説明

発光素子

【課題】新規な構造を有し熱的安定性が高いFT半導体に立脚した実用可能な発光素子を提供する。
【解決手段】四面体結合構造をなして母体半導体を構成する原子Aと、格子点サイトの前記原子Aと置換される異種原子Dと、前記異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zとを含み、前記異種原子Dは前記原子Aと比較して+1または−1だけ異なる価電子数を有し、前記異種原子Zは前記異種原子Dとの電荷補償により電子配置が閉殻構造となっている活性層と、前記活性層に電流を通電するn電極およびp電極とを具備したことを特徴とする発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FT半導体(Filled Tetrahedral Semiconductor)に立脚した、発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物質固有と考えられていたエネルギーバンド構造を変調することで、発光や吸収といった物質特有の光学特性を変調するバンドエンジニアリングに関する研究が活発化している。
【0003】
例えば、代表的なバンドエンジニアリング法として、量子ドット(量子細線、超格子)と、歪み効果の2つがよく知られている。量子ドット(量子細線、超格子)は、物質の大きさを3次元的(2次元的、1次元的)に縮小し、電子をその中に閉じ込めることでバンド構造を変調する方法である。歪み効果は、物質に引張り応力または圧縮応力を加えることにより、バンド構造を変調する方法である。
【0004】
一方、これらとは全く異なる原理で半導体のバンド構造を変調するバンドエンジニアリング法として、FT半導体(Filled Tetrahedral Semiconductor)が理論提案されている(非特許文献1、2参照)。
【0005】
FT半導体とは、図1に示すように、ダイヤモンド構造、閃亜鉛鉱構造などの四面体結合構造をなす母体半導体の「格子間サイト」に、閉殻構造の希ガス原子や2原子分子が導入された固体物質を指す。
【0006】
通常の結晶シリコンとFT半導体とのバンド構造の違いについて説明する。図2(a)は結晶シリコンのバンド図、図2(b)はHeをドープしたFT−シリコンのバンド図を示す。図2(b)は仮想的に結晶シリコンの格子間サイトにHe原子を挿入したFT構造のシリコン(以下、FT−シリコンと略す)の第一原理によるバンド計算の結果を示したものである。これらの図から、結晶シリコンのバンド構造と比較してFT−シリコンの伝導帯の形状は大きく変化し、GaAsとよく似た直接的なバンド構造に変調されることが分る。FT半導体の効果の1つは、シリコンに代表される非発光性の間接半導体において、その間接的なバンド構造を直接的なバンド構造に大きく変調し、GaAsをはじめとする光半導体と同等レベルの発光特性(遷移確率)を発現させることである。
【0007】
ところが、上述のRompaらにより理論提案されている希ガス系FT半導体や分子系FT半導体は、挿入物質が結晶内を動き回れるが故に熱的に不安定であり、実用には適さないと考えられている。
【0008】
これを示唆するものとして、シリコンウエハに希ガス原子をイオン注入すると、機構はよくはわからないが、1eV付近のエネルギー領域でフォトルミネッセント発光(PL発光)を生じるとする実験結果が報告されている(非特許文献3参照)。しかし、希ガス原子が注入されたウエハをアニールすると、これもまた理由は判然としないが、PL発光は消失する。PL発光の消失は、希ガス原子とシリコン原子との間に化学的な結合が生じないためアニールによって希ガス原子がシリコン結晶内を動き回り、やがてウエハから離脱することに由来するものと思われる。
【0009】
従って、希ガス系FT半導体や分子系FT半導体は、たとえFT構造を作れたとしても、熱的安定性が低いことが容易に予想される。要するに、FT半導体は実用的な物質系ではないという問題がある。
【非特許文献1】H. W. A. M. Rompa et.al., Phys. Rev. Lett. 52, 675(1984)
【非特許文献2】D. M. Wood et.al., Phys. Review B31, 2570(1985)
【非特許文献3】N. Burger et.al., Phys. Rev. Lett. 52, 1645(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、FT半導体は新しいバンドエンジニアリング法であり、間接半導体に適用することで発光機能を発現させる効果がある。しかしながら、格子間サイトに希ガス原子や2原子分子など閉殻物質を挿入したFT半導体は、閉殻物質と母体半導体との間に化学結合が生じないことから、熱的安定性が低く、実用的ではない問題がある。
【0011】
本発明の目的は、新規な構造を有し熱的安定性が高いFT半導体に立脚した実用可能な発光素子および蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る発光素子は、四面体結合構造をなして母体半導体を構成する原子Aと、格子点サイトの前記原子Aと置換される異種原子Dと、前記異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zとを含み、前記異種原子Dは前記原子Aと比較して+1だけ異なる価電子数を有し、前記異種原子Zは前記異種原子Dとの電荷補償により電子配置が閉殻構造となっている活性層と、前記活性層に電流を通電するn電極およびp電極とを具備したことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様に係る発光素子は、四面体結合構造をなして母体半導体を構成する原子Aと、格子点サイトの前記原子Aと置換される異種原子Dと、前記異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zとを含み、前記異種原子Dは前記原子Aと比較して−1だけ異なる価電子数を有し、前記異種原子Zは前記異種原子Dとの電荷補償により電子配置が閉殻構造となっている活性層と、前記活性層に電流を通電するn電極およびp電極とを具備したことを特徴とする。
【0014】
本発明の他の態様に係る蛍光体は、四面体結合構造をなして母体半導体を構成する原子Aと、格子点サイトの前記原子Aと置換される異種原子Dと、前記異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zとを含み、前記異種原子Dは前記原子Aと比較して+1だけ異なる価電子数を有し、前記異種原子Zは前記異種原子Dとの電荷補償により電子配置が閉殻構造となっていることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様に係る蛍光体は、四面体結合構造をなして母体半導体を構成する原子Aと、格子点サイトの前記原子Aと置換される異種原子Dと、前記異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zとを含み、前記異種原子Dは前記原子Aと比較して−1だけ異なる価電子数を有し、前記異種原子Zは前記異種原子Dとの電荷補償により電子配置が閉殻構造となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本来は非発光性である母体半導体の格子点サイトおよび格子間サイトにそれぞれ異種原子Dおよび異種原子Zのペアを導入したことにより、熱的安定性が高く、光半導体と同等レベルの強く効率よい発光を可能にする発光素子および蛍光体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の中核をなすFT半導体(Filled Tetrahedral Semiconductor)の作用を詳細に説明する。
【0018】
以下では、まず、(1)シリコンなどの間接半導体がなぜ間接的なバンド構造を持つのか、および(2)なぜ非発光性なのか、その理由を説明する。次に(3)他のバンドエンジニアリング法と比較してFT半導体(希ガス系と分子系FT半導体)の特徴を説明し、(4)その原理を簡潔に説明する。そして、本発明の骨子である、(5)新規なFT半導体、すなわちペンダント型FT半導体について説明する。
【0019】
(1)間接半導体のバンド構造
図3に、シリコンのバンド構造を示す。シリコン以外の間接半導体も、図3に類似した形状のバンド構造を示すことがよく知られている。そもそもシリコンが間接半導体となる主たる理由は、構成原子間の結合長dが僅かに短いためである。Γ点における伝導帯と価電子帯のエネルギー差ΔEはdの関数であり、近似的にΔE∝1/d2で表される。従って、dが長くなるとΔEが急速に小さくなり、直接バンド構造をとるよう変化する。
【0020】
図3には、通常格子のバンド構造と合わせて、歪み効果によって格子を結晶軸<111>方向に引張り、Si−Si結合長を10%増加させた仮想的な格子のバンド構造の計算結果を示す。両者は価電子帯上端が揃うよう図示している。
【0021】
図3に示すように、結合長が伸びると、X点に大きな変化は見られないが、Γ点では伝導帯が大きく落ち込み、GaAsのそれと類似した直接的なバンド構造に変化することが分る。ΔEが小さくなる理由は、大まかに言えば、結合が伸びて電子間の反発エネルギーが減ることにより、通常格子では上方にあった伝導帯(s軌道)が下がり、価電子帯(p軌道)に近づくためである。
【0022】
(2)間接半導体の光学特性
間接半導体は、電気双極子遷移が光学禁制であり、本質的に非発光性である。対照的に、GaAsなど光半導体は電気双極子遷移に由来する強いバンド間発光が生じる。両者の相違は、以下に述べる2つの選択則を満たすかどうかに主な原因がある。
【0023】
その1つは波数の選択則であり、特定波数でエネルギーギャップが最小となることである。もう1つは波動関数の対称性に関する選択則であり、ギャップ最小となる波数において、伝導帯と価電子帯のうち一方が偶関数、もう一方が奇関数となることである。
【0024】
対称性の選択側について補足すると、2準位間の発光や光吸収の強さは<上準位|遷移双極子モーメントμ|下準位>で与えられ、この2準位が原子軌道近似でs軌道(偶関数)およびp軌道(奇関数)で表される半導体では、μは奇関数であることから、<s|μ|p>=∫偶・奇・奇dr≠0であり、光学許容となる。これに対し、2準位がともにp軌道で表される半導体では、<p|μ|p>=∫奇・奇・奇dr=0であり、光学禁制となる。
【0025】
光半導体は、Γ点でギャップ最小となり波数の選択則を満足する。光半導体は、伝導帯と価電子帯の波動関数がそれぞれs軌道とp軌道で表されるため、対称性の選択則も満たす。
【0026】
一方、間接半導体は、ギャップ最小となる波数が伝導帯と価電子帯で異なることから波数の選択則を満足せず、しかも伝導帯と価電子帯の波動関数がともにp軌道であることから対称性の選択則も満足しない。このために光学禁制である。
【0027】
(3)FT半導体
はじめに述べたように、FT半導体は、1984年にGaAsの伝導帯構造を計算する過程で発見された理論上の物質である。発見者であるRompaらは、バンド計算によって、GaAsの格子間サイトにHeを導入したFT−GaAsにおいて、X点エネルギーが上昇することを見出した。
【0028】
本発明は、X点のエネルギー制御が可能なFT半導体構造をシリコンなどの間接半導体に適用し、本来は発光し難い間接半導体に発光機能を付与するものである。
【0029】
ここで、バンドエンジニアリング法としてのFT半導体の利点を、量子ドット、および歪み効果(引張り効果)と比較して説明する。図4(a)はシリコン量子ドットのバンド図、図4(b)は10%の等方引張りを与えたシリコンのバンド図、図4(c)はFT−シリコンのバンド図をそれぞれ示す。
【0030】
量子ドットは、3次元閉じ込め効果により、X点近傍の伝導帯(p軌道)をΓ点に広げ、Γ点でギャップ最小となるようにし、直接的なバンド構造に変化させる。しかしながら、閉じ込め効果を受けても、伝導帯と価電子帯の波動関数に基本的に変化はなく、ともにp軌道のままであり、対称性の選択則は満足しない。要するに、間接半導体の量子ドットの光学特性は、それ単独の効果では強い発光が期待できない擬似的電気双極子遷移である。
【0031】
歪み効果(引張り効果)は、結合長を10%程度増加させることで、Γ点の上方にあった伝導帯(s軌道)を下げ、直接的なバンド構造に変調する。得られるバンド構造は、光半導体のそれと大変よく似ている。バンド間遷移は光半導体と同様な電気双極子遷移であり、効率よく発光することが予測される。しかしながら、10%オーダーで結合長を引張ることは困難である可能性が高い。
【0032】
これらの方法に対し、FT半導体は、X点近傍の伝導帯(p軌道)を上げ、Γ点の伝導帯(s軌道)を下げることで、光半導体や歪み効果の場合とよく似た直接的なバンド構造を実現する。バンド間遷移は電気双極子遷移であり、効率よく発光することが予測される。
【0033】
(4)FT半導体の発光機構の原理
図5(a)、(b)、(c)は、それぞれ、シリコンのダイヤモンド構造におけるX点伝導帯(Xc)、Γ点伝導帯(Γc)、Γ点価電子帯(Γv)の各々について実空間上での電子状態を示す図である。
【0034】
図5(a)に示すように、結晶軸<111>方向で見ると、原子座標(0,0,0)、(1/4,1/4,1/4)にシリコン原子が位置し、Si−Si結合で結ばれている。原子座標(2/4,2/4,2/4)、(3/4,3/4,3/4)には、テトラヘドラルサイトと呼ばれる格子間サイトが並ぶ。四面体結合構造では、結晶軸<111>に沿って、原子が2個並び、格子間サイトが2個並び、再び原子が2個並ぶという、比較的隙間の多い結晶構造をとる。格子間サイトには原子が存在しないが、シリコン原子の反結合性p軌道が格子間サイト方向に向かって広がるため、格子間サイトにはこの反結合性p軌道の状態が存在する。Xcは、この格子間サイトの電子状態を表している。
【0035】
FT半導体では、格子間サイトの空間に閉殻構造の希ガス原子(または分子)を導入することでFT構造を実現している。そうすることで、既述の図4(c)に示したように、格子間サイトの電子が排除されてXcエネルギーが上昇し、Γc(反結合性s軌道)とXcのエネルギーが相対的に逆転し、間接的なバンド構造が直接的な構造に変換される。図6(a)に、格子間サイトに希ガス原子を導入することにより、Xcエネルギーが上昇することを示す。この現象は、図6(b)および(c)に示すように、たとえて言えば、水槽に物質を入れると水面が上昇することと類似した現象だと考えられている。
【0036】
格子間に原子が存在すると、バンドギャップ内に深い準位や欠陥準位が形成される場合がある。しかしながら、FT構造ではワイドギャップを有する閉殻構造の原子(または分子)が挿入されるため、原理的にそのような準位は形成されない。
【0037】
(5)新規なペンダント型FT半導体
図7に、本発明の一実施形態に係る新規なFT半導体の原子の結合状態を示す。このFT半導体をペンダント型FT半導体と呼ぶ。本発明の骨子であるペンダント型FT半導体は、四面体結合構造をなして母体半導体を構成する原子Aと、格子点サイトの原子Aと置換される異種原子Dと、異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zとを含む。異種原子Dは原子Aと比較して+1または−1だけ異なる価電子数を有し、格子点サイトの原子Aと置換されて四面体結合構造をとってイオン化する。異種原子Zは異種原子Dとの電荷補償により電子配置が閉殻構造をとってイオン化する。このため、異種原子Dと異種原子Zとの間にイオン結合が生じ、異種原子Dは異種原子Zをピン止めする作用を示す。こうしたペンダント型FT半導体は、希ガス系や分子系FT半導体で問題となる熱的安定性を改善することができる。これは、異種原子Dと異種原子Zを引き離そうとすると、両者の間に静電相互作用が働き、両者の間のイオン結合を保とうとする力が生じるためである。
【0038】
図7は、母体半導体を構成する原子Aがシリコン、格子点サイトの原子Aと置換される異種原子Dがリン(P)、異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zがフッ素(F)であるペンダント型FT半導体を示している。P原子の電子配置は1s22s22p63s23p3であり、F原子の電子配置は1s22s22p5である。この2原子間に電荷補償効果が働き、イオン性のP+−F-結合(PFペア)が形成される。P+イオンは格子点のシリコン原子と置換し、四面体結合構造をとり安定化される。F-イオンは、電子配置がネオン(Ne)と同様の閉殻構造になるため、やはり安定化される。
【0039】
シリコンでペンダント型FT半導体を実現しようする場合、格子点サイトに置換される異種原子Dとして、LSIプロセスで豊富な実績のあるn型またはp型のドーパントをそのまま利用できる。このことは、ペンダント型FT半導体の製造を容易にし、コストを低減させる。
【0040】
本発明の実施形態に係るペンダント型FT半導体でも、希ガス系や分子系FT半導体と同様に、間接半導体に発光機能を与えられるかどうかが重要なポイントになる。図8(a)、(b)および(c)は、異種原子Dとしてリン(P)、異種原子Zとしてフッ素(F)を用いたPFドープFT−Siの、第一原理によるバンド計算の結果を示す。PFペア濃度がバンド構造に与える影響を見積もるため、Si原子数に対してPFペア数が異なるスーパーセルを用いて計算している。具体的には、(a)Si原子64個に対してPFペアゼロ個(PFペア濃度ゼロ。Si原子濃度=5.0×1022/cm3)、(b)Si原子63個に対してPFペア1個(PFペア濃度=7.8×1020/cm3)、(c)Si原子7個に対してPFペア1個(PFペア濃度=6.3×1021/cm3)の3つのケースについて計算している。
【0041】
計算結果を見ると、図8(a)に示した、PFペア濃度がゼロの場合には、Xc近傍が伝導帯最下端となり結晶シリコン特有の間接的なバンド構造を示す。図8(b)に示した、ペア濃度が7.8×1020/cm3の場合、Xcは殆ど変化しないが、Γcが大きく下がり伝導帯最下端となり、物質内部に局所的に直接的なバンド構造が出現する。図8(c)に示した、ペア濃度が6.3×1021/cm3の場合、Xcが大きく上昇し、物質全体が直接的なバンド構造に変化する。これらの計算結果は、PFペアが低濃度の場合にはペアが導入された場所が局所的に発光し、PFペアが高濃度の場合には物質全体が発光する、ということを示している。
【0042】
もう少し具体的に言えば、PFペア濃度が7.8×1020/cm3以下である場合、例えば結晶中に1ペアしか存在しない場合においても、ペアが導入された箇所の伝導帯最下端は局所的に反結合性s軌道に変調される。価電子帯は結合性p軌道であることから、先の(2)節で述べたように、その箇所での発光の強さは<s|μ|p>≠0で与えられる。従って、7.8×1020/cm3以下の濃度の場合、発光機能を有するという訳である。
【0043】
また、PFペア濃度が6.3×1021/cm3以上である場合、ペアが導入された箇所はやはり反結合性s軌道に変調され、しかも互いの軌道が実空間上で近接するため重なり合ってバンド(Γc)となる。発光の強さはやはり<s|μ|p>≠0で与えられるため、6.3×1021/cm3以上の場合においても発光機能を有する。
【0044】
また、7.8×1020/cm3から6.3×1021/cm3までの中間的濃度の場合、ペアが導入された箇所の伝導帯最下端はやはり反結合性s軌道に変調される。この濃度領域では、濃度増加に伴い、s軌道は徐々にバンドを組むようになる。発光の強さはやはり<s|μ|p>≠0で与えられるため、この中間的な濃度領域においても、他の濃度領域と同様に発光機能を有する。
【0045】
要するに、ペンダント型FT半導体は、DZペア濃度の多少には依らず、希ガス系や分子系FT半導体と同様に、間接半導体に発光機能を与える効果を有すると予測される。
【0046】
本発明の実施形態において、ペンダント型FT半導体に含まれる母体半導体(構成原子A)、異種原子Dおよび異種原子Zの組み合わせとしては、以下の例が挙げられる。
【0047】
(1)母体半導体をIVb単体半導体およびIVb−IVb化合物半導体からなる群より選択し、異種原子DをVa元素およびVb元素からなる群より選択し、異種原子ZをVIIb元素からなる群より選択する。
【0048】
(2)母体半導体をIVb単体半導体およびIVb−IVb化合物半導体からなる群より選択し、異種原子DをIIIa元素およびIIIb元素からなる群より選択し、異種原子ZをIa元素およびIb元素からなる群より選択する。
【0049】
(3)母体半導体をIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択し、異種原子DをIVa元素およびIVb元素からなる群より選択してIIIbの原子Aと置換し、異種原子ZをVIIb元素からなる群より選択する。
【0050】
(4)母体半導体をIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択し、異種原子DをIIa元素およびIIb元素からなる群より選択してIIIbの原子Aと置換し、異種原子ZをIa元素およびIb元素からなる群より選択する。
【0051】
(5)母体半導体をIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択し、異種原子DをVIa元素およびVIb元素からなる群より選択してVbの原子Aと置換し、異種原子ZをVIIb元素からなる群より選択する。
【0052】
(6)母体半導体をIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択し、異種原子DをIVa元素およびIVb元素からなる群より選択してVbの原子Aと置換し、異種原子ZをIa元素およびIb元素からなる群より選択する。
【0053】
母体半導体の例としては以下のようなものが挙げられる。IVb単体半導体はダイヤモンド、シリコン、およびゲルマニウムからなる群より選択される。IVb−IVb化合物半導体はSiC、GeC、SixGe1-x(0<x<1)、およびSixGeyC1-x-y(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)からなる群より選択される。IIIb−Vb化合物半導体はBN、BP、AlP、AlAs、AlSb、およびGaPからなる群より選択される。
【0054】
また、異種原子Dおよび異種原子Zの例としては以下のようなものが挙げられる。Ia元素はLi、Na、K、Rb、およびCsからなる群より選択される。IIa元素はBe、Mg、Ca、Sr、およびBaからなる群より選択される。IIIa元素はSc、Y、La、およびLuからなる群より選択される。IVa元素はTi、Zr、およびHfからなる群より選択される。Va元素はV、Nb、およびTaからなる群より選択される。VIa元素はCr、Mo、およびWからなる群より選択される。Ib元素はCu、Ag、およびAuからなる群より選択される。IIb元素はZn、Cd、およびHgからなる群より選択される。IIIb元素はB、Al、Ga、In、およびTlからなる群より選択される。IVb元素はC、Si、Ge、Sn、およびPbからなる群より選択される。Vb元素はN、P、As、Sb、およびBiからなる群より選択される。VIb元素はO、S、Se、およびTeからなる群より選択される。VIIb元素はF、Cl、Br、およびIからなる群より選択される。
【0055】
本発明の実施形態に係る発光素子は、FT構造を有する活性層と、活性層を励起するためのn電極およびp電極とを有する。FT構造を有する活性層に対するn電極およびp電極の配置は特に限定されない。図9(a)および(b)は、それぞれ本発明の実施形態に係るシリコン発光素子の断面図を示す。図9(a)は縦型通電の発光素子、図9(b)は横型通電の発光素子である。
【0056】
図9(a)の縦型通電の発光素子では、n+領域1の上に、FT構造を有する活性層2および絶縁膜3が形成され、さらにこれらの上にp+領域4が形成されている。すなわち、活性層2の上下にそれぞれn+領域1およびp+領域4が接している。n+領域1には図示しないn電極が接続され、p+領域4には図示しないp電極が接続される。この発光素子では縦方向に通電して、n+領域1から活性層2へ電子を注入し、p+領域4から活性層2へ正孔を注入することで、直接的なバンド構造のFT構造を有する活性層2において電子と正孔を再結合発光させる。
【0057】
図9(b)の横型通電の発光素子では、半絶縁性のシリコン基板11内に埋め込み酸化膜12が形成され、その上に同一面内においてFT構造を有する活性層13を挟んでn+領域14およびp+領域15が形成されている。n+領域14には図示しないn電極が接続され、p+領域15には図示しないp電極が接続される。この発光素子では横方向に通電して、n+領域14から活性層13へ電子を注入し、p+領域15から活性層13へ正孔を注入することで、直接的なバンド構造のFT構造を有する活性層13において電子と正孔を再結合発光させる。
【0058】
なお、縦型通電および横型通電のいずれの発光素子でも、埋め込み酸化膜を設けて電流リークを防いでいるが、素子構成、基板抵抗、回路など、いずれかの手段で電流リークを防げる場合には、埋め込み酸化膜はなくてもよい。
【0059】
図9(a)および(b)は発光素子の基本構造を示したものであり、具体的な発光素子については種々の構造が考えられる。たとえば、本発明の実施形態に係る発光素子は、端面光取り出しでもよいし、表面光取り出しでもよい。表面光取り出しの場合には、表面に透明電極を用いてもよい。活性層を挟んで、対をなすように低反射率の鏡面と高反射率の鏡面で形成される光共振器を設け、レーザー発振させてもよい。これらの構造を適宜組み合わせることができる。また、同一基板上に複数の発光素子を集積化して発光素子アレイを作製してもよい。同一基板上に発光素子とトランジスタを集積化して光電気素子アレイを作製してもよい。同一基板上に発光素子と受光素子を集積化して受発光素子アレイを作製してもよい。同一基板上に発光素子と受光素子とこれらを結ぶ導波路を集積化して光素子アレイを作製してもよい。これらの変形例については後により詳細に説明する。
【0060】
次に、図10(a)、(b)、(c)および(d)を参照して、FT構造を有する活性層の形成方法について説明する。ここでは、PFドープFT−Siからなる活性層を形成する場合について説明する。
【0061】
図10(a)に示すようにSiウエハ21を用意し、図10(b)に示すようにSiウエハ21の所定のドープ領域22に異種原子Dとしてリン(P)をドープする。リン(P)はn型ドーパントとして作用する。
【0062】
図10(c)に示すようにPドープされたSiウエハ21の所定のドープ領域22に異種原子Zとしてフッ素イオン(F+)をイオン注入する。このイオン注入工程では、エネルギー、ドーズ量、基板面方位、チルト角、基板温度などを最適化する。F+イオンは元来活性なイオン種であるが、P原子がもつ余分な電子や、基板を介してグランドから供給された電子を受け取ってF-イオンとなり、ネオン(Ne)原子と同様の閉核構造となるため、化学的に不活性化される。
【0063】
図10(d)の工程では、アニールを行いイオン注入で乱された格子を再結晶化してFT−Siからなる活性層23を形成する。このアニール工程では、アニール温度、時間、雰囲気などを調整することで、格子点のシリコン原子がP原子で置換され、格子間にF原子が挿入されるよう制御できる。P原子は格子点に位置するが、F原子に電子を奪われるため、電気的には不活性となり高抵抗化する。P原子とF原子はイオン結合で結びつけられ、アニールによる温度上昇によっても解離せず、ペアリング状態を保つ。
【0064】
さらに、その他の工程を実施することにより、図9(a)または(b)に示したような発光素子を作製することができる。
【0065】
以上のように、イオン注入とアニールを組み合わせた方法により、母体半導体中にFT構造を有する活性層を形成することができる。なお、熱拡散とアニールを組み合わせて、FT構造を有する活性層を形成してもよい。これら以外の方法を用いてFT構造を有する活性層を形成してもよい。
【0066】
PFペアのように、格子点の異種原子Dと格子間の異種原子Zが結びつくと、母体半導体の格子振動とは別の固有振動モードが生じる。このため、赤外分光またはラマン分光から、FT構造を直接的に解析することが可能になる。PFペアを例に挙げると、基準振動計算から、波数150〜200cm-1付近に振動モードが現れる。このように、振動モードの評価は、FT構造の有無を調べる有力な手段の1つである。
【0067】
DZペアの存在を知る間接的かつ簡便な方法として、電気抵抗やホール測定などの電気測定を用いることもできる。格子点の異種原子Dとしてn型またはp型ドーパントを用いた場合、格子間の異種原子Zをドーピングする前の基板はn型またはp型となり低抵抗である。ここで、異種原子Dと異種原子Zをペアリングさせると、異種原子Zと異種原子Dとの電荷補償により、フリーキャリアが減って基板は高抵抗化する。このため、異種原子Zのドーピング前後における電気抵抗やキャリア濃度の変化を調べることでDZペアが形成できたか否かを知ることができる。
【0068】
また、本発明に係るペンダント型FT半導体を粉末にして蛍光体として用いることもできる。蛍光体を構成する母体半導体(構成原子A)、異種原子Dおよび異種原子Zの組み合わせは、活性層に関連して上記で説明したとおりである。
【0069】
以下、本発明のさらに具体的な実施形態を説明する。
【0070】
(第1の実施形態)
図9(a)に示した構造を有する、縦型通電のシリコン発光素子について説明する。母体半導体としてシリコン、格子点サイトに置換される異種原子DとしてP原子、格子間サイトに挿入される異種原子ZとしてF原子を用い、PFドープFT−Si活性層を形成する。PFペア濃度は2.5×1020/cm3である。P原子とF原子の濃度はSIMSにより確認している。
【0071】
この活性層中にペンダント型FT構造のPFペアが形成できているかどうかは、PFペア固有の振動モードを調べることが有効であり、活性層の顕微分光により検出できる。PFペア形成を簡便にチェックする方法としては、本実施形態に係る発光素子とは別に、高抵抗基板表面に活性層と同一組成のPFドープ領域およびP単独ドープ領域を作り、両者のシート抵抗あるいはキャリア濃度を比較する方法がある。PFペアが形成されると電荷補償が生じるため、PFドープ領域はP単独ドープ領域と比べて高抵抗化し、キャリア濃度は減少する。
【0072】
活性層のPFドープFT−Siを光励起すると、結晶シリコンのバンドギャップに対応する波長領域でPL発光が生じる。図8(a)および(b)のバンド計算結果からわかるように、PFドープFT−Siのバンドギャップは結晶シリコンのそれとほぼ等しい。したがって、PL発光波長は先の計算結果から期待される発光波長と矛盾しない。このことから、活性層にはFT−Siが形成され、直接的なバンド構造に変化しているものと考えられる。
【0073】
この発光素子を電流駆動し、p+領域から活性層へ正孔を注入し、n+領域から活性層へ電子を注入することで、電流励起の再結合発光を生じさせることができる。
【0074】
以上のことから、間接半導体に発光機能を付与するバンドエンジニアリング法として、エネルギーバンドを直接的な構造に変調するペンダント型FT半導体は大変有効な方法であることがわかる。
【0075】
(比較例)
活性層中の格子間サイトに挿入する異種原子Zとして、F原子の代わりにB原子を用いた以外は、第1の実施形態と全く同様の構成の素子について説明する。B濃度は、第1の実施形態におけるF濃度と一致させて、2.5×1020/cm3とする。
【0076】
比較例の素子は電流を注入しても非発光性である。比較例の素子は、活性層を光励起しても非発光性である。
【0077】
非発光性となる理由は、結晶中におけるB原子の位置に原因がある。よく知られているように、B原子は典型的なp型ドーパントであり、通常、格子間サイトではなく、格子点サイトを置換する。このため、B原子とP原子は電荷補償して活性層は高抵抗化するが、ペンダント型FT構造は形成されない。
【0078】
以上のことから、ペンダント型FT構造を形成し、かつ母体半導体に直接的なバンド構造を誘起するには、格子点サイトに置換される異種原子と格子間サイトに挿入される異種原子の組み合わせを十分考慮した上で、異種原子を選択することが必要である。
【0079】
(第2の実施形態)
異種原子Dとしてp型ドーパントであるB原子を用い、異種原子ZとしてK原子を用いた以外は、第1の実施形態と全く同様の構成の発光素子を作製する。SIMSから求めたB濃度とK濃度はともに5×1020/cm3であり、BKペア濃度は5×1020/cm3と見積もられる。
【0080】
この発光素子を光励起すると、結晶シリコンのバンドギャップ近傍の波長でPL発光が生じる。この素子を電流駆動すると、活性層のFT構造領域から電流注入発光を生じさせることが可能である。発光波長はやはり結晶シリコンのバンドギャップ近傍の波長であり、PL発光スペクトルと似た形状の発光スペクトルを示す。
【0081】
本実施形態に示したように、異種原子Dと異種原子ZがIIIb元素とIa元素の組み合わせである場合にも、間接半導体に発光機能を与えることができる。
【0082】
(第3の実施形態)
母体半導体、格子点の異種原子D、格子間の異種原子Zとして、種々の材料を用いて、第1の実施形態と同様にして発光素子を作製する。
【0083】
表1は、電流注入発光が得られる発光素子について、(1)活性層の母体半導体、(2)異種原子Dによって置換される格子点サイト、(3)格子点の異種原子D、(4)格子間の異種原子Z、(5)Z濃度から見積もったDZペア濃度、(6)電流注入発光のピーク波長を示す。
【0084】
表1に示されるように、化合物系の間接半導体においても、ペンダント型FT構造を導入することで、電流注入発光が生じる。
【表1】

【0085】
(第4の実施形態)
図9(b)に示した構造を有する、横型通電のシリコン発光素子について説明する。母体半導体としてシリコン、格子点サイトに置換される異種原子DとしてP原子、格子間サイトに挿入される異種原子ZとしてF原子を用い、PFドープFT−Si活性層を形成する。PFペア濃度は4.6×1020/cm3である。P原子とF原子の濃度はSIMSにより確認する。
【0086】
この活性層中にペンダント型FT構造のPFペアが形成されているかどうかは、PFペア固有の振動モードを調べることが有効である。また、簡便には抵抗値やキャリア濃度からも知ることができる。
【0087】
この発光素子を電流駆動すると、活性層のFT構造領域から電流注入発光を生じさせることができる。発光は結晶シリコンのバンドギャップ近傍で生じる。
【0088】
このように、縦型通電の場合と同様、横型通電によっても、FT構造を導入した発光素子に電流注入発光を生じさせることができる。
【0089】
(第5の実施形態)
図11(a)および(b)に本実施形態に係る端面発光型のシリコン発光素子の断面図および斜視図をそれぞれ示す。半絶縁性のシリコン基板31内に埋め込み酸化膜32が形成され、その上にPドープのn+領域33、FT−Siからなる活性層34、Bドープのp+領域35が形成されている。活性層34は、格子点の異種原子DとしてP原子、格子間の異種原子ZとしてF原子をドーピングしたPFドープFT−Siである。PFペア濃度は約3×1020/cm3である。p+領域35、活性層34およびn+領域33の一部がエッチングされ、n+領域33に接続されるn電極36と、p+領域35に接続されるp電極37が形成されている。n電極36およびp電極37はいずれもNiシリサイド/Auからなる。図11(b)に示すように、この発光素子の一方の端面には無反射膜NRがコートされ、もう一方の端面には反射膜Rがコートされている。この構造では無反射膜Rをコートした端面から効率よく電流注入発光を放射させることができる。
【0090】
この発光素子を電流駆動すると、電流注入発光が生じる。図12に、電流−電圧−発光強度特性を示す。
【0091】
このように、FT構造を導入した端面発光型のシリコン発光素子を作製し、電流注入発光が生じさせることができる。
【0092】
(第6の実施形態)
図13(a)および(b)に本実施形態に係る表面発光型のシリコン発光素子の断面図および斜視図をそれぞれ示す。半絶縁性のシリコン基板41内に埋め込み酸化膜42が形成され、その上にPドープのn+領域43、FT−Siからなる活性層44が形成されている。活性層44は、格子点の異種原子DとしてP原子、格子間の異種原子ZとしてF原子をドーピングしたPFドープFT−Siである。PFペア濃度は約7×1020/cm3である。活性層44上に絶縁層45およびBドープのp+領域46が形成されている。p+領域46、絶縁層45、活性層44およびn+領域43の一部がエッチングされ、n+領域43に接続されるn電極47と、p+領域46に接続されるp電極48が形成されている。p電極48は絶縁層45の上方に配置される。n電極47およびp電極48はいずれもNiシリサイド/Auからなる。本実施例の発光素子では、EL発光をp+領域46を介して表面から取り出す。このため、表面から見て、活性層44がp電極48で隠されないように、活性層44とp電極48との重なりを小さくする(ゼロに近くする)ように設計されている。表面のp+領域46上には無反射膜49が形成され、基板41の裏面には反射膜50が形成されている。両端面には反射膜がコートされている。この構造では、表面側の無反射膜49から効率よく電流注入発光を放射させることができる。
【0093】
この発光素子を電流駆動すると、FT−Siからなる活性層44において電子と正孔が再結合し、電流注入発光が生じる。図14に、電流−電圧−発光強度特性を示す。
【0094】
このように、FT構造を導入した表面発光型のシリコン発光素子を作製し、電流注入発光が生じさせることができる。
【0095】
(第7の実施形態)
図15(a)および(b)に本実施形態に係る表面発光型のシリコン発光素子の断面図および斜視図をそれぞれ示す。この発光素子は、第6の実施形態の発光素子における無反射膜49の代わりに、補助電極51および透明電極52を形成したものである。
【0096】
この発光素子を電流駆動すると、FT−Siからなる活性層44において電子と正孔が再結合し、電流注入発光が生じる。図16に、電流−電圧−発光強度特性を示す。
【0097】
このように、FT構造を導入するとともに透明電極を用いて表面発光型のシリコン発光素子を作製し、電流注入発光が生じさせることができる。
【0098】
(第8の実施形態)
図17(a)および(b)に本実施形態に係る端面発光型のレーザーダイオード(以下、LD素子という)の断面図および斜視図をそれぞれ示す。このLD素子は、リッジ導波路構造を持つ端面発光素子である。半絶縁性のシリコン基板61内に埋め込み酸化膜62が形成され、その上にPドープのn+領域63、FT−Siからなる活性層64、Bドープのp+領域65が形成されている。活性層64は、格子点の異種原子DとしてP原子、格子間の異種原子ZとしてF原子をドーピングしたPFドープFT−Siである。PFペア濃度は約1×1021/cm3である。p+領域65、活性層64およびn+領域63の一部がエッチングされ、n+領域63に接続されるn電極66と、p+領域65に接続されるp電極67が形成されている。さらに、p電極67とp+領域65の一部がエッチングされている。n電極66およびp電極67はいずれもNiシリサイド/Auからなる。図17(b)に示すように、このLD素子の一方の端面には低反射率の誘電体多層膜ミラーLRが設けられ、もう一方の端面には高反射率の誘電体多層膜ミラーHRが設けられている。
【0099】
このLD素子を電流駆動すると、端面からレーザー光を発振させることができる。図18に、電流−発光強度特性を示す。図示していないが、電流注入で生じる発光スペクトルを調べると、閾値電流以下ではスペクトルがブロードであるが、閾値電流以上ではスペクトルが先鋭化して単色化する。閾値電流以上では、連続的なレーザー発振を生じさせることが可能なことを示している。
【0100】
活性層となるFT半導体材料としては、上で説明したものの他に、種々の材料を用いることができる。一例として、母体半導体であるSiに対し、異種原子DとしてB原子、異種原子ZとしてK原子を用いることができる。その他、既述した材料の組み合わせを用いることができる。
【0101】
(第9の実施形態)
図19(a)および(b)に本実施形態に係る表面発光型のLD素子の断面図および斜視図をそれぞれ示す。半絶縁性のシリコン基板71内に埋め込み酸化膜72が形成され、その上にPドープのn+領域73、FT−Siからなる活性層74が形成されている。活性層74は、格子点の異種原子DとしてP原子、格子間の異種原子ZとしてF原子をドーピングしたPFドープFT−Siである。PFペア濃度は約7×1020/cm3である。活性層74上に絶縁層75およびBドープのp+領域76が形成されている。p+領域76、絶縁層75、活性層74およびn+領域73の一部がエッチングされ、n+領域73に接続されるn電極77と、p+領域76に接続されるp電極78が形成されている。n電極77およびp電極78はいずれもNiシリサイド/Auからなる。p電極78の一部がエッチングされ、低反射率の誘電体多層膜ミラー79が形成されている。低反射率の誘電体多層膜ミラー79に対向する基板71の裏面には高反射率の誘電体多層膜ミラー80が形成されている。
【0102】
このLD素子を電流駆動すると、表面からレーザー光を発振させることができる。図20に、電流−発光強度特性を示す。図20の閾値電流以上で連続的なレーザー発振を生じさせることができる。
【0103】
(第10の実施形態)
図21に本実施形態の光電気素子アレイを示す。この光電気素子アレイは、同一基板上に、発光素子と、発光素子の光出力を変調するスイッチング素子(MOSトランジスタ)とが集積化されたものである。発光素子は第9の実施形態に示したものと同様の構造を有する表面発光LDである。一方、基板71内に形成された埋め込み酸化膜72上にはpウェル領域81、n+型ソース、ドレイン領域82、83が形成され、これらの間にゲート絶縁膜84を介してゲート電極85が形成されている。ソース、ドレイン領域82、83上には、それぞれソース、ドレイン電極86、87が形成されている。そして、LD素子のn電極77とMOSトランジスタのドレイン電極87は配線88により接続されている。
【0104】
図22にトランジスタに入力した変調信号(電気信号)とLD素子からの出力光の応答を示す。図22からわかるように、10GHzの高速変調信号に対して、出力光も同じく10GHzで変調されている。このことから、本実施形態の光電気素子アレイでは高速直接変調が可能なことがわかる。従来はLD素子の出力を符号化するには高価な光変調素子が必要であったが、本実施形態では光変調素子は不要である。
【0105】
(第11の実施形態)
図23に本実施形態の受発光素子アレイを示す。この受発光素子アレイは、同一基板上に、受光素子と発光素子とが集積化されたものである。この受発光素子アレイは、受光した光信号を処理し、その結果を新たな光信号として出力する機能を発現する。発光素子は第9の実施形態に示したものと同様の構造を有する表面発光LDである。一方、受光素子はゲルマニウム受光素子である。基板71内に形成された埋め込み酸化膜72上にはn+層91、i層92、p+層93が形成されている。p+層93、i層92、n+層91の一部がエッチングされ、n+層91に接続されるn電極94が形成されている。p+層93上にはp電極95が形成されている。p電極95の一部はエッチングされて無反射層96が形成されている。受光素子と発光素子は配線97によって直列に接続されている。この受発光素子アレイは、入力光信号をそのままの波形で出力するリレー機能を持つ。
【0106】
図24は受光素子に入力した波長850nmの光信号と、LD素子の出力光の応答を示す。図24からわかるように、5GHzで変調された入力信号に対し、同一波形の出力光が得られている。このように、本実施形態の受発光素子アレイでは、高速の信号リレーが可能になる。
【0107】
(第12の実施形態)
図25に本実施形態の発光素子アレイを示す。この発光素子アレイは、画像信号を光出力する目的で、同一基板上に複数個の発光素子が集積化されている。複数の発光素子は第9の実施形態に示したものと同様の構造を有する表面発光LDである。複数の発光素子は、配線99によって接続されている。
【0108】
図26にLD素子アレイに入力した画像信号(電気信号)と、出力画像(光信号)とを示す。図26からわかるように、入力を忠実に再現した出力画像が得られる。
【0109】
(第13の実施形態)
図27に本実施形態の光素子アレイを示す。この光素子アレイは、同一基板上に発光素子と、受光素子と、これらを結ぶ導波路とが集積化されている。この光素子アレイは、光信号を発信し、伝送し、受信することができる。
【0110】
図27に示すように、シリコン基板101上に、発信用の端面発光LD素子110および受信用のゲルマニウム受光素子120が形成されている。これらの中間の領域に酸化膜102が形成され、その上に伝送用のSi導波路130が形成されている。端面発光LD素子110は第8の実施形態に示したものと同様な構造のものを用いている。この図では、n電極66およびp電極67を示している。このLD素子110の近傍の基板101面内にトレンチを掘り、端面を出している。ゲルマニウム受光素子120についてもn電極121およびp電極122を示している。
【0111】
図28にLD素子からの光信号と、受光素子の出力応答を示す。図28からわかるように、50GHzの高速変調信号に対して、出力光も同じく50GHzで変調されている。このように、本実施例の光素子アレイでは、高速光信号伝送が可能なことがわかる。従来はウエハ上に光信号を伝送する光配線ユニットを形成することは技術的に不可能であったが、本実施形態ではそれが可能である。
【0112】
(第14の実施形態)
光源、電子源またはX線源により励起可能な蛍光体について説明する。この蛍光体は、FT半導体を主成分とする粉体状の結晶である。FT半導体は、母体半導体としてシリコンカーバイト(SiC)、異種原子DとしてN原子、異種原子ZとしてF原子を用いた、NFドープFT−SiCである。NF濃度については、9×1017/cm3、1.2×1019/cm3、1.6×1020/cm3の3つの濃度に調整した。
【0113】
NFドープFT−SiCのバンド計算から、バンドギャップは3eV程度と見積もられ、青色発光が生じると予測される。また、バンド間遷移は電気双極子遷移であることから、発光再結合寿命は短く、効率よく強く発光すると予測される。
【0114】
このような蛍光体を紫外線などで光励起すると、青色のPL発光が得られる。図示していないが、NFペア濃度に対するPL発光スペクトルの相対的な発光強度を調べると、NFペア数と発光強度は比例する傾向にある。このことから、NFペアは局在した発光中心として働くものと思われる。
【0115】
蛍光体の材料としては、上で説明したものの他に、種々の材料を用いることができる。例として、母体半導体であるSiCに対し、異種原子DとしてB原子、異種原子ZとしてK原子を用いたものや、母体半導体であるBPに対し、異種原子DとしてO原子、異種原子ZとしてF原子を用いたものが挙げられる。その他、既述した材料の組み合わせを用いることができる。
【0116】
(第15の実施形態)
本実施形態の蛍光体は、母体半導体としてシリコンカーバイト(SiC)、異種原子DとしてAl原子、異種原子ZとしてNa原子を用いた、AlNaドープFT−SiCを含む。AlNa濃度は約5×1020/cm3である。
【0117】
AlNaドープFT−SiCのバンド計算から、バンドギャップは3eV程度と見積もられ、青色発光が生じると予測される。PL発光を調べると、計算予測とほぼ一致する青緑色発光を得ることができる。
【0118】
(第16の実施形態)
母体半導体、格子点の異種原子D、格子間の異種原子Zとして、種々の材料を用いて、第14、第15の実施形態と同様にして蛍光体を得た。
【0119】
表2は、発光が得られる蛍光体について、(1)蛍光体の母体半導体、(2)異種原子Dによって置換される格子点サイト、(3)格子点の異種原子D、(4)格子間の異種原子Z、(5)Z濃度から見積もったDZペア濃度、(6)PL発光波長を示す。
【0120】
表2に示されるように、間接半導体にペンダント型FT構造を導入することにより、効率よくPL発光が生じる。
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】FT半導体の構造を示す図。
【図2】結晶シリコンおよびHeドープFT−シリコンのバンド図。
【図3】等方引張りを導入したシリコンのバンド構造の変化を示すバンド図。
【図4】量子ドット、歪み効果、およびFT半導体のバンド図。
【図5】シリコンのエネルギーバンドのうち、X点伝導帯、Γ点伝導帯、およびΓ点価電子帯の、実空間上での電子状態を説明する図。
【図6】FT構造によるX点伝導帯のエネルギーの変化を説明する模式図。
【図7】ペンダント型FT半導体の構造を示す図。
【図8】PFペア濃度ゼロのシリコン、PFペア濃度7.8×1020/cm3のペンダント型FT−Si、PFペア濃度6.3×1021/cm3のペンダント型FT−Siのバンド図。
【図9】本発明の実施形態に係る縦型通電および横型通電のシリコン発光素子の断面図。
【図10】本発明の実施形態に係るPFドープFT−Siからなる活性層の形成方法を示す断面図。
【図11】本発明の第5の実施形態に係る端面発光型のシリコン発光素子の断面図および斜視図。
【図12】本発明の第5の実施形態に係るシリコン発光素子の電流−電圧−発光強度特性を示す図。
【図13】本発明の第6の実施形態に係る表面発光型のシリコン発光素子の断面図および斜視図。
【図14】本発明の第6の実施形態に係るシリコン発光素子の電流−電圧−発光強度特性を示す図。
【図15】本発明の第7の実施形態に係る表面発光型のシリコン発光素子の断面図および斜視図。
【図16】本発明の第7の実施形態に係るシリコン発光素子の電流−電圧−発光強度特性を示す図。
【図17】本発明の第8の実施形態に係る端面発光型のLD素子の断面図および斜視図。
【図18】本発明の第8の実施形態に係るLD素子の電流−発光強度特性を示す図。
【図19】本発明の第9の実施形態に係る表面発光型のLD素子の断面図および斜視図。
【図20】本発明の第9の実施形態に係るLD素子の電流−発光強度特性を示す図。
【図21】本発明の第10の実施形態に係る光電気素子アレイの断面図。
【図22】本発明の第10の実施形態に係る光電気素子アレイにおける、LD素子の応答特性を示す図。
【図23】本発明の第11の実施形態に係る受発光素子アレイの断面図。
【図24】本発明の第11の実施形態に係る受発光素子アレイにおける、LD素子の応答特性を示す図。
【図25】本発明の第12の実施形態に係る発光素子アレイの断面図。
【図26】本発明の第12の実施形態に係る発光素子アレイにおける、入力画像とLD素子の出力画像を示す図。
【図27】本発明の第13の実施形態に係る光素子アレイの斜視図。
【図28】本発明の第13の実施形態に係る光素子アレイにおける、LD素子からの入力信号に対する受光素子の応答特性を示す図。
【符号の説明】
【0122】
1…n+領域、2…活性層、3…絶縁膜、4…p+領域、11…シリコン基板、12…埋め込み酸化膜、13…活性層、14…n+領域、15…p+領域、21…Siウエハ、22…ドープ領域、23…活性層、31…シリコン基板、32…埋め込み酸化膜、33…n+領域、34…活性層、35…p+領域、36…n電極、37…p電極、41…シリコン基板、42…埋め込み酸化膜、43…n+領域、44…活性層、45…絶縁層、46…p+領域、47…n電極、48…p電極、49…無反射膜、50…反射膜、51…補助電極、52…透明電極、61…シリコン基板、62…埋め込み酸化膜、63…n+領域、64…活性層、65…p+領域、66…n電極、67…p電極、71…シリコン基板、72…埋め込み酸化膜、73…n+領域、74…活性層、75…絶縁層、76…p+領域、77…n電極、78…p電極、79…低反射率の誘電体多層膜ミラー、80…高反射率の誘電体多層膜ミラー、81…pウェル領域、82、83…n+型ソース、ドレイン領域、84…ゲート絶縁膜、85…ゲート電極、86、87…ソース、ドレイン電極、88…配線、91…n+層、92…i層、93…p+層、94…n電極、95…p電極、96…無反射層、97…配線、99…配線、101…シリコン基板、102…酸化膜、110…端面発光LD素子、120…ゲルマニウム受光素子、121…n電極、122…p電極、130…Si導波路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四面体結合構造をなして母体半導体を構成する原子Aと、格子点サイトの前記原子Aと置換される異種原子Dと、前記異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zとを含み、前記異種原子Dは前記原子Aと比較して+1だけ異なる価電子数を有し、前記異種原子Zは前記異種原子Dとの電荷補償により電子配置が閉殻構造となっている活性層と、
前記活性層に電流を通電するn電極およびp電極と
を具備したことを特徴とする発光素子。
【請求項2】
四面体結合構造をなして母体半導体を構成する原子Aと、格子点サイトの前記原子Aと置換される異種原子Dと、前記異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zとを含み、前記異種原子Dは前記原子Aと比較して−1だけ異なる価電子数を有し、前記異種原子Zは前記異種原子Dとの電荷補償により電子配置が閉殻構造となっている活性層と、
前記活性層に電流を通電するn電極およびp電極と
を具備したことを特徴とする発光素子。
【請求項3】
前記母体半導体はIVb単体半導体およびIVb−IVb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはVa元素およびVb元素からなる群より選択され、前記異種原子ZはVIIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記母体半導体はIVb単体半導体およびIVb−IVb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはIIIa元素およびIIIb元素からなる群より選択され、前記異種原子ZはIa元素およびIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項5】
前記母体半導体はIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはIVa元素およびIVb元素からなる群より選択されてIIIbの原子Aと置換され、前記異種原子ZはVIIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記母体半導体はIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはIIa元素およびIIb元素からなる群より選択されてIIIbの原子Aと置換され、前記異種原子ZはIa元素およびIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項7】
前記母体半導体はIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはVIa元素およびVIb元素からなる群より選択されてVbの原子Aと置換され、前記異種原子ZはVIIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
前記母体半導体はIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはIVa元素およびIVb元素からなる群より選択されてVbの原子Aと置換され、前記異種原子ZはIa元素およびIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項9】
さらに、前記活性層に接して前記活性層と前記n電極との間に設けられたn層と、前記活性層に接して前記活性層と前記p電極との間に設けられたp層とを有し、前記n層、前記活性層および前記p層は積層されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項10】
前記活性層に接して前記活性層と前記n電極との間に設けられたn層と、前記活性層に接して前記活性層と前記p電極との間に設けられたp層とを有し、前記n層、前記活性層および前記p層は面内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項11】
前記活性層の一方の端面に設けられた無反射膜と他方の端面に設けられた反射膜とを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項12】
前記n電極またはp電極は表面電極として配置され、前記活性層の上方に表面電極に覆われていない部分に設けられた無反射膜と、前記無反射層に対向して活性層の下方に設けられた反射膜とを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項13】
前記n電極またはp電極は表面電極として配置され、前記表面電極は透光性を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項14】
前記活性層を面内で挟むように対向して設けられた、互いに反射率が異なる一対の鏡面からなる光共振器を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項15】
前記活性層を上下から挟むように対向して設けられた、互いに反射率が異なる一対の鏡面からなる光共振器を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の発光素子。
【請求項16】
同一基板上に、請求項1乃至15に記載の発光素子と、トランジスタとを有することを特徴とする光電気素子アレイ。
【請求項17】
同一基板上に、請求項1乃至15に記載の発光素子と、受光素子とを有することを特徴とする受発光素子アレイ。
【請求項18】
同一基板上に、請求項1乃至15に記載の発光素子を複数有することを特徴とする発光素子アレイ。
【請求項19】
同一基板上に、請求項1乃至15に記載の発光素子と、受光素子と、前記発光素子と前記受光素子とを結ぶ導波路とを有することを特徴とする光素子アレイ。
【請求項20】
四面体結合構造をなして母体半導体を構成する原子Aと、格子点サイトの前記原子Aと置換される異種原子Dと、前記異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zとを含み、前記異種原子Dは前記原子Aと比較して+1だけ異なる価電子数を有し、前記異種原子Zは前記異種原子Dとの電荷補償により電子配置が閉殻構造となっていることを特徴とする蛍光体。
【請求項21】
四面体結合構造をなして母体半導体を構成する原子Aと、格子点サイトの前記原子Aと置換される異種原子Dと、前記異種原子Dに最近接の格子間サイトに挿入される異種原子Zとを含み、前記異種原子Dは前記原子Aと比較して−1だけ異なる価電子数を有し、前記異種原子Zは前記異種原子Dとの電荷補償により電子配置が閉殻構造となっていることを特徴とする蛍光体。
【請求項22】
前記母体半導体はIVb単体半導体およびIVb−IVb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはVa元素およびVb元素からなる群より選択され、前記異種原子ZはVIIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項20に記載の蛍光体。
【請求項23】
前記母体半導体はIVb単体半導体およびIVb−IVb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはIIIa元素およびIIIb元素からなる群より選択され、前記異種原子ZはIa元素およびIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項21に記載の蛍光体。
【請求項24】
前記母体半導体はIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはIVa元素およびIVb元素からなる群より選択されてIIIbの原子Aと置換され、前記異種原子ZはVIIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項20に記載の蛍光体。
【請求項25】
前記母体半導体はIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはIIa元素およびIIb元素からなる群より選択されてIIIbの原子Aと置換され、前記異種原子ZはIa元素およびIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項21に記載の蛍光体。
【請求項26】
前記母体半導体はIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはVIa元素およびVIb元素からなる群より選択されてVbの原子Aと置換され、前記異種原子ZはVIIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項20に記載の蛍光体。
【請求項27】
前記母体半導体はIIIb−Vb化合物半導体からなる群より選択され、前記異種原子DはIVa元素およびIVb元素からなる群より選択されてVbの原子Aと置換され、前記異種原子ZはIa元素およびIb元素からなる群より選択されることを特徴とする請求項21に記載の蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−157749(P2007−157749A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346601(P2005−346601)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】