説明

発光装置およびその製造方法

【課題】有機系蛍光体を気密に封止するに当たって、その耐熱温度に充分耐えられる気密封止法を提案することによって、色ばらつきの少ない白色LEDを実現できる発光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2本の絶縁されたリード線が付いた円筒状のステムと、発光素子と、前記ステムに嵌合し、その天面に光出射用の透明部材を有し、かつその内部に有機系蛍光体を有する金属キャップとを備え、前記ステム上に前記発光素子を実装し、前記金属キャップに前記ステムを圧入して前記有機系蛍光体を気密封止した発光装置と、その製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置およびその製造方法、特に、白色LEDが実現できる発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光装置としては、リードフレームや絶縁基板(ガラエポ、セラミック、MID)上に、LED素子をAgペースト等で実装し、ワイヤーボンドで接続し、これをエポキシ樹脂やシリコーン樹脂で封止してLEDランプとしていた。白色LEDの場合は、GaN系青色素子を使い、上記樹脂中にYAG蛍光体を混合してLEDランプを構成し、励起光としての黄色とYAG蛍光体を透過した青色とで擬似白色を実現していた(特許文献1)。
しかし、上記YAG蛍光体は何れも無機系蛍光体であるため励起スペクトルが広く、液晶カラーフィルターとのマッチングが悪く、効率、クロストーク、等の課題があった。
そこで、色再現性を広げるために上記樹脂中のYAG蛍光体に加え、赤色蛍光体を加えたり、赤色LEDを付加したりしていた。
これらの中で、特許文献2、3等に提案されているジケトン、あるいは、特許文献4等に提案のカルボン酸を配位子とするEu錯体は、発光強度が高く、かつ、演色性に優れ、色再現性に優れた赤色発光物質である。
しかし、これらの錯体は、酸素や湿度に敏感であり、気密封止を必要とする。
従来、このような封止を行う方法として、発光素子の外部キャップの内部の内壁に蛍光体層を塗布により、形成して、内部を真空または不活性ガスの雰囲気にして気密封止をすることが提案されている(特許文献5)。しかし、この提案では、キャップの材質や何℃程度の温度で封着するのか等についての開示は一切なく、現実に封着を行ったものではない。
その他、有機高分子錯体を発光体として用いることに関する提案もある(特許文献6)が、具体的な封止方法に関する点については一切開示されていない。
【特許文献1】特開2006−49657号公報
【特許文献2】特開2005−252250号公報
【特許文献3】特開2003−81986号公報
【特許文献4】特開2005−8872号公報
【特許文献5】特開2004−352928号公報
【特許文献6】特開2002−163902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
有機系蛍光体は、耐熱温度が低く、例えば、200℃以上には、封止の際の温度を上げることはできない。
従って、本発明の目的は、有機系蛍光体を気密に封止するに当たって、その耐熱温度に充分耐えられる気密封止法を提案することによって、色ばらつきの少ない白色LEDを実現できる発光装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような目的は、少なくとも2本の絶縁されたリード線が付いた円筒状のステムと、発光素子と、前記ステムに嵌合し、その天面に光出射用の透明部材を有し、かつその内部に有機系蛍光体を有する金属キャップとを備え、前記ステム上に前記発光素子を実装し、前記金属キャップに前記ステムを圧入して前記有機系蛍光体を気密封止したことを特徴とする発光装置によって実現する。
この場合、前記発光素子は、近紫外光を発光する近紫外LEDであることが好ましい。
また、前記透明部材は、ガラス板またはガラスレンズであることが好ましい。
また、前記有機系蛍光体は、前記金属キャップの天面および/または内周面の少なくとも一部に塗布されているか、あるいは内部に充填されて気密封止されていることが好ましい。
また、前記ステムの外周部に、前記金属キャップ圧入時の緩衝材となる金属緩衝材を付与することが好ましく、この金属緩衝材は柔らかい金属のメッキ膜であることが好ましく、さらには、半田材料のメッキ膜であることが好ましい。また、半田材料は、SnCu合金から形成されていることが好ましい。
さらに、前記有機系蛍光体は、赤色蛍光体錯体であることが好ましい。
そして、前記赤色蛍光体錯体は、Euのジケトンまたはカルボン酸錯体であることが好ましい。
そして、前記有機系蛍光体に加え、さらに、青および/または緑色の蛍光体を用いることが好ましい。
この場合、少なくとも2本の絶縁されたリード線が付いた円筒状のステムに発光素子を実装し、さらに、金属キャップの天面に光出射用の透明部材を一体化して、この金属キャップ内に、不活性雰囲気中で、有機系蛍光体を塗布または充填し、前記ステムと前記金属キャップとの接合部分となる前記ステムの外周部分に半田材料を付与し、前記ステムを前記金属キャップに常温で圧入することによって前記有機系蛍光体を気密封止して発光装置を製造することが好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、有機系蛍光体の特性劣化を伴うことなく、有機系蛍光体の塗布量並びに位置が制御できるので、色ばらつきの少ない白色LEDが実現できる。また、近紫外LEDから照射される近紫外の光を蛍光体によって波長変換しているので、温度や長期劣化による色座標のズレが生じない。また、有機系蛍光体によって波長変換された光は鋭いので、色再現性および彩度の高い白色LEDを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本実施形態における発光装置10は、図1に示されるように、少なくとも2本の絶縁されたリード線3が付いた円筒状のステム2と、近紫外域のLEDの発光素子1と、ステム2に嵌合し、その天面に光出射用の透明部材として、好ましくはガラス6を有し、かつその内部に有機系蛍光体7を有する金属キャップ4とを備えるものであり、図1では、有機系蛍光体7が金属キャップ4内の天面および内周面に塗布されている例が示されており(図2、3参照)、ステム2上に発光素子1を実装し、金属キャップ4にステム2を圧入して有機系蛍光体7を気密封止した点に特徴がある。
なお、図1に示される例では、ステム2と発光素子1とが一体化されている例を示したが、両者は別体であってもよく、ステム2とは別体の枠体に一体的に設けられて、この枠体をステム本体内に配置してもよい。いずれの場合も、ステム本体に一体化的に設けられたリード3と発光素子1はワイヤー8を介して電気的に接続されている(図2、3参照)。
この場合、気密に封止するとは、真空であっても窒素、Ar、F等の不活性ガス雰囲気中に封止したものであってもよく、酸素ガス濃度が100ppm以下、好ましくは、20ppm以下の雰囲気に気密に封止することが好ましい。
【0007】
金属キャップ4は、ステム2に嵌合するものであり、しかも透明部材を封入ないし封着するものであり、このため、透明部材としては、ガラス材料を用いることが好ましいので、特に、ガラス封着用の材料、例えば、コバール、42−Ni等が好ましい。
また、金属キャップ4は、その天面に、透明部材、好ましくはガラス6を有するものであり、このガラス6を通して、光が出射される。このときのガラス6としては、ガラス板であってもよく、また、ガラスレンズとして、球体のレンズ、凸レンズ、凹レンズ等を用いれば、集光あるいは拡散させて光を出射でき、光の利用効率を向上させることができる。これら好ましくは、ガラスの透光部材は、金属ギャップ4の天面に接着・一体化されていることが好ましい。このガラスは、可視域で透明で、強度の高いものが好ましい。
金属キャップ4のサイズは、外径1〜6mmの中から、採用すればよい。また、長さは、目的用途に応じ、任意に設定すればよい。
天面に用いるガラス6の材質のヤング率としては、50〜80MPa程度、密度としては、2〜3g/cm、屈折率としては、1.4〜1.6程度、軟化点としては、600〜1600℃の任意の範囲にあればよい。なお、可視域の透過率は、400nm以上で、80%以上、特に、85%以上あることが好ましい。
そして、350nm以下の近紫外域における透過率は、40%以下であることが好ましい。
このようなガラス材料としては、アルミノホウ珪酸ガラスが好ましい。
アルミノホウ珪酸ガラスとしては、例えば、SiO50〜70%、Al10〜20%、B3〜10%、NaO,KOの総計1%以下、MgO,CaOの総計15〜30%ものが好ましい。
このガラス材料は、金属キャップに一体化されるものであるが、封着温度は、例えば、600〜1000℃の温度の中から適宜選択すればよい。
【0008】
金属キャップ4にステム2を圧入する方法としては、特に限定されないが、図2、3に示されるように、ステム2の外周に半田メッキ等の金属キャップの構成材料よりも柔らかい金属のメッキを施すなどすることが好ましく、このようなメッキ膜を金属キャップ4の圧入時の緩衝材として付与することが好ましい。このような柔らかい金属としては、半田が好ましく用いられる。
このような圧入による封止によれば、常温にて、予め、有機蛍光体を気密雰囲気中で付与した金属キャップを気密封止することできる。
半田メッキに使用する半田材料としては、SnCu系合金が好ましく、合金組成については、特に制限はなく、好ましくは、Cuが1〜10%、より好ましくは2〜3%のものが好ましい。
【0009】
このような圧入封止を行うためのより効率的な方法を示す。
先ず、金属キャップ4の天面に透明部材を一体化する。一体化温度は、前述したとおりである。次に、この天面に、不活性雰囲気中で、好ましくは、ガラス材料を一体化した金属キャップ4に、有機系蛍光体7を付与する。そして、図2、3に示される例では、真空雰囲気、あるいは、不活性ガス雰囲気下で、ステム2が金属キャップ4に圧入され封止されている。金属キャップ4の内側に有機系蛍光体7を付与するには、塗布等による。有機系蛍光体7は、例えば、シリケート樹脂等に分散させてペーストを調製した後、一旦、このペーストを金属キャップ4の内部に注入し、注入した後に排出させる。すると、有機系蛍光体7が分散された例えばシリケート樹脂等の膜が、金属キャップ4の内周面および天面に形成される。その後、例えば、150℃程度以下の温度で加熱することにより、蛍光体を内周面および天面に固着させる。
ペーストを調製する材料としては、上記のシリケート樹脂のかわりに、シリコーン樹脂、あるいはポリビニルアルコール等を用いることもできる。上記のシリケート樹脂に加えて、シリコーン樹脂、あるいはポリビニルアルコール等を各種透光性の充填材として用いることもできる。この場合も加熱温度は、蛍光体が溶けない温度の150℃程度以下の温度が好ましい。
【0010】
次に、ステム2の外周面(側面)に半田5を付与しておく。
また、半田は、金属キャップ4のステム2との接合部分に付与してもよい。そして、金属キャップ4に、LED発光素子1を実装したステム2を常温にて所定の圧力で圧入する。
【0011】
図2、3に示される例では、金属キャップ4内の天面および内周面の全面に有機系蛍光体7が塗布されているが、これに限定されるわけではなく、内周面を除いた天面、特に、透明部材のキャップと対向する面のみ、などのように、内面の一部であってもよい。このほか、図4に示されるように、金属キャップ4の内部に、有機系蛍光体4を充填するようにしてもよい。この場合、有機系蛍光体7を充填させてから、金属キャップ4にステム2を圧入させる。そのようにして、有機系蛍光体7を固着させる。
充填を行う態様では、光の取り出し効率が向上する。
なお、図5には、透明部材として、球体のガラスレンズ61を用いた例が示されている。
【0012】
次に、有機系蛍光体について説明する。
本発明では、蛍光体として、有機系蛍光性錯体が用いられる。その他、各種蛍光体部分を主鎖中に含むポリマー等の有機系蛍光体も用いることができる。蛍光性錯体としては、特に限定されないが、通常、1種または2種以上の配位子アニオンと3価の希土類元素のイオンとの錯体である希土類イオン錯体が使用される。希土類元素しては、Sm、Eu、Tb、Ey、Tm等が挙げられる。なかでも、赤色蛍光体としてはEu(ユーロピウム)元素、青色蛍光体としてはTm(ツリウム)元素、緑色蛍光体としては、Tb(テルビウム)元素のイオン錯体が好ましい。
このような蛍光性錯体としては、特開2005−8872号公報、特開2004−356358号公報、特開2004−352928号公報、特開2005−41941号公報、特開2005−41942号公報、特開2005−112923号公報、特開2005−252250号公報、特開2003−81986号公報、特許第3668966号公報、特開2003−147346号公報、国際公開第2004/104136号パンフレット、国際公開第2004/107459号パンフレット、国際公開第2005/75598号パンフレット等に記載されているものを例示することができる。
【0013】
特に、赤色蛍光性錯体であるユーロピウム錯体が好ましく用いられる。本発明においては、主鎖に蛍光体物質を含むポリマーを用いることもできるが、発光効率の点では、赤色蛍光体としてジケトン、或いは、カルボン酸を配位子とするユーロピウム錯体を用いることが好ましい。
このような錯体の好ましい例としては、まず、下記式(1)で表される特定のβ−ジケトンのアニオンを配位子とする錯体が挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
式(1)において、pは1または2であり、qは1、2、3または4である。Xは各々同一であっても異なっていてもよく、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、炭素数1〜20の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、またはメルカプト基を表す。Yは各々同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜20の基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、またはメルカプト基を表す。Zは水素原子または重水素原子を表す。
【0016】
炭素数1〜20の基としては;
直鎖または分枝を有するアルキル基(Cn2n+1;n=1〜20)、およびパーフルオロアルキル基(Cn2n+1;n=1〜20)、パークロロアルキル基(CnCl2n+1;n=1〜20)などの直鎖または分枝を有するパーハロゲン化アルキル基;
直鎖または分枝を有するアルケニル基(ビニル基、アリル基、ブテニル基)、およびパーフルオロアルケニル基(パーフルオロビニル基、パーフルオロアリル基、パーフルオロブテニル基)、パークロロアルケニル基などの直鎖または分枝を有するパーハロゲン化アルケニル基;
シクロアルキル基(C2n−1;n=3〜20)、およびパーフルオロシクロアルキル基(C2n−1;n=3〜20)、パークロロアルキル基(CCl2n−1;n=3〜20)などの直鎖または分枝を有するパーハロゲン化アルキル基;
シクロアルケニル基(シクロペンテン−イル基、シクロヘキセン−イル基等)、およびパーフルオロシクロアルケニル基、パークロロアルケニル基などのパーハロゲン化アケニル基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の芳香族基、およびパーフルオロフェニル基、パーフルオロナフチル基、パーフルオロビフェニル基、パークロロフェニル基、パークロロナフチル基、パークロロビフェニル基などのパーハロゲン化芳香族基;
ピリジル基等のヘテロ芳香族基、およびパーフルオロピリジル基等のパーハロゲン化ヘテロ芳香族基;
ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、およびパーフルオロベンジル基などのパーハロゲン化アラルキル基;
等を挙げることができる。
【0017】
XおよびYで表される炭素数1〜20の基は、必要に応じて重水素原子、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、メルカプト基などの置換基で置換されていていてもよい。
また、炭素数1〜20の基の任意の位置のC−C単結合の間に−O−、−COO−、−CO−を一個または複数個介在させて、エーテル、エステル、ケトン構造としてもよい。
【0018】
XおよびYがアルケニル基である式(1)のユーロピウム錯体を、必要に応じてエチレン、プロピレンなどのオレフィンおよびハロゲン化オレフィン重合させて高分子ユーロピウム錯体としてもよい。
【0019】
式(1)で表される化合物において、Yとしては、前記のものが使用可能であるが、特に、ユーロピウム錯体あるいはユーロピウム錯体を含む固体担体の安定性および発光強度の点を考慮すると、炭素数1〜4のアルキル基、パーハロゲン化アルキル基、芳香族基、パーハロゲン化芳香族基、ヘテロ芳香族基、パーハロゲン化ヘテロ芳香族基が好ましく、なかでもパーフルオロアルキル基、芳香族基、ヘテロ芳香族基が最も好ましい。
【0020】
pは1または2であるが、好ましくは2である。qは1〜4のいずれかであるが、好ましくは3である。
【0021】
式(1)で表される錯体であってZが重水素原子Dであるものは、Zが水素原子である式(1)で表される錯体と重水素化剤を重水素置換反応することにより得られる。用いられる重水素化剤は、重水素を含むプロトン性化合物、具体的には、重水、重水素化メタノール、重水素化エタノールなどの重水素化アルコール、重塩化水素、重水素化アルカリなどが挙げられる。反応を促進させるためにトリメチルアミン、トリエチルアミンなどの塩基剤や添加剤を加えてもよい。重水素置換反応は、Zが水素原子である式(1)で表される錯体と重水素化剤を混合することにより得られるが、反応時に非プロトン性の溶媒を加えてもよい。非プロトン性溶媒としてはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系溶媒、ジメチルスルオキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。中でも、式(1)が溶解可溶な溶媒が好ましい。
【0022】
また、用いる重水素化剤の量としては、式(1)で表される錯体の総量(1質量部とする)に対して1〜100質量部程度が例示され、好ましくは1〜20質量部程度である。
【0023】
混合する方法としては特に限定されず、室温から150℃の温度で、好ましくは30℃から100℃の温度で、必要に応じて撹拌下、0.1〜100時間、好ましくは0.1〜20時間混合すればよい。
【0024】
撹拌後、重水素化剤および溶媒を留去することにより、重水素化錯体が得られる。また、必要に応じて、再結晶、カラムクロマト、昇華等の方法によりさらに精製可能である。
【0025】
式(1)で表される錯体の具体例としては、式(1)の表記に従って示すと、
X=H,Y=CF,Z=H,p=2,q=3の組合せで示されるもの(錯体化合物1−1)、
X=H,Y=CF,Z=D,p=2,q=3の組合せで示されるもの(錯体化合物1−2)、
などが挙げられる。
【0026】
また、ユーロピウム錯体の好ましい例としては、芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンのアニオン、あるいは芳香族基を含む置換基を有するカルボン酸イオンを配位子とする錯体が挙げられる。
【0027】
芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンのアニオンを配位子とする錯体としては、例えば、下記式(2)、(3)または(4)で表されるユーロピウム錯体が挙げられる。
(REu
(2)
(REu(R
(3)
〔(REu〕
(4)
式(2)、(3)および(4)において、Rは芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンのアニオンであり、Rはルイス塩基からなる補助配位子であり、Rは4級アンモニウムイオンである。
【0028】
式(2)、(3)および(4)における芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンとしては、少なくとも1つの芳香族基を有することが好ましく、さらに、この芳香族基としては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環(ヘテロ環)化合物から誘導される基が挙げられる。
芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン等が挙げられる。芳香族複素環化合物としては、フラン、チオフェン、ピラゾリン、ピリジン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン等の酸素、窒素、硫黄原子を含む複素環化合物が挙げられる。
【0029】
また、これらの芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環化合物の置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;トリフルオロメチル、ペンタフルオロメチル等のフルオロアルキル基;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基;ベンジル、フェネチル等のアリールオキシ基;ヒドロキシル基;アリル基;アセチル、プロピオニル等のアシル基;アセトキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、アセチルメチルアミノ等の置換アミノ基;メチルチオ、エチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ等の置換チオ基;メルカプト基;エチルスルフォニル、フェニルスルフォニル等の置換スルフォニル基;シアノ基;フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン基等が挙げられる。これらの置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0030】
β−ジケトンを構成する芳香族基以外の置換基としては、前述した芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環化合物の置換基と同様な置換基(但し、ハロゲン基は除く)が挙げられる。芳香族環を含む置換基を有するβ−ジケトンの具体例(1〜19)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
【化2】

【0032】
式(2)で表されるユーロピウム錯体の具体例(1〜7)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【化3】

【0034】
次に、式(3)で表されるユーロピウム錯体について説明する。式(3)におけるルイス塩基からなる補助配位子(R)としては特に限定されないが、通常、ユーロピウムイオンに配位可能な窒素原子または酸素原子を有するルイス塩基化合物から選択される。それらの例としては、置換基を有していてもよいアミン、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、スルホキシド等が挙げられる。補助配位子として使用される2個のルイス塩基化合物は、それぞれ異なる化合物でもよく、また、2個の化合物で1つの化合物を形成していてもよい。
【0035】
具体的には、例えば、アミンとしては、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、フェナントリジン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン等が挙げられる。アミンオキシドとしては、ピリジン−N−オキシド、2,2’−ビピリジン−N,N’−ジオキシド等の上記アミンのN−オキシドが挙げられる。ホスフィンオキシドとしては、トリフェニルホスフィンオキシド、トリメチルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド等が挙げられる。スルホキシドとしては、ジフェニルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド等が挙げられる。これらに置換する置換基としては、前述した置換基が例示される。中でも、特に、アルキル基、アリール基、アルコシキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン基等が好ましい。
【0036】
これらのルイス塩基化合物の中でも、ビピリジンやフェナントロリン等のように、分子内に配位する原子、例えば窒素原子等の2個存在する場合は、1つのルイス塩基化合物で2個の補助配位子と同様な働きをさせてもよい。なお、これらのルイス塩基化合物に置換する置換基としては、前述した置換基が例示される。中でも、特に、アルキル基、アリール基、アルコシキル基、アラルキル基、アリールオキシ基、ハロゲン基等が好ましい。
【0037】
補助配位子として使用するルイス塩基化合物(R)の具体例(1〜23)を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化4】

【0039】
式(3)で表されるユーロピウム錯体の具体例(1〜13)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
【化5】

【0041】
次に、式(4)で表されるユーロピウム錯体について説明する。式(4)におけるアンモニウムイオンとしては、アルキルアミン、アリールアミン、アラルキルイオンから誘導される4級アンモニウム塩が挙げられる。アミンの置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル等のアルキル基;ヒドロキシエチル、メトキシエチル等の置換アルキル基;フェニル、トリル等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0042】
式(4)で表されるユーロピウム錯体の具体例(1〜5)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化6】

【0044】
一方、芳香族基を含む置換基を有するカルボン酸イオンを配位子とする錯体としては、例えば、式(5)で表されるユーロピウム錯体が挙げられる。
(R−(X−COO)Eu(R
(5)
式(5)において、Rは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環または芳香族複素環を少なくとも1つ含む基であり、Xは2価の連結基であり、nは0または1であり、Rは、ルイス塩基からなる補助配位子である。
【0045】
式(5)で表される配位子は、芳香族環を少なくとも1つ含み、π電子を8個以上有し、π電子共役系を構成するカルボン酸イオンを配位子として用いることが、吸収波長域の点から好ましい。また、芳香族環の個数は、カルボン酸イオンの母体化合物の三重項エネルギーが、ユーロピウムイオン励起状態エネルギーレベルよりも高いものであれば特に制限されないが、通常、3環式以下の芳香族または芳香族複素環を用いることが好ましい。芳香族環の個数が4環以上の場合は、例えば、芳香族環を4環以上有するピレン等の化合物は、半導体発光素子等からの光を吸収して励起された三重項エネルギーが低くなり、ユーロピウム錯体が発光しなくなるおそれがある。
【0046】
式(5)中のRは、置換基を有していてもよい3環式以下の芳香族環、または複素芳香族環から誘導される1価の基であることが好ましい。芳香族環としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、インデン、ビフェニレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントレン、テトラリン、インダン、インデン等の芳香族単環式炭化水素または芳香族縮合多環式炭化水素;ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン等の芳香族炭化水素から誘導される化合物等が挙げられる。複素(ヘテロ)芳香族環としては、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピリジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、クマリン、ベンゾピラン、カルバゾール、キサンテン、キノリン、トリアジン等の芳香族単環式複素環または芳香族縮合多環式複素環等が挙げられる。
【0047】
また、Rが有していてもよい置換基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基;トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル等のフルオロアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;エチニル基;フェニルエチニル、ピリジルエチニル、チエニルエチニル等のアリールエチニル基;メトキシ、エトキシ等のアルコキシ基;フェニル、ナフチル等のアリール基;ベンジル、フェネチル等のアラルキル基;フェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ等のアリールオキシ基;ヒドロキシル基;アリル基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル、トルオイル、ビフェニルカルボニル等のアシル基;アセトキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル等のアリールオキシカルボニル基;カルボキシル基;カルバモイル基;アミノ基;ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、アセチルメチルアミノ等の置換アミノ基;メチルチオ、エチルチオ、フェニルチオ、ベンジルチオ等の置換チオ基;メルカプト基;エチルスルフォニル、フェニルスルフォニル基等の置換スルフォニル基;シアノ基;フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン基等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルキル基、アリールオキシ基、アラルキル基、エチニル基、ハロゲン基が好ましい。なお、Rにおいては、これらの置換基に限定されるものではない。また、これらの置換基はさらに置換基を有していてもよい。
【0048】
次に、式(5)におけるカルボン酸イオンは、2価の連結基であるXを有しない場合(n=0)と、有する場合(n=1)とに分けられる。更に、2価の連結基であるXを有する場合(n=1)、Xは、カルボニル基を有する場合と、有しない場合との2種類に分けられる。このため、式(5)におけるカルボン酸イオンは、さらに、カルボニル基を有しない式(5−1)と、カルボニル基を有する式(5−2)とで表される。ユーロピウム錯体は、これらのカルボン酸イオンを配位子とする錯体構造のいずれであってもよい。
−R−COO (5−1)
−(CO)−(R−COO (5−2)
【0049】
式(5−1)および式(5−2)において、Rは、2価の連結基となるものであればよいが、例えば、アルキレン基、環集合炭化水素から誘導される2価の連結基、脂肪族環、芳香族環、複素環から誘導される2価の連結基等が挙げられる。また、式(5−2)において、mは0または1である。Rの、アルキレン基としては、メチレン、エチレン等が挙げられる。環集合炭化水素としては、ビフェニル、テルフェニル、ビナフチル、シクロヘキシルベンゼン、フェニルナフタレン等が挙げられる。脂肪族環としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ノルボルナン、ビシクロヘキシル等が挙げられる。芳香族環としては、前述した芳香族環の具体例と同様な化合物が挙げられる。複素環としては、前述した芳香族複素環の他に、ピラゾリン、ピペラジン、イミダゾリジン、モルホリン等の脂肪族複素環が挙げられる。その他、−SCH−等のチオアルキレン;−OCH−等のオキシアルキレン;ビニレン(−C=C−)等が挙げられる。なお、Rは、これらの2価の置換基に限定されるものではない。また、これらの2価の置換基はさらに置換基を有していてもよい。
【0050】
式(5)におけるカルボン酸イオンが誘導されるカルボン酸の具体例を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。式(5)においてnが0の場合の化合物は、以下のカルボン酸(1〜10)が挙げられる。
【0051】
【化7】

【0052】
式(5)においてnが1であり、XがRである場合(式(5−1))の化合物は、以下のカルボン酸(11〜15)が挙げられる。
【0053】
【化8】

【0054】
式(5−2)において、mが0の場合の化合物は、以下のカルボン酸(16,17)が挙げられる。
【0055】
【化9】

【0056】
式(5−2)において、mが1の場合であって、Rがフェニル基、Rがフェニル基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(18〜30)が挙げられる。
【0057】
【化10】

【0058】
式(5−2)において、mが1の場合であって、Rがフェニル基、Rがナフチル基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(31〜34)が挙げられる。
【0059】
【化11】

【0060】
式(5−2)において、mが1の場合であって、Rがフェニル基、Rがその他の基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(35〜37)が挙げられる。
【0061】
【化12】

【0062】
式(5−2)において、mが1の場合であって、Rがナフチル基、Rが芳香族環の場合の化合物は、以下のカルボン酸(38〜41)が挙げられる。
【0063】
【化13】

【0064】
式(5−2)において、mが1の場合であって、Rがナフチル基、Rがその他の基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(42〜44)が挙げられる。
【0065】
【化14】

【0066】
式(5−2)において、mが1の場合であって、Rがアセナフチル基、Rがフェニル基その他の場合の化合物は、以下のカルボン酸(45〜48)が挙げられる。
【0067】
【化15】

【0068】
式(5−2)において、mが1の場合であって、Rがフルオレニル基、Rがフェニル基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(49〜55)が挙げられる。
【0069】
【化16】

【0070】
式(5−2)において、mが1の場合であって、Rがフェナントレニル基、Rがフェニル基その他の場合の化合物は、以下のカルボン酸(56〜59)が挙げられる。
【0071】
【化17】

【0072】
式(5−2)において、mが1の場合であって、Rが複素環基、Rがフェニル基の場合の化合物は、以下のカルボン酸(60,61,I−1〜I−21)が挙げられる。
【0073】
【化18】

【0074】
【化19】

【0075】
【化20】

【0076】
式(5)における配位子としてのカルボン酸イオンが誘導されるカルボン酸は、公知の合成方法により合成することができる。合成法については、例えば、新実験化学講座第14巻「有機化合物の合成と反応(II)」第921頁(1977)日本化学会編、または、第4版実験化学講座第22巻「有機合成IV」第1頁(1992)日本化学会編等に記載されている。代表的な合成法としては、対応する第1アルコールやアルデヒドの酸化反応、エステルやニトリルの加水分解反応、酸無水物によるフリーデル・クラフツ反応等が挙げられる。
【0077】
特に、無水フタル酸、ナフタル酸無水物、無水こはく酸、ジフェン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、2,3−ピリダジンジカルボン酸無水物等のジカルボン酸の環状無水物を用いたフリーデル・クラフツ反応では、分子内にカルボニル基を有するカルボン酸が合成できる。例えば、芳香族炭化水素または芳香族複素環と無水フタル酸とを用いたフリーデル・クラフツ反応によれば、下記反応式に示すように、ベンゼン環のオルト位にカルボニル基が結合したカルボン酸が容易に合成できる。ベンゼン環のオルト位にカルボニル基が結合したカルボン酸は、パラ位置換体に比べ輝度が高い錯体が得られやすいことから好ましい。なお、式中、Arは、芳香族炭化水素または芳香族複素環を表す。
【0078】
【化21】

【0079】
式(5)におけるルイス塩基からなる補助配位子(R)としては、前述した式(3)におけるルイス塩基からなる補助配位子(R)と同様な化合物が挙げられる。
【0080】
このようなカルボン酸を配位したユーロピウム錯体としては以下のものを例示することができる。
【0081】
【化22】

【0082】
【化23】

【0083】
【化24】

【0084】
【化25】

【0085】
【化26】

【0086】
【化27】

【0087】
本発明においては、赤色蛍光性錯体であるユーロピウム錯体とともに用いられる青色蛍光体と緑色蛍光体としては、前記の蛍光性錯体の他、公知の蛍光体を使用することができる。このような蛍光体としては、例えば、青色蛍光体として、ZnS:Ag、Sr(POCl:Eu、BaMgAl1017:Eu等の無機蛍光体が挙げられる。また、緑色蛍光体としては、ZnS:Cu、ZnS:CuAl、BaMgAl1017:Eu,Mn等の無機蛍光体が挙げられる。
白色光を発光させるには、これらの蛍光体を組み合わせて使用すればよい。
【0088】
本発明に用いるLED(発光ダイオード)は、近紫外LEDであり、発光ピーク波長としては、360nmから470nmの範囲にあることが好ましく、特に、380nmから470nmにピーク波長を有することが好ましい。とりわけ、405±10nmの発光ピーク波長を有するLEDを用いることが好ましい。
ピーク波長が過度に短波長側にあると、錯体等の有機化合物が光劣化しやすくなり、ピーク波長が過度に長波長側にある場合は、蛍光性錯体の発光に必要な光励起エネルギーが得られず、蛍光体が発光できなくなる。
【実施例1】
【0089】
昭和電工株式会社製の近紫外LED GU35S400T(中心波長400nm)を実装したステム2に、金属キャップ4を装着した。
金属キャップ4は、材質として、コバールを用いた。このものは、内径1.8mm、外径2.0mm、長さ5.0mmのものである。また、天面には、φ1.6mm径で0.5mm厚の日本電気硝子社製のアルミノホウ珪酸ガラス(硼珪酸ガラスBFK)のガラス6を融着・接着したものである。封着温度は、950℃とした。この内周面および天面に、窒素中の雰囲気で、前述のユーロピウム錯体化合物1−1[式(1)において、X=H、Y=CF、Y=H、p=2、q=3の組合せのもの]をシリケート樹脂に分散させて塗布した。ステム2の外周面の半田メッキには、Sn系半田であるSnCu系のCu2.5%の半田メッキを用い、金属キャップ4にステム2を常温の下、所定の圧力で圧入して気密封止した(図2、3参照)。
気密性をレッド液で検査した。この液に浸漬して、6時間後、外観検査で判断した。その結果、気密性に優れることがわかった。
その結果、高い色再現性を持った赤色発光が観察された。
【実施例2】
【0090】
実施例1と同様の金属キャップ4を用い、この内部に、窒素中の雰囲気で、前述のユーロピウム錯体化合物1−1[式(1)において、X=H、Y=CF、Y=H、p=2、q=3の組合せのもの]をシリケート樹脂に分散させて充填するほかは、実施例1と同様にして、金属キャップ4にステム2を常温の下、所定の圧力で圧入し、気密封止した(図4参照)。
気密性をレッド液で検査した。この液に浸漬して、6時間後、外観検査で判断した。その結果、気密性に優れることがわかった。
その結果、高い色再現性を持った赤色発光が観察された。特に、本実施例では、シリケート樹脂に分散させた有機系蛍光体を金属キャップ内に充填させていたため、光の取り出し効率が向上していた。
【実施例3】
【0091】
実施例1、2において、注入するペーストとして、BaMgAl1017:Eu(青色蛍光体)、ZnS:Cu(緑色蛍光体)、および実施例1と同じユーロピウム錯体化合物1−1(赤色蛍光体)の混合物をポリビニルアルコールに分散させたものを用いるほかは同様の操作を行い、実施例1、2と同様にして発光装置を組み立てたところ、高い色再現性を持った白色発光が観察された。
【実施例4】
【0092】
実施例1〜3において、ユーロピウム錯体(赤色蛍光体)を、前述の各種例示化合物にかえるほかは、同様の操作を行ったところ、同様に、良好な結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0093】
白色LED、特に色ばらつきの少ない白色LEDを実現できる発光装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】発光装置の実施形態の構成を示す正面図である。
【図2】発光装置の製造方法を説明するための構成図である。
【図3】発光装置の製造方法を説明するための構成図である。
【図4】発光装置の他の実施形態の製造方法を説明するための構成図である。
【図5】発光装置のさらに他の実施形態の製造方法を説明するための構成図である。
【符号の説明】
【0095】
1 発光素子
10 発光装置
2 ステム
3 リード
4 金属キャップ
5 半田
6 ガラス
61 球体のガラスレンズ
7 有機系蛍光体
8 ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の絶縁されたリード線が付いた円筒状のステムと、発光素子と、前記ステムに嵌合し、その天面に光出射用の透明部材を有し、かつその内部に有機系蛍光体を有する金属キャップとを備え、前記ステム上に前記発光素子を実装し、前記金属キャップに前記ステムを圧入して前記有機系蛍光体を気密封止したことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光素子は、近紫外光を発光する近紫外LEDである請求項1の発光装置。
【請求項3】
前記透明部材は、ガラス板またはガラスレンズである請求項1または2の発光装置。
【請求項4】
前記有機系蛍光体は、前記金属キャップの天面および/または内周面の少なくとも一部に塗布されているか、あるいは内部に充填されて気密封止されている請求項1〜3のいずれかの発光装置。
【請求項5】
前記ステムの外周部に、前記金属キャップ圧入時の緩衝材となる金属緩衝材を付与した請求項1〜4のいずれかの発光装置。
【請求項6】
前記金属緩衝材が柔らかい金属のメッキ膜である請求項5の発光装置。
【請求項7】
前記金属緩衝材が半田材料のメッキ膜である請求項6の発光装置。
【請求項8】
前記半田材料は、SnCu合金から形成されている請求項7の発光装置
【請求項9】
前記有機系蛍光体は、赤色蛍光体錯体である請求項1〜8のいずれかの発光装置。
【請求項10】
前記赤色蛍光体錯体は、Euのジケトンまたはカルボン酸錯体である請求項9の発光装置。
【請求項11】
前記有機系蛍光体に加え、さらに、青および/または緑色の蛍光体を用いる請求項1〜10のいずれかの発光装置。
【請求項12】
少なくとも2本の絶縁されたリード線が付いた円筒状のステムに発光素子を実装し、さらに、金属キャップの天面に光出射用の透明部材を一体化して、この金属キャップ内に、不活性雰囲気中で、有機系蛍光体を塗布または充填し、前記ステムと前記金属キャップとの接合部分となる前記ステムの外周部分に半田材料を付与し、前記ステムを前記金属キャップに常温で圧入することによって前記有機系蛍光体を気密封止したことを特徴とする発光装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−124114(P2008−124114A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303734(P2006−303734)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】