発振装置
【課題】発振周波数の変動を防止することができる発振装置を提供する。
【解決手段】トランジスタのゲート電圧に応じて入力端子の信号を出力端子から出力するトランスファゲートPM5,NM5と、トランスファゲートの出力端子の信号を入力し、入力した信号の論理反転信号を出力する第1のインバータIV1と、第1のインバータの出力端子の信号を入力し、入力した信号の論理反転信号を出力する第2のインバータPM6,NM6と、第1のインバータの出力信号の論理反転信号を入力し、入力した信号の論理反転信号をトランスファゲートの入力端子に出力する第3のインバータPM4,NM4と、トランスファゲートの出力端子及び第2のインバータの出力端子間に接続される第1の容量C1と、トランスファゲートの出力端子及び基準電位ノード間に接続される第2の容量C2とを有する発振装置。
【解決手段】トランジスタのゲート電圧に応じて入力端子の信号を出力端子から出力するトランスファゲートPM5,NM5と、トランスファゲートの出力端子の信号を入力し、入力した信号の論理反転信号を出力する第1のインバータIV1と、第1のインバータの出力端子の信号を入力し、入力した信号の論理反転信号を出力する第2のインバータPM6,NM6と、第1のインバータの出力信号の論理反転信号を入力し、入力した信号の論理反転信号をトランスファゲートの入力端子に出力する第3のインバータPM4,NM4と、トランスファゲートの出力端子及び第2のインバータの出力端子間に接続される第1の容量C1と、トランスファゲートの出力端子及び基準電位ノード間に接続される第2の容量C2とを有する発振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロコントローラなどの集積回路では、チップ上にCR発振回路(あるいはリングオシレータなど)を内蔵し、マイクロコントローラのクロック信号を内蔵発振回路から供給する場合がある。水晶振動子、あるいはセラミック振動子を使用した発振回路では、発振回路の出力周波数が安定するまでの起動時間が長く、発振周波数精度は低下しても、より起動時間の短いCR発振回路、リングオシレータなどをクロック源として使用することが望ましい場合があるためである。より具体的には、発振回路の停止と起動を頻繁に繰り返すような応用では、発振回路の起動時の待ち時間が発生し、この待ち時間の消費電力を削減することが、総合的なシステムの性能向上の観点から望ましい場合がある。また、コスト削減の目的で、オンチップの発振回路を使用する場合もある。
【0003】
図1は、CR発振回路の回路図である。CR発振回路において、IV1、IV2及びIV3はインバータを、C1及びC2は容量を、R1は抵抗を、ND1〜ND4は発振回路内部のノードを、GNDはグランド電位(0V)を、示している。ノードND1、ND2及びND3の波形は、CMOS回路の出力波形(矩形波)となる。ノードND4の波形は、ノードND2及びND4の容量カップリングによりノードND2の電位変化の時刻にノードND4の電位が容量結合によりノードND2と同じ方向に変化し、その後緩やかにノードND3の電位と抵抗R1により充放電される波形となる。
【0004】
図2は、他の発振回路の回路図である。発振回路において、IV1及びIV4はインバータを、C1及びC2は容量を、NMn(nは整数)はNチャネルMOSトランジスタを、PMn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、Vddは正の電源電圧(例えば3V)を、GNDはグランド電位(0V)を、NDn(nは整数)は発振回路内部のノードを、VBGRはバンドギャップ回路から発生した一定電圧(例えば2V)を、PBはPチャネルMOSトランジスタPM1のバイアス電位を、NBはNチャネルMOSトランジスタNM2のバイアス電位を、示している。
【0005】
図2の回路において、図1の回路に対応するノード、素子には同じ符号を与えて、対応関係が分かるように示している。図2の回路では、容量C1の一端のノードND5を、一定電圧VBGRを電源とするインバータ(トランジスタPM3及びNM3)で駆動し、ノードND5の信号振幅を温度によらず一定に制御している。周波数を温度に依存しないように設計するために、トランジスタPM2及びNM1に流れる電流を温度に依存せず一定とするように回路を構成する。バイアス電位PB及びNBは、トランジスタPM2及びNM1に流れる電流が一定となるようなバイアス電位である。
【0006】
バイアス電位PB及びNBの電位を発生するバイアス発生回路は、全て半導体チップ上に集積化され、温度に依存しない電流を発生するために、以下に説明するような回路構成が採用される。一定電流を発生させるために、抵抗に電流を流して発生する電位と基準電圧をフィードバック制御により一致させる。オンチップ抵抗の温度依存性を考慮して基準電圧に温度依存性を持たせる。温度が上昇して抵抗値が大きくなる場合には、基準電圧も温度とともに大きくなるような正の温度依存性を持たせ、抵抗の温度依存性を、基準電圧の温度依存性で相殺し、電流が温度に依存しないように設計する。このような回路により、発振周波数が、温度及び電源電圧に対して一定となるような発振回路が実現される。
【0007】
また、ゲートを複数段縦続接続しその最終段のゲート出力を初段のゲート入力に帰還して発振を励起するリング発振器において、隣接するゲートの間にトランスファゲートを挿入し、トランスファゲートをアナログ的に可変できる制御電位に接続する発振回路が知られている(例えば、特開昭63−304702号公報参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−304702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1の回路では、容量C1,C2と抵抗R1を用いることで、電源電圧に依存しない発振周波数を実現することには成功しているが、抵抗R1が温度に依存する場合、発振周波数変動を抑制することが難しいという欠点がある。抵抗R1を例えば、半導体チップ内部に集積した場合、抵抗R1の温度依存性をある程度以上に小さくすることは実際上困難である。また、抵抗R1及び容量C1,C2の値が製造ばらつきにより変動すると発振周波数も変動してしまう。つまり、図1の回路には、抵抗R1及び容量C1,C2の値が製造ばらつきにより変動すると発振周波数も変動してしまう問題、及び抵抗R1の値が温度変動により変化すると、発振周波数が変動するという問題がある。
【0010】
図2の回路では、抵抗の温度依存性を、あらかじめ設計した内蔵基準電圧の温度依存性で相殺し、一定電流で容量C1及びC2を充放電するバイアス電位PB及びNBを発生し、発振周波数の温度変動を改善することを目指している。しかしながら、実際の基準電圧発生回路の出力電位VBGRには、誤差が存在する。この誤差にも起因して、電位VBGRの温度依存性は、製造された回路の個体によって、わずかにプラスになったり、マイナスとなったりする。さらに理想的には、トランジスタPM2及びNM1に流れる電流が、温度に依存せず一定とするように回路を構成しても、この部分にも誤差が存在するので、容量C1及びC2の充電電流の温度依存性も完全に設計値どおりとはならない。さらに、インバータIV1及びIV4の遅延時間も、温度及び製造された回路個体に依存するので、発振周波数の温度特性の誤差要因となる。
【0011】
また、図2の回路で、容量C1及びC2を充電する電流をバイアス電位PB及びNBで一定に制御しようとしても、ノードND4が低レベルから高レベルに変化する場合には、トランジスタNM1がオフとなるので、ノードNM2のドレイン電位がグランド電位GNDとなってしまう。トランジスタNM2のドレインには寄生容量が存在するので、ノードND4が高レベルから低レベルに変化する場合には、ノードND4の放電電流は、バイアス電位NBで設定した電流と正確に等しくはならず、トランジスタNM2のドレインの寄生容量がグランド電位GNDからある電位に充電されるのに相当するだけの電荷が、ノードND4から余計に放電されてしまう。トランジスタPM1のドレインの寄生容量も同様に、電流設定の誤差の原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発振装置は、第1のPチャネルトランジスタ及び第1のNチャネルトランジスタを含み、前記第1のPチャネルトランジスタ及び前記第1のNチャネルトランジスタのゲート電圧に応じて入力端子の信号を出力端子から出力するトランスファゲートと、前記トランスファゲートの出力端子の信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を出力する第1のインバータと、前記第1のインバータの出力端子の信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を出力する第2のインバータと、前記第1のインバータの出力信号の論理反転信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を前記トランスファゲートの入力端子に出力する第3のインバータと、前記トランスファゲートの出力端子及び前記第2のインバータの出力端子間に接続される第1の容量と、前記トランスファゲートの出力端子及び基準電位ノード間に接続される第2の容量とを有する。
【発明の効果】
【0013】
第1のインバータの入力端子に対して一定の充電電流及び一定の放電電流を流すことができるので、発振周波数の変動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】CR発振回路の回路図である。
【図2】他の発振回路の回路図である。
【図3】本発明の実施形態によるCR発振回路の構成例を示す回路図である。
【図4】図3の回路の各部の波形例を示す図である。
【図5】図3のCR発振回路を搭載するマイクロコントローラ(発振装置)の構成例を示す図である。
【図6】図5のバンドギャップ回路の構成例を示す回路図である。
【図7】図5のCR発振回路の構成例を示すブロック図である。
【図8】図7の基準電流発生回路の構成例を示す回路図である。
【図9】図8の可変抵抗の構成例を示す回路図である。
【図10】図8の増幅回路及びその周辺回路の構成例を示す回路図である。
【図11】図7のトリミング電流DAC回路の構成例を示す回路図である。
【図12】図7の基準電流発生回路の他の構成例を示す回路図である。
【図13】図7の基準電流発生回路の他の構成例を示す回路図である。
【図14】図7の基準電流発生回路の他の構成例を示す回路図である。
【図15】図7の基準電流発生回路の他の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図3は本発明の実施形態によるCR発振回路の構成例を示す回路図であり、図4は図3の回路の各部の波形例を示す図である。図4を参照しながら、図3の回路を説明する。図3のNMn(nは整数)はNチャネルMOSトランジスタを、PMn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、Vddは正の電源電位(例えば1.8V)を、VR18は正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、NDn(nは英数字)は発振回路内部のノードを、IV1、IV4及びIV5はインバータを、C1、C2、CNB及びCPBは容量を、IBIASROSCは図3の回路のバイアス電流を、PBはトランジスタPM5のゲートバイアス電位を、NBはトランジスタNM5のゲートバイアス電位を、CLK1はクロック信号を、VREG1は電源電位VR18を発生する回路を、示している。インバータIV1、IV4及びIV5は、それぞれ入力信号を論理反転した信号を出力する。図3において、図1及び図2の回路と同じ働きをする素子、対応するノードには、同じ符号を与えて対応関係を示している。なお、バイアス電流IBIASROSCは、後に説明する図11の回路で説明する。
【0016】
トランジスタPM7は、ソースが電源電位Vddのノードに接続され、ゲートが基準電位GNDのノードに接続される。トランジスタPM8は、ソースがトランジスタPM7のドレインに接続され、ゲート及びドレインが相互に接続される。バイアス電流IBIASROSCは、トランジスタPM7及びPM8のドレイン電流である。トランジスタPM9は、ソースが電源電位Vddのノードに接続され、ゲートが基準電位GNDのノードに接続される。トランジスタPM10は、ソースがトランジスタPM9のドレインに接続され、ゲートがトランジスタPM8のドレインに接続される。トランジスタNM7は、ドレイン及びゲートがトランジスタPM10のドレインに接続される。トランジスタNM8は、ドレインがトランジスタNM7のソースに接続され、ゲートが電源電位Vddのノードに接続され、ソースが基準電位GNDのノードに接続される。容量CPBは、電源電位Vddのノード及びトランジスタPM8のドレイン間に接続される。容量CNBは、トランジスタNM7のドレイン及び基準電位GNDのノード間に接続される。
【0017】
トランジスタPM4は、ソースが電源電位Vddのノードに接続され、ゲートがインバータIV4の出力端子に接続される。トランジスタNM4は、ドレインがトランジスタPM4のドレインに接続され、ゲートがインバータIN4の出力端子に接続され、ソースが基準電位GNDのノードに接続される。トランジスタPM4及びNM4は、インバータを構成する。トランジスタPM5は、ソースがトランジスタPM4のドレインに接続され、ゲートがトランジスタPM8のドレインに接続され、ドレインがインバータIV1の入力端子に接続される。トランジスタNM5は、ソースがトランジスタPM4のドレインに接続され、ゲートがトランジスタNM7のドレインに接続され、ドレインがインバータIV1の入力端子に接続される。トランジスタPM5及びNM5は、トランスファゲートを構成する。バイアス電位PBは、トランジスタPM5のゲート電位である。バイアス電位NBは、トランジスタNM5のゲート電位である。例えば、バイアス電位PBは1V、バイアス電位NBは0.8Vである。
【0018】
ノードND4は、インバータIV1の入力端子に接続される。容量C2は、ノードND4及び基準電位GNDのノード間に接続される。ノードND1は、インバータIN1の出力端子に接続される。インバータIV5は、ノードND1の信号を論理反転し、クロック信号CLK1を出力する。定電圧発生回路VREG1は、電源電位VR18(例えば1.8V)を生成する。トランジスタPM6は、ソースが電源電位VR18のノードに接続され、ゲートがノードND1に接続され、ドレインがノードND5に接続される。トランジスタNM6は、ドレインがノードND5に接続され、ゲートがノードND1に接続され、ソースが基準電位GNDのノードに接続される。トランジスタPM6及びNM6は、インバータを構成する。容量C1は、ノードND4及びND5間に接続される。インバータIV4は、入力端子がノードND1に接続され、出力端子がノードND6に接続される。
【0019】
図2の回路では、容量C1及びC2を充電する電流をバイアス電位PB及びNBで一定に制御しようとしても、ノードND4が低レベルから高レベルに変化する場合には、トランジスタNM1がオフとなるので、トランジスタNM2のドレイン電位がグランド電位GNDとなってしまう。トランジスタNM2のドレインには寄生容量が存在するので、ノードND4が高レベルから低レベルに変化する場合には、ノードND4の放電電流は、バイアス電位NBで設定した電流と正確に等しくはならず、トランジスタNM2のドレインの寄生容量がグランド電位GNDからある電位に充電されるのに相当するだけの電荷が、ノードND4から余計に放電されてしまう。トランジスタPM1のドレインの寄生容量も同様に、電流設定の誤差の原因となっている。
【0020】
一方、図3の回路では、トランジスタPM4及びNM4の出力の変化が十分高速であれば、トランジスタPM5及びNM5のソース(トランジスタPM4及びNM4に接続されるノード)の寄生容量の充電電流は、ノードND4には供給されない。このように、図3の回路構成を採用することで、バイアス電位PB及びNBによる電流の設定の精度を改善することができる。
【0021】
図3のように、負荷に供給する電流を制限する素子をCMOSトランスファゲート(トランジスタPM5及びNM5)とすると、例えば、トランジスタPM4がオン、トランジスタNM4がオフしている状態であっても、トランジスタPM5がノードND4に電流を供給するだけでなく、ノードND4の電位によっては、トランジスタNM5もオンする可能性がある。
【0022】
図3の回路では、ノードND4を充電する場合には、トランジスタPM5だけにより電流が供給されるように回路が構成されている。一定電位VR18でノードND5を駆動することで、ノードND4の信号振幅は、電源電位Vddに依存せず一定となる。ノードND4の信号振幅は、例えば、C2:C1を2:1としておくと、電位VR18の2/3程度とできる。ノードND4の信号振幅を小さくすることにより、インバータIV1の耐圧を低くすることができる。
【0023】
電位VddとVR18はともに1.8Vの一定電位だが、後で、図4で説明するように、素子PM4、NM4、IV1、IV5及びIV4などに供給する電源電位は電位Vddとし、トランジスタPM6及びNM6に供給する電源電位だけを電位VR18とする。
【0024】
このように電源電位を分離する理由は、インバータIV1、IV5及びIV4などの電源電流による電圧変動が、できるだけ電位VR18を変動させないようにするためである。図5に示すように、電位VR18とVddの配線を別配線とすることで、電位VR18の電位変動をできるだけ抑えることを意図している。
【0025】
容量C1とC2の比を、1:1とすると、インバータIV1の論理しきい値が0.9Vのときには、ノードND1が低レベルから高レベルに変化すると、ノードND5の電位は1.8Vから0Vに変化する。ノードND4の電位は、0.9Vから0Vに変化する。ノードND4は0Vから0.9Vまで一定の電流で充電され、ノードND4の電位が0.9Vを超えて、ノードND1の電位が高レベルから低レベルに変化すると、ノードND4の電位は0.9Vから1.8Vに変化する。ノードND4は、1.8Vから0.9Vまで、一定の電流で放電され、図4のような波形となる。これにより、発振周波数の変動を防止することができる。
【0026】
容量C2:C1を、1:1ではなく、例えば2:1としておくと、ノードND4の低レベルは0Vより高い電位とすることができる。また、ノードND4の高レベルは1.8Vより低い電位とすることができる。これにより、耐圧の低いインバータIV1を用いることができる。
【0027】
図3のバイアス電位PB及びNBはトランジスタPM5及びNM5のソース電位がほぼ電源電位(1.8Vあるいは0V)の場合に所定の電流が流れるような電位に設定されるので、ノードND4が充電されるときには、ノードND4の電位は0Vより高い電位とすることができる。これにより、トランジスタPM5でノードND4を充電するときには、トランジスタNM5はオフを保ち、トランジスタNM5が充電電流に影響を与えないように設計することができる。
【0028】
また、ノードND4を放電するときには、トランジスタNM4がオンし、トランジスタNM5で設定される電流でノードND4を放電するが、ノードND4の高レベルは電源電位Vddより低い電位となるように容量C1とC2の関係を設計することで、トランジスタNM5でノードND4を放電するときにはトランジスタPM5はオフを保つように設計できる。
【0029】
PチャネルトランジスタPM5及びNチャネルトランジスタNM5を含むトランスファゲートは、PチャネルトランジスタPM5及びNチャネルトランジスタNM5のゲート電圧に応じて入力端子の信号を出力端子から出力する。インバータIN1は、トランスファゲートPM5,NM5の出力端子の信号を入力し、入力した信号の論理反転信号を出力する。トランジスタPM6及びNM6を含むインバータは、インバータIN1の出力端子の信号を入力し、入力した信号の論理反転信号を出力する。トランジスタPM4及びNM4を含むインバータは、インバータIV1の出力信号の論理反転信号を入力し、入力した信号の論理反転信号をトランスファゲートPM5,NM5の入力端子に出力する。容量C1は、トランスファゲートPM5,NM5の出力端子及びインバータPM6,NM6の出力端子間に接続される。容量C2は、トランスファゲートPM5,NM5の出力端子及び基準電位ノード間に接続される。インバータIV4は、インバータPM6,NM6の電源電位配線VR18とは異なる電源電位配線Vddに接続され、インバータIN1の出力端子の信号を入力し、入力した信号の論理反転信号をインバータPM4,NM4の入力端子に出力する。以上説明したように、図3の回路により、充放電電流の設定の精度を改善することが可能となる。
【0030】
図5は、図3のCR発振回路を搭載するマイクロコントローラ(発振装置)の構成例を示す図である。CR発振回路OSC1は、図3のCR発振回路を有し、詳細は後に図8を参照しながら説明する。MCU1はCR発振回路OSC1を搭載するマイクロコントローラ(発振装置)を、VDP5は正の電源電位(例えば5V)を、VddはレギュレータREG1で発生する正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、BGR1はバンドギャップ回路を、REG1は誤差アンプEAMP1と出力トランジスタPMO1と分圧抵抗PR1,PR2で構成されるレギュレータを、LVDH1は5Vの電源電位VDP5を監視する低電圧検出回路を、LVDL1は1.8Vの電源電位Vddを監視する低電圧検出回路を、OSC1はCR発振回路(例えば図3の回路)を、LOGIC1は内部電位Vddで動作する論理回路を、EAMP1はレギュレータREG1の誤差アンプを、PMO1はレギュレータREG1の出力PチャネルMOSトランジスタを、RR1とRR2は電源電位Vddを分圧する分圧抵抗を、VDIV1は抵抗RR1とRR2で分圧された電圧を、RL1とRL2は電源電位VDP5の電位を分圧する抵抗を、VDIV2は抵抗RL1とRL2で分圧された電圧を、LVDHOX1は低電圧検出回路LVDH1の出力電圧を、RL3とRL4は電源電位Vddの電位を分圧する抵抗を、VDIV3は抵抗RL3とRL4で分圧された電圧を、LVDLOX1は低電圧検出回路LVDL1の出力電圧を、VBGRはバンドギャップ回路BGR1の出力バンドギャップ電圧を、CO1は電源電位Vddを安定化する容量を、CMP1とCMP2はコンパレータ回路を、CLK1はCR発振回路OSC1の出力クロック信号を、VR18はCR発振回路OSC1の電源電位を、示している。CR発振回路OSC1の電源電位Vddは、図3の回路の電源電位Vddに相当する。図5において、図3の回路と同じ働きをする素子、対応するノードには、同じ符号を与えて対応関係を示す。
【0031】
マイクロコントローラMCU1においては、外部から供給される電源電位VDP5を、例えば5Vに保って、内部トランジスタの耐圧から決まる内部電位Vdd及びVR18を内蔵レギュレータREG1で発生する。図5には、外部電源電位VDP5が5V、内蔵レギュレータREG1で発生する電位Vdd及びVR18が1.8Vの例を示す。
【0032】
電源電位VDP5が変動しても、1.8Vの一定電位Vddを供給するために、バンドギャップ回路BGR1により基準電圧VBGRを発生する。この基準電圧VBGRを基に、レギュレータREG1で、1.8Vの電位Vdd及びVR18を発生し、内部回路LVDL1,OSC1,LOGIC1に供給する。低電圧検出回路LVDH1は電源電位VDP5を監視して、電源電位VDP5が所定の電位より低い電位となると、出力電圧LVDHOX1を低レベルとする。低電圧検出回路LVDL1は電源電位Vddを監視し、電源電位Vddが所定の電位より低い電位となると出力電圧LVDLOX1を低レベルとする。
【0033】
論理回路LOGIC1は、電源電位Vddで動作し、必要に応じて、クロック信号CLK1がCR発振回路OSC1から供給される。CR発振回路OSC1は、レギュレータREG1の出力電位Vddと、例えばバンドギャップ電圧VBGRを基に、バイアス電流を決定し、クロック信号CLK1を発生する。
【0034】
マイクロコントローラMCU1に搭載されるレギュレータREG1、低電圧検出回路LVDH1,LVDL1、及びCR発振回路OSC1は、基準電位あるいは基準電流の発生のために、バンドギャップ回路あるいはバンドギャップ回路と類似の回路を使用することが望ましい。このような場合には、図5のように、共通化できる機能を共通のバンドギャップ回路BGR1として実現しておき、これを基に、不足する機能を追加するように回路を構成しておくことで、重複する機能を別個の回路として用意しなくてもよくなる。これにより実効的な回路の面積を削減することが可能となる。
【0035】
次に、図5のそれぞれの回路の動作を簡単に説明する。バンドギャップ電圧VBGRは、1.2Vとして説明を進める。レギュレータREG1は1.2Vの電圧VBGRから1.8Vの電源電位Vddを発生する。誤差アンプEAMP1とトランジスタPMO1が負帰還回路を構成し、バンドギャップ電圧VBGRと電圧VDIV1が一致するように電源電位Vddが定まる。例えば、抵抗RR1とRR2の比を1:2の抵抗値となるように設計しておくと、電源電位Vddが1.8Vのときに、分圧電圧VDIV1が1.2Vとなるので、バンドギャップ電圧VBGRを基に電源電位Vddを1.8Vに設定できる。容量CO1は、負荷電流が急激に変動した場合に、電源電位Vddの電位変動を抑制する安定化容量として働く。
【0036】
低電圧検出回路LVDH1は、例えば、電源電位VDP5が2.4Vよりも低い電位となったときに、電源電位VDP5の低下を検出するための回路として働く。抵抗RL1とRL2の比を1:1の抵抗値に設計しておくと、電源電位VDP5が2.4Vよりも低くなったときに、電圧VDIV2がバンドギャップ電圧VBGRよりも低くなる。これをコンパレータ回路CMP1で検出することで、例えば、出力電圧LVDHOX1を低レベルとできる。上で説明したように、レギュレータREG1で使用するバンドギャップ回路BGR1と、低電圧検出回路LVDH1で使用するバンドギャップ回路BGR1は、共通の回路とすることで、低電圧検出回路機能を実現するために、追加しなければならない回路は例えば、抵抗RL1,RL2とコンパレータ回路CMP1だけとなり、実効的な回路面積を削減することが可能となる。
【0037】
低電圧検出回路LVDL1は、例えば、電源電位Vddが1.4Vよりも低い電位となったときに、電源電位Vddの低下を検出するための回路として働く。抵抗RL3とRL4の比を1:6の抵抗値に設計しておくと、電源電位Vddが1.4Vよりも低くなったときに、電圧VDIV3がバンドギャップ電圧VBGRよりも低くなる。これをコンパレータ回路CMP2で検出することで、例えば、出力電圧LVDLOX1を低レベルとできる。レギュレータREG1及び低電圧検出回路LVDH1で使用するバンドギャップ回路BGR1と、低電圧検出回路LVDL1で使用するバンドギャップ回路BGR1は、共通の回路とすることで、電源電位Vddの低電圧検出回路機能を実現するために、追加しなければならない回路は例えば、抵抗RL3,RL4とコンパレータ回路CMP2だけとなり、実効的な回路面積を削減することが可能となる。
【0038】
低電圧検出回路LVDH1及びLVDL1の例と同様に、CR発振回路OSC1においても、レギュレータREG1などと共通の回路機能部分は、回路を兼用することで、CR発振回路OSC1とレギュレータREG1を搭載する場合の実効的な面積を削減する効果が得られる。
【0039】
図5の例は、バンドギャップ電圧VBGRを基にCR発振回路OSC1のバイアス電流を発生する例を示している。回路の詳細は、他の図を使用して、後に説明する。
【0040】
図6は、図5のバンドギャップ回路BGR1の構成例を示す回路図である。NMBn(nは整数)はNチャネルMOSトランジスタを、PMBn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、VDP5は正の電源電位(例えば5V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、CB1は容量を、RB1、RB2、RB3及びRB4は抵抗を、Q1、Q2はPNPトランジスタを、BPBはバイアス電位を、IBLVDHは図5の低電圧検出回路LVDH1に供給するバイアス電流を、IBLVDLは図5の低電圧検出回路LVDL1に供給するバイアス電流を、IBOSCは図5のCR発振回路OSC1に供給するバイアス電流を、VBE1はトランジスタQ1のエミッタ電位を、VBE2はトランジスタQ2のエミッタ電位を、IP及びIMは説明のために与えたノードを、VBGRは出力バンドギャップ電圧を、示している。エミッタ電位VBE1は、後に説明する図8、図10、図14及び図15の回路で使用される。
【0041】
図6において、図3及び図5の回路と対応するノードには、同じ符号を与えて対応関係を示した。図6のトランジスタQ1及びQ2に添えられた倍率の数字はそれぞれのトランジスタQ1及びQ2のサイズの関係を示しているものとする。以下同様に、PNPトランジスタに添えられた倍率の数字はそれぞれのトランジスタのサイズの関係を示しているものとする。
【0042】
トランジスタPMB1〜PMB9及びトランジスタNMB1〜NMB5に加わる電源電位VDP5は5Vなので、これらのトランジスタの耐圧は5V以上が必要となる。図3の回路で使用する内部電源電位Vdd,VR18(1.8V)用のトランジスタとは、ゲート長及びゲート酸化膜厚が異なるが、表記が煩雑となること、電源電位から明らかであることから、図3の回路のトランジスタ記号と同じトランジスタ記号で回路を表現した。以下特に断らない場合は、電源電位に対応したトランジスタが使用されるものとして説明を進める。
【0043】
トランジスタPMB1,PMB2,NMB1,NMB2及び抵抗RB1で構成される回路がバイアス電流を発生する。この部分の回路は一般的なので、詳細な説明は省略する。また、図を簡単にするために、スタートアップ回路及びパワーダウン用の素子などは省略して示している。同じゲート電圧が印加されるトランジスタNMB1とNMB2でトランジスタNMB2のサイズ(ゲート幅)をトランジスタNMB1に対して大きく設計しておくと、同じ電流を流すために必要なゲート電圧の差と抵抗RB1でバイアス電流を設計することができる。このバイアス電流が流れる電位として、バイアス電位BPBが定まる。
【0044】
トランジスタPMB5,PMB6,PMB3,NMB3,NMB4,NMB5,PMB4は、ノードIPの電位とノードIMの電位を一致させるように帰還制御し、バンドギャップ電圧VBGRを発生するためのオペアンプ回路として働く。トランジスタPMB3はオペアンプ回路の電流源として働く。トランジスタPMB5,PMB6,PMB3,NMB3,NMB4,NMB5,PMB4で構成されるオペアンプ自体は、一般的な2段構成のオペアンプ回路となっている。容量CB1はオペアンプの位相補償容量として働く。
【0045】
ノードIPとIMの電位が一致すると、抵抗RB2とRB3には等しい電位差が加わるので、抵抗RB2とRB3の比で決まる電流がトランジスタQ1とQ2に流れる。トランジスタQ1とQ2のエミッタサイズの比は、例えば、1:10に設計されているので、抵抗RB2及びRB3の比とあわせて、トランジスタQ1とQ2の電流密度が定まる。この電流密度の比にしたがって、トランジスタQ1とQ2のエミッタ電位VBE1とVBE2の差が定まる。このエミッタ電位VBE1とVBE2の電位差が抵抗RB4に加わり、トランジスタQ1及びQ2に流れる電流が定まる。エミッタ電位VBE1は、絶対温度に対して負の依存性を示し、トランジスタQ1とQ2に流れる電流は絶対温度に正に比例する。以下、CTATは絶対温度に対する負依存性を示し、PTATは絶対温度に対する正依存性を示す。
【0046】
バンドギャップ電圧VBGRが1.2V程度となるように抵抗RB2及びRB3の値を選んでおくと、バンドギャップ電圧VBGRは温度に依存せず一定となる。バンドギャップ回路BGR1の電流源の電流を決定するためにバイアス回路でバイアス電位BPBを発生するのと同時に、低電圧検出回路LVDH1,LVDL1及びCR発振回路OSC1のバイアス電流としても使用できるように、トランジスタPMB7,PMB8,PMB9を設けておくと、低電圧検出回路LVDH1,LVDL1及びCR発振回路OSC1などで、トランジスタPMB1,PMB2,NMB1,NMB2及び抵抗RB1で構成されるバイアス回路を重複して用意する必要がなくなる。
【0047】
また、後で説明するように、バンドギャップ電圧VBGRだけでなく、トランジスタQ1のエミッタ電位VBE1をCR発振回路OSC1に供給しておくと、CR発振回路OSC1の基準電流発生に都合がよい。
【0048】
バンドギャップ回路BGR1は、ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続されたPNPトランジスタQ1と、ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続されたPNPトランジスタQ2と、PNPトランジスタQ2のエミッタに一端が接続された抵抗RB4とを有する。バンドギャップ回路BGR1は、抵抗RB4の他端の電位IMとPNPトランジスタQ1のエミッタ電位VBE1とが等しくなるように制御することによりバンドギャップ電圧VBGRを発生する。
【0049】
図7は、図5のCR発振回路OSC1の構成例を示すブロック図である。IREF1はCR発振回路OSC1の基準電流発生回路を、IDAC1は発振周波数を調整するためのトリミング電流デジタルアナログ変換(DAC)回路を、OSCCORE1はCR発振回路OSC1の発振回路本体を、TCA[3:0]は、例えば、4ビットの周波数の温度依存性を調整するための信号を、TRD[7:0]は、例えば、8ビットの発振周波数の調整用の信号を、IBIAS及びIBIASTRIMは基準電流発生回路IREF1で発生した基準電流を、IBIASROSCはトリミング電流DAC回路IDAC1から供給されるCR発振回路本体OSCCORE1のバイアス電流を、CLK1はCR発振回路OSC1の出力クロック信号を、示している。
【0050】
基準電流発生回路IREF1は、図6のバンドギャップ電圧VBGR及びエミッタ電位VBE1などを基に基準電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生する。トリミング電流DAC回路IDAC1は、この基準電流IBIAS及びIBIASTRIMを基にCR発振回路本体OSCCORE1に、バイアス電流IBIASROSCを供給する。CR発振回路本体OSCCORE1は、例えば、図3のCR発振回路のような構成となっている。図7において、図3及び図5の回路と対応するノードには、同じ符号を与えて対応関係を示している。
【0051】
温度依存性調整信号TCA[3:0]は、基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性を調整する信号として働く。周波数調整信号TRD[7:0]は、周波数の絶対値を調整するために、バイアス電流IBIASROSCの絶対値を調整する信号として働く。
【0052】
図8は、図7の基準電流発生回路IREF1の構成例を示す回路図である。PMRn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、AMP1とAMP2は増幅回路(オペアンプ)を、RR1は抵抗を、RR2は可変抵抗を、Q3はPNPトランジスタを、BPTAT1はPTAT電流発生回路を、BCTAT1はCTAT電流発生回路を、VBGRは、図6のバンドギャップ回路BGR1で発生したバンドギャップ電圧を、PGOはPTAT電流発生回路BPTAT1で発生したバイアス電圧を、IPTAT1はトランジスタQ3に流れる電流を、RVBE3はPTAT電流発生回路BPTAT1内部のノードを、VBE1は図6のバンドギャップ回路BGR1で発生した電位VBE1を、PGO2はCTAT電流発生回路BCTAT1で発生したバイアス電圧を、ICTAT1は可変抵抗RR2に流れる電流を、VFBはCTAT電流発生回路BCTAT1内部のノードを、IBIAS及びIBIASTRIMは図7の電流IBIAS及びIBIASTRIMを、VR18は図5のレギュレータREG1で発生する正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、示している。
【0053】
図8において、図3、図5及び図6の回路と対応するノードあるいは素子には、同じ符号を与えて対応関係を示している。図8のトランジスタQ3に添えられた倍率の数字は、トランジスタQ1,Q2,Q3のトランジスタのサイズの関係を示しているものとする。
【0054】
図5のバンドギャップ回路BGR1とレギュレータREG1は5Vの電源電位VDP5から1.8Vの電源電位Vddを発生する回路なので、その電源電位は電位VDP5でなければならない。一方、CR発振回路OSC1は電源電位Vddで動作する論理回路LOGIC1にクロック信号CLK1を供給するための回路なので、電源電位は電位Vddでもよい。電位Vddを電源電位とすると、電位VddはレギュレータREG1で発生した電位なので、電源電位Vddの変動幅が小さいという利点が得られる。電流が一定している部分は、できるだけ、論理回路LOGIC1の電源電位の影響を受けないように配線しておいた方がノイズの観点から有利なので、図8では、電源電位は電位Vddと別配線とするという意味で電位VR18としている。
【0055】
図3の構成から分かるように、図3及び図7のCR発振回路本体OSCCORE1の信号振幅はレギュレータREG1(図5)により、温度に依存せずほぼ一定に保たれている。発振周波数を一定に保つためには、CR発振回路本体OSCCORE1の容量の充放電電流を温度及び電源電位VDP5によらずに一定に保つ必要がある。この目的のために、図8の回路で、温度に依存しない一定電流を発生する。
【0056】
温度に依存しない一定電流を発生する原理は、バンドギャップ回路BGR1とほぼ同じで、絶対温度に正に比例する電流IPTAT1と、絶対温度に対して負の依存性を持つ電流ICTAT1を加算して、ほぼ温度に依存しない電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生する。
【0057】
PTAT電流発生回路BPTAT1で絶対温度に正に比例する電流IPTAT1を発生し、CTAT電流発生回路BCTAT1で絶対温度に対して負の依存性を持つ電流ICTAT1を発生し、トランジスタPMR1とゲート電圧PGOを同じとしたトランジスタPMR2及びPMR3には絶対温度に正に比例する電流が流れる。トランジスタPMR4とゲート電圧PGO2を同じとしたトランジスタPMR4及びPMR5には絶対温度に対して負の依存性を持つ電流が流れる。電流IBIAS及びIBIASTRIMは、それぞれ、トランジスタPMR2,PMR3の電流とトランジスタPMR5,PMR6の電流の和なので、基準電流IBIAS及びIBIASTRIMは温度に依存しない電流となる。
【0058】
次に、PTAT電流発生回路BPTAT1で、絶対温度に正に比例する電流IPTAT1を発生する原理を説明する。PNPトランジスタQ3の順方向電圧VBE3は、絶対温度に対して、ほぼ負の比例関係を示す。例えば、絶対0度で1.2V程度の値を示し、室温付近で600mV程度となるような直線で近似できる。図6のバンドギャップ回路BGR1で発生したバンドギャップ電圧VBGRは温度に依存せず1.2V程度で一定の値となる。増幅回路AMP1でバンドギャップ電圧VBGRとノードRVBE3の電圧が一致するように帰還制御することで、ノードRVBE3の電圧は、バンドギャップ電圧VBGRと同じ電圧となり温度に依存せず、1.2V程度で一定となる。ところで、電圧VBE3は、絶対温度に対して、ほぼ負の比例関係となるので、抵抗RR1に加わる電圧は、絶対温度に正に比例する。抵抗RR1に加わる電圧が、絶対温度に比例するので、抵抗RR1に流れる電流IPTAT1は、絶対温度に比例する電流となる。トランジスタPMR1に流れる電流は電流IPTAT1なので、電圧PGOをゲート電圧とするトランジスタPMR1,PMR2,PMR3に流れる電流は、電流IPTAT1と同じく絶対温度に比例する電流となる。
【0059】
一方、図6のバンドギャップ回路BGR1から供給される電位VBE1は、電圧VBE3と同様、絶対温度に対して、ほぼ負の比例関係を示す。増幅回路AMP2で電位VBE1とノードVFBの電位が一致するように帰還制御することで、ノードVFBの電位は、電位VBE1と同じ電位となり絶対温度に対して、ほぼ負の比例関係を示す。可変抵抗RR2に加わる電位は、絶対温度に対して、ほぼ負の比例関係を示す。可変抵抗RR2に加わる電圧が、絶対温度に負の比例関係となるので、可変抵抗RR2に流れる電流ICTAT1は、絶対温度に負の比例する電流となる。トランジスタPMR4に流れる電流は電流ICTAT1なので、電圧PGO2をゲート電圧とするPMR4,PMR5,PMR6に流れる電流は、電流ICTAT1と同じく絶対温度に負の比例する電流となる。電流ICTAT1の値を可変とするために、抵抗RR2を可変抵抗としている。この部分のより詳細な回路は、後でさらに説明する。
【0060】
基準電流IBIAS及びIBIASTRIMは、トランジスタPMR2及びPMR5に流れる電流、及びトランジスタPMR3,PMR6に流れる電流を適切な割合で加算することで、温度に依存しない電流となる。図8の回路で、温度に依存しない基準電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生することで、必要なPNPトランジスタの数を削減できる効果が得られる。
【0061】
例えば、図6のバンドギャップ回路BGR1では、PTAT電流を発生するために、異なるサイズのトランジスタQ1とQ2を用いて、これらを異なる電流密度でバイアスし、その順方向電圧の差を利用していた。このため、トランジスタQ1の11倍相当のサイズのPNPトランジスタを必要としていた。一方、図8の回路では、トランジスタQ3と直列接続した抵抗RR1の電位を、温度によらず一定に保つことで、1倍の大きさのトランジスタQ3ひとつ(PNPトランジスタ1つ分)で、PTAT電流IPTAT1を発生している。つまり、バンドギャップ電圧VBGRを利用することで、PTAT電流IPTAT1の発生に必要なPNPトランジスタの面積を大幅に削減している。
【0062】
基準電流発生回路IREF1は、絶対温度に対して正の依存性を持つ正依存性電流IPTAT1を発生する正依存性(PTAT)電流発生回路BTAT1と、絶対温度に対して負の依存性を持つ負依存性電流ICTAT1を発生する負依存性(CTAT)電流発生回路BCTAT1とを有する。基準電流発生回路IREF1は、正依存性電流IPTAT1及び負依存性電流ICTAT1を加算することにより基準電流IBIAS,IBIASTRIMを発生する。図3のPチャネルトランジスタPM5及びNチャネルトランジスタNM5のゲートには、基準電流IBIAS,IBIASTRIMに応じた電圧が印加される。
【0063】
正依存性電流発生回路BPTAT1は、コレクタ及びベースが基準電位ノードに接続されたPNPトランジスタQ3と、PNPトランジスタQ3のエミッタに一端が接続された抵抗RR1と、抵抗RR1の他端のノードRVBE3の電位と第1の電位(バンドギャップ電圧)VBGRが等しくなるように抵抗RR1に流れる正依存性電流IPTAT1を制御する第1の制御回路とを有する。第1の制御回路は、増幅回路AMP1及びトランジスタPMR1を有する。増幅回路AMP1は、図6のバンドギャップ回路BGR1のバンドギャップ電圧VBGRを入力する。
【0064】
負依存性電流発生回路BCTAT1は、一端が基準電位ノードに接続された抵抗RR2と、抵抗RR2の他端のノードVFBの電位と第2の電位VBE1が等しくなるように抵抗RR2に流れる負依存性電流ICTAT1を制御する第2の制御回路とを有する。第2の制御回路は、増幅回路AMP2及びトランジスタPMR4を有する。増幅回路AMP2は、図6のバンドギャップ回路BGR1のPNPトランジスタQ1のエミッタ電位VBE1を入力する。
【0065】
以上説明したように、図8の基準電流発生回路IREF1を使用することで、必要な素子面積を削減できる効果が得られる。
【0066】
図9は、図8の可変抵抗RR2の構成例を示す回路図である。NMVn(nは整数)はNチャネルMOSトランジスタを、RVn(nは整数)は抵抗を、VFBは図8のノードVFBを、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、示している。
【0067】
図9において、図8の回路と対応するノードあるいは素子には、同じ符号を与えて対応関係を示している。トランジスタNMV1〜NMV15のゲートに添えられた0000から1110の数字は、図9の可変抵抗RR2を4ビットの調整信号TCA[3:0](図7)で制御する場合の、ゲートが高レベルとなる4ビットの入力調整信号TCA[3:0]の組み合わせの例を示している。4ビットの調整信号TCA[3:0]で16通りの基準電流の温度依存性を選択することができる。基準電流の温度依存性を調整するために、電流ICTAT1の電流値を変更する。電流ICTAT1の電流値を変更するために、可変抵抗RR2の抵抗値を変更する。図9の回路で、温度依存性調整信号TCA[3:0]に応じて可変抵抗RR2の値を変更することができる。
【0068】
調整信号TCA[3:0]が0000の場合には、トランジスタNMV1がオンとなり、ノードVFBと基準電位GNDのノード間の抵抗値(抵抗RR2の値)は、抵抗RV1の値となる。調整信号TCA[3:0]が1111の場合には、トランジスタNMV1〜NMV15がすべてオフとなり、可変抵抗RR2の値は抵抗RV1〜RV16の値の和となる。調整信号TCA[3:0]が0011の場合には、トランジスタNMV1〜NMV3がオフとなり、トランジスタNMV4がオンとなる。可変抵抗RR2の値は、抵抗RV1〜RV4の値の和となる。
【0069】
このように、図9の回路を図8の可変抵抗RR2として使用することができる。図8の可変抵抗RR2の抵抗値を可変とすることで、基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性を、例えば図7の調整信号TCA[3:0]で変更することが可能となる。電流IPTAT1とICTAT1の和で、基準電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生するので、可変抵抗RR2の値を変更することにより、基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性を変更することができる。
【0070】
基準電流発生回路IREF1は、温度依存性調整信号TCA[3:0]に応じて正依存性電流IPTAT1及び負依存性電流ICTAT1の加算比率を変えて加算することにより基準電流IBIAS,IBIASTRIMを発生する。抵抗RR2は、温度依存性調整信号TCA[3:0]に応じて抵抗値が変化する可変抵抗である。
【0071】
図6で発生した実際の基準電圧発生回路の出力電位VBGRには、誤差が存在する。この誤差にも起因して、バンドギャップ電圧VBGRの温度依存性は、製造された回路の個体によって、わずかにプラスになったり、マイナスとなったりする。このため、図5のレギュレータRGE1で発生する電位Vdd及びVR18の値も、製造された回路の個体によって、わずかにプラスになったり、マイナスとなったりする。
【0072】
このため、図8の回路で発生した基準電流IBIAS及びIBIASTRIMが完全に理想的であっても、発振周波数の温度依存性は、回路個体毎にわずかに異なる。さらに、図8の回路で発生する基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性自体も、回路個体毎に異なる。このため、望ましい発振周波数の温度依存性を得るためには、回路個体毎に温度依存性を調整する必要がある。図8の基準電流発生回路の可変抵抗RR2を図9のように構成しておくことで、図8の基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性を電気的に可変とすることができる。
【0073】
これにより、発振周波数の温度依存性を回路個体毎に調整することが可能となり、より精度の高い周波数設定が可能となる。
【0074】
図10は、図8の増幅回路AMP1,AMP2及びその周辺回路の構成例を示す回路図である。PMRn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、NMRn(nは整数)はNチャネルMOSトランジスタを、RR1及びRR3は抵抗を、RR2は可変抵抗を、Q3はPNPトランジスタを、VBGRは、図6のバンドギャップ回路BGR1で発生したバンドギャップ電圧を、PGOは発生したバイアス電圧を、RVBE3は内部のノードを、VBE1は図6のバンドギャップ回路BGR1で発生した電位VBE1を、PGO2は発生したバイアス電圧を、VFBは内部のノードを、VR18は図5のレギュレータREG1で発生する正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、IBOSCは図6のバンドギャップ回路BGR1から供給されるバイアス電流IBOSCを、OPB,ONCB,ONBは電流IBOSCから発生するバイアス電位を、CR1は容量を、示している。
【0075】
図10において、図3、図5、図6、図8などの回路と対応するノードあるいは素子には、同じ符号を与えて対応関係を示している。図10のトランジスタQ3に添えられた倍率の数字は、トランジスタQ1、Q2、Q3のトランジスタサイズの関係を示しているものとする。図を簡単にするために、図8のトランジスタPMR2及びPMR3など一部省略しているが、図8の増幅回路AMP1及びAMP2のトランジスタレベルの回路の一例を表わしているものとする。
【0076】
図10のトランジスタPMR7,PMR8,NMR2,NMR3,NMR4が、図8の増幅回路AMP1として働く。一般的な差動回路なので、この部分の動作説明は省略する。バンドギャップ電圧VBGRが1.2V、電源電位VR18が1.8Vなので、NチャネルMOSトランジスタNMR2,NMR3を入力トランジスタとする差動回路とした例としている。基準電位VBGRがより基準電位GNDに近い電位の場合には、PチャネルMOSトランジスタを入力トランジスタとする差動回路とするなど変形が可能である。
【0077】
トランジスタPMR7,PMR8,NMR2,NMR3,NMR4が動作するためには、トランジスタNMR4のゲート電圧を、所定の電流が流れるようにバイアスしなければならない。この目的のために、図6のバンドギャップ回路BGR1からバイアス電流IBOSCを受け取って、トランジスタNMR1でトランジスタNMR4のゲート電圧に変換している。
【0078】
このような構成とすることで、増幅回路AMP1側で独立なバイアス回路を用意する必要がなくなるので、回路面積を節約できる効果が得られる。
【0079】
図10のトランジスタPMR11〜PMR15及びトランジスタNMR8〜NMR11が、図8の増幅回路AMP2として働く。容量CR1は位相補償容量として働く。増幅回路AMP1及びAMP2は、ともに帰還回路として使用するので、必要に応じて、位相補償を行う。図10の増幅回路AMP2は一般的な折り返しカスコード回路なので、この部分の動作の説明は省略する。電位VBE1が基準電位GNDに近い電位なので、PチャネルMOSトランジスタPMR12,PMR13を入力トランジスタとする折り返しカスコード回路としている。
【0080】
図10の増幅回路AMP1と同様、図10の増幅回路AMP2もバイアス電位を供給する必要があるが、例えば、図10に示すように、電流IBOSCを基に、電位OPB,ONB,ONCBを発生することが可能であり、バイアス電流IBOSCを図6の回路から供給することで、回路面積を削減することができる。図6の電流IBOSCはこのような目的で設けられていて、図6の電流IBLVDH,IBLVDLも同様に使用することができることは言うまでもない。
【0081】
電流IBOSCから電位OPB,ONB,ONCBを発生する部分の回路も一般的な構成なので、この部分の動作説明は省略する。
【0082】
以上説明したように、例えば、図10のような回路で増幅回路AMP1及びAMP2を実現することができ、バイアス電流IBOSCを図6から供給することで、バイアス電流発生のための素子を削減することができる。
【0083】
図11は、図7のトリミング電流DAC回路IDAC1の構成例を示す回路図である。NMDPn(nは整数)、NMDASn(nは整数)、NMDAn(nは整数)、NMDA、NMDB、NMDB1はNチャネルMOSトランジスタを、IBIASTRIMは図8の電流IBIASTRIMを、IBIASは図8の電流IBIASを、PD18はパワーダウン信号を、IBIASROSCは図3のバイアス電流IBIASROSCを、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、IBIASTRIMLSBは電流DAC回路IDAC1の1LSB(最下位ビット)に相当する電流を、IBIASOFFSETは出力電流IBIASROSCの最小電流となるオフセット分の電流を、示している。図11において、図3、図5、図7、図8などの回路と対応するノードあるいは素子には、同じ符号を与えて対応関係を示している。
【0084】
図11は、図7に示したような8ビットの信号TRD[7:0]で、バイアス電流IBIASROSCの絶対値を制御するための電流DAC回路として働く。NチャネルMOSトランジスタNMDAS1〜NMDAS256は、例えば、同じサイズのNチャネルMOSトランジスタが256個用意されていることを表わしている。同様に、NチャネルMOSトランジスタNMDA1〜NMDA256も、同じサイズのNチャネルMOSトランジスタが256個用意されていることを表わしている。
【0085】
電流IBIASTRIMのノードは、図8の電流IBIASTRIMのノードと接続されて、バイアス電流IBIASTRIMをトランジスタNMDAによりゲート電圧に変換する。このゲート電圧がトランジスタNMDA1〜NMDA256に供給されるので、トランジスタNMDA1〜NMDA256は同じ電流を流すことが可能となる。図11の電流IBIASTRIMLSBは、1つあたりのトランジスタNMDAn(nは1〜256)に流れる電流を示している。トランジスタNMDAとトランジスタNMDA1〜NMDA256のサイズを適切に設計しておくことで、電流IBIASTRIMを基に、必要な値の電流IBIASTRIMLSBを得ることができる。例えば、トランジスタNMDAとトランジスタNMDA1〜NMDA256は、すべて同じサイズであり、それぞれ1μAの電流IBIASTRIMLSBを流すことができる。
【0086】
トランジスタNMDA1〜NMDA256とトランジスタNMDAS1〜NMDAS256は、それぞれ直列に接続されている。256個のトランジスタNMDAS1〜NMDAS256のゲートのうち高レベルとする数を制御することで、図3及び図7のCR発振回路本体OSCCORE1に供給するバイアス電流IBIASROSCの値を制御することができる。トランジスタNMDAS1〜NMDAS256のゲートに添えられた1〜256の数字は、このゲートの制御信号を意味している。図7に示したように8ビットのデジタル信号TRD[7:0]で256通りのバイアス電流IBIASROSCを制御することができるので、例えば、図11の電流DAC回路でバイアス電流IBIASROSCの値を調整できる。
【0087】
バイアス電流IBIASROSCの値の最小値は、例えば図11では、1つ分のIBIASTRIMLSB+IBIASOFFSETとなる。この電流を図7のCR発振回路本体OSCCORE1の周波数調整に必要な最小電流となるように設計しておけばよい。電流IBIASOFFSETは電流IBIASを基にトランジスタNMDBとNMDB1のサイズ比を適切に設計しておくことで任意の値に設計できることは明らかであろう。また、トランジスタNMDP1及びNMDP2のゲート電圧PD18を高レベルとすることで、NチャネルMOSトランジスタのゲート電圧が0となるのでパワーダウン状態とできることも図から明らかであろう。
【0088】
電流デジタルアナログ変換(DAC)回路IDAC1は、基準電流IBIASTRIMを用いて、デジタル信号TRD[7:0]をアナログのバイアス電流IBIASROSCに変換する。図3のPチャネルトランジスタPM5及びNチャネルトランジスタNM5のゲートには、バイアス電流IBIASROSCに応じた電圧が印加される。
【0089】
以上説明したように、図11のような回路で、図8の基準電流発生回路IREF1で発生した電流IBIASTRIMを基に、周波数調整に必要なバイアス電流IBIASROSCの可変機構が実現できる。
【0090】
図12は、図7の基準電流発生回路IREF1の他の構成例を示す回路図である。PMRBn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、AMP3とAMP4は増幅回路(オペアンプ)を、RR4は抵抗を、RR5は可変抵抗を、Q4とQ5はPNPトランジスタを、BPTAT2はPTAT電流発生回路を、BCTAT2はCTAT電流発生回路を、PGO3はPTAT電流発生回路BPTAT2で発生したバイアス電位を、IPTAT2はトランジスタQ5に流れる電流を、RVBE5とVBE4はPTAT電流発生回路BPTAT2内部のノードを、PGO4はCTAT電流発生回路BCTAT2で発生したバイアス電位を、ICTAT2は可変抵抗RR5に流れる電流を、VFBはCTAT電流発生回路BCTAT2内部のノードを、IBIASとIBIASTRIMは図7の電流IBIASとIBIASTRIMを、VR18は図5のレギュレータREG1で発生する正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0v)を、示している。図12において、図8などの図と対応するノード、素子には、同じ符号を与えて対応関係を示したので、重複する説明は省略する。
【0091】
以下、図12の回路と図8の回路の違いを説明する。図12においても、PTAT電流発生回路BPTAT2でPTAT電流IPTAT2を発生し、CTAT電流発生回路BCTAT2でCTAT電流ICTAT2を発生する。これらの電流IPTAT2及びICTAT2を加算して、電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生する。可変抵抗RR5の抵抗値を変更することで、CTAT電流ICTAT2の値を変更できるので、基準電流の温度依存性を調整できることも図8の回路と同様である。
【0092】
図8の回路では、図6のバンドギャップ回路BGR1からバンドギャップ電圧VBGR及び電位VBE1が供給されて、これを基にPTAT電流IPTAT1とCTAT電流ICTAT1を発生していた。バンドギャップ回路BGR1の電位VBGR及びVBE1を利用することで、基準電流発生に必要な素子を削減していた。
【0093】
一方、図12では、基準電流発生回路IREF1内部だけで、トランジスタQ4とQ5を基に、PTAT電流IPTAT2とCTAT電流ICTAT2を発生している。素子数は増えるが、図12のような構成も可能である。レギュレータREG1のバンドギャップ回路BGR1と位置的に遠い場所にこれら回路を配置する場合には、図12のような基準電流発生回路IREF1を採用することも可能である。
【0094】
ノードRVBE5の電位とノードVBE4の電位が一致するように制御し、トランジスタQ4とQ5の電流密度の比を適切に設計することで、絶対温度に比例するPTAT電流IPTAT2を発生できることは、図6のバンドギャップ回路BGR1と同じである。PNPトランジスタQ4の順方向電圧であるノードVBE4の電圧を基に、電流を発生することで、CTAT電流ICTAT2を発生できることも、図8の回路と同様である。
【0095】
図12の回路を採用すると、図8の回路の場合のような面積削減の効果は得られないが、図7の説明で述べた、基準電流の温度依存性を調整できる効果、発振周波数の調整が可能な効果は得られる。
【0096】
図13は、図7の基準電流発生回路IREF1の他の構成例を示す回路図である。図13の回路と図8の回路の違いは、増幅回路AMP2のマイナス入力だけなので、この部分の違いだけを説明する。回路素子の名称、ノード名なども全く図8と同じなので、重複する説明は省略する。
【0097】
図8の回路では、増幅回路AMP2のマイナス入力はバンドギャップ回路BGR1(図6)の電圧VBE1としていた。一方、図13の回路では、増幅回路AMP2のマイナス入力はPTAT電流発生回路BPTAT1の電圧VBE3としている。図13のトランジスタQ3にもPTAT電流IPTAT1が流れるので、図13の電圧VBE3と図6の電圧VBE1はほぼ同じノード電圧となり、またその温度特性も絶対温度に対して負の比例の関係となる。従って、図13のような接続としても、図8の回路と同様に基準電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生することが可能である。
【0098】
図13のような接続を採用すると、図6のバンドギャップ回路BGR1から基準電流発生回路IREF1(図13)に供給する電位及びバイアス電流は、バンドギャップ電圧VBGRと電流IBOSCだけでよくなり、信号線を削減できる効果が得られる。
【0099】
一方、図8の構成では、CTAT電流発生回路BCTAT1の基準電位(増幅回路AMP2のマイナス入力)VBE1が、すでに安定している電位VBE1なので、CR発振回路を起動するときの基準電流の安定化時間を短縮できる利点がある。図13の回路では、PTAT電流発生回路BPTAT1の電位VBE3が安定した後、これを基にノードVFBの電位が安定するので、基準電流が安定するまでの時間が、図8の回路より長くなる。
【0100】
増幅回路AMP1は、図6のバンドギャップ回路BGR1のバンドギャップ電圧VBGRを入力し、バンドギャップ電圧VBGRと抵抗RR1の他端のノードRVBE3の電位が等しくなるように抵抗RR1に流れる正依存性電流IPTAT1を制御する。増幅回路AMP2は、PNPトランジスタQ3のエミッタ電位VBE3と抵抗RR2の他端のノードVFBの電位が等しくなるように抵抗RR2に流れる負依存性電流ICTAT1を制御する。
【0101】
図14は、図7の基準電流発生回路IREF1の他の構成例を示す回路図である。PMRCn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、AMP5とAMP6は増幅回路(オペアンプ)を、RR4は抵抗を、RR7は可変抵抗を、Q5はPNPトランジスタを、BPTAT3はPTAT電流発生回路を、BCTAT3はCTAT電流発生回路を、PGO5はPTAT電流発生回路BPTAT3で発生したバイアス電位を、IPTAT3はトランジスタQ5に流れる電流を、RVBE5はPTAT電流発生回路BPTAT3内部のノードを、PGO6はCTAT電流発生回路BCTAT3で発生したバイアス電位を、ICTAT3は可変抵抗RR7に流れる電流を、VFBはCTAT電流発生回路BCTAT3内部のノードを、IBIASとIBIASTRIMは図7の電流IBIASとIBIASTRIMを、VR18はレギュレータREG1で発生する正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、VBE1は図6で発生した電位VBE1を、示している。図14において、図8などの図と対応するノード、素子には、同じ符号を与えて対応関係を示したので、重複する説明は省略する。
【0102】
図8では、バンドギャップ電圧VBGRを基に絶対温度に比例する電流IPTAT1を発生した。一方、図14の回路では、バンドギャップ回路BGR1の電位VBE1を基にPTAT電流IPTAT3を発生する。
【0103】
図12では、ノードRVBE5とVBE4の電位が一致するように制御することで、PTAT電流IPTAT2を発生することができる。図12のノードVBE4の電位と、図6の電位VBE1は、ほぼ等しい電位となっているので、ノードVBE4の電位を電位VBE1で置き換えてもPTAT電流を発生することができる。図14は、ノードRVBE5の電位と電位VBE1を増幅回路AMP5で一致するように制御して、PTAT電流IPTAT3を発生する。図14のような構成とすることで、図12の回路に対して素子数を削減することができる。
【0104】
増幅回路AMP1は、図6のバンドギャップ回路BGR1のPNPトランジスタQ1のエミッタ電位VBE1を入力し、エミッタ電位VBE1と抵抗RR4の他端のノードRVBE5の電位が等しくなるように抵抗RR4に流れる正依存性電流IPTAT3を制御する。増幅回路AMP2は、図6のバンドギャップ回路BGR1のPNPトランジスタQ1のエミッタ電位VBE1を入力し、エミッタ電位VBE1と抵抗RR7の他端のノードVFBの電位が等しくなるように抵抗RR7に流れる負依存性電流ICTAT3を制御する。
【0105】
図15は、図7の基準電流発生回路IREF1の他の構成例を示す回路図である。PMRDn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、AMP7とAMP8は増幅回路(オペアンプ)を、RR1は抵抗を、RR2は可変抵抗を、Q3はPNPトランジスタを、BPTAT4はPTAT電流発生回路を、BCTAT4はCTAT電流発生回路を、PGO7はPTAT電流発生回路BPTAT4で発生したバイアス電位を、IPTAT4はトランジスタQ3に流れる電流を、RVBE3はPTAT電流発生回路BPTAT4内部のノードを、PGO8はCTAT電流発生回路BCTAT4で発生したバイアス電位を、ICTAT4は可変抵抗RR2に流れる電流を、VFBはCTAT電流発生回路BCTAT4内部のノードを、IBIASとIBIASTRIMは図7の電流IBIASとIBIASTRIMを、VDP5は正の電源電位(例えば5V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、VBE1とVBGRは図6で発生した電位VBE1とVBGRを、OPCBはカスコード回路のためのバイアス電位を、示している。図15において、図8などの図と対応するノード、素子には、同じ符号を与えて対応関係を示したので、重複する説明は省略する。
【0106】
図15は、図8の回路の電源電位VR18を電源電位VDP5で置き換えて、電流源をカスコード回路とした構成となっている。基本的な動作原理は、図8の回路と同じなので、動作の詳細な説明は省略する。
【0107】
図8の回路では、バンドギャップ電圧VBGRを基にPTAT電流IPTAT1を発生し、その電流源の正側電源電位は電位VR18としていた。この電源電位VR18を電源電位VDP5としても、回路動作させることが可能で、その例が図15となっている。電流源PMRD3及びPMRD4などのドレイン電圧が大きく、また、電源電位VDP5が大きく変動する場合もあるので、電流源をカスコード回路としている。バイアス電位OPCBは、このためのバイアス電位となっている。図10に示したような方法でバイアス電位OPCBを発生できる。電源電位VR18あるいは電源電位Vddの絶対値が小さく、電源電位VDP5を使用して基準電流を発生する方が、望ましい場合には、図15のような構成を採用することが可能である。図15では、図8の回路の電源電位を電位VDP5に置き換える例を示したが、他の回路例も同様に電源電位VR18を電源電位VDP5に置き換えることが必要ならば、電流源をカスコード回路とできることはいうまでもない。
【0108】
以上のように、本実施形態のCR発振回路では、図3に示すように、負荷の充放電電流を一定に制御する手段として、図3のインバータPM4,NM4と、その出力に直列に接続されたCMOSトランスファゲート(トランジスタ)PM5,NM5を採用する。一定電流で充放電しようとしているノードND4の信号振幅を、確実に電源電位Vddより、小さく設計するために容量C2を設ける。また、図7に示すように、CR発振回路では、発振回路の基準電流の温度依存性をプラスからマイナスに調整するための信号TCA[3:0]を用意する。また、図5に示すように、マイクロコントローラMCU1では、バンドギャップ回路BGR1と、レギュレータREG1を構成する誤差アンプEAMP1、レギュレータ出力トランジスタPMO1を用意する。バンドギャップ回路BGR1の出力バンドギャップ電圧VBGRを利用して内部電圧Vdd(例えば1.8V)を発生する。この内部電圧Vdd(例えば1.8V)をCR発振回路OSC1に供給する。また、図5に示すように、バンドギャップ回路BGR1は、必要に応じて、低電圧検出回路LVDH1及びLVDL1にバンドギャップ電圧VBGRを供給する。また、図8の基準電流発生回路IREF1は、バンドギャップ電圧VBGRを基に、CR発振回路OSC1のバイアス電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生する。
【0109】
図3に示すように、CR発振回路は、インバータPM4,NM4と、その出力に直列に接続されたCMOSトランスファゲート(トランジスタ)PM5,NM5を採用し、一定電流で充放電しようとしているノードND4の信号振幅を、確実に電源電位Vddより、小さく設計するために容量C2を設ける。これにより、負荷の充電から放電、放電から充電の切り替わり時に、負荷に供給する電流自身で、MOSトランジスタのオン/オフのために寄生容量を充放電する必要がなくなるので、寄生容量が、負荷に供給する電流に、与える影響を抑制できる。
【0110】
また、図7に示すように、CR発振回路の基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性をプラスからマイナスに調整するための信号TCA[3:0]を用意することにより、製造された回路毎に、発振回路の発振周波数の温度依存性を調整することが可能となり、発振周波数精度を改善できる。
【0111】
また、図5に示すように、バンドギャップ回路BGR1と、レギュレータREG1を構成する誤差アンプEAMP1、レギュレータ出力トランジスタPMO1を用意し、バンドギャップ回路BGR1の出力バンドギャップ電圧VBGRを利用して内部電圧Vdd(例えば1.8V)を発生し、バンドギャップ電圧VBGRを基に、CR発振回路OSC1のバイアス電流IBIASROSCを発生し、必要に応じて、低電圧検出回路LVDH1,LVDL1にバンドギャップ電圧VBGRを供給する。これにより、レギュレータREG1、低電圧検出回路LVDH1,LVDL1、CR発振回路OSC1で、バンドギャップ回路BGR1を共用でき、それぞれにバンドギャップ回路を用意する場合に比べて回路面積を削減することが可能となる。
【0112】
本実施形態によれば、抵抗値の温度変化による発振周波数変動を防止することができる。また、トランジスタのドレインの寄生容量が、電流設定の誤差となることを防止することができる。また、基準電圧の温度依存性又は基準電流の温度依存性が回路個体により、わずかに異なり、これにより発振周波数の温度依存性が、回路個体毎に異なり、発振周波数の誤差を大きくしてしまうことを防止することができる。また、マイクロコントローラMCU1にレギュレータ回路REG1などの他の回路を搭載することができる。
【0113】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0114】
OSCCORE1 発振回路本体
IDAC1 トリミング電流DAC回路
IREF1 基準電流発生回路
BGR1 バンドギャップ回路
OSC1 CR発振回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロコントローラなどの集積回路では、チップ上にCR発振回路(あるいはリングオシレータなど)を内蔵し、マイクロコントローラのクロック信号を内蔵発振回路から供給する場合がある。水晶振動子、あるいはセラミック振動子を使用した発振回路では、発振回路の出力周波数が安定するまでの起動時間が長く、発振周波数精度は低下しても、より起動時間の短いCR発振回路、リングオシレータなどをクロック源として使用することが望ましい場合があるためである。より具体的には、発振回路の停止と起動を頻繁に繰り返すような応用では、発振回路の起動時の待ち時間が発生し、この待ち時間の消費電力を削減することが、総合的なシステムの性能向上の観点から望ましい場合がある。また、コスト削減の目的で、オンチップの発振回路を使用する場合もある。
【0003】
図1は、CR発振回路の回路図である。CR発振回路において、IV1、IV2及びIV3はインバータを、C1及びC2は容量を、R1は抵抗を、ND1〜ND4は発振回路内部のノードを、GNDはグランド電位(0V)を、示している。ノードND1、ND2及びND3の波形は、CMOS回路の出力波形(矩形波)となる。ノードND4の波形は、ノードND2及びND4の容量カップリングによりノードND2の電位変化の時刻にノードND4の電位が容量結合によりノードND2と同じ方向に変化し、その後緩やかにノードND3の電位と抵抗R1により充放電される波形となる。
【0004】
図2は、他の発振回路の回路図である。発振回路において、IV1及びIV4はインバータを、C1及びC2は容量を、NMn(nは整数)はNチャネルMOSトランジスタを、PMn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、Vddは正の電源電圧(例えば3V)を、GNDはグランド電位(0V)を、NDn(nは整数)は発振回路内部のノードを、VBGRはバンドギャップ回路から発生した一定電圧(例えば2V)を、PBはPチャネルMOSトランジスタPM1のバイアス電位を、NBはNチャネルMOSトランジスタNM2のバイアス電位を、示している。
【0005】
図2の回路において、図1の回路に対応するノード、素子には同じ符号を与えて、対応関係が分かるように示している。図2の回路では、容量C1の一端のノードND5を、一定電圧VBGRを電源とするインバータ(トランジスタPM3及びNM3)で駆動し、ノードND5の信号振幅を温度によらず一定に制御している。周波数を温度に依存しないように設計するために、トランジスタPM2及びNM1に流れる電流を温度に依存せず一定とするように回路を構成する。バイアス電位PB及びNBは、トランジスタPM2及びNM1に流れる電流が一定となるようなバイアス電位である。
【0006】
バイアス電位PB及びNBの電位を発生するバイアス発生回路は、全て半導体チップ上に集積化され、温度に依存しない電流を発生するために、以下に説明するような回路構成が採用される。一定電流を発生させるために、抵抗に電流を流して発生する電位と基準電圧をフィードバック制御により一致させる。オンチップ抵抗の温度依存性を考慮して基準電圧に温度依存性を持たせる。温度が上昇して抵抗値が大きくなる場合には、基準電圧も温度とともに大きくなるような正の温度依存性を持たせ、抵抗の温度依存性を、基準電圧の温度依存性で相殺し、電流が温度に依存しないように設計する。このような回路により、発振周波数が、温度及び電源電圧に対して一定となるような発振回路が実現される。
【0007】
また、ゲートを複数段縦続接続しその最終段のゲート出力を初段のゲート入力に帰還して発振を励起するリング発振器において、隣接するゲートの間にトランスファゲートを挿入し、トランスファゲートをアナログ的に可変できる制御電位に接続する発振回路が知られている(例えば、特開昭63−304702号公報参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭63−304702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図1の回路では、容量C1,C2と抵抗R1を用いることで、電源電圧に依存しない発振周波数を実現することには成功しているが、抵抗R1が温度に依存する場合、発振周波数変動を抑制することが難しいという欠点がある。抵抗R1を例えば、半導体チップ内部に集積した場合、抵抗R1の温度依存性をある程度以上に小さくすることは実際上困難である。また、抵抗R1及び容量C1,C2の値が製造ばらつきにより変動すると発振周波数も変動してしまう。つまり、図1の回路には、抵抗R1及び容量C1,C2の値が製造ばらつきにより変動すると発振周波数も変動してしまう問題、及び抵抗R1の値が温度変動により変化すると、発振周波数が変動するという問題がある。
【0010】
図2の回路では、抵抗の温度依存性を、あらかじめ設計した内蔵基準電圧の温度依存性で相殺し、一定電流で容量C1及びC2を充放電するバイアス電位PB及びNBを発生し、発振周波数の温度変動を改善することを目指している。しかしながら、実際の基準電圧発生回路の出力電位VBGRには、誤差が存在する。この誤差にも起因して、電位VBGRの温度依存性は、製造された回路の個体によって、わずかにプラスになったり、マイナスとなったりする。さらに理想的には、トランジスタPM2及びNM1に流れる電流が、温度に依存せず一定とするように回路を構成しても、この部分にも誤差が存在するので、容量C1及びC2の充電電流の温度依存性も完全に設計値どおりとはならない。さらに、インバータIV1及びIV4の遅延時間も、温度及び製造された回路個体に依存するので、発振周波数の温度特性の誤差要因となる。
【0011】
また、図2の回路で、容量C1及びC2を充電する電流をバイアス電位PB及びNBで一定に制御しようとしても、ノードND4が低レベルから高レベルに変化する場合には、トランジスタNM1がオフとなるので、ノードNM2のドレイン電位がグランド電位GNDとなってしまう。トランジスタNM2のドレインには寄生容量が存在するので、ノードND4が高レベルから低レベルに変化する場合には、ノードND4の放電電流は、バイアス電位NBで設定した電流と正確に等しくはならず、トランジスタNM2のドレインの寄生容量がグランド電位GNDからある電位に充電されるのに相当するだけの電荷が、ノードND4から余計に放電されてしまう。トランジスタPM1のドレインの寄生容量も同様に、電流設定の誤差の原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発振装置は、第1のPチャネルトランジスタ及び第1のNチャネルトランジスタを含み、前記第1のPチャネルトランジスタ及び前記第1のNチャネルトランジスタのゲート電圧に応じて入力端子の信号を出力端子から出力するトランスファゲートと、前記トランスファゲートの出力端子の信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を出力する第1のインバータと、前記第1のインバータの出力端子の信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を出力する第2のインバータと、前記第1のインバータの出力信号の論理反転信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を前記トランスファゲートの入力端子に出力する第3のインバータと、前記トランスファゲートの出力端子及び前記第2のインバータの出力端子間に接続される第1の容量と、前記トランスファゲートの出力端子及び基準電位ノード間に接続される第2の容量とを有する。
【発明の効果】
【0013】
第1のインバータの入力端子に対して一定の充電電流及び一定の放電電流を流すことができるので、発振周波数の変動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】CR発振回路の回路図である。
【図2】他の発振回路の回路図である。
【図3】本発明の実施形態によるCR発振回路の構成例を示す回路図である。
【図4】図3の回路の各部の波形例を示す図である。
【図5】図3のCR発振回路を搭載するマイクロコントローラ(発振装置)の構成例を示す図である。
【図6】図5のバンドギャップ回路の構成例を示す回路図である。
【図7】図5のCR発振回路の構成例を示すブロック図である。
【図8】図7の基準電流発生回路の構成例を示す回路図である。
【図9】図8の可変抵抗の構成例を示す回路図である。
【図10】図8の増幅回路及びその周辺回路の構成例を示す回路図である。
【図11】図7のトリミング電流DAC回路の構成例を示す回路図である。
【図12】図7の基準電流発生回路の他の構成例を示す回路図である。
【図13】図7の基準電流発生回路の他の構成例を示す回路図である。
【図14】図7の基準電流発生回路の他の構成例を示す回路図である。
【図15】図7の基準電流発生回路の他の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図3は本発明の実施形態によるCR発振回路の構成例を示す回路図であり、図4は図3の回路の各部の波形例を示す図である。図4を参照しながら、図3の回路を説明する。図3のNMn(nは整数)はNチャネルMOSトランジスタを、PMn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、Vddは正の電源電位(例えば1.8V)を、VR18は正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、NDn(nは英数字)は発振回路内部のノードを、IV1、IV4及びIV5はインバータを、C1、C2、CNB及びCPBは容量を、IBIASROSCは図3の回路のバイアス電流を、PBはトランジスタPM5のゲートバイアス電位を、NBはトランジスタNM5のゲートバイアス電位を、CLK1はクロック信号を、VREG1は電源電位VR18を発生する回路を、示している。インバータIV1、IV4及びIV5は、それぞれ入力信号を論理反転した信号を出力する。図3において、図1及び図2の回路と同じ働きをする素子、対応するノードには、同じ符号を与えて対応関係を示している。なお、バイアス電流IBIASROSCは、後に説明する図11の回路で説明する。
【0016】
トランジスタPM7は、ソースが電源電位Vddのノードに接続され、ゲートが基準電位GNDのノードに接続される。トランジスタPM8は、ソースがトランジスタPM7のドレインに接続され、ゲート及びドレインが相互に接続される。バイアス電流IBIASROSCは、トランジスタPM7及びPM8のドレイン電流である。トランジスタPM9は、ソースが電源電位Vddのノードに接続され、ゲートが基準電位GNDのノードに接続される。トランジスタPM10は、ソースがトランジスタPM9のドレインに接続され、ゲートがトランジスタPM8のドレインに接続される。トランジスタNM7は、ドレイン及びゲートがトランジスタPM10のドレインに接続される。トランジスタNM8は、ドレインがトランジスタNM7のソースに接続され、ゲートが電源電位Vddのノードに接続され、ソースが基準電位GNDのノードに接続される。容量CPBは、電源電位Vddのノード及びトランジスタPM8のドレイン間に接続される。容量CNBは、トランジスタNM7のドレイン及び基準電位GNDのノード間に接続される。
【0017】
トランジスタPM4は、ソースが電源電位Vddのノードに接続され、ゲートがインバータIV4の出力端子に接続される。トランジスタNM4は、ドレインがトランジスタPM4のドレインに接続され、ゲートがインバータIN4の出力端子に接続され、ソースが基準電位GNDのノードに接続される。トランジスタPM4及びNM4は、インバータを構成する。トランジスタPM5は、ソースがトランジスタPM4のドレインに接続され、ゲートがトランジスタPM8のドレインに接続され、ドレインがインバータIV1の入力端子に接続される。トランジスタNM5は、ソースがトランジスタPM4のドレインに接続され、ゲートがトランジスタNM7のドレインに接続され、ドレインがインバータIV1の入力端子に接続される。トランジスタPM5及びNM5は、トランスファゲートを構成する。バイアス電位PBは、トランジスタPM5のゲート電位である。バイアス電位NBは、トランジスタNM5のゲート電位である。例えば、バイアス電位PBは1V、バイアス電位NBは0.8Vである。
【0018】
ノードND4は、インバータIV1の入力端子に接続される。容量C2は、ノードND4及び基準電位GNDのノード間に接続される。ノードND1は、インバータIN1の出力端子に接続される。インバータIV5は、ノードND1の信号を論理反転し、クロック信号CLK1を出力する。定電圧発生回路VREG1は、電源電位VR18(例えば1.8V)を生成する。トランジスタPM6は、ソースが電源電位VR18のノードに接続され、ゲートがノードND1に接続され、ドレインがノードND5に接続される。トランジスタNM6は、ドレインがノードND5に接続され、ゲートがノードND1に接続され、ソースが基準電位GNDのノードに接続される。トランジスタPM6及びNM6は、インバータを構成する。容量C1は、ノードND4及びND5間に接続される。インバータIV4は、入力端子がノードND1に接続され、出力端子がノードND6に接続される。
【0019】
図2の回路では、容量C1及びC2を充電する電流をバイアス電位PB及びNBで一定に制御しようとしても、ノードND4が低レベルから高レベルに変化する場合には、トランジスタNM1がオフとなるので、トランジスタNM2のドレイン電位がグランド電位GNDとなってしまう。トランジスタNM2のドレインには寄生容量が存在するので、ノードND4が高レベルから低レベルに変化する場合には、ノードND4の放電電流は、バイアス電位NBで設定した電流と正確に等しくはならず、トランジスタNM2のドレインの寄生容量がグランド電位GNDからある電位に充電されるのに相当するだけの電荷が、ノードND4から余計に放電されてしまう。トランジスタPM1のドレインの寄生容量も同様に、電流設定の誤差の原因となっている。
【0020】
一方、図3の回路では、トランジスタPM4及びNM4の出力の変化が十分高速であれば、トランジスタPM5及びNM5のソース(トランジスタPM4及びNM4に接続されるノード)の寄生容量の充電電流は、ノードND4には供給されない。このように、図3の回路構成を採用することで、バイアス電位PB及びNBによる電流の設定の精度を改善することができる。
【0021】
図3のように、負荷に供給する電流を制限する素子をCMOSトランスファゲート(トランジスタPM5及びNM5)とすると、例えば、トランジスタPM4がオン、トランジスタNM4がオフしている状態であっても、トランジスタPM5がノードND4に電流を供給するだけでなく、ノードND4の電位によっては、トランジスタNM5もオンする可能性がある。
【0022】
図3の回路では、ノードND4を充電する場合には、トランジスタPM5だけにより電流が供給されるように回路が構成されている。一定電位VR18でノードND5を駆動することで、ノードND4の信号振幅は、電源電位Vddに依存せず一定となる。ノードND4の信号振幅は、例えば、C2:C1を2:1としておくと、電位VR18の2/3程度とできる。ノードND4の信号振幅を小さくすることにより、インバータIV1の耐圧を低くすることができる。
【0023】
電位VddとVR18はともに1.8Vの一定電位だが、後で、図4で説明するように、素子PM4、NM4、IV1、IV5及びIV4などに供給する電源電位は電位Vddとし、トランジスタPM6及びNM6に供給する電源電位だけを電位VR18とする。
【0024】
このように電源電位を分離する理由は、インバータIV1、IV5及びIV4などの電源電流による電圧変動が、できるだけ電位VR18を変動させないようにするためである。図5に示すように、電位VR18とVddの配線を別配線とすることで、電位VR18の電位変動をできるだけ抑えることを意図している。
【0025】
容量C1とC2の比を、1:1とすると、インバータIV1の論理しきい値が0.9Vのときには、ノードND1が低レベルから高レベルに変化すると、ノードND5の電位は1.8Vから0Vに変化する。ノードND4の電位は、0.9Vから0Vに変化する。ノードND4は0Vから0.9Vまで一定の電流で充電され、ノードND4の電位が0.9Vを超えて、ノードND1の電位が高レベルから低レベルに変化すると、ノードND4の電位は0.9Vから1.8Vに変化する。ノードND4は、1.8Vから0.9Vまで、一定の電流で放電され、図4のような波形となる。これにより、発振周波数の変動を防止することができる。
【0026】
容量C2:C1を、1:1ではなく、例えば2:1としておくと、ノードND4の低レベルは0Vより高い電位とすることができる。また、ノードND4の高レベルは1.8Vより低い電位とすることができる。これにより、耐圧の低いインバータIV1を用いることができる。
【0027】
図3のバイアス電位PB及びNBはトランジスタPM5及びNM5のソース電位がほぼ電源電位(1.8Vあるいは0V)の場合に所定の電流が流れるような電位に設定されるので、ノードND4が充電されるときには、ノードND4の電位は0Vより高い電位とすることができる。これにより、トランジスタPM5でノードND4を充電するときには、トランジスタNM5はオフを保ち、トランジスタNM5が充電電流に影響を与えないように設計することができる。
【0028】
また、ノードND4を放電するときには、トランジスタNM4がオンし、トランジスタNM5で設定される電流でノードND4を放電するが、ノードND4の高レベルは電源電位Vddより低い電位となるように容量C1とC2の関係を設計することで、トランジスタNM5でノードND4を放電するときにはトランジスタPM5はオフを保つように設計できる。
【0029】
PチャネルトランジスタPM5及びNチャネルトランジスタNM5を含むトランスファゲートは、PチャネルトランジスタPM5及びNチャネルトランジスタNM5のゲート電圧に応じて入力端子の信号を出力端子から出力する。インバータIN1は、トランスファゲートPM5,NM5の出力端子の信号を入力し、入力した信号の論理反転信号を出力する。トランジスタPM6及びNM6を含むインバータは、インバータIN1の出力端子の信号を入力し、入力した信号の論理反転信号を出力する。トランジスタPM4及びNM4を含むインバータは、インバータIV1の出力信号の論理反転信号を入力し、入力した信号の論理反転信号をトランスファゲートPM5,NM5の入力端子に出力する。容量C1は、トランスファゲートPM5,NM5の出力端子及びインバータPM6,NM6の出力端子間に接続される。容量C2は、トランスファゲートPM5,NM5の出力端子及び基準電位ノード間に接続される。インバータIV4は、インバータPM6,NM6の電源電位配線VR18とは異なる電源電位配線Vddに接続され、インバータIN1の出力端子の信号を入力し、入力した信号の論理反転信号をインバータPM4,NM4の入力端子に出力する。以上説明したように、図3の回路により、充放電電流の設定の精度を改善することが可能となる。
【0030】
図5は、図3のCR発振回路を搭載するマイクロコントローラ(発振装置)の構成例を示す図である。CR発振回路OSC1は、図3のCR発振回路を有し、詳細は後に図8を参照しながら説明する。MCU1はCR発振回路OSC1を搭載するマイクロコントローラ(発振装置)を、VDP5は正の電源電位(例えば5V)を、VddはレギュレータREG1で発生する正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、BGR1はバンドギャップ回路を、REG1は誤差アンプEAMP1と出力トランジスタPMO1と分圧抵抗PR1,PR2で構成されるレギュレータを、LVDH1は5Vの電源電位VDP5を監視する低電圧検出回路を、LVDL1は1.8Vの電源電位Vddを監視する低電圧検出回路を、OSC1はCR発振回路(例えば図3の回路)を、LOGIC1は内部電位Vddで動作する論理回路を、EAMP1はレギュレータREG1の誤差アンプを、PMO1はレギュレータREG1の出力PチャネルMOSトランジスタを、RR1とRR2は電源電位Vddを分圧する分圧抵抗を、VDIV1は抵抗RR1とRR2で分圧された電圧を、RL1とRL2は電源電位VDP5の電位を分圧する抵抗を、VDIV2は抵抗RL1とRL2で分圧された電圧を、LVDHOX1は低電圧検出回路LVDH1の出力電圧を、RL3とRL4は電源電位Vddの電位を分圧する抵抗を、VDIV3は抵抗RL3とRL4で分圧された電圧を、LVDLOX1は低電圧検出回路LVDL1の出力電圧を、VBGRはバンドギャップ回路BGR1の出力バンドギャップ電圧を、CO1は電源電位Vddを安定化する容量を、CMP1とCMP2はコンパレータ回路を、CLK1はCR発振回路OSC1の出力クロック信号を、VR18はCR発振回路OSC1の電源電位を、示している。CR発振回路OSC1の電源電位Vddは、図3の回路の電源電位Vddに相当する。図5において、図3の回路と同じ働きをする素子、対応するノードには、同じ符号を与えて対応関係を示す。
【0031】
マイクロコントローラMCU1においては、外部から供給される電源電位VDP5を、例えば5Vに保って、内部トランジスタの耐圧から決まる内部電位Vdd及びVR18を内蔵レギュレータREG1で発生する。図5には、外部電源電位VDP5が5V、内蔵レギュレータREG1で発生する電位Vdd及びVR18が1.8Vの例を示す。
【0032】
電源電位VDP5が変動しても、1.8Vの一定電位Vddを供給するために、バンドギャップ回路BGR1により基準電圧VBGRを発生する。この基準電圧VBGRを基に、レギュレータREG1で、1.8Vの電位Vdd及びVR18を発生し、内部回路LVDL1,OSC1,LOGIC1に供給する。低電圧検出回路LVDH1は電源電位VDP5を監視して、電源電位VDP5が所定の電位より低い電位となると、出力電圧LVDHOX1を低レベルとする。低電圧検出回路LVDL1は電源電位Vddを監視し、電源電位Vddが所定の電位より低い電位となると出力電圧LVDLOX1を低レベルとする。
【0033】
論理回路LOGIC1は、電源電位Vddで動作し、必要に応じて、クロック信号CLK1がCR発振回路OSC1から供給される。CR発振回路OSC1は、レギュレータREG1の出力電位Vddと、例えばバンドギャップ電圧VBGRを基に、バイアス電流を決定し、クロック信号CLK1を発生する。
【0034】
マイクロコントローラMCU1に搭載されるレギュレータREG1、低電圧検出回路LVDH1,LVDL1、及びCR発振回路OSC1は、基準電位あるいは基準電流の発生のために、バンドギャップ回路あるいはバンドギャップ回路と類似の回路を使用することが望ましい。このような場合には、図5のように、共通化できる機能を共通のバンドギャップ回路BGR1として実現しておき、これを基に、不足する機能を追加するように回路を構成しておくことで、重複する機能を別個の回路として用意しなくてもよくなる。これにより実効的な回路の面積を削減することが可能となる。
【0035】
次に、図5のそれぞれの回路の動作を簡単に説明する。バンドギャップ電圧VBGRは、1.2Vとして説明を進める。レギュレータREG1は1.2Vの電圧VBGRから1.8Vの電源電位Vddを発生する。誤差アンプEAMP1とトランジスタPMO1が負帰還回路を構成し、バンドギャップ電圧VBGRと電圧VDIV1が一致するように電源電位Vddが定まる。例えば、抵抗RR1とRR2の比を1:2の抵抗値となるように設計しておくと、電源電位Vddが1.8Vのときに、分圧電圧VDIV1が1.2Vとなるので、バンドギャップ電圧VBGRを基に電源電位Vddを1.8Vに設定できる。容量CO1は、負荷電流が急激に変動した場合に、電源電位Vddの電位変動を抑制する安定化容量として働く。
【0036】
低電圧検出回路LVDH1は、例えば、電源電位VDP5が2.4Vよりも低い電位となったときに、電源電位VDP5の低下を検出するための回路として働く。抵抗RL1とRL2の比を1:1の抵抗値に設計しておくと、電源電位VDP5が2.4Vよりも低くなったときに、電圧VDIV2がバンドギャップ電圧VBGRよりも低くなる。これをコンパレータ回路CMP1で検出することで、例えば、出力電圧LVDHOX1を低レベルとできる。上で説明したように、レギュレータREG1で使用するバンドギャップ回路BGR1と、低電圧検出回路LVDH1で使用するバンドギャップ回路BGR1は、共通の回路とすることで、低電圧検出回路機能を実現するために、追加しなければならない回路は例えば、抵抗RL1,RL2とコンパレータ回路CMP1だけとなり、実効的な回路面積を削減することが可能となる。
【0037】
低電圧検出回路LVDL1は、例えば、電源電位Vddが1.4Vよりも低い電位となったときに、電源電位Vddの低下を検出するための回路として働く。抵抗RL3とRL4の比を1:6の抵抗値に設計しておくと、電源電位Vddが1.4Vよりも低くなったときに、電圧VDIV3がバンドギャップ電圧VBGRよりも低くなる。これをコンパレータ回路CMP2で検出することで、例えば、出力電圧LVDLOX1を低レベルとできる。レギュレータREG1及び低電圧検出回路LVDH1で使用するバンドギャップ回路BGR1と、低電圧検出回路LVDL1で使用するバンドギャップ回路BGR1は、共通の回路とすることで、電源電位Vddの低電圧検出回路機能を実現するために、追加しなければならない回路は例えば、抵抗RL3,RL4とコンパレータ回路CMP2だけとなり、実効的な回路面積を削減することが可能となる。
【0038】
低電圧検出回路LVDH1及びLVDL1の例と同様に、CR発振回路OSC1においても、レギュレータREG1などと共通の回路機能部分は、回路を兼用することで、CR発振回路OSC1とレギュレータREG1を搭載する場合の実効的な面積を削減する効果が得られる。
【0039】
図5の例は、バンドギャップ電圧VBGRを基にCR発振回路OSC1のバイアス電流を発生する例を示している。回路の詳細は、他の図を使用して、後に説明する。
【0040】
図6は、図5のバンドギャップ回路BGR1の構成例を示す回路図である。NMBn(nは整数)はNチャネルMOSトランジスタを、PMBn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、VDP5は正の電源電位(例えば5V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、CB1は容量を、RB1、RB2、RB3及びRB4は抵抗を、Q1、Q2はPNPトランジスタを、BPBはバイアス電位を、IBLVDHは図5の低電圧検出回路LVDH1に供給するバイアス電流を、IBLVDLは図5の低電圧検出回路LVDL1に供給するバイアス電流を、IBOSCは図5のCR発振回路OSC1に供給するバイアス電流を、VBE1はトランジスタQ1のエミッタ電位を、VBE2はトランジスタQ2のエミッタ電位を、IP及びIMは説明のために与えたノードを、VBGRは出力バンドギャップ電圧を、示している。エミッタ電位VBE1は、後に説明する図8、図10、図14及び図15の回路で使用される。
【0041】
図6において、図3及び図5の回路と対応するノードには、同じ符号を与えて対応関係を示した。図6のトランジスタQ1及びQ2に添えられた倍率の数字はそれぞれのトランジスタQ1及びQ2のサイズの関係を示しているものとする。以下同様に、PNPトランジスタに添えられた倍率の数字はそれぞれのトランジスタのサイズの関係を示しているものとする。
【0042】
トランジスタPMB1〜PMB9及びトランジスタNMB1〜NMB5に加わる電源電位VDP5は5Vなので、これらのトランジスタの耐圧は5V以上が必要となる。図3の回路で使用する内部電源電位Vdd,VR18(1.8V)用のトランジスタとは、ゲート長及びゲート酸化膜厚が異なるが、表記が煩雑となること、電源電位から明らかであることから、図3の回路のトランジスタ記号と同じトランジスタ記号で回路を表現した。以下特に断らない場合は、電源電位に対応したトランジスタが使用されるものとして説明を進める。
【0043】
トランジスタPMB1,PMB2,NMB1,NMB2及び抵抗RB1で構成される回路がバイアス電流を発生する。この部分の回路は一般的なので、詳細な説明は省略する。また、図を簡単にするために、スタートアップ回路及びパワーダウン用の素子などは省略して示している。同じゲート電圧が印加されるトランジスタNMB1とNMB2でトランジスタNMB2のサイズ(ゲート幅)をトランジスタNMB1に対して大きく設計しておくと、同じ電流を流すために必要なゲート電圧の差と抵抗RB1でバイアス電流を設計することができる。このバイアス電流が流れる電位として、バイアス電位BPBが定まる。
【0044】
トランジスタPMB5,PMB6,PMB3,NMB3,NMB4,NMB5,PMB4は、ノードIPの電位とノードIMの電位を一致させるように帰還制御し、バンドギャップ電圧VBGRを発生するためのオペアンプ回路として働く。トランジスタPMB3はオペアンプ回路の電流源として働く。トランジスタPMB5,PMB6,PMB3,NMB3,NMB4,NMB5,PMB4で構成されるオペアンプ自体は、一般的な2段構成のオペアンプ回路となっている。容量CB1はオペアンプの位相補償容量として働く。
【0045】
ノードIPとIMの電位が一致すると、抵抗RB2とRB3には等しい電位差が加わるので、抵抗RB2とRB3の比で決まる電流がトランジスタQ1とQ2に流れる。トランジスタQ1とQ2のエミッタサイズの比は、例えば、1:10に設計されているので、抵抗RB2及びRB3の比とあわせて、トランジスタQ1とQ2の電流密度が定まる。この電流密度の比にしたがって、トランジスタQ1とQ2のエミッタ電位VBE1とVBE2の差が定まる。このエミッタ電位VBE1とVBE2の電位差が抵抗RB4に加わり、トランジスタQ1及びQ2に流れる電流が定まる。エミッタ電位VBE1は、絶対温度に対して負の依存性を示し、トランジスタQ1とQ2に流れる電流は絶対温度に正に比例する。以下、CTATは絶対温度に対する負依存性を示し、PTATは絶対温度に対する正依存性を示す。
【0046】
バンドギャップ電圧VBGRが1.2V程度となるように抵抗RB2及びRB3の値を選んでおくと、バンドギャップ電圧VBGRは温度に依存せず一定となる。バンドギャップ回路BGR1の電流源の電流を決定するためにバイアス回路でバイアス電位BPBを発生するのと同時に、低電圧検出回路LVDH1,LVDL1及びCR発振回路OSC1のバイアス電流としても使用できるように、トランジスタPMB7,PMB8,PMB9を設けておくと、低電圧検出回路LVDH1,LVDL1及びCR発振回路OSC1などで、トランジスタPMB1,PMB2,NMB1,NMB2及び抵抗RB1で構成されるバイアス回路を重複して用意する必要がなくなる。
【0047】
また、後で説明するように、バンドギャップ電圧VBGRだけでなく、トランジスタQ1のエミッタ電位VBE1をCR発振回路OSC1に供給しておくと、CR発振回路OSC1の基準電流発生に都合がよい。
【0048】
バンドギャップ回路BGR1は、ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続されたPNPトランジスタQ1と、ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続されたPNPトランジスタQ2と、PNPトランジスタQ2のエミッタに一端が接続された抵抗RB4とを有する。バンドギャップ回路BGR1は、抵抗RB4の他端の電位IMとPNPトランジスタQ1のエミッタ電位VBE1とが等しくなるように制御することによりバンドギャップ電圧VBGRを発生する。
【0049】
図7は、図5のCR発振回路OSC1の構成例を示すブロック図である。IREF1はCR発振回路OSC1の基準電流発生回路を、IDAC1は発振周波数を調整するためのトリミング電流デジタルアナログ変換(DAC)回路を、OSCCORE1はCR発振回路OSC1の発振回路本体を、TCA[3:0]は、例えば、4ビットの周波数の温度依存性を調整するための信号を、TRD[7:0]は、例えば、8ビットの発振周波数の調整用の信号を、IBIAS及びIBIASTRIMは基準電流発生回路IREF1で発生した基準電流を、IBIASROSCはトリミング電流DAC回路IDAC1から供給されるCR発振回路本体OSCCORE1のバイアス電流を、CLK1はCR発振回路OSC1の出力クロック信号を、示している。
【0050】
基準電流発生回路IREF1は、図6のバンドギャップ電圧VBGR及びエミッタ電位VBE1などを基に基準電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生する。トリミング電流DAC回路IDAC1は、この基準電流IBIAS及びIBIASTRIMを基にCR発振回路本体OSCCORE1に、バイアス電流IBIASROSCを供給する。CR発振回路本体OSCCORE1は、例えば、図3のCR発振回路のような構成となっている。図7において、図3及び図5の回路と対応するノードには、同じ符号を与えて対応関係を示している。
【0051】
温度依存性調整信号TCA[3:0]は、基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性を調整する信号として働く。周波数調整信号TRD[7:0]は、周波数の絶対値を調整するために、バイアス電流IBIASROSCの絶対値を調整する信号として働く。
【0052】
図8は、図7の基準電流発生回路IREF1の構成例を示す回路図である。PMRn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、AMP1とAMP2は増幅回路(オペアンプ)を、RR1は抵抗を、RR2は可変抵抗を、Q3はPNPトランジスタを、BPTAT1はPTAT電流発生回路を、BCTAT1はCTAT電流発生回路を、VBGRは、図6のバンドギャップ回路BGR1で発生したバンドギャップ電圧を、PGOはPTAT電流発生回路BPTAT1で発生したバイアス電圧を、IPTAT1はトランジスタQ3に流れる電流を、RVBE3はPTAT電流発生回路BPTAT1内部のノードを、VBE1は図6のバンドギャップ回路BGR1で発生した電位VBE1を、PGO2はCTAT電流発生回路BCTAT1で発生したバイアス電圧を、ICTAT1は可変抵抗RR2に流れる電流を、VFBはCTAT電流発生回路BCTAT1内部のノードを、IBIAS及びIBIASTRIMは図7の電流IBIAS及びIBIASTRIMを、VR18は図5のレギュレータREG1で発生する正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、示している。
【0053】
図8において、図3、図5及び図6の回路と対応するノードあるいは素子には、同じ符号を与えて対応関係を示している。図8のトランジスタQ3に添えられた倍率の数字は、トランジスタQ1,Q2,Q3のトランジスタのサイズの関係を示しているものとする。
【0054】
図5のバンドギャップ回路BGR1とレギュレータREG1は5Vの電源電位VDP5から1.8Vの電源電位Vddを発生する回路なので、その電源電位は電位VDP5でなければならない。一方、CR発振回路OSC1は電源電位Vddで動作する論理回路LOGIC1にクロック信号CLK1を供給するための回路なので、電源電位は電位Vddでもよい。電位Vddを電源電位とすると、電位VddはレギュレータREG1で発生した電位なので、電源電位Vddの変動幅が小さいという利点が得られる。電流が一定している部分は、できるだけ、論理回路LOGIC1の電源電位の影響を受けないように配線しておいた方がノイズの観点から有利なので、図8では、電源電位は電位Vddと別配線とするという意味で電位VR18としている。
【0055】
図3の構成から分かるように、図3及び図7のCR発振回路本体OSCCORE1の信号振幅はレギュレータREG1(図5)により、温度に依存せずほぼ一定に保たれている。発振周波数を一定に保つためには、CR発振回路本体OSCCORE1の容量の充放電電流を温度及び電源電位VDP5によらずに一定に保つ必要がある。この目的のために、図8の回路で、温度に依存しない一定電流を発生する。
【0056】
温度に依存しない一定電流を発生する原理は、バンドギャップ回路BGR1とほぼ同じで、絶対温度に正に比例する電流IPTAT1と、絶対温度に対して負の依存性を持つ電流ICTAT1を加算して、ほぼ温度に依存しない電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生する。
【0057】
PTAT電流発生回路BPTAT1で絶対温度に正に比例する電流IPTAT1を発生し、CTAT電流発生回路BCTAT1で絶対温度に対して負の依存性を持つ電流ICTAT1を発生し、トランジスタPMR1とゲート電圧PGOを同じとしたトランジスタPMR2及びPMR3には絶対温度に正に比例する電流が流れる。トランジスタPMR4とゲート電圧PGO2を同じとしたトランジスタPMR4及びPMR5には絶対温度に対して負の依存性を持つ電流が流れる。電流IBIAS及びIBIASTRIMは、それぞれ、トランジスタPMR2,PMR3の電流とトランジスタPMR5,PMR6の電流の和なので、基準電流IBIAS及びIBIASTRIMは温度に依存しない電流となる。
【0058】
次に、PTAT電流発生回路BPTAT1で、絶対温度に正に比例する電流IPTAT1を発生する原理を説明する。PNPトランジスタQ3の順方向電圧VBE3は、絶対温度に対して、ほぼ負の比例関係を示す。例えば、絶対0度で1.2V程度の値を示し、室温付近で600mV程度となるような直線で近似できる。図6のバンドギャップ回路BGR1で発生したバンドギャップ電圧VBGRは温度に依存せず1.2V程度で一定の値となる。増幅回路AMP1でバンドギャップ電圧VBGRとノードRVBE3の電圧が一致するように帰還制御することで、ノードRVBE3の電圧は、バンドギャップ電圧VBGRと同じ電圧となり温度に依存せず、1.2V程度で一定となる。ところで、電圧VBE3は、絶対温度に対して、ほぼ負の比例関係となるので、抵抗RR1に加わる電圧は、絶対温度に正に比例する。抵抗RR1に加わる電圧が、絶対温度に比例するので、抵抗RR1に流れる電流IPTAT1は、絶対温度に比例する電流となる。トランジスタPMR1に流れる電流は電流IPTAT1なので、電圧PGOをゲート電圧とするトランジスタPMR1,PMR2,PMR3に流れる電流は、電流IPTAT1と同じく絶対温度に比例する電流となる。
【0059】
一方、図6のバンドギャップ回路BGR1から供給される電位VBE1は、電圧VBE3と同様、絶対温度に対して、ほぼ負の比例関係を示す。増幅回路AMP2で電位VBE1とノードVFBの電位が一致するように帰還制御することで、ノードVFBの電位は、電位VBE1と同じ電位となり絶対温度に対して、ほぼ負の比例関係を示す。可変抵抗RR2に加わる電位は、絶対温度に対して、ほぼ負の比例関係を示す。可変抵抗RR2に加わる電圧が、絶対温度に負の比例関係となるので、可変抵抗RR2に流れる電流ICTAT1は、絶対温度に負の比例する電流となる。トランジスタPMR4に流れる電流は電流ICTAT1なので、電圧PGO2をゲート電圧とするPMR4,PMR5,PMR6に流れる電流は、電流ICTAT1と同じく絶対温度に負の比例する電流となる。電流ICTAT1の値を可変とするために、抵抗RR2を可変抵抗としている。この部分のより詳細な回路は、後でさらに説明する。
【0060】
基準電流IBIAS及びIBIASTRIMは、トランジスタPMR2及びPMR5に流れる電流、及びトランジスタPMR3,PMR6に流れる電流を適切な割合で加算することで、温度に依存しない電流となる。図8の回路で、温度に依存しない基準電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生することで、必要なPNPトランジスタの数を削減できる効果が得られる。
【0061】
例えば、図6のバンドギャップ回路BGR1では、PTAT電流を発生するために、異なるサイズのトランジスタQ1とQ2を用いて、これらを異なる電流密度でバイアスし、その順方向電圧の差を利用していた。このため、トランジスタQ1の11倍相当のサイズのPNPトランジスタを必要としていた。一方、図8の回路では、トランジスタQ3と直列接続した抵抗RR1の電位を、温度によらず一定に保つことで、1倍の大きさのトランジスタQ3ひとつ(PNPトランジスタ1つ分)で、PTAT電流IPTAT1を発生している。つまり、バンドギャップ電圧VBGRを利用することで、PTAT電流IPTAT1の発生に必要なPNPトランジスタの面積を大幅に削減している。
【0062】
基準電流発生回路IREF1は、絶対温度に対して正の依存性を持つ正依存性電流IPTAT1を発生する正依存性(PTAT)電流発生回路BTAT1と、絶対温度に対して負の依存性を持つ負依存性電流ICTAT1を発生する負依存性(CTAT)電流発生回路BCTAT1とを有する。基準電流発生回路IREF1は、正依存性電流IPTAT1及び負依存性電流ICTAT1を加算することにより基準電流IBIAS,IBIASTRIMを発生する。図3のPチャネルトランジスタPM5及びNチャネルトランジスタNM5のゲートには、基準電流IBIAS,IBIASTRIMに応じた電圧が印加される。
【0063】
正依存性電流発生回路BPTAT1は、コレクタ及びベースが基準電位ノードに接続されたPNPトランジスタQ3と、PNPトランジスタQ3のエミッタに一端が接続された抵抗RR1と、抵抗RR1の他端のノードRVBE3の電位と第1の電位(バンドギャップ電圧)VBGRが等しくなるように抵抗RR1に流れる正依存性電流IPTAT1を制御する第1の制御回路とを有する。第1の制御回路は、増幅回路AMP1及びトランジスタPMR1を有する。増幅回路AMP1は、図6のバンドギャップ回路BGR1のバンドギャップ電圧VBGRを入力する。
【0064】
負依存性電流発生回路BCTAT1は、一端が基準電位ノードに接続された抵抗RR2と、抵抗RR2の他端のノードVFBの電位と第2の電位VBE1が等しくなるように抵抗RR2に流れる負依存性電流ICTAT1を制御する第2の制御回路とを有する。第2の制御回路は、増幅回路AMP2及びトランジスタPMR4を有する。増幅回路AMP2は、図6のバンドギャップ回路BGR1のPNPトランジスタQ1のエミッタ電位VBE1を入力する。
【0065】
以上説明したように、図8の基準電流発生回路IREF1を使用することで、必要な素子面積を削減できる効果が得られる。
【0066】
図9は、図8の可変抵抗RR2の構成例を示す回路図である。NMVn(nは整数)はNチャネルMOSトランジスタを、RVn(nは整数)は抵抗を、VFBは図8のノードVFBを、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、示している。
【0067】
図9において、図8の回路と対応するノードあるいは素子には、同じ符号を与えて対応関係を示している。トランジスタNMV1〜NMV15のゲートに添えられた0000から1110の数字は、図9の可変抵抗RR2を4ビットの調整信号TCA[3:0](図7)で制御する場合の、ゲートが高レベルとなる4ビットの入力調整信号TCA[3:0]の組み合わせの例を示している。4ビットの調整信号TCA[3:0]で16通りの基準電流の温度依存性を選択することができる。基準電流の温度依存性を調整するために、電流ICTAT1の電流値を変更する。電流ICTAT1の電流値を変更するために、可変抵抗RR2の抵抗値を変更する。図9の回路で、温度依存性調整信号TCA[3:0]に応じて可変抵抗RR2の値を変更することができる。
【0068】
調整信号TCA[3:0]が0000の場合には、トランジスタNMV1がオンとなり、ノードVFBと基準電位GNDのノード間の抵抗値(抵抗RR2の値)は、抵抗RV1の値となる。調整信号TCA[3:0]が1111の場合には、トランジスタNMV1〜NMV15がすべてオフとなり、可変抵抗RR2の値は抵抗RV1〜RV16の値の和となる。調整信号TCA[3:0]が0011の場合には、トランジスタNMV1〜NMV3がオフとなり、トランジスタNMV4がオンとなる。可変抵抗RR2の値は、抵抗RV1〜RV4の値の和となる。
【0069】
このように、図9の回路を図8の可変抵抗RR2として使用することができる。図8の可変抵抗RR2の抵抗値を可変とすることで、基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性を、例えば図7の調整信号TCA[3:0]で変更することが可能となる。電流IPTAT1とICTAT1の和で、基準電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生するので、可変抵抗RR2の値を変更することにより、基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性を変更することができる。
【0070】
基準電流発生回路IREF1は、温度依存性調整信号TCA[3:0]に応じて正依存性電流IPTAT1及び負依存性電流ICTAT1の加算比率を変えて加算することにより基準電流IBIAS,IBIASTRIMを発生する。抵抗RR2は、温度依存性調整信号TCA[3:0]に応じて抵抗値が変化する可変抵抗である。
【0071】
図6で発生した実際の基準電圧発生回路の出力電位VBGRには、誤差が存在する。この誤差にも起因して、バンドギャップ電圧VBGRの温度依存性は、製造された回路の個体によって、わずかにプラスになったり、マイナスとなったりする。このため、図5のレギュレータRGE1で発生する電位Vdd及びVR18の値も、製造された回路の個体によって、わずかにプラスになったり、マイナスとなったりする。
【0072】
このため、図8の回路で発生した基準電流IBIAS及びIBIASTRIMが完全に理想的であっても、発振周波数の温度依存性は、回路個体毎にわずかに異なる。さらに、図8の回路で発生する基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性自体も、回路個体毎に異なる。このため、望ましい発振周波数の温度依存性を得るためには、回路個体毎に温度依存性を調整する必要がある。図8の基準電流発生回路の可変抵抗RR2を図9のように構成しておくことで、図8の基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性を電気的に可変とすることができる。
【0073】
これにより、発振周波数の温度依存性を回路個体毎に調整することが可能となり、より精度の高い周波数設定が可能となる。
【0074】
図10は、図8の増幅回路AMP1,AMP2及びその周辺回路の構成例を示す回路図である。PMRn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、NMRn(nは整数)はNチャネルMOSトランジスタを、RR1及びRR3は抵抗を、RR2は可変抵抗を、Q3はPNPトランジスタを、VBGRは、図6のバンドギャップ回路BGR1で発生したバンドギャップ電圧を、PGOは発生したバイアス電圧を、RVBE3は内部のノードを、VBE1は図6のバンドギャップ回路BGR1で発生した電位VBE1を、PGO2は発生したバイアス電圧を、VFBは内部のノードを、VR18は図5のレギュレータREG1で発生する正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、IBOSCは図6のバンドギャップ回路BGR1から供給されるバイアス電流IBOSCを、OPB,ONCB,ONBは電流IBOSCから発生するバイアス電位を、CR1は容量を、示している。
【0075】
図10において、図3、図5、図6、図8などの回路と対応するノードあるいは素子には、同じ符号を与えて対応関係を示している。図10のトランジスタQ3に添えられた倍率の数字は、トランジスタQ1、Q2、Q3のトランジスタサイズの関係を示しているものとする。図を簡単にするために、図8のトランジスタPMR2及びPMR3など一部省略しているが、図8の増幅回路AMP1及びAMP2のトランジスタレベルの回路の一例を表わしているものとする。
【0076】
図10のトランジスタPMR7,PMR8,NMR2,NMR3,NMR4が、図8の増幅回路AMP1として働く。一般的な差動回路なので、この部分の動作説明は省略する。バンドギャップ電圧VBGRが1.2V、電源電位VR18が1.8Vなので、NチャネルMOSトランジスタNMR2,NMR3を入力トランジスタとする差動回路とした例としている。基準電位VBGRがより基準電位GNDに近い電位の場合には、PチャネルMOSトランジスタを入力トランジスタとする差動回路とするなど変形が可能である。
【0077】
トランジスタPMR7,PMR8,NMR2,NMR3,NMR4が動作するためには、トランジスタNMR4のゲート電圧を、所定の電流が流れるようにバイアスしなければならない。この目的のために、図6のバンドギャップ回路BGR1からバイアス電流IBOSCを受け取って、トランジスタNMR1でトランジスタNMR4のゲート電圧に変換している。
【0078】
このような構成とすることで、増幅回路AMP1側で独立なバイアス回路を用意する必要がなくなるので、回路面積を節約できる効果が得られる。
【0079】
図10のトランジスタPMR11〜PMR15及びトランジスタNMR8〜NMR11が、図8の増幅回路AMP2として働く。容量CR1は位相補償容量として働く。増幅回路AMP1及びAMP2は、ともに帰還回路として使用するので、必要に応じて、位相補償を行う。図10の増幅回路AMP2は一般的な折り返しカスコード回路なので、この部分の動作の説明は省略する。電位VBE1が基準電位GNDに近い電位なので、PチャネルMOSトランジスタPMR12,PMR13を入力トランジスタとする折り返しカスコード回路としている。
【0080】
図10の増幅回路AMP1と同様、図10の増幅回路AMP2もバイアス電位を供給する必要があるが、例えば、図10に示すように、電流IBOSCを基に、電位OPB,ONB,ONCBを発生することが可能であり、バイアス電流IBOSCを図6の回路から供給することで、回路面積を削減することができる。図6の電流IBOSCはこのような目的で設けられていて、図6の電流IBLVDH,IBLVDLも同様に使用することができることは言うまでもない。
【0081】
電流IBOSCから電位OPB,ONB,ONCBを発生する部分の回路も一般的な構成なので、この部分の動作説明は省略する。
【0082】
以上説明したように、例えば、図10のような回路で増幅回路AMP1及びAMP2を実現することができ、バイアス電流IBOSCを図6から供給することで、バイアス電流発生のための素子を削減することができる。
【0083】
図11は、図7のトリミング電流DAC回路IDAC1の構成例を示す回路図である。NMDPn(nは整数)、NMDASn(nは整数)、NMDAn(nは整数)、NMDA、NMDB、NMDB1はNチャネルMOSトランジスタを、IBIASTRIMは図8の電流IBIASTRIMを、IBIASは図8の電流IBIASを、PD18はパワーダウン信号を、IBIASROSCは図3のバイアス電流IBIASROSCを、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、IBIASTRIMLSBは電流DAC回路IDAC1の1LSB(最下位ビット)に相当する電流を、IBIASOFFSETは出力電流IBIASROSCの最小電流となるオフセット分の電流を、示している。図11において、図3、図5、図7、図8などの回路と対応するノードあるいは素子には、同じ符号を与えて対応関係を示している。
【0084】
図11は、図7に示したような8ビットの信号TRD[7:0]で、バイアス電流IBIASROSCの絶対値を制御するための電流DAC回路として働く。NチャネルMOSトランジスタNMDAS1〜NMDAS256は、例えば、同じサイズのNチャネルMOSトランジスタが256個用意されていることを表わしている。同様に、NチャネルMOSトランジスタNMDA1〜NMDA256も、同じサイズのNチャネルMOSトランジスタが256個用意されていることを表わしている。
【0085】
電流IBIASTRIMのノードは、図8の電流IBIASTRIMのノードと接続されて、バイアス電流IBIASTRIMをトランジスタNMDAによりゲート電圧に変換する。このゲート電圧がトランジスタNMDA1〜NMDA256に供給されるので、トランジスタNMDA1〜NMDA256は同じ電流を流すことが可能となる。図11の電流IBIASTRIMLSBは、1つあたりのトランジスタNMDAn(nは1〜256)に流れる電流を示している。トランジスタNMDAとトランジスタNMDA1〜NMDA256のサイズを適切に設計しておくことで、電流IBIASTRIMを基に、必要な値の電流IBIASTRIMLSBを得ることができる。例えば、トランジスタNMDAとトランジスタNMDA1〜NMDA256は、すべて同じサイズであり、それぞれ1μAの電流IBIASTRIMLSBを流すことができる。
【0086】
トランジスタNMDA1〜NMDA256とトランジスタNMDAS1〜NMDAS256は、それぞれ直列に接続されている。256個のトランジスタNMDAS1〜NMDAS256のゲートのうち高レベルとする数を制御することで、図3及び図7のCR発振回路本体OSCCORE1に供給するバイアス電流IBIASROSCの値を制御することができる。トランジスタNMDAS1〜NMDAS256のゲートに添えられた1〜256の数字は、このゲートの制御信号を意味している。図7に示したように8ビットのデジタル信号TRD[7:0]で256通りのバイアス電流IBIASROSCを制御することができるので、例えば、図11の電流DAC回路でバイアス電流IBIASROSCの値を調整できる。
【0087】
バイアス電流IBIASROSCの値の最小値は、例えば図11では、1つ分のIBIASTRIMLSB+IBIASOFFSETとなる。この電流を図7のCR発振回路本体OSCCORE1の周波数調整に必要な最小電流となるように設計しておけばよい。電流IBIASOFFSETは電流IBIASを基にトランジスタNMDBとNMDB1のサイズ比を適切に設計しておくことで任意の値に設計できることは明らかであろう。また、トランジスタNMDP1及びNMDP2のゲート電圧PD18を高レベルとすることで、NチャネルMOSトランジスタのゲート電圧が0となるのでパワーダウン状態とできることも図から明らかであろう。
【0088】
電流デジタルアナログ変換(DAC)回路IDAC1は、基準電流IBIASTRIMを用いて、デジタル信号TRD[7:0]をアナログのバイアス電流IBIASROSCに変換する。図3のPチャネルトランジスタPM5及びNチャネルトランジスタNM5のゲートには、バイアス電流IBIASROSCに応じた電圧が印加される。
【0089】
以上説明したように、図11のような回路で、図8の基準電流発生回路IREF1で発生した電流IBIASTRIMを基に、周波数調整に必要なバイアス電流IBIASROSCの可変機構が実現できる。
【0090】
図12は、図7の基準電流発生回路IREF1の他の構成例を示す回路図である。PMRBn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、AMP3とAMP4は増幅回路(オペアンプ)を、RR4は抵抗を、RR5は可変抵抗を、Q4とQ5はPNPトランジスタを、BPTAT2はPTAT電流発生回路を、BCTAT2はCTAT電流発生回路を、PGO3はPTAT電流発生回路BPTAT2で発生したバイアス電位を、IPTAT2はトランジスタQ5に流れる電流を、RVBE5とVBE4はPTAT電流発生回路BPTAT2内部のノードを、PGO4はCTAT電流発生回路BCTAT2で発生したバイアス電位を、ICTAT2は可変抵抗RR5に流れる電流を、VFBはCTAT電流発生回路BCTAT2内部のノードを、IBIASとIBIASTRIMは図7の電流IBIASとIBIASTRIMを、VR18は図5のレギュレータREG1で発生する正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0v)を、示している。図12において、図8などの図と対応するノード、素子には、同じ符号を与えて対応関係を示したので、重複する説明は省略する。
【0091】
以下、図12の回路と図8の回路の違いを説明する。図12においても、PTAT電流発生回路BPTAT2でPTAT電流IPTAT2を発生し、CTAT電流発生回路BCTAT2でCTAT電流ICTAT2を発生する。これらの電流IPTAT2及びICTAT2を加算して、電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生する。可変抵抗RR5の抵抗値を変更することで、CTAT電流ICTAT2の値を変更できるので、基準電流の温度依存性を調整できることも図8の回路と同様である。
【0092】
図8の回路では、図6のバンドギャップ回路BGR1からバンドギャップ電圧VBGR及び電位VBE1が供給されて、これを基にPTAT電流IPTAT1とCTAT電流ICTAT1を発生していた。バンドギャップ回路BGR1の電位VBGR及びVBE1を利用することで、基準電流発生に必要な素子を削減していた。
【0093】
一方、図12では、基準電流発生回路IREF1内部だけで、トランジスタQ4とQ5を基に、PTAT電流IPTAT2とCTAT電流ICTAT2を発生している。素子数は増えるが、図12のような構成も可能である。レギュレータREG1のバンドギャップ回路BGR1と位置的に遠い場所にこれら回路を配置する場合には、図12のような基準電流発生回路IREF1を採用することも可能である。
【0094】
ノードRVBE5の電位とノードVBE4の電位が一致するように制御し、トランジスタQ4とQ5の電流密度の比を適切に設計することで、絶対温度に比例するPTAT電流IPTAT2を発生できることは、図6のバンドギャップ回路BGR1と同じである。PNPトランジスタQ4の順方向電圧であるノードVBE4の電圧を基に、電流を発生することで、CTAT電流ICTAT2を発生できることも、図8の回路と同様である。
【0095】
図12の回路を採用すると、図8の回路の場合のような面積削減の効果は得られないが、図7の説明で述べた、基準電流の温度依存性を調整できる効果、発振周波数の調整が可能な効果は得られる。
【0096】
図13は、図7の基準電流発生回路IREF1の他の構成例を示す回路図である。図13の回路と図8の回路の違いは、増幅回路AMP2のマイナス入力だけなので、この部分の違いだけを説明する。回路素子の名称、ノード名なども全く図8と同じなので、重複する説明は省略する。
【0097】
図8の回路では、増幅回路AMP2のマイナス入力はバンドギャップ回路BGR1(図6)の電圧VBE1としていた。一方、図13の回路では、増幅回路AMP2のマイナス入力はPTAT電流発生回路BPTAT1の電圧VBE3としている。図13のトランジスタQ3にもPTAT電流IPTAT1が流れるので、図13の電圧VBE3と図6の電圧VBE1はほぼ同じノード電圧となり、またその温度特性も絶対温度に対して負の比例の関係となる。従って、図13のような接続としても、図8の回路と同様に基準電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生することが可能である。
【0098】
図13のような接続を採用すると、図6のバンドギャップ回路BGR1から基準電流発生回路IREF1(図13)に供給する電位及びバイアス電流は、バンドギャップ電圧VBGRと電流IBOSCだけでよくなり、信号線を削減できる効果が得られる。
【0099】
一方、図8の構成では、CTAT電流発生回路BCTAT1の基準電位(増幅回路AMP2のマイナス入力)VBE1が、すでに安定している電位VBE1なので、CR発振回路を起動するときの基準電流の安定化時間を短縮できる利点がある。図13の回路では、PTAT電流発生回路BPTAT1の電位VBE3が安定した後、これを基にノードVFBの電位が安定するので、基準電流が安定するまでの時間が、図8の回路より長くなる。
【0100】
増幅回路AMP1は、図6のバンドギャップ回路BGR1のバンドギャップ電圧VBGRを入力し、バンドギャップ電圧VBGRと抵抗RR1の他端のノードRVBE3の電位が等しくなるように抵抗RR1に流れる正依存性電流IPTAT1を制御する。増幅回路AMP2は、PNPトランジスタQ3のエミッタ電位VBE3と抵抗RR2の他端のノードVFBの電位が等しくなるように抵抗RR2に流れる負依存性電流ICTAT1を制御する。
【0101】
図14は、図7の基準電流発生回路IREF1の他の構成例を示す回路図である。PMRCn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、AMP5とAMP6は増幅回路(オペアンプ)を、RR4は抵抗を、RR7は可変抵抗を、Q5はPNPトランジスタを、BPTAT3はPTAT電流発生回路を、BCTAT3はCTAT電流発生回路を、PGO5はPTAT電流発生回路BPTAT3で発生したバイアス電位を、IPTAT3はトランジスタQ5に流れる電流を、RVBE5はPTAT電流発生回路BPTAT3内部のノードを、PGO6はCTAT電流発生回路BCTAT3で発生したバイアス電位を、ICTAT3は可変抵抗RR7に流れる電流を、VFBはCTAT電流発生回路BCTAT3内部のノードを、IBIASとIBIASTRIMは図7の電流IBIASとIBIASTRIMを、VR18はレギュレータREG1で発生する正の電源電位(例えば1.8V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、VBE1は図6で発生した電位VBE1を、示している。図14において、図8などの図と対応するノード、素子には、同じ符号を与えて対応関係を示したので、重複する説明は省略する。
【0102】
図8では、バンドギャップ電圧VBGRを基に絶対温度に比例する電流IPTAT1を発生した。一方、図14の回路では、バンドギャップ回路BGR1の電位VBE1を基にPTAT電流IPTAT3を発生する。
【0103】
図12では、ノードRVBE5とVBE4の電位が一致するように制御することで、PTAT電流IPTAT2を発生することができる。図12のノードVBE4の電位と、図6の電位VBE1は、ほぼ等しい電位となっているので、ノードVBE4の電位を電位VBE1で置き換えてもPTAT電流を発生することができる。図14は、ノードRVBE5の電位と電位VBE1を増幅回路AMP5で一致するように制御して、PTAT電流IPTAT3を発生する。図14のような構成とすることで、図12の回路に対して素子数を削減することができる。
【0104】
増幅回路AMP1は、図6のバンドギャップ回路BGR1のPNPトランジスタQ1のエミッタ電位VBE1を入力し、エミッタ電位VBE1と抵抗RR4の他端のノードRVBE5の電位が等しくなるように抵抗RR4に流れる正依存性電流IPTAT3を制御する。増幅回路AMP2は、図6のバンドギャップ回路BGR1のPNPトランジスタQ1のエミッタ電位VBE1を入力し、エミッタ電位VBE1と抵抗RR7の他端のノードVFBの電位が等しくなるように抵抗RR7に流れる負依存性電流ICTAT3を制御する。
【0105】
図15は、図7の基準電流発生回路IREF1の他の構成例を示す回路図である。PMRDn(nは整数)はPチャネルMOSトランジスタを、AMP7とAMP8は増幅回路(オペアンプ)を、RR1は抵抗を、RR2は可変抵抗を、Q3はPNPトランジスタを、BPTAT4はPTAT電流発生回路を、BCTAT4はCTAT電流発生回路を、PGO7はPTAT電流発生回路BPTAT4で発生したバイアス電位を、IPTAT4はトランジスタQ3に流れる電流を、RVBE3はPTAT電流発生回路BPTAT4内部のノードを、PGO8はCTAT電流発生回路BCTAT4で発生したバイアス電位を、ICTAT4は可変抵抗RR2に流れる電流を、VFBはCTAT電流発生回路BCTAT4内部のノードを、IBIASとIBIASTRIMは図7の電流IBIASとIBIASTRIMを、VDP5は正の電源電位(例えば5V)を、GNDは基準電位(グランド電位:0V)を、VBE1とVBGRは図6で発生した電位VBE1とVBGRを、OPCBはカスコード回路のためのバイアス電位を、示している。図15において、図8などの図と対応するノード、素子には、同じ符号を与えて対応関係を示したので、重複する説明は省略する。
【0106】
図15は、図8の回路の電源電位VR18を電源電位VDP5で置き換えて、電流源をカスコード回路とした構成となっている。基本的な動作原理は、図8の回路と同じなので、動作の詳細な説明は省略する。
【0107】
図8の回路では、バンドギャップ電圧VBGRを基にPTAT電流IPTAT1を発生し、その電流源の正側電源電位は電位VR18としていた。この電源電位VR18を電源電位VDP5としても、回路動作させることが可能で、その例が図15となっている。電流源PMRD3及びPMRD4などのドレイン電圧が大きく、また、電源電位VDP5が大きく変動する場合もあるので、電流源をカスコード回路としている。バイアス電位OPCBは、このためのバイアス電位となっている。図10に示したような方法でバイアス電位OPCBを発生できる。電源電位VR18あるいは電源電位Vddの絶対値が小さく、電源電位VDP5を使用して基準電流を発生する方が、望ましい場合には、図15のような構成を採用することが可能である。図15では、図8の回路の電源電位を電位VDP5に置き換える例を示したが、他の回路例も同様に電源電位VR18を電源電位VDP5に置き換えることが必要ならば、電流源をカスコード回路とできることはいうまでもない。
【0108】
以上のように、本実施形態のCR発振回路では、図3に示すように、負荷の充放電電流を一定に制御する手段として、図3のインバータPM4,NM4と、その出力に直列に接続されたCMOSトランスファゲート(トランジスタ)PM5,NM5を採用する。一定電流で充放電しようとしているノードND4の信号振幅を、確実に電源電位Vddより、小さく設計するために容量C2を設ける。また、図7に示すように、CR発振回路では、発振回路の基準電流の温度依存性をプラスからマイナスに調整するための信号TCA[3:0]を用意する。また、図5に示すように、マイクロコントローラMCU1では、バンドギャップ回路BGR1と、レギュレータREG1を構成する誤差アンプEAMP1、レギュレータ出力トランジスタPMO1を用意する。バンドギャップ回路BGR1の出力バンドギャップ電圧VBGRを利用して内部電圧Vdd(例えば1.8V)を発生する。この内部電圧Vdd(例えば1.8V)をCR発振回路OSC1に供給する。また、図5に示すように、バンドギャップ回路BGR1は、必要に応じて、低電圧検出回路LVDH1及びLVDL1にバンドギャップ電圧VBGRを供給する。また、図8の基準電流発生回路IREF1は、バンドギャップ電圧VBGRを基に、CR発振回路OSC1のバイアス電流IBIAS及びIBIASTRIMを発生する。
【0109】
図3に示すように、CR発振回路は、インバータPM4,NM4と、その出力に直列に接続されたCMOSトランスファゲート(トランジスタ)PM5,NM5を採用し、一定電流で充放電しようとしているノードND4の信号振幅を、確実に電源電位Vddより、小さく設計するために容量C2を設ける。これにより、負荷の充電から放電、放電から充電の切り替わり時に、負荷に供給する電流自身で、MOSトランジスタのオン/オフのために寄生容量を充放電する必要がなくなるので、寄生容量が、負荷に供給する電流に、与える影響を抑制できる。
【0110】
また、図7に示すように、CR発振回路の基準電流IBIAS及びIBIASTRIMの温度依存性をプラスからマイナスに調整するための信号TCA[3:0]を用意することにより、製造された回路毎に、発振回路の発振周波数の温度依存性を調整することが可能となり、発振周波数精度を改善できる。
【0111】
また、図5に示すように、バンドギャップ回路BGR1と、レギュレータREG1を構成する誤差アンプEAMP1、レギュレータ出力トランジスタPMO1を用意し、バンドギャップ回路BGR1の出力バンドギャップ電圧VBGRを利用して内部電圧Vdd(例えば1.8V)を発生し、バンドギャップ電圧VBGRを基に、CR発振回路OSC1のバイアス電流IBIASROSCを発生し、必要に応じて、低電圧検出回路LVDH1,LVDL1にバンドギャップ電圧VBGRを供給する。これにより、レギュレータREG1、低電圧検出回路LVDH1,LVDL1、CR発振回路OSC1で、バンドギャップ回路BGR1を共用でき、それぞれにバンドギャップ回路を用意する場合に比べて回路面積を削減することが可能となる。
【0112】
本実施形態によれば、抵抗値の温度変化による発振周波数変動を防止することができる。また、トランジスタのドレインの寄生容量が、電流設定の誤差となることを防止することができる。また、基準電圧の温度依存性又は基準電流の温度依存性が回路個体により、わずかに異なり、これにより発振周波数の温度依存性が、回路個体毎に異なり、発振周波数の誤差を大きくしてしまうことを防止することができる。また、マイクロコントローラMCU1にレギュレータ回路REG1などの他の回路を搭載することができる。
【0113】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0114】
OSCCORE1 発振回路本体
IDAC1 トリミング電流DAC回路
IREF1 基準電流発生回路
BGR1 バンドギャップ回路
OSC1 CR発振回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のPチャネルトランジスタ及び第1のNチャネルトランジスタを含み、前記第1のPチャネルトランジスタ及び前記第1のNチャネルトランジスタのゲート電圧に応じて入力端子の信号を出力端子から出力するトランスファゲートと、
前記トランスファゲートの出力端子の信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を出力する第1のインバータと、
前記第1のインバータの出力端子の信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を出力する第2のインバータと、
前記第1のインバータの出力信号の論理反転信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を前記トランスファゲートの入力端子に出力する第3のインバータと、
前記トランスファゲートの出力端子及び前記第2のインバータの出力端子間に接続される第1の容量と、
前記トランスファゲートの出力端子及び基準電位ノード間に接続される第2の容量と
を有することを特徴とする発振装置。
【請求項2】
さらに、前記第2のインバータの電源電位配線とは異なる電源電位配線に接続され、前記第1のインバータの出力端子の信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を前記第3のインバータの入力端子に出力する第4のインバータを有することを特徴とする請求項1記載の発振装置。
【請求項3】
さらに、基準電流を発生する基準電流発生回路を有し、
前記基準電流発生回路は、
絶対温度に対して正の依存性を持つ正依存性電流を発生する正依存性電流発生回路と、
絶対温度に対して負の依存性を持つ負依存性電流を発生する負依存性電流発生回路とを有し、
前記基準電流発生回路は、前記正依存性電流及び前記負依存性電流を加算することにより前記基準電流を発生し、
前記第1のPチャネルトランジスタ及び前記第1のNチャネルトランジスタのゲートには、前記基準電流に応じた電圧が印加されることを特徴とする請求項1又は2記載の発振装置。
【請求項4】
さらに、前記基準電流を用いて、デジタル信号をアナログのバイアス電流に変換する電流デジタルアナログ変換回路を有し、
前記第1のPチャネルトランジスタ及び前記第1のNチャネルトランジスタのゲートには、前記バイアス電流に応じた電圧が印加されることを特徴とする請求項3記載の発振装置。
【請求項5】
前記正依存性電流発生回路は、
コレクタ及びベースが基準電位ノードに接続された第1のPNPトランジスタと、
前記第1のPNPトランジスタのエミッタに一端が接続された第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端の電位と第1の電位が等しくなるように前記第1の抵抗に流れる前記正依存性電流を制御する第1の制御回路とを有し、
前記負依存性電流発生回路は、
一端が基準電位ノードに接続された第2の抵抗と、
前記第2の抵抗の他端の電位と第2の電位が等しくなるように前記第2の抵抗に流れる前記負依存性電流を制御する第2の制御回路とを有することを特徴とする請求項3又は4記載の発振装置。
【請求項6】
さらに、バンドギャップ電圧を発生し、前記バンドギャップ電圧を前記第1の電位として前記第1の制御回路に出力するバンドギャップ回路を有し、
前記バンドギャップ回路は、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第2のPNPトランジスタと、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第3のPNPトランジスタと、
前記第3のPNPトランジスタのエミッタに一端が接続された第3の抵抗とを有し、
前記バンドギャップ回路は、前記第3の抵抗の他端の電位と前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位とが等しくなるように制御することにより前記バンドギャップ電圧を発生し、前記バンドギャップ電圧を前記第1の電位として前記第1の制御回路に出力し、前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位を前記第2の電位として前記第2の制御回路に出力することを特徴とする請求項5記載の発振装置。
【請求項7】
さらに、前記第1の電位及び前記第2の電位を出力するバンドギャップ回路を有し、
前記バンドギャップ回路は、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第2のPNPトランジスタと、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第3のPNPトランジスタと、
前記第3のPNPトランジスタのエミッタに一端が接続された第3の抵抗とを有し、
前記バンドギャップ回路は、前記第3の抵抗の他端の電位と前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位とが等しくなるように制御することにより、前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位を前記第1の電位として前記第1の制御回路に出力し、前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位を前記第2の電位として前記第2の制御回路に出力することを特徴とする請求項5記載の発振装置。
【請求項8】
さらに、バンドギャップ電圧を発生し、前記バンドギャップ電圧を前記第1の電位として前記第1の制御回路に出力するバンドギャップ回路を有し、
前記バンドギャップ回路は、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第2のPNPトランジスタと、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第3のPNPトランジスタと、
前記第3のPNPトランジスタのエミッタに一端が接続された第3の抵抗とを有し、
前記バンドギャップ回路は、前記第3の抵抗の他端の電位と前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位とが等しくなるように制御することにより前記バンドギャップ電圧を発生し、前記バンドギャップ電圧を前記第1の電位として前記第1の制御回路に出力し、
前記第2の制御回路は、前記第1のPNPトランジスタのエミッタ電位を前記第2の電位として入力することを特徴とする請求項5記載の発振装置。
【請求項9】
前記基準電流発生回路は、温度依存性調整信号に応じて前記正依存性電流及び前記負依存性電流の加算比率を変えて加算することにより前記基準電流を発生することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の発振装置。
【請求項10】
前記第2の抵抗は、前記温度依存性調整信号に応じて抵抗値が変化する可変抵抗であることを特徴とする請求項9記載の発振装置。
【請求項1】
第1のPチャネルトランジスタ及び第1のNチャネルトランジスタを含み、前記第1のPチャネルトランジスタ及び前記第1のNチャネルトランジスタのゲート電圧に応じて入力端子の信号を出力端子から出力するトランスファゲートと、
前記トランスファゲートの出力端子の信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を出力する第1のインバータと、
前記第1のインバータの出力端子の信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を出力する第2のインバータと、
前記第1のインバータの出力信号の論理反転信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を前記トランスファゲートの入力端子に出力する第3のインバータと、
前記トランスファゲートの出力端子及び前記第2のインバータの出力端子間に接続される第1の容量と、
前記トランスファゲートの出力端子及び基準電位ノード間に接続される第2の容量と
を有することを特徴とする発振装置。
【請求項2】
さらに、前記第2のインバータの電源電位配線とは異なる電源電位配線に接続され、前記第1のインバータの出力端子の信号を入力し、前記入力した信号の論理反転信号を前記第3のインバータの入力端子に出力する第4のインバータを有することを特徴とする請求項1記載の発振装置。
【請求項3】
さらに、基準電流を発生する基準電流発生回路を有し、
前記基準電流発生回路は、
絶対温度に対して正の依存性を持つ正依存性電流を発生する正依存性電流発生回路と、
絶対温度に対して負の依存性を持つ負依存性電流を発生する負依存性電流発生回路とを有し、
前記基準電流発生回路は、前記正依存性電流及び前記負依存性電流を加算することにより前記基準電流を発生し、
前記第1のPチャネルトランジスタ及び前記第1のNチャネルトランジスタのゲートには、前記基準電流に応じた電圧が印加されることを特徴とする請求項1又は2記載の発振装置。
【請求項4】
さらに、前記基準電流を用いて、デジタル信号をアナログのバイアス電流に変換する電流デジタルアナログ変換回路を有し、
前記第1のPチャネルトランジスタ及び前記第1のNチャネルトランジスタのゲートには、前記バイアス電流に応じた電圧が印加されることを特徴とする請求項3記載の発振装置。
【請求項5】
前記正依存性電流発生回路は、
コレクタ及びベースが基準電位ノードに接続された第1のPNPトランジスタと、
前記第1のPNPトランジスタのエミッタに一端が接続された第1の抵抗と、
前記第1の抵抗の他端の電位と第1の電位が等しくなるように前記第1の抵抗に流れる前記正依存性電流を制御する第1の制御回路とを有し、
前記負依存性電流発生回路は、
一端が基準電位ノードに接続された第2の抵抗と、
前記第2の抵抗の他端の電位と第2の電位が等しくなるように前記第2の抵抗に流れる前記負依存性電流を制御する第2の制御回路とを有することを特徴とする請求項3又は4記載の発振装置。
【請求項6】
さらに、バンドギャップ電圧を発生し、前記バンドギャップ電圧を前記第1の電位として前記第1の制御回路に出力するバンドギャップ回路を有し、
前記バンドギャップ回路は、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第2のPNPトランジスタと、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第3のPNPトランジスタと、
前記第3のPNPトランジスタのエミッタに一端が接続された第3の抵抗とを有し、
前記バンドギャップ回路は、前記第3の抵抗の他端の電位と前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位とが等しくなるように制御することにより前記バンドギャップ電圧を発生し、前記バンドギャップ電圧を前記第1の電位として前記第1の制御回路に出力し、前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位を前記第2の電位として前記第2の制御回路に出力することを特徴とする請求項5記載の発振装置。
【請求項7】
さらに、前記第1の電位及び前記第2の電位を出力するバンドギャップ回路を有し、
前記バンドギャップ回路は、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第2のPNPトランジスタと、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第3のPNPトランジスタと、
前記第3のPNPトランジスタのエミッタに一端が接続された第3の抵抗とを有し、
前記バンドギャップ回路は、前記第3の抵抗の他端の電位と前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位とが等しくなるように制御することにより、前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位を前記第1の電位として前記第1の制御回路に出力し、前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位を前記第2の電位として前記第2の制御回路に出力することを特徴とする請求項5記載の発振装置。
【請求項8】
さらに、バンドギャップ電圧を発生し、前記バンドギャップ電圧を前記第1の電位として前記第1の制御回路に出力するバンドギャップ回路を有し、
前記バンドギャップ回路は、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第2のPNPトランジスタと、
ベース及びコレクタが基準電位ノードに接続された第3のPNPトランジスタと、
前記第3のPNPトランジスタのエミッタに一端が接続された第3の抵抗とを有し、
前記バンドギャップ回路は、前記第3の抵抗の他端の電位と前記第2のPNPトランジスタのエミッタ電位とが等しくなるように制御することにより前記バンドギャップ電圧を発生し、前記バンドギャップ電圧を前記第1の電位として前記第1の制御回路に出力し、
前記第2の制御回路は、前記第1のPNPトランジスタのエミッタ電位を前記第2の電位として入力することを特徴とする請求項5記載の発振装置。
【請求項9】
前記基準電流発生回路は、温度依存性調整信号に応じて前記正依存性電流及び前記負依存性電流の加算比率を変えて加算することにより前記基準電流を発生することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の発振装置。
【請求項10】
前記第2の抵抗は、前記温度依存性調整信号に応じて抵抗値が変化する可変抵抗であることを特徴とする請求項9記載の発振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−135349(P2011−135349A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293178(P2009−293178)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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