説明

発光装置、発光素子用蛍光体及びその製造方法

【課題】耐久性に優れ、しかも高品質な出力光を得ることのできる発光装置等を提供する。
【解決手段】発光装置は、発光素子と、発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するよう、発光素子の周囲に配置された蛍光体とを備える発光装置であって、蛍光体が窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなり、かつ蛍光体の表面を、2以上の異なる化合物を含む被覆層を有する。これにより、異なる化合物で被覆して蛍光体の劣化を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子と該発光素子の発する光の波長を変換する蛍光体を備える発光装置並びに発光素子用蛍光体及び該蛍光体の製造方法に関し、例えばLEDやLD等の半導体発光素子と、この半導体発光素子で発光された光の少なくとも一部を吸収すると共に、吸収した光とは異なる波長の光を発光する窒化物系蛍光体やその製造方法、該蛍光体を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子に半導体素子を用いた発光装置は、小型で電力効率が良く鮮やかな色の発光をする。また、半導体素子である発光素子は球切れ等の心配がない。さらに初期駆動特性が優れ、振動やON/OFF点灯の繰り返しに強いという特徴を有する。このような優れた特性を有するため、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子を用いる発光装置は、各種の光源として利用されている。
【0003】
特に、GaN系化合物半導体を利用した高輝度の青色発光のLEDが開発され、その輝度性を活用して白色発光の発光装置が実現されている。この白色発光の発光装置は、青色に発光する発光素子の周りを黄緑色に発光する蛍光物質を含む樹脂で被覆して、白色光を得るというものである。
【0004】
発光素子の光の一部を蛍光体により波長変換し、波長変換された光と、波長変換されない発光素子の光とを混合等して放出することにより、発光素子の光と異なる発光色を発光する発光装置が開発されている。例えば、発光素子としてInGaN系材料を使った青色発光ダイオード(Light Emitting Diode、以下「LED」ともいう)を用い、その表面に(Y,Gd)3(Al,Ga)512:Ceの組成式で表されるYAG:Ce系蛍光体を含む、エポキシ樹脂等の透明性材料からなる蛍光部材をコーティングした白色LED発光装置が実用化されている。白色LED発光装置の発光色は、光の混色の原理によって得られる。発光素子から放出された青色光は、蛍光部材の中に入射した後、層内で吸収と散乱を繰り返した後、外部へ放出される。一方、蛍光体に吸収された青色光は励起源として働き、黄色もしくは黄緑色の光を発光する。この黄色光と青色光が混ぜ合わされて人間の目には白色として見える。このようなLEDを用いたLED発光装置は、小型で電力効率が高く鮮やかな色の発光をする。また、LEDは半導体素子であるために球切れなどの心配がない。さらに初期駆動特性が優れ、ON/OFF点灯の繰り返しに強いという特長を有する。このような優れた特性を有するためLED発光装置は各種の光源として利用されている。
【0005】
しかしながら、上記の白色に発光する発光装置は、可視光領域の長波長側の発光が得られ難いため、赤み成分が不足したやや青白い白色の発光装置となっていた。特に、店頭のディスプレイ用の照明や、医療現場用の照明などにおいては、やや赤みを帯びた暖色系の白色の発光装置が求められている。また、発光素子は電球と比べて、一般的に寿命が長く、人の目にやさしいため、電球色に近い白色の発光装置が強く求められている。
【0006】
通常、赤みが増すと、発光装置の発光特性が低下する。人間の目が感じる色味は、波長が380〜780nm領域の電磁波に明るさの感覚を生じる。これを表す指標の1つとしては、視感度特性が挙げられる。視感度特性は山型になっており、550nmがピークとなっている。赤み成分の領域である580〜680nm付近と550nm付近に同じ電磁波が入射してきた場合、赤み成分の波長域の方が暗く感じる。そのため、緑色、青色領域と同じ程度の明るさを感じるためには、赤色領域は、高密度の電磁波の入射が必要となる。
【0007】
また、従来の赤色発光の蛍光体は、近紫外からの青色光励起による効率および耐久性が十分ではなく、さらに高温になると急激に発光効率が低下するという問題があった。
【0008】
特に窒化物系蛍光体は、水分が存在すると劣化が進むため、耐久性を向上させるには防湿性を具備させる必要がある。このため、蛍光体の表面に防湿性を備えるコーティングを施すことが考えられる。一方、蛍光体により発光素子の光を波長変換し、混色によって外部に均一な光を取り出すには、蛍光体を発光素子の周囲で均一に分散させる必要がある。しかしながら、上記のようにコーティングにより防湿性を向上させた蛍光体では流動性が不足し、分散性が悪く凝縮して外部発光が不均一になることがあった。
【特許文献1】特開2002−223008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものである。本発明の主な目的は耐久性に優れ、しかも高品質な出力光を得ることのできる発光装置、発光素子用蛍光体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成するために本発明の第1の側面に係る発光装置は、発光素子と、前記発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するよう、前記発光素子の周囲に配置された蛍光体とを備える発光装置であって、前記蛍光体が窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなり、かつ前記蛍光体の表面を、2以上の異なる化合物を含む被覆層を有する。これにより、異なる化合物で被覆して蛍光体の劣化を抑制できる。
この構成により、窒化物や酸窒化物の蛍光体の酸化を防止し、蛍光体の劣化を抑制して長期にわたって安定した使用を可能とする。
【0011】
また、本発明の第2の側面に係る発光装置は、発光素子と、前記発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するよう、前記発光素子の周囲に配置された蛍光体とを備える発光装置であって、前記蛍光体が窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなり、かつ前記蛍光体の表面積の少なくとも40%以上が、2以上の異なる化合物で被覆されている。これにより、蛍光体の劣化を抑制できる。さらに、劣化防止を高めるため、蛍光体の表面積の少なくとも65%以上が好ましく、特に蛍光体の表面積の少なくとも80%以上が所定の化合物で被覆されていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の第3の側面に係る発光装置は、前記被覆層が、2層以上の多層構造である。
【0013】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る発光装置は、前記2以上の異なる化合物の内、一が金属酸化物であり、他が該金属酸化物に対して安定な酸化物である。
【0014】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る発光装置は、前記2以上の異なる化合物の少なくとも一が、金属酸化物である酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、あるいはこれらの元素の2種類以上の組み合わせからなる複合酸化物であることが好ましい。
【0015】
さらにまた、本発明の第6の側面に係る発光装置は、前記2以上の異なる化合物の少なくとも一が、リン酸塩、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸ストロンチウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸ガリウム、リン酸インジウム、リン酸ホウ素、リン酸ビスマス、リン酸イットリウム、リン酸ランタン、リン酸セリウム、あるいはこれらの元素の2種類以上の組み合わせからなる複合リン酸塩である。これにより、被覆層で窒化物や酸窒化物の蛍光体の酸化を防止し、蛍光体の劣化を抑制して長期にわたって安定した使用を可能とする。
【0016】
さらにまた、本発明の第7の側面に係る発光装置は、前記蛍光体が透光性樹脂に含有されて前記発光素子の周囲に配置されている。この構成により、透光性樹脂との界面での水分や酸化による蛍光体の劣化の抑止し、信頼性高く使用できる。
【0017】
さらにまた、本発明の第8の側面に係る発光装置は、発光素子が発光ダイオードである。
【0018】
さらにまた、本発明の第9の側面に係る発光素子用蛍光体は、発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するための発光素子用蛍光体であって、前記蛍光体が窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなり、かつ前記蛍光体の表面を、2以上の異なる化合物を含む被覆層を有する。
【0019】
さらにまた、本発明の第10の側面に係る発光素子用蛍光体は、発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するための発光素子用蛍光体であって、前記蛍光体が窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなり、かつ前記蛍光体の表面積の少なくとも40%以上が、2以上の異なる化合物で被覆されている。
【0020】
さらにまた、本発明の第11の側面に係る発光素子用蛍光体は、前記被覆された化合物が、別々の異なった被覆層で存在している。
【0021】
さらにまた、本発明の第12の側面に係る発光素子用蛍光体は、前記蛍光体が、L−M−N:R、L−J−M−N:R、またはL−M−O−N:R(LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる1種以上を含有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選ばれる1種以上を含有し、JはB、Al、Ga、In、Sc、Yからなる群より選ばれる1種以上を含有し、Nは窒素、Oは酸素、Rは希土類元素である。)で表される窒化物系または酸窒化物系蛍光体である。
【0022】
さらにまた、本発明の第13の側面に係る発光素子用蛍光体は、前記蛍光体が、Lxy{(2/3)x+(4/3)y}:R、Lxwy{(2/3)x+w+(4/3)y}、またはLxyz{(2/3)x+(4/3)y-(2/3)z}:R(LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる1種以上を含有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選ばれる1種以上を含有し、JはB、Al、Ga、In、Sc、Yからなる群より選ばれる1種以上を含有し、Nは窒素、Oは酸素、Rは希土類元素である。)で表され、かつ結晶構造を有する。
【0023】
さらにまた、本発明の第14の側面に係る発光素子用蛍光体は、前記蛍光体が、Lxy{(2/3)x+(4/3)y}:R、Lxwy{(2/3)x+w+(4/3)y}、またはLxyz{(2/3)x+(4/3)y-(2/3)z}:R(0.5≦x≦3、0.5≦y≦9.0、0.5≦w≦5、0≦z≦3;LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる1種以上を含有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選ばれる1種以上を含有し、JはB、Al、Ga、In、Sc、Yからなる群より選ばれる1種以上を含有し、Nは窒素、Oは酸素、Rは希土類元素である。)で表され、かつ結晶構造を有する。
【0024】
さらにまた、本発明の第15の側面に係る発光素子用蛍光体は、前記蛍光体が、Lxy{(2/3)x+(4/3)y}:R、Lxwy{(2/3)x+w+(4/3)y}、またはLxyz{(2/3)x+(4/3)y-(2/3)z}:R(x=2、4.5≦y≦6.0、0.01<z<1.5、またはx=1、6.5≦y≦7.5、0.01<z<1.5、またはx=1、1.5≦y≦2.5、1.5≦z≦2.5;LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる1種以上を含有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選ばれる1種以上を含有し、JはB、Al、Ga、In、Sc、Yからなる群より選ばれる1種以上を含有し、Nは窒素、Oは酸素、Rは希土類元素である。)で表され、かつ結晶構造を有する。
【0025】
さらにまた、本発明の第16の側面に係る発光素子用蛍光体は、前記蛍光体の結晶構造が単斜晶または斜方晶である。
【0026】
さらにまた、本発明の第17の側面に係る発光素子用蛍光体は、前記蛍光体がB元素を含有する。
【0027】
さらにまた、本発明の第18の側面に係る発光素子用蛍光体は、前記蛍光体が、発光ダイオード用の蛍光体である。
【0028】
さらにまた、本発明の第19の側面に係る発光素子用蛍光体の製造方法は、発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するための発光素子用蛍光体の製造方法であって、窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなる蛍光体の表面に、2以上の異なる化合物を含む被覆層を形成するための被覆物含有溶液を接触させる工程と、処理された蛍光体を熱処理する工程とを有する。
【0029】
さらにまた、本発明の第20の側面に係る発光素子用蛍光体の製造方法は、前記熱処理が、酸素を含まない雰囲気中で200℃以上にて行われる。これにより、リン含有化合物で処理された蛍光体を改質し、蛍光体をより緻密にして耐久性をさらに向上させることができる。
【0030】
さらにまた、本発明の第21の側面に係る発光素子用蛍光体の製造方法は、発光素子用蛍光体が発光ダイオード用蛍光体である。
【発明の効果】
【0031】
以上に述べたように、本発明の発光装置、発光素子用蛍光体及びその製造方法は、蛍光体の表面を2以上の元素からなる化合物によって被覆することで、LED等の発光素子に使用した場合、蛍光体の熱、水分が原因で生じる酸化による劣化、あるいは蛍光体に含有される成分による樹脂等の劣化が改善され、発光特性の低下が防ぐことができる。特に2種類以上の元素を組み合わせた複合層とすることにより、層毎に異なる機能を持たせることが可能となり、劣化防止効果を単一層以上に高めることができる。また、完全な層とならなくても蛍光体の表面積の40%以上、より好ましくは65%以上に所定の化合物を付着して被覆することにより、劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置、発光素子用蛍光体及びその製造方法を例示するものであって、本発明は発光装置、発光素子用蛍光体及びその製造方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0033】
なお、以下の実施の形態において、蛍光体の表面を完全に被覆することは可能であるが、蛍光体の表面の一部が被覆されていない場合も起こりうる。よって、「被覆層」は蛍光体の表面を完全に被覆している場合のみならず、蛍光体の表面積の40%以上100%未満に所定の化合物が付着されている場合も含むものとして以下説明する。
(発光装置)
【0034】
本発明の一実施の形態に係る発光装置を図1に示す。図1(a)は発光装置の平面図を、図1(b)は模式断面図を、それぞれ示している。半導体発光装置は、パッケージ1中央の凹部に半導体発光素子2を取り付け、半導体発光素子2の電極とパッケージ1の電極はワイヤ4で接続されている。パッケージ1中央の凹部には、蛍光体を分散させたバインダーを所定の量だけ封入し、蛍光体層3を形成している。半導体発光素子2の発光は、一部が蛍光体層3を透過し、一部が蛍光体層3によってより長波長の光に変換され、透過光と変換光が合わされて半導体発光装置の発光となる。蛍光体層3の調整により、白色を初めとする種々の色度の半導体発光装置が形成される。
【0035】
また、図2に本発明の実施の形態2に係る発光装置の模式断面図を示す。この図に示す発光装置は、蛍光体層3Bをパッケージ1Bの凹部全体に充填せず、半導体発光素子2Bの周囲のみを被覆するように配置している。これにより、半導体発光素子2Bの周囲で蛍光体をほぼ均一に配置して波長変換のむらを低減し、配光色度ムラを抑制できる。半導体発光素子2Bの電極とパッケージ1Bの電極は、図1(b)と同様にワイヤ4Bで接続される。
【0036】
さらにまた、図3に本発明の実施の形態3に係る発光装置の模式断面図を示す。この図に示す発光装置は、発光素子10と、窒化物系蛍光体と、窒化物系蛍光体を含む透光性材料からなる蛍光部材11とを備える。この図に示す発光素子10はLEDであり、マウントリード13a上部に配置されたカップのほぼ中央部にダイボンドすることで載置される。発光素子10に形成された電極は、導電性ワイヤ14によってリードフレーム13のマウントリード13aおよびインナーリード13bに導電接続される。発光素子10において発光された光の少なくとも一部を吸収するとともに、吸収した光とは異なる波長の光を発光する窒化物系蛍光材料およびN元素を含有するとともに、窒化物系蛍光材料を被覆する被覆材料とから構成される窒化物系蛍光体を、透光性材料に含む蛍光部材11が、発光素子10が載置されたカップに配置される。このように発光素子10および蛍光部材11を配置したリードフレーム13が、LEDチップや蛍光物質を外部応力、水分および塵芥などから保護する目的でモールド部材15によってモールドされ、発光装置が構成される。また発光素子10は、上述した第1の実施の形態に用いた発光素子と同じタイプが使用できる。
(発光素子)
【0037】
本明細書において発光素子とは、LED、LD等の半導体発光素子の他、真空放電による発光、熱発光からの発光を得るための素子も含む。例えば真空放電による紫外線等も発光素子として使用できる。本発明の第1の実施の形態においては、発光素子として波長が550nm以下、好ましくは460nm以下、さらに好ましくは410nm以下の発光素子を利用する。例えば紫外光として250nm〜365nmの波長の光を発する紫外光LEDや、波長253.7nmの高圧水銀灯を利用できる。特に、後述するように本発明の第1の実施の形態では蛍光体の耐久性が向上されるため、出力の高いパワー系発光素子にも利用できるという利点がある。
【0038】
LEDやLDを構成する各半導体層としては、種々の窒化物半導体を用いることができる。具体的には、有機金属気相成長法(MOCVD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)などにより基板上にInXAlYGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の半導体を複数形成させたものが好適に用いられる。また、その層構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合を有したホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。また、各層を超格子構造としたり、活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0039】
LEDは、一般的には、特定の基板上に各半導体層を成長させて形成されるが、その際、基板としてサファイア等の絶縁性基板を用いその絶縁性基板を最終的に取り除かない場合、通常、p側電極およびn側電極はいずれも半導体層上の同一面側に形成されることになる。この場合、フェイスアップ実装、すなわち半導体層側を視認側に配置し、発光された光を半導体層側から取り出すことも可能であるし、あるいは実施の形態4として図4に示すようにフェイスダウン実装、すなわち基板側を視認側に配置し、発光された光を基板側から取り出すことも可能である。もちろん、最終的に基板を除去した上で、フェイスアップ実装或いはフェイスダウン実装することもできる。なお、基板はサファイアに限定されず、スピネル、SiC、GaN、GaAs等、公知の部材を用いることができる。
(フェイスダウン実装)
【0040】
フェイスダウン実装はフリップチップ実装とも呼ばれ、同一面側に正負両電極が設けられている半導体発光素子チップの電極形成面を支持基板等の導電パターンに対向させ、バンプなどの導電性部材を介して接合する実装方法である。したがってフリップチップ型の発光素子は、支持基板と接続する面に電極を形成している。図4に、半導体発光素子2Cをフリップチップ実装したパッケージ1Cの概略断面図を示す。この例において1Cはサブマウント部材を示しており、半導体発光素子2Cをサブマウント部材のリード電極上にフェイスダウン実装させた状態で、半導体発光素子2Cの上面及び側面は、蛍光物質を含む蛍光含有樹脂である蛍光体層3Cで被覆される。また半導体発光素子2Cは、サブマウント部材に設けられたリード電極をワイヤで、もしくはバンプを介して直接支持基板と電気的に接続される。なおサブマウント部材は、半導体発光素子を順方向・逆方向の過電圧から保護するための保護素子の機能を備えることもできる。またサブマウント部材を用いず、直接支持基板に半導体素子を実装することもできる。
【0041】
次に発光素子として、III属窒化物系半導体発光素子を使用する例を説明する。発光素子は、例えばサファイア基板上にGaNバッファ層を介して、Siがアンドープ又はSi濃度が低い第1のn型GaN層、Siがドープされ又はSi濃度が第1のn型GaN層よりも高いn型GaNからなるn型コンタクト層、アンドープ又はSi濃度がn型コンタクト層よりも低い第2のGaN層、多重量子井戸構造の発光層(GaN障壁層/InGaN井戸層の量子井戸構造)、Mgがドープされたp型GaNからなるp型GaNからなるpクラッド層、Mgがドープされたp型GaNからなるp型コンタクト層が順次積層された積層構造を有し、以下のように電極が形成されている。ただ、この構成と異なる発光素子も使用できることはいうまでもない。pオーミック電極は、p型コンタクト層上のほぼ全面に形成され、そのpオーミック電極上の一部にpパッド電極が形成される。また、n電極は、エッチングによりp型コンタクト層から第1のGaN層を除去してn型コンタクト層の一部を露出させ、その露出された部分に形成される。なお、第1の実施の形態では多重量子井戸構造の発光層を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばInGaNを利用した単一量子井戸構造や多重量子井戸構造としてもよいし、Si、Zn等がドープされたGaNを利用してもよい。
【0042】
また、発光素子の発光層は、Inの含有量を変化させることにより、420nmから490nmの範囲において主発光ピークを変更することができる。また、発光波長は、上記範囲に限定されるものではなく、360〜550nmに発光波長を有しているものを使用することができる。特に、本発明の発光装置を紫外光LED発光装置に適用した場合、励起光の吸収変換効率を高めることができ、透過紫外光を低減することができる。
(蛍光体)
【0043】
上記の実施の形態で使用される蛍光体は、発光素子から放出された可視光や紫外光を他の発光波長に変換する。吸収光の波長より長波長の光を放出する波長変換材料として蛍光体を使用し、発光素子の発光と蛍光体の変換光の混色により所望の光を外部に放出させることができる。蛍光体は透光性を備えており、例えばLEDの半導体発光層から発光された光で励起されて発光する。好ましい蛍光体としては、ユーロピウムが附括されたYAG系、銀とアルミニウムによって共附括された硫化亜鉛、アルカリ土類窒化珪素蛍光体等のナイトライド系、アルカリ土類酸化窒化珪素蛍光体等のオキシナイトライド系の蛍光体が利用できる。また紫外光により励起されて所定の色の光を発生する蛍光体を用いてもよい。
【0044】
窒化物系の蛍光体は選択的に酸素を含有し、例えばL−M−N:R、L−J−M−N:R、あるいはL−M−O−N:R(LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる1種以上であり、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選ばれる1種以上であり、JはB、Al、Ga、In、Sc、Yからなる群より選ばれる1種類以上を含有し、かつNは窒素、Oは酸素であって、Rは希土類元素である)で簡易的に表される。
【0045】
また蛍光体には、Nを含み、Oを選択的に含み、かつBe、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnから選択された少なくとも1つの元素と、C、Si、Ge、Sn、Ti、ZrおよびHfから選択された少なくとも1の元素とを含み、Euおよび/または希土類元素で付活された窒化物系蛍光体が好適に使用される。さらに蛍光体はB、Al、Ga、In、Sc、Yを含んでいてもよい。すなわち、簡易的にL−M−N:R、L−J−M−N:R、またはL−M−O−N:Rで構成元素が表される結晶質の蛍光体である。結晶構造は、例えば、Ca2Si58は単斜晶、Sr2Si58、(Sr0.5Ca0.52Sr58は斜方晶、Ba2Si58は単斜晶をとる。またCaAlSiN3:Euは斜方晶、BaSi222:Eu、SrSi222:Eu、CaSi222:Eu、は斜方晶をとる。
【0046】
より詳しくは、一般的にLxy{(2/3)x+(4/3)y}:R、Lxwy{(2/3)x+w+(4/3)y}:R、またはLxyz{(2/3)x+(4/3)y-(2/3)z}:Rで表され、LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる1種以上であり、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選ばれる1種以上であり、JはB、Al、Ga、In、Scからなる群より選ばれる1種類以上であり、かつNは窒素、Oは酸素であって、Rは希土類元素で表される蛍光体であって、さらにその組成中にはEuの他、Mg、B、Mn、Cr、Ni等を含んでもよい。
【0047】
さらにこの蛍光体は、その組成中60%以上、好ましくは80%以上が結晶質となっている。一般的にはx=2、y=5またはx=1、y=7、あるいはx=1、y=1、w=1またはx=1、y=2、z=2であることが望ましいが、任意の値が使用できる。
【0048】
微量の添加物中、Bなどは発光特性を減ずることなく結晶性を上げることが可能であり、またMn、Cuなども同様な効果を示す。またLa、Prなども発光特性を改良する効果がある。その他Mg、Cr、Niなどは残光を短くする効果があり、適宜使用される。その他、本明細書に示されていない元素であっても、10〜1000ppm程度ならば、輝度を著しく減ずることなく添加できる。
【0049】
Rに含まれる希土類元素は、Y、La、Ce、Pr、Nd、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Luのうち1種以上が含有されていることが好ましいが、Sc、Sm、Tm、Ybが含有されていてもよい。また上記元素以外にも、B、Mn等は輝度を改善する効果があり、含有されていてもよい。これらの希土類元素は、単体の他、酸化物、イミド、アミド等の状態で原料中に混合する。希土類元素は、主に安定な3価の電子配置を有するが、Yb、Sm等は2価、Ce、Pr、Tb等は4価の電子配置も有する。酸化物の希土類元素を用いた場合、酸素の関与が蛍光体の発光特性に影響を及ぼす。つまり酸素を含有することにより発光輝度の低下を生じる場合もある。ただしMnを用いた場合は、MnとOとのフラックス効果により粒径を大きくし、発光輝度の向上を図ることができる。
【0050】
発光中心として希土類元素であるユウロピウムEuを好適に用いる。ユウロピウムは、主に2価と3価のエネルギー準位を持つ。本発明の蛍光体は、母体のアルカリ土類金属系窒化珪素に対して、Eu2+を付活剤として用いる。Eu2+は、酸化されやすく、3価のEu23の組成で通常使用されている。しかし、このEu23ではOの関与が大きく、良好な蛍光体が得られにくい。そのため、Eu23からOを、系外へ除去したものを使用することがより好ましい。例えば、ユウロピウム単体、窒化ユウロピウムを用いることが好ましい。但し、Mnを添加した場合は、その限りではない。
【0051】
具体的に基本構成元素の例を挙げると、Eu、Bが添加されたCa2Si58:Eu、Sr2Si58:Eu、(Sr0.5Ca0.52Sr58:Eu、Ca2Si50.17.9:Eu、Sr2Si50.17.9:Eu、(CaaSr1-a2Si50.17.9:Eu、BaSi222:Eu、CaSi222:Eu、さらには希土類が添加されたCa2Si50.37.8:Eu、Sr2Si50.37.8:Eu、(CaaSr1-a2Si50.17.9:Eu、さらにCaAlSiN3:Eu、SrAlSiN3:Eu、(Ca0.5Sr0.5)AlSiN3:Eu、CaAlSiBx3+x:Eu、SrAlSiBx3+x:Eu、(Ca0.5Sr0.5)AlSiBx3+x:Eu等がある。
【0052】
さらにSr2Si58:Eu,Pr、Ba2Si58:Eu,Pr、Mg2Si58:Eu,Pr、Zn2Si58:Eu,Pr、SrSi710:Eu,Pr、BaSi710:Eu,Ce、MgSi710:Eu,Ce、ZnSi710:Eu,Ce、Sr2Ge58:Eu,Ce、Ba2Ge58:Eu,Pr、Mg2Ge58:Eu,Pr、Zn2Ge58:Eu,Pr、SrGe710:Eu,Ce、BaGe710:Eu,Pr、MgGe710:Eu,Pr、ZnGe710:Eu,Ce、Sr1.8Ca0.2Si58:Eu,Pr、Ba1.8Ca0.2Si58:Eu,Ce、Mg1.8Ca0.2Si58:Eu,Pr、Zn1.8Ca0.2Si58:Eu,Ce、Sr0.8Ca0.2Si710:Eu,La、Ba0.8Ca0.2Si710:Eu,La、Mg0.8Ca0.2Si710:Eu,Nd、Zn0.8Ca0.2Si710:Eu,Nd、Sr0.8Ca0.2Ge710:Eu,Tb、Ba0.8Ca0.2Ge710:Eu,Tb、Mg0.8Ca0.2Ge710:Eu,Pr、Zn0.8Ca0.2Ge710:Eu,Pr、Sr0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Pr、Ba0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Pr、Mg0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Y、Zn0.8Ca0.2Si6GeN10:Eu,Y、Sr2Si58:Pr、Ba2Si58:Pr、Sr2Si58:Tb、BaGe710:Ceなどが製造できるが、これに限定されない。同様に、これらの一般式で記載された蛍光体に、所望に応じて第3成分、第4成分、第5成分等適宜、好適な元素を含有させることも当然考えられるものである。
【0053】
これらの蛍光物質は、発光素子110の励起光により、黄色、赤色、緑色、青色に発光スペクトルを有する蛍光体を使用することができる他、これらの中間色である黄緑色、青緑色、橙色等に発光スペクトルを有する蛍光体も使用することができる。これらの蛍光体を種々組み合わせて使用することにより、種々の発光色を有する発光装置を製造することができる。
【0054】
例えば、緑色から黄色に発光するCaSi222:Eu、又はSrSi222:Euと、蛍光体である青色に発光する(Sr,Ca)5(PO43Cl:Eu、赤色に発光する(Ca,Sr)2Si58:Euと、からなる蛍光体を使用することによって、演色性の良好な白色に発光する発光装置を提供することができる。これは、色の三源色である赤・青・緑を使用しているため、第1の蛍光体及び第2の蛍光体の配合比を変えることのみで、所望の白色光を実現することができる。
【0055】
窒化物系蛍光体又は酸窒化物系蛍光体化合物が形成された後は、一般的な分離方法により、粉末を回収する。回収した蛍光体粉末は、水分を蒸発させるために乾燥させる。乾燥は室温で行うこともできるが、より確実な乾燥を行うために、窒化物系蛍光体又は酸窒化物系蛍光体が大気で酸化されない程度に熱を加えて乾燥させることが好ましい。なお従来は、乾燥工程は大気中で行われており、温度条件によっては蛍光体自身が酸化劣化してしまうことがあった。そこで本実施の形態においては酸化による劣化を防ぐために、窒素雰囲気などの酸素を含まない還元雰囲気中で熱処理(アニール)を行う。これにより被覆層の状態を改質することができる。熱処理の温度は、好ましくは200℃〜500℃、より好ましくは250℃〜400℃、最も好ましくは300℃付近とする。これにより、蛍光体から水分を確実に除去できると共に、熱処理の際に酸化されて劣化されることを回避できる。
【0056】
蛍光体は、平均粒径が3μm以上、好ましくは5μm〜15μmとする。微細な蛍光体は分級などの手段で分別し排除し、粒径が2μm以下の粒径の粒子は体積分布で10%以下となるようにする。これによって発光輝度の向上を図ることができるとともに、2μm以下の粒径の粒子数を低減することによって光の配向方向の色度ばらつきを低減することができる。
【0057】
ここで粒径は、空気透過法で得られる平均粒径を指す。具体的には、気温25℃、湿度70%の環境下において、1cm3分の試料を計り取り、専用の管状容器にパッキングした後、一定圧力の乾燥空気を流し、差圧から比表面積を読みとり、平均粒径に換算した値である。本発明で用いられる蛍光体の平均粒径は2μm〜8μmの範囲であることが好ましく、さらに、この平均粒径値を有する蛍光体が、頻度高く含有されていることが好ましい。また、粒度分布も狭い範囲に分布していることが好ましく、特に粒径2μm以下の微粒子が少ないと好ましい。このように粒径及び粒度分布のバラツキが小さい蛍光体を用いることにより、より色ムラが抑制され、良好な色調を有する発光装置が得られる。
(蛍光含有樹脂)
【0058】
蛍光体を波長変換部材として蛍光含有樹脂に混入し、波長変換層を構成する。蛍光含有樹脂には熱硬化性樹脂が利用できる。蛍光体は、蛍光含有樹脂中にほぼ均一の割合で混合されていることが好ましい。ただ、蛍光物質が部分的に偏在するように配合することもできる。例えば、蛍光含有樹脂の外面側に蛍光体が多く含まれるよう偏在させ、発光素子と蛍光含有樹脂との接触面から離間させることにより、発光素子で発生した熱が蛍光体に伝達し難くして蛍光体の劣化を抑制できる。蛍光含有樹脂は、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物等を使用することが好ましいが、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等の透光性を有する絶縁樹脂組成物を用いることもできる。また蛍光含有樹脂中には、顔料、拡散剤等を混入することもできる。
【0059】
蛍光含有樹脂は、硬化後でも軟質であることが好ましい。硬化前は、発光素子の周囲に蛍光含有樹脂を行き渡らせ、かつ、フェイスダウン実装させる発光素子とリード電極とを電気的に接続する部分以外の隙間部分へ蛍光含有樹脂を浸入させるため、粘度の低い液状のものが好ましい。また蛍光含有樹脂は、接着性を有していることが好ましい。蛍光含有樹脂に接着性を持たせることにより、発光素子と台座との固着性を高めることができる。接着性は、常温で接着性を示すものだけでなく、蛍光含有樹脂に所定の熱と圧力を加えることにより接着するものも含む。また蛍光含有樹脂は、固着強度を高めるために温度や圧力を加えたり乾燥させたりすることもできる。
(拡散剤)
【0060】
さらに、蛍光含有樹脂中に蛍光体の他に拡散剤を含有させてもよい。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等が好適に用いられる。これによって良好な指向特性を有する発光装置が得られる。
【0061】
ここで本明細書において拡散剤とは、中心粒径が1nm以上5μm未満のものをいう。1μm以上5μm未満の拡散剤は、発光素子及び蛍光体からの光を良好に乱反射させ、大きな粒径の蛍光物質を用いることによって生じやすい色ムラを抑制することができるので、好適に使用できる。また、発光スペクトルの半値幅を狭めることができ、色純度の高い発光装置が得られる。一方、1nm以上1μm未満の拡散剤は、発光素子からの光波長に対する干渉効果が低い反面、透明度が高く、光度を低下させることなく樹脂粘度を高めることができる。
(フィラー)
【0062】
さらに、蛍光含有樹脂中に蛍光体の他にフィラーを含有させてもよい。具体的な材料としては、拡散剤と同様のものが使用できる。ただ、拡散剤とフィラーとは中心粒径が異なり、本明細書においてはフィラーの中心粒径は5μm以上100μm以下とすることが好ましい。このような粒径のフィラーを透光性樹脂中に含有させると、光散乱作用により発光装置の色度バラツキが改善される他、透光性樹脂の耐熱衝撃性を高めることができる。これにより、高温下での使用においても、発光素子と外部電極とを電気的に接続しているワイヤの断線や発光素子底面とパッケージの凹部底面と剥離等を防止可能な信頼性の高い発光装置とできる。さらには樹脂の流動性を長時間一定に調整することが可能となり、所望とする場所内に封止部材を形成することができ、歩留まり良く量産することが可能となる。
(多層膜コーティング)
【0063】
窒化物系蛍光材料や酸窒化物系蛍光材料については、特定の条件で劣化しやすいという特殊性あった。特に窒化物系蛍光体は、水分が存在すると劣化が進むため、耐久性を向上させるには防湿性を具備させる必要がある。一方で、蛍光体により発光素子の光を波長変換し、混色によって外部に均一な光を取り出すには、蛍光体を発光素子の周囲で均一に分散させる必要がある。しかしながら、上記のようにコーティングにより防湿性を向上させた蛍光体では流動性が不足し、凝縮して外部発光が不均一になることがあった。
【0064】
本発明者等は、このような防湿性と流動性を両立させる構成を検討した結果、窒化物系蛍光体の粒子を2種類以上の異なった元素からなる化合物で被覆することにより、単一化合物の単一層からなる被覆層よりも耐久性、特に熱酸化雰囲気での特性が向上した窒化物系蛍光体および酸窒化物系蛍光体が得られることを見出した。多層膜コーティングにより、蛍光体の表面に複合被覆層を形成した例を図5に示す。このように、蛍光体50表面の第1層51と、第1層51上にさらに被膜された第2層52の多層膜で蛍光体を被膜し、各層に防湿性、流動性を改善する機能を持たせることで、これらを両立させ発光素子と組み合わせて使用する蛍光体として理想的な特性を有する。特に、発光素子としてLEDを使用する場合に、LEDとの界面での劣化を抑制できるこの特性は、発光効率にも影響するため極めて効果的である。さらに蛍光体表面の被覆を多層構造にすることでハンドリングも改善され、製造や取り扱いを容易にする効果も得られる。また、多層膜コーティングにより耐熱性も向上した。なお、第1層と第2層は、層として明確に区別できる必要はなく、界面が不明瞭な状態であっても、防湿性と流動性を維持できる性質を備えておれば足りる。
【0065】
蛍光体を被覆する化合物は、金属酸化物である酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、あるいはこれらの元素の2種類以上の組み合わせからなる複合酸化物が好適に利用できる。これらの金属酸化物を被覆することで、蛍光体の熱酸化雰囲気での耐久性を改善できる。
【0066】
また、金属酸化物の上から蛍光体を被覆する化合物は、金属酸化物以外に安定であるリン酸塩、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸ストロンチウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸ガリウム、リン酸インジウム、リン酸ホウ素、リン酸ビスマス、リン酸イットリウム、リン酸ランタン、リン酸セリウム、あるいはこれらの元素の2種類以上の組み合わせからなる複合リン酸塩も利用できる。例えば酸化珪素を被覆させる場合は、珪酸カリウム、珪酸ナトリウム等の水溶液、また、不溶性の微粒子酸化珪素も使用できる。また、金属有機化合物であるテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を使用することも可能である。これらで被覆することによって、蛍光体の流動性を低下させることなく、均一分散を図ることができる。なお、好ましくは蛍光体の表面に流動性を改善する機能を発揮する化合物を位置させ、その内面側に防湿性を改善する機能を有する化合物を位置させることが好ましい。これによって、被膜化合物の流動性を最大限発揮できる。
【0067】
これらの化合物を被覆させる方法としては、CVD、湿式法、乾式法など従来の既知の手法が適宜利用できる。特に均一な膜質の面から、CVD法が好ましい。
【0068】
窒化物あるいは酸窒化物系蛍光体に湿式で被覆する処理は、使用する原料に応じて水溶液、有機溶剤を適宜選択する。一の被膜層中に2種類以上の元素から成る被覆層を形成させる場合、上記の化合物中から2種類以上を選択して、溶液中で被覆工程を行う。この場合は、連続した処理で被覆させることもでき、またそれぞれの被覆処理後に一度分離して、再度被覆処理を行うことも可能である。またCVD、乾式法による被膜でも同様に、連続した被覆処理、またそれぞれの被覆処理を行った後に分離し、再度被覆処理を行うこともできる。
(処理液)
【0069】
湿式処理で使用する処理液としては、得られた蛍光体を水中に懸濁させた後、珪酸カリウム、珪酸ナトリウム等の水溶液を加えて処理液とする。さらにマグネシウム化合物等の水溶液を加えて、また必要に応じてアンモニア水等を用いて、pHを調整することによって蛍光体粒子上に珪素とマグネシウムの2種類の元素からなる複合被覆層が形成される。このようにして被覆処理された蛍光体は、その後分離し、乾燥工程で水分を除去する。
(乾燥工程)
【0070】
窒化物系蛍光体あるいは酸窒化物系蛍光体に湿式法で被覆処理を行った後は、一般的な分離方法により粉末状の蛍光体を回収する。回収した蛍光体粉末は、水分等を蒸発させるために室温で乾燥してもよいが、窒化物系蛍光体や酸窒化物系蛍光体が大気中で酸化されない程度に加熱して、乾燥させることもできる。
【0071】
なお、従来の乾燥工程は大気中で行われているため、温度条件によっては蛍光体自身が酸化劣化してしまうことがある。このような酸化劣化を防止するために、窒素雰囲気などの還元雰囲気中で熱処理を行うことで、被覆層を均質化して改質することができる。
【0072】
被覆される化合物の量は、好ましくは蛍光体100重量部に対して0.0001〜20.0重量部とする。0.0001重量部よりも少ないと効果が少なく、逆に20重量部よりも多いと蛍光体の発光特性が低下するため、好ましくは上記範囲とする。
【0073】
このように、窒化物系蛍光体あるいは酸窒化物系蛍光体を2種類以上の元素からなる化合物で被覆することで、特に発光素子としてLEDと組み合わせた発光装置として使用する場合、蛍光体の熱や水分が原因で生じる酸化による劣化、あるいは蛍光体に含有される成分による樹脂等の劣化が改善され、発光特性の低下が防ぐことができる。このように2種類以上の元素を組み合わせた複合層を利用することにより、単一層による被覆以上の劣化防止効果が得られる。
(窒化物系蛍光体の製造方法)
【0074】
次に、窒化物系蛍光体として好適な組成式(Sra,Ca1-axSiyz{(2/3)x+(4/3)y-(2/3)z}:Euにおいてx=2、y=5の製造方法を説明する。上記の蛍光体には、より好適にはMnを含む。なお、本発明に用いられる窒化物系蛍光体はこの製造方法に限定されないことはいうまでもない。
【0075】
まず、原料のCa,Srを粉砕する。原料のSr,Caは単体を使用することが好ましいが、イミド化合物、アミド化合物などの化合物を使用することもできる。粉砕により得られたSr、Caは平均粒径が約0.1μm〜15μmであることが好ましい。またSr、Caの純度は2Nであることが好ましい。
【0076】
一方、原料のSiを粉砕する。原料のSiは、単体を使用することが好ましい。ただ、窒化物化合物、イミド化合物、アミド化合物などを使用することもできる。さらに酸化マンガン、H3BO3、B23、Cu2O、CuOなどの化合物が含有されていてもよい。Siも上述した原料Sr、Ca等と同様に、アルゴンの雰囲気中、もしくは窒素雰囲気中のグローブボックス内で粉砕を行なう。Si化合物の平均粒径は、約0.1μm〜15μmとが好ましい。
【0077】
次に、原料のSr、Caを窒素雰囲気中で窒化する。Sr、Caは、混合して窒化してもよいし、それぞれ個々に窒化してもよい。これによりSr、Caの窒化物を得ることができる。Sr、Caの窒化物は高純度のものを使用することが好ましいが、より低純度の市販品を使用することもできる。
【0078】
さらに原料のSiを窒素雰囲気中で窒化する。Siも窒素雰囲気中にて、800〜1200℃で約5時間窒化する。これにより窒化珪素を得る。窒化珪素も、高純度のものを使用することが好ましいが、より低純度の市販品を使用することもできる。
【0079】
次いでSr、CaもしくはSr−Caの窒化物を粉砕する。ここでは、Sr、Ca、Sr−Caの窒化物をアルゴン雰囲気中、もしくは窒素雰囲気中、グローブボックス内で粉砕を行なう。同様に、Siの窒化物も粉砕する。さらに同様に、Euの化合物Eu23を粉砕する。粉砕後のアルカリ土類金属の窒化物、窒化珪素および酸化ユウロピウムの平均粒径は、約0.1μm〜15μmであることが好ましい。上記の原料中には、特性を損なわない程度の、および/もしくは結晶性を上げる効果のある少量の不純物元素が含まれていてもよい。上記粉砕を行った後、Sr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Eu23、Mn化合物を添加し、混合する。
【0080】
最後にSr、Ca、Sr−Caの窒化物、Siの窒化物、Euの化合物Eu23の混合物を、アンモニア雰囲気中で焼成する。焼成により、Mnが添加されたSr−Ca−Si−O−N:Euで表される蛍光体を得る。このとき、Mn含有量は100ppm以下である。
【0081】
ただし、各原料の配合比率を変更することにより、目的とする蛍光体の組成を変更することができる。また焼成は1200℃〜1700℃の範囲で行なうことができるが、より好ましくは1400℃〜1700℃の焼成温度とする。
【0082】
以上のようにして蛍光体を形成することにより、凝集した蛍光体組成物が得られ、これを粉砕することで窒化物系蛍光体が得られる。粉砕後の蛍光体をふるい、あるいは沈降特性の違い等により分級し、平均粒径3μm以上とし、かつ粒度分布測定で2μm以下の粒径の粒子が体積分布で10%以下とすることが好ましい。
【0083】
上記の窒化物系蛍光体は耐水性、耐酸化性、耐アルカリ性に優れているものの、ベーク劣化しやすい。そのために本発明の実施形態に係る窒化物系蛍光体は、リンを含む化合物で処理する。
【0084】
次に実施例として、被覆層で被膜した蛍光体を条件を変えて複数製造し、各々の耐久性を評価する試験、流動性の評価を行った。また比較例として、被膜処理を行わない状態の窒化物系蛍光体を同様に作成し、耐久試験、流動性の評価を行った。耐久性としては以下で説明する内容の耐熱性試験を行った。空気中で加熱(ベーク)を行って意図的に蛍光体を劣化させた状態での輝度の低下を、加熱前における輝度と対比した相対輝度として測定し、耐熱性を評価した。耐久性の本来の評価には本来は半導体素子を用いた発光装置化(例えばLED)することが好ましいが、蛍光体自身の簡易的な耐久(耐熱)性の評価として、評価することも確認できる。加熱条件は300℃としている。これらの結果を表1および図6に示す。表1は、以下の各実施例及び比較例の窒化物系蛍光体につき、各被覆層の重量部、色度座標上のxy、相対輝度を各々測定した値、さらに各蛍光体の耐久性評価のため大気中で300℃加熱後の相対輝度を測定した値を、各々示している。蛍光体の輝度、色度座標xyの測定は460nmの波長で励起させて行ったものである。表中の輝度は全く処理していない状態(比較例1)の窒化物蛍光体(Ca,Sr)2Si58:Euを基準とした相対値を示す。これらの結果から明らかなように、被覆層で被膜した蛍光体は、加熱後の劣化が被膜しない蛍光体に比べて抑制されており、流動性を損なうことなく耐久性が向上していることが確認できた。以下、各実施例について詳細を説明する。
【0085】
【表1】

【実施例1】
【0086】
実施例1として、珪素、アルミニウム化合物で被覆された(Ca,Sr)2Si58蛍光体を作成した。まず、上記の方法で窒化物系蛍光体として(Ca,Sr)2Si58:Euを合成した後、蛍光体100gに対して脱イオン水400gを加えて攪拌させた。その分散溶液に、珪酸カリウム溶液をSiが0.47%となるように滴下し、次いで硝酸アルミニウム溶液をAlが1.0%となるように滴下した。さらに2%NH3溶液を、pHが6.5〜6.7付近となるように滴下する。反応が終了した分散溶液はろ過を行い、分離乾燥した。これにより、珪素、アルミニウム化合物で被覆された(Ca,Sr)2Si58蛍光体を得た。
【0087】
次に、耐久性を評価するために、300℃の空気中で加熱(ベーク)を行って意図的に蛍光体を劣化させた状態での輝度の低下を、加熱前における輝度と対比した相対輝度として測定した。
【0088】
表1に示すように、珪素含有化合物で被膜処理していないものは、ベーク後の相対輝度がベーク前の48.7%に低下していた。これに対して、実施例1の珪素、アルミニウム化合物で被覆した蛍光体は、ベーク後に相対輝度を68.0%維持しており、熱酸化雰囲気(ベーク)による劣化が20%以上改善され、発光特性の低下を防止する効果が確認された。
【実施例2】
【0089】
実施例2として、同じく珪素、亜鉛化合物で被覆された(Ca,Sr)2Si58蛍光体を作成した。まず(Ca,Sr)2Si58:Euを用い、蛍光体100gに対して脱イオン水400gを加えて攪拌させた。その分散溶液に、珪酸カリウム溶液を滴下し、次いで硫酸亜鉛溶液をZnが1.0%となるように滴下した。さらにNH3溶液を、pHが7.5〜7.7付近になるように滴下した。反応が終了した分散溶液はろ過を行い、分離乾燥し、珪素化合物で処理された(Ca,Sr)2Si58蛍光体を得た。
【0090】
300℃空気中で加熱を行い、耐久性を評価したところ、実施例2の珪素、亜鉛含有化合物で被覆された蛍光体は、ベーク後の相対輝度が62.7%維持しておりと未処理品と比較してベークによる劣化が10%以上改善されたことが確認された。
【実施例3】
【0091】
同様に実施例3として、窒化物系蛍光体に(Ca,Sr)2Si58:Euを用い、蛍光体100gに対して脱イオン水400gを加えて攪拌させた。その分散溶液に、珪酸カリウム溶液を滴下し、次いで硝酸マグネシウム溶液をMgが1.0%となるように滴下した。さらに2%NaOH溶液を、pHが10.5〜10.7付近となるように滴下した。反応が終了した分散溶液にろ過を行い、分離乾燥し、珪素、マグネシウム化合物で処理された(Ca,Sr)2Si58蛍光体を得た。300℃空気中で加熱を行い、耐久性を評価したところ、実施例3の珪素、マグネシウム化合物で被覆された蛍光体は、ベーク後の相対輝度が71.7%維持しており、未処理品と比較してベークによる劣化が20%以上改善されたことが確認された。
【実施例4】
【0092】
実施例4として、窒化物蛍光体に(Ca,Sr)2Si58:Euを用い、蛍光体100gに対して脱イオン水400gを加え、攪拌させた。その分散溶液に、PO4が1%となるようにリン酸ナトリウム溶液を滴下し、次いで硝酸マグネシウム溶液を滴下した。更に2%KOH溶液を用いてpHを調整した。そして反応が終了した分散溶液のろ過を行い、分離乾燥しリン化合物が被覆された(Ca,Sr)2Si58:Eu蛍光体を得た。この蛍光体にCVD法でアルミナ被覆処理を行った。さらに300℃空気中で加熱を行い、耐久性を評価したところ、実施例4のリン・アルミニウム化合物で被覆された蛍光体は、ベーク 後の相対輝度が92.6%維持しており、未処理品と比較してベークによる劣化が30%以上改善されたことが確認された。
【実施例5】
【0093】
実施例5として、窒化物蛍光体に(Ca,Sr)2Si58:Euを用い、ミキサーを用いて攪拌させた状態でSiが0.93%となるようにテトラエトキシシランを加え、更にNH3液、脱イオン水を加えてシリカ被覆処理を行った。その後、200℃以上で熱処理をした後に実施例4と同じCVD法でアルミナ被覆処理を行った。さらに300℃空気中で加熱を行い、耐久性を評価したところ、実施例5の珪素、アルミニウム化合物で被覆した場合、ベーク後の相対輝度が73.7%維持しており、30%近く改善されたことが確認された。
(比較例1)
【0094】
一方比較例として、実施例1〜4に用いた窒化物系蛍光体につき、被覆処理しない状態のものを各々作成して比較例とし、300℃の加熱は酸化雰囲気で意図的に劣化させた。図6より明らかなとおり、被膜処理しない蛍光体は加熱試験後の輝度の低下が顕著であり、上記実施例のとおり被膜処理の優位性が確認された。
【0095】
次に実施例6、7に係る蛍光体の耐久性を評価した結果を、表2に示す。耐久性の評価には実施例1から5と同様の大気中で450℃の熱処理を行い、耐熱性のみの評価を行った。なお蛍光体の輝度の測定は460nmの波長で励起させて測定を行ったものである。表中の各輝度は比較例2を基準として、全く処理していない状態の窒化物蛍光体CaAlSiN3:Euを作製し、これを基準とした相対値で示す。
【0096】
【表2】

【実施例6】
【0097】
実施例6として、窒化物蛍光体にCaAlSiN3:Euを用い、実施例1と同じ処理を行い珪素、アルミニウムで被覆処理を行った。さらに450℃空気中で加熱を行い、耐久性を評価したところ、実施例6の珪素、アルミニウム化合物で被覆した場合、輝度は95.6%維持していることが確認された。
【実施例7】
【0098】
実施例7として、窒化物蛍光体にCaAlSiN3:Euを用い、実施例5と同じ処理を行ない珪素、アルミニウムでコーティングを行った。さらに450℃空気中で加熱を行い、耐久性を評価したところ、実施例7の珪素、アルミニウム化合物で被覆した場合、輝度は93.4%維持していることが確認された。
(比較例2)
【0099】
一方比較例として、実施6,7に用いた窒化物系蛍光体につき、被覆処理しない状態のものを各々作成して比較例とし、450℃の加熱は酸化雰囲気で意図的に劣化させた。この結果を図7に示す。この図より明らかなとおり、被膜処理しない蛍光体は加熱試験後の輝度が91.1%に低下しており、上記実施例のとおり被膜処理の優位性が確認された。
【0100】
以上に述べたように、本発明の窒化物、酸窒化物系蛍光体とその製造方法によって、蛍光体粒子表面が珪素、アルミニウムなどの化合物で被覆され、耐久性、特に熱酸化雰囲気での劣化が改善され、高い流動性を有する蛍光体を提供する。また、本発明の蛍光体は熱に対する安定性が高いために青色発光ダイオード又は紫外線発光ダイオードを光源とする発光特性に極めて優れた白色の発光装置用の波長変換蛍光体として期待される。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の発光装置、発光素子用蛍光体及びその製造方法は、蛍光表示管、ディスプレイ、PDP、CRT、FL、FEDおよび投射管等、特に青色発光ダイオード又は紫外線発光ダイオードを光源とする発光特性に極めて優れた白色の照明用光源、LEDデイスプレイ、バックライト光源、信号機、照明式スイッチ、各種センサ及び各種インジケータ等に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施の形態1に係る発光装置を示す平面図及び模式断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る発光装置を示す模式断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係る発光装置を示す模式断面図である。
【図4】本発明の実施の形態4に係る発光装置を示す模式断面図である。
【図5】蛍光体の表面に多層膜をコーティングした様子を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例1〜5及び比較例1に係る窒化物系蛍光体の相対輝度が加熱後に変化する様子を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例6,7及び比較例2に係る窒化物系蛍光体の相対輝度が、加熱後に変化する様子を示すグラフである。
【符号の説明】
【0103】
1、1B、1C…パッケージ
2、2B、2C…半導体発光素子
3、3B、3C…蛍光体層
4、4B…ワイヤ
10…発光素子;11…蛍光部材
13…リードフレーム;13a…マウントリード;13b…インナーリード
14…導電性ワイヤ;15…モールド部材
50…蛍光体;51…第1層;52…第2層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するよう、前記発光素子の周囲に配置された蛍光体とを備える発光装置であって、
前記蛍光体が窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなり、かつ
前記蛍光体の表面を、2以上の異なる化合物を含む被覆層を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
発光素子と、
前記発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するよう、前記発光素子の周囲に配置された蛍光体とを備える発光装置であって、
前記蛍光体が窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなり、かつ
前記蛍光体の表面積の少なくとも40%以上が、2以上の異なる化合物で被覆されていることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記被覆層が、2層以上の多層構造であることを特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の発光装置であって、
前記2以上の異なる化合物の内、一が金属酸化物であり、他が該金属酸化物に対して安定な化合物であることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の発光装置であって、
前記2以上の異なる化合物の少なくとも一が、金属酸化物である酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、あるいはこれらの元素の2種類以上の組み合わせからなる複合酸化物であることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一に記載の発光装置であって、
前記2以上の異なる化合物の少なくとも一が、リン酸塩、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸ストロンチウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸ガリウム、リン酸インジウム、リン酸ホウ素、リン酸ビスマス、リン酸イットリウム、リン酸ランタン、リン酸セリウム、あるいはこれらの元素の2種類以上の組み合わせからなる複合リン酸塩であることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一に記載の発光装置であって、
前記蛍光体が透光性樹脂に含有されて前記発光素子の周囲に配置されてなることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一に記載の発光装置であって、
前記発光素子が発光ダイオードであることを特徴とする発光装置。
【請求項9】
発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するための発光素子用蛍光体であって、
前記蛍光体が窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなり、かつ
前記蛍光体の表面を、2以上の異なる化合物を含む被覆層を有することを特徴とする発光素子用蛍光体。
【請求項10】
発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するための発光素子用蛍光体であって、
前記蛍光体が窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなり、かつ
前記蛍光体の表面積の少なくとも40%以上が、2以上の異なる化合物で被覆されていることを特徴とする発光素子用蛍光体。
【請求項11】
請求項9に記載の発光素子用蛍光体であって、
前記被覆された化合物が、別々の異なった被覆層で存在していることを特徴とする発光素子用蛍光体。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一に記載の発光素子用蛍光体であって、
前記蛍光体が、L−M−N:R、L−J−M−N:R、またはL−M−O−N:R(LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる1種以上を含有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選ばれる1種以上を含有し、JはB、Al、Ga、In、Sc、Yからなる群より選ばれる1種以上を含有し、Nは窒素、Oは酸素、Rは希土類元素である。)で表される窒化物系または酸窒化物系蛍光体であることを特徴とする発光素子用蛍光体。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一に記載の発光素子用蛍光体であって、
前記蛍光体が、Lxy{(2/3)x+(4/3)y}:R、Lxwy{(2/3)x+w+(4/3)y}、またはLxyz{(2/3)x+(4/3)y-(2/3)z}:R(LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる1種以上を含有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選ばれる1種以上を含有し、JはB、Al、Ga、In、Sc、Yからなる群より選ばれる1種以上を含有し、Nは窒素、Oは酸素、Rは希土類元素である。)で表され、かつ結晶構造を有することを特徴とする発光素子用蛍光体。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか一に記載の発光素子用蛍光体であって、
前記蛍光体が、Lxy{(2/3)x+(4/3)y}:R、Lxwy{(2/3)x+w+(4/3)y}、またはLxyz{(2/3)x+(4/3)y-(2/3)z}:R(0.5≦x≦3、0.5≦y≦9.0、0.5≦w≦5、0≦z≦3;LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる1種以上を含有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選ばれる1種以上を含有し、JはB、Al、Ga、In、Sc、Yからなる群より選ばれる1種以上を含有し、Nは窒素、Oは酸素、Rは希土類元素である。)で表され、かつ結晶構造を有することを特徴とする発光素子用蛍光体。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか一に記載の発光素子用蛍光体であって、
前記蛍光体が、Lxy{(2/3)x+(4/3)y}:R、Lxwy{(2/3)x+w+(4/3)y}、またはLxyz{(2/3)x+(4/3)y-(2/3)z}:R(x=2、4.5≦y≦6.0、0.01<z<1.5、またはx=1、6.5≦y≦7.5、0.01<z<1.5、またはx=1、1.5≦y≦2.5、1.5≦z≦2.5;LはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選ばれる1種以上を含有し、MはC、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfからなる群より選ばれる1種以上を含有し、Lxwy{(2/3)x+w+(4/3)y}、Nは窒素、Oは酸素、Rは希土類元素である。)で表され、かつ結晶構造を有することを特徴とする発光素子用蛍光体。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか一に記載の発光素子用蛍光体であって、
前記蛍光体の結晶構造が単斜晶または斜方晶であることを特徴とする発光素子用蛍光体。
【請求項17】
請求項9から16のいずれか一に記載の発光素子用蛍光体であって、
前記蛍光体がB元素を含有することを特徴とする発光素子用蛍光体。
【請求項18】
請求項9から16のいずれか一に記載の発光素子用蛍光体であって、
前記蛍光体が、発光ダイオード用の蛍光体であることを特徴とする発光素子用蛍光体。
【請求項19】
発光素子の発する光の少なくとも一部を吸収し異なる波長に変換するための発光素子用蛍光体の製造方法であって、
窒素を含有する窒化物系蛍光材料または酸窒化物系蛍光材料よりなる蛍光体の表面に、
2以上の異なる化合物を含む被覆層を形成するための被覆物含有溶液を接触させる工程と、
処理された蛍光体を熱処理する工程と、
を有することを特徴とする発光素子用蛍光体の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の発光素子用蛍光体の製造方法であって、
前記熱処理が、実質的に酸素を含まない雰囲気中で200℃以上にて行われることを特徴とする発光素子用蛍光体の製造方法。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の発光素子用蛍光体の製造方法であって、
前記発光素子用蛍光体が発光ダイオード用蛍光体であることを特徴とする発光素子用蛍光体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−103818(P2007−103818A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294439(P2005−294439)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】