説明

発光素子、その製造方法および発光方法

発光素子は、発光基板;および発光基板の表面上に形成された、金属微細構造を有する金属層;を含み;この際、発光基板は、化学組成:Y:Euを有する発光材料を含む。また発光素子の製造方法および発光方法も提供される。発光素子は良好な発光均質性、高い発光効率、良好な発光安定性および単純な構造を有し、極めて高い輝度を有する発光装置において用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光材料に関し、より詳細には、発光材料からなるガラス基板を含む発光素子、その製造方法および発光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光基板として用いられる従来の材料は、蛍光体、ナノ結晶、ガラスなどが挙げられる。結晶および蛍光体と比較すると、ガラスは透明であり、強固であり、優れた化学的安定性および優れた蛍光特性の利点を有する。また、ガラスは、種々の形およびサイズを有するディスプレイ装置や光源のような種々の形を有する製品に容易に加工することができる。
【0003】
例えば、真空マイクロエレクトロニクスにおいて、フィールド・エミッション素子は発光体として発光基板を用いており、かような素子は照明およびディスプレイ技術において大きな可能性を示しており、内外の研究機関に注目されている。フィールド・エミッション素子の作動原理は、加速電場を形成させるために、真空下で電解放出アレイ(FEAs)にアノードが正電圧を印加する。カソードから放出された電子は、発光材料をアノードプレート上で衝突させるために加速され、それが放射される。フィールド・エミッション素子は広い操作温度(−40℃−80℃)、短い応答時間(corresponding time)(<1ms)、単純な構造、低いエネルギー消費を有し、環境保護の要求を満たす。さらに、蛍光体、発光基板、発光フィルムのような材料は、フィールド・エミッション素子において発光材料として有用であるが、これらは全て発光効率が低いという重大な問題を有し、フィールド・エミッション素子の用途、特に照明への適用を大幅に限定するものとなっている。
【発明の概要】
【0004】
発明の要約
本開示の一態様において、良好な発光均質性、高い発光効率、良好な発光安定性および単純な構造を有する発光素子および簡便な工程および低コストである製造方法が求められる。
【0005】
本開示の他の態様において、単純な操作、良好な信頼性、および発光効率を向上させる発光素子の発光方法も求められる。
【0006】
発光素子は、発光基板;および発光基板の表面上に形成された、金属微細構造を有する金属層;を含み、この際、発光基板は、化学組成:Y:Euを有する発光材料を含む。
【0007】
発光素子の製造方法は以下の段階を含む:
化学組成:Y:Euを有する発光材料を含む、発光基板を準備し;
発光基板上に金属層を形成させ;
金属層の金属微細構造を形成させるために真空中で発光基板および金属層を焼鈍し、次いで、発光素子を形成するために発光基板および金属層を冷却する。
【0008】
発光素子の蛍光方法は、下記段階を含む:
上述した製造方法によって発光素子を得て;金属層に陰極線を放射し、陰極線の放射によって金属層および発光基板の間に表面プラズモンを形成させ、次いで発光基板に放射線をあてる。
【0009】
上述の発光素子において、金属微細構造を有する金属層が発光基板の表面上に形成し、陰極線が放射され、金属層および発光基板の間に表面プラズモンが発生する。表面プラズモン効果により、発光基板の内部量子効率が非常に増加し、発光基板の自然放出が非常に増加し、その結果、発光基板の発光効率が向上し、発光材料の低効率問題を克服することができる。したがって、発光素子の発光方法において、陰極線が一旦金属層に放射されると、表面プラズモンが金属層および発光基板の間に形成され、発光効率および信頼性が向上する。発光素子は、発光基板および金属層を含む単純な2層構造を有する。また、発光基板および金属層の間に形成された均一な界面が存在し、その結果良好な発光均質性および安定性が達成される。発光素子の発光方法において、陰極線が一旦金属層に放射されると、表面プラズモンが金属層および発光基板間に形成され、発光基板の発光効率および信頼性が向上するであろう。
【0010】
発光素子の製造方法の一実施形態において、発光基板上に金属層を形成させ、発光基板および金属層を焼鈍することによって発光素子を得ることができ、したがって、製造方法は単純で安価である。発光素子は、生産性が高く、幅広い適用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
図面の構成要素は必ずしも尺度に沿って描かれておらず、本開示の原理を明確に説明する目的で強調されている。
【図1】図1は、本開示の一実施形態による発光素子の概略図である。
【図2】図2は、発光素子の製造方法の一実施形態のフローチャートである。
【図3】図3は、発光素子を用いた発光方法の一実施形態のフローチャートである。
【図4】図4は、金属層なしの発光基板と比較した実施例1の発光素子の発光スペクトルである。陰極線の発光スペクトルは、5KV加速電圧を用いた電子線によって励起したときに試験した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本開示は例示のために説明されるものあり、添付の図面の図に限定する目的ではなく、図中、同様の参照は同様の構成要素を示す。なお、本開示における「一」実施形態の意味するところは、必ずしも同じ実施形態ではなく、かような言及は少なくとも一を意味する。
【0013】
図1を参照すると、発光基板13および発光基板13の表面上に形成される金属層14を含む発光素子10の一実施形態が示される。金属層14は、ミクロ−ナノ構造とも称される金属微細構造を有する。また、金属微細構造は非周期的である、すなわち、不規則な配列の金属結晶から構成される。
【0014】
本開示の一実施形態において、発光基板13は発光材料Y:Euでドープされた発光ガラスである。発光ガラスの化学的組成は、20NaO−20BaO−30B−30SiOであり、好適にはガラスは低融点のガラス粉末からなり、ガラスはここで述べたガラス材料に限定されない。発光基板中の発光材料Y:Euの質量パーセンテージは、5%〜35%の範囲である。
【0015】
本開示の他の実施形態において、発光基板13は、透明または半透明基板および基板上に形成される化学組成Y:Euを有する発光フィルムを含む。金属層14は発光フィルムの表面上に形成される。
【0016】
金属層14は、抗酸化性、耐食性金属のような、良好な化学的安定性を有する金属、または通常の金属からなる。金属層14は、好適には、Au,Ag,Al,Cu,Ti,Fe,Ni,Co,Cr,Pt,Pd、Mg、およびZnからなる群から選択される少なくとも一の金属からなり、より好ましくは、Au、Ag、およびAlからなる群から選択される少なくとも一の金属からなる。金属層14は、一の金属または複合金属からなりうる。複合金属は、上述の2以上の合金でありうる。例えば、金属層14は、Ag/Al合金層またはAu/Al合金層であり、この際、AgまたはAuの質量パーセンテージは、好ましくは70%を超える。金属層14の厚さは0.5−200nmの範囲であり、好ましくは1−100nmの範囲である。
【0017】
発光素子(luminescent element)として、発光素子10は、電界放出ディスプレー、電解放出光源、および大画面の広告ディスプレイなどのような超高輝度およびハイスピードの動きを有する発光装置に広く適用できる。電界放出ディスプレーを例にとると、加速電場を形成するために、アノードが電界放出陰極に正電圧を印加し、表面プラズモンが金属層14および発光基板13の間に形成されるように、カソードが電子、すなわち陰極線16を金属層14に対して放出する。表面プラズモン効果により、発光基板13の内部量子効率は非常に高くなり、発光基板の発光効率が向上し、発光材料の低効率問題が克服されるほどに発光基板の自然放出は非常に高まる。また、金属層が発光基板13の表面上に形成されているので、全金属層および発光基板13の間に均一な界面が形成され、発光均一性が向上する。
【0018】
図1および図2を参照して、発光素子の製造方法の一実施形態のフローチャートを示し、該方法は、以下の工程を含む:
工程S01、Y:Euの化学組成を有する発光材料を含む発光基板13を準備する;
工程S02、発光基板13の表面上に金属層14を形成させる;そして
工程S03、金属層14の金属微細構造を形成させるために、真空中で発光基板13および金属層14を焼鈍し、次いで、発光素子を形成するために発光基板13および金属層14を冷却する。
【0019】
工程S01において、一は発光材料Y:Euでドープされた発光ガラスであり、他は基板上に形成された発光フィルムY:Euである、上述した発光基板13の2つの構造によると、2つの異なる方法がある。前者の発光基板13の製造方法は次の工程を含む:発光材料Y:Euおよびガラス粉末を混合し、1000〜1300℃で溶融し、次いで、室温まで冷却し、発光材料Y:Euでドープされた発光ガラスが得られる。この際、ガラス粉末の化学組成は、20NaO−20BaO−30B−30SiOであり、粉末である発光材料Y:Euは、1:19−7:13の質量比にしたがってガラス粉末と混合される。混合物中の混合された発光材料Y:Euの質量パーセンテージは、5%−35%の範囲である。混合物を1000〜1300℃で溶融し、鋼板上に注ぎ、次いで室温まで冷却し、かようにして基板13が得られる。混合物を溶融するために用いられる温度は好ましくは1200℃である。
【0020】
後者の発光基板13の製造方法は以下の工程を含む:基板として透明または半透明基板を選択し、基板上に発光フィルムY:Euを蒸着させる。この際、発光フィルムY:Euはマグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、CVD、MBE、PLDまたは噴霧熱分解などのような方法を用いて基板上に蒸着され、形成される。
【0021】
前述したように、金属層14は、抗酸化性および耐食性金属のような優れた化学的安定性を有する金属源または通常の金属を蒸着することによって形成される。金属層14は好ましくは、Au、Ag、Al、Cu、Ti、Fe、Ni、Co、Cr、Pt、Pd、Mg、およびZnからなる群から選択される、少なくとも一の金属からなり、より好ましくは、Au、Ag、およびAlからなる群から選択される、少なくとも一の金属からなる。工程S02において、金属層14は、例えば、次の2つの技術に限定されるものではないが、スパッタリングまたは蒸着などによって、上述の少なくとも一の金属を用いて、PVDまたはCVDによって発光基板13の表面上に形成される。金属層14の厚さは、好ましくは0.5〜200nmの範囲であり、より好ましくは1〜100nmの範囲である。
【0022】
工程S03において、発光基板13上への金属層14の形成後、金属層14および発光基板13を50〜650℃で5分から5時間焼鈍(アニール)し、次いで室温まで冷却する。好適なアニール(焼鈍)温度は、100〜500℃であり、好適なアニール時間は、15分から3時間である。
【0023】
図1〜3を参照して、発光素子の発光方法のフローチャートを示し、該方法は、以下の工程を含む:
工程S11、前述の製造方法によって発光素子10を得る。
【0024】
工程S12、金属層14に陰極線16を放射する。陰極線16の放射によって、表面プラズモンが金属層14および発光基板13の間に形成し、次いで発光基板13に放射線があてられる。
【0025】
発光素子10は、前述のとおりの構造および組成の特徴を有する。応用において、電界放出ディスプレーまたは照明光源によって、工程S12を行うことができる。加速電場を形成するために、真空下、カソードが陰極線16を放出するようにアノードが電界放出陰極に正電圧を印加する。陰極線16によって励起されると、電子線は金属層14を透過し、発光基板13に放射線があてられる。かような工程の間、表面プラズモンが金属層14および発光基板13の間に形成される。表面プラズモン効果により、発光基板13の内部量子効率は非常に高くなり、発光基板の発光効率が向上するほどに発光基板の自然放出は非常に高まる。
【0026】
発光基板13は上述のような2つの構造を有する。前述した構造において、電子線は金属層14を透過し、次いで発光ガラス中にドープされた発光材料Y:Euは、発光させるために励起される。発光材料Y:Euでドープされた発光ガラスの表面および金属層14の間に形成される表面プラズモンによって発光するように発光材料Y:Euは励起される。後者の構造では、電子線は金属層14を透過し、発光するように発光フィルムY:Euを直接励起する。発光フィルムY:Euおよび金属層14の間に形成される表面プラズモンによって発光するように発光材料Y:Euは励起される。
【0027】
表面プラズモン(SPと略する)は、金属および媒体間の界面に沿って広がる波であり、その大きさは界面から距離が遠ざかるにつれて指数関数的に減衰する。金属の表面構造を変化させると、表面プラズモンポラリトン(以降、SPPsと称する)の特徴、分散関係、励起モード、連成効果はわずかに変化する。SPPsによって引き起こされる電磁場は、サブ波長サイズ構造中の光波の広がりを抑制することができるばかりでなく、光周波数からマイクロ波帯までの電磁放射線を操作することができ、よって、光拡散の能動的操作を行える。したがって、本実施形態では発光基板の光学密度を増加させ、発光基板の自発的放出速度を高めるために、SPPsの励起を用いる。また、表面プラズモンの連成(カップリング)効果を用いることができ、発光基板に放射線を当てる際、共振現象が起き、これにより発光基板の発光効率が向上するほどに発光基板の内部量子効率が非常に高まる。
【0028】
発光素子の異なる組成および製造方法、ならびにその性能を説明するために複数の実施例を記載する。
【0029】
実施例1
化学組成Y:Euを有する蛍光体およびガラス粉末(ガラス粉末の化学組成は20NaO−20BaO−30B−30SiOである)を1:4の質量比で混合し、次いで発光材料Y:Euでドープした発光ガラスを製造するために溶融する。マグネトロンスパッタリング装置を用いて、発光ガラスの表面上にAg層を2nmの厚さで蒸着し、次いで発光ガラスとともに、Ag層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、300℃で30分間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0030】
図4による発光スペクトルは、初めは金属層を通過し、次いでY:Euでドープされた発光ガラスを発光させるために励起させる電子銃によって発生させた陰極線を用いて発光素子を照射することによる、発光素子の発光スペクトルを試験した際に得られたものである。図4によるスペクトルは、発光材料が赤色を放つことができることを示す。図4中のカーブ11は、Ag層なしの発光ガラスの発光スペクトルを示し、カーブ12は、本実施形態の金属構造が追加された発光ガラスの発光スペクトルを表す。図4によると、金属層および発光ガラス間に産生した表面プラズモン効果により、金属層なしの発光ガラスと比較すると、金属構造を有する発光ガラスの350nm〜700nmの発光積分強度は、金属層がない発光ガラスより1.3倍であり、発光ガラスの発光特性は向上している。
【0031】
他の実施例は実施例1と同様の発光スペクトルおよび発光特性を有し、この後には触れない。
【0032】
実施例2
化学組成Y:Euを有する蛍光体およびガラス粉末(ガラス粉末の化学組成は20NaO−20BaO−30B−30SiOである)を1:19の質量比で混合し、次いで発光材料Y:Euでドープした発光ガラスを製造するために溶融する。マグネトロンスパッタリング装置を用いて、発光ガラスの表面上にAu層を0.5nmの厚さで蒸着し、次いで発光ガラスとともに、Au層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、200℃で1時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0033】
実施例3
化学組成Y:Euを有する蛍光体およびガラス粉末(ガラス粉末の化学組成は20NaO−20BaO−30B−30SiOである)を7:13の質量比で混合し、次いで発光材料Y:Euでドープした発光ガラスを製造するために溶融する。マグネトロンスパッタリング装置を用いて、発光ガラスの表面上にAl層を200nmの厚さで蒸着し、次いで発光ガラスとともに、Al層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、500℃で5時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0034】
実施例4
1×1cmの両面磨きサファイア基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法を用いて基板上に形成する。厚さ100nmのMg層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにMg層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、650℃で5分間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0035】
実施例5
1×1cmの両面磨きMgO基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをMBE法を用いて基板上に形成する。厚さ1nmのPd層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにPd層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、100℃で3時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0036】
実施例6
1×1cmの両面磨きMgO基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムを噴霧熱分解法を用いて基板上に形成させる。厚さ5nmのPt層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにPt層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、450℃で15分間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0037】
実施例7
1×1cmの両面磨き石英基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法を用いて基板上に形成する。厚さ20nmのFe層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにFe層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、50℃で5時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0038】
実施例8
1×1cmの両面磨き石英基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法を用いて基板上に形成する。厚さ10nmのTi層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにTi層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、150℃で2時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0039】
実施例9
1×1cmの両面磨き石英基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法を用いて基板上に形成する。厚さ50nmのCu層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにCu層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、200℃で2.5時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0040】
実施例10
1×1cmの両面磨き石英基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法を用いて基板上に形成する。厚さ150nmのZn層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにZn層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、350℃で30分間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0041】
実施例11
1×1cmの両面磨き石英基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法を用いて基板上に形成する。厚さ120nmのCr層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにCr層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、250℃で2時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0042】
実施例12
1×1cmの両面磨き石英基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法を用いて基板上に形成する。厚さ40nmのNi層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにNi層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、80℃で4時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0043】
実施例13
1×1cmの両面磨き石英基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法を用いて基板上に形成する。厚さ180nmのCo層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにCo層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、400℃で1時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。
【0044】
実施例14
化学組成Y:Euを有する蛍光体およびガラス粉末(ガラス粉末の化学組成は20NaO−20BaO−30B−30SiOである)を3:17の質量比で混合し、次いで発光材料Y:Euでドープした発光ガラスを製造するために溶融する。マグネトロンスパッタリング装置を用いて、発光ガラスの表面上にAu/Al層を0.5nmの厚さで蒸着し、次いで発光ガラスとともに、Au/Al層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、200℃で1時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。この際、Au/Al層中のAuおよびAlの質量パーセンテージは、それぞれ80%および20%である。
【0045】
実施例15
化学組成Y:Euを有する蛍光体およびガラス粉末(ガラス粉末の化学組成は20NaO−20BaO−30B−30SiOである)を3:7の質量比で混合し、次いで発光材料Y:Euでドープした発光ガラスを製造するために溶融する。マグネトロンスパッタリング装置を用いて、発光ガラスの表面上にAg/Al層を15nmの厚さで蒸着し、次いで発光ガラスとともに、Ag/Al層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、200℃で1時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。この際、Ag/Al層中のAgおよびAlの質量パーセンテージは、それぞれ90%および10%である。
【0046】
実施例16
1×1cmの両面磨き石英基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法を用いて基板上に形成する。厚さ10nmのAg/Al層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにAg/Al層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、150℃で2時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。この際、Ag/Al層中のAgおよびAlの質量パーセンテージは、それぞれ80%および20%である。
【0047】
実施例17
1×1cmの両面磨きMgO基板を選択する。化学組成Y:Euを有する発光フィルムをマグネトロンスパッタリング法を用いて基板上に形成する。厚さ10nmのAu/Al層を電子線蒸着装置を用いて発光フィルム上に蒸着し、基板および発光フィルムとともにAu/Al層を真空度1×10−3Paより低い真空装置に導入し、150℃で2時間焼鈍し、室温まで冷却して本実施形態の発光素子を得る。この際、Au/Al層中のAuおよびAlの質量パーセンテージは、それぞれ90%および10%である。
【0048】
上述した実施例において、金属微細構造を有する金属層14が発光基板13の表面上に形成され、表面プラズモンが金属層14および発光基板13の間に形成されうるように陰極線が照射される。発光基板の蛍光効率が上昇し、発光材料の低効率の問題が克服されるほどに、表面プラズモン効果によって、発光基板13の内部量子効率は非常に高くなり、発光基板の自然放出は非常に高まる。発光素子の発光方法において、金属層14に一旦陰極線が放射されると、表面プラズモンが金属層14および発光基板13の間に形成され、発光効率および信頼性が向上する。発光素子10は、発光基板13および金属層14を含む単純な2層構造を有する。また、発光基板13および金属層14の間に形成された均一な界面が存在し、優れた蛍光均一性および安定性が達成される。蛍光素子を用いた発光方法において、一旦金属層14に陰極線を放射すると、表面プラズモンが金属層14および発光基板13間に形成され、発光基板13の発光効率および信頼性が向上する。
【0049】
発光素子の製造方法の一実施形態において、発光素子は発光基板上に金属層を形成させ、発光基板および金属層を焼鈍させることによって得ることができ、故に該製造方法は単純でコストが安い。電界放出ディスプレーのような超高輝度および高スピードの動きを持つ発光装置に広く適用することができる。
【0050】
構造的特徴および/または方法論的作用に特有の言葉で本発明を記載してきたが、添付の特許請求の範囲で規定された本発明は記載された特定の構造または作用に必ずしも限定されないと理解されるべきである。むしろ、特定の特徴および作用は、特許請求の範囲の発明を実施するサンプル型として開示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光基板;および
発光基板の表面上に形成された、金属微細構造を有する金属層;
を含み、
この際、前記発光基板は、化学組成:Y:Euを有する発光材料を含む、発光素子。
【請求項2】
前記発光基板は、Y:Euの発光材料でドープされた発光ガラスであり、前記発光ガラスの化学組成は、20NaO−20BaO−30B−30SiOである、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記発光基板中のY:Euの発光材料の質量パーセンテージは、5%−35%の範囲である、請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記発光基板が、透明または半透明基板および化学組成Y:Euを有する透明または半透明基板上に形成される発光フィルムを含み、前記金属層が前記発光フィルムの表面上に形成されている、請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
前記金属層の材料が、Au、Ag、Al、Cu、Ti、Fe、Ni、Co、Cr、Pt、Pd、MgおよびZnからなる群から選択される少なくとも一の金属である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記金属層の厚さが、0.5〜200nmの範囲である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項7】
化学組成:Y:Euを有する発光材料を含む、発光基板を準備し;
発光基板の表面上に金属層を形成させ;
金属層の金属微細構造を形成させるために真空中で発光基板および金属層を焼鈍し、次いで、発光素子を形成するために発光基板および金属層を冷却することを含む、
発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記発光基板の製造は、前記発光材料Y:Euおよびガラス粉末を混合し、混合物を形成させるために1000〜1300℃で溶融し;発光材料Y:Euでドープされた発光ガラスを形成させるために室温まで前記混合物を冷却することを含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記発光基板の製造は、基板として透明または半透明基板を選択し、基板上に化学組成Y:Euを有する発光フィルムを形成させることを含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜10のいずれかの製造方法によって発光素子を得て;前記金属層に陰極線を放射し、前記陰極線の放射によって前記金属層および発光基板の間に表面プラズモンを形成させ、次いで発光基板に放射線をあてることを含む、発光素子の発光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−502374(P2013−502374A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525835(P2012−525835)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/CN2009/073515
【国際公開番号】WO2011/022876
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512016928)海洋王照明科技股▲ふん▼有限公司 (14)
【Fターム(参考)】