説明

発光装置及び照明装置

【課題】基板上に枠部材を設ける工程を自動化しやすく、また、ボンディングワイヤの接続を安定して行うことが可能な発光装置及びこの発光装置を用いた照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、給電導体14、15を有する基板10と、この基板10に実装された複数の発光素子71と、各発光素子71の電極に接続されるとともに、各発光素子71のうち、特定の発光素子71aの電極が前記給電導体14、15に接続されるボンディングワイヤ72と、このボンディングワイヤ72の前記接続後に、前記複数の発光素子71の実装領域を囲むように基板10上に塗布された所定の初期粘度及び熱硬化性を有する樹脂製の枠部材73と、この枠部材73の内側に設けられ、前記発光素子71及びボンディングワイヤ72を含めて封止する透光性を有する封止部材74とを備える発光装置70である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED等の発光素子を用いた発光装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、照明装置の光源としてLEDが用いられるようになってきている。この光源は、基板に多数のLEDのベアチップを配設し、各LEDチップをボンディングワイヤで電気的に接続して基板に実装するものである。また、多数のLEDチップを囲む枠部材を設け、この枠部材内にLEDチップ及びボンディングワイヤを封止するための封止部材を形成するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示された発光装置の製造方法は、基板上に配線パターンを形成する工程と、配線パターン間に発光素子を搭載する工程と、発光素子と配線パターンとを電気的に接続する工程と、貫通孔を有するシリコーンゴムシートを基板上に載置する工程と、シリコーンゴムシートの貫通孔内に、発光素子を封止する封止体を形成する工程とを含むものである。ここで、枠部材は、貫通孔を有するシリコーンゴムシートに相当し、このシリコーンゴムシートは基板上に両面接着シートで接着するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−227412号公報(段落[0063]〜[0070])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のものでは、発光装置の構成部品としてシリコーンゴムシートを用いており、このゴムシートを基板上に接着するものである。この工程は、自動化が容易ではなく、あえて自動化する場合には、設備費用等が多大になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、基板上に枠部材を設ける工程を自動化しやすく、また、ボンディングワイヤの接続を安定して行うことが可能な発光装置及びこの発光装置を用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発光装置は、給電導体を有する基板と;この基板に実装された複数の発光素子と;各発光素子の電極に接続されるとともに、各発光素子のうち、特定の発光素子の電極が前記給電導体に接続されるボンディングワイヤと;このボンディングワイヤの前記接続後に、前記複数の発光素子の実装領域を囲むように基板上に塗布された所定の初期粘度及び熱硬化性を有する樹脂製の枠部材と;この枠部材の内側に設けられ、前記発光素子及びボンディングワイヤを含めて封止する透光性を有する封止部材と;を具備することを特徴とする。
【0008】
基板は、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れた金属材料をベース板として適用するのが好ましいが、格別構成材料が限定されるものではない。ベース板の材料は、絶縁材とする場合には、放熱特性が比較的良好で、耐久性に優れたセラミック材料又は合成樹脂材料を適用できる。発光素子とは、LED等の固体発光素子である。また、発光素子の実装個数には特段制限はない。
【0009】
特定の発光素子とは、その素子電極がボンディングワイヤによって給電導体に接続される発光素子を指している。通常は、給電導体の近くに配設された発光素子が該当する。
【0010】
ボンディングワイヤは、例えば、金(Au)の細線を用いることが好ましいが、これ以外の金属細線を用いることも可能である。封止部材は、例えば、透明シリコーン樹脂を用いることができる。また、封止部材には、所望とする発光色を得るために適宜蛍光体を含有することができる。
【0011】
請求項2に記載の発光装置は、請求項1に記載の発光装置において、前記枠部材は、複数の発光素子の実装領域を囲むように多角形状に塗布され、その塗布工程における塗布の軌跡は、多角形状の角部を始点とし、当該角部を通過した角部の近傍を終点としたことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【0012】
多角形状とは、例えば、三角形、四角形、五角形や六角形を意味している。また、勿論、これらの多角形状の角部がアール状に形成される場合や辺が多少湾曲している場合が含まれる。この構成により、枠部材は、基板上に隙間なく密着して塗布される。
【0013】
請求項3に記載の照明装置は、装置本体と;装置本体に配設された請求項1又は請求項2に記載の発光装置と;を具備することを特徴とする。
照明装置には、光源や屋内又は屋外で使用される照明器具、ディスプレイ装置等が含まれる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、基板上に枠部材を設ける工程を自動化しやすく、また、ボンディングワイヤの給電導体との接合の安定性及び信頼性を確保できる発光装置を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、枠部材を基板上に密着して塗布することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、上記請求項の発明の効果を奏する照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る照明装置を示す斜視図である。
【図2】同断面図である。
【図3】同発光装置を示す斜視図である。
【図4】同発光装置の基板における反射層、正極側給電導体及び負極側給電導体のパターンを示す平面図である。
【図5】同発光装置を示す平面図である。
【図6】図5中、X−X線に沿って示す断面図である。
【図7】同発光装置の製造工程を示す断面図である。
【図8】発光装置の製造工程の比較例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態における枠部材の形成方法を模式的に示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図10】同枠部材の形成過程をディスペンサの動作とともに模式的に示す説明図であり、(a)〜(f)は、形成過程における各段階の平面図及び側面図である。
【図11】枠部材の形成方法の比較例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る発光装置及び照明装置について図1乃至図11を参照して説明する。なお、各図において同一部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0019】
図1及び図2において、照明装置として電球形LEDランプ1が示されている。LEDランプ1は、複数の発光素子が実装された基板10等からなる発光装置70
、この発光装置70と熱的に結合された本体20、発光素子を点灯制御する点灯回路30が配設された点灯回路基板31、この点灯回路基板31が収納されたカバー部材40、カバー部材40に取付けられた口金50及び発光装置70を覆って本体20に取付けられたグローブ60を備えて構成されている。
【0020】
本体20は、例えば、熱伝導性が良好なアルミニウム等の金属材料からなり、一端側から他端側へ向かって徐々に拡径された略円柱をなし、外周面には複数の放熱フィン21が一体に形成されている。本体20の他端側には、基板10を取付けるための取付凹部22が形成されているとともに、一端側に、カバー部材40を挿入する嵌合凹部23が形成されている。また、本体20の他端側の外周部には、グローブ60の開口側に対向する段部25が全周に亘って形成されており、この段部25には、グローブ60から下方に拡散された光を反射するリング61が取付けられている。放熱フィン21は、本体20の一端側から他端側へと径方向への突出量が徐々に大きくなるように傾斜して形成されており、これら放熱フィン21は、周方向に互いに略等間隔で形成されている。
【0021】
点灯回路30は、四角形平板状の点灯回路基板31に回路部品が実装されて構成されている。点灯回路基板31には、その両面に亘って、トランジスタQ、抵抗素子R、定電圧ダイオードZD、全波整流器REC及びコンデンサC等の回路部品が実装されている。また、点灯回路基板31は、縦方向、つまり、長手方向を上下に縦形配置してカバー部材40内に収納されている。なお、前記基板10と点灯回路30とは、図示しない配線孔を挿通するリード線によって電気的に接続されている。
【0022】
カバー部材40は、例えば、PBT樹脂等の絶縁性を有する材料により、嵌合凹部23内の形状に沿って略円筒状に形成されている。また、カバー部材40の中間部の外周面には、本体20の一端側と口金50との間を絶縁するための絶縁部であるフランジ部42が径方向に突出して周方向全体に介在している。なお、カバー部材40の内部には、点灯回路基板31を埋没させるように放熱性及び絶縁性を有する充填材であるシリコーン系の樹脂等を充填してもよい。
【0023】
口金50は、E型のものであり、点灯回路基板31と配線により電気的に接続されており、図示しない照明器具のランプソケットにねじ込まれるねじ山を備えた筒状のシェル51と、このシェル51の頂部に絶縁部52を介して設けられたアイレット53とを備えている。
【0024】
グローブ60は、光拡散性を有するガラス又は合成樹脂等により球面状に形成されており、本体20の他端側と連続する形状となっている。また、このグローブ60は、球面状の頂部から徐々に下方に向かって拡開するように形成され、最大径位置から縮径されるように形成されている。
【0025】
発光装置70は、図3乃至図6に示すように、基板10と、複数の発光素子71と、各発光素子71の電極に接続されたボンディングワイヤ72と、枠部材73と、封止部材74とを備えている。
【0026】
基板10は、略四角形状に形成されている。基板10には、各発光素子71の放熱性を高めるうえで、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れた金属材料をベース板として適用するのが好ましい。図6において、このような基板10として、アルミニウム製のべース板11の一面に絶縁層12が積層された金属製のべース基板が示されている。絶縁層12は、電気絶縁性の有機材料である合成樹脂、例えば、エポキシ樹脂で形成されている。なお、ベース板の材料は、絶縁材とする場合には、放熱特性が比較的良好で、耐久性に優れたセラミック材料又は合成樹脂材料を適用できる。
【0027】
図4及び図6に示すように、絶縁層12の上には、反射層13、正極側給電導体14及び負極側給電導体15が同様の層構成で積層されている。図4に示すように、反射層13は、基板10の中央部に略四角形状に形成されている。正極側給電導体14及び負極側給電導体15は、反射層13の対向する辺に平行に、かつ反射層13とは、離間距離(絶縁距離)を空けて、対をなして形成されている。そして、正極側給電導体14及び負極側給電導体15は、それぞれ全体が略L字状で線対称に形成されている。なお、正極側給電導体14及び負極側給電導体15の一端側は、給電端子部16、17として構成されている。
【0028】
図6に示すように、これら反射層13、正極側給電導体14及び負極側給電導体15は、三層構成であり、絶縁層12の上に、第一層18aとして銅パターンがエッチングにより設けられている。この銅パターン層の上には、第二層18bとしてニッケル(Ni)が無電解めっき処理されており、第三層18cには、銀(Ag)が無電解めっき処理されている。反射層13、正極側給電導体14及び負極側給電導体15の第三層18c、すなわち、表層は、いずれも銀(Ag)めっきが施されており、全光線反射率は、90%と高いものとなっている。なお、絶縁層12上には、適宜レジスト層12aが積層されている。
【0029】
複数の発光素子71は、LEDのベアチップからなる。LEDのベアチップには、例えば、白色系の光を発光部で発光させるために、青色の光を発するものが用いられている。このLEDのベアチップは、シリコーン樹脂系の接着剤75を用いて、反射層13上に接着されている。これら複数の発光素子71は、マトリクス状に並べられて複数の列、例えば、6列の発光素子列を形成している(図5参照)。
【0030】
LEDのベアチップは、例えば、InGaN系の素子であり、透光性のサファイア素子基板に発光層が積層されており、発光層は、n型窒化物半導体層と、InGaN発光層と、p型窒化物半導体層とが順次積層されて形成されている。そして、発光層に電流を流すための電極は、p型窒化物半導体層上にp型電極パッドで形成されたプラス側電極と、n型窒化物半導体層上にn型電極パッドで形成されたマイナス側電極とで構成されている。これら、電極は、ボンディングワイヤ72により電気的に接続されている。ボンディングワイヤ72は、金(Au)の細線からなっており、実装強度の向上とLEDのベアチップの損傷低減のため金(Au)を主成分とするバンプを介して接続されている。
【0031】
具体的には、個々の発光素子列において、その列が延びる方向に隣接された発光素子71の異極の電極同士、つまり、隣接された発光素子71の内で一方の発光素子71のプラス側電極と、隣接された発光素子71の内で他方の発光素子71のマイナス側電極とがボンディングワイヤ72で順次接続されている。これによって、個々の発光素子列を構成する複数の発光素子71は電気的に直列に接続される。したがって、複数の発光素子71は通電状態で一斉に発光される。
【0032】
さらに、個々の発光素子列において、特定の発光素子、すなわち、列の端に配置された発光素子71aの電極は、正極側給電導体14又は負極側給電導体15にボンディングワイヤ72で接続されている。したがって、前記各発光素子列は電気的には並列に設けられていて、正極側給電導体14及び負極側給電導体15を通じて給電されるようになっている。そのため、各発光素子列の内のいずれか一列がボンディング不良等に起因して発光できなくなることがあっても発光装置70全体の発光が停止することはない。
【0033】
枠部材73は、例えば、ディスペンサを用いて所定の粘度を有する未硬化のシリコーン樹脂を基板10上に枠状に塗布し、その後に加熱硬化することにより、基板10上に接着されている。この枠部材73は、多角形状、すなわち、四角形状に塗布され、反射層13と同様な略四角形状の内周面を有している。内周面で囲まれた枠部材73の内側に、反射層13の全体、正極側給電導体14及び負極側給電導体15のボンディングワイヤ72の接続部分が配設されている。つまり、発光素子71の実装領域は、枠部材73によって囲まれた状態となっている。
【0034】
枠部材73は、上記のようにシリコーン樹脂で形成されるので、光や熱による劣化が生じ難く、表層に銀(Ag)めっきが施された反射層13、正極側給電導体14及び負極側給電導体15の変色を抑制することができる。したがって、これら反射層13、正極側給電導体14及び負極側給電導体15による反射効率の低下を軽減できる。
【0035】
仮に、枠部材を形成する材料にエポキシ樹脂を用いると、表層の銀(Ag)めっきに有機物が付着し、表層が劣化し変色して反射効率の低下をもたらすこととなる。また、シリコーン樹脂に酸化チタンを含有させて枠部材73を形成してもよい。この場合は、さらに、光による表層の変色や劣化を防止することが可能となる。
【0036】
封止部材74は、透光性合成樹脂、例えば、透明シリコーン樹脂製であり、枠部材73の内側に充填されて基板10上に設けられている。封止部材74は、反射層13、正極側給電導体14及び負極側給電導体15のボンディングワイヤ72の接続部分
、各発光素子71、ボンディングワイヤ72を封止している。
【0037】
封止部材74は、蛍光体を適量含有している。蛍光体は、発光素子71が発する光で励起されて、発光素子71が発する光の色とは異なる色の光を放射する。発光素子71が青色光を発する本実施形態では、白色光を出射できるようにするために、蛍光体には青色の光とは補色の関係にある黄色系の光を放射する黄色蛍光体が使用されている。封止部材74は、未硬化の状態で枠部材73の内側に所定量注入された後に加熱硬化させて設けられている。そのため、封止部材74の封止面積は枠部材73で規定されている。
【0038】
図3に示すように、基板10には、その上面に半田付けされた給電コネクタ19が設けられている。給電コネクタ19は、正極側給電導体14及び負極側給電導体15の一端側の給電端子部16、17と接続されて、さらに、前記点灯回路30と電気的に接続されている。これにより発光素子71に点灯回路30から電力が供給され、発光素子71は点灯制御される。
【0039】
上記のような発光装置70の製造工程の概要について図7を参照して説明する。まず、図7(a)に示すように、絶縁層12の上に、それぞれ三層構成をなす反射層13、正極側給電導体14及び負極側給電導体15を形成する。次に、図7(b)に示すように、複数の発光素子71を反射層13の上にマトリクス状に並べて接着する。
その後、ボンディングワイヤ72によって隣接する発光素子71の異極の電極同士を接続する。また、個々の発光素子列において、その列の端に配置された発光素子71aの電極を正極側給電導体14又は負極側給電導体15にボンディングワイヤ72で接続する。
【0040】
次いで、図7(c)に示すように、図示しないディスペンサを用いて、所定の粘度を有する未硬化のシリコーン樹脂を反射層13、正極側給電導体14及び負極側給電導体15を囲むように基板10上に塗布し、その後に加熱硬化することにより枠部材73を形成する。続いて、図7(d)に示すように、枠部材73の内側に、未硬化の状態で透明シリコーン樹脂製の封止部材74を充填し、加熱硬化させて封止する。なお、枠部材73及び封止部材74の加熱硬化の工程は、連続しているため、同時に行うことができる。
【0041】
次に、図7(c)に示す枠部材73の形成方法を図9及び図10を参照して説明する。ディスペンサDを用いて基板10上に枠部材73を線引き塗布して自動化するものである。図9に示すように、ディスペンサDのノズルが四角形状の軌跡を描くように動作させて、未硬化のシリコーン樹脂、例えば、塗布後硬化前の樹脂の形状が崩れて流れ出さず、形状が保持できる初期粘度150Pa・s以上の樹脂を塗布する。本実施形態では、粘度230Pa・sのシリコーン樹脂を用いている。ディスペンサDのノズルの始点Sは、四角形状の角部であり、終点Eは、始点Sの角部を少しばかり通過した一辺上の中間部である。したがって、ディスペンサDのノズルの軌跡において、軌跡が重複する部分は、重ね塗りWがなされる。
【0042】
図10において、まず、図10(a)に示すように、ディスペンサDのノズルを四角形状の角部を始点として時計回りの方向に動作させる。図10(b)に示すように、2番目の角部を通過し、さらに、図10(c)に示すように、四角形状の軌跡を描いていく。続いて、図10(d)のように、始点の角部を少しばかり通過させ、図10(e)に示すように、ディスペンサDのノズルを徐々に上方へ引き上げていく。このように、枠部材73の塗布が完成する(図10(f))。このとき、重ね塗りWがされた部分は、盛り上がった状態となっており、高さ寸法が他の部分より若干高く形成される。
【0043】
以上のような枠部材73の形成方法によれば、枠部材73の形成が自動化できる。また、ディスペンサDのノズルの始点Sを四角形状の角部とし、終点を角部を少しばかり通過した部分としたので、角部の近傍において重ね塗りWがなされる。したがって、枠部材73を基板10の表面に対して隙間なく密着させることができる。さらに、重ね塗りWの部分は、枠部材73の量、すなわち、未硬化のシリコーン樹脂の量が多くなり、形状が崩れて側方に広がる可能性があるが、重ね塗りWの部分は、角部の近傍であるため、広がりが生じたとしても、常に内側へ広がる傾向となり、広がる方向が一定化する。
【0044】
このため、枠部材73の内側に充填される蛍光体を含有した封止部材74の厚さ寸法のばらつきを抑制することができる。したがって、発光素子71から出射される光の輝度や発光色を安定化させることが可能となる。
【0045】
これに対し、図11に示すように、例えば、ディスペンサDのノズルの軌跡において、始点S及び終点Eを四角形状の一辺上の中間部とした場合には、重ね塗りWの部分が側方に広がる方向は一定化せず不安定なものとなる。例えば、図示矢印で示す方向のどちらの方向に広がるか、又は双方に広がるか、塗布条件等により左右されやすくなる。したがって、この場合は、枠部材73の内側に充填される封止部材74の厚さ寸法のばらつきが生じやすくなる。
【0046】
ところで、本発明者は、枠部材の形成の自動化を実現するにあたり、発光装置70の製造工程の順序を変えて、その工程を試行してみた。図8を参照して一例を説明する。前記本実施形態の製造工程(図7)と本例との主な相違は、本実施形態の製造工程においては、枠部材73の形成は、発光素子71を反射層13の上に接着し、ボンディングワイヤ72によって接続した後に行ったが、本例においては、枠部材73の形成は、発光素子71を反射層13の上に接着し、ボンディングワイヤ72によって接続する前に行う点にある。
【0047】
本例では、まず、図8(a)に示すように、絶縁層12の上に、それぞれ三層構成をなす反射層13、正極側給電導体14及び負極側給電導体15を形成する。次に、図8(b)に示すように、ディスペンサを用いて、所定の粘度を有する未硬化のシリコーン樹脂を反射層13、正極側給電導体14及び負極側給電導体15を囲むように基板10上に塗布し、その後に加熱硬化することにより枠部材73を形成する。その後、図8(c)に示すように、複数の発光素子71を反射層13の上にマトリクス状に並べて接着し、ボンディングワイヤ72によって隣接する発光素子71の異極の電極同士を接続する。また、個々の発光素子列において、その列の端に配置された発光素子71aの電極を正極側給電導体14又は負極側給電導体15にボンディングワイヤ72で接続する。次に、図8(d)に示すように、枠部材73の内側に、未硬化の状態で透明シリコーン樹脂製の封止部材74を充填し、加熱硬化させて封止する。
【0048】
この製造方法の試行の結果、次のような問題点が判明した。(1)発光素子71aの電極を正極側給電導体14又は負極側給電導体15に接続するボンディングワイヤ72が、正極側給電導体14又は負極側給電導体15に接合できず、また、接合できても接合強度が弱く、接合の安定性、信頼性に欠ける。これは、特に、枠部材73の加熱硬化中にシリコーン樹脂中のシロキシサンが拡散し、正極側給電導体14又は負極側給電導体15の表層、すなわち、第三層18cの銀(Ag)めっき部分に付着し、ボンディングワイヤ72の接合を妨げることとなっていると考えられる。(2)枠部材73の形成工程において、未硬化のシリコーン樹脂を塗布後、加熱硬化をすることなく、30分以上放置したままにしておくと、粘度の関係も相俟ってシリコーン樹脂が側方に広がり周囲に浸透して、正極側給電導体14又は負極側給電導体15の表層、すなわち、第三層18cの銀(Ag)めっき部分に付着して汚してしまうという不具合が生じる。(3)図8(b)に示すように、枠部材73と正極側給電導体14又は負極側給電導体15とは、ボンディングワイヤ72の接続作業のため一定の間隔dを空けることが必要であり、また、望ましい。この場合、この間隔dによって光の反射に寄与しない領域が設けられてしまうことなり、光の放射効率を低下させてしまうこととなる。
【0049】
以上のような試行の結果、前記本実施形態の製造工程(図7参照)が最適であり、これによって、ボンディングワイヤ72の正極側給電導体14又は負極側給電導体15との接合強度、接合の安定性及び信頼性を確保できるとの見解を得た。また、枠部材73を正極側給電導体14又は負極側給電導体15に接近させることが可能であり、正極側給電導体14及び負極側給電導体15の表層を有効に利用して光の反射効率を高めることができる。
【0050】
上記構成の発光装置70が点灯回路30により通電されると、封止部材74で覆われた各発光素子71が一斉に発光されて、発光装置70は白色の光を出射する面状光源として使用される。この発光中において、反射層13は、各発光素子71が発した熱を拡散するヒートスプレッダとして機能する。さらに、発光装置70の発光中、発光素子71が放射した光のうちで基板10側に向かった光は、反射層13や正極側給電導体14及び負極側給電導体15の表層で主として光の利用方向に反射される。
【0051】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、前記実施形態においては、発光素子列において、その列が延びる方向に隣接された発光素子の異極の電極同士をボンディングワイヤで順次接続するものについて説明したが、隣接された発光素子の電極を基板に形成された配線パターンを介して接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1・・・照明装置(LEDランプ)、10・・・基板、14・・・正極側給電導体、
15・・・負極側給電導体、20・・・装置本体、70・・・発光装置、
71・・・発光素子(LEDチップ)、72・・・ボンディングワイヤ、
73・・・枠部材、74・・・封止部材、S・・・枠部材の塗布工程の始点、
E・・・枠部材の塗布工程の終点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電導体を有する基板と;
この基板に実装された複数の発光素子と;
各発光素子の電極に接続されるとともに、各発光素子のうち、特定の発光素子の電極が前記給電導体に接続されるボンディングワイヤと;
このボンディングワイヤの前記接続後に、前記複数の発光素子の実装領域を囲むように基板上に塗布された所定の初期粘度及び熱硬化性を有する樹脂製の枠部材と;
この枠部材の内側に設けられ、前記発光素子及びボンディングワイヤを含めて封止する透光性を有する封止部材と;
を具備することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記枠部材は、複数の発光素子の実装領域を囲むように多角形状に塗布され、その塗布工程における塗布の軌跡は、多角形状の角部を始点とし、当該角部を通過した角部の近傍を終点としたことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
装置本体と;
装置本体に配設された請求項1又は請求項2に記載の発光装置と;
を具備することを特徴とする照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−71242(P2011−71242A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219771(P2009−219771)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】