説明

癌細胞への抗体の動員のためのキメラ小分子

本発明は、抗体を、癌細胞、特に前立腺癌細胞又は転移性前立腺癌細胞に動員するのに用いられるキメラ化合物に関する。本発明による化合物は、リンカー及び任意で連結分子を介して細胞結合末端(CBT)に共有結合された抗体結合末端(ABT)部分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌細胞、特に前立腺癌細胞又は転移性前立腺癌細胞に抗体を動員するために用いられる化合物に関する。本発明による化合物は、リンカー及び任意であるが好ましくは連結分子により、細胞結合末端(CBT)に共有結合された抗体結合末端(ABT)部分を有する。また、タンパク質標的が多くの非前立腺癌細胞の新生血管に存在するならば、本発明における化合物は、他の癌の種類についての抗脈管形成療法としての機能も果たす。
【0002】
関連出願及び助成金支援
本願は、2008年5月13日に出願した米国仮出願番号US61/127,539号、発明の名称「Chimeric Small Molecules for the Recruitment of Antibodies to Cancer Cells」について優先権の利益を主張し、その全内容が本願に援用される。
【0003】
本発明は、国立衛生研究所からの助成金、助成番号1DP2OD002913−01により支援された。したがって、政府は、本発明について所定の権利を保有する。
【背景技術】
【0004】
アメリカ人男性の6人に1人が生涯に前立腺癌を発症すると予測されている。非特許文献1参照のこと。前立腺癌の検出及び治療の両方における近年の進歩にもかかわらず、依然としてアメリカ人男性での癌に関連する死亡の主な原因のひとつである。
【0005】
抗DNP抗体は、ヒトの血流中に高濃度で容易に存在する。非特許文献2参照。癌に関係する抗体に指向する多数の小分子が合成されてきた。非特許文献3〜6参照。
【0006】
本発明は、内因性の抗ジニトロフェニル(DNP)抗体を前立腺癌細胞に選択的に再指向可能であり、抗体介在性の細胞媒介性細胞障害を引き起こすことが可能な新規の小分子の設計及び合成を対象とする。
【0007】
転移する前に前立腺癌が診断されると、患者は99%以上の生存可能性を有する。この段階での前立腺癌を治療する最も有効な手段は、前立腺全摘出術である。残念ながら、この手術は、生殖器及び膀胱に関連した神経及び血管を切断する危険があり、インポテンス又は失禁をもたらす可能性がある。放射線療法は、インポテンスの危険を伴う一般的に用いられるさらに別の治療である。前立腺癌に対する放射線療法を受ける患者の半数が、2年の治療の間にインポテンスとなる。これらの治療に関連した副作用に加え、それらは、診断で癌が既に非局在化又は転移した患者では極めて効果が少ない。そのような場合、患者は、一般的にホルモン療法や化学療法などのより侵襲的な治療を受ける。残念ながら、多くの患者は、最終的にホルモン療法への反応が止まってしまい、最も効果的な化学療法であるタキソテールでも、進行した前立腺癌患者の寿命を平均で2.5ヶ月延ばすに過ぎない。
【0008】
他の代替治療として、モノクローナル抗体(mAb)に基づく免疫療法は、生活の良好な質を維持しつつ、癌患者に臨床上有用であることが証明されている。これらの抗体は、シグナル伝達の操作を介して癌細胞の増殖を制御すること、又は細胞毒性を促進させることができる。FDAで承認済みのmAbを基礎とした抗癌剤は、ハーセプチン及びリツキサン(リツキシマブ)であって、これらはそれぞれ、現在、乳癌及び非ホジキンリンパ腫の治療に用いられている。前立腺癌患者が現在利用可能なmAbを基礎とした治療は存在しないが、mAbを基礎とした免疫療法に関する進行した臨床試験は、進行した前立腺癌を含む前立腺癌の治療に有望であることを示している。mAbを基礎とした免疫療法に大きな利点があるにもかかわらず、その可能性を制限するかもしれない大きな危険がある。一般的に、mAbを基礎とした治療は、かなりの費用がかかり(ハーセプチンの治療全体では、70,000ドル)、経口での生体利用性がなく、重度の、そしてしばしば命にかかわる副作用をもたらす可能性がある。例えば、ハーセプチンは、心臓の問題に関連し、心臓に関する合併症のために、癌患者の約10%に投与できない。リツキサンは、腎不全、感染症、並びに免疫及び肺毒性を含む複数の副作用を生じる可能性がある。
【0009】
未だ初期段階であるが、ヒト免疫応答を鋳型とした小分子を用いる概念は、現実的な潜在性を示してきた。近年の報告では、小分子が乳癌細胞、メラノーマ細胞及び鼻咽頭表皮癌細胞などの癌細胞に抗体を指向させるのに使用されていることが明らかになっている。動物実験では、これらの分子がマウスにおいて腫瘍拒絶及び抗腫瘍免疫を促進し得ることが示されている。この方法は、内因性の抗体を選択的に関与のある細胞に指向させ得ることから、外因性の抗体を投与することに関連する費用及び副作用を抑えると同時に、mAbを基礎とした治療の能力を利用する潜在性を有する。抗DNP抗体を前立腺癌細胞に動員する同様の方法を開発することで、前立腺癌の全ての形態のための新しい治療法を作り出すと同時に、提案された研究がこの分野を拡大する助けとなるであろう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】American Cancer Society、Cancer Facts and Figures、2008年、アトランタ
【非特許文献2】Ortega、E.;Kostovetzky、M.;Larralde、C.著、Mol. Immun.、1984年、21巻、883頁
【非特許文献3】Luら著、Adv.Drug Deliv.Rev.、2004年、56巻、1161頁
【非特許文献4】Luら著、Mol.Pharmaceut.、2007年、4巻、695頁
【非特許文献5】Carlsonら著、ACS Chem.Bio.、2007年、2巻、119頁
【非特許文献6】Popkov、M.;Gonzalez、B.;Sinha、S.C.:Barbas、C.F.,III著、Proc.Nat.Acad.Sci.、2009年、1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、特に前立腺癌及び転移性前立腺癌を含む、あらゆる癌を実際に治療するために用いられ得るキメラ化合物を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は、追加の生物活性剤又は癌の治療の助けとなる薬剤、特に転移性前立腺癌を含む前立腺癌の治療の助けとなる薬剤を含む医薬組成物などの医薬組成物を提供するのに用いられ得るキメラ化合物を提供することを更なる目的とする。
【0013】
本発明は、転移性前立腺癌を含む前立腺癌などの癌を治療する方法を提供することを更に別の目的とする。
【0014】
本発明は、特に転移性前立腺癌を含む、癌の転移を阻止する方法を提供することを、また更なる目的とする。
【0015】
本発明のこれら及び/又は他の目的は、本願で述べられる発明の説明から容易に集められるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の態様は、キメラ分子が、特に前立腺癌を含め、さらに転移性前立腺癌を含め、ほぼどのような癌であっても罹患する患者の免疫療法を補助するように、前立腺特異的膜抗原(PMSA)に結合し、抗体を引き付けるキメラ抗体動員分子を提供することである。
【0017】
本発明の第一の態様において、キメラ抗体動員分子は、次の式で示されるもの、又は医薬的に許容可能な塩、溶媒和物若しくは多形体である。
【0018】
【化1】

【0019】
ここで、Aは、患者において抗体に結合可能なハプテンを含む抗体結合部分であり;
Bは、この患者における細胞の細胞表面の前立腺特異的膜抗原に結合可能な細胞結合部分であり、
Lは、分子において、[CON]をA又はBに結合するリンカー分子であり、
[CON]は、リンカー分子をA又はBに結合する結合又は連結分子であり、
分子中の各nは、独立して1〜15、1〜10、1〜5、1〜3、2〜3、2〜5の整数である。
【0020】
本発明の追加の態様において、医薬組成物は、上述のキメラ化合物の有効量を、任意かつ好ましくは、医薬的に許容可能なキャリア、添加物又は賦形剤と組み合わせて含む。代替の態様において、医薬的な組み合わせ組成物は、上述のキメラ化合物の有効量を、前立腺癌、特に転移性前立腺癌を含む癌を治療するのに、又は癌、特に前立腺癌の二次的な状態若しくは影響(例えば、本願の他で述べられるような、骨痛、過形成、骨粗鬆など)を治療するのに用いられる少なくとも1つの追加の薬剤と組み合わせて含む。
【0021】
本発明の更なる態様において、本発明による化合物は、必要としている患者における癌の治療、特に男性患者の前立腺癌の治療に使用される。癌細胞の治療方法は、本願で述べるキメラ化合物の有効量を、医薬的に許容可能なキャリア、添加剤又は賦形剤と組み合わせ、特に任意で前立腺癌、転移癌を含む癌、又はその二次的な状態若しくは影響の1つ以上を治療するのに有効な少なくとも1つの追加の薬剤と組み合わせて、必要とする患者に投与することを含む。
【0022】
本発明はまた、特に骨、リンパ(リンパ節)系、膀胱、輸精管、腎、肝、肺及び脳を含む、患者の人体のその他の組織への癌の広がり又は転移を減少又は阻害するための前立腺癌を阻害する方法に関する。
【0023】
本発明はまた、PSMAを保持する非癌性細胞の破壊が、治療、特に癌療法で役立つ事実に関する。例えば、PSMAが非前立腺癌細胞の多くの新生血管にあるが、通常の新生血管にはない場合、本発明は、これらの癌の新生血管を標的とすることで、他の形態の癌への抗脈管形成療法に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】小分子を鋳型とした免疫療法の概略図であるスキーム1を示す。
【図2】(A)は、PSMAの結合ポケットにおける細胞結合末端の計算モデルを示す。(B)は、PSMA−小分子−抗DNP抗体の三重複合体を示す。
【図3】本発明の前立腺癌抗体動員分子であるPC−ARM(3)を示す。
【図4】図3の前立腺癌抗体動員分子の合成を示す。Cbzで保護されたリジン及びt−ブチルで保護されたグルタミン酸をトリホスゲンで結合し、続いてCbzの脱保護及びアジド形成を行うことによる3ステップで、アジドで官能基化した細胞結合末端を合成した(スキーム2)。オクタエチレングリコールから5ステップの過程で、ヘテロ二官能性PEG10を合成した(スキーム2)。これらの中間体は、マイクロ波で補助した銅触媒によるヒュスゲン付加環化により結合され、マイクロ波で補助したTFAの脱保護を用いて脱保護され(スキーム3)、これにより本発明の前立腺癌抗体動員分子PC−ARM(3)をもたらした。
【図5】(A)は、PSMA発現LNCaP細胞に結合する小分子3の抗DNP抗体依存性を説明する代表的なフローサイトメトリーのヒストグラムを示す。3(50nM)でLNCaP細胞をプレインキュベートし、その後Alexa Fluor488結合の抗DNP抗体でインキュベートした。(B)は、PSMA陰性DU−145細胞に結合する小分子3の非抗DNP抗体依存性を説明する代表的なフローサイトメトリーのヒストグラムを示す。3(50nM)でDU−145細胞をプレインキュベートし、その後Alexa Fluor488結合の抗DNP抗体でインキュベートした。
【図6】PC−ARM(3)(図ではP−ARM8と示される)で引き起こされた細胞死の百分率の変化を示す。簡単に説明すると、LNCaP細胞及びPBMCsを、抗DNP抗体IgG1、IgG3及び抗DNP抗体を有すると知られている通常のヒトIgGの試料の存在下で、24時間37℃でインキュベートした。細胞死の百分率の変化は、50nMのP−ARM8(3)の添加に関係した増加を示す。データは、12個で採られ、平均±SEMとして示す。また、各実験を、本来の小分子で引き起こされる細胞死をスクリーニングするため、50nMのP−ARM8単独で平行して行った。
【図7】本発明の例示化合物を示す。
【図8】本発明の更なる例示化合物を示す。
【図9】標的となる合成に使用される分岐的合成スキーム1aを示す。
【図10】本発明の化合物合成に用いられるプロパルギル中間体の合成であるスキーム2aを示す。
【図11】中間体15の合成、及びクリックケミストリーで使用されるアジド中間体16の入手案に関するスキーム3aを示す。
【図12】ビスdi−DNPリジン21の合成法を説明するスキーム4aを示す。
【図13】図8の化合物3又は類似の化合物を製造するためにビスジDNPリジン21と縮合するのに使用され得る、トリスアジジド化類似体の合成法を説明するスキーム5aを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の用語は、本発明を説明するのに用いられる。用語がここで定義されない場合には、その用語は、文脈においてその用語を本発明の説明での使用に適用して、当業者により認識される技術的な意味を有するものである。
【0026】
本願で用いられる用語「化合物」は、特に示さない限り、本願に開示される特定の化合物のいずれかを指し、その互変異性体、位置異性体、幾何異性体、及び適用可能である場合には光学異性体(鏡像異性体)、並びにその医薬的に許容可能な塩及び誘導体(プロドラッグの形態を含む)を含む。文脈中で使用される範囲内では、用語化合物は通常、単一化合物を指すが、立体異性体、位置異性体及び/又は光学異性体(ラセミ混合物を含む)などのその他の化合物、並びに開示の化合物の特定の鏡像異性体又は鏡像異性体が濃縮された混合物を含んでもよい。この用語はまた、文脈において、活性部位への投与及び送達を促進するように変更された化合物のプロドラッグの形態も指す。本発明の化合物の説明では、特に種々の置換体、リンカー及び連結分子、並びにそれに関連する変化体が説明されることが特筆される。本願に記載の分子は、以下で一般的に記述されるように、安定な化合物であることが当業者に理解される。
【0027】
用語「患者」又は「対象」は、明細書の全体を通じて文脈中で、本発明による組成物で予防的な治療(予防)を含む治療が提供される動物、一般的に哺乳類、好ましくはヒトを述べるために使用される。ヒトの患者などの特定の動物、又はヒトの男性患者などの特定の性別の患者に特異的な感染、状態又は疾病の治療については、用語患者は、特定の動物を指す。本発明による化合物は、特に前立腺癌、とりわけ転移性前立腺癌を含め、癌の治療に有用である。
【0028】
用語「有効」は、本願において、特に示さない限り、文脈において、意図された結果を生み出すか又はもたらすために使用される化合物又は組成物の量を述べるのに使用され、その結果は、本願で他に述べるような、対象における毒性物質の影響の阻害、又は二次的な状態、疾病状態若しくは毒性物質への曝露の兆候についての対象の治療に関係する。この用語は、本願において他に記載される、その他の全ての有効量又は有効濃度の用語(用語「治療的に有効な」も含む)を包含する。
【0029】
本願で用いられる用語「治療する」、「治療している」及び「治療」等は、前立腺癌又は前立腺癌の転移の危険にある患者に恩恵を与えるあらゆる行為を指し、特に、癌増殖の阻害、癌細胞又は組織の減少、癌の転移が進行することの阻止又は遅延、癌に対して二次的に起こる疾病状態発症の阻止又は遅延、又は癌の鎮静若しくは治癒の少なくとも1つの症状の減少又は抑制を通して状態を改善することを含む。本願で用いる治療は、予防的治療及び治癒的治療の両方を包含する。用語「予防」が使用される場合、上記で別に述べられたように、癌の転移を含む癌の治療の文脈中で、発生の可能性又は発生の重症度を減少させることを意味する。
【0030】
用語「腫瘍」又は「癌」は、明細書の全体を通じて、癌性又は悪性の新生物、すなわち、細胞増殖により成長し、通常よりもしばしばより急速に成長し、新たな成長を開始した刺激の停止後に成長を継続する異常組織の形成及び成長をもたらす病的過程を指すために使用される。悪性の新生物は、通常の組織との構造的な組織化及び機能的な連動性の部分的又は完全な欠如を示してほぼ周囲組織を侵し、複数の部位に転移し、そして排除が試みられた後に再発し治療が十分でない場合に患者の死亡を招く可能性がある。本願で用いられるように、用語腫瘍は、全ての癌性の病態を記載するのに用いられ、悪性造血性の、腹水の及び固形の腫瘍に関連する病的過程を包含する。代表的な癌は、例えば、前立腺癌、転移性前立腺癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝癌、脾臓癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、精巣癌、膀胱癌、腎臓癌、脳腫瘍/CNS癌、頭部癌、首部癌、咽喉癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、黒色腫、非黒色腫の皮膚癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、小細胞肺癌、絨毛腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、ヘアリー細胞白血病、口腔癌/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、腎癌及びリンパ腫であり、本発明の1つ以上の化合物で治療される。抗血管新生化合物としての本発明の化合物の活性のため、本発明は、あらゆる組織におけるあらゆる癌を現実的に治療する一般的適用性を有し、従って、本発明の化合物、組成物及び方法は、癌の治療に一般的に適用可能である。タンパク質標的が、多くの非前立腺の癌細胞の新生血管上にあれば、本発明における化合物は、その他の癌の種類のための抗血管新生療法としての機能も果たし得る。
【0031】
本発明のある特定の態様において、治療される癌は、前立腺癌又は転移性前立腺癌である。別に、転移性前立腺癌は、疾病の末期において、癌患者の実質的に全ての組織で見つかるかもしれず、一般的には、転移性前立腺癌は、精嚢、リンパ系/節(リンパ腫)、骨、膀胱組織、腎組織、肝組織、及び脳(脳の癌/腫瘍)を含めた実質的に全ての組織で見つかる。したがって、本発明は、一般的に適用可能であり、病因にかかわらず、あらゆる組織でのあらゆる癌を治療するのに用いられ得る。
【0032】
用語「前立腺癌」は、男性の生殖器官の腺である前立腺において癌が発症する疾病を述べるのに用いられる。これは、前立腺の細胞が変異し制御不能に増殖を開始する時に発生する。これらの細胞は、前立腺から身体のほぼあらゆる他の部分、特に、その他の組織の中でも骨若しくはリンパ節、腎、膀胱及び脳でさえも転移する可能性がある(転移性前立腺癌)。前立腺癌は、痛み、排尿の困難性、性行での問題、勃起障害を引き起こす可能性がある。その他の症状は、疾病の末期の間に潜在的に進行進展する可能性がある。
【0033】
前立腺癌の検出率は、世界中で大きく異なり、南及び東アジアでは、ヨーロッパ、特にアメリカと比較して発見頻度が低い。前立腺癌は、50歳過ぎの男性で最も頻繁に発症し、男性で最も高頻度に見られる癌の種類の1つである。しかし、前立腺癌の発症する多くの男性は、症状を有さず、治療を受けることなく、最終的にその他の原因で死に至る。これは、前立腺の癌は、多くの場合、進行が遅く、病気になった人の多くは、60歳を越えているためである。したがって、前立腺癌とは無関係な原因でしばしば死亡する。遺伝及び食事などの多くの因子が、前立腺癌の発症に関係している。前立腺癌の存在は、症状、健康診断、前立腺特異抗原(PSA)又は生検により示される場合がある。PSA検査の正確性及びスクリーニングにおけるその有用性については、懸念がある。疑いのある前立腺癌は、前立腺の生検を採取し顕微鏡でこれを検査することにより、通常は確認される。CTスキャン及び骨スキャンなどの更なる検査は、前立腺癌が広がっているかどうかを検討するために行われてもよい。
【0034】
治癒目的での前立腺癌に対する治療の選択肢は、初めは外科手術及び放射線療法である。ホルモン療法、化学療法、光子治療、凍結外科手術、高密度焦点式超音波(HIFU)などのその他の治療もまた、臨床シナリオ及び所望の結果に応じて存在する。
【0035】
男性の年齢及び元の健康状態、転移の程度、顕微鏡での状況、及び初期治療に対する癌の反応性は、疾病の転帰を決定するのに重要である。治癒の意図をもって局部的な前立腺癌(前立腺内に含まれる腫瘍)を治療するかどうかを決定することは、患者の生存及び生活の質の観点における期待される恩恵と弊害との間での患者の妥協である。
【0036】
前立腺癌を評価する重要な部分は、病期、又は癌が広がっている程度を決定することである。病期を知ることは、予後を定める助けとなり、治療法を選択する際に有用である。最も一般的な分類は、4期のTNM(腫瘍/節/転移の略称)分類である。この構成要素は、腫瘍の寸法、関与するリンパ節の数、及び他の転移の存在を含む。
【0037】
いかなる病期分類によってもなされる最も重要な差異は、癌がまだ前立腺内に留まっているか、又は転移性であるかである。TNM分類では、臨床のT1及びT2の癌は、前立腺のみで見つかり、一方T3及びT4の癌は、他の場所に広がっており、その他の組織に転移している。いくつかの検査が、広がりの証拠を探すために使われ得る。これらは、骨盤への広がりを評価するコンピュータ断層撮影、骨への広がりを探索する骨スキャン、並びに前立腺被膜及び精嚢を詳しく評価する直腸コイル磁気共鳴影像法を含む。骨スキャンは、転移する多くのその他の癌に見られるのとは反対に、骨の転移の領域における増加した骨密度による骨芽細胞の外見をしばしば明らかにする。コンピュータ断層撮影(CT)及び磁気共鳴映像法(MRI)は、現在、メタ分析による前立腺癌を患う患者でのリンパ節転移の可能性の評価において、重要な情報を何も追加しない。
【0038】
前立腺癌は、早期に発見されれば治療が比較的容易である。前立腺の生検の後、病理医は、顕微鏡で試料を検査する。癌が存在すれば、病理医は、腫瘍の悪性度を報告する。悪性度は、腫瘍組織が通常の前立腺組織と異なる程度を示し、腫瘍の成長の早さを示唆する。グリソン分類は、前立腺の腫瘍を2〜10に等級付けするのに使用され、グリソンスコアが10である場合、最も異常の程度が高いことを示す。病理医は、顕微鏡で観察された最も一般的な形態について1〜5の数を割り当て、そして2番目の最も一般的な形態に関して同様に行う。これらの2つの数の合計が、グリソンスコアである。ホイットモア−ジェーエット病期は、時に用いられる別の方法である。腫瘍の悪性度は、治療法の提案を決定するのに使用される主な因子の一つであることから、腫瘍の適切な等級付けは重要である。
【0039】
早期の前立腺癌は通常、無症状である。しばしば、定期健診で分かったPSAの上昇に関しての検査で診断される。しかし、時に前立腺癌は、良性の前立腺肥大などの疾病の症状としばしば同様の症状を発症する。これらは、頻尿、夜間での排尿増加、尿の安定な流れを開始し維持することの困難性、血尿、及び痛みを伴う排尿を含む。前立腺癌は、前立腺が尿道前立腺部を取り囲んでいることから、泌尿器の機能障害に関係する。したがって、前立腺内部の変化は、泌尿器の機能に直接影響を与える。輸精管は、尿道前立腺部に精液を届け、前立腺自体からの分泌物が精液成分に含まれることから、前立腺癌はまた、勃起障害又は痛みを伴う射精などの性機能及び性的能力での問題をもたらす可能性がある。
【0040】
進行した前立腺癌は、身体の他の部位に広がることがあり、これは更なる症状をもたらす可能性がある。最も一般的な症状は、しばしば椎骨(脊椎骨)、骨盤又は肋骨で起こる骨痛である。大腿骨などのその他の骨への癌の広がりは、通常、骨の近位部についてである。脊椎における前立腺癌もまた、脊髄を圧迫し、下肢の脱力、尿失禁及び便失禁を起こすことがある。
【0041】
前立腺癌の具体的な原因は、未だ不明である。前立腺癌を発症する男性の危険性は、その年齢、遺伝子、人種、食事、生活様式、医薬、及びその他の要因に関係する。主な危険要因は、年齢である。前立腺癌は、45歳未満の男性では一般的ではないが、加齢に伴い一般的となる。診断時の平均年齢は70である。しかし、多くの男性は、前立腺癌であることを全く分からない。
【0042】
男性の遺伝的背景は、前立腺癌を発症させる危険の一因となる。このことは、特定の人種集団、前立腺癌を患う男性の一卵性双生児、及び特定の遺伝子を有する男性に見られる前立腺癌の発症率増加により示唆される。前立腺癌を患う兄弟又は父親を有する男性は、前立腺癌発症の通常の危険性の2倍の危険性を有する。スカンジナビアにおける双子の研究で示唆されるように、前立腺癌の危険性の40%は、遺伝的因子により説明され得る。しかし、前立腺癌の原因である単一の遺伝子は見出されておらず、多くの異なる遺伝子が関与している。女性における卵巣癌及び乳癌の重大な危険因子である2つの遺伝子(BRCA1及びBRCA2)もまた、前立腺癌に関与している。
【0043】
特定の食物、ビタミン及びミネラルの規定量は、前立腺癌の危険の一因となる。前立腺癌の危険を増加させるおそれのある食事要因は、ビタミンE、ミネラルのセレン、緑茶及びビタミンDの摂取量の低さなどである。大規模な研究が、乳製品、特にパルミチン酸ビタミンAが添加された低脂肪牛乳及びその他の乳製品について行われている。合成ビタミンAのこの形態は、亜鉛及びタンパク質と反応して非吸収性の複合体を形成することから、前立腺癌に関連している。また、前立腺癌は、特定の乳製品におけるウシ成長ホルモンの含有にも関係している。
【0044】
また、前立腺癌と、医薬、医療及び医学的状態との間にもいくらかの関係がある。アスピリン、イブプロフェン又はナプロキセンなどの抗炎症剤の日常的な使用は、前立腺癌の危険を減少させるようである。スタチン類として公知のコレステロール降下剤の使用もまた、前立腺癌の危険を減少させるようである。前立腺の感染又は炎症(前立腺炎)は、前立腺癌の可能性を増加させるようであり、またクラミジア、淋病又は梅毒などの性感染症の感染は、危険性を増加させるようである。肥満、及びテストステロンの血中濃度の上昇は、前立腺癌の危険を増大させるようである。
【0045】
前立腺癌は、通常の精液を分泌する前立腺細胞が癌細胞に変異した場合に開始する、アデノカルシノーマ又は腺癌として分類される。アデノカルシノーマが最も一般的である前立腺の領域は、辺縁部である。病初では、癌細胞の小塊は、他の正常な前立腺に留められており、上皮内癌又は前立腺上皮内腫瘍(PIN)として知られる状態である。PINが癌の前駆体であるという証明はないが、癌と密接に関連する。時間と共に、これらの癌細胞は増殖し始め、周囲の前立腺組織(間質)に広がり、腫瘍を形成する。最終的には、腫瘍は、精嚢若しくは直腸などのすぐ近くの器官を冒すのに十分大きく成長することがあり、又は腫瘍細胞は、血流やリンパ系を移動する能力を得ることがある。身体の他の部位を冒し得る細胞の塊であることから、前立腺癌は、悪性の腫瘍と考えられる。他の器官へのこの浸潤は、転移と称される。前立腺癌は、骨、リンパ節、直腸及び膀胱に最も一般的に転移する。
【0046】
前立腺癌において、正常な前立腺の正常な腺は、異常な腺及び細胞の塊に取って代わられる。男性が前立腺の症状を有する場合、又はスクリーニング検査が癌の危険性の増大を示す場合、より浸襲的精査が提供される。前立腺癌の診断を完全に確認し得る唯一の検査は、顕微鏡観察のために前立腺の小片を取る生検である。しかし、生検に先立って、前立腺及び尿路についてのより多くの情報を収集するのに複数の他の手段が用いられる場合がある。膀胱鏡検査法は、尿道の下方から挿入された薄く柔軟性のある撮像管を用いて、膀胱の内部から尿路を見せる。経直腸的超音波断層法は、直腸におけるプローブからの音波を用いて前立腺の像を生成する。
【0047】
生検の後、組織試料は、次に顕微鏡で検査され、癌細胞が存在するかどうかを明らかにし、そして見られた癌の顕微鏡的特徴(又はグレソンスコア)を評価する。また、組織試料は、転移した悪性細胞の出所を明らかにするために、PSAの存在及び他の腫瘍のマーカーのために染色されてもよい。早期前立腺抗原−2(EPCA−2)及びプロスタソーム分析など、前立腺癌の診断のための複数の他の可能性のある手法が行われている。
【0048】
本発明による化合物を用いた治療に加えて、前立腺癌のための治療(予防的治療を含む)は、食事性セレン、ビタミンE、リコピン、大豆食品、ビタミンD、緑茶、オメガ3脂肪酸及び植物エストロゲンで、前立腺癌を減少させる役割を支持する。選択的エストロゲン受容体モジュレータであるトレミフェンは、初期試験において有望である。テストステロンのジヒドロテストステロンへの変換を阻害する(及び細胞成長傾向を低下させる)2つの医薬、フィナステリド及びデュタステリドは、有用であることが示されている。アブラナ科の野菜(カリフラワー及びブロッコリー)に見られる植物化学物質のインドール−3−カルビノール及びジインドリルメタンは、好ましい抗アンドロゲン特性及び免疫調節特性を有する。前立腺癌の危険性は、菜食主義者の食生活で低下される。
【0049】
前立腺癌の治療は、ホルモン療法のみならず、積極的監視、外科手術(前立腺切除又は睾丸摘出)、小線源療法(前立腺癌小線源療法)を含む放射線療法及び外部ビーム放射を含んでもよい。下記を含む複数のホルモン療法の形態があり、それぞれが本発明の化合物と組み合わされてもよい。
【0050】
・前立腺癌細胞内においてテストステロン及びDHTの作用を直接阻害するフルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、及び酢酸シプロテロンなどの抗アンドロゲン剤。
・DHEAなどの副腎アンドロゲンの産生を阻害するケトコナゾール及びアミノグルテチミドなどの薬剤。これらの薬剤は、精巣において産生される95%のアンドロゲンを阻害することができる他の方法と組み合わせてのみ一般的に使用される。これらの組み合わされた方法は、完全アンドロゲン除去療法(TAB)と呼ばれ、抗アンドロゲン剤を用いても達成され得る。
・作動薬及び拮抗薬を含む、GnRHモジュレータ。GnRH拮抗薬は、LHの産生を直接抑制し、一方でGnRH作動薬は、初期刺激作用の後に下方制御の過程によってLHを抑制する。アバレリックスは、GnRH拮抗薬の例であり、一方でGnRH作動薬としては、ロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン及びブセレリンが挙げられる。
・酢酸アビラテロンは、70%の患者でPSA値及び悪性の末期前立腺癌における腫瘍の寸法を減少させるのに使用され得る。ソラフェニブもまた、転移性前立腺癌を治療するのに使用されてもよい。
【0051】
上記の各治療は、特定の状況においてその使用を制限するという欠点を有する。GnRH作動薬は、最終的に睾丸摘出と同様の副作用を発症するが、治療の初期においてより悪い症状を発症することがある。GnRH作動薬が最初に使用される時、テストステロンの急上昇が転移性癌による骨痛の増加をもたらす可能性があり、そのため抗アンドロゲン剤又はアバレリックスが、これらの副作用を弱めるようにしばしば添加される。エストロゲンは、心臓血管疾患及び血栓に対する危険を増加させることから、一般的に使用されない。抗アンドロゲンは、一般的にインポテンスを発症せず、通常は骨及び筋肉の減少が少ない。ケトコナゾールは、長期使用で肝障害を発症する可能性があり、アミノグルテチミドは、皮膚発疹を発症する可能性がある。
【0052】
進行した段階の前立腺癌のための緩和ケアは、延命、及び転移性疾患の症状の軽減に重点が置かれる。上述したように、酢酸アビラテロンは、ソラフェニブのように進行した段階の前立腺癌を治療するのに有望である。化学療法は、疾病の進行を遅らせ、かつ症状を先送りするように提供されてもよい。最も一般的に用いられる投薬計画は、化学療法薬のドセタキセルを、プレドニゾンなどの副腎皮質ステロイドと組み合わせる。ゾレドロン酸などのビスホスホネートは、骨折などの骨格合併症、又は耐ホルモン性の転移性前立腺癌を患う患者での放射線療法の必要性を遅らせることが示されている。アルファラジンは、骨の転移を標的にして使用されてもよい。第二相の試験は、患者の生存期間を長期化させ、痛みを減少させ、かつ生活の質を向上させることを示す。
【0053】
転移性の疾患による骨痛は、モルヒネ及びオキシコドンなどのオピオイド系鎮痛剤で治療される。骨の転移に対する外部ビーム放射線療法は、痛みの緩和をもたらす場合がある。ストロンチウム89、リン32又はサマリウム153などの特定の放射性同位元素の注射もまた、骨の転移を標的にして、痛みを緩和する一助となる場合がある。
【0054】
積極的監視及び決定的治療法に対する代わりとして、代替的な治療法もまた、前立腺癌の処置に使用されてもよい。PSAは、完全菜食主義の食事(魚は許容)、習慣的な運動及びストレスの減少を利用して、明らかな限局性前立腺癌を患う男性において低下されることが示されている。ザクロ果汁や種々のマメ科植物に見られるイソフラボンであるゲニステインなど、多くの他の単剤は、短期試験において、PSAを減少させ、PSAの倍加期間を遅延させ、又は短期間の試験において局在化された癌を患う男性における二次的マーカーに対して同様の効果を有することが示されている。
【0055】
転移性及び進行性の前立腺癌の兆候、二次的状態又は影響は、特に、貧血、骨髄抑制、体重減少、病的骨折、脊髄圧迫、痛み、血尿、尿管及び/又は膀胱出口閉塞、尿閉、慢性腎不全、尿失禁、並びに骨又は軟部組織の転移に関連する症状である。
【0056】
本発明によるキメラ抗体動員化合物と組み合わせて使用されてもよい追加の前立腺の薬としては、例えば、前立腺肥大用薬/薬剤、並びにエウレキシン、フルタミド、ゴセレリン、ロイプロリド、ルプロン、ニランドロン、ニルタミド、ゾラデックス及びこれらの混合物が挙げられる。上記の前立腺肥大用薬/薬剤としては、例えば、アムベニル、アムボフェン、アムゲナル、アトロセプト、ボロマニル、ブロモジフェンヒドラミン−コデイン、ブロモツス−コデイン、カルデュラ、クロロフェニラミンヒドロコドン、シクロピロックス、クロトリマゾール−ベタメタゾン、ドルセド、デュタセリド、フィナステリド、フロマックス、ゲシル、ヘキサロール、ラミシル、ラナセド、ロプロックス、ロトリゾン、メテナミン、メテン−ベラ−メト Bl−フェンサル、meth−hyos−atrp−M Blue−BA−phsal、MHP−A、ミバニル、プロセド/DS、Ro−Sed、S−T Forte、タムスロシン、テルビナフィン、トラク、ツシオネックス、ty−メテート、ウラミン、ウラチン、ウレトロン、ウリドン、uro−ves、ウルスタット、ウセプト及びこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
用語「腫瘍」は、悪性又は良性の成長又は腫脹を述べるのに使用される。
【0058】
用語「抗体結合末端部分」、「抗体結合末端」又は「抗体結合部分」は、少なくとも1つの小分子又はハプテンを含む本発明によるキメラ化合物の部分を述べるのに使用される。用語「ハプテン」は、単独では抗原性を有しないが、キャリアタンパク質(アルブミン等)などの他の分子と結合されたとき又は本発明の場合において、その化合物の細胞結合末端部分が抗原性を有する低分子量の無機又は有機分子を述べるのに使用される;そして、ハプテン(一般的にハプテンは、キャリアと結合又は複合化する)に対する抗体は、ハプテン単独と反応することとなる。
【0059】
好ましくは、抗体結合末端は、本発明の化合物による治療を開始する前に患者において前もって存在し、治療計画の一部として分離される必要のない内因性抗体と反応する(結合する)ハプテンを有する。したがって、下記のようにジ−又はトリニトロフェニル基を有するハプテン、又はジガラクトースハプテン(Gal−Gal−Z、好ましくは、Gal−Gal−糖、好ましくは、Gal−Gal−Glu)が好ましい。また、本発明において、ハプテンとして次の一般構造による化合物を用いてもよい。
【0060】
【化2】

【0061】
ここで、X’’は、O、CH2、NR1、Sであり;
1は、H、C1〜C3のアルキル基、又は−C(O)(C1〜C3)の基である。
【0062】
さらに本発明において、ハプテン(ABT)として、次の化学構造による部分を用いてもよい。
【0063】
【化3】

【0064】
ここで、Xbは、結合、O、CH2、NR1又はSである。
【0065】
本発明において使用されるジ−又はトリニトロフェニルハプテン(ABT)は、次の式により示されるものであってもよい。
【0066】
【化4】

【0067】
ここで、Y’は、H又はNO2であり;
Xは、O、CH2、NR1、S(O)、S(O)2、−S(O)2O、−OS(O)2、又はOS(O)2Oであり;
1は、H、C1〜C3のアルキル基、又は−C(O)(C1〜C3)の基である。
【0068】
(Gal−Gal−Z)ハプテンは、次の化学式で示される。
【0069】
【化5】

【0070】
ここで、X’は、CH2、O、N−R1'又はS、好ましくはOであり;
1'は、H又はC1〜C3のアルキル基であり;
ここで、Zは、結合、単糖、二糖、オリゴ糖、糖タンパク又は糖脂質、好ましくは糖基、より好ましくは、アルドース及びケトースを含む単糖、並びに下記に述べる二糖を含む二糖から選択される糖基である。単糖のアルドースは、アルドトリオース(特に、D−グリセルアルデヒド)、アルドテトロース(特に、D−エリスロース及びD−スレオース)、アルドペントース(特に、D−リボース、D−アラビノース、D−キシロース、D−リキソース)、アルドヘキソース(特に、D−アロース、D−アルトロース、D−グルコース、D−マンノース、D−グロース、D−イドース、D−ガラクトース及びD−タロース)などの単糖を含み、単糖のケトースは、ケトトリオース(特に、ジヒドロキシアセトン)、ケトテトロース(特に、D−エリスルロース)、ケトペントース(特に、D−リブロース及びD−キシルロース)、ケトヘキソース(特に、D−サイコン、D−フルクトース、D−ソルボース、D−タガトース)、特にガラクトサミン、シアル酸、N−アセチルグルコサミンを含むアミノ糖、特にスルホキノボースを含むスルホ糖などの単糖を含む。本発明で使用される例示の二糖は、特に、スクロース(任意にN−アセチル化されたグルコースを有してもよい)、ラクトース(任意にN−アセチル化されたガラクトース及び/又はグルコースを有してもよい)、マルトース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基の一方又は両方を有してもよい)、トレハロース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基の一方又は両方を有してもよい)、セルビオース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基の一方又は両方を有してもよい)、コージビオース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基の一方又は両方を有してもよい)、ニゲロース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基の一方又は両方を有してもよい)、イソマルトース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基の一方又は両方を有してもよい)、β,β−トレハロース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基の一方又は両方を有してもよい)、ソホロース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基の一方又は両方を有してもよい)、ラミナリビオース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基の一方又は両方を有してもよい)、ゲンチオビオース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基の一方又は両方を有してもよい)、ツラノース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基を有してもよい)、マルツロース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基を有してもよい)、パラチノース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基を有してもよい)、ゲンチオビルオース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基を有してもよい)、マンノビオース、メリビオース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基及び/又はガラクトース残基を有してもよい)、メリビウロース(任意にN−アセチル化されたガラクトース残基を有してもよい)、ルチノース(任意にN−アセチル化されたグルコース残基を有してもよい)、ルチヌロース及びキシロビオースを含む。Zとして本発明に用いるオリゴ糖は、上述された個々の糖(糖類)単位(すなわち、あらゆる順序での、上述のいずれか1つ以上の糖単位、特に、上述のグルコース及び/又はガラクトース単位を含む)の3つ又はそれ以上(約100まで)のいかなる糖、すなわち例えば、フルクト−オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖及び大きさにおいて3から10〜15の範囲の糖単位のマンナン−オリゴ糖を含むことができる。本発明に用いる糖タンパク質は、例えば、特に、ムチン、コラーゲン、トランスフェリン、セルロプラスミン、主要組織適合性複合タンパク質(MHC)、酵素、レクチン及びセレクチン、カルネキシン、カルレチクリン、並びにインテグリン糖タンパク質IIb/IIaを含むN−グリコシル化及びO−グリコシル化糖タンパク質を含む。本発明に用いる糖脂質は、例えば、特に、グリセロ糖脂質(ガラクトリピッド、スルフォリピッド)、セレブロシドなどのグリコスフィンゴリピッド、ガラクトセレブロシド、グルコセレブロシド(グルコビカラナテオエツを含む)、ガングリオシド、グロボシド、スルファチド、グリコホスホフィンゴリピッド及びグリコカリクスを含む。
【0071】
好ましくは、Zは、結合(Gal−Galの二糖類をリンカー又は連結分子に結合する)、又はグルコース若しくはグルコサミン(特に、N−アセチルグルコサミン)である。Zは、Gal−Galのガラクトースの水酸基又はアミン基を介して、好ましくは水酸基を介して、ガラクトース残基に結合される。好ましいハプテンは、次の構造により示されるGal−Gal−Gluである。
【0072】
【化6】

【0073】
用語「細胞結合末端部分」、「細胞結合末端」又は「細胞結合部分」は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に特異的に結合できる少なくとも1つの小分子又は部分を含む本発明によるキメラ化合物の部分を述べるのに用いられる。
【0074】
本発明で用いる好ましいCBT基は、下に記されるもの、又はその塩である。
【0075】
【化7】

【0076】
ここで、X1及びX2は、それぞれ独立に、CH2、O、NH又はSであり;
3は、O、CH2、NR1、S(O)、S(O)2、−S(O)2O、−OS(O)2又はOS(O)2Oであり;
1は、H、C1〜C3のアルキル基、又は−C(O)(C1〜C3)の基であり;
kは、0〜20、8〜12、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4、5又は6の整数である。
【0077】
用語「リンカー」は、任意で連結部分により共有結合を介して、抗体結合末端(ABT)部分を細胞結合末端(CBT)部分に連結する化学物質を指す。抗体結合末端(ABT)及び細胞結合末端(CBT)である、分子の2つの活性部分の間のリンカーは、長さが約5Å〜約50Å以上、長さが約6Å〜約45Å、長さが約7Å〜約40Å、長さが約8Å〜約35Å、長さが約9Å〜約30Å、長さが約10Å〜約25Å、長さが約7Å〜約20Å、長さが約5Å〜約16Å、長さが約5Å〜約15Å、長さが約6Å〜約14Å、長さが約10Å〜約20Å、長さが約11Å〜約25Åなどの範囲である。エチレングリコール単位に基づき長さが8〜12グリコール単位のリンカーが好ましい。本願に開示された長さのリンカーを有することにより、ABT部分及びCBT部分は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)及び本発明の化合物が結合される細胞へ誘引する内因性抗体に結合した本発明の化合物の生物学的活性を有利に活用するようにして配置され、PSMAを有し、本発明の化合物が存在するいかなる組織であっても、これらの細胞の選択的かつ標的化された細胞死をもたらす。リンカー成分の選択は、実証された生体適合性、水媒体及び有機媒体での溶解性、並びに低い免疫原性/抗原性の特性に基づく。本願に記載されるような多数のリンカーが使用され得るが、これらの分子の化学的及び生物学的特性により、ポリエチレングリコール(PEG)結合、ポリプロピレングリコール結合又はポリエチレングリコール−ポリプロピレン共オリゴマー(約100単位以下、約1〜100、約1〜75、約1〜60、約1〜50、約1〜35、約1〜25、約1〜20、約1〜15、約1〜10、約8〜12、約1〜8等)に基づくリンカーが好ましい。ポリエチレン(PEG)結合を用いることが好ましい。
【0078】
好ましいリンカーは、次の化学構造のものを含み、又は、1〜100のグリコール単位を有するポリプロピレングリコールリンカー若しくはポリプロピレン−ポリエチレングリコール共リンカーである。
【0079】
【化8】

【0080】
ここで、Raは、H、C1〜C3のアルキル基若しくはアルカノール、又はR3(プロリン)と共に環を形成し、そしてR3は、アミノ酸に由来する側鎖であり、好ましくはアラニン(メチル)、アルギニン(プロピレングアニジン)、アスパラギン(メチレンカルボキシアミド)、アスパラギン酸(エタン酸)、システイン(チオール、還元又は酸化ジチオール)、グルタミン(エチルカルボキシアミド)、グルタミン酸(プロパン酸)、グリシン(H)、ヒスチジン(メチレンイミダゾール)、イソロイシン(1−メチルプロパン)、ロイシン(2−メチルプロパン)、リジン(ブチレンアミン)、メチオニン(エチルメチルチオエーテル)、フェニルアラニン(ベンジル)、プロリン(R3が、Ra及び隣接する窒素基と環を形成し、ピロリジン基を形成する)、セリン(メタノール)、スレオニン(エタノール、1−ヒドロキシエタン)、トリプトファン(メチレンインドール)、チロシン(メチレンフェノール)又はバリン(イソプロピル)からなる群から選択され;
mは、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5の整数である。
【0081】
あるいは、次の化学式によるリンカーである。
【0082】
【化9】

【0083】
ここで、Z及びZ’は、それぞれ独立して、結合、−(CH2i−O、−(CH2i−S、−(CH2i−N−R、
【0084】
【化10】

であり、
上記の−(CH2i基は、Z又はZ’に存在する場合、連結子、ABT又はCBTと結合され;
各Rは、H、又はC1〜C3のアルキル基若しくはアルカノール基であり;
各R2は、独立に、H又はC1〜C3のアルキル基であり;
各Yは、独立に、結合、O、S又はN−Rであり;
各iは、独立に、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5であり;
Dは、
【0085】
【化11】

結合であり、ただし、Z、Z’及びDが、それぞれ同時に結合でないことを条件とし;
jは、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5であり;
m’は、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5であり;
nは、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5であり;
1は、O、S又はN−Rであり;
Rは、上述の通りであり、
又は、その医薬的に許容可能な塩である。
【0086】
[CON]の記号で表される用語「連結子」は、本願の他で述べられるような、活性されたABT−リンカーとCBT部分(好ましくは、やはり活性化されている)との反応生成物又はABT部分と活性されたリンカー−CBTとの反応生成物から形成される、本発明によるキメラ化合物に任意に含まれる化学的部分を述べるのに使用される。連結基は、本発明によるキメラ化合物を生成するために、他で述べられるように連結基を提供できる反応基を含む2つの別々の化学的断片の簡易な縮合から形成される、結果として生じる部分である。連結子は、本発明によるキメラ化合物をもたらすのに用いられる特定の化学的構造の結果であるという点で、リンカーと区別でき、これらの基の反応生成物は、本願の他で述べるようなリンカー基と区別し得る同定可能な連結基をもたらすことが特筆される。連結基及びリンカー基の記述の間に、特に本願の他で述べるアミド基、酸素(エーテル)、イオウ(チオエーテル)、又はアミノ結合、尿素、炭酸塩の−OC(O)O−基などのより一般的な連結基に関しては、いくらかの重複があるかもしれないことが特筆される。連結子(又はリンカー)は、次の記号を用いて他の基に結合されるとして示される位置において、ABT、リンカー又はCBTに結合できることがさらに特筆される。
【0087】
【化12】

2つ以上のそのような基が、リンカー又は連結子に存在する場合、ABT、リンカー又はCBTのいずれかが、そのような基と結合できる。
【0088】
本発明に用いられる一般的な連結基は、次の化学基を含む。
【0089】
【化13】

【0090】
ここで、X2は、O、S、NR4、S(O)、S(O)2、−S(O)2O、−OS(O)2又はOS(O)2Oであり;
3は、O、S、NR4であり;
4は、H、C1〜C3のアルキル基若しくはアルカノール基、又は−C(O)(C1〜C3)の基である。
【0091】
用語「医薬的に許容可能な塩」又は「塩」は、本明細書を通じて、化合物の溶解及び生物学的利用能を促進するために、非経口投与のための生理食塩水又は患者の胃腸管の胃液において化合物の溶解性を増加させるようにしてある、本願における1つ以上の組成物の塩の形態を述べるのに使用される。医薬的に許容可能な塩は、医薬的に許容可能な無機又は有機の塩基及び酸に由来するものを含む。適当な塩は、医薬の分野において公知の多数の酸の中でも特に、カリウム及びナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム及びアンモニウム塩などのアルカリ土類金属に由来するものなどである。ナトリウム塩及びカリウム塩は、本発明での組成物を含むカルボン酸及び遊離リン酸の中和塩として好ましい。用語「塩」は、本発明での化合物の使用と合致するあらゆる塩を意味する。化合物が転移性前立腺癌を含む前立腺癌の治療を含む医薬的適応において使用される場合、用語「塩」は、医薬品としての化合物の使用と合致する、医薬的に許容可能な塩を意味する。
【0092】
用語「同時投与」は、2つ以上の化合物のそれぞれの有効量又は有効濃度が、所定の時間において患者に見出されるように、少なくとも2つの化合物又は組成物が同時に患者に投与されることを意味する。本発明による化合物は、同時に患者に同時投与されるであろうが、この用語は、全ての同時投与される化合物又は組成物の有効濃度が所定の時間において対象に見られるならば、2つ以上の薬剤が同時に又は異なった時間に投与されることの両方を含む。本発明によるキメラ抗体動員化合物は、癌、特に転移性前立腺癌を含む前立腺癌の症状を治療し又は改善するのに使用される1つ以上の追加の抗癌剤又はその他の剤と共に投与されてもよい。本発明による1つ以上のキメラ化合物と組み合わせて同時投与できる例示の抗癌剤は、例えば、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼI及びIIの阻害剤、アルキル化剤、並びに微小管阻害剤(例えば、タキソール)などである。本発明において用いる特定の抗癌化合物は、例えば、特に、アルデスロイキン;アレムツズマブ;アリトレチノイン;アロプリノール;アルトレタミン;アミホスチン;アナストロゾール;三酸化ヒ素;アスパラギナーゼ;生BCG;ベキサロテンカプセル;ベキサロテンゲル;ブレオマイシン;静注ブスルファン;経口ブスルファン;カルステロン;カペシタビン;カルボプラチン;カルムスチン;ポリフェプロサン20インプラントを有するカルムスチン;セレコキシブ;クロラムブシル;シスプラチン;クラドリビン;シクロホスファミド;シタラビン;シタラビンリポソーマル;ダカルバジン;ダクチノマイシン;アクチノマイシンD;ダルベポエチン アルファ;ダウノルビシンリポソーマル;ダウノルビシン;ダウノマイシン;デニロイキン ディフティトックス;デクスラゾキサン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシンリポソーマル;プロピオン酸ドロモスタノロン;エリオットB溶液;エピルビシン;エポエチン アルファ エストラムスチン;リン酸エトポシド;エトポシド(VP−16);エキセメスタン;フィルグラスチム;フロクスリジン(動脈内);フルダラビン;フルオロウラシル(5−FU);フルベストラント;ゲムツズマブ オゾガマイシン;酢酸ゴセレリン;ヒドロキシウレア;イブリツモマブ チウキセタン;イダルビシン;イフォスファミド;メシル酸イマチニブ;インターフェロン アルファ−2a;インターフェロン アルファ−2b;イリノテカン;レトロゾール;ロイコボリン;レバミソール;ロムスチン(CCNU);メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード);酢酸メゲストロール;メルファラン(L−PAM);メルカプトプリン(6−MP);メスナ;メトトレキサート;メトクスサレン;マイトマイシンC;ミトタン;ミトキサントロン;フェンプロピオン酸ナンドロロン;ノフェツモマブ;LOddC;オプレルベキン;オキサリプラチン;パクリタキセル;パミドロネート;ペガデマーゼ;ペガスパルガーゼ;ペグフィルグラスチム;ペントスタチン;ピポブロマン;プリカマイシン;ミトラマイシン;ポルフィマーナトリウム;プロカルバジン;キナクリン;ラスブリカーゼ;リツキシマブ;サルグラモスチム;ストレプトゾシン;タルブビジン(LDT);タルク;タモキシフェン;テモゾロミド;テニポシド(VM−26);テストラクトン;チオグアニン(6−TG);チオテパ;トポテカン;トレミフェン;トシツモマブ;トラスツズマブ;トレチノイン(ATRA);ウラシルマスタード;バルルビシン;バルトルシタビン(モノバルLDC);ビンブラスチン;ビノレルビン;ゾレドロネート;及びこれらの混合物などである。
【0093】
抗癌剤に加えて、複数の他の剤が、癌、特に転移性前立腺癌を含む前立腺癌の治療に、本発明によるキメラ化合物と同時投与されてもよい。これらは、活性剤、ミネラル、ビタミン及び栄養剤など、前立腺癌組織又はその成長を阻害する一定の有効性を示すもの、又は前立腺癌の治療にその他有用であるものを含む。例えば、食事性セレン、ビタミンE、リコピン、大豆食品、ビタミンD、緑茶、リコピン、オメガ3脂肪酸及びベータシトステロールを含む食物エストロゲンの1つ以上が、前立腺癌を治療するために、本発明の化合物と組み合わせて利用されてもよい。
【0094】
また、これまでの抗癌剤以外の活性剤は、前立腺癌の治療に一定の利用性を示している。選択的なエストロゲン受容体モジュレータであるトレミフェンは、癌、特に転移性前立腺癌を含む前立腺癌を治療するために本発明の化合物と組み合わせて用いられてもよい。さらに、テストステロンのジヒドロテストステロンへの変換を阻害する2つの医薬であるフィナステリド及びデュタステリドもまた、本発明による化合物と同時投与される場合、前立腺癌の治療に有用である。植物化学物質のインドール−3−カルビノール及びジインドリルメタンもまた、前立腺癌を治療するこれらの効果のために本発明の化合物と同時投与されてもよい。本発明による化合物と組み合わされてもよい更なる薬剤は、例えば、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド及び酢酸シプロテロンなどの抗アンドロゲン、並びにケトコナゾール及びアミノグルテチミドなどの副腎アンドロゲン(例えば、DHEA)の産生を減少させる薬剤などである。本発明による化合物と組み合わされてもよいその他の活性剤は、例えば、作動薬及び拮抗薬を含むGnRHモジュレータなどである。GnRH拮抗薬は、LHの産生を直接抑制し、一方GnRH作動薬は、初期刺激作用の後に下方制御の過程によって、LHを抑制する。アバレリックスは、GnRH拮抗薬の例であり、GnRH作動薬は、特にロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン及びブセレリンなどである。これらの剤は、有効量の本発明による化合物と組み合わされてもよい。また、酢酸アビラテロンもまた、前立腺癌、特に転移性前立腺癌の治療において、本発明による化合物の1つ以上と組み合わされてもよい。
【0095】
本発明による1つ以上の化合物と組み合わせることができる他の薬剤は、転移性前立腺癌を有する患者に発症する骨折などの骨格合併症を遅らせるゾレドロン酸などのビスホスホネートなどである。他の薬剤であるアルファラジンは、骨の転移を標的とするように、本発明の化合物と組み合わされてもよい。また、転移性前立腺癌による骨痛は、特に、本発明の化合物と組み合わせることができる、モルヒネ及びオキシコドンなどのオピオイド系の鎮痛剤で治療されてもよい。
【0096】
本発明は、好ましくは、次の一般式での化合物、又はその医薬的に許容可能な塩、溶媒和物若しくは多形体に関する。
【0097】
【化14】

【0098】
ここで、Aは、次の式による抗体結合部分である。
【0099】
【化15】

【0100】
ここで、Y’は、H又はNO2であり;
Xは、O、CH2、NR1、S(O)、S(O)2、−S(O)2O、−OS(O)2、又はOS(O)2Oであり;
1は、H、C1〜C3のアルキル基、又は−C(O)(C1〜C3)の基であり;
X’は、CH2、O、N−R1'又はS、好ましくはOであり;
1'は、H又はC1〜C3のアルキル基であり;
Zは、結合、単糖、二糖、オリゴ糖、糖タンパク又は糖脂質であり;
bは、結合、O、CH2、NR1又はSであり;
X’’は、O、CH2、NR1であり;
1は、H、C1〜C3のアルキル基、又は−C(O)(C1〜C3)の基であり;
Bは、次の化学式による細胞結合末端である。
【0101】
【化16】

【0102】
ここで、X1及びX2は、それぞれ独立に、CH2、O、NH又はSであり;
3は、O、CH2、NR1、S(O)、S(O)2、−S(O)2O、−OS(O)2又はOS(O)2Oであり;
1は、H、C1〜C3のアルキル基、又は−C(O)(C1〜C3)の基であり;
kは、0〜20、8〜12、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4、5又は6の整数であり;
Lは、次の化学式によるリンカー
【0103】
【化17】

、又は1〜100の間のグリコール単位(1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は52、50、3及び45)を有する、ポリプロピレングリコールリンカー又はポリプロピレン−ポリエチレングリコール共リンカーであり;
ここで、Raは、H、C1〜C3のアルキル基若しくはアルカノール、又はR3(プロリン)と共に環を形成し、そしてR3は、アミノ酸に由来する側鎖であり、好ましくはアラニン(メチル)、アルギニン(プロピレングアニジン)、アスパラギン(メチレンカルボキシアミド)、アスパラギン酸(エタン酸)、システイン(チオール、還元又は酸化ジチオール)、グルタミン(エチルカルボキシアミド)、グルタミン酸(プロパン酸)、グリシン(H)、ヒスチジン(メチレンイミダゾール)、イソロイシン(1−メチルプロパン)、ロイシン(2−メチルプロパン)、リジン(ブチレンアミン)、メチオニン(エチルメチルチオエーテル)、フェニルアラニン(ベンジル)、プロリン(R3が、Ra及び隣接する窒素基と環を形成し、ピロリジン基を形成する)、セリン(メタノール)、スレオニン(エタノール、1−ヒドロキシエタン)、トリプトファン(メチレンインドール)、チロシン(メチレンフェノール)又はバリン(イソプロピル)からなる群から選択され;
mは、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5の整数である。
【0104】
または、Lは、次の化学式によるリンカーである。
【0105】
【化18】

【0106】
ここで、Z及びZ’は、それぞれ独立して、結合、−(CH2i−O、−(CH2i−S、−(CH2i−N−R、
【0107】
【化19】

であり、
上記−(CH2i基は、Z又はZ’ に存在する場合、もし存在するならば[CON]、ABT又はCBTに結合され;
各Rは、独立に、H、又はC1〜C3のアルキル基若しくはアルカノール基であり;
各R2は、独立に、H又はC1〜C3のアルキル基であり;
各Yは、独立に、結合、O、S又はN−Rであり;
各iは、独立に、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5であり;
Dは、
【0108】
【化20】

であり、ただし、Z、Z’及びDは、それぞれが同時に結合でないことを条件とし;
jは、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5であり;
m’は、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5であり;
n’は、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5であり;
1は、O、S又はN−Rであり;
Rは、上述の通りであり;
連結部分[CON]は、結合又は次の化学構造による部分であり、
【0109】
【化21】

【0110】
ここで、X2は、O、S、NR4、S(O)、S(O)2、−S(O)2O、−OS(O)2又はOS(O)2Oであり;
3は、NR4、O又はSであり;
4は、H、C1〜C3のアルキル基若しくはアルカノール基、又は−C(O)(C1〜C3)の基である。
【0111】
本発明の好ましい態様では、抗体結合末端(ABT)は、次のものである。
【0112】
【化22】

【0113】
ここで、Y’は、NO2であり;
X’は、Oであり;
Zは、結合、単糖又は二糖である。
【0114】
本発明の好ましい態様では、CBTは、次のものである。
【0115】
【化23】

【0116】
ここで、kは、0〜20、1〜20、より好ましくは8〜12の整数である。
【0117】
他の好ましい態様では、連結部分[CON]は、次の基であり、
【0118】
【化24】

本願の他で記載される化合物をもたらすように、ABT基、CBT基、又はあるいはリンカー基と、次の表記
【0119】
【化25】

で共有結合され得る。
【0120】
さらに他の好ましい態様では、リンカー基は、次の構造のオリゴ又はポリエチレングリコール部分である。
【0121】
【化26】

【0122】
ここで、mは、1〜100、又は本願の他で記載されているものであり、好ましくは約8〜12である。ポリプロピレングリコールリンカー又はポリエチレン−ポリプロピレングリコール共リンカーは、本発明の化合物ではPEG基と置換されてもよいことが特筆される。
【0123】
複数の好ましい化合物20、21、22、23、24及び25が、添付の図7に記される。
【0124】
医薬的に有効量のキャリア、添加物又は賦形剤と組み合わせ、本発明による少なくとも1つのキメラ抗体動員化合物の有効量と、本願の他で述べるすべて有効量である1つ以上の化合物との組み合わせを有する医薬組成物は、本発明のさらなる態様である。
【0125】
本発明の組成物は、1つ以上の医薬的に許容可能なキャリアを用いて、従来の方法により処方されることができ、放出制御製剤で投与されてもよい。これらの医薬組成物に用いられ得る医薬的に許容可能なキャリアは、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、食物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、硫酸プロラミンなどの塩又は電解質、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系の物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリエチレングリコール及び羊毛脂などである。
【0126】
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、経直腸、経鼻、経頬、経膣、又は埋め込み式リザーバー経由で投与できる。本願で用いる用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内及び頭蓋内の注射、又は点滴方法を含む。好ましくは、組成物は、経口、腹腔内又は静注で投与される。
【0127】
本発明の組成物の無菌注射の形態は、水性又は油性の懸濁液にすることができる。これらの懸濁液は、適当な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、当技術分野で公知の方法によって処方されてもよい。無菌注射調合剤はまた、例えば、1,3−ブタンジオール溶液などの、非毒性の非経口で受け入れられる希釈剤又は溶媒での無菌注射溶液又は懸濁液であってもよい。用いられる許容可能なビヒクル及び溶媒は、特に、水、リンガー溶液及び生理食塩液である。また、無菌の固定油が、溶媒又は懸濁媒体として従来から使用されている。このために、合成のモノ−又はジ−グリセリドを含め、いかなる無菌性の固定油を使用してもよい。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸や、オリーブ油又はヒマシ油、特にそのポリオキシエチレン化されたものなどの天然の医薬的に許容可能な油は、注射製剤に有用である。これらの油剤又は懸濁液は、Ph.Helv又は同様のアルコールなどの、長鎖のアルコール系希釈剤又は分散剤を含有してもよい。
【0128】
本発明の医薬組成物は、限定されないが、カプセル、錠剤、水性懸濁液又は溶液などのあらゆる経口で受容可能な投与形態で、経口で投与されてもよい。経口使用のための錠剤の場合、一般的に用いられるキャリアは、ラクトース及びコーンスターチなどである。ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤もまた、一般的に添加される。カプセル形態での経口投与のために有用な希釈剤は、ラクトース及び乾燥コーンスターチなどである。経口使用のための水性懸濁液が必要な場合、活性成分は、乳化剤及び懸濁剤と組み合わされる。必要に応じて、特定の甘味剤、香料添加剤又は着色剤を添加してもよい。
【0129】
あるいは、本発明の医薬組成物は、直腸投与のための坐剤の形態で投与されてもよい。これらは、薬剤を、室温では固形であり直腸温度では液体である適当な非刺激の賦形剤と混合して調製でき、その結果、直腸において溶解して薬剤を放出する。そのような材料としては、ココアバター、蜜ろう及びポリエチレングリコールなどである。
【0130】
本発明の医薬組成物は、皮膚癌、乾癬、又は皮膚中若しくは皮膚上で発症するその他の疾病を特に治療するために、局所的に投与されてもよい。適当な局所製剤は、これらの領域又は器官のそれぞれのために容易に調製される。下部腸管のための局所適用は、直腸用の坐薬製剤(上記参照)又は適当な浣腸製剤でもたらされ得る。局所的に受け入れられる経皮パッチを使用してもよい。
【0131】
局所適用のために、医薬組成物は、1つ以上のキャリア中に懸濁又は溶解された活性成分を含有する適当な軟膏で処方されてもよい。本発明の化合物の局所投与用のキャリアは、限定されないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう及び水などである。
【0132】
あるいは、医薬組成物は、1つ以上の医薬的に許容可能なキャリアに懸濁又は溶解された活性成分を含有する適当なローション又はクリームで処方されてもよい。適当なキャリアは、限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水などである。
【0133】
眼科用途のため、医薬組成物は、塩化ベンジルアルコニウムなどの保存料を有する若しくは有しない、等張のpH調整無菌食塩水中での微粒懸濁液として、又は、好ましくは、等張のpH調整無菌食塩水中での溶液として、処方されてもよい。あるいは、眼科用途のため、医薬組成物は、ワセリンなどの軟膏で処方されてもよい。
【0134】
本発明の医薬組成物は、経鼻エアロゾル又は吸入剤によって投与されてもよい。そのような組成物は、医薬製剤分野において公知の方法によって調製され、ベンジルアルコール又はその他の適当な保存料、生物学的利用能を促進するための吸収促進剤、フッ化炭素、及び/又はその他従来の溶解化剤又は分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製されてもよい。
【0135】
単回投与形態を製造するためにキャリア材料と組み合わせられる本発明の医薬組成物における化合物の量は、治療される宿主及び疾病、投与の特定の様式に応じて変化する。好ましくは、組成物は、約0.05mg〜約750mg以上、より好ましくは約1mg〜約600mg、さらにより好ましくは約10mg〜約500mgの活性成分を、単独、或いは癌、前立腺癌、転移性前立腺癌、又はそれらの二次的な影響若しくは状態を治療するのに使用される少なくとも1つの追加の非抗体誘因化合物と組み合わせて、処方される。
【0136】
やはり当然ながら、いずれの個々の患者についての特定の投与及び治療計画も、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与期間、排せつ率、薬物の組み合わせ、治療する医師の判断、並びに治療される特定の疾病又は状態の重症度を含む種々の要因に依存する。
【0137】
癌を患う患者又は対象(例えば、ヒト男性)は、その医薬的に許容可能な塩、溶媒和物又は多形体を含めた本発明によるキメラ抗体動員化合物の有効量を、任意で医薬的に許容可能なキャリア若しくは希釈剤のいずれか一方で、又は他の公知の抗癌剤又は医薬品、好ましくは転移性前立腺癌を含む前立腺癌の治療を補助し得る若しくは前立腺癌に関連する二次的影響及び状態を改善し得る薬剤と組み合わせて、患者(対象)に投与することにより治療され得る。この治療はまた、放射線治療又は外科手術などの他の従来の癌治療と組み合わせて、投与されてもよい。
【0138】
これらの化合物は、あらゆる適当な経路、例えば、経口、非経口、経静脈、経皮、皮下又は局所により、液体、クリーム、ゲル若しくは固形の形態又はエアロゾルの形態より投与され得る。
【0139】
活性化合物は、治療される患者において重篤な毒性作用を発症させずに、所望の適応のための治療上の効果量を患者に送達するのに十分な量で、医薬的に許容可能なキャリア又は希釈剤中に含有される。本願で述べられる状態の全てに関する活性化合物の好ましい投与量は、約10ng/kg〜300mg/kg、好ましくは1日当たり0.1〜100mg/kg、より一般的には、一日当たり受容者/患者の体重1kg当たり0.5〜約25mgの範囲である。一般的な局所投与量は、適当なキャリア中で0.01〜3%wt/wtの範囲である。
【0140】
化合物は、あらゆる適当な単回投与形態で都合良く投与され、限定されないが、単位投与形態当たり1mg未満、1mg〜3000mg、好ましくは5〜500mgの活性成分を含有するものなどである。約25〜250mgの経口投与量が、多くの場合使い易い。
【0141】
活性成分は、約0.00001〜30mM、好ましくは約0.1〜30μMの活性化合物のピーク血漿濃度を達成するように好ましく投与される。これは、例えば、活性成分の溶液又は製剤の静脈内注射により、任意で生理食塩水若しくは水性媒体中で、又は活性成分の急速静注として投与されて、達成されてもよい。経口投与もまた、活性剤の有効な血漿濃度をもたらすのに適している。
【0142】
薬物組成物における活性化合物の濃度は、薬物の吸収、分布、不活性化及び排せつ率、並びに当技術分野の当業者に公知の他の要因に依存するであろう。投与値はまた、緩和される状態の重症度に応じて変わることが特筆される。更に、特定の対象に関して、特定の投与計画は、個々の必要性、及び投与又は組成物の投与を監督する人の専門定な判断によって時間と共に調節されるべきであり、そして本願で記される濃度範囲は、単なる例示であって、特許請求の範囲に記載の組成物の範囲及び実施を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。活性成分は、一度で投与されてもよく、又は種々の時間間隔で投与される複数の少ない投与量に分割されてもよい。
【0143】
経口組成物は、不活性希釈剤又は可食性キャリアを一般的に含む。これらは、ゼラチンカプセルに封入され、又は錠剤に圧縮されてもよい。経口の治療投与のために、活性化合物又はそのプロドラッグ誘導体は、賦形剤によって取り込まれ、錠剤、トローチ又はカプセルの形態で用いられ得る。医薬的に適合する結合剤及び/又はアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。
【0144】
錠剤、ピル、カプセル、トローチ等は、次の成分又は同様の性質の化合物のいずれであっても含有し得る:微結晶性セルロース、トラガカントゴム又はゼラチンなどの結合剤;スターチ又はラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル又はコーンスターチなどの分散剤;ステアリン酸マグネシウム又はステローツなどの潤滑剤;コロイド状の二酸化珪素などの流動促進剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香料などの香料添加剤。投与単位形態がカプセルである場合、上記のタイプの材料に加えて、脂肪油などの液体キャリアを含有し得る。また、投与単位形態は、例えば、糖衣コーティング、セラック又は腸溶剤などの投与単位の物理的形態を改変する種々の他の材料を含有し得る。
【0145】
活性化合物又はその医薬的に許容可能な塩は、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース、チューインガムなどの成分として投与され得る。シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてのスクロース、特定の保存料、染料、着色剤及び香味料を含有してもよい。
【0146】
活性化合物又はその医薬的に許容可能な塩はまた、所望の作用を損なわない他の活性材料、又は他の抗癌剤、抗生物質、抗真菌剤、抗炎症剤若しくは抗ウィルス化合物などの所望の作用を補完する材料と混合され得る。本発明の特定の好ましい態様において、本発明での1つ以上のキメラ抗体動員化合物は、本願の他で述べるように、他の抗癌剤及び/又は他の生物活性剤と同時投与される。
【0147】
非経口、経皮、皮下又は局所適用のために使用される溶液又は懸濁液は、次の成分を含み得る:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶剤などの無菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸、クエン酸又はリン酸などの緩衝剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張化のための剤。非経口の調製物は、アンプル、使い捨て注射器又はガラス製若しくはプラスティック製の複数回使用バイアル内に封入され得る。
【0148】
静脈内に投与される場合、好ましいキャリアは、生理的食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0149】
1つの実施例では、活性化合物は、植え込み及びマイクロカプセル化した送達システムなどの放出制御製剤のように、身体からの急速な排出に対して化合物を保護するキャリアで調製される。エチレンビニル酢酸、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーが使用され得る。そのような製剤の調製方法は、当技術分野の当業者に明らかであろう。
【0150】
リポソーム懸濁液もまた、医薬的に許容可能なキャリアになり得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号(その全内容が参照により本願に援用される)に記載されたような、当技術分野における当業者に公知の方法により調製できる。例えば、リポソーム製剤は、無機溶媒中に適当な脂質(ステアロイルホスファチジルエタノールアミン、ステアロイルホスファチジルコリン、アラコドイルホスファチジルコリン及びコレステロールなど)を溶解し、その後蒸留して、容器の表面に乾燥脂質の薄膜を残すことにより調製される。そして、活性化合物の水溶液が、容器に注入される。容器は、その後、容器の側方から脂質材料を放し、脂質凝集物を分散させるようにして手で回転され、これにより、リポソーム懸濁液を形成する。
【0151】
(一般的化学合成)
本発明によるキメラ抗体動員化合物は、必要であれば適当な保護基と共に、リンカー並びに細胞結合末端(CBT)及び抗体結合末端(ABT)との間の標準的な化学結合性を用いて、容易に合成される。この手法は、リンカーを介して細胞結合部分を抗体結合部分に結合するために、標準的な官能基化学反応を用い、好ましい態様では、CBTがリンカーを介してABT抗体結合へ共有結合(連結)される場合に形成される任意の連結部分(官能基、使用する反応等に依存して、リンカーとABTとの間、又はリンカーとCBTとの間)をもたらす。ここで、連結部分それ自体は必要ではなく、本願の他で述べられるように、リンカーは、特定の連結部分を形成することなく、CBT及び/又はABTに直接共有結合されてもよいという事実が特筆される。本発明において、好ましくは本発明のキメラ抗体動員化合物に含まれる連結部分は、本願の他で開示されるように、その形成が、キメラ化合物を提供する望ましい合成化学を反映したものであることを示す。
【0152】
下記の一般スキームで示すように、L−Aなどのカルボン酸は、塩酸オキサリル又は塩化チオニルなどによる酸塩化物への変化に続くアミン/アルコールの添加により、C−Aなどのアミン又はアルコールのいずれかに結合されて、塩基及び触媒アミン(DMAP、イミダゾール)と共に標準的なカルボジイミドの条件(DCC、EDC、DIC)下でエステル又はアミドを生成することができる。
【0153】
また、例えば、A−Aなどのアミン又はアルコールは、C−Eなどのイソシアネート又はイソチオシアネートに結合されて、尿素、チオ尿素、又は対応する炭酸物若しくはチオカルボネートを生成することができる。
【0154】
さらに別の手法において、トリアゾールは、C−Bなどのアジドと、L−Cなどのアルキンとの間の付加環化反応によって、合成されてもよい。これは、完全な反応を促進するように、アスコルビン酸と共に、硫酸銅などの銅により触媒され得る。
【0155】
また、さらなる手法において、例えば、ヘテロリンカーは、A−Aなどの求核剤を、L−Eなどの適当な離脱基で処理することによって、製造されてもよい。離脱基としては、臭素などのハロゲン、又はトリフラート若しくはトシラートなどのスルホン酸塩などである。
【0156】
【化27】

【0157】
(化合物)
複数の高い親和性を有するリガンドは、PSMAを選択的に標的化するように開発された。Slusherら著、Nature Medicine、1999年、5巻、1396頁参照。図1は、本発明によるキメラ抗体動員化合物の原理機序を示すと一般的に理解される小分子の鋳型免疫治療を示す。PC−ARM(3、図3)は、非常に高い親和性(2、Ki=0.9nM)を有する尿素ベースのテトラゾールを含有するリガンドにより刺激を与えられ(Kozikowski著、J.Med.Chem.、2004年、47巻、1729頁参照)、溶媒に暴露された付属肢を受容するように分子モデリングで精製された(図2A)。この全体に三重複合体のモデル(図2B)は、かなり大きな繋がりの長さ(8〜12のポリエチレングリコール単位)が必要であることを示唆した。
【0158】
アジドで官能化された細胞結合末端は、Cbzで保護されたリジン及びt−ブチルで保護されたグルタミン酸を、トリホスゲンで結合し(Kozikowskiら著、J.Med.Chem.、2004年、47巻、1729頁参照)、続いてCbzの脱保護及びアジドの形成により、3ステップで合成された(スキーム2、図4)。Linkら著、J.Am.Chem.Soc.、2004年、126巻、10598頁。ヘテロ二官能基性PEG10は、オクタエチレングリコールから5ステップの過程で合成された(スキーム2、図4)。Natarajanら著、J.Chem.Comm.、2007年、7巻、695頁。これらの中間体は、マイクロ波で補助され、銅で触媒されたヒュスゲン付加環化(Bouillonら著、J.Org.Chem.、2006年、71巻、4700頁)により結合され、マイクロ波で補助されたTFAの脱保護を用いて脱保護され(スキーム3、図4)、PC−ARM(3)を得た。この特異的な合成は、一般化され、単に以下に記載される実験の項に従って、本発明による多数の化合物を製造するのに適用できる。ヒトの組み換えPSMA(R&Dリサーチ)に対する阻害実験は、この長く繋がった分子は、高親和性(Ki=0.9±0.3nM)でPSMAに結合し得ることを間接的に確認した。
【0159】
本発明者の小分子の抗体動員能力を確認するため、生細胞の動員分析が、PSMA発現LNCaP細胞、及びAlexafluor488共役抗DNP抗体で行われた。抗DNP抗体の存在下では、おそらく非特異的結合によって、小さなシフトのみが観察された。しかし、キメラ分子3を添加すると、所望の三重複合体の形成を示す蛍光発光の増加が観察された(図5A)。実際に、蛍光発光のこの増加は、ピコモル濃度範囲に及ぶ濃度で観察され、並外れた活性であることを示す。2−ホスホノメチルペンタンジオン酸(Slusherら著、Nature Medicine、1999年、5巻、1396頁)又はジ−DNPリジンのいずれかの添加で観察された蛍光発光の低下は、動員が、細胞結合端及び抗体結合末端の両方の結果であったことを確認した。また、PSMAを発現しない細胞は、蛍光発光が顕著に増加しなかった(図5B)。
【0160】
さらに、本発明者の分子が細胞死を引き起こす能力を検討した。抗DNP抗体の存在下で補体依存性の細胞毒性試験を用いたところ、小分子(3)が引き起こす細胞死の増加は観察されず、又は少量(<20%)であったが、予備的な抗体依存性細胞媒介毒性試験では、著しい細胞死の増加が観察された。3の50nMと一緒での抗DNP抗体の種類IgG1及びIgG3の存在下で、試験は、LNCaP細胞は、末梢血単核細胞(PBMCs)によって、抗DNP抗体単独を上回って、約40%死亡したことを示唆した(図6)。さらに、抗DNP抗体を含む種々のIgGを含有するヒトIgGの混合物の存在下で、70%の細胞毒性への増加が観察され、PBMCsの非存在下で、基礎の細胞毒性が約10%であることが観察された。これらの結果は、ADCCを引き起こすがCDC反応を引き起こさないPSMAに対しての素のモノクローナル抗体の報告と一致する。Deoら著による国際公開第2003/064606号明細書。現在の研究成果は、これらの結果を確認し、細胞死を媒介する特定のエフェクター細胞などの作用機序をより良く理解すべく、進行中である。
【0161】
代替の化合物
あるいは、上記の一般的な手法に依拠して、分子(4)(図9)が容易に合成され、本発明による二量体化合物の化学合成のシントンとして使用されてもよい。プロパルギルの結合を有する化合物4又は同様の合成で扱える分子は、クリック化学に用いられ得る(スキーム1a、図9)。Sharpless及びManetsch著、Expert Opinion on Drug Discovery、2006年、1巻、525〜538頁参照。この分子を種々の長さを有するポリエチレングリコール単位を有するアジド5及び6に処理することで、異なる結合長のキメラ動員分子の群に迅速に入ることができる。鎖長を変更する柔軟性を有することは、最適なCBT−ABT距離を確認することを支援するのに重要である。
【0162】
アルキン4に対する努力は、本発明者に臭化物中間体12をもたらし、これは、公知のリン酸13を用いたアルブゾーフ反応により本発明者の標的を生成した(スキーム2a、図10)。Jacksonら著、J.Med. Chem.、2001年、44巻、4170〜4175頁参照。7及び8の薗頭カップリングにより、リンカーに対して炭素骨格を与え(Liu及びStahl著、J.Am.Chem.Soc.、2007年、129巻、6328〜6335頁)、LAH還元条件により、適当なトランス置換配置で10を生成し(Luoら著、Chem.Comm.、2007年、2136〜3138頁)、アシル基を脱保護する。この新規に脱保護されたフェノールは、炭酸カリウムを備えたホモアリルアルコールによって選択的に脱プロトン化され、臭化プロパルギルで捕捉されて、11を生成する。その後、残存するアルコールは、三臭化リンを用いて臭化アルキルに変換されることができる。
【0163】
アジドカップリングパートナーの合成も提供する。スキーム3、図11参照。ポリエチレングリコールリンカーに結合されたビス−DNPリジンが、抗DNP抗体に対して顕著な親和性を示すことから、アジド15について焦点を当てた。Bairdら著、Biochem.、2003年、42巻、12739〜12748頁参照。3のポリエチレングリコール単位を有するこの特定のアジドは、市販のビス(2,4−ジニトロフェニル)−リジン及び11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−アミンからワンポット法で合成された。これは、ショッテン・バウマンプロトコルで達成され、最適化されていない40%の収率で所望の生成物をもたらした。Demkoら著、J.Org.Chem.、2001年、66巻、7945〜7950頁。スキーム3a、図11。あるいは、モノDNPアジド16は、求核性芳香族置換により容易に調製されてもよい。
【0164】
多価誘導体の合成
多価誘導体は、上記に提案された中間体から、分岐の方法で合成され得る。合成的に相補なビス−アルキニル及びトリス−アジジル化合物は公知であり、この研究において非常に効果的に用いられ得る。ビス−アルキニル20は、クリック条件下で長鎖のPEG−由来アジド−DNP19を用いて変換され、所望のビス−ジDNP類似体21を生成することができる(スキーム4a、図12)。
【0165】
トリス−アジジル化された類似体は、公知のトリアジド23から同様の方法で合成され得る。スキーム5a、図13参照。Kaleら著、Biorg.Med.Chem.Lett.、2007年、17巻、2459〜2464頁参照。このトリアジドは、保護された中間体22を用いてクリック化学法を経て、三量体の2−PMPA類似体24をもたらすことができる。これらの手持ちの合成片(シントン)を用いて、最終な分子が標準的なペプチドカップリングにより結合され、その後にTFA脱保護が続く。最終の化合物が、図8に示される(化合物3)。
【0166】
ここで実施され、示された実験は、前立腺特異的膜抗原に選択的に結合する小分子抗体動員分子が、抗体をPSMA発現細胞に動員し、細胞死を引き起こすことができることを示す。この小分子で媒介された反応は、癌に対する新たな治療を示す。
【0167】
本発明は、下記の例を表示する方法によりさらに述べられる。これらの例は、本発明の例示として解釈されるべきであり、それらは決して限定するものではない。
【実施例】
【0168】
一般的事項
他で述べる事項を除き、全ての反応は、窒素雰囲気下で、炎で乾燥したガラス製品中で行われる。全ての試薬は、市販業者から購入され、次に記載する場合を除いて更なる精製を行わずに用いた:トリエチルアミンは、水素化カルシウムで蒸留された。CH2Cl2、PhMe、DMF及びTHFは、溶媒調剤システムを用いて精製された。水は、ミリQ精製システムを用いて精製された。
【0169】
赤外(IR)スペクトル帯は、ブロード(br)、強(s)、中(m)及び弱(w)と特徴付けられる。1H NMRの化学シフトは、内部標準(CDCl3δ7.26ppm又はCD3ODδ3.31ppm)として溶媒残渣ピークについて報告される。データは、次の通り報告される:化学シフト、積分、多重度(s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、br=ブロード、m=多重項)、及び結合定数(Hz)。13C NMRの化学シフトは、内部参照(CDCl3δ77.2ppm)として溶媒についてppmで報告される。
【0170】
合成
【0171】
【化28】

【0172】
1−アジド−3,6,9,12,15,18,21,24−オクタオキサヘプタコス−26−イン(アジド−PEG8−イン):
【0173】
【化29】

【0174】
23−アジド−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン−1−オール(アジド−PEG8−オール)(1.1g、3.17ミリモル、1.0当量)を、N,N’−ジメチルホルムアミド(6mL)に溶解し、水酸化ナトリウム(152mg、6.34ミリモル、2.0当量)を添加し、続いて臭化プロパルギル(PhMe中で80%、683μL、6.34ミリモル、2.0当量)を添加した。反応を4時間室温で行い、その時点で、NMRにより完全であることが確認された。反応物を、CH2Cl2(25mL)中に採取し、飽和塩化アンモニウム水溶液(25mL)で洗浄した。水溶液をジクロロメタン(2×10mL)で逆抽出し、組み合わせた有機物をMgSO4で乾燥し、茶色の油状物に濃縮した。クロマトグラフィー(3cm×20cmシリカゲル、3%MeOH/CH2Cl2)でアジド−PEG8−インを生成した(960mg、収率78%)。IR(薄膜/NaCl)2874(m)、2110(m)、1160(s)、1105(s)cm-11HNMR(400MHz,CDCl3)δ4.20(d,J=2.4Hz,2H),3.58(m,30H),3.39(t,J=5.1Hz,2H),2.43(t,J=2.4Hz,1H),1.82(s,1H);13CNMR(125MHz,CDCl3)δ79.82,74.72,70.75,7022,68.27,58.62,50.84;HRMS(ES+) 計算値C193538(M+Na)m/z456.231637。実測値456.23182。
【0175】
3,6,9,12,15,18,21,24−オクタオキサヘプタコス−26−イン−1−アミン(9):
【0176】
【化30】

【0177】
23−アジド−3,6,9,12,15,18,21−ヘプタオキサトリコサン1−オール(アジド−PEG8−イン)(960mg、2.52ミリモル、1当量)、トリフェニルホスフィン(992mg、3.78ミリモル、1.5当量)、及び水(68μL、3.78ミリモル、1.5当量)を、THF(10mL)に溶解し、12時間攪拌した。反応物を濃縮し、クロマトグラフィーを行い(3cm×20cmシリカ、CH2Cl2、その後80:20:1 CH2Cl2:MeOH:Et3Nに勾配)、濃縮して、透明な油状物として、3,6,9,12,15,18,21,24−オクタオキサヘプタコス−26−イン−1−アミン(9)を得た(815mg、収率91%)。IR(薄膜、NaCl)3105(br)、2914(m)、1781(m)、1638(m)、1169(s)cm-11H−NMR(500MHz,CDCl3)δ4.17(d,2H,J=2.4),3.66−3.57(m,28H),3.54(t,2H,J=5.3Hz),2.88(t,2H,J=5.0Hz),2.41(t,1H,J=2.4Hz),2.18(br s,2H)。13C NMR(125MHz,CDCl3)δ79.52,74.59,72.54,70.41,70.38,70.38,70.35,70.31,70.20,70.06,68.90,58.20,41.44。HRMS(ES+)計算値C1937NO8(M+H)m/z408.259194。実測値408.25712。
【0178】
N−(2,4−ジニトロフェニル)−3,6,9,12,15,18,21,24−オクタオキサヘプタコス−26−イン−1−アミン(10):
【0179】
【化31】

【0180】
3,6,9,12−テトラオキサペンタデク−14−イン−1−アミン(815mg、2.27ミリモル、1当量)をEtOH(10mL)に溶解し、トリエチルアミン(666μL、0.726ミリモル、1.5当量)及び1−クロロ−2,4−ジニトロベンゼン(505mg、2.5ミリモル、1.5当量)を添加した。反応フラスコを還流濃縮器に取り付け、反応物を加熱して48時間還流し、冷却して、黄色の油状物に濃縮した。粗混合物をフラッシュクロマトグラフィー(3cm×20cmシリカ、3%MeOH:CH2Cl2)により精製して、黄色の固定物として、N−(2,4−ジニトロフェニル)−3,6,9,12,15,18,21,24−オクタオキサヘプタコス−26−イン−1−アミン(10)を得た(1.15g、収率>95%)。IR(薄膜/NaCl)3363(w)、2871(s)、1621(s)、1337(m)、1103(s)cm-11H−NMR(500MHz,CDCl3)δ9.08(d,1H,J=2.6Hz),8.77(bs,1H),8.21(dd,1H,J=2.6,J=9.5Hz),6.94(d,1H,J=9.5Hz),4.16(6,2H,J=2.4Hz),3.78(t,2H,J=5.0Hz),3.64(m,32H),3.58(q,2H),2.41(t,1H,2.38Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl3)δ148.5,136.1,130.5,130.29,124.3,114.3,79.8,74.6,70.7,70.6,70.5,69.2,68.7,58.5,43.3;HRMS(EI) 計算値C2539312(M+H)m/z574.260650。実測値574.26106。
【0181】
【化32】

【0182】
(9S,13S)−トリ−tert−ブチル3,11−ジオキソ−1−フェニル−2−オキサ−4,10,12−トリアザペンタデカン−9,13,15−トリカルボン酸(12):
【0183】
【化33】

【0184】
11(1.0g、3.38ミリモル、1.0当量)及びトリエチルアミン(1.54mL、11.09ミリモル、3.28当量)をジクロロメタン(30mL)に溶解し、−78℃に冷却した。ジクロメタン(10mL)中のトリホスゲン(341mg、1.15ミリモル、0.34当量)を、反応混合物に滴下で添加した。完全に添加した後、室温に加熱して反応させて、30分間攪拌した。12(757mg、2.03ミリモル、0.6当量)を添加し、続いてトリエチルアミン(283μL、2.03ミリモル、0.6当量)を添加した。室温で攪拌して一晩16時間反応させた。反応物をその後ジクロロメタン(50mL)で希釈し、水(100mL×2)で洗浄した。粗混合物をNa2SO4で乾燥し、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、1.5:1ヘキサン:酢酸エチル)で、次のスペクトルの特徴を有する無色の油状物として4を得た(1.09g、86%)。IR(薄膜/KBr)3342、2976、1731、1650、1552、1454、1368、1255及び1153cm-11H NMR(500MHz,CDCl3)δ7.35(d,J=3.75Hz,4H),7.33−7.30(m,1H),5.10(d,J=4.55Hz,2H),5.06−5.01(m,2H),4.99(s,1H),4.34−4.31(m,2H),3.20−3.18(m,2H),2.36−2.23(m,2H),2.10−2.03(m,1H),1.88−1.75(m,2H),1.65−1.57(m,1H),1.57−1.45(m,2H),1.453(s,9H),1.446(s,9H),1.43(s,9H),1.40−1.30(m,2H);13C NMR(125MHz,CDCl3)δ172.6,172.5,172.2,136.8,128.6,128.5,128.2,82.2,82.0,80.7,66.7,53.4,53.2,40.7,32.8,31.7,29.4,28.5,28.2,28.1,22.3;HRMS(EI+)m/z622.3695[計算値C325139(M+H)+622.3698]。
【0185】
(S)−ジ−tert−ブチル2−(3−((S)−6−アミノ−1−tert−ブトキシ−1−オキソヘキサン−2−イル)ウレイド)ペンタンジオエート(12):
【0186】
【化34】

【0187】
X(2.35g、3.78ミリモル、1.0当量)をメタノール(37.8mL)に溶解し、乾燥10%Pd/C(475mg)を含む激しく攪拌した反応フラスコに滴下で添加した。H2をこの溶液を通して1〜2分バブリングし、その後H2のバルーン下に13時間継続した。TLC(Rf=0.48、10%MeOH/CH2Cl2中)により反応が完全であることを判断し、セライトで充填し、濃縮して粘性の油状物を得たが、さらなる精製を行わなかった。
【0188】
(S)−ジ−tert−ブチル2−(3−((S)−6−アジド−1−tert−ブトキシ−1−オキソヘキサン−2−イル)ウレイド)ペンタンジオエート(14):
【0189】
【化35】

【0190】
アジ化ナトリウム(2.629g、40.75ミリモル、10.0当量)を水(7.63mL)に溶解し、ジクロロメタン(12.91mL)を添加した。反応混合物を0℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(1.36mL、8.09ミリモル、2.0当量)を添加した。溶液を室温で3時間攪拌し、有機層を水層から分離した。水層をジクロロメタン(3×4mL)で抽出した。有機層を組み合わせ、水性Na2CO3(aq)で洗浄して、25mLの0.391MのTfN3を得た。アミン13(1.97g、4.04ミリモル、1.0当量)を水(14.37mL)及びメタノール(28.74mL)に溶解した。この溶液に、CuSO4−5H2O(10.1mg、0.04ミリモル、0.01当量)及びK2CO3(837.5mg、6.06ミリモル、1.5当量)を添加した。TfN3の溶液(25mL、8.09ミリモル、2当量)を、13の攪拌溶液に素早く添加し、反応物を室温で19時間攪拌した。有機層を水層から分離し、水/メタノール層をジクロロメタンで1回抽出した。組み合わせた有機層をMgSO4で乾燥し、減圧下で濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して、白色の固形物として14を得た(1.440g、71%)。10%のMeOH:CH2Cl2中でRf=0.68。IR(薄膜/NaCl)3335、2980、2933、2868、2097、1733、1635、1560、1368、1257及び1155cm-11HNMR(500MHz,CDCl3)δ5.01(d,J=8.25Hz,2H),4.34(m,2H),3.26(t,J=7.4Hz,2H),2.35−2.25(m,2H),2.09−2.05(m,1H),1.87−1.76(m,2H),1.66−1.55(m,3H),1.46(s,18H),1.43(s,9H),1.45−1.35(m,2H)ppm;13CNMR(125MHz,CDCl3)δ172.6,172.4,172.2,156.8,82.3,82.1,80.7,53.4,53.2,51.3,33.0,31.7,28.6,28.5,28.2,28.1,22.4ppm;HRMS(EI+)m/z514.3225[計算値C244357(M+H)+514.3235]。
【0191】
【化36】

【0192】
(S)−ジ−tert−ブチル2−(3−((S)−1−tert−ブトキシ−6−(4−(13−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)−2,5,8,11−テトラオキサトリデシル)−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−1−オキソヘキサン−2−イル)ウレイド)ペンタンジオエート(3):
【0193】
【化37】

【0194】
5mLマイクロ波反応管中の水(1mL)及びtert−ブタノール(1mL)中の10(76mg、0.145ミリモル、1.0当量)及び14(74.4mg、0.145ミリモル、1.0当量)の混合物に、アスコルビン酸ナトリウム(7mg、0.036ミリモル、0.25当量)、及び0.1Mの硫酸銅(II)の水溶液(0.0725mL、0.00725ミリモル、0.05当量)を添加した。管に蓋をし、110℃で10分間マイクロ波放射を行った。その後、反応物を濃縮し、5mLのマイクロ波反応管中で、トリフルオロ酢酸(2mL)及びジクロロメタン(1mL)に再溶解した。管に蓋をし、70℃で2分間マイクロ波放射を行った。得た反応混合物を減圧下で濃縮し、HPLCを用いたクロマトグラフィーを行い、濃縮して黄色の油状物として3(87mg、収率58%)を得た。IR(薄膜/NaCl)3359(w)、2925(s)、1737(s)、1622(m)、1170(s)cm-11HNMR(100MHz,MeOD)δ9.07(d,J=2.7Hz,1H),8.33(dd,J=2.7,9.6Hz,1H),8.03(s,1H),7.27(d,J=9.6Hz,1H),4.66(s,2H),4.45(t,J=7Hz,2H),4.35−4.28(m,2H),3.83(t,J=7Hz,2H),3.73−3.61(m,32H),2.44−2.36(m,2H),2.17−2.08(m,1H),1.99−1.82(m,4H),1.71−1.64(m,1H),1.46−1.38(m,2H);13CNMR(125MHz,MeOD)δ176.4,176.1,175.7,160.0,149.9,145.9,137.0,131.5,131.0,125.2,124.7,116.1,71.6,71.6,71.5,71.5,70.9,69.9,64.8,53.7,53.5,51.2,44.1,32.8,31.1,30.6,28.8,23.4ppm;HRMS(ES+) 計算値C3758819(M+H)m/z919.389098。実測値919.38801。
【0195】
NAALADase阻害実験
40mMのNaOH中のN−アセチル−アスパルチル−グルタメート(NAAG)の10mM原液を、Tris緩衝液(0.1MのTris−HCl、pH7.5)中で40μMに希釈し、384ウェルプレート(1ウェル当たり25μL)に加えた。Km測定及び対照のために、NAAGの2倍の希釈(40μM〜312nM)系列を作成し、別のウェルに添加した。IC50の測定に対して、水中の動員分子3(1ウェル当たり2μL、希釈系列)の溶液をウェルに添加した。他のすべてのウェルに対して2μLの水を添加した。反応を開始するため、Tris緩衝液で希釈したrhPSMA(R&Dリサーチ)(20pg/mL)を各ウェルに添加した(1ウェル当たり25μL)。陰性対照に対して、Tris緩衝液を添加した(1ウェル当たり25μL)。プレートを覆って15分間インキュベートし、この時プレートを95℃で3分間加熱することによりタンパク質を失活した。プレートを冷却した後、Amplex(登録商標)−Redのグルタミン酸/グルタミン酸オキシダーゼ試験キット(Invitrogen)を用いて、グルタミン酸の放出を可視化した。Km及びIC50値は、グラフパッドプリスムソフトウェアを用いて算出し、Kiは、チェン−プルソフの式を用いてこれらの値から算出した。この過程は、3つの試料で行われ、3度の実施の平均値±標準偏差として報告する。
【0196】
フローサイトメトリー動員実験
抗体動員フローサイトメトリー:LNCaP及びDU145細胞を脱離させ、計数し、洗浄し、フローサイトメトリー緩衝液(25mMのTris−HCl、150mMのNaCl、1.5%のBSA、5mMのグルコース、1.5mMのMgCl2、pH7.2)に、2×105細胞/mLの緩衝液の密度で再懸濁し、実験毎に各エッペンドルフ管に1mL添加した。水中の3(2μL、実験毎に種々の濃度)のフローサイトメトリー緩衝液の溶液を細胞に添加し、細胞を4℃で60分間インキュベートした。細胞結合末端競合試験に関して、水中のPMPA溶液(2μL、種々の濃度)をインキュベーションの前に添加した。インキュベーションに続いて、フローサイトメトリー緩衝液で細胞を3回洗浄した。1mg/mLのヒトIgGを有するマウス血清の20μLを各管に添加し、管を室温で5分間インキュベートし、Fc受容体を阻害した。200μLのフローサイトメトリー緩衝液を添加し、これに、2mg/mLのAlexaFluor488共役ウサギ抗ジニトロフェニルIgG−KLH画分2μLを添加した。抗体結合末端競合実験に関して、ジ−DNPリジンの溶液(5mMの水中の溶液2μL)をインキュベーションの前に添加した。管を4℃で60分間インキュベートし、850μLのフローサイトメトリー緩衝液で採取した。細胞を遠沈し、フローサイトメトリー緩衝液で洗浄した(2×1mL)。細胞を1mLのTris緩衝生理食塩水(25mMのTrisHCl、150mMのNaCl、pH7.2)で採取し、500μg/mLのポリピジウムヨーダイド2μLを添加し、FACSCalibur装置(Becton Dickinson)で試料を直ちに分析した。FlowJo(Tree Star Inc.)を用いてデータを分析し、FL−3上に生細胞をゲートでコントロールした。3を除外した実験を対照として行った。実験は、再現性を確保するため、3つの試料で繰り返された。
【0197】
本願で引用した全ての特許、特許出願及び刊行物並びに電子的に利用可能な材料(例えば、GenBank及びRefSeqなどでのヌクレオチド配列提出物、SwissProt、PIR、PRF、PDBなどでのアミノ酸配列提出物、及びGenBank及びRefSeqでの注釈付きのコード領域の翻訳物を含む)の開示全体が、参照によって援用される。参照によって援用した材料と出願当初明細書に開示の材料との間の不一致は、出願当初明細書に記載の事項を支持して解決されるべきである。上記の詳細な記載及び例は、理解を明確にするためのみに提供された。不必要な制限は、これらの事項から理解されるべきでない。本発明は、本願で示し、述べた詳細な事項に限定されるべきではなく、当技術分野における当業者に自明な変形は、特許請求の範囲により定められた発明の範囲内に含まれるものである。
【0198】
全ての見出しは、読み手の利便のためであり、特定されない限り、見出しに続く本文の意味を限定するように用いられるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化学構造であり、
【化1】

ここで、Aは、患者において抗体に結合可能なハプテンを含む抗体結合部分であり;
Bは、前記患者における細胞の細胞表面の前立腺特異的膜抗原に結合可能な細胞結合部分であり;
Lは、[CON]を分子におけるA又はBに結合するリンカー分子であり;
[CON]は、前記リンカー分子をA又はBに結合する結合又は連結分子であり;
分子における各nは、独立に、1〜15の整数である、
化合物又はその医薬的に許容可能な塩、溶媒和物若しくは多形体。
【請求項2】
Aは、次の化学式による抗体結合部分であり、
【化2】

ここで、Y’は、H又はNO2であり;
Xは、O、CH2、NR1、S(O)、S(O)2、−S(O)2O、−OS(O)2、又はOS(O)2Oであり;
1は、H、C1〜C3のアルキル基、又は−C(O)(C1〜C3)の基であり;
X’は、CH2、O、N−R1'又はSであり;
1'は、H又はC1〜C3のアルキル基であり;
Zは、結合、単糖、二糖、オリゴ糖、糖タンパク又は糖脂質であり;
bは、結合、O、CH2、NR1又はSであり;
X’’は、O、CH2、NR1であり;
1は、H、C1〜C3のアルキル基、又は−C(O)(C1〜C3)の基であり;
Bは、次の化学式による細胞結合部分であり:
【化3】

ここで、X1及びX2は、それぞれ独立に、CH2、O、NH又はSであり;
3は、O、CH2、NR1、S(O)、S(O)2、−S(O)2O、−OS(O)2又はOS(O)2Oであり;
1は、H、C1〜C3のアルキル基、又は−C(O)(C1〜C3)の基であり;
kは、0〜20、8〜12、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4、5又は6の整数であり、
Lは、次の化学式によるリンカーであり;
【化4】

又は1〜100のグリコール単位を有するポリプロピレングリコールリンカー若しくはポリプロピレン−ポリエチレングリコール共リンカーであり;
ここで、Raは、H、C1〜C3のアルキル基若しくはアルカノール、又はR3(プロリン)と共に環を形成し、そしてR3は、アミノ酸に由来する側鎖であり;
mは、1〜100、1〜75、1〜60、1〜55、1〜50、1〜45、1〜40、2〜35、3〜30、1〜15、1〜10、1〜8、1〜6、1、2、3、4又は5の整数であり;
又は、Lは、次の化学式によるリンカーであり;
【化5】

ここで、Z及びZ’は、それぞれ独立に、結合、−(CH2i−O、−(CH2i−S、−(CH2i−N−R、
【化6】

であり、
ここで、前記−(CH2i基は、Z又はZ’に存在する場合、もし存在するならば[CON]、ABT又はCBTに結合され、
各Rは、独立に、H、又はC1〜C3のアルキル基若しくはアルカノール基であり;
各R2は、独立に、H又はC1〜C3のアルキル基であり;
各Yは、独立に、結合、O、S又はN−Rであり;
iは、独立に、0〜100であり;
Dは、
【化7】

であり、
ただし、Z、Z’及びDは、それぞれが同時に結合ではなく;
jは、1〜100であり;
m’は、1〜100であり;
n’は、1〜100であり;
1は、O、S又はN−Rであり;
Rは、上記に定義した通りであり;
連結部[CON]は、結合又は次の化学式による部分であり:
【化8】

ここで、X2は、O、S、NR4、S(O)、S(O)2、−S(O)2O、−OS(O)2、又はOS(O)2Oであり;
3は、NR4、O又はSであり;
4は、H、C1〜C3のアルキル基若しくはアルカノール基、又は−C(O)(C1〜C3)の基である、
請求項2に記載の化合物又はその医薬的に許容可能な塩、溶媒和物又は多形体。
【請求項3】
Aは、
【化9】

であり、
Xは、O又はNHであり;
Y’は、Hであり;
X’は、Oであり;
Zは、結合、単糖又は二糖であり;
bは、結合又はOである、
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Aは、
【化10】

である、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
Aは、
【化11】

である、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
X’は、O又はN−R1'であり、R1'は、Hである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
X’は、Oである、請求項5又は6に記載の化合物。
【請求項8】
Aは、
【化12】

である、請求項1から3及び5から7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
Zは、アルドース、ケトース及びアミノ糖からなる群から選択される単糖類である、請求項5から7のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
Zは、D−グリセルアルデヒド、D−エリスロース、D−トレオース、D−リボース、D−アラビノース、D−キシロース、D−リキソース、D−アロース、D−アルトロース、D−グルコース、D−マンノース、D−グロース、D−イドース、D−ガラクトース、ジヒドロキシアセトン、D−エリスルロース、D−リブロース、D−キシルロース、D−サイコン、D−フルクトース、D−ソルボース、D−タガトース、ガラクトサミン、シアル酸及びN−アセチルグルコサミンからなる群から選択される単糖類である、請求項5から7のいずれか又は9に記載の化合物。
【請求項11】
Zは、任意でN−アセチル化され得るサッカロース、任意でN−アセチル化され得るラクトース、任意でN−アセチル化され得るマルトース、任意でN−アセチル化され得るトレハロース、任意でN−アセチル化され得るセロビオース、任意でN−アセチル化され得るコージビオース、任意でN−アセチル化され得るニゲロース、任意でN−アセチル化され得るイソマルトース、任意でN−アセチル化され得るβ,β−トレハロース、任意でN−アセチル化され得るソホロース、任意でN−アセチル化され得るラミナリビオース、任意でN−アセチル化され得るゲンチオビオース、任意でN−アセチル化され得るツラノース、任意でN−アセチル化され得るマルツロース、任意でN−アセチル化され得るパラチノース、任意でN−アセチル化され得るゲンチオビルオース、マンノビオース、任意でN−アセチル化され得るメリビオース、任意でN−アセチル化され得るメリビウロース、任意でN−アセチル化され得るルチノース、ルチヌロース及びキシロビオースからなる群から選択される二糖類である、請求項5から7のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
前記リンカーは、次の化学式による基であり、
【化13】

ここで、Raは、H、又はR3と環を形成し、そしてR3は、アミノ酸に由来する側鎖であり;
mは、1〜45の整数である、請求項1から11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
[CON]は、結合又は
【化14】

である、請求項1から12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
前記リンカーは、次の化学式による基であり、
【化15】

ここで、mは、1〜15の整数である、請求項1から13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
Aは、
【化16】

であり、
Xは、O又はNHであり;
Lは、
【化17】

であり、
ここで、mは、5〜15の整数であり;
[CON]は、リンカーLを介してA又はBに結合される、請求項2及び3に記載の化合物。
【請求項16】
図7に記載の、請求項2に記載の化合物。
【請求項17】
図8に記載の、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
医薬的に許容可能なキャリア、添加物又は賦形剤と組み合わされた、請求項1から15のいずれかに記載のキメラ化合物の有効量を含む医薬組成物。
【請求項19】
追加の抗癌剤の有効量をさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記追加の抗癌剤は、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼI及びIIの阻害剤、アルキル化剤、微小管阻害剤又はこれらの混合物である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記抗癌剤は、アルデスロイキン;アレムツズマブ;アリトレチノイン;アロプリノール;アルトレタミン;アミホスチン;アナストロゾール;三酸化ヒ素;アスパラギナーゼ;生BCG;ベキサロテンカプセル;ベキサロテンゲル;ブレオマイシン;静注ブスルファン;経口ブスルファン;カルステロン;カペシタビン;カルボプラチン;カルムスチン;ポリフェプロサン20インプラントを有するカルムスチン;セレコキシブ;クロラムブシル;シスプラチン;クラドリビン;シクロホスファミド;シタラビン;シタラビンリポソーマル;ダカルバジン;ダクチノマイシン;アクチノマイシンD;ダルベポエチン アルファ;ダウノルビシンリポソーマル;ダウノルビシン;ダウノマイシン;デニロイキン ディフティトックス;デクスラゾキサン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシンリポソーマル;プロピオン酸ドロモスタノロン;エリオットB溶液;エピルビシン;エポエチン アルファ エストラムスチン;リン酸エトポシド;エトポシド(VP−16);エキセメスタン;フィルグラスチム;フロクスリジン(動脈内);フルダラビン;フルオロウラシル(5−FU);フルベストラント;ゲムツズマブ オゾガマイシン;酢酸ゴセレリン;ヒドロキシウレア;イブリツモマブ チウキセタン;イダルビシン;イフォスファミド;メシル酸イマチニブ;インターフェロン アルファ−2a;インターフェロン アルファ−2b;イリノテカン;レトロゾール;ロイコボリン;レバミソール;ロムスチン(CCNU);メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード);酢酸メゲストロール;メルファラン(L−PAM);メルカプトプリン(6−MP);メスナ;メトトレキサート;メトクスサレン;マイトマイシンC;ミトタン;ミトキサントロン;フェンプロピオン酸ナンドロロン;ノフェツモマブ;LOddC;オプレルベキン;オキサリプラチン;パクリタキセル;パミドロネート;ペガデマーゼ;ペガスパルガーゼ;ペグフィルグラスチム;ペントスタチン;ピポブロマン;プリカマイシン;ミトラマイシン;ポルフィマーナトリウム;プロカルバジン;キナクリン;ラスブリカーゼ;リツキシマブ;サルグラモスチム;ストレプトゾシン;タルブビジン(LDT);タルク;タモキシフェン;テモゾロミド;テニポシド(VM−26);テストラクトン;チオグアニン(6−TG);チオテパ;トポテカン;トレミフェン;トシツモマブ;トラスツズマブ;トレチノイン(ATRA);ウラシルマスタード;バルルビシン;バルトルシタビン(モノバルLDC);ビンブラスチン;ビノレルビン;ゾレドロネート;及びこれらの混合物である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの抗アンドロゲン化合物をさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項23】
少なくとも1つのGNRhモジュレータをさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項24】
フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド、酢酸シプロテロン、ケトコナゾール、アミノグルテチミド、アバレリックス、ロイプロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、酢酸アビラテロン、ソラフェニブ及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤をさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前立腺肥大用剤、オイレキシン、フルタミド、ゴセレリン、ロイプロリド、ルプロン、ニランドロン、ニルタミド、ゾラデックス及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの薬剤をさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項26】
経口の投与形態である、請求項18から22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項27】
非経口の投与形態である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記非経口の投与形態は、静脈投与の形態である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項29】
局所投与の形態である、請求項18から22のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項30】
請求項1から17のいずれかに記載の化合物の有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において前立腺癌を治療する方法。
【請求項31】
前記前立腺癌は、転移性前立腺癌である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項18及び22から24のいずれかに記載の医薬組成物の有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において前立腺癌を治療する方法。
【請求項33】
請求項1から17のいずれかに記載の化合物の有効量を患者に投与することを含む、必要とする患者において前立腺癌の転移を阻害する方法。
【請求項34】
請求項18から24のいずれかに記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、必要とする患者において癌を治療する方法。
【請求項35】
前記癌は、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝癌、脾臓癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、精巣癌、膀胱癌、腎臓癌、脳腫瘍/CNS癌、頭部癌、首部癌、咽喉癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、黒色腫、非黒色腫の皮膚癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、小細胞肺癌、絨毛腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、ヘアリー細胞白血病、口腔癌/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、腎癌又はリンパ腫である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
請求項19から22のいずれかに記載の医薬組成物の有効量を患者に投与することを含む、別の形態の癌も有する患者において前立腺癌を治療する方法。
【請求項37】
前記別の形態の癌は、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝癌、脾臓癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、精巣癌、膀胱癌、腎臓癌、脳腫瘍/CNS癌、頭部癌、首部癌、咽喉癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、黒色腫、非黒色腫の皮膚癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、小細胞肺癌、絨毛腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、ヘアリー細胞白血病、口腔癌/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、腎癌又はリンパ腫である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
癌の治療のための薬剤の製造における請求項1から17のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項39】
前記癌は、前立腺癌である、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記癌は、転移性前立腺癌である、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
癌の治療のための薬剤の製造における請求項19から21に記載の医薬組成物の使用。
【請求項42】
前記癌は、前立腺癌、転移性前立腺癌、胃癌、結腸癌、直腸癌、肝癌、脾臓癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、精巣癌、膀胱癌、腎臓癌、脳腫瘍/CNS癌、頭部癌、首部癌、咽喉癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、黒色腫、非黒色腫の皮膚癌、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、小細胞肺癌、絨毛腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、ヘアリー細胞白血病、口腔癌/咽頭癌、食道癌、喉頭癌、腎癌又はリンパ腫である、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
前立腺癌の治療のための薬剤の製造における請求項22から25に記載の医薬組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−523639(P2011−523639A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509481(P2011−509481)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/002957
【国際公開番号】WO2009/139863
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(505311711)エール ユニヴァーシティ (5)
【Fターム(参考)】