説明

発光ガラス素子、その製造方法及びその発光方法

本発明に係る発光ガラス素子は、発光ガラス基体を備え、該発光ガラス素子の表面には金属層が設けられ、該金属層は金属微細構造を有する。発光ガラス基体は化学式aMO・bY・cSiO・dEuで記載される複合酸化物を含有する。式中、Mはアルカリ金属元素を表し、a、b、c、dは各成分のモル数を表し、a値の範囲が25〜60、b値の範囲が1〜30、c値の範囲が20〜70、d値の範囲が0.001〜10である。また、本発明はさらに該発光ガラス素子の製造方法及びその発光方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光材料の技術領域に関し、特にガラス基体を発光材料とした発光ガラス素子、その製造方法及びその発光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的に、発光基体として用いられる材料は、蛍光粉末、ナノ晶体及びガラスなどが挙げられ、晶体と蛍光粉末に対して、ガラスは、透明、堅硬及び良い化学安定性と光学性質を有し、しかもガラスでは様々なサイズ・形状の製品に容易に加工し得るため、例として、様々な形状或いはサイズの表示装置或いは照明光源を挙げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、真空電子工学領域における電界発射装置において、通常では発光ガラスが発光体として利用され、それで照明及び表示領域には広範囲に応用でき、産業上極めて有用であることから、国内外の研究機構が多大な注目を集めている。電界発射装置の稼働原理としては、真空環境で陽極が電界発射陰極アレー(Field emissive arrays,FEAs)に対して順電圧を印加して加速電界を形成し、陰極から発射された電子が加速されて陽極板上の発光材料に向かって照射することによって発光させることである。このような電界発射装置では、稼働温度範囲(−40°C〜80°C)が広く、応答時間(<1ms)が短く、構造が簡単で、省電力、グリーンな環境保護の要求を満足しているといった利点を有する。また、上述した蛍光粉体、発光ガラス、発光薄膜などの材料のいずれも、そのような電界発射装置に発光材料として使用することができるが、いずれも発光効率が低いという本質上の問題が存在するため、電界発射装置への応用、特に照明領域への応用については多大な制限がある。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑み、良好な透光性、高均一性、高発光効率、安定性が良く、構造が簡単な発光ガラス素子、及び作製作業が簡単で低コストの発光ガラス素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、さらに操作が簡易で利便性と信頼性を有する発光材料の発光効率を大きく高める発光ガラス素子の発光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発光ガラス素子は、発光ガラス基体を備え、前記発光ガラス基体の表面には金属層が設けられ、前記金属層は金属微細構造を有し、前記発光ガラス基体は下記化学式(1)に記載の複合酸化物を含有する。
【化1】

式中、Mはアルカリ金属元素を表し、a、b、c、dは各成分のモル数を表し、a値の範囲が25〜60、b値の範囲が1〜30、c値の範囲が20〜70、d値の範囲が0.001〜10である。
【0007】
発光ガラス素子の製造方法は、以下のステップを含む。
即ち、発光ガラス基体を作製するステップと、このステップにおいて、前記発光ガラス基体は下記化学式(2)に記載の複合酸化物を含有する。
【化2】

式中、Mはアルカリ金属元素を表し、a、b、c、dは各成分のモル数を表し、a値の範囲が25〜60、b値の範囲が1〜30、c値の範囲が20〜70、d値の範囲が0.001〜10である。
前記発光ガラス基体の表面に金属層を形成するステップと、
前記発光ガラス基体及び金属層を真空で焼戻し処理することにより、前記金属層に金属微細構造を形成させ、冷却した後、所要の発光ガラス素子を形成するステップとを備える発光ガラス素子の製造方法である。
【0008】
また、発光ガラス素子の発光方法は、以下のステップを含む。
即ち、上述した製造方法に基づいて製造された発光ガラス素子を得るステップと、
金属層に対して陰極線を発射し、陰極線の励起により金属層と発光ガラス基体との間に表面プラズモンが形成されることによって、発光ガラス基体を発光させるステップと、を備える発光ガラス素子の発光方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、発光ガラス基体の上に微細構造を有する1つの金属層を設置することを採用し、該金属層では、陰極線により発光ガラス基体との間に表面プラズモンを形成することによって、この表面プラズモン効果により発光ガラス基体の内量子効率を大きく向上させ、即ち、発光ガラスは、自ら発生する輻射が高まることにつれて発光ガラス基体の発光効率を大きく高めることになり、それにより、発光材料の発光効率が低いという問題を解決した。よって、発光ガラス素子の発光方法において、単に金属層に対して陰極線を発射するだけで、金属層と発光ガラス基体との間に表面プラズモンが形成されることにより、発光ガラス基体の発光効率を高め、その発光の信頼性を向上させた。
【0010】
さらに、本発明の発光ガラス素子の作製方法は、単に発光ガラス基体の上に1つの金属層を形成し、それから焼戻し処理を経れば、所要の発光ガラス素子が得られ、それにより、作製作業を簡単化させ、コストを低減させたことから、広範囲に応用でき、産業上極めて有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例の発光ガラス素子の構成を示した図である。
【図2】本発明の実施例の発光ガラス素子の作製方法を示したフローチャートである。
【図3】本発明の実施例の発光ガラス素子の発光方法を示したフローチャートである。
【図4】実施例1の発光ガラス素子を、金属層を有していない発光ガラスと対比する発光スペクトル図で、陰極線の発光スペクトルの測定条件としては、電子ビーム励起の加速電圧は7KVである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明をより完全に理解するために、その目的、技術方案、および利点について、以下の添付図面及び実施例を参照して本発明のさらに詳細な説明を行う。ここで、記述した具体的な実施例は単に例示を目的としたものであって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。そのことは、明確に理解されなければならない。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施例の発光ガラス素子10は、発光ガラス基体13と、発光ガラス基体13の表面に設けられる金属層14とを備える。金属層14は、金属微細構造を有し、該金属微細構造は、時々微細ナノ構造と称することもある。さらに、該金属微細構造は、非周期性で、即ち、非規則的に配列された金属晶体から構成されるものである。
【0014】
該発光ガラス基体13は、下記化学式(3)に記載の複合酸化物を含有する。
【化3】

式中、Mはアルカリ金属元素を表し、a、b、c、dは各成分のモル数を表し、a値の範囲が25〜60、b値の範囲が1〜30、c値の範囲が20〜70、d値の範囲が0.001〜10である。
該発光ガラス基体13にはユーロピウムの酸化物が含まれ、該ユーロピウムの酸化物は、このような構成の発光ガラスにおいて、十分にその発光効果が発揮できる。該発光ガラス基体13はさらに良好な透光性能を有する。
【0015】
また、金属層14は、化学安定性が良好な金属であればよい、例えば、酸化・腐食しにくい金属であり、または常用金属でもよい。金、銀、アルミニウム、銅、チタニウム、鉄、ニッケル、コバルト、クロミウム、白金、パラジウム、マグネシウムもしくは亜鉛から選択される少なくとも一種の金属であることが好ましく、また、金、銀もしくはアルミニウムから選択される少なくとも一種の金属であることがより好ましい。金属層14内の金属種類はそれらの単一金属或いは複合金属であればよい。複合金属は、上述した金属の二種または二種以上の合金であればよい、例えば、金属層14は、アルミニウム銀合金層またはアルミニウム金合金層であればよい。銀または金の重量分率は、70%以上であることが好ましい。金属層14の厚さは、0.5ナノメータ〜200ナノメータであることが好ましく、また、1ナノメータ〜100ナノメータであることがより好ましい。
【0016】
アルカリ金属元素Mは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはリチウム(Li)から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0017】
上述した発光ガラス素子10は発光素子として、広範囲に超高輝度・高速作動する発光装置上に応用でき、例えば、電界発射表示器、電界発射光源或いは大型広告看板などの製品において応用できる。電界発射表示器を例として、陽極が電界発射陰極アレーに対して正電圧を印加して加速電界を形成し、陰極から発射された電子が金属層14に向かって陰極線16を発射し、微細構造を有する金属層14と発光ガラス基体13との間に表面プラズモンが形成され、この表面プラズモン効果により発光ガラス基体13の内部量子効率を大きく向上させ、即ち、発光ガラスは、自ら発生する輻射が高まることにつれて発光ガラス基体の発光効率を大きく高めることになり、それにより、発光材料の発光効率が低いという問題を解決した。また、発光ガラス基体13の表面に1つの金属層が形成されることによって、金属層全体と発光ガラス基体13との間に均一な境界面が形成され、発光の均一性を向上させることができる。
【0018】
図1、図2を参照しながら、本発明の実施例の発光ガラス素子の製造方法の流れを説明する。該製造方法は、以下のステップを含む。
【0019】
S01:発光ガラス基体を作製するステップであって、該発光ガラス基体13は上述した構成及び含有量であり、即ち、下記化学式(4)に記載の複合酸化物を含有する。
【化4】

式中、Mはアルカリ金属元素を表し、a、b、c、dは各成分のモル数を表し、a値の範囲が25〜60、b値の範囲が1〜30、c値の範囲が20〜70、d値の範囲が0.001〜10である。
【0020】
S02:該発光ガラス基体の表面に金属層を形成するステップである。
【0021】
S03:前記発光ガラス基体及び金属層を真空で焼戻し処理することにより、前記金属層に金属微細構造を形成させ、冷却した後、所要の発光ガラス素子を形成するステップである。
【0022】
なお、発光ガラス基体13の作製方法は具体的に、純アルカリ金属塩を分析し、SiOと99.99%のY、Euを主要原料として、発光ガラス基体の化学式aMO・bY・cSiO・dEu中の各成分のモル数の比に基づいて相応する原料を秤量し、1200°C〜1500°Cの温度下で1〜5時間混合・溶融した後、室温までに冷却してから、還元雰囲気に置かれ、600°C〜1100°Cの温度下で1〜20時間焼戻しすることにより、発光ガラス基体が得られる。また、さらに該発光ガラス基体を切割・バフ加工することにより所定のサイズに形成することによって、所要の発光ガラス基体が得られる。
【0023】
前述した構造と類似し、金属層14は、化学安定性が良好な金属であればよい、例えば、酸化・腐食しにくい金属であり、または常用金属でもよい。金、銀、アルミニウム、銅、チタニウム、鉄、ニッケル、コバルト、クロミウム、白金、パラジウム、マグネシウムもしくは亜鉛から選択される少なくとも一種の金属であることが好ましく、また、金、銀もしくはアルミニウムから選択される少なくとも一種の金属であることがより好ましい。金属層14の厚さは、0.5ナノメータ〜200ナノメータであることが好ましく、また、1ナノメータ〜100ナノメータであることがより好ましい。アルカリ金属元素Mは、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはリチウム(Li)から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0024】
ステップS02において、該金属層は、金属スパッタリング或いは蒸着により発光ガラス基体の表面に形成されるものである。ステップS03は具体的に、発光ガラス基体の表面に金属層が形成された後、50°C〜650°Cの温度下で真空焼戻し処理を行い、焼戻し時間は5分間〜5時間で、それから自然に室温までに冷却する。なお、焼戻し温度は、100°C〜500°Cの温度であることが好ましく、焼戻し時間は15分間〜3時間であることが好ましい。
【0025】
図1、図3を参照しながら、本発明の実施例の発光ガラス素子の発光方法の流れを説明する。該発光方法は、以下のステップを含む。
【0026】
S11:前述した製造方法に基づいて製造される発光ガラス素子10を得るステップである。
【0027】
S12:金属層14に対して陰極線16を発射し、陰極線16の励起により金属層と発光ガラス基体13との間に表面プラズモンが形成されることによって、発光ガラス基体13を発光させるステップである。
【0028】
発光ガラス素子10は、前述した各種の構造及び成分などの特徴を有する。実際応用において、例えば、電界発射表示器或いは照明光源に用いられる時、真空環境で陽極が電界発射陰極アレーに対して正電圧を印加して加速電界を形成し、陰極から陰極線16を発射し、陰極線16の励起により電子ビームはまず金属層14を通過し、発光ガラス基体13を励起して発光させ、このような過程において、金属層14と発光ガラス基体13との境界面上に表面プラズモン効果が生成され、当該効果により発光ガラス基体13の内量子効率を大きく向上させ、即ち、発光ガラスは、自ら発生する輻射が高まることにつれて発光ガラス基体の発光効率を大きく高めることになった。
【0029】
表面プラズモン(Surface Plasmon,SP)は、金属と媒質との境界面に沿って伝搬する波であり、その振幅は境界面との距離が離れていくとともに指数関数的に減衰する。金属の表面構造を変える時、表面プラズモンポラリトン(Surface plasmon polaritons,SPPs)の性質、分散関係、励起モード、カップリング効果などのいずれも重大な変化が生じる。SPPsにより誘起される電磁場は、ただ光波をサブ波長サイズの構造に伝搬するように制限するのみならず、しかも光周波数領域からマイクロ波帯域までの電磁放射を生成し、操作制御することも可能となり、光伝搬に対して自発的に操作制御を実現する。よって、本実施例は、該SPPsの励起性能を利用して、発光ガラス基体の光学状態密度を増加し、また、その自ら発生する輻射を高める。そして、表面プラズモンのカップリング効果を利用することができることから、発光ガラス基体から光を発出すると、それとカップリング共振効果が生成され、従って発光ガラス基体の内部量子効率を大きく向上させて、発光ガラス基体の発光効率を高める。
【0030】
以下、多数の実施例を例示して発光ガラス素子の異なる成分及びその作製方法、並びにその性能などについて説明する。
【実施例1】
【0031】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした上述の作製方法で製造される30NaO・9.8Y・60SiO・0.2Euの発光ガラスを基体とし(各酸化物前の数字は、モル数を表し、以下同様)、そして磁場制御スパッタリング設備を利用して、その表面に厚さが2ナノメータである金属銀層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、300°Cの温度で半時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例1における発光ガラス素子が得られる。
【0032】
電子銃から発生した陰極線を本実施例の発光ガラス素子に向かって照射することにより、図4に示すような発光スペクトルが生成され、図中の曲線11は、金属銀層が設けられていない時のガラスの発光スペクトルであり、曲線12は、本実施例で製造された発光ガラス素子の発光スペクトルであり、図4から分かるように、金属層とガラスとの間に表面プラズモン効果が形成されることから、金属層が設けられていない時の発光ガラスに対して、本実施例の発光ガラス素子が300ナノメータから700ナノメータまでの発光積分強度は、金属層が設けられていない時の発光ガラスの発光積分強度の2.8倍で、発光性を極めて向上させることができる。以下、各実施例の発光スペクトルのいずれも実施例1に類似しており、各発光ガラス素子も類似な発光強度効果を有していることにより、以下での説明は省略する。
【実施例2】
【0033】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした上述の作製方法で製造される25NaO・15Y・45SiO・5Euの発光ガラスを基体とし、そして磁場制御スパッタリング設備を利用して、その表面に厚さが0.5ナノメータである金属金層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、200°Cの温度で1時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例3】
【0034】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした27NaO・1Y・70SiO・0.001Euの発光ガラスを基体とし、そして磁場制御スパッタリング設備を利用して、その表面に厚さが200ナノメータである金属アルミニウム層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、500°Cの温度で5時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例4】
【0035】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした32NaO・5Y・65SiO・0.1Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが100ナノメータである金属マグネシウム層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、650°Cの温度で5分間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例5】
【0036】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした35NaO・10Y・50SiO・2Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが1ナノメータである金属パラジウム層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、100°Cの温度で3時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例6】
【0037】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした38NaO・12Y・43SiO・0.5Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが5ナノメータである金属白金層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、450°Cの温度で15分間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例7】
【0038】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした28NaO・10Y・68SiO・2Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが20ナノメータである金属鉄層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、50°Cの温度で5時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例8】
【0039】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした35LiO・18Y・55SiO・6Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが10ナノメータである金属チタニウム層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、150°Cの温度で2時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例9】
【0040】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした40LiO・22Y・40SiO・8Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが50ナノメータである金属銅層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、200°Cの温度で2.5時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例10】
【0041】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした50LiO・25Y・30SiO・9.5Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが150ナノメータである金属亜鉛層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、350°Cの温度で0.5時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例11】
【0042】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした60LiO・30Y・40SiO・10Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが120ナノメータである金属クロミウム層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、250°Cの温度で2時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例12】
【0043】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした33KO・7Y・58SiO・0.7Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが40ナノメータである金属ニッケル層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、80°Cの温度で4時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例13】
【0044】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした26KO・4Y・69SiO・0.9Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが180ナノメータである金属コバルト層を堆積してから、それを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、400°Cの温度で1時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例14】
【0045】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした45KO・8Y・48SiO・1.5Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが80ナノメータである金属銀アルミニウム層を堆積し、なお、金属層における銀とアルミニウムとの重量分率は、それぞれ80%と20%であり、そしてそれを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、380°Cの温度で2.5時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例15】
【0046】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした36KO・16Y・52SiO・4Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが15ナノメータである金属銀アルミニウム層を堆積し、なお、金属層における銀とアルミニウムとの重量分率は、それぞれ90%と10%であり、そしてそれを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、180°Cの温度で3.5時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例16】
【0047】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした55KO・3Y・62SiO・7Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが35ナノメータである金属金アルミニウム層を堆積し、なお、金属層における金とアルミニウムとの重量分率は、それぞれ80%と20%であり、そしてそれを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、270°Cの温度で1.5時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【実施例17】
【0048】
選択された大きさが1×1cm、表面バフ仕上げした58KO・6Y・35SiO・9Euの発光ガラスを基体とし、そして電子ビーム蒸着設備を利用して、その表面に厚さが60ナノメータである金属金アルミニウム層を堆積し、なお、金属層における金とアルミニウムとの重量分率は、それぞれ90%と10%であり、そしてそれを真空度が1×10-3Pa以下の真空環境に置き、600°Cの温度で4.5時間焼戻し処理を行い、それから室温までに冷却することにより、本実施例における発光ガラス素子が得られる。
【0049】
上述した各実施例において、発光ガラス基体13の上に1つの微細構造を有する金属層14が設置され、該金属層14が、陰極線16により発光ガラス基体13との間の境界面に表面プラズモンが形成され、この表面プラズモン効果により発光ガラス基体の内部量子効率を大きく向上させ、即ち、発光ガラスは、自ら発生する輻射を高める。それにより、発光ガラス素子の発光方法において、金属層発光ガラス基体の発光効率を大きく高めることになり、それにより、金属層14のみに対して陰極線16を発射すれば、金属層14と発光ガラス基体13との間には表面プラズモンを形成することができることにより、発光ガラス基体13の発光効率を高めてその発光の信頼性を向上させることができる。
【0050】
本発明の実施例の発光ガラス素子の作製方法において、単に発光ガラス基体13の上に1つの金属層14を形成し、それから焼戻し処理を経れば、所要の発光ガラス素子10が得られ、従って、作製作業を簡単化させ、コストを低減させたことから、広範囲に応用でき、産業上極めて有用となり、特に超高輝度・高速作動する発光装置上に応用でき、例えば、電界発射表示器などの製品に応用することができる。
【0051】
以上は、本発明の好ましい実施形態であり、本発明になんらの制限を加えるものではない。本発明の精神と原則を逸脱しない限り、その等効果修正又は変更は、なお、本明細書の保護範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0052】
10:発光ガラス素子
11、12:曲線
13:発光ガラス基体
14:金属層
16:陰極線
S01、S02、S03、S11、S12:ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ガラス基体を備える発光ガラス素子であって、前記発光ガラス基体の表面には金属層が設けられ、前記金属層は金属微細構造を有し、前記発光ガラス基体は下記化学式(1)に記載の複合酸化物を含有することを特徴とする、発光ガラス素子。
【化1】

(式中、Mはアルカリ金属元素を表し、a、b、c、dは各成分のモル数を表し、a値の範囲が25〜60、b値の範囲が1〜30、c値の範囲が20〜70、d値の範囲が0.001〜10である。)
【請求項2】
前記アルカリ金属元素は、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはリチウム(Li)から選択された少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載の発光ガラス素子。
【請求項3】
前記金属層の金属は、金、銀、アルミニウム、銅、チタニウム、鉄、ニッケル、コバルト、クロミウム、白金、パラジウム、マグネシウムもしくは亜鉛から選択された少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載の発光ガラス素子。
【請求項4】
前記金属層の金属は、金、銀もしくはアルミニウムから選択された少なくとも一種であることを特徴とする、請求項3に記載の発光ガラス素子。
【請求項5】
前記金属層の厚さは、0.5ナノメータ〜200ナノメータであることを特徴とする、請求項1に記載の発光ガラス素子。
【請求項6】
発光ガラス基体を作製するステップと、前記発光ガラス基体の表面に金属層を形成するステップと、前記発光ガラス基体及び前記金属層を真空で焼戻し処理することにより、前記金属層に金属微細構造を形成させ、冷却した後、所要の発光ガラス素子を形成するステップと、を備える発光ガラス素子の製造方法であって、
前記発光ガラス基体は下記化学式(2)に記載の複合酸化物を含有することを特徴とする、発光ガラス素子の製造方法。
【化2】

(式中、Mはアルカリ金属元素を表し、a、b、c、dは各成分のモル数を表し、a値の範囲が25〜60、b値の範囲が1〜30、c値の範囲が20〜70、d値の範囲が0.001〜10である。)
【請求項7】
前記発光ガラス基体を作製するステップは、それぞれ対応するモル数のアルカリ金属塩、SiO、Y及びEuの各原料を準備し、1200°C〜1500°Cの温度で混合・溶融し、冷却してから、還元雰囲気に置かれ、600°C〜1100°Cの温度で焼戻し、発光ガラス基体を得ることを特徴とする、請求項6に記載の発光ガラス素子の製造方法。
【請求項8】
前記金属層は、金属スパッタリング或いは蒸着により発光ガラス基体の表面に形成されるものであることを特徴とする、請求項6に記載の発光ガラス素子の製造方法。
【請求項9】
真空での前記焼戻し処理は、50°C〜650°Cの温度で行い、焼戻し時間が5分間〜5時間であることを特徴とする、請求項6に記載の発光ガラス素子の製造方法。
【請求項10】
発光ガラス素子の発光方法であって、
前記請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の発光ガラス素子の製造方法に基づいて製造される前記発光ガラス素子を得るステップと、
前記金属層に対して陰極線を発射し、前記陰極線の励起により前記金属層と前記発光ガラス基体との間に表面プラズモンが形成されることによって、前記発光ガラス基体を発光させるステップと、を備えることを特徴とする、発光ガラス素子の発光方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−519146(P2012−519146A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552301(P2011−552301)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/CN2009/072465
【国際公開番号】WO2010/148567
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511210109)海洋王照明科技股▲ふん▼有限公司 (21)
【Fターム(参考)】