説明

発振器及びルビジウム原子発振器

【課題】逓倍回路側と発振増幅器側にそれぞれフィルタを備えることにより、簡単な回路
構成で両回路のアイソレーションを高く保つことが可能となり、調整時間を短縮して調整
コストの低減を図った発振器及びルビジウム原子発振器を提供する。
【解決手段】発振部50は、電圧に基づいて発振周波数が制御される電圧制御発振器10
と、発振信号の周波数を逓倍する逓倍回路11と、所定の周波数を選択的に通過させる帯
域通過フィルタ12と、前記電圧制御発振器10により発振された発振信号を5.3MH
zに周波数変換する生成回路14と、生成回路14の出力レベルを増幅する増幅回路15
と、所定の減衰値を有する減衰器16と、所定の周波数を選択的に阻止する帯域阻止フィ
ルタ17と、周波数成分をインピーダンス整合して合成する整合回路13と、を備えて構
成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器及びルビジウム原子発振器に関し、さらに詳しくは、ルビジウム原子
発振器を構成する発振部を調整する場合に、逓倍回路と増幅回路間の干渉を低減できるよ
うにした回路構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ルビジウム原子発振器には、10MHzの発振器の発振周波数を逓倍する逓
倍回路と、この逓倍回路により逓倍された例えば60MHzの周波数と、別に生成された
5.3MHzをインピーダンス整合する整合回路と、60MHzを114倍に逓倍した信
号(6.84GHz)と5.3MHzの信号とを合成して6.83468・・・GHzの
周波数を生成するSRD(Step Recovery Diode)が備えられている。このような回路に
おいては、逓倍回路はバイアス調整やインピーダンス調整が必要となる。
【0003】
図5は従来のルビジウム原子発振器の発振部の構成を示す概略ブロック図である。この
発振部100は、光マイクロ波ユニットから発生される電圧に基づいて発振周波数が制御
される10MHz発振器40と、10MHz発振器40により発振された発振信号の周波
数を6逓倍する逓倍回路41と、前記10MHz発振器40により発振された発振信号を
5.3MHzに周波数変換する5.3MHz生成回路44と、5.3MHz生成回路44
の出力レベルを増幅する5.3MHz増幅回路45と、逓倍回路41の出力信号と5.3
MHz増幅回路45の出力信号をインピーダンス整合する整合回路42と、逓倍回路41
の出力信号と5.3MHz増幅回路45の出力信号とを混合し変調をかけることにより6
.83468・・・GHzの信号を生成するSRD43と、放射用アンテナ46と、を備
えて構成されている。
この構成において、逓倍回路41を調整すると、5.3MHz生成回路44に影響を与
え、レベルが変動し変調度に変化をきたしてしまう。また、5.3MHz生成回路44の
レベルを調整すると、逓倍回路41に影響を与え、レベルが変動し変調度に変化をきたし
、スペリアスレベルが変動してしまう。このように、従来の発振部を調整する場合、逓倍
回路41と5.3MHz増幅回路45を互いに何度も調整して、妥協できる調整点を見つ
けなければならず、調整時間が長くなり調整費が高くなるといった問題がある。
【0004】
また従来技術として、特許文献1には、電圧制御水晶発振器の出力をPLL回路へ入力
し、このPLL回路のVCOの出力とシンセサイザの出力とを混合器で混合し、この混合
出力を光マイクロ波共鳴器に必要な周波数信号とすることにより、逓倍用ダイオードを不
要として、無調整としたルビジウム原子発振器について開示されている。
【特許文献1】特開平5−110434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている従来技術は、高次逓倍用ダイオードを省略
することはできるが、その代わり複数の分周器、LPF、VCO等を必要とするため回路
構成が複雑になるといった問題がある。
本発明は、かかる課題に鑑み、逓倍回路側と発振増幅器側にそれぞれフィルタを備える
ことにより、簡単な回路構成で両回路のアイソレーションを高く保つことが可能となり、
調整時間を短縮して調整コストの低減を図ったルビジウム原子発振器を提供することを目
的とする。
また、他の目的は、整合回路を通過してくる反射波を回路側に通さないように減衰器を
備えることにより、リターンロスを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる課題を解決するために、少なくとも2種類の周波数をインピーダンス整
合する整合回路を備えた発振器であって、前記2種類の周波数の何れか一方の周波数成分
を選択的に通過させる帯域通過フィルタと、前記何れか一方の周波数成分を選択的に阻止
する帯域阻止フィルタと、を備え、前記帯域通過フィルタを通過した周波数成分と前記帯
域阻止フィルタにより阻止された周波数成分以外の周波数成分を前記整合回路に入力する
ように構成したことを特徴とする。
2つの回路から発生する周波数成分が互いに影響しないようにするためには、夫々の回
路で使用する周波数が互いに影響しないようにする必要がある。本発明では、帯域通過フ
ィルタと帯域阻止フィルタを使用して、同じ周波数成分が一方の回路では通過するように
帯域通過フィルタを使用し、他方の回路ではその周波数成分が通過しないように帯域阻止
フィルタを使用するものである。従って、フィルタの種類はどちらか一方に帯域通過フィ
ルタを使用した場合は、他方の回路には帯域阻止フィルタを使用し、逆にどちらか一方に
帯域阻止フィルタを使用した場合は、他方の回路には帯域通過フィルタを使用するように
する。これにより、2つの回路を特定の周波数に対して分離することができる。
【0007】
また、ルビジウム原子の共鳴周波数に共振するよう調整されたマイクロ波共振器にマイ
クロ波を放射する放射用アンテナを有する光マイクロ波ユニットと、発振部と、を備えた
ルビジウム原子発振器であって、前記発振部は、前記光マイクロ波ユニットから発生され
る電圧に基づいて発振周波数が制御される電圧制御発振器と、該電圧制御発振器により発
振された発振信号の周波数を逓倍する逓倍回路と、所定の周波数帯域のみを選択的に通過
させる帯域通過フィルタとを備えた第1の回路部と、所定の周波数に変換する生成回路と
、該生成回路から発振された発振信号の出力レベルを増幅する増幅回路と、所定の減衰値
を有する減衰器と、所定の周波数帯域のみを選択的に阻止する帯域阻止フィルタとを備え
た第2の回路部を有し、前記第1の回路部から出力された周波数成分と前記第2の回路部
から出力された周波数成分とをインピーダンス整合する整合回路と、を備えたことを特徴
とする。
本発明は、ルビジウム原子発振器の発振部に帯域通過フィルタと帯域阻止フィルタを使
用し、その出力信号を整合回路に入力し、逓倍回路側と増幅器側をアイソレーションする
。更に、減衰器を増幅回路側に備える。これにより、特定の周波数成分に対して逓倍回路
側と増幅回路側を分離することができる。また、反射波の影響を低減することができる。
【0008】
また、前記帯域通過フィルタは、前記逓倍回路により逓倍された周波数成分のみを選択
的に通過させ、前記帯域阻止フィルタは、前記逓倍回路により逓倍された周波数成分のみ
を選択的に阻止するように構成されることを特徴とする。
帯域通過フィルタは、特定の周波数成分のみを通過させ、それ以外の周波数成分を阻止
するように働く。また帯域阻止フィルタは、特定の周波数成分のみを阻止し、それ以外の
周波数成分は通過させるように働く。本発明では、この機能を巧みに利用して、逓倍回路
側には逓倍された周波数成分のみを通過する帯域通過フィルタを設置し、増幅回路側には
逓倍された周波数成分のみを阻止する帯域阻止フィルタを設置することにより、逓倍され
た周波数成分は帯域阻止フィルタにより回り込みが阻止され、増幅器側から出力される周
波数成分は、帯域通過フィルタを通過することができない周波数帯域のため、逓倍回路側
への回り込みが阻止される。これにより、同じ周波数帯域の特性を備えた帯域通過フィル
タと帯域阻止フィルタを設置することにより、お互いの回路への影響を低減することがで
きる。
【0009】
また、前記減衰器を前記増幅回路の出力と前記帯域阻止フィルタの入力との間に備える
ことを特徴とする。
このように減衰器を配置することにより、放射用アンテナから反射した不要波が増幅回
路に流れ込むのを防止できる。
【0010】
また、別の実施形態として、ルビジウム原子の共鳴周波数に共振するよう調整されたマ
イクロ波共振器にマイクロ波を放射する放射用アンテナを有する光マイクロ波ユニットと
、発振部と、を備えたルビジウム原子発振器であって、前記発振部は、前記光マイクロ波
ユニットから発生される電圧に基づいて発振周波数が制御される電圧制御発振器と、該電
圧制御発振器により発振された発振信号の周波数を逓倍する逓倍回路と、所定の減衰値を
有する減衰器と、所定の周波数帯域のみを選択的に阻止する帯域阻止フィルタとを備えた
第1の回路部と、前記電圧制御発振器により発振された発振信号を所定の周波数に変換す
る生成回路と、該生成回路から発振された発振信号の出力レベルを増幅する増幅回路と、
所定の周波数帯域のみを選択的に通過させる帯域通過フィルタとを備えた第2の回路部
とを有し、前記第1の回路部から出力された周波数成分と前記第2の回路部から出力され
た周波数成分とをインピーダンス整合する整合回路と、を備えた構造としても良い。
【0011】
また、前記帯域阻止フィルタは、前記生成回路により発振された周波数成分のみを選択
的に阻止し、前記帯域通過フィルタは、前記生成回路により発振された周波数成分のみを
選択的に通過するように構成されることを特徴とする。
帯域通過フィルタは、特定の周波数成分のみを通過させ、それ以外の周波数成分を阻止
するように働く。また帯域阻止フィルタは、特定の周波数成分のみを阻止し、それ以外の
周波数成分は通過させるように働く。本発明では、この機能を巧みに利用して、逓倍回路
側には生成回路より発振された周波数成分のみを阻止する帯域阻止フィルタを設置し、増
幅器側には生成回路により発振された周波数成分のみを通過する帯域通過フィルタを設置
することにより、逓倍された周波数成分は帯域通過フィルタにより回り込みが阻止され、
増幅器側から出力される周波数成分は、帯域阻止フィルタを通過することができない周波
数帯域のため、逓倍回路側への回り込みが阻止される。これにより、同じ周波数帯域の特
性を備えた帯域通過フィルタと帯域阻止フィルタを設置することにより、お互いの回路へ
の影響を低減することができる。
【0012】
また、前記減衰器を前記逓倍回路の出力と前記帯域阻止フィルタの入力との間に備える
ことを特徴とする。
このように減衰器を配置することにより、放射用アンテナから反射した不要波が逓倍回
路に流れ込むのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記
載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限
り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明のルビジウム原子発振器の概略構成を示すブロック図である。このルビジ
ウム原子発振器60は、ルビジウムランプ(以下、Rbランプと記す)5を点灯するラン
プ励振部1と、ルビジウムガスセル(以下、Rbガスセルと記す)6中のルビジウムガス
を励起するRbランプ5と、ルビジウム原子を封入したRbガスセル6と、Rbガスセル
6中のルビジウム原子の共振周波数により励振するマイクロ波共振器3と、マイクロ波共
振器3にマイクロ波を放射する放射用アンテナ4と、Rbガスセル6を透過した光の強度
を検出するフォトセンサ7と、Amp9と、発振部50/51と、を備えて構成されてい
る。
【0014】
次に、本発明のルビジウム原子発振器の動作については公知であるので、ここでは説明
を省略するが、本発明の主たる構成要素である発振部について説明する。発振部50/5
1は、少なくとも2種類の周波数をインピーダンス整合する整合回路を備えた発振器であ
って、2種類の周波数の何れか一方の周波数成分を選択的に通過させる帯域通過フィルタ
と、何れか一方の周波数成分を選択的に阻止する帯域阻止フィルタと、を備えている。そ
して、帯域通過フィルタを通過した周波数成分と帯域阻止フィルタにより阻止された周波
数成分以外の周波数成分を整合回路に入力するように構成したものである(詳細は後述す
る)。
【0015】
即ち、2つの回路から発生する周波数成分が互いに影響しないようにするためには、夫
々の回路で使用する周波数が互いに漏洩しないようにする必要がある。本実施形態では、
帯域通過フィルタと帯域阻止フィルタを使用して、同じ周波数成分が一方の回路では通過
するように帯域通過フィルタを使用し、他方の回路ではその周波数成分が通過しないよう
に帯域阻止フィルタを使用するものである。従って、フィルタの種類はどちらか一方に帯
域通過フィルタを使用した場合は、他方の回路には帯域阻止フィルタを使用し、逆にどち
らか一方に帯域阻止フィルタを使用した場合は、他方の回路には帯域通過フィルタを使用
するようにする。これにより、2つの回路を特定の周波数に対して分離することができる

【0016】
図2は本発明の第1の実施形態に係る発振部の構成を示すブロック図である。この発振
部50は、図1の光マイクロ波ユニット8から発生される電圧に基づいて発振周波数が制
御される電圧制御発振器10と、電圧制御発振器10により発振された発振信号の周波数
(10MHz)を逓倍する逓倍回路11と、60MHzの周波数帯域のみを選択的に通過
させる帯域通過フィルタ(以下BPFと記す)12と、前記電圧制御発振器10により発
振された発振信号を5.3MHzに周波数変換する生成回路14と、生成回路14の出力
レベルを増幅する増幅回路15と、所定の減衰値を有する減衰器(以下、ATTと記す)
16と、60MHzの周波数帯域のみを選択的に阻止する帯域阻止フィルタ(以下、BE
Fと記す)17と、BPF12を通過した周波数成分とBEF17により阻止された周波
数成分以外の周波数成分をインピーダンス整合する整合回路13と、を備えて構成されて
いる。尚、整合回路13から出力された逓倍回路11の出力信号と増幅回路15の出力信
号はSRD18にて混合・変調され6.83468・・・GHzの発振信号を生成し、放
射用アンテナ4にて放射される。
【0017】
次に本発明の発振部50の動作について説明する。光マイクロ波ユニット8からは周波
数制御用の電圧が周波数に応じて変化して電圧制御発振器10に入力される。例えば、電
圧制御発振器10が10MHzになるように制御されていた場合、電圧制御発振器10か
らは10MHzの発振信号が逓倍回路11に入力される。逓倍回路11は6逓倍するよう
に、例えば、逓倍用ダイオードが構成されていると、逓倍回路11から60MHzに逓倍
された発振信号がBPF12に入力される。BPF12の特性は、60MHzの周波数帯
域に対して減衰量が少なくなるように構成されているため、60MHzの信号は減衰され
ずに通過するが、それ以外の周波数成分に対しては大きい減衰量を示すため、通過が困難
となる。従って、整合回路13の一方の入力には60MHzの周波数成分を有する発振信
号が供給される。
【0018】
一方、生成回路14から出力された5.3MHzの発振信号は、増幅回路15により所
定の増幅率により増幅される。そして、ATT16に入力されて所定のレベルに減衰され
、BEF17に入力される。BEF17の特性は、60MHzの周波数帯域に対して減衰
量が大きくなるように構成されているため、60MHzの信号は減衰されて通過が困難と
なり、それ以外の周波数成分に対しては小さい減衰量を示すため、通過が容易となる。従
って、整合回路13の他方の入力には5.3MHzの周波数成分を有する発振信号が供給
される。そして整合回路13にて、60MHzと5.3MHzの信号がインピーダンス整
合される。
【0019】
ここで、本発振部50を正確に稼動させるためには、逓倍回路11のバイアス調整やイ
ンピーダンス調整が必要となる。BPF12からは60MHzの発振信号aが整合回路1
3を介してBEF17に流れてくる。しかし、BEF17は60MHzに対して大きな減
衰量を示すため、BEF17を通過することはない。これにより、逓倍回路11を調整し
ても、BEF17以降の回路にはその影響を与えることはない。また、増幅回路15は所
定の増幅率になるように調整する必要がある。BEF17からは5.3MHzの発振信号
bが整合回路13を介してBPF12に流れてくる。しかし、BPF12は5.3MHz
に対して大きな減衰量を示すため、BPF12を通過することはない。これにより、増幅
回路15を調整しても、BPF12以降の回路にはその影響を与えることはない。また、
放射用アンテナ4からは反射波cが整合回路13とBEF17を通過してATT16に流
れてくる。ATT16では、所定の減衰量により反射波cを減衰するので、増幅器15か
ら出力される5.3MHzの信号に与える影響を低減することができる。また、反射波c
が整合回路を通過してBPF12に流れた場合、BPF12は60MHz以外の信号を遮
断するので、逓倍回路11に不要波cが流れるのを防止できる。
【0020】
本実施形態では、ルビジウム原子発振器の発振部50にBPF12とBEF17を使用
し、その出力信号を整合回路13に入力し、逓倍回路11側と増幅回路15側をアイソレ
ーションする。更に、ATT16を増幅回路15側に備える。これにより、60MHzの
周波数成分に対して逓倍回路11側と増幅回路15側を分離することができる。即ち、B
PF12は、60MHzの周波数成分のみを通過させ、それ以外の周波数成分を阻止する
ように働く。またBEF17は、60MHzの周波数成分のみを阻止し、それ以外の周波
数成分は通過させるように働く。本実施形態では、この機能を巧みに利用して、逓倍回路
11側には逓倍された60MHzの周波数成分のみを通過するBPF12を設置し、増幅
回路15側には逓倍された60MHz周波数成分のみを阻止するBEF17を設置するこ
とにより、逓倍された60MHzの周波数成分はBEF17により回り込みが阻止され、
増幅回路15側から出力される5.3MHzの周波数成分は、BPF12を通過すること
ができない周波数帯域のため、逓倍回路11側への回り込みが阻止される。これにより、
同じ周波数帯域(60MHz)の特性を備えたBPF12とBEF17を設置することに
より、お互いの回路への影響を低減することができる。
【0021】
またATT16は、5.3MHzの発振信号も同じように減衰させるが、5.3MHz
の発振信号は減衰する分、増幅回路15により増幅しておけば、そのロスを補うことがで
きる。即ち、整合回路13に入力するレベルは所定の値に設定される。従って、増幅回路
15の出力レベルはATT16により減衰されるが、その減衰されたレベルが整合回路1
3に入力するレベルとなるように増幅回路15の出力レベルを設定すればよい。これによ
り、ATT16の減衰値が変更されても、整合回路13に入力するレベルを一定とするこ
とができる。
【0022】
図3は本発明の第2の実施形態に係る発振部の構成を示すブロック図である。同じ構成
要素には図2と同じ番号を付して説明する。この発振部51は、図1の光マイクロ波ユニ
ット8から発生される電圧に基づいて発振周波数が制御される電圧制御発振器10と、電
圧制御発振器10により発振された発振信号の周波数(10MHz)を逓倍する逓倍回路
11と、所定の減衰値を有する減衰器(以下、ATTと記す)16と、5.3MHzの周
波数帯域のみを選択的に阻止する帯域阻止フィルタ(以下、BEFと記す)20と、前記
電圧制御発振器10により発振された発振信号を5.3MHzに周波数変換する生成回路
14と、生成回路14の出力レベルを増幅する増幅回路15と、5.3MHzの周波数帯
域のみを選択的に通過させる帯域通過フィルタ(以下BPFと記す)21と、BPF21
を通過した周波数成分とBEF20により阻止された周波数成分以外の周波数成分をイン
ピーダンス整合する整合回路13と、を備えて構成されている。尚、整合回路13から出
力された逓倍回路11の出力信号と増幅回路15の出力信号はSRD18にて混合・変調
され、6.83468・・・GHzの発振信号を生成し、放射用アンテナ4にて放射され
る。
【0023】
次に本発明の発振部51の動作について説明する。光マイクロ波ユニット8からは周波
数制御用の電圧が周波数に応じて変化して電圧制御発振器10に入力される。例えば、電
圧制御発振器10が10MHzになるように制御されていた場合、電圧制御発振器10か
らは10MHzの発振信号が逓倍回路11に入力される。逓倍回路11は6逓倍するよう
に、例えば、逓倍用ダイオードが構成されていると、逓倍回路11から60MHzに逓倍
された発振信号がATT16により所定の減衰量だけ減衰されてBEF20に入力される
。BEF20の特性は、5.3MHzの周波数帯域に対して減衰量が大きくなるように構
成されているため、5.3MHzの信号は減衰されて通過が困難となり、60MHzの周
波数成分に対しては小さい減衰量を示すため、通過が容易となる。従って、整合回路13
の他方の入力には60MHzの周波数成分を有する発振信号が供給される。
【0024】
一方、生成回路14から出力された5.3MHzの発振信号は、増幅回路15により所
定の増幅率により増幅されてBPF21に入力される。BPF21の特性は、5.3MH
zの周波数帯域に対して減衰量が少なくなるように構成されているため、5.3MHzの
信号は減衰されずに通過するが、60MHzの周波数成分に対しては大きい減衰量を示す
ため、通過が困難となる。従って、整合回路13の一方の入力には5.3MHzの周波数
成分を有する発振信号が供給される。そして整合回路13は、60MHzと5.3MHz
とをインピーダンス整合する。
【0025】
ここで、本発振部を正確に稼動させるためには、逓倍回路11のバイアス調整やインピ
ーダンス調整が必要となる。BEF20からは60MHzの発振信号Aが整合回路13を
介してBPF21に流れてくる。しかし、BPF21は60MHzに対して大きな減衰量
を示すため、BPF21を通過することはない。これにより、逓倍回路11を調整しても
、BPF21以降の回路にはその影響を与えることはない。また、増幅回路15は所定の
増幅率になるように調整する必要がある。BPF21からは5.3MHzの発振信号Bが
整合回路13を介してBEF20に流れてくる。しかし、BEF20は5.3MHzに対
して大きな減衰量を示すため、BEF20を通過することはない。これにより、増幅回路
15を調整しても、BEF20以降の回路にはその影響を与えることはない。また、放射
用アンテナ4からは反射波Cが整合回路13とBEF20を通過してATT16に流れて
くる。ATT16では、所定の減衰量により反射波Cを減衰するので、逓倍回路11から
出力される信号に与える影響を低減することができる。また、反射波cが整合回路を通過
してBPF21に流れた場合、BPF21は5.3MHz以外の信号を遮断するので、生
成回路14に不要波cが流れるのを防止できる。
【0026】
本実施形態では、ルビジウム原子発振器の発振部51にBEF20とBPF21を使用
し、その出力信号を整合回路13に入力し、逓倍回路11側と増幅回路15側をアイソレ
ーションする。更に、ATT16を逓倍回路11側に備える。これにより、5.3MHz
の周波数成分に対して逓倍回路11側と増幅回路15側を分離することができる。即ち、
BPF21は、5.3MHzの周波数成分のみを通過させ、それ以外の周波数成分を阻止
するように働く。またBEF20は、5.3MHzの周波数成分のみを阻止し、それ以外
の周波数成分は通過させるように働く。本実施形態では、この機能を巧みに利用して、逓
倍回路11側には5.3MHzの周波数成分のみを阻止するBEF20を設置し、増幅回
路15側には5.3MHz周波数成分のみを通過するBPF21を設置することにより、
逓倍された60MHzの周波数成分はBPF21により回り込みが阻止され、増幅回路1
5側から出力される5.3MHzの周波数成分は、BEF20を通過することができない
周波数帯域のため、逓倍回路11側への回り込みが阻止される。これにより、同じ周波数
帯域(5.3MHz)の特性を備えたBPF21とBEF20を設置することにより、お
互いの回路への影響を低減することができる。
【0027】
またATT16は、60MHzの発振信号も同じように減衰させるが、60MHzの発
振信号は減衰する分、逓倍回路11によりレベルを設定しておけば、そのロスを補うこと
ができる。即ち、整合回路13に入力するレベルは所定の値に設定される。従って、逓倍
回路11の出力レベルはATT16により減衰されるが、その減衰されたレベルが整合回
路13に入力するレベルとなるように逓倍回路11の出力レベルを設定すればよい。これ
により、ATT16の減衰値が変更されても、整合回路13に入力するレベルを一定とす
ることができる。
【0028】
図4(a)は、図2の信号a、b、cの動作を一覧にした図、(b)は図3の信号A、
B、Cの動作を一覧にした図である。即ち、信号aは、60MHzの周波数成分はBEF
17により阻止される。信号bは、60MHz以外の周波数成分はBPF12により阻止
される。信号cは、反射波に含まれる60MHz以外の不要波成分はATT16により減
衰される。また信号Aは、5.3MHz以外の周波数成分はBPF20により阻止される
。信号Bは、5.3MHzの周波数成分はBEF20により阻止される。信号Cは、反射
波に含まれる5.3MHz以外の不要波成分はATT16により減衰される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のルビジウム原子発振器の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る発振部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る発振部の構成を示すブロック図である。
【図4】(a)は、図2の信号a、b、cの動作を一覧にした図、(b)は図3の信号A、B、Cの動作を一覧にした図である。
【図5】従来のルビジウム原子発振器の発振部の構成を示す概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ランプ励振部、3 マイクロ波共振器、4 放射用アンテナ、5 Rbランプ、6
Rbガスセル、7 フォトセンサ、8 光マイクロ波ユニット、9 Amp、10 電
圧制御発振器、11 逓倍回路、12、20 BPF、13 整合回路、14 生成回路
、15 増幅回路、16 ATT、17、20 BEF、50、51 発振部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の周波数をインピーダンス整合する整合回路を備えた発振器であって

前記2種類の周波数の何れか一方の周波数成分を選択的に通過させる帯域通過フィルタ
と、前記何れか一方の周波数成分を選択的に阻止する帯域阻止フィルタと、を備え、
前記帯域通過フィルタを通過した周波数成分と前記帯域阻止フィルタにより阻止された
周波数成分以外の周波数成分を前記整合回路に入力するように構成したことを特徴とする
発振器。
【請求項2】
ルビジウム原子の共鳴周波数に共振するよう調整されたマイクロ波共振器にマイクロ波
を放射する放射用アンテナを有する光マイクロ波ユニットと、発振部と、を備えたルビジ
ウム原子発振器であって、
前記発振部は、前記光マイクロ波ユニットから発生される電圧に基づいて発振周波数が
制御される電圧制御発振器と、
該電圧制御発振器により発振された発振信号の周波数を逓倍する逓倍回路と、
所定の周波数帯域のみを選択的に通過させる帯域通過フィルタとを備えた第1の回路部

所定の周波数に変換する生成回路と、
該生成回路から発振された発振信号の出力レベルを増幅する増幅回路と、
所定の減衰値を有する減衰器と、
所定の周波数帯域のみを選択的に阻止する帯域阻止フィルタとを備えた第2の回路部を
有し、
前記第1の回路部から出力された周波数成分と前記第2の回路部から出力された周波数
成分とをインピーダンス整合する整合回路と、を備えたことを特徴とするルビジウム原子
発振器。
【請求項3】
前記帯域通過フィルタは、前記逓倍回路により逓倍された周波数成分のみを選択的に通
過させ、前記帯域阻止フィルタは、前記逓倍回路により逓倍された周波数成分のみを選択
的に阻止するように構成されることを特徴とする請求項2に記載のルビジウム原子発振器

【請求項4】
前記減衰器を前記増幅回路の出力と前記帯域阻止フィルタの入力との間に備えたことを
特徴とする請求項2に記載のルビジウム原子発振器。
【請求項5】
ルビジウム原子の共鳴周波数に共振するよう調整されたマイクロ波共振器にマイクロ波
を放射する放射用アンテナを有する光マイクロ波ユニットと、発振部と、を備えたルビジ
ウム原子発振器であって、
前記発振部は、前記光マイクロ波ユニットから発生される電圧に基づいて発振周波数が
制御される電圧制御発振器と、
該電圧制御発振器により発振された発振信号の周波数を逓倍する逓倍回路と、
所定の減衰値を有する減衰器と、
所定の周波数帯域のみを選択的に阻止する帯域阻止フィルタとを備えた第1の回路部と

所定の周波数に変換する生成回路と、
該生成回路から発振された発振信号の出力レベルを増幅する増幅回路と、
所定の周波数帯域のみを選択的に通過させる帯域通過フィルタとを備えた第2の回路部
とを有し、
前記第1の回路部から出力された周波数成分と前記第2の回路部から出力された周波数
成分とをインピーダンス整合する整合回路と、を備えたことを特徴とするルビジウム原子
発振器。
【請求項6】
前記帯域阻止フィルタは、前記生成回路により発振された周波数成分のみを選択的に阻
止し、前記帯域通過フィルタは、前記生成回路により発振された周波数成分のみを選択的
に通過するように構成されることを特徴とする請求項5に記載のルビジウム原子発振器。
【請求項7】
前記減衰器を前記逓倍回路の出力と前記帯域阻止フィルタの入力との間に備えたことを
特徴とする請求項5に記載のルビジウム原子発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−22192(P2008−22192A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191098(P2006−191098)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】