説明

発泡体、発泡体の製造方法、及び、発泡体の押出し成形機

【課題】断熱特性の向上を図ることができる発泡体等を提供する。
【解決手段】パルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分とを発泡させ、多数の密閉された発泡セルより構成された発泡体1Aであって、発泡セルS3が密集配置された複数の発泡セル層3と、発泡セル層3の間に配置され、発泡セル層3より密度の高い発泡セルS1が密集配置された仕切皮膜層4とを厚み方向に備え、仕切皮膜層4が複数の発泡セル層3間を連続して仕切っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分とを発泡材とする発泡体、この発泡体の製造方法、及び、この発泡体を作製する押出し成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より紙を発泡材の一部として利用した発泡体が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
この種の発泡体の一従来例を説明する。図5において、発泡体50は、紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材と補助剤としてのコーンスターチから成る発泡材を発泡させ、多数の密閉された発泡セルSより構成されている。各発泡セルSは、内部の空隙がセル皮膜によって被われている。各発泡セルSは、大略同じ大きさである。
【0004】
次に、上記発泡体50を製造する押出し成形機60を説明する。図6(a)に示すように、押出し成形機60は、発泡材を投入する投入口(図示せず)と、投入された発泡材を混練する混練手段(図示せず)と、混練した発泡材を高温に加熱する加熱手段(図示せず)と、発泡材を押圧する押圧手段(図示せず)と、押圧室の先端側を塞ぐように配置された口金部材61と、この口金部材61の外側を囲むように配置された規制枠壁70とを備えている。口金部材61は、図6(a)、(b)に示すように、水平方向に等間隔P2を置いて配置された複数の吐出口62を有する。吐出口62は、1段である。規制枠壁70は、この複数の吐出口62より吐出された発泡材の発泡領域を規制する。規制枠壁70は、偏平長方形状の枠である。
【0005】
次に、発泡体50の製造方法を説明する。押出し成形機60内に紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材と補助剤としてのコーンスターチと水を供給する。そして、紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材とコーンスターチと水を加熱混練し、この高温の発泡材を複数の吐出口62より押圧によって吐出させる。
【0006】
すると、高温の発泡材に混入された水が各吐出口62より吐出された瞬間に気化し、水の蒸気圧により紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材とコーンスターチから成る発泡材が発泡する。この発泡は、規制枠壁70によって規制されるため、規制枠壁70を断面積とする発泡体50が連続的に押し出される。各発泡セルSは、紙粉末成分の柔軟性やコーンスターチの粘着性等によって破泡することなく、密閉されたものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3326156号公報
【特許文献2】特開2000−273800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来例の発泡体50は、上記したように、多数の密閉された発泡セルSが密集状態に配置されるため、空気の通過を限りなく阻止、つまり、対流による熱の伝達をほぼ阻止する。これにより、良好な断熱特性を発揮する。しかし、発泡体50としては、更なる断熱特性の向上が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、断熱特性の向上を図ることができる発泡体、その発泡体の製造方法、及び、その発泡体を作製する押出し成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、パルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分とを発泡させ、多数の密閉された発泡セルより構成された発泡体であって、前記発泡セルが密集配置された複数の発泡セル層と、前記発泡セル層の間に配置され、前記発泡セル層より密度の高い前記発泡セルが密集配置された仕切皮膜層とを厚み方向に備え、前記仕切皮膜層が複数の前記発泡セル層間を連続して仕切っていることを特徴とする発泡体である。
【0011】
前記仕切皮膜層は、厚み方向の直交方向に一直線状で、且つ、同じ厚みであることが好ましい。
【0012】
合成樹脂材は、ポリプロピレン樹脂材であることが好ましい。
【0013】
他の発明は、一定の方向に間隔を置いて配置された複数の吐出口が上下同じ位置で複数段設けられ、複数段の前記各吐出口より吐出された発泡体の発泡領域を規制する規制枠壁が設けられた押出し成形機を使用し、前記押出し成形機にパルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分と水を供給し、前記パルプ繊維成分と合成樹脂成分と澱粉成分と水を加熱混練して複数段の前記各吐出口より押圧によって吐出させたことを特徴とする発泡体の製造方法である。
【0014】
更に他の発明は、一定の方向に間隔を置いて配置された複数の吐出口が上下同じ位置で複数段設けられ、複数段の前記各吐出口より吐出された発泡材の発泡領域を規制する規制枠壁が設けられたことを特徴とする押出し成形機である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、多数の密閉された発泡セルが密集状態に配置されるため、空気の通過を限りなく阻止、つまり、対流による熱の伝達をほぼ阻止する。又、仕切皮膜層は、発泡材料が発泡材料の中でも熱伝導率の低いものであれば、仕切被覆層の代わりに発泡セル層を有する従来例に較べて、熱の伝達を極力抑制できる。以上より、発泡体の断熱特性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示し、発泡体の外観斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、(a)は図1のA−A線に沿う発泡体の構造模式図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、(a)は押出し成形機の要部斜視図、(b)は口金部材の正面図である。
【図4】本発明の一実施形態の変形例を示し、発泡体の模式断面図である。
【図5】従来例を示し、(a)は発泡体の外観斜視図、(b)は発泡体の構造模式図である。
【図6】従来例を示し、(a)は押出し成形機の要部斜視図、(b)は口金部材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(一実施形態)
図1〜図3は本発明の一実施形態を示す。図1に示すように、発泡体1Aは、偏平長方形の板状である。発泡体1Aは、図2(a)、(b)に示すように、パルプ繊維成分である紙粉末成分と、合成樹脂材であるポリプロピレン樹脂材と、補助剤としての澱粉成分であるコーンスターチとを発泡させ、多数の密閉された発泡セルS1,S2,S3より構成されている。紙粉末成分としては、官製葉書等の古紙を紙粉末繊維状にしたものを使用している。
【0019】
各発泡セルS1,S2,S3は、内部の空隙がセル皮膜によって被われている。発泡セルS1,S2,S3は、その位置によって発泡密度(発泡倍率)が異なり、発泡体1Aは発泡セルS1,S2,S3の密度によって以下のような層構造に形成されている。
【0020】
つまり、発泡体1Aは、厚み方向に沿って、表面皮膜層2と発泡セル層3と仕切皮膜層4と発泡セル層3と表面皮膜層2とから構成されている。各表面皮膜層2は、極薄厚みであり、発泡セル層3より発泡密度が高い発泡セルS2が密集配置されている。各発泡セル層3は、仕切皮膜層4より発泡密度が低い発泡セルS1が密集配置されている。仕切皮膜層4は、発泡セル層3及び表面皮膜層2より発泡密度が高い発泡セルS1が密集配置されている。仕切皮膜層4は、2層の発泡セル層3の間を連続して仕切って遮断している。仕切皮膜層4は、厚み方向の直交方向に一直線状で、且つ、ほぼ同じ厚みである。
【0021】
又、各発泡セル層3には、厚み方向の直交方向に沿って等間隔に複数の縦仕切皮膜層5が形成されている。各発泡セル層3は、縦仕切皮膜層5によって分割されている。縦仕切皮膜層5は、発泡セル層3より発泡密度が高い発泡セルS2が密集配置されている。
【0022】
次に、上記発泡体1Aを製造する押出し成形機10を説明する。押出し成形機10は、図3(a)に示すように、各発泡材を投入する投入口(図示せず)と、投入された発泡材を混練する混練手段(図示せず)と、混練された発泡材を高温に加熱する加熱手段(図示せず)と、発泡材を押圧する押圧手段(図示せず)と、押圧室の先端側を塞ぐように配置された口金部材11と、この口金部材11の外側を囲むように配置された規制枠壁20とを備えている。口金部材11は、図3(a)、(b)に示すように、水平方向に等間隔P1を置いて配置された複数の吐出口12,13を上下2段有する。上下2段の吐出口12,13は、水平方向に対し同じ位置に配置されている。規制枠壁20は、この2段の吐出口12,13より吐出された発泡材の発泡領域を規制する。規制枠壁20は、偏平長方形状の枠である。
【0023】
次に、発泡体1Aの製造方法を説明する。押出し成形機10内に、紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材と補助剤としてのコーンスターチと水を供給する。そして、紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材とコーンスターチと水を加熱混練し、この高温の発泡材を口金部材11の上下2段の吐出口12,13より押圧によって吐出させる。
【0024】
すると、高温の発泡材に混入された水が各吐出口12,13より吐出された瞬間に気化し、水の蒸気圧により紙粉末成分とポリプロピレン樹脂材とコーンスターチから成る発泡材が発泡する。この発泡は、規制枠壁20によって規制されるため、規制枠壁20を断面積とする発泡体1Aが連続的に押し出される。各発泡セルS1,S2,S3は、紙粉末成分の柔軟性やコーンスターチの粘着性等によって破泡することなく、密閉されたものとなる。
【0025】
また、各吐出口12,13から吐出された発泡材は、自由に発泡できず、上記したように規制枠壁20で発泡形成が抑制されると共に、発泡セル同士が互いに干渉することによって発泡形成が抑制される。具体的には、規制枠壁20の内周近傍の位置する発泡セルS2は、規制枠壁20で発泡形成が抑制される。これによって表面皮膜層2が形成される。上下の吐出口12,13の中間位置付近に位置する発泡セルS1は、互いの発泡セルS1同士が衝突(干渉)して発泡形成が抑制される。これによって仕切皮膜層4が形成される。水平方向の隣り合う吐出口12(又は13)の中間位置付近の位置する発泡セルS2は、互いの発泡セルS2同士が衝突(干渉)して発泡形成が抑制される。これによって縦仕切皮膜層5が形成される。これらより内側位置に位置する発泡セルS3は、上記発泡セルS1,S2に較べて弱い抑制力しか働かない。これによって発泡セル層3が形成される。
【0026】
このように製造された発泡体1Aは、発泡セルS3が密集配置された複数の発泡セル層3と、発泡セル層3の間に配置され、発泡セル層3より密度の高い発泡セルS1が密集配置された仕切皮膜層4とを厚み方向に備え、仕切皮膜層4が複数の発泡セル層3間を連続して全域に亘って仕切っている。
【0027】
従って、多数の密閉された発泡セルS1,S2,S3が密集状態に配置されるため、空気の通過を限りなく阻止、つまり、対流による熱の伝達をほぼ阻止する。又、仕切皮膜層4は、発泡材料が発泡材料の中でも熱伝導率の低いものであるため、仕切被覆層4の代わりを発泡セル層3としたもの(従来例)に較べて、熱の伝達を極力抑制できる。つまり、仕切皮膜層4は熱伝達の遮蔽壁として機能する。以上より、発泡体1Aの断熱特性の向上を図ることができる。
【0028】
この実施形態では、合成樹脂材は、熱伝導率(0.12)の低いポリプロピレン樹脂材(PP)であるので、発泡材料の熱伝導率が低く抑えられるため、発泡体1Aの断熱特性が確実に向上する。合成樹脂材としては、ポリオレフィン系の樹脂材(ポリプロピレン樹脂材(PP)、ポリエチレン(PE))が好ましい。
【0029】
仕切皮膜層4は、厚み方向の直交方向に一直線状で、且つ、同じ厚みである。従って、発泡体1Aは、どの箇所でもほぼ同じ断熱特性を発揮する。
【0030】
パルプ繊維成分として古紙を利用するため、低コスト化を図ることができ、又、古紙のリサイクルも可能、である。
【0031】
(変形例)
図4は、実施形態の変形例を示す。図4に示すように、変形例の発泡体1Bは、3つの発泡セル層3と、各発泡セル層3の間に配置された2つの仕切皮膜層4とを備えている。つまり、仕切皮膜層4を2層有する。発泡体1Bの厚み寸法Tは、前記実施形態と同じである。
【0032】
押出し成形機は、その口金部材が水平方向に等間隔を置いて配置された複数の吐出口12,13,14を上下3段有する。上下3段の吐出口12,13,14は、水平方向に対し同じ位置に配置されている。
【0033】
他の構成は、前記実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。図面の同一構成箇所には同一符号を付して明確化を図る。
【0034】
発泡体1Bは、前記実施形態と同様に、押出し成形機を使用して製造できる。
【0035】
この変形例の発泡体1Bは、仕切皮膜層4を2箇所に有するので、前記実施形態のものと比較して、熱伝達の遮蔽壁が2箇所となり、更に断熱特性が良い。仕切皮膜層4は、3箇所以上設けても良い。仕切皮膜層4は、多ければ多いほど断熱特性の向上になる。
【符号の説明】
【0036】
1A,1B 発泡体
3 発泡セル層
4 仕切皮膜層
10 押出し成形機
12,13,14 吐出口
20 規制枠壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分とを発泡させ、多数の密閉された発泡セルより構成された発泡体であって、
前記発泡セルが密集配置された複数の発泡セル層と、前記発泡セル層の間に配置され、前記発泡セル層より密度の高い前記発泡セルが密集配置された仕切皮膜層とを厚み方向に備え、前記仕切皮膜層が複数の前記発泡セル層間を連続して仕切っていることを特徴とする発泡体。
【請求項2】
請求項1記載の発泡体であって、
前記仕切皮膜層は、厚み方向の直交方向に一直線状で、且つ、同じ厚みであることを特徴とする発泡体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の発泡体であって、
合成樹脂材は、ポリプロピレン樹脂材であることを特徴とする発泡体。
【請求項4】
一定の方向に間隔を置いて配置された複数の吐出口が上下同じ位置で複数段設けられ、複数段の前記各吐出口より吐出された発泡体の発泡領域を規制する規制枠壁が設けられた押出し成形機を使用し、
前記押出し成形機にパルプ繊維成分と合成樹脂成分と補助剤としての澱粉成分と水を供給し、前記パルプ繊維成分と合成樹脂成分と澱粉成分と水を加熱混練して複数段の前記各吐出口より押圧によって吐出させたことを特徴とする発泡体の製造方法。
【請求項5】
一定の方向に間隔を置いて配置された複数の吐出口が上下同じ位置で複数段設けられ、複数段の前記各吐出口より吐出された発泡材の発泡領域を規制する規制枠壁が設けられたことを特徴とする押出し成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−71435(P2013−71435A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214519(P2011−214519)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】