬物は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスの類似体、抗炎症薬、コルチコステロイド、抗血栓剤、抗血小板剤、抗生剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、鎮痛剤、および麻酔剤などであるがそれらに限定されない細胞増殖抑制性抗増殖薬を含むが、それらに限定されない。
【0065】
本明細書において使用されるような「抗血小板剤」または「抗血小板薬」という語は、血小板の凝集またはフィブリン形成(すなわち、例えば、癒着形成に先行する事象として)を防ぐ任意の薬物を指す。例えば、抗血小板薬は、糖タンパク質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)の阻害剤を含む。さらに、GPIIb/IIIa阻害剤は、ゼミロフィバン、アブシキシマブ(レオプロ(登録商標))、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、チロフィバン(アグラスタット(Aggrastat)(登録商標))、エプチフィバチド(インテグリリン(登録商標))、UR-4033、UR-3216、またはUR-2922を含むが、それらに限定されない。
【0066】
本明細書において使用されるような「抗トロンビン剤」または「抗トロンビン薬」という語は、トロンビン形成を阻害または軽減する任意の薬物を指し、ビバリルジン、キシメラガトラン、ヒルジン、ヒルログ、アルガトロバン、イノガトラン、エフェガトラン、またはトロンボモジュリンを含むが、それらに限定されない。
【0067】
本明細書において使用されるような「抗凝固剤」または「抗凝固薬」という語は、血液凝固カスケードを阻害する任意の薬物を指す。典型的な抗凝固剤は、低分子量ヘパリン(LMWH)または非分画ヘパリン(UFH)を含むがそれらに限定されないヘパリンを含む。その他の抗凝固剤は、チンザパリン、セルトパリン、パルナパリン、ナドロパリン、アルデパリン、エノキサパリン、レビパリン、またはダルテパリンを含むが、それらに限定されない。血液凝固カスケードの特定の阻害剤は、因子Xa(FXa)阻害剤(すなわち、例えば、フォンダパリヌクス)、因子IXa(FIXa)阻害剤、因子XIIIa(FXIIIa)阻害剤、および因子VIIa(FVIIa)阻害剤を含むが、それらに限定されない。
【0068】
本明細書において使用されるような「患者」という語は、ヒトまたは動物であり、入院する必要がない。例えば、外来患者、養護施設のヒトは、「患者」である。患者は、ヒトまたは非ヒト動物の任意の年齢を含み得、それ故に、成体および幼生(すなわち、子供)の両方を含む。「患者」という語が、医療処理の必要性を暗示することは意図されず、それ故に、患者は、自発的または非自発的に、臨床であろうと基礎科学研究を支持するものであろうと実験の一部となり得る。
【0069】
本明細書において使用されるような「末期腎疾患」という語は、老廃物を排泄し、尿を濃縮し、電解質を調節するための機能に対する腎臓の完全なまたはほぼ完全な不全を有する患者を指す。特に、「末期腎疾患」は、腎臓が、日々の生活に必要なレベルでもはや機能できない場合(すなわち、例えば、腎臓機能が、ベースラインの10%よりも低い場合)に生じる。「末期腎疾患」の間、腎臓機能は非常に低いので、透析または腎臓移植なしでは、体における液および老廃物産物の蓄積から死が生じると思われる。
【0070】
本明細書において使用されるような「腎症」という語は、腎臓の異常な状況、特にあるその他の病的プロセスに関連するか、またはそれに続くものを有する患者を指す。
【0071】
本明細書において使用されるような「アテローム動脈硬化性」という語は、脂肪物質が動脈(すなわち、例えば、腎動脈)の壁に沿って沈着する状態を有する患者を指す。この脂肪物質は、動脈を厚く、硬くし、最終的には閉塞し得る。腎血管系(すなわち、例えば、腎動脈)が、アテローム動脈硬化性になる場合、患者は、「アテローム動脈硬化性腎症」として公知の状態を発生し得る。アテローム性動脈硬化症は、動脈壁の肥厚または硬化によって特徴付けられる「動脈」硬化症のいくつかの型のただ1つであるが、当業者は、これらの語が等価の意味を有することを認識するべきである。
【0072】
本明細書において使用されるような「医療デバイス」という語は、医療処置に関して使用される任意の装置を広範に指す。具体的には、医療処置または治療の間に患者に接触する任意の装置が、医療デバイスとして本明細書において企図される。同様に、医療処置または治療の間に患者に薬物または化合物を投与する任意の装置が、医療デバイスとして本明細書において企図される。「直接的医療インプラント」は、導尿および血管内カテーテル、透析カテーテル、創傷ドレーンチューブ、皮膚縫合、血管移植片およびインプラント可能メッシュ、眼球内デバイス、インプラント可能薬物送達システムおよび心臓弁などを含むが、それらに限定されない。「創傷ケアデバイス」は、一般的な創傷包帯剤、非接着包帯剤、熱傷包帯剤、生物学的移植片材料、テープ閉鎖および包帯剤、外科的ドレープ、スポンジおよび吸収性止血剤を含むが、それらに限定されない。「外科的デバイス」は、外科的器具、内視鏡システム(すなわち、カテーテル、血管カテーテル、外科用メス、開創器などの外科的ツール)、および媒質を投与するための薬物ポート、注射針などの一時的薬物送達デバイスを含むが、それらに限定されない。医療デバイスは、細胞増殖抑制または抗増殖薬(すなわち、例えば、シロリムスまたはシロリムスの類似体)を含む媒質が医療デバイスの表面に付着されるようになる場合「コーティング」される。この付着は、永久または一時的であり得る。一時的な場合、付着は、細胞増殖抑制または抗増殖薬の制御放出を引き起こし得る。
【0073】
本明細書において使用されるような「透析/アフェレーシスカテーテル」という語は、血液処理プロセスを受けている患者に、血液の同時の引き出しおよび返還を提供することが可能な任意の複数管腔カテーテル(すなわち、例えば、三重管腔カテーテル)を指す。アフェレーシス(フェレーシスとも呼ばれる)は、循環から可溶性薬物または細胞要素を除去し得る、血液要素の分離に関与する血液処理プロセスを含む。Deisseroth et al.,「Use Of Blood And Blood Products」、Cancer: Principles And Practice Of Oncology, Devita, V. T. Jr. et al. Editors, Philadelphia: J. B. Lippincott Company 1989, p.2045-2059。例えば、血液はドナーから引き出され、いくつかの血液要素(すなわち、例えば、血漿、白血球、血小板など)は分離され保持される。次いで、非保持血液要素は、ドナーに返血される。
【0074】
本明細書において使用されるような「透析カテーテル」という語は、腎臓がそうすることができない場合、体から毒性物質(不純物または老廃物)を除去することが可能な任意のデバイスを指す。透析カテーテルは、少なくとも二重管腔(すなわち、1つの管腔が動脈血を引き出し、第二の管腔が透析された血液を静脈システムに戻す)を有する単一のカテーテルを含み得る、または2つのカテーテルを配置することに関与し得る−1つは動脈に配置され、1つは隣接静脈に配置される。透析カテーテルは、腎不全を有する患者に対して最も頻繁に使用されるが、緊急事態において薬物または毒物を素早く除去するために使用されてもよい。
【0075】
本明細書において使用されるような「腹膜透析カテーテル」という語は、少なくとも2つの管腔をともない、そのうちの1つは、短い管腔(腹膜へ透析溶液を注入するために使用される)であり、そのうちのもう一方は、概してコイルの内側上に設置される複数の開口部を有する長いコイル状管腔である、任意の連続流カテーテルを指す。腹膜溶質は、コイル状管腔開口部に進入し、それによって、腹膜から除去されると考えられている。1つの仮説は、腹膜透析は、腹部内側の腹膜膜を半透膜として使用することによって正常に機能することを示唆する。毒の除去を促進する特別な溶液は、注入され、一時的に腹部に残り、次いで、排出され得る。
【0076】
本明細書において使用されるような「固定スプリットチップ透析カテーテル」という語は、カテーテルの縦軸に実質的に平行に伸び、注入液の側面変位に柔軟な、少なくとも2つの異なった伸長端部分を有する任意のカテーテルを指す。この柔軟性は、組織を傷付けることが公知である永久カテーテルチップスプレイを防ぐと考えられている。通常、固定チップ透析カテーテルは、長期間の腎透析ケア(すなわち、例えば、末期腎疾患)を受けている患者に対して、留置血管アクセスを提供する。
【0077】
本明細書において使用されるような「大腿カテーテル」という語は、大腿静脈に挿入される任意のカテーテルを指す。大腿カテーテルは、典型的には、上大静脈が心臓の右心房に比較的近く、患者の自然な動きにともなうこれらの静脈の形状変化の最小範囲(血管内膜の障害を最小にするため)、および胸壁上の皮膚出口の患者による良好な許容のため、中間血液アクセスに提供される。さらに、大腿静脈は、カニューレを挿入しやすいので、本発明のカテーテルは、ベッドサイドで大腿静脈に挿入され得る。
【0078】
「細胞増殖抑制性」という語は、抗増殖作用が、G0またはG1期における細胞周期の進行への干渉を含む任意の薬物を指す(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスの類似体)。
【0079】
「内視鏡」という語は、生体に挿入されることが可能で、外科的処置を観測する、外科的処置を行なうか、または外科的部位に媒質を適用することを含むがそれらに限定されないタスクに対して使用される任意の医療デバイスを指す。内視鏡は、関節鏡、腹腔鏡、子宮鏡、細胞鏡(cytoscope)などを含むがそれらに限定されない器具によって例証される。器官にくぼみをつけるための内視鏡の使用を限定することは意図されない。関節鏡または腹腔鏡などの内視鏡が、皮膚を介して挿入され、閉鎖外科的部位へ進むことが、具体的に企図される。
【0080】
本明細書において使用されるような「微小粒子」という語は、薬物または化合物が付着され得る任意の微視的担体を指す。好ましくは、本発明によって企図される微小粒子は、制御放出特性を有する製剤化が可能である。
【0081】
本明細書において使用されるような「PLGA」という語は、乳酸およびグリコール酸のポリマーまたはコポリマーの混合物を指す。本明細書において使用されるように、ラクチドポリマーは、乳酸ポリマーと化学的に等価であり、グリコリドポリマーは、グリコール酸ポリマーと化学的に等価である。一つの態様において、PLGAは、ラクチドおよびグリコリドポリマーの交互の混合物を企図し、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーと呼ばれる。
【0082】
本明細書において使用されるような「閉鎖」という語は、生物学的組織を接合する、または外科的材料を生物学的組織(すなわち、例えば、ヒト組織)に固定する任意の材料を指す。そのような閉鎖は、縫合、ステープル、外科的ワイヤ、外科的ストリップなどを含むことが、当技術分野において公知である。好ましくは、本発明によって企図される閉鎖材料は、生体適合性であり、かつ生体再吸収性であり得るかまたはあり得ない。
【0083】
本明細書において使用されるような「縫合」という語は、生物学的組織を接合する任意のコード様柔軟性材料を指す。好ましくは、縫合は、縫糸に似ており、適切な密封を確実にするために組織の周囲でループにされ結ばれ得る。
【0084】
本明細書において使用されるような「ステープル」という語は、生物学的組織を接合する任意の非柔軟性材料を指す。好ましくは、生体分解性ステープルは、軟らかい組織の固定に対して使用される。そのようなステープルは、例えば、半月板の垂直縦方向全層断裂(すなわち、バケツ柄状)を修復するために使用され得る。当技術デバイスのそのような状況の例は、吸収性インプラント可能ステープル(Absorbable Implantable Staple)(United States Surgical Corporation, Norwalk, Conn.)を含む。例えば、生体分解性ポリヒドロキシアルカノエートステープルが、Rosenman D.C.,「Spiral Surgical Tack」米国特許第5,728,116号(1998);Rosenman et al.,「Three Piece Surgical Staple」米国特許第5,423,857号(1995);Shlain L.M.,「Methods For Use In Surgical Gastroplastic Procedure」米国特許第5,345,949号および第5,327,914号(1994);Brinkerhoff et al.,「Pull-Through Circular Anastomosic Intraluminal Stapler With Absorbable Fastener Means」米国特許第5,222,963号(1993);Jamiolkowski, et al.,「Surgical Fastener Made From Glycolide-Rich Polymer Blends」米国特許第4,889,119号(1989);Smith et al.,「Surgical Fastener Made From Glycolide-Rich Polymer Blends」米国特許第4,741,337号(1988);Smith C.R.,「Surgical Fastener Made From Polymeric Blends」米国特許第4,646,741号(1987);Schneider A.K.,「Polylactide Fabric Graphs For Surgical Implantation」米国特許第3,797,499号(1974);およびSchneider A.K.,「Polylactide Sutures」米国特許第3,636,956号(1972)(すべての特許は参照により本明細書に組み入れられる)によって記載される方法および処置に従って加工され得る。
【0085】
本明細書において使用されるような「外科的材料」という語は、外科的処置の帰結を改善することにおいて有用な任意のデバイスを指す。一つの態様において、外科的材料は、外科的閉鎖、包帯、外科的メッシュ、または外科的ラップを含み得るが、それらに限定されない。別の態様において、外科的材料は、外科的器具、外科手術ドレープなどを含み得るが、それらに限定されない。
【0086】
「外科的ラップ」という語は、外科的処置の部位において、概してある生物学的組織の周囲にラップされる外科的材料として、本明細書において定義される。ラップは、組織の周囲で、180度よりも多少多いかまたは少ない部分的ラップから、完全360度ラップよりも多少多いかまたは少ない完全なラップまで伸び得ると考えられる。異なる直径を有する組織に適応させるために、ラップ材料は、比較的長い長さにおいて滅菌され得ると考えられ、外科医は、外科手術の時にそれを正しい長さに調整し得ると考えられる。
【0087】
「狭窄」という語は、管などの生物学的組織の内径の任意の狭窄を指すとして本明細書において定義される。特に、そのような狭窄は、アテローム性動脈硬化症、瘢痕組織および/または癒着を含むがそれらに限定されない現象によって引き起こされる。
【0088】
「再狭窄」という語は、処理されていて少なくとも部分的に反転されている「狭窄」が再発する任意の状態を指すとして本明細書において定義される。
【0089】
「血管狭窄または再狭窄の症候」という語は、血管系管腔の任意の狭窄を指すとして本明細書において定義される。
【0090】
「血管アクセス部位」という語は、血管系への医療デバイスの任意の経皮的挿入を指すとして本明細書において定義される。例えば、血液透析カテーテル配置は、血管アクセス部位を含む。そのような部位は、一時的(すなわち、数時間配置される)または永久的(すなわち、数日、数ヶ月、または数年間配置される)であり得る。
【0091】
本明細書において使用されるような「ヒドロゲルに基づく生体接着剤」という語は、2つの前駆体(すなわち、例えば、架橋剤分子および官能性または多官能性ポリマー)の間で自己重合反応によって造成される、およそ90%の水を含む任意の架橋接着性フィルムを指す。ヒドロゲルに基づく生体接着剤は、2つの水性(すなわち、液体)媒質の混合の間に造成され、自発的な架橋重合反応は、2つの前駆体の型および濃度に応じて、およそ30分〜30秒の間に完了する。ヒドロゲルに基づく生体接着剤は、既定の速度で分解または加水分解し得、分解産物は、体から安全に排除される。
【0092】
本明細書において使用されるような「前駆体」という語は、水溶性、無毒性、および生物学的に許容される求電子性または求核性官能基を有する任意の分子を指す。前駆体は、求核または求電子基の両方が架橋反応において使用される限り、求核性または求電子性官能基のみを含み得る。例えば、第一の前駆体(すなわち、例えば、架橋剤)が、アミンなどの求核性官能基を有する場合、第二の前駆体(すなわち、例えば、官能性ポリマー)は、N-ヒドロキシスクシミドなどの求電子性官能基を有し得る。一方で、第一の前駆体が、スルホスクシンイミドなどの求電子性官能基を有する場合、次いで、第二の前駆体は、アミンなどの求核性官能基を有し得る。
【0093】
本明細書において使用されるような「官能性ポリマー」または「多官能性ポリマー」という語は、共有結合を形成するために、1つの前駆体上の求核性官能基が別の前駆体上の求電子基と反応し得るように、2つ以上の求電子性または求核性官能基を含むヒドロゲルに基づく生体接着剤への前駆体として使用される任意のマクロ分子を指す。本明細書において企図される官能性ポリマーは、タンパク質、ポリ(アリールアミン)、またはアミン末端二もしくは多官能性ポリ(エチレングリコール)を含むが、それらに限定されない。生物学的に不活性で水溶性である官能性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシド-コ-プロピレン(PPO)、コ-ポリエチレンオキシドブロックまたはランダムコポリマー、およびポリビニルアルコール(PVA)などのポリアルキレンオキシド;ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(アミノ酸);デキストランなどを含むが、それらに限定されない。ポリエーテルおよびより詳しくはポリ(オキシアルキレン)またはポリ(エチレンオキシド)またはポリエチレンオキシドは、特に好ましい。
【0094】
本明細書において使用されるような「架橋剤分子」という語は、2つ以上の求電子性または求核性官能基を含む水性溶液において少なくとも1 g/100ミリリットルの可溶性を有する任意の小分子を指す。好ましくは、架橋剤は、架橋されるヒドロゲルに基づく生体接着剤を造成するために、官能性ポリマーと併せて前駆体として使用される。
【0095】
本明細書において使用されるような「自己重合反応」という語は、外部エネルギー源の提供を供なわない2つ以上の前駆体の化学的架橋結合を指す。各々の前駆体は、共有結合が自発的に形成されるように、反応に対して求電子または求核基のいずれかを提供する。自己重合反応の間、熱産生はほとんどまたは全く生じない。
【0096】
本明細書において使用されるような「シリンジ」または「カテーテル」という語は、本明細書において定義されるような液体投与に対してデザインされる、任意のデバイスまたは装置を指す。シリンジまたはカテーテルは、投与に先行して単一の媒質が存在する、少なくとも1つの貯蔵管(すなわち、例えば、バレル)を含み得る。2つ以上のバレルを含み、その各々が別個の媒質を含むシリンジまたはカテーテルは、投与に先行して各々のバレルからの媒質を混合し得る、または各々のバレルの媒質は、別個に投与され得る。当業者は、本明細書において定義されるような、透析を行なうためにデザインされる任意のカテーテルが、液体を投与してもよいことを認識すると思われる。
【0097】
本明細書において使用されるような「液体」という語は、流動、噴霧、注入、圧搾、スパッタリング、噴出などを含むがそれらに限定されない方法によって、外科的部位に適用される最小粘性媒質を指す。
【0098】
本明細書において使用されるような「液体として投薬する」という語は、流動、噴霧、注入、圧搾、スパッタリング、噴出などを指す。
【0099】
本明細書において使用されるような「液体投与」という語は、媒質が、重力に応答してまたは圧誘導力によって、流動するかまたは流れる能力を含む任意の方法を指す。
【0100】
本明細書において使用されるような「液体噴霧」という語は、圧誘導力に応答して微細に分散された液滴の生成を含む液体投与を指し、微細に分散された液滴は、重力によって外科的部位に定着する。
【0101】
本明細書において使用されるような「注入可能液体」または「流動性液体」という語は、重力に応答する低粘性液体の流動またはストリーミングを含む液体投与を指す。本発明は、1〜15,000センチポアズの間、好ましくは、1〜500センチポワズ(すなわち、飽和グルコース溶液と同様)の間、およびより好ましくは、1〜250センチポワズ(すなわち、車のオイルと同様)の間の範囲の低粘性液体(室温で)を企図する。
【0102】
本明細書において使用されるような「圧搾可能液体」という語は、圧誘導力に応答する高粘性液体の流動またはストリーミングを含む液体投与を指す。本発明は、5,000〜100,000センチポアズの間、好ましくは、25,000〜50,000センチポワズ(すなわち、マヨネーズと同様)の間、より好ましくは、15,000〜25,000センチポワズ(すなわち、溶解ガラスと同様)の間、およびより好ましくは、5,000〜15,000センチポワズ(すなわち、蜂蜜と同様)の間の範囲の高粘性液体(室温で)を企図する。
【0103】
本明細書において使用されるような「可視化剤」という語は、媒質の可視性を改善する任意の化合物を指す。可視化剤は、FD&C色素3および6、エオシン、メチレンブルー、インドシアニングリーン、または合成外科的縫合において普通に見出される有色色素を含み得るが、それらに限定されない。可視化剤の好ましい色は、緑または青である。
【0104】
本明細書において使用されるような「血管移植片」という語は、血液を運搬するための人工デバイスとして意図され、それ故に、血液接触表面(すなわち、「管腔」)を有する任意の導管またはその部分を指す。通常は管状型であるが、移植片は、生血管の周囲の部分にパッチするのに有用な材料のシートであってもよい(これらの材料は、概して、外科的ラップと呼ばれる)。同様に、血管移植片という語は、生血管内の使用のための管腔内移植片を含む。そのようなものとして、本発明の移植片は、インプラント可能血管ステントの外側、管腔、または両表面をカバーするステントとして使用されてもよい。
【0105】
本明細書において使用されるような「抗癒着薬併用」という語は、少なくとも1つの抗増殖薬(すなわち、例えば、ラパマイシン)および少なくとも1つの抗血小板薬(すなわち、例えば、ゼミロフィバン)を含む任意の組成物を指す。抗トロンビン薬、抗凝固薬、または抗炎症薬を含むがそれらに限定されないその他の薬物は、この併用であってもよい。
【0106】
本明細書において使用されるような「制御放出薬物溶離」という語は、本明細書において企図されるようなポリマーに基づく媒質からの任意の安定かつ定量化可能な薬物放出を指す。
【0107】
本明細書において使用されるような「合成血管移植片」という語は、血管への挿入のためにデザインされた任意の人工チューブまたはカニューレを指す。そのような移植片は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から構築され得る。
【0108】
本明細書において使用されるような「抗癒着膜バリア」という語は、フィルム様硬度を有する(すなわち、例えば、サランラップ(登録商標)などのプラスチック食物ラップと同様の)任意の人工層またはデバイスを指す。そのようなバリアは、プレメイドラップとして適用され得る、または液体投与の後にフィルムへと重合し得る。
【0109】
本明細書において使用されるような「フィブリン鞘」という語は、インプランテーションの後に続く医療デバイスの任意のカプセル化を指す。1つの仮説は、血小板および白血球が、損傷組織(すなわち、例えば、血管)と同じ方式で外来物質に応答し、フィブリンカプセル化が後に続く血小板接着が、フィブリン鞘形成に関与することを示唆する。
【0110】
本明細書において使用されるような「非接着性管腔表面」という語は、血小板付着およびその後の血栓症形成を防ぐ、構築または処理されている任意の血管移植片を指す。
【0111】
発明の詳細な説明
本発明は、外科的処置、外傷、または創傷の後に続く瘢痕組織および/または癒着の形成を防ぐためのデバイスおよび方法に関する。一つの態様において、本発明は、抗増殖薬を含む医療デバイス(すなわち、例えば、カテーテルまたは移植片)に関する。別の態様において、本発明は、抗血小板薬、抗血栓薬、または抗凝固薬を含むがそれらに限定されないその他の薬物との併用において細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む、瘢痕組織および/または癒着形成を防ぐ医療デバイスに関する。本発明は、外科的処置の後に続く瘢痕組織および/または癒着の形成を防ぐためにシロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体を含むデバイスおよび方法にも関する。一つの態様において、本発明は、外科的処置の後に続く瘢痕組織および/または癒着形成を防ぐ、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体を含む外科的ラップに関する。
【0112】
併用薬物治療
本発明は、局部組織送達に対して意図される抗増殖薬(すなわち、例えば、ラパマイシン)および/または抗血栓薬(すなわち、例えば、抗血小板剤、抗トロンビン剤、または抗凝固剤)を含む組成物を企図する。さらに、本発明は、i)天然および合成移植片不全を防ぐ;ii)外科手術後の癒着形成を阻害および/または軽減する;iii)医療デバイスの周囲のフィブリン鞘形成を阻害および/または軽減する、およびiv)瘢痕組織形成を阻害および/または軽減するために、これらの組成物を使用する方法を企図する。これらの薬物併用は、以前に臨床的に評価されていないと考えられている。天然または合成移植片の開存性を維持するための現在の実践は、血栓溶解剤(ウロキナーゼまたはtPA)または血栓除去術(thrombolectomy)の利用に関与する。しかしながら、最終的に、血管合併症は、移植片交換または移植片移転のいずれかを必要とする。外科手術後の癒着形成を阻害するための現在の実践は、外科的部位にまたは周囲に非薬物溶離バリア製品(すなわち、セプラフィルム(登録商標)またはサージラップ(SurgiWrap)(登録商標))を配置することに関与する。フィブリン鞘形成を阻害することに対する現在の実践は、カプセル化医療デバイスの外側からの鞘の機械的ストリッピングに関与する。ステントインプランテーション後血栓症を防ぐための現在の実践は、慢性全身性抗血小板薬投与(すなわち例えば、アスピリンおよび/またはクロピドグレル)に関与する。
【0113】
過剰な瘢痕組織および/または癒着産生は、多くの創傷の型からの治癒の公知の病的状態結果である。例は、肥大性熱傷瘢痕組織および/または癒着、外科的癒着(すなわち、例えば、腹部、血管、脊髄、神経、胸部、および心臓)、乳房インプラント手術の後に続く被膜拘縮、ならびに眼科手術および耳手術の後に続く過剰な瘢痕化および/または癒着を含むが、それらに限定されない。
【0114】
特に、外科的処置の後に続く癒着形成は、非常に一般的である。血小板および炎症性細胞が、フィブリン沈着を促し、癒着形成をもたらすことが公知である。Reijnen et al.,「Pathophysiology Of Intra-abdominal Adhesion And Abscess Formation, And The Effect Of Hyaluronan」Br J Surg. 90:533-541 (2003)。発明のメカニズムを理解する必要はないが、癒着形成は、外科的部位、創傷または外傷から脱出する血液および細胞によって促される血管外プロセスであると考えられている。癒着は非常に急速に(すなわち、例えば、損傷の7〜14日以内から)形成し得、患者に対する重度の合併症を引き起こし得、しばしば回復を遅くし、または付加的な外科的処置をもたらす。したがって、本発明の一つの態様は、癒着形成の発生および重症度を軽減することにおいて非常に効果的であり得る、抗炎症および抗血栓薬併用を含む。シロリムス(すなわち、ラパマイシン)は、公知の抗増殖剤であるが、しかしながら、この薬物は、抗炎症性薬理学的活性も保有する。Francischi et al.,「Reduction Of Sephadex-Induced Lung Inflammation And Bronchial Hyperreactivity By Rapamycin」Braz J Med Biol Res. 10:1105-1110 (1993)。それ故に、本発明は、非薬物溶離バリア材料を使用する現在の実践に対する異なった利点を有する、抗炎症(すなわち、例えば、シロリムス)、抗血小板(すなわち、例えば、ゼミロフィバン)、抗トロンビン(すなわち、例えば、ビバリルジン)、または抗凝固(すなわち、例えば、低分子量ヘパリン)薬併用を含む膜バリア材料を企図する。一つの態様において、膜バリア材料は、材料のポリマーシート、またはセプラフィルム(登録商標)もしくはサージラップ(登録商標)を含むがそれらに限定されない、現在販売されているバリア材料を含む群より選択される。
【0115】
抗増殖剤および抗血小板剤に関与する薬物併用治療は、医療技術分野において公知である。血管増殖疾患(すなわち、新生内膜過形成)は、その他の抗血管増殖薬との併用において血管外にラパマイシン化合物を投与した後に応答することが示唆されている。この薬物併用投与は、コラーゲン、フィブリン、またはキトサンで構築される生体再吸収性マトリクスへの浸透に限定される。Iyer et al.,「Apparatus And Methods For Preventing Or Treating Failure Of Hemodialysis Vascular Access And Other Vascular Grafts」米国特許第6,726,923号(2004)。組織移植片および器官移植拒絶は、ラパマイシン、タクロリムス、抗凝固剤、および抗トロンビン剤との併用において全身に投与される抗血小板薬(糖タンパク質IIb/IIIa受容体アンタゴニスト)で処理され得る。Porter et al.,「Inhibition Of Platelet Aggregation」国際公開公報第03/090733 A1号。抗凝固および抗血小板薬併用は、急性冠状動脈虚血症候群、血栓症、血栓塞栓症、血栓性閉塞、再狭窄、一過性虚血発作、および血栓性脳卒中を含む状態を処理することが公知である。Wong et al.,「Synergy Between Low Molecular Weight Heparin And Platelet Aggregation Inhibitors, Providing A Combination Therapy For The Prevention And Treatment Of Various Thromboembolic Disorders」国際公開公報第00/53168号;およびEl-Naggar et al.,「Prevention And Treatment Of Thromboembolic Disorders Associated With Arterial & Venous Thrombosis」米国特許出願刊行物第2003/0199457 A1号。インプラント可能医療デバイス(すなわち、ステント、人工移植片、血管縫合に限定される)は、身体器官の管腔へのインプランテーションの後の再狭窄を防ぐために平滑筋細胞移動を阻害する少なくとも一つの薬物でのコーティングを有するとして開示される。抗再狭窄薬は、平滑筋細胞抗増殖剤(ラパマイシンおよびエベロリムス)、抗血栓剤、および抗炎症薬を含む。Rowland et al.,「Drug Eluting Implantable Medical Device」米国特許出願刊行物第2004/0039441 A1号。しかしながら、これらの治療は、外科手術、外傷、または創傷の後に続く瘢痕組織および/または癒着形成に関する問題を解決しない。さらに、これらの治療は、フィブリン鞘形成が防がれ得るようなカテーテルインプランテーションの間および後の両方(すなわち、例えば、長期間透析の間)の制御薬物放出を当業者に教示しない。
【0116】
抗増殖薬
本発明は、細胞増殖抑制および抗増殖薬(すなわち、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体)を含む媒質が、外科的部位または管腔を伴う器官の外側に(すなわち、例えば、血管外に)適用される、様々な態様を企図する。一つの態様において、薬物は、瘢痕組織および/もしくは癒着の形成または組織癒着を軽減するかまたは防ぐ。特定の薬物または薬物併用を外科的部位または創傷に送達するための本発明によって企図される媒質は、微小粒子、ゲル、ヒドロゲル、発泡体、生体接着剤、液体、またはキセロゲルを含むが、それらに限定されない。特に、これらの媒質は、本発明に従うように単独でまたは併用してシロリムスなどの薬物の制御放出を提供する様々な態様において産生される。
【0117】
瘢痕組織および/または癒着形成における軽減は、使用される細胞増殖抑制性抗増殖薬が、細胞増殖抑制性および抗炎症性の両方である場合に獲得されると思われる。瘢痕組織および/または癒着形成における改善された軽減は、抗増殖薬が、抗血小板および/または抗血栓薬(すなわち、例えば、ゼミロフィバン)と併用される場合に獲得されると思われる。瘢痕組織および/または癒着形成におけるさらにより良く改善された軽減は、抗増殖性-抗血小板剤/抗血栓剤併用が、さらに抗凝固薬(すなわち、ヘパリンまたは低分子量ヘパリン)と併用される場合に獲得されると思われる。
【0118】
一つの態様において、本発明は、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体などであるがそれらに限定されない細胞増殖抑制性抗増殖薬を企図する。例えば、これらの薬物は、シロリムス、タクロリムス、エベロリムス、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンを含むが、それらに限定されない。c-mycへのアンチセンスおよびツムスタチンを含むがそれらに限定されないその他の非シロリムス関連薬物も、瘢痕組織および/または癒着形成を軽減することにおいて効果的であり得る。
【0119】
31および42位にモノ-エステルおよびジ-エステルを含むシロリムスのその他の誘導体は、抗真菌剤としておよびラパマイシンの水溶性プロドラッグとして有用であることが示されている。Rakit S.,「Acyl Derivatives Of Rapamycin」米国特許第4,316,885号(1982);およびStella et al.,「Prodrugs Of Rapamycin」米国特許第4,650,803号(1987)。30-デメトキシラパマイシンも、文献において記載されている。Vezina et al.,「Rapamycin (AY-22,989), A New Antifungal Antibiotic. I. Taxonomy Of The Producing Streptomycete And Isolation Of The Active Principle」J. Antibiot. (Tokyo) 28:721-726 (1975);Sehgal et al.,「Rapamycin (AY-22,989), A New Antifungal Antibiotic. II. Fermentation, Isolation And Characterization」J. Antibiot. (Tokyo) 28:727-732 (1975);Sehgal et al.,「Demethoxyrapamycin (AY-24,668), A New Antifungal Antibiotic」J. Antibiot. (Tokyo) 36:351-354 (1983);およびPaiva et al.,「Incorporation Of Acetate, Propionate, And Methionine Into Rapamycin By Streptomycetes hygroscopicus」J. Nat Prod 54:167-177 (1991)。
【0120】
ラパマイシンの多くのその他の化学的修飾が、試されている。これらは、ラパマイシンのモノ-およびジ-エステル誘導体(国際公開公報第92/05179号)、ラパマイシンの27-オキシム(欧州特許第467606号);ラパマイシンの42-オキソ類似体(Caufield et al.,「Hydrogenated Rapamycin Derivatives」米国特許第5,023,262号(1991)(参照により本明細書に組み入れられる));二環式ラパマイシン(Kao et al.,「Bicyclic Rapamycins」米国特許第5,120,725号(1992)(参照により本明細書に組み入れられる));ラパマイシンダイマー(Kao et al.,「Rapamycin Dimers」米国特許第5,120,727号(1992)(参照により本明細書に組み入れられる));ラパマイシンのシリルエーテル(Failli et al.,「Silyl Ethers Of Rapamycin」米国特許第5,120,842号(1992)(参照により本明細書に組み入れられる));ならびにアリルスルホン酸塩およびスルファミン酸塩(Failli et al.,「Rapamycin 42-Sulfonates And 42-(N-carboalkoxy) Sulfamates Useful As Immunosuppressive Agents」米国特許第5,177,203号(1993)(参照により本明細書に組み入れられる))の調製を含む。ラパマイシンは、最近、その自然発生的な鏡像異性型において合成された。Nicolaou et al.,「Total Synthesis Of Rapamycin」J. Am. Chem. Soc. 115:4419-4420 (1993);Romo et al.,「Total Synthesis Of (-)Rapamycin Using An Evans-Tishchenko Fragment Coupling」J. Am Chem. Soc. 115:7906-7907 (1993);Hayward et al.,「Total Synthesis Of Rapamycin Via A Novel Titanium-Mediated Aldol Macrocyclization Reaction」J. Am. Chem. Soc., 115:9345-9346 (1993)。
【0121】
タキソールなどの細胞毒性薬は、それらは抗増殖性であるが、外科的処置に起因する瘢痕組織および/または癒着形成を軽減するためのシロリムス関連薬物などの細胞増殖抑制薬より全く効率的ではない。発明のメカニズムを理解する必要はないが、タキソール(すなわち、例えば、パクリタキセル)などのこれらの細胞毒性薬は、主として微小管安定化を阻害することによって作用し、mTORタンパク質との結合によって細胞増殖抑制性であると考えられているマクロライドファミリー(すなわち、例えば、ラパマイシン)とは全く異なると考えられている。
【0122】
細胞増殖抑制薬治療を使用する問題のある外科手術後の瘢痕化および/または癒着を解決するための以前の試みは、アントラサイクリン、ダウノマイシン、マイトマイシンC、およびドキソルビンなどのこれらの高度な細胞毒性有糸分裂阻害剤を使用した。しかしながら、シロリムスまたは同様の作用薬物などの任意の細胞増殖抑制性抗増殖薬の記述はなされていない。Kelleher P. J.,「Methods And Compositions For The Modulation Of Cell Proliferation And Wound Healing」、米国特許第6,063,396号(2000)(参照により本明細書に組み入れられる)。同様に、細胞毒性抗増殖薬(すなわち、タキソール)の全身および標的局部投与の両方は、動脈再狭窄を阻害または軽減すると報告されている。Kunz et al.,「Therapeutic Inhibitor Of Vascular Smooth Muscle Cells」、米国特許第5,981,568号(1999)(参照により本明細書に組み入れられる)。重要なこととして、Kunz et al.の最も好ましい抗増殖剤(すなわち、タキソールおよびサイトカラシン)は、長期処理の間、細胞毒性であることが認められる。しかしながら、Kunz et al.は、瘢痕組織および/または癒着形成を引き起こし得る細胞増殖を軽減するために、管腔外応用に対する薬物シロリムスまたは任意の官能性シロリムス類似体を考えることができない。
【0123】
瘢痕組織および/または癒着形成を軽減するためのその他の試みは、局部組織を照射する材料のシート上に配置されるβ-放出放射性同位体を使用することを含む。Fischell et al.,「Radioisotope Impregnated Sheet Of Biocompatible Material For Preventing Scar Tissue Formation」米国特許第5,795,286号(1998)(参照により本明細書に組み入れられる)。放射性同位体は、癒着に関連する細胞増殖を防ぐことにおいて効果的であり得るが、放射性同位体に関連する限定された貯蔵寿命および安全性問題は、それらが理想的でないようにする。
【0124】
細胞増殖および再狭窄は、管腔内血管ステントが、ラパマイシン(すなわち、シロリムス)、アクチノマイシン-D、またはタキソールなどの抗増殖薬でコーティングされる場合、血管形成術損傷動脈内で軽減されることが公知である。Falotico et al.,「Drug/Drug Delivery Systems For The Prevention And Treatment Of Vascular Disease」米国特許刊行物第2002/0007214 A1号;第2002/0007215 A1号;第2001/0005206 A1号;第2001/007213 A1号および第2001/0029351 A1号;およびMorris et al.,「Method Of Treating Hyperproliferative Vascular Diseases」米国特許第5,665,728号(すべて参照により本明細書に組み入れられる)。これらの開示は、ステントなどの管腔内デバイスを使用するラパマイシン投与によって過剰増殖性平滑筋を処理することに限定される。
【0125】
抗血栓薬
血小板凝集が後に続く血小板接着は、血管への任意の損傷(すなわち、例えば、外科的切開、外傷、または創傷)の後に続いて生じる第一の生物学的事象であると考えられている。発明のメカニズムを理解する必要はないが、血小板は、血液止血を維持し、かつ凝固反応が生じるためのリン脂質表面を提供し、それによって発生している血栓を安定化すると考えられている。さらに、血小板との関連において、白血球(すなわち、白血球細胞)も、フィブリン形成および沈着を引き起こす血液凝固カスケードを誘因する組織因子を発現することによって、凝固反応を促す。白血球は、当技術分野において、炎症性細胞とも呼ばれ、それによって炎症性プロセスを血栓形成における不可欠な局面にする。Shebuski et al.,「Role Of Inflammatory Mediators In Thrombogenesis: Perspectives in Pharmacology (PIP)」J. Pharmacol. Exp. Ther., 300:729-735 (2002)。
【0126】
本発明の様々な態様は、血栓形成を阻害することを企図する。血栓形成阻害は、血液凝固カスケードにおける様々なポイントで生じ得る。循環血液血小板(3×109 細胞/ml)が、通常は開始因子であることは、概して当技術分野において公知である。血小板は、外来表面または損傷組織への結合によって反応する第一のものであり得る。最近、GPIIb/IIIaフィブリノーゲン受容体アンタゴニストが、効果的な抗血小板薬として導入されている。または、フィブリン形成および/または血栓安定化を阻害することは、抗トロンビン剤、ヘパリン、低分子量ヘパリン類似体、またはその他の抗凝固薬を投与することによって遂行され得る。
【0127】
一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤は、遅延放出製剤として投与され、阻害剤の放出は、およそ1〜3日遅延される。発明のメカニズムを理解する必要はないが、GPIIb/IIIaは、フィブリン形成を活性化する血小板受容体に作用すると考えられている。
【0128】
現在、3つのGPIIb/IIIaフィブリノーゲン受容体アンタゴニストが市販されている(アグラスタット(登録商標)、インテグリリン(登録商標)、およびレオプロ(登録商標))。これらの薬物は、静脈内に投与され、現在、i)合併症に対する高リスクを伴う血管形成術を有する;ii)外科手術の18〜24時間前から始まり、外科手術後少なくとも1時間継続する、緊急経皮的冠状動脈診療(すなわち、例えば、バルーン血管形成術、アテローム切除術、またはステント配置)を受けている;およびiii)難治性不安定狭心症を伴う患者に処方されている。
【0129】
上に記述されるように、血小板および白血球は、損傷組織(すなわち、例えば、血管)とほぼ同じ方式で外来物質に応答する。発明のメカニズムを理解する必要はないが、フィブリン沈着およびその後のカプセル化が後に続く血小板接着は、フィブリン鞘形成に関与すると考えられている。フィブリン鞘は、特に中心静脈および腹腔内透析カテーテルを使用する場合、血管内カテーテル医療合併症に関与することが公知である。Santilli, J.,「Fibrin Sheaths And Central Venous Catheter Occlusions: Diagnosis And Management」Tech. in Vascular and Interventional Radiology 5:89-94 (2002)。
【0130】
一つの態様において、本発明は、GPIIb/IIIa阻害剤(すなわち、例えば、ゼミロフィバン)および抗凝固剤(すなわち、例えば、低分子量ヘパリン類似体)を含む薬物併用で外側表面をコーティングし、それによってフィブリン鞘形成を防ぐことを含む、カテーテルまたは血管移植片(すなわち、例えば、合成血管移植片)機能を延長するための方法を企図する。別の態様において、本発明は、GPIIb/IIIa阻害剤(すなわち、例えば、ゼミロフィバン)および抗凝固剤(すなわち、例えば、低分子量ヘパリン類似体)を含む薬物併用で内側表面をコーティングし、それによってフィブリン鞘形成を防ぐことを含む、カテーテルまたは血管移植片(すなわち、例えば、合成血管移植片)機能を延長するための方法を企図する。
【0131】
一つの態様において、本発明は、抗トロンビン剤(すなわち、例えば、ビバリルジン)および抗凝固剤(すなわち、例えば、低分子量ヘパリン類似体)を含む薬物併用で血管内カテーテルまたは血管移植片(すなわち、例えば、合成血管移植片)の外側表面をコーティングする段階を含む、カテーテル機能を延長するための方法を企図する。別の態様において、本発明は、抗トロンビン剤(すなわち、例えば、ビバリルジン)および抗凝固剤(すなわち、例えば、低分子量ヘパリン類似体)を含む薬物併用で血管内カテーテルの内側表面をコーティングする段階を含む、カテーテル機能を延長するための方法を企図する。
【0132】
血小板は、平滑筋細胞増殖を促す成長因子、特に血小板由来成長因子(PGDF)を放出することも公知である。Schwartz et al.,「Common Mechanisms Of Proliferation Of Smooth Muscle In Atherosclerosis And Hypertension」Hum Pathol. 18:240-247 (1987)。例えば、冠状動脈病変を伴う患者におけるステント配置の後に続いて、血小板は、損傷血管の管腔内表面へ接着する。その後、結合血小板は、再狭窄を引き起こす成長因子を放出する。再狭窄は、平滑筋細胞が、血管閉塞が3〜6ヶ月以内に生じるように(すなわち、血管内ステント配置の後に続くなど)、損傷血管内で蓄積する状態である。再狭窄は、薬物溶離ステントの使用、特にラパマイシンなどの薬物で軽減され得る。Falotico et al.,「Drug/Drug Delivery Systems For The Prevention And Treatment Of Vascular Disease」米国特許出願刊行物第2002/0016625 A1号、2001年5月7日出願。2002年2月7日刊行。しかしながら、ステント配置の後に続く血栓形成は、問題である。Jeremias et al.,「Stent Thrombosis After Successful Sirolimus-Eluting Stent Implantation」Circulation 109(16):1930-1932 Epub April 12 (2004)。ステント技術は、抗血小板薬溶離ステントまたは移植片を使用して、この問題を解決することを試みているが、その効能は、これまでのところ未知である。Falotico, R.,「Coated Medical Devices For The Prevention And Treatment Of Vascular Disease」米国特許出願第2003/0216699 A1号。2003年5月7日出願。2003年11月20日刊行。
【0133】
本発明は、血管内ステント配置でまたはその近くで、抗増殖剤、抗血小板剤、抗トロンビン剤、または抗凝固剤を含む薬物併用を投与することを企図する。
【0134】
血小板媒介血栓症は、成功した天然および合成移植片インプランテーションを困難にすることも公知である。血液透析血管アクセス部位(下方)または閉塞動脈血管系(すなわち、例えば、血管末梢または心臓における)バイパスは、これらの移植片を利用する。血管新生内膜形成は、天然および合成移植片、特に静脈流出路において生じることが公知である。Walles et al.,「Functional Neointima Characterization Of Vascular Prostheses In Human」Ann Thorac Surg. 77:864-868 (2004)。
【0135】
血管新生内膜形成(すなわち、例えば、病変)は、主として平滑筋細胞から成り、最終的に移植片内の減少した血流をもたらす。血小板放出成長因子は、部分的に、血管新生内膜形成を刺激し得る。新生内膜病変が発生するにつれて、血流は、より乱流になり、さらなる損傷が生じ、付加的な血小板補充を引き起こす。付加的な血小板補充にともない、フィブリン沈着は、起こり得る結末として完全な移植片不全を伴う結果となり得る。したがって、抗増殖剤、抗血小板剤、抗トロンビン剤、および抗凝固剤を含む薬物併用は、抗増殖剤単独、またはただ1つのその他の薬物と併用される抗凝固剤とは異なった利点を有し得る。
【0136】
一つの態様において、本発明は、移植片静脈流出路へ薬物併用を投与するためのデバイスおよび方法を企図する。一つの態様において、薬物併用は、制御放出ポリマーに基づく媒質または担体を使用して投与される。一つの態様において、媒質または担体は、薬物併用が、管腔内血管表面(すなわち、例えば、脈管脈管系)に拡散するように、外側移植片表面の周囲にラップまたはドレープされ得る。一つの態様において、媒質または担体は、抗増殖薬(すなわち、例えば、ラパマイシン)、抗血小板薬(すなわち、例えば、ゼミロフィバン)、抗トロンビン薬(すなわち、例えば、ビバリルジン)、または抗凝固剤(すなわち、例えば、ヘパリン)を含むがそれらに限定されない少なくとも一つの薬物を含む。当業者は、本発明によって企図されるような薬物併用を記載する場合、2つ以上の薬物の併用が意図されることを認識するであろう。
【0137】
本発明の特定の態様は、少なくとも一つの抗増殖薬を一つまたは複数の補足的および/または相補的薬学的薬物を併用する処理方法を含む。一つの態様において、抗増殖薬併用は、当技術分野において抗血小板薬、抗トロンビン剤、および抗凝固剤として一般的に公知の「抗血栓剤」を含むがそれらに限定されない、補足的および/または相補的薬学的薬物を含む。任意の薬物併用は、外科的処置の前、間、または後に、外科的部位に局所的に送達され得る。例えば、抗血栓剤およびヘパリン併用は、血管内カテーテル、または中心動脈系に適したその他の医療デバイスをコーティングするために使用され得る。
【0138】
一つの態様において、抗血小板薬は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む糖タンパク質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)フィブリノーゲン受容体アンタゴニストを含むが、それらに限定されない。発明のメカニズムを理解する必要はないが、ゼミロフィバンは、強力な抗血小板GPIIb/IIIaフィブリノーゲン受容体アンタゴニストであると考えられている。さらに、塩酸ゼミロフィバン(SC-54684A)は、プロドラッグ(基剤)であり、薬理学的に活性のある酸代謝体(すなわち、例えば、SC-54701A)への迅速なエステル加水分解を受けると考えられている。さらに、当業者は、抗血小板GPIIb/IIIaフィブリノーゲン受容体アンタゴニストが、血小板GPIIb/IIIa受容体アンタゴニストとしても公知であることを認識するべきである。
【0139】
一つの態様において、抗トロンビン剤は、ビバリルジン、キシメラガトラン、ヒルジン、ヒルログ、アルガトロバン、イノガトラン、エフェガトラン、またはトロンボモジュリンを含むが、それらに限定されない。
【0140】
一つの態様において、抗凝固剤は、ヘパリンを含む。一つの態様において、抗凝固剤は、低分子量ヘパリン(LMWH)を含む。別の態様において、抗凝固剤は、非分画ヘパリン(UFH)を含む。別の態様において、抗凝固剤は、チンザパリン、セルトパリン、パルナパリン、ナドロパリン、アルデパリン、エノキサパリン、レビパリン、またはダルテパリンを含むが、それらに限定されない。一つの態様において、抗凝固剤は、因子Xa(FXa)阻害剤(すなわち、例えば、フォンダパリヌクス)、因子IXa(FIXa)阻害剤、因子XIIIa(FXIIIa)阻害剤、および因子VIIa(FVIIa)阻害剤を含むが、それらに限定されない。
【0141】
ポリマーに基づく媒質
本発明の別の態様は、シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスの類似体を含む媒質または担体で、医療デバイスをコーティングすることを企図する。医療デバイスは、細胞増殖抑制または抗増殖薬(すなわち、例えば、シロリムスまたはシロリムスの類似体)を含む媒質が、医療デバイスの表面に付着されるようになる場合、「コーティング」される。例えば、そのような付着は、表面吸着、製造物の材料への浸透、医療デバイスの表面への共有またはイオン結合および単なる摩擦接着を含むが、それらに限定されない。
【0142】
本発明によって企図される担体または媒質は、ゼラチン、コラーゲン、セルロースエステル、硫酸デキストラン、ペントサン多硫酸塩、キチン、単糖類、アルブミン、フィブリンシーラント、合成ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドのブロックポリマー、ポリエチレングリコール、アクリレート、アクリルアミド、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、ポリ(オルトエステル)、シアノアクリレート、ゼラチン-レゾルシン-アルデヒド型生体接着剤、ポリアクリル酸、ならびにそのコポリマーおよびブロックポリマーを含むがそれらに限定されないメタクリル酸塩;ポリ(L-ラクチド)(PLA)、75/25ポリ(DL-ラクチド-コ-E-カプロラクトン)、25/75ポリ(DL-ラクチド-コ-E-カプロラクトン)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、コラーゲン、ポリアクティブ(polyactive)、およびポリグリコール酸(PGA);ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリジオキサノン(PDO)、およびシリコンを含むが、それらに限定されないポリマーを含み得る。その他のポリマーは、酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコン、架橋ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロゲル、架橋PVAヒドロゲル発泡体、ポリウレタン、ポリアミド、スチレンイソブチレン-スチレンブロックコポリマー(Kraton)、テレフタル酸ポリエチレン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、またはその他の生体適合性ポリマー材料、またはそのコポリマーの混合物;ポリ乳酸、ポリグリコール酸、もしくはそのコポリマーなどのポリエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸吉草酸(polyhydroxybutyrate valerate)、またはその他の生体分解性ポリマー、または混合物もしくはコポリマー、細胞外マトリクス構成要素、タンパク質、コラーゲン、フィブリン、またはその他の生体活性剤、またはその混合物を含み得るが、それらに限定されない。
【0143】
媒質は、様々なポリマーより選択され得る。しかしながら、媒質は、生体適合性、生体分解性、生体内分解性、無毒性、生体吸収性であり、かつ分解の遅速性を伴うべきである。本発明において使用され得る生体適合性媒質は、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、もしくはそのコポリマーなどのポリエステル、ポリ無水物、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸吉草酸、およびその他の生体分解性ポリマー、または混合物もしくはコポリマーなどを含むが、それらに限定されない。別の態様において、自然発生的なポリマー材料は、コラーゲン、フィブリン、エラスチンなどのタンパク質、および細胞外マトリックス構成要素、またはその他の生物学的薬剤もしくはその混合物より選択され得る。
【0144】
ポリ(ラクチド-コ-グリコリド);ポリ-DL-ラクチド、ポリ-L-ラクチド、および/またはその混合物などの本発明のコーティングとともに使用されるポリマー媒質は、様々な固有粘度および分子量である。例えば、本発明の一つの態様において、ポリ(DLラクチド-コ-グリコリド)(DLPLG, Birmingham Polymers Inc.)が使用される。ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)は、ビニルモノマーでありかつポリマーコロイド薬物担体としての機能を果たす、生体吸収性、生体適合性、生体分解性、無毒性、生体内分解性材料である。ポリ-DL-ラクチド材料は、均質な組成物の形式であり、可溶化され乾燥される場合、それは、薬学的物質が組織への送達のためにトラップされ得るチャネルの格子を形成する。
【0145】
本発明のいくつかの態様によって企図される任意のデバイス上の任意のコーティングの薬物放出速度論は、マトリックスとして使用されるポリマーまたはコポリマーの固有粘度および組成物における薬物の量に応じて制御され得る。ポリマーまたはコポリマー特徴は、ポリマーまたはコポリマーの固有粘度に応じて変化し得る。例えば、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)を使用する本発明の一つの態様において、固有粘度は、約0.55〜0.75(dL/g)の範囲であり得る。ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)は、ポリマー組成物の約50〜約99%(w/w)でコーティング組成物に添加され得る。ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)ポリマーコーティングは、例えば、コーティングされた医療デバイスが、伸縮および/または伸長を受け、塑性および/または弾性変形を受ける場合、クラッキングなしに変形し得る。それ故に、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)酸に基づくコートなどの塑性および弾性変形に耐え得るポリマーは、公知のポリマーよりも有利な特徴を有する。媒質の分解の速度は、様々な分子量のポリマーを使用して制御されてもよい。例えば、薬学的物質の放出のより遅い速度に対しては、ポリマーは、より高い分子量であるべきである。ポリマーまたはその組み合わせの分子量を変化させることによって、特定の薬物に対して分解の好ましい速度が達成され得る。または、薬学的物質の放出の速度は、ポリマーの一つまたは複数の層が後に続く、薬物の一つまたは複数の層が後に続く、医療デバイスへポリマー層を適用することによって制御され得る。付加的に、ポリマー層は、コーティングからの薬学的物質の放出の速度を減少させるために、薬物層間に適用され得る。
【0146】
さらに、本発明のいくつかの態様のコーティング組成物の鍛造性は、コポリマーにおけるグリコリドに対するラクチドの比を変化させることによって、さらに改善され得る。つまり、ポリマーの構成要素の比は、コーティングをより可鍛性にするために、および医療デバイスの表面へのコーティングの機械的接着を強化し、コーティング組成物の放出速度論において助けるために、調整され得る。本発明のこの態様において、ポリマーは、望ましい薬物放出の速度に応じて、分子量において変化し得る。グリコリドに対するラクチドの比は、それぞれ、組成物において約50〜15%に対して50〜85%の範囲であり得る。ポリマーにおけるラクチドの量を調整することによって、コーティングからの薬物の放出の速度が、制御されてもよい。
【0147】
GPIIb/IIIa阻害剤は、多くの方式において、および多数の生体適合性材料(すなわち、ポリマー)を利用して、医療デバイスに付着され得る。異なるポリマーは、異なる医療デバイスに対して利用される。例えば、エチレン-コ-酢酸ビニルおよびポリメタクリル酸ブチルポリマーは、ステンレススチールとともに利用される。Falotico et al.,米国特許出願第2002/0016625号。その他のポリマーは、ニッケルおよびチタンの合金などの超弾性特性を示す材料を含む、その他の材料から形成される医療デバイスとともに、より効果的に利用され得る。一つの態様において、GPIIb/IIIa阻害剤、シロリムス、タクロリムス、またはシロリムスの類似体などであるがそれらに限定されない薬物は、ポリマー媒質に直接的に取り込まれ、カテーテルの外表面上に、ポリマー噴霧が該カテーテルへ付着されるように噴霧される。別の態様において、次いで、該薬物は、時間とともにポリマー媒質から溶離し、周辺組織に進入すると思われる。一つの態様において、該薬物は、少なくとも1日〜およそ6ヶ月までの間、カテーテル上に付着されたままであると予期される。当業者は、任意の薬物が、塩基または酸性製剤のいずれかとしてのポリマーに基づく媒質と選択的に統合し得ることを認識すると思われる。一つの態様において、抗血小板薬(すなわち、例えば、ゼミロフィバン)は、ポリマーに基づく媒質への統合に先行して、酸性製剤に変換される。
【0148】
一つの態様において、本発明は、組織の手術後の外科的癒着を防ぎ、外科手術の間に組織を保護しかつ/または組織障害を防ぐ方法を企図する。一つの態様において、方法は、外科手術の間の組織の操作に先行する親水性ポリマー材料(すなわち例えば、ヒアルロン酸)の生理学的に許容される水性溶液の湿潤コーティングを伴う外科手術に関与する組織表面を提供する。Goldberg et al.,「Method And Composition For Preventing Surgical Adhesions And Tissue Damage」米国特許第6,010,692号(2000)(参照により本明細書に組み入れられる)。ヒアルロン酸は、特定のリンケージにおける約2500繰り返し二糖類ユニットの直鎖を含み、各々は、1つのグルクロン酸残基にリンクされたN-アセチルグルコサミン残基から成る。一つの態様において、ヒアルロン酸ポリマー材料は、抗増殖薬(すなわち、例えば、ラパマイシン)、抗血小板薬(すなわち、例えば、ゼミロフィバン)、抗トロンビン薬、抗凝固薬(すなわち、例えば、ヘパリン)、または抗炎症薬を含むがそれらに限定されない薬物をさらに含む。一つの態様において、親水性ポリマー材料は、市販されている製品を含む(すなわち、例えば、セプラフィルム(登録商標))。
【0149】
膜バリア
手術後の癒着を軽減することは、酸化再生セルロース(ORC)の編まれた織物などの、生体再吸収性材料で構築されるドレープ可能な一致する(conformable)癒着バリア織物を使用する場合、公知である。Linsky et al.,「Heparin-Containing Adhesion Prevention Barrier And Process」米国特許第4,840,626号(1989)(参照により本明細書に組み入れられる)。一つの態様において、膜癒着バリアは、ヘパリンで浸透され、12〜20パーセントの開口領域および約8〜15 mg/cm2の密度によって定義されるような気孔率を有することによって特徴付けられる酸化再生セルロースの織物を含む。Linsky et al.,「Method And Material For Prevention Of Surgical Adhesions」米国特許第5,002,551号(1991)(参照により本明細書に組み入れられる)。一つの態様において、膜バリアは、32ゲージ2バール縦編機で編まれる、60デニール、18フィラメント光輝レーヨン糸から調製される。別の態様において、膜バリアは、市販されている製品である(すなわち、例えば、インターシード(登録商標)、Johnson & Johnson)。別の態様において、ヘパリン-ORC膜バリアは、抗増殖薬、抗血小板薬、または抗トロンビン薬を含む薬物併用をさらに含む。その他の市販されているORC製品は、本発明の態様でコーティングされてもよい(すなわち、例えば、サージセル(登録商標))。発明のメカニズムを理解する必要はないが、ヘパリンは、本発明のポリマーコーティングへの取り込みに際して、癒着予防薬剤として作用すると考えられている。
【0150】
一つの態様において、本発明は、改善された抗癒着ポリマー膜バリアを企図し、ポリマー膜バリアは、薬物溶離媒質(すなわち、例えば、制御放出媒質)を含む。本明細書において記載される改善に適合するポリマー膜バリアは、現在市販されている(すなわち、例えば、サージラップ(登録商標))。当業者は、本明細書において記載される改善に適合する同様の抗癒着ポリマー膜バリアが、インサイチューで紫外線で架橋されるゼラチン-リボフラビンポリマー、ポリ(エチレンオキシド-コプロピレンオキシド)ポリマー、キトサン-ポリ(エチレングリコール)ポリマー、または注入可能(すなわち、例えば、流動性)アルギン酸ナトリウムポリマーを含むがそれらに限定されないポリマーを含むその他の組成物から構築され得ることを認識すると思われる。
【0151】
一つの態様において、本発明は、a)i)外科的部位(すなわち、例えば、開口または閉鎖);ii)I)シロリムスおよびシロリムスの類似体および官能性ポリマーを含む第一の水性媒質を含む第一のバレル;およびII)小さな架橋剤分子を含む第二の水性媒質を含む第二のバレルを含む、ツインバレルシリンジまたはカテーテルを提供する段階;b)第一および第二の水性媒質が混合されるようになる条件下で、第一および第二の媒質を外科的部位(すなわち、例えば、開口または閉鎖)上へ接触させる段階;およびc)外科的部位上の生体接着層を形成するために、自己重合反応によって開始される、第一および第二の媒質を架橋する段階を含む、外科的部位へヒドロゲルに基づく生体接着剤を投与するための方法を企図する。一つの態様において、第一および第二の媒質は、外科的部位上に噴霧される。一つの態様において、第一および第二の媒質は、逐次、外科的部位に接触させられる。別の態様において、第一および第二の媒質は、外科的部位に接触させる段階に先行して混合される。好ましくは、混合は、架橋接着性バリアを形成するために、外科的部位の表面上で生じる;例示的な架橋剤分子および官能性ポリマーは、デュラシール(商標)またはスプレーゲル(商標)(Confluent Surgical, Waltham, MA)を含む構成要素を含むが、それらに限定されない。Preul et al.,「Toward Optimal Tissue Sealants For Neurosurgery: Use Of A Novel Hydrogel Sealant In A Canine Durotomy Repair Model」, Neurosurgery 53:1189-1199 (2003)。一つの態様において、シロリムスおよびシロリムスの類似体は、第一の水性媒質において相分離される。一つの態様において、第一の水性媒質は、抗血小板薬、抗トロンビン薬、抗凝固薬、または抗炎症薬より選択される補足的または相補的薬物をさらに含む。一つの態様において、相分離は、油水混合物を含む。別の態様において、相分離は、本明細書において記載されるような微小粒子を含む。一つの態様において、架橋接着性バリアは、制御放出媒質を形成する。
【0152】
本発明の別の態様は、i)シロリムスおよびシロリムスの類似体および官能性ポリマーを含む第一の媒質およびii)小さな架橋剤分子を含む第二の媒質を含む、ヒドロゲルに基づく生体接着剤を企図する。一つの態様において、第一の媒質は、抗血小板薬、抗トロンビン薬、抗凝固薬、または抗炎症薬より選択される補足的または相補的薬物をさらに含む。一つの態様において、架橋剤分子は、エトキシル化グリセロール、イノシトール、トリメチロールプロパン、コハク酸エステル塩、グルタミン酸塩、2つ以上のエステルの組み合わせ(すなわち、例えば、グリコール酸塩/2-ヒドロキシ酪酸塩またはグリコール酸塩/4-ヒドロキシプロリン)を含むが、それらに限定されない。一つの態様において、官能性ポリマーは、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールを含むが、それらに限定されない。好ましくは、このヒドロゲルに基づく生体接着剤は、インサイチューで反応および架橋することが可能な求電子または求核基を有する水溶性前駆体から生体適合性架橋ポリマーを形成する。Pathak et al.,「Biocompatible Crosslinked Polymers」米国特許第6,566,406号(参照により本明細書に組み入れられる)。一つの態様において、架橋ポリマーは、生体分解性または生体再吸収性である。時間の既定の期間内の分解または再吸収を可能にする(すなわち、例えば、化学的にまたは酵素的に加水分解可能な架橋による)生体分解性架橋を提供する特定の態様が企図される。そのような化学的に加水分解可能なリンケージの例は、グリコリド、(dl)-ラクチド、(l)-ラクチド、カプロラクトン、ジオキソノン(dioxonone)、または炭酸トリメチレンのポリマー、コポリマー、およびオリゴマーを含むが、それらに限定されない。そのような酵素的に加水分解可能なリンケージの例は、メタロプロテイナーゼまたはコラゲナーゼによって開裂可能なペプチドリンケージを含むが、それらに限定されない。時間とともに、ヒドロゲルに基づく生体接着剤は、吸収され体から簡単に(すなわち、例えば、腎作用によって)取り除かれる水溶性材料を形成するために液化する。架橋反応は、好ましくは、生理学的条件下で水性溶液において生じる。一つの態様において、架橋反応は、「インサイチュー」で生じ、それらが生きた動物または人体における器官または組織などの局部部位において生じることを意味する。一つの態様において、架橋反応は、重合の実質的な熱を放出しない。一つの態様において、架橋反応は、10分以内に、好ましくは2分以内に、さらに好ましくは1分以内に、および最も好ましくは30秒以内に完了する。
【0153】
医療デバイスコーティング
本発明の様々な態様によって企図される抗癒着薬併用コーティングは、医療デバイスの内および外表面への共有結合を有するポリマーを含み得る。一つの態様において、コーティングは、潤滑性、治療的装填、および治療的流出の期間などの万能表面特徴を提供する。別の態様において、コーティングは、潤滑性、親水性、柔軟性装填能力、制御可能な治療的放出速度論、デバイスの直径を顕著に変更せず生体適合性である内および外管腔コーティングを含むが、それらに限定されない特徴を含む。一つの態様において、薬物併用コーティングは、病原菌(すなわち、例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)および緑膿菌(Pseudomonas))に対して効果的な銀に基づく抗菌性組成物をさらに含む。
【0154】
一つの態様において、抗癒着薬併用コーティング組成物は、ポリマー侵襲性医療デバイスに共有結合される、市販されている高性能親水性ポリマーを含む(すなわち、例えば、Covalon Technologies Inc., Toronto Canada)。発明のメカニズムを理解する必要はないが、コーティングは、シリコン、ポリウレタン、または塩化ポリビニルを含むがそれらに限定されない医療デバイスポリマー表面の静止摩擦の係数を軽減することによって、改善された生体適合性および官能性を引き起こすと考えられている。さらに、表面コーティングは、デバイス挿入または応用の部位における制御流出薬物併用組成物に対する貯蔵所として作用すると考えられている。一つの態様において、抗癒着薬物併用は、医療デバイスをコーティングした後に適用される。一つの態様において、コーティングされる医療デバイスは、カテーテル、腹膜透析カテーテル、血液透析カテーテル、創傷ドレーン、中心動脈ライン、その他の管状医療デバイス、ならびに様々な創傷包帯剤および皮膚被覆剤を含むが、それらに限定されない。
【0155】
本発明は、医療デバイスをポリマーに基づく薬物併用媒質で浸漬コーティングする段階、およびポリマーに基づく薬物併用を紫外線への曝露によって重合する段階を含む方法を企図する。一つの態様において、重合は、シリコン、ポリウレタン、または塩化ポリビニルを含むがそれらに限定されないポリマーに適用可能な低エネルギー表面修飾プロセスである。発明のメカニズムを理解する必要はないが、ポリマーが紫外線によって活性化される場合、開始剤試薬は、ポリマー表面から水素原子を除去する高反応性中間体分子を産出すると考えられている。さらに、反応性ポリマー表面は、溶液におけるモノマーが共有結合ポリマーコーティングを形成することも引き起こす連鎖反応メカニズムによって、今度は、溶液におけるモノマーがポリマーデバイス表面との炭素-炭素または炭素-窒素結合を形成することを可能にすると考えられている。一つの態様において、開始剤中間体は、高反応性であり、共有結合コーティングを促進する。別の態様において、薬物併用は、ポリマーに基づく媒質形成の後に統合される。別の態様において、薬物併用ポリマーコーティングは、水和および脱水コラーゲンをさらに含む。例えば、これらのコラーゲンに基づくポリマー媒質デバイスは、材料の局所およびインプラント可能外科的シート(すなわち、外科的ラップ、縫合、ガーゼなど)、または外傷もしくは熱傷の後に続く皮膚もしくは組織再生に対して有用な三次元骨格を含むが、それらに限定されない。
【0156】
当業者は、コーティング医療デバイス(すなわち、例えば、血管移植片および血管内カテーテル)に対するポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアセトアミド)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレンコ-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸n-ブチル)、またはポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)を含むが、それらに限定されないことを認識すると思われる。
【0157】
本発明の一つの態様は、外科的処置、外傷、または創傷の後に続く瘢痕組織および/または癒着の形成を軽減するために、制御様式において薬物(すなわち、例えば、細胞増殖抑制性抗増殖薬)をゆっくりと放出する組成物を企図する。一つの態様において、細胞増殖抑制薬は、外科的材料および媒質を含む医療デバイスに付着され得、該デバイスは、カテーテル、移植片、メッシュ、ラップ、または閉鎖を含むが、それらに限定されない。別の態様において、細胞増殖抑制薬は、抗血小板薬、抗血栓薬、抗凝固薬、または抗炎症薬を含むがそれらに限定されないその他の薬物と併用され得る。一つの態様において、抗血小板薬は、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む。別の態様において、抗血小板薬は、SC-54701A、酸性ゼミロフィバン代謝体を含む。媒質は、媒質が付着される医療デバイスから薬物をゆっくりと溶離する(少なくとも1日の時間の間)ポリマーおよび/またはコポリマーを含み得る。一つの態様において、媒質は、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体などの細胞増殖抑制性抗増殖薬の制御放出を提供する。別の態様において、抗血小板薬、抗血栓薬、または抗凝固薬を含むがそれらに限定されないその他の薬物は、制御様式において媒質またはデバイスから放出されてもよい。または、薬物は、デバイスに直接的に付着され得、その後に放出され得る。成功した発明のメカニズムを理解する必要はないが、シロリムス様薬物が、mTORタンパク質複合体形成とサイクリンシグナル伝達との相互作用の手段によって、有糸分裂の開始を干渉すると考えられている。さらに、これらの薬物が、細胞有糸分裂のS期にまたはその前に作用する非常に早期の細胞周期有糸分裂阻害剤として薬物がゆっくりと溶離するメッシュに近接する細胞に作用することによって、DNA複製の開始を妨げると考えられている。
【0158】
本発明は、薬物の制御放出を提供する能力を有する媒質を企図する。例えば、リポソーム、微小粒子、ゲル、ヒドロゲル、キセロゲル、発泡体は、制御放出特徴と適合する組成物を有する公知の媒質である。具体的には、リポソームおよび微小粒子は、例えば、ポリマー組成物、濃度、物理的サイズ、または物理的形状を変化させることによって、薬物の制御放出を提供し得る。ゲルおよびヒドロゲルは、制御放出リポソームまたは微小粒子を含み得る。または、ゲルまたはヒドロゲルのポリマー組成物または濃度は、ミセル状ゲル構造の産生を引き起こし得、ゲルそのものの分解が、付着された薬物の制御放出に関与する。さらに、発泡体は、媒質が制御放出特徴を提供することを可能にするリポソームまたは微小粒子を含み得る。
【0159】
一つの態様において、本発明は、ステンレススチール医療デバイス(すなわち、例えば、永久インプラント)上のシロリムスヒドロゲルポリマーコーティングを企図する。好ましくは、ステンレススチールインプラントは、スチレンアクリル水性分散ポリマー(55%固体)でブラシコーティングされ、85℃で30分間乾燥される。次に、このポリマー表面は、以下からなる制御放出ヒドロゲル組成物でオーバーコーティングされる:
ポリビニルピロリドン(PVP) 9.4 gm
エタノール 136.1 gm
ブチロラクトン 30.6 gm
シクロヘキサノンにおける0.0625%ニトロセルロース 3.8 gm
シロリムス(オリーブオイルに溶解される) 10 mg/ml
次いで、コーティングは、使用に先行して85℃で25時間乾燥される。本発明が、上のシロリムス濃度によって限定されることは意図されない。当業者は、0.001〜10 mg/ml、好ましくは0.1〜5 mg/ml、およびより好ましくは0.001〜1 mg/mlなどであるがそれらに限定されないシロリムスの様々な濃度が使用され得ることを認識するべきである。
【0160】
別の態様において、非浸食ポリマーの多層化が、シロリムスと併せて利用され得る。好ましくは、ポリマー媒質は、2層を含む;第一のポリマーおよび取り込まれたシロリムスを含む内基底層、ならびにシロリムスが非常に素早く溶離し周辺組織に進入するのを防ぐための拡散バリアとして作用する外第二ポリマー層。一つの態様において、外層または保護膜の厚さは、シロリムスが媒質から溶離する速度を決定する。好ましくは、ポリマー媒質の全厚さは、約1ミクロン〜約20ミクロンまたはより大きい範囲である。本発明の別の態様は、ポリマー/シロリムス混合物をカテーテル上に噴霧または浸漬することを企図する。
【0161】
ジ-アミノ酸ポリマー
一つの態様において、本発明は、ジ-アミノ酸ポリマー(すなわち、例えば、ポリ(エステルアミド);PEA)、抗増殖薬(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体)、および抗血小板薬、抗血栓薬、または抗凝固薬を含むがそれらに限定されない別の薬物を含む組成物を企図する。一つの態様において、ジ-アミノ酸ポリマーは、自然発生的なアミノ酸およびその他の無毒性基礎的要素から成る生体分解性ポリマーのファミリーを含む。
【0162】
ジ-アミノ酸ポリマーは、軽度溶液重合条件下で調製され得、毒性触媒を欠き、再現性のある分子量を有し、かつ素晴らしい血液および組織適合性を示す。例えば、PEAは、ジオール(すなわち、例えば、ヘキサンジオール)および二塩基酸(例えば、すなわち、例えば、セバシン酸(1,8-オクタンジカルボン酸))で、2つのアルファ-アミノ酸(すなわち、例えば、L-ロイシンおよびL-リジン)のモノマーを合成することによって作られ得る。
【0163】
インビボPEA生体適合性は、ブタ冠状動脈にPEAポリマーコーティングステントまたは地金属ステントのいずれかをインプラントすることによって試験された。ステント誘導再狭窄における差は見られなかった。具体的には、狭窄直径、損傷スコア、および狭窄領域は、2つの群の間で異ならなかった。この研究は、PEAポリマーが、インプランテーションに適していることを示唆する。Lee et al.,「In-vivo biocompatibility evaluation of stents coated with a new biodegradable elastomeric and functional polymer」Coron Artery Dis. 13:237-41 (2002)。
【0164】
一つの態様において、本発明は、少なくとも一つのカルボキシル基を含むジ-アミノ酸ポリマーを企図する。一つの態様において、リジンアミノ酸は、カルボキシル基を含む。一つの態様において、カルボキシル基は、薬物を付着する。一つの態様において、薬物は、シロリムス、タクロリムス、シロリムスの類似体、抗血小板薬、抗血栓薬、または抗凝固薬を含む群より選択され得る。
【0165】
一つの態様において、本発明は、抗酸化物質を含むジ-アミノ酸ポリマーを企図する。一つの態様において、抗酸化物質は、テンパミン(tempamine)(4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル;4-アミノTEMPOとしても公知である)を含む。一つの態様において、PEAは、PEA-4-アミノ-TEMPO(すなわち、例えば、PEA-TEMPO)に結合される。
【0166】
薬学的グレード生体分解性ポリマー(すなわち、例えば、ポリ乳酸およびポリグリコール酸)は、医療技術分野において公知であるが、それらの分解特徴のために、持続性部位特異的薬物送達応用を提供するのには不十分であることが証明された。具体的には、これらのポリマーは、加水分解によって分解し、それらを生物学的条件において本質的に不安定にする。水によるこの分解は、バルク浸食を引き起こし、極めて無効な薬物送達能力を引き起こす。結果として、これらのポリマーを含む医療デバイスは、放出される薬剤の量ならびに放出水平軸(horizon)の両方に関して、体内での薬学的薬剤の不規則な放出を提供する。
【0167】
一つの態様において、本発明は、加水分解を有さないPEAポリマーを企図し、取り込まれた薬物は、ポリマーから溶離する。別の態様において、酵素溶液(すなわち、例えば、キモトリプシンまたはエステラーゼ酵素)と接触するPEAポリマーは、均一にかつ線形に分解する。発明のメカニズムを理解する必要はないが、均一かつ線形な分解プロファイルは、効果的で制御された薬物送達を提供すると考えられている。
【0168】
一つの態様において、本発明は、自然治癒応答を促すことが可能なPEAポリマーを企図する。PEAポリマーは、PEA、PEA-TEMPO、50:50ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(メタクリル酸n-ブチル)(PBMA)、および組織培養処理ポリエチレン(TCPS)へのヒト末梢血単球の曝露の後に続いて、生体適合性である。また、ヒト冠状動脈内皮細胞(EC)が生育され、またはヒト血小板は、PEA、PEA-TEMPO、および非分解性ポリエチレン-コ-酢酸ビニル(PEVAc)/PBMAに曝露され、毒性効果は示さなかった。
【0169】
PEAポリマー表面は、接着単球の形態および量を調節する。例えば、PEAおよび/またはPEA-TEMPOポリマーに付着された単球は、対照、非活性TCPS、およびその他のポリマーと等価の速度で、多核細胞を形成するために融合するマクロファージに分化した。例えば、ヒト単球は、ウェルに播種され得る。24時間インキュベーションの後、癒着が、細胞内アデノシン三リン酸レベルを定量することによってモニターされ得る。図14。接着単球は、炎症誘発性活性化に対してもアッセイされた。
【0170】
インターロイキン-6(IL-6)は、活性化単球によって分泌されることが公知であり、付加的な炎症誘発性サイトカインの分泌を誘導し得る。PEAおよび/またはPEA-TEMPOに付着された単球は、PLGAおよびPBMAと比較した場合、IL-6の軽減されたレベルを分泌した。
【0171】
ヒト冠状動脈内皮細胞が、自然治癒特性促進能力を決定するために、PEAおよび/またはPEA-TEMPOに付着され得る。PEA上の内皮細胞増殖は、PEVAc/PBMA上よりも4倍高いことが公知である。
【0172】
血液適合性は、PEAポリマーを新鮮に単離されたヒト血小板に30分間接触させることによって決定され得る。活性化の尺度であるPEA上の血小板からのATP放出は、PEVAc/PBMA上の血小板よりも2倍低いことが公知である。
【0173】
生体分解性アミノ酸に基づくポリマー(すなわち、例えば、PEAポリマー)の組織適合性のインビトロ査定は、これらのポリマーが、炎症誘発性反応を弱め、再内皮化(re-endothelialization)を促すことによって、自然治癒応答を促し得ることを示唆する。加えて、血小板活性化抑制は、PEAを含むポリマーが血液適合性であることを示唆する。
【0174】
ポリ(エステルアミド)(PEA)ポリマーは、
i)プログラム可能であること−PEAポリマー構成要素は、生物学的および物理的特性をカスタマイズするために変化され得る;
ii)官能化−薬学的化合物(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、シロリムスの類似体、抗血小板剤、抗血栓剤、抗凝固剤)は、アミノ酸官能基によってポリマー骨格に共有結合され得る。または、そのような薬学的化合物は、ポリマーマトリックス内に取り込まれ得(すなわち、例えば、非共有相互作用によって)、化合物は、制御様式において溶離する;
iii)弾性−PEAポリマーは、300%よりも大きく伸長し得る;
iv)均一表面分解−付着された薬物の制御放出を提供する
v)酵素的生体分解−アミノ酸様エステルおよびアミド結合の酵素攻撃
vi)証明された血液、細胞、および組織生体適合性−インビトロ、前臨床および臨床研究
を含むがそれらに限定されない、その他の周知の生体分解性ポリマーよりも多くの利点を有する。
【0175】
発明のメカニズムを理解する必要はないが、PEAおよび/またはPEA-TEMPOポリマーが、臨床心臓血管治療に適した生体分解性ポリマーを提供すると考えられている。i)PEAポリマーが、炎症誘発性反応を弱め、再内皮化を促すことによって、自然治癒応答を促す(すなわち、例えば、単球がPEA表面に接着するが、炎症誘発性応答を生成しない);ii)内皮細胞が、平滑筋細胞と比較して、PEAポリマー上で選択的に接着および増殖する;iii)PEAポリマーが、血小板癒着、凝集、および活性化を抑制する;およびiv)酵素駆動型、PEA表面浸食生体分解が、酵素的手段によって制御され得ることも考えられている。DeFife et al.,「Poly(ester amide) promotes hemocompatibility and tissue compatibility」TCT 2004, Washington, D.C.。
【0176】
一つの態様において、本発明は、異なる薬物送達応用に対してプログラムされ得るPEAポリマーを企図する。一つの態様において、ポリマープログラミングは、ポリマー骨格を作り上げる異なる構成要素を選択することによって、望ましい物理的特性を獲得することを含む。または、PEAポリマーを作る異なる方法が、企図される。例えば、PEA材料は、薬物の放出が拡散によって制御されることを可能にする機械的な混合によって(すなわち、例えば、非共有相互作用によって)薬物と併用され得る。または、薬物は、共有結合によってポリマーに結合され得、それらがそれらの標的に到達した時点で、ポリマー生体分解によって放出され得る。
【0177】
薬物送達デバイス
多くの薬物送達手段は、当技術分野において公知であり、材料のシート、カテーテル、シリンジ、発泡体、ゲル、噴霧などを含むが、それらに限定されない。Fischell et al.,米国特許刊行物第2004/0018228 A1号(参照により本明細書に組み入れられる)。本発明の方法は、様々な医療デバイス態様の以下の記載によって例示される。これらの実例は、本発明の範囲を限定することは意図されておらず、例として意図されるのみである。
【0178】
透析カテーテル
本発明の一つの態様は、透析カテーテル上のフィブリン鞘形成を軽減するおよび/または防ぐための方法を含む。別の態様は、本明細書において企図されるような、カテーテルを薬物および/または薬物併用でコーティングするための方法を含む。
【0179】
一つの態様において、本発明は、抗癒着薬併用(すなわち、例えば、GPIIb/IIIa阻害剤および抗増殖薬)を含む、改善された透析/アフェレーシスカテーテルを企図する。透析/アフェレーシスおよび腹膜透析カテーテルは、急性および慢性臨床応用の両方において使用される。一つの態様において、透析/アフェレーシスカテーテルコーティングは、フィブリン鞘形成を阻害する抗増殖剤、抗血小板剤、抗トロンビン剤、または抗凝固剤を含む薬物併用を含む。ほとんどの透析/アフェレーシスカテーテルが、同時に使用され得る(すなわち、それによって等量の血液の引き出しおよび返還を可能にする)複数管腔(3または4管腔)を含むことが公知である。一つの態様において、これらの管腔は、指定された流入管腔と指定された流出管腔との間の流動抵抗を合致させ、長期間配置に対する高交換流速を支持する。Loggie B.W.,「Multi-Lumen Catheter System Used In A Blood Treatment Process」米国特許第6,126,631号(2000)(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0180】
別の態様において、本発明は、抗癒着薬併用コーティングを含む改善された透析カテーテルを企図する。Martin et al.,「Triple Lumen Catheter」米国特許第5,195,962号(1993)(参照により本明細書に組み入れられる)。市販されている透析カテーテルは、バスキャス(登録商標)またはヒックマン(登録商標)カテーテル(Bard Access Systems)を含むが、それらに限定されない。当業者は、これらのカテーテルが、急性および慢性状態に対して有用であり、小さな挿入プロファイルをともなって最適な流速を提供し、様々なフレンチサイズ、単一または二重管腔構造形において利用でき、かつまっすぐなまたはあらかじめ曲げられた構造形を有することを認識すると思われる。一つの態様において、透析カテーテルコーティングは、フィブリン鞘形成を阻害する抗増殖剤、抗血小板剤、抗トロンビン剤、または抗凝固剤を含む薬物併用を含む。別の態様において、透析カテーテルは、組織内部成長カフ(すなわち、例えば、シュアーカフ(登録商標))を含み、抗菌性カフ(すなわち、例えば、ビタカフ(VitaCuff)(登録商標))を任意で含み得、その両方は、抗癒着薬併用でコーティングされる。
【0181】
別の態様において、本発明は、抗癒着薬併用を含む改善された腹膜透析カテーテル(すなわち、例えば、テンクホフ(Tenckhoff)(商標)、Bard Access Systems)を企図する。一つの態様において、腹膜透析カテーテルは、1つもしくは2つの組織内部成長カフ(すなわち、例えば、シュアーカフ(登録商標))および/または抗菌性カフ(すなわち、例えば、ビタカフ(登録商標))のいずれかを含む。発明のメカニズムを理解する必要はないが、腹膜透析は、腹部へ絶えず注入される特定の量の液(すなわち、例えば、透析液)を利用する連続流技術であると考えられている。当技術分野において以前から公知の連続流腹膜透析は、2つの単一の管腔腹膜透析カテーテルまたは改変大口径血液透析カテーテルを利用した。流入および取り込みカテーテルは、透析液流入および流出が、絶え間ないままであることを可能にする。しかしながら、腹膜腔の内側におけるチャネリングまたは粗末な混合による高透析液流速および再循環は、連続流腹膜透析に関連する問題であり、組織損傷または外傷を引き起こし得る。一つの態様において、本発明は、透析液が腹膜へ混合することを効果的に可能にし、一方で腹膜壁への外傷を軽減する、連続流腹膜透析カテーテルに付着される抗癒着薬組成物を企図する。連続流腹膜透析技術において、腹膜透析溶液は、単一パスまたは再循環ループのいずれかにおいて利用される。ソーベントカートリッジまたは透析器などの様々な再循環システムも、公知である。Work et al.,「Catheter」米国特許第6,749,580号(2004)(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0182】
別の態様において、本発明は、抗癒着薬併用を含む改善された固定スプリットチップ透析カテーテル(すなわち、例えば、ヘモスプリット(HemoSplit)(商標)、Bard Access Systems)を企図する。Pourchez T.,「Multilumen Catheter, Particularly For Hemodialysis」米国特許第6,001,079号(1999)(参照により本明細書に組み入れられる)。発明のメカニズムを理解する必要はないが、固定スプリットチップ透析カテーテルは、感染症および出血をもたらし得る、透析液注入の間に非常に遠く離れて裂かれるチップからの管腔障害のリスクを軽減すると考えられている。
【0183】
本明細書において記載される組成物でのコーティングに適したその他の透析カテーテルはまた、以下によって例示される:i)ウルダール二重管腔血液透析カテーテルトレイ(Uldall Double Lumen Hemodialysis Catheter Tray)(Cook Critical Care, Bloomington, IN)-これらの透析カテーテルは、主として日常的な血液透析処理の間に血管アクセスに対して使用される;ii)大腿血液透析セット(Femoral Hemodialysis Set)(Cook Critical Care, Bloomington, IN)-これらの大腿カテーテルは、血液引き出しおよび注入に対して使用される;およびiii)スパイラル急性腹膜透析カテーテル(Spiral Acute Peritoneal Dialysis Catheter)(Cook Critical Care, Bloomington, IN)-これらの腹膜カテーテルは、スパイラル側ポートを有し、腹膜腔への急性アクセスに対して使用され、経皮的に挿入され得る。合成繊維カフは、組織内部成長を可能にするため、カテーテルに加えられる。
【0184】
本発明の一つの態様は、上大静脈内にインプラントされる透析膜を含むインビボ血液フィルターデバイスに付着される抗癒着薬併用を含む組成物を企図する。一つの態様において、フィルターデバイスは、透析膜の内側表面に曝露される透析液腔を含み、外側透析膜表面は、血管内で患者の血液に曝露される。別の態様において、フィルターデバイスは、透析液が継続して向けられる複数管腔カテーテルの端に固定される。Gorsuch R.G.,「Apparatus And Method For In Vivo Hemodialysis」米国特許第6,561,996号(2003)(参照により本明細書に組み入れられる)。
【0185】
血管移植片
閉塞性血液構成要素に対して非接着性表面を提供するための試みにおいて、平滑PTFE管腔表面を有するPTFE血管移植片が公知である。Brauker et al.,「Vascular Graft With Improved Flow Surfaces」米国特許第6,517,571号(2003)(参照により本明細書に組み入れられる)。一つの態様において、本発明は、外側表面、管腔表面、および壁を介した開口部の多様性を有する壁を有し、ステントに加えられた多孔性拡張PTFEフィルムの管状被覆剤をさらに有し、該被覆剤が約0.10 mm厚より薄い、管状で正反対に調整可能なステントを含む管状管腔内移植片に対する改善されたコーティングを企図する。Myers D.J.,「Intraluminal Stent Graft」米国特許第6,547,815号(2003)(参照により本明細書に組み入れられる)。一つの態様において、管腔内移植片は、改善されたコーティングを含み、コーティングは、抗増殖剤、抗血小板剤、抗血栓剤、または抗凝固剤を含むがそれらに限定されない群より選択される薬物併用を含む。
【0186】
代わりの態様において、抗癒着薬併用コーティングは、原線維によって相互接続されるノードの微小構造を有する多孔性拡張PTFEフィルムから成る管状管腔内移植片を改善するために企図され、原線維は、実質的に互いに平行な少なくとも2つの方向に配向される。Lewis et al.,「Tubular Intraluminal Graft And Stent Combination」米国特許第5,993,489号(1999);およびCampbell et al.,「Thin-Wall Intraluminal Graft」米国特許第6,159,565号(2000)(両方とも参照により本明細書に組み入れられる)。一つの態様において、移植片は、分岐している。Thornton et al.,「Kink Resistant Bifurcated Prosthesis」米国特許第6,551,350号(2003)(参照により本明細書に組み入れられる)。一つの態様において、抗癒着薬併用コーティングは、薄壁ポリエチレンチューブを改善するために企図される。Campbell et al.,「Thin-Wall Polytetrafluoroethylene Tube」米国特許第6,027,779(2000)(参照により本明細書に組み入れられる)。当業者は、本明細書において企図されるような抗癒着薬併用でコーティングされたポリエチレンチューブを含むデバイスが、任意の移植片またはカテーテルを改善するために有用であることを認識し得る。
【0187】
外科的材料シート
一つの態様において、薬物送達デバイスは、材料のシートとして、外膜または外膜周辺組織(すなわち、例えば、血管および/または血管移植片の外側表面)に配置される。一つの態様において、これらの併用は、Fischell et al.の米国特許第6,534,693号(参照により本明細書に組み入れられる)において記載される方法およびデバイスによって企図されるような材料のシートである。本発明の方法は、薬物の望ましい組み合わせで、材料の適したシート、メッシュ、もしくはその他の適したマトリックスをその片側もしくは両側上でコーティングし、またはそのような材料、メッシュ、もしくはその他の適したマトリックスに浸透させ、望ましい薬物を送達しかつ望ましい効果を達成するために血管構造の外部の空間へその組み合わせを持っていくことによって達成される。マトリックスは、生体分解性(または生体内分解性)または非生体分解性(または生体安定性)であり得る。抗増殖薬および補足的もしくは相補的薬学的薬物は、一緒に混合されかつ送達デバイスに付着され得る、またはそのような薬物は、デバイスの別々の層および/もしくは場所において、送達デバイスに付着され得る。一つの態様において、本発明は、抗増殖、抗血小板、抗血栓、または抗凝固薬が、単独でまたは任意の併用において付着される材料のシートを含む組成物を企図する。
【0188】
本発明は、外科的処置、外傷、または創傷の後に続く瘢痕組織および/または癒着形成を軽減するための医療デバイスを企図する。ほとんどの外科的処置は、組織損傷を必要とし、結果として起こる治癒プロセスは、瘢痕組織および/または癒着の形成を必然的に引き起こす。外科的組織損傷は、外部または内部であり得、開口外科的部位または閉鎖外科的部位を使用して行なわれ得る。本発明は、例えば伝統的な外科用メスを使用して(すなわち、開口外科的部位)または内視鏡処置を使用して(すなわち閉鎖外科的部位)行なわれる外科的処置の前、間、および後の両方に、医療デバイスを使用して細胞増殖抑制性抗増殖薬を投与することによる、瘢痕組織および/または癒着形成の予防を企図する。本発明は、GPIIb/IIIa阻害剤を投与することによる、フィブリン鞘、瘢痕組織および/または癒着形成の予防も企図する。一つの態様において、抗増殖薬は、抗血小板および/または抗血栓薬と併用される。別の態様において、抗血小板および/または抗血栓薬を伴うまたは伴わない抗増殖薬は、抗凝固薬と併用される。一つの態様において、本発明は、頻繁な透析を必要とする末期腎疾患の症候を有する患者を企図する。
【0189】
本発明の一つの態様は、細胞増殖抑制性抗増殖薬が付着される外科的材料(すなわち、例えば、メッシュ、ラップ、スポンジ、またはガーゼ)を含むデバイスを企図する。図1は、メッシュストランド12および開口空間11を伴う吸収性メッシュ外科的材料10を示す。外科的材料10は、外科的処置の部位における生物学的組織(すなわち、例えば、ヒト)にまたは周囲に手術後に配置されるようにデザインされる。外科的処置の部位に配置される場合、外科的材料10は、瘢痕組織および/または癒着の形成を減少させ、かつ癒着の程度を軽減するように、細胞増殖抑制性抗増殖薬をゆっくりと(すなわち、例えば、制御放出組成物から)溶離するようにデザインされる。概して生物学的組織の周囲に配置される場合、メッシュ10は、細胞増殖抑制性抗増殖性外科的ラップを形成する。メッシュストランド12は、酸化再生セルロースまたはその他の生体分解性材料(すなわち、例えば、ポリ-ラクチドまたはポリ-グリコリドポリマーまたはコポリマー)から作られ得、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、ストランド内に埋め込まれる、ストランドの外表面上にコーティングされる、または癒着もしくは毛管作用によってストランド上に保持されるかのいずれかを含むがそれらに限定されない方法によって付着される。例えば、本発明は、表1における外科的材料を作るのに適した生体分解性ポリマー組成物の一つの態様を企図する。
【0190】
(表1)50/50 D,L,ラクチド/グリコリドコ-ポリマーに対する詳述

【0191】
図2は、細胞増殖抑制性抗増殖薬14がストランド12内に付着されるメッシュ10の単一ストランド12を示す図1のメッシュの断面の拡大である。
【0192】
図3は、ストランド12の外側表面上に形成されるコーティング17によって細胞増殖抑制性抗増殖薬が付着される、図2の単一ストランド12の断面の拡大である。一つの態様において、ストランド12は、生体安定性または生体分解性ポリマー材料のいずれかから形成される。コーティング17の材料は、コーティング17に付着される薬物が外科的処置の部位において生物学的組織へゆっくりと溶離するように選択される媒質を含む。好ましくは、隣接生物学的組織への薬物の放出の速度は、さらに調整され得、コーティング17は、付加的なコーティングによってカバーされる(示されず)。
【0193】
図4は、細胞増殖抑制性抗増殖薬18が付着されるメッシュ10の2つの隣接ストランド12の拡大である。一つの態様において、細胞増殖抑制性抗増殖薬18は、シロリムス、c-mycへのアンチセンス(Resten-NG)、タクロリムス(FK506)、エベロリムス(SDZ-RAD)、CCI-779、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、および2-デスメチル-ラパマイシンを含むが、それらに限定されない。その他の抗増殖薬は、タキソール、アクチノマイシン-D、アルケラン、サイトキサン、リューケラン(leukeran)、シス-白金、カルムスチン(BiCNU)、アドリアマイシン、ドキソルビシン、セルビジン(cerubidine)、イダマイシン、ミスラシン(mithracin)、ムタマイシン(mutamycin)、フルオロウラシル、メトトレキサート、チオグアニン、タキソテール、エトポシド、ビンクリスチン、イリノテカン、ヒカンプチン(hycamptin)、ナツラン(matulane)、ブモン(vumon)、ヘキサリン、ヒドロキシウレア、ジュムザール、オンコビン、およびエトホホス(etophophos)などの細胞毒性癌薬物を含んでもよい。
【0194】
本発明によって企図される細胞増殖抑制性抗増殖薬が付着される媒質を含むメッシュまたは外科的材料は、メッシュまたは外科的材料が生体適合性である限り、生体分解性であり得るかまたはあり得ない。一つの態様において、媒質、メッシュ、または外科的材料は、短ければ1日から長ければ数ヶ月までの期間にわたって、周辺外科的損傷組織に細胞増殖抑制性抗増殖薬を徐々に放出し、放出の速度は、薬物が配置される材料の型によって制御される(前記)。一つの態様において、ポリマーコーティングは、周辺組織への薬物の溶離を遅らせるために、媒質、メッシュ、または外科的材料の上に配置される。そのようなポリマー材料は、制御放出製剤の分野において公知である。Goldstein et al.,「Compositions And Methods For Coating Medical Devices」米国特許第6,143,037号(2000)(参照により本明細書に組み入れられる)。成功した発明のメカニズムを理解する必要はないが、媒質、メッシュ、または外科的材料の少なくとも一部に付着される細胞増殖抑制性抗増殖薬の効果は、細胞増殖を減少させ、それ故に、瘢痕組織および/または癒着および/または癒着の形成を減少させると考えられている。好ましくは、血管吻合の周囲にラップされるメッシュ10は、吻合の部位においてしばしば生じるその血管の狭窄を軽減する。
【0195】
Fischell et al.の'693特許(前記)は、外科的処置に起因する瘢痕組織および/または癒着形成を軽減するための様々な手段および方法を記載する。しかしながら、Fischell et al.は、瘢痕組織および/または癒着の形成のリスクがある患者の生物学的組織の周囲に配置される細胞増殖抑制性抗増殖性外科的ラップを記載しない。さらに、Fischell et. al.は、細胞増殖抑制性抗増殖薬(すなわち、例えば、ラパマイシン)を、抗血小板、抗血栓、または抗凝固薬と併用することを記載しない。本発明は、瘢痕組織、癒着、および血栓形成のリスクがある患者の生物学的管器官の周囲に配置される外科的ラップを含むがそれらに限定されない様々な手段および方法を企図する。いくつかの会社が、組織成長を軽減するためのこれらの構造体の間に配置され得る製品(様々な材料の生体分解性メッシュ、ゲル、発泡体、およびバリア膜など)を開発したが、いずれも完全に効果的というわけではない。一つの態様において、本発明は、抗増殖、抗血小板、抗血栓、または抗凝固薬が、単独でまたは任意の併用において付着される、組織バリア膜を含む組成物を企図する。
【0196】
外科的ラップ
本発明の一つの態様は、細胞増殖抑制性抗増殖薬(すなわち、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体)を含む外科的ラップを企図し、薬物は、体管、導管、または管腔の狭窄を軽減する。一つの態様において、本発明は、抗増殖、抗血小板、抗血栓、または抗凝固薬が、単独でまたは任意の併用において付着される外科的ラップを含む組成物を企図する。一つの態様において、外科的ラップは、細胞増殖抑制性抗増殖薬が外科的ラップから放出されるにつれて薬物が周辺組織に吸収されるように、管、導管、または管腔の外部表面に接触するためのラッピングによって設定される。例えば、図5は、管、導管、または管腔の吻合の周囲にラップされるのが示される細胞増殖抑制性抗増殖性外科的ラップ21の断面を図示し、縫合22は、管、導管、または管腔の切断端を接合するために使用される。一つの態様において、外科的ラップは、従来の縫合もしくはステープルおよび/または細胞増殖抑制性抗増殖薬が付着されている縫合もしくはステープルなどであるがそれらに限定されない少なくとも一つの外科的閉鎖をともなって適所に固定され得る。例えば、図6は、端23および24を有するそのような外科的ラップ21を示し、端は、典型的には、吻合を有する管、導管、または管腔に固定される。管、導管、または管腔は、静脈、動脈、静脈または動脈、尿管、尿道、胆管、回腸、空腸、十二指腸、結腸、または卵管への人工移植片の接合を含み得るが、それらに限定されない。当業者は、本発明によって企図される外科的ラップが、任意の外科的部位において使用され得ることを理解するべきである。例えば、本発明によって企図される外科的部位は、背骨、脊椎から出てくる神経、結腸、または回腸などを含むが、それらに限定されない。
【0197】
一つの態様において、外科的ラップは、細胞増殖抑制性抗増殖薬が外科的ラップから放出されるにつれて薬物が周辺組織に吸収されるように、管、導管、または管腔の外部表面と接触するかまたはその近くにあるようにスライドすることによって設定される。例えば、図7は、切り込み26を有する環状外科的ラップ25を示し、環状ラップ25は、付着された細胞増殖抑制性抗増殖薬(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体)を含む。一つの態様において、スリット環状ラップ27は、切り込み28および複数のスリット29を有する。(図8を参照されたい)スリット環状ラップ27のこの型は、例えば、大動脈40に接合される血管41に配置されかつ縫合されるスリット29の間の部分を伴う吻合の部位における大動脈40への縫合に特に良く適している。一つの態様において、環状ラップ25は、冠状動脈バイパス手術の間に生じる典型的な吻合に対して設定される。(図9を参照されたい)好ましくは、血管41(すなわち、例えば、下肢静脈)は、縫合31および32によって大動脈40に固定される。一つの態様において、環状ラップ25は、縫合33および34の手段によって大動脈40に固定され得る。または、環状ラップ25は、ステープルによって大動脈40に固定され得(示されず)、ステープルは、生体再吸収性であり得るかまたはあり得ない。
【0198】
上に記載される例において、外科的ラップ21および環状ラップ25の両方は、血管41または大動脈40を含むがそれらに限定されない生物学的組織に接触するかまたはその近くにある場合、瘢痕組織および/または癒着の形成を防ぐために、本明細書において記載されるような抗増殖薬を各々付着したと考えられる。図9において例示される吻合は、瘢痕組織および/または癒着の形成が狭窄として公知のプロセスによって血流を減らし得る頻繁な部位である。成功した発明のメカニズムを理解する必要はないが、外科的ラップ21または環状ラップ25からの細胞増殖抑制性抗増殖薬(すなわち、例えば、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体)の制御放出は、吻合の部位における狭窄の発生を軽減すると考えられている。当業者は、上の図が、単に実例的であり、外科的ラップ21または環状ラップ25のいずれも、吻合の後に続く狭窄を防ぐために、別個にまたは一緒に使用され得ることを理解するべきである。
【0199】
一つの態様において、吻合は、2つの動脈を接合することによって冠状動脈バイパスを造成し、細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む外科的ラップは、吻合部位に接触するように設定される。例えば、図10は、典型的な冠状動脈バイパス移植片を図示し、冠状動脈または静脈は冠状動脈に接合され得る。具体的には、図10は、左前下行、左回旋、または右主冠状動脈を含むがそれらに限定されない任意の冠状動脈43に外科的に接合された内胸動脈42を描く。吻合の内側の瘢痕組織および/または癒着の形成を減少させるための細胞増殖抑制性抗増殖薬の投与は、冠状動脈43および内胸動脈42の両方に接触し、かつ縫合(またはステープル)36、37、38、および39によって固定されるスリット環状ラップ27によって提供される。または、外科的ラップ21または環状ラップ25が、単独または併用のいずれかにおいて、適用されてもよい。さらに、外科医は、吻合の部位に縫合またはステープルによって外科的ラップを固定する前に、スリット環状ラップ27のスリット29の間に設置されるラップのいくつかを切り離し得ると考えられる。図10は、内胸動脈および冠状動脈を接合する吻合を例示するが、任意の適した静脈も内胸動脈の代わりに使用され得るだろう。
【0200】
外科的閉鎖
本発明の一つの態様は、細胞増殖抑制性抗増殖薬が付着される外科的閉鎖(すなわち、例えば、縫合またはステープル)を企図する。Haynes et al.,「Drug Releasing Surgical Implant Or Dressing Material」米国特許第5,660,854号(1997);およびKeogh et al.,「Method For Attachment Of Biomolecules To Medical Devices Surfaces」米国特許第5,925,552号(1999)(両方とも参照により本明細書に組み入れられる)。一つの態様において、本発明は、抗増殖、抗血小板、抗血栓、または抗凝固薬が単独でまたは任意の併用において付着される外科的閉鎖を含む組成物を企図する。細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む、代表的な縫合45の図面およびそのような縫合の高拡大断面は、それぞれ図11Aおよび11Bに示される。具体的には、図11Aは、針47に接続される縫合材料46を示す。さらに、図11Bは、付着された細胞増殖抑制性抗増殖薬48(すなわち、外部材料付着ならびに内部材料付着の両方)を有する縫合物質46の断面を例示する。一つの態様において、図11において実証されるような縫合は、血管吻合を固定するために使用される(例えば、図9および10を参照されたい)。成功した発明のメカニズムを理解する必要はないが、細胞増殖抑制性抗増殖薬を縫合に付着することは、縫合が生物学的組織(すなわち、例えば、ヒト組織)を貫通し、そこで2つの管を繋ぎ合わせる、すなわち吻合において、瘢痕組織および/または癒着形成を軽減するであろうと考えられている。一つの態様において、縫合は、吻合に沿った複数の場所で組み込まれる。
【0201】
その他の態様のように、望ましい場合は、外科的ラップ21、環状ラップ25、またはスリット環状ラップ27は、各々のラップと管、導管、または管腔との間の機械的な咬合によって適所に固定され得る。本発明の一つの固定の態様は、リベットの外観を呈し得る管腔横断的に(transluminally)送達されるステープルの使用を企図する。好ましくは、これらのステープルは、弾性材料でできており、生体再吸収性である。
【0202】
本発明によって企図される外科的閉鎖は、可溶性または不溶性のいずれかであり得る。本発明の方法は、細胞増殖抑制性抗増殖薬が付着される外科的閉鎖を使用することによって、外科医が、外科的閉鎖が使用される皮膚またはその他の任意の場所の表面上の瘢痕組織および/または癒着形成を軽減し得ることを企図する。一つの態様において、本発明によって企図される外科的閉鎖(すなわち、例えば、縫合)を眼科または形成外科手術の間に配置することは、外科的処置の結果を低下させ得る、予期される瘢痕組織および/または癒着形成を軽減すると思われる。別の態様において、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、外科的処置後にヒト組織を繋ぎ合わせるために使用される任意の従来の外科的ステープルに付着され得ると考えられる。本発明によって企図される外科的閉鎖(すなわち、例えば、図5、9、10、および11において示されるような縫合22、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または46)の任意が、従来の縫合であり得、またはその閉鎖に付着される本明細書において記載されるような細胞増殖抑制薬を有し得ることも、当業者にとって理解されるべきである。
【0203】
外科的ラップは、吻合を含む外科的処置に対して特に有用である。一つの態様において、端間動脈吻合は、動脈の外側表面に配置される外科的ラップ21を含み、2つの吻合部位は、接合する動脈切断面の統合を可能にする。外科的ラップ21は、その後の瘢痕化および/または癒着および血管狭窄を軽減すると思われる細胞増殖抑制性抗増殖薬を含み得る(図12、パネルAを参照されたい)。治癒が完了した後、動脈吻合は、瘢痕化および/または癒着および動脈狭窄を軽減した(図12、パネルBを参照されたい)。別の態様において、端側吻合は、静脈および動脈ならびに/または動静脈移植片の外側表面に配置される外科的ラップ21を含む。外科的ラップ21は、その後の瘢痕化および/または癒着および血管狭窄を軽減するために、静脈および動脈の両方ならびに/または動静脈移植片上の配置を含み得る(図13を参照されたい)。
【0204】
成功した発明のメカニズムを理解する必要はないが、当業者は、付着される細胞増殖抑制性抗増殖剤を伴う縫合またはステープルを含むがそれらに限定されない外科的閉鎖が、任意の生物学的組織(すなわち、例えば、ヒト組織)を接合することに対して有用であり、細胞増殖およびその結果として癒着の形成または瘢痕組織および/もしくは癒着の軽減を引き起こすことを理解するであろうと考えられている。
【0205】
例えば、細胞増殖抑制性抗増殖性縫合が皮膚の表面上で使用される場合、細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む軟膏が、外科的切開の部位で皮膚に適用され得るだろうということが理解されるべきである。好ましくは、本発明によって企図される細胞増殖抑制性抗増殖薬は、シロリムス、c-mycへのアンチセンス(Resten-NG)、タクロリムス(FK506)、エベロリムス(SDZ-RAD)、CCI-779、ABT-578、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、または2-デスメチル-ラパマイシンを含むがそれらに限定されないシロリムスの任意のその他の類似体を含む群を含む。
【0206】
癒着
本発明は、癒着の形成を軽減または阻害するための組成物および方法を企図する。癒着は、現在の医療実践が大体は無効である未解決の医療問題である。
【0207】
外科手術後の癒着形成の率は、医学界内の癒着に関する知識が比較的欠如していることを考えると、驚くほどである。外科手術を受ける交通事故被害者は、症例の67%において癒着を形成する。Weibel et al., Am J Surg. 126:345-353 (1973)。この数は、主要なおよび複数の処置を伴う患者に対して、それぞれ81%および93%に増加する。同様に、以前の腹部手術を受けなかった患者の10.4%のみと比較して、少なくとも一回の以前の腹部手術を受けた患者の93%は、癒着を有した。Menzies et al., Ann R Coll Surg Engl. 72:60-63 (1990)。さらに、すべての開腹術の1%は、外科手術の1年以内に癒着により閉塞を発生し、3%は、外科手術後の何時かにおいて閉塞をもたらす。同様に、小腸閉塞に関して、症例の60〜70%は、癒着に関与する。腸閉塞を引き起こす癒着の外科的処理の後に続いて、癒着再形成による閉塞は、症例の11〜21%において生じる。骨盤再構築手術を受けている患者の55と100%との間は、癒着を形成すると思われる。
【0208】
癒着は、器官および組織を引き下げ(tethering down)、神経の牽引(引っ張り)を引き起こすことによって骨盤痛を引き起こすと考えられている。神経終末は、発生している癒着内に封入されるようになり得る。腸が閉塞されるようになる場合、膨張が痛みを引き起こすと思われる。慢性骨盤痛が6ヶ月よりも長く続いている何人かの患者は、「慢性骨盤痛症候群」を発生し得る。慢性痛に加えて、感情的および行動的変化が、痛みの期間およびその関連するストレスにより現れる。国際骨盤痛学会(International Pelvic Pain Society)によると:
「我々は皆、痛みを回避することを幼少期から教えられている。しかしながら、痛みが永続的で治療薬がないように見える場合、それは驚異的な緊張を造成する。我々のほとんどが、痛みを組織損傷の症候と考える。しかしながら、慢性骨盤痛において、ほとんどいつも組織損傷がなくなっても痛みは継続する。これは、我々が我々の人生の間に経験し得るであろう慢性骨盤痛とその他の痛みの発作との間の非常に重要な差異をもたらす:通常痛みは症候であるが、慢性骨盤痛においては、痛みは疾患になる。」
慢性骨盤痛は、18〜50の間の女性のほぼ15%に影響を及ぼすと推測される。その他の推測は、アメリカ合衆国における200,000〜2百万の間の女性に達する。経済効果も、非常に信じ難いものである。18〜50歳の女性のアメリカ合衆国人口に対する慢性骨盤痛のための外来訪問に対する直接的な医療費は、1年あたり881.5百万ドルであり、15%は、賃金労働からの時間損失を報告し、45%は、軽減された労働生産性を報告する。
【0209】
すべての癒着が痛みを引き起こすわけではなく、すべての痛みが癒着によって引き起こされるわけではない。実際、医学界は、癒着が痛みを引き起こすことに完全に意見が一致していない。癒着は、例えばMRIまたはCTスキャンで、非侵襲的に観測することが容易ではない。しかしながら、痛みと癒着との間に医療関係が存在することは明らかである。慢性骨盤痛を報告する患者のうち、約40%は、癒着のみを有し、別の17%は、子宮内膜症(癒着を伴うまたは伴わない)を有する。
【0210】
腎疾患
本発明の一つの態様は、腎疾患の症候を示す患者の処置を企図する。一つの態様において、本発明は、抗増殖、抗血小板、抗血栓、または抗凝固薬が、単独でまたは任意の併用において付着される媒質を含む、腎疾患の処置を企図する。腎疾患は、腎動脈のアテローム性動脈硬化症、アテローム動脈硬化性腎症、線維筋性形成異常、および末期腎疾患を含み得るが、それらに限定されない。
【0211】
腎疾患を伴う患者の最適な処置は、現在論争中である。管理選択肢は、外科的または経皮的処置(すなわち、例えば、血管形成術およびステント埋め込み術)を含むが、それらに限定されない。概して、線維筋性疾患を伴う患者において、外科手術および経皮的アプローチの結果は、成功である。しかしながら、アテローム動脈硬化性疾患を伴う患者において、データはあまり有望ではない。
【0212】
アテローム動脈硬化性腎動脈狭窄
アテローム動脈硬化性腎狭窄は、その進行性の性質により、末期腎疾患の主要な原因の1つになっている、むしろ頻繁な状態である、例えば、アテローム動脈硬化性腎動脈狭窄は、毎年新しい透析患者の12〜14%を占める。アテローム動脈硬化性腎動脈狭窄は、冠状動脈疾患、アテローム動脈硬化性末梢血管疾患、悪性高血圧症、および真性糖尿病を含むがそれらに限定されないその他の臨床疾患状況と関連し得る。Morganti et al.,「Treatment Of Atherosclerotic Renal Artery Stenosis」 J Am Soc Nephrol 13:S187-S189 (2002)。
【0213】
アテローム動脈硬化性腎動脈狭窄の臨床診断は、当技術分野において公知の非侵襲的イメージング技術によって決定され得る。アテローム動脈硬化性腎動脈狭窄に関連する3つの異なった臨床症候群が公知である:i)レニン依存性高血圧症、ii)本態性高血圧症、およびiii)虚血性腎症。アテローム動脈硬化性腎動脈狭窄に関連する症候は、突発性または加速性高血圧症、原因不明のまたは慢性高窒素血症、アンジオテンシン変換酵素阻害剤によって誘導される高窒素血症、非対称腎容量、および正常な心室機能を伴う鬱血性心不全を含むが、それらに限定されない。Safian. R.D.,「Atherosclerotic Renal Artery Stenosis」 Curr Treat Options Cardiovasc Med., 5:91-101 (2003)。
【0214】
2型真性糖尿病患者は、腎動脈狭窄に関連するアテローム動脈硬化性腎症を発生し得る。臨界未満の(<65%)腎動脈狭窄は、制御不良高血圧症および1.8 mg/dLまたはより高い血清クレアチニンレベルを伴う2型糖尿病を伴う患者における慢性腎臓疾患の間に生じることが公知である。末期腎疾患への進行に対する相対的なリスクは、状態を伴わない患者よりも腎狭窄を有するそれらの患者において高い。Myers et al.,「Renal Artery Stenosis By Three-Dimensional Magnetic Resonance Angiography In Type 2 Diabetics With Uncontrolled Hypertension And Chronic Renal Insufficiency: Prevalence And Effect On Renal Function」 Am J Kidney Dis 41(2):351-359 (2003)。
【0215】
手術的腎動脈修復などの外科的診療は、アテローム動脈硬化性腎疾患の症候を緩和するための公知のアプローチである。高血圧症および腎機能に関連するパラメータ(すなわち、例えば推測糸球体濾過率、クレアチニンレベルなど)は、外科的血管再構築後に改善される。Cherr et al.,「Surgical Management Of Atherosclerotic Renovascular Disease」, J Vasc Surg 35:236-245 (2002)。
【0216】
本発明の一つの態様は、アテローム動脈硬化性腎動脈狭窄の少なくとも一つの症候を示す患者を含む方法を企図し、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体を含む外科的材料は、外科的処置の間に患者内に血管外に配置される。別の態様において、外科的材料は、抗血小板薬、抗血栓薬、または抗凝固薬を含む群より選択される薬物をさらに含む。一つの態様において、腎動脈狭窄の少なくとも一つの症候は、軽減される。一つの態様において、外科的処置は、ステント埋め込み術を含む。別の態様において、外科的処置は、腎血管再構築を含む。
【0217】
末期腎疾患
末期腎疾患は、水、塩、電解質、および正常な腎臓によって排泄される老廃産物の機械的除去を必要とする様々な原因を有し、そうでなければそれらの蓄積は死を引き起こす。これらの産物の除去は、血液透析または腹膜透析のいずれかによって可変的に達成され得る。アメリカ合衆国における末期腎疾患の最も一般的な原因は、真性糖尿病である。末期腎疾患は、ほとんどいつも10〜20年またはより長く続いた慢性腎臓不全の後に続く。末期腎疾患の症候は、原因不明の体重減少、吐き気、嘔吐、全身性病気感(general ill feeling)、疲労、頭痛、頻繁なしゃっくり、全身性掻痒、わずかなもしくは無尿排出量、容易な挫傷もしくは出血、吐血もしくは血便、注意力低下、眠気、傾眠症、無気力、精神錯乱、幻覚症状、昏睡、筋聯縮もしくは痙攣、発作、皮膚色素沈着増加(すなわち、例えば、黄色または茶色)、爪異常、または手、足、もしくはその他の領域の感覚低下を含み得るが、それらに限定されない。
【0218】
長期間透析を受けている成人患者における病的状態の主たる原因は、血管アクセスに関係する合併症を含む。成人のように、末期腎疾患を有する小児患者は、移植手術選択肢の不全に際して慢性血液透析に頼らなければならない。小児患者における動静脈瘻および動静脈移植片の長期残存は、処置期間の付随的な増加により、成人よりも子供においてさらにより重要である。動静脈瘻と動静脈移植片との間の開存率は、小児患者において一貫性のある差を示さない:1歳-74%対96%;3歳-59%対69%;および5歳-59%対40%。さらに、アクセス開存性は、アクセス造成における患者の体重または年齢と相関しない。血栓症、狭窄、および感染症によるアクセス不全は、動静脈移植片においてより頻繁に生じた。これらの合併症にもかかわらず、動静脈瘻および動静脈移植片は、長期血液透析処置を促進するために好ましい。Sheth et al.,「Permanent Hemodialysis Vascular Access Survival In Children And Adolescents With End-Stage Renal Disease」Kidney Int 62(5):1864-1869 (2002)。
【0219】
透析チュービングの接続に対する開存進入(patent entry)を維持することにおける実用的な困難は、成功する長期間処置への最も顕著な障害物の1つであると証明されている。末期腎疾患患者の長期間透析の間に発生し得るいくつかのその他の合併症は、血管石灰化、心臓血管疾患、動脈障害、動脈硬化、および血管狭窄を含むが、それらに限定されない。
【0220】
血管アクセス
慢性血液透析は、信頼性のある血管アクセスを必要とする。歴史的に、幅広口径静脈に導入される二重管腔カテーテルは、合併症および病的状態を軽減した一時的アクセスとして意図される伝統的なスクリブナーシャントに取って代わった。通常ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で作られるカフ付きトンネル化内頸カテーテルおよび合成動静脈移植片は、血管アクセス装備一式を改善したが、動静脈瘻は、慢性血液透析患者にとって生命線のままである。しかしながら、好ましくは、合成動静脈移植片は、年配かつ糖尿病患者において使用される。動静脈合成移植片は、短い成熟時間および複数の潜在的アクセス部位を含むがそれらに限定されない利点を有する。
【0221】
静脈狭窄および血栓発作は、血管アクセス不全のおよそ80%に関与する。血管アクセス関連病的状態は、末期腎疾患患者に対するすべての病院滞在のほぼ25%を占め、すべての入院費用の50%にも寄与し得る。流出路狭窄による血管アクセス不全のモニタリングおよび処置は、超音波希釈および二重カラー流動(duplex color flow)ドップラー技術によって測定され得る。しかしながら、従来のおよびデジタルの差分血管造影処理は、血管系および血流全体を可視化することの付加的な利点を有する。流出路狭窄による血管アクセス不全を正すための現在の処置は、経皮的管腔横断的血管形成術、ステント、および外科的補正の使用を含む。移植片狭窄を防ぐために使用されている様々な方法は、ジピリダモールおよび放射線の使用を含む。Pareek et al.,「Angio-Access For Hemodialysis--Current Perspective」 J Indian Med Assoc 99(7):382-384 (2001)。本発明は、シロリムス、タクロリムス、およびシロリムスの類似体などであるがそれらに限定されない細胞増殖抑制性抗増殖薬の投与によって、血管アクセス病的状態および流出路狭窄を軽減するための方法を企図する。
【0222】
血液透析血管アクセスを伴う患者は、透析瘻の最初の配置ならびに機能不全透析瘻における狭窄および血栓症の同定に対して、上肢の末梢静脈の放射線超音波処置を使用して評価され得る。手術前スクリーニングは、血行動態音波透析瘻を造成するのに適した管の同定を可能にする。血栓性瘻および移植片は、純粋に機械的方法によって、または溶解薬との併用において、血餅を取り除かれ得る。Surlan et al.,「The Role Of Interventional Radiology In Management Of Patients With End-Stage Renal Disease」 Eur J Radiol 46(2):96-114 (2003)。
【0223】
動静脈瘻シャントが透析患者の腕に配置される場合、次いで、上に記載されるような細胞増殖抑制性抗増殖剤の同じ型が、腕における関連静脈が開存したままである時間を増加させるために、そのシャントデバイスに付着され得ると考えられる。理想的には、細胞増殖抑制性抗増殖薬は、シャントの内表面全体に配置され得る、またはそれは、シャントが静脈もしくは動脈に付着する端の近くに配置され得ると考えられる。
【0224】
永久血液透析アクセスの到来は、末期腎疾患を伴う患者における慢性血液透析の使用を可能にした。自家動静脈瘻は、最適な導管のままであるが、それらの構築は、必ずしも実現可能ではない。その結果として、移植片は、時間のおよそ51%配置され、動静脈瘻は、時間の26%のみ配置される。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で作られる人工移植片は、典型的には、血液アクセスに対する第二の選択である。しかしながら、これらの移植片は、開存性の低下した率および合併症の増加した数に悩まされる。Anderson et al.,「Polytetrafluoroethylene Hemoaccess Site Infections」 American Society for Artificial Internal Organs Journal 46(6):S18-21 (2000)。一つの態様において、本発明は、PTFE移植片合併症を有する患者へのシロリムス、タクロリムス、またはシロリムスの類似体を含む媒質の投与を企図する。一つの態様において、媒質は、単独でまたは任意の併用において、抗増殖、抗血小板、抗血栓、または抗凝固薬を含む。一つの態様において、媒質は、PTFE移植片上に噴霧される。別の態様において、媒質は、PTFE移植片を取り囲む外科的ラップに付着される。一つの態様において、媒質は、PTFE移植片処置の間に血管系の外側表面上に配置されるかまたはドレープされる外科的スリーブ(すなわち、管状の性質である包帯またはメッシュ)に付着される。
【0225】
狭窄
最も一般的な血管合併症である狭窄は、移植された腎動脈の1〜12%において生じ、移植手術および/または腎機能障害の後に続く高血圧症の潜在的に治癒可能な原因を示す。ステントを用いる経皮的管腔横断的腎血管形成術を伴う処置は、症例の82〜92%において技術的には成功しており、移植片奏功率は、80〜100%の範囲であった。しかしながら、再狭窄は、症例の20%までにおいて生じる。Surlan et al.,「The Role Of Interventional Radiology In Management Of Patients With End-Stage Renal Disease」 Eur J Radiol 46(2):96-114 (2003)。
【0226】
中心静脈狭窄および閉塞は、末梢に挿入された中心静脈カテーテルおよび静脈ポートの上肢配置の後に続いて生じることが公知である。カテーテル径は、これらの中心静脈異常の発生に影響を及ぼすとは考えられていない。しかしながら、カテーテル滞留時間のより長い期間は、中心静脈狭窄または閉塞と正の相関がある。透析瘻および移植片に対する血管アクセスを保存するために、代わりの静脈アクセス部位が、慢性腎機能不全および末期腎疾患を伴う患者に対して考えられることが示唆される。Gonsalves et al.,「Incidence Of Central Vein Stenosis And Occlusion Following Upper Extremity PICC And Port Placement」 Cardiovasc Intervent Radiol 26(1) (2003)。
【0227】
腎交換療法は、末期腎疾患を伴う患者に対する生命を持続する唯一の手段である透析および移植手術の併用を含む。本発明は、腎臓移植の後に続く腎動脈狭窄を軽減するための細胞増殖抑制性抗増殖薬の投与を企図する。一つの態様において、狭窄における軽減は、吻合におけるアテローム性動脈硬化症および線維症の存在の減少による。移植手術は最適な処置であるが、ドナー腎臓の数は限定されており、移植は失敗する可能性がある。故に、多くの患者は、長期間またはさらに生涯にわたる透析を必要とする。Vale et al.,「Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis (CAPD) Versus Hospital Or Home Hemodialysis For End-Stage Renal Disease In Adults」 Cochrane Database Syst Rev (1):CD003963 (2003)。
【0228】
一つの態様において、本発明は、単独でまたは任意の併用において、抗増殖、抗血小板、抗血栓、または抗凝固薬を含む媒質を含む、狭窄または再狭窄を処置するための方法を企図する。
【0229】
腎疾患の心臓血管合併症
心臓血管合併症は、末期腎疾患を有する患者において生じることが公知である。本発明は、末期腎疾患に関係する心臓血管合併症が軽減されるような条件下で、細胞増殖抑制性抗増殖薬を含む相補的薬学的薬物の投与を企図する。一つの態様において、本発明は、抗血小板、抗血栓、または抗凝固薬を含む群より選択される相補的抗増殖性薬学的薬物併用を企図する。
【0230】
血管石灰化は、定期的な透析で処置される末期腎疾患を有する患者において一般的であり、そのような患者における心臓血管原因からの非常に高い死亡率に寄与することが公知である。慢性腎不全を有する患者における動脈石灰化は、アテローム動脈硬化性プラークと併せて動脈の内膜層に沿ったミネラルの沈着、または少なくとも部分的にはミネラル代謝における障害による動脈の内壁におけるカルシウム沈着に起因し得る。冠状動脈石灰化が、末期腎疾患を有する患者において、一般的でかつしばしば非常に大規模であるように見え、その外観は、有害な心臓血管事象のリスクを予測することにおいて有用であり得る。Goodman W.,「Vascular Calcification In End-Stage Renal Disease」 J Nephrol 15(Suppl 6):S82-S85 (2002)。
【0231】
大きな動脈障害は、末期腎疾患を有する患者の高い心臓血病的状態への主要な貢献的因子である。動脈硬化性(すなわち、例えば、頚動脈伸展性)は、この組織障害に起因し、この現象の測定は、心臓血管リスク軽減戦略を査定するために重要であり得る。大動脈硬化性測定は、心臓血管疾患のより高いリスクを有する末期腎疾患患者を同定することにおける重要なツールとしての機能を果たし得ると考えられる。Blacher et al.,「Prognostic Significance Of Arterial Stiffness Measurements In End-Stage Renal Disease Patients」 Curr Opin Nephrol Hypertens 11(6):629-34 (2002)。
【0232】
本明細書において記載される応用のいずれに対しても、記載される細胞増殖抑制性抗増殖剤の1つまたは複数の全身的応用は、瘢痕組織および/または癒着の造成をさらに最小にするために接合的に使用され得ると考えられる。
【0233】
特定の細胞増殖抑制性抗増殖剤の使用のみが、本明細書において議論されているが、患者に改善された帰結を提供するために、その他の投薬が細胞増殖抑制性抗増殖薬に付加され得ることが理解されるべきである。具体的には、皮膚への応用に対して、防腐剤、および/または抗生剤、および/または鎮痛剤、および/または抗炎症剤が、感染症を防ぐためおよび/または痛みを減少させるために、細胞増殖抑制性抗増殖性軟膏に付加され得ると考えられる。これらのその他の薬剤は、本明細書において記載される細胞増殖抑制性抗増殖薬の任意のその他の使用に対して適用されてもよいと考えられる。上に載せられるその他の薬物の少なくとも1つに加えて細胞増殖抑制性抗増殖剤が使用される任意のヒト患者は、本明細書において載せられている1つまたは複数の細胞増殖抑制性抗増殖剤の全身投与からも利益を受け得ることがさらに理解される。
【0234】
様々なその他の改変、適合、および代替のデザインは、上の開示に照らして、当然起こり得る。それ故に、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明は、本明細書において具体的に記載されるのとは違うやり方で実践され得ることが、現時点では理解されるべきである。
【0235】
実験
以下は、本発明の一つの態様の説明として単に意図され、限定的であることは意図されない。
【0236】
実施例1
ウサギ心膜癒着予防研究
この実施例は、外科手術後の癒着および瘢痕化を防ぐためのシロリムスおよびシロリムスの類似体、ゼミロフィバン、ならびにビバリルジンを含むヒドロゲルに基づく生体接着剤の一つの態様の能力を予測する。18匹のメスNew Zeland White Rabbit、体重3〜4 kgが、当技術分野において公知の標準化心膜擦傷プロトコールを受けると思われる。Bennett et al.,「Next-Generation HydroGel Films As Tissue Sealants And Adhesion Barriers」, J Card Surg 18:1〜6 (2003);およびWiseman et al.,「Fibrinolytic Drugs Prevent Pericardial Adhesions In The Rabbit」 J Surg Res 53:362-368 (1992)。
【0237】
ウサギは、落ち着かせられ、背臥位で(in dorsal recumbency)配置され、挿管され、かつ吸入麻酔下で維持されると思われる。胸骨正中切開が、心臓を露出するために行なわれる。心膜嚢が開けられ、心臓の前方(腹側)表面上において乾燥ガーゼによる標準化表面擦傷が、粗面組織の「中心ストリップ」(CS)を造成すると思われる。次いで、ウサギは、さらなる処置を受けない対照群(N=6)、本発明によって企図されるようなヒドロゲルに基づく生体接着剤が、シロリムスおよびシロリムスの類似体、ゼミロフィバン、ならびにビバリルジンを含み、擦傷前方心外膜に適用され、およそ1〜2ミリメートルの厚さに達する第一処置群(N=6)、ヒドロゲルに基づく生体接着剤が、抗凝固剤、ヘパリンと併用され、擦傷前方心外膜に適用され、およそ1〜2ミリメートルの厚さに達する第二処置群(N=6)に無作為化される。ヒドロゲルのインサイチュー重合が生じ、それによってフィルムを生成する。次いで、組織は、20 mlの緩衝化等張食塩水で4回リンスされる。次いで、過剰な液は吸い出され、心膜は開かれたままにされる。しかしながら、胸骨は、結節縫合で閉められ、筋膜および皮膚は層において閉められる。回復の間、ウサギは、外科手術の0、6、および12時間後に、鎮痛剤(すなわち、例えば、ブトルファノール0.1〜0.2 mg/kg S.C.)を投与される。
【0238】
外科手術の14日後、ウサギは犠牲死され、検視が行なわれると思われる。盲目採点プロトコールが、心膜擦傷に起因する癒着の程度、引っ張り強さ、および密度を決定する。
【0239】
結果は、第一処置群または第二処置群のいずれかと比較される場合、対照群において顕著により多くの癒着が存在することを示すと予期される。第一処置群(すなわち、シロリムスおよびシロリムスの類似体、ゼミロフィバン、ならびにビバリルジンを含むヒドロゲルに基づく生体接着剤で処置される)は、第二処置群(すなわち、ヒドロゲルに基づく生体接着剤-ヘパリン併用で処置される)よりも顕著により少ない癒着を示すと思われる。癒着引っ張り強さおよび密度も、以下の順で減少すると予期される:対照>第二処置群>第一処置群。
【0240】
実施例2
一般的なPEAポリマー材料および方法
この実施例は、PEA効能、生体適合性に関係する以下の実施例において使用された基本的な材料を提示する。
【0241】
ポリマー
ポリ(エステルアミド)(PEA)は、MediVas, Incによって製造された。ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)は、Boehringer-Ingelheimから購入された。ポリ(メタクリル酸n-ブチル)(PBMA)は、Polysciencesから購入された。
【0242】
合成
PEAは、2つのアルファアミノ酸、ジオール(x)および二塩基酸(y)を伴うL-ロイシンおよびL-リジンのモノマーを合成することによって、ヘキサンジオールおよびセバシン酸の存在下で作られた。図15を参照されたい。ポリマー鎖の側鎖(lateral)L-リジンのカルボキシル基(BnO)は、薬物または生物製剤をポリマー骨格に連結するための付着部位として使用された。この研究のために、ニトロキシドラジカル4-アミノTEMPOが、PEA上に結合された。図16を参照されたい。
【0243】
細胞培養
ヒト抹消血単球は、密度遠心法および磁気分離(Miltenyi)によって単離された。ヒト血小板は、San Diego Blood Bankから購入された。ヒト冠状動脈内皮細胞および大動脈平滑筋細胞は、Cambrexから購入された。フィブロネクチンコーティング(1 mg/ml)を伴うまたは伴わない組織培養ポリスチレンプレート(TCPS; Falcon)は、対照として使用された。
【0244】
実施例3
マクロファージ発生
単球からマクロファージへの表現型進行および多核細胞を形成するための接触誘導融合は、培養の3週にわたって同様の速度で進行した。PEA表面は、ヒト単球の癒着および分化を支持したが、質的に、PEA表面は、形態および分化/融合速度から判断して、高活性状況を誘導するようには見えない。図17を参照されたい。
【0245】
実施例4
単球/マクロファージ活性化
単球およびマクロファージによる炎症誘発性および抗炎症性メディエーターの分泌は、ポリマー上でのインキュベーションの24時間後(示される)および7日後(示されない)にELISA(R&D Systems)によって測定された。
【0246】
インターロイキン-6は、マクロファージ細胞毒活性を増加し得る多面性炎症誘発性サイトカインである。単球は、その他のポリマー上よりもPEA上の場合、5倍を超えて少ないIL-6を分泌した(n=4の代表的な実験)。IL-6分泌は、培養の7日目において、すべてのポリマー上で10 pg/mlよりも少なかった(示されない)。図18を参照されたい。
【0247】
インターロイキン-1bは、内皮の表面血栓形成を増加し得る強力な炎症誘発性サイトカインである。24時間後、PEA上の単球は、PLGA 73KおよびPBMA上よりも少ないIL-1bを分泌した(n=4の代表的な実験)。IL-1b分泌は、培養の7日目において、すべてのポリマー上で10 pg/mlよりも少なかった(示されない)。図19を参照されたい。
【0248】
インターロイキン-1受容体アンタゴニストは、IL-1に対する受容体に競合的に結合し、炎症誘発性シグナル伝達を遮断する、IL-1bの自然発生的な阻害剤である。PEAは、接着単球を誘導して、この抗炎症性メディエーターの顕著な量を分泌させた(n=4の代表的な実験)。図20を参照されたい。
【0249】
実施例5
血小板
癒着および凝集
ポリマー血液適合性のマーカーとして使用される血小板凝集は、PEAおよびフィブリノーゲンコーティング表面へ30分間曝露されたヒト血小板を使用して可視化された。血小板は、簡単にはPEAに接着またはPEA上に凝集しなかったが、予期されたように、フィブリノーゲン上に凝集した。図21を参照されたい。
【0250】
活性化
ヒト血小板は、ポリマーコーティングまたはタンパク質コーティングウェルで、30分間37℃でインキュベートされ、ATP放出が、発光アッセイ(Cambrex)によって測定された。血小板は、PEVAc/PBMA上よりもPEA上において2倍低く活性化され、PEAは、ヘパリンコーティング表面の約2倍のみ血小板を活性化し、PEAは高度に血液適合性であることが示唆される。図22を参照されたい。
【0251】
実施例6
内皮細胞生体適合性
ヒト冠状動脈内皮細胞(EC)および大動脈平滑筋(SMC)は、ポリマー上で72時間インキュベートされた。PEA上でのEC増殖は、PEVAc/PBMA上よりも4倍高く、PEAは、ゼラチンコーティング表面上の細胞成長に対して、SMC成長よりもEC成長を支持した。図23を参照されたい。
【0252】
実施例7
酵素生体分解
ポリマーは、ステンレススチールディスク上に流し込まれ、酵素または対照バッファーにおいて37℃でインキュベートされた。溶液は、48時間毎に交換され、酵素、α-キモトリプシン(CT)の活性が、蛍光基質アッセイによって確認された。示された時間ポイントにおいて、ポリマー試料はリンスされ、不変のの重量まで乾燥された。重量減少は、重量測定法で測定され、分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定された。
【0253】
両方のPEAは、食塩水溶液(PBS)における無重量減少と比較して、1ヶ月にわたって顕著な重量減少をともなって酵素的に分解した。加水分解バルク浸食によって分解することが公知のPLGAは、早期の時間ポイントによって示されるように、酵素的に分解しない。試料は、最終的には物理的統合性を失い、測定誤差を増加する。酵素を伴うまたは伴わないバッファーにおけるPBMAに対しては、重量減少は観測されなかった(示されない)。図24を参照されたい。
【0254】
顕著なMW変化は、PBSおよびキモトリプシン溶液の両方におけるPEAに対して観測されなかった。顕著なMW変化(21日目で87%減少)は、PBSおよびキモトリプシン溶液の両方におけるPLGAに対して観測された。28日目において、PLGAのMWは、非常に小さくてGPCによって決定できなかった。図25を参照されたい。
【0255】
総合すれば、これらの結果は、PLGAの公知のバルク浸食と比較して、PEAに対する酵素的駆動型、表面浸食メカニズムを支持する。
【図面の簡単な説明】
【0256】
【図1】細胞増殖抑制性抗増殖薬が付着されている外科的材料を図示する;材料は、それが、外科的処置の部位におけるヒト組織の周囲にラップされる、またはヒト組織の上もしくは間に配置され得るように形成される。
【図2】薬物がストランド内に埋め込まれるメッシュの単一ストランドの断面の拡大である。
【図3】薬物がストランド上にコーティングされるメッシュの単一ストランドの断面の拡大である。
【図4】細胞増殖抑制性抗増殖薬の溶液に浸漬されているメッシュの二本ストランドの拡大であり、そこで薬物を癒着および毛管作用によってストランドに付着させる。
【図5】管または導管の端間吻合の周囲に配置される細胞増殖抑制性抗増殖性外科的ラップの側面断面である。
【図6】図5の外科的ラップのレイアウト図である。
【図7】吻合への応用のための環状抗増殖性外科的材料の平面図である。
【図8】吻合への応用のための環状抗増殖性外科的材料の平面図であり、環の内側が、接続する血管上への配置を促進するためのスリットを有する。
【図9】大動脈-静脈移植片吻合に配置される細胞増殖抑制性抗増殖性外科的ラップの断面である。
【図10】冠状動脈の側面への内胸動脈の吻合に配置される細胞増殖抑制性抗増殖性外科的ラップの断面である。
【図11】図11Aは、付着された細胞増殖抑制性抗増殖薬を有する従来の縫合の典型的な平面図を示す。図11Bは、外部表面上にコーティングされた、ならびに内側内に浸透させられた、付着された細胞増殖抑制性抗増殖薬を有する従来の縫合の断面を示す。
【図12】図12Aは、外科的ラップが動脈上に配置される場合の、動脈端間吻合の一つの態様の平面図を示す。図12Bは、外科的ラップが動脈上に配置される場合の後に続く治癒した動脈端間吻合の一つの態様の平面図を示す。
【図13】外科的ラップが動脈および静脈の両方に配置される場合の、端側動静脈吻合の一つの態様の平面図を示す。
【図14】その他の公知のポリマーと比較した場合の、PEA含有ポリマーへの等価な単球接着を実証する例示的なデータを提示する。
【図15】PEAを含むポリマーの一つの態様を提示する。
【図16】4-アミノTEMPOを含むPEAポリマーの一つの態様を提示する。
【図17】その他の公知のポリマーと比較した場合の、PEAポリマーの存在下での単球過反応の欠乏を示す例示的な顕微鏡写真を提示する。
【図18】PEAポリマーの一つの態様が、最小のインターロイキン6発現と関連することを示す例示的なデータを提示する。
【図19】PEAポリマーの一つの態様が、最小のインターロイキン1β発現と関連することを示す例示的なデータを提示する。
【図20】PEAポリマーの一つの態様が、自然発生的なインターロイキン-1受容体アンタゴニスト発現における上昇と関連することを示す例示的なデータを提示する。
【図21】フィブリノーゲンと比較した場合の、PEAへの最小の単球接着を示す例示的な顕微鏡写真を提示する。
【図22】PEAポリマーの一つの態様が、最小の血小板活性化と関連することを示す例示的なデータを提示する。
【図23】PEAポリマーの一つの態様が、別のポリマーと比較した場合、上昇したヒト冠状動脈内皮細胞増殖と関連することを示す例示的なデータを提示する。
【図24】PEAポリマーの一つの態様が、その他のポリマーと比較した場合、安定で制御された酵素誘導重量減少率を有することを示す例示的なデータを提示する。
【図25】PEAポリマーの一つの態様が、その他のポリマーと比較した場合、分子量における安定な制御された酵素誘導軽減を有することを示す例示的なデータを提示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPIIb/IIIa阻害剤およびラパマイシンを含む、医療デバイスに付着される組成物。
【請求項2】
GPIIb/IIIa阻害剤が、ゼミロフィバンを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
組成物が、抗トロンビン剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
組成物が、抗凝固剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、制御放出薬物溶離を提供する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
組成物が、医療デバイスに共有結合されるポリマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
医療デバイスが、透析/アフェレーシスカテーテル、透析カテーテル、腹膜透析カテーテル、固定チップ透析カテーテルからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
医療デバイスが、合成血管移植片を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
医療デバイスが、抗癒着膜バリアを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
膜バリアが、酸化再生セルロースを含む、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
GPIIb/IIIa阻害剤およびラパマイシンを含む組成物。
【請求項12】
GPIIb/IIIa阻害剤が、ゼミロフィバンを含む、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
抗トロンビン薬をさらに含む、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
抗トロンビン薬が、ビバリルジンを含む、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
抗凝固薬をさらに含む、請求項11記載の組成物。
【請求項16】
ポリマーに基づく媒質をさらに含む、請求項11記載の組成物。
【請求項17】
媒質が、制御放出薬物溶離を提供する、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
媒質のポリマーが、ポリビニルピロリドン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアセトアミド)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレン コ-酢酸ビニル)、ポリ(メタクリル酸n-ブチル)、およびポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)からなる群より選択される、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
媒質が、医療デバイスに付着される、請求項17記載の組成物。
【請求項20】
医療デバイスが、透析/アフェレーシスカテーテル、透析カテーテル、腹膜透析カテーテル、固定チップ透析カテーテルからなる群より選択される、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
a)i)瘢痕組織および/または癒着形成を引き起こす外科的処置を受けているかまたは外科的処置後の患者;ii)GPIIb/IIIa阻害剤およびラパマイシンを含む組成物;を提供する段階;および
b)該瘢痕組織および/または癒着形成が軽減されるような条件下で、該組成物を該患者に投与する段階;
を含む、方法。
【請求項22】
GPIIb/IIIa阻害剤が、ゼミロフィバンを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
外科的処置が、腎臓移植および吻合からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
投与する段階が、膜バリアを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
投与する段階が、水性溶液を含み、該溶液が、患者との接触に際して重合する、請求項21記載の方法。
【請求項26】
a)i)フィブリン鞘形成を引き起こす透析処置を受けている患者;ii)該透析処置を行なうために該患者に配置される透析カテーテルに付着される組成物であって、GPIIb/IIIa阻害剤およびラパマイシンを含む組成物;を提供する段階;
b)フィブリン鞘形成が軽減されるような条件下で、該カテーテルを該患者に配置する段階;
を含む、方法。
【請求項27】
GPIIb/IIIa阻害剤が、ゼミロフィバンを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
カテーテルが、腹膜カテーテルおよび大腿カテーテルからなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項29】
カテーテルが、血管移植片を含む、請求項26記載の方法。
【請求項30】
移植片が、非接着性管腔表面を含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ジ-アミノ酸ポリマーを含む組成物であって、GPIIb/IIIa阻害剤およびラパマイシンが、該ポリマーに付着される組成物。
【請求項32】
GPIIb/IIIa阻害剤が、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
抗トロンビン薬をさらに含む、請求項31記載の組成物。
【請求項34】
抗トロンビン薬が、ビバリルジンを含む、請求項33記載の組成物。
【請求項35】
抗凝固薬をさらに含む、請求項31記載の組成物。
【請求項36】
ポリマーが、リジンを含む、請求項31記載の組成物。
【請求項37】
ポリマーが、ロイシンを含む、請求項31記載の組成物。
【請求項38】
ポリマーが、制御放出薬物溶離を提供する、請求項31記載の組成物。
【請求項39】
ポリマーが、血管ラップに付着される、請求項31記載の組成物。
【請求項40】
ポリマーが、医療デバイスに付着される、請求項31記載の組成物。
【請求項41】
医療デバイスが、透析/アフェレーシスカテーテル、透析カテーテル、腹膜透析カテーテル、固定チップ透析カテーテルを含む群より選択される、請求項40記載の組成物。
【請求項42】
a)i)瘢痕組織および/または癒着形成を引き起こす外科的処置を受けているかまたは外科的処置後の患者;ii)GPIIb/IIIa阻害剤およびラパマイシンを含むジ-アミノ酸ポリマーを含む組成物;を提供する段階;および
b)該瘢痕組織および/または癒着形成が軽減されるような条件下で、該組成物を該患者に投与する段階;
を含む、方法。
【請求項43】
GPIIb/IIIa阻害剤が、ゼミロフィバン、クロマフィバン、エラロフィバン、オルボフィバン、ロキシフィバン、シブラフィバン、RPR 109891、UR-4033、UR-3216、UR-2922、アブシキシマブ、チロフィバン、またはエプチフィバチドを含む群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
外科的処置が、腎臓移植および吻合を含む群より選択される、請求項42記載の方法。
【請求項45】
組成物が、抗トロンビン薬をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項46】
抗トロンビン薬が、ビバリルジンを含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
組成物が、抗凝固薬をさらに含む、請求項42記載の方法。
【請求項48】
ポリマーが、リジンを含む、請求項42記載の方法。
【請求項49】
ポリマーが、ロイシンを含む、請求項42記載の方法。
【請求項50】
ポリマーが、制御放出薬物溶離を提供する、請求項42記載の方法。
【請求項51】
ポリマーが、血管ラップに付着される、請求項42記載の方法。
【請求項52】
ポリマーが、医療デバイスに付着される、請求項42記載の方法。
【請求項53】
医療デバイスが、透析/アフェレーシスカテーテル、透析カテーテル、腹膜透析カテーテル、固定チップ透析カテーテルを含む群より選択される、請求項52記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−22759(P2009−22759A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184851(P2008−184851)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【分割の表示】特願2007−520493(P2007−520493)の分割
【原出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(507001896)アフメディカ インコーポレイティッド (2)
【Fターム(参考)】