説明

発泡シート製造用マンドレル、ポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置及びポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法

【課題】簡単にシート幅を変更可能な発泡シート製造用マンドレル、それを用いたポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置及び製造方法の提供。
【解決手段】押出機内で溶融混合された樹脂と発泡剤との溶融混合物を、前記押出機に取り付けたダイを通して低圧領域に押出して発泡させ、前記発泡により得られた発泡中間体を、マンドレルの外面に沿わせて延伸させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する発泡シート製造用マンドレルにおいて、前記マンドレルは、発泡シート流れ方向上流側から下流側に向けて少なくとも前部、中部及び後部の各領域が順に設けられ、前記中部には、発泡中間体の内面側に気体を吹き付ける気体供給手段が設けられたマンドレル本体と、該マンドレル本体の前記前部と後部の一方又は両方の外面に着脱可能に固定される拡径リングとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂発泡シートやポリプロピレン系樹脂発泡シートなどのポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造に用いられる発泡シート製造装置用マンドレル(以下、マンドレルと略記する)、ポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置及びポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法に関し、特に、該発泡シートの幅の変更が容易であり、シート幅変更に伴う製造効率の低下や使用樹脂のロスを改善できる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂発泡シートやポリプロピレン系樹脂発泡シートなどのポリオレフィン系樹脂発泡シートは、軽量で柔軟性があり緩衝性に富んでいること、また安価であること、さらに疎水性に富み、衛生的で、保温・断熱性に優れていることなどの種々の利点を有しており、例えば緩衝用の梱包材などとして広く使用されている。
【0003】
これらのポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法の1つとして、押出発泡成形法が適用されている。この押出発泡成形法について簡単に説明すると、該方法は、押出機内で熱可塑性樹脂を発泡剤と共に溶融混合し、この溶融混合物を、押出機の先端部に取り付けた、アウトリングとコアよりなるダイの、アウトリングとコアにより形成される円環状の隙間から外部の低圧領域に押出し、この押出された発泡中間体を、冷却された円筒状のマンドレル(プラグ、冷却プラグなどとも呼ばれる)の外周面に前記発泡中間体を沿わせて通過させ、前記発泡中間体を延伸して円筒状の発泡体を形成し、この発泡体をカッターにより切り開いて発泡シートを得る方法である。
【0004】
このようにして得られたポリオレフィン系樹脂発泡シートは、幅及び長さ方向にカットして1枚の緩衝用の梱包材シートなどとして使用される。
このカット幅、長さは梱包物の寸法に応じて任意に設定されるが、発泡シートロールは何種類かの幅の製品ロールを用意して、それらの中で最もロスの少ないシート幅の製品ロールが使用される。
【0005】
前記押出発泡成形法やそれに用いられるマンドレルの従来技術としては、例えば、特許文献1,2が提案されている。
特許文献1(特開2002−36337号公報)には、無架橋のポリエチレン系樹脂で形成されたシート状の発泡体であって、シートの波打ちの、波高さの最大値が1〜10mm、波数が10個/200mm以下、発泡体表面の中心線平均粗さRaが9.0μm以上、平均気泡径が0.2〜2.5mm、密度が0.015〜0.05g/cmで、かつ厚みが0.7〜20mmであることを特徴とする無架橋ポリエチレン系樹脂発泡体;無架橋のポリエチレン系樹脂と発泡剤とを押出機に供給し、溶融混練したのち、サーキュラーダイスを通して筒状に押し出して発泡させ、この筒状発泡体を円環状のマンドレルの外周に沿わせて引き取って無架橋ポリエチレン系樹脂発泡体を製造する方法であって、サーキュラーダイスの口径Cφ(mm)とマンドレルの外径Mφ(mm)との比Mφ/Cφを2.5〜3.5の範囲内、単位時間あたりの樹脂の押出量Ex(kg/時)と上記サーキュラーダイスの口径Cφ(mm)との比Ex/Cφを0.7〜2.1の範囲内、並びにサーキュラーダイスの口金部における押出の剪断速度を500〜5000/秒に設定することを特徴とする無架橋ポリエチレン系樹脂発泡体の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献2(特開2005−246849号公報)には、熱可塑性樹脂と発泡剤とを溶融混合して溶融混合物を押し出す押出機と、該押出機の吐出口に取り付けられたダイと、ダイから押し出された発泡中間体を外周面に沿わせて進行させながら冷却して熱可塑性樹脂発泡シートを製造するプラグ(マンドレル)とを備えた熱可塑性樹脂発泡シート製造装置に用いるプラグにおいて、シート接触面であるプラグ外面にフッ素樹脂被膜層が設けられ、そのフッ素樹脂被膜層の算術平均粗さRaが0.5μm〜4μmの範囲内であることを特徴とするプラグ;押出機内で溶融混合された熱可塑性樹脂と発泡剤との溶融混合物を、前記押出機に取り付けられたダイから低圧領域に押出して発泡させ、前記発泡により得られた発泡中間体を、プラグの外局面に沿わせて進行させながら冷却して熱可塑性樹脂発泡シートを製造する熱可塑性樹脂発泡シートの製造方法において、前記プラグを用いたことを特徴とする製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−36337号公報
【特許文献2】特開2005−246849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来技術では、マンドレルの外周面に沿って発泡シートを移動させ、マンドレル外周面と発泡シートとを接触させて冷却しており、得られるポリオレフィン系樹脂発泡シートのシート幅がマンドレルの径の大きさにより決定される。このため、シート幅を変更しようとする場合には、目的とするシート幅に応じた外径を有する別なマンドレルに取り替えてシート幅を変更する必要があった。
マンドレルを変更する際には、押出機を止めるか、押出された樹脂を除去しながら、別なマンドレルに取り替える作業を行う必要がある。そのため、シート幅の種類に応じた異なる外径のマンドレルが必要となり、また、シート幅変更に際して時間的なロス、使用樹脂のロスなどによって生産効率が悪化してしまう問題があった。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされ、マンドレル全体を交換することなく、簡単にシート幅を変更可能なマンドレル、それを用いたポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置及び製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、押出機内で溶融混合された樹脂と発泡剤との溶融混合物を、前記押出機に取り付けたダイを通して低圧領域に押出して発泡させ、前記発泡により得られた発泡中間体を、マンドレルの外面に沿わせて延伸させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造するマンドレルにおいて、
前記マンドレルは、発泡シート流れ方向上流側から下流側に向けて少なくとも前部、中部及び後部の各領域が順に設けられ、前記中部には、発泡中間体の内面側に気体を吹き付ける気体供給手段が設けられたマンドレル本体と、該マンドレル本体の前記前部と後部の一方又は両方の外面に着脱可能に固定される拡径リングとを有することを特徴とするマンドレルを提供する。
【0011】
また本発明は、溶融混合された樹脂と発泡剤とを溶融混合する押出機と、前記押出機に取り付けられ、押出機内の溶融混合物を低圧領域に押出して発泡させるダイと、前記発泡により得られた発泡中間体を延伸しながら冷却してポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造するマンドレルとを有するポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置において、
マンドレルとして、前記本発明に係るマンドレルを用いたことを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置を提供する。
【0012】
また本発明は、押出機内で溶融混合された樹脂と発泡剤との溶融混合物を、前記押出機に取り付けたダイを通して低圧領域に押出して発泡させ、前記発泡により得られた発泡中間体を、マンドレルの外面に沿わせて延伸させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造するポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法において、
マンドレルとして前記本発明に係るマンドレルを用い、前記マンドレル本体の前記前部と後部の一方又は両方の外面に前記拡径リングを固定するとともに、前記中部の気体供給手段から気体を噴出しつつ、前記発泡中間体をマンドレルの外面に沿わせて延伸させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法を提供する。
【0013】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法において、それぞれ外径の異なる複数の前記拡径リングを用意し、ポリオレフィン系樹脂発泡シートのシート幅の変更時に該シート幅に応じた外径を有する前記拡径リングを前記マンドレル本体の前記前部と後部の一方又は両方の外面に固定し、変更されたシート幅のポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造することが好ましい。
【0014】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法において、製造するポリオレフィン系樹脂発泡シートの密度は、0.015〜0.060g/cmの範囲であることが好ましい。
【0015】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法において、製造するポリオレフィン系樹脂発泡シートが、ポリエチレン系樹脂発泡シート又はポリプロピレン系樹脂発泡シートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のマンドレルは、発泡シート流れ方向上流側から下流側に向けて少なくとも前部、中部及び後部の各領域が順に設けられ、前記中部には、発泡中間体の内面側に気体を吹き付ける気体供給手段が設けられたマンドレル本体と、該マンドレル本体の前記前部と後部の一方又は両方の外面に着脱可能に固定される拡径リングとを有する構成としたものなので、拡径リングを着脱すること、或いは外径の異なる複数の拡径リングを製造するポリオレフィン系樹脂発泡シートのシート幅に合わせて取り替えることによって、シート幅の変更に伴うマンドレルの交換作業を容易にかつ短時間に行うことができ、シート幅変更に際して時間的なロス、使用樹脂のロスを低減することができる。
また、マンドレル本体に拡径リングを着脱することでシート幅の変更が可能となるので、1つのマンドレル本体と複数の拡径リングを用意すれば済み、複数のマンドレルを用意する場合と比べ、設備コストを安価にできる。
【0017】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置は、前述した本発明に係るマンドレルを有するものなので、マンドレルに拡径リングを着脱すること、或いは外径の異なる複数の拡径リングを製造するポリオレフィン系樹脂発泡シートのシート幅に合わせて取り替えることによって、シート幅の変更に伴うマンドレルの交換作業を容易にかつ短時間に行うことができ、シート幅変更に際して時間的なロス、使用樹脂のロスを低減することができる。
また、マンドレル本体中部の気体供給手段から気体を噴出しつつ、発泡中間体をマンドレルの外面に沿わせて延伸するようにしたので、柔軟なポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造において、該シートとマンドレルとの接触を少なくすることができ、破断させることなく柔軟なポリオレフィン系樹脂発泡シートを安定的に連続生産することができる。
また、マンドレル本体に拡径リングを着脱することでシート幅の変更が可能となるので、1つのマンドレル本体と複数の拡径リングを用意すれば済み、複数のマンドレルを用意する場合と比べ、設備コストを安価にできる。
【0018】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法は、マンドレルとして前記本発明に係るマンドレルを用い、前記マンドレル本体の前記前部と後部の一方又は両方の外面に前記拡径リングを固定するとともに、前記中部の気体供給手段から気体を噴出しつつ、前記発泡中間体をマンドレルの外面に沿わせて延伸させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造するものなので、マンドレルに拡径リングを着脱すること、或いは外径の異なる複数の拡径リングを製造するポリオレフィン系樹脂発泡シートのシート幅に合わせて取り替えることによって、シート幅の変更に伴うマンドレルの交換作業を容易にかつ短時間に行うことができ、シート幅変更に際して時間的なロス、使用樹脂のロスを低減することができる。
また、マンドレル本体中部の気体供給手段から気体を噴出しつつ、発泡中間体をマンドレルの外面に沿わせて延伸するようにしたので、柔軟なポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造において、該シートとマンドレルとの接触を少なくすることができ、破断させることなく柔軟なポリオレフィン系樹脂発泡シートを安定的に連続生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置の一例を示す構成図である。
【図2】本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置に用いられたマンドレルの一例を示す側面図である。
【図3】本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置に用いられたマンドレルの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置の一例を示す構成図であり、本例のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置は、溶融混合された樹脂と発泡剤とを溶融混合する押出機1と、前記押出機1に取り付けられ、押出機1内の溶融混合物を低圧領域に押出して発泡させるダイ2と、前記発泡により得られた発泡中間体を延伸しながら冷却してポリオレフィン系樹脂発泡シート7を製造するマンドレル6とを有している。さらに、この製造装置には、押出機1の樹脂供給部4に接続して別な押出機3が設けられ、また押出機1の内部に発泡剤を圧入するための発泡剤圧入ポンプ5が設けられている。
【0021】
また、本例の製造装置では、押出機1の先端に環状の孔を有するサーキュラーダイを取り付けて、前記ダイから円筒状の発泡中間体を押出し、これをマンドレル6で延伸しながら冷却して円筒状の発泡体とし、これを図示していないカッターで切開して1枚のポリオレフィン系樹脂発泡シート7を製造する場合を例示しているが、ダイ2の構造や得られるシートの形状等は本例にのみ限定されない。前記のように得られたポリオレフィン系樹脂発泡シート7は、ガイドロール8を通して紙管等に巻き取り、製品7aとする。
【0022】
図2及び図3は、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置に用いられたマンドレルの一例を示す側面図である。
このマンドレル6は、発泡シート流れ方向A上流側から下流側に向けて少なくとも前部12、中部13及び後部14の各領域が順に設けられ、前記中部13には、発泡中間体の内面側にエアを吹き付ける複数のエア供給口15(気体供給手段)が設けられたマンドレル本体6aと、該マンドレル本体6aの前部12と後部14の一方又は両方の外面に着脱可能に固定される拡径リング11とを有する構成になっている。
また、前部12、中部13、後部14の長さは特に限定されない。また中部13のエア供給口15の配置は適宜変更できる。
【0023】
マンドレル本体6aや拡径リング11の材質や表面処理の有無等は、特に限定されないが、材質としてはアルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などの熱伝導率が高い金属材料が好適に用いられる。また、表面処理については、発泡中間体とマンドレル本体6aの外面や拡径リング11の外面との接触抵抗を低減できるように、例えば、フッ素樹脂コート層やセラミック溶着層などの摩擦低減用表面処理や表面に凹凸を設けるローレット加工などを施すことが好ましい。
また、角部は半径R5〜20mmの面取りをすることが好ましい。
【0024】
マンドレル本体6aには、図示していないが、冷却水などの冷却媒体の通路を複数設けておき、これらの通路に冷却媒体を通すことで、該マンドレル本体6aや拡径リング11の外面と接触する発泡中間体を冷却できるようになっている。
【0025】
本例示において、マンドレル本体6aの中部13は、前部12と後部14の外径よりも小さい外径になっており、その外面には多数のエア供給口15が全周面にわたりほぼ均一に設けられている。これらのエア供給口15に繋がる図示していないエア供給管路には、マンドレル本体6a内部、或いは外部に設けられたコンプレッサー等のエア供給手段から高圧エアが供給され、その高圧エアが各エア供給口15から噴出するように構成されている。
【0026】
前記マンドレル本体6aの中部13は、図3に示すように、前記マンドレル6にダイ2から押出された発泡中間体を導いて、シート流れ方向A上流側から下流側に向けて通過させる際、多数のエア供給口15から高圧エアを噴出することで、発泡中間体を浮かせ、中部13の外面と非接触状態で該発泡中間体を通過させるようになっている。このように、マンドレル本体6aの中部13のエア供給口15から高圧エアを噴出しつつ、発泡中間体をマンドレル6の外面に沿わせて延伸することで、柔軟なポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する場合であっても発泡中間体とマンドレルとの接触を少なくすることができ、破断させることなく柔軟なポリオレフィン系樹脂発泡シートを安定的に連続生産することができる。なお、エア供給口15からの高圧エア噴出量や圧力等は限定されず、製造するポリオレフィン系樹脂発泡シートの材質や強度等に応じて適宜調整することが好ましい。
【0027】
前記拡径リング11は、マンドレル本体6aの前部12と後部14とのいずれか一方又は両方の外面に固定可能であり、マンドレル本体6aの外径R1よりも大きい外径R2(R1<R2)を有していればよく、その形状や寸法は特に限定されない。通常は、マンドレル本体6aが円筒状であり、拡径リング11は、マンドレル本体6aの前部12と後部14との外周面に嵌着可能な内径を有する円筒状のものを用いることが、発泡中間体との接触抵抗を減らす上で好ましい。また、拡径リング11は円筒状の一体物であってもよいし、断面半円状の2つの部材を組み合わせたもの、あるいは断面円弧状の部材を3つ以上組み合わせて円筒状とする構造としてもよい。
【0028】
シート幅の異なる多種類のポリオレフィン系樹脂発泡シート7を製造する場合、それぞれ外径R2の異なる多種類の拡径リング11を用意し、製造するべきポリオレフィン系樹脂発泡シート7のシート幅に合致した外径R1を有する拡径リング11をマンドレル本体6aの前部12と後部14とのいずれか一方又は両方の外面に固定し、発泡シート製造装置のマンドレル6とする。
【0029】
拡径リング11をマンドレル本体6aの外面に着脱可能に固定する方法は、従来より周知の各種の固定方法を用いることができ、例えば、ボルトで固定する方法、雄ねじと雌ねじ又は係合突起と係合凹部との組み合わせによる固定方法、マンドレル本体6a側にテーパ面を形成して拡径リング11を強制嵌合する方法などを採用することができる。
【0030】
次に、本発明に係るポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法の一例を説明する。
本発明の製造方法では、前述したように中部13にエア供給口15を有するマンドレル本体6aの前部12と後部14の一方又は両方に拡径リング11を固定したマンドレル6を有するポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置を用い、中部13のエア供給口から高圧エアを噴出しつつ、発泡中間体をマンドレル6の外面に沿わせて延伸させてポリオレフィン系樹脂発泡シート7を製造することを特徴としている。
【0031】
本発明の製造方法において、使用するポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン、オレフィンモノマーと他の共重合可能なモノマーとの共重合体、ポリオレフィンと他の樹脂とのブレンドポリマー等の中から、適宜選択して使用することができ、その中でも、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0032】
また、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法において、製造するポリオレフィン系樹脂発泡シートの密度は、0.015〜0.060g/cmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、0.018〜0.045g/cmの範囲である。密度が0.015g/cm未満であると、発泡シートの強度が不十分となり、製造時に破断・裂け等が生じ易くなり、製造が困難になる。密度が0.060g/cmを超えると、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂においては十分な柔軟性、耐衝撃性、断熱性を持った発泡シートが得られなくなる。
【0033】
前記製造装置を用いてポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造するには、原料のポリオレフィン系樹脂を、必要に応じて添加される添加剤と共に、ホッパー4から押出機1内に供給する。添加剤としては、例えば、気泡調整剤、酸化防止剤、金属不活性剤、難燃剤、紫外線吸収剤、架橋剤、連鎖移動剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、帯電防止剤などが挙げられる。
【0034】
押出機1内に供給された樹脂と添加剤は、押出機1内で溶融混合されて樹脂溶融物となり、この樹脂溶融物に発泡剤圧入ポンプ5を経て発泡剤が圧入されて、樹脂溶融物と混合される。使用される発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、クロロジフルオロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、窒素、炭酸ガス、空気などの無機ガスなどの1種又は2種以上が挙げられる。
【0035】
次いでこの混合物は、混練されながら吐出側に移送され、発泡に適した温度に冷却された後、押出機1の吐出口に取り付けられたダイ2の樹脂流路に導かれる。そして、ダイ2の樹脂流路に導かれた溶融混合物は、ダイ2の出口(樹脂流路の出口)から任意の押出量で大気中に円筒状に押出され、そして押出されると同時に発泡する。
【0036】
この発泡により得られた円筒状の発泡中間体は、冷却用のマンドレル6で冷却された後、所定箇所がカッターによって切開され、平面状に展開されて所定幅のポリオレフィン系樹脂発泡シート7となる。このポリオレフィン系樹脂発泡シート7は、ガイドロール8で引っ張られ、ロール状に巻き取られて、製品7aとなる。
【0037】
このポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法において、製造するポリオレフィン系樹脂発泡シート7のシート幅を変更しようとする場合、従来技術ではマンドレル全体を交換しなければならず、その交換の間は押出機1を停止させるか、或いは押出された樹脂を無駄にしなければならず、マンドレルに設けられている冷却水や高圧エアの流路切り替えなど、交換作業に多くの時間を要することから、製造効率が低下し、樹脂ロスが多くなる問題があった。
【0038】
一方、本発明の製造方法では、マンドレル本体6aを取り外すことなく、前部12と後部14の一方又は良好に固定されていた拡径リング11を、外径の異なる別の拡径リングと交換する簡単な作業により、シート幅の変更が可能となる。この拡径リング1の交換に際しては、マンドレル本体6aに設けられている冷却水や高圧エアの流路の切り替えを行う必要がなく、簡単且つ短時間で交換可能である。
【0039】
このように、本発明によれば、マンドレル本体6aに拡径リング11を着脱すること、或いは外径の異なる複数の拡径リング11を製造するポリオレフィン系樹脂発泡シート7のシート幅に合わせて取り替えることによって、シート幅の変更に伴うマンドレル6の交換作業を容易にかつ短時間に行うことができ、シート幅変更に際して時間的なロス、使用樹脂のロスを低減することができる。
また、マンドレル本体6aに拡径リング11を着脱することでシート幅の変更が可能となるので、1つのマンドレル本体6aと複数の拡径リング11を用意すれば済み、複数のマンドレルを用意する場合と比べ、設備コストを安価にできる。
さらに、マンドレル本体に拡径リングを着脱することでシート幅の変更が可能となるので、1つのマンドレル本体と複数の拡径リングを用意すれば済み、複数のマンドレルを用意する場合と比べ、設備コストを安価にできる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明の効果を実証する。
なお、以下の実施例は本発明の一例を示したにすぎず、本発明は以下の実施例の記載のみに限定されるものではない。
また、得られた発泡シートの厚みと密度は次のように測定した。
(発泡シートの厚みの測定方法)
得られた発泡シートから、流れ方向(MD方向)10cm×幅方向(TD方向)100cmの長方形状の切片シートを切り出す。定圧厚み測定器(Teclock社製 型式PG−12)を用いて、15.2cm(直径4.4cmの円板)に100gの荷重をかけた時の厚みを、切片シートの幅方向(TD方向)に10cm間隔で測定し、その平均値を発泡シートの厚み(mm)とした。
(発泡シートの密度の測定方法)
厚みの測定に用いた切片シートの重量と体積を測定し、発泡シートの密度(g/cm)を算出した。なお、切片シートの体積を算出する際の厚みは、先に求めた発泡シートの厚みを用いた。
【0041】
[実施例]
図2,3に示す構造のマンドレル6を有する、図1に示す製造装置を用い、ポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造した。
ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン系樹脂(日本ユニカー社製、低密度ポリエチレン、商品名「DFDJ6776」(MI=0.22、密度0.922g/cm))を用いた。
【0042】
この樹脂100質量部に対し、発泡核剤(三共化成社製、商品名「セルマルクC−2」)を0.05質量部混合し、原料とした。この原料を内径90mmの第一押出機と内径180mmの第二押出機が連結されたタンデム押出機に入れ、最高温度設定を210℃になるようにして押出機内で加熱溶融混練し、途中で帯電防止剤としてグリセリンモノステアレート1.5質量部と発泡剤(イソブタン/ノルマルブタン=50/50)を16質量部圧入した後、樹脂温度を112℃まで冷却し、押出機の吐出口に取り付けた、ダイ口径120mm、スリットクリアランス0.2mmのサーキュラーダイから押出し、発泡させた後、得られた円筒状の発泡中間体を外径440mmφの円筒形のマンドレル(マンドレル本体)に導いて外周面を通過させて冷却し、一箇所を切開して発泡シートとした。
【0043】
ここで使用したマンドレルは、図2に示すように、発泡シート流れ方向A上流側から下流側に向けて前部12、中部13及び後部14の各領域が順に設けられ、前部12と後部14が水冷ゾーンとなっており、中部13は発泡中間体の内側に高圧エアを吹き出して浮かせることで非接触状態で発泡中間体を通過させるようになっている。中部13の外周面には直径2mmφの丸穴状のエア供給口を24個穿設し、各エア供給口からは2.5kgf/cmの圧力で高圧エアを噴出させた。
【0044】
前記マンドレル(マンドレル本体)を使用して発泡シートの製造を行った結果、切開する前は、該マンドレルの外径R1と同じ440mmφで発泡シートが得られた。
切開して紙管に巻き取ることによって、厚み1.25mm、幅1280mm、密度0.0186g/cmのポリエチレン樹脂発泡シートを連続生産することができた。
【0045】
次に、拡径リング11を用い、シート幅の異なる発泡シートを製造した。
外径R2が480mmφの拡径リングを、前記マンドレル(マンドレル本体)の前部と後部に嵌入・固定し、マンドレルの最大外径を480mmφに変更した。
拡径リングの取り付けの際には、ダイから押し出される発泡シートを除去しながら短時間で行うことができた。拡径リングを取り付けた後、高圧エアの圧力を3.0kgf/cmとして再び発泡シートの製造を行った。
【0046】
拡径リングを固定したマンドレルを使用して発泡シートの製造を行った結果、切開する前は、該マンドレルの外径R2と同じ480mmφで発泡シートが得られた。
切開して紙管に巻き取ることによって、厚み1.26mm、幅1380mm、密度0.0185g/cmのポリエチレン樹脂発泡シートを連続生産することができた。
【0047】
本実施例では、外径440mmφの円筒形のマンドレルを用い、幅1280mmの発泡シートを連続生産していた状態から、幅1380mmの発泡シートの製造に切り替えるために、マンドレルの前部と後部に拡径リングを取り付けるだけで、簡単にシート幅の変更が可能であった。本実施例では、シート幅変更に要した時間は1分程度と短くて済み、その間に押し出された余分な樹脂の量も少なくて済んだ。
【0048】
[比較例]
比較例では、外径が440mmφの円筒状を成し、前部・中部・後部の区別がなくエア供給口も有していない従来型のマンドレルと、外径が480mmφであること以外は同様の交換用マンドレルとを用意し、マンドレル以外は実施例と同様にして発泡シートの製造を行った。
まず、外径が440mmφのマンドレルを用い、それ以外は実施例と同様に発泡シートの製造を行った。これにより厚み1.25mm、幅1280mm、密度0.0186g/cmのポリエチレン樹脂発泡シートを連続生産することができた。
次に、マンドレルを交換するために、発泡シートを一旦破断して、ダイから押し出された樹脂を除去しながら、外径が440mmφのマンドレルを取り外し、更に外径が480mmφの交換用マンドレルを取り付けた。このマンドレル交換においては、冷却水の配管変更を含む多くの交換作業が必要であった。
交換用マンドレルへの交換後、再び発泡シートの製造を開始した。これにより厚み1.26mm、幅1380mm、密度0.0185g/mのポリエチレン樹脂発泡シートを連続生産することができた。
しかし、この比較例では、マンドレルの交換に要した時間は10分程度と長くかかり、その間に押し出された余分な樹脂の量はかなりの量になった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造において、マンドレル全体を交換することなく、簡単にシート幅を変更可能なマンドレル、それを用いたポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置及び製造方法を製造することができる。
本発明により製造されるポリオレフィン系樹脂発泡シートは、例えば緩衝用の梱包材などとして使用される。
【符号の説明】
【0050】
1,3…押出機、2…ダイ、4…ホッパー、5…発泡剤圧入ポンプ、6…マンドレル、6a…マンドレル本体、7…ポリオレフィン系樹脂発泡シート、7a…製品、8…ガイドロール、11…拡径リング、12…前部、13…中部、14…後部、15…エア供給口(気体供給手段)、A…発泡シート流れ方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機内で溶融混合された樹脂と発泡剤との溶融混合物を、前記押出機に取り付けたダイを通して低圧領域に押出して発泡させ、前記発泡により得られた発泡中間体を、マンドレルの外面に沿わせて延伸させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する発泡シート製造用マンドレルにおいて、
前記マンドレルは、発泡シート流れ方向上流側から下流側に向けて少なくとも前部、中部及び後部の各領域が順に設けられ、前記中部には、発泡中間体の内面側に気体を吹き付ける気体供給手段が設けられたマンドレル本体と、該マンドレル本体の前記前部と後部の一方又は両方の外面に着脱可能に固定される拡径リングとを有することを特徴とする発泡シート製造用マンドレル。
【請求項2】
溶融混合された樹脂と発泡剤とを溶融混合する押出機と、前記押出機に取り付けられ、押出機内の溶融混合物を低圧領域に押出して発泡させるダイと、前記発泡により得られた発泡中間体を延伸しながら冷却してポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造するマンドレルとを有するポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置において、
マンドレルとして、請求項1に記載の発泡シート製造用マンドレルを用いたことを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シート製造装置。
【請求項3】
押出機内で溶融混合された樹脂と発泡剤との溶融混合物を、前記押出機に取り付けたダイを通して低圧領域に押出して発泡させ、前記発泡により得られた発泡中間体を、マンドレルの外面に沿わせて延伸させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造するポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法において、
マンドレルとして請求項1に記載の発泡シート製造用マンドレルを用い、前記マンドレル本体の前記前部と後部の一方又は両方の外面に前記拡径リングを固定するとともに、前記中部の気体供給手段から気体を噴出しつつ、前記発泡中間体をマンドレルの外面に沿わせて延伸させてポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法。
【請求項4】
それぞれ外径の異なる複数の前記拡径リングを用意し、ポリオレフィン系樹脂発泡シートのシート幅の変更時に該シート幅に応じた外径を有する前記拡径リングを前記マンドレル本体の前記前部と後部の一方又は両方の外面に固定し、変更されたシート幅のポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造することを特徴とする請求項3に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法。
【請求項5】
製造するポリオレフィン系樹脂発泡シートの密度が0.015〜0.060g/cmの範囲であることを特徴とする請求項3に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法。
【請求項6】
製造するポリオレフィン系樹脂発泡シートが、ポリエチレン系樹脂発泡シート又はポリプロピレン系樹脂発泡シートであることを特徴とする請求項3に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−56768(P2011−56768A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208530(P2009−208530)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】