説明

発光装置

【課題】蛍光体間の再吸収を抑制し優れた発光効率を実現する発光装置を提供する。
【解決手段】実施の形態の発光装置は、第1の波長の励起光を放射する発光素子と、励起光が入射され、励起光を第1の波長より長い第2の波長の第1の変換光に変換する第1の蛍光体を含有する第1の蛍光体層と、発光素子と第1の蛍光体層との間に設けられ、励起光が入射され第2の波長より長い第3の波長の第2の変換光に変換する第2の蛍光体を含有する第2の蛍光体層と、第1の蛍光体層と第2の蛍光体層との間に設けられ、励起光および第2の変換光を透過し、第1の変換光を反射する2次元フォトニック結晶または3次元フォトニック結晶で形成されるフィルタ層と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、青色の発光ダイオード(LED)にYAG:Ceなどの黄色蛍光体を組合せ、単一のチップで白色光を発する、いわゆる白色LEDに注目が集まっている。従来、LEDは赤色、緑色、青色と単色で発光するものであり、白色または中間色を発するためには、単色の波長を発する複数のLEDを用いてそれぞれ駆動しなければならなかった。しかし、現在では、発光ダイオードと、蛍光体とを組合せることにより、上述の煩わしさを排し、簡便な構造によって白色光を得ることができるようになっている。
【0003】
発光ダイオードを用いたLEDランプは、携帯機器、PC周辺機器、OA機器、各種スイッチ、バックライト用光源、および表示板などの各種表示装置に用いられている。これらLEDランプは高効率化が強く望まれており、加えて一般照明用途には高演色化、バックライト用途には高色域化の要請がある。高効率化には、蛍光体の高効率化が必要であり、高演色化あるいは高色域化には、青色の励起光と青色で励起され緑色の発光を示す蛍光体および青色で励起され赤色の発光を示す蛍光体を組み合わせた白色光源が望ましい。
【0004】
ここで、複数の蛍光体を用いる場合、蛍光体間の再吸収により発光効率が低下するという問題がある。特に、一つのLEDチップ上に、複数の蛍光体を組み合わせることで白色光を得ようとする場合、蛍光体間の距離が近接することでこの問題が顕在化する。
【0005】
この問題を解決するために、誘電体多層膜で形成されるフィルタ層を一方の蛍光体と他方の蛍光体との間に設けて、蛍光体間の再吸収を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−142268号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「フォトニック結晶技術とその応用」、シーエムシー出版、p.15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
誘電体多層膜は、膜厚を制御した誘電体膜を透過または反射する光の干渉によって、反射率、透過率の波長依存性を得るという原理に基づき構成される。したがって、その性質上、光がフィルタ層に入射する角度によって透過率、反射率が異なることが知られている。
【0009】
このため、誘電体多層膜を用いたフィルタ層では、かならずしも十分な再吸収抑制効果が得られないおそれがある。特に、発光素子のチップサイズが大型化した場合、フィルタ層に対する光の入射する角度の範囲(レンジ)が広がるため、再吸収抑制効果が十分得られないことが懸念される。
【0010】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、蛍光体間の再吸収を抑制し優れた発光効率を実現する発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施の形態の発光装置は、第1の波長の励起光を放射する発光素子と、励起光が入射され、励起光を第1の波長より長い第2の波長の第1の変換光に変換する第1の蛍光体を含有する第1の蛍光体層と、発光素子と第1の蛍光体層との間に設けられ、励起光が入射され第2の波長より長い第3の波長の第2の変換光に変換する第2の蛍光体を含有する第2の蛍光体層と、第1の蛍光体層と第2の蛍光体層との間に設けられ、励起光および第2の変換光を透過し、第1の変換光を反射する2次元フォトニック結晶または3次元フォトニック結晶で形成されるフィルタ層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【図2】第1の実施の形態のフォトニック結晶の構造の一例を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の発光装置の作用を説明する図である。
【図4】第1の実施の形態の発光装置の作用を説明する図である。
【図5】第1の実施の形態の発光装置の製造方法を示す断面工程図である。
【図6】第1の実施の形態の発光装置の製造方法を示す断面工程図である。
【図7】第1の実施の形態の発光装置の製造方法を示す断面工程図である。
【図8】第2の実施の形態の発光装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて実施の形態を説明する。なお、図面中、同一または類似の箇所には、同一または類似の符号を付している。
【0014】
なお、本明細書中、「近紫外光」とは、波長250nm〜410nmの光を意味するものとする。また、「青色光」とは、波長410nm〜500nmの光を意味するものとする。また、「緑色光」とは、波長500nm〜580nmの光を意味するものとする。また、「赤色光」とは、波長595nm〜700nmの光を意味するものとする。
【0015】
そして、「赤色蛍光体」とは、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、橙色から赤色にわたる領域の発光、すなわち波長595nm〜700nmの間に主発光ピークを有する発光を示す蛍光体を意味する。
【0016】
また、本明細書中、「緑色蛍光体」とは、波長250nm乃至500nmの光、すなわち、近紫外光もしくは青色光で励起した際、励起光よりも長波長であり、青緑色から黄緑色にわたる領域の発光、すなわち波長490nm〜580nmの間に主発光ピークを有する発光を示す蛍光体を意味する。
【0017】
そして、本明細書中、「フォトニック結晶」とは、「屈折率(誘電率)の周期構造」を意味する(非特許文献1)。誘電率が光の波長程度の周期で周期的に変化する構造を人工的に作成することにより、該構造内の光伝搬を制御することが可能となる。
【0018】
また、本明細書中「フィルタ層が光を透過する」とは、フィルタ層に対する光の透過率が反射率よりも大きいことを意味する。そして、本明細書中「フィルタ層が光を反射する」とは、フィルタ層に対する光の反射率が透過率よりも大きいことを意味する。
【0019】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、第1の波長の励起光を放射する発光素子と、励起光が入射され、励起光を第1の波長より長い第2の波長の第1の変換光に変換する第1の蛍光体を含有する第1の蛍光体層と、発光素子と第1の蛍光体層との間に設けられ、励起光が入射され第2の波長より長い第3の波長の第2の変換光に変換する第2の蛍光体を含有する第2の蛍光体層と、第1の蛍光体層と第2の蛍光体層との間に設けられ、励起光および第2の変換光を透過し、第1の変換光を反射する2次元フォトニック結晶または3次元フォトニック結晶で形成されるフィルタ層と、を備える。
【0020】
本実施の形態の発光装置は、上記構成を備えることにより、緑色蛍光体から発せられる緑色光のうち、赤色蛍光体へと向かう光をフィルタ層によって反射する。これにより、赤色蛍光体による緑色光の再吸収を抑制する。したがって、優れた発光効率を実現する発光装置を実現することが可能となる。
【0021】
図1は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。本実施の形態の発光装置が実装基板上に実装された状態を示している。
【0022】
本実施の形態の発光装置10は、基板19と、基板19に実装される励起光源用の発光素子12を備えている。励起光源用の発光素子12は、例えば、ピーク波長が450nmの青色光(第1の波長の励起光)を放射する青色LEDチップである。青色LEDチップは、例えば、一辺300〜600μm程度の矩形、例えば正方形の上面を有している。
【0023】
発光素子12の上面には、例えば、透明媒質層14が形成されている。透明媒質層14は、例えば、発光素子12の形成時に用いられるサファイア基板である。
【0024】
青色LEDは、例えば、図1の上側からみて、サファイア基板14に接して形成される、バッファ層12a、n型GaN層12b、n型AlGaN層12c、InGaN系の活性層12d、p型AlGaN層12e、およびp型GaN層12fが、この順序で積層された積層構造を有している。そして、p型GaN層12fに接してp側電極12gが設けられている。
【0025】
また、p型GaN層12f、p型AlGaN層12e、InGaN系の活性層12d、およびn型AlGaN層12c、n型GaN層12bの積層構造の一部をエッチングにより除去した領域の、n型GaN層12bに接してn側電極12iが設けられる構成となっている。
【0026】
この青色LEDチップは、p側電極12gおよびn側電極12iを、例えばAu(金)からなるバンプ16を介して、表面に金属からなる配線層18a、18bが形成されたメタライズ実装基板19上に載置したフリップチップ型の構成を有している。
【0027】
また、本実施の形態の発光装置10は、緑色蛍光体層(第1の蛍光体層)24と、発光素子12と緑色蛍光体層(第1の蛍光体層)24との間に設けられる赤色蛍光体層(第2の蛍光体層)22と、を備えている。さらに、緑色蛍光体層(第1の蛍光体層)24と赤色蛍光体層(第2の蛍光体層)22との間にフィルタ層30が設けられている。すなわち、サファイア基板14上に、赤色蛍光体層(第2の蛍光体層)22、フィルタ層30、緑色蛍光体層(第1の蛍光体層)24がこの順に積層されている。
【0028】
ここで、緑色蛍光体層(第1の蛍光体層)24は、励起光として青色光が入射され、青色光よりも長い波長の緑色光(第1の変換光)に変換する緑色蛍光体(第1の蛍光体)を含有する。例えば、緑色蛍光体の粒子が、例えば、シリコーン樹脂のような透明樹脂層中に分散されて形成されている。
【0029】
また、赤色蛍光体層(第2の蛍光体層)22は、励起光として青色光が入射され、青色光よりも長い波長の赤色光(第2の変換光)に変換する赤色蛍光体(第2の蛍光体)を含有する。例えば、赤色蛍光体の粒子が、例えば、シリコーン樹脂のような透明樹脂層中に分散されて形成されている。
【0030】
フィルタ層30は、2次元フォトニック結晶または3次元フォトニック結晶で形成される。フィルタ層30は、励起光である青色光(励起光)および赤色光(第2の変換光)を透過し、緑色光(第1の変換光)を反射する機能を備える。
【0031】
例えば、フィルタ層30は、波長450nm未満または波長580nmを超える光を透過し、波長450nm〜580nmの光を反射する。すなわち、450nm〜580nmのバンドギャップを備える。なお、ここでバンドギャップとは、フィルタ層(フォトニック結晶)が透過しない(または反射する)光の波長範囲である。
【0032】
そして、フィルタ層30は光に対する透過率や反射率について等方性を備えている。すなわち、フィルタ層に入射する光の入射角が変化しても、その光に対する透過率や反射率がほぼ一定である。
【0033】
ここで、発光効率を向上させる観点から、緑色光(第1の変換光)の反射率が90%以上であり、青色光(励起光)および赤色光(第2の変換光)の透過率が90%以上であることが望ましい。
【0034】
図2は、本実施の形態のフォトニック結晶の構造の一例を示す図である。図のフォトニック結晶は、複数のストライプ32からなる層が、1層毎に90度回転して積層されるウッドパイル構造を備えている。ストライプは例えばシリコン(Si)である。
【0035】
例えば、1本のシリコンのストライプ幅を0.6μm、厚さを1.1μm、としてストライプの周期を2.4μmとする。そして、このストライプの層を10層積層してフォトニック結晶を形成する。例えば、このフォトニック結晶を1辺が285μmの正方形に切断したものをフィルタ層30として用いる。上記構造により、フィルタ層30は470nm〜550nmのバンドギャップを備える。
【0036】
光に対する透過率や反射率についての等方性に優れている点から、2次元フォトニック結晶または3次元フォトニック結晶が、ウッドパイル構造、ヤプロノバイト構造または面心立方格子構造を備えることが望ましい。
【0037】
図3、図4は、本実施の形態の発光装置の作用を説明する図である。図3に示す様に、励起光である青色光は、赤色蛍光体層22に入射し、赤色蛍光体22bによって赤色光に変換される。また、青色光は、緑色蛍光体層24に入射し、緑色蛍光体24bによって緑色光に変換される。これらの青色光、赤色光および緑色光が混合され白色光となる。
【0038】
このとき、緑色蛍光体24bが発する緑色光のうち、赤色蛍光体層22側に向かう緑色光が生ずる。この緑色光が赤色蛍光体層22中の赤色蛍光体22bによって再吸収されると、発光装置の発光効率が低下することになる。
【0039】
本実施の形態においては、例えば、誘電体多層膜に比較して、透過率や反射率の等方性に優れている2次元フォトニック結晶または3次元フォトニック結晶をフィルタ層30に用いている。したがって、赤色蛍光体層22側に向かう緑色光が異なる角度で入射しても、効果的に反射することで、緑色光が赤色蛍光体層22に入射することを抑制する。よっって、蛍光体間の再吸収を抑制し優れた発光効率を実現する発光装置を提供することが可能となる。
【0040】
特に、高出力化を図るために、発光素子12のチップサイズが大きくなるような場合に本実施の形態の発光装置は有効である。なぜなら、チップサイズが大きくなると、必然的に、緑色蛍光体層24から赤色蛍光体層22へと向かう緑色光の、フィルタ層30への入射角のレンジ(図4中のα)が大きくなるからである。
【0041】
本実施の形態では、赤色蛍光体および緑色蛍光体として、いわゆるサイアロン系の蛍光体を適用する。サイアロン系の蛍光体は、高温での発光効率の低下、いわゆる温度消光が小さいため、色ずれも少なく、高密度実装や高出力の発光装置の実現に適している。
【0042】
本実施の形態の赤色蛍光体は、例えば、下記(式1)の組成を有する。
(M1−x1Eux1SiAlO ・・・(式1)
(上記(式1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、a、b、c、dは、次の関係を満たす。
0<x1≦1、
0.60<a<0.95、
2.0<b<3.9、
0.04≦c≦0.6、
4<d<5.7)
【0043】
MがSr(ストロンチウム)であるときには特に緑色光の吸収強度が高いため、本実施の形態が効果的であり望ましい。しかしながら、赤色蛍光体はこれに限定されるものではなく、例えば、CaAlSiN:Eu、CaS:Eu、(Ba,Sr,Ca)Si:Euや、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn、KSiF:Mn、Y:Euでもよい。
【0044】
本実施の形態の緑色蛍光体は、例えば、下記(式2)の組成を有する。
(M’1−x2Eux23−ySi13−zAl3+z2+u21−w ・・・(式2)
(上記式(式2)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x2、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x2≦1、
−0.1≦y≦0.15、
−1≦z≦1、
−1<u−w≦1.5)
【0045】
M’はSr(ストロンチウム)であることが望ましい。しかしながら、緑色蛍光体はこれに限定されるものではなく、例えばβサイアロン蛍光体、YAG:Ce蛍光体でもよい。
【0046】
図5〜7は、本実施の形態の発光装置の製造方法を示す断面工程図である。
【0047】
発光素子12をサファイア基板14に形成する。ここで、発効素子のチップサイズを300μm□とする。
【0048】
次に、メタルマスク42を、サファイア基板14にかぶせ、メタルマスク42の上から赤色蛍光体を分散させた樹脂52を塗布する(図5)。この時、メタルマスク42の開口部サイズを、チップサイズの300μm□に対し、290μm□とし、かつ、樹脂の粘性を調整することにより、樹脂を塗布することが可能となる。
【0049】
この後、メタルマスク42を外し、例えば、150℃の環境に30分おくことで、樹脂を硬化させる。このようにして、サファイア基板14上に、例えば、厚さ50μmの赤色蛍光体層22が形成される。
【0050】
その後、2次元または3次元のフォトニック結晶で形成されるフィルタ層30を赤色蛍光体層22に密着するよう設置する(図6)。フィルタ層30のフォトニック結晶は例えば、先に図2を用いて説明したウッドパイル構造を備える285μm□のフォトニック結晶である。このようなウッドパイル構造のフォトニック結晶は、いわゆるウェハ融着法を用いて形成することが可能である。
【0051】
次に、メタルマスク42を、サファイア基板14に再度かぶせ、メタルマスク42の上から緑色蛍光体を分散させた樹脂54を塗布する(図7)。この時、メタルマスク42の開口部サイズを、チップサイズの300μm□に対し、290μm□とし、かつ、樹脂の粘性を調整することにより、樹脂を塗布することが可能となる。
【0052】
この後、メタルマスク42を外し、例えば、150℃の環境に30分おくことで、樹脂を硬化させる。このようにして、フィルタ層30に、例えば、厚さ50μmの緑色蛍光体層24が形成される。
【0053】
以上のようにして、図1に示す発光装置が製造される。
【0054】
(第2の実施の形態)
本実施の形態の発光装置は、発光素子が近紫外光を発する近紫外LEDチップである点、青色蛍光体層を有する点で、第1の実施の形態と異なっている。以下、第1の実施の形態と重複する内容については、記載を省略する。
【0055】
図8は、本実施の形態の発光装置の模式断面図である。本実施の形態の発光装置が実装基板上に実装された状態を示している。
【0056】
本実施の形態の発光装置20は、励起光源用の発光素子12として、例えば、ピーク波長が405nmの近紫外光を発する近紫外LEDチップを備えている。
【0057】
発光装置20には、緑色蛍光体層22上に、青色蛍光体が含有される青色蛍光体層26が形成されている。青色蛍光体層26は、例えば、青色蛍光体粒子が、例えば、シリコーン樹脂のような透明樹脂層中に分散されて形成されている。青色蛍光体としては、BaMgAl1017:Euを用いることが望ましい。しかしながらこれに限定されるものではなく、例えばBaSiS:CeやSr(POCl:Eu、ZnS:Ag,(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POCl:Euでもよい。
【0058】
発光装置20では、近紫外LEDチップから発せられる近紫外光を励起光として、赤色蛍光体層22からは赤色光が、緑色蛍光体層24からは緑色光が、青色蛍光体層26からは青色光が発せられる。これらの赤色光、緑色光、青色光が混合されることで発光装置20から白色光が発せられる。
【0059】
発光装置20においても、2次元フォトニック結晶または3次元フォトニック結晶で形成されるフィルタ層30を設けることで、赤色蛍光体層22での緑色光の再吸収が抑制される。よって、蛍光体間の再吸収を抑制し優れた発光効率を実現する発光装置を提供することが可能となる。
【0060】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。上記、実施の形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施の形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0061】
また、実施の形態においては、赤色蛍光体および緑色蛍光体にサイアロン系蛍光体を適用する場合を例に説明した。温度消光を抑制する観点からはサイアロン系蛍光体、特に上記(式1)、(式2)で表される蛍光体を適用することが望ましいが、上記に挙げたその他の蛍光体を適用してもかまわない。
【0062】
また、青色蛍光体にBaMgAl1017:Euを適用する場合を例に説明した。効率向上の観点からはこれを適用することが望ましいが、上記に挙げたその他の蛍光体を適用してもかまわない。
【0063】
また、透明媒質層として、サファイアを例に説明したが、透明媒質層の材料については、発光素子(励起素子)のピーク波長近傍およびこれよりも長波長の可視領域で実質的に透明であれば、無機材料、樹脂等その種類を問わず用いることができる。
【0064】
また、蛍光体層に用いられる樹脂については、発光素子(励起素子)のピーク波長近傍およびこれよりも長波長の可視領域で実質的に透明であれば、その種類を問わず用いることができる。一般的なものとしては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、またはエポキシ基を有するポリジメチルシロキサン誘導体、またはオキセタン樹脂、またはアクリル樹脂、またはシクロオレフィン樹脂、またはユリア樹脂、またはフッ素樹脂、またはポリイミド樹脂などが考えられる。
【0065】
また、実施の形態においては、蛍光体層やフィルタ層が平板形状のものついて説明した。しかしながら、平板形状に限らず、ドーム形状や曲板形状を備える蛍光体層やフィルタ層についても本発明は有効である。
【0066】
また、発光素子側に戻る赤色光等を反射する反射層等を別途設けてもかまわない。また、例えば、反射層に放熱フィラーを分散させれば、放熱性を向上させることも可能である。
【0067】
また、例えば、緑色蛍光体層にかえて黄色蛍光体層を第1の蛍光体層として設けても構わない。また、例えば、フィルタ層と緑色蛍光体層との間に、黄色蛍光体層をさらに設けてもかまわない。また、赤色蛍光層や緑色蛍光体層に、赤色または緑色以外の色を発する黄色蛍光体を加えてもかまわない。
【0068】
そして、実施の形態の説明においては、発光装置等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる発光装置に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0069】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての発光装置は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0070】
10 発光装置
12 発光素子
14 透明媒質層(サファイア基板)
20 発光装置
22 赤色蛍光体層(第2の蛍光体層)
22a 赤色蛍光体
24 緑色蛍光体層(第1の蛍光体層)
24a 緑色蛍光体
26 青色蛍光体層
30 フィルタ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の励起光を放射する発光素子と、
前記励起光が入射され、前記励起光を前記第1の波長より長い第2の波長の第1の変換光に変換する第1の蛍光体を含有する第1の蛍光体層と、
前記発光素子と前記第1の蛍光体層との間に設けられ、前記励起光が入射され前記第2の波長より長い第3の波長の第2の変換光に変換する第2の蛍光体を含有する第2の蛍光体層と、
前記第1の蛍光体層と前記第2の蛍光体層との間に設けられ、前記励起光および前記第2の変換光を透過し、前記第1の変換光を反射する2次元フォトニック結晶または3次元フォトニック結晶で形成されるフィルタ層と、
を有することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記励起光が青色または近紫外光であり、前記第1の変換光が黄色光または緑色光であり、前記第2の変換光が赤色光であることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
前記2次元フォトニック結晶または前記3次元フォトニック結晶が、ウッドパイル構造、ヤプロノバイト構造または面心立方格子構造を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
前記第2の蛍光体が、下記(式1)の組成を有する赤色蛍光体であることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の発光装置。
(M1−x1Eux1SiAlO ・・・(式1)
(上記(式1)中、MはIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x1、a、b、c、dは、次の関係を満たす。
0<x1≦1、
0.60<a<0.95、
2.0<b<3.9、
0.04≦c≦0.6、
4<d<5.7)
【請求項5】
前記第1の蛍光体が、下記(式2)の組成を有する緑色蛍光体であることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の発光装置。
(M’1−x2Eux23−ySi13−zAl3+z2+u21−w ・・・(式2)
(上記式(式2)中、M’はIA族元素、IIA族元素、IIIA族元素、Alを除くIIIB族元素、希土類元素、およびIVB族元素から選択される元素である。x2、y、z、u、wは、次の関係を満たす。
0<x2≦1、
−0.1≦y≦0.15、
−1≦z≦1、
−1<u−w≦1.5)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−186414(P2012−186414A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50012(P2011−50012)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】